説明

車両のタンク配設構造

【課題】ボディーの基本性能への影響が大きい車体下部構造を基本的に変えることなく、低コストでフラットフロア化により利便性向上と、室内のタンク配置スペース確保と、の両立を図る車両のタンク配設構造を提供する。
【解決手段】車室フロアパネル4上に座席19が設けられ、フロアパネル4の座席19前方に足元フロア部4aが設けられた車体下部構造を有し、所定の貯蔵物を貯蔵するタンク50を備え、タンク50が足元フロア部4a上に配設され、タンク50の上方を覆い床面を形成するアッパフロア部51が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室フロアパネル上に座席が設けられると共に、該フロアパネルの座席前方に足元フロア部が設けられた車体下部構造を有し、所定の貯蔵物を貯蔵するタンクを備えたような車両のタンク配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的大きい容量を必要とするタンク(例えば、排気浄化用還元剤としての尿素水を貯蔵したタンク、またはウオッシャ液を貯蔵したタンクなど)を車両に配設する場合、特許文献1に開示されたように、運転席と対向する側のフロントカウル内、エンジンルーム内、リヤカウル内、フロントバンパ内の空間部、リヤバンパ内の空間部、フロントシート下部の空間部、リヤシート下部の空間部、または、断面が中空状の車体フレーム内の空間部に配設すべく構成したものがある。
【0003】
上述のタンクの配設部位が車両中心から前後方向に離れたフロントカウル内、エンジンルーム内、リヤカウル内、フロントバンパ内の空間部、リヤバンパ内の空間部の場合には、ヨー慣性モーメントが大きくなるので好ましくない。
また、上述のタンクを閉断面構造の中空状の車体フレーム内の空間部を利用して配設する場合には、タンクに対する貯蔵物の補給やタンクからの貯蔵物の供給が複雑化する。
【0004】
そこで、上述の各タンク配設部位のうちでは、フロントシート下部の空間部、リヤシート下部の空間部が最も望ましいが、この特許文献1に開示されたものでは、ボディーの基本性能への影響が大きい車体下部構造を基本的に変えることなく、低コストでフラットフロア化による利便性向上と室内タンク配置スペース確保を両立することができない。
【特許文献1】特開2006−242092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、フロアパネルの座席前方に足元フロア部が設けられた車体下部構造を有し、所定の貯蔵物を貯蔵するタンクを備えるものにおいて、上記タンクを足元フロア部上に配設し、該タンクの上方を覆い床面を形成するアッパフロア部を設けることで、ボディーの基本性能への影響が大きい車体下部構造を基本的に変えることなく、低コストでフラットフロア化により利便性向上と、室内のタンク配置スペース確保と、の両立を図ることができる車両のタンク配設構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による車両のタンク配設構造は、車室フロアパネル上に座席が設けられると共に、上記フロアパネルの上記座席前方に足元フロア部が設けられた車体下部構造を有し、所定の貯蔵物を貯蔵するタンクを備える車両において、上記タンクが上記足元フロア部上に配設され、該タンクの上方を覆い床面を形成するアッパフロア部が設けられたものである。
上述のタンクとしては、排気浄化用還元剤としての尿素水を貯蔵したタンク、または、ウオッシャ液を貯蔵したタンクに設定することができる。
【0007】
上記構成によれば、ボディーの基本性能への影響が大きい車体下部構造を基本的に変えることなく、低コストでフラットフロア化により利便性向上と、室内のタンク配置スペース確保と、の両立を図ることができる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記座席の前方にシートクッション下面が所定高さよりも高い前席が設けられた車種において、上記タンクは上記前席シートクッション下面との間に上記所定高さを確保しつつ、上記前席シートクッション後端よりも前方へ延設されたものである。
上述のシートクッション下面の所定高さは、前記座席に着座した乗員の爪先の高さ、または足の甲部の高さとすることが望ましい。
上記構成によれば、乗員の実質的な着座空間を狭めることなく、上記タンクをレイアウトすることができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記足元フロア部に隣接して上方に隆起する段差部が設けられ、上記アッパフロア部は、該段差部に対して、上記足元フロア部と段差部との段差よりも段差が緩和された床面を形成する位置に配設されるものである。
