説明

超低粘度ヨウ素含有非晶質フルオロポリマー

硬化部位を備えた少なくとも1種のフルオロポリマーを有するヨウ素含有非晶質フルオロポリマー(フルオロポリマーはASTM D1646に従って100℃で2以下(ML 1+10)のムーニー粘度、及び10dN/cm以下のロールミルに対する剥離強度を有する)、並びにかかるヨウ素含有非晶質フルオロポリマーの製造方法が記載されている。かかるヨウ素含有非晶質フルオロポリマーの硬化生成物に由来する物品もまた記載されている。かかるヨウ素含有非晶質フルオロポリマーに由来する溶液、分散体及びコーティング材もまた記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超低粘度及び改良された加工性を有するヨウ素含有非晶質フルオロポリマー、かかるヨウ素含有非晶質フルオロポリマーの製造方法、かかるヨウ素含有非晶質フルオロポリマーに由来する硬化物品、並びにかかるヨウ素含有非晶質フルオロポリマーに由来する溶液、分散体及びコーティング材に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は2007年9月14日出願の米国特許仮出願第60/972,624号及び2007年9月14日出願の同第60/972,627号(これらの開示はその全体が本明細書へ参考として組み込まれる)の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
本開示は、超低粘度及び改良された加工性を有するヨウ素含有非晶質フルオロポリマー、かかるヨウ素含有非晶質フルオロポリマーの製造方法、かかるヨウ素含有非晶質フルオロポリマーに由来する硬化物品、並びにかかるヨウ素含有非晶質フルオロポリマーに由来する溶液、分散体及びコーティング材に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本開示は硬化部位を備えた第一フルオロポリマーを有するヨウ素含有非晶質フルオロポリマーを提供する。第一フルオロポリマーは、25℃かつ6.3rad/秒にて300kPa以上の、及び25℃かつ0.1rad/秒にて200kPa以上の貯蔵弾性率を有する。
【0005】
幾つかの実施形態では、ヨウ素含有非晶質フルオロポリマーは、ASTM D1646−06タイプAに従って100℃で4以下(ML 1+10)のムーニー粘度及び10dN/cm以下のロールミルに対する剥離強度を有する。幾つかの実施形態では、ヨウ素含有非晶質フルオロポリマーは、ASTM D1646−06タイプAに従って100℃で2以下(ML 1+10)のムーニー粘度及び10dN/cm以下のロールミルに対する剥離強度を有する。
【0006】
幾つかの実施形態では、ヨウ素含有非晶質フルオロポリマー内の第一フルオロポリマーの硬化部位は末端基である。硬化部位末端基は0.2重量%〜2重量%、更には0.3重量%〜1重量%の範囲のヨウ素を有するヨウ素基であってよい。幾つかの実施形態では、ヨウ素は式RIのヨウ素化連鎖移動剤(iodinated chain transfer)に由来し、式中、(i)Rは3〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル又はクロロペルフルオロアルキル基であり、かつ(ii)x=1又は2である。連鎖移動剤はペルフルオロ化ヨウ素化合物であってよい。
【0007】
幾つかの実施形態では、ヨウ素含有非晶質フルオロポリマーは少なくとも1種のキュアサイトモノマーを有する。キュアサイトモノマーは、CH=CHI、CF=CHI、CF=CFI、CH=CHCHI、CF=CFCFI、CH=CHCFCFI、CF=CFCHCHI、CF=CFCFCFI、CH=CH(CFCHCHI、CF=CFOCFCFI、CF=CFOCFCFCFI、CF=CFOCFCFCHI、CF=CFCFOCHCHI、CF=CFO(CF−OCFCFI、CH=CHBr、CF=CHBr、CF=CFBr、CH=CHCHBr、CF=CFCFBr、CH=CHCFCFBr、CF=CFOCFCFBr、及びこれらの混合物から選択されてよい。
【0008】
ヨウ素含有非晶質フルオロポリマーとしてはまた、ペルオキシド硬化系、ポリオール硬化系、アミン硬化系、及びこれらの混合物から選択される硬化系も挙げられる。ヨウ素含有非晶質フルオロポリマーは充填剤を更に含んでよい。
【0009】
幾つかの実施形態では、ヨウ素含有非晶質フルオロポリマーはまた、ASTM D1646−06タイプAに従って100℃にて2(ML 1+10)より大きいムーニー粘度を有する、少なくとも1つの第二非晶質フルオロポリマーを含んでよい。第一フルオロポリマー、第二フルオロポリマー等を包含するフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレン、プロピレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ペルフルオロ(アリールエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、トリフルオロエチレン、及びこれらの混合物から誘導されるインターポリマー化単位を含んでよい。
【0010】
本開示の別の態様では、(a)少なくとも1種のフッ素含有モノマーを提供すること、(b)フリーラジカルを生成可能な反応開始剤を提供すること、(c)所望により、乳化剤を提供すること、及び(d)水性乳化重合にて、ヨウ素化連鎖移動剤の存在下で、少なくとも1種のフッ素含有モノマーを重合させること(ここで、ヨウ素化連鎖移動剤は重合容器内へと連続的に供給される)を含む、非晶質フルオロポリマーの製造方法が提供される。反応開始剤はペルオキシジサルフェートであってよい。幾つかの実施形態では、ヨウ素化連鎖移動剤の連続供給は1種以上のモノマー中にヨウ素化連鎖移動剤のブレンドを連続供給することにより行われる。
【0011】
本開示の更に別の態様では、25℃かつ6.3rad/秒にて300kPa以上及び25℃かつ0.1rad/秒で200kPa以下の貯蔵弾性率を備えた非晶質フルオロポリマーを有するフルオロエラストマーに由来する硬化物品が提供される。
【0012】
幾つかの実施形態では、非晶質フルオロポリマーは無乳化剤重合により形成される。その他の実施形態では、非晶質フルオロポリマーは緩衝剤又は水酸化アンモニウムと重合させられる。幾つかの実施形態では、非晶質フルオロポリマーは剪断力又は塩によって固化させられる。その他の実施形態では、非晶質フルオロポリマーは塩及び水酸化アンモニウムを添加することで固化させられる。更にその他の実施形態としては、25℃かつ6.3rad/秒にて300kPa以上及び25℃かつ0.1rad/秒で200kPa以下の貯蔵弾性率を備えた非晶質フルオロポリマーに由来する溶液、分散体及びコーティング材が挙げられる。
【0013】
本開示の上記概要は本発明のそれぞれの実施形態を記載することを目的としない。また、本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明に示す。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ムーニー粘度をヨウ素含有非晶質フルオロポリマーの温度の関数として示すプロット。
【図2】貯蔵弾性率(G’)をヨウ素含有非晶質フルオロポリマー及び市販の非晶質フルオロポリマーの周波数(ω)の関数として示す両対数プロット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
フルオロエラストマー産業にて使用されるエラストマーの加工性向上が一般に望まれている。エラストマー粘度が低ければ、加工技術の簡略化及び生産性向上がもたらされる。エラストマー、とりわけフルオロエラストマー、が高価であるため、生産性向上が特に重要である。それらの粘度が比較的大きいために、現在のフルオロエラストマーはエラストマー産業にて使用される射出成形での加工には限界がある。
【0016】
60超のムーニー粘度(ML.1+10、121℃にて)を有するフルオロエラストマーは一般に、圧縮成形によってのみ加工可能である。60以下のムーニー粘度を有するフルオロエラストマーは特別な射出成形装置で加工可能であるが、長いサイクルタイムを必要とし、更には大量の無駄(フラッシュ−アウト)を生じる。
【0017】
ムーニー単位で30〜60のムーニー粘度(ML1+10、121℃にて)を有する既知のフルオロエラストマーはこの原理に従ってプレス成形で加工することができる。しかしながら、粘度は依然として射出成形するには高い。
【0018】
一般的に、フルオロエラストマーの粘度は非フルオロカーボンエラストマー(例えばシリコーンエラストマー)と比較して、非常に高い。多くのフルオロエラストマーのムーニー粘度(ML 1+10、121℃にて)は30〜60である。高粘度故に、フルオロエラストマー化合物は加工及び成形(例えば射出成形)するのが難しい。低粘度及び超低粘度は表1のように分類することができる。
【表1】

【0019】
本開示はミリング及び成形用途での使用に好適な超低粘度ヨウ素含有非晶質フルオロポリマーに関する。超低粘度ヨウ素含有非晶質フルオロポリマーは一般に、ASTM D1646−06タイプAに従って100℃で2以下(ML 1+10)のムーニー粘度を有する少なくとも1種のフルオロポリマーを有する多成分系化合物である。化合物は更に、硬化剤を含有する。化合物は、ASTM D1646−06タイプAに従って100℃で2(ML 1+10)より大きいムーニー粘度を有する1種以上のフルオロポリマーを含んでよい。化合物はまた、1種以上の従来の補助剤、例えば、充填剤、酸受容体、加工助剤、又は着色剤などを含んでもよい。
【0020】
低粘度ポリマーの物理的性質、例えば圧縮永久歪み耐性が貧弱であることが一般に知られている。しかしながら、本明細書にて開示するエラストマーは低分子量を有し、これが低粘度をもたらす。これらのエラストマーは予想外の結果を示すが、これはこれらのエラストマーに由来する完成品が圧縮永久歪み耐性及び引張り強度を包含する優れた物理的性質を示すことによる。
【0021】
エラストマーは通常、2ロールミルを使用してコンパウンド化される。一般に、低粘度ポリマー又はコンパウンドは加工が容易である。しかしながら、未加工の又はコンパウンド化したゴムの粘度が低すぎる場合、未加工の又はコンパウンド化したゴムが2ロールミルに粘着する。2ロールミルからコンパウンドを除去することは困難である。
【0022】
未加工ゴム又はコンパウンドの粘着性はスケール又は変換器を使用して2ロールミルへの剥離強度を測定することによって、ロールミル上にて直接測定可能である。
【0023】
本明細書にて開示する超低粘度ヨウ素含有非晶質フルオロポリマーはロールミルに対する10dN/cm以下の剥離強度を有する。剥離強度が10dN/cmより大きい場合、未加工ゴム又はコンパウンドは圧延及びロールからの除去が困難である。
【0024】
