説明

走査駆動装置

【課題】センサを保持するセンサホルダを1個のモータで2次元方向に順次回転させて、センサの指向方向を変化させる。
【解決手段】ステッピングモータ2の出力軸4にカムロータ60を結合し、センサホルダ50を回転軸線Lsまわりに回転可能に支持するホルダケース40を結合した回転ベース80を、出力軸と同軸の主軸線Lmまわりに回転可能に配置する。カムロータと回転ベースの間には、所定のトルク以下では両者を一体に回転させ、所定のトルクを越えると相対回転を許すトルクリミッタ77を設ける。初期位置からカムロータが回転すると回転ベース、ホルダケースおよびセンサホルダが一体に主軸線Lmまわりに回転し、ストッパで回転ベースが停止するとカムロータのみが回転して、回転軸変換機構150によりセンサホルダ50が回転軸線Lsまわりに回転して、これによりセンサが2軸方向に走査可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば赤外線センサやカメラなどの検出方向や撮影方向など指向方向を変化させる走査駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線センサやカメラなどを例えば監視装置として用いる場合には、その検出領域が広いことが望まれるが、要求される監視範囲が検出装置単体の検出領域よりも広い場合には、複数の検出装置をそれぞれの検出方向を異ならせて設置するか、あるいは1つの検出装置をその検出方向を移動させて走査する方式が採用される。
複数の検出装置を設置することは、コストがかかる上に、設置スペースの確保が困難な場合もあるので、検出方向を変化させるようにした走査駆動装置が望まれる。
【0003】
このような走査駆動装置として、本出願人は先に特開2007−24573号公報に示されるような監視装置を提案している。
これは、検出器の指向方向と平行な第1の軸と交差する方向に延びた第2の軸をモータで回転させるとともに、第2の軸と第1の軸との間に円板を介在させて、第2の軸を1回回転させる間に同時に第1の軸周りに逆方向の回転を1回行わせるように構成して、検出器の走査操作方向が円を描くようにしたものである。
これにより、1個のモータにより検出器の走査方向を2次元に変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−24573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成では、検出器の走査方向が円を描くため、検出範囲も円形形状に限られてしまって、例えば矩形視野範囲を監視対象とするとき、検出可能最大幅(円の直径)を監視対象範囲の左右方向に合わせても、監視対象範囲の四隅が検出可能範囲の円から外れて監視不能となるおそれが残る。
監視不能範囲を作らないためには、検出器の走査方向を矩形、例えば水平方向および上下方向に変化させる必要があるが、各方向への移動にそれぞれモータを備えることとすれば、コスト高となってしまうという問題がある。
このような問題は、監視装置における検出器の走査だけでなく、電磁波や音波のビームなどを送出する場合の走査についても同様である。
【0006】
したがって本発明は、上記問題に鑑み、走査駆動する対象を被駆動体として、1個のモータで被駆動体の指向方向を互いに交差する方向、例えば横方向および上下方向に変化させた走査が可能な走査駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の走査駆動装置は、モータによって駆動される第1の回転部材と、断接手段を介して第1の回転部材に連結された第2の回転部材と、該第2の回転部材に連動して第1の軸まわりに回転する被駆動体と、第1の回転部材と第2の回転部材の相対回転によって第1の軸と異なる第2の軸まわりに被駆動体を回転させる回転軸変換機構とを有し、断接手段は第1の回転部材の初期位置から第1の所定位置の間は第2の回転部材を第1の回転部材と一体に回転させ、第1の所定位置で第2の回転部材と第1の回転部材を相対回転させるものとした。
第2の回転部材が第1の所定位置までは第1の回転部材と第2の回転部材が一体に回転するので、モータの回転に応じて被駆動体が第1の回転部材と同じ第1の軸まわりに回転し、第1の所定位置からは第1の回転部材と第2の回転部材が相対回転するので、回転軸変換機構により被駆動体が第2の軸まわりに回転する。
【0008】
これにより、被駆動体を1個のモータにより順次相異なる2軸まわり、すなわち、互いに交差する横方向および上下方向に走査させることができる。
また、モータの逆転位置を任意に設定することにより、被駆動体の走査範囲を広狭制御することが容易である。
ここで、被駆動体は例えば走査対象の例えばセンサやカメラ装置自体であってもよく、あるいは走査対象を保持するホルダなどの形態をとるものであってもよいものとする。
【0009】
さらに第2の回転部材の回転を第2の所定位置で阻止する第2回転阻止手段と、第1の回転部材の第3の所定位置で第2回転阻止手段による阻止を解除する阻止解除手段とを有して、モータの逆回転に応じて、第2の回転部材が第2の所定位置で回転を阻止されるまでは第1の回転部材と第2の回転部材が一体に回転して被駆動体が第1の軸まわりに逆方向に回転し、第2の回転部材が第2の所定位置で回転を阻止されると第1の回転部材と第2の回転部材に対して相対回転して第3の所定位置に至るまで被駆動体が第2の軸まわりに逆方向に回転するものとすることにより、走査経路が8の字を描き、走査一巡中に第1の軸まわりの中間位置で第2の軸まわりの回転が2回行われ、当該位置での走査がとくに密となる。
【0010】
第2回転阻止手段を、第2の回転部材の周面に形成された凹部と、モータを支持する固定側に支持され上記凹部に係合する方向に付勢されたロック部材とで構成して、第2の所定位置を第2の回転部材の初期位置とし、第2の回転部材が該初期位置にあるときロック部材が凹部に係合するよう設定し、阻止解除手段は、第1の回転部材に設けられ、第1の回転部材の初期位置においてロック部材を凹部との係合から離脱する方向に付勢するカム山とすることにより、簡単な構成で第2の回転部材の回転阻止および解除が行われる。
【0011】
さらに、回転軸変換機構は、第1の回転部材に結合されたレバーと、第2の回転部材に支持され、レバーの端がスライドする長孔を備えて、レバーの回転により第2の回転部材に対して直線移動するスライダとを有し、該スライダで被駆動体における第2の軸から離間した部位を変位させることにより、被駆動体を第2の軸まわりに回転させる構成とすることにより、部品を樹脂成形品で構成でき、簡単に組立ることができる。
【0012】
上記の断接手段は、トルクリミッタと、第2の回転部材の回転を第1の所定位置で阻止する第1回転阻止手段とで構成することができ、トルクリミッタは、所定のトルク以下で第1の回転部材と第2の回転部材を連結して一体に回転させ、第2の回転部材の回転阻止により所定のトルクを越えると第1の回転部材と第2の回転部材を相対回転させる。
【0013】
この際、第1回転阻止手段は、第2の回転部材に設けられたストッパブロックと、モータを支持する固定側に設けられ第2の回転部材の回転方向においてストッパブロックと当接可能なストッパ部からなるものとすることができる。
また、トルクリミッタを、第1の回転部材側と第2の回転部材の一方に設けられたカム面と、他方に設けられて該カム面に爪を弾性的に係合するクラッチアームとからなるものとすることにより、狭いスペースに配置可能な小型に実現でき、走査駆動装置全体のサイズの大型化を避けることができる。
【0014】
断接手段の他の形態として、第1の回転部材と第2の回転部材の一方と一体回転かつ軸方向に変位可能に連結され、第1の回転部材と第2の回転部材の他方と当接可能に付勢されたクラッチ部材を含む一方向クラッチとすることもでき、該一方向クラッチは、第1の回転部材の初期位置から第1の所定位置の間は締結状態で第1の回転部材と第2の回転部材を一体に回転させ、第1の所定位置で解放状態となって第2の回転部材と第1の回転部材を相対回転させ、逆転すると締結状態となる。
【0015】
一方向クラッチは、とくにクラッチ部材とモータを支持する固定側の対向面の一方にカム突起を設け、対向面の他方には第2の回転部材の初期位置においてカム突起の周方向両側に離間してカム突起と当接可能なカム面を設けて、第2の回転部材が第1の所定位置まで回転するとカム面がカム突起に到達するように構成することにより、カム面がカム突起に乗り上げて解放状態となる。径方向のサイズを拡大不要で、これによっても走査駆動装置全体のサイズの大型化を避けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1個のモータにより被駆動体を順次に相異なる2軸まわり、例えば横方向および上下方向に走査させることができるので、低コストで実現できるとともに、例えば監視装置に用いる場合には監視対象範囲の四隅まで確実に検出可能であるという効果を有する。
また、モータの逆転位置の調整により、走査領域を任意に変化させることができるという利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施例の形態の外観を示す図である。
【図2】センサホルダの外観斜視図である。
【図3】図1の(b)におけるA−A部の縦断面図である。
【図4】図1の(b)におけるB−B部の縦断面図である。
【図5】スライド部まわりの拡大横断面図である。
【図6】図3におけるC−C部の断面図である。
【図7】ガイドリングを示す図である。
【図8】回転軸変換機構のスライダを示す図である。
【図9】スライダの移動によるセンサホルダの回転を示す説明図である。
【図10】1軸往復モード時の動作課程を示す説明図である。
【図11】8の字ループモード時の動作課程を示す説明図である。
【図12】8の字ループモード時の動作課程を示す説明図である。
【図13】8の字ループモード時の動作課程を示す説明図である。
【図14】8の字ループモード時の姿勢変化を示す説明図である。
【図15】矩形ループモード時の動作課程を示す説明図である。
【図16】矩形ループモード時の動作課程を示す説明図である。
【図17】矩形ループモード時の姿勢変化を示す説明図である。
【図18】第2の実施例の形態の外観を示す図である。
【図19】図18の(b)におけるD−D部の縦断面図である。
【図20】図18の(b)におけるE−E部の縦断面図である。
【図21】クラッチ部材まわりの拡大図である。
【図22】回転ベースの上面図である。
【図23】アッパボディの下面図である。
【図24】回転ベースの裏面側のレバーとスライダまわりを示す下面図である。
【図25】レバーとスライダまわりを示す斜視図である。
【図26】一方向クラッチの構成を示す斜視図である。
【図27】8の字ループモード時の動作課程を示す説明図である。
【図28】8の字ループモード時の動作課程を示す説明図である。
【図29】8の字ループモード時の動作課程を示す説明図である。
【図30】8の字ループモード時の動作課程を示す説明図である。
【図31】矩形ループモード時の動作課程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明を監視装置のセンサ走査用に適用した実施の形態について説明する。
図1は実施の形態にかかるセンサ駆動装置の外観を示し、(a)は斜視図、(b)は上面図である。
センサ駆動装置1は、外観的には、駆動源としてステッピングモータ2を取り付けたベースボディ10と、ベースボディ10に対して回転可能に設けられたホルダケース40と、ホルダケース40に回転可能に支持されたセンサホルダ50とからなる。
