説明

超長鎖イヌリン

本発明は、長鎖イヌリンおよびアーティチョークの根からのその調製、食料品および化粧用調製物におけるその使用、ならびにこの長鎖イヌリンを含む食料品および化粧用調製物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に長鎖のイヌリンおよびアーティチョークの根からのその調製、食料品および化粧用調製物におけるその使用、ならびにこの特に長鎖のイヌリンを含む食料品および化粧用調製物に関する。
【0002】
ほとんど脂肪を含有せず、より多くの天然原料を含有する食料品の需要は、ここ数十年で大きく増加した。炭水化物もしくはタンパク質に基づく製品、または脂肪酸の糖ポリエステルなどの合成脂肪代替品などの多数の物質が、脂肪の代替品としてすでに提案されてきた。しかしこれらは、低い熱安定性、不満足な「口あたり」、または人々もしくは環境への望まれない影響などの欠点を常に有する。
【0003】
イヌリンが食品への使用に適することは、長い間公知であった。イヌリンは、ヒトに利用できるエネルギー価が低く、したがって、脂肪代替品としてのイヌリンの使用は、最終品の発熱量を確実に大きく減少させる。加えてイヌリンは、食料品中のプレバイオティク添加物および膨張性薬剤(bulking agent)として使用される。
【0004】
イヌリンは、フルクタングループに属する多糖である。これは、フルクトース分子のβ−2−1結合鎖からなり、この鎖は、還元末端にα−D−グルコースユニットを有することがある。イヌリンは、例えばチコリの根、キクイモ(Jerusalem artichoke)塊茎、およびダリア塊茎などの様々な植物に経済的に回収できる量で存在する。様々なイヌリンの平均鎖長およびそれらの物理化学的性質は、植物種によって異なる。
【0005】
現在まで食料品分野に採用されているイヌリンは、例えば水性ペースト形態での粘度、熱安定性および酸安定性、乳化能、ならびに水結合能などのそれらの加工特性が完全には満足でない。
【0006】
加えて、発酵特性の改善およびプレバイオティク効果の拡大を有するイヌリンの必要性がある。
【0007】
さらなる問題は、植物組織からイヌリンを熱水抽出した場合に、抽出物が、ポリマーの粗イヌリン以外にグルコースおよびフルクトースなどの単糖、スクロースなどの二糖、ならびにフルクトオリゴ糖(DP3〜10)もまた含有することである。これらの副生成物(単糖および二糖、フルクトオリゴ糖(DP3〜10)は、イヌリンのさらなる加工を妨害するおそれがある。例えば、単糖および二糖は、食事療法用食品の製造に好ましくない。単糖および二糖ならびにフルクトオリゴ糖(DP3〜10)の甘味は、食品分野でのある種の適用を妨害する。フルクトオリゴ糖(DP3〜10)は、その吸湿性および粘着性のために、加工の間および貯蔵の間の両方で食品への粗イヌリンの使用を大きく妨げるおそれがある。例えば化学的誘導体化により、粗イヌリンをさらに加工する間に、単糖および二糖ならびにフルクトオリゴ糖(DP3〜10)は、費用がかさむ方法によってのみ精製できるか、または全く精製できない不確定な生成物の混合物に至るおそれがある。加えて、高い率の還元糖は、アミノ化合物の存在下での加熱加工において、望まれない褐変反応、異臭の形成、およびアクリルアミドの生成(メイラード反応)が起こりうるという欠点を有する。
【0008】
本発明は、上に規定する問題を解決することが可能なイヌリンを提供するという目的に基づく。
【0009】
特に本発明は、化粧品工業および食品工業における応用のために好都合な加工特性を達成することであった。その例は、好都合な粘度挙動、高い熱安定性および酸安定性、良好な乳化能、ならびに高い水結合能である。
【0010】
さらに本発明によって取り組む一問題は、食料品への応用のために発酵特性の改善およびプレバイオティク効果の改善を有するイヌリンを提供することであった。
【0011】
最終的に、粗イヌリンに比べて単糖および二糖ならびにフルクトオリゴ糖(DP3〜10)の含量が少ないイヌリンを提供することが望ましかった。
【0012】
前述の問題は、特許請求の範囲に定義された態様の提供によって解決される。
【0013】
本発明は、83から103の、好ましくは84から100の、さらに好ましくは83から98の、いっそうさらに好ましくは85から98の、そのうえさらに好ましくは85から95の、なおさらに好ましくは86から97の、最も好ましくは86から94の平均重合度DPを有するイヌリンに関する。
【0014】
これに関連して、そして本発明に関連して、「から」という用語は、それぞれ表示された数値限界を包含することもまた意図する。
【0015】
「イヌリン」という用語は、本発明に関連してフルクトース分子のβ−2−1結合鎖からなるポリフルクタンを意味することを意図する。この鎖は、好ましくはその末端に還元性α−D−グルコースユニットを有する。
【0016】
本発明に関連して「平均重合度DP」(平均DP(重量))という用語は、重量平均分子量Mおよびモノマーの分子量Moの商を意味する。重量平均分子量Mは、次式
【数1】


により得られ、式中、Niは分子量Miを有する分子の数である。
【0017】
「平均重合度DP」は、本発明に関連して本明細書下記の「光散乱および屈折率検出を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI−MALLSシステム)」の方法により好ましくは測定される。
【0018】
本発明のイヌリンは、従来技術で記載されたイヌリンに比べて、熱処理または酸処理に異常に高い安定性を示すことにより、例えば特定産業での応用または化粧品工業および/もしくは食品工業における応用にさらに適するクリームに加工することができるという驚くべき長所を示す。加えて、本発明のイヌリンを含むクリームは、剪断力に対して予想外に高い安定性を示す。したがって本発明のイヌリンは、従来のイヌリンに比べて、強い剪断力が作用する工業プロセスにおいてより良好に加工することができるというさらなる長所を示す。
【0019】
本発明のイヌリンは、特に好都合な粘度特性および高いゲル強度、ならびに食料品への応用に好都合な非常に低い溶解度がさらに優れている。
【0020】
加えて本発明のイヌリンは、口の中で優れた感覚特性を有する、食料品における脂肪代替品として驚くほど良好な特性を示す。
【0021】
本発明のイヌリンは、以前に採用された製品に比べて低速の発酵もまた示し、低速の発酵は、大腸後端における疾患の予防に好都合である。低速の発酵は、腸内ガス、特に水素の発生減少を伴う。
【0022】
さらに本発明のイヌリンは、以前に採用された製品に比べて大きなプレバイオティク効果を有する。特に本発明のイヌリンは、好都合な方法でビフィズス菌の発生を刺激し、望まれない細菌および/または病原性細菌を同時に減少させる。したがって本発明のイヌリンは、特に大腸後端における腸の機能不全および疾患の予防および処置のための食料品および/または医薬への使用に適する。
【0023】
最後に本発明のイヌリンは、様々な食料品に、例えば粘度増加、乳化性、水結合能およびパンの中身形成などの好都合な使用特性もまた付与する。本発明のイヌリンは、驚くことにベーカリー製品に改善された製パン特性を付与し、生地の収率を上げる。本発明のイヌリンは、さらに香味の改変および泡の安定化のための有効な手段である。
【0024】
さらなる態様では、本発明のイヌリンは、3%未満、好ましくは1.5%未満、特に好ましくは0.7%未満、さらに特に好ましくは0.3%未満という、3から10のDPを有するフルクトオリゴ糖(オリゴフルクタン)の含量を有する。
【0025】
さらなる態様では、本発明のイヌリンは、2%未満、好ましくは1%未満、特に好ましくは0.5%未満、さらに特に好ましくは0.2%未満、最も好ましくは0.1%未満というグルコース含量を有する。
【0026】
さらなる態様では、本発明のイヌリンは、2.5%未満、好ましくは1.5%未満、特に好ましくは1.0%未満、さらに特に好ましくは0.3%未満、最も好ましくは0.15%未満というフルクトース含量を有する。
【0027】
さらなる態様では、本発明のイヌリンは、2%未満、好ましくは1%未満、特に好ましくは0.5%未満、さらに特に好ましくは0.3%未満、最も好ましくは0.1%未満というスクロース含量を有する。
【0028】
食料品への応用に特に好都合な本発明のイヌリンの態様では、単糖および二糖の含量は0.5%未満である。
【0029】
全ての百分率は、別に指摘しない限りイヌリンおよびさらなる物質の総乾燥重量に対する重量パーセントである。「さらなる物質」は、イヌリンとは異なる、乾燥混合物中の全ての物質である。
【0030】
本発明に関連して、フルクトース、グルコースおよびスクロースの含量は、下記の光学的酵素法(一般的な方法:「糖の測定」)により測定される。
【0031】
前の態様に含まれうるさらなる態様では、本発明のイヌリンは、13400g/molから16700g/mol、好ましくは13600から16200g/mol、さらに好ましくは13750g/molから15900g/mol、特に好ましくは13900g/molから15750g/mol、最も好ましくは13900g/molから15250g/molの重量平均分子量Mを有する。
【0032】
本発明に関連して重量平均分子量Mは、本明細書下記の「光散乱および屈折率検出を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI−MALLSシステム)」の方法により好ましくは測定される。
【0033】
前の態様に含まれうるさらなる態様では、本発明のイヌリンは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、66から89、好ましくは68から85、特に好ましくは70から85、いっそうさらに好ましくは72から84の平均重合度DPn(GPC)を有する。
【0034】
本発明に関連して「平均重合度DPn」は、本明細書下記の「光散乱および屈折率検出を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI−MALLSシステム)」の方法により好ましくは測定される。
【0035】
本発明に関連して、「平均重合度DPn」(平均DP(数))という用語は、数平均分子量Mnおよび結合したモノマーの分子量Mo(アンヒドロフルクトース=162g/mol)の商を意味する。数平均分子量Mnは、次式
【数2】


により得られ、式中、Niは分子量Miを有する分子の数である。
【0036】
前の態様に含まれうるさらなる態様では、本発明のイヌリンは、650から48000、さらに好ましくは970から40000g/mol、なおさらに好ましくは1300g/molから34000g/mol、最も好ましくは4000g/molから26800g/molの範囲の分子量分布を有する。
【0037】
前の態様に含まれうるそのうえさらなる態様では、本発明のイヌリンは、全てのイヌリン分子の総質量に対して10000g/mol未満の分子量を有するイヌリン分子の総質量が20〜36%、および全てのイヌリン分子の総質量に対して20000g/molを超える分子量を有するイヌリン分子の総質量が7〜23%を示す。全てのイヌリン分子の総質量に対して10000g/mol未満の分子量を有するイヌリン分子の総質量が25〜31%であり、全てのイヌリン分子の総質量に対して20000g/molを超える分子量を有するイヌリン分子の総質量が12〜18%であることが、いっそうさらに好ましい。
【0038】
本発明に関連して分子量分布は、本明細書下記の「光散乱および屈折率検出を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI−MALLSシステム)」の方法により好ましくは測定される。
【0039】
特に好都合な特性を有する本発明のイヌリンの一態様では、分岐度は、
【表1】