粘弾性はポリマーの加工性に影響を与えるだけでなく、未加工ゴム及びコンパウンドの粘着性及び柔軟性にも影響を与える。粘弾性は動的機械分析器によって測定することができる。粘着性を同定するための1つの周知の技術は、アルフォンサスV.ポシウス(Alphonsus V. Pocius)著、「接着及び接着剤技術(Adhesion and Adhesives Technology)」(231ページ、ハンサー・ガーデン・パブリッシャーズ社(Hanser Gardner Publishers, Inc.)(オハイオ州シンシナティ(Cincinnati)刊、1997年)に記載されているようなダルキスト基準(Dahlquist criterion)である。この判定基準は米国特許第5,765,692号に記載されているように、感圧性接着剤(PSA)の設計にて使用されてきた。感圧性接着剤について一般に認められた定量的記述は、ダルキスト基準(Dahlquist criterion)によって与えられるが、これは6.3rad/秒(1Hz)にて約300kPa未満の貯蔵弾性率(G’)を有する材料が感圧性接着剤特性を有し、これに対しこの値を超えるG’を有する材料が感圧性接着剤特性を有さないことを示す。
【0025】
驚くべきことに、本発明のフルオロエラストマーは既知のフルオロエラストマーと比較して軟質である。柔軟性はASTM D 6204−07及びD 6049−03などの動的機械試験による、室温及び低周波数での弾性率を使用して記述することができる。本発明のフルオロエラストマーの貯蔵弾性率(1Hz(0.1rad/秒)かつ25℃)はシリコーンエラストマーのそれとほぼ同じであったが、これは軟質エラストマー材料として周知である。材料が軟質であれば、加工、例えば混合及びコンパウンド化が容易である。
【0026】
幾つかの実施形態では、本明細書にて開示するヨウ素含有非晶質フルオロポリマーは、25℃かつ6.3rad/秒にて300kPa以上の、及び25℃かつ0.1rad/秒にて200kPa以下の貯蔵弾性率(G’)並びに好ましくは、25℃かつ6.3rad/秒にて400kPa以上の、及び25℃かつ0.1rad/秒にて100kPa以下の貯蔵弾性率(G’)を有する。
【0027】
フルオロポリマーのうちの少なくとも1種は、それがASTM D1646−06タイプAに従って100℃で4以下(ML 1+10)のムーニー粘度、及び幾つかの実施形態では、ASTM D1646−06タイプAに従って100℃で2以下(ML 1+10)のムーニー粘度を有するような有効量の硬化部位を有する。末端基は少なくとも1種のフルオロポリマーの鎖末端に化学的に結合したヨウ素末端基である。ヨウ素の重量%は約0.2重量%〜約2重量%、好ましくは約0.3重量%〜約1重量%の範囲あってよい。
【0028】
本明細書にて開示するフルオロポリマーは少なくとも2種の主要モノマー由来の1つ以上のインターポリマー化単位を含んでよい。好適な主要モノマー(類)の例としてはペルフルオロオレフィン(例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP))、ペルフルオロビニルエーテル(例えば、ペルフルオロアルキルビニルエーテル及びペルフルオロアルコキシビニルエーテル)、ペルフルオロビニルエーテル、並びにオレフィンなどの水素含有モノマー(例えば、エチレン、プロピレン、など)、並びにフッ化ビニリデン(VDF)が挙げられる。かかるフルオロポリマーとしては例えば、フルオロエラストマーガム及び半結晶性フッ素樹脂が挙げられる。
【0029】
当業者は、特定のインターポリマー化単位をエラストマー系ポリマーを形成するのに適切な量で選択することができる。このため、適切な濃度のインターポリマー化単位はモル%に基づいて、エラストマー系ポリマー組成物を得るように選択される。
【0030】
フルオロポリマーがペルハロゲン化され、好ましくはペルフルオロ化された場合、それは、TFE及び/又はCTFE(所望によりHFPを包含する)由来のそれぞれインターポリマー化単位を少なくとも50モル・パーセント(mol%)含有する。フルオロポリマーのインターポリマー化単位の残部(10〜50モル%)は、1種以上のペルフルオロビニルエーテル及び/又はペルフルオロビニルエーテル、並びに好適なキュアサイトモノマーによってできている。代表的フルオロポリマーはTFE及び少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテルの主要モノマー単位で構成される。かかるコポリマーでは、共重合ペルフルオロ化エーテル単位はポリマー中に存在する全モノマー単位の約10〜約50モル%、好ましくは約15〜約35モル%を構成する。
【0031】
フルオロポリマーがペルフルオロ化されていない場合、それは、TFE、CTFE、及び/又はHFP由来のそれぞれのインターポリマー化単位の約5モル%〜約90モル%、VDF、エチレン、及び/又はプロピレン由来のそれぞれのインターポリマー化単位の約5モル%〜約90モル%、ビニルエーテル由来のそのインターポリマー化単位の約40モル%以下、並びに、約0.1モル%〜約5モル%、好ましくは焼く0.3モル%〜約2モル%の好適なキュアサイトモノマー、を含有する。
【0032】
好適なペルフルオロ化エーテルとしては、次式のものが挙げられる:
CF=CFO−(CF−(O(CF−OR(式1)(式中、Rはペルフルオロ化(C1〜C4)アルキル基であって、m=1〜4、n=0〜6、かつp=1〜2である)、又は
CF=CF(CF−O−R(式2)(式中、m=1〜4であり、Rはペルフルオロ化脂肪族基であって、所望によりO原子を含有する)。これらのペルフルオロ化エーテルは、それらをその他のコモノマーと共重合する前に、乳化剤で予め乳化させてよい。
【0033】
代表的ペルフルオロアルコキシビニルエーテルとしては、CF=CFOCFCFOCF、CF=CFOCFCFCFCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、CF=CFOCFCFOCFCF、CF=CFOCFCFCFOCFCF
CF=CFOCFCFCFCFOCFCF、CF=CFOCFCFOCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFCFCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFCFCFCFOCF、CF=CFOCFCF(OCFOCF、CF=CFOCFCF(OCFOCF、CF=CFOCFCFOCFOCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFCF及びCF=CFOCFCFOCFCFOCFCFCFが挙げられる。ペルフルオロアルキルビニルエーテル及びペルフルオロアルコキシビニルエーテルの混合物を用いてもよい。本開示において有用なペルフルオロオレフィンとしては、式:CF=CF−R(式中、Rはフッ素、又は炭素原子1〜8個、好ましくは1〜3個のペルフルオロアルキルである)であるものが挙げられる。ペルフルオロビニルエーテルを含有する代表的化学式としては、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、CF=CFOCFOCFCFCF、CF=CFOCFCFCFOCFが挙げられる。
【0034】
代表的ペルフルオロアルコキシアリルエーテルとしては、CF=CFCFOCFCFOCF、CF=CFCFOCFCFCFOCF及びCF=CFCFOCFOCFが挙げられる。
【0035】
幾つかの実施形態では、部分的フッ素化モノマー又はオレフィンなどの水素含有モノマー(例えば、エチレン、プロピレン、など)、及びフッ化ビニリデンを、フルオロポリマー内にて使用することができる。代表的部分的フッ素化ポリマーには、TFE及びプロピレンの主要モノマー単位、例えば、アフラス(AFLAS)(登録商標)(アサヒガラス(Asahi Glass Co. Ltd.)(日本、東京))から市販されている)が挙げられる。テトラフルオロエチレン、プロピレン及びフッ化ビニリデンの主要モノマー単位を有する別の代表的な部分的フッ素化ターポリマー、例えば、BRE 7231X(ダイネオンLLC(Dyneon LLC)(米国、ミネソタ州)から市販されている)。
【0036】
本明細書にて開示する非晶質フルオロポリマーは、重合、固化/乾燥、圧延、コンパウンド化、プレフォーミング、及び硬化/成形を含む一連の工程によって製造される。一実施形態では、水性乳化重合は定常状態下にて連続的に実施することができる。本実施形態では、例えば、既に述べた式(1)及び(2)のペルフルオロエーテルの水性乳濁液、並びにその他モノマー、水、乳化剤、緩衝剤及び触媒を、最適な圧力及び温度条件下にて撹拌反応容器に連続的に供給し、一方では、生成したエマルション又は懸濁液を連続的に取り出す。幾つかの実施形態では、前述の成分を攪拌反応容器に供給し、規定された時間にわたり設定温度でそれらを反応させることによるか、又は成分を反応容器に充填し、所望量のポリマーが形成されるまでモノマーを反応容器に供給し一定の圧力を維持することによるバッチ若しくは半バッチ重合が実施される。重合後に、反応容器廃液エマルション又は分散体から、減圧での蒸発によって未反応モノマーを除去する。ポリマーはエマルション又は分散体から固化によって回収される。
【0037】
一般に、重合は過硫酸アンモニウムなどのフリーラジカル反応開始剤系の存在下で実施される。重合反応は連鎖移動剤及び錯化剤などの他の構成成分を更に含んでよい。一般に、重合は10℃〜100℃、好ましくは30℃〜80℃の温度にて実施される。通常、重合圧力は0.3MPa〜30MPa、好ましくは1MPa〜10MPaである。
【0038】
エマルション重合を実施する場合、無乳化剤重合に加えて、ペルフルオロ化、部分的フッ素化、APFO(アンモニウムペルフルオロオクタネート)を含まない乳化剤を使用してよい。一般に、これらのフッ素化乳化剤はポリマーに対して約0.02重量%〜約3重量%で含まれる。フッ素化乳化剤により製造したポリマー粒子は通常、動的光散乱法技術による同定で、約10nm〜約300nm、好ましくは約50nm〜約200nmの平均直径を有する。
【0039】
かかるフッ素化及び部分的フッ素化乳化剤としては、フッ素含有モノマーの乳化重合にて一般に使用されるようなものが挙げられる。かかる乳化剤の例としては、フルオロアルキル、好ましくはペルフルオロアルキル、カルボン酸及び6〜20個の炭素原子、好ましくは6〜12個の炭素原子を有するこれらの塩、例えばアンモニウムペルフルオロオクタノエート(APFO)及びアンモニウムペルフルオロノナノエートが挙げられる(例えば米国特許第2,559,752号を参照)。
【0040】
かかる乳化剤の追加の例としては、式[R−O−L−COOi+を有する、ペルフルオロ化及び部分的フッ素化乳化剤もまた挙げられ、式中、Lは線状の、部分的に若しくは完全にフッ素化されたアルキレン基又は脂肪族炭化水素基を表し、R基は線状の、部分的に若しくは完全にフッ素化された脂肪族基又は1つ以上の酸素原子によって中断された線状の、部分的に若しくは完全にフッ素化された脂肪族基を表し、Xi+は価数iを有するカチオンを表し、iは1、2又は3である(例えば米国特許第2007/0015864号を参照)。
