説明

走行支援装置及び方法

【課題】車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速との調和を図り、車輌を安定的に走行させる技術を提供する。
【解決手段】車線境界を示す道路標示又は走行不可域を基準にして車輌の走行可能な走路を設定し、当該走路からの車輌逸脱時に、車輌を走路内で走行させるように補助を行う走行支援装置であって、車輌が走路を超えないための目標ヨーレートYtrgよりも実際のヨーレートYreaが小さい場合にその差△Yに応じて、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速とを個別に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援装置及び走行支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車線境界を示す道路指標としての道路上の2本の白線間の中央を注視点とし、車輌を注視点に到達させるのに必要なヨーレートを算出する。そして、この必要ヨーレートと実際のヨーレートとの偏差が、閾値を超えるときに車線逸脱の可能性があると判定し、車輌を制動する(車速の減速を行う)技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の技術によると、的確に車線逸脱を検出し、車線逸脱時に車速の減速を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−079895号公報
【特許文献2】特開2001−114081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術にも開示された、車輌を走路内で走行させるように補助を行う走行支援装置では、車速を減速させて補助を行うと不必要に車輌が減速して走行を妨げる場合がある。よって、車輌の操舵で補助を行うことも望ましい。しかし一方で、車輌の操舵のみで補助を行うと、突入速度が速い場合に非常に大きなヨーレート又は横加速度が生じてしまい、車輌が不安定になったり運転者がオーバーライドできなかったりする。このように、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際には車輌の操舵と車速の減速とのどちらか一方に限定して補助することは望ましくなく、状況に応じて補助を変更する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速との調和を図り、車輌を安定的に走行させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
車線境界を示す道路標示又は走行不可域を基準にして車輌の走行可能な走路を設定し、当該走路からの車輌逸脱時に、車輌を前記走路内で走行させるように補助を行う走行支援装置であって、
車輌の前記走路逸脱を回避するための横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合にその差に応じて、又は、車輌と前記走路境界とのヨー角に応じて、車輌を前記走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速とを個別に制御することを特徴とする走行支援装置である。
【0007】
本発明によると、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速との調和を図ることができ、車輌を安定的に走行させることができる。
【0008】
ここで、横移動を示すパラメータとは、ヨーレートや横加速度等である。横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合、つまり、目標ヨーレート若しくは目標横加速度等よりも実際のヨーレート若しくは実際の横加速度等が小さい場合とは、実際のヨーレート若しくは実際の横加速度等が必要量よりも小さく、このまま運転者が車輌を操
作しても車輌の走路逸脱を回避することができない場合である。また、車線境界を示す道路標示とは、道路表面における、白線、黄線、点線等の線、道路鋲、発光体等といった中央分離帯や車線間の仕切り、アスファルトと砂利との境界といった車道と車道以外との境界等が挙げられる。走行不可域とは、側壁、縁石、歩行者、自転車、他車輌等の障害物や、側溝、段差等の車輌走行平面と高低差のある領域が挙げられる。走行不可域には、車輌が走行できない領域の他に、車輌を走行させたくない領域や車輌の走行が好ましくない領域が含まれる。
【0009】
車輌を前記走路内で走行させるように補助を行う際に、車速の減速を行わず車輌の操舵のみ行うことと、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うことと、先に車速を減速させてから車輌の操舵を行うこととのいずれかを選択するとよい。
【0010】
本発明によると、横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合のその差やヨー角に合わせた補助を行うことができ、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速との調和を図ることができ、車輌を安定的に走行させることができる。
【0011】
車輌が前記走路を超えないための横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合にその差が小さいとき、又は、車輌と前記走路境界とのヨー角が小さいときは、車輌を前記走路内で走行させるように補助を行う際に、車速の減速を行わず車輌の操舵のみ行い、
車輌が前記走路を超えないための横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合にその差が中位のとき、又は、車輌と前記走路境界とのヨー角が中位のときは、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行い、
車輌が前記走路を超えないための横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合にその差が大きいとき、又は、車輌と前記走路境界とのヨー角が大きいときは、先に車速を減速させてから車輌の操舵を行うとよい。
【0012】
本発明によると、横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合のその差やヨー角の大きさを3段階に分けて3通りの補助を行うことができ、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速との調和を図ることができ、車輌を安定的に走行させることができる。
【0013】
また本発明は、
車線境界を示す道路標示又は走行不可域を基準にして車輌の走行可能な走路を設定し、当該走路からの車輌逸脱時に、車輌を前記走路内で走行させるように補助を行う走行支援方法であって、
