説明

車両およびその制御方法

【課題】二次電池の温度が低温であると共に二次電池の充電に許容される最大パワーが小さいときに、二次電池が過大な電力で充電されるのをより迅速に抑制する。
【解決手段】低温低入力制限条件が成立していて要求パワーPe*が判定用パワーPref未満であるときには(ステップS130,S150)、EEPROMに記憶されている補正量ΔTHで基本開度THbを補正したスロットル開度でエンジン22を運転させ(ステップS180〜S240)、その後、エンジンから出力されるパワーが要求パワーPe*に近づくようスロットルバルブの開度の補正量ΔTHを設定してEEPROMに記憶させる(ステップS250〜S280)。これにより、より迅速にバッテリが過大な電力で充電されるのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両およびその制御方法に関し、詳しくは、内燃機関が搭載された車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、エンジンと、第1モータと、キャリアがエンジンのクランクシャフトに接続されサンギヤが第1モータの回転軸に接続されリングギヤが車軸に連結された駆動軸に接続された遊星歯車機構と、回転軸が駆動軸に接続された第2モータと、第1モータおよび第2モータと電力をやりとりするバッテリと、を備え、バッテリの温度が所定の極低温域内にありバッテリに許容される最大充電電力である入力制限が比較的小さいときにはエンジンが出力すべき要求パワーと略一致した出力パワーがエンジンから出力されるようエンジンのスロットル開度をフィードバック制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、上述の制御を行なうことにより、エンジンから要求パワーを超えるパワーが出力されてバッテリが入力制限を超える電力で充電されるのを抑制できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−327270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の車両では、バッテリの温度が所定の極低温領域の近傍にあるときには、バッテリの温度が一旦所定の極低温域外となった後に再び所定の極低温域内に戻り、フィードバック制御を行なっていない状態からフィードバック制御を行なう状態へ移行することがある。このように制御が移行した直後にエンジンから出力されるパワーを要求パワーと略一致させようとすると、実際にエンジンから出力されるパワーが要求パワーに略一致して制御が安定するまでに比較的長い時間を要することがあるため、より迅速に制御を安定させてバッテリが過大な電力で充電されるのを抑制することが望ましい。
【0005】
本発明の車両およびその制御方法は、二次電池の温度が低温であると共に二次電池の充電に許容される最大パワーが小さいときに、二次電池が過大な電力で充電されるのをより迅速に抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の車両は、
内燃機関が搭載された車両であって、
動力を入出力可能な発電機と、
前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との3軸に接続され、該3軸のうちいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、
前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、
前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、
前記駆動軸に要求される要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定する目標パワー設定手段と、
前記二次電池の温度が予め設定された所定温度未満であると共に前記二次電池の充電に許容される最大パワーとしての入力制限が予め設定された所定パワー未満である低温低入力制限時でないときには前記設定された目標パワーに対応する前記内燃機関のスロットル開度である基本スロットル開度により前記内燃機関を運転しながら前記要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する通常制御を実行し、前記低温低入力制限時には前記内燃機関から出力されるパワーが前記設定された目標パワーに近づくよう前記基本スロットル開度を補正するための補正量である開度補正量により前記基本スロットル開度を補正したスロットル開度で前記内燃機関を運転しながら前記要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する開度補正制御を実行する制御手段と、
前記開度補正制御が実行されたときには、前記内燃機関から出力されるパワーと前記設定された目標パワーとに基づいて前記開度補正量を学習する開度補正量学習手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の車両では、二次電池の温度が予め設定された所定温度未満であると共に二次電池の充電に許容される最大パワーとしての入力制限が予め設定された所定パワー未満である低温低入力制限時でないときには設定された目標パワーに対応する内燃機関のスロットル開度である基本スロットル開度により内燃機関を運転しながら要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する通常制御を実行する。そして、低温低入力制限時には内燃機関から出力されるパワーが設定された目標パワーに近づくよう基本スロットル開度を補正するための補正量である開度補正量により基本スロットル開度を補正したスロットル開度で内燃機関を運転しながら要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する開度補正制御を実行し、開度補正制御が実行されたときには、内燃機関から出力されるパワーと設定された目標パワーとに基づいて開度補正量を学習する。低温低入力制限時には、開度補正制御が実行されたときに学習された開度補正量を用いて基本スロットル開度を補正して内燃機関を制御することにより、低温低入力制限時でない状態から低温低入力制限時に移行した直後でも、より迅速に内燃機関から出力されているパワーを目標パワーに近づけて制御を安定させることができる。この結果、低温低入力制限時に、より迅速に二次電池が過大な電力で充電されるのを抑制することができる。
【0009】