【0041】
かかる乳化剤の追加の例としては、式(I)又は(II)のペルフルオロ化ポリエーテル乳化剤もまた挙げられ、CF−(OCF−O−CF−X(I)において、mは1〜6の値を有し、Xはカルボン酸基又はその塩を表し、CF−O−(CF−(OCF(CF)−CF−O−L−Y(II)において、zは0、1、2又は3の値を有し、Lは−CF(CF)−、−CF−及び−CFCF−から選択される二価連結基を表し、Yはカルボン酸基又はその塩を表す(例えば米国特許公開第2007/0015865号を参照)。
【0042】
かかる乳化剤の更なる例としては、式R−O(CFCFO)CFCOOAを有するペルフルオロ化ポリエーテル乳化剤が挙げられ、式中、Rはn=1〜4のC(2n+1)であり、Aは水素原子、アルカリ金属又はNHであり、mは1〜3の整数である(例えば米国特許第2006/0199898号を参照)。かかる乳化剤の追加の例としては、式F(CFO(CFCFO)CFCOOAを有するペルフルオロ化乳化剤もまた挙げられ、式中、Aは水素原子、アルカリ金属又はNHであり、nは3〜10の整数であり、mは0又は1〜3の整数である(例えば米国特許公開第2007/0117915号を参照)。
【0043】
かかる乳化剤の追加の例としては、米国特許第6,429,258号に記載されているようなフッ素化ポリエーテル乳化剤、並びにペルフルオロ化された又は部分的フッ素化されたアルコキシ酸及びそれらの塩(ここで、ペルフルオロアルコキシのペルフルオロアルキル成分は4〜12個の炭素原子、好ましくは7〜12個の炭素原子を有する)が挙げられる(例えば米国特許第4,621,116号を参照)。
【0044】
他の代表的乳化剤としては、式[R−(O)−CHF−(CF−COO−]i+を有する、部分的フッ素化ポリエーテル乳化剤が挙げられ、式中、Rは部分的に又は完全にフッ素化された脂肪族基(所望により、1つ以上の酸素原子によって中断されている)を表し、tは0又は1であり、nは0又は1であり、Xi+は価数iを有するカチオンを表し、iは1、2、又は3である(例えば米国特許公開第2007/0142541号を参照)。
【0045】
更なる代表的乳化剤としては、米国特許公開第2006/0223924号、同第2007/0060699号、同第2007/0142513号及び同第2006/0281946号に記載されているようなペルフルオロ化された又は部分的フッ素化されたエーテルを含有する乳化剤が挙げられる。
【0046】
ペルフルオロ化、部分的フッ素化及び/又は無APFO(アンモニウムペルフルオロオクタネート)乳化剤は、米国特許第5,442,097号、同第6,613,941号、同第6,794,550号、同第6,706,193号及び同第7,018,541号に記載されているようなフルオロポリマーエマルション又は分散体から除去又は再利用可能である。
【0047】
幾つかの実施形態では、重合プロセスはフッ素化乳化剤無しで実施してよい。乳化剤無しで製造されたポリマー粒子は通常、動的光散乱法技術による同定で、約40nm〜約500nm、典型的には約200nm〜約400nmの平均直径を有するが、これに対して懸濁重合では通常、数ミリメートル以下の粒径を生じる。
【0048】
幾つかの実施形態では、既に開示したような式1及び/又は式2の液体ペルフルオロエーテルはガス状フッ素化モノマーと共重合する前に、フッ素化乳化剤を使用して水中で予め乳化させることができる。液体フッ素化モノマーの事前乳化により、好ましくは約1μm以上(同一所有者の米国特許第6,677,414号に記載されているように、期待される範囲は約1μm〜20μmである)の直径を有するモノマー液滴を有するエマルションがもたらされる。
【0049】
コーティング用途に関しては、フルオロポリマーの水性分散体が望ましく、したがって、フルオロポリマーを分散体から分離又は固化する必要はない。例えば、布地の含浸における、又は例えば調理器具を製造するための金属基材のコーティングにおける、などのコーティング用途で使用するのに好適なフルオロポリマー分散体を得るためには、一般には、更なる安定化界面活性剤を添加すること、及び/又はフルオロポリマー固体を更に増加させることが望ましい。例えば、非イオン性安定化界面活性剤をフルオロポリマー分散体に添加してもよい。典型的には、これらは、フルオロポリマー固体に対して1〜12重量%の量でそれらに添加される。添加されてよい非イオン性界面活性剤の例は、下式で示される:
R1−O−[CHCHO]n−[R2O]m−R3
式中、R1は少なくとも8個の炭素原子を有する芳香族又は脂肪族炭化水素基を表し、R2は3個の炭素原子を有するアルキレンを表し、R3は水素又はC1〜C3アルキル基を表し、nは0〜40の値を有し、mは0〜40の値を有し、かつn+mの合計は少なくとも2である。上記の式において、n及びmにより示される単位はブロックとして存在してもよく、それらが交互の構成若しくはランダムな構成で存在してもよいということが理解されるであろう。上記式に従う非イオン性界面活性剤の例としては、例えば、エトキシ単位の数が約10である商標名「トリトンX 100」又はエトキシ単位の数が約7〜8の商標名「トリトンX 114」として入手可能なものである、商標名「トリトン」として市販されているエトキシ化p−イソオクチルフェノールのような、アルキルフェノールオキシエチレートが挙げられる。尚、更なる例としては、上式のR1が炭素原子4〜20のアルキル基を表し、mが0であり、R3が水素であるものが挙げられる。それらの例としては、約8個のエトキシ基でエトキシ化されたイソトリデカノールが挙げられ、これは「ゲナポール(GENAPOL)X080」の商標名にてクラリアント社(Clariant GmbH)から市販されている。親水性部分がエトキシ基及びプロポキシ基のブロックコポリマーを含む、上記式による非イオン性界面活性剤も同様に使用してよい。かかる非イオン性界面活性剤は、「ゲナポール(GENAPOL)PF 40」、及び「ゲナポール(GENAPOL)PF 80」の商標名で、クラリアント社(Clariant GmbH)から市販されている。
【0050】
分散体中のフルオロポリマー固体の量は、必要に応じ又は所望により、30〜70重量%の量まで高濃縮されてよい。限外濾過及び熱的高濃縮を包含する、いかなる既知の高濃縮技術を用いてよい。
【0051】
幾つかの実施形態では、水溶性反応開始剤を使用して、重合プロセスを開始することができる。過硫酸アンモニウムなどのペルオキシ硫酸の塩は通常、単独で又は場合により亜硫酸水素塩若しくはスルフィン酸塩(同一所有者の米国特許第5,285,002号及び同第5,378,782号に開示されている)又はヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩(商標名ロンガリット(RONGALIT)(BASFケミカル社(BASF Chemical Company)(米国、ニュージャージー州))にて販売されている)などの還元剤の存在下のいずれかで適用される。これらの反応開始剤及び乳化剤の大部分はそれらが最も効率的となる最適なpH範囲を有する。このため、幾つかの実施形態では緩衝剤が使用される場合がある。緩衝剤としては、ホスフェート、アセテート若しくはカーボネート緩衝剤又は任意のその他の酸若しくは塩基、例えばアンモニア若しくはアルカリ金属水酸化物が挙げられる。反応開始剤及び緩衝剤の濃度範囲は、水性重合媒体を基準として0.01重量%〜5重量%で変えることができる。
【0052】
本開示において、ヨウ素連鎖移動剤が重合プロセスにて使用される。重合において好適なヨウ素連鎖移動剤には、式RIが挙げられ、式中、(i)Rは3〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル又はクロロペルフルオロアルキル基であり、かつ(ii)x=1又は2である。ヨウ素連鎖移動剤はペルフルオロ化ヨウ素化合物であってよい。代表的なヨウ素−ペルフルオロ−化合物としては、1,3−ジヨードペルフルオロプロパン、1,4−ジヨードペルフルオロブタン、1,6−ジヨードペルフルオロヘキサン、1,8−ジヨードペルフルオロオクタン、1,10−ジヨードペルフルオロデカン、1,12−ジヨードペルフルオロドデカン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
キュアサイトモノマーは、式a)CX=CX(Z)からなる1種以上の化合物に由来し、式中、(i)Xはそれぞれ独立してH又はFであり、(ii)ZはI、Br、R−Uであり、ここで、U=I又はBrであり、Rはペルフルオロ化又は部分的ペルフルオロ化アルキレン基であって、所望によりO原子を含有する。加えて、非フッ素化ブロモ又はヨードオレフィン、例えば、ヨウ化ビニル及びヨウ化アリルを使用することができる。幾つかの実施形態では、キュアサイトモノマーは、CH=CHI、CF=CHI、CF=CFI、CH=CHCHI、CF=CFCFI、CH=CHCFCFI、CF=CFCHCHI、CF=CFCFCFI、CH=CH(CFCHCHI、CF=CFOCFCFI、CF=CFOCFCFCFI、CF=CFOCFCFCHI、CF=CFCFOCHCHI、CF=CFO(CF−OCFCFI、CH=CHBr、CF=CHBr、CF=CFBr、CH=CHCHBr、CF=CFCFBr、CH=CHCFCFBr、CF=CFOCFCFBr及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の化合物由来である。
【0054】
ヨウ素連鎖移動剤及び/又はキュアサイトモノマーはバッチ充填又は連続供給によって反応容器内へ供給することができる。連鎖移動剤及び/又はキュアサイトモノマーの供給量はモノマー供給量と比較して相対的に少ないため、連鎖移動剤及び/又はキュアサイトモノマーの少量を反応容器内へ連続供給することは、調整するのが難しい。1種以上のモノマー中のヨウ素連鎖移動剤のブレンドによって、連続供給を得ることができる。かかるブレンドのための代表的モノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
得られたフルオロポリマーエマルション又は分散体を固化するために、フルオロポリマーエマルション又は分散体を固化するために一般に使用される任意の固化剤を使用してよく、それは、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、塩化アルミニウム若しくは硝酸アルミニウムなどの水溶性塩、及び/又は硝酸、塩酸若しくは硫酸などの酸、又はアンモニア若しくはアルカリ金属水酸化物のような塩基、又はアルコール若しくはアセトンなどの水溶性有機液体であってよい。添加される固化剤の量はフッ素化エラストマーエマルション又は分散体の100質量部当たり、好ましくは0.001〜20質量部、特に好ましくは0.01〜10質量部である。更に、フッ素化エラストマーエマルション又は分散体は高速攪拌機などの機械的剪断力によって固化させることができる。フッ素化エラストマーエマルション又は分散体は固化のために凍結させてよい。