車輌の前記走路逸脱を回避するための横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合にその差に応じて、又は、車輌と前記走路境界とのヨー角に応じて、車輌を前記走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速とを個別に制御することを特徴とする走行支援方法である。
【0014】
本発明によっても、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速との調和を図ることができ、車輌を安定的に走行させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速との調和を図ることができ、車輌を安定的に走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係る運転支援装置の構成を機能別に示すブロック図である。
【図2】従来の走行支援装置が補助を行う際の状況を示す図である。
【図3】目標ヨーレート及び目標横加速度を算出するための概念図である。
【図4】実施例1に係る走行支援装置の目標ヨーレートから実際のヨーレートを差し引いた差に応じた制御を示す図である。
【図5】実施例1に係る制御量演算制御ルーチン1を示すフローチャートである。
【図6】実施例2に係る走行支援装置の目標横加速度から実際の横加速度を差し引いた差に応じた制御を示す図である。
【図7】実施例2に係る制御量演算制御ルーチン2を示すフローチャートである。
【図8】実施例3に係る走行支援装置のヨー角に応じた制御を示す図である。
【図9】実施例3に係る制御量演算制御ルーチン3を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。ここでは、車線や走行不可域を認識して車輌の走路を設定し、設定された走路からの逸脱を回避するための運転支援処理を行う運転支援装置について説明する。なおここでいう運転支援処理は、車輌が緊急停止してしまう場合や車輌と障害物との衝突が不可避な場合に実行される衝突被害軽減処理より早く実行される。また、以下の実施例において説明する構成は、本発明の一実施態様を示すものであり、本発明の構成を限定するものではない。
【0018】
<実施例1>
(運転支援装置)
図1は、本発明の実施例1に係る運転支援装置の構成を機能別に示すブロック図である。図1に示すように、車輌には、運転支援用の電子制御ユニット(ECU)1が搭載されている。
【0019】
ECU1は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、I/Oインターフェイス等を備えた電子制御ユニットである。ECU1には、レーダ装置2、車外用カメラ3、ドライバー用カメラ4、ヨーレートセンサ5a、横加速度(横G)センサ5b、車輪速センサ6、ブレーキセンサ7、アクセルセンサ8、ウィンカースイッチ9、舵角センサ10、操舵トルクセンサ11等の各種センサが電気的に接続され、それらセンサの出力信号がECU1へ入力されるようになっている。
【0020】
レーダ装置2は、車輌の前部に取り付けられ、車輌の前方へミリ波を送信すると共に車外の障害物により反射された反射波を受信することにより、車輌に対する障害物の相対位置に関する情報(例えば座標情報)を出力する。車外用カメラ3は、車室内において車輌前方を視野に捉えることができる位置に配置され、車輌前方の画像を出力する。ドライバー用カメラ4は、車室内において運転者を視野に捉えることができる位置に配置され、運転者の画像を出力する。ヨーレートセンサ5aは、車体に取り付けられ、車輌のヨーレートに相関する電気信号を出力する。横加速度センサ5bは、車体に取り付けられ、車輌が旋回する際の横方向加速度に相関する電気信号を出力する。車輪速センサ6は、車輌の車輪に取り付けられ、車輌の走行速度に相関する電気信号を出力するセンサである。
【0021】
ブレーキセンサ7は、車室内のブレーキペダルに取り付けられ、ブレーキペダルの操作トルク(踏力)に相関する電気信号を出力する。アクセルセンサ8は、車室内のアクセルペダルに取り付けられ、アクセルペダルの操作トルク(踏力)に相関する電気信号を出力する。ウィンカースイッチ9は、車室内のウィンカーレバーに取り付けられ、ウィンカーレバーが操作されたときにウィンカー(方向指示器)が示す方向に相関する電気信号を出力する。舵角センサ10は、車室内のステアリングホイールに接続されたステアリングロ
ッドに取り付けられ、ステアリングホイールの中立位置からの回転角度に相関する電気信号を出力する。操舵トルクセンサ11は、ステアリングロッドに取り付けられ、ステアリングホイールに入力されるトルク(操舵トルク)に相関する電気信号を出力する。
【0022】
また、ECU1には、ブザー12、表示装置13、電動パワーステアリング(EPS)14、電子制御式ブレーキ(ECB)15等の各種機器が接続され、それら各種機器がECU1によって電気的に制御されるようになっている。
【0023】
ブザー12は、車室内に取り付けられ、警告音等を出力する装置である。表示装置13は、車室内に取り付けられ、各種メッセージや警告灯を表示する装置である。電動パワーステアリング(EPS)14は、電動モータが発生するトルクを利用して、ステアリングホイールの操作を補助する装置である。電子制御式ブレーキ(ECB)15は、各車輪に設けられた摩擦ブレーキの作動油圧(ブレーキ油圧)を電気的に調整する装置である。
【0024】
ECU1は、上記した各種センサの出力信号を利用して各種機器を制御するために、以下のような機能を有している。すなわち、ECU1は、障害物情報処理部100、車線情報処理部101、意識低下判定部102、運転者意図判定部103、統合認識処理部104、共通支援判定部105、警報判定部106、制御判定部107、及び、制御量演算部108を備えている。
【0025】
障害物情報処理部100は、レーダ装置2から出力される複数の障害物等の走行不可域の座標情報に基づいて、複数の走行不可域を回避することができる回帰直線を近似的に求め、その回帰直線の座標情報や回帰直線に対する車輌のヨー角等を含む情報を生成する。また、レーダ装置2により単体の障害物等の走行不可域が検出された場合は、その走行不可域の座標情報や走行不可域に対する車輌のヨー角に関する情報も生成する。なお、障害物情報処理部100は、車外用カメラ3により撮像された画像に基づいて、走行不可域に関する情報を生成してもよい。走行不可域とは、側壁、縁石、歩行者、自転車、他車輌等の障害物や、側溝、段差等の車輌走行平面と高低差のある領域が挙げられる。走行不可域には、車輌が走行できない領域の他に、車輌を走行させたくない領域や車輌の走行が好ましくない領域が含まれる。
【0026】
車線情報処理部101は、車外用カメラ3により撮像された画像に基づいて、車線に関する情報や車線に対する車輌の姿勢に関する情報を生成する。車線に関する情報は、車線境界を示す道路標示に関する情報や、当該道路標示で規定される車線の幅に関する情報である。車線境界を示す道路標示とは、道路表面における、白線、黄線、点線等の線、道路鋲、発光体等といった中央分離帯や車線間の仕切り、アスファルトと砂利との境界といった車道と車道以外との境界等が挙げられる。車線に対する車輌の姿勢に関する情報は、車線境界を示す道路標示と車輌との距離に関する情報、車線中央部に対する車輌位置のオフセット量に関する情報、車線境界を示す道路標示に対する車輌進行方向のヨー角に関する情報である。なお、車輌がナビゲーションシステムを搭載している場合には、車線情報処理部101は、ナビゲーションシステムが有する地図情報とGPS情報とから車線に関する情報を生成してもよい。
