説明

車両の制御装置

【課題】車両の停止中にエンジンを一時的に停止する制御を行う際に、車室内の温度上昇を制限した上で、燃料消費の低減を図ることができるエンジンの制御装置を提供する。
【解決手段】ブロアファン121の作動により蒸発器12に供給される空気の温度を検出する車内温センサ31,外気温センサ32と、蒸発器12の温度を検出する蒸発器温度センサ122と、エンジン2停止直前における蒸発器温度センサ122の検出温度と外気温センサ32,車内温センサ31の検出温度とに基いて、エンジン停止時間を決定するエンジン停止時間決定手段43とを備え、エンジン制御手段43は、停止条件が成立してエンジン2を停止した後もブロアファン121を作動させ、エンジン停止時間が経過した時に、エンジン2を始動して圧縮機6を起動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンの運転中に停止条件が成立したときにエンジンを停止し、エンジンの停止中に始動条件が成立したときにエンジンを始動する車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の停止中にエンジンを一時的に停止することによって、停車中のアイドル運転により燃料が消費されることを抑制するようにした車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された車両の制御装置においては、車速がゼロになって車両が停止し、且つクラッチスイッチがOFFとなったとき(停止条件が成立したとき)にエンジンを停止し、エンジン停止から所定時間が経過したとき(始動条件が成立したとき)に、エンジンを再始動するようにしている。
【0004】
そして、特許文献1に記載され車両の制御装置においては、エンジンの始動条件である所定時間は一定時間に設定されていた。
【特許文献1】特開平4−358729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジンの作動により車室内が冷房されているときに、エンジンが停止して冷房が中止されると、車室内の温度が次第に上昇する。そして、特許文献1に記載された車両の制御装置のように、エンジンの停止から再始動までの時間を一定とした場合には、例えば外気温度が高いときや乗車人数が多いときに車室内の温度が急上昇して、次にエンジンが再始動して冷房が再開されるまでに、乗車した人が不快を感じる状態になることが考えられる。
【0006】
そして、このような状態となることを防止するために、エンジンの停止時間を短くすると、アイドル停止中の燃料消費の低減効果が低くなってしまうという不都合がある。
【0007】
そこで、本発明は、車両の停止中にエンジンを一時的に停止する制御を行う際に、車室内の温度上昇を制限した上で、燃料消費の低減を図ることができるエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、エンジンと、車外から車室内への空気の供給または車室内の空気の循環を行なうブロアファンと、冷媒循環路と該冷媒循環路に接続されて前記エンジンにより駆動される圧縮機と該冷媒循環路に接続されて前記ブロアファンによる車室内への空気の流通路中に設けられた蒸発器とを有して、該圧縮機と前記ブロアファンとを作動させて車室内の冷房を行なう車両に対して、所定の停止条件が成立したときにエンジンを停止し、その後所定のエンジン停止時間が経過した時にエンジンを始動するエンジン制御手段を備えた車両の制御装置に関する。
【0009】
そして、前記ブロアファンの作動により前記蒸発器に供給される空気の温度を検出する供給空気温度検出手段と、前記蒸発器の温度を検出する蒸発器温度検出手段と、エンジンの停止直前における前記蒸発器温度検出手段の検出温度と前記供給空気温度検出手段の検出温度とに基いて、前記エンジン停止時間を決定するエンジン停止時間決定手段とを備え、前記エンジン制御手段は、前記停止条件が成立してエンジンを停止したときに、エンジン停止中も前記ブロアファンを作動させ、前記エンジン停止時間が経過した時に、エンジンを始動して前記圧縮機を起動させることを特徴とする。