【0056】
固化したフッ素化エラストマーは好ましくは、濾過により収集し、洗浄水で洗浄する。洗浄水は、例えば、イオン交換水、純水又は超純水であってよい。洗浄水の量はフッ素化エラストマーの1〜5倍の質量であってよく、フッ素化エラストマーに結合した乳化剤の量は1回の洗浄によって十分に減少させることができる。
【0057】
ペルオキシド硬化フルオロエラストマーは、助剤、過酸化物及びカーボンブラックなどの充填剤を添加するためのコンパウンドプロセスを必要とする。典型的なコンパウンドプロセスは2ロールミルを使用することである。未加工の又はコンパウンド化したガムの粘度が低すぎる場合、未加工の又はコンパウンド化したゴムはミルに張り付き、加工が困難となる。驚くべきことに、本発明のフルオロエラストマーはコンパウンド中にロールミルにほとんど張り付かない。
【0058】
幾つかの実施形態では、架橋性フルオロポリマー組成物は、内部ミキサー(例えば、バンベリーミキサー(Banbury mixers))、ロールミルなどの通常のゴム混合装置のうち任意のものを使用して、硬化性構成成分とコンパウンド化し、又は1つの若しくは幾つかの工程で混合することができる。最良の結果を得るには、混合物の温度が約120℃を超えて上昇してはならない。混合中、効果的な硬化のために、構成成分及び添加剤を全体に均一に分布させる必要がある。
【0059】
フルオロエラストマー組成物を使用して、物品を形成することができる。本明細書で使用するとき、用語「物品」とは、O−リングなどの最終物品を意味するか、及び/又はそこから最終の形状が作製されるプレフォーム、例えばそこからリングが切断される押し出されたチューブを意味する。物品を形成するために、フルオロエラストマー組成物は、スクリュータイプ押出成形機又はピストン押出成形機を使用して押出加工することができる。あるいは、フルオロエラストマー組成物は射出成形、トランスファー成形又は圧縮成形を使用して物品へ成形することができる。
【0060】
フルオロエラストマー組成物は、硬化及び/又は未硬化コーティング材を作製するために使用可能な、溶液を調製するために使用することもできる。これらコーティング材でコーティングすることができる基材としては、金属、ガラス、布地、ポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
未硬化エラストマーは多数の技術のうちの任意の1つを使用して成形することができる。幾つかの実施形態では、未硬化エラストマーは、多量の低温未硬化エラストマー混合物を加熱したキャビティ内へ配置すること、かつ引き続いて、適切な圧力を使用して金型を型締めして物品を形成することによって圧縮成形される。エラストマーを十分な温度で十分な時間保持して加硫するようにした後、型から取り出すことができる。
【0062】
幾つかの実施形態では、未硬化エラストマーは、最初にエラストマー混合物を押出機スクリュー内で加熱及び素練りし、次にエラストマー混合物を加熱したチャンバ(そこからハイドロリックピストンによって、中空キャビティ内へとエラストマー混合物が注入される)内に収集することによって射出成形される。加硫後、更に物品を型から取り出すことができる。
【0063】
射出成形プロセスの利点としては、短い成形サイクル、予備成形準備がほとんど又は全く無いこと、除去するフラッシュがほとんど又は全く無いこと、及びスクラップ発生率が低いことが挙げられる。コンパウンド粘度が低い場合、シリンダー、バレル及びスクリュー温度を低くすることができ、かつモールドへ流し込む間の焦げ付きのリスクがより少ない。また、コンパウンド粘度が低いことで、充填又は注入時間を向上させることもできる。典型的なモールド温度は170℃〜220℃であり、加熱又は成形時間は部品の厚みに応じて20秒〜3分である。
【0064】
幾つかの実施形態では、エラストマー混合物はトランスファー成形される。トランスファー成形は、エラストマー混合物が予熱されず、かつ押出機スクリューによって素練りされるが、加熱した注入チャンバ内に冷たい塊として導入されるという点が異なる以外は、射出成形に類似している。フルオロエラストマー混合物の典型的な硬化条件は、高温、例えば約160℃〜約210℃、7バール超の圧力及びこれらの条件を30秒間維持することであり、高速射出成形プロセスではより大きな圧縮成形物品に対しては5分以上である。
【0065】
コンパウンド混合物の加圧成形(即ち、プレス硬化)は通常、約140〜220℃、好ましくは約150〜190℃の温度で、約1分〜約15時間、通常は約1〜15分間実施される。通常、約700〜20,000kPa、好ましくは約3400〜約6800kPaの圧力が組成物成形に使用される。最初に、モールドを離型剤でコーティングし、プレベークしてよい。
【0066】
成形加硫ゴムは、使用するポリマーのタイプ及びサンプルの断面厚みに応じて、約150〜320℃の温度にて、好ましくは約160〜300℃の温度にて、約1〜24時間以上、オーブン内で後硬化することができる。厚みのある部分では、後硬化中の温度は通常、範囲の下限から所望の最高温度まで次第に上昇する。通常、最高使用温度は約300℃であり、この値で約1時間以上保持する。
【0067】
非晶質フルオロポリマーコンパウンドはまた、フルオロポリマーの加硫を可能とする硬化剤も含む。硬化剤としては、硬化性材料、例えば、過酸化物及び1種以上の助剤などを挙げることができる。過酸化物硬化剤としては、有機過酸化物又は無機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物、特に動的混合温度にて分解しないようなものが好ましい。非限定的過酸化物の例としては、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン−3及びラウリルペルオキシドが挙げられる。その他の好適な過酸化物硬化剤は米国特許第5,225,504号に掲載されている。使用する過酸化物硬化剤の量は一般に、フルオロポリマー100部当たり、0.1〜5、好ましくは1〜3重量部である。その他の従来のラジカル反応開始剤は本発明で使用するのに好適である。
【0068】
過酸化物硬化系では、フルオロカーボンポリマーは有機過酸化物を使用して硬化することができる。多くの場合、助剤を含むのが望ましい。当業者は、所望の物理的性質に基づいて従来の助剤を選択することができる。かかる剤の非限定例としては、トリ(メチル)アリルイソシアヌレート(TMAIC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリ(メチル)アリルシアヌレート、ポリ−トリアリルイソシアヌレート(ポリ−TAIC)、キシリレン−ビス(ジアリルイソシアヌレート)(XBD)、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン、亜リン酸トリアリル、1,2−ポリブタジエン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、などが挙げられる。別の有用な助剤は、式CH2=CH−Rf1−CH=CH2で表してよく、式中、Rf1は1〜8個の炭素原子からなるペルフルオロアルキレンであってよい。かかる助剤は最終硬化エラストマーの機械的強度を向上させる。それらは一般に、フルオロカーボンポリマー100部当たり、1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部の量で使用される。
【0069】
フルオロポリマー、特にVDF含有フルオロエラストマーはポリヒドロキシ硬化系を使用して硬化してよい。かかる場合、フルオロポリマーが硬化部位構成成分を含む必要はない。ポリヒドロキシ硬化系は一般に、1種以上のポリヒドロキシ化合物及び1種以上の有機オニウム促進剤を含む。有用な有機オニウム化合物は通常、有機部分又は無機部分に結合した少なくとも1個のへテロ原子、即ち、非炭素原子、例えばN、P、S、Oを含む。四級有機オニウム化合物の1つの有用な部類は相対的に正の及び相対的に負のイオンを広く含み、ここで、リン、ヒ素、アンチモン又は窒素が一般に、正イオンの中心原子を構成する。負のイオンは、有機又は無機アニオン(例えば、ハロゲン化物、サルフェート、アセテート、ホスフェート、ホスホネート、水酸化物、アルコキシド、フェノキシド、ビスフェノキシド、など)であってよい。
【0070】
多くの有機オニウム化合物が開示されている。例えば、同一所有者の米国特許第4,233,421号、同第4,912,171号、同第5,086,123号、同第5,262,490号、及び同第5,929,169号を参照されたい。有用な有機オニウム化合物の部類としては、1つ以上のペンダントフッ素化アルキル基を有するようなものが挙げられる。一般に、最も有用な部類のフッ素化オニウム化合物は米国特許第5,591,804号に開示されている。
【0071】
ポリヒドロキシ化合物は、その遊離又は非塩形態で、又は選択した有機オニウム促進剤のアニオン部分として使用してよい。架橋剤はフルオロエラストマーのための架橋剤又は共硬化剤として機能する任意のポリヒドロキシ化合物であることができ、例えば米国特許第3,876,654号及び同第4,233,421号にて開示されるポリヒドロキシ化合物のようなものである。最も有用なポリヒドロキシ化合物の1つとしては、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデニルビスフェノール(より一般的にはビスフェノールAFとして知られている)などの芳香族ポリフェノールが挙げられる。化合物4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールSとしても知られている)及び4,4’−イソプロピリデニルビスフェノール(ビスフェノールAとしても知られている)もまた、幅広く実用化されている。
【0072】
フルオロポリマー、特にVDF含有フルオロエラストマーはまた、ポリアミン硬化系を使用して硬化してもよい。有用なポリアミンの例としては、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、トリメチレンジアミン、シンナミリデントリメチレンジアミン、シンナミリデンエチレンジアミン、及びシンナミリデンヘキサメチレンジアミンが挙げられる。有用なカルバメートの例は、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンカルバメート、1,3−ジアミノプロパンモノカルバメート、エチレンジアミンカルバメート及びトリメチレンジアミンカルバメートである。通常は、約0.1〜5phrのジアミンが使用される。
【0073】
カーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、充填剤などの添加剤、及び一般にフルオロポリマーコンパウンド化にて利用される加工助剤は、組成物中へ組み込むことができるが、意図した使用条件で適切な安定性を有することが条件である。特に、ペルフルオロポリエーテルを組み込むことによって、低温性能を向上させることができる。例えば、米国特許第5,268,405号を参照されたい。カーボンブラック充填剤はまた、通常、組成物の引張応力、引張り強度、伸長、硬度、磨耗耐性、伝導度、及び加工性などを調整するための手段として、フルオロポリマー中で用いられる。好適な例としては、MTブラックス(メディアム・サーマル・ブラック)(名称:N−991、N−990、N−908、及びN−907)、FEF N−550、並びに大粒径ファーネスブラックが挙げられる。使用する場合、フルオロポリマー100部当たり(phr)1〜100部の大粒径ブラックの充填剤で一般に十分である。
【0074】
フルオロポリマー充填剤もまた、組成物中に存在してよい。一般に、1〜100phrのフルオロポリマー充填剤が使用される。フルオロポリマー充填剤は、微粉化することができ、かつ本発明の組成物の製造及び硬化で使用される最高高温で、固体として容易に分散させることができる。固体である場合、充填剤材料(部分的に結晶化している場合)が硬化性組成物(類)の加工温度(単一又は複数)より高い結晶融解温度を有することを意味する。フルオロポリマー充填剤を組み込むための好ましい方法は、ラテックスをブレンドすることである。様々なフルオロポリマー充填剤を包含するこの手順は、同一所有者の米国特許第6,720,360号に記載されている。
【0075】
従来の補助剤を本発明の化合物中に組み込んで、化合物の性質を向上させてもよい。例えば、化合物の硬化及び熱安定性を促進するために酸受容体を用いてよい。好適な酸受容体としては、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、二塩基性亜リン酸鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、アルカリステアレート、シュウ酸マグネシウム、又はそれらの組合せを挙げることができる。酸受容体は、好ましくはポリマー100重量部当たり約1〜約20部の範囲の量で使用される。
【0076】
限定はしないが、以下の特定の実施例は、本発明を説明するために供されるであろう。これらの実施例では、全ての量は重量部又はゴム100重量部当たりの重量部(phr)で表される。モノマー構成比はH/19Fクロス・インテグレーション(cross-integration)NMR分析によって測定した。
【実施例】
【0077】
(実施例1)
実施例1では、4リットル反応容器に、2,250グラムの水、33.3グラムのCFOCFCFCFOCFCOONHの30%水溶液、1.1グラムの過硫酸アンモニウム(APS、(NH)及び8グラムの二塩基性リン酸カリウム(KHPO)の50%水溶液を充填した。フッ素化乳化剤CFOCFCFCFOCFCOONHは、米国特許公開第2007/0015864号に記載されているようにして調製した。反応容器を排気し、真空を破り、0.17MPa(25psi)になるまで窒素を圧入した。この真空及び加圧を3回繰り返した。酸素を除去した後、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)と1,4−ジヨードオクタフルオロブタンのブレンド(シンクエスト・ラボ(Synquest Lab)(米国、フロリダ州)から入手可能)が入った反応容器を80℃まで加熱し、0.51MPa(74psi)まで加圧した。ヘキサフルオロプロピレン(HFP)と1,4−ジヨードオクタフルオロブタンのブレンドを調製するために、1リットルのステンレス鋼シリンダーを排気し、窒素で3回パージした。1,4−ジヨードオクタフルオロブタンをシリンダーに添加後、添加した1,4−ジヨードオクタフルオロブタンの量を基準としてHFPを添加した。次にブレンドを反応容器に取り付け、窒素ブランケットを使用して供給した。ブレンドは97重量%のHFP及び3重量%の1,4−ジヨードオクタフルオロブタンを含有していた。次に、反応容器にフッ化ビニリデン(VDF)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)と1,4−ジヨードオクタフルオロブタンの上記ブレンドを充填し、反応容器圧力を1.57MPa(228psi)にした。VDF及びHFPと1,4−ジヨードオクタフルオロブタンのブレンドの全プレチャージは、それぞれ91.4グラム、及び156.7グラムであった。反応容器を650rpmで攪拌した。重合反応でモノマーが消費されて反応容器の圧力が低下するのに伴い、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)と1,4−ジヨードオクタフルオロブタンのブレンド、及びVDFを反応容器へ連続的に供給し、圧力を1.57MPa(228psi)に維持した。ブレンドとVDFの重量比は0.651であった。4.7時間後に、モノマー及びブレンドの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は固形物含有率33.8重量%及びpH3.6を有した。分散体粒径は123nmであった。固化のために、同量のMgCl/脱イオン水溶液をラテックスに添加した。溶液は1.25重量%のMgCl・6HOを含有していた。ラテックスを攪拌し、固化させた。約4000mLの脱イオン水を加え、15分間攪拌してクラムを洗浄し、次に洗浄水を排水した。暖かい脱イオン水を全体で16,000mL使用して、クラムを4回洗浄し、130℃にて16時間乾燥させた。得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは100℃にて1.6ML(1+10)のムーニー粘度を有した。フルオロエラストマーは75.6モル%のVDF共重合単位及び23.2モル%HFPを含有していた。ヨウ素末端基−CFCHIは0.59モル%であった。中性子放射化分析(NAA)によるヨウ素含有量は1.02重量%であった。光散乱GPCによる決定で、数平均分子量(M)は30,260であった。試験結果は表2にまとめられている。
【0078】
表2で、ガラス転移温度(T)は、ASTM D 793−01及びASTM E 1356−98に従って、パーキン・エルマー(Perkin-Elmer)社製示差走査熱量計DSC・パイリス(Pyris)1にて窒素気流下で決定した。DSCスキャンは、−50℃〜200℃において10℃/分のスキャン速度で行なった。
【0079】
ムーニー粘度又はコンパウンドムーニー粘度は、ASTM D1646−06タイプAに従って、MV 2000装置(アルファ・テクノロジーズ(Alpha Technologies)(米国、オハイオ州))にて、大型ローター(ML 1+10)を用いて100℃にて測定した。結果はムーニー単位で報告されている。

【表2】

【0080】
(実施例2)
実施例2では、ポリマーサンプルは、反応容器を0.62MPa(90psi)まで加圧し、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)と1,4−ジヨードオクタフルオロブタン(I(CFI)のブレンドを用いた以外は、実施例1と同様に調製及び試験がなされた。VDF及びHFPと1,4−ジヨードオクタフルオロブタンのブレンドの全プレチャージは、それぞれ75.4グラム及び203.5グラムであった。反応時間は5.4時間、固体含有率は35.1重量%であった。試験結果は表2にまとめられている。
【0081】
図1は、25℃〜100℃の温度を関数としたムーニー粘度を示す。
【0082】
(実施例3)
実施例3では、実施例1のフルオロエラストマー未加工ゴムを使用して、メタノールを溶剤として使用してロールを完全に洗浄した後、6インチの2ロールミル(直径15.24cm)に対する粘着度又は剥離強度を試験した。100グラムのゴムを10秒間ミルにかけ、フロントロールミルにバンドを作成した。フロント及びバックロールの回転速度は、それぞれ32.1rpm及び22.2rpmであった。フロントロールとバックロールとの間のギャップは0.381mmであり、ロール回転差によるロールの計算剪断速度は207.7s−1であった。圧延前のロール表面温度は21℃であった。圧延前後でのゴム表面温度はそれぞれ23.3℃及び29.9℃であった。次に、ゴムをミルナイフを使用して切断し、タブ(2cm)を作製してロールへのゴムの剥離強度を測定した。クランプを上記タブ上に配置し、引張り式ばねばかり(オハウス社(Ohaus Corp.)(米国、ニュージャージー州)から入手可能)をクランプに取り付けて、剥離強度を測定した。ロールに対するゴムの剥離角は約90度に維持し、剥離速度は約400cm/分であった。平均剥離強度(n=2)は8.4dN/cmであった。
【0083】
粘弾性は、動的機械分析器RPA 2000装置(アルファ・テクノロジーズ(Alpha Technologies)(米国、オハイオ州)から入手可能)を使用し、ASTM D 6204−07に従って測定した。貯蔵弾性率(G’)は、10%のひずみ及び0.9〜1995rpm(0.1〜209rad/秒)の周波数(ω)にて測定した。これらの測定値での温度は25℃であった。0.1rad/秒及び6.3rad/秒(1Hz)での未加工ゴムの貯蔵弾性率データは、それぞれ47及び410kPaであった。試験結果は表3にまとめられている。
【0084】
図2は、25℃における周波数(logω)の関数としての貯蔵弾性率(logG’)を示す。実施例3と比較実施例1との間には0.2〜0.3Hz(rad/秒)にて交差点が存在する。低周波数(<0.3Hz(rad/秒))において、実施例3の貯蔵弾性率は比較実施例1のそれより小さいが、高周波数(>0.3Hz(rad/秒))において、実施例3の貯蔵弾性率は比較実施例1のそれより大きい。このことは、実施例3が比較実施例1よりも軟らかいということを示している。しかし、実施例3の粘着度は比較実施例1のそれより大きくない場合があり、これは、6.3rad/秒(1Hz)における実施例3の貯蔵弾性率が比較実施例1のそれよりも大きく、かつ実施例3の貯蔵弾性率がダルキスト基準(Dahlquist criterion)(G’<300kPa)を超えているのに対して、比較実施例1の貯蔵弾性率がそうではなかったためである。このことは、表3にあるように剥離強度試験によって確認される。
【表3】


25℃にて測定した
【0085】
(実施例4)
実施例4では、実施例2で調製したフルオロエラストマー未加工ゴムをフルオロエラストマーとして使用した以外は、実施例3と同様にして、フルオロエラストマー未加工ゴムサンプルの調製及び試験を行なった。試験結果は表3にまとめられている。
【0086】
(実施例5)