【0027】
意識低下判定部102は、ドライバー用カメラ4により撮像された画像に基づいて、運転者の意識低下度(覚醒度)を判定する。意識低下判定部102は、ドライバー用カメラ4により撮像された画像から運転者の閉眼時間や閉眼頻度を演算し、閉眼時間又は閉眼頻度が上限値を超えたときに運転者の意識が低下していると判定(覚醒度が低いと判定)する。また、意識低下判定部102は、ドライバー用カメラ4により撮像された画像から運転者の顔の向きや視線の方向が車輌進行方向から逸脱している時間を演算し、算出された時間が上限値を超えたときに運転者が脇見をしていると判定してもよい。
【0028】
運転者意図判定部103は、車輪速センサ6、ブレーキセンサ7、アクセルセンサ8、ウィンカースイッチ9、舵角センサ10、及び操舵トルクセンサ11の出力信号に基づいて、ブレーキペダルの操作量の変化、アクセルペダルの操作量の変化、或いはステアリングホイールの操作(操舵)量の変化が、運転者の意図に因るものであるか否かを判別する。
【0029】
統合認識処理部104は、障害物情報処理部100により生成された情報と、車線情報処理部101により生成された情報とに基づいて、車輌が走行可能な走路を設定し、走路境界に対する車輌のヨー角や、走路中央部に対する車輌のオフセット量を求める。なお、車線の幅が狭い道路においては、運転者は、車輌を車線から逸脱させざるを得ない場合がある。これに対し、統合認識処理部104は、車線の幅が狭い道路については、車線境界を示す道路標示に関する情報と、車線の周囲に存在する走行不可域に関する情報と、に基づいて、当該道路標示を逸脱して走路を設定するようにしてもよい。つまり、統合認識処理部104は、車線境界を示す道路標示から当該道路標示を逸脱する仮の走路を設定し、その仮の走路と走行不可域とから当該道路標示を逸脱する正規の走路を設定するようにしてもよい。また、統合認識処理部104は、障害物情報処理部100から単体の走行不可域に関する情報を受け取った場合は、その走行不可域の長さを道路と平行に延長することにより、走路を設定するようにしてもよい。すなわち、統合認識処理部104は、座標上の点として検出された走行不可域について、座標上の線とみなして走路の設定を行うようにしてもよい。その際の延長量(線の長さ)は、車輪速センサ6の出力信号(車速)が高い時や線に対する車輌のヨー角が大きい時は、車速が低い時や線に対するヨー角が小さい時より長くされてもよい。
【0030】
共通支援判定部105は、統合認識処理部104により生成された情報と、意識低下判定部102の判定結果と、運転者意図判定部103の判定結果と、に基づいて、運転支援処理を実行するか否かを判別する。共通支援判定部105は、意識低下判定部102により運転者の意識が低下している、或いは運転者が脇見をしていると判定された場合に、運転支援処理の実行を許可する。また、共通支援判定部105は、運転者意図判定部103により運転者が意図的な操作を行っていると判定された場合には、運転支援処理の実行を制限する。
【0031】
警報判定部106は、共通支援判定部105により運転支援処理の実行が許可された場合に、ブザー12の鳴動タイミングや、表示装置13による警告メッセージ又は警告灯の表示タイミングを決定する。警報判定部106は、車輌幅方向における車輌と走路境界との距離が予め定めた距離以下になった時や0になった時や、車輌が走路境界を越えた時に、ブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージ又は警告灯に表示を行うようにしてもよい。なお、警報判定部106は、走路境界を基準にブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージ又は警告灯に表示を行うだけでなく、走路境界をポテンシャル的に幅広く捉え、走路から外れる方向程ブザー12の鳴動を大きくしたり表示装置13による警告メッセージ又は警告灯に表示を大きくしたりしてもよい。また、警報判定部106は、車輌幅方向における車輌が走路境界に到達するまでの時間が予め定めた時間以下となった時に、ブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージ又は警告灯に表示を行うようにしてもよい。また、車輌がカーブに進入する場合や車輌がカーブを走行している場合には、警報判定部106は、車輌進行方向における車輌と走路境界との距離が予め定めた距離以下になった時や0になった時や、車輌が走路境界を越えた時に、ブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージ又は警告灯に表示を行うようにしてもよい。また、車輌がカーブに進入する場合や車輌がカーブを走行している場合には、警報判定部106は、車輌進行方向における車輌が走路境界に到達するまでの時間が予め定めた時間以下となった時に、ブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージ又
は警告灯に表示を行うようにしてもよい。これら警報判定部106がブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージ又は警告灯に表示を行うタイミングが走路からの車輌逸脱時に対応する。
【0032】
ここで、警報判定部106がブザー12の鳴動や、表示装置13による警告メッセージ又は警告灯に表示を行うようにさせる、予め定めた距離や予め定めた時間は、車輪速センサ6の出力信号(車速)やヨーレートセンサ5の出力信号(ヨーレート)に応じて変更される値である。車速が高い時は低い時に比べ、予め定めた距離が長く設定され、又は予め定めた時間が長く設定される。また、ヨーレートが大きい時は小さい時に比べ、予め定めた距離が長く設定され、又は予め定めた時間が長く設定される。
【0033】
なお、運転者に対する警告の方法は、ブザー12の鳴動や表示装置13における警告メッセージ又は警告灯の表示に限られず、シートベルトの締め付けトルクを断続的に変化させる方法等を採用してもよい。
【0034】