【0010】
かかる本発明によれば、前記停止条件の成立により、前記圧縮機が作動していた状態でエンジンが停止したとき、或いは前記圧縮機が作動を停止してからさほど時間が達っていない状態でエンジンが停止したときは、前記蒸発器は低温の状態となっている。そのため、エンジン停止後も前記ブロアファンを作動させて前記蒸発器を経由して車室内に空気を吹出すことで、ある程度は冷房の効果を得ることができる。そして、このような冷房の効果は前記蒸発器の温度が上昇するに従って低くなり、前記蒸発器の温度の上昇率は、前記蒸発器の周囲を流通する空気の温度が高いほど高くなる。
【0011】
そこで、前記エンジン停止時間決定手段は、エンジン停止直前における前記蒸発器温度検出手段の検出温度と前記供給空気温度検出手段の検出温度とに基いて、前記エンジン停止時間を決定する。これにより、エンジン停止中の前記蒸発器による冷房の持続効果の程度を反映させて前記エンジン停止時間を決定することができるため、エンジン停止中の車室内の温度上昇を制限した上で、エンジンの燃料消費を低減することができる。
【0012】
なお、本発明におけるエンジンの停止直前とは、該停止直前における前記蒸発器温度検出手段の検出温度と、エンジンを停止した時点での前記蒸発器温度検出の検出湿度との差が微小(無視できるレベル)にあることを意味する。エンジンを停止した時には、前記圧縮機が停止して冷媒の循環が停止するために前記蒸発器の温度が急激に上昇する。そのため、前記蒸発器温度検出手段により前記蒸発器の温度を安定して検出することが難しいが、エンジンの停止直前の検出温度を用いることで、エンジン停止時の前記蒸発器の温度を安定的に検出(推定)して前記エンジン停止時間を決定することができる。
【0013】
また、前記車両が置かれた状況を検出する車両状況検出手段と、該車両状況検出手段により検出された状況の下で、車室内への空気の目標吹出し温度に応じた前記蒸発器の許容上限温度を決定する許容上限温度決定手段とを備え、前記エンジン停止時間決定手段は、エンジンの停止直前における前記蒸発器温度検出手段の検出温度と前記許容上限温度との温度差が大きいほど、前記エンジン停止時間を長い時間に設定することを特徴とする。
【0014】
かかる本発明において、前記蒸発器温度検出手段の検出温度と前記目標吹出し温度に応じた前記許容上限温度との温度差は、エンジンを停止したときの前記目標吹出し温度に対する車室内の温度上昇の余裕度を示すものとなる。そのため、前記エンジン停止時間決定手段により、該温度差が大きいほど前記エンジン停止時間を長い時間に決定することによって、エンジン停止中の車室内の温度上昇を前記目標吹出し温度付近までに制限した上で、エンジンの燃料消費を低減することができる。
【0015】
また、前記エンジン停止時間決定手段は、前記ブロアファンによる車室内への空気の吹出し量が多いほど、前記エンジン停止時間を短い時間に決定することを特徴とする。
【0016】
かかる本発明において、前記ブロアファンによる車室内への空気の吹出し量が多いほど、前記蒸発器に供給される空気の流量が多くなるため、前記蒸発器の温度の上昇率が高くなる。そのため、前記エンジン停止時間決定手段により、車室内への空気の吹出し量が多いほど、前記エンジン停止時間を短い時間に決定することによって、エンジン停止中の車室内の温度上昇を制限した上で、燃料停止を低減する効果を高めることができる。
【0017】
また、前記エンジン停止時間決定手段は、前記エンジンの停止中に、前記ブロアファンにより車室内の空気が前記蒸発器に供給されるときは、前記ブロアファンにより車外の空気が前記蒸発器に供給されるときよりも、前記エンジン停止時間を長い時間に設定することを特徴とする。
【0018】