こうした本発明の車両において、前記制御手段は、前記低温低入力制限時でも前記設定された目標パワーが予め設定された所定パワー以上であるときには、前記通常制御を実行する手段であるものとすることもできる。低温低入力制限時には、低温により内燃機関の吸入空気量の空気密度が高くなっていて内燃機関から過剰なパワーが出やすい状態であるため、開度補正量はスロットル開度を小さくして内燃機関から出力されるパワーを小さくする方向となる機会が多いと考えられる。そのため、目標パワーが所定パワー以上のときに開度補正制御を実行するとパワーの出力要求に対応できなくなる場合がある。したがって、低温低入力制限時でも目標パワーが所定パワー以上であるときには、通常制御を実行することにより、より適正にパワーの出力要求に対応することができる。この場合において、前記制御手段は、前記低温低入力制限時で前記設定された目標パワーが前記所定パワー未満である状態から前記低温低入力制限時でないが前記設定された目標パワーが前記所定パワー未満である状態となったとき、前記設定された目標パワーが前記所定パワー以上となるまでは前記開度補正制御を実行する手段であり、前記開度補正量学習手段は、前記低温低入力制限時に前記開度補正制御を実行したときには、前記開度補正量を学習する手段であるものとすることもできる。こうすれば、低温低入力制限時でないが目標パワーが所定パワー未満の状態となった後に再び低温低入力制限時低温時となったときでも、スロットル開度の急変を抑制することができ、スロットル開度の急変によるショックの発生を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の車両において、アクセル操作量が前記車軸に大きなトルクの出力が要求されていることが推定されるアクセル操作量として予め設定された所定操作量未満であるときには前記内燃機関の回転数とトルクとに課される制約として予め設定された第1の動作ラインと前記設定された目標パワーとを用いて前記内燃機関の目標回転数と目標トルクとからなる目標運転ポイントを設定し、前記アクセル操作量が前記所定操作量以上であるときには前記内燃機関の回転数とトルクとに課される制約として前記第1の動作ラインよりトルクが大きくなるよう予め設定された第2の動作ラインと前記設定された目標パワーとを用いて前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段を備え、前記基本開度は、前記内燃機関を前記設定された目標運転ポイントで運転する際のスロットル開度であり、前記制御手段は、前記低温低入力制限時でも前記アクセル操作量が前記所定操作量以上であるときには、前記通常制御を実行する手段であるものとすることもできる。低温低入力制限時には、上述したように、開度補正量はスロットル開度を小さくして内燃機関から出力されるパワーを小さくする方向となる機会が多いと考えられる。そのため、アクセル操作量が所定操作量以上であるとき、すなわち、比較的大きなトルクの出力が車軸に要求されているときに開度補正制御を実行するとトルクの出力要求に対応できなくなる。したがって、低温低入力制限時でもアクセル操作量が所定操作量以上であるときには、通常制御を実行することにより、より適正にパワーの出力要求に対応することができる。この場合において、前記制御手段は、前記低温低入力制限時で前記アクセル操作量が前記所定操作量未満である状態から前記低温低入力制限時でないが前記アクセル操作量が前記所定操作量未満の状態となったとき、前記アクセル操作量が前記所定操作量以上となるまでは前記開度補正制御を実行する手段であり、前記開度補正量学習手段は、前記低温低入力制限時に前記開度補正制御を実行したときには、前記開度補正量を学習する手段であるものとすることもできる。こうすれば、低温低入力制限時でないがアクセル操作量が所定操作量未満の状態となった後に再び低温低入力制限時となったときでも、スロットル開度の急変を抑制することができ、スロットル開度の急変によるショックの発生を抑制することができる。
【0011】
本発明の車両の制御方法は、
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との3軸に接続され該3軸のうちいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備える車両の制御方法であって、
前記駆動軸に要求される要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、
前記二次電池の温度が予め設定された所定温度未満であると共に前記二次電池の充電に許容される最大パワーとしての入力制限が予め設定された所定パワー未満である低温低入力制限時でないときには前記設定された目標パワーに対応する前記内燃機関のスロットル開度である基本スロットル開度により前記内燃機関を運転しながら前記要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する通常制御を実行し、前記低温低入力制限時には前記内燃機関から出力されるパワーが前記設定された目標パワーに近づくよう前記基本スロットル開度を補正するための補正量である開度補正量により前記基本スロットル開度を補正したスロットル開度で前記内燃機関を運転しながら前記要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、
前記開度補正制御が実行されたときには、前記内燃機関から出力されるパワーと前記設定された目標パワーとに基づいて前記開度補正量を学習する
ことを要旨とする。
【0012】
この本発明の車両の制御方法では、二次電池の温度が予め設定された所定温度未満であると共に二次電池の充電に許容される最大パワーとしての入力制限が予め設定された所定パワー未満である低温低入力制限時でないときには設定された目標パワーに対応する内燃機関のスロットル開度である基本スロットル開度により内燃機関を運転しながら要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する通常制御を実行する。そして、低温低入力制限時には内燃機関から出力されるパワーが設定された目標パワーに近づくよう基本スロットル開度を補正するための補正量である開度補正量により基本スロットル開度を補正したスロットル開度で内燃機関を運転しながら要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する開度補正制御を実行し、開度補正制御が実行されたときには、内燃機関から出力されるパワーと設定された目標パワーとに基づいて開度補正量を学習する。低温低入力制限時には、開度補正制御が実行されたときに学習された開度補正量を用いて基本スロットル開度を補正して内燃機関を制御することにより、低温低入力制限時でない状態から低温低入力制限時に移行した直後でも、より迅速に内燃機関から出力されているパワーを目標パワーに近づけて制御を安定させることができる。この結果、低温低入力制限時に、より迅速に二次電池が過大な電力で充電されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】バッテリ50における電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。