ステッピングモータ2は不図示の制御装置によりその正転、逆転、回転角度が任意に制御される。
以下の説明では、センサ駆動装置1を構成する部材の名称や部材相互の配置関係は(a)に示すようにベースボディ10を上方、ホルダケース40を下方に位置させた姿勢におけるものとする。また、ステッピングモータ2の出力軸が延びる線を主軸線Lmとし、必要に応じて主軸線Lmが通る位置を中心と呼ぶ。
【0019】
ベースボディ10は、アッパボディ11とロアボディ31からなり、平面形状が円形である。ステッピングモータ2はモータ本体3内に図示しない減速機構を内蔵し、アッパボディ11の上壁12に取り付けられている。
アッパボディ11とロアボディ31は、アッパボディ11の側壁13の外周面に形成した爪14とロアボディ31の側壁33の外周面に形成したフック35とを係合させるファスナ30により結合される。
センサホルダ50は基本形状が球形で、その直径線上の2つの軸孔52(図2参照)を結んで回転軸線Lsとするとともに、正面には表面に向かって末広がりの四角形に開口した凹部状の検出窓53を備え、検出窓53の底部に赤外線センサ54を取り付けてある。
【0020】
ホルダケース40は主軸線Lmと平行な切断面で2分割した半部40a、40bからなり、一方の側縁部の外周面に形成した爪42と他方の側縁部の外周面に形成したフック43とを係合させるファスナ41で一体化され、基本形状が円筒をなす。
そして、各半部40a、40bの下部内壁に形成した突軸48を軸孔52に差し込んで、センサホルダ50を回転可能に支持する。
ホルダケース40の先端(下端)側は、センサホルダ50が設定された角度だけ上下に回転する間センサホルダ50の検出窓53が外部に臨むように切り欠かれて開口している。
【0021】
図2は、センサホルダ50の背面側の外観斜視図であり、後述するスライダ100も併せて示している。センサホルダ50は、その球形外周面における回転軸線Lsから上方へオフセットした部位を切り欠いて形成した凹部55に、回転軸線Lsに垂直な平板部56を有する。平板部56はスライダ100から延びる2本のアーム105に対応している。
平板部56は、回転軸線Lsからの径方向にそうスリット57を備えている。
【0022】
図3は、図1の(b)におけるA−A部の縦断面を示し、図4は図1の(b)におけるB−B部の縦断面を示す。
ステッピングモータ2はそのブラケット3a部分をビス7によりアッパボディ11の上壁12に内側から固定して取り付けられる。
なお、両図においてステッピングモータ2は外観で示している。
ステッピングモータ2のモータ本体3からベースボディ10内に延びる出力軸4には、カムロータ60が取り付けられる。
【0023】
カムロータ60は、出力軸4に被さったボス部61と、ボス部の根元(モータ本体側)から外方へ延びる円板状のディスク部64と、その外周縁から下方(ボス部61の先端方向)へ延びる周壁65とを有する。カムロータの周壁65には、それぞれ外方へ突出するカム山66と規制突起67とが形成されている。
出力軸4には2面幅部5(図6参照)が形成され、ボス部61の穴もこれと整合する2面幅部を有して、カムロータ60が一体回転可能に結合される。
【0024】
ボス部61は根元側の大径部62と先端側の小径部63とからなる。大径部62と小径部63には出力軸4と同様にそれぞれ2面幅部が形成されて、大径部62には後述のクラッチ部材70が一体に結合され、小径部63にはレバー110が一体に結合される。
ロアボディ31の底壁32にはホルダケース40を回転可能に貫通させる開口34が設けられ、したがってロアボディ31の底壁32は側壁33に沿った細幅のフランジ状となっている。
【0025】
ベースボディ10内には、基本平面形状が円形の回転ベース80がロアボディ31の底壁32に支持されて配置されている。
ホルダケース40はこの回転ベース80に結合されて一体に回転する。
すなわち、回転ベース80はその外周の複数箇所、ここでは中心を挟んだ対称位置2箇所に切り欠き81(81a、81b)を有している。ホルダケース40の各半部はその上端縁を回転ベース80の下面(スライダ配置側の面)に当接させるとともに、上端縁から延ばした連結爪45を切り欠き81を通して回転ベース80の上面に係止させて、回転ベース80に結合される。
【0026】
回転ベース80の外周縁近傍には、切り欠き81部分を除いて、下方(底壁32側)へ突出する突条82が形成され、回転ベース80回転の際ロアボディ31の底壁32に対し突条82による線接触となるので、低抵抗で滑らかに回転する。
【0027】
カムロータ60のボス部61は回転ベース80中央の穴83を貫通し、前述のレバー110は回転ベース80の下側、すなわち回転ベースを挟んでクラッチ部材70と反対側に位置している。
回転ベース80は、上方(クラッチ部材70側)に立ち上がる円筒状のガイドリング85とリミッタリング90を備えている。
ガイドリング85はカムロータ60のディスク部64近傍まで延び、その外周面はカムロータ60の周壁65の内周面に互いに回転可能に整合する。またガイドリング85の内周面はカム面86となっている。カム面86については後述する。
【0028】
リミッタリング90はその端面上をカムロータ60のカム山66と規制突起67がスライドするようになっている。
回転ベース80の下側には、それぞれ所定間隔をおいた2つの直線壁組87が穴83を挟んで両側に設けられ、それぞれ後述するスライダのための互いに平行な直線状のガイド溝88を形成している。
回転ベース80の穴83の周縁には下方に延びる短筒部84が形成されており、カムロータ60のボス部61の大径部62は短筒部84の下端の開口部分まで延びている。
【0029】
ベースボディ10内部において、上壁12から側壁13にかけてロック保持部16が形成されている。
ロック保持部16は、中心へ向かってスプリング17により付勢されたロック部材20と、ロック部材20をスライド可能に保持するスライドレール18とからなっている。
ロック部材20は、内部をスプリング収容空間としたスライド部21とスライド部の先端から延びる縦板状の係入部24とからなっている。
【0030】
図5はスライド部21まわりの横断面を示す。ロック部材20のスライド部21は、コ字形の両脚の先端から互いに離間する方向に延びるフランジ部22を有するハット形状を有し、両脚の間をスプリング収容空間としている。
フランジ部22の上下両面にはそれぞれスライド方向に延びる突条23が形成されている。
スライドレール18は上壁12から延ばした断面L字形とされ、上壁12との間にロック部材20のフランジ部22のスライド空間を形成している。
【0031】
ロック部材20は上壁12あるいはスライドレール18に対し突条23による線接触となるので、低抵抗で滑らかにスライドする。
ロック部材20の係入部24の先端は、主軸線Lmと平行で断面が弧状(図6参照)となっている。係入部24の主軸線Lm方向の長さは、リミッタリング90と、その端面上をスライドするカムロータ60のカム山66との双方にまたがっている。
【0032】
図6は図3におけるC−C部の断面を示す。
ベースボディ10の側壁(アッパボディ11の側壁13)の内側に回転ベース80が収まっている。中心に位置するステッピングモータの出力軸4にカムロータ60が固定されている。
カムロータ60の周壁65には、前述のように、中心を挟んだ対称位置(直径線上)にカム山66と規制突起67とが形成されている。
【0033】
カムロータ60と回転ベース80の間には、クラッチ部材70とガイドリング85とで形成されるトルクリミッタ77が設けられている。
クラッチ部材70は、カムロータ60の大径部62に結合されてカムロータ60と一体に回転するリング部71と、リング部71の外周面と所定間隙をもって当該外周面に沿って半周近く延びる2本のクラッチアーム73とからなる。各クラッチアーム73の一端はリング部71の外周に接続するとともに、クラッチアーム73の他端には外方へ突出する爪74を備えて、ガイドリング85の内周面のカム面86と係合するようになっている。
【0034】
カム面86は、図7にガイドリング85のみを取り出して示すように、初期位置に対応する谷Taから周方向両側の所定角度α1位置、およびα2(=90°)位置に谷Tb、Tcが形成されている。各谷Ta、Tb、Tc間の山は緩やかな曲線でクラッチアーム73と接触するように設定されている。
これにより、トルクリミッタ77は、回転ベース80(ガイドリング85)とカムロータ60の間のトルクが所定値範囲内ではクラッチアーム73の爪74がカム面86の谷Ta等に係合して一体に回転するが、ストッパブロック96がストッパ部26に当接して回転ベース80が回転阻止されて所定値以上のトルクがかかると相対的にカムロータ60のみの回転を許す。
【0035】
図6に戻って、回転ベース80のリミッタリング90はその周方向所定角度範囲β1の端面(上端)が残りの角度範囲β2の端面よりも低く設定され、当該所定角度範囲β1の両端において角度範囲β2部分が規制面92(92a、92b)として立ち上がっている。したがって、リミッタリング90の端面上をスライドするカムロータ60のカム山66と規制突起67は図3に示されるように主軸線Lm方向の高さ位置が異なっている。
当該所定角度範囲β1はその端面上をカムロータ60の規制突起67がスライドするので、規制突起67の移動可能範囲、すなわちカムロータ60の回転可能範囲となる。
【0036】
リミッタリング90における残りの角度範囲β2の中央には、径方向に貫通する切り欠きにより形成されたロック凹部94が設けられ、ロック部材20の係入部24が係入可能となっている。
ベースボディ10の上壁12から側壁(アッパボディ11の側壁13)にかけて、周方向の端面をストッパ面27(27L、27R)とするストッパ部26(26L、26R)が形成されている。両ストッパ部のストッパ面27L、27Rはロック部材20の両側同角度位置に設定されている。
回転ベース80の上面には回転したときにストッパ部26と当接可能なストッパブロック96(96L、96R)が設けられている。
2つのストッパブロック96L、96Rのそれぞれが対応するストッパ部26と当接するストッパ面97(97L、97R)は、回転ベース80の直径線上に位置する。
【0037】
図6は回転ベース80およびステッピングモータ2(およびこれと一体のカムロータ60、レバー110)がそれぞれ初期位置にある状態を示し、カムロータ60のカム山66と規制突起67、およびロック部材20が一直線上に並び、リミッタリング90のロック凹部94上に位置するカム山66がロック部材20の係入部24と当接して当該係入部24を径方向外方へ変位させている。
【0038】
この初期位置において、回転ベース80のストッパブロック96L、96Rのストッパ面97L、97Rをつなぐ線は、カムロータ60の規制突起67、カム山66、およびロック部材20を結ぶ上記一直線に対して直角となり、ストッパブロック96のストッパ面97とストッパ部26のストッパ面27との間は、それぞれ50°となっている。
カムロータ60の規制突起67は、リミッタリング90上の移動可能範囲の中央位置にある。
【0039】
つぎに、回転軸変換機構150について説明する。
回転軸変換機構150はスライダ100、レバー110およびセンサホルダに形成されたスリット57を備える平板部56とで構成される。
ホルダケース40内において、回転ベース80の下方に、回転ベース80と平行な基板部101を有するスライダ100が配置される。