かかる本発明において、前記圧縮機の作動により車室内の冷房が行なわれていたときは、車室内の温度よりも外気温度の方が高いと考えられる。そのため、前記ブロアファンにより車室内の空気が前記蒸発器に供給されるときよりも、前記ブロアファンにより車外の空気が前記蒸発器に供給されるときの方が、前記蒸発器の温度上昇率が高くなる。そこで、前記エンジン停止時間決定手段により、前記ブロアファンにより車室内の空気が前記蒸発器に供給されるときは、前記ブロアファンにより車外の空気が前記蒸発器に供給されるときよりも、前記エンジン停止時間を長い時間に決定することによって、エンジン停止中の車室内の温度上昇を抑制した上で、燃料消費を低減する効果を高めることができる。
【0019】
また、前記車両状況検出手段により検出された状況の下で、車両の窓ガラスに曇りが生じない湿度である曇り判定湿度を推定する曇り判定湿度推定手段と、車室内の湿度を検出する湿度検出手段と、エンジンの停止後に窓ガラスの曇りが生じるまでの推定時間である曇り発生推定時間を、エンジンの停止直前における前記湿度検出手段の検出湿度と前記曇り判定湿度との湿度差が大きいほど、長い時間に決定する曇り発生推定時間決定手段とを備え、前記エンジン制御手段は、前記停止条件が成立してエンジンを停止した後、前記エンジン停止時間が経過する前に前記曇り発生推定時間が経過したときには、該曇り発生推定時間が経過した時に、エンジンを始動すると共に前記圧縮機を作動させることを特徴とする。
【0020】
かかる本発明によれば、前記曇り判定湿度推定手段は、前記車両状況検出手段により検出された状況の下で、窓ガラスに曇りが生じない湿度である前記曇り判定湿度を推定する。そして、前記曇り発生推定時間決定手段は、エンジンの停止直前における前記湿度検出手段の検出湿度と前記曇り判定湿度との湿度差が大きいほど、前記曇り発生推定時間を長い時間に決定する。
【0021】
このように、前記車両が置かれた状況に応じて推定した前記曇り判定湿度と、前記エンジンの停止直前の前記湿度検出手段の検出湿度の湿度差が大きいほど、前記曇り発生推定時間を長い時間に決定することにより、前記車両の窓の曇り易さを反映させて前記曇り発生推定時間を決定することができる。
【0022】
そして、前記エンジン制御手段により、前記停止条件が成立してエンジンを停止した後、前記エンジン停止時間が経過する前に前記曇り発生推定時間が経過したときには、該曇り発生推定時間が経過した時に、エンジンを始動すると共に前記圧縮機を作動させることによって、エンジン停止中に窓ガラスの曇りが生じることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の車両の制御装置が搭載された車両の構成図である。本実施形態の車両は、エンジン2及びモータ・ジェネレータGを駆動源とするハイブリッド車であり、排気ガスの排出量を低減すると共に燃料消費を抑制するために、車両が信号待ちで停止したときや渋滞中に停止したとき等に、停止条件の成立によりエンジン2を停止し、始動条件の成立によりエンジン2を再始動するエンジン停止・再始動機能を備えている。
【0025】
また、本実施形態の車両は、車室内の暖房及び冷房を行う空調装置1を備えており、空調装置1は、冷凍サイクル装置Aによる冷房機能及び除湿機能と、エンジン2の冷却液の循環通路Bに設けたヒータコアHによる暖房機能とを有している。
【0026】
そして、マイクロコンピュータ等により構成される電子ユニットである制御装置4(本発明の車両の制御装置に相当する)により、エンジン2、モータ・ジェネレータG、空調装置1の作動が制御される。制御装置4は、所定のプログラムを実行することにより、車両状況検出手段41、曇り判定湿度推定手段42、エンジン停止時間決定手段43、エンジン制御手段44、空調制御手段45、曇り発生推定時間決定手段46、及び許容上限温度決定手段47として機能する。
【0027】