制御判定部107は、共通支援判定部105により運転支援処理の実行が許可された場合に、走路からの逸脱を回避するために、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるか否かを決定する。制御判定部107は、車輌幅方向における車輌と走路境界との距離が予め定めた距離以下になった時や0になった時や、車輌が走路境界を越えた時に、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるようにしてもよい。また、制御判定部107は、車輌幅方向における車輌が走路境界に到達するまでの時間が予め定めた時間以下となった時に、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるようにしてもよい。また、車輌がカーブに進入する場合や車輌がカーブを走行している場合には、制御判定部107は、車輌進行方向における車輌と走路境界との距離が予め定めた距離以下になった時や0になった時や、車輌が走路境界を越えた時に、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるようにしてもよい。また、車輌がカーブに進入する場合や車輌がカーブを走行している場合には、制御判定部107は、車輌進行方向における車輌が走路境界に到達するまでの時間が予め定めた時間以下となった時に、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるようにしてもよい。これら制御判定部107が電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるタイミングが走路からの車輌逸脱時に対応する。
【0035】
制御判定部107が使用する予め定めた距離や予め定めた時間は、警報判定部106が使用する予め定めた距離や予め定めた時間と同様に車速やヨーレートに応じて変更されるが、警報判定部106が使用する予め定めた距離や予め定めた時間よりも短く設定されるとよい。
【0036】
制御量演算部108は、制御判定部107により電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の作動要求が発生した時に、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御量を演算すると共に、算出された制御量に従って電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させる。なお、電子制御式ブレーキ(ECB)15が作動する際に、車輌の左右輪の摩擦ブレーキに対して異なるブレーキ油圧が印加されると、電動パワーステアリング(EPS)14により発生させられるヨーレートと干渉するヨーレートが発生してしまう。そのため、左右輪の摩擦ブレーキに対して同等のブレーキ油圧が印加されることが望ましい。なお、制御量演算部108は、走路境界を基準に電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させるだけでなく、走路境界をポテンシャル的に幅広く捉え、走路から外れる方向程その制御量を大きくするもので
もよい。制御量演算部108に関する詳細な説明は後述する。
【0037】
なお、車輌を減速させる方法は、電子制御式ブレーキ(ECB)15により摩擦ブレーキを作動させる方法に限られず、車輌の運動エネルギを電気エネルギに変換(回生)させる方法や、変速機の変速比を変更させてエンジンブレーキを増大させる方法を用いてもよい。
【0038】
以上述べた運転支援装置によれば、障害物等の走行不可域や車線に基づいて設定された走路からの逸脱を運転者に警告したり、走路逸脱を回避するための操作を補助したりすることができる。
【0039】
(制御量演算制御)
上記で説明した車輌を走路内で走行させるように補助を行う走行支援装置では、車速を減速させて補助を行うと不必要に車輌が減速して走行を妨げる場合がある。例えば、図2は、従来の走行支援装置が補助を行う際の状況を示す図である。図2(a)の状況は浅い角度で走路境界へ突入している状況であり、図2(b)の状況は深い角度で走路境界へ突入している状況である。図2に示すように、走行支援装置が車輌の速度Vと走路境界までの距離Lとに基づいて補助として車速の減速を行う場合には、図2(a),(b)の両方とも速度Vと距離Lとが同一で制御開始値に達するので、走行支援装置は車速の減速という補助を行ってしまう。しかし、図2(a)の状況では、走路逸脱を回避するために必要なヨーレートが小さく、車輌の操舵のみ行うもので足りる。図2(a)の状況では不必要に車速を減速して走行を妨げてしまうことになる。よってこのような場合には、車輌の操舵で補助を行うことも望ましい。しかし一方で、車輌の操舵のみで補助を行うと、突入速度が速い場合に非常に大きなヨーレート又は横加速度等が生じてしまい、車輌が不安定になったり運転者がオーバーライドできなかったりする。このように、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際には車輌の操舵と車速の減速とのどちらか一方に限定して補助することは望ましくなく、状況に応じて補助を変更する必要がある。
【0040】
そこで、本実施例に係る走行支援装置では、車輌が走路を超えないための目標ヨーレートよりも実際のヨーレートが小さい場合にその差に応じて、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速とを個別に制御するようにした。
【0041】
以下、本実施例に係る制御量演算部108の機能について詳しく説明する。
【0042】
制御量演算部108は、制御判定部107により電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の作動要求が発生した時に、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御量を演算すると共に、算出された制御量に従って電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させる。ここで、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御量を演算する際には、先ず、制御量演算部108は、統合認識処理部104により生成された情報と、車輪速センサ6の出力信号(車速)と、ヨーレートセンサ5aの出力信号(ヨーレート)と、をパラメータとして、走路逸脱を回避するために必要な目標ヨーレートを演算する。
【0043】
詳細には、制御量演算部108は、図3に示すように、走路境界との相対距離をD、車輌の速度(車速)をV、走路境界に対する車輌のヨー角をθ、衝突余裕時間をTとした場合に、以下の式により目標ヨーレートYtrgを演算する。図3は、目標ヨーレートを算出するための概念図である。
T=D/Vsinθ
Ytrg=θ/T
∴Ytrg=(θ・Vsinθ)/D
【0044】
そして、制御量演算部108は、目標ヨーレートYtrgを引数として、電動パワーステアリング(EPS)14の制御量(操舵トルク)と電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御量(ブレーキ油圧)とを求める。その際、実際のヨーレートYreaをヨーレートセンサ5aから検出し、目標ヨーレートYtrgよりも実際のヨーレートYreaが小さいか判別する。目標ヨーレートYtrgよりも実際のヨーレートYreaが大きい場合には、目標ヨーレートYtrgを超える程運転者が車輌を操作しているので、制御量演算部108は、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させないように制御量を0と決定する。
【0045】