先の図2に示すように、スライダ100は、基板部101から立ち上がって回転ベース80の各ガイド溝88内に延びるスライド壁102を有して、ガイド溝88にそって回転ベース80と平行にスライド可能となっている。
【0040】
図8に示すように、基板部101には、スライド方向に対して直角に延びる長孔103が設けられ、レバー110はその先端に長孔103の幅に径サイズを対応させたピン111を備えて、ピン111を長孔103内に位置させてある。これにより、レバー110が回転すると、仮想線で示すように、長孔103の側壁をピン111に押されたスライダ100がガイド溝88にそってスライドする。
【0041】
スライダ100はさらに、下方に延びる2本のアーム105を有している。2本のアーム105はそれぞれ先端に、センサホルダ50との連結軸106を備え、両連結軸106を結ぶ線が回転ベース80と平行で、かつガイド溝88とのスライド方向に対して垂直となっている。
図9は、スライダ100の移動によるセンサホルダ50の回転を示す図である。
アーム105の連結軸106はその径サイズを、センサホルダ50の対応する平板部56のスリット57の幅に対応させてあり、スリット57に嵌めこまれて、当該スリット57にそってスライド可能となっている。
【0042】
図9において実線で示すアーム105は、レバー110がスライダ100のスライド方向と平行、すなわち、レバー110のピンが長孔103の長手方向中央位置にあるとき(図8における実線位置)を示し、レバー110の回転に伴うスライダ100のスライドによって、アーム105が実線位置から仮想線位置へ移動すると、連結軸106がスリット57の側縁を押してセンサホルダ50をその回転軸線Lsまわりに縦方向に回転させる。ここでは、図8に仮想線で示したようにレバー110が90°回転したとき検出窓53の指向方向が下方へ50°回転するように設定されている。
【0043】
先の図3、図4に示すように、スライダ100のスライド方向を横切る幅方向の両端には、下方(アーム105と同方向)に突出する突条107がスライド方向と平行に延びている。
ホルダケース40はその円筒形状の側壁から主軸線Lmに垂直に内方へ延びる保持壁47を有し、保持壁47でスライダ100を支持することによりスライダ100の軸方向位置を保持する。
スライダ100は保持壁47に対し突条107による線接触となるので、低抵抗で滑らかにスライドする。
以上により、回転軸変換機構150は、回転ベース80に対するカムロータ60の主軸線Lmまわりの相対回転を、主軸線Lmに直交する回転軸線Lsまわりの回転に変換する。
【0044】
つぎに、上記構成になるセンサ駆動装置の作動について説明する。
カムロータ60とレバー110はステッピングモータ2の出力軸4に結合されて、ステッピングモータ2と一体に回転する。
カムロータ60のクラッチアーム73の爪74が回転ベースのガイドリング85内周面のカム面86における谷に係合している状態で、回転ベース80はカムロータ60と一体に回転しようとする。また、カム面86の山がクラッチアーム73と接触していることもガイドリング85とカムロータ60の相対回転に対する抵抗となる。これにより回転ベース80とカムロータ60間に所定のトルクが印加されない間は、回転ベース80はカムロータ60と一体、すなわちステッピングモータ2と一体に回転する。
【0045】
回転ベース80とステッピングモータ2が一体に回転する間、回転ベース80あるいはスライダ100とレバー110の関係は変化しない。
一方、回転ベース80とカムロータ60間に所定値以上のトルクが印加されると、トルクリミッタが作動して相対回転を許す。すなわち、クラッチアーム73の爪74がカム面86の谷から緩やかな山面へ外れ、クラッチアーム73が撓んで他の山との接触による抵抗が低減することも相俟って、回転ベース80とカムロータ60は相対的に回転することになる。
したがって回転ベース80を強制的に停止させた状態でステッピングモータ2のみを回転させると、カムロータ60を介してステッピングモータ2と一体のレバー110がスライダ100に対して回転し、この結果、スライダ100がスライドして直線移動することになる。
【0046】
以上の特性により、センサ駆動装置1は以下のように複数の動作モードを実現することができる。
1)1軸往復モード
図10の(a)に示す初期位置(図6と同じ)からステッピングモータ2を一方向へ駆動し、回転ベース80のストッパブロック96がストッパ部26に当接するまでの範囲内の(b)に示す位置で、停止、逆転させると、回転ベース80はステッピングモータ2と一体に回転し、ホルダケース40を介して回転ベース80に支持されたセンサホルダ50は主軸線Lmまわりに回転する。
【0047】
この際、ロック部材20の係入部24はカムロータ60のカム山66と当接状態にあって径方向外方へ変位しているので、リミッタリング90(回転ベース80)はロック凹部94の角で断面弧状の係入部24を押し出してロック解除され、回転ベース80はカムロータ60と一体に回転することができる。
初期位置におけるストッパブロック96のストッパ面97とストッパ部26のストッパ面27との間は、時計方向および反時計方向にそれぞれ50°となっているから、逆転位置を任意に設定することで、センサホルダ50を合計100°の範囲内で1軸まわり、すなわち1次元の回転走査が可能となる。
【0048】
2)8の字ループモード
ステッピングモータ2をカムロータ60と回転ベース80の双方が初期位置にある状態から回転ベース80のストッパブロック96がストッパ部26に当接する位置を越える範囲まで駆動する。
(1)まず、図11の(a)に示す初期位置からストッパブロック96がストッパ部26に当接するまでは、1軸往復モードと同様に、回転ベース80およびこれと一体のセンサホルダ50は主軸線Lmまわりに回転する。
図11の(b)に示すように、カムロータ60が反時計方向に50°回転するとストッパブロック96Lがストッパ部26Lに当接する。
図中の矢印は図示の位置から次のステップへ進む回転方向を示し、とくに白抜き矢印はカムロータ60と回転ベース80の一体回転を、ハッチング矢印はカムロータ60のみの回転を示す。以下図12、13、15、16においても同じである。
【0049】
(2)回転ベース80はストッパ部26Lに阻止されて回転を停止するが、トルクリミッタが作動して、すなわちクラッチアーム73の爪74がガイドリング85内周面のカム面86における谷Taから外れて、カムロータ60はそのステッピングモータ2と一体に回転を継続する。
これによりレバー110が回転ベース80に対して回転し、スライダ100がスライドする結果、スライダ100のアーム105先端の連結軸106がセンサホルダ50を主軸線Lmに対して垂直な軸まわり、すなわち回転軸線Lsまわりに縦方向に回転させる。
【0050】
図11の(c)のように、クラッチアーム73の爪74がガイドリング85内周面のカム面86における谷Tcに係合するまでステッピングモータ2を駆動すると、カムロータ60の規制突起67がリミッタリング90の規制面92aに当接して、それ以上のカムロータ60の回転を阻止する。
センサホルダ50の回転軸線Lsに対する連結軸106とスリット57との係合位置の設定により、例えば縦方向に50°の回転角度を得ることができる。
【0051】
(3)この位置で、ステッピングモータ2を停止、時計方向に逆転させる。
図11の(c)の状態からは、回転ベース80はストッパブロック96Lとストッパ部26Lが離間する方向なので回転阻止されず、今度はカムロータ60とリミッタリング90(回転ベース80)が一体に回転して、センサホルダ50は主軸線Lmまわりに戻る。
そして、図12の(d)に示すように、回転ベース80がその初期位置に来ると、リミッタリング90のロック凹部94がロック部材20に対向し、ロック部材20の係入部24がロック凹部94に係入してリミッタリング90がロックされ、回転ベース80はこの初期位置に保持される。
【0052】
(4)さらにステッピングモータ2の時計方向の駆動を継続すると、トルクリミッタ77が作動して、レバー110が回転ベース80に対して戻り方向に回転し、センサホルダ50を回転軸線Lsまわりの戻り方向に回転させる。
そしてカムロータ60がその初期位置まで戻ると、図12の(e)に示すように、カムロータ60のカム山66がロック部材20の係入部24を径方向外方へ変位させるのでリミッタリング90のロックが解除される。クラッチアーム73の爪74とガイドリング85内周面のカム面86との係合関係も図11の(a)と同一となる。
【0053】
(5)ステッピングモータ2の時計方向の駆動を継続すると、ロック解除により、カムロータ60とリミッタリング90(回転ベース80)は一体となって主軸線Lmまわりの時計方向回転を再開し、センサホルダ50が同方向に回転する。
図12の(f)に示すように、カムロータ60が初期位置から時計方向に50°回転してストッパブロック96Rがストッパ部26Rに当接すると、回転ベース80はストッパ部26Rに阻止されて回転を停止する。
【0054】
(6)しかし、カムロータ60はトルクリミッタが作動してステッピングモータ2と一体に回転を継続する。
これによりレバー110が回転ベース80に対して回転し、スライダ100がスライドする結果、センサホルダ50を縦方向(回転軸線Lsまわり)に回転させる。
図13の(g)のように、トルクリミッタが作動して、クラッチアーム73の爪74がガイドリング85内周面のカム面86における谷Tcに係合するまでステッピングモータ2を駆動すると、カムロータ60の規制突起67がリミッタリング90の規制面92bに当接して、それ以上のカムロータ60の回転を阻止する。
【0055】
(7)この位置で、ステッピングモータ2を停止、反時計方向へ切り換える。
(g)の状態からは、カムロータ60とリミッタリング90(回転ベース80)が一体に回転して、センサホルダ50は主軸線Lmまわりに戻る。
そして、図13の(h)に示すように、リミッタリング90のロック凹部94がロック部材20に対向する回転ベース80の初期位置に来ると、ロック部材20によりリミッタリング90がロックされて、回転ベース80は初期位置に保持される。
【0056】
(8)さらにステッピングモータ2の反時計方向の駆動を継続すると、レバー110が回転ベース80に対して戻り方向に回転し、センサホルダ50を縦戻り方向に回転させる。
そしてカムロータ60がその初期位置まで戻ると、図11の(a)の状態に戻って、一巡の走査が完了する。
【0057】
図14は以上の作動状態をセンサホルダ50およびこれを支持するホルダケース40の外観変化として示す。
図中の(1)〜(8)は上述の(1)〜(8)のステップに順次対応する。
以上のように、センサホルダ50に取り付けられた赤外線センサ54の指向方向が、左右方向および上下方向の移動を組み合わせた8の字の経路を辿るものとなっている。
左右方向の走査と上下方向の走査が順次に行われるため、全体として矩形の赤外線検出領域が得られ、4隅部分の検出を漏らすことがない。
そして、全体の検出領域のなかで左右方向の中央部(回転ベース80の初期位置)では、走査一巡中に上下方向の回転を2回行うので、検出領域中央の重要領域の監視がとくに強化されるという利点を有する。
【0058】
なお、ステップ(3)および(7)においてステッピングモータ2を逆転させる位置として、クラッチアーム73の爪74がガイドリング85内周面のカム面86における谷Tcに係合する位置を例示したが、谷Tcに限定されず、ステッピングモータ2を停止、逆転する位置を谷Taから谷Tcの間で任意位置に設定することができる。