0.5〜2.0mol%、さらに好ましくは0.7〜2.0mol%、なおさらに好ましくは0.9から2.0mol%、最も好ましくは1.1から2.0mol%である。分岐度は、本明細書においてランダムに分布する分子量を有する本発明のイヌリンの試料で測定された全てのイヌリンモノマーの総数に対する、フルクトースモノマーの6位に追加の分岐点を有するβ−2−1−結合フルクトースモノマー(以後「2−1,6−」とも略する)の百分率の数として定義される。その6位では、ポリフルクトース鎖内の「2−1,6−」フルクトースモノマーは、少なくとも二つのβ−2−1−結合フルクトースモノマーからなる別のポリフルクトース鎖に、または単一のフルクトースモノマーに結合する。「分岐点」という用語は、少なくとも二つのβ−2−1−結合フルクトースモノマーからなる別のポリフルクトース鎖が、または単一のフルクトースモノマーが結合するポリフルクトース鎖内のフルクトースモノマーの位置を表す。分岐度は、標準的なメチル化分析法により、またはその代わりにメチル化後の還元分解法により測定される。両方法は、添付の実施例に詳細に説明する。
【0040】
その特性が特に好都合であり、前に記載した態様に含まれうる本発明のイヌリンの態様は、重量平均重合度と数平均重合度の商DPw/DPnにより表される特に狭い分子量分布を有する。この量は、多分散指数(polydispersity index)とも呼ばれる。好ましい態様では、商DPw/DPnは1.25未満であり、さらに好ましい態様では1.20未満であり、いっそうさらに好ましい態様では1.15未満であり、最も好ましい態様では1.10未満である。本発明に関連して、DPwおよびDPnについての値は、本明細書下記の「光散乱および屈折率検出を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI−MALLSシステム)」の方法により測定される。変換の計算のためのモノマーの分子量は、162g/molに等しいと設定する。
【0041】
本発明はさらに、本発明のイヌリンの水性ペーストに関し、そのペーストは、水にイヌリンを分散させること、結果として得られた分散液を均一になるまで剪断すること、このように得られた生成物を4〜15℃で12〜24時間保存すること、および室温に調節した後で撹拌して均一なペーストを得ることによって得ることができる。好ましいペーストは、水と、ペーストの総重量に対して1〜40wt%、さらに好ましくは1〜35wt%、なおさらに好ましくは1〜30wt%、いっそうさらに好ましくは2〜25wt%、そのうえさらに好ましくは2〜20wt%、特に好ましくは10〜20wt%のイヌリンとを含む。「ペースト」という用語は、本発明によると結晶状および/または無定形イヌリンの懸濁液と同等である。したがって、「水性ペースト」という用語は、水相中の結晶状および/または無定形イヌリンの懸濁液として了解されたい。水相は水に基づき、その水は、塩、他の炭水化物、タンパク質、アミノ酸などのさらに溶解または懸濁した物質を所望により含むことがある。好都合な態様では、ペースト中のイヌリンは、噴霧乾燥イヌリン、すなわちペーストを形成する前に噴霧乾燥されたイヌリンである。
【0042】
上記のペーストは、水系中の構成要素として使用することができる。好ましい水系は、水に基づく食料品および化粧品であり、ここで「食料品」という用語は、この説明の各所で定義する。好ましい食料品の例もまた、この説明の各所で挙げる。食料品および化粧品において、本発明によるペーストは、構造付与構成要素、粘稠化剤、テキスチャー付与剤(texturizing agent)、安定化剤、または増粘剤(viscosity-building agent)として使用することができ、ここで、これに関連するペーストは、上に言及した機能の一つまたは複数を果たすことができる。食料品において、本発明によるペーストは、脂肪代替品、油代替品、プレバイオティク剤および/または食物繊維構成要素としてもまた使用することができ、ここで、これに関連するペーストは、上に言及する一つまたは複数の機能を果たすことができる。最も好ましい使用は、油代替品または脂肪代替品としての使用である。本発明によるペーストが構成要素として使用される最も好ましい食料品は、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、クリーム、生クリーム、カード、バター、ミルク、特にスキムミルク、バターミルク、サワーミルク、ケフィア、チーズ、例えばクリームチーズ、ソフトチーズ、スライスチーズ、ハードチーズ、ホエイ、粉乳、ミルクベースの飲料などの乳製品である。
【0043】
本発明のイヌリンは、酸に驚くほど高い安定性を示す。特に、本発明のイヌリンの水性ペーストは、酸に高い安定性を示す。同じく、本発明の水性イヌリンペーストの剪断安定性は、市販の製品に比べて異例である。
【0044】
本発明のイヌリンは、驚くほど高いゲル強度により他の市販のイヌリンと区別される。イヌリンを90℃で溶解させ、次いで室温(23℃)で24時間保存する場合に、4〜100N、さらに好都合には10〜100N、いっそうさらに好都合には20〜100N、最も好都合には40〜100Nのゲル強度が、水において1〜35%(w/w)、さらに好ましくは1〜30%(w/w)、なおさらに好ましくは2〜25%(w/w)、そのうえさらに好ましくは2〜20%(w/w)、最も好ましくは約20%(w/w)濃度の本発明のイヌリンで達成される。上に示したような高いゲル強度は、噴霧乾燥され、次いでゲル形成に採用された本発明のイヌリンを用いて特にうまく達成することができる。このように得られたゲルは、好ましくは粒子の性質を示す(粒子状ゲル)。ゲル強度を測定するための測定法は、実施例の項に詳細に説明する(水中で加熱後のイヌリンによる構造形成)。
【0045】
さらなる局面において本発明は、イヌリンを入手するためのプロセスに関し、このプロセスでは、
a)アーティチョークの根を粉砕し、
b)粉砕された根を水で処理することによって抽出液を得、
c)得られた抽出物から着色構成要素を除去し、
d)抽出液からイヌリンを沈殿させ、
e)このイヌリンを少なくとも1回再沈殿させる。
【0046】
このプロセスは、上に記載した本発明のイヌリンを得るために特に適するが、それに限定されるわけではない。
【0047】
アーティチョークの根は、出発物質として使用されるが、このプロセスは、特定の品種に限定されない。好都合には根由来の任意の接着性混入物を除去すること、例えば高圧クリーナーを用いて水で強力洗浄することが粉砕に先行する。根材料の質量の損失を最小限にするために、好都合には凍結状態で根を洗浄することが可能である。
【0048】
必要ならば、根は、例えば刻む(chop)ことによって最初に粗く粉砕される。さらなる粉砕にはシュレッダーが好ましい。得られた生成物は、繊維状チップの形態の粉砕された根材料である。
【0049】
このプロセスの最も好都合な態様では、以下の特徴を有するアーティチョークの根、すなわち乾量およびイヌリンの形成に関して成熟した根を使用する。成熟度は、乾物含量に対するイヌリン含量の比およびイヌリン含量に対するフルクトース含量の比から立証することができる。イヌリン含量は、根の乾物の総重量に対して好ましくは30〜70wt%、さらに好ましくは40〜65wt%、なおさらに好ましくは50〜60wt%の範囲であり、フルクトース/イヌリン比は、好ましくは3〜24wt%、さらに好ましくは3〜12wt%の範囲であり、最も好ましくは6wt%未満である。洗浄されたアーティチョークの根の乾物含量は、洗浄された根の総重量に対して好ましくは20〜50wt%、さらに好ましくは30〜40wt%、さらに好ましくは30〜35wt%である。
【0050】
本発明のプロセスでアーティチョークの根を使用する前に、それらを貯蔵しなければならない場合、微生物の混入、腐敗または酵素分解によるイヌリンの分子量の減少を防止するために根を保存しなければならない。好ましい根の保存方法は、粉砕された根を冷凍または熱風乾燥して貯蔵に供することである。
【0051】
粉砕後に、粉砕された根材料を水で、好ましくは60℃から95℃の温度で、最も好ましくは80〜95℃で抽出する。抽出は、好ましくは中性からややアルカリ性のpH範囲で行われる。pH7〜9で少なくとも60℃の温度が好都合であるというのは、この場合、酵素加水分解および酸性加水分解が抑制されるからである。水における粉砕された根材料の濃度は、好ましくは10〜40wt%、さらに好ましくは20〜30wt%であり、この濃度は、抽出された混合物の総重量に対する根の新鮮重量として測定される。
【0052】
好ましくは、抽出液の重量に対して抽出液中に8〜12wt%の乾量含量および6wt%超、好ましくは6〜8wt%のイヌリン含量に至るような、使用される粉砕物の乾物と、抽出媒としての水との比が確率される。水と根重量の比などの抽出条件を同様に適切に選択することで、根に存在する80〜90wt%のイヌリンを抽出物へ移行させることができる。前述の条件は、抽出液からのイヌリンの好都合な結晶化および高収率を達成するために適し、これは、抽出液の重量に対して5wt%というたとえ低い濃度であっても、高分子量のイヌリンが抽出液から結晶化するという観察に基づく。
【0053】
抽出装置に特別な制限はなく、植物材料のための従来の抽出技法を適用することができる。撹拌機を備えるジャケット加熱抽出器で抽出を行うことが、本発明により最も好ましい。別の高度に好ましい態様では、加熱可能なロータータン(lauter tun)を撹拌抽出器として使用する。したがって、根からのイヌリンの抽出を下記のように濾過による使用済みチップからの抽出液の分離と組み合わせる。根/水混合物の平衡化後の抽出時間は、好ましくは30分〜4時間、好ましくは1〜2時間である。この時間の後に、例えばポンプ排出または漉し除き(straining off)または濾過により抽出液を使用済みチップから分離する。
【0054】
使用済みチップから抽出液を分離後に、適切な場合には繊維状物質および植物フラグメントが、抽出液中に懸濁浮遊物として残留することがある。これらの懸濁物は、存在するならば抽出液から同様に除去する。このように、このプロセスの変形では、プロセスの段階b)の後で段階c)の前に、主に繊維からなる懸濁浮遊物が抽出液から除去される。懸濁浮遊物の許容される量および除去が行われるかどうかは、その都度当業者により決定されるものである。懸濁浮遊物の除去は、遠心分離または濾過などの従来の分離技法により行うことができる。脱スラッジセパレーターは、特に適することが証明された。適切な細かさを有する網またはフィルターもまた使用することができる。
【0055】
大いに好ましい実施形態では、懸濁浮遊物は、使用済みチップをフィルター材料として使用することによって濾過することができる。この態様では、使用済みチップは、ロータータンのような底に篩を備える抽出容器の底に沈殿する。篩は、好ましくはスリットシーブである。沈殿した使用済みチップは、抽出液が通過して流れる濾過床として使用される。この技法を使用することによって、抽出液をさらに洗練もしくは増白(brightening)する前にまたはイヌリンを結晶化する前にさらなる濾過段階を使用せずに、定量的に近い懸濁浮遊物の除去が可能である。
【0056】
抽出液は、それらが着色構成要素およびコロイド状に懸濁した着色物を含有することが原因で着色している。着色構成要素は、とりわけタンニンおよびフラボノイドからなり、通常は抽出液に黄色もしくは黄褐色および/または暗褐色を付与する。このような抽出液から直接得ることができるイヌリンは、中間色についての所望の必要条件を満たさない。したがって、プロセスの段階c)で抽出液から着色構成要素を除去する必要がある。植物抽出液から着色構成要素を除去するための本発明のプロセス段階c)は、一般に植物抽出液の脱色、清澄化または「増白」ともまた呼ばれる。これらの用語は、本発明に関連して同等である。
【0057】
本発明による増白は、石灰の添加に続く炭酸ガス処理(CO2添加)によって行うことができる。石灰添加のプロセスは、従来技術から公知であり、例えばサトウダイコンからスクロースを得る際に使用される。代替の増白プロセスでは、妨害構成要素はイオン交換体を使用して除去される。
【0058】
このプロセスの特に好都合な態様では、着色構成要素は、段階c)において、
i)植物抽出液にマグネシウムイオン(Mg2+)を混合すること、
ii)植物抽出液に少なくとも一つのアルカリ構成要素を混合すること、
iii)沈殿を形成させることおよび
iv)形成した沈殿を植物抽出液から除去すること
によって除去される。
【0059】
この特に好ましい変形における段階i)〜iv)は、プロセス段階c)の副段階である。
【0060】
このプロセス変形は、驚くことに石灰増白プロセスよりも効果的な抽出物の脱色を可能にする。加えて、採用される佐剤であるマグネシウム塩およびアルカリは低コストである。したがってこのプロセスは、イオン交換体の使用よりもコストかからない。このプロセス段階を実施するための装置および時間にかかる費用もまた特に低い。最終的に、この種類の増白は、混濁を引き起こす物質もまた抽出液から同時に除去する。
【0061】
マグネシウムイオン(Mg2+)は、本発明により水性植物抽出液に混合される。段階i)の変形において植物抽出液にマグネシウム塩の水溶液を添加することが可能である。そのうえ、さらに好ましい変形では、マグネシウム塩は、植物抽出液に固体形態で直接添加され、そこに溶解される。
【0062】
マグネシウム塩が添加される場合には、好ましくはその塩は、その高溶解度生成物が原因で水に非常に容易に溶解する塩である。特に適切なマグネシウム塩は、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウムおよびプロピオン酸マグネシウムなどの低級脂肪酸のマグネシウム塩、ならびにその混合物から選択される。
【0063】
ii)におけるアルカリ構成要素は、本発明により水酸化物イオン(OH-)を含むかまたは植物抽出液と配合後に抽出液中に水酸化物イオンを形成する構成要素を意味する。アルカリ構成要素は、液体、固体または気体であってもよい。液体アルカリ構成要素が好ましくは採用される。
【0064】
プロセスの段階i)およびii)に記載したマグネシウムイオンおよびアルカリ構成要素を添加すると、沈殿反応により沈殿が形成する。このプロセスに関連して、特にマグネシウムイオンの溶液が段階i)で使用され、アルカリ性液体が段階ii)で使用されるならば、段階i)およびii)は原理上同時に実施される。しかし、最初にプロセス段階i)、次いで段階ii)を実施することが好ましい。
【0065】
マグネシウムイオンおよびアルカリ構成要素の両方が抽出液中に可能な限り均一に分布する結果、抽出液中の沈殿反応もまた均一で、かつ可能な限り定量的であることが、プロセス段階c)にとって好都合である。したがって、例えば植物抽出液に迅速かつ均一に混合することができるアルカリ溶液またはアルカリ懸濁液などの水性アルカリ液をアルカリ構成要素として採用することが好ましい。
【0066】
アルカリ溶液またはアルカリ懸濁液は、本発明により、水酸化物イオン(OH-)を含むかまたは植物抽出液と配合後に水酸化物イオンを形成する。
【0067】
非常に好ましいプロセスの変形では、段階i)で最初にマグネシウム塩を抽出液に均一に溶解させる。続いて段階ii)でアルカリの水溶液または水性懸濁液を添加する。
【0068】
一態様では、アルカリ構成要素はアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の水溶液または水性懸濁液である。この水酸化物は、好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物から選択される。
【0069】
非常に特別な好ましい変形では、アルカリ構成要素は水酸化カルシウム懸濁液である。水酸化カルシウムを使用する長所は、段階iii)で特に少量の遠心分離物が得られることである。加えて、水酸化マグネシウムおよび硫酸カルシウムの同時沈殿は、沈殿のより大きい沈降速度およびより大きい圧縮率を達成する。沈殿は、特にゼラチン状コンシステンシーをほとんど有さない。したがって、沈殿におけるイヌリンの結合は、このプロセスの変形では特に低いままである。
【0070】
使用することができるさらなるアルカリ構成要素はアンモニアであり、好ましくは水溶液である。気体状アンモニアを使用することも原則として除外されないが、これは水溶液の使用よりも好ましくない。
【0071】
さらなる態様では、アルカリ構成要素はエチレンジアミンおよびトリエタノールアミンなどの有機塩基の水溶液または水性懸濁液である。
【0072】
アルカリ金属およびアルカリ土類金属の酢酸塩、特に酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウムおよび酢酸マグネシウムなどの弱有機酸の塩もまた使用することができる。
【0073】
水酸化マグネシウムは沈殿として形成する。水性抽出液の着色構成要素は、本発明により沈殿に残り、したがって液相と分離される。実質的に脱色された抽出液が得られる。採用したMg2+イオンおよびアルカリ構成要素の量、すなわち形成した沈殿の量が、とりわけその脱色がどの程度定量的であるかを決定する。反応物の量の最適化は、当業者の能力の範囲内である。硫酸マグネシウムの場合、好ましい濃度は水性抽出液の0.5〜3wt%、さらに好ましくは0.5〜2wt%の範囲である。
【0074】
上記のような段階c)の好ましい変形では、水酸化物イオンとマグネシウムイオンとのモル比OH-:Mg2+は、好ましくは2.2:1から1.8:1.である。この比が正確に化学量論的であること、すなわちOH-:Mg2+=2:1であることが最も好ましい。したがって、アルカリ構成要素の量は、マグネシウムイオンに対して適切な量の水酸化物イオンが存在するように選択すべきである。
【0075】
プロセス段階i)およびii)におけるマグネシウム塩の溶解およびアルカリ成分の混合は、好ましくは溶解および均一化をできるだけ迅速に達成するために、したがって高速の反応を達成するために撹拌しながら行われる。しかし、混合技法に特定のさらなる制限はない。したがってこのプロセスは、例えば当業者が精通する他の混合技法によってもまた実施することができる。
【0076】
このプロセスを促進するために、段階i)は、60〜80℃の温度で好ましくは実施される。アルカリ構成要素の添加後の反応時間は、通例約1から15分であり、平均約10分である。
【0077】
除去段階iv)は、好ましくは沈降または濾過により行われる。沈降は、遠心機、好ましくはディスク型遠心機、特にデスラッジ型遠心機により高速化することができる。しかし、当業者が精通する他の分離技法もまた使用することができる。これらは、相互に組み合わせて実施することもまたでき、例えば増白した抽出液から遠心分離でスラッジを除去し、続いてスラッジを除去した抽出液を例えばプレートフィルターを用いて濾過することもできる。
【0078】
本発明のプロセスの段階c)の全体は、必要ならば1回を超えて実施することもまたできる。前述のサブ段階i)〜iv)を有する段階c)の好ましい変形が使用されるならば、個別のサブ段階i)〜iv)を1回を超えて実施することもまた可能である。
【0079】
段階c)の後に、段階d)でイヌリンを抽出液から沈殿させる。沈殿形成は、例えばエタノール、メタノールまたはイソプロパノールなどのアルコールを添加することによって行うことができる。この場合、添加したアルコールの量または液相の極性の調整に応じて、最初に高分子量イヌリン画分を沈殿させる結果として、添加したアルコールの量を介して抽出液に存在するイヌリンがどれほど定量的に沈殿し、どの分子量画分が優先的に得られるかに影響を与えることが可能である。アルコール以外に、水と混和する他の無極性有機液体を採用することもまた可能である。
【0080】
このために、このプロセス段階の特に好都合な態様では、アルコール、特にエタノールおよびイソプロパノールの使用を制限するために、調製された抽出液を好ましくは出発体積の4分の1から5分の1に最初に濃縮する。濃縮は、蒸発または膜濾過および両プロセスの組み合わせにより行うことができる。この場合、イヌリンの沈殿を避けるために、濃縮する間に濃縮液を高温に、好ましくは60〜95℃に保つように注意しなければならない。膜濾過の長所は、イヌリンに付随する低分子量物質がそれに伴い枯渇することである。それに続く濃縮液からのイヌリンの沈殿は、漸増するアルコール濃度を選択する結果として、例えば重量平均重合度(DPw)により特徴づけられる分子量範囲にしたがってイヌリンが分画されることによって、うまく行うことができる。沈殿条件の選択に応じて、結果は本発明によるDPwを有する画分である。所望の純度に応じる。
【0081】
アルコール沈殿によるよりも、抽出液を冷却することによってイヌリンを得る方が好ましい。好ましい条件は、イヌリンが沈殿する間に抽出液を温度2〜10℃、さらに好ましくは2〜8℃に冷却し、この温度に6から140時間、好ましくは6から48時間保つ条件である。冷却速度および温度、ならびに冷却時間は、抽出液からのイヌリンの沈殿および分子量分布の幅に、したがって同時に量に影響する。長い時間および低い温度の選択により、より低分子量のイヌリンおよびより広い分子量分布の沈殿ならびにより低い平均分子量の沈殿画分が生じる。沈殿したイヌリンは、例えば遠心分離、デカンテーション、濾過などの従来の分離技法により液相から分離される。
【0082】
好ましい態様では、イヌリンは、上記のプロセスの抽出段階b)の後で段階c)の前に最初に結晶化される。このような結晶化は、好ましくは上に記載したように行われる。段階c)の前の結晶化は、抽出液の直接の増白に比べて高い分子量のイヌリンの収率増加に導き、増白剤、すなわちマグネシウム化合物およびアルカリ構成要素の使用を節約する。イヌリンの最初の結晶化後に抽出液を増白することが好都合であるのは、この場合、イヌリン結晶に結合した着色構成要素だけを除去する必要があるからであり、これは同様に、増白するスラッジに結合しているイヌリンが少量であることになる。
【0083】
最初の沈殿および沈殿したイヌリンの除去に続いて、まだ溶解している任意のイヌリン画分を得るために、抽出液の新たな冷却またはアルコールの添加を行うことができる。繰り返しに関する決定は、そのイヌリンが植物からどれほど量的に得ることができ、最終生成物中にどのような分子量分布が望まれるかにしたがって、その都度行われる。
【0084】
抽出液中のイヌリン濃度は、根のイヌリン含量および抽出液中の粉砕された根の濃度に実質的に依存し、このイヌリン濃度は、抽出液を冷却することによるイヌリンの沈殿に影響を及ぼすさらなる変数である。したがって、濃度への沈殿の依存は、最初の沈殿の後に液相を例えば蒸発により濃縮するために、所望であれば低分子量画分を沈殿させるためにもまた、利用することができる。
【0085】
最後のプロセス段階e)において、沈殿したイヌリンは再沈殿される。本発明に関連して「再沈殿」は、前のプロセス段階から生じた固体イヌリンを再溶解させ、次いでその溶液から再度沈殿および/または結晶化させることを意味する。したがって、プロセスの段階e)は、イヌリンを溶解させ、再度沈殿および/または結晶化させるとも述べることができ、ここで、この段階は少なくとも1回行われる。結晶化は、主に結晶構造が得られる点で沈殿とは異なる。
【0086】
イヌリンは、好ましくは熱の効果により、好ましくは水に溶解される。温度70〜100℃、特に90〜100℃の水が特に適している。
【0087】
段階e)の沈殿形成は、前述のアルコール沈殿によって行うことができる。しかしイヌリンは、好ましくは溶液を2〜10℃、さらに好ましくは2〜8℃に6から140時間、好ましくは12〜48時間の時間冷却することによって得られる。
【0088】
段階e)で溶解されたイヌリンの沈殿形成は、液相にまだ残留するイヌリンを得るために繰り返すことができる。繰り返しに関する決定は、そのイヌリンが植物からどれほど量的に得ることができ、最終生成物中にどのような分子量分布が望まれるかにしたがって、その都度行われる。沈殿形成を簡略化するために、液相を濃縮することができる。
【0089】
再沈殿後に、結果として生じたイヌリン固体は、例えば遠心分離、デカンテーション、濾過などの従来の分離技法により液相から分離される。
【0090】
分子量分布および結果として生じるイヌリン生成物の純度に作用するために、プロセス段階e)は1回を超えて実施することができる。再沈殿段階e)を繰り返すと、分子量の平均および重合度の平均が、高い値に移行することが明らかになった。したがって、本発明のイヌリンの分子量/重合度の様々な平均を、請求された範囲内に設定することが可能である。
【0091】
微粒子不純物がまだ存在するならば、このプロセスに1回または複数回の濾過段階を差しはさむことが好都合である。存在する任意の微粒子不純物は濾過中に除去される。当業者は、不純物の粒度に応じてフィルターの細かさを選択する。
【0092】
濾過段階は、抽出液を得た後でプロセスの任意の箇所に差し挟むことができる。例えば段階b)で抽出液を得た直後の濾過段階が好都合である。濾過段階は、前述の懸濁浮遊物の除去と区別すべきであり、それは、濾過により除去される粒子が主に繊維からなる懸濁浮遊物よりも細かいからである。さらに好ましい態様では、濾過段階は段階d)の前に実施される。
【0093】
濾過段階は、好ましくはプロセス段階e)に記載したような再沈殿と組み合わせられる。これは、段階e)について前述したようにイヌリンを溶解すること、次いでその溶液を濾過することを伴う。濾過後に、濾液からイヌリンを沈殿または結晶化させる。沈殿または結晶化後に生じた固体イヌリンは、従来の分離技法、例えば遠心分離、デカンテーションおよび濾過などにより液相から分離することができる。
【0094】
一部の例では、結果として生じたイヌリンは、濾過により除去することができない物質により変色することがある。このような場合には、活性炭で処理することにより着色不純物を除去することが好ましい。一態様では、活性炭を水に懸濁し、80℃を超える、好ましくは90℃を超える温度でイヌリン溶液に添加する。20wt%イヌリン溶液の場合、活性炭の量は、好ましくはイヌリン溶液の重量に対して1〜10wt%、好ましくは2〜6wt%、さらに好ましくは2〜3wt%の範囲である。着色不純物を吸着後に、活性炭を遠心分離および/または濾過により除去する。遠心分離による活性炭スラッジの分離により活性炭懸濁液を予備清澄化し、次いで2段階濾過により、例えば珪藻土プレコートフィルターおよびシートフィルターを併用して清澄化することができる。イヌリン溶液から活性炭を分離する間、イヌリンを溶液中に保つために80℃を超える、好ましくは90℃を超える温度に維持することが重要である。活性炭の除去後に、上記のようにイヌリンを沈殿または結晶化させ、液相から分離することができる。
【0095】
液相からの分離後に、最終生成物は水または水/アルコール混液で再び洗浄することができる。温度2〜10℃の冷水を用いた洗浄が好ましい。このためには、イヌリン沈殿を水中でスラリーにし、次いでイヌリンを再び沈降させる。
【0096】
結果として生じたイヌリンは、さらなる最終プロセス段階で好ましくは乾燥させる。乾燥は、凍結乾燥、噴霧乾燥またはドラム乾燥により行うことができる。
【0097】
好ましい態様では、本発明のイヌリンは噴霧乾燥された形態である。適切な噴霧乾燥のパラメーターは、添付の実施例に記載されている。噴霧乾燥のプロセスの場合に、沈殿または結晶化したイヌリンを再び(約80℃を下回る水に入れて)懸濁液にまたは(約80℃を超える水に入れて)溶液にしなければならないことは自明である。または、上記のように最後の沈殿形成または結晶化段階を省略することができ、そのプロセスからの懸濁または溶解したイヌリンを直接噴霧乾燥することができる。液体に調製された食品に本発明の噴霧乾燥されたイヌリンを添加することによって、粘度を特に効果的に増加させることが可能である。等量の本発明のイヌリンを添加した場合に、噴霧乾燥されたイヌリンの方が、別の方法(例えば凍結乾燥)で乾燥されたイヌリンに比べて大きな粘度増加が達成される。
【0098】
その上さらに好ましい態様では、本発明のイヌリンは、噴霧造粒された(spray granulated)形態である。噴霧造粒されたイヌリンは、公知のプロセスにより、例えば予め噴霧乾燥された物質を造粒の種として導入し、さらなるイヌリンを噴霧乾燥することによって得られる。例えば粒度10〜100μmのイヌリンを初回チャージとして役立てることができる。適切な噴霧造粒条件は、例えば水70%およびイヌリン30%の供給組成ならびに供給温度90℃である。
【0099】
本発明のイヌリンは、さらに特に好ましくは50〜350μm、さらに好ましくは80〜300μm、なおさらに好ましくは100〜250μm、最も好ましくは100〜200μmの平均粒子径を有する。したがって、こののようなイヌリンは、本発明のさらなる局面である。
【0100】
平均粒子径は、乾燥試料の篩分析および光散乱の両方により測定することができる。しかし、好ましい方法は篩分析であることから、本発明のイヌリンは、好ましくは50〜350μm、さらに好ましくは80〜300μm、いっそうさらに好ましくは100〜250μm、最も好ましくは100〜200μmの、篩分析により測定された平均粒子径を有する。
【0101】
一態様では、記載した粒度を有する本発明のイヌリンは、噴霧乾燥または噴霧造粒プロセスにより得られる。したがって、前述の粒度を有する、噴霧乾燥または噴霧造粒されたイヌリンは、本発明のさらなる局面である。
【0102】
乾燥後にもまだ平均粒子径が好ましい範囲を外れる事象では、篩分級により乾燥イヌリンの好ましい平均粒子径を調整することが可能である。適切な篩の目の選択は、平均的な当業者の能力の範囲内である。
【0103】
本発明のイヌリン粒子は、好ましくは45%未満、さらに好ましくは40%未満、いっそうさらに好ましくは35%未満の結晶画分を有する。さらに好ましい態様では、20%未満、いっそうさらに好ましくは10%未満である。最も好ましい態様では、結晶化度は1%未満である。言及した結晶化度は、Ruland−Vonkの方法により測定される(W. Ruland, Acta Cryst., 14, 1180 (1961);CG. Vonk, J. Appl. Cryst. 6, 148 (1973))。結晶化度を測定する方法は、添付の実施例に詳細に記載されている。低い結晶化度は、イヌリンにより良好な溶解特性を付与し、これは、ある種の食料品への応用に好都合である。
【0104】
その上さらなる局面では、本発明は、前述の本発明のイヌリンと、一つまたは複数の食用成分または薬学的に許容される成分とを含む組成物にもまた関する。典型的な組成物には、ヒトおよび動物用の食料品、飲料、機能性食品、医薬および薬学的組成物(予防用組成物および治療用組成物を含む)、ならびにその中間体が挙げられる。
【0105】
本発明に関連して機能性食品は、伝統的な栄養素に加えて健康促進効果を有しうる成分を含む食料品を意味する(the Institute of Medicine of the National Academy of Sciences, USA, 1994の定義)。
【0106】
前記食用成分または薬学的に許容される成分は、好ましくは糖(例えばグルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、マルトース、イソマルトース、ポリデキストロース)、ポリオール(例えばソルビトール、ラクチトール、マルチトール、イソマルト、マンニトール、キシリトール)、マルトデキストリン、甘味料、水素化グルコースシロップ、ヒト食物および動物食物への添加物、ヒト食物および動物食物のための中間体、ヒト食品および動物食品、食用液体、飲料、生物利用可能なミネラル源、薬学的に許容される担体、薬学的活性物質および治療活性物質、薬学的組成物および医薬からなる群より選択される。
【0107】
本発明の特に好ましい組成物には、食用の、または薬学的に許容される、生物利用可能なミネラル源、特にカルシウムおよび/またはマグネシウムおよび/または鉄源の存在下の本発明のイヌリン、例えば乳製品ならびにカルシウム、マグネシウムおよび鉄の塩および錯体などが挙げられる。
【0108】
上に説明したように、本発明の目的は、食料品に使用するために特に好都合な特性を有するイヌリンを提供することであったが、食品および食料品という用語は本発明によると同等である。したがってさらなる局面では、本発明は、上に記載したイヌリンを含む食料品および栄養補助食品にもまた関する。本発明によると、食料品という用語には、ヒト用食料品と、動物用食料品または動物の飼料との両方が含まれる。栄養補助食品には、ヒト用栄養補助食品および動物用栄養補助食品が含まれる。