【図4】バッテリ50の残容量SOCと入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図5】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図7】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図8】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図9】変形例のエンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図10】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0016】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化装置(三元触媒)134を介して外気へ排出される。
【0017】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室内に取り付けられた圧力センサ143からの筒内圧力,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,空燃比センサ135aからの空燃比,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124の開度を調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、すなわち、エンジン22の回転数Neも演算している。
【0018】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0019】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0020】
バッテリ50は、リチウムイオン二次電池により構成され、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいてバッテリが満充電であるときの蓄電量に対するバッテリに蓄電されている蓄電量の割合としての残容量SOCを演算したり、演算した残容量SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。図3に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図4にバッテリ50の残容量SOCと入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。図3に示すように、入出力制限Win,Woutの基本値の絶対値|Win|,|Wout|は、バッテリ50の特性を考慮して、電池温度Tbが0℃未満では電池温度Tbが低くなるほど小さくなる傾向に設定されるものとした。
【0021】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、データの書き込みと消去が可能なEEPROM78と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、後述する駆動制御ルーチンで設定されるスロットル開度THの補正量ΔTHをEEPROM78に記憶している。
【0022】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を計算し、この要求トルクTr*に対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力をエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0023】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、バッテリ50の温度が低いためにバッテリ50の入力制限Winの絶対値|Win|が小さい場合にエンジン22を運転する際の動作について説明する。図5はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0024】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0025】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図6に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めることができる。
【0026】
続いて、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS120)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図7に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0027】
続いて、バッテリ50の入力制限Winの絶対値|Win|が所定値Wref(例えば、0.9kW,1.0kW,1.1kWなど)未満であると共にバッテリ50の電池温度Tbが予め設定された所定温度Tbref(例えば、−30℃,−25℃,−20℃など)未満である低温低入力制限条件が成立しているか否かを調べたり(ステップS130)、基本開度THbを補正したものを目標スロットル開度TH*に設定したか否かを示す補正実行フラグFの値を調べたり(ステップS140)、要求パワーPe*とエンジン22に走行用の比較的大きいパワーの出力が要求されていると推定されるパワーの下限値である判定用パワーPref(例えば、5kW,10kW,15kWなど)とを比較する(ステップS150)。ここで、補正実行フラグFは、後述するステップS160の処理で基本開度THbをそのまま目標スロットル開度TH*に設定したときには値0に設定され、後述するステップS180の処理で基本開度THbを補正したものを目標スロットル開度TH*に設定したときには値1に設定されるフラグであり、初期値として値0が設定されているものした。
【0028】
低温低入力制限条件が成立していない状態で補正実行フラグFが値0であるときには(ステップS130,S140)、バッテリ50の温度が十分高かったり入力制限Winの絶対値|Win|が十分大きくエンジン22から多少過剰なパワーが出力されても差し支えなく、直前のルーチンで基本開度THbを補正したものを目標スロットル開度TH*に設定していないため後述するスロットル開度の急変が生じることがないと判断して、設定した目標回転数Ne*および目標トルクTe*に基づいて設定されるスロットルバルブ124の開度の基本値である基本開度THbを目標スロットル開度TH*に設定し(ステップS160)、基本開度THbを補正したものを目標スロットル開度TH*に設定したか否かを示す補正実行フラグFに値0を設定する(ステップS170)。基本開度THbは、目標回転数Ne*,目標トルクTe*でエンジン22を運転する際にエンジン22を効率よく運転可能なスロットルバルブ124の開度と目標回転数Ne*と目標トルクTe*との関係を基本開度設定用マップとしてROM74に記憶しておき、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とが与えられると記憶したマップから対応するスロットルバルブ124の開度を導出して設定するものとした。基本開度設定用マップでは、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*が大きくなるほど大きくなる傾向にスロットルバルブ124の開度を設定するものとした。