一方、目標ヨーレートYtrgよりも実際のヨーレートYreaが小さい場合には、目標ヨーレートYtrgから実際のヨーレートYreaを差し引いた差△Yを算出し、その差△Yに応じて、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御を個別に決定する。図4は、走行支援装置の目標ヨーレートから実際のヨーレートを差し引いた差に応じた制御を示す図である。図4に示すように、差△Yの大中小の3段階の大きさによって、電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御として、後述するように3通りのうちいずれか一つを選択する。差△Yが小さいときは、走路逸脱の回避を操舵の補助のみで達成し得るので、車速の減速を行わず車輌の操舵のみ行うように、電子制御式ブレーキ(ECB)15は作動させず、電動パワーステアリング(EPS)14を作動させるよう決定する。差△Yが中位のときは、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うように、電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御タイミングを合わせるよう決定する。差△Yが大きいときは、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うと車輌が不安定になるので、先に車速を減速させてから車輌の操舵を行うように、電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御タイミングを電動パワーステアリング(EPS)14の制御タイミングよりも先となるよう決定する。また、差△Yと操舵トルクの制御量との関係、及び差△Yとブレーキ油圧の制御量との関係は、予めマップ化されているとよい。なお、目標ヨーレートYtrgが予め定めた値(走路逸脱の回避を操舵のみで達成し得るヨーレートの最大値)より小さい時には、電子制御式ブレーキ(ECB)15のブレーキ油圧は0に設定されてもよい。これにより、制御量演算部108は、決定された制御及び算出された制御量に従って電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させる。
【0046】
このように走行支援装置の電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御を行うと、目標ヨーレートYtrgよりも実際のヨーレートYreaが小さい場合のその差△Yの大きさを3段階に分けて3通りの補助を行うことができ、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速との調和を図ることができ、車輌を安定的に走行させることができる。
【0047】
(制御量演算制御ルーチン1)
制御量演算部108における制御量演算制御ルーチン1について、図5に示すフローチャートに基づいて説明する。図5は、制御量演算制御ルーチン1を示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU1の制御量演算部108によって実行される。
【0048】
図5に示すルーチンが開始されると、S101では、目標ヨーレートYtrgを演算する。S102では、実際のヨーレートYreaを検出する。
【0049】
S103では、目標ヨーレートYtrgから実際のヨーレートYreaを差し引いた差
△Yが第1閾値Sth1以上であるか否かを判別する。第1閾値Sth1は、差△Yの大きさを小とそれ以外とに分けて電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御を変更する閾値であり、予め実験や検証等によって求められている。第1閾値Sth1は、車速が速い程小さくしたり、車線幅が狭い程小さくしたり、回避方向に障害物が存在する場合に小さくしたりしてもよい。S103において、差△Yが第1閾値Sth1よりも小さいと否定判定された場合には、S104へ移行する。S103において、差△Yが第1閾値Sth1以上であると肯定判定された場合には、S105へ移行する。
【0050】
S104では、差△Yが小さいときであるので、走路逸脱の回避を操舵の補助のみで達成し得るように、車速の減速を行わず車輌の操舵のみ行うように、電子制御式ブレーキ(ECB)15は作動させず、電動パワーステアリング(EPS)14を作動させるよう決定すると共に、差△Yと操舵トルクの制御量との関係のマップから制御量を算出し、制御を行う。
【0051】
S105では、目標ヨーレートYtrgから実際のヨーレートYreaを差し引いた差△Yが第2閾値Sth2以上であるか否かを判別する。第2閾値Sth2は、差△Yの大きさを中と大とに分けて電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御を変更する閾値であり、予め実験や検証等によって求められている。第2閾値Sth2は、車速が速い程小さくしたり、車線幅が狭い程小さくしたり、回避方向に障害物が存在する場合に小さくしたりしてもよい。S105において、差△Yが第2閾値Sth2よりも小さいと否定判定された場合には、S106へ移行する。S105において、差△Yが第2閾値Sth2以上であると肯定判定された場合には、S107へ移行する。
【0052】
S106では、差△Yが中位のときであるので、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うように、電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御タイミングを合わせるよう決定すると共に、差△Yと操舵トルクの制御量との関係のマップ及び差△Yとブレーキ油圧の制御量との関係のマップから各制御量を算出し、制御を行う。
【0053】
S107では、差△Yが大きいときであるので、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うと車輌が不安定になることを回避するように、先に車速を減速させてから車輌の操舵を行うように、電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御タイミングを電動パワーステアリング(EPS)14の制御タイミングよりも先となるよう決定すると共に、差△Yと操舵トルクの制御量との関係のマップ及び差△Yとブレーキ油圧の制御量との関係のマップから各制御量を算出し、制御を行う。
【0054】
以上の本ルーチンであると、差△Yの大きさを3段階に分けて3通りの補助を行うことができる。
【0055】
<実施例2>
上記実施例1は、車輌が走路を超えないための目標ヨーレートYtrgよりも実際のヨーレートYreaが小さい場合にその差△Yに応じて、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速とを個別に制御するようにしていた。しかし、本発明はこれに限られない。車輌が走路を超えないための目標横加速度Gtrgよりも実際の横加速度Greaが小さい場合にその差△Gに応じて、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速とを個別に制御するようにしてもよい。本実施例では、このような横加速度に基づく制御を説明する。なお、上記実施例1で説明した事項についてはその説明を省略する。このように、横移動を示すパラメータとしては、ヨー
