走行制御装置
【課題】車速制御中にドライバーによりブレーキペダルのペダル操作が行われたときに、ドライバーに違和感を与えることなく、車速制御を解除することができる走行制御装置を得ること。
【解決手段】車速制御手段により車速を減速させる制御中にドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われた場合に、ペダル操作によりマスタシリンダ111で発生されるドライバーブレーキ液圧Pdと、車速制御部131の減速度指令値Aに基づいてブレーキアクチュエータ121で発生されるアクチュエータブレーキ液圧Paとを比較して、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを上回るまで、車速制御部131からの減速指令値Aの出力を継続する。
【解決手段】車速制御手段により車速を減速させる制御中にドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われた場合に、ペダル操作によりマスタシリンダ111で発生されるドライバーブレーキ液圧Pdと、車速制御部131の減速度指令値Aに基づいてブレーキアクチュエータ121で発生されるアクチュエータブレーキ液圧Paとを比較して、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを上回るまで、車速制御部131からの減速指令値Aの出力を継続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の車速となるように車速制御を行い、その車速制御をドライバーによるブレーキペダルのペダル操作によって解除する走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行車の車速に合わせて自車の車速を制御するアダプティブクルーズコントロールシステム等の走行制御装置では、ドライバーによってブレーキペダルのペダル操作が行われると、ドライバーの操作を優先して車速制御を解除するように構成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−161149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、走行制御装置によって車速を減速させる制御が行われている状態でドライバーによるブレーキペダルのペダル操作がなされた場合に、走行制御装置の制御指令値に基づいて発生される制御制動力とブレーキペダルのペダル操作により発生される操作制動力との間に差があると、車速制御の解除終了により制御制動力から操作性動力に切り替わる際に制動力のつながりに段差が生じて、ドライバーに違和感を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車速制御中にドライバーによりブレーキペダルのペダル操作が行われたときに、ドライバーに違和感を与えることなく、車速制御を解除することができる走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の走行制御装置は、車速制御手段により車速を減速させる制御中にブレーキペダルのペダル操作が行われた場合に、ペダル操作による操作制動力が車速制御手段による制御制動力よりも小さいときは、車速制御手段により車速を減速させる制御を継続させ、操作制動力が制御制動力以上のときは車速制御手段による車速制御を解除する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車速制御手段により車速を減速させる制御が行われている状態でドライバーによりブレーキペダルのペダル操作が行われた場合に、ペダル操作による操作制動力と車速制御手段による制御制動力とを比較して、操作制動力が制御制動力を上回るまで、車速制御手段により車速を減速させる制御を継続させるので、車速制御の解除時に制動力のつながりに段差が生じるのを防ぐことができ、ドライバーに違和感を与えることなく、車速制御を解除終了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の走行制御装置の構成を示す図。
【図2】実施例1における車速制御処理を説明するフローチャート。
【図3】実施例1における制御解除時のブレーキ液圧制御タイミングチャート。
【図4】実施例1におけるブレーキアクチュエータの構成を説明する油圧回路図。
【図5】実施例1におけるブレーキアクチュエータの動作を説明する図。
【図6】実施例1におけるポンプモータの制御ブロック図。
【図7】実施例2における車速制御処理を説明するフローチャート。
【図8】実施例2における制御解除時のブレーキ液圧制御タイミングチャート。
【図9】実施例3における車速制御処理を説明するフローチャート。
【図10】実施例3における制御解除時のブレーキ液圧制御タイミングチャート。
【図11】実施例4における走行制御装置の構成を示す図。
【図12】実施例4における減速度指令値の算出処理を説明するフローチャート。
【図13】実施例4における車速制御処理を説明するフローチャート。
【図14】実施例4における制御解除時のブレーキ液圧制御タイミングチャート。
【図15】実施例5における走行制御装置の構成を示す図。
【図16】実施例5におけるブレーキアクチュエータの機能構成を示す図。
【図17】実施例5における車速制御処理を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施例1]
図1は、実施例1における走行制御装置の構成を説明する図である。
走行制御装置101は、自動車などの車両に搭載されて、先行車に合わせて自車の車速を制御する車速制御を行い、その車速制御を、ドライバーによるブレーキペダルのペダル操作によって解除する構成を有する。
【0010】
走行制御装置101の具体的な構成としては、図1に示すように、減速時には所定の減速度が得られるように車両を減速させる減速度指令値Aを演算する車速制御部131と、車速制御部131から出力される減速度指令値Aに基づいてブレーキ液圧を発生させるブレーキアクチュエータ(制御制動力発生手段)121と、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作によりブレーキペダル112の踏込量に応じたブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ(操作制動力発生手段)111と、ブレーキアクチュエータ121またはマスタシリンダ111から液圧路を介してブレーキ液圧の供給を受けてブレーキ液圧に応じた制動力を発生させるブレーキ141を有している。
【0011】
マスタシリンダ111は、マスタピストン(図示せず)を内蔵しており、マスタピストンのストロークに応じたブレーキ液圧(操作制動力)を発生させる。マスタシリンダ111とブレーキペダル112との間には、ブレーキペダル112の踏力を増大させるブレーキブースタ(倍力装置)113が介在されている。ブレーキブースタ113は、ブレーキペダル112に入力軸が連結され、ドライバーがブレーキペダル112を踏み込むと出力軸がマスタシリンダ111のマスタピストンを移動させる構成を有している。ブレーキブースタ113には、既知のものを用いることができ、負圧式のものでもよく、また、電動式のものでもよい。
【0012】
ブレーキアクチュエータ121は、マスタシリンダ111とブレーキ141との間に介在されており、車速制御部131から出力される減速度指令値Aに基づきブレーキ液圧(制御制動力)を、各輪のバルブ及びポンプ、及びポンプモータによって発生させるように構成されている。
【0013】
マスタシリンダ111、あるいはブレーキアクチュエータ121には、マスタシリンダ111で発生されるブレーキ液圧を検出するためのマスタシリンダ圧センサ115が設けられている。また、ブレーキアクチュエータ121とブレーキ141との間の液圧路には、マスタシリンダ111及びブレーキアクチュエータ121からブレーキ141に供給されるブレーキ液圧を検出するためのブレーキ液圧センサ116が設けられている。
【0014】
上述のブレーキアクチュエータ121とマスタシリンダ圧センサ115とブレーキ液圧センサ116は、例えば、VDC、TCS、ABSなどの呼称で知られる他の車両制御システムで用いられるものと兼用してもよい。
【0015】
ブレーキペダル112の近傍位置には、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作の有無を検出するスイッチ(ペダル操作検出手段)114が設けられている。スイッチ114は、ブレーキペダル112が踏み込まれるとONになり、ブレーキペダル112から足を離すとOFFになる。スイッチ114は、車速制御部131に電気的に接続されており、ON・OFFの信号を出力する。
【0016】
車速制御部131は、車速制御中に減速を行うためにブレーキアクチュエータ121に減速度指令値Aを出力し、ブレーキアクチュエータ121が所定のブレーキ液圧を発生させているときに、ドライバーによるブレーキペダル112の踏み込みを検知するスイッチ114のON信号を受信すると、車速制御の解除処理を行う。
【0017】
次に、図2を用いて走行制御装置101における車速制御処理について説明する。
まず、ステップS101でスイッチ114の信号がONであるか否かが判断され、ONである場合には(ステップS101でYES)、ドライバーによりブレーキペダル112を踏み込むペダル操作が行われていると判断して、車速制御解除処理を実行すべく、ステップS102以降に移行する。なお、このステップS102以降の処理によって車速制御解除手段が構成される。
【0018】
ステップS102では、ブレーキペダル112を踏み込むペダル操作が行われたか否かを示す車速制御解除フラグをONにする処理がなされる。そして、ステップS103において、減速度指令値Aに基づいてブレーキアクチュエータ121で発生されるアクチュエータブレーキ液圧(制御制動力)Paと、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作によってマスタシリンダ111で発生されるドライバーブレーキ液圧(操作制動力)Pdを比較する処理が行われる。
【0019】
ここで、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paよりも小さい(Pd<Pa)と判断された場合には(ステップS103でYES)、車速を減速させる制御を継続させるべく、ステップS104に移行し、車速制御部131で車速制御中と同じ方法で減速度指令値Aを演算する処理がなされる。したがって、引き続き、ブレーキアクチュエータ121では、ステップS104で演算された減速度指令値Aに基づいてアクチュエータブレーキ液圧Paが発生され、ブレーキ141では、かかるアクチュエータブレーキ液圧Paに応じた制動力が発生され、車速を減速させる制御が継続される。
【0020】
一方、ステップS103でドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上(Pd≧Pa)であると判断された場合は(ステップS103でNO)、車速制御を解除すべく、ステップS105に移行する。ステップS105では、車速制御部131から出力される減速度指令値Aを減速無しにする処理がなされる。したがって、ブレーキアクチュエータ121からブレーキ141に供給されるアクチュエータブレーキ液圧Paは0とされ、車速を減速させる制御が解除される。かかる状態で車速を減速させる制御が解除されても、ブレーキ141には、マスタシリンダ111からのドライバーブレーキ液圧Pdが供給され、かかるドライバーブレーキ液圧Pdに応じた操作制動力が発生している。すなわち、ブレーキ液圧センサ116のブレーキ圧センサ値Poは、ドライバーがブレーキペダル112を踏み込んだことにより発生するブレーキ圧となる。そして、ステップS106に移行し、ステップS106で車速制御解除フラグをOFFにする処理を行った後に、終了となる。
【0021】
また、ステップS101でスイッチ114の信号がONではないと判断された場合には(ステップS101でNO)、ブレーキペダル112のペダル操作がなされていない状態であるとしてステップS111に移行する。
【0022】
ステップS111では、車速制御解除フラグがONであるか否かが判断され、車速制御解除フラグがOFFであると判断された場合には(ステップS111でNO)、ブレーキペダル112が全く操作されていない状態であると判断して、ステップS112以降に移行する。
【0023】
そして、ステップS112において車速制御中であるか否かが判断され、車速制御中であると判断された場合には(ステップS112でYES)、車速制御を続行すべく、ステップS113に移行し、ステップS113で減速度指令値Aを演算する処理がなされる(車速制御手段)。したがって、ブレーキアクチュエータ121では、ステップS113で演算された減速度指令値Aに基づいてアクチュエータブレーキ液圧Paが発生され、ブレーキ141では、かかるアクチュエータブレーキ液圧Paに応じた制動力が発生される。また、ステップS112で車速制御中でないと判断された場合には(ステップS112でNO)、他の処理を行わず、そのまま終了となる。
【0024】
そして、ステップS111で車速制御解除フラグがONであると判断された場合には(ステップS111でYES)、ブレーキペダル112が一旦操作された後に足が離された状態であると判断して、車速制御解除処理を継続すべく、ステップS114以降に移行する。
【0025】
ステップS114では、減速度指令値Aが減速無しになっているか否かが判断され、減速無しではない場合(ステップS114でNO)、すなわち、まだ、減速途中である場合には、ステップS115で車速制御解除時の減速度指令値演算処理が行われ、減速度指令値Aを徐々に所定の減速無し指令値に変化させる処理が行われる。したがって、ブレーキアクチュエータ121では、アクチュエータブレーキ液圧Paが徐々に減圧され、ブレーキ141では、かかるアクチュエータブレーキ液圧Paの変化に応じて制動力が徐々に弱められる。
【0026】
一方、ステップS114で減速度指令値Aが減速なしであると判断された場合には(ステップS114でYES)、ステップS116に移行し、ステップS116で車速制御解除フラグをOFFにする処理を行った後に、終了となる。したがって、ブレーキアクチュエータ121からブレーキ141に供給されるアクチュエータブレーキ液圧Paは0とされ、ブレーキ141には、マスタシリンダ111からのドライバーブレーキ液圧Pdが供給され、かかるドライバーブレーキ液圧Pdに応じた制動力が発生される。
【0027】
次に、上記図2で説明した車速制御処理を実施することにより実現される動作の内容を図3に示すタイミングチャートにより説明する。
【0028】
図3(a)は、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えるまでブレーキペダル112が踏み込まれた場合を示し、図3(b)は、ブレーキペダル112の踏込量が少なく、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えなかった場合を示す。
【0029】
まず、図3(a)に示される場合について説明する。ここでは、車速制御部131により車速を減速させる制御が行われており、車速制御部131から出力される減速度指令値Aに基づいて、ブレーキアクチュエータ121でアクチュエータブレーキ液圧Paが発生されて、ブレーキ141に供給されている状態を前提とする。
【0030】
そして、時刻tbrkonのときに、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、車速制御解除フラグがOFFからONに切り替わる(ステップS101とステップS102を参照)。そして、ブレーキペダル112のペダルストロークにしたがって、マスタシリンダ111でドライバーブレーキ液圧Pdが発生される。
【0031】
ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paは比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paより小さい間は(Pd<Pa)、車速制御部131で減速度指令値Aが演算される(図2のステップS103、S104を参照)。そして、その演算された減速度指令値Aに基づいてブレーキアクチュエータ121がアクチュエータブレーキ液圧Paを発生させ、車速制御部131により車速を減速させる制御が継続される。