【0109】
特に好ましい食料品は、乳製品、ヨーグルト、アイスクリーム、ミルクベースのソフトアイス、ミルクベースの付け合わせ、プディング、ミルクセーキ、エッグカスタード、チーズ、栄養バー、エネルギーバー、朝食バー、菓子、ベーカリー製品、クラッカー、クッキー、ビスケット、シリアルチップ、スナック製品、アイスティー、果汁から作られたソフトアイス、ダイエット飲料、フィニッシュドドリンク(finished drink)、スポーツ飲料、スタミナ飲料、栄養補助用粉末飲料混合物、乳幼児用フード、カルシウム強化オレンジジュース、パン、クロワッサン、朝食用シリアル、麺類、スプレッド、無糖のビスケットおよびチョコレート、カルシウムチューズ(calcium chews)、肉製品、マヨネーズ、サラダドレッシング、ナッツバター、冷凍食品、ソース、スープ、ならびに調理済み食品より選択される。本発明のイヌリンを含む食料品は、最も好ましくは乳製品、特にヨーグルトである。本発明のイヌリンは、乳製品、特にヨーグルト、可能性があることには撹拌したヨーグルトもしくはポットで発酵させたヨーグルトまたはヨーグルト飲料の安定性、テキスチャー、体感および口あたりに特によい効果を示す。
【0110】
本発明による他に有用な乳製品は、クリーム、生クリーム、カード、バター、ミルク、特にスキムミルク、バターミルク、サワーミルク、ケフィア、チーズ、例えばクリームチーズ、ソフトチーズ、スライスチーズ、ハードチーズ、ホエイ、粉乳、ミルクベースの飲料である。
【0111】
食料品、とりわけ乳製品、特にヨーグルト中のイヌリンの好ましいレベルは、食料品、乳製品またはヨーグルトの全ての構成要素の総重量に対して乾燥イヌリンが0.2〜5wt%、好ましくは0.5〜4.5wt%である。
【0112】
本発明の一態様では、食料品は、例えば朝食用シリアルなどの押し出しプロセスにより製造される食料品である。
【0113】
さらなる局面では、本発明は、前述のイヌリンを含む化粧用調製物に関する。化粧用調製物は、特に好ましくはクリーム、特にスキンクリームおよびフェースクリームの形態を採る。
【0114】
さらなる局面では、本発明は、食料品、機能性食品および化粧用調製物の添加物としての前述のイヌリンの使用にもまた関する。この使用は、特に上に言及した全ての特定の食料品および化粧用調製物にもまた関する。
【0115】
その上さらなる局面では、本発明は、薬学的組成物または医薬の製造のための本発明のイヌリンの使用に関する。
【0116】
本発明のイヌリンは、ヒト、哺乳動物および他の脊椎動物の大腸、特に大腸の後端領域における細菌フロラの組成を改変または調節するように作用する食料品、機能性食品、薬学的組成物または医薬に好都合に使用することができる。
【0117】
ヒト、哺乳動物および他の脊椎動物の大腸、特に大腸の後端領域における発酵パターンを改変または調節するように作用する食料品、機能性食品、薬学的組成物または医薬に本発明のイヌリンを使用することも同様に可能である。
【0118】
本発明のイヌリンのさらなる好ましい使用は、脂肪代替品もしくは油代替品としてのまたは食料品中の食物繊維としての使用であり、ここで「食料品」という用語は、上に言及した食料品の少なくとも全て、特に上に言及した乳製品の全てを包含する。感覚的な特性、特に口あたりが従来のイヌリンに比べて優れていることが好都合である。したがって、本発明のイヌリンは、感覚的な特性の向上剤として、特に食料品中の口あたり向上剤としてもまた使用することができる。
【0119】
本発明のイヌリンのさらなる使用は、特に食料品および化粧品におけるテキスチャー付与剤、安定化剤、増粘剤としての使用である。「食料品」という用語は、上に言及した食料品の少なくとも全て、特に上に言及した乳製品の全てを包含する。
【0120】
最終的に、本発明のイヌリンは、以下の好都合な効果を有する食料品、機能性食品、薬学的組成物または医薬に使用することができる:不消化食料効果(roughage effect)、腸機能の調節、プレバイオティク効果および/またはビフィズス菌原性(bifidogenicity)、ミネラル、例えばカルシウム、マグネシウムおよび鉄の吸収増加、骨ミネラル密度の増加、骨ミネラル含量の増加、最大骨量の増加、骨構造の改善、骨ミネラル密度の損失の減少、骨構造の損失の減少、脂質代謝の調節、免疫系の刺激、癌の予防および癌のリスクの減少、大腸癌の予防および大腸癌のリスクの減少、ならびに乳癌の予防。
【0121】
本発明は、包括的な発明の概念を限定することを意図しない実施例により下に説明される。
【0122】
実施例
一般的な方法
1. フルクタンの測定
1.1 エキソイヌリナーゼを用いた加水分解によるフルクタンの測定
測定すべきイヌリン溶液は、1mlの目盛り付きフラスコにイヌリン50.0±5.0mgを精密に秤量することによって調製する。溶解させるためにddH2O 700μlを添加する。次いで、この試料を振り混ぜ、容器の底からできるだけ試料物質を引き離し、次いでほぼ沸騰している水浴(約99℃)に8分間置く。インキュベーションの間、目盛り付きフラスコを30秒毎に振り混ぜる。インキュベーションの後に試料を室温まで冷却させ、次いでddH2Oで1mlの目盛りに合わせる。試料溶液は、5.0±0.5%のイヌリン濃度を有する。
【0123】
消化前の糖を測定するために、200μlをとり、−20℃で冷凍する。糖の測定前に、この試料を室温で解凍し、混合し、95℃のヒートブロック中で1400rpmで5分間撹拌することにより溶解させ、4000rpmで2分間遠心分離する。加水分解のために約5%のイヌリン溶液50μlを、1Mクエン酸Na(pH4.6)50μl、エキソイヌリナーゼ25μl(Megazyme International Ireland Ltd, Wicklow, Ireland、製品番号E−EX01、2.5U/μl)、およびddH2O 375μlからなる消化ミックスに入れる。消化物を混合し、4000rpmで1分間遠心分離する。次いで、この消化物をヒートブロック上で40℃で4時間インキュベーションする。全ての消化された試料を−20℃で冷凍する。糖の測定前にこれらの試料を室温で解凍し、混合し、4000rpmで2分間遠心分離する。フルクトースの測定のために、ddH2O 90μlに消化物10μlを添加することによって1:10希釈物を調製する。
【0124】
消化物中に遊離したフルクトースおよびグルコースを測定するために、「糖の測定(グルコース、フルクトース、スクロース)」の項に記載したように全ての試料中のグルコースおよびフルクトースの測光を実施する。グルコースおよびフルクトースに加えて、消化前の試料中のスクロースもまた測定する。
【0125】
消化前の糖の測定に未希釈の5%イヌリン溶液を使用する。この溶液10μlを測定緩衝液200μlに添加する。消化された試料中のグルコースを測定するために、未希釈試料10μlを測定緩衝液200μlに添加する。消化された試料中のフルクトースを測定するために、1:10希釈した試料10μlを測定緩衝液200μlに加える。
【0126】
糖の測定の項にあるように、この計算は、NADPからNADPHへの転換についてのモル吸光係数6.231mmol-1・cm-1に基づく。消化前に存在するグルコースおよびフルクトースの濃度を、消化された試料中のグルコースおよびフルクトースの濃度から差し引く。同様に、消化前の試料中に存在したスクロースが加水分解されて遊離したであろうグルコースおよびフルクトースを差し引く。
【0127】
次いで、イヌリンの消化中に生成したフルクトースおよびグルコースの濃度を得る。グルコースおよびフルクトース含量の加算により、そして測定した遊離ヘキソースからフルクタンに結合したヘキソースへの転換についての係数162/180を算入して、フルクタン含量が得られる。
【0128】
2. 糖の測定(グルコース、フルクトースおよびスクロース)
グルコース、フルクトースおよびスクロースの含量は、NADP+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)からNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)への転換による酵素アッセイでの測光により測定した。ニコチンアミド環の芳香族の性質は還元で失われるので、吸収スペクトルは変化する。吸収スペクトルにおけるこの変化は測光により検出することができる。
【0129】
グルコースおよびフルクトースは、酵素ヘキソキナーゼおよびアデノシン三リン酸(ATP)によりグルコース6−リン酸およびフルクトース6−リン酸に転換する。次いでグルコース6−リン酸は、酵素グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼにより6−ホスホグルコネートに酸化される。この反応でNADP+はNADPHに還元され、生成したNADPHの量は測光により測定される。生成したNADPHと抽出液に存在するグルコースとの比は1:1であることから、グルコースの含量は、Lambert−Beerの法則によりNADPHのモル吸光係数(6.231mmol-1cm-1)を用いてNADPHの含量から計算することができる。
【0130】
グルコース6−リン酸の酸化が完了した後に、溶液中で同様に生成したフルクトース6−リン酸を酵素ホスホグルコイソメラーゼによりグルコース6−リン酸に転換させ、今度はそれを6−ホスホグルコネートに酸化させる。フルクトースと生成したNADPHの量との比もまた1:1である。グルコースについて説明したように、フルクトース含量は、生成したNADPHの量から計算する。
【0131】
続いて、抽出液に存在するスクロースを、酵素スクラーゼ(Megazyme製)によりグルコースおよびフルクトースに開裂させる。次いで、遊離したグルコース分子およびフルクトース分子は、NADP+依存的反応で上記酵素により6−ホスホグルコネートに転換される。スクロース1分子が6−ホスホグルコネートに転換するときに2分子のNADPHが生成する。生成したNADPHの量は同様に測光により測定され、それからNADPHのモル吸光係数を用いてスクロース含量が計算される。
【0132】
「エキソイヌリナーゼを用いた加水分解によるフルクタンの測定」の項に記載したように、5%のイヌリン溶液を糖の測定に使用する。この溶液10μlを測定緩衝液200μlに添加する。測定は、SPECTRAmax光度計(Molecular Devices)を用いてマイクロタイタープレート中で2回の繰り返し測定として行う。使用する全ての酵素溶液は、50mMイミダゾールHCl(pH6.9)、2.5mM MgCl2、1mM ATPおよび0.4mM NADPからなる測定緩衝液中で調製する。NADPからNADPHへの転換は、波長340nmで追跡する。
【0133】
グルコースの測定は、ヘキソキナーゼ(酵母由来、0.3U/μl)およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(酵母由来、0.14U/μl)の混合物2μlを添加することによって行う。グルコースの転換が完了した後で、ホスホグルコースイソメラーゼ(酵母由来、0.14U/μl)2μlを添加してフルクトースを測定する。フルクトースが完全に転換したときに、スクラーゼ(Megazyme製、0.2U/μl)2μlを添加して、存在するスクロースを開裂させる。グルコース、フルクトースおよびスクロースの計算は、記載したように行う。
【0134】
3. 分子量分布の分析
3.1 光散乱および屈折率検出を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI−MALLSシステム)
イヌリン/フルクタンを超純水に1%(w/v)濃度で溶解させる。5から10mgを2ml Eppendorf容器に秤量する。この溶液をサーマルシェーカー(Eppendorf)中で300rpmで10分間95℃に加熱する。室温に冷却後、超純水で1:2希釈することにより0.5%(w/v)溶液を調製する。0.22μm遠心フィルター(Spin-x, Costar)を通して4000rpmで2分間濾過を行う。以下の構成要素、すなわちP680 HPLCポンプ、AS50オートサンプラー、サーモスタット付きカラムコンパートメントTCC−100からなるDionexシステム(Dionex Corporation, Sunnyvale, USA)を用いてポリマーを分析する。λ0=690nmおよび25.9から163.3°の範囲の角度に15個の検出器を備えるDAWN−EOS光散乱検出器(Wyatt Technology, Santa Barbara, USA)、ならびにShodex RI−101 RI検出器(Shodex Denko K.K., Kanagawa, Japan)に接続したK5フローセルを検出に使用する。プレカラムおよび3本のカラム(Suprema 30, Suprema Lux 1000, Suprema 30000)(SUPREMA-Gel, PSS Polymer Standards Service GmbH, Mainz, Germany)でポリマーを分画する。溶液90μlをインジェクトする。分画は、温度30℃および流速0.8ml/分で、溶出液として0.05M NaNO3を用いて行う。AstraV 5.1.8.0プログラム(Wyatt Technology製、(Santa Barbara, USA))を使用して試料の分子量分布を分析する。
【0135】
3.2 屈折率検出を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RIシステム)
サーマルシェーカー中で95℃で10分間静かに振盪することによって、イヌリンを溶出液(DMSO+90mM NaNO3)に濃度1%(w/v)に溶解させる。素早く冷却した後、イヌリン溶液を溶出液で0.1%に希釈し(イヌリン溶液100μl+溶出液900μl)、直ちに60℃のオートサンプラーに置く。以下の装置を用いてポリマーを分析する:Dionex P580ポンプ、Dionex AS50オートサンプラー、Dionexモデル585カラムオーブン(Dionex GmbH, Idstein, Germany)、Shodex RI−71検出器(Shodex/Shoko Co. LTD, Tokyo, Japan)。このシステムは、Chromeleonソフトウェア(Dionex GmbH, Idstein, Germany)により制御する。ポリマーは、PSS GRAM(10μ)プレカラムならびにPSS GRAM3000(10μ)分離カラムおよびPSS GRAM100(10μ)分離カラム(PSS Polymer Standards Service GmbH, Mainz, Germany)で分画する。0.1%イヌリン溶液50μlを分析のためにインジェクトする。温度60℃のカラムオーブン中で流速0.7ml/分で、溶出液DMSO+90mM NaNO3を用いて分画を行う。分子量を測定するために、以下のデキストラン標準(製品番号31430、Fluka Riedel-deHaen (Seelze, Germany))を用いてシステムを較正する:デキストランT1(Mw1270)、T5(Mw5220)、T12(Mw11600)、T25 Mw23800)、T50(Mw48600)、T80(Mw80900)、T150(Mw147600)、T270(Mw273000)、T410(Mw409800)、T670(667800)。PSS WinGPC compact V.6.20プログラム(PSS, Mainz, Germany)を使用して試料の分子量分布を分析する。
【0136】
4. 水分含量の測定
水分含量は、AQUA40.00 Karl−Fischer滴定装置(analytikjena AG製)を用いて測定する。Hydranal−Coulomat AG(Riedel-deHaen、製品番号34836)を陽極液として使用する。使用する基準物質は、水分含量15.61〜15.71%の酒石酸二ナトリウム二水和物(Riedel-deHaen、製品番号32323)である。試料10〜20mgを5ml試料瓶(N20−5DIN、Machery-Nagel、製品番号70204.36)に秤量し、この瓶にクリンプキャップ(N20 TS/oA、Machery-Nagel、製品番号702 815)で栓をし、Karl−Fischer滴定装置を用いて試料の水分含量を測定する。
【0137】
5. 分岐度の測定
イヌリンは最初に完全メチル化し(permethylate)し、メチル化の完全性をATR−IR分光法でチェックする(装置および条件は下記を参照されたい)。次いで酸加水分解(標準メチル化分析)または代替的に還元分解により試料をモノマー基本単位に分解し、部分メチル化アルジトールアセテートおよびアンヒドロアルジトールアセテートの相対モル組成をガスクロマトグラフィー(装置および条件は下記を参照されたい)およびガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS、装置および条件は下記を参照されたい)により測定した。
【0138】
ATR−IR
装置: Bruker Tensor27
技法: Diamond ATR
GC:
装置: Carlo Erba HRGC5160 Megaシリーズ
カラム: Chrompack CPSil8CB(25m)、リテンションギャップ(1.5m)
ID:0.25mm FD:0.25μm
キャリアガス: He(80kPa)
検出器: FID
インジェクター: オンカラム
インテグレーター: Merck Hitachi D−2500クロマトインテグレーター
温度プログラム:60℃(等温1min)、10℃/minで170℃まで、3℃/minで230℃まで、20℃/minで290℃まで(等温20min)
GC−MS
GC: 装置: Agilent6890 GC
カラム: HP−5、30m
キャリアガス: He
インジェクター: スプリット5:1
温度プログラム: 60℃(等温1min)、10℃/minで170℃まで、3℃/minで230℃まで、20℃/minで290℃まで(等温20min)
MS: 装置:JEOL GCmateII二重収束セクターフィールドスペクトロメーター
モード:EI、70eV
評価: AMDIS32、Wsearch32
【0139】
5.1 完全メチル化
(Ciucanu and Kerek/ Ciucanu, I. & Kerek, F. (1984) A simple and rapid method for the permethylation of carbohydrates. Carbohydr. Res. 131, 209-217に準拠)
試料約50mgをジメチルスルホキシド2.5mlに溶解させる。次いで、細かくすり潰した水酸化ナトリウム3当量/OHおよびヨウ化メチル3当量/OHを添加し、室温で24時間撹拌する。次いで、各試薬の半量を再び一度に加える。続いて、試料を蒸留水で4日間透析し(Dialysemembran Spectra/Por MWCO 3500, Spectrum Laboratories, Rancho Dominguez, CA, USA)、凍結乾燥する。メチル化の完全度をATR−IR分光分析によりチェックする。完全メチル化されているならば、3300〜3400cm-1の範囲のOHの伸長振動が消失しているはずである。
【0140】
5.2 標準メチル化分析
加水分解
完全メチル化イヌリン約2mgを1ml Vバイアル中で0.5Mトリフルオロ酢酸0.9mlと混合し、90℃で1時間撹拌することにより加水分解する。溶液を冷却してから、窒素気流中で溶液を蒸発乾固する。トルエンと共蒸留することによりトリフルオロ酢酸残渣を除去する。
還元
加水分解した試料を2M NH3中の0.5M NaBD4溶液500μlと混合し、60℃で1時間加熱する。冷却後に氷酢酸数滴を添加することにより過剰の水素化ホウ素ナトリウムを分解する。結果として得られたホウ酸塩を15%のメタノール性酢酸と共に共蒸留することにより除去する。
アセチル化
還元の結果として得られた部分メチル化糖アルコールを無水酢酸200μlおよびピリジン50μlと混合し、90℃で2時間アセチル化する。この溶液を冷却し、次いでガスの生成がそれ以上観察できなくなるまで飽和炭酸水素ナトリウム溶液を添加する。次いでこれを各回ジクロロメタン15mlで4回抽出する。合わせた有機相を各回飽和NaHCO3溶液15mlで2回、冷0.1M HCl 20mlで1回および蒸留水25mlで1回洗浄する。次いで、この溶液を塩化カルシウムで乾燥させ、減圧濃縮し、ジクロロメタンに採り、GC測定に供する。
【0141】
5.3 還元的分解
完全メチル化試料約1mgをスクリューキャップ付きガラスバイアルの中のジクロロメタン500μlに溶かし、6当量/グリコシド結合のトリエチルシランおよび4当量のTMSトリフラートと混合し、室温で2時間撹拌する。無水酢酸20μlの添加後に、室温で2時間撹拌を続ける。次いで、飽和NaHCO3水溶液を添加することにより反応を停止させ、撹拌を1時間続ける。ジクロロメタンで抽出し、ついで合わせた有機相を飽和NaHCO3水溶液および蒸留水で洗浄することにより作業を行う。最後にこの溶液を塩化カルシウムで乾燥させ、窒素気流中で濃縮し、ジクロロメタンにとり、GC測定に供する。
【0142】
5.4 定性および定量分析
オンカラムインジェクションおよび炎イオン化検出器(FID)を備えるガスクロマトグラフィーにより分解産物を定量分析した。それらの効果的な炭素応答によりピーク面積を補正した。それらの質量スペクトル(GC−MS)および公知の比較試料の保持時間に基づいてピークを割り付けた。
【0143】
6. イヌリンの示差走査熱量測定
15%(w/v)のイヌリン溶液40mlを50ml目盛り付きポリプロピレンチューブ(30.0×115mm、Greiner製、注文番号227261)に調製した。それぞれの粉末を再蒸留水に加え、振盪することによりこれを行った。続いて、調製した懸濁液を全て水浴(95℃)に置き、数回振盪することにより溶解させる。20分後に、全ての懸濁液が完全に溶解したことを視覚的に確認する。次いで、調製した溶液を等分し、2個の50ml目盛り付きポリプロピレンチューブ(30.0×115mm、Greiner製、注文番号227261)に入れ、直ちに液体窒素中で凍結させた。次いで、凍結した溶液を2日間凍結乾燥し(水分含量約10%)、乳鉢で摩砕した。
【0144】
試料の水分含量は、自動Karl−Fischer滴定装置(一般的な方法4を参照されたい)を用いて測定した。
【0145】
DSC測定のために、イヌリン乾物約10mgをステンレス鋼るつぼ(容積50μl)に秤量し、正確な重量を見出し、蒸留水30μlを加える。次いでるつぼを密閉する。基準として空のステンレス鋼るつぼを使用する。オートサンプラー(Perkin Elmer; Diamond)を備えるDSC装置中で10〜160℃、加熱速度10℃/minで試料を加熱する。PYRIS7.0ソフトウェアプログラム(Perkin Elmer, 63110 Rodgau-Jugesheim, Germany)によりデータ解析を実施する。これは、To(開始)および自由エンタルピーdHの測定を必要とする。
【0146】
7. 粘度の測定
様々な濃度のイヌリン水溶液(蒸留水の容積あたりの重量)は、98℃で振盪することによって調製し、13分を超えない溶解時間の直後の透明な溶液を測定した。測定は、BOHLIN Gemini新型レオメーター(Malvern Instruments; Herrenberg, Germany)で等温(90℃)粘度測定モードを用いてCP4°/40mmコーンプレートシステムで実施した。測定ギャップは、超軽量パラフィンオイルの層でカバーした。予備剪断のために剪断速度10s-1の60sおよび緩和時間10sを採用した。剪断は、剪断速度モードにおける対数段階で測定した。ホールドアップ時間20sおよび積分時間10sを用いた漸増勾配において最初の剪断速度は20s-1であり、最終の剪断速度は30s-1であった。データは、20s-1から30s-1の範囲の平均値に基づき、データ点毎に3回の独立した測定の平均である。異常値として特定して全ての測定は平均値には含めない。「異常値」の定義は、いわゆる「四分位法」によって行った。これは、異常値が範囲基準Q2−k・(Q3−Q1)≦異常値なし≦Q2−k・(Q3−Q1)の外側にある全ての測定値として特定されることを必要とした(SACHS, Lothar: Angewandte Statistik, 10th edition, Springer-Verlag Berlin (2002), pp. 364以下参照)。式中、Q1およびQ3は、測定したデータのそれぞれ25パーセントの四分位数および75パーセントの四分位数であり、Q2はメジアン(50パーセントの四分位数)である。係数kについて1.5という値を使用した。
【0147】
8. ゲル強度および粘弾挙動の測定
17wt%イヌリン(蒸留)水性懸濁液70gをHaake Rotovisco VT550粘度計のMV測定カップに入れた。次いでパドルスターラーを挿入し、予備加熱(90℃、加熱ジャケット)した装置に据え付けた。次いでこの混合物を128rpmで15分間撹拌しながら加熱した。
【0148】
15分後に、二つのアクリルシート円筒リング(それぞれ高さ20mm、直径30mm)を順に重ね、粘着テープ(幅19mm)で一緒に固定したものから構成される基部および壁部からなる容器にこの混合物を90℃で移した。液面の高さが上端から約5mmに達するまで泡が入らないように容器にこの混合物を入れた。次いで、この容器をアルミホイルで覆って密閉し、室温(23℃)で一晩放置した。
【0149】
室温(23℃)で約20時間貯蔵後に、TA XT2テキスチャー分析装置を用いてゲル強度を測定した。滑らかな乾燥していない表面に可能なゲル強度を測定するために、容器の二つの円筒リングを一緒に支える粘着テープを最初に取り外した。次いで、下部のゲルが滑らかな表面を見せるように、カミソリの刃でリングの間のゲルを分割した。
【0150】
ゲル強度は、ゲルに貫通(1mm)するレベルドーム(level dome)(直径24.5mm)によりTA XT2テキスチャー分析装置で測定した。テキスチャー分析装置の設定は以下の通りであった:
測定原理: 圧方向の力
前向き速度: 2mm/s
試験速度: 2mm/s
トリガー値: 0.01N
後向き速度: 2mm/s
移動距離: 1mm
【0151】
ドームの単一貫通での最大値をニュートン単位で示す。
【0152】
実施例1
アーティチョークの根由来のイヌリンの特徴付け
1. アーティチョーク植物の栽培
アーティチョーク植物の品種マドリガルをスペインのバレンシア近郊で生育させた。種子を2005年4月に蒔き、植物を2005年8/9月に収穫した。根を地上部から分け、付着した土を除き、乾燥させた。次いで、根を冷蔵せずにスペインからドイツに輸送した。イヌリンを抽出するまで根を−20℃で保存した。
【0153】
2. アーティチョークの根からのイヌリンの調製
約4〜5ヶ月生育したマドリガル品種のアーティチョーク植物由来の根を使用してイヌリンを調製する。凍結段階で高圧クリーナー(Karcher 240)を用いて洗浄することによって根60kgに付着している土壌構成要素を根から除いた後で、これらの根をシュレッダー(Gloria Universal garden shredder natura 2800L)でさらにチップに加工する。80〜90℃に予備加熱した水を含有するゲートアジテーターを備えるジャケット加熱抽出器にチップを入れる。加える水の総量は180kgである。NaOHを添加することによって抽出液のpHを9.0に調整する。抽出器のジャケットによりチップのマッシュを40℃から80〜85℃に急速加熱した後に、チップからイヌリン(フルクタン)を抽出するためにこのマッシュを80〜85℃で約60分間撹拌する。この時間の後で、ポンプくみ出しにより粗抽出液をチップから分離する。
【0154】
抽出液100mlあたり合計0.7gのMg(OH2)を生成させることによる二段階プロセスで粗抽出液を脱色する。第1段階では、撹拌しながら10分間かけて暗褐色抽出液170LにMgSO4・7H2O 3400g(抽出液100mlあたり0.5gのMg(OH2)に相当する)を溶解させる。続いて、96%のCa(OH)2 1015gを水3L中の懸濁液として添加し、10分間撹拌する。pHは9.4に設定する。沈殿形成混合物全体をプレートセパレーター(GEA Westfalia SC−6−06−076型)で120分間かけて定量的に清澄化する。脱色された抽出溶液は淡黄色を有し、濁度を生じる物質を有さない。濃厚ペーストの形態の固相は、スラッジ画分を取り出したものとして得られる。このように得られ、150Lを含む抽出溶液に、MgSO4・7H2O(抽出液100mlあたりMg(OH2) 0.2gに相当する)および水1.5L中の懸濁液としての96%Ca(OH)2 410gを添加したものに脱色段階全体を繰り返す。沈殿形成混合物全体をプレートセパレーターで30分間かけて定量的に清澄化する。pH9.4の脱色された抽出液は透明で、淡黄色を有し、濁度を起こす物質は有さない。濃厚なペーストの形態の遠心分離物をスラッジ画分としてもう一度得る。
【0155】
温度4℃に48時間かけて冷却することによって、このように増白した抽出液から固体イヌリンが得られる。イヌリンは、プレートセパレーターを用いた遠心分離沈着(centrifugal deposition)によりスラッジ様沈降物として得る。
【0156】
沈降物は、増白した抽出液に存在するのと同濃度で熱水にイヌリンを溶解させ、2℃で48時間貯蔵することにより繰り返し沈殿させることによって、連続的に2回さらに精製する。最終的に得られたイヌリンの沈降物は、熱を投入して、以前に採用したのと同じ濃度で水にもう一度完全に溶解させる。次いで、熱い溶液に、フィルター層を有するプレートフィルターを通過させる。続いて溶液を冷却(2℃、48時間)することによりイヌリンを沈殿させ、最終生成物を凍結乾燥する。
【0157】
図1に抽出の流れの概略図を示す。
【0158】
抽出プロセスの間に、ポリマーの分布は、個別の抽出段階および精製段階の後で、屈折率検出およびデキストラン標準を用いた較正を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI、「一般的な方法」の方法3.2を参照されたい)により分析した。図2から明らかなように、熱水抽出後の抽出液(B)のポリマー分布は、洗浄した根(A)のポリマー分布に匹敵する。図2に、洗浄したアーティチョークの根(A)およびイヌリンの熱水抽出後の抽出液(B)におけるポリマー分布のGPC−RI分析を示す。
【0159】
イヌリンの冷(4℃)分画後のポリマー分布の分析から、高分子量イヌリン画分(C)が低分子量画分(D)から分離されたことが示された(図3)。図3に、イヌリンの熱水抽出後の抽出液(B)中の、4℃でイヌリン沈殿後の沈降物(C)中の、および沈殿後のイヌリンを遠心分離後に得られた上清(D)中のポリマー分布のGPC−RI分析を示す。
【0160】
高分子量イヌリンのさらなる濃縮および低分子量物質、特に単糖および二糖の枯渇が、高分子量イヌリン画分の再沈殿により達成された(図4)。図4に、4℃で沈殿したイヌリン(C)中の、最初の再沈殿後の沈降物(F)中の、および最初の再沈殿後の透明相I(E)中のポリマー分布のGPC−RI分析を示す。
【0161】
低重合度を有するイヌリンは、熱水濾過後のイヌリンの繰り返し沈殿後に同様に透明相に残った(図5)。図5に、濾過後のイヌリン溶液(G)中の、結晶化後に沈降したイヌリン(K)中の、および結晶化後の透明相III(H)中のポリマー分布のGPC−RI分析を示す。
【0162】
3. 調製したイヌリンの純度の測定
第2項で得られたアーティチョークイヌリンの純度は、凍結乾燥物のフルクタン含量および水分含量を測定することによって測定した。アーティチョークイヌリンについて測定された水分含量は2.9%であった(「水分含量の測定」の方法を参照されたい)。
【0163】
フルクタン含量は、エキソイヌリナーゼ酵素でイヌリンを加水分解することによって測定した(「エキソイヌリナーゼを用いた加水分解によるフルクタンの測定」の方法を参照されたい)。乾量(DM)に基づく純度は、フルクタン含量および水分含量から求めた。
純度=フルクタン含量×100/(100−水分含量)
【0164】
表1から明らかなように、調製したアーティチョークイヌリンの平均純度は乾量(DM)の96%である。
【0165】
【表2】