【0029】
次に、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS200)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図8に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0030】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0031】
続いて、要求トルクTr*に設定したトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(3)により計算すると共に(ステップS210)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(4)および式(5)により計算すると共に(ステップS220)、設定した仮トルクTm2tmpを式(6)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS230)。ここで、式(3)は、図8の共線図から容易に導くことができる。
【0032】
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (3)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (5)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (6)
【0033】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,目標スロットル開度TH*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*,目標スロットル開度TH*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS240)、続いて、低温低入力制限条件が成立しているか否かを調べたり(ステップS250)、要求パワーPe*と判定用パワーPrefとを比較し(ステップS260)、低温低入力制限条件が成立していなかったり、要求パワーPe*が判定用パワーPe*以上であるときには、そのまま駆動制御ルーチンを終了する。今、低温低入力制限条件が成立しておらず補正実行フラグFが値0であるときを考えているから、駆動制御ルーチンを終了することになる。ステップS240で目標回転数Ne*,目標トルクTe*,目標スロットル開度TH*を受信したエンジンECU24は、スロットルバルブ124の開度については設定された目標スロットル開度TH*になるようスロットルモータ136を駆動制御すると共に目標スロットル開度TH*に対応する燃料噴射量で燃料噴射制御を行ない、燃料噴射制御以外の点火制御など各種制御についてはエンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるよう実行される。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、低温低入力制限条件が成立しておらず補正実行フラグFが値0であるときには、目標スロットル開度TH*(基本開度THb)でエンジン22を負荷運転しながら、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0034】
低温低入力制限条件が成立しているときには(ステップS130)、バッテリ50の入力制限Winが低温のため小さくなっていて、エンジン22から要求パワーPe*を出力しようとして目標スロットル開度TH*に基本開度THbを設定してエンジン22を負荷運転させると低温で空気密度が高いためエンジン22から過剰なパワーが出力されてしまうと判断して、さらに、要求パワーPe*と判定用パワーPrefとを比較する(ステップS150)。ここで、要求パワーPe*と判定用パワーPrefとを比較するのは、後述するように基本開度THbを補正量ΔTHで補正すると基本開度THbを小さくする方向に補正してしまうため、要求パワーPe*が判定用パワーPref以上であるときに基本開度THbを補正量ΔTHで補正するとパワーの出力要求に対応することができないためである。要求パワーPe*が判定用パワーPref未満であるときには、パワーの出力要求が小さいと判断して、設定した目標回転数Ne*および目標トルクTe*に基づいて設定される上述の基本開度THbと後述するステップS280の処理で設定されてEEPROM78に記憶されている補正量ΔTHとに基づいて次式(7)によりスロットルバルブ124の目標スロットル開度TH*を設定して(ステップS180)、補正実行フラグFに値1を設定する(ステップS190)。
【0035】
TH*=THb(Ne*,Te*)-ΔTH (7)
【0036】
こうして目標スロットル開度TH*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いてモータMG1の目標回転数Nm1*とモータMG1のトルク指令Tm1*を計算し(ステップS200)、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて仮トルクTm2tmpを計算し(ステップS210)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*とモータMG2の回転数Nm2とを用いてトルク制限Tm2min,Tm2maxを計算すると共に(ステップS220)、設定した仮トルクTm2tmpをトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS230)、設定したエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,目標スロットル開度TH*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をそれぞれエンジンECU24やモータECU40に送信する(ステップS240)。これにより、低温低入力制限条件が成立していて要求パワーPe*が判定用パワーPref未満であるときには、基本開度THbを補正量ΔTHで補正した目標スロットル開度TH*でエンジン22を負荷運転しながら、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0037】
