説明

起床監視方法および装置

【課題】
本発明の目的は介護者の負担を低減して被介護者の転落を防止できる起床監視方法および装置を提供することにある。
【解決手段】
ベッド4に就寝している被介護者1が起床挙動を行ったことを判定する見守り領域8を設定してベッド4の横方向から見守り領域8を含みカメラ2で撮像する。カメラ2から得られる撮像画像の見守り領域8に占める被介護者1の画像領域の大きさが所定値以上の場合に被介護者1が起床挙動を行っていると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は介護施設等で介護されている高齢の被介護者がベッドから転落するのを防止する起床監視方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家族の介護を受けられない高齢者は老人ホームなどの介護施設で介護を受けている。介護施設で介護されている高齢の被介護者は高齢化に伴い増加している。介護施設で介護されている被介護者は介護ベッドで就寝している。
【0003】
高齢の被介護者は自身でベッドから離床できず、介護者の手助けを必要とする。被介護者が一人で離床しようとするとバランスを崩し、ベッドから転落する虞がある。特に、夜間の就寝時に徘徊癖のある被介護者はベッドから転落する危険性が大きくなる。
【0004】
万一、転落すると、加齢のために骨が脆くなっているので骨折することがある。このため、介護者は被介護者が一人で離床しないように常に監視する必要がある。被介護者が一人で離床しようとした場合にはナースセンターから介護者(看護師や介護士など)が被介護者の就寝している寝室へ迅速に駆けつけ転落を防止することになる。
【0005】
従来、被介護者が一人で離床することの監視は、被介護者の状態や動作を検出する複数種類のセンサーをベッドに設置し、センサーが動作するとカメラで撮像した被介護者画像をナースセンターに表示して行っている。このようなことは、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−105885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術は被介護者の状態や動作を検出する複数種類のセンサーをベッドに設置し、センサーの動作により被介護者画像をナースセンターに表示して被介護者が一人で離床しようとすることを監視している。
【0008】
しかしながら、被介護者の就寝体勢や寝返りなどの挙動によりセンサーが動作してナースセンターに通報することになる。つまり誤報することが多くなる。このため、介護者は誤報の毎に監視をすることになり監視労力の負担が増大する。特に、夜間は介護者の人数も少ないために負担が大きくなるという問題点を有する。介護者は誤報が多いと被介護者の監視を行わないようになり、その結果、監視確率が低下せざるを得なくなる。
【0009】
本発明の目的は介護者の負担を低減して被介護者の転落を防止できる起床監視方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴とするところはベッドに就寝している被介護者が起床挙動を行ったことを判定する見守り領域を設定してベッドの横方向から見守り領域を含みカメラで撮像し、カメラから得られる撮像画像の見守り領域に占める被介護者画像領域の大きさが所定値以上の場合に被介護者が起床挙動を行っていると判定するようにしたことにある。
【0011】
具体的には、見守り領域はベッドを構成する柵の上側に被介護者が起き上がりなどの起床挙動(起床兆候挙動)を行ったことを判定するように設定され、被介護者が起床挙動を開始し見守り領域に占める被介護者画像領域の割合が所定値以上の場合に被介護者が起床挙動を行っていると判定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は被介護者が起床挙動(起床兆候挙動)を行ったことを判定する見守り領域を設定し、見守り領域に占める被介護者画像領域の大きさにより被介護者の起床挙動を判定しているので、誤報を少なくできるようになり介護者の負担を低減して被介護者の転落を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
被介護者はベッドに就寝している。ベッドを構成する柵の上側に被介護者が起床挙動を行ったことを判定するための見守り領域を設定する。カメラは見守り領域および被介護者をベッドの横方向から撮像する。監視制御装置はカメラで撮像した撮像画像の見守り領域に占める被介護者画像の割合が所定値以上の場合に被介護者が起床挙動を行っていると判定しナースセンターに通報する。