レートの他にも本実施例のように横加速度でもよいし他のパラメータでもよい。
【0056】
(制御量演算制御)
以下、本実施例に係る制御量演算部108の機能について詳しく説明する。
【0057】
制御量演算部108は、制御判定部107により電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の作動要求が発生した時に、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御量を演算すると共に、算出された制御量に従って電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させる。ここで、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御量を演算する際には、先ず、制御量演算部108は、統合認識処理部104により生成された情報と、車輪速センサ6の出力信号(車速)と、横加速度センサ5bの出力信号(横加速度)と、をパラメータとして、走路逸脱を回避するために必要な目標横加速度を演算する。
【0058】
詳細には、制御量演算部108は、図3に示すように、走路境界との相対距離をD、車輌の速度(車速)をV、走路境界に対する車輌のヨー角をθ、衝突余裕時間をTとした場合に、以下の式により目標横加速度Gtrgを演算する。図3は、目標横加速度を算出するための概念図である。
T=D/Vsinθ
Gtrg=Vsinθ/T
∴Gtrg=(Vsinθ・Vsinθ)/D
【0059】
そして、制御量演算部108は、目標横加速度Gtrgを引数として、電動パワーステアリング(EPS)14の制御量(操舵トルク)と電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御量(ブレーキ油圧)とを求める。その際、実際の横加速度Greaを横加速度センサ5bから検出し、目標横加速度Gtrgよりも実際の横加速度Greaが小さいか判別する。目標横加速度Gtrgよりも実際の横加速度Greaが大きい場合には、目標横加速度Gtrgを超える程運転者が車輌を操作しているので、制御量演算部108は、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させないように制御量を0と決定する。
【0060】
一方、目標横加速度Gtrgよりも実際の横加速度Greaが小さい場合には、目標横加速度Gtrgから実際の横加速度Greaを差し引いた差△Gを算出し、その差△Gに応じて、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御を個別に決定する。図6は、走行支援装置の目標横加速度から実際の横加速度を差し引いた差に応じた制御を示す図である。図6に示すように、差△Gの大中小の3段階の大きさによって、電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御として、後述するように3通りのうちいずれか一つを選択する。差△Gが小さいときは、走路逸脱の回避を操舵の補助のみで達成し得るので、車速の減速を行わず車輌の操舵のみ行うように、電子制御式ブレーキ(ECB)15は作動させず、電動パワーステアリング(EPS)14を作動させるよう決定する。差△Gが中位のときは、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うように、電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御タイミングを合わせるよう決定する。差△Gが大きいときは、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うと車輌が不安定になるので、先に車速を減速させてから車輌の操舵を行うように、電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御タイミングを電動パワーステアリング(EPS)14の制御タイミングよりも先となるよう決定する。また、差△Gと操舵トルクの制御量との関係、及び差△Gとブレーキ油圧の制御量との関係は、予めマップ化されているとよい。なお、目標横加速度Gtrgが予め定めた値(走路逸脱の回避を操舵のみで達成し得る横加速度の最大値)より小さい時には
、電子制御式ブレーキ(ECB)15のブレーキ油圧は0に設定されてもよい。これにより、制御量演算部108は、決定された制御及び算出された制御量に従って電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させる。
【0061】
このように走行支援装置の電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御を行うと、目標横加速度Gtrgよりも実際の横加速度Greaが小さい場合のその差△Gの大きさを3段階に分けて3通りの補助を行うことができ、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速との調和を図ることができ、車輌を安定的に走行させることができる。
【0062】
(制御量演算制御ルーチン2)
制御量演算部108における制御量演算制御ルーチン2について、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。図7は、制御量演算制御ルーチン2を示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU1の制御量演算部108によって実行される。
【0063】
図7に示すルーチンが開始されると、S201では、目標横加速度Gtrgを演算する。S202では、実際の横加速度Greaを検出する。
【0064】
S203では、目標横加速度Gtrgから実際の横加速度Greaを差し引いた差△Gが第3閾値Sth3以上であるか否かを判別する。第3閾値Sth3は、差△Gの大きさを小とそれ以外とに分けて電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御を変更する閾値であり、予め実験や検証等によって求められている。第3閾値Sth3は、車速が速い程小さくしたり、車線幅が狭い程小さくしたり、回避方向に障害物が存在する場合に小さくしたりしてもよい。S203において、差△Gが第3閾値Sth3よりも小さいと否定判定された場合には、S204へ移行する。S203において、差△Gが第3閾値Sth3以上であると肯定判定された場合には、S205へ移行する。
【0065】
S204では、差△Gが小さいときであるので、走路逸脱の回避を操舵の補助のみで達成し得るように、車速の減速を行わず車輌の操舵のみ行うように、電子制御式ブレーキ(ECB)15は作動させず、電動パワーステアリング(EPS)14を作動させるよう決定すると共に、差△Gと操舵トルクの制御量との関係のマップから制御量を算出し、制御を行う。
【0066】