上記構成によれば、上記アッパフロア部により、段差部と足元フロア部との段差を軽減して、床面をフラットに近づけることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記タンクは液体の排気浄化用還元剤を貯蔵するものであり、上記段差部は上記足元フロア部の車幅方向中央側に隣接するトンネル部であり、上記還元剤を用いる排気浄化ユニットが上記トンネル部下方において、上記足元フロア部の車両前後方向近傍に配設されると共に、上記タンクと上記排気浄化ユニットとの間を配管で接続したものである。
上述の排気浄化用還元剤としては、尿素水を用いてもよい。
【0011】
上記構成によれば、タンクが足元フロア部上に設けられ、この足元フロア部下方の車両前後方向近傍には排気浄化ユニットが配設されるので、タンクと排気浄化ユニットとを接続する配管の長さ(つまり、配管長)を短縮することができ、また、排気浄化用還元剤を送り出すポンプのポンピングロスを低減させることができる。さらに、排気浄化用還元剤として尿素水を用いる場合には、その凍結時の解凍を迅速に行なうことができると共に、省エネルギ化を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記車両の左右両側に乗降口が設けられ、上記タンクの注入口を上記フロアパネル上の車幅方向略中央部位に設けるものである。
上記構成によれば、タンクの注入口に対して、左右の乗降口から容易にアクセスすることができ、また、上述のタンクの注入口が車室内に存在するので、異物の注入を防止することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記タンクは助手席と対応する足元フロア部上に配設されたものである。
上記構成によれば、上述のタンクは助手席と対応する足元フロア部上に配設されているので、1人乗り時の車両の重心の偏り(重量バランス)を軽減することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記車体下部構造は、車室形状が異なる複数の車種に共通して用いられ、上記タンクは、一部の車種に装備されるものである。
上述の車室形状とは、ルーフや座面の高さ、座席の列数、フロア形状などを意味する。
上記構成によれば、車種に応じて、ボディーの基本構造に関係なく上記タンクを配設することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記前席シートクッション後端に対応して上記足元フロア部上にはクロスメンバが設けられ、上記タンクは該クロスメンバと略フラットで、かつ、その後方に配置されたものである。
上記構成によれば、前席シートクッションの下方空間を、他の補機や空調ダクトの配設スペースとして有効活用しつつ、タンクの配設を達成することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、フロアパネルの座席前方に足元フロア部が設けられた車体下部構造を有し、所定の貯蔵物を貯蔵するタンクを備えるものにおいて、上記タンクを足元フロア部上に配設し、該タンクの上方を覆い床面を形成するアッパフロア部を設けたので、ボディーの基本性能への影響が大きい車体下部構造を基本的に変えることなく、低コストでフラットフロア化により利便性向上と、室内のタンク配置スペース確保と、の両立を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ボディーの基本性能への影響が大きい車体下部構造を基本的に変えることなく、低コストでフラットフロア化により利便性向上と、室内のタンク配置スペース確保と、の両立を図るという目的を、車室フロアパネル上に座席が設けられると共に、上記フロアパネルの上記座席前方に足元フロア部が設けられた車体下部構造を有し、所定の貯蔵物を貯蔵するタンクを備える車両において、上記タンクを上記足元フロア部上に配設し、該タンクの上方を覆い床面を形成するアッパフロア部を設けるという構成にて実現した。
【実施例】
【0018】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のタンク配設構造を示し、平面図で示す図1、および側面図で示す図2において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル(ダッシュパネル)3を設け、このダッシュロアパネル3の下部には、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル4を一体、または一体的に連設形成している。
このフロアパネル4の後部には、上方に立上がるキックアップ部5を介して、リヤフロア6(フロアパネル)を一体に連設している。
【0019】
図3は図2の要部拡大側面図、図4は図3のA−A線矢視断面図であって、図4に示すように、上述のフロアパネル4の車幅方向中央部には、車室2内に突出して車両の前後方向に延びる段差部としてのトンネル部7を一体または一体的に形成すると共に、車室2内前部のインストルメントパネル8には、その車幅方向中央部から後方に向けて延びるセンタコンソール9を設け、このセンタコンソール9を上述のトンネル部7上部に配置している。
