説明

路面切削装置

【課題】路面を切削する際に、熟練を要することなく容易に所望の位置を切削できるようにすると共に、生産性を向上させる。
【解決手段】路面切削装置1において、路面に形成された誘導目印10を検出してジェットノズル4をその誘導目印10に位置付け、砥粒が混入した加工水をジェットノズル4から噴出して切削を行う。誘導目印10にジェットノズル4が自動的に位置付けられるため、熟練した作業者がいなくても路面の所望の領域を容易に切削することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥粒が混入した加工水を噴出することにより路面を切削する路面切削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路に配水管等を設置したり補修したりする際には、通常、道路カッターを用いて施工すべき位置を切削して掘削を行っている。道路カッターは、円形での切削ブレードを備えており、切削水を供給しながら高速回転する切削ブレードを路面に切り込ませて施工位置を切削している(例えば特許文献1参照)。また、コンクリートの表層部を数mm〜数cm程度切る場合には、超高圧水の噴射により切削を行うウォータージェット切削装置も用いられている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−42504号公報
【特許文献2】特開2003−136490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、道路カッター及びウォータージェット切削装置は、オペレータによる操作によって切削すべき場所に位置合わせしなければならないため、取り扱いが難しく熟練を要すると共に、生産性が低いという問題がある。また、道路カッターは騒音が大きく、作業環境が悪いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、路面切削において、熟練を要することなく容易に所望の位置を切削できるようにすると共に、生産性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、路面を切削する路面切削装置に関するもので、砥粒が混入した加工水を貯留する加工水貯留タンクと、砥粒が混入した加工水に圧力を加える加圧手段と、加工水貯留タンクに連通し加工水を噴出するジェットノズルと、路面に形成された誘導目印を検出しジェットノズルを加工すべき位置に位置付ける位置合わせ手段とを備えている。
【0007】
誘導目印は、路面に付された誘導ラインであってもよいし、路面の表面に形成された模様であってもよい。
【0008】
位置合わせ手段は、路面を撮像する撮像部と、撮像部を支持して移動可能な可動部と、撮像部が誘導目印に沿って移動するように可動部を駆動する制御部とから構成されることが望ましい。
【0009】
上記路面切削装置は、自走車両に搭載することができる。その場合、可動部は、自走車両の進行方向に直交する方向に移動可能であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、路面に形成された誘導目印を検出し、その誘導目印にしたがってジェットノズルを加工すべき位置に位置付けて砥粒が混入した加工水を噴出することができるため、熟練した作業者がいなくても路面の所望の領域を容易に切削することができる。また、騒音も小さく、作業環境も良好である。
【0011】
誘導目印としては、路面に付された誘導ラインだけでなく、本来路面に形成されている模様を用いることもできるため、ラインを引く手間が省け、より生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示す路面切削装置1は、砥粒が混入した加工水を貯留する加工水貯留タンク2と、加工水貯留タンク2に貯留され砥粒が混入された加工水に圧力を加える加圧手段3と、加圧手段3によって加圧された加工水を路面に向けて噴出するジェットノズル4とを備えている。
【0013】
加圧手段3では、加工水貯留タンク2に貯留された砥粒が混入した加工水に対して例えば10[MPa]〜100[MPa]の圧力を加える。加工水貯留タンク2とジェットノズル4との間にはバルブ5が介在しており、加工水貯留タンク2からジェットノズル4に流れる加工水の流量を調整することができる。
【0014】
ジェットノズル4は、位置合わせ手段6によって加工すべき所望の位置に位置付けられる。位置合わせ手段6は、路面を撮像する撮像部7と、撮像部7を支持して移動可能な可動部8と、可動部8を駆動する制御部9とから構成されており、撮像部7によって取得した画像に基づき、切削位置の目印となる誘導目印を制御部9が検出して可動部8の位置を制御する。
【0015】
撮像部7は、路面を撮像して取得した画像を制御部9に転送する。制御部9では、画像のマッチング処理によって、作業者等によって路面に付された誘導目印である誘導ライン10を検出する。そして、制御部9は、撮像部7が常に誘導ライン10を撮像できるように、すなわち撮像部7が誘導ライン10に沿ってその上方を移動するように、可動部8を駆動する。図1の例における誘導ライン10は、X軸方向に形成されており、路面切削装置1は、全体としてX軸方向に移動可能である。
【0016】
可動部8は、螺合部80がX軸方向に直交するY軸方向に配設された送りネジ11に螺合し、送りネジ11の先端にはパルスモータ12が連結されており、パルスモータ12に駆動されて送りネジ11が回動するのに伴い、可動部8がY軸方向に移動する構成となっている。
【0017】
ジェットノズル4は可動部8に固定されており、ジェットノズル4と撮像部7とは一定の位置関係にある。図示の例では、ジェットノズル4と撮像部7とがX軸方向に一直線上に位置する構成となっている。したがって、撮像部7が誘導ライン10に沿って移動すれば、ジェットノズル4もそれに追随する。また、撮像部7は表示部13に接続されており、撮像部7によって取得された画像は、表示部13に表示させることができる。