【0059】
3)矩形ループモード
センサ駆動装置1は、ロック部材20を取外すことにより、走査パターンを単純矩形とすることができる。
(1)まず、図15の(a)に示すカムロータ60と回転ベース80の双方が初期位置にある状態から、一方のストッパブロック96Lがストッパ部26Lに当接するまでは、1軸往復モードと同様に、回転ベース80(センサホルダ50)は主軸線Lmまわりに反時計方向に回転する。
図15の(b)に示すように、カムロータ60が50°回転するとストッパブロック96Lがストッパ部26Lに当接する。
【0060】
(2)回転ベース80はストッパ部26Lに阻止されて回転を停止するが、トルクリミッタ77が作動してカムロータ60はそのクラッチアーム73の爪74がガイドリング85内周面のカム面86における谷Taから外れて、ステッピングモータ2と一体に回転を継続する。
回転ベース80に対して任意の回転角度、例えば図15の(c)のように、クラッチアーム73の爪74がガイドリング85内周面のカム面86における谷Tbに係合するまでステッピングモータ2を駆動すると、レバー110が回転ベース80に対して回転し、スライダ100がスライドする結果、スライダのアーム105先端の連結軸106がセンサホルダ50を縦方向(回転軸線Lsまわり)に回転させる。
【0061】
(3)この位置で、ステッピングモータ2を停止、時計方向に逆転させる。
(c)の状態からは、今度はカムロータ60とリミッタリング90(回転ベース80)が一体に回転し、センサホルダ50は主軸線Lmまわりに時計方向に戻る。
ロック部材がないために、リミッタリング90はロックされることなく、回転ベース80はその初期位置を越えて、図16の(d)に示すように、他方のストッパブロック96Rがストッパ部26Rに当接するまで初期位置から逆方向に50°の位置まで回転して停止する。
【0062】
(4)しかし、トルクリミッタが作動してカムロータ60はステッピングモータ2と一体に回転を継続する。
これによりレバー110が回転ベース80に対して回転し、スライダ100が逆方向にスライドする結果、センサホルダ50は縦方向に戻る。
そして、図16の(e)に示すように、回転ベース80に対して上述の任意の回転角度、すなわちクラッチアーム73の爪74がガイドリング85内周面のカム面86の谷Taに係合するまで駆動する。これにより、センサホルダ50は縦方向が初期の姿勢に戻る。
【0063】
(5)この位置で、ステッピングモータを停止、反時計方向に切り換える。
回転ベース80はそのストッパブロック96Rがストッパ部26Rから離れる方向であるので、その回転を阻害するものはなく、カムロータ60と一体に回転して、(a)に示した初期位置へ戻る。
【0064】
図17は以上の作動状態をセンサホルダ50およびこれを支持するホルダケース40の外観変化として示す。
図中の(1)〜(5)は上述の(1)〜(5)のステップに順次対応する。
以上により、センサホルダ50に取り付けられた赤外線センサ54の指向方向が、左右方向および上下方向の移動を組み合わせた矩形に変化するものとなっている。
したがって、検出領域全体を均等に走査するだけでよい場合に有効であり、ロック部材が不要な分だけ、低コストとなる。
左右方向の走査と上下方向の走査が順次に行われるため、全体として矩形の赤外線検出領域が得られ、4隅部分の検出を漏らすことがない。
【0065】
また、ステップ(2)における縦方向回転に関連する回転ベースの任意の回転角度として、クラッチアーム73の爪74がガイドリング85内周面のカム面86における谷Tbに係合する位置を例示したが、谷Tbに限定されず、ステッピングモータ2を停止、逆転する位置を谷Taから谷Tcの間で任意位置に設定することにより、要求に応じた走査領域を得ることができる。
【0066】
本実施例においては、赤外線センサ54を保持したセンサホルダ50が発明における被駆動体に該当し、カムロータ60が第1の回転部材に、回転ベース80とホルダケース40が第2の回転部材にそれぞれ該当する。
ステッピングモータ2が発明におけるモータに該当し、ステッピングモータ2の出力軸4が延びる主軸線Lmが第1の軸、センサホルダ50の回転軸線Lsが第2の軸に該当する。
【0067】
回転ベース80のストッパブロック96L、96Rとベースボディ10のストッパ部26L、26Rが発明における第1回転阻止手段を構成し、この第1回転阻止手段とトルクリミッタ77とで断接手段を構成している。
また、スプリング17で付勢されたロック部材20と回転ベースにおけるリミッタリング90のロック凹部94が第2回転阻止手段を構成している。そして、とくにロック凹部94が凹部に該当し、カムロータ60のカム山66がロック解除手段に該当する。
【0068】
本実施例は以上のように構成され、ステッピングモータ2によって駆動されるカムロータ60と、赤外線センサ54を保持するセンサホルダ50と、センサホルダ50を支持する回転ベース80(およびホルダケース40)と、カムロータ60と回転ベース80の間に設けられ、所定のトルク以下でカムロータ60と回転ベース80を一体に回転させ、所定のトルクを越えるとカムロータ60と回転ベース80を相対回転させるトルクリミッタと、カムロータ60と回転ベース80の相対回転によってホルダケース40が回転する主軸線Lmと異なる回転軸線Lsまわりにセンサホルダ50を回転させる回転軸変換機構150を有するとともに、回転ベース80の回転を初期位置から第1の所定位置として50°位置で阻止するストッパブロック96L、96Rおよびストッパ部26L、26Rを備えるものとした。
【0069】
これにより、回転ベース80の回転が阻止されるまでは、ステッピングモータ2の駆動に伴って回転ベース80がカムロータ60と一体に回転するので、センサホルダ50はホルダケース40が回転する主軸線Lmまわりに回転する。
回転ベース80の回転が阻止されたあともステッピングモータ2の駆動を継続すると、トルクリミッタの所定トルクを越えて、カムロータ60のみが回転してセンサホルダ50を回転軸線Lsまわりに回転させる。
【0070】
そして、回転軸線Lsまわりに回転中、任意の位置でステッピングモータ2を逆転させると、回転ベース80がカムロータ60と一体に回転して、センサホルダ50は回転軸線Lsまわりの回転位置を保持したまま主軸線Lm周りに逆方向に回転する。
したがって、センサホルダに保持された赤外線センサ54を1個のステッピングモータ2により順次相異なる2軸まわり、すなわち、互いに交差する横方向および上下方向に走査させることができる。
また、ステッピングモータ2の逆転位置を任意に設定することができるので、赤外線センサ54の走査範囲を広狭制御することが容易である。
【0071】
なお、ストッパブロック96L(または96R)がストッパ部26L(または26R)に当接して回転ベース80の回転が阻止される前にステッピングモータ2を逆転させると、センサホルダ50は主軸線Lmまわりにのみ往復回転するので、赤外線センサ54を1次元で走査させることができるのはもちろんである。
【0072】
さらに、回転ベース80は第2の所定位置として当該回転ベース80の初期位置で回転を阻止可能とされるとともに、カムロータ60が第3の所定位置として当該カムロータ60の初期位置で回転ベース80の回転阻止を解除するようになっているので、これにより、センサホルダ50を回転軸線Lsまわりに回転させた位置からステッピングモータ2を逆回転させると、センサホルダ50は主軸線Lmまわりに初期位置まで戻ったところで回転軸線Lsまわりに回転して逆方向に戻る。ステッピングモータ2の逆回転をさらに継続すると逆方向に順次主軸線Lmまわりと回転軸線Lsまわりに回転するので、その後ステッピングモータ2を反転させることにより、一連の過程を繰り返して赤外線センサ54の走査経路は8の字を描く。
したがって、走査一巡中に回転ベースの初期位置で上下方向の回転を2回行うことになるので、検出領域中央の重要領域の監視がとくに強化される。
【0073】
また、トルクリミッタは、カムロータ60に結合したクラッチ部材70のクラッチアーム73の爪74を回転ベース80のガイドリング85のカム面86の谷に弾性的に係合させて構成されているので、狭いスペースに配置可能な小型に実現できて、所定のトルク以下ではカムロータ60と回転ベース80を一体に回転させ、ストッパブロック96L(または96R)がストッパ部26L(または26R)に当接して回転ベース80の回転が阻止されることにより所定のトルクを越えると爪74がカム面86上を滑ってカムロータ60のみの回転を許す。
【0074】
さらに、回転ベース80の回転をその初期位置で阻止可能とするため、リミッタリング90の周面に開口するロック凹部94を設け、ロック保持部16のスプリング17で付勢されたロック部材20をロック凹部94に係入する構成とする一方、この回転ベース80の回転阻止を解除するため、カムロータ60の初期位置でカム山66がロック部材20の係入部24を径方向外方へ変位させるようにしているので、簡単な構成で回転ベース80の回転阻止および解除が行われる。
【0075】
回転軸変換機構150は、カムロータ60に結合されたレバー110と、ホルダケース40に支持され、レバー110の端がスライドする長孔103を備えて、レバー110の回転によりホルダケース40に対して直線移動するスライダ100とを有し、スライダ100から延びるアーム105先端の連結軸106でセンサホルダ50における平板部56のスリット57の回転軸線Lsから離間した部位を付勢して変位させることにより、センサホルダ50を回転軸線Lsまわりに回転させるので、部品を樹脂成形品で構成でき、組立も簡単である。
【0076】
なお、上記実施例における各部の配置や回転角度における数値は例示であって、記載の値に限定されず、要求される仕様に応じて任意に設定可能である。
トルクリミッタも図示のクラッチアーム73をガイドリング85のカム面86を係合させるものに限定されず、カムロータ60と回転ベース80間のトルクが所定値範囲内では回転ベースがカムロータと一体に回転し、ストッパなどにより回転ベースが強制的に回転阻止されてトルクが所定値以上となったときにはカムロータのみが相対的に回転するものであれば、その方式は問わず、任意の構造を採用することができる。
【0077】
ロック部材20の係入部24が係入するリミッタリング90のロック凹部94は、リミッタリングの内壁、外壁間を径方向に切り欠いたものとしたが、回転ベースの回転を禁止できる程度に係入部24が係入可能であれば、必ずしも径方向に貫通しなくてもよい。
クラッチ部材70はカムロータ60に結合された別部品としたが、カムロータの一部として両者を一体の部品としてもよい。
【0078】
なお、本実施例では、カムロータ60と回転ベース80間のトルクが所定値までは両者を一体に回転させ、所定値以上のトルクがかかると相対回転を許すトルクリミッタ77として、クラッチアーム73の爪74をガイドリング85におけるカム面86の谷に係合させる構成を用いたが、トルクリミッタはこれに限定されない。
例えば、特開平10−238533号公報に開示したようなニードルを用いた自立保持装置をトルクリミッタとして組み込んでもよい。
この自立保持装置は、相対回転可能の部材の一方を外周面に形成した溝に第1のニードルの径方向半部を保持した回動軸とし、他方の部材には溝から突出したニードルを収納する間隙を置いて回動軸を包囲する保持壁を設け、保持壁に形成した貫通穴状のスリットに位置させた第2のニードルをバネ部材により間隙側へ付勢する構成を有する。
【0079】