続いて、低温低入力制限条件が成立しているか否かを調べたり(ステップS250)、要求パワーPe*と判定用パワーPrefとを比較する(ステップS260)。今、低温低入力制限条件が成立していて要求パワーPe*が判定用パワーPref未満であるときを考えているが、こうした場合には、モータMG1のトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(8)によりエンジン22から実際に出力されている実エンジントルクTrealを計算し(ステップS270)、計算した実エンジントルクTrealと設定された目標トルクTe*とEEPROM78に記憶されている補正量ΔTHとに基づいて次式(9)により基本開度THbを補正するための補正量ΔTHを設定すると共に設定した補正量ΔTHをEEPROM78に記憶させて(ステップS280)、駆動制御ルーチンを終了する。式(8)は、図8の共線図を用いれば容易に導くことができる。式(9)中、右辺第1項の「kth」は、ゲインとして予め実験や解析などにより導出したものを用いるものとした。これにより、エンジン22の実エンジントルクTrealを目標トルクTe*に近づけるよう基本開度THbを補正する補正量として補正量ΔTHが設定されてEEPROM78に記憶されることになる。低温低入力制限条件が成立しているときには、低温のため空気密度が高くエンジン22からは過剰なパワーが出やすい傾向にあるため、補正量ΔTHは、基本開度THbを小さくする方向の補正量として設定される機会が多いと考えられる。上述したステップS180の処理では、EEPROM78に記憶された補正量ΔTHを用いて目標スロットル開度TH*を設定するから、目標スロットル開度TH*はエンジン22から出力されるトルクが目標トルクTe*に近づくよう設定される。エンジン22のトルクにエンジン22の回転数Neを乗じたものがエンジン22から出力されるパワーであるから、目標スロットル開度TH*はエンジン22から実際に出力されるパワーが要求パワーPe*に近づくよう設定される。こうして、低温低入力制限条件が成立していて要求パワーPe*が判定用パワーPref未満であるときには、基本開度THbをEEPROM78に記憶されている補正量ΔTHで補正した目標スロットル開度TH*でエンジン22を負荷運転することにより、エンジン22から実際に出力されるパワーを要求パワーPe*に近づけることができ、バッテリ50が過大な電力で充電されるのを抑制することができる。
【0038】
Treal=(1+ρ)・Tm1*/ρ (8)
ΔTH=ΔTH+ kth・(Treal-Te*) (9)
【0039】
ここで、例えば、要求パワーPe*が判定用パワーPref未満である場合に、低温低入力制限条件が成立しておらず補正実行フラグFが値0である状態から低温低入力制限条件が成立した直後など、基本開度THbを補正せずにそのまま目標スロットル開度TH*として設定している状態から基本開度THbを補正して目標スロットル開度TH*を設定する状態へ移行した直後を考える。この場合、まず、ステップS180の処理が実行されてEEPROM78に記憶されている補正量ΔTHを用いて目標スロットル開度TH*が設定される。EEPROM78に記憶されている補正量ΔTHは、低温低入力制限条件が成立していて要求パワーPe*が所定未満であるときにエンジン22から出力されるパワーを要求パワーPe*に近づけるよう基本開度THbを補正する補正量として設定されている。こうしたEEPROM78に記憶されている補正量ΔTHを用いて目標スロットル開度TH*を設定することにより、EEPROM78に記憶されている補正量ΔTHを用いずに低温低入力制限条件が成立してから初めて計算した補正量ΔTHを用いるものに比して、迅速にエンジン22から出力されるパワーを要求パワーPe*に略一致させる目標スロットル開度TH*を設定することができ、より迅速にエンジン22から出力されているパワーを要求パワーPe*に近づけることができる。このように、低温低入力制限条件が成立していて要求パワーPe*が判定用パワーPref未満であるときには、基本開度THbをEEPROM78に記憶されている補正量ΔTHで補正した目標スロットル開度TH*でエンジン22を負荷運転するから、より迅速にエンジン22から出力されているパワーを要求パワーPe*に近づけることができ、バッテリ50が過大な電力で充電されるのをより迅速に抑制することができる。
【0040】
低温低入力制限条件が成立していないが補正実行フラグFが値1であり要求パワーPe*が判定用パワーPref未満であるときには(ステップS130〜S150)、すなわち、パワーの出力要求が小さく直前に実行されたルーチンで基本開度THbを補正量ΔTHで補正したものが目標スロットル開度TH*として設定されている状態で低温低入力制限条件が成立しなくなったときには、基本開度THbをEEPROM78に記憶されている補正量ΔTHで補正したものを目標スロットル開度TH*に設定すると共に補正実行フラグFに値1を設定して(ステップS180,S190)、ステップS200以降の処理を実行して、駆動制御ルーチンを終了する。今、低温低入力制限条件が成立していないときを考えているから、補正量ΔTHの設定やEEPROM78への補正量ΔTHの記憶を行なわずに(ステップS250〜S280)、駆動制御ルーチンを終了する。ステップS180の処理で、EEPROM78に記憶されている補正量ΔTHを用いて目標スロットル開度TH*を設定するのは、以下の理由に基づく。低温低入力制限条件が成立している状態から低温低入力制限条件が成立しない状態に移行した場合、再び低温低入力制限条件が成立する可能性がある。このとき、基本開度THbをそのまま目標スロットル開度TH*に設定すると、低温低入力制限条件が成立して基本開度THbを補正量ΔTHで補正したときに目標スロットル開度TH*が急変し、スロットル開度が急変してトルクショックが生じることがある。こうしたトルクショックの発生を抑制するために、基本開度THbを補正量ΔTHで補正したものを目標スロットル開度TH*として設定するのである。こうした制御により、再び低温低入力制限条件が成立しても、スロットル開度の急変を抑制することができ、スロットル開度の急変によるトルクショックを抑制することができる。
【0041】
低温低入力制限条件が成立していないが補正実行フラグFが値1であるときに要求パワーPe*が判定用パワーPref以上となったときや低温低入力制限条件が成立しているときに要求パワーPe*が判定用パワーPref以上となったときには(ステップS130〜S150)、エンジン22から比較的大きなパワーの出力が要求されているため基本開度THbを補正量ΔTHで補正したものを目標スロットル開度TH*として設定するとパワーの出力要求に対応することができなくなると判断して、基本開度THbをそのまま目標スロットル開度TH*に設定すると共に補正実行フラグFに値0を設定して(ステップS160,S170)、ステップS200以降の処理を実行して、駆動制御ルーチンを終了する。今、低温低入力制限条件が成立していないときを考えているから、補正量ΔTHの設定やEEPROM78への補正量ΔTHの記憶を行なわずに(ステップS250〜S280)、駆動制御ルーチンを終了する。こうした制御により低温低入力制限条件が成立していないが補正実行フラグFが値1であるときに要求パワーPe*が判定用パワーPref以上となったときには、基本開度THbをそのまま目標スロットル開度TH*に設定してエンジン22を負荷運転するから、エンジン22のパワーの出力要求に適正に対応することができる。