【0166】
4. GPC−RI−MALLSによる分子量測定
第2項で得られた精製アーティチョークイヌリンから、ならびに購入した基準試料Raftiline HP(Orafti製、バッチ:HPBNH4DNH4)およびダリア塊茎由来イヌリン(Sigma製、製品番号1−3754、バッチ:75H7065)から0.5%(w/v)水溶液を調製し、イヌリンの分子量分布をゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した(方法3.1参照)。この分布を図5に示し、それから計算した分子量(アンヒドロフルクトース=162g/mol)および平均鎖長を表2にまとめる。
【0167】
GPC−RI−MALLSシステムを使用した分子量分布の分析の結果、アーティチョークイヌリンについて13995g/molという重量平均分子量Mwおよび11620g/molという数平均分子量Mnになった。これは、DPwについて平均鎖長86およびDPnについて72に対応する。精製アーティチョークイヌリンの鎖長は、平均してRaftiline HPの鎖長(DPw=36、DPn=29)およびダリアイヌリンの鎖長(DPw=41、DPn=33)よりも明らかに長い。これは、最小および最大分子量においても反映され、これらの分子量はアーティチョークイヌリンで明らかに長い。
【0168】
【表3】

【0169】
5. グルコース、フルクトースおよびスクロースの測定結果
第2項で得られたアーティチョークイヌリン中のグルコース、フルクトースおよびスクロースの比率は、方法3(「糖の測定」)に記載したように5%イヌリン溶液中の糖の測光により測定した。
【0170】
表4から明らかなように、精製アーティチョークイヌリン中のグルコース、フルクトースおよびスクロース含量は、イヌリン粉末の0.1%未満である。
【0171】
【表4】