実施例5では、実施例1で調製したフルオロエラストマー未加工ゴムの5%/95%ブレンド及び過酸化物硬化性フルオロエラストマーFC 2260(臭素含量率=0.45重量%、ムーニー粘度ML1+10@100℃=88、ダイネオンLLC(Dyneon LLC)(米国、ミネソタ州)から入手可能)をフルオロエラストマーとして使用した以外は、実施例3と同様にして、フルオロエラストマー未加工ゴムコンパウンドサンプルの調製及び試験を行なった。ブレンドは、実施例1のフルオロエラストマーをFC 2260と共に、2ロールミルを使用して混合することによって調製した。ムーニー粘度(ML1+10)@100℃は、70であった。試験結果は表3にまとめられている。
【0087】
比較実施例1
比較実施例1では、FC 2211の50%/50%ブレンド(ムーニー粘度ML1+10@100℃=20、ダイネオンLLC(Dyneon LLC)(米国、ミネソタ州)から入手可能)及びFC 2210X(粘度@105℃=20,000mPa・s、ダイネオンLLC(Dyneon LLC)(米国、ミネソタ州)から入手可能)をフルオロエラストマーとして使用した以外は、実施例3と同様にして、フルオロエラストマー未加工ゴムサンプルを調製した。未加工ゴムはローラーにしっかりと張り付き、剥離強度測定のためのタブを作製するのが困難であった。試験結果は表3にまとめられている。
【0088】
比較実施例2
比較実施例2では、FC 2211をフルオロエラストマーとして使用した以外は、実施例3と同様にして、フルオロエラストマーサンプルの調製及び試験を行なった。試験結果は表3にまとめられている。
【0089】
比較実施例3
比較実施例3では、過酸化物硬化性フルオロエラストマーFC 2260をフルオロエラストマーとして使用した以外は、実施例3と同様にして、フルオロエラストマーサンプルの調製及び試験を行なった。試験結果は表3にまとめられている。
【0090】
比較実施例4
比較実施例4では、FC 2210Xをフルオロエラストマーとして使用し、ムーニー粘度を25℃で測定した(100℃では粘度が低すぎるため)以外は、実施例3と同様にして、フルオロエラストマーゴムサンプルの試験をした。ゴムは極めて粘着性であったが、ロールに対する剥離強度はゴム自体が結合力を有さないために、測定できなかった。試験結果は表3にまとめられている。
【0091】
(実施例6)
実施例6では、6インチの2ロールミルを使用して、実施例1で調製したフルオロエラストマーを、30部のカーボンブラック(キャンカーブ(Cancarb)((メディシンハット(Medicine Hat)、アルバータ(Alberta)、カナダ)から、サーマックス(Thermax)MT、ASTM N990として入手可能)、3部の酸化亜鉛(ジンク・コーポレーション・オブ・アメリカ(Zinc Corporation of America)からUPS−1として入手可能)、2部の50%活性の2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−ヘキサン(ヴァロックス(Varox)(登録商標)DBPH−50として、R.T.ヴァンダービルト(Vanderbilt)(米国、コネティカット州)から入手可能)、及び3部のトリアリルイソシアヌレート(TAIC)助剤(98%、ニッポン・カセイ(Nippon Kasei)(日本)からTAICとして入手可能)と共にコンパウンド化することによって、フルオロエラストマーコンパウンドを調製した。コンパウンド処方を表4に示す。コンパウンド化中に、ポリマーは加工が容易であり、かつコンパウンドはロールミルに付着しなかった。コンパウンドムーニー粘度(ML1+10)@100℃は、1.9であった。
【0092】
サンプルの硬化レオロジーは、MDR(移動ディスクレオメーター)モードを備えたアルファ・テクノロジー(Alpha Technology)RPA 2000及びASTM D 5289−95に記載された手順を使用して、未硬化、コンパウンド化混合物を試験することによって調べた。本実施例のフルオロエラストマー化合物は、良好な硬化特性を示した。
【0093】
コンパウンドは、5分間、15×15cm、2mm厚モールドを使用して、177℃にてプレス硬化させた。次に、プレス硬化シートを230℃にて4時間、後硬化した。ASTMダイDにて、物理的性質のためのダンベルを硬化シートから切断した。プレス硬化、かつ後硬化させたサンプルの物理的性質をASTM D 412−06aに従って試験した。
【0094】
214O−リング(AMSA S568)モールドを使用し、177℃にて5分間、同一コンパウンドを更にプレス硬化した。次に、プレス硬化O−リングを230℃にて4時間、後硬化した。ASTM D 395−03方法B及びASTM D 1414−94に従って、プレス硬化、かつ後硬化させたO−リングの圧縮永久歪みを22時間、200℃にて試験した。結果は、百分率で報告されている。試験結果は表5にまとめられている。
【表4】

phr;ゴム100重量部当たりの重量部

【表5】

【0095】
(実施例7)
実施例7では、フルオロエラストマーとして実施例2で調製したフルオロエラストマーサンプルを使用した以外は、実施例6と同様にして、コンパウンドサンプルの調製及び試験を行なった。コンパウンド化中に、ポリマーは加工が容易であり、かつ実施例6のようにコンパウンドがロールミルに付着しなかった。コンパウンドムーニー粘度(ML1+10)@100℃は、2.1であった。
【0096】
(実施例8)
実施例8では、フルオロエラストマーとして実施例5で調製したフルオロエラストマーサンプルを使用した以外は、実施例6と同様にして、コンパウンドサンプルの調製及び試験を行なった。コンパウンド化中に、ポリマーは加工が容易であり、かつ実施例6のようにコンパウンドがロールミルに付着しなかった。コンパウンドムーニー粘度(ML1+10)@100℃は、85であった。試験結果は、表5にまとめられている。
【0097】
比較実施例5
比較実施例5では、FC 2211及びFC 2210Xの50%/50%ブレンドをフルオロエラストマーとして使用した以外は、実施例6と同様にして、コンパウンドサンプルを調製した。コンパウンド化中に、コンパウンドは加工及びロールミルからの除去が困難であった。ブレンドのコンパウンドムーニー粘度(ML1+10)は、100℃にて3.1であった。本ポリマーは、ヨウ素又は臭素を末端基又は硬化部位として含有しないために、コンパウンドは表4にあるような処方では硬化しなかった。
【0098】
比較実施例6
比較実施例6では、FC 2211以外をフルオロエラストマーとして使用した。コンパウンド化中に、ロールミルからのコンパウンドの除去は若干困難であった。コンパウンド5、コンパウンドサンプルは、実施例と同様にして調製及び試験を行い、ムーニー粘度(ML1+10)は、100℃にて26であった。本ポリマーは、ヨウ素又は臭素を末端基又は硬化部位として含有しないために、コンパウンドは表4にあるような処方では硬化しなかった。
【0099】
比較実施例7
比較実施例7では、コンパウンドサンプルは、過酸化物硬化性フルオロエラストマーFC 2260をフルオロエラストマーとして使用した以外は、実施例6と同様にして調製及び試験を行った。コンパウンド化中に、ポリマーは加工が容易であり、かつ実施例6のようにコンパウンドがロールミルに付着しなかった。
【0100】
比較実施例8
比較実施例8では、コンパウンドサンプルは実施例6にあるようにして試験した。コンパウンドは、過酸化物硬化性シリコーンエラストマー・エラストシル(Elastsil)(登録商標)401(ムーニー粘度ML1+10@100℃=22、ワッカー・ケミカル社(Wacker Chemical Corp.)(米国、ミシガン州)から入手可能)を、1部の50%活性2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−ヘキサン(ヴァロックス(Varox)(登録商標)DBPH−50としてR.T.ヴァンダービルト(Vanderbilt)(米国、コネティカット州)から入手可能)と共に使用して調製した。コンパウンド化中に、ポリマーは加工が容易であり、かつ実施例6のようにコンパウンドがロールミルに付着しなかった。
【0101】
(実施例9)
実施例9では、実施例6のフルオロエラストマーコンパウンドを使用して、メタノールを溶剤として使用してロールを完全に洗浄した後、6インチの2ロールミルに対する粘着度又は剥離強度を試験した。100グラムのコンパウンドを10秒間ミルにかけ、ロールミルにバンドを作成した。ロールの回転速度及びロール間のギャップは、実施例3と同様であった。圧延前後でのコンパウンド表面温度は、それぞれ23.3℃及び30.2℃であった。剥離強度は、実施例3と同様に測定した。平均剥離強度(n=2)は、1.9dN/cmであった。試験結果は表6にまとめられている。
【0102】
コンパウンドの粘弾性は、実施例3と同様に測定した。0.1rad/秒及び6.3rad/秒(1Hz)でのコンパウンドの貯蔵弾性率データは、それぞれ63及び642kPaであった。試験結果は表6にまとめられている。
【0103】
実施例10及び11、並びに比較実施例8〜11
実施例10及び11、並びに比較実施例8〜11において、コンパウンドサンプルは、実施例7及び8並びに比較実施例5〜8のエラストマー化合物を使用した以外は、実施例9と同様に試験した。試験結果は表6にまとめられている。

【表6】

【0104】
表6のデータは、本発明のフルオロエラストマー化合物(実施例9及び10)は、フルオロエラストマー化合物(比較実施例9)と比較してそれ程ロールミルに張り付くことはないことを示す。フルオロエラストマー化合物(実施例9及び10)の粘着度は、シリコーンエラストマー化合物(比較実施例12)のそれとほぼ同じである。
【0105】
比較実施例13
比較実施例13では、剥離強度は、粘着テープ(PTFEテープ5490番として3M(米国、ミネソタ州、セントポール(St. Paul))から入手可能)を使用して対照としてのロールに対する接着性を検査した以外は、実施例3と同様に測定した。テープは、ロールへ良好に接着した。剥離強度は26.7dN/cmであった。
【0106】
(実施例12)