制御装置4には、車室内の湿度を検出する湿度センサ30(本発明の湿度検出手段に相当する)、車室内の温度を検出する車内温センサ31、車外の気温を検出する外気温センサ32、日射量を検出する日射センサ33、車速を検出する車速センサ34、及び後述する蒸発器12の下流側近傍の温度を検出する蒸発器温度センサ122(本発明の蒸発器温度検出手段に相当する)による検出信号が入力される。また、制御装置4には、車室内への空調方向を設定する風向スイッチ35と、空調条件(温度、風量等)を設定する空調スイッチ36の操作信号が入力される。
【0028】
また、制御装置4から出力される制御信号によって、エンジン2、モータ・ジェネレータG,及び空調装置1等の作動が制御される。
【0029】
空調装置1は、冷凍サイクル装置Aの構成として、エンジン2により駆動される圧縮機6、凝縮器9、受液器10、膨張弁11、及び蒸発器12を備えている。また、暖房用の構成として、エンジン2の冷却液循環路Bを構成するヒータコアH、エンジン2により駆動されるウォータポンプP、サーモスタットTh、及びラジエータRを備えている。
【0030】
エンジン2とモータ・ジェネレータGは回転軸21により直結され、この構成により、エンジン2とモータ・ジェネレータGによる駆動力の発生と、減速時におけるモータ・ジェネレータGによる回生電力の発生を可能としている。エンジン2及びモータ・ジェネレータGの回転は、変速機Trを介して車輪Wに伝達される。
【0031】
また、モータ・ジェネレータGは、エンジン2を始動させるためのスタータモータの機能を有し、さらに、モータ・ジェネレータGの回生電力により、蓄電装置17のバッテリ18(本発明の蓄電手段に相当する)が充電される。
【0032】
次に、冷凍サイクル装置Aは、圧縮機6と、凝縮器9と、受液器10と、膨張弁11と、蒸発器12を、圧縮機6を上流側とし、蒸発器12を下流側として、これらを順次冷媒循環路3に接続して構成されている。冷凍サイクルは、冷媒(フロンや二酸化炭素等からなる)を蒸発、圧縮、凝縮、膨張させるものである。
【0033】
制御装置4の空調制御手段45は、空調スイッチ36により設定された温度と、外気温度、湿度、日射量等に基いて目標蒸発器温度を算出し、該目標蒸発器温度と蒸発器温度センサ122の検出温度との差を減少させるように、圧縮機6を制御する。圧縮機6はエンジン2の駆動力により作動し、エンジン2の回転軸81の先端に設けられたプーリ82と、圧縮機6の駆動軸84に設けられたプーリ85と、プーリ82,85を連動させるベルト83とにより、エンジン2の駆動力が圧縮機6に伝達される。
【0034】
また、圧縮機6の駆動軸84に電磁クラッチ86が設けられ、空調制御手段45は、電磁クラッチ86により、エンジン2の駆動力の圧縮機6への伝達と遮断を切換える。
【0035】
凝縮器9は、圧縮機6により圧縮されて高温・高圧になった冷媒を熱交換により冷却し、液化する。受液器10は、凝縮器9により液化された冷媒を一時的に蓄えるボンベであり、図示しないドライヤを介して膨張弁11に接続されている。そして、該ドライヤにより水分が除去された冷媒が膨張弁11に供給される。
【0036】
膨張弁11は、蒸発器12の入口側に取り付けられ、高温高圧の液化された冷媒が通過する際に、冷媒を液体から霧状の気体に変化させて噴射する。膨張弁11には絞り弁(図示しない)が内設され、空調制御手段45は、該絞り弁の開度を制御して蒸発器12に噴射する冷媒の流量(冷媒能力)を調節している。
【0037】
蒸発器12は、冷媒の気化により車室内の空気の熱を奪って冷却する熱交換器であり、空調ケース14に収容されている。蒸発器12の上流側にはブロアファン121が設けられ、ブロアファン121の回転数が空調制御手段45により制御される。ブロアファン121の回転により、蒸発器12で除湿・冷却された空気や、ヒータコアHで加熱された空気が車室内に吹出されると共に、車室内の空気又は外気が空調ケース14に供給される。車室内への空気の送出は、デフドア143、ベントドア144、フロアドア145を介して行なわれる。
【0038】