これによれば、第1のニードルを間隙内に突出した第2のニードルに当接させることにより両部材を一体に回転させることができるとともに、バネ部材の付勢力に抗して第2のニードルを第1のニードルが乗り越えれば、その後は相対回転可能となる。
バネ部材の付勢力の設定を調節することにより、一体に回転するトルクを大きくすることができる一方、第1のニードルが第2のニードルを乗り越えたあとは、クラッチアームの爪をカム面の谷に係合させるトルクリミッタ77で発生するような摩擦によるブレーキを受けず、相対回転時のトルク損失も低減できるという利点が得られる。
【0080】
また、特開2008−57706号公報に開示したような摩擦を用いたトルクリミッタを用いてもよい。
このトルクリミッタは、円周面を備えた相対回転可能の一方の部材と円周面に被さる円筒状胴部が底板部から延設され、当該円筒状胴部が軸線方向に延びた複数の切り欠きにより複数の弾性板部に分割された他方の部材と、複数の弾性板部を円周面に向けて付勢する付勢部材とを有する。
【0081】
第1の実施例ではカムロータ60とリミッタリング90(回転ベース80)が一体で回転してセンサホルダ50が主軸線Lmまわりに戻る位置が、図15、図16の(c)、(d)に示すようにクラッチアーム73の爪74がカム面86の谷Tbに係合する位置となるが、上記特開2008−57706号公報に示したトルクリミッタの採用によれば、円周面と弾性板部間の摩擦力が円周方向において均等であるため、カムロータ60と回転ベース80の相対位置によらず、カムロータ60と回転ベース80間のトルクが所定値までは両者を一体に回転させることが可能となる。
【0082】
つぎに、第2の実施例について説明する。
図18は第2の実施例にかかるセンサ駆動装置の外観を示し、(a)は斜視図、(b)は上面図である。
センサ駆動装置1Aは、外観的には、駆動源としてステッピングモータ2を取り付けたベースボディ10Aと、ベースボディ10Aに対して回転可能に設けられたホルダケース40Aと、ホルダケース40Aに回転可能に支持されたセンサホルダ50とからなる。
なお、第1の実施例と同じ部材については同一符号を付して、詳細な説明は省略する。
本実施例でも、上下関係はベースボディ10Aを上方、ホルダケース40Aを下方に位置させた姿勢におけるものとする。また、ステッピングモータ2の出力軸が延びる線を主軸線Lmとし、必要に応じて主軸線Lmが通る位置を中心と呼ぶ。
【0083】
ベースボディ10Aは、アッパボディ11Aとロアボディ31Aからなり、平面形状が円形である。
アッパボディ11Aとロアボディ31Aは、第1の実施例と同様に、ファスナ30Aにより結合される。ホルダケース40Aも同様に2分割した半部からなり、ファスナ41で一体化されて基本形状が円筒をなしている。
なお、図19以降では簡単のためファスナ30A、41は図示省略する。
【0084】
ホルダケース40Aは、ベースボディ10A内に配置された後述の回転ベース80Aに結合されており、ロアボディ31Aの底壁32Aにはホルダケース40Aを回転可能に貫通させる開口34が設けられている。
センサホルダ50は検出窓53の底部に赤外線センサ54を取り付けてある。
ホルダケース40Aは下部内壁に形成した突軸48をセンサホルダ50の軸孔52(図2参照)に差し込んで、センサホルダ50を回転可能に支持するとともに、先端(下端)側は、センサホルダ50が設定された角度だけ上下に回転する間センサホルダ50の検出窓53が外部に臨むように切り欠かれて開口している。
【0085】
図19は、図18の(b)におけるD−D部の縦断面を示し、図20は図18の(b)におけるE−E部の縦断面を示す。図21はクラッチ部材まわりの拡大図である。
ステッピングモータ2はそのブラケット3a部分をビス7Aによりアッパボディ11Aの上壁12Aに外側から固定して取り付けられる。
上壁12Aの穴15を貫通してステッピングモータ2からベースボディ10A内に延びる出力軸4には、その2面幅部と整合する2面幅部6(図22参照)を有する軸穴120により一体回転可能にカムロータ60Aが取り付けられる。
【0086】
カムロータ60Aは、後掲の図22に示すように、ステッピングモータ2側から外径が順次拡径する第1ロータ部121、第2ロータ部122、第3ロータ部123を有する。第1ロータ部121と第2ロータ部122は同一径方向にそれぞれ1つの滑らかなカム山124、125を備え、各カム山の頂点は第3ロータ部123の外径と一致させてある。
図19に示すように、カムロータ60Aは第3ロータ部123に続いてさらに、第3ロータ部123に対して所定量縮小した外径の第1軸部126から順次に縮径する第2軸部127、および第3軸部128が軸方向に並んでいる。したがって第3ロータ部123がカムロータ60Aにおける最大径となる。
第3軸部128は2面幅部129を有するとともに、端面には中心に形成されたネジ孔131が開口している。
【0087】
カムロータ60Aの第1軸部126にはクラッチ部材134が相対変位可能に挿し込まれ、第2軸部127と第3軸部128にはレバー110Aのボス部112が嵌まり込んでネジ115により結合されている。
レバー110Aのボス部112は、第2軸部127と第3軸部128のそれぞれに整合させた形状の穴を有して、第3軸部128の2面幅部129によりカムロータ60Aと一体回転可能となる。
なお、レバー110Aはボス部112とアーム113とピン111からなっており、ボス部112はアーム113の根元から上方へ延びており、ピン111はアームの113先端から下方に延びている。ボス部112は外周にフランジ部114を有し、フランジ部114よりも先端側(上部)の外径はカムロータ60Aの第1軸部126と同径の小径部となっている。
【0088】
クラッチ部材134は厚肉円盤状で、第3ロータ部123の下端面130と対向する上面側を底壁として第1軸部126の外周面との間に所定の間隙を形成する拡径穴136を下面に開口させている。
第3ロータ部123の下端面130と対向する上面の外周縁には、第3ロータ部123との干渉を避けて軸方向に突出するフランジ135が形成してある。このフランジ135の上面は後述のガイドリング140の下端面と対向する。
クラッチ部材134とフランジ部114の間にクラッチスプリング117が設けられ、クラッチ部材134はクラッチスプリング117により第3ロータ部123の下端面130に上面が当接するよう付勢されている。拡径穴136はクラッチスプリング117の収容部となって、クラッチ部材134まわりの全体の軸長を短くしている。
【0089】
ベースボディ10A内には、基本平面形状が円形の回転ベース80Aがロアボディ31Aの底壁32Aに支持されて配置されている。
底壁32Aの開口34の穴縁には短筒状のフランジ36が底壁32Aの上面および下面の両方向に延ばして設けられ、上側の端縁は円弧断面となっている。
回転ベース80Aの回転の際、底壁32Aに対し円弧断面による線接触となるので、低抵抗で滑らかに回転する。
ホルダケース40Aはこの回転ベース80Aに結合されて一体に回転する。
すなわち、回転ベース80Aは中心を挟んだ対称位置2箇所に切り欠き81Aを有している。ホルダケース40Aはその上端縁を回転ベース80Aの下面に当接させるとともに、上端縁から延ばした連結爪45を切り欠き81Aを通して回転ベース80Aの上面に係止させて、回転ベース80Aに結合される。
【0090】
回転ベース80A中央の穴83はレバー110Aのフランジ部114が貫通可能な穴径を有し、ボス部112をカムロータ60Aに結合されたレバー110Aは、回転ベース80Aの下側、すなわち回転ベースを挟んでクラッチ部材134と反対側にアーム113とピン111を位置させている。
【0091】
回転ベース80Aは、上面(クラッチ部材134側)に円筒状のリミッタリング90Aを備えている。リミッタリング90Aはクラッチ部材134を囲んで延びている。
図22は回転ベース80Aの上面をカムロータ60Aとともに示す。
リミッタリング90Aは穴83を中心とし、その周方向所定角度範囲β1の端面(上端)が残りの角度範囲β2の端面よりも低く設定され、当該角度範囲β2部分が所定角度範囲β1の周方向両端に規制面92a、92bとして立ち上がっている。
【0092】
角度範囲β2におけるリミッタリング90Aの高さは、カムロータ60Aの第3ロータ部123をカバーして、第2ロータ部122と第3ロータ部123の境界付近にあり、後述するロック部材20Aの第1係入部24Aと干渉しないように設定してある。
リミッタリング90Aの角度範囲β2の上端における中央位置にはロック部材20Aの第2係入部25が進入可能のロック凹部94Aが軸方向に形成してある。
【0093】
回転ベース80Aの下面には、図19に示すように、2つの直線壁89が穴83を挟んだ両側に所定間隔で設けられて、後述するスライダ100Aのためのガイドとなっている。各直線壁89の両端は穴83を中心とする円弧壁89a(後掲の図24、25参照)で接続され、円弧壁89aはホルダケース40Aを回転ベース80Aに結合する際のガイドとなる。
【0094】
アッパボディ11Aは上壁12Aの下面から穴15を中心として下方に延びる円筒状のガイドリング140を備えている。
ガイドリング140はカムロータ60Aにおける第1ロータ部121、第2ロータ部122および第3ロータ部123を囲み、第3ロータ部123の下端面130に相当する位置まで延びている。
回転ベース80Aはそのリミッタリング90Aをガイドリング140の外周に沿わせて回転することになる。
ガイドリング140の下端面142は、カムロータ60Aにおける第3ロータ部123の下端面130よりもわずかに高い位置となるように設定してある。
【0095】
ガイドリング140の外周面には第1ストッパ143が設けられ、第1ストッパ143の上壁12Aからの高さ(下方向)は、回転ベース80Aのリミッタリング90Aにおける規制面92a、92bをなす所定角度範囲β2の範囲と軸方向(上下方向)に重なり、リミッタリング90Aの角度範囲β1の範囲とは重ならない(干渉しない)ように設定してある。
さらに、ガイドリング140の内周面にも第2ストッパ144が設けられ、第2ストッパ144の上壁12Aからの高さ(下方向)は、カムロータ60Aの第1ロータ部121に重なり、第2ロータ部122とは重ならないように設定してある。
【0096】
図23はアッパボディ11Aの下面図である。
第1ストッパ143はガイドリング140の周方向所定角度範囲α1をリミッタリング90A(回転ベース80A)の回転許可範囲として、残りの角度範囲α2において張出すように形成してある。
ガイドリング140内周面の第2ストッパ144は、角度範囲α2の中央位置に第1ストッパ143と背中合わせに、所定角度範囲例えばγ=20°にわたって内方へ張出すように形成してある。
【0097】
ガイドリング140の下端面142には、中心と所定角度範囲α1の中央位置を結ぶ直線に垂直で中心を通る線上にカム突起145が形成してある。カム突起145は中心を挟んで対称位置に2箇所設けられ、それぞれ周方向両側に同じ傾斜面145aを有する山形状である。
同じくガイドリング140には、ガイドリングの角度範囲α1の中央位置に軸方向の貫通切欠き146が形成されて下端面に開口し、後述するロック部材20Aの第1係入部24Aが貫通切欠き146を貫通しカムロータ60Aの第2ロータ部122に当接可能になっている。
【0098】
なお、回転ベース80Aはそのリミッタリング90Aのロック凹部94Aをガイドリング140の貫通切欠き146に一致させた回転位置を中立位置とする。
なお、カムロータ60Aはカム山124、125が貫通切欠き146に向いた状態を中立位置とする。