S205では、目標横加速度Gtrgから実際の横加速度Greaを差し引いた差△Gが第4閾値Sth4以上であるか否かを判別する。第4閾値Sth4は、差△Gの大きさを中と大とに分けて電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御を変更する閾値であり、予め実験や検証等によって求められている。第4閾値Sth4は、車速が速い程小さくしたり、車線幅が狭い程小さくしたり、回避方向に障害物が存在する場合に小さくしたりしてもよい。S205において、差△Gが第4閾値Sth4よりも小さいと否定判定された場合には、S206へ移行する。S205において、差△Gが第4閾値Sth4以上であると肯定判定された場合には、S207へ移行する。
【0067】
S206では、差△Gが中位のときであるので、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うように、電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御タイミングを合わせるよう決定すると共に、差△Gと操舵トルクの制御量との関係のマップ及び差△Gとブレーキ油圧の制御量との関係のマップから各制御量を算出し、制御を行う。
【0068】
S207では、差△Gが大きいときであるので、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うと車輌が不安定になることを回避するように、先に車速を減速させてから車輌の操舵を行うように、電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御タイミングを電動パワーステアリング(EPS)14の制御タイミングよりも先となるよう決定すると共に、差△Gと操舵トルクの制御量との関係のマップ及び差△Gとブレーキ油圧の制御量との関係のマップから各制御量を算出し、制御を行う。
【0069】
以上の本ルーチンであると、差△Gの大きさを3段階に分けて3通りの補助を行うことができる。
【0070】
<実施例3>
上記実施例2は、車輌が走路を超えないための目標横加速度Gtrgよりも実際の横加速度Greaが小さい場合にその差△Gに応じて、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速とを個別に制御していた。しかし、上記実施例1,2以外の方法でもよい。車輌と走路境界とのヨー角θに応じて、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速とを個別に制御するようにしてもよい。本実施例では、このようなヨー角θに基づく制御を説明する。なお、上記実施例1,2で説明した事項についてはその説明を省略する。
【0071】
(制御量演算制御)
以下、本実施例に係る制御量演算部108の機能について詳しく説明する。
【0072】
制御量演算部108は、制御判定部107により電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の作動要求が発生した時に、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御量を演算すると共に、算出された制御量に従って電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させる。ここで、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御量を演算する際には、先ず、制御量演算部108は、統合認識処理部104により生成された情報等をパラメータとして、走路逸脱を回避するために必要な走路境界に対する車輌のヨー角θを演算する。なお、ヨー角θは、統合認識処理部104で予め求められてもよい。
【0073】
そして、制御量演算部108は、ヨー角θを引数として、電動パワーステアリング(EPS)14の制御量(操舵トルク)と電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御量(ブレーキ油圧)とを求める。
【0074】
ヨー角θを算出し、ヨー角θに応じて、電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御を個別に決定する。図8は、走行支援装置のヨー角に応じた制御を示す図である。図8に示すように、ヨー角θの大中小の3段階の大きさによって、電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御として、後述するように3通りのうちいずれか一つを選択する。ヨー角θが小さいときは、走路逸脱の回避を操舵の補助のみで達成し得るので、車速の減速を行わず車輌の操舵のみ行うように、電子制御式ブレーキ(ECB)15は作動させず、電動パワーステアリング(EPS)14を作動させるよう決定する。ヨー角θが中位のときは、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うように、電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御タイミングを合わせるよう決定する。ヨー角θが大きいときは、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うと車輌が不安定になるので、先に車速を減速させてから車輌の操舵を行うように、電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御タイミングを電動パワーステアリング(EPS)14の制御タイミングよりも先となるよ
う決定する。また、ヨー角θと操舵トルクの制御量との関係、及びヨー角θとブレーキ油圧の制御量との関係は、予めマップ化されているとよい。なお、ヨー角θが予め定めた値(走路逸脱の回避を操舵のみで達成し得るヨー角の最大値)より小さい時には、電子制御式ブレーキ(ECB)15のブレーキ油圧は0に設定されてもよい。これにより、制御量演算部108は、決定された制御及び算出された制御量に従って電動パワーステアリング(EPS)14や電子制御式ブレーキ(ECB)15を作動させる。
【0075】
このように走行支援装置の電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御を行うと、ヨー角θの大きさを3段階に分けて3通りの補助を行うことができ、車輌を走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速との調和を図ることができ、車輌を安定的に走行させることができる。
【0076】
(制御量演算制御ルーチン3)
制御量演算部108における制御量演算制御ルーチン3について、図9に示すフローチャートに基づいて説明する。図9は、制御量演算制御ルーチン3を示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU1の制御量演算部108によって実行される。
【0077】
図9に示すルーチンが開始されると、S301では、ヨー角θを演算する。或いは、ヨー角θは、統合認識処理部104で予め求められてもよい。
【0078】