【実施例】
【0014】
図1に本発明の一実施例を示す。
【0015】
図1において、寝室5にはベッド4が配置されている。ベッド4には転落防止用の柵6が設けられている。ベッド4は横方向から見ると図2(a)のように構成され、被介護者1が就寝している。ベッド4を構成する柵6の上側に被介護者1が起き上がりなどの起床挙動(起床兆候挙動)を行ったことを判定する見守り領域8が設定されている。
【0016】
寝室5の側壁には被介護者1と見守り領域8を含んで撮像するカメラ2が設置されている。カメラ2はベッド4の横方向(略水平方向)から撮像する。カメラ2の撮像領域7はベッド4の上端付近を中心にしてベッド全体が納まるように設定され、図2(a)に点を施した円形状になっている。撮像領域7はカメラ2の撮像画像になる。
【0017】
カメラ2の撮像画像7はパソコンなどで構成される監視制御装置3に入力される。監視制御装置3はカメラ2で撮像した撮像画像7の見守り領域8に占める被介護者1の画像領域の大きさが所定値以上、つまり見守り領域8に占める被介護者画像領域の割合が所定値以上の場合に被介護者1が起床挙動を行っていると判定し警報信号を出力する。
【0018】
監視制御装置3の警報信号は看護師等の介護者が待機しているナースセンター10に設置されている警報スピーカー12に送信される。警報信号はスイッチ11を介して警報スピーカー12に加えられる。スイッチ11は昼間にオフされ、夜間にオンされる。スイッチ11に連動させて監視制御装置3及びカメラ2の電源スイッチもオフしておくことにより節電を図ることができる。
【0019】
監視制御装置3の警報信号は介護施設に設置されている発信器14にも送信される。発信器14は監視制御装置3からの警報信号を無線送信する。発信器14から無線送信された警報信号は携帯受信器15で受信される。携帯受信器15は介護施設内を巡回もしくは待機している看護師や介護士などの介護者が携帯している。
【0020】
この構成において、被介護者1を監視する夜間はナースセンター10のスイッチ11をオンにする。被介護者1は図2(a)に示すように就寝している。カメラ2は被介護者1と見守り領域8を含んだ撮像領域7を撮像している。カメラ2で撮像した撮像領域7の撮像画像7は図2(a)に点を施した円形状になっている。
【0021】
カメラ2の撮像画像7はパソコンなどで構成される監視制御装置3に入力される。監視制御装置3はカメラ2で撮像した撮像画像7の見守り領域8に占める被介護者1の画像領域の大きさが所定値以上、つまり見守り領域8に占める被介護者画像領域の割合が所定値以上の場合に被介護者1が起床挙動を行っていると判定し警報信号を出力する。
【0022】
被介護者1がベッド4で就寝している図2(a)は、見守り領域8内に被介護者1の姿(被介護者画像)がない状態である。監視制御装置3は図2(a)の状態が正常状態であり、「被介護者の起床挙動なし」と判定する。
【0023】
また、被介護者1が寝返りを打って、図2(b)に示すように腕の一部が見守り領域8に入ったとする。監視制御装置3はこの状態における見守り領域8に占める被介護者画像領域が所定値以下であり「被介護者の起床挙動なし」と判定する。
【0024】
監視制御装置3は、例えば見守り領域8の10%以上に被介護者1の画像領域が存在するときに「被介護者の起床挙動あり」と判定する。したがって、監視制御装置3は、被介護者1が寝返りを打った場合、胴体の一部が盛り上がって見守り領域8に一時的に入ったとしても、また腕の一部が見守り領域8にあってもその画像占有領域が僅かで所定値(10%)以下であり「被介護者の起床挙動なし」と判定する。
【0025】
次に、図2(c)に示すように、被介護者1が起き上がろうとしたとする。この状態では見守り領域8に被介護者1の頭があり、更にこの状態から起き上がると被介護者1の画像占有領域が大きくなる。監視制御装置3は見守り領域8に占める被介護者1の画像領域の割合が所定値を越えると「被介護者の起床挙動あり」と判定し警報信号を発生する。
【0026】
監視制御装置3の警報信号はナースセンター10に設置されている警報スピーカー12に送信される。警報信号はスイッチ11を介して警報スピーカー12に加えられる。警報スピーカー12は警報信号を加えられると、「被介護者の起床挙動あり」の旨を報知する。警報スピーカー12は単純な音でなく、例えば「203号室被介護者の起床挙動あり」と音声で報知する。音声発生は、例えば音声ROMと組み合わせるなどの周知技術により容易に実現できる。
