説明

走行振動抑制装置を備えた作業車両

【課題】掘削作業時及び積み込み作業時におけるフロント作業機の動作安定性を高め、オペレータに違和感や不安感を与えにくい走行振動抑制装置を備えた作業車両を提供する。
【解決手段】メインコントローラ35により、リフトシリンダ16と液圧アキュムレータ31との間の作動油の流通を断続する制御弁32の開閉を制御する。メインコントローラ35は、バケット13高さ位置がバケット13の可動範囲の下限位置H0からその上方に設定された第1の高さ位置H1の間にあると判定したとき、及び可動範囲の上限位置H3からその下方の第1の高さ位置H1よりも上方に設定された第2の高さ位置H2にあると判定したときには、制御弁32を閉状態に切り換える。また、バケット13の高さ位置が第1の高さ位置H1を超え、かつ第2の高さ位置H2未満であると判定したときには、制御弁32を開状態に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行振動抑制装置を備えた作業車両に係り、特に、走行振動抑制装置のオンオフ切換時におけるフロント作業機の動作安定性を高める手段に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダ等の作業車両は、通常緩衝用サスペンションシステムを備えておらず、走行時に大きなピッチングやバウンシングが作用するために乗り心地が悪く、オペレータが疲労しやすい。走行中の作業車両に作用するピッチングやバウンシングは、作業車両に備えられたバケット、アーム及びリフトシリンダ等からなるフロント作業機と、当該フロント作業機が支承する土砂等の積み荷の合計質量が大きいほど大きくなるので、バケットに土砂等を満載して高速で走行する場合などにおいて特に乗り心地が悪くなる。このような問題を解決するため、従来、ライドコントロール装置と呼ばれる走行振動抑制装置を備えた作業車両が提案されている。
【0003】
ライドコントロール装置は、リフトシリンダに作動油を供給するリフトシリンダ油圧回路に制御弁を介して液圧アキュムレータを接続したもので、制御弁を開くことによりリフトシリンダと液圧アキュムレータとの間の作動油の流通を可能とし、作業車両の上下動に伴って発生するリフトシリンダのボトム圧変動を液圧アキュムレータに吸収させて、車体全体のショックを軽減するものである。制御弁の切換は、基本的にはオペレータがライドコントロールスイッチを手動操作することにより行うが、作業車両の稼動状況に応じて自動的に制御弁の切り換えが行われるように、車速が予め定められた設定速度以上になったときに、自動的に制御弁を閉状態から開状態に切り換える技術も従来提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この従来技術によると、作業車両の上下動が大きくなる高速走行時に、自動的に制御弁を閉状態から開状態に切り換えて、リフトシリンダのボトム圧変動を液圧アキュムレータに吸収させるので、車体全体のショックを軽減することができて、オペレータの疲労を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−209422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、作業車両の稼動状況に拘わりなく、車速に応じて制御弁を自動的に切り換える構成であるので、作業車両の車速が設定速度を超えている状況でフロント作業機を操作すると、フロント作業機に液圧アキュムレータのダンパ効果が作用し、フロント作業機の動作が不安定になるという問題がある。
【0006】
例えば、ホイールローダを用いて土砂をダンプトラックに積み込むという作業を行う際には、バケットに土砂を満載したホイールローダを走行させ、衝突を回避可能な所要の位置までダンプトラックに接近した段階で、車速を落としつつフロント作業機を操作してバケットを積み込み可能な高さまで上昇させ、土砂の積み込みが可能な位置までダンプトラックに接近した段階で停車して、ダンプトラックへの積み込みを行うという手順で作業が行われるが、フロント作業機を操作する際の車速が設定速度よりも高い場合には、液圧アキュムレータのダンパ効果によってバケットが上下に動揺するため、オペレータに違和感や不安感を与える。