【0042】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、低温低入力制限条件が成立していて要求パワーPe*が判定用パワーPref未満であるときには、EEPROM78に記憶されている補正量ΔTHで基本開度THbを補正したスロットル開度でエンジン22を負荷運転させた後、エンジン22から出力されるパワーが要求パワーPe*に近づくようスロットルバルブ124の開度の補正量ΔTHを設定してEEPROM78に記憶させることにより、低温低入力制限条件が成立しているときにより迅速にバッテリ50が過大な電力で充電されるのを抑制することができる。また、低温低入力制限条件が成立しているときに要求パワーPe*が判定用パワーPref以上となったときには、基本開度THbをそのまま目標スロットル開度TH*に設定してエンジン22を負荷運転させるから、より適正にパワーの出力要求に対応することができる。さらに、低温低入力制限条件が成立していて要求パワーPe*が判定用パワーPref未満である状態から低温低入力制限条件が成立しておらず要求パワーPe*が判定用パワーPref未満である状態となったときには、EEPROM78に記憶されている補正量ΔTHで基本開度THbを補正したスロットル開度でエンジン22を負荷運転させるから、再び低温低入力制限条件が成立したときでもスロットル開度の急変を抑制することができ、トルクショックを抑制できる。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、低温低入力制限条件が成立していて要求パワーPe*が判定用パワーPref未満であるときには、基本開度THbを補正量ΔTHで補正して目標スロットル開度TH*を設定すると共に補正量ΔTHの設定とEEPROM78への記憶するものとしたが、要求パワーPe*と判定用パワーPrefとを比較することなく低温低入力制限条件が成立しているか否かを判定して、低温低入力制限条件が成立しているときには基本開度THbを補正量ΔTHで補正して目標スロットル開度TH*を設定すると共に補正量ΔTHの設定とEEPROM78への記憶とを実行し、低温低入力制限条件が成立していないときには補正量ΔTHの設定とEEPROM78への記憶とを実行せずに基本開度THbをそのまま目標スロットル開度TH*を設定するものとしてもよい。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS130の処理で、低温低入力制限条件を調べるものとしたが、低温低入力制限条件に加えて、バッテリ50の残容量(SOC)がバッテリ50の充電が要求される残容量(SOC)の上限である充電要求残容量(例えば、10%,20%,30%など)未満である条件およびエンジン22の吸気管に取り付けられた温度センサ149により検出される吸気温Taが所定吸気温(例えば、0℃,5℃,10℃など)未満である条件の2つのうち少なくとも1つの条件が成立した否かを調べ、バッテリ50の残容量(SOC)がバッテリ50の充電が充電要求残容量未満であるときや吸気温Taが所定吸気温未満であるときにステップS150の処理に進み、バッテリ50の残容量(SOC)がバッテリ50の充電が充電要求残容量以上であるときや吸気温Taが所定吸気温以上であるときにステップS140の処理に進むものとしてもよい。なお、この場合、所定吸気温は、エンジン22から設定された要求パワーPe*が出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2を制御したときに、エンジン22から設定された目標パワーを超える動力が出力されると推定される吸気温の上限として設定されるものを用いるものとする。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS150,S260の判定を行なうものとしたが、ステップS150,S260の判定と共に、または、ステップS150,S260の判定に代えて、入力したアクセル開度Accと運転者が比較的大きいトルクを要求していると推定されるアクセル開度の下限として予め設定された所定開度Aref(例えば、アクセル開度Accの全開値を100%としたときに70%,80%,90%など)とを比較するものとしてもよい。この場合、アクセル開度Accが所定開度Aref以上である高トルク要求時であるときには基本開度THbをそのまま目標スロットル開度TH*として設定して(ステップS160)、ステップS170,S200〜S240の処理を実行し、補正量ΔTHの設定とEEPROM78への記憶(ステップS270,S280)を行なわずに駆動制御ルーチンを終了し、高トルク要求時でないときには、基本開度THbを補正量ΔTHで補正したものを目標スロットル開度TH*として設定して(ステップS180)、ステップS190〜S240の処理を実行して、補正量ΔTHの設定とEEPROM78への記憶を行なって(ステップS250〜S280)、駆動制御ルーチンを終了するものとする。高トルク要求時であるときに基本開度THbをそのまま目標スロットル開度TH*に設定するのは、上述したように補正量ΔTHがエンジン22から実際に出力されるパワーを小さくする方向の補正量ΔTHとして設定される機会が多く、基本開度THbを補正量ΔTHで補正したものを目標スロットル開度TH*として設定すると運転者の要求(ここでは、高トルク要求)に対応することができなくなるからである。こうした制御により、高トルク要求時には、エンジン22から比較的大きなトルクを出力して走行することができる。そして、補正量ΔTHによる補正を行なわずに基本開度THbをそのまま目標スロットル開度TH*に設定することにより、補正量ΔTHによる補正を行なう場合に比してより適正に走行要求に対応することができる。なお、高トルク要求時であるときには、エンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*として、ステップS120の処理で設定されるものに代えて、図7の動作ラインよりトルクが高く設定される図9に例示するトルク優先動作ラインと要求パワーPe*とを用いて設定される目標回転数Ne*,目標トルクTe*を用いるものとする。図中、トルク優先動作ラインを一点鎖線で示し、要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線を破線で示し、比較のため、図7の動作ラインを効率優先動作ラインとして実線で示した。