【0027】
ナースセンター10に待機していた介護者は「被介護者の起床挙動あり」と報知されると被介護者1の就寝している寝室5に駆けつけ、被介護者1が転落するのを未然に防止する。
【0028】
監視制御装置3の警報信号は介護施設に設置されている発信器14にも送信される。発信器14は監視制御装置3からの警報信号を無線送信する。発信器14から無線送信された警報信号は介護者が携帯している携帯受信器15で受信される。介護者は介護施設内を巡回もしくは待機しているので被介護者1の就寝している寝室5に駆けつけ、被介護者1が転落するのを未然に防止することができる。
【0029】
このように介護者が携帯している携帯受信器15で「被介護者の起床挙動あり」と認識できるようにすると、介護施設に多数の被介護者がいるときに有効になる。
【0030】
このようにして就寝している被介護者を監視するのであるが、被介護者が起床挙動(起床兆候挙動)を行ったことを判定する見守り領域を設定し、見守り領域に占める被介護者画像領域の大きさにより被介護者の起床挙動を判定しているので、誤報を少なくできるようになり介護者の負担を低減して被介護者の転落を防止することができる。
【0031】
また、上述の実施例は被介護者の就寝状態を画像表示して監視するのではなく、監視制御装置の画像処理に基づいて警報信号を発生させるようにしているので被介護者のプライバシーを保護できるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1…被介護者、2…カメラ、3…監視制御装置、4…ベッド、5…寝室、6…柵、7…撮像領域(撮像画像)、8…見守り領域、10…ナースセンター、11…スイッチ、12…警報スピーカー、14…発信器、15…携帯受信器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに就寝している被介護者が起床挙動を行ったことを監視して通報するものであって、前記被介護者が起床挙動を行ったことを判定する見守り領域を設定して前記ベッドの横方向から前記見守り領域を含みカメラで撮像し、前記カメラから得られる撮像画像の前記見守り領域に占める前記被介護者画像領域の大きさが所定値以上の場合に前記被介護者が起床挙動を行っていると判定することを特徴とする起床監視方法。
【請求項2】
ベッドに就寝している被介護者が起床兆候挙動を行ったことを監視してナースセンターに通報するものであって、前記ベッドを構成する柵の上側に前記被介護者が起床兆候挙動を行ったことを判定する見守り領域を設定して前記ベッドの横方向から前記被介護者と前記見守り領域を含みカメラで撮像し、前記カメラから得られる撮像画像の前記見守り領域に占める前記被介護者画像の割合が所定値以上の場合に前記被介護者が起床兆候挙動を行っていると判定し前記ナースセンターに通報することを特徴とする起床監視方法。
【請求項3】
ベッドに就寝している被介護者が起床挙動を行ったことを監視して通報するものであって、前記被介護者が起床挙動を行ったことを判定するために設定した見守り領域を含み前記ベッドの横方向から撮像するカメラと、前記カメラで撮像した撮像画像の前記見守り領域に占める前記被介護者画像領域の大きさが所定値以上の場合に前記被介護者が起床挙動を行っていると判定する監視制御装置を具備することを特徴とする起床監視装置。
【請求項4】
ベッドに就寝している被介護者が起床兆候挙動を行ったことを監視してナースセンターに通報するものであって、前記ベッドを構成する柵の上側に前記被介護者が起床兆候挙動を行ったことを判定するために設定した見守り領域および前記被介護者を前記ベッドの横方向から撮像するカメラと、前記カメラで撮像した撮像画像の前記見守り領域に占める前記被介護者画像の割合が所定値以上の場合に前記被介護者が起床兆候挙動を行っていると判定し前記ナースセンターに通報する監視制御装置を具備することを特徴とする起床監視装置。
【請求項5】
請求項3、4のいずれか1項において、前記カメラは前記ベッドの略水平方向から撮像することを特徴とする起床監視装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−175082(P2006−175082A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372528(P2004−372528)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】