また、掘削時には、ホイールローダを走行させてバケットを土砂の中に突き込み、次いで、フロント作業機を操作してバケット内に土砂を取り込むという作業が行われるが、フロント作業機を操作する際の車速が設定速度よりも高い場合には、液圧アキュムレータのダンパ効果により、バケットに作用する力がリフトシリンダを介して液圧アキュムレータに逃げるので、バケットに力が伝わらず、掘削開始のタイミングが遅れる感触をオペレータに与える。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、掘削作業時及び積み込み作業時におけるフロント作業機の動作安定性を高め、オペレータに違和感や不安感を与えにくい走行振動抑制装置を備えた作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記の課題を解決するため、作業具を所定の可動範囲内で上下動するリフトシリンダと、制御弁を介して前記リフトシリンダに接続された液圧アキュムレータと、前記制御弁を開閉するライドコントロール部とを備えた作業車両において、前記ライドコントロール部は、前記作業具の高さ位置に応じた検出信号を出力するセンサと、前記検出信号に応じた前記制御弁の切換信号を出力するコントローラとを有し、前記コントローラは、前記作業具の高さ位置が前記可動範囲の下限位置からその上方に設定された第1の高さ位置の間にあると判定したとき、及び前記可動範囲の上限位置からその下方の前記第1の高さ位置よりも上方に設定された第2の高さ位置にあると判定したときには、前記制御弁を閉状態に切り換える切換信号を出力し、前記作業具の高さ位置が前記第1の高さ位置を超え、かつ前記第2の高さ位置未満であると判定したときには、前記制御弁を開状態に切り換える切換信号を出力することを特徴とする。
【0009】
言うまでもなく、掘削作業は、バケット等の作業具をその可動範囲の下限位置に近い位置まで下降した状態で行われ、積み込み作業は、バケット等の作業具をその可動範囲の上限位置に近い位置まで上昇した状態で行われる。また、走行時には、作業具の底面が地面をこすることがないように、作業具をその可動範囲の下限位置よりも上方で、可動範囲の中央位置よりも下方の位置まで上昇させるのが普通である。したがって、このような通常の操作態様やオペレータの好みに基づいて第1及び第2の高さ位置を適切に設定することが可能であり、掘削作業や積み込み作業を行う高さ位置に作業具があるときには、制御弁を閉状態に切り換えてリフトシリンダと液圧アキュムレータとの間の作動油の流通を遮断することにより、作業具の動揺を防止できて、オペレータの違和感や不安感を取り除くことができる。また、走行時の高さ位置に作業具があるときには、制御弁を開状態に切り換えてリフトシリンダと液圧アキュムレータとの間で作動油を流通させることにより、リフトシリンダのボトム圧変動を液圧アキュムレータのダンパ効果によって緩和することができるので、作業車両の安定な走行が可能になる。
【0010】
また本発明は、前記構成の走行振動抑制装置を備えた作業車両において、前記コントローラは、前記可動範囲の下限位置から前記第1の高さ位置までの間、前記第1の高さ位置から前記第2の高さ位置までの間、及び前記第2の高さ位置から前記可動範囲の上限位置までの間について、前記検出信号に応じた前記切換信号の出力を可能にするフラグ又は不可能にするフラグの記憶領域を有しており、当該記憶領域に前記検出信号に応じた前記切換信号の出力を可能にするフラグが記憶された前記作業機の高さ位置についてのみ、前記検出信号に応じた前記切換信号の出力を行うことを特徴とする。
【0011】
制御弁を開状態にして作業具に液圧アキュムレータのダンパ効果を付与するか、或いは制御弁を閉状態にして作業具に作用する液圧アキュムレータのダンパ効果を解除するかは、オペレータの好みによるところが大きいので、全ての作業車両について一律にダンパ効果の付与及び解除を設定することは適切ではない。