【0020】
一方、上述のダッシュロアパネル3の上端部には、図2に示すように、ダッシュアッパパネル10を接合し、このダッシュアッパパネル10にはカウルパネル11を接合固定して、カウル部12を構成している。
上述のダッシュアッパパネル10およびカウルパネル11は何れも車幅方向に延びる部材であって、カウルパネル11はフロントウインド13の下端部を支持するものである。
【0021】
図1、図2に示すように、フロアパネル4の上部においてセンタコンソール9を隔てた左右両側には、前列シートとしての運転席シート14と、助手席シート15とを配設している。
これら運転席シート14および助手席シート15はそれぞれバケットシートで構成されると共に、これら両シート14,15は、シートクッション16と、シートバック17と、ヘッドレスト18とを有するものである。
【0022】
また、運転席シート14と助手席シート15とを車幅方向に並設して構成した前列シートの後方には、上述のリヤフロア6上においてリヤシート19を配設している。このリヤシート19は、図1に示すようにベンチシートにて形成されると共に、該リヤシート19は、図2に示すように、シートクッション20と、シートバック21と、ヘッドレスト22とを有するものである。
【0023】
一方、図4に示すように、フロアパネル4の左右両サイド(但し、図4では左側のみを示す)には、サイドシル23を接合固定している。このサイドシル23は、サイドシルインナ24と、サイドシルアウタ25とを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面26をもった車体剛性部材である。
【0024】
また、図1に示すように、運転席シート14、助手席シート15およびリヤシート19に対応して、車両の左右両側には、左側のフロントドア27、右側のフロントドア28、左側のリヤドア29、右側のリヤドア30をそれぞれ開閉可能に設けて、これら各ドア27〜30により乗降口を形成している。
【0025】
さらに、図1に示すように、エンジンルーム1の左右両サイドを車両の前後方向に延びるフロントサイドフレーム31,31を設け、これら各フロントサイドフレーム31,31の前端部にはクラッシュカン32をそれぞれ取付けると共に、左右のクラッシュカン32,32相互間には、車幅方向に延びるフロントバンパビーム33を張架している。
また、上述のエンジンルーム1内には、パワートレインを構成するエンジン34(この実施例では、ディーゼルエンジン)を横置きに搭載している。
【0026】
一方、図1、図2に示すように、リヤフロア6の下部左右両サイドには、車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム35を設け、図1に示すように、これら各リヤサイドフレーム35,35の後端部にはクラッシュカン36をそれぞれ取付けると共に、左右のクラッシュカン36,36相互間には、車幅方向に延びるリヤバンパビーム37を張架している。
【0027】
ところで、図1、図2に示すように、エンジン34の排気ポートには、排気管40、DPF&酸化触媒ユニット41(但し、DPFはディーゼルパティキュレートフィルタの略)、排気管42、インジエクタ43と反応部44とから成るSCRユニット45(但し、SCRはSelective Caralytic Reductionの略で、尿素還元型NO触媒のこと)、排気管46、サイレンサ47、テールパイプ48をこの順に接続して、排気浄化経路49を構成している。
【0028】
SCRユニット45は、反応部44内のNO還元触媒における浄化効率を高めるために、尿素[(NHCO]の水溶液をインジエクタ43から反応部44に添加するもので、添加された尿素水溶液はエンジン34の排気により加熱されて加水分解され、アンモニアを発生させる。このアンモニア(アルカリ性)が還元剤となって、排気ガス中のNO(酸性)を無害化(中和)するものである。
【0029】
このため、排気浄化システムとして上述のSCRユニット45を用いる車両においては、液体の排気浄化用還元剤としての尿素水を貯蔵したタンク、つまり尿素タンク50を備える必要がある。
【0030】
この実施例の車両の車体下部構造は、図2、図3に示すように、リヤシート19前方に後席乗員が足を載せる足元フロア部4aが設けられているので、上述の尿素タンク50を該足元フロア部4a上に配設している。そして、この尿素タンク50の上方を覆い床面を形成するアッパフロア部51を設けている。
【0031】
図2の要部拡大図を図3に示すように、尿素タンク50内部には尿素水を吐出するポンプ52が設けられており、図4に示すように、トンネル部7の下方において足元フロア部4aの車両前後方向の近傍に配設された排気浄化ユニットとしてのSCRユニット45のインジエクタ43と、上記ポンプ52とを、図3、図4に示すように、配管53で接続している。