実施例12では、4リットル反応容器に、2,250グラムの水、2グラムの過硫酸アンモニウム(APS、(NH)及び8グラムの二塩基性リン酸カリウム(KHPO)の50%水溶液を充填した。反応容器を排気し、真空を破り、0.17MPa(25psi)になるまで窒素を圧入した。この真空及び加圧を3回繰り返した。酸素を除去した後、反応容器は、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとデカフルオロ−3−メトキシ−4−トリフルオロメチル−ペンタン(ハイドロフルオロエーテル、HFE 7300として3M(米国、ミネソタ州、セントポール(St. Paul))から入手可能)のブレンドと共に、80℃まで加熱し、0.51MPa(74psi)まで加圧した。ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7300のブレンドを調製するために、1リットルのステンレス鋼シリンダーを排気し、窒素で3回パージした。1,4−ジヨードオクタフルオロブタン及びHFE 7300をシリンダーに添加した後、添加した1,4−ジヨードオクタフルオロブタンの量を基準としてHFPを添加した。次にブレンドを反応容器に取り付け、窒素ブランケットを使用して供給した。ブレンドは、92.3重量%のHFP、2.6重量%の1,4−ジヨードオクタフルオロブタン及び5.1重量%のHFE7300を含有していた。次に、反応容器にフッ化ビニリデン(VDF)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7300の上記ブレンドを充填し、反応容器圧力を1.57MPa(228psi)にした。VDF及びHFP、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7300のブレンドの全プレチャージは、それぞれ93.0グラム、及び173.7グラムであった。反応容器を650rpmで攪拌した。重合反応でモノマーが消費されて反応容器圧力が低下するのに伴い、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7300のブレンド、及びVDFを反応容器に連続的に供給し、圧力を1.57MPa(228psi)に維持した。ブレンドとVDFの比は、重量比で0.651であり、重合のために乳化剤は使用しなかった。7.7時間後に、モノマーとブレンドの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率30.8重量%及びpH3.3を有した。分散体粒径は412nmであり、分散体の総量は3,906グラムであった。固化のために、ラテックスの体積の1〜2倍に相当する量の脱イオン水をラテックスへ添加した。高剪断力撹拌器により8,200rpmで30分間、混合物を攪拌し、次に母液を廃棄した。暖かい脱イオン水を全部で16,000mL使用して、クラムを4回洗浄し、130℃にて16時間乾燥させた。実施例1に記載されているようにして、得られたフルオロエラストマー未加工ゴムを試験し、得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは100℃にて1.5の、121℃にて0.7のムーニー粘度を有していた。NMR分析によれば、フルオロエラストマーは、78.2モル%のVDF共重合単位及び20.5モル%のHFPを含有しており、ヨウ素末端基−CFCHIは0.53モル%であった。中性子放射化分析(NAA)によるヨウ素含有量は、0.88重量%であった。GPCによれば、数平均分子量(M)及び重量平均分子量(M)は、それぞれ18,980及び46,290であった。DSCによれば、ガラス転移温度(T)は−23.8℃であった。
【0107】
粘弾性は実施例3と同様に測定し、0.1及び6.3Hz(rad/秒)における貯蔵弾性率(G’)はそれぞれ137及び630であった。
【0108】
本実施例のフルオロエラストマー未加工ゴムをコンパウンド化することによって、実施例6と同様にしてフルオロエラストマー化合物の調製及び試験を行った。試験結果は表7にまとめられており、コンパウンド処方は表4と同じである。
【0109】
コンパウンド化中に、ポリマーは加工が容易であり、かつコンパウンドがロールミルに付着しなかった。100℃及び121℃におけるコンパウンドムーニー粘度(ML1+10)は、それぞれ1.5及び0.7であった。また、フルオロエラストマー化合物の硬化レオロジーも、150℃℃のにおいて20分間、試験した。コンパウンドは、良好な硬化特性を示し、90%硬化時間(t’90)は7.8分であるとともに、デルタトルク(MH−ML)は19dNm(16.9ポンド−インチ)であった。
【0110】
(実施例13)
実施例13では、1,4−ジヨードオクタフルオロブタン(I(CFI)に代えてヨードペンタフルオロエタン(CFI)を使用し、HFE 7300を使用しなかった以外は、実施例12と同様にして、ポリマーサンプルの調製及び試験を行った。シリンダー内のHFPとヨードトリフルオロメタンのブレンドは、それぞれ1160グラム及び13.7グラムであった。反応時間は6.1時間、固体含有率は31.9重量%であった。実施例1に記載されているようにして、得られたフルオロエラストマー未加工ゴムを試験し、得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは、100℃にて2.5及び121℃にて1.2のムーニー粘度を有していた。NMR分析によれば、フルオロエラストマーは、77.4モル%のVDF共重合単位及び21.7モル%のHFPを含有しており、ヨウ素末端基−CFCHIは0.27モル%であった。中性子放射化分析(NAA)によるヨウ素含有量は、0.43重量%であった。
【0111】
ロールに対する剥離強度(n=2)及び粘弾性は、実施例3と同様に測定した。強度は5.1dN/cmであり、0.1及び6.3Hz(rad/秒)における貯蔵弾性率(G’)は、それぞれ97.7及び534であった。
【0112】
比較実施例14
比較実施例14では、G−802(ダイキン・アメリカ(Daikin America)(米国、ニューヨーク州、オレンジバーグ(Orangeburg))から入手可能)をフルオロエラストマーとして使用した以外は、実施例1と同様にして、フルオロエラストマーサンプルの試験をした。未加工ゴムは、100℃で49、及び121℃で23のムーニー粘度を有した。
【0113】
粘弾性は実施例3と同様に測定し、0.1及び6.3Hz(rad/秒)における貯蔵弾性率(G’)は、それぞれ326及び625であった。
【0114】
比較実施例3のフルオロエラストマーをフルオロエラストマーとして使用した以外は、実施例2と同様にして、フルオロエラストマー化合物サンプルの調製及び試験を行なった。コンパウンド化中に、ポリマーは加工が容易であり、かつコンパウンドはロールミルに付着しなかった。コンパウンドは実施例6と同様に試験し、試験結果は表7にまとめられている。

【表7】

【0115】
(実施例14)
実施例14では、ガラスジャーを使用し、実施例12で調製したフルオロエラストマー化合物を、溶剤としての2−ブタノン(MEK)と共に振盪することによって、20重量%〜80重量%固形分のフルオロエラストマー化合物溶液を調製した。溶液の粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計DVII(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ(Brookfield Engineering Laboratories)(米国、マサチューセッツ州、ミドルボロ(Middleboro))から入手可能)を使用し、21℃にて測定した。溶液の粘度を表8に示す。
【0116】
比較実施例15
比較実施例15では、比較実施例4のコンパウンドを実施例13の化合物に代えて使用した以外は、実施例13と同様にして、フルオロエラストマー化合物溶液の調製及び試験を行なった。溶液の粘度を表8に示す。
【0117】
比較実施例16
比較実施例16では、比較実施例12にて実施例14と同様にして調製したフルオロエラストマー化合物を、ガラスジャーを使用して振盪することによって、20重量%〜80重量%固形分のフルオロエラストマー化合物溶液を調製した。80%固形分のフルオロエラストマー化合物は、1日間振盪後も完全には溶解せず、不溶性フルオロエラストマー化合物がガラスジャー内に残った。溶液の粘度は、実施例3と同様に測定した。溶液の粘度を表8に示す。
【表8】

【0118】
(実施例15)
実施例15では、実施例13と同様にして調製した89重量%固形分のフルオロエラストマー溶液は、ステンレス鋼試験片上にコーティングした。ステンレス鋼表面は、ステンレス鋼表面をアセトンで拭き取った後、プライマーとして、メタノール中6.7%シランカップリング剤(ロード社(Lord Corp.)(米国、ノースカロライナ州、カリー(Cary))から、ケムロック(Chemlok)(登録商標)の商標名にて入手可能)にて、前処理した。コーティングシートを120℃にて10分間乾燥し、150℃にて20分間硬化した。硬化後のコーティング層厚みは、3.3mmであった。剥離強度又は接着強度は、ASTM D 429−03方法B(90度剥離試験)に従って測定した。剥離強度又は接着強度は、53dN/cm(3.0ポンド/インチ)であり、接着破壊のタイプはフルオロエラストマー内であった。
【0119】
層間接着力の試験を90度剥離試験にて実施するために、比較実施例12と同様に、加熱前、PTFEテープを使用してステンレス鋼の一端に沿って約2cm被った。PTFEは、フルオロエラストマー層に接着せず、試験機器のジョー内に挿入するためのコーティング層のタブを作製するためだけに使用された。「インストロン型式4204」(インストロン社(Instron Corp.)(マサチューセッツ州、ノーウッド(Norwood))から入手可能)の商標名にて販売されている試験機であって、アップグレード版が「MTS ReNew」(MTSシステム社(MTS System Corp.)(ミネソタ州、イーデンプレーリー(Eden Prairie))から入手可能)の商標名にて販売されているものを、100mm/分のクロスヘッド速度にて、試験装置として使用した。層が分離するにつれて、サンプルの中央80%の剥離接着強さを測定した。クロスヘッドの初めの10%及び最後の10%の距離からの値は除外した。
【0120】
(実施例16)
実施例16では、実施例12のフルオロエラストマー化合物の約1.78mm厚みのシートを、ロールミルのギャップを調整することによって作成した。実施例15と同様に前処理したステンレス鋼試験片上に、フルオロエラストマー化合物シートを適用した。次に、フルオロエラストマーを積層させた試験片をオーブン(周囲気圧)内、150℃にて20分間加熱して、ステンレス鋼とフルオロエラストマーとの間の接着性を評価した。フルオロエラストマー層は硬化前に流動し、フルオロエラストマー表面はガラス質かつ滑らかであった。フルオロエラストマー層の平均厚さは、1.54mmであった。剥離強度又は接着強度は実施例14と同様に測定し、平均強度(N=3)は98dN/cm(5.6ポンド/インチ)であった。接着破壊のタイプは、全て、フルオロエラストマー−プライマー又はプライマー−金属界面であった。
【0121】
(実施例17)