そこで、フラグの記憶領域を設け、当該記憶領域に検出信号に応じた切換信号の出力を可能にするフラグが記憶された作業機の高さ位置についてのみ、検出信号に応じた前記切換信号の出力を行う構成にすると、オペレータが自分の好みに応じて、各高さ領域についてダンパ効果の付与又は解除を設定できるので、使い勝手が良好な作業車両とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ライドコントロール装置と呼ばれる走行振動抑制装置を備えた作業車両において、作業具の高さ位置が可動範囲の下限位置からその上方に設定された第1の高さ位置の間にあると判定したとき、及び可動範囲の上限位置からその下方の第1の高さ位置よりも上方に設定された第2の高さ位置にあると判定したときには、制御弁を閉状態に切り換えるので、走行振動抑制装置によるダンパ効果が解除され、作業具の動揺を防止することができる。また、作業具の高さ位置が第1の高さ位置を超え、かつ第2の高さ位置未満であると判定したときには、制御弁を開状態に切り換えるので、リフトシリンダのボトム圧変動を走行振動抑制装置のダンパ効果で緩和でき、作業車両の走行安定性を良好なものにすることができる。よって、作業車両の操作性と乗り心地とを改善でき、オペレータの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る作業車両の外観構成図である。
【図2】実施形態に係る走行振動抑制装置の構成図である。
【図3】実施形態に係るコントローラに記憶される高さ位置とフラグの説明図である。
【図4】実施形態に係る作業機械の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る走行振動抑制装置を備えた作業車両の実施形態を、ホイールローダを例にとり、図を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示すように、実施形態に係るホイールローダ1は、キャブ2を備えた後部車体3と、連結ピン4を介して後部車体3の前方側(ホイールローダ1の前進側)に連結された前部車体5と、これら後部車体3及び前部車体5に設けられた後輪6及び前輪7と、前部車体5の前方部分に取り付けられたフロント作業機8と、フロント作業機8の油圧系に付加される走行振動抑制装置9とから主に構成されている。
【0016】
後輪6及び前輪7は、後部車体3に搭載されたトランスミッション37(図2参照)に接続されており、同じく後部車体3に搭載されたエンジン36(図2参照)により駆動される。これに対して、フロント作業機8は、エンジン36により駆動される油圧ポンプ(図示省略)から吐出される作動油により駆動される。油圧ポンプ及び走行振動抑制装置9も、後部車体3に搭載される。なお、前部車体5は、後部車体3に対して左右方向に屈曲するように構成されており、走行時にキャブ2内に備えられた図示しないステアリング装置を操作することにより、後部車体3に対して左方向又は右方向に屈曲して、その方向にホイールローダ1を進行させる。
【0017】
フロント作業機8は、一端が連結ピン10を介して前部車体5に連結されたアーム11と、連結ピン12を介してアーム11の先端部に取り付けられたバケット(作業具)13と、連結ピン14,15を介して両端部が前部車体5とアーム11とに連結されたリフトシリンダ16と、連結ピン17を介してアーム11に揺動可能に連結されたベルクランク18と、一端がベルクランク18に連結され、他端がバケット13に連結されたリンク部材19と、連結ピン20,21を介して両端部が前部車体5とベルクランク18とに連結されたバケット傾斜シリンダ22とからなる。なお、本例においては、アーム11、連結ピン12,14,15、リフトシリンダ16がそれぞれ1つずつしか備えられていないが、実機においては、これらの各部材がバケット13の左右に一組ずつ備えられる。
【0018】
リフトシリンダ16及びバケット傾斜シリンダ22は、図示しない油圧ポンプから吐出される作動油により駆動される。リフトシリンダ16を伸張させると、アーム11及びバケット13が上昇し、リフトシリンダ16を収縮させると、アーム11及びバケット13が下降する。リフトシリンダ16の伸張・収縮、つまりアーム11及びバケット13の上昇・下降は、キャブ2内に備えられた操作レバー等の操作機器を操作することにより行うことができる。また、バケット傾斜シリンダ22を伸張させると、バケット13が上向きに旋回し、バケット傾斜シリンダ22を収縮させると、バケット13が下向きに旋回する。バケット傾斜シリンダ22の伸張・収縮、つまりバケット13の上向き旋回・下向き旋回も、キャブ2内に備えられた操作レバー等の操作機器を操作することにより行うことができる。
【0019】