【0032】
そして、時刻tactoffのときに、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上になると、車速制御部131から所定の減速無し指令値が減速度指令値Aとして出力され、ブレーキアクチュエータ121は、その減速度指令値Aにしたがってアクチュエータブレーキ液圧Paを減圧する(図2のステップS105を参照)。
【0033】
ブレーキ141に供給されるブレーキ液圧は、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paの大きい方となり、図3(a)のブレーキ液圧センサ値Poにおける時刻tactoffと時刻tbrkoffとの間に示されるように、車速制御を解除してもブレーキ液圧が減圧されることはない。
【0034】
そして、時刻tbrkoffのときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、ブレーキペダルストロークが0になるとともにブレーキ液圧センサ値Poは0になる(図2のステップS101、S111、S112を参照)。
【0035】
次に、図3(b)に示すように、ドライバーによるブレーキペダル112の踏み込み量が少ない場合について説明する。
【0036】
図3(a)と同じ前提状態から、時刻tbrkon2のときに、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、車速制御解除フラグがOFFからONに切り替わる(ステップS101、S102を参照)。そして、ブレーキペダル112のペダルストロークにしたがって、マスタシリンダ111でドライバーブレーキ液圧Pdが発生される。
【0037】
そして、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paとが比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paより小さい間は(Pd<Pa)、車速制御部131で減速度指令値Aが演算され(ステップS103、S104を参照)、その演算された減速度指令値Aに基づいてブレーキアクチュエータ121がアクチュエータブレーキ液圧Paを発生させ、車速制御部131により車速を減速させる制御が継続される。
【0038】
そして、時刻tbrkoff2のときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、スイッチ114がONからOFFに切り替わると、車速制御解除フラグはONのままであるので、減速度指令値Aを所定の傾きで、所定の減速無し指令値に変化させる処理がなされる(ステップS111、S114、S115を参照)。
【0039】
ブレーキ141に供給されるブレーキ液圧は、ブレーキ液圧センサ値Poとして示されるように、ブレーキペダル112から足を離すことによって、漸次減少される。そして、時刻tactoff2のときに、減速度指令値Aが所定の減速無し指令値になると、制御解除フラグをONからOFFに変更する(ステップS116を参照)。
【0040】
次に、図4〜図6を用いて、減速度指令値Aに基づいて作動するブレーキアクチュエータ121の動作について説明する。
【0041】
図4は、ブレーキアクチュエータの構成を説明する油圧回路図である。
ブレーキアクチュエータ121は、図4に示すように、ブレーキ液圧駆動部401を有している。ブレーキ液圧駆動部401は、ポンプモータ411により駆動されるプランジャポンプ412と、プランジャポンプ412から吐き出されたブレーキ液等の圧力流体(以下、圧油という)のブレーキ141への流入方向を制御する複数のバルブ420,430,440,450から構成されている。
【0042】
ブレーキ液圧駆動部401の油圧回路は、2系統からなり、これらはX配管に対応している。したがって、プライマリ系統には、FL輪とRR輪のブレーキ141が接続されており、セカンダリ系統にはFR輪とRL輪のブレーキ141が接続されている。各バルブは、バルブG/V_OUT420とバルブW/C_IN440がノーマルオープン(N/O)の構成を有しており、バルブG/V_IN430とバルブW/C_OUT450がノーマルクローズ(N/C)の構成を有している。
【0043】
図5は、ブレーキ液圧駆動部の動作を説明する図である。
ブレーキ液圧駆動部401は、制動力を発生させる場合、バルブG/V_IN430をON(開状態)、バルブG/V_OUT420をON(閉状態・液圧に応じて保持電流を制御)、バルブW/C_IN440をOFF(開状態)、バルブW/C_OUT450をOFF(閉状態)とし、ポンプモータ411をON(モーター回転数により増圧勾配を制御)することにより、マスタシリンダ111内の圧油をブレーキキャリパ500に流入させ、実ブレーキ液圧の増圧を行う。ポンプモータ411は、車速制御部131から出力される減速度指令値Aにしたがって制御される。これにより、ブレーキ141の制動動作による車両の減速度が可変設定される。
【0044】
図6は、ポンプモータ411のサーボ制御系を示している。ポンプモータ411のサーボコントローラ650は、減速度指令値Aを入力Xoとし、車両の実減速度を入力Xとして、これらの偏差を算出する演算器660と、ゲイン設定器610と、ポンプモータ駆動回路630とを有する。
【0045】
サーボコントローラ650は、減速度指令値Aである入力Xoと、車両の実減速度である入力Xとの偏差(Xo−X)に、ゲイン設定器610でゲインKを乗ずることにより、ポンプモータ411に印加する電圧波形のデュティ比であるモータ駆動Dutyを求め、ポンプモータ駆動回路630に入力し、ポンプモータ駆動回路630でモータ駆動Dutyに従った電圧波形θをポンプモータ411に与える。以上に示したブレーキアクチュエータ121により、減速度指令値Aと実減速度とを一致させるブレーキ制御を行う。
【0046】
上記した本実施例の走行制御装置101によれば、車速制御部131で車速を減速させる車速制御中に、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われた場合に、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作によって発生されるドライバーブレーキ液圧Pdと、車速制御部131からの減速度指令値Aに基づいて発生されるアクチュエータブレーキ液圧Paとの比較が行われる。
【0047】
そして、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paよりも小さいときは、車速制御部131により車速を減速させる車速制御を継続させ、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上のときは、車速制御部131による車速制御を終了させる。
【0048】
したがって、車速制御による減速中にブレーキペダル112のペダル操作が行われても、ブレーキペダル112の踏込量が小さい等の理由により、ブレーキペダル112による操作制動力がブレーキアクチュエータ121による制御制動力よりも小さい間は、車速制御部131により車速を減速させる車速制御が継続して行われて、制御制動力により減速が行われる。
【0049】
そして、ブレーキペダル112の操作制動力がブレーキアクチュエータ121の制御制動力と一致した時点で車速制御部131による車速制御が終了され、操作制動力による減速が行われることとなる。したがって、制動力のつながりに段差が生じるのを防ぐことができ、ドライバーに違和感を与えることなく、車速制御を終了させることができる。
【0050】
例えば、車速制御部から出力される減速度指令値に基づいてマスタシリンダを駆動させるアクティブブレーキブースタのようにブレーキ液圧の変化に応じてブレーキペダルのペダル位置が移動する構成を有するものとは異なり、本実施例のように、各輪毎のバルブ、ポンプ、ポンプモータで構成されるブレーキアクチュエータ121の場合には、ブレーキ液圧を変化させてもブレーキペダルのペダル位置は移動しない。
【0051】
したがって、このようなブレーキアクチュエータを有する従来の走行制御装置では、ブレーキペダルが僅かに踏み込まれただけでも車速制御が解除されてしまうので、ブレーキアクチュエータによる大きな制御制動力が、ブレーキペダルの踏力量に基づく小さな操作制動力に切り替わることとなり、ドライバーに対して、減速度の抜けを感じさせるおそれがあった。
【0052】
このような課題に対して、本発明の走行制御装置101は、車速制御部131により車速を減速させる制御中にブレーキペダル112のペダル操作が行われても、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paよりも小さいときは、車速制御部131により車速を減速させる車速制御を継続させ、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paに一致した時点で車速制御部131による車速制御を解除するので、ドライバーに減速度の抜けを感じさせるのを防ぐことができる。
【0053】
そして、本発明の走行制御装置101は、車速制御中にブレーキペダル112のペダル操作が行われたが、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paに到達しなかった場合には、アクチュエータブレーキ液圧Paが漸次減少するように減速度指令値Aを変化させて車速制御を解除するので、ドライバーに違和感を与えることなく、車速制御を解除することができる。
【0054】
本実施例によれば、ドライバーがブレーキペダル112を踏み込んで車速制御解除処理を開始したときから、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えるときまで、車速を減速させる制御を継続するので、車速制御の解除によってアクチュエータブレーキ液圧Paからドライバーブレーキ液圧Pdに切り替わるときに、ドライバーに減速度の抜けという違和感を与えることなく、車速制御を解除することができる。
【0055】
[実施例2]
次に、実施例2について図7、図8を用いて以下に説明する。
図7は、実施例2における車速制御解除処理を説明するフローチャートである。
本実施例において特徴的なことは、実施例1と同様の構成において、車速制御中に、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作が行われて、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さい場合に、車速制御部131の減速度指令値Aを保持する処理を行う構成としたことである。
【0056】
上述の実施例1では、かかる場合に、車速制御部131により減速度指令値Aを演算して、その演算した減速度指令値Aに基づいて車速制御が行われるが(図2のステップS104を参照)、本実施例では、図7のステップS204に示されるように、減速度指令値Aをペダル操作が行われる直前の値に保持する処理が行われる。
【0057】
次に、上記図7で説明した車速制御処理を実施することにより実現される動作の内容を図8に示すタイミングチャートにより説明する。
【0058】
図8(a)は、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えるまでブレーキペダル112が踏み込まれた場合を示し、図8(b)は、ブレーキペダル112の踏込量が少なく、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えない場合を示す。
【0059】
まず、図8(a)に示される場合について説明する。実施例1と同様の前提条件で、時刻tbrkonのとき、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、車速制御フラグがOFFからONに切り替えられ、ブレーキペダルストロークにしたがって、マスタシリンダ111でドライバーブレーキ液圧Pdが発生される。
【0060】
そして、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ圧Paとが比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さい間は、減速度指令値Aを、車速制御フラグがOFFからONに切り替えられる直前の値、すなわちペダル操作が行われる直前の値に保持する処理が行われる。したがって、ブレーキアクチュエータ121からは、一定のアクチュエータブレーキ液圧Paが出力され、車速制御部131により車速を減速させる制御が継続される。
【0061】
そして、時刻tactoffのときに、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上になると、車速制御部131から所定の減速無し指令値が減速度指令値Aとして出力され、ブレーキアクチュエータ121は、減速度指令値Aにしたがってアクチュエータブレーキ液圧Paを減圧する。
【0062】
ブレーキ141に供給されるブレーキ液圧は、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paの大きい方となり、図8(a)のブレーキ液圧センサ値Poにおける時刻tactoffと時刻tbrkonとの間に示されるように、車速制御を解除した後でもブレーキ液圧が減圧されることはない。そして、時刻tbrkoffのときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、ブレーキペダルストロークが0になるとともにブレーキ液圧センサ値Poは0になる。
【0063】
次に、図8(b)に示すように、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル踏み込み量が少ない場合について説明する。
【0064】
図8(a)と同じ前提条件から、時刻tbrkon2のときに、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、車速制御解除フラグがOFFからONに切り替わる。そして、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paとが比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paより小さい間は、減速度指令値Aを、車速制御解除フラグがOFFからONに切り替えられる直前の値、すなわちペダル操作が行われる直前の値に保持する処理が行われる。したがって、ブレーキアクチュエータ121からは、一定のアクチュエータブレーキ液圧Paが出力され、車速制御部131により車速を減速させる制御が継続される。
【0065】
そして、時刻tbrkoff2のときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、スイッチ114がONからOFFに切り替わると、車速制御解除フラグはONのままであるので、減速度指令値Aを所定の傾きで所定の減速無し指令値に変化させる処理がなされる。
【0066】
ブレーキ141に供給されるブレーキ液圧は、ブレーキ液圧センサ値Poとして示されるように、ブレーキペダル112から足を離すことによって、漸次減少される。そして、時刻tactoff2のときに、減速度指令値Aが所定の減速無し指令値になると、制御解除フラグがONからOFFに変更される。
【0067】
本実施例によれば、ドライバーがブレーキペダル112を踏み込んだ後も、ブレーキペダルを踏み込む直前の減速度指令値Aを保持してブレーキアクチュエータ121に供給するので、車速制御の解除によってアクチュエータブレーキ液圧Paからドライバーブレーキ液圧Pdに切り替わるときに、減速度の抜け感が発生することを抑制することができる。また、ブレーキペダルを踏み込む直前の減速度指令値Aを保持することによって、ドライバーに対して制動力の不足を感じさせることができ、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル調整を促すことができる。
【0068】