【0172】
6. 分岐度
6.1 標準メチル化分析
分岐度は、DPwが90でDPnが84の本発明のイヌリン試料で測定した。
【0173】
使用した比較的な実施例は、Raftiline HP(Orafti製、バッチHPBNO3DNO3およびHPBNH4DNH4)ならびにダリア塊茎由来イヌリン(Sigma製、製品番号I−3754、バッチ:022K7045または75H7065)およびキクイモ根由来イヌリン(Sigma、製品番号I−2880、バッチ111H7045および88F7220)であった。分岐度は、メチル化分析により測定した(一般的な方法5.1を参照されたい)。
【0174】
2−1−結合フルクタンの加水分解、還元およびアセチル化は、1,2,5−トリ−O−アセチル−3,4,6−トリ−O−メチル−D−マンニトールおよび1,2,5−トリ−O−アセチル−3,4,6−トリ−O−メチル−D−ソルビトールを生じる。末端フルクトシル基は、2,5−ジ−O−アセチル−1,3,4,6−テトラ−O−メチル−D−マンニトールおよび2,5−ジ−O−アセチル−1,3,4,6−テトラ−O−メチル−D−ソルビトールを与える。末端グルコピラノシルユニットは、1,5−ジ−O−アセチル−2,3,4,6−テトラ−O−メチル−D−ソルビトールを生じる。追加的に6位で分岐した基本単位は、対応する1,2,5,6−テトラ−O−アセチル−3,4−ジ−O−メチルアルジトールを与える。
【0175】
2−1結合を示す生成物に加えて、全てのフルクタン試料から末端フルクトースおよび末端グルコース基本単位由来の試料を検出することが可能であった。追加的に、クロマトグラムから、窒素気流中で2−1結合フルクトースからTFAを除去すると生成するジフルクトースジアンヒドリド(DFDA、約3mol%)が示された。
【0176】
さらに、質量スペクトルから、全ての試料において2−1,6結合から生じた生成物を同定することが可能であった。1,3−および1,4−アセチル化化合物もまた同定されたが、これらは、それぞれ3位および4位で分岐を生じていると思われるが、不完全なメチル化に由来するおそれもある。1,3−および1,4−アセチル化生成物の非特異的な発生は、半メチル化(submethylation)の指標である。6位が3位および4位と同程度に半メチル化により影響を受けると仮定して、非特異的な比率(1,3−Ac化合物および1,4−Ac化合物の平均)を2−1,6−分岐フルクトースユニットの比率から差し引く。下記表4にそれから得られる結果を示す。
【0177】
【表5】