先の図22は中立位置の回転ベース80Aを示し、またカムロータ60A、したがってステッピングモータ2が中立位置にある状態を示している。
【0099】
図20に示すように、アッパボディ11A内には、第1の実施例と同様なロック保持部16Aが形成されている。
ロック保持部16Aは、主軸線Lmへ向かって垂直にスプリング17により付勢されたロック部材20Aと、ロック部材20Aをスライド可能に保持するスライドレール18とからなっている。第1の実施例のロック保持部16とは、ロック部材20Aのみ異なる。
ロック部材20Aは、スライド部21とスライド部の先端から延びる係入部とからなっており、係入部は上下(軸方向)に並ぶ第1係入部24Aと第2係入部25からなり、先端が中心寄りの上側の第1係入部24Aに対して下側の第2係入部25は外方へ退避している。第1係入部24Aと第2係入部25は、いずれも中心に向いた先端の断面が弧状(図23参照)をなしている。
【0100】
第1係入部24Aはカムロータ60Aの第2ロータ部122に対向し、第2係入部25は第3ロータ部123に対向している。なお、第2係入部25は一部が第2ロータ部122に対向していてもかまわない。
そして、第1係入部24Aが第2ロータ部122のカム山の頂点に当接しているとき、第2係入部25の先端は回転ベース80Aのリミッタリング90Aの角度範囲β2の外周面に近接するように設定してある。
ここで、近接とは、外周面に接触しない直近位置であることが好ましいが、相対回転可能な摺接状態も含む。
なお、回転ベース80Aの中立位置において、第2係入部25はリミッタリング90Aのロック凹部94Aに対向している。
【0101】
第2係入部25とこれに対向するロック凹部94Aの関係は、回転ベース80Aの中立位置(リミッタリング90Aのロック凹部94Aとガイドリング140の貫通切欠き146が一致)からカムロータ60Aと回転ベース80A(リミッタリング)が一体に回転する際に、スプリング17で付勢されて第2ロータ部122に当接していた第1係入部24Aがカム山の頂点から斜面への移行に伴って中心方向に変位しようとしても、弧状断面をもつ第2係入部25がリミッタリング90Aの外周面に乗り上げるように設定してある。
【0102】
つぎに、図24は回転ベース80Aの裏面側におけるレバー110Aとスライダまわりを示す下面図、図25は斜視図である。
レバー110Aは、カムロータ60Aに結合されたボス部112からアーム113が回転ベース80Aの下面と平行に延び、アームの先端にピン111を備える。
回転ベース80の下方(図中、手前)に、回転ベース80Aと平行な基板部101Aを有するスライダ100Aが配置される。
スライダ100Aは、基板部101Aから立ち上がって回転ベース80Aの下面の直線壁89に沿うスライド壁102を有する。
基板部101Aのスライド方向に直角方向の両端には、スライド壁102と平行で下方に突出する突条104が形成されている。突条104は断面が半円状である。
【0103】
突条104の内側において、2本のアーム105が平行に下方に延びており、2本のアーム105はそれぞれ先端に、センサホルダ50との連結軸106を備えている。
基板部101Aの2本のアーム105に挟まれた内側部分は、外側に比較して細い平面形を有し、スライド方向に対して直角方向の長孔103を有している。長孔103の幅とレバー110Aのピン111の径サイズとは対応させてあり、ピン111が長孔103内に位置させてある。
長孔103の孔縁は上下方向に厚肉となっており、ピン111との接触圧を低くしている。
【0104】
図24に戻り、ホルダケース40Aはその円筒形状の側壁から主軸線Lmに垂直に内方へ延びる保持壁47(図19、20も参照)を有し、保持壁47でスライダ100Aを支持することによりスライダ100Aの軸方向位置を保持する。
以上により、レバー110Aが回転すると、仮想線で示すように、長孔103の側壁をピン111に押されたスライダ100Aが直線壁89にそってスライドする。
スライダ100は保持壁47に対し突条104による線接触となるので、低抵抗で滑らかにスライドする。
【0105】
図24においてレバー110Aのピン111が長孔103の長手方向中央位置にある状態(実線位置)から、レバー110Aの回転に伴うスライダ100Aのスライドによって、アーム105が実線位置から仮想線位置へ移動すると、先の図9に示したと同様に、連結軸106が平板部56のスリット57の側縁を押してセンサホルダ50をその回転軸線Lsまわりに縦方向に回転させる。
以上のレバー110A、スライダ100A、およびセンサホルダ50に形成されたスリット57を備える平板部56とで、回転軸変換機構150A(図20参照)が構成される。
【0106】
図19に示すように、回転ベース80Aの中心から外れた位置に連結ピン93が設けられ、クラッチ部材134はこの連結ピン93と嵌り合うピン穴137を有している。これにより、クラッチ部材134と回転ベース80Aは一体に回転するようになっている。
図26に示すように、クラッチ部材134のガイドリング下端面142と対向するフランジ135には、周方向に沿った切欠き138が形成されている。切欠き138は中心を挟んだ対称位置に2箇所設けられている。
【0107】
切欠き138の軸方向高さ(深さ)はガイドリング下端面142のカム突起145と干渉しない一定高さであり、クラッチ部材134の第3ロータ部123の下端面130と対向する上面より下方まで切欠かれてもよい。切欠き138の周方向両端の角部にはカム突起145の傾斜面145aに対応する傾斜面139(139a、139b)が設けてある。
ここでは、切欠き138の周方向長さは例えばδ=100°とし、回転ベース80A(およびクラッチ部材134)の中立位置において、ガイドリング140のカム突起145はクラッチ部材134の切欠き138の周方向中央位置に位置するように設定してある。
【0108】
カム突起145が切欠き138の範囲内に位置しているときは、クラッチスプリング117により付勢されたクラッチ部材134はカムロータ60Aの第3ロータ部123の下端面130に押圧されて、カムロータ60Aと締結状態にある。そして、クラッチ部材134は連結ピン93により回転ベース80Aと連結しているから、結局、回転ベース80Aはカムロータ60Aを介してステッピングモータ2と一体に回転する。
【0109】
一方、カムロータ60Aとクラッチ部材134が共に回転し、相対的にカム突起145が切欠き138の両端のいずれかに到達すると、クラッチ部材134の傾斜面139がカム突起145に乗り上げて、クラッチ部材134が軸方向に変位し第3ロータ部123の下端面130から離れ、カムロータ60Aから解放状態となる。そして、カムロータ60Aが同方向に回転を継続している間、その回転トルクにより傾斜面145aに生じる軸方向の力成分とクラッチスプリング117の力がバランスして、クラッチ部材134は解放状態となった回転位置を保持し、回転ベース80Aも当該位置を保持する。すなわちカムロータ60Aと回転ベース80Aは相対回転する。
カムロータ60Aは第1ロータ部121のカム山124がガイドリング140の第2ストッパ144に当接して規制されるまでの範囲で、任意の位置まで回転させることができる。
【0110】
つぎにカムロータ60Aが停止して逆方向に回転を始めると、傾斜面145aで生じる力のバランスが無くなるので、直ちにクラッチ部材134がカムロータ60Aと締結し、したがって回転ベース80Aがカムロータ60Aと一体に回転することになる。
以上のように、クラッチスプリング117で付勢されてガイドリング下端面130と当接可能なクラッチ部材134と、クラッチ部材134の切欠き138端部の傾斜面139と、ガイドリング140のカム突起145とで一方向クラッチ133が構成されている。
【0111】
回転ベース80Aとカムロータ60Aが一体に回転する間、回転ベース80Aあるいはスライダ100Aとレバー110の関係は変化しない。
一方、カムロータ60Aと回転ベース80Aが相対回転している間は、レバー110がスライダ100Aに対して回転し、この結果、スライダ100Aがスライドして直線移動することになる。
【0112】
以上の特性により、センサ駆動装置1Aは第1の実施例と同様に、以下のように複数の動作モードを実現することができる。
1)1軸往復モード
回転ベース80Aの中立位置(初期位置)において、ガイドリング140のカム突起145はクラッチ部材134の切欠き138の周方向中央位置に位置しており、クラッチ部材134とカムロータ60Aの締結状態であるから、ステッピングモータ2を一方向へ駆動し、切欠き138端部の傾斜面139がカム突起145に乗り上げて締結状態が解放されるまでの範囲内で停止、逆転させると、回転ベース80Aはカムロータ60Aと一体に回転し、ホルダケース40Aを介して回転ベース80Aに支持されたセンサホルダ50は主軸線Lmまわりに回転する。
【0113】
初期位置における切欠き138端部の傾斜面139とカム突起145との間は、切欠き138の周方向長さδ=100°のとき、時計方向および反時計方向にそれぞれ50°となるから、逆転位置を任意に設定することで、センサホルダ50を合計100°の範囲内で1軸まわり、すなわち1次元の回転走査が可能となる。
【0114】
2)8の字ループモード
(1)図27の(a)は初期位置状態を示す。
上段はカムロータ60A、固定側のガイドリング140とロック部材20Aの第1係入部24A、および回転ベース80Aのリミッタリング90Aを上から透視した図であり、識別容易のためガイドリング140にハッチングを付してある。下段はカムロータ60A、リミッタリング90A、ロック部材20Aの第2係入部25、およびガイドリング140のカム突起145とクラッチ部材134の傾斜面139a、139bを上から透視した図であり、識別容易のためリミッタリング90Aの角度範囲β1の領域にハッチングを付してある。なお、部材間の隙間は省略している。上段、下段は以下の図30まで同様である。
【0115】
初期位置において、リミッタリング90Aのロック凹部94Aがガイドリングの貫通切欠き146と重なり、第2ロータ部122のカム山125がロック凹部94Aに臨むロック部材20Aの第1係入部24Aと対向して当接している。
ガイドリング140のカム突起145はクラッチ部材134の2つの傾斜面139a、139bで区画された切欠き138内にあり、クラッチ部材134とカムロータ60Aが締結状態にある。
【0116】
この初期位置からステッピングモータ2を駆動してカムロータ60Aが図中反時計方向に回転すると、締結状態にあるクラッチ部材134を介して回転ベース80A(リミッタリング90A)がカムロータ60Aと一体に回転する。
第1係入部24Aは第2ロータ部122のカム山125との対向から外れるが、第2係入部25はリミッタリング90Aの外周面を滑る。
これにより回転ベース80Aと一体のセンサホルダ50は主軸線Lmまわりに回転する。
図中の矢印は図示の位置から次のステップへ進む回転方向を示し、とくに白抜き矢印はカムロータ60Aと回転ベース80Aの一体回転を、ハッチング矢印はカムロータ60Aのみの回転を示す。以下図28、29、30と、さらに図31、32、33においても同じである。
【0117】
(2)図27の(b)は、回転ベース80Aが50°回転してクラッチ部材134の傾斜面139aがガイドリング140のカム突起145に到達した状態を示す。
傾斜面139aがカム突起145の傾斜面145aに乗り上げて、クラッチ部材134とカムロータ60Aの締結状態から解放されるので、さらにステッピングモータ2の駆動を継続している間、回転ベース80Aは位置保持して停止状態となり、カムロータ60Aのみが回転する。