[実施例3]
次に、実施例3について図9、図10を用いて以下に説明する。
図9は、実施例3における減速度指令値算出処理の内容を示すフローチャートである。実施例2と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施例において特徴的なことは、実施例2と同様の構成において、車速制御中に、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作が行われて、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さい場合に、ペダル操作を開始してから経過時間が経過するまでは減速度指令値Aを保持し、所定時間経過後にアクチュエータブレーキ液圧Paが漸次減少するように減速度指令値Aを変化させる処理を行う構成としたことである。
【0070】
ステップS301でスイッチ114の信号がONであると判断されると、ステップS302でペダル操作が行われてからの経過時間(スイッチ114のON時間)を計測するためのカウンタインクリメント処理が行われる。また、ステップS301でスイッチ114の信号がOFFであると判断されると、ステップS311でカウントをクリアするカウンタクリア処理が行われる。
【0071】
ステップS302でカウンタインクリメント処理が行われると、ステップS303で、車速制御解除フラグをONにする処理が行われ、ステップS304でアクチュエータブレーキ液圧Paとドライバーブレーキ液圧Pdを比較する処理が行われる。
【0072】
ここで、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さいと判断された場合に(ステップS304でYES)、ステップS305で上記経過時間と予め設定された所定時間とを比較して、経過時間が所定時間よりも長いか否かを判断する処理が行われる。
【0073】
そして、経過時間が所定時間よりも短い場合には(ステップS305でNO)、所定時間を経過していないと判断して、ステップS307に移行し、ステップS307で減速度指令値保持処理が行われる。ステップS307の減速度指令値保持処理では、減速度指令値Aを、車速制御フラグがOFFからONに切り替えられる直前の値、すなわちペダル操作が行われる直前の値に保持する処理が行われる。
【0074】
一方、経過時間が所定時間以上の場合には、所定時間を経過していると判断して、ステップS306に移行し、ステップS306でアクチュエータブレーキ液圧Paが漸次減少するように減速度指令値Aを変化させる処理(減速度指令値徐々抜き処理)が行われる。この減速度指令値徐々抜き処理により、ブレーキアクチュエータ122によるアクチュエータブレーキ液圧Paは漸次減少される。なお、上記したステップ以外の処理については、実施例2と同様であるのでその詳細な説明を省略する。
【0075】
次に、図9で説明した車速制御処理を実施することにより実現される動作の内容を図10に示すタイミングチャートにより説明する。
【0076】
図10(a)は、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えるまでブレーキペダル112が踏み込まれた場合を示し、図10(b)は、ブレーキペダル112の踏込量が少なく、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えない場合を示す。
【0077】
まず、図10(a)に示す場合について説明する。実施例1と同様の前提条件で、時刻tbrkonのとき、スイッチ114によってドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、カウンタインクリメント処理が行われる。そして、車速制御フラグがOFFからONに切り替えられ、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ圧Paとが比較される。
【0078】
時刻tbrkonから時刻tactkeepまでは、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さく、経過時間が所定時間よりも短いので、減速度指令値Aを、車速制御フラグがOFFからONに切り替えられる直前の値、すなわちペダル操作が行われる直前の値に保持する処理が行われる。
【0079】
そして、時刻tactkeepのときに、経過時間が所定時間以上となり、減速度指令値Aを所定の減速無し指令値まで徐々に減少させる減速度指令値徐々抜き処理が開始される。そして、時刻tactoffのときに、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上になり、車速制御部131から所定の減速無し指令値が減速度指令値Aとして出力され(ステップS508を参照)、ブレーキアクチュエータ121は、減速度指令値Aにしたがってアクチュエータブレーキ液圧Paを減圧する。
【0080】
ブレーキ141に供給されるブレーキ液圧は、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paの大きい方となり、図10(a)のブレーキ液圧センサ値Poにおける時刻tactoffと時刻tbrkoffとの間に示されるように、車速制御を解除した後でもブレーキ液圧が減圧されることはない。そして、時刻tbrkoffのときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、ブレーキペダルストロークが0になるとともにブレーキ液圧センサ値Poは0になる。
【0081】
次に、図10(b)に示すように、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル踏み込み量が少ない場合について説明する。
【0082】
図10(a)と同じ前提条件から、時刻tbrkon2のときに、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、車速制御解除フラグがOFFからONに切り替わる。そして、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paとが比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paよりも小さい間は、減速度指令値Aを、車速制御解除フラグがOFFからONに切り替えられる直前の値、すなわちペダル操作が行われる直前の値に保持される。したがって、ブレーキアクチュエータ121からは、一定のアクチュエータブレーキ液圧Paが出力され、車速制御部131により車速を減速させる制御が継続される。
【0083】
そして、時刻tactkeep2のときに、経過時間が所定時間以上となり、減速度指令値Aを所定の減速無し指令値まで徐々に減少させる漸減処理が開始される。そして、減速度指令値Aの漸減により、アクチュエータブレーキ圧Paは漸次減少され、それに伴ってブレーキ液圧センサ値Poも漸次減少される。
【0084】
そして、時刻tbrkoff2のときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、スイッチ114がONからOFFに切り替わると、車速制御解除フラグはONのままであるので、減速度指令値Aを所定の傾きで、所定の減速無し指令値に変化させる処理がなされる。
【0085】
ブレーキ141に供給されるブレーキ液圧は、ブレーキ液圧センサ値Poとして示されるように、ブレーキペダル112から足を離すことによって、漸次減少される。そして、時刻tactoff2のときに、減速度指令値Aが所定の減速無し指令値になると、制御解除フラグをONからOFFに変更する。
【0086】
本実施例によれば、ドライバーがブレーキペダル112を踏み込んだ後も、ブレーキペダル112を踏み込む直前の減速度指令値Aを所定時間だけ保持し、その後、アクチュエータブレーキ液圧Paが徐々に減少するように減速度指令値Aを変化させるので、車速制御を解除するときに減速度の抜け感が発生することを抑制するとともに、制御制動力の減少に伴ってドライバーにブレーキペダル112の踏み増しを促し、ブレーキアクチュエータ121の動作終了を早め、ブレーキアクチュエータ121の負荷を軽減することができる。
【0087】
[実施例4]
次に、実施例4について図11〜図14を用いて以下に説明する。
図11は、実施例4における走行制御装置の構成を説明する図である。実施例1と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0088】
本実施例において特徴的なことは、ブレーキペダル112のペダル操作による車速制御の解除判断処理をブレーキアクチュエータ122で行う構成としたことである。これにより、既存の構成を利用して容易に実施することができる。
【0089】
走行制御装置102のスイッチ114は、ブレーキアクチュエータ122に接続されており、ON・OFFの信号を出力する。ブレーキアクチュエータ122は、スイッチ114の信号に基づいて車速制御の解除判断処理を行う車速制御解除判断手段を備えており、その判断結果を車速制御解除信号Bとして車速制御部132に出力する。車速制御部132では、ブレーキアクチュエータ122の車速制御解除判断手段から受信した車速制御解除信号Bに基づいて減速度指令値Aを算出し、その減速度指令値Aをブレーキアクチュエータ122に出力する。
【0090】
次に、走行制御装置102における車速制御の解除処理について図12と図13を用いて説明する。
【0091】
図12は、車速制御部132における車速制御処理の内容を説明するフローチャート、図13は、ブレーキアクチュエータ122における車速制御解除判断処理の内容を説明するフローチャートである。
【0092】
車速制御部132では、図12に示すように、ブレーキアクチュエータ122から送信される車速制御解除信号BがONであるか否かが判断される。車速制御解除信号Bは、車速制御部132における車速制御を解除するか否かを示す信号であり、車速制御解除信号BがONである場合には、ステップS404に移行して、車速制御を解除すべく、減速度指令値Aを所定の減速無し指令値に設定する処理が行われる。
【0093】
そして、車速制御解除信号BがONでない場合、すなわち車速制御解除信号BがOFFである場合には、ステップS402に移行し、車速制御中であるか否かが判断される。そして、車速制御中である場合には(ステップS402でYES)、ステップS403に移行し、減速度指令値Aを演算する処理が行われ、車速制御中でない場合には(ステップS402でNO)、何もせずに終了する。
【0094】
ブレーキアクチュエータ122では、図13に示すように、ステップS411でスイッチ114の検出信号がONであるか否かが判断され、ONである場合には(ステップS411でYES)、ドライバーによりブレーキペダル112を踏み込むペダル操作が行われていると判断して、ステップS412以降に移行する。
【0095】
ステップS412では、ドライバーブレーキ操作信号をONにする処理がなされる。そして、ステップS413において、アクチュエータブレーキ液圧Paとドライバーブレーキ液圧Pdとを比較する処理が行われる。
【0096】
そして、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paよりも小さい(Pd<Pa)と判断された場合には(ステップS413でYES)、そのまま終了する。したがって、ブレーキアクチュエータ122では、車速制御部132で演算された減速度指令値Aに基づいてアクチュエータブレーキ液圧Paが発生され、ブレーキ141では、かかるアクチュエータブレーキ液圧Paに応じた制動力が発生される。
【0097】
一方、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上(Pd≧Pa)と判断された場合には(ステップS413でYES)、ステップS414に移行し、車速制御解除信号BをONにする処理が行われる。
【0098】
ステップS414で車速制御解除信号BがONにされると、車速制御部132では、減速度指令値Aが所定の減速無し指令値に設定される(ステップS401、S404を参照)。したがって、ブレーキアクチュエータ121からブレーキ141に供給されるアクチュエータブレーキ液圧Paは0とされるが、ブレーキ141には、マスタシリンダ111からのドライバーブレーキ液圧Pdが供給され、かかるドライバーブレーキ液圧Pdに応じた制動力が発生している。そして、ステップS415に移行し、ステップS415でドライバーブレーキ操作信号をOFFにする処理を行った後に、終了となる。
【0099】
また、ステップS411でスイッチ114の検出信号がONではないと判断された場合には(ステップS411でNO)、ステップS421に移行し、ドライバーブレーキ操作信号がONであるか否かが判断される。
【0100】
ここで、ドライバーブレーキ操作信号がOFFであると判断された場合には(ステップS421でNO)、ステップS422に移行し、車速制御解除信号BをOFFにする処理が行われる。ステップS422で車速制御解除信号がOFFにされると、車速制御部132では、車速制御中か否かが判断され、車速制御中の場合には減速度指令値Aが演算されてブレーキアクチュエータ122に出力される(ステップS402、S403を参照)。したがって、ブレーキアクチュエータ122において、車速制御中の場合は減速度指令値Aに基づいて車速制御が行われ、車速制御中でない場合は何も行われない。
【0101】
一方、ステップS421でスイッチ114の検出信号がONであると判断された場合には(ステップS421でYES)、ステップS423に移行し、ステップS423で車速制御解除信号BがONにされる。
【0102】
ステップS423で車速制御解除信号BがONにされると、車速制御部132では、減速度指令値Aが減速無しにされる(ステップS401、S404を参照)。したがって、ブレーキアクチュエータ122からブレーキ141に供給されるアクチュエータブレーキ液圧Paは0とされるが、ブレーキ141には、マスタシリンダ111からのドライバーブレーキ液圧Pdが供給され、かかるドライバーブレーキ液圧Pdに応じた制動力が発生される。そして、ステップS424に移行し、ステップS424でドライバーブレーキ操作信号をOFFにする処理を行った後に、終了となる。
【0103】
次に、図12、図13で説明した車速制御処理を実施することにより実現される動作の内容を図14に示すタイミングチャートにより説明する。
【0104】
図14(a)は、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えるまでブレーキペダル112が踏み込まれた場合を示し、図14(b)は、ブレーキペダル112の踏込量が少なく、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えない場合を示す。
【0105】
まず、図14(a)に示す場合について説明する。ここでは、車速制御部132により車速を減速させる制御が行われており、車速制御部132から出力される減速度指令値Aに基づいて、ブレーキアクチュエータ122でアクチュエータブレーキ液圧Paが発生されて、ブレーキ141に供給されている状態を前提とする。
【0106】
そして、時刻tbrkonのとき、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、ドライバーブレーキ操作信号がONにセットされる(ステップS411とS412を参照)。そして、ブレーキペダル112のペダルストロークにしたがって、マスタシリンダ111でドライバーブレーキ液圧Pdが発生される。
【0107】
ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ圧Paは比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さい間は(ステップS413でYES)、車速制御解除信号BがOFFであるので、車速制御部132で減速度指令値Aの演算が続行され、その減速度指令値Aがブレーキアクチュエータ122に出力される。ブレーキアクチュエータ122では、減速度指令値Aに応じたアクチュエータブレーキ液圧Paを発生させ、車速制御により車速を減速させる制御が継続される。
【0108】