走行振動抑制装置9は、図2に示すように、リフトシリンダ16との間で作動油の流通を行う液圧アキュムレータ31と、これらリフトシリンダ16と液圧アキュムレータ31との間の作動油の流れを切り換える制御弁32と、該制御弁32の開閉を切り換えるライドコントロール部33と、該ライドコントロール部33からの指令に応じて制御弁32の開閉操作を行う油圧回路34とから構成される。なお、図2においては、液圧アキュムレータ31が1つのみ表示されているが、用いる油圧システムの大きさと容量によっては、2つ以上の液圧アキュムレータ31を備えることも可能である。また、図2の符号32aは、予め設定された圧力値までリフトシリンダ16のボトム圧と液圧アキュムレータ31とを流通させるチャージング用のバルブを示している。
【0020】
ライドコントロール部33は、ホイールローダ1の制御全体を司るメインコントローラ35と、メインコントローラ35からの指令を受けてエンジン36及びトランスミッション37の駆動を制御するエンジンコントローラ38と、オペレータが操作するライドコントロールスイッチ39と、連結ピン10と同心に取り付けられ、前部車体5に対するアーム11の旋回角度を検出する角度センサ40と、モニタユニット41を介してメインコントローラ35に接続されたインジケータ42とから構成される。
【0021】
ライドコントロールスイッチ39は、オンオフスイッチをもって構成されていて、その出力信号はメインコントローラ35に入力されており、オペレータがオン操作したときには、メインコントローラ35から制御弁32の切換信号を出力して制御弁32を開状態に切り換え、リフトシリンダ16と液圧アキュムレータ31との間の作動油の流通を可能とする。また、オフ操作したときには、メインコントローラ35から制御弁32の切換信号を出力して制御弁32を閉状態に切り換え、リフトシリンダ16と液圧アキュムレータ31との間の作動油の流通を遮断する。ライドコントロールスイッチ39の操作状態は、モニタユニット41を介してインジケータ42に表示される。
【0022】
メインコントローラ35は、角度センサ40の出力信号よりバケット13の高さ位置を算出する。本実施形態において、バケット13の高さ位置とは、アーム11とバケット13とを連結する連結ピン12の高さ位置をいい、既知の値である連結ピン12の旋回半径と角度センサ39の出力値とから算出することができる。また、メインコントローラ35には、図3に示すように、バケット13の上下動方向に関して、可動範囲の下限位置H0及び上限位置H3と、下限位置H0よりも上方の第1の高さ位置H1と、上限位置H3よりも下方で第1の高さ位置H1よりも上方の第2の高さ位置H2とが記憶されると共に、バケット13の高さ位置に応じた制御弁32の自動切換を許容するか否かを選択するフラグが記憶される。なお、バケット13の下限位置H0はバケット13の外面が地面と接する位置であり、上限位置H3はホイールローダ1の車格(サイズ)によって定まる。また、第1及び第2の高さ位置H1,H2は、オペレータの好みに基づくものであり、走行時に経験的に上昇させるバケット13の高さ位置が基準となる。
【0023】
図3の例では、バケット13の高さ位置Hが、H0≦H≦H1の範囲にある場合、H1<H<H2の範囲にある場合、及びH2≦H≦H3の範囲にある場合の全てについて、制御弁32の自動切換を許容することを示すレ点が記憶されており、バケット13の全可動範囲について、バケット13の高さ位置Hに応じた制御弁32の自動切換が行われる。即ち、本例にあっては、バケット13の高さ位置Hが、H0≦H≦H1の範囲にある場合及びH2≦H≦H3の範囲にある場合において、制御弁32が閉状態に切り換えられ、H1<H<H2の範囲にある場合において、制御弁32が開状態に切り換えられる。これにより、掘削作業時及び積み込み作業時においては、バケット13の動揺を防止することができるので、これらの作業を違和感無く行うことができて、オペレータの違和感及び不安感を解消することができる。これに対して、走行時には、液圧アキュムレータ31のダンパ効果によって前部車体5に作用するバケット13の重力変動が緩和されるので、ホイールローダ1の走行安定性を高めることができる。このメインコントローラ35の動作については、後に図4を用いてより詳細に説明する。
【0024】