なお、傾斜面139が乗り上げたカム突起145の傾斜面145aをハッチングで示している。以下、同様である。
【0118】
これによりレバー110Aが回転ベース80Aに対して回転し、スライダ100Aがスライドする結果、スライダ100Aのアーム105先端の連結軸106がセンサホルダ50を主軸線Lmに対して垂直な軸まわり、すなわちセンサホルダ50を回転軸線Lsまわりに縦方向に回転させる。
以下、同様に、センサホルダ50は回転ベース80Aがカムロータ60Aと一体に回転する間は主軸線Lmまわりに回転し、回転ベース80Aが停止してカムロータ60Aのみが回転する間は回転軸線Lsまわりに縦方向に回転することになる。
【0119】
(3)図28の(c)は回転ベース80Aが停止してからカムロータ60Aがさらに90°回転した状態を示す。
ここでステッピングモータ2を逆転させると、クラッチ部材134の傾斜面139aのカム突起145に対する乗り上げが止まり、直ちにクラッチ部材134とカムロータ60Aは締結状態となり、回転ベース80Aとカムロータ60Aは時計方向に一体に回転する。
【0120】
(4)そして、図28の(d)に示すように、回転ベース80Aの中立位置まで50°戻ると、第1係入部24Aは第2ロータ部122のカム山125を外れた領域に対向しているのでロック部材20Aがスライドして、第2係入部25がリミッタリング90Aのロック凹部94Aに係入する。
これにより、回転ベース80Aは回転を阻止され、さらにステッピングモータ2の駆動を継続すると、カムロータ60Aのみが回転する。
【0121】
(5)図29の(e)は、カムロータ60Aがさらに時計方向に90°回転して第2ロータ部122のカム山125が第1係入部24Aに対向する位置に来た状態を示す。
第2ロータ部122のカム山125によりロック部材20Aが押し戻され、第2係入部25がリミッタリング90Aのロック凹部94Aから抜ける。これにより、回転ベース80Aは回転阻止を解除され、再度カムロータ60Aと一体に回転可能となる。
【0122】
(6)ステッピングモータ2の駆動を継続してカムロータ60Aを時計方向に回転させると、図29の(f)に示すように、50°の位置でクラッチ部材134の傾斜面139bがガイドリング140のカム突起145に到達し、傾斜面139bがカム突起145の傾斜面145aに乗り上げる。これにより、クラッチ部材134とカムロータ60Aの締結状態から解放される。
さらにステッピングモータ2の駆動を継続している間、回転ベース80Aは位置保持して停止状態となり、カムロータ60Aのみが回転する。
【0123】
(7)図30の(g)は回転ベース80Aが停止してからカムロータ60Aがさらに時計方向に90°回転した状態を示す。
ここでステッピングモータ2を逆転させると、クラッチ部材134の傾斜面139bのカム突起145に対する乗り上げが止まり、直ちにクラッチ部材134とカムロータ60Aは締結状態となり、回転ベース80Aとカムロータ60Aは反時計方向に一体に回転する。
【0124】
(8)そして、図30の(h)に示すように、回転ベース80Aの中立位置まで50°戻ると、第1係入部24Aが第2ロータ部122のカム山125を外れた領域に対向しているのでロック部材20Aの第2係入部25がリミッタリング90Aのロック凹部94Aに係入する。
これにより、回転ベース80Aは回転を阻止され、さらにステッピングモータ2の駆動を継続すると、カムロータ60Aのみが回転する。
【0125】
カムロータ60Aが90°回転して第2ロータ部122のカム山125が第1係入部24Aに対向する位置に来ると、カム山125によりロック部材20Aが押し戻され、第2係入部25がリミッタリング90Aのロック凹部94Aから抜けて、図27の(a)に示した初期位置状態に戻る。
【0126】
以上の作動により、センサホルダ50およびこれを支持するホルダケース40Aは、先の図14と同様の左右方向および上下方向の移動を組み合わせた8の字の経路を辿る姿勢変化を示す。
左右方向の走査と上下方向の走査が順次に行われるため、全体として矩形の赤外線検出領域が得られ、4隅部分の検出を漏らすことがない。
そして、全体の検出領域のなかで左右方向の中央部(回転ベース80Aの初期位置)では、走査一巡中に上下方向の回転を2回行うので、検出領域中央の重要領域の監視がとくに強化されるという利点を有する。
【0127】
そしてさらに、クラッチ部材134の傾斜面139がカム突起145に乗り上げて回転ベース80Aの回転が停止した後のカムロータ60Aの逆転位置を、第1ロータ部121のカム山124がガイドリング140の第2ストッパ144に当接するまでの範囲で任意に設定することができるから、センサホルダ50の上下方向の回転範囲をステッピングモータ2の制御で自由に変化させることが可能である。
【0128】
3)矩形ループモード
センサ駆動装置1Aは、ロック部材20Aを取外すことにより、走査パターンを単純矩形とすることができる。
図31はカムロータ60A、リミッタリング90A、およびガイドリング140のカム突起145とクラッチ部材134の傾斜面139a、139bを上から透視した図であり、識別容易のためリミッタリング90Aの角度範囲β1の領域にハッチングを付してある。なお、各部材間の隙間は省略している。
(1)まず図31の(a)に示すカムロータ60Aと回転ベース80Aの双方が初期位置にある状態から、クラッチ部材134の切欠き138の傾斜面139aがガイドリング140のカム突起145に到達するまでは、1軸往復モードと同様に、回転ベース80Aは主軸線Lmまわりに反時計方向に回転する。
【0129】
(2)図31の(b)に示すように、回転ベース80Aが50°回転して切欠き138の傾斜面139aがカム突起145の傾斜面145aに乗り上げると、クラッチ部材134とカムロータ60Aの締結状態から解放され、回転ベース80A(リミッタリング90A)は位置保持して停止するが、カムロータ60Aのみは回転を継続する。
(3)図31の(c)に示すように、回転ベース80Aの停止位置からカムロータ60Aがさらに90°回転した位置でステッピングモータ2を停止、逆転させると、今度はカムロータ60Aと回転ベース80Aが一体に回転し、センサホルダ50は軸線Lmまわりに時計方向に戻る。
【0130】
ロック部材がないために、リミッタリング90Aはロックされることなく、回転ベース80Aはその初期位置を越えて、図31の(d)に示すように、クラッチ部材134の切欠き138の他方の傾斜面139bがカム突起145に到達する位置まで100°回転し、傾斜面139bがカム突起145に乗り上げて初期位置から逆方向に50°の位置で停止する。
【0131】
(4)この後はカムロータ60Aのみが回転を継続する。
図31の(e)は回転ベース80A(リミッタリング90A)が停止してからカムロータ60Aがさらに時計方向に90°回転した状態を示す。
(5)ここでステッピングモータ2を逆転させると、クラッチ部材134の傾斜面139bのカム突起145に対する乗り上げが止まり、直ちにクラッチ部材134とカムロータ60Aは締結状態となり、回転ベース80Aとカムロータ60Aは反時計方向に一体に回転して、図31の(a)に示した初期位置へ戻る。
【0132】
以上の作動により、センサホルダ50およびこれを支持するホルダケース40Aは、先の図17と同様の左右方向および上下方向の移動を組み合わせた矩形の経路を辿る姿勢変化を示す。
したがって、検出領域全体を均等に走査するだけでよい場合に有効であり、ロック部材が不要な分だけ、低コストとなる。
左右方向の走査と上下方向の走査が順次に行われるため、全体として矩形の赤外線検出領域が得られ、4隅部分の検出を漏らすことがない。
【0133】
本実施例においては、カムロータ60Aが発明における第1の回転部材に、回転ベース80Aとホルダケース40Aが第2の回転部材にそれぞれ該当する。
赤外線センサ54を保持したセンサホルダ50が発明における被駆動体に、ステッピングモータ2がモータに、そしてステッピングモータ2の出力軸4が延びる主軸線Lmが第1の軸、センサホルダ50の回転軸線Lsが第2の軸に該当する点は第1の実施例と同じである。
【0134】
カムロータ60Aに押圧付勢されるクラッチ部材134のガイドリング140との対向面に切欠き138を設け、ガイドリング140のカム突起145に切欠きの端部の傾斜面139が乗り上げてカムロータ60Aとクラッチ部材134の締結を解放する一方向クラッチ133が発明における断接手段を構成している。
スプリング17で付勢されたロック部材20Aと回転ベース80Aにおけるリミッタリング90Aのロック凹部94Aが第2回転阻止手段を構成している。そして、とくにロック凹部94Aが凹部に該当し、カムロータ60Aのカム山125がロック解除手段に該当する。
【0135】
本実施例は以上のように構成され、ステッピングモータ2によって駆動されるカムロータ60Aと、赤外線センサ54を保持するセンサホルダ50と、センサホルダ50を支持する回転ベース80A(およびホルダケース40A)と、カムロータ60Aと回転ベース80Aの間に設けられ回転ベース80Aの回転を初期位置から第1の所定位置として50°位置でカムロータ60Aと回転ベース80Aの締結を解放する一方向クラッチ133と、カムロータ60Aと回転ベース80Aの相対回転によってホルダケース40Aが回転する主軸線Lmと異なる回転軸線Lsまわりにセンサホルダ50を回転させる回転軸変換機構150Aを有するものとした。
【0136】
これにより、50°位置で一方向クラッチ133が解放するまでは、ステッピングモータ2の駆動に伴って回転ベース80Aがカムロータ60Aと一体に回転するので、センサホルダ50はホルダケース40Aが回転する主軸線Lmまわりに回転する。
一方向クラッチ133が解放して回転ベース80Aの回転が停止したあともステッピングモータ2の駆動を継続すると、カムロータ60Aのみが回転してセンサホルダ50を回転軸線Lsまわりに回転させる。
【0137】
そして、回転軸線Lsまわりに回転中、任意の位置、例えばクラッチ133が解放した位置から90°位置でステッピングモータ2を逆転させると、一方向クラッチが締結して回転ベース80Aがカムロータ60Aと一体に回転して、センサホルダ50は回転軸線Lsまわりの回転位置を保持したまま主軸線Lm周りに逆方向に回転する。
したがって、センサホルダ50に保持された赤外線センサ54を1個のステッピングモータ2により順次相異なる2軸まわり、すなわち、互いに交差する横方向および上下方向に走査させることができる。
また、ステッピングモータ2の逆転位置を任意に設定することができるので、赤外線センサ54の走査範囲を広狭制御することが容易である。
【0138】
なお、初期位置から50°で一方向クラッチ133が解放する前にステッピングモータ2を逆転させると、センサホルダ50は主軸線Lmまわりにのみ往復回転するので、赤外線センサ54を1次元で走査させることができるのはもちろんである。
【0139】
一方向クラッチ133は、クラッチ部材134のガイドリング140との対向面に切欠き138を設け、ガイドリング140には回転ベース80Aの初期位置において切欠き138内に位置するカム突起145を設けて、第1の所定位置(50°)で切欠き138の端部の傾斜面139がカム突起145に乗り上げてカムロータ60Aとクラッチ部材134の締結を解放するものとしたので、径方向のサイズを拡大不要のコンパクトなクラッチ構造が得られる。
【0140】