そして、時刻tactoffのときに、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上になると(ステップS413でNO)、車速制御解除信号BがOFFからONになり、車速制御部132から所定の減速無し指令値が減速度指令値Aとして出力される(ステップS414を参照)。したがって、ブレーキアクチュエータ122は、減速度指令値Aにしたがってアクチュエータブレーキ液圧Paを減圧する。
【0109】
ブレーキ120に供給されるブレーキ液圧は、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paの大きい方となり、図14(a)のブレーキ液圧センサ値Poにおける時刻tactoffと時刻tbrkoffとの間に示すように、車速制御を解除してもブレーキ液圧が減圧されることはない。
【0110】
そして、時刻tbrkoffのときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、ブレーキペダル112のペダルストロークが0になると、ブレーキ液圧センサ値Poは0になり、車速制御解除信号はOFFになる(ステップS411、S421、S422を参照)。
【0111】
次に、図14(b)に示すように、ドライバーによるブレーキペダル112の踏み込み量が少ない場合について説明する。
【0112】
図14(a)と同じ前提状態から、時刻tbrkon2のときに、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、ドライバーブレーキ操作信号がOFFからONになり、ブレーキペダルストロークにしたがって、マスタシリンダ111でドライバーブレーキ液圧Pdが発生される。
【0113】
そして、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paとが比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さい間は(Pd<Pa)、車速制御部132で減速度指令値Aが演算され(ステップS401〜S403を参照)、その演算された減速度指令値Aに基づいてブレーキアクチュエータ121がアクチュエータブレーキ液圧Paを発生させ、車速を減速させる制御が継続される。
【0114】
そして、時刻tbrkoff2のときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、スイッチ114がOFFすると、ブレーキアクチュエータ122で車速制御解除信号BがONとされ(ステップS423を参照)、かかる車速制御解除信号Bを受け取った車速制御部132で減速度指令値Aが所定の減速無し指令値に変更される(ステップS404を参照)。そして、かかる減速度指令値Aがブレーキアクチュエータ122に出力され、ブレーキアクチュエータ122でブレーキ液圧を減圧する処理が行われる。
【0115】
上記の車速制御解除処理によれば、ドライバーがブレーキペダル150から足を離すタイミングと車速制御を解除するタイミングが同時になるため、ドライバーに減速度の抜けを感じさせることなく、車速制御を解除できる。
【0116】
前述の実施例1は、車速制御部132でドライバーがブレーキペダル112を踏み込んで発生するドライバーブレーキ液圧Pdが、ブレーキアクチュエータ122によって発生しているアクチュエータブレーキ液圧Paを超えることを判断する構成で、ドライバーがブレーキペダル112を踏み込んで車速制御解除処理を開始するときから、ドライバーがブレーキペダルを踏み込んで発生するドライバーブレーキ液圧Pdが、ブレーキアクチュエータによって発生しているアクチュエータブレーキ液圧Paを超えるまで、ブレーキ制御を継続することにより、減速度の抜けを感じることなく制御を解除する制御方法である。
【0117】
これに対して、本実施例では、ブレーキ制御を継続することにより、ドライバーに減速度の抜けを感じさせることなく車速制御を解除することができ、ブレーキアクチュエータ122からドライバーがブレーキペダル112を踏み込んで発生するドライバーブレーキ液圧Pdが、ブレーキアクチュエータ122によって発生しているアクチュエータブレーキ液圧Paを超えたことを判断した結果を渡す構成にしたことにより、ブレーキアクチュエータ122を別の方式に変更した場合にも、車速制御部132の処理を変更することなく、対応することができる。
【0118】
[実施例5]
次に、実施例5について図15〜図17を用いて以下に説明する。
図15は、実施例5における走行制御装置の構成を説明する図である。なお、実施例4と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0119】
本実施例において特徴的なことは、ブレーキペダル112のペダル操作に応じてブレーキアクチュエータ123でドライバーブレーキ液圧Pdを発生させる構成としたことである。
【0120】
走行制御装置103は、図11に示す実施例4の構成に対して、ブレーキブースタ113、マスタシリンダ111、マスタシリンダ圧センサ115、ブレーキ液圧センサ116が無い構成になっており、操作量検出手段151を備えている。
【0121】
操作量検出手段151は、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作量を検出するストロークセンサである。このストロークセンサは、圧力センサ、角度センサ、入力装置の位置センサ、可変抵抗等、ドライバーの操作量が検出できる装置であれば良い。
【0122】
ブレーキペダル112の操作量信号Dは、操作量検出手段151により電気信号に変換され、ブレーキアクチュエータ123に送信される。なお、操作量検出手段151は、電気信号に変換するだけではなく、空気圧、油圧等、操作量をブレーキアクチュエータ123が検出できる信号であれば良い。
【0123】
次に、図16を用いてブレーキアクチュエータ123の構成について説明する。
図16は、本実施例におけるブレーキアクチュエータの機能構成を示す図である。
ブレーキアクチュエータ123は、操作量検出手段151によって検出されたドライバーのペダル操作量信号Dを、操作量→制御量変換処理手段161によってドライバー制御量C1に変換する。そして、車速制御部132から入力された減速度指令値Aを、減速度→制御量変換処理手段162によって、車速制御部制御量C2に変換する。ドライバー制御量C1と車速制御部制御量C2は、ブレーキ液圧やフォース、トルク、電流、電圧等ブレーキを駆動するための物理量であれば良い。ドライバー制御量C1と車速制御部制御量C2は、制御量調停処理手段163によっていずれか一方が選択され、最終目標値C3として駆動処理手段164に出力される。
【0124】
制御量調停処理手段163は、後述する条件が成立した場合に、車速制御解除信号Bを車速制御部132に送信する。車速制御部132は、車速制御解除信号Bをブレーキアクチュエータ123から受け取った場合に、減速度指令値Aを所定の減速無し指令値にする。
これにより、車速制御解除信号Bが出力されている場合にドライバー制御量C1が選択され、車速制御解除信号Bが出力されていない場合に車速制御部制御量C2が選択されることになる。駆動処理手段164は、最終目標値C3にブレーキ141からフィードバックされる状態量C5が一致するように、ブレーキ141の制御量C4を制御する処理が行われる。
【0125】
次に、図17を用いて制御量調停処理手段163における処理について説明する。
まず、ステップS501でスイッチ114の信号かONであるか否かが判断され、ONである場合には(ステップS501でYES)、ドライバーによりブレーキペダル112を踏み込むペダル操作が行われていると判断して、ステップS502以降に移行する。
【0126】
ステップS502では、ドライバーブレーキ操作信号をONにする処理がなされる。そして、ステップS503において、車速制御部制御量C2とドライバー制御量C1とを比較する処理が行われる。
【0127】
そして、ドライバー制御量C1が車速制御部制御量C2よりも小さいと判断された場合には(ステップS503でYES)、そのまま終了する。したがって、ブレーキアクチュエータ123では、車速制御部制御量C2が最終目標値C3として選択され、その最終目標値C3に状態量C5が一致するように、ブレーキ141の制御量C4を制御する処理が行われる。したがって、ブレーキ141では、車速制御部132からの減速度指令値Aに応じた制動力が発生される。
【0128】
一方、ドライバー制御量C1が車速制御部制御量C2以上(C1≧C2)と判断された場合には(ステップS503でNO)、ステップS504に移行し、車速制御解除信号BをONにする処理が行われる。
【0129】
ステップS504で車速制御解除信号BがONにされると、車速制御部132では、減速度指令値Aが所定の減速無し指令値に設定される(図12のステップS404を参照)。そして、ステップS505に移行し、ステップS415でドライバーブレーキ操作信号をOFFにする処理を行った後に、終了となる。
【0130】
また、ステップS501でスイッチ114の検出信号がONではないと判断された場合には(ステップS501でNO)、ステップS511に移行し、ドライバーブレーキ操作信号がONであるか否かが判断される。
【0131】
ここで、ドライバーブレーキ操作信号がOFFであると判断された場合には(ステップS511でNO)、ステップS512に移行し、車速制御解除信号BをOFFにする処理が行われる。
【0132】
ステップS512で車速制御解除信号BがOFFにされると、車速制御部132では、車速制御中か否かが判断され、車速制御中の場合には減速度指令値Aが演算されてブレーキアクチュエータ123に出力される。したがって、ブレーキアクチュエータ123において、車速制御中の場合は減速度指令値Aに基づいて車速制御が行われ、車速制御でない場合は何も行われない。
【0133】
一方、ステップS511でドライバーブレーキ操作信号がONであると判断された場合には(ステップS511でYES)、ステップS513に移行し、ステップS513で車速制御解除信号BがONにされる。
【0134】
ステップS513で車速制御解除信号BがONにされると、車速制御部132では、減速度指令値Aが所定の減速無し指令値に設定される(図12のステップS404を参照)。そして、ステップS514に移行し、ステップS514でドライバーブレーキ操作信号をOFFにする処理を行った後に、終了となる。
【0135】
上記構成によれば、車速制御部132から減速度指令値Aが出力されている間に、ドライバーによるブレーキ操作が行われた場合に、ドライバーのペダル操作量が車速制御部132の減速度指令値Aを上回るまでは、車速制御部132の制御によるブレーキ制御が継続されるので、ドライバーがブレーキペダル112のペダル操作を行ったときに、瞬間的に減速度が弱くなるという現象を防ぐことができる。
【0136】
なお、上述の実施例1〜5では、減速度指令値Aによってブレーキアクチュエータ121、122、123の制御を行う場合について説明したが、ブレーキ液圧指令値を用いて制御を行ってもよい。また、スイッチ114がONになったときに、ブザー(図示しない)を吹鳴する、あるいは車速制御部131、132の作動を点灯表示する作動表示ランプ(図示しない)を消灯することのいずれか、あるいはその両方を実行し、ドライバーに走行制御を解除したことを報知してもよい。
【0137】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施の形態では、ブレーキ141にブレーキ液圧を供給する手段として、マスタシリンダ111とブレーキアクチュエータの場合を例に説明したが、走行用モータの回生ブレーキを用いてもよい。
【符号の説明】
【0138】
101、102、103 走行制御装置
111 マスタシリンダ
121、122、123 ブレーキアクチュエータ
131、132 車速制御部
141 ブレーキ
151 操作量検出手段
161 操作量→制御量変換処理手段
162 減速度→制御量変換処理手段
163 制御量調停処理手段
164 駆動処理手段
Pa アクチュエータブレーキ液圧(制御制動力)
Pd ドライバーブレーキ液圧(操作制動力)
A 減速度指令値
B 車速制御解除信号
C1 ドライバー制御量
C2 車速制御部制御量
C3 最終目標値
D ペダル操作量信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の車速となるように車速制御を行い、その車速制御をドライバーによるブレーキペダルのペダル操作によって解除する走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行車の車速に合わせて自車の車速を制御するアダプティブクルーズコントロールシステム等の走行制御装置では、ドライバーによってブレーキペダルのペダル操作が行われると、ドライバーの操作を優先して車速制御を解除するように構成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−161149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、走行制御装置によって車速を減速させる制御が行われている状態でドライバーによるブレーキペダルのペダル操作がなされた場合に、走行制御装置の制御指令値に基づいて発生される制御制動力とブレーキペダルのペダル操作により発生される操作制動力との間に差があると、車速制御の解除終了により制御制動力から操作性動力に切り替わる際に制動力のつながりに段差が生じて、ドライバーに違和感を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車速制御中にドライバーによりブレーキペダルのペダル操作が行われたときに、ドライバーに違和感を与えることなく、車速制御を解除することができる走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の走行制御装置は、車速制御手段により車速を減速させる制御中にブレーキペダルのペダル操作が行われた場合に、ペダル操作による操作制動力が車速制御手段による制御制動力よりも小さいときは、車速制御手段により車速を減速させる制御を継続させ、操作制動力が制御制動力以上のときは車速制御手段による車速制御を解除する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車速制御手段により車速を減速させる制御が行われている状態でドライバーによりブレーキペダルのペダル操作が行われた場合に、ペダル操作による操作制動力と車速制御手段による制御制動力とを比較して、操作制動力が制御制動力を上回るまで、車速制御手段により車速を減速させる制御を継続させるので、車速制御の解除時に制動力のつながりに段差が生じるのを防ぐことができ、ドライバーに違和感を与えることなく、車速制御を解除終了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の走行制御装置の構成を示す図。
【図2】実施例1における車速制御処理を説明するフローチャート。
【図3】実施例1における制御解除時のブレーキ液圧制御タイミングチャート。
【図4】実施例1におけるブレーキアクチュエータの構成を説明する油圧回路図。
【図5】実施例1におけるブレーキアクチュエータの動作を説明する図。
【図6】実施例1におけるポンプモータの制御ブロック図。
【図7】実施例2における車速制御処理を説明するフローチャート。
【図8】実施例2における制御解除時のブレーキ液圧制御タイミングチャート。
【図9】実施例3における車速制御処理を説明するフローチャート。
【図10】実施例3における制御解除時のブレーキ液圧制御タイミングチャート。
【図11】実施例4における走行制御装置の構成を示す図。
【図12】実施例4における減速度指令値の算出処理を説明するフローチャート。
【図13】実施例4における車速制御処理を説明するフローチャート。
【図14】実施例4における制御解除時のブレーキ液圧制御タイミングチャート。
【図15】実施例5における走行制御装置の構成を示す図。
【図16】実施例5におけるブレーキアクチュエータの機能構成を示す図。
【図17】実施例5における車速制御処理を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施例1]