【0178】
メチル化分析の評価から、アーティチョークイヌリンについて1.4mol%という分岐度が明らかとなった。したがって、このイヌリンの分岐度は、チコリ(RaftilineHP)、ダリアおよびキクイモ由来の基準試料のイヌリンの場合よりも確かに高い。
【0179】
6.2 還元分解
標準的なメチル化分析に一致して、還元的グリコシド開裂により、全ての試料における末端グルコピラノース(1,5−アンヒドロ−2,3,4,6−テトラ−O−メチル−D−ソルビトール)、末端フルクトフラノース(2,5−アンヒドロ−1,3,4,6−テトラ−O−メチル−D−マンニトールおよび2,5−アンヒドロ−1,3,4,6−テトラ−O−メチル−D−ソルビトール)、および2−1結合フルクトフラノース(1−O−アセチル−2,5−アンヒドロ−3,4,6−トリ−O−メチル−D−マンニトールおよび1−O−アセチル−2,5−アンヒドロ−3,4,6−トリ−O−メチル−D−ソルビトール)の対応する生成物を同定することが可能である。2−1,6結合が存在する場合には、全てのフルクタンについて生じる生成物(1,6−ジ−O−アセチル−2,5−アンヒドロ−3,4−ジ−O−メチル−D−マンニトールおよび1,6−ジ−O−アセチル−2,5−アンヒドロ−3,4−ジ−O−メチル−D−ソルビトール)を質量スペクトルから検出することもまた可能である。さらに、2−1,6−結合フルクトースユニットから生じる転位生成物である2,6−ジ−O−アセチル−1,5−アンヒドロ−3,4−ジ−O−メチルマンニトールが発生する。
【0180】
再度、GC−MSで非特異的半メチル化(6.1参照)生成物が検出された。分離されていない開環アルジトールもまた低い割合で出現した。2−1結合ではこれらの低い割合を考慮した。非特異的な比率の減算から、本発明のイヌリンについて1.7mol%の分岐度(=2−1,6−結合フルクトースの比率)という結果になる。
【0181】
実施例2
アーティチョークの根由来イヌリンの特性
以下の検討の全ては、前述の表2に詳記する本発明のアーティチョークイヌリンに関する。比較上のRaftiline HPおよびダリアイヌリンは、同様に実施例1に詳述したイヌリンである。
【0182】
1. イヌリンの示差走査熱量の検討
イヌリンの示差走査熱量分析(手順については方法の項を参照されたい)は、融解挙動に関して様々な物質の間で明らかな差を示した(表5参照)。両方のイヌリン試料は、融解エンタルピーに関して大きく異なった。これは、アーティチョークイヌリンについて25.2J/g超であり、Raftiline HPについてわずか22.8J/gであった。Tonset(To)の差も同様に強調された。アーティチョークイヌリンについての初期融解温度は41.1℃であり、これは比較用のチコリイヌリンよりも3℃超高い。アーティチョークイヌリンはチコリイヌリンよりも高温に明らかに感受性が低いことから、このアーティチョークイヌリンの熱安定性増加は食品部門におけるある種の熱プロセスにかなりの長所でありうる。
【0183】
【表6】

【0184】
2. 粘度
【0185】
【表7】

【0186】
上表から明らかなように、最大24%(w/v)濃度の両方のイヌリンは、90℃で非常に低い粘度を示した(水=1mPas)。本発明のイヌリンは、26%(w/v)の濃度で、特に28%で粘性になったが、Raftiline HPは、最大28%(w/v)までその粘度が水と非常に類似したままであった。
【0187】
3. 凍結乾燥後の粒度
実施例1のDPw=86の凍結乾燥試料をナイフミル(Grindomix GM200, Retsch Technologie GmbH, Haan, Germany)で摩砕し、篩分析により粒度を測定した(Fritsch製篩振盪機「Analysette 3」、振盪頻度2.0、篩過補助:めのうのボール8個(10mmφ)/篩、運転時間1〜2min、負荷量約50g)。結果を下の表7に示す。篩分析により平均粒子径を108μmと測定することができた。実施例1と同様に調製し、93〜94のDPwを有するイヌリンもまた凍結乾燥し、ナイフミルで摩砕し、篩分析により検討した(表8)。結果は、160μmという平均粒子径であった。
【0188】
【表8】

【0189】
【表9】

【0190】
4. 噴霧乾燥
実施例1の2で調製したイヌリン(DPw=86、表2)を中間凍結乾燥後に溶解させ、次いでGlatt GPCG3.1流動床噴霧乾燥ユニットで噴霧乾燥した。このために、凍結乾燥イヌリンを水に入れ、85〜90℃に加熱し、溶解させた。加熱した溶液を多様な流出空気温度で噴霧乾燥し、プロセスの特性および生成物の特性を観察した。流入温度は120℃に一定に保った。
【0191】
【表10】

【0192】
噴霧乾燥に加えて噴霧造粒(試験5)もまた実施した。関連するプロセスパラメーターを下の表に詳述する。造粒の種として最初に導入したのは、以下のように調製した噴霧乾燥物70gであった:Buchi B−191噴霧乾燥機、流加液:水20gおよびイヌリン(DPw=86)4g、T(流加液)=80〜90℃、T(流入)=120℃、T(流出空気)=93〜94℃、アスピレーター率80%、ポンプ率10%、エアフローノズル450l/時間。結果として生じた顆粒は、形態およびコンシステンシーにおいて非常に良好な品質であった。流出空気温度が最大52℃まで造粒が可能であった。
【0193】
【表11】

【0194】
上記のような篩分析から、以下の平均粒子径が明らかとなった:
試験2 85μm
試験5 300μm
【0195】
5. 結晶化度
粉末形態のイヌリン試料は、2枚のPETカバーフィルムの間の厚さ2mmの試料キャリア(標準)の中にさらに前処理せずに用意した。試料2について1mm試料キャリアを使用した(下記参照)。単色(Ge(111)モノクロメータ)Cu−Kα線を使用した対称透過においてBruker−AXS製D5000二軸型回折装置を用いてX線測定を実施した。2θ角範囲が3〜29°(ステップ幅Δ2θ=0.1°)および29.5〜104(ステップ幅Δ2θ=0.5)、ステップ/Δ2θ:60秒で30mAおよび40kVで記録を行った。
【0196】
Ruland−Vonk法に基づくソフトウェア(WAXS 7、Fraunhofer Institut fur angewandte Polymerforschung(Potsdam (Germany))開発、http://edocs.tu-berlin.de/diss/2003/rihm_rainer.pdf、19頁以下に説明)を使用して、結晶化度xc、結晶サイズD(hkl)および結晶子格子の乱れの尺度である無秩序パラメーターkを散乱プロットから見出した。試料2についての散乱プロット(下記参照)を非晶質バックグラウンドファイルとして使用した。密度1.65g/cm3を用いて計算されたフルクトースを化学的基礎として使用した。結晶子の大きさD(hkl)は、2θ=8°および12°での、主要なものから数えて二つの干渉でのScherrerの式によるX線反射の半値幅から測定した。
【0197】
上に詳述した噴霧乾燥試験1〜5からの試料および以下の試料を測定した:
試験6:実施例1の2に記載したように調製し、凍結乾燥したDPw=86のイヌリン。
試験7:80〜90℃の水に溶解し、以下の条件で噴霧乾燥した試料1:
Buchi190噴霧乾燥機、T(流加液)=80〜90℃、T(流入)=120℃、T(流出空気)=80℃、空気流450l/時間、イヌリン濃度=20wt%。
試験8:25℃の水に懸濁し、以下の条件で噴霧乾燥した試料1:
Buchi190噴霧乾燥機、T(流加液)=80〜90℃、T(流入)=120℃、T(流出空気)=80℃、空気流450l/時間、イヌリン濃度=20wt%。
【0198】
測定した結晶化度および、無秩序パラメーターを下の表11に示す。
【0199】
【表12】

【0200】
6. 水中で加熱後のイヌリンの構造形成
イヌリンの20%水性懸濁液15mlをそれぞれアルミニウム製ビーカー(Winopal Forschungsbedarf GmbH製RVA-3dビーカー;容積約70ml、直径38mm)に調製し、撹拌し、磁気スターラーバーを備え付け、最後に蓋をした。マルチサーマルスターラー(H+P Labortechnik AG製VARIOMAG Multitherm 15)を用いて撹拌しながらこの懸濁液を加熱した。この場合、蒸留水の入った基準ビーカーに蓋をして加熱ブロック上に置いたものの中に立てたPT100プローブ(VARIOMAG Multitherm 15の付属品)を使用することによって、温度を制御した。マルチサーマルスターラーを予備加熱することにより、基準試料の温度が90℃で安定を保つようにした。加熱する懸濁液をマルチサーマルスターラーに置き、90℃で8分間撹拌した。次いで、室温で24時間保存したマルチサーマルスターラーから試料を取り出した。次いで、結果として得られたゲルの濃度をTA−TX2テキスチャー分析装置(Stable Micro Systems)を用いて測定した。測定システムとして直径12mmを有するSMSP/0.5 R076貫通型プランジャー(Stable Micro Systems)を用いてこの測定を実施した。5kgの測定セルを用いたTA測定のために以下のパラメーターを適用した:
・ オプション:圧方向の力の測定
・ 1回試験
・ パラメーター:前向き速度2.00mm/s
・ 試験速度0.50mm/s
・ 後向き速度0.50mm/s
・ 移動距離(貫通深度)3mm
・ トリガー力2g
【0201】
水中で熱処理後の様々なイヌリンの構造形成挙動を検討した。このことからチコリ由来イヌリン(Raftiline HP(登録商標)およびBeneo HPX(登録商標))は、これらの条件でゲル様構造を形成しないことが分かった(表12)。これとは対照的に、本発明のイヌリン(凍結乾燥由来のDPw=86または94)は、非常に強い構造を形成する。驚くことに、DPw=86の噴霧乾燥されたイヌリンを使用した試料もまた、イヌリンが凍結乾燥された比較用の試料よりもかなり強いゲルを形成した。これは、採用したわずか15%(w/w)濃度のイヌリンで見られたゲル強度が、比較用の20%凍結乾燥試料でのゲル強度よりもさらに明確に高かったという事実から、特に明らかである。
【0202】
【表13】