さらに、回転ベース80Aは第2の所定位置として当該回転ベース80Aの初期位置で回転を阻止可能とされるとともに、カムロータ60Aが第3の所定位置として当該カムロータ60Aの初期位置で回転ベース80Aの回転阻止を解除するようになっているので、これにより、センサホルダ50を回転軸線Lsまわりに回転させた位置からステッピングモータ2を逆回転させると、センサホルダ50は主軸線Lmまわりに初期位置まで戻ったところで回転軸線Lsまわりに回転して逆方向に戻る。ステッピングモータ2の逆回転をさらに継続すると逆方向に順次主軸線Lmまわりと回転軸線Lsまわりに回転するので、その後ステッピングモータ2を反転させることにより、一連の過程を繰り返して赤外線センサ54の走査経路は8の字を描く。
したがって、走査一巡中に回転ベース80Aの初期位置で上下方向の回転を2回行うことになるので、検出領域中央の重要領域の監視がとくに強化される。
【0141】
さらに、回転ベース80Aの回転をその初期位置で阻止可能とするため、リミッタリング90Aの周面に開口するロック凹部94Aを設け、ロック保持部16Aのスプリング17で付勢されたロック部材20Aの第2係入部25をロック凹部94Aに係入する構成とする一方、この回転ベース80Aの回転阻止を解除するため、カムロータ60Aの初期位置で第2ロータ部122のカム山125がロック部材20Aの第1係入部24Aを径方向外方へ変位させることにより第2係入部25をロック凹部94Aから外方へ変位させるようにしているので、簡単な構成で回転ベース80Aの回転阻止および解除が行われる。
【0142】
回転軸変換機構150Aは、カムロータ60Aに結合されたレバー110Aと、ホルダケース40Aに支持され、レバー110Aの端がスライドする長孔103を備えて、レバー110Aの回転によりホルダケース40Aに対して直線移動するスライダ100Aとを有し、スライダ100Aから延びるアーム105先端の連結軸106でセンサホルダ50における平板部56のスリット57の回転軸線Lsから離間した部位を付勢して変位させることにより、センサホルダ50を回転軸線Lsまわりに回転させるので、部品を樹脂成形品で構成でき、組立も簡単である。
【0143】
断接手段としての一方向クラッチ133は、クラッチ部材134に切欠き138を形成してその端部の傾斜面139をガイドリング140のカム突起145に乗り上げさせるものとしたが、切欠き138を形成することなく、ガイドリング140の下端面142に対向するクラッチ部材134の端面をガイドリングの下端面142から離間させて、当該クラッチ部材134の端面上に傾斜面を有する突起を設けてもよい。
さらには、ガイドリング140のカム突起145に乗り上げるためには必ずしも傾斜面である必要もない。
また実施例では連結ピン93により回転ベース80Aと連結したクラッチ部材134をカムロータ60Aと当接(締結)可能としたが、逆にカムロータ60Aと連結したクラッチ部材134を回転ベース80Aと当接可能としてもよく、要はクラッチ部材134を介して回転ベース80Aとカムロータ60Aとが断接可能な構成であればよい。
【0144】
ロック部材20Aの第2係入部25が係入するリミッタリング90Aのロック凹部94Aは、リミッタリングの内壁、外壁間を径方向に切り欠いたものとしたが、回転ベース80Aの回転を禁止できる程度に第2係入部25が係入可能であれば、必ずしも径方向に貫通しなくてもよい。
【0145】
なお、各実施例における各部の配置や回転角度における数値も例示であって、記載の値に限定されず、要求される仕様に応じて任意に設定可能である。
さらに実施の形態では、センサホルダ50に保持させるセンサを赤外線センサ54としたが、センサには種々のカメラも含まれ、監視の目的に応じて任意に選択することができる。
また、走査対象の被駆動体として赤外線センサ54を保持するセンサホルダ50を2次元に回転させるものとしたが、センサがカメラなどのように機械的強度を有するケースや枠体を備えている場合には、当該センサ自体を被駆動体とすることができる。
さらにまた、実施の形態は監視装置のセンサ走査用として説明したが、本発明は電磁波や音波のビーム送出方向の走査にも適用可能である。
【符号の説明】
【0146】
1、1A センサ駆動装置
2 ステッピングモータ
3a ブラケット
4 出力軸
5 2面幅部
6 2面幅部
7、7A ビス
10、10A ベースボディ
11、11A アッパボディ
12、12A 上壁
13 側壁
14 爪
15 穴
16、16A ロック保持部
17 スプリング
18 スライドレール
20、20A ロック部材
21 スライド部
22 フランジ部
23 突条
24 係入部
24A 第1係入部
25 第2係入部
26L、26R ストッパ部
27L、27R ストッパ面
30、30A ファスナ
31、31A ロアボディ
32、32A 底壁
33 側壁
34 開口
35 フック
40、40A ホルダケース
40a、40b 半部
41 ファスナ
42 爪
43 フック
45 連結爪
47 保持壁
48 突軸
50 センサホルダ
52 軸孔
53 検出窓
54 赤外線センサ
55 凹部
56 平板部
57 スリット
60、60A カムロータ
61 ボス部
62 大径部
63 小径部
64 ディスク部
65 周壁
66 カム山
67 規制突起
70 クラッチ部材
71 リング部
73 クラッチアーム
74 爪
77 トルクリミッタ
80、80A 回転ベース
81a、81b、81A 切り欠き
82 突条
83 穴
84 短筒部
85 ガイドリング
86 カム面
88 ガイド溝
89 直線壁
89a 円弧壁
90、90A リミッタリング
92a、92b 規制面
93 連結ピン
94、94A ロック凹部
96L、96R ストッパブロック
97L、97R ストッパ面
100、100A スライダ
101、101A 基板部
102 スライド壁
103 長孔
104 突条
105 アーム
106 連結軸
107 突条
110、110A レバー
111 ピン
112 ボス部
113 アーム
114 フランジ部
115 ネジ
117 クラッチスプリング
120 軸穴
121 第1ロータ部
122 第2ロータ部
123 第3ロータ部
124、125 カム山
126 第1軸部
127 第2軸部
128 第3軸部
129 2面幅部
130 下端面
131 ネジ孔
133 一方向クラッチ
134 クラッチ部材
135 フランジ
136 拡径穴
137 ピン穴
138 切欠き
139a、139b 傾斜面
140 ガイドリング
142 下端面
143 第1ストッパ
144 第2ストッパ
145 カム突起
145a 傾斜面
146 貫通切欠き
150、150A 回転軸変換機構
Ls 回転軸線
Lm 主軸線
Ta、Tb、Tc 谷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって駆動される第1の回転部材と、
断接手段を介して前記第1の回転部材に連結された第2の回転部材と、
該第2の回転部材に連動して第1の軸まわりに回転する被駆動体と、
前記第1の回転部材と第2の回転部材の相対回転によって前記第1の軸と異なる第2の軸まわりに前記被駆動体を回転させる回転軸変換機構とを有し、
前記断接手段は前記第1の回転部材の初期位置から第1の所定位置の間は第2の回転部材を第1の回転部材と一体に回転させ、第1の所定位置で前記第2の回転部材と第1の回転部材を相対回転させるものであることを特徴とする走査駆動装置。
【請求項2】
前記断接手段が、トルクリミッタと、前記第2の回転部材の回転を前記第1の所定位置で阻止する第1回転阻止手段とからなり、
前記トルクリミッタは、所定のトルク以下で前記第1の回転部材と第2の回転部材を連結して一体に回転させ、第2の回転部材の回転阻止により所定のトルクを越えると前記第1の回転部材と第2の回転部材を相対回転させるものであることを特徴とする請求項1に記載の走査駆動装置。
【請求項3】
前記トルクリミッタは、前記第1の回転部材側と第2の回転部材の一方に設けられたカム面と、他方に設けられて該カム面に爪を弾性的に係合するクラッチアームとからなることを特徴とする請求項2に記載の走査駆動装置。
【請求項4】
前記第1回転阻止手段が、第2の回転部材に設けられたストッパブロックと、モータを支持する固定側に設けられ第2の回転部材の回転方向においてストッパブロックと当接可能なストッパ部からなることを特徴とする請求項2または3に記載の走査駆動装置。
【請求項5】
前記断接手段が、前記第1の回転部材と第2の回転部材の一方と一体回転かつ軸方向に変位可能に連結され、第1の回転部材と第2の回転部材の他方と当接可能に付勢されたクラッチ部材を含む一方向クラッチであり、
該一方向クラッチは、前記第1の回転部材の初期位置から第1の所定位置の間は締結状態で前記第1の回転部材と第2の回転部材を一体に回転させ、第1の所定位置で解放状態となって前記第2の回転部材と第1の回転部材を相対回転させ、逆転すると締結状態となるものであることを特徴とする請求項1に記載の走査駆動装置。
【請求項6】
前記一方向クラッチは、前記クラッチ部材とモータを支持する固定側の対向面の一方にカム突起を設け、対向面の他方には第2の回転部材の初期位置において前記カム突起の周方向両側に離間して前記カム突起と当接可能なカム面を設けて、前記第1の所定位置で前記カム面が前記カム突起に乗り上げて解放状態となることを特徴とする請求項5に記載の走査駆動装置。
【請求項7】
さらに前記第2の回転部材の回転を第2の所定位置で阻止する第2回転阻止手段と、
前記第1の回転部材の第3の所定位置で前記第2回転阻止手段による阻止を解除する阻止解除手段とを有して、
モータの逆回転に応じて、前記第2の回転部材が前記第2の所定位置で回転を阻止されるまでは前記第1の回転部材と第2の回転部材が一体に回転して前記被駆動体が第1の軸まわりに逆方向に回転し、前記第2の回転部材が前記第2の所定位置で回転を阻止されると前記第1の回転部材が前記第2の回転部材に対して相対回転して前記第3の所定位置に至るまで前記被駆動体が第2の軸まわりに逆方向に回転することを特徴とする請求項2から6のいずれか1に記載の走査駆動装置。
【請求項8】
前記第2回転阻止手段が、第2の回転部材の周面に形成された凹部と、モータを支持する固定側に支持され前記凹部に係合する方向に付勢されたロック部材とからなり、
前記第2の所定位置が第2の回転部材の初期位置であり、第2の回転部材が該初期位置にあるとき前記ロック部材が前記凹部に係合するよう設定され、
前記阻止解除手段は、前記第1の回転部材に設けられ、第1の回転部材の初期位置において前記ロック部材を前記凹部との係合から離脱する方向に付勢するカム山であることを特徴とする請求項7に記載の走査駆動装置。
【請求項9】
回転軸変換機構は、
第1の回転部材に結合されたレバーと、
第2の回転部材に支持され、レバーの端がスライドする長孔を備えて、レバーの回転により第2の回転部材に対して直線移動するスライダとを有し、
該スライダで被駆動体における第2の軸から離間した部位を変位させることにより、被駆動体を第2の軸まわりに回転させることを特徴とする請求項1から8のいずれか1に記載の走査駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2011−190817(P2011−190817A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54815(P2010−54815)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】