図1は、実施例1における走行制御装置の構成を説明する図である。
走行制御装置101は、自動車などの車両に搭載されて、先行車に合わせて自車の車速を制御する車速制御を行い、その車速制御を、ドライバーによるブレーキペダルのペダル操作によって解除する構成を有する。
【0010】
走行制御装置101の具体的な構成としては、図1に示すように、減速時には所定の減速度が得られるように車両を減速させる減速度指令値Aを演算する車速制御部131と、車速制御部131から出力される減速度指令値Aに基づいてブレーキ液圧を発生させるブレーキアクチュエータ(制御制動力発生手段)121と、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作によりブレーキペダル112の踏込量に応じたブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ(操作制動力発生手段)111と、ブレーキアクチュエータ121またはマスタシリンダ111から液圧路を介してブレーキ液圧の供給を受けてブレーキ液圧に応じた制動力を発生させるブレーキ141を有している。
【0011】
マスタシリンダ111は、マスタピストン(図示せず)を内蔵しており、マスタピストンのストロークに応じたブレーキ液圧(操作制動力)を発生させる。マスタシリンダ111とブレーキペダル112との間には、ブレーキペダル112の踏力を増大させるブレーキブースタ(倍力装置)113が介在されている。ブレーキブースタ113は、ブレーキペダル112に入力軸が連結され、ドライバーがブレーキペダル112を踏み込むと出力軸がマスタシリンダ111のマスタピストンを移動させる構成を有している。ブレーキブースタ113には、既知のものを用いることができ、負圧式のものでもよく、また、電動式のものでもよい。
【0012】
ブレーキアクチュエータ121は、マスタシリンダ111とブレーキ141との間に介在されており、車速制御部131から出力される減速度指令値Aに基づきブレーキ液圧(制御制動力)を、各輪のバルブ及びポンプ、及びポンプモータによって発生させるように構成されている。
【0013】
マスタシリンダ111、あるいはブレーキアクチュエータ121には、マスタシリンダ111で発生されるブレーキ液圧を検出するためのマスタシリンダ圧センサ115が設けられている。また、ブレーキアクチュエータ121とブレーキ141との間の液圧路には、マスタシリンダ111及びブレーキアクチュエータ121からブレーキ141に供給されるブレーキ液圧を検出するためのブレーキ液圧センサ116が設けられている。
【0014】
上述のブレーキアクチュエータ121とマスタシリンダ圧センサ115とブレーキ液圧センサ116は、例えば、VDC、TCS、ABSなどの呼称で知られる他の車両制御システムで用いられるものと兼用してもよい。
【0015】
ブレーキペダル112の近傍位置には、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作の有無を検出するスイッチ(ペダル操作検出手段)114が設けられている。スイッチ114は、ブレーキペダル112が踏み込まれるとONになり、ブレーキペダル112から足を離すとOFFになる。スイッチ114は、車速制御部131に電気的に接続されており、ON・OFFの信号を出力する。
【0016】
車速制御部131は、車速制御中に減速を行うためにブレーキアクチュエータ121に減速度指令値Aを出力し、ブレーキアクチュエータ121が所定のブレーキ液圧を発生させているときに、ドライバーによるブレーキペダル112の踏み込みを検知するスイッチ114のON信号を受信すると、車速制御の解除処理を行う。
【0017】
次に、図2を用いて走行制御装置101における車速制御処理について説明する。
まず、ステップS101でスイッチ114の信号がONであるか否かが判断され、ONである場合には(ステップS101でYES)、ドライバーによりブレーキペダル112を踏み込むペダル操作が行われていると判断して、車速制御解除処理を実行すべく、ステップS102以降に移行する。なお、このステップS102以降の処理によって車速制御解除手段が構成される。
【0018】
ステップS102では、ブレーキペダル112を踏み込むペダル操作が行われたか否かを示す車速制御解除フラグをONにする処理がなされる。そして、ステップS103において、減速度指令値Aに基づいてブレーキアクチュエータ121で発生されるアクチュエータブレーキ液圧(制御制動力)Paと、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作によってマスタシリンダ111で発生されるドライバーブレーキ液圧(操作制動力)Pdを比較する処理が行われる。
【0019】
ここで、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paよりも小さい(Pd<Pa)と判断された場合には(ステップS103でYES)、車速を減速させる制御を継続させるべく、ステップS104に移行し、車速制御部131で車速制御中と同じ方法で減速度指令値Aを演算する処理がなされる。したがって、引き続き、ブレーキアクチュエータ121では、ステップS104で演算された減速度指令値Aに基づいてアクチュエータブレーキ液圧Paが発生され、ブレーキ141では、かかるアクチュエータブレーキ液圧Paに応じた制動力が発生され、車速を減速させる制御が継続される。
【0020】
一方、ステップS103でドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上(Pd≧Pa)であると判断された場合は(ステップS103でNO)、車速制御を解除すべく、ステップS105に移行する。ステップS105では、車速制御部131から出力される減速度指令値Aを減速無しにする処理がなされる。したがって、ブレーキアクチュエータ121からブレーキ141に供給されるアクチュエータブレーキ液圧Paは0とされ、車速を減速させる制御が解除される。かかる状態で車速を減速させる制御が解除されても、ブレーキ141には、マスタシリンダ111からのドライバーブレーキ液圧Pdが供給され、かかるドライバーブレーキ液圧Pdに応じた操作制動力が発生している。すなわち、ブレーキ液圧センサ116のブレーキ圧センサ値Poは、ドライバーがブレーキペダル112を踏み込んだことにより発生するブレーキ圧となる。そして、ステップS106に移行し、ステップS106で車速制御解除フラグをOFFにする処理を行った後に、終了となる。
【0021】
また、ステップS101でスイッチ114の信号がONではないと判断された場合には(ステップS101でNO)、ブレーキペダル112のペダル操作がなされていない状態であるとしてステップS111に移行する。
【0022】
ステップS111では、車速制御解除フラグがONであるか否かが判断され、車速制御解除フラグがOFFであると判断された場合には(ステップS111でNO)、ブレーキペダル112が全く操作されていない状態であると判断して、ステップS112以降に移行する。
【0023】
そして、ステップS112において車速制御中であるか否かが判断され、車速制御中であると判断された場合には(ステップS112でYES)、車速制御を続行すべく、ステップS113に移行し、ステップS113で減速度指令値Aを演算する処理がなされる(車速制御手段)。したがって、ブレーキアクチュエータ121では、ステップS113で演算された減速度指令値Aに基づいてアクチュエータブレーキ液圧Paが発生され、ブレーキ141では、かかるアクチュエータブレーキ液圧Paに応じた制動力が発生される。また、ステップS112で車速制御中でないと判断された場合には(ステップS112でNO)、他の処理を行わず、そのまま終了となる。
【0024】
そして、ステップS111で車速制御解除フラグがONであると判断された場合には(ステップS111でYES)、ブレーキペダル112が一旦操作された後に足が離された状態であると判断して、車速制御解除処理を継続すべく、ステップS114以降に移行する。
【0025】
ステップS114では、減速度指令値Aが減速無しになっているか否かが判断され、減速無しではない場合(ステップS114でNO)、すなわち、まだ、減速途中である場合には、ステップS115で車速制御解除時の減速度指令値演算処理が行われ、減速度指令値Aを徐々に所定の減速無し指令値に変化させる処理が行われる。したがって、ブレーキアクチュエータ121では、アクチュエータブレーキ液圧Paが徐々に減圧され、ブレーキ141では、かかるアクチュエータブレーキ液圧Paの変化に応じて制動力が徐々に弱められる。
【0026】
一方、ステップS114で減速度指令値Aが減速なしであると判断された場合には(ステップS114でYES)、ステップS116に移行し、ステップS116で車速制御解除フラグをOFFにする処理を行った後に、終了となる。したがって、ブレーキアクチュエータ121からブレーキ141に供給されるアクチュエータブレーキ液圧Paは0とされ、ブレーキ141には、マスタシリンダ111からのドライバーブレーキ液圧Pdが供給され、かかるドライバーブレーキ液圧Pdに応じた制動力が発生される。
【0027】
次に、上記図2で説明した車速制御処理を実施することにより実現される動作の内容を図3に示すタイミングチャートにより説明する。
【0028】
図3(a)は、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えるまでブレーキペダル112が踏み込まれた場合を示し、図3(b)は、ブレーキペダル112の踏込量が少なく、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えなかった場合を示す。
【0029】
まず、図3(a)に示される場合について説明する。ここでは、車速制御部131により車速を減速させる制御が行われており、車速制御部131から出力される減速度指令値Aに基づいて、ブレーキアクチュエータ121でアクチュエータブレーキ液圧Paが発生されて、ブレーキ141に供給されている状態を前提とする。
【0030】
そして、時刻tbrkonのときに、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、車速制御解除フラグがOFFからONに切り替わる(ステップS101とステップS102を参照)。そして、ブレーキペダル112のペダルストロークにしたがって、マスタシリンダ111でドライバーブレーキ液圧Pdが発生される。
【0031】
ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paは比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paより小さい間は(Pd<Pa)、車速制御部131で減速度指令値Aが演算される(図2のステップS103、S104を参照)。そして、その演算された減速度指令値Aに基づいてブレーキアクチュエータ121がアクチュエータブレーキ液圧Paを発生させ、車速制御部131により車速を減速させる制御が継続される。
【0032】
そして、時刻tactoffのときに、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上になると、車速制御部131から所定の減速無し指令値が減速度指令値Aとして出力され、ブレーキアクチュエータ121は、その減速度指令値Aにしたがってアクチュエータブレーキ液圧Paを減圧する(図2のステップS105を参照)。
【0033】
ブレーキ141に供給されるブレーキ液圧は、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paの大きい方となり、図3(a)のブレーキ液圧センサ値Poにおける時刻tactoffと時刻tbrkoffとの間に示されるように、車速制御を解除してもブレーキ液圧が減圧されることはない。
【0034】
そして、時刻tbrkoffのときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、ブレーキペダルストロークが0になるとともにブレーキ液圧センサ値Poは0になる(図2のステップS101、S111、S112を参照)。
【0035】
次に、図3(b)に示すように、ドライバーによるブレーキペダル112の踏み込み量が少ない場合について説明する。
【0036】
図3(a)と同じ前提状態から、時刻tbrkon2のときに、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、車速制御解除フラグがOFFからONに切り替わる(ステップS101、S102を参照)。そして、ブレーキペダル112のペダルストロークにしたがって、マスタシリンダ111でドライバーブレーキ液圧Pdが発生される。
【0037】
そして、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paとが比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paより小さい間は(Pd<Pa)、車速制御部131で減速度指令値Aが演算され(ステップS103、S104を参照)、その演算された減速度指令値Aに基づいてブレーキアクチュエータ121がアクチュエータブレーキ液圧Paを発生させ、車速制御部131により車速を減速させる制御が継続される。
【0038】
そして、時刻tbrkoff2のときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、スイッチ114がONからOFFに切り替わると、車速制御解除フラグはONのままであるので、減速度指令値Aを所定の傾きで、所定の減速無し指令値に変化させる処理がなされる(ステップS111、S114、S115を参照)。
【0039】
ブレーキ141に供給されるブレーキ液圧は、ブレーキ液圧センサ値Poとして示されるように、ブレーキペダル112から足を離すことによって、漸次減少される。そして、時刻tactoff2のときに、減速度指令値Aが所定の減速無し指令値になると、制御解除フラグをONからOFFに変更する(ステップS116を参照)。
【0040】
次に、図4〜図6を用いて、減速度指令値Aに基づいて作動するブレーキアクチュエータ121の動作について説明する。
【0041】
図4は、ブレーキアクチュエータの構成を説明する油圧回路図である。
ブレーキアクチュエータ121は、図4に示すように、ブレーキ液圧駆動部401を有している。ブレーキ液圧駆動部401は、ポンプモータ411により駆動されるプランジャポンプ412と、プランジャポンプ412から吐き出されたブレーキ液等の圧力流体(以下、圧油という)のブレーキ141への流入方向を制御する複数のバルブ420,430,440,450から構成されている。
【0042】
ブレーキ液圧駆動部401の油圧回路は、2系統からなり、これらはX配管に対応している。したがって、プライマリ系統には、FL輪とRR輪のブレーキ141が接続されており、セカンダリ系統にはFR輪とRL輪のブレーキ141が接続されている。各バルブは、バルブG/V_OUT420とバルブW/C_IN440がノーマルオープン(N/O)の構成を有しており、バルブG/V_IN430とバルブW/C_OUT450がノーマルクローズ(N/C)の構成を有している。
【0043】
図5は、ブレーキ液圧駆動部の動作を説明する図である。
ブレーキ液圧駆動部401は、制動力を発生させる場合、バルブG/V_IN430をON(開状態)、バルブG/V_OUT420をON(閉状態・液圧に応じて保持電流を制御)、バルブW/C_IN440をOFF(開状態)、バルブW/C_OUT450をOFF(閉状態)とし、ポンプモータ411をON(モーター回転数により増圧勾配を制御)することにより、マスタシリンダ111内の圧油をブレーキキャリパ500に流入させ、実ブレーキ液圧の増圧を行う。ポンプモータ411は、車速制御部131から出力される減速度指令値Aにしたがって制御される。これにより、ブレーキ141の制動動作による車両の減速度が可変設定される。
【0044】
図6は、ポンプモータ411のサーボ制御系を示している。ポンプモータ411のサーボコントローラ650は、減速度指令値Aを入力Xoとし、車両の実減速度を入力Xとして、これらの偏差を算出する演算器660と、ゲイン設定器610と、ポンプモータ駆動回路630とを有する。