S302では、ヨー角θが第5閾値Sth5以上であるか否かを判別する。第5閾値Sth5は、ヨー角θの大きさを小とそれ以外とに分けて電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御を変更する閾値であり、予め実験や検証等によって求められている。第5閾値Sth5は、車速が速い程小さくしたり、車線幅が狭い程小さくしたり、回避方向に障害物が存在する場合に小さくしたりしてもよい。S302において、ヨー角θが第5閾値Sth5よりも小さいと否定判定された場合には、S303へ移行する。S302において、ヨー角θが第5閾値Sth5以上であると肯定判定された場合には、S304へ移行する。
【0079】
S303では、ヨー角θが小さいときであるので、走路逸脱の回避を操舵の補助のみで達成し得るように、車速の減速を行わず車輌の操舵のみ行うように、電子制御式ブレーキ(ECB)15は作動させず、電動パワーステアリング(EPS)14を作動させるよう決定すると共に、ヨー角θと操舵トルクの制御量との関係のマップから制御量を算出し、制御を行う。
【0080】
S304では、ヨー角θが第6閾値Sth6以上であるか否かを判別する。第6閾値Sth6は、ヨー角θの大きさを中と大とに分けて電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御を変更する閾値であり、予め実験や検証等によって求められている。第6閾値Sth6は、車速が速い程小さくしたり、車線幅が狭い程小さくしたり、回避方向に障害物が存在する場合に小さくしたりしてもよい。S304において、ヨー角θが第6閾値Sth6よりも小さいと否定判定された場合には、S305へ移行する。S304において、ヨー角θが第6閾値Sth6以上であると肯定判定された場合には、S306へ移行する。
【0081】
S305では、ヨー角θが中位のときであるので、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うように、電動パワーステアリング(EPS)14と電子制御式ブレーキ(ECB)15との制御タイミングを合わせるよう決定すると共に、ヨー角θと操舵トルクの制御量との関係のマップ及びヨー角θとブレーキ油圧の制御量との関係のマップから各制御量を算出し、制御を行う。
【0082】
S306では、ヨー角θが大きいときであるので、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うと車輌が不安定になることを回避するように、先に車速を減速させてから車輌の操舵を行うように、電子制御式ブレーキ(ECB)15の制御タイミングを電動パワーステアリング(EPS)14の制御タイミングよりも先となるよう決定すると共に、ヨー角θと操舵トルクの制御量との関係のマップ及びヨー角θとブレーキ油圧の制御量との関係のマップから各制御量を算出し、制御を行う。
【0083】
以上の本ルーチンであると、ヨー角θの大きさを3段階に分けて3通りの補助を行うことができる。
【0084】
<その他>
本発明に係る走行支援装置は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもよい。また、上記実施例は、走行支援装置だけでなく走行支援方法の実施例でもある。
【符号の説明】
【0085】
1:ECU、2:レーダ装置、3:車外用カメラ、4:ドライバー用カメラ、5a:ヨーレートセンサ、5b:横加速度センサ、6:車輪速センサ、7:ブレーキセンサ、8:アクセルセンサ、9:ウィンカースイッチ、10:舵角センサ、11:操舵トルクセンサ、12:ブザー、13:表示装置、14:電動パワーステアリング(EPS)、15:電子制御式ブレーキ(ECB)、100:障害物情報処理部、101:車線情報処理部、102:意識低下判定部、103:運転者意図判定部、104:統合認識処理部、105:共通支援判定部、106:警報判定部、107:制御判定部、108:制御量演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車線境界を示す道路標示又は走行不可域を基準にして車輌の走行可能な走路を設定し、当該走路からの車輌逸脱時に、車輌を前記走路内で走行させるように補助を行う走行支援装置であって、
車輌の前記走路逸脱を回避するための横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合にその差に応じて、又は、車輌と前記走路境界とのヨー角に応じて、車輌を前記走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速とを個別に制御することを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
車輌を前記走路内で走行させるように補助を行う際に、車速の減速を行わず車輌の操舵のみ行うことと、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行うことと、先に車速を減速させてから車輌の操舵を行うこととのいずれかを選択することを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
車輌が前記走路を超えないための横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合にその差が小さいとき、又は、車輌と前記走路境界とのヨー角が小さいときは、車輌を前記走路内で走行させるように補助を行う際に、車速の減速を行わず車輌の操舵のみ行い、
車輌が前記走路を超えないための横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合にその差が中位のとき、又は、車輌と前記走路境界とのヨー角が中位のときは、車輌の操舵と車速の減速とを同時に行い、
車輌が前記走路を超えないための横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合にその差が大きいとき、又は、車輌と前記走路境界とのヨー角が大きいときは、先に車速を減速させてから車輌の操舵を行うことを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項4】
車線境界を示す道路標示又は走行不可域を基準にして車輌の走行可能な走路を設定し、当該走路からの車輌逸脱時に、車輌を前記走路内で走行させるように補助を行う走行支援方法であって、
車輌の前記走路逸脱を回避するための横移動を示すパラメータの目標値よりも実際の値が小さい場合にその差に応じて、又は、車輌と前記走路境界とのヨー角に応じて、車輌を前記走路内で走行させるように補助を行う際の車輌の操舵と車速の減速とを個別に制御することを特徴とする走行支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−76621(P2012−76621A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224157(P2010−224157)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】