次に、暖房側の構成について説明する。エンジン2の冷却液は、エンジン2の駆動力で作動する機械式のウォーターポンプPにより、サーモスタットThからラジエータRに供給されると共に、エンジン2のウォータジャケット内を循環する。また、エンジン2の冷却液は、車室内を暖房するための熱源として利用されるために分流され、ウォータポンプPからヒータコアHを経てウォータポンプPに戻る循環通路Bを流通する。
【0039】
エンジン2の回転軸81に設けられたプーリ90と、ウォータポンプP1の駆動軸94に設けられたプーリ92と、プーリ90,92を連動させるベルト91とにより、エンジンの駆動力がウォータポンプP1に伝達される。
【0040】
ヒータコアHは、ラジエータRにおいてエンジン2により加温された冷却液の熱で、周囲の空気を加熱する熱交換を行なうものである。ヒータコアHの上流側には、蒸発器12を通過した空気をヒータコアH側に導いたり、迂回させたりするためのエアミックスドア142が設置されている。
【0041】
エアミックスドア142、例えば、ヒータコアHの空気の入口を開閉する回動式の板ドアからなり、回転中心側に設置されたエアミックスサーボモータ(図示しない)によって開閉される。エアミックスドア142は、閉塞ポジションaにあるときに空調ケース14内の空気がヒータコアHに流れることを阻止し、中間ポジションbにあるときに空調ケース14内の空気の半分がヒータコアHに流れるようにし、解放ポジションcにあるときに空調ケース14内の空気が全部ヒータコアHに流れるようにする。空調制御手段45は、エアミックスサーボモータ(図示しない)を作動させて、エアミックスドア142の位置を変更することにより、車室内への空気の吹出し温度を制御する。
【0042】
空調ケース14は、上流側に内気導入口と外気導入口との切替えを行なうインテークドア141が設置され、下流側に蒸発器12により除湿・冷却された空気、又はヒータコアHにより加温された空気をデフロスタに吐出させるためのデフドア143、ベンチレータに吐出させるためのベントドア144、及び足元に吐出させるためのフロアドア145が、それぞれ設置されている。インテークドア141、デフドア143、ベントドア144、フロアドア145は、サーボモータにより電動的に回動させてもよく、手動により回動させるようにしてもよい。
【0043】
次に、図2,図3に示したフローチャートに従って、エンジン制御手段44によるエンジン2の停止・再始動処理について説明する。
【0044】
エンジン停止時間決定手段43は、エンジン2が作動しているときに、図2〜図3に示したフローチャートを繰り返し実行して、車室内の快適性を維持できる温度上昇範囲内で、且つ、なるべく長い時間にエンジン停止時間Tsを決定し、また更新する。
【0045】
図2のSTEP1で、エンジン停止時間決定手段43は、空調スイッチ36により、ブロアファン121による車室内への吹出し風量が「大」に設定されているか否かを判断する。そして、吹出し風量が「大」に設定されていたときはSTEP20に分岐し、「大」に設定されていなかったときにはSTEP2に進む。
【0046】
STEP2で、エンジン停止時間決定手段43は、ブロアファン121による車室内への吹出し風量が「小」に設定されているか否かを判断する。そして、吹出し風量が「小」に設定されていたときはSTEP30に分岐し、「小」に設定されていなかったときにはSTEP3に進む。
【0047】
STEP3で、空調スイッチ36により外気設定(インテークドア141が外気導入口から外気をブロアファン121に導入する設定状態)とされているときはSTEP40に分岐する。そして、STEP40で、エンジン停止時間決定手段43は、蒸発器12の温度上昇係数KtをK3に設定して図3のSTEP5に進む。
【0048】
一方、STEP3で、空調スイッチ36により内気設定(インテークドア141が内気導入口から車室内の空気をブロアファン121に導入する設定状態)とされているときにはSTEP4に進む。そして、エンジン停止時間決定手段43は、蒸発器12の温度上昇係数KtをK4に設定して図3のSTEP5に進む。