【0203】
7. プレバイオティク特性
3段階発酵システム(腸管モデル)でのin vivoモデル研究で本発明によるイヌリンのプレバイオティク効果を検討した。発酵システムに定着する細菌の種類およびそれらの代謝活性(短鎖脂肪酸の生成)を確認した。
【0204】
1. 材料と方法:
a)連続3段階培養システム:
Pereiraら((2003) Appl Environ Microbiol 69(8), 4743-4752)およびProbertら((2004) Appl Environ Microbiol 70, 4505-4511)により以前に記載された連続三段階培養システムをこの研究に使用した。腸管モデルは、連続的に並べた作業容積0.28、0.30および0.30リットルの三つの培養容器V、V2およびV3からなった。各容器に磁気スターラーを用意し、水浴により温度を37℃に保ち、個別の容器のpHをElectrolab pHコントローラーで制御した。液体に滅菌無酸素窒素を通気することによってシステム全体(培地リザーバーを含む)を嫌気条件で運転した。三つの容器のpHは、0.5M HCl−NaOH適量を添加することによって5.5(V1)、6.2(V2)および6.8(V3)に調整した。容器1は大腸前方の微生物状態を模倣していた。それは、比較的栄養分が豊富で、容器3よりも比較的酸性に傾いたpHおよび短い滞留時間を有し、容器3はより中性のpHを有し、比較するとほとんど基質を有さなかった。容器3は、大腸後端部を模倣していた。容器2は、大腸中央の横行部(横行結腸)をモデル化していた。
【0205】
無酸素窒素を滅菌培地に連続的に吹き込み、蠕動ポンプによりV1に導入し、V1はV2およびV3に連続的に至った。培地は、蒸留水(g/L)中の以下の構成要素からなった:馬鈴薯デンプン5.0;ペクチン(柑橘類)2.0;カゼイン(ナトリウム塩)3.0;Raftiline LS(Orafti, Tienen; BE)1.0;キシラン(カラスムギ外皮)2.0;アラビノガラクタン(Fluka)2.0;グアールガム1.0;ムチン(ブタ胃III型)4.0;トリプトン(Oxoid)5.0;ペプトン水(Oxoid)5.0;酵母エキス(Oxoid)4.5;胆汁酸塩No.3(Oxoid)0.4;L−システインHCl 0.8;NaHCO3(Fisher Scientific)1.5;ヘミン0.05;NaCl(Fisher Scientific)4.5;KCl(Fisher Scientific)4.5;CaCl2×6H2O(BDH)0.15;KH2PO4(BDH)0.5;FeSO4×7H2O(BDH)0.005;MgSO4×7H2O(Fisher Scientific)1.25。加えて、Tween80(BDH)1.0 mlおよびビタミンK 10マイクロリットルを添加した。濃度0.025%(w/v)のレサズリン溶液4mlを、嫌気条件の指示薬として生育培地に添加した。培地を121℃で15分間オートクレーブし、窒素雰囲気下で冷却した。別に示さない限り、全ての化学物質はSigma Chemical Co., UKから購入した。
【0206】
糞便物質の収集および調製:
各容器の残りの容積に、試験前3ヶ月間に全く抗生物質を服用しなかった30歳男性からの糞便から新鮮調製した懸濁液で補った。20%(w/w)新鮮糞便懸濁液は、予め緩衝したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて調製し、消化装置(胃)の中で正常速度で2分間消化させた。大きな食物残渣はフィルターサックを通して除いた。次いで、結果として得られた懸濁液100mlを採用して三つの発酵容器のそれぞれに植菌した。このシステムは、最初に培地を使用してバッチ培養として48時間運転した。バッチ培養発酵の48時間後に、腸液の組成を模倣した複合培地を蠕動ポンプによりV1に、次いでV2およびV3に導入した。滞留時間(R)は、各容器について希釈率の逆数として計算した。滞留時間を27.1時間に設定し、定常状態を確実にするために最初の48hの平衡時間の後に12日間このシステムを運転した。全体的な滞留時間は、各発酵装置の個別の滞留時間Rの合計であった。
【0207】
試料採取:
最初の試料(5ml)(0日目)は、24時間発酵後に採取した。発酵は定常状態に達するまで継続した(10〜12日後)(SS1)。この段階で、培養液の試料を各容器から取り出し、続いて細菌および短鎖脂肪酸の分析に供し、SS1の指標として使用した。SS1が達成された後で、被験基質をさらに10〜12日間毎日容器1に入れた。さらなる定常状態(SS2)が達成されるまで発酵を継続し、もう一度各容器から培養液の試料を採取し、続いて分析に供した。
【0208】
FISH分析による糞便試料中および腸管モデルからの試料中の細菌の計数:
発酵システムの個別の容器からの試料を下に示すように処理した。
試料の調製:試料(375μl)をバッチ培養から取り出し、濾過した4%(w/v)パラホルムアルデヒド溶液(pH7.2)1125μlに添加し、混合し、細胞を固定するために4℃で一晩保存した。固定した細胞を13000rpmで5分間遠心分離し、濾過したリン酸緩衝溶液中で2回洗浄し、PBS 150μlに再懸濁した。エタノール(150μl)を添加し、試料を混合し、使用するまで−20℃で保存したが、3ヶ月を超えては保存しなかった。
【0209】
ハイブリダイゼーション:
固定した細胞(16μl)を、余熱(オーブン)し、濾過したハイブリダイゼーション緩衝液264μl(X(30mM Tris−HCl、1.36M NaCl(pH7.2)、0.1%v/vドデシル硫酸ナトリウム(SDS)に溶かしたものを予熱)に添加し、混合した。この混合物を適切なCy3標識プローブ(50ng/μl)に9:1(v/v)の比で添加し、混合し、適温で一晩ハイブリダイゼーションオーブンに入れた。
【0210】
洗浄および濾過:
予熱し、濾過したハイブリダイゼーション緩衝液(20mM Tris−HCl、0.9M NaCl、(pH7.2))5mlにハイブリダイゼーションした試料(1視野あたり30から150細胞を達成するために適切な一定分量)をDAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、500ng/μl)20μlと共に添加し、適切なハイブリダイゼーション温度に30分間置いた。この混合物をポアサイズ0.2μmの黒いメンブランフィルター(GTBP 01300, Millipore Corp.)に乗せた。蛍光の減衰を防止するためにSlowfade−Light褪色防止試薬(Molecular Probes Europe, Leiden, NL)をフィルターに乗せ、支持体を暗条件4℃で最大3日間保存した。
【0211】
支持体1個あたり最低15視野をNikon Microphot EPI蛍光顕微鏡(倍率1000倍)で検鏡した。ハイブリダイゼーションした細胞を計数するためにDM510フィルター(550nm)を使用し、DAPI染色細胞のためにDM400抽出フィルターを使用した。
【0212】
以下の式は、各試料中の細胞濃度C(細胞/ml)を計算するために使用した:
C=N×15.56×14873.74×(1000/q)
N:1視野あたり計数された細胞数の平均
q:使用したハイブリダイゼーション混合物の容積
14873.74:倍率定数
15.56:作製した全ての希釈液についての係数
【0213】
蛍光色素Cy3でラベルした、16S rRNAをターゲットとする属特異的オリゴヌクレオチドプローブは、以前に設計および検証されたものであるが、このプローブを使用して重要な細菌群を計数した。使用したプローブは、ビフィドバクテリウム(bifidobacterium)に特異的なBif164(Langedijk (1995), Appl Environ Microbiol 61, 3069-3075)、バクテロイデス(bacteroides)に特異的なBac303(Manz et al. (1996) Microbiology 142, 1097-1106)、クロストリジウム・ヒストリティカム(Clostridium histolyticum)亜群に特異的なHis150、およびクロストリジウム・コッコイデス−ユーバクテリウム・レクターレ(Clostridium coccoides-Eubacterium rectale)群に特異的なErec482(Franks et al. (1998) Appl Environ Microbiol 64, 3336-3345)、ラクトバシルス/エンテロコッカス(Lactobacillus/Enterococcus)に特異的なLab158(Harmsen et al. (1999) Microb Ecol Health Dis 11, 3-12)、アトポビウム(Atopobium)クラスターに特異的なAto291であった。核酸色素4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を総細胞の計数に使用した(表13)。
【0214】
【表14】

【0215】
短鎖脂肪酸の分析:
腸管モデルの様々な容器から採取した試料中の短鎖脂肪酸(SCFA)は、Pereiraら(Appl. Environ Microbiol (2003) 69(8), 4743-4752)に記載されたように分析した。細菌および固形物を除去するために試料を遠心分離(6000g、10min)し、次いでポアサイズ0.2μmのポリスルホンHPLCフィルターを通して濾過した。次いで、濾過した各上清200μlを、内部標準として3.7mM 2−エチル酪酸を含有するアセトニトリル800μlで希釈(1:4)した。溶融石英充填キャピラリーカラム(Permabond FFAP, Macherey Nagel, DE)(25m×0.32mm、フィルムの厚さ0.25μm)を備えるHP5890シリーズII GCシステムを用いたガスクロマトグラフィーにより脂肪酸を測定した。流量2.42ml/minでヘリウムをキャリアガスとして使用した。カラム温度は140℃であり、インジェクターおよび検出器温度は240℃であった。試料のインジェクションの5分後に、カラム温度を20℃/minで段階的に240℃に上げ、システムをさらに5分間運転させておいた。ガスの組成は、HP3365シリーズII ChemStation Apg−topソフトウェア、バージョンA0.03.34を使用して分析した。以下の酸を外部標準として使用したが、それぞれの酸は0.5から40mMの範囲の濃度を有した:酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、n−吉草酸、イソ吉草酸(Fluka)、イソ酪酸(Fluka)、およびn−カプロン酸。別に示さない限り、全ての酸はSigmaから購入し、99%を超える純度であった。SCFA濃度は、内部標準の較正を用いて計算し、mM/l単位で表した。
【0216】
2. 結果
上記の腸管モデルで以下のイヌリンを試験した:
本発明のイヌリン:DPw=95
比較用試料:Raftinline HP(登録商標)(Orafti)、DPw=33
第2の定常状態(SS2)および第1の定常状態(SS1)の間で比較を行い、Studentのt検定を用いてデータを解析した。
【0217】
図6に、本発明のイヌリンで処理後の定常状態1(SS1)と定常状態2(SS2)との間の、容器1(V1)における細菌数の比較を示す。図7および8に、容器2(V2)および3(V3)についての対応する比較を示す。
【0218】
図9に、比較用の試料で処理後の定常状態1(SS1)と定常状態2(SS2)との間の、容器1(V1)における細菌数の比較を示す。図10および11に、容器2(V2)および3(V3)についての対応する比較を示す。
【0219】
腸管モデルにおける本発明のイヌリンの添加は、容器1におけるBifidobacteriumの有意な増加を導いた(P<0.05)。他の容器では有意でない増加が観察された。比較用試料では、容器1においてBifidobacteriumの増加が観察されたが、有意ではなかった。容器3におけるLactobacillus数は有意に高かった(P<0.05)が、Clostridium数では変化が観察されなかった。容器2におけるBacteroidesおよびClostridium coccoides−E. rectale群は、有意に低かった(P<0.05)。
【0220】
図12に、本発明のイヌリンで処理後の定常状態1(SS1)と定常状態2(SS2)との間の、全ての容器における短鎖脂肪酸(SCFA)濃度の比較を示す。各場合で個別の脂肪酸を各容器および定常状態について(例えばV1−SS1)の棒グラフとしてプロットする。左から右に、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、n−吉草酸、カプロン酸である。
【0221】
図13に、比較様の試料で処理後の定常状態1(SS1)と定常状態2(SS2)との間の、全ての容器における短鎖脂肪酸(SCFA)濃度の比較を示す。
【0222】
本発明のイヌリンの添加後に三つ全ての容器においてプロピオン酸濃度が増加したが、容器2における増加が有意であった。容器1および容器2では酪酸濃度が増加した。腸管モデルへの比較用の試料の添加は、全ての容器中の酢酸、プロピオン酸および酪酸の濃度の増加を導いたが、これは容器2においてのみ有意であった。
【0223】
8. 生地特性および製パン特性
材料
焼上げ試験に使用した材料は、米国製小麦粉「King Midas」(登録商標)と、Oraftiから供給されるRaftiline HP(登録商標)またはDPw=86を有する本発明のイヌリンとから構成される配合小麦粉を含んだ。8%の小麦粉をイヌリンと置換した。次いで、配合小麦粉および置換していない対照を生地のレオロジーおよび焼上げ試験の測定に供した。
【0224】
方法:
1)ファリノグラム(ICCおよびAACC標準に準拠):
ファリノグラムを使用して、小麦粉の水取り込み能を確認し、調製した生地の捏和特性を評定した。
試薬:蒸留水
装置:
Brabender(ドイツ)が供給するUSBポート付きFarinograph(登録商標)E
捏和用双腕を備える10g捏和機(Brabender)
【0225】
以下のパラメーターを測定し、被験小麦粉の品質性質について評価した:
小麦粉の水取込み:生地が最大生地コンシステンシー500FU(ファリノグラフユニット)に達したときに水分含量14%を有するために、小麦粉100gあたりに必要な水の量(ml)として定義される。
生地のコンシステンシーは、一定回転数(63rpm)での生地の抵抗性をFUで表したものである。
生地の作製時間は、試験の開始(水の添加)から最大ピークの間の時間(min)として定義される。
【0226】
2)焼上げ試験(「白食パン(white pan bread)」):
装置
・ Brabender(ドイツ)から供給される、300g小麦粉捏和チャンバーを備えるファリノグラフ
・ オーブン(MIWE gusto, Germany)
・ 全自動発酵装置(Foster RBC Mk3、Hobart製、Germany)
・ 2kg計量器(Sartorius)
・ 捏和機(Brabender, Germany)
【0227】
生地の成分:
小麦粉(小麦粉水分14%) 300g
酵母(生) 12g
塩(食卓塩) 6g
ベーキング脂肪(baking fat) 15g
砂糖 3g
水(2.5%未満の水取込みに等しい)
【0228】
生地の加工:
小麦粉および成分を捏和チャンバー中で1分間混合し、次いで適量の水を添加した。2分間捏和後、生地を捏和チャンバーの壁から生地の塊に戻すために装置のスイッチを切った。イヌリン補充小麦粉については、ファリノグラムのデータ(生地作製時間(min))により捏和プロセスを6分または12分間続けた。生地の最終温度は約26℃であった。捏和の完了後、生地を10分間放置し、次いで生地の総重量を測定した。生地片の分割および重量測定を10分以内に行った。生地を等しい大きさの2片の生地に分割し、捏和機(Brabender)中で10秒間丸く捏和し、次いで細長く伸ばした。生地片をパン焼き型に入れ、全自動発酵装置(32℃、湿度87%)に60分間(発酵時間)押し入れた。オーブンを250℃に予熱した。発酵した生地片に水を噴霧し、オーブンに押し入れた。約200℃で30分間焼上げ後に、パンを取り出し、室温で1時間放冷した。パンの体積は菜種油の置換によって測定した。パンの中身の特性は、視覚的に、およびTA−TX2テキスチャー分析装置(Stable Micro Systems)を用いて検討した。パンの中身の強度は、直径12mmのSMSP/0.5 R076貫通パンチ(Stable Micro Systems)を用いて厚さ約1.5cmのパンで測定した。5kg測定セルを用いたTA測定に以下のパラメーターを使用した。測定は、以下の調整後に行った:
・ オプション:圧方向の力を測定
・ 1回試験
・ パラメーター:前向き速度2.00mm/s
・ 試験速度0.50mm/s
・ 後向き速度0.50mm/s
・ 移動距離(貫通深度)7mm
トリガー力2g
【0229】
結果:
用語の定義:
生地の収率(DY)は、小麦粉100重量部からの生地の量である。これは、水取込み能および生地の強度を比較することを可能にする性質である。小麦粉100kgおよび水60kgから作られた、DY160を有する生地が例である。生地の収率は様々な定義を有する:
生地の純収率は、100重量部の小麦粉および水からの生地の量である。
生地の総収率は、100重量部の小麦粉、水およびその他の成分からの生地の量である。
生地の実際的収率は、加工、発酵および重量損失を考慮した生地の総収率である。
焼込損失:焼込損失は、焼上げる間の生地または生地片の重量損失であると当業者に了解されている。これは、主に生地から蒸発した水ならびにアルコール、有機酸およびエステルなどのわずかな量の他の揮発性構成要素から構成されることから、当業者は、同様に「水分損失」とも呼ぶ。重量損失(=焼込損失)は、常に生地の重量に基づき、生地重量とパン重量の比を表す。これは、次式:
【数3】