【0046】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22に要求されるパワーが下限値Pmin未満であるときなどエンジン22を自立運転する際には、基本開度THbを補正量ΔTHで補正すると却ってエンジン22の運転が不安定になることが考えられるため、基本開度THbを補正量ΔTHで補正せずにそのまま目標スロットル開度TH*として設定するものとしてもよい。
【0047】
実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50がリチウムイオン二次電池により構成されるものとしたが、例えば、ニッケル水素二次電池など、他の種類の二次電池により構成されるものとしてもよい。
【0048】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図10の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図10における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0049】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の列車などの車両の形態としても構わない。さらに、こうした車両の制御方法の形態としてもよい。
【0050】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、要求トルクTr*を用いてエンジン22に要求される要求パワーPe*を設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS110の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「目標パワー設定手段」に相当し、低温低入力制限条件が成立していないときにはエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づく基本開度THbを目標スロットル開度TH*として設定すると共に要求トルクTr*で走行するようトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して設定値をエンジンECU24やモータECU40に送信するステップS120、S130,S160,S170,S200〜S240の処理や、低温低入力制限が成立しているときにはEEPROM78に記憶されている補正量ΔTHで基本開度THbを補正した開度を目標スロットル開度TH*として設定すると共に要求トルクTr*で走行するようトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して設定値をエンジンECU24やモータECU40に送信するステップS120,S130,S180〜S240の処理や、目標回転数Ne*と目標トルクTe*と目標スロットル開度TH*とに基づいてエンジン22を制御すると共にトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するエンジンECU24およびモータECU40およびハイブリッド用電子制御ユニット70が「制御手段」に相当し、低温低入力制限が成立したときに実エンジントルクTrealが目標トルクTe*に近づくよう補正量ΔTHを設定してEEPROM78に記憶するステップS250,S270,S280の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「開度補正量学習手段」に相当する。
【0051】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせたものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる差動作用を有するものなど、内燃機関の出力軸と発電機の回転軸と駆動軸との3軸に接続され3軸のうちいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「二次電池」としては、バッテリ50に限定されるものではなく、発電機および電動機と電力のやりとりが可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「目標パワー設定手段」としては、要求トルクTr*を用いてエンジン22に要求される要求パワーPe*を設定するものに限定されるものではなく、駆動軸に要求される要求駆動力に基づいて内燃機関から出力すべき目標パワーを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、低温低入力制限条件が成立していないときにはエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づく基本開度THbを目標スロットル開度TH*として設定すると共に要求トルクTr*で走行するようトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して目標回転数Ne*と目標トルクTe*と目標スロットル開度TH*とに基づいてエンジン22を制御すると共にトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御したり、低温低入力制限が成立しているときにはEEPROM78に記憶されている補正量ΔTHで基本開度THbを補正した開度を目標スロットル開度TH*として設定すると共に要求トルクTr*で走行するようトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して目標回転数Ne*と目標トルクTe*と目標スロットル開度TH*とに基づいてエンジン22を制御すると共にトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するものに限定されるものではなく、二次電池の温度が予め設定された所定温度未満であると共に二次電池の充電に許容される最大パワーとしての入力制限が予め設定された所定パワー未満である低温低入力制限時でないときには設定された目標パワーに対応する内燃機関のスロットル開度である基本スロットル開度により内燃機関を運転しながら要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する通常制御を実行し、低温低入力制限時には内燃機関から出力されるパワーが設定された目標パワーに近づくよう基本スロットル開度を補正するための補正量である開度補正量により基本スロットル開度を補正したスロットル開度で内燃機関を運転しながら要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する開度補正制御を実行するものであれば如何なるものとしても構わない。「開度補正量学習手段」としては、低温低入力制限が成立したときに実エンジントルクTrealが目標トルクTe*に近づくよう補正量ΔTHを設定してEEPROM78に記憶するものに限定されるものではなく、開度補正制御が実行されたときには、内燃機関から出力されるパワーと設定された目標パワーとに基づいて開度補正量を学習するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0052】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0053】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、78 EEPROM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関が搭載された車両であって、