【0018】
図2に示すように、路面切削装置1は、自走車両14に搭載することができる。図2の例における自走車両14の進行方向はX軸方向であり、誘導ライン10も、自走車両14の進行方向であるX軸方向に形成されている。この場合は、X軸方向に直交するY軸方向に可動部8が移動可能である。なお、表示部13は、自走車両14のドライバー席に設置される。
【0019】
路面上に誘導目印として誘導ライン10がX軸方向に形成され、その誘導ライン10を切削する場合は、切削前に、撮像部7が路面を撮像し、誘導ライン10を含む領域の画像を、図1に示した制御部9のメモリ等の記憶素子に記憶させておく。
【0020】
そして、実際の切削時には、制御部9による制御の下で可動部8をY軸方向に移動させながら撮像部7が路面を撮像し、撮像部7によって取得された画像と予め記憶された画像とのマッチングを制御部9において行うことにより、誘導ライン10を検出する。そして、画像がマッチングした状態を維持しながら自走車両14がX軸方向に移動すれば、撮像部7が誘導ライン10に沿ってその上方を移動する。
【0021】
図1における表示部13の表示画面に示すように、撮像部7のレンズには位置合わせ基準線70が形成されており、この位置合わせ基準線70のX軸方向の延長線上にジェットノズル4が位置しているため、撮像部7が誘導ライン10に沿って移動すれば、ジェットノズル4も撮像部7に追随し、ジェットノズル4も誘導ライン10に沿ってその上方を移動する。したがって、ジェットノズル4から砥粒が混入した加工水を噴出すれば、誘導ライン10を切削することができる。このように、ジェットノズル4が自動的に誘導ライン4に位置付けられるため、熟練した技術者が不要であり、生産性も向上する。
【0022】
なお、路面に誘導ライン10が付されていない場合でも、路面から認識できる模様、例えば舗装された道路に埋め込まれた砂利のうち道路の表面に露出したものを検出し、その砂利を誘導目印として、路面を直線状に切削することもできる。
【0023】
例えば、図3に示すように、撮像部7により取得され表示部13に表示された画像中において、特徴的な形状を有する砂利15を誘導目印として自動的に選出し、その画像を制御部9が有するメモリ等の記憶素子に記憶させると共に、砂利15のY座標を求めて制御部9に記憶させる。
【0024】
図2に示した自走車両14をY軸方向に直交するX軸方向に移動させて路面をX軸方向に切削を行う場合は、撮像部7によって取得され自走車両14の移動により時々刻々変化する画像から砂利15を常時抽出し、画像上における砂利15の軌道がX軸方向に一致するようにすれば、撮像部7がX軸方向に直線状に移動し、ジェットノズル4もX軸方向に移動することとなるため、X軸方向に切削を行うことができる。具体的には、自走車両14が移動しても砂利15のY座標の値が変化しないようにすれば、砂利15の軌道がX軸方向に一致するようになり、路面をX軸方向に正確に切削することができる。
【0025】
自走車両14がX軸方向に移動することによって、いずれは砂利15が画像から消えることになるが、図4に示すように、砂利15が画像から消える前に、新たに特徴的形状を有する砂利16を誘導目印として選出し、上記と同様の処理を行えば、X軸方向に切削を続行することができる。このような処理を繰り返し行えば、X軸方向の切削を連続して行うことができる。
【0026】
このように、路面に誘導ラインが引かれていない場合であっても、所望の方向に正確に切削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】路面切削装置の一例を示す斜視図である。
【図2】路面切削装置が自走車両に搭載された例を示す斜視図である。
【図3】誘導目印が表示された表示画面の第一の例を示す説明図である。
【図4】誘導目印が表示された表示画面の第二の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1:路面切削装置
2:加工水貯留タンク 3:加圧手段 4:ジェットノズル 5:バルブ
6:位置合わせ手段
7:撮像部
70:位置合わせ基準線
8:可動部
80:螺合部
9:制御部
10:誘導ライン
11:ボールネジ 12:パルスモータ 13:表示部
14:自走車両
15、16:砂利

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を切削する路面切削装置であって、
砥粒が混入した加工水を貯留する加工水貯留タンクと、
該砥粒が混入した加工水に圧力を加える加圧手段と、
該加工水貯留タンクに連通し加工水を噴出するジェットノズルと、
路面に形成された誘導目印を検出し該ジェットノズルを加工すべき位置に位置付ける位置合わせ手段と
を備えた路面切削装置。
【請求項2】
前記誘導目印は、路面に付された誘導ライン、または路面の表面に形成された模様である請求項1に記載の路面切削装置。
【請求項3】
前記位置合わせ手段は、路面を撮像する撮像部と、該撮像部を支持して移動可能な可動部と、該撮像部が前記誘導目印に沿って移動するように該可動部を駆動する制御部とから構成される請求項1または2に記載の路面切削装置。
【請求項4】
自走車両に搭載された請求項1、2または3に記載の路面切削装置。
【請求項5】
前記可動部は、前記自走車両の進行方向に直交する方向に移動可能である請求項4に記載の路面切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−113347(P2007−113347A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308409(P2005−308409)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】