【0045】
サーボコントローラ650は、減速度指令値Aである入力Xoと、車両の実減速度である入力Xとの偏差(Xo−X)に、ゲイン設定器610でゲインKを乗ずることにより、ポンプモータ411に印加する電圧波形のデュティ比であるモータ駆動Dutyを求め、ポンプモータ駆動回路630に入力し、ポンプモータ駆動回路630でモータ駆動Dutyに従った電圧波形θをポンプモータ411に与える。以上に示したブレーキアクチュエータ121により、減速度指令値Aと実減速度とを一致させるブレーキ制御を行う。
【0046】
上記した本実施例の走行制御装置101によれば、車速制御部131で車速を減速させる車速制御中に、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われた場合に、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作によって発生されるドライバーブレーキ液圧Pdと、車速制御部131からの減速度指令値Aに基づいて発生されるアクチュエータブレーキ液圧Paとの比較が行われる。
【0047】
そして、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paよりも小さいときは、車速制御部131により車速を減速させる車速制御を継続させ、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上のときは、車速制御部131による車速制御を終了させる。
【0048】
したがって、車速制御による減速中にブレーキペダル112のペダル操作が行われても、ブレーキペダル112の踏込量が小さい等の理由により、ブレーキペダル112による操作制動力がブレーキアクチュエータ121による制御制動力よりも小さい間は、車速制御部131により車速を減速させる車速制御が継続して行われて、制御制動力により減速が行われる。
【0049】
そして、ブレーキペダル112の操作制動力がブレーキアクチュエータ121の制御制動力と一致した時点で車速制御部131による車速制御が終了され、操作制動力による減速が行われることとなる。したがって、制動力のつながりに段差が生じるのを防ぐことができ、ドライバーに違和感を与えることなく、車速制御を終了させることができる。
【0050】
例えば、車速制御部から出力される減速度指令値に基づいてマスタシリンダを駆動させるアクティブブレーキブースタのようにブレーキ液圧の変化に応じてブレーキペダルのペダル位置が移動する構成を有するものとは異なり、本実施例のように、各輪毎のバルブ、ポンプ、ポンプモータで構成されるブレーキアクチュエータ121の場合には、ブレーキ液圧を変化させてもブレーキペダルのペダル位置は移動しない。
【0051】
したがって、このようなブレーキアクチュエータを有する従来の走行制御装置では、ブレーキペダルが僅かに踏み込まれただけでも車速制御が解除されてしまうので、ブレーキアクチュエータによる大きな制御制動力が、ブレーキペダルの踏力量に基づく小さな操作制動力に切り替わることとなり、ドライバーに対して、減速度の抜けを感じさせるおそれがあった。
【0052】
このような課題に対して、本発明の走行制御装置101は、車速制御部131により車速を減速させる制御中にブレーキペダル112のペダル操作が行われても、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paよりも小さいときは、車速制御部131により車速を減速させる車速制御を継続させ、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paに一致した時点で車速制御部131による車速制御を解除するので、ドライバーに減速度の抜けを感じさせるのを防ぐことができる。
【0053】
そして、本発明の走行制御装置101は、車速制御中にブレーキペダル112のペダル操作が行われたが、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paに到達しなかった場合には、アクチュエータブレーキ液圧Paが漸次減少するように減速度指令値Aを変化させて車速制御を解除するので、ドライバーに違和感を与えることなく、車速制御を解除することができる。
【0054】
本実施例によれば、ドライバーがブレーキペダル112を踏み込んで車速制御解除処理を開始したときから、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えるときまで、車速を減速させる制御を継続するので、車速制御の解除によってアクチュエータブレーキ液圧Paからドライバーブレーキ液圧Pdに切り替わるときに、ドライバーに減速度の抜けという違和感を与えることなく、車速制御を解除することができる。
【0055】
[実施例2]
次に、実施例2について図7、図8を用いて以下に説明する。
図7は、実施例2における車速制御解除処理を説明するフローチャートである。
本実施例において特徴的なことは、実施例1と同様の構成において、車速制御中に、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作が行われて、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さい場合に、車速制御部131の減速度指令値Aを保持する処理を行う構成としたことである。
【0056】
上述の実施例1では、かかる場合に、車速制御部131により減速度指令値Aを演算して、その演算した減速度指令値Aに基づいて車速制御が行われるが(図2のステップS104を参照)、本実施例では、図7のステップS204に示されるように、減速度指令値Aをペダル操作が行われる直前の値に保持する処理が行われる。
【0057】
次に、上記図7で説明した車速制御処理を実施することにより実現される動作の内容を図8に示すタイミングチャートにより説明する。
【0058】
図8(a)は、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えるまでブレーキペダル112が踏み込まれた場合を示し、図8(b)は、ブレーキペダル112の踏込量が少なく、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えない場合を示す。
【0059】
まず、図8(a)に示される場合について説明する。実施例1と同様の前提条件で、時刻tbrkonのとき、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、車速制御フラグがOFFからONに切り替えられ、ブレーキペダルストロークにしたがって、マスタシリンダ111でドライバーブレーキ液圧Pdが発生される。
【0060】
そして、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ圧Paとが比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さい間は、減速度指令値Aを、車速制御フラグがOFFからONに切り替えられる直前の値、すなわちペダル操作が行われる直前の値に保持する処理が行われる。したがって、ブレーキアクチュエータ121からは、一定のアクチュエータブレーキ液圧Paが出力され、車速制御部131により車速を減速させる制御が継続される。
【0061】
そして、時刻tactoffのときに、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上になると、車速制御部131から所定の減速無し指令値が減速度指令値Aとして出力され、ブレーキアクチュエータ121は、減速度指令値Aにしたがってアクチュエータブレーキ液圧Paを減圧する。
【0062】
ブレーキ141に供給されるブレーキ液圧は、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paの大きい方となり、図8(a)のブレーキ液圧センサ値Poにおける時刻tactoffと時刻tbrkonとの間に示されるように、車速制御を解除した後でもブレーキ液圧が減圧されることはない。そして、時刻tbrkoffのときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、ブレーキペダルストロークが0になるとともにブレーキ液圧センサ値Poは0になる。
【0063】
次に、図8(b)に示すように、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル踏み込み量が少ない場合について説明する。
【0064】
図8(a)と同じ前提条件から、時刻tbrkon2のときに、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、車速制御解除フラグがOFFからONに切り替わる。そして、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paとが比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paより小さい間は、減速度指令値Aを、車速制御解除フラグがOFFからONに切り替えられる直前の値、すなわちペダル操作が行われる直前の値に保持する処理が行われる。したがって、ブレーキアクチュエータ121からは、一定のアクチュエータブレーキ液圧Paが出力され、車速制御部131により車速を減速させる制御が継続される。
【0065】
そして、時刻tbrkoff2のときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、スイッチ114がONからOFFに切り替わると、車速制御解除フラグはONのままであるので、減速度指令値Aを所定の傾きで所定の減速無し指令値に変化させる処理がなされる。
【0066】
ブレーキ141に供給されるブレーキ液圧は、ブレーキ液圧センサ値Poとして示されるように、ブレーキペダル112から足を離すことによって、漸次減少される。そして、時刻tactoff2のときに、減速度指令値Aが所定の減速無し指令値になると、制御解除フラグがONからOFFに変更される。
【0067】
本実施例によれば、ドライバーがブレーキペダル112を踏み込んだ後も、ブレーキペダルを踏み込む直前の減速度指令値Aを保持してブレーキアクチュエータ121に供給するので、車速制御の解除によってアクチュエータブレーキ液圧Paからドライバーブレーキ液圧Pdに切り替わるときに、減速度の抜け感が発生することを抑制することができる。また、ブレーキペダルを踏み込む直前の減速度指令値Aを保持することによって、ドライバーに対して制動力の不足を感じさせることができ、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル調整を促すことができる。
【0068】
[実施例3]
次に、実施例3について図9、図10を用いて以下に説明する。
図9は、実施例3における減速度指令値算出処理の内容を示すフローチャートである。実施例2と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施例において特徴的なことは、実施例2と同様の構成において、車速制御中に、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作が行われて、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さい場合に、ペダル操作を開始してから経過時間が経過するまでは減速度指令値Aを保持し、所定時間経過後にアクチュエータブレーキ液圧Paが漸次減少するように減速度指令値Aを変化させる処理を行う構成としたことである。
【0070】
ステップS301でスイッチ114の信号がONであると判断されると、ステップS302でペダル操作が行われてからの経過時間(スイッチ114のON時間)を計測するためのカウンタインクリメント処理が行われる。また、ステップS301でスイッチ114の信号がOFFであると判断されると、ステップS311でカウントをクリアするカウンタクリア処理が行われる。
【0071】
ステップS302でカウンタインクリメント処理が行われると、ステップS303で、車速制御解除フラグをONにする処理が行われ、ステップS304でアクチュエータブレーキ液圧Paとドライバーブレーキ液圧Pdを比較する処理が行われる。
【0072】
ここで、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さいと判断された場合に(ステップS304でYES)、ステップS305で上記経過時間と予め設定された所定時間とを比較して、経過時間が所定時間よりも長いか否かを判断する処理が行われる。
【0073】
そして、経過時間が所定時間よりも短い場合には(ステップS305でNO)、所定時間を経過していないと判断して、ステップS307に移行し、ステップS307で減速度指令値保持処理が行われる。ステップS307の減速度指令値保持処理では、減速度指令値Aを、車速制御フラグがOFFからONに切り替えられる直前の値、すなわちペダル操作が行われる直前の値に保持する処理が行われる。
【0074】
一方、経過時間が所定時間以上の場合には、所定時間を経過していると判断して、ステップS306に移行し、ステップS306でアクチュエータブレーキ液圧Paが漸次減少するように減速度指令値Aを変化させる処理(減速度指令値徐々抜き処理)が行われる。この減速度指令値徐々抜き処理により、ブレーキアクチュエータ122によるアクチュエータブレーキ液圧Paは漸次減少される。なお、上記したステップ以外の処理については、実施例2と同様であるのでその詳細な説明を省略する。
【0075】
次に、図9で説明した車速制御処理を実施することにより実現される動作の内容を図10に示すタイミングチャートにより説明する。
【0076】
図10(a)は、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えるまでブレーキペダル112が踏み込まれた場合を示し、図10(b)は、ブレーキペダル112の踏込量が少なく、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えない場合を示す。
【0077】
まず、図10(a)に示す場合について説明する。実施例1と同様の前提条件で、時刻tbrkonのとき、スイッチ114によってドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、カウンタインクリメント処理が行われる。そして、車速制御フラグがOFFからONに切り替えられ、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ圧Paとが比較される。
【0078】
時刻tbrkonから時刻tactkeepまでは、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さく、経過時間が所定時間よりも短いので、減速度指令値Aを、車速制御フラグがOFFからONに切り替えられる直前の値、すなわちペダル操作が行われる直前の値に保持する処理が行われる。
【0079】
そして、時刻tactkeepのときに、経過時間が所定時間以上となり、減速度指令値Aを所定の減速無し指令値まで徐々に減少させる減速度指令値徐々抜き処理が開始される。そして、時刻tactoffのときに、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上になり、車速制御部131から所定の減速無し指令値が減速度指令値Aとして出力され(ステップS508を参照)、ブレーキアクチュエータ121は、減速度指令値Aにしたがってアクチュエータブレーキ液圧Paを減圧する。
【0080】
ブレーキ141に供給されるブレーキ液圧は、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paの大きい方となり、図10(a)のブレーキ液圧センサ値Poにおける時刻tactoffと時刻tbrkoffとの間に示されるように、車速制御を解除した後でもブレーキ液圧が減圧されることはない。そして、時刻tbrkoffのときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、ブレーキペダルストロークが0になるとともにブレーキ液圧センサ値Poは0になる。