実施例17では、80リットル反応容器に、52,000グラムの水、40グラムの過硫酸アンモニウム(APS、(NH)及び160グラムの二塩基性リン酸カリウム(KHPO)の50%水溶液を充填した。反応容器を排気し、真空を破り、0.17MPa(25psi)になるまで窒素を圧入した。この真空及び加圧を3回繰り返した。酸素を除去した後、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとデカフルオロ−3−メトキシ−4−トリフルオロメチル−ペンタンのブレンドが入った反応容器を80℃まで加熱し、0.51MPa(74psi)まで加圧した。ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE7300のブレンドを調製するために、1リットルのステンレス鋼シリンダーを排気し、窒素で3回パージした。1,4−ジヨードオクタフルオロブタン及びHFE7300をシリンダーに添加した後、添加した1,4−ジヨードオクタフルオロブタンの量を基準としてHFPを添加した。次にブレンドを反応容器に取り付け、窒素ブランケットを使用して供給した。ブレンドは、92.3重量%のHFP、2.6重量%の1,4−ジヨードオクタフルオロブタン及び5.1重量%のHFE7300を含有していた。次に、反応容器にフッ化ビニリデン(VDF)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7300の上記ブレンドを充填し、反応容器圧力を1.52MPa(220psi)にした。VDF及びHFP、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7300のブレンドの全プレチャージは、それぞれ93.0グラム及び173.7グラムであった。反応容器を450rpmで攪拌した。重合反応でモノマーが消費されて反応容器圧力が低下するのに伴い、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンとHFE 7300のブレンド、及びVDFを反応容器へ連続的に供給し、圧力を1.52MPa(220psi)に維持した。ブレンドとVDFの比は、重量比で0.651であり、重合のために乳化剤は使用しなかった。6.5時間後に、モノマー及びブレンドの供給を停止させ、反応容器を冷却した。得られた分散体は、固形物含有率30.7重量%及びpH3.4を有した。分散体粒径は、257nmであり、分散体の総量は75,000グラムであった。
【0122】
固化のために、1重量部のNHOHと25重量部の脱イオン水の混合物の19.54gを942グラムの上記のように調製したラテックスに添加した。混合物のpHは、6.7であった。本混合物を1.25重量%MgCl水溶液2320mLへ添加した。固化物をチーズクロスを通して濾過することによって、かつゆっくりと絞って余分な水を除去することによってクラムを回収した。クラムを固化用容器へ戻し、脱イオン水にて全3回すすいだ。最後のすすぎ及び濾過の後で、クラムを110℃オーブン内で16時間乾燥させた。実施例1に記載されているようにして、得られたフルオロエラストマー未加工ゴムを試験し、得られたフルオロエラストマー未加工ゴムは100℃にて2.7のムーニー粘度を有していた。
【0123】
粘弾性は実施例3と同様に測定し、0.1及び6.3Hz(rad/秒)における貯蔵弾性率(G’)は、それぞれ44.8及び423であった。
【0124】
本実施例のフルオロエラストマー未加工ゴムをコンパウンド化することによって、実施例6と同様にしてフルオロエラストマー化合物の調製及び試験を行った。コンパウンドは、良好な硬化特性を示し、90%硬化時間(t’90)は1.2分であるとともに、デルタトルク(MH−ML)は17.6dNm(15.6ポンド−インチ)であった。
【0125】
本発明の様々な改良及び変更が本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずに実施できることは、当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化部位を有する第一フルオロポリマーを含むヨウ素含有非晶質フルオロポリマーであって、
該第一フルオロポリマーが、25℃かつ6.3rad/秒にて300kPa以上の、及び25℃かつ0.1rad/秒にて200kPa以下の貯蔵弾性率を有するヨウ素含有非晶質フルオロポリマー。
【請求項2】
請求項1に記載のヨウ素含有非晶質フルオロポリマーを含む、水性分散体。
【請求項3】
前記フルオロポリマーが、ASTM D1646−06タイプAに従って100℃で4以下(ML 1+10)のムーニー粘度、及び10dN/cm以下のロールミルに対する剥離強度を更に備える、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項4】
前記フルオロポリマーが、ASTM D1646−06タイプAに従って100℃で2以下(ML 1+10)のムーニー粘度、及び10dN/cm以下のロールミルに対する剥離強度を更に備える、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項5】
前記硬化部位が末端基である、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項6】
前記硬化部位末端基がヨウ素基である、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項7】
ヨウ素の重量%が0.2〜2の範囲である、請求項6に記載のフルオロポリマー。
【請求項8】
ヨウ素がヨウ素化連鎖移動剤に由来する、請求項6に記載のフルオロポリマー。
【請求項9】
前記連鎖移動剤がペルフルオロ化ヨウ素化合物である、請求項8に記載のフルオロポリマー。
【請求項10】
少なくとも1種のキュアサイトモノマーを更に含む、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項11】
前記キュアサイトモノマーが、CH2=CHI、CF2=CHI、CF2=CFI、CH2=CHCH2I、CF2=CFCF2I、CH2=CHCF2CF2I、CF2=CFCH2CH2I、CF2=CFCF2CF2I、CH2=CH(CF2)6CH2CH2I、CF2=CFOCF2CF2I、CF2=CFOCF2CF2CF2I、CF2=CFOCF2CF2CH2I、CF2=CFCF2OCH2CH2I、CF=CFO(CF−OCFCF、CH=CHBr、CF=CHBr、CF=CFBr、CH=CHCHBr、CF=CFCFBr、CH=CHCFCFBr、CF=CFOCFCFBrからなる群から選択される、請求項10に記載のフルオロポリマー。
【請求項12】
充填剤を更に含む、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項13】
前記フルオロポリマーが、過酸化物硬化性である、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項14】
過酸化物及び助剤を更に含む、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項15】
ASTM D1646に従って100℃で2超(ML 1+10)のムーニー粘度を有する少なくとも1種の第二非晶質フルオロポリマーを更に含む、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項16】
前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレン、プロピレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ペルフルオロ(アリールエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、ビニルフルオライド及びトリフルオロエチレンからなる群から誘導されるインターポリマー化単位を含む、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項17】
前記フルオロポリマーが、ペルフルオロビニルエーテル含有のフォーマルから誘導されるインターポリマー化単位を含む、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項18】
前記フルオロポリマーが無乳化剤重合により形成される、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項19】
前記フルオロポリマーが、緩衝剤又は水酸化アンモニウムと重合させられる、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項20】
前記フルオロポリマーが、剪断力又は塩によって固化させられる、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項21】
前記フルオロポリマーが、塩及び水酸化アンモニウムを添加することで固化させられる、請求項1に記載のフルオロポリマー。
【請求項22】
(a)少なくとも1種のフッ素含有モノマーを提供する工程、
(b)フリーラジカルを生成可能な反応開始剤を提供する工程、
(c)所望により、乳化剤を提供する工程、及び
(d)水性乳化重合にて、ヨウ素化連鎖移動剤の存在下で、少なくとも1種のフッ素含有モノマーを重合させる工程であって、ヨウ素化連鎖移動剤が重合容器内へと連続的に供給される工程、
を含む、非晶質フルオロポリマーの製造方法。
【請求項23】
前記反応開始剤が、ペルオキシジサルフェートである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ヨウ素化連鎖移動剤の連続供給が、1種以上のモノマー中のヨウ素化連鎖移動剤のブレンドを連続供給することにより行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
25℃かつ6.3rad/秒にて300kPa以上及び25℃かつ0.1rad/秒で200kPa以下の貯蔵弾性率を有する非晶質フルオロポリマーを含むフルオロエラストマーに由来する硬化物品。
【請求項26】
請求項1に記載のヨウ素含有非晶質フルオロポリマーを含む溶液。
【請求項27】
請求項26に記載の溶液を含むコーティング組成物。
【請求項28】
請求項27に記載のコーティング組成物を含む、硬化済みコーティング組成物。
【請求項29】
請求項2に記載の分散体を含むコーティング組成物。
【請求項30】
請求項27に記載のコーティング組成物を含む、硬化済みコーティング組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−539295(P2010−539295A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524976(P2010−524976)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/075966
【国際公開番号】WO2009/036131
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】