【0049】
ここで、外気設定とされている場合は、車室内よりも高温の外気が蒸発器12に供給されるため、内気設定とされている場合よりも蒸発器12の温度上昇率が高くなる。そこで、K3<K4に設定されている。
【0050】
また、STEP20で、空調スイッチ36により外気設定とされているときはSTEP25に分岐する。そして、STEP25で、エンジン制御手段44は、蒸発器12の温度上昇率KtをK1に設定して図3のSTEP3に進む。一方、STEP20で、空調スイッチ36により内気設定とされているときにはSTEP21に進む。そして、エンジン停止時間決定手段43は、蒸発器12の温度上昇係数KtをK2に設定して図3のSTEP5に進む。この場合も、内気設定のときのK2よりも外気設定のときのK1の方が大きく(K2<K1)設定される。
【0051】
また、STEP30で、空調スイッチ36により外気設定とされているときはSTEP35に分岐する。そして、STEP35で、エンジン制御手段44は、蒸発器の温度上昇率KtをK5に設定して図3のSTEP5に進む。一方、STEP30で、空調スイッチ36により内気設定とされているときにはSTEP31に進む。そして、エンジン停止時間決定手段43は、蒸発器12の温度上昇係数KtをK5に設定して図3のSTEP5に進む。
【0052】
ここで、車室内への空気の吹出し風量が多いほど、蒸発器12に供給される空気の流量が多くなって蒸発器12の温度上昇率が高くなる。そこで、上記K1〜K5は、以下の式(1)のように、吹出し風量が小であるときのK5,K6よりも吹出し風量が中であるときのK3,K4の方が大きく設定され、さらに、吹出し風量が大であるときのK1,K2の方が大きく設定されている。
【0053】
K6 < K5 < K4 < K3 < K2 <K1 ・・・・・ (1)
図3のSTEP5は、許容上限温度決定手段47による処理である。許容上限温度決定手段47は、車両状況検出手段41により検出される車両が置かれた状況と、空調スイッチ36による設定温度とに基いて、空調制御手段45により決定される目標吹出し温度から、蒸発器12の許容上限温度Euを決定する。
【0054】
ここで、車両状況検出手段41は、日射センサ33により検出される日射量と、車室内温度センサ31により検出される車室内の温度と、外気温センサ32により検出される外気温という3つの要素により、車両が置かれた状況を検出する。そして、空調制御手段45は、車両が置かれた状況に応じて、例えば外気温が高めのときには、設定温度よりも目標吹出し温度を高く設定する。
【0055】
なお、この場合、外気温センサ32及び車室内センサ31は、本発明の供給空気温度検出手段に相当し、外気が蒸発器12に供給されるときは、外気温センサ32により蒸発器12に供給される空気の温度が検出される。また、車室内の空気が蒸発器12に供給されるときには、車室内センサ31により蒸発器12に供給される空気の温度が検出される。
【0056】
そして、許容上限温度決定手段47は、実験やコンピュータシミュレーションにより予め決定された、目標吹出し温度と蒸発器12の許容上限温度との相関マップに、空調制御手段45により決定された目標吹出し温度を適用して、許容上限温度Euを決定する。なお、該相関マップのデータは制御手段4のメモリ(図示しない)に記憶されている。
【0057】
続くSTEP5で、エンジン停止時間決定手段43は、以下の式(2)により、車室内の快適性が維持できる温度上昇範囲でのエンジン2の停止時間である室温上昇許容時間Tuを決定する。
【0058】
Tu = 1/Kt・(Eu−Es) ・・・・・ (2)
但し、Tu:室温上昇許容時間、Kt:エンジン停止後の蒸発器12の温度上昇係数、Eu:蒸発器12の許容上限温度、Es:エンジン停止直前の蒸発器12の検出温度。
【0059】
また、次のSTEP6で、曇り発生推定時間決定手段46は、エンジン2を停止してから車両の窓ガラスが曇るまでの推定時間である曇り発生推定時間Tfを、以下の式(3)により決定する。