動力を入出力可能な発電機と、
前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との3軸に接続され、該3軸のうちいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、
前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、
前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、
前記駆動軸に要求される要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定する目標パワー設定手段と、
前記二次電池の温度が予め設定された所定温度未満であると共に前記二次電池の充電に許容される最大パワーとしての入力制限が予め設定された所定パワー未満である低温低入力制限時でないときには前記設定された目標パワーに対応する前記内燃機関のスロットル開度である基本スロットル開度により前記内燃機関を運転しながら前記要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する通常制御を実行し、前記低温低入力制限時には前記内燃機関から出力されるパワーが前記設定された目標パワーに近づくよう前記基本スロットル開度を補正するための補正量である開度補正量により前記基本スロットル開度を補正したスロットル開度で前記内燃機関を運転しながら前記要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する開度補正制御を実行する制御手段と、
前記開度補正制御が実行されたときには、前記内燃機関から出力されるパワーと前記設定された目標パワーとに基づいて前記開度補正量を学習する開度補正量学習手段と、
を備える車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両であって、
前記制御手段は、前記低温低入力制限時でも前記設定された目標パワーが予め設定された所定パワー以上であるときには、前記通常制御を実行する手段である
車両。
【請求項3】
請求項2記載の車両であって、
前記制御手段は、前記低温低入力制限時で前記設定された目標パワーが前記所定パワー未満である状態から前記低温低入力制限時でないが前記設定された目標パワーが前記所定パワー未満である状態となったとき、前記設定された目標パワーが前記所定パワー以上となるまでは前記開度補正制御を実行する手段であり、
前記開度補正量学習手段は、前記低温低入力制限時に前記開度補正制御を実行したときには、前記開度補正量を学習する手段である
車両。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1つの請求項に記載の車両であって、
アクセル操作量が前記車軸に大きなトルクの出力が要求されていることが推定されるアクセル操作量として予め設定された所定操作量未満であるときには前記内燃機関の回転数とトルクとに課される制約として予め設定された第1の動作ラインと前記設定された目標パワーとを用いて前記内燃機関の目標回転数と目標トルクとからなる目標運転ポイントを設定し、前記アクセル操作量が前記所定操作量以上であるときには前記内燃機関の回転数とトルクとに課される制約として前記第1の動作ラインよりトルクが大きくなるよう予め設定された第2の動作ラインと前記設定された目標パワーとを用いて前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段
を備え、
前記基本開度は、前記内燃機関を前記設定された目標運転ポイントで運転する際のスロットル開度であり、
前記制御手段は、前記低温低入力制限時でも前記アクセル操作量が前記所定操作量以上であるときには、前記通常制御を実行する手段である
車両。
【請求項5】
請求項4記載の車両であって、
前記制御手段は、前記低温低入力制限時で前記アクセル操作量が前記所定操作量未満である状態から前記低温低入力制限時でないが前記アクセル操作量が前記所定操作量未満の状態となったとき、前記アクセル操作量が前記所定操作量以上となるまでは前記開度補正制御を実行する手段であり、
前記開度補正量学習手段は、前記低温低入力制限時に前記開度補正制御を実行したときには、前記開度補正量を学習する手段である
車両。
【請求項6】
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との3軸に接続され該3軸のうちいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備える車両の制御方法であって、
前記駆動軸に要求される要求駆動力に基づいて前記内燃機関から出力すべき目標パワーを設定し、
前記二次電池の温度が予め設定された所定温度未満であると共に前記二次電池の充電に許容される最大パワーとしての入力制限が予め設定された所定パワー未満である低温低入力制限時でないときには前記設定された目標パワーに対応する前記内燃機関のスロットル開度である基本スロットル開度により前記内燃機関を運転しながら前記要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する通常制御を実行し、前記低温低入力制限時には前記内燃機関から出力されるパワーが前記設定された目標パワーに近づくよう前記基本スロットル開度を補正するための補正量である開度補正量により前記基本スロットル開度を補正したスロットル開度で前記内燃機関を運転しながら前記要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、
前記開度補正制御が実行されたときには、前記内燃機関から出力されるパワーと前記設定された目標パワーとに基づいて前記開度補正量を学習する
車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−110960(P2011−110960A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266345(P2009−266345)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】