【0032】
図4からも明らかなように、上述の尿素タンク50は、運転席シート14(図1参照)に対して乗員が1人のみ乗車した際の重量バランスを考慮して、助手席シート15と対応する足元フロア部4a上に配設したものである。
【0033】
また、上述のトンネル部7は、足元フロア部4aの車幅方向中央側に隣接して上方に隆起する段差部であり、図4に示すように、上記アッパフロア部51は、該段差部に対して、足元フロア部4aと段差部との上下方向の段差よりも段差が緩和された床面を形成する位置に配設している。
【0034】
さらに、上述の尿素タンク50には尿素水を注入する必要があるので、センタコンソール9の後部には、リッド54で開閉可能な注入スペース55を設け、この注入スペース55の下部に設けた尿素水の注入口56と、尿素タンク50との間を、インレットパイプ57で連通接続している。換言すれば、尿素タンク50の注入口56をフロアパネル4上に車幅方向略中央部位に設けたものである。
【0035】
図2、図3に示すように、リヤシート19の前方に設けられた助手席シート15のシートクッション16下面は、後席乗員がアッパフロア部51上面に足を載せた状態で、当該乗員の爪先の高さ、または足の甲部の高さ(つまり所定高さ)よりも高く設定されている。
また、上述の尿素タンク50は助手席シート15のシートクッション16下面との間に上記所定高さを確保しつつ、助手席シート15のシートクッション16の後端よりも車両前方へ延設されている。
【0036】
図3に示すように、上述の助手席シート15のシートクッション16の前部下方において、フロアパネル4上には、車幅方向に延びるクロスメンバ58(いわゆるNo.2クロスメンバ)が取付けられており、アッパフロア部51の前部は該クロスメンバ58で支持され、アッパフロア部51の後部はキックアップ部5で支持されている。
【0037】
また、助手席シート15は、図3、図4に示すように、複数のシート取付けブラケット59,60,61を用いて支持されるが、前側のブラケット59は図3に示すように、クロスメンバ58にボルトアップされており、後側のブラケット60,61はアッパフロア部51にボルトアップされている。
さらに、後側の各ブラケット60,61と対応するように、足元フロア部4aとアッパフロア部51との間には、支持ブラケット62,62が設けられている。
【0038】
ここで、上述の助手席シート15は一対のシートスライドレール63,63により前後方向にスライド可能に構成されている。
なお、図1〜図3において、64はステアリングホイール、65は前輪、66は後輪、67はリヤフロア6の下部に配設された燃料タンク、68はボンネット、69はルーフ部である。
【0039】
図2に側面図で示す車両Xはハイルーフ車(ミニバン)であり、図5に側面図で示す車両Yはロールーフ車(ハッチバック)であって、これら各車両X,Yの車体下部構造は、車室形状(ルーフ部69の高さ、各シートのシートクッション16,20の高さなど)が異なる複数の車種に共通して用いられ、上述の尿素タンク50は、一部の車種(図2で示すハイルーフ車)に装備されている。なお、図5において、図2と同一の部分には同一符号を付している。
【0040】
このように、上記実施例の車両のタンク配設構造は、車室フロアパネル4上に座席(リヤシート19参照)が設けられると共に、上記フロアパネル4の上記座席(リヤシート19参照)前方に足元フロア部4aが設けられた車体下部構造を有し、所定の貯蔵物(尿素水参照)を貯蔵するタンク(尿素タンク50参照)を備える車両において、上記タンク50が上記足元フロア部4a上に配設され、該タンク50の上方を覆い床面を形成するアッパフロア部51が設けられたものである(図2、図3参照)。
【0041】
この構成によれば、ボディーの基本性能への影響が大きい車体下部構造を基本的に変えることなく、低コストでフラットフロア化により利便性向上と、車室2内のタンク50の配置スペース確保と、の両立を図ることができる。
【0042】
また、上記座席(リヤシート19参照)の前方にシートクッション16下面が所定高さよりも高い前席(助手席15参照)が設けられた車種(車両X参照)において、上記タンク(尿素タンク50参照)は上記前席シートクッション16下面との間に上記所定高さを確保しつつ、上記前席シートクッション16後端よりも前方へ延設されたものである(図2、図3参照)。
上述のシートクッション16下面の所定高さは、前記座席(リヤシート19参照)に着座した乗員の爪先の高さ、または足の甲部の高さとすることが望ましい。
この構成によれば、乗員の実質的な着座空間を狭めることなく、上記タンク(尿素タンク50参照)をレイアウトすることができる。
【0043】
さらに、上記足元フロア部4aに隣接して上方に隆起する段差部(トンネル部7参照)が設けられ、上記アッパフロア部51は、該段差部(トンネル部7参照)に対して、上記足元フロア部4aと段差部(トンネル部7参照)との段差よりも段差が緩和された床面を形成する位置に配設されるものである(図4参照)。