油圧回路34については、以下のように構成される。即ち、図2に示すように、リフトシリンダ16のロッド側室16aは、制御弁32を介して作動油タンク43に接続されており、リフトシリンダ16のボトム側室16bは、制御弁32を介して液圧アキュムレータ31に接続されている。制御弁32は、パイロット作動弁であり、ライドコントロール用の電磁パイロット弁44からの油圧パイロット信号に応じて開閉される。制御弁32が開状態にあるとき、作動油はリフトシリンダ16のロッド側室16aと作動油タンク43との間、及び、リフトシリンダ16のボトム側室16bと液圧アキュムレータ31と間が流通可能となり、バケット13の上下動にダンパ効果を付与することができる。これに対して、制御弁32が閉状態にあるとき、作動油はリフトシリンダ16のロッド側室16aと作動油タンク43との間、及び、リフトシリンダ16のボトム側室16bと液圧アキュムレータ31と間で流通不能となり、バケット13の重量がリフトシリンダ16を介して直接的に前部車体5に作用する。
【0025】
電磁パイロット弁44は、メインコントローラ35から出力される切換信号により切換操作される。即ち、メインコントローラ35から制御弁32を開状態に切り換える信号が出力されると、電磁パイロット弁44は、パイロットポンプ45から吐出されるパイロット圧を制御弁32のパイロットポートに導く油路を開き、制御弁32を開状態に切り換える。これに対して、メインコントローラ35から制御弁32を閉状態に切り換える信号が出力されると、電磁パイロット弁44は、パイロット圧を作動油タンク43に落とす油路を開き、内蔵された戻しばねの弾性力によって制御弁32を閉状態に切り換える。
【0026】
以下、図4を用いて、実施形態に係る作業車両の動作について説明する。エンジン36を始動(スタート)すると、メインコントローラ35はライドコントロールスイッチ39の出力信号を読み取り(ステップS1)、ライドコントロールスイッチ39の出力信号がON信号であるか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2でライドコントロールスイッチ39の出力信号はOFF信号であると判定した場合には、ステップS7に移行して、システムを終了(エンド)する。
【0027】
ステップS2で、ライドコントロールスイッチ39の出力信号はON信号であると判定した場合には、メインコントローラ35にて算出されたバケット13の高さ位置の読み取り(ステップS3)と、メインコントローラ35に記憶されたフラグの読み取り(ステップS4)とを行い、しかる後に、読み取られたバケット13の高さ位置HがH0≦H≦H1の範囲にあるか否かの判定(ステップS5)と、H0≦H≦H1の範囲についてオペレータにより制御弁32の自動切換が許容されているか否かの判定(ステップS6)をこの順に行う。ステップS5でバケット13の高さ位置HがH0≦H≦H1の範囲にあると判定され、ステップS6でH0≦H≦H1の範囲について制御弁32の自動切換が許容されていると判定した場合には、ステップS8に移行して、電磁パイロット弁44に制御弁32を閉状態に切り換える信号を出力する。なお、ステップS6でH0≦H≦H1の範囲について制御弁32の自動切換が許容されていないと判定した場合には、ステップS7に移行して、電磁パイロット弁44に制御弁32を開状態に切り換える信号を出力する。
【0028】
ステップS5で、バケット13の高さ位置HがH0≦H≦H1の範囲にないと判定した場合は、ステップS9に移行して、バケット13の高さ位置HがH1<H<H2の範囲にあるか否かの判定を行う。ステップS9でバケット13の高さ位置HがH1<H<H2の範囲にあると判定した場合には、ステップS7に移行して、電磁パイロット弁44に制御弁32を開状態に切り換える信号を出力する。
【0029】
さらに、ステップS9で、バケット13の高さ位置HがH1<H<H2の範囲にないと判定した場合は、バケット13の高さ位置HがH2≦H≦H3の範囲にあるか否かの判定(ステップS10)と、H2≦H≦H3の範囲についてオペレータにより制御弁32の自動切換が許容されているか否かの判定(ステップS11)とをこの順に行う。ステップS10でバケット13の高さ位置HがH2≦H≦H3の範囲にあると判定され、ステップS11でH2≦H≦H3の範囲について制御弁32の自動切換が許容されていると判定した場合、メインコントローラ35は電磁パイロット弁44に制御弁32を閉状態に切り換える信号を出力する。なお、ステップS10でH2≦H≦H3の範囲について制御弁32の自動切換が許容されていないと判定した場合には、ステップS7に移行して、電磁パイロット弁44に制御弁32を開状態に切り換える信号を出力する。