【0081】
次に、図10(b)に示すように、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル踏み込み量が少ない場合について説明する。
【0082】
図10(a)と同じ前提条件から、時刻tbrkon2のときに、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、車速制御解除フラグがOFFからONに切り替わる。そして、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paとが比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paよりも小さい間は、減速度指令値Aを、車速制御解除フラグがOFFからONに切り替えられる直前の値、すなわちペダル操作が行われる直前の値に保持される。したがって、ブレーキアクチュエータ121からは、一定のアクチュエータブレーキ液圧Paが出力され、車速制御部131により車速を減速させる制御が継続される。
【0083】
そして、時刻tactkeep2のときに、経過時間が所定時間以上となり、減速度指令値Aを所定の減速無し指令値まで徐々に減少させる漸減処理が開始される。そして、減速度指令値Aの漸減により、アクチュエータブレーキ圧Paは漸次減少され、それに伴ってブレーキ液圧センサ値Poも漸次減少される。
【0084】
そして、時刻tbrkoff2のときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、スイッチ114がONからOFFに切り替わると、車速制御解除フラグはONのままであるので、減速度指令値Aを所定の傾きで、所定の減速無し指令値に変化させる処理がなされる。
【0085】
ブレーキ141に供給されるブレーキ液圧は、ブレーキ液圧センサ値Poとして示されるように、ブレーキペダル112から足を離すことによって、漸次減少される。そして、時刻tactoff2のときに、減速度指令値Aが所定の減速無し指令値になると、制御解除フラグをONからOFFに変更する。
【0086】
本実施例によれば、ドライバーがブレーキペダル112を踏み込んだ後も、ブレーキペダル112を踏み込む直前の減速度指令値Aを所定時間だけ保持し、その後、アクチュエータブレーキ液圧Paが徐々に減少するように減速度指令値Aを変化させるので、車速制御を解除するときに減速度の抜け感が発生することを抑制するとともに、制御制動力の減少に伴ってドライバーにブレーキペダル112の踏み増しを促し、ブレーキアクチュエータ121の動作終了を早め、ブレーキアクチュエータ121の負荷を軽減することができる。
【0087】
[実施例4]
次に、実施例4について図11〜図14を用いて以下に説明する。
図11は、実施例4における走行制御装置の構成を説明する図である。実施例1と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0088】
本実施例において特徴的なことは、ブレーキペダル112のペダル操作による車速制御の解除判断処理をブレーキアクチュエータ122で行う構成としたことである。これにより、既存の構成を利用して容易に実施することができる。
【0089】
走行制御装置102のスイッチ114は、ブレーキアクチュエータ122に接続されており、ON・OFFの信号を出力する。ブレーキアクチュエータ122は、スイッチ114の信号に基づいて車速制御の解除判断処理を行う車速制御解除判断手段を備えており、その判断結果を車速制御解除信号Bとして車速制御部132に出力する。車速制御部132では、ブレーキアクチュエータ122の車速制御解除判断手段から受信した車速制御解除信号Bに基づいて減速度指令値Aを算出し、その減速度指令値Aをブレーキアクチュエータ122に出力する。
【0090】
次に、走行制御装置102における車速制御の解除処理について図12と図13を用いて説明する。
【0091】
図12は、車速制御部132における車速制御処理の内容を説明するフローチャート、図13は、ブレーキアクチュエータ122における車速制御解除判断処理の内容を説明するフローチャートである。
【0092】
車速制御部132では、図12に示すように、ブレーキアクチュエータ122から送信される車速制御解除信号BがONであるか否かが判断される。車速制御解除信号Bは、車速制御部132における車速制御を解除するか否かを示す信号であり、車速制御解除信号BがONである場合には、ステップS404に移行して、車速制御を解除すべく、減速度指令値Aを所定の減速無し指令値に設定する処理が行われる。
【0093】
そして、車速制御解除信号BがONでない場合、すなわち車速制御解除信号BがOFFである場合には、ステップS402に移行し、車速制御中であるか否かが判断される。そして、車速制御中である場合には(ステップS402でYES)、ステップS403に移行し、減速度指令値Aを演算する処理が行われ、車速制御中でない場合には(ステップS402でNO)、何もせずに終了する。
【0094】
ブレーキアクチュエータ122では、図13に示すように、ステップS411でスイッチ114の検出信号がONであるか否かが判断され、ONである場合には(ステップS411でYES)、ドライバーによりブレーキペダル112を踏み込むペダル操作が行われていると判断して、ステップS412以降に移行する。
【0095】
ステップS412では、ドライバーブレーキ操作信号をONにする処理がなされる。そして、ステップS413において、アクチュエータブレーキ液圧Paとドライバーブレーキ液圧Pdとを比較する処理が行われる。
【0096】
そして、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paよりも小さい(Pd<Pa)と判断された場合には(ステップS413でYES)、そのまま終了する。したがって、ブレーキアクチュエータ122では、車速制御部132で演算された減速度指令値Aに基づいてアクチュエータブレーキ液圧Paが発生され、ブレーキ141では、かかるアクチュエータブレーキ液圧Paに応じた制動力が発生される。
【0097】
一方、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上(Pd≧Pa)と判断された場合には(ステップS413でYES)、ステップS414に移行し、車速制御解除信号BをONにする処理が行われる。
【0098】
ステップS414で車速制御解除信号BがONにされると、車速制御部132では、減速度指令値Aが所定の減速無し指令値に設定される(ステップS401、S404を参照)。したがって、ブレーキアクチュエータ121からブレーキ141に供給されるアクチュエータブレーキ液圧Paは0とされるが、ブレーキ141には、マスタシリンダ111からのドライバーブレーキ液圧Pdが供給され、かかるドライバーブレーキ液圧Pdに応じた制動力が発生している。そして、ステップS415に移行し、ステップS415でドライバーブレーキ操作信号をOFFにする処理を行った後に、終了となる。
【0099】
また、ステップS411でスイッチ114の検出信号がONではないと判断された場合には(ステップS411でNO)、ステップS421に移行し、ドライバーブレーキ操作信号がONであるか否かが判断される。
【0100】
ここで、ドライバーブレーキ操作信号がOFFであると判断された場合には(ステップS421でNO)、ステップS422に移行し、車速制御解除信号BをOFFにする処理が行われる。ステップS422で車速制御解除信号がOFFにされると、車速制御部132では、車速制御中か否かが判断され、車速制御中の場合には減速度指令値Aが演算されてブレーキアクチュエータ122に出力される(ステップS402、S403を参照)。したがって、ブレーキアクチュエータ122において、車速制御中の場合は減速度指令値Aに基づいて車速制御が行われ、車速制御中でない場合は何も行われない。
【0101】
一方、ステップS421でスイッチ114の検出信号がONであると判断された場合には(ステップS421でYES)、ステップS423に移行し、ステップS423で車速制御解除信号BがONにされる。
【0102】
ステップS423で車速制御解除信号BがONにされると、車速制御部132では、減速度指令値Aが減速無しにされる(ステップS401、S404を参照)。したがって、ブレーキアクチュエータ122からブレーキ141に供給されるアクチュエータブレーキ液圧Paは0とされるが、ブレーキ141には、マスタシリンダ111からのドライバーブレーキ液圧Pdが供給され、かかるドライバーブレーキ液圧Pdに応じた制動力が発生される。そして、ステップS424に移行し、ステップS424でドライバーブレーキ操作信号をOFFにする処理を行った後に、終了となる。
【0103】
次に、図12、図13で説明した車速制御処理を実施することにより実現される動作の内容を図14に示すタイミングチャートにより説明する。
【0104】
図14(a)は、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えるまでブレーキペダル112が踏み込まれた場合を示し、図14(b)は、ブレーキペダル112の踏込量が少なく、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Paを超えない場合を示す。
【0105】
まず、図14(a)に示す場合について説明する。ここでは、車速制御部132により車速を減速させる制御が行われており、車速制御部132から出力される減速度指令値Aに基づいて、ブレーキアクチュエータ122でアクチュエータブレーキ液圧Paが発生されて、ブレーキ141に供給されている状態を前提とする。
【0106】
そして、時刻tbrkonのとき、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、ドライバーブレーキ操作信号がONにセットされる(ステップS411とS412を参照)。そして、ブレーキペダル112のペダルストロークにしたがって、マスタシリンダ111でドライバーブレーキ液圧Pdが発生される。
【0107】
ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ圧Paは比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さい間は(ステップS413でYES)、車速制御解除信号BがOFFであるので、車速制御部132で減速度指令値Aの演算が続行され、その減速度指令値Aがブレーキアクチュエータ122に出力される。ブレーキアクチュエータ122では、減速度指令値Aに応じたアクチュエータブレーキ液圧Paを発生させ、車速制御により車速を減速させる制御が継続される。
【0108】
そして、時刻tactoffのときに、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ液圧Pa以上になると(ステップS413でNO)、車速制御解除信号BがOFFからONになり、車速制御部132から所定の減速無し指令値が減速度指令値Aとして出力される(ステップS414を参照)。したがって、ブレーキアクチュエータ122は、減速度指令値Aにしたがってアクチュエータブレーキ液圧Paを減圧する。
【0109】
ブレーキ120に供給されるブレーキ液圧は、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paの大きい方となり、図14(a)のブレーキ液圧センサ値Poにおける時刻tactoffと時刻tbrkoffとの間に示すように、車速制御を解除してもブレーキ液圧が減圧されることはない。
【0110】
そして、時刻tbrkoffのときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、ブレーキペダル112のペダルストロークが0になると、ブレーキ液圧センサ値Poは0になり、車速制御解除信号はOFFになる(ステップS411、S421、S422を参照)。
【0111】
次に、図14(b)に示すように、ドライバーによるブレーキペダル112の踏み込み量が少ない場合について説明する。
【0112】
図14(a)と同じ前提状態から、時刻tbrkon2のときに、ドライバーによりブレーキペダル112のペダル操作が行われて、スイッチ114の信号がOFFからONになると、ドライバーブレーキ操作信号がOFFからONになり、ブレーキペダルストロークにしたがって、マスタシリンダ111でドライバーブレーキ液圧Pdが発生される。
【0113】
そして、ドライバーブレーキ液圧Pdとアクチュエータブレーキ液圧Paとが比較され、ドライバーブレーキ液圧Pdがアクチュエータブレーキ圧Paよりも小さい間は(Pd<Pa)、車速制御部132で減速度指令値Aが演算され(ステップS401〜S403を参照)、その演算された減速度指令値Aに基づいてブレーキアクチュエータ121がアクチュエータブレーキ液圧Paを発生させ、車速を減速させる制御が継続される。
【0114】
そして、時刻tbrkoff2のときに、ドライバーがブレーキペダル112から足を離し、スイッチ114がOFFすると、ブレーキアクチュエータ122で車速制御解除信号BがONとされ(ステップS423を参照)、かかる車速制御解除信号Bを受け取った車速制御部132で減速度指令値Aが所定の減速無し指令値に変更される(ステップS404を参照)。そして、かかる減速度指令値Aがブレーキアクチュエータ122に出力され、ブレーキアクチュエータ122でブレーキ液圧を減圧する処理が行われる。
【0115】
上記の車速制御解除処理によれば、ドライバーがブレーキペダル150から足を離すタイミングと車速制御を解除するタイミングが同時になるため、ドライバーに減速度の抜けを感じさせることなく、車速制御を解除できる。
【0116】
前述の実施例1は、車速制御部132でドライバーがブレーキペダル112を踏み込んで発生するドライバーブレーキ液圧Pdが、ブレーキアクチュエータ122によって発生しているアクチュエータブレーキ液圧Paを超えることを判断する構成で、ドライバーがブレーキペダル112を踏み込んで車速制御解除処理を開始するときから、ドライバーがブレーキペダルを踏み込んで発生するドライバーブレーキ液圧Pdが、ブレーキアクチュエータによって発生しているアクチュエータブレーキ液圧Paを超えるまで、ブレーキ制御を継続することにより、減速度の抜けを感じることなく制御を解除する制御方法である。
【0117】
これに対して、本実施例では、ブレーキ制御を継続することにより、ドライバーに減速度の抜けを感じさせることなく車速制御を解除することができ、ブレーキアクチュエータ122からドライバーがブレーキペダル112を踏み込んで発生するドライバーブレーキ液圧Pdが、ブレーキアクチュエータ122によって発生しているアクチュエータブレーキ液圧Paを超えたことを判断した結果を渡す構成にしたことにより、ブレーキアクチュエータ122を別の方式に変更した場合にも、車速制御部132の処理を変更することなく、対応することができる。
【0118】
[実施例5]
次に、実施例5について図15〜図17を用いて以下に説明する。
図15は、実施例5における走行制御装置の構成を説明する図である。なお、実施例4と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0119】
本実施例において特徴的なことは、ブレーキペダル112のペダル操作に応じてブレーキアクチュエータ123でドライバーブレーキ液圧Pdを発生させる構成としたことである。
【0120】
走行制御装置103は、図11に示す実施例4の構成に対して、ブレーキブースタ113、マスタシリンダ111、マスタシリンダ圧センサ115、ブレーキ液圧センサ116が無い構成になっており、操作量検出手段151を備えている。
【0121】
操作量検出手段151は、ドライバーによるブレーキペダル112のペダル操作量を検出するストロークセンサである。このストロークセンサは、圧力センサ、角度センサ、入力装置の位置センサ、可変抵抗等、ドライバーの操作量が検出できる装置であれば良い。
【0122】
ブレーキペダル112の操作量信号Dは、操作量検出手段151により電気信号に変換され、ブレーキアクチュエータ123に送信される。なお、操作量検出手段151は、電気信号に変換するだけではなく、空気圧、油圧等、操作量をブレーキアクチュエータ123が検出できる信号であれば良い。