この構成によれば、上記アッパフロア部51により、段差部(トンネル部7参照)と足元フロア部4aとの段差を軽減して、床面をフラットに近づけることができる。
【0044】
加えて、上記タンク(尿素タンク50参照)は液体の排気浄化用還元剤(尿素水参照)を貯蔵するものであり、上記段差部は上記足元フロア部4aの車幅方向中央側に隣接するトンネル部7であり、上記還元剤(尿素水)を用いる排気浄化ユニット(SCRユニット45参照)が上記トンネル部7下方において、上記足元フロア部4aの車両前後方向近傍に配設されると共に、上記タンク(尿素タンク50参照)と上記排気浄化ユニット(SCRユニット45参照)との間を配管53で接続したものである(図3、図4参照)。
【0045】
この構成によれば、タンク50が足元フロア部4a上に設けられ、この足元フロア部4a下方の車両前後方向近傍には排気浄化ユニット(SCRユニット45参照)が配設されるので、タンク50と排気浄化ユニット(SCRユニット45参照)とを接続する配管53の長さ(つまり、配管長)を短縮することができ、また、排気浄化用還元剤(尿素水)を送り出すポンプ52のポンピングロスを低減させることができる。さらに、排気浄化用還元剤として尿素水を用いるこの実施例の場合には、その凍結時の解凍を迅速に行なうことができると共に、省エネルギ化を図ることができる。
【0046】
また、上記車両の左右両側に乗降口(各ドア27〜30参照)が設けられ、上記タンク(尿素タンク50参照)の注入口56を上記フロアパネル4上の車幅方向略中央部位に設けるものである(図1、図4参照)。
この構成によれば、タンク50の注入口56に対して、左右の乗降口(各ドア27〜30参照)から容易にアクセスすることができ、また、上述のタンク50の注入口56が車室2内に存在するので、異物の注入を防止することができる。
【0047】
さらに、上記タンク(尿素タンク50参照)は助手席シート15と対応する足元フロア部4a上に配設されたものである(図1参照)。
この構成によれば、上述のタンク50は助手席シート15と対応する足元フロア部4a上に配設されているので、1人乗り時の車両の重心の偏り(重量バランス)を軽減することができる。
【0048】
加えて、上記車体下部構造は、車室形状が異なる複数の車種(車両X,Y参照)に共通して用いられ、上記タンク50は、一部の車種(車両X参照)に装備されるものである(図2、図5参照)。
この構成によれば、車種に応じて、ボディーの基本構造に関係なく上記タンク(尿素タンク50参照)を配設することができる。
【0049】
図6は車両のタンク配設構造の他の実施例を示し、助手席シート15のシートクッション16後端下方において、足元フロア部4a上に車幅方向に延びるクロスメンバ70(いわゆるNo.2.5クロスメンバ)が設けられており、この構造の車両にあっては、上述の尿素タンク50がクロスメンバ70と略フラットになるように、しかも、該クロスメンバ70の後方に配置されたものである。
【0050】
この場合、尿素タンク50の上方を覆い床面を形成するアッパフロア部51の前部は、上記クロスメンバ70の上面部にて支持される。しかも、助手席シート15のシートクッション16下方にスペース71が形成されるので、このスペース71を有効利用して、CDチェンジャなどの他の補機72やリヤ空調ダクトなどの空調ダクト73を配設している。
【0051】
このように、図6で示した実施例においては、上記前席シートクッション16後端に対応して上記足元フロア部4a上にはクロスメンバ70が設けられ、上記タンク(尿素タンク50参照)は該クロスメンバ70と略フラットで、かつ、その後方に配置されたものである(図6参照)。
この構成によれば、前席シートクッション16の下方空間(スペース71参照)を、他の補機72や空調ダクト73その他の配設スペースとして有効活用しつつ、タンク(尿素タンク50参照)の配設を達成することができる。
【0052】
図6で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図6において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0053】
図7は車両のタンク配設構造のさらに他の実施例を示し、図6の実施例と同様に助手席シート15のシートクッション16後端下方に対応してクロスメンバ70が設けられた構造の車両において、クロスメンバ70後方の足元フロア部4a上に尿素タンク50を配設し、この尿素タンク50内のポンプ52と上下方向に略対応すべくトンネル部7の車外側にインジエクタ43を配設し、ポンプ52とインジエクタ43との間を接続する配管53の長さを短縮するように構成したものである。
このように構成すると、図6で示した実施例と比較して、配管53の長さを大幅に短縮することができるので、ポンプ52のポンピングロス低減を図ることができる。
【0054】