【0030】
このように、本実施形態に係る走行振動抑制装置を備えた作業車両は、バケット13が掘削作業や積み込み作業を行う際の高さ位置にあるときには、制御弁32を閉状態に切り換えて、リフトシリンダ16と液圧アキュムレータ31との間の作動油の流通を遮断するので、バケット13の動揺を防止し作業を違和感無く行うことができ、オペレータの違和感や不安感を取り除くことができる。また、バケット13が走行時の高さ位置にあるときには、制御弁32を開状態に切り換えて、リフトシリンダ16と液圧アキュムレータ31との間で作動油を流通させるので、リフトシリンダ16のボトム圧変動を液圧アキュムレータ31のダンパ効果によって緩和することができ、ホイールローダ1の走行安定性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、ホイールローダ等の作業車両における操作性及び走行安定性の改善に利用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 ホイールローダ
2 キャブ
3 後部車体
4,10,12,14,15,17,20,21 連結ピン
5 前部車体
6 後輪
7 前輪
8 フロント作業機
9 走行振動抑制装置
11 アーム
13 バケット(作業具)
16 リフトシリンダ
16a ロッド側室
16b ボトム側室
18 ベルクランク
19 リンク部材
22 バケット傾斜シリンダ
31 液圧アキュムレータ
32 制御弁
33 ライドコントロール部
34 油圧回路
35 メインコントローラ
36 エンジン
37 トランスミッション
38 エンジンコントローラ
39 ライドコントロールスイッチ
40 角度センサ
41 モニタユニット
42 インジケータ
43 作動油タンク
44 電磁パイロット弁
45 パイロットポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業具を所定の可動範囲内で上下動するリフトシリンダと、制御弁を介して前記リフトシリンダに接続された液圧アキュムレータと、前記制御弁を開閉するライドコントロール部とを備えた作業車両において、
前記ライドコントロール部は、前記作業具の高さ位置に応じた検出信号を出力するセンサと、前記検出信号に応じた前記制御弁の切換信号を出力するコントローラとを有し、
前記コントローラは、前記作業具の高さ位置が前記可動範囲の下限位置からその上方に設定された第1の高さ位置の間にあると判定したとき、及び前記可動範囲の上限位置からその下方の前記第1の高さ位置よりも上方に設定された第2の高さ位置にあると判定したときには、前記制御弁を閉状態に切り換える切換信号を出力し、前記作業具の高さ位置が前記第1の高さ位置を超え、かつ前記第2の高さ位置未満であると判定したときには、前記制御弁を開状態に切り換える切換信号を出力することを特徴とする走行振動抑制装置を備えた作業車両。
【請求項2】
前記コントローラは、前記可動範囲の下限位置から前記第1の高さ位置までの間、前記第1の高さ位置から前記第2の高さ位置までの間、及び前記第2の高さ位置から前記可動範囲の上限位置までの間について、前記検出信号に応じた前記切換信号の出力を可能にするフラグ又は不可能にするフラグの記憶領域を有しており、当該記憶領域に前記検出信号に応じた前記切換信号の出力を可能にするフラグが記憶された前記作業機の高さ位置についてのみ、前記検出信号に応じた前記切換信号の出力を行うことを特徴とする請求項1に記載の走行振動抑制装置を備えた作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−193509(P2012−193509A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56636(P2011−56636)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【出願人】(509241041)株式会社KCM (35)
【Fターム(参考)】