【0060】
Tf = 1/Kf・(Hd−Hs) ・・・・・ (3)
但し、Tf:曇り発生推定時間、Kf:車室内の湿度上昇係数、Hd:曇り判定湿度、Hs:エンジン停止直前の車室内の検出湿度。
【0061】
ここで、曇り判定湿度推定手段42は、車両状況検出手段41により検出された車両が置かれた状況において、曇りが生じない湿度の下限値付近を、曇り判定湿度Hdとして推定する。曇り判定湿度推定手段42は、車両状況検出手段41により検出される車両が置かれた状況と、曇り判定湿度との相関マップに、該状況を適用して曇り判定湿度Hdを得る。
【0062】
なお、曇り判定湿度推定手段42が曇り判定湿度Hdを推定するときには、車両状況検出手段41は、車内温センサ31により検出した車室内の温度、外気温センサ32により検出した外気温、日射センサ33により検出した日射量、車速センサ34により検出した車両が停止する直前の車速、風向スイッチ35により設定されたブロアファン121による車室内への送風方向、空調スイッチ36により設定された空調条件等に基いて、車両が置かれた状況を検出する。
【0063】
また、車両状況検出手段41により検出される車両が置かれた状況と、曇り判定湿度との相関マップは実験やコンピュータシミュレーション等により決定され、該マップのデータは予めメモリ(図示しない)に保持されている。また、マップではなく、車両が置かれた状況と曇り判定湿度Hdとの相関式により、曇り判定湿度Hdを得るようにしてもよい。
【0064】
また、曇り発生推定時間決定手段46は、上記(3)における湿度上昇係数Kfを、(a)冷凍サイクル装置Aとブロアファン121が作動した状態でエンジン2を停止し、エンジン2の停止後もブロアファン121が作動を継続するときはKaに設定し、(b)冷凍サイクル装置Aが停止してブロアファン121が作動した状態でエンジン2を停止し、エンジン2の停止後もブロアファン121が作動を継続するときはKb(>Ka)に設定し、(c)ブロアファン121が停止した状態でエンジン2を停止し、エンジン2の停止後もブロアファン121が停止を継続するときはKc(>Kb)に設定する。
【0065】
そして、エンジン2を停止するときに冷凍サイクル装置Aとブロアファン121が作動していたときには、蒸発器12が冷却されている。そのため、エンジン2の停止により冷凍サイクル装置Aが停止しても、ブロアファン121が作動していれば、蒸発器12に供給される空気がある程度は除湿される。
【0066】
また、エンジン2の停止中にブロアファン121が作動している場合、車室内の空気の循環により窓ガラスが曇り難くなる。そこで、上記(a)〜(c)という3つの条件により、以下の式(4)に示すように湿度の上昇係数Kfを切換えることによって、曇り発生推定時間Tfを、窓ガラスに曇り難さに応じてより精度良く決定することができる。
【0067】
Ka < Kb < Kc ・・・・・ (4)
なお、本実施の形態では、上記(a)〜(c)により、Ka,Kb,Kcという3段階に分けて湿度上昇係数Kfを設定したが、例えば、ブロアファン121の風量や風向等によって、さらに細かい段階に分けて温度上昇係数Kfを設定してもよい。
【0068】
続くSTEP7で、エンジン停止時間決定手段43は、曇り発生推定時間Tfが室温上昇許容時間Tuよりも短いか否かを判断する。曇り発生推定時間Tfが室温上昇許容時間Ttよりも短いときはSTEP10に分岐し、エンジン停止時間決定手段43は、曇り発生推定時間Tfをエンジン停止時間Tsとする。そして、STEP9に進んで処理を終了する。
【0069】
一方、STEP7で、室温上昇許容時間Tuが曇り発生推定時間Tf以上であるときにはSTEP8に進む。そして、エンジン停止時間決定手段43は、室温上昇許容時間Tuをエンジン停止時間Tsとする。
【0070】
このように、曇り発生推定時間Tfが室温上昇許容時間Tuよりも短いときには、曇り発生推定時間Tfをエンジン停止時間Tsとすることによって、エンジン2の停