図7で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については図6の実施例と同様であるから、図7において図6と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0055】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の座席は、実施例の2列目シートとしてのリヤシート19に対応し、
以下同様に、
前席は、助手席シート15に対応し、
所定の貯蔵物は、尿素水に対応し、
タンクは、尿素タンク50に対応し、
段差部は、トンネル部7に対応し、
液体の排気浄化用還元剤は、尿素水に対応し、
排気浄化ユニットは、SCRユニット45に対応し、
乗降口は、各ドア27〜30に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記タンクとしては尿素タンク50に代えて、ウオッシャ液を貯溜したタンクを用いてもよい。また、上記座席としては、2列目シートとしてのリヤシート19に代えて他のリヤシートや助手席シート15を用いてもよい。なお、この場合、上記タンクは上記運転席シート14と重ならないよう配設すると、車両重量バランス上、好ましい。さらに、上記タンク50は助手席シートや3列目シート等の足元に配設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】車両のタンク配設構造の実施例を示す平面図
【図2】図1の側面図
【図3】図2の要部拡大側面図
【図4】図3のA−A線矢視断面図
【図5】車体下部構造が共通の他の車種を示す側面図
【図6】車両のタンク配設構造の他の実施例を示す側面図
【図7】車両のタンク配設構造のさらに他の実施例を示す側面図
【符号の説明】
【0057】
4…フロアパネル
4a…足元フロア部
7…トンネル部(段差部)
15…助手席シート(前席)
16…シートクッション
19…リヤシート(座席)
27〜30…ドア(乗降口)
45…SCRユニット(排気浄化ユニット)
50…尿素タンク(タンク)
51…アッパフロア部
53…配管
56…注入口
70…クロスメンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室フロアパネル上に座席が設けられると共に、
上記フロアパネルの上記座席前方に足元フロア部が設けられた車体下部構造を有し、
所定の貯蔵物を貯蔵するタンクを備える車両において、
上記タンクが上記足元フロア部上に配設され、
該タンクの上方を覆い床面を形成するアッパフロア部が設けられたことを特徴とする
車両のタンク配設構造。
【請求項2】
上記座席の前方にシートクッション下面が所定高さよりも高い前席が設けられた車種において、
上記タンクは上記前席シートクッション下面との間に上記所定高さを確保しつつ、上記前席シートクッション後端よりも前方へ延設されたことを特徴とする
請求項1記載の車両のタンク配設構造。
【請求項3】
上記足元フロア部に隣接して上方に隆起する段差部が設けられ、
上記アッパフロア部は、該段差部に対して、上記足元フロア部と段差部との段差よりも段差が緩和された床面を形成する位置に配設されることを特徴とする
請求項1または2記載の車両のタンク配設構造。
【請求項4】
上記タンクは液体の排気浄化用還元剤を貯蔵するものであり、
上記段差部は上記足元フロア部の車幅方向中央側に隣接するトンネル部であり、
上記還元剤を用いる排気浄化ユニットが上記トンネル部下方において、上記足元フロア部の車両前後方向近傍に配設されると共に、
上記タンクと上記排気浄化ユニットとの間を配管で接続したことを特徴とする
請求項3記載の車両のタンク配設構造。
【請求項5】
上記車両の左右両側に乗降口が設けられ、
上記タンクの注入口を上記フロアパネル上の車幅方向略中央部位に設けることを特徴とする
請求項1〜4の何れか1に記載の車両のタンク配設構造。
【請求項6】
上記タンクは助手席と対応する足元フロア部上に配設されたことを特徴とする
請求項1記載の車両のタンク配設構造。
【請求項7】
上記車体下部構造は、車室形状が異なる複数の車種に共通して用いられ、
上記タンクは、一部の車種に装備されることを特徴とする
請求項1記載の車両のタンク配設構造。
【請求項8】
上記前席シートクッション後端に対応して上記足元フロア部上にはクロスメンバが設けられ、
上記タンクは該クロスメンバと略フラットで、かつ、その後方に配置されたことを特徴とする
請求項1記載の車両のタンク配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−120145(P2009−120145A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299165(P2007−299165)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】