により計算される。
高い焼込損失は、ベーカー製品の収率に、したがって販売される焼上げ製品の重量および個数に不利な効果を有する。加えて、焼上げプロセスの間の水分損失は、焼上げ製品の新鮮さに不利な効果を有するため、この製品は短時間で古くなる、すなわち「老化」する。
【0230】
製品の収率(パンの収率ともいう):
パンの収率(BY)は、小麦粉100部から得られた焼上げ製品の量である。パンの収率は、加工された小麦粉の量に基づく。
実施例:小麦粉40kgからパン60kgおよび150のBYが生じる。
【0231】
【表15】

【0232】
【表16】

【0233】
生地のレオロジーの検討から、本発明のイヌリンにより置換した生地の水取り込み能の明確な増加が明らかになった(表14)。これは、Raftiline HPを含有する比較用の小麦粉よりもほぼ9パーセント高く、置換を行わなかった比較用の小麦粉よりもまだ3%高い。結果として、特に商業上の関心対象である生地の収率は、本発明のイヌリンを含有する生地で明らかに最高である(表15)。対照生地に比べてRaftiline HP(登録商標)が添加された生地が、生地の収率の大きな減少を示すことから、これは驚くべきことである。Raftiline HP(登録商標)を有する生地に比べて、本発明のイヌリンを有する生地のコンシステンシーもまた好都合である。パンの収率は、本発明のイヌリンを有するパンで最高であり、Raftiline HP(登録商標)を含有するパンで最低である。小麦粉の置換が行われた二つのパンの比体積は類似しているが、中身の色、柔軟性、空隙率またはきめなどの他の品質パラメーターは、Raftiline HP(登録商標)を有する比較用のパンおよび置換なしの対照よりも、本発明のイヌリンを有するパンの方が幾分良好である。本発明のイヌリンを含有するパンは、新鮮状態の維持に関して特に長所を示す。パンの中身の強度が示すように、これは対照のパンおよびRaftiline HPを含有するパンに比べて改善されている。またさらなる好都合な特性は、新鮮なパンの中身および保存されたパンの中身の水分含量の増加であり、これは特に老化の減少に加えて感覚の向上を伴う。
【0234】
3)パスタの生産:
パスタの生産でイヌリン試料のさらなる適用を試験した。この場合、粗挽き小麦粉の5%および10%をイヌリンに置換する。
【0235】
1)材料:デュラム小麦の粗挽き粉
DPw=86を有する本発明のイヌリン
Raftiline HP(登録商標)
【0236】
2)パスタ生地の調製:
パスタ生地は、粗挽き粉−イヌリン混合物200gに水を34.5または35%添加することによって調製した。水を34%添加して対照生地(置換を行わなかった粗挽き小麦粉)を調製した。イヌリンを有する生地は対照よりもやや乾燥していたので、水の添加が結果として増加した。HAUSSLER製「Luna」パスタマシーンを使用してパスタ生地を調製した。生地作製時間は5分であった。幅9.5mmのダイを使用して幅広パスタを生産した。
【0237】
3)方法:
新たに押し出したパスタ片の一部は、マシーンから出た直後に三つの異なるゆで時間で処理した。第2の部分は、空気中で周囲条件で2日間放置して乾燥させた。ゆで試験について、各場合で3本のパスタ(生)を秤量し、沸騰水45mlを満たしたファルコン(50ml)に通した。パスタを約100℃で2、3または5分間ゆで、次いで一定時間ざるの上で水を切らせた。次いで、ゆで上がったパスタ片の重量を測定した。ゆでる前後のパスタ片の重量からパスタの膨潤を測定した。
【0238】
2日間乾燥したパスタ片を同様に、しかし5、10および15分間ゆでた。これらの場合、パスタの膨潤指数もまた測定した。次式を使用して膨潤指数を計算した:
膨潤指数=(ゆでた後の重量/ゆでる前の重量)
【0239】
4)結果:
イヌリンを補充したパスタ生地を調製するために水の添加を増やすと、それに対応してパスタ生地の収率が増加した。収率の増加は、商業上の点から好都合である。ゆで試験から、本発明のイヌリンを補充したパスタが、対照に比べておよびRaftiline HP(登録商標)を補充したパスタとも比べて、膨潤を明確に増加させるはずであることもまた確認することができる。この増加は5から20%である(表16参照)。
【0240】
【表17】

【0241】
9. ヨーグルトの生産
ヨーグルトのレシピを表17に挙げる。実施例1/表2のイヌリンに対応する本発明のイヌリン(超長鎖イヌリンVLCI)を表9、試験2の条件で噴霧乾燥し、そのイヌリンは平均重合度DPw86を有した。比較用の試料Beneo HP(登録商標)はDPw34を有した。他に示さない限り、全てのパーセントは総組成物に対する重量パーセントに関する。
【0242】
イヌリンおよび無脂乾燥乳の分散を容易にするために、乾燥した成分を一緒に混合し、次いでヨーグルトベースを作るために中程度に剪断しながらミルクに加えた。規格化したベースを4℃で3時間維持することによって無脂乾燥乳が完全に溶解できるようにした。各バッチを80℃で30分間低温殺菌し、44℃に急冷し、Yo−Flex88(ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)およびラクトバシルス・デルブリュエッキー(Lactobacillus delbrueckii)(Chr. Hansen Inc.製))を3.6g/l濃度で植菌した。ポットに発酵させたヨーグルト(カスタード風ヨーグルト)については、植菌したベースをインキュベーションする前に最終パックに注いだ。ベースミックスを44℃で4〜6時間、pH4.5に達するまでインキュベーションした(出発pHは約6.8)。ヨーグルトがpH4.5に達した場合には、カスタード風ヨーグルトの試料を4℃に冷却し、最大粘度に達するようにそこに48時間維持した。ヘリオパス(heliopath)アダプターを備えるブルックフィールド粘度計で粘度を測定した。
【0243】
表17に、ポットで発酵したヨーグルト(カスタード風)の結果を示す。本発明の噴霧乾燥イヌリン2.5%は、比較用の実施例からの4.5%イヌリンに比べて粘度の大きな増加をもたらす。本発明のイヌリンを有するヨーグルトもまた、高い脂肪分含量3.35%を有する比較用のヨーグルトよりも高い粘度を有する。
【0244】
【表18】

【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
83から98の平均重合度DPを有するイヌリン。
【請求項2】
85から95の平均重合度DPを有する、請求項1記載のイヌリン。
【請求項3】
全イヌリンモノマーに対して分岐度0.5から2.0mol%の2−1,6結合フルクトースモノマーを有する、請求項1または2記載のイヌリン。
【請求項4】
商DPw/DPnが1.25未満である、請求項1〜3のいずれか記載のイヌリン。
【請求項5】
商DPw/DPnが1.20未満である、請求項1〜3のいずれか記載のイヌリン。
【請求項6】
商DPw/DPnが1.15未満である、請求項1〜3のいずれか記載のイヌリン。
【請求項7】
グルコース含量が、総乾燥重量に対して2wt%未満である、請求項1〜6のいずれか記載のイヌリン。
【請求項8】
グルコース含量が、総乾燥重量に対して1wt%未満である、請求項1〜6のいずれか記載のイヌリン。
【請求項9】
フルクトース含量が、総乾燥重量に対して2.5wt%未満である、請求項1〜8のいずれか記載のイヌリン。
【請求項10】
フルクトース含量が、総乾燥重量に対して1.5wt%未満である、請求項1〜8のいずれか記載のイヌリン。
【請求項11】
噴霧乾燥されたイヌリンである、請求項1〜10のいずれか記載のイヌリン。
【請求項12】
平均径100〜250μmを有する粒子の形態である、請求項1〜11のいずれか記載のイヌリン。
【請求項13】
a)アーティチョークの根を粉砕し、
b)粉砕された該根を水で処理することにより抽出液を得、
c)得られた該抽出液から着色構成要素を除去し、
d)該抽出液からイヌリンを沈殿させ、
e)該イヌリンを少なくとも1回再沈殿させる、
イヌリンを得るためのプロセス。
【請求項14】
追加的な濾過段階を含む、請求項13記載のプロセス。
【請求項15】
i)植物抽出液にマグネシウムイオン(Mg2+)を混合すること、
ii)該植物抽出液に少なくとも一つのアルカリ成分を混合すること、
iii)沈殿を形成させることおよび
iv)形成した該沈殿を該植物抽出液から除去すること
により、着色構成要素が段階c)で除去される、請求項13または14記載のプロセス。
【請求項16】
マグネシウム塩が段階i)で混合される、請求項15記載のプロセス。
【請求項17】
マグネシウム塩が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、およびプロピオン酸マグネシウムから選択される、請求項16記載のプロセス。
【請求項18】
段階i)が60〜80℃の温度で実施される、請求項15〜17のいずれか記載のプロセス。
【請求項19】
OH-:Mg2+のモル比の設定が2.2:1〜1.8:1となるようにアルカリ成分の量が選択される、請求項15〜18のいずれか記載のプロセス。
【請求項20】
アルカリ成分がアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の水溶液または水性懸濁液である、請求項15〜19のいずれか記載のプロセス。
【請求項21】
アルカリ成分が水酸化カルシウムの懸濁液である、請求項15〜20のいずれか記載のプロセス。
【請求項22】
83から103の平均重合度DPを有するイヌリンを含む食料品。
【請求項23】
乳製品、ヨーグルト、アイスクリーム、ミルクベースのソフトアイス、ミルクベースの付け合わせ、プディング、ミルクセーキ、エッグカスタード、チーズ、栄養バー、エネルギーバー、朝食バー、菓子、ベーカリー製品、クラッカー、クッキー、ビスケット、シリアルチップ、スナック製品、アイスティー、果汁から作られたソフトアイス、ダイエット飲料、フィニッシュドドリンク、スポーツ飲料、スタミナ飲料、栄養補助用粉末飲料混合物、乳幼児用フード、カルシウム強化オレンジジュース、パン、クロワッサン、朝食用シリアル、麺類、スプレッド、無糖のビスケットおよびチョコレート、カルシウムチューズ、肉製品、マヨネーズ、サラダドレッシング、ナッツバター、冷凍食品、ソース、スープ、ならびに調理済み食品より選択される、請求項22記載の食料品。
【請求項24】
押し出し生成物である、請求項22または23記載の食料品。
【請求項25】
83から103の平均重合度DPを有するイヌリンを含む栄養補助食品。
【請求項26】
83から103の平均重合度DPを有するイヌリンを含む化粧用調製物。
【請求項27】
食品添加物としての、83から103の平均重合度DPを有するイヌリンの使用。
【請求項28】
プレバイオティク特性を有する添加物、テキスチャー付与剤、安定化剤、増粘剤および/または食物繊維としての請求項27記載のイヌリンの使用。
【請求項29】
食料品中の脂肪代替品または油代替品としての83から103の平均重合度DPを有するイヌリンの使用。
【請求項30】
化粧用調製物中の添加物としての83から103の平均重合度DPを有するイヌリンの使用。
【請求項31】
テキスチャー付与剤、安定化剤および/または増粘剤としての、請求項30記載のイヌリンの使用。
【請求項32】
83から103の平均重合度DPを有するイヌリンの水性ペースト。
【請求項33】
食料品または化粧用調製物中の構造付与構成要素、脂肪代替品、油代替品、テキスチャー付与剤、安定化剤および/または増粘剤としての、請求項32記載の水性ペーストの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−535438(P2009−535438A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507004(P2009−507004)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004029
【国際公開番号】WO2007/128560
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】