【0123】
次に、図16を用いてブレーキアクチュエータ123の構成について説明する。
図16は、本実施例におけるブレーキアクチュエータの機能構成を示す図である。
ブレーキアクチュエータ123は、操作量検出手段151によって検出されたドライバーのペダル操作量信号Dを、操作量→制御量変換処理手段161によってドライバー制御量C1に変換する。そして、車速制御部132から入力された減速度指令値Aを、減速度→制御量変換処理手段162によって、車速制御部制御量C2に変換する。ドライバー制御量C1と車速制御部制御量C2は、ブレーキ液圧やフォース、トルク、電流、電圧等ブレーキを駆動するための物理量であれば良い。ドライバー制御量C1と車速制御部制御量C2は、制御量調停処理手段163によっていずれか一方が選択され、最終目標値C3として駆動処理手段164に出力される。
【0124】
制御量調停処理手段163は、後述する条件が成立した場合に、車速制御解除信号Bを車速制御部132に送信する。車速制御部132は、車速制御解除信号Bをブレーキアクチュエータ123から受け取った場合に、減速度指令値Aを所定の減速無し指令値にする。
これにより、車速制御解除信号Bが出力されている場合にドライバー制御量C1が選択され、車速制御解除信号Bが出力されていない場合に車速制御部制御量C2が選択されることになる。駆動処理手段164は、最終目標値C3にブレーキ141からフィードバックされる状態量C5が一致するように、ブレーキ141の制御量C4を制御する処理が行われる。
【0125】
次に、図17を用いて制御量調停処理手段163における処理について説明する。
まず、ステップS501でスイッチ114の信号かONであるか否かが判断され、ONである場合には(ステップS501でYES)、ドライバーによりブレーキペダル112を踏み込むペダル操作が行われていると判断して、ステップS502以降に移行する。
【0126】
ステップS502では、ドライバーブレーキ操作信号をONにする処理がなされる。そして、ステップS503において、車速制御部制御量C2とドライバー制御量C1とを比較する処理が行われる。
【0127】
そして、ドライバー制御量C1が車速制御部制御量C2よりも小さいと判断された場合には(ステップS503でYES)、そのまま終了する。したがって、ブレーキアクチュエータ123では、車速制御部制御量C2が最終目標値C3として選択され、その最終目標値C3に状態量C5が一致するように、ブレーキ141の制御量C4を制御する処理が行われる。したがって、ブレーキ141では、車速制御部132からの減速度指令値Aに応じた制動力が発生される。
【0128】
一方、ドライバー制御量C1が車速制御部制御量C2以上(C1≧C2)と判断された場合には(ステップS503でNO)、ステップS504に移行し、車速制御解除信号BをONにする処理が行われる。
【0129】
ステップS504で車速制御解除信号BがONにされると、車速制御部132では、減速度指令値Aが所定の減速無し指令値に設定される(図12のステップS404を参照)。そして、ステップS505に移行し、ステップS415でドライバーブレーキ操作信号をOFFにする処理を行った後に、終了となる。
【0130】
また、ステップS501でスイッチ114の検出信号がONではないと判断された場合には(ステップS501でNO)、ステップS511に移行し、ドライバーブレーキ操作信号がONであるか否かが判断される。
【0131】
ここで、ドライバーブレーキ操作信号がOFFであると判断された場合には(ステップS511でNO)、ステップS512に移行し、車速制御解除信号BをOFFにする処理が行われる。
【0132】
ステップS512で車速制御解除信号BがOFFにされると、車速制御部132では、車速制御中か否かが判断され、車速制御中の場合には減速度指令値Aが演算されてブレーキアクチュエータ123に出力される。したがって、ブレーキアクチュエータ123において、車速制御中の場合は減速度指令値Aに基づいて車速制御が行われ、車速制御でない場合は何も行われない。
【0133】
一方、ステップS511でドライバーブレーキ操作信号がONであると判断された場合には(ステップS511でYES)、ステップS513に移行し、ステップS513で車速制御解除信号BがONにされる。
【0134】
ステップS513で車速制御解除信号BがONにされると、車速制御部132では、減速度指令値Aが所定の減速無し指令値に設定される(図12のステップS404を参照)。そして、ステップS514に移行し、ステップS514でドライバーブレーキ操作信号をOFFにする処理を行った後に、終了となる。
【0135】
上記構成によれば、車速制御部132から減速度指令値Aが出力されている間に、ドライバーによるブレーキ操作が行われた場合に、ドライバーのペダル操作量が車速制御部132の減速度指令値Aを上回るまでは、車速制御部132の制御によるブレーキ制御が継続されるので、ドライバーがブレーキペダル112のペダル操作を行ったときに、瞬間的に減速度が弱くなるという現象を防ぐことができる。
【0136】
なお、上述の実施例1〜5では、減速度指令値Aによってブレーキアクチュエータ121、122、123の制御を行う場合について説明したが、ブレーキ液圧指令値を用いて制御を行ってもよい。また、スイッチ114がONになったときに、ブザー(図示しない)を吹鳴する、あるいは車速制御部131、132の作動を点灯表示する作動表示ランプ(図示しない)を消灯することのいずれか、あるいはその両方を実行し、ドライバーに走行制御を解除したことを報知してもよい。
【0137】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施の形態では、ブレーキ141にブレーキ液圧を供給する手段として、マスタシリンダ111とブレーキアクチュエータの場合を例に説明したが、走行用モータの回生ブレーキを用いてもよい。
【符号の説明】
【0138】
101、102、103 走行制御装置
111 マスタシリンダ
121、122、123 ブレーキアクチュエータ
131、132 車速制御部
141 ブレーキ
151 操作量検出手段
161 操作量→制御量変換処理手段
162 減速度→制御量変換処理手段
163 制御量調停処理手段
164 駆動処理手段
Pa アクチュエータブレーキ液圧(制御制動力)
Pd ドライバーブレーキ液圧(操作制動力)
A 減速度指令値
B 車速制御解除信号
C1 ドライバー制御量
C2 車速制御部制御量
C3 最終目標値
D ペダル操作量信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速制御を行う車速制御手段と、ブレーキペダルのペダル操作によって前記車速制御手段による車速制御を解除する車速制御解除手段とを有する走行制御装置であって、
前記車速制御解除手段は、前記車速制御手段により前記車速を減速させる車速制御中に前記ペダル操作が行われた場合に、該ペダル操作による操作制動力と前記車速制御手段による制御制動力とを比較し、前記操作制動力が前記制御制動力よりも小さい間は車速制御手段により車速を減速させる車速制御を継続させ、前記操作制動力が前記制御制動力以上となったときに前記車速制御手段による車速制御を解除することを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
前記車速制御解除手段は、前記車速制御手段により車速を減速させる車速制御を継続させている途中で前記ペダル操作が終了とされたときは、前記制御制動力を漸次減少させて前記車速制御手段による車速制御を解除することを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
車両を減速させる減速度指令値を演算する減速度指令値演算手段と、
該減速度指令値演算手段により演算された減速度指令値に基づいて前記制御制動力を発生させる制御制動力発生手段と、
前記ペダル操作による前記ブレーキペダルの踏込量に応じて前記操作制動力を発生させる操作制動力発生手段と、
前記ペダル操作の有無を検出するペダル操作検出手段と、を有し、
前記車速制御解除手段は、前記車速制御手段による車速制御中に前記ペダル操作検出手段によりペダル操作有りを検出した場合に、前記操作制動力と前記制御制動力とを比較し、前記操作制動力が前記制御制動力よりも小さいときは前記減速度指令値演算手段により減速度指令値を演算させて前記制御制動力発生手段に出力し、前記操作制動力が前記制御制動力以上のときは減速度指令値を減速無しに設定して前記制御制動力発生手段に出力することを特徴とする請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記車速制御解除手段は、前記操作制動力が前記制御制動力よりも小さいときは、前記ペダル操作検出手段により前記ペダル操作有りを検出する直前に前記減速度指令値演算手段で演算された減速度指令値を保持して前記制御制動力発生手段に出力することを特徴とする請求項3に記載の走行制御装置。
【請求項5】
前記車速制御解除手段は、前記操作制動力が前記制御制動力よりも小さいときは、前記ペダル操作検出手段により前記ペダル操作有りを検出する直前に前記減速度指令値演算手段で演算された減速度指令値を保持して前記制御制動力発生手段に出力し、前記ペダル操作を検出してから所定時間が経過した後に前記制御制動力が漸次減少するように前記減速度指令値を変化させて前記制御制動力発生手段に出力することを特徴とする請求項3に記載の走行制御装置。
【請求項6】
前記制御制動力発生手段は、ブレーキアクチュエータを有し、
前記操作制動力発生手段は、マスタシリンダを有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【請求項7】
車両を減速させる減速度指令値を演算する減速度指令値演算手段と、
該減速度指令値演算手段により演算された減速度指令値を車速制御部制御量に変換する減速度制御量変換手段と、
ブレーキペダルのペダル操作量を検出する操作量検出手段と、
該操作量検出手段により検出されたペダル操作量をドライバー制御量に変換する操作量制御量変換手段と、
前記ペダル操作の有無を検出するペダル操作検出手段と、
該ペダル操作検出手段によりペダル操作有りを検出した場合に、前記ドライバー制御量と前記車速制御部制御量を比較し、前記ドライバー制御量が前記車速制御部制御量よりも小さい間は前記車速制御部制御量を選択し、前記ドライバー制御量が前記車速制御部制御量以上となったときに前記ドライバー制御量を選択する制御量調停処理手段と、
該制御量調停処理手段により選択された前記車速制御部制御量または前記ドライバー制御量にブレーキからフィードバックされる状態量が一致するようにブレーキの制御量を制御する駆動処理手段と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項8】
前記車速制御手段により車速制御が行われているか否かを表示する表示装置を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【請求項9】
前記車速制御手段の解除を報知するブザーを有することを報知することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【請求項1】
車両の車速制御を行う車速制御手段と、ブレーキペダルのペダル操作によって前記車速制御手段による車速制御を解除する車速制御解除手段とを有する走行制御装置であって、
前記車速制御解除手段は、前記車速制御手段により前記車速を減速させる車速制御中に前記ペダル操作が行われた場合に、該ペダル操作による操作制動力と前記車速制御手段による制御制動力とを比較し、前記操作制動力が前記制御制動力よりも小さい間は車速制御手段により車速を減速させる車速制御を継続させ、前記操作制動力が前記制御制動力以上となったときに前記車速制御手段による車速制御を解除することを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
前記車速制御解除手段は、前記車速制御手段により車速を減速させる車速制御を継続させている途中で前記ペダル操作が終了とされたときは、前記制御制動力を漸次減少させて前記車速制御手段による車速制御を解除することを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
車両を減速させる減速度指令値を演算する減速度指令値演算手段と、
該減速度指令値演算手段により演算された減速度指令値に基づいて前記制御制動力を発生させる制御制動力発生手段と、
前記ペダル操作による前記ブレーキペダルの踏込量に応じて前記操作制動力を発生させる操作制動力発生手段と、
前記ペダル操作の有無を検出するペダル操作検出手段と、を有し、
前記車速制御解除手段は、前記車速制御手段による車速制御中に前記ペダル操作検出手段によりペダル操作有りを検出した場合に、前記操作制動力と前記制御制動力とを比較し、前記操作制動力が前記制御制動力よりも小さいときは前記減速度指令値演算手段により減速度指令値を演算させて前記制御制動力発生手段に出力し、前記操作制動力が前記制御制動力以上のときは減速度指令値を減速無しに設定して前記制御制動力発生手段に出力することを特徴とする請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記車速制御解除手段は、前記操作制動力が前記制御制動力よりも小さいときは、前記ペダル操作検出手段により前記ペダル操作有りを検出する直前に前記減速度指令値演算手段で演算された減速度指令値を保持して前記制御制動力発生手段に出力することを特徴とする請求項3に記載の走行制御装置。
【請求項5】
前記車速制御解除手段は、前記操作制動力が前記制御制動力よりも小さいときは、前記ペダル操作検出手段により前記ペダル操作有りを検出する直前に前記減速度指令値演算手段で演算された減速度指令値を保持して前記制御制動力発生手段に出力し、前記ペダル操作を検出してから所定時間が経過した後に前記制御制動力が漸次減少するように前記減速度指令値を変化させて前記制御制動力発生手段に出力することを特徴とする請求項3に記載の走行制御装置。
【請求項6】
前記制御制動力発生手段は、ブレーキアクチュエータを有し、
前記操作制動力発生手段は、マスタシリンダを有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【請求項7】
車両を減速させる減速度指令値を演算する減速度指令値演算手段と、
該減速度指令値演算手段により演算された減速度指令値を車速制御部制御量に変換する減速度制御量変換手段と、
ブレーキペダルのペダル操作量を検出する操作量検出手段と、
該操作量検出手段により検出されたペダル操作量をドライバー制御量に変換する操作量制御量変換手段と、
前記ペダル操作の有無を検出するペダル操作検出手段と、
該ペダル操作検出手段によりペダル操作有りを検出した場合に、前記ドライバー制御量と前記車速制御部制御量を比較し、前記ドライバー制御量が前記車速制御部制御量よりも小さい間は前記車速制御部制御量を選択し、前記ドライバー制御量が前記車速制御部制御量以上となったときに前記ドライバー制御量を選択する制御量調停処理手段と、
該制御量調停処理手段により選択された前記車速制御部制御量または前記ドライバー制御量にブレーキからフィードバックされる状態量が一致するようにブレーキの制御量を制御する駆動処理手段と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の走行制御装置。
【請求項8】
前記車速制御手段により車速制御が行われているか否かを表示する表示装置を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【請求項9】
前記車速制御手段の解除を報知するブザーを有することを報知することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−25208(P2012−25208A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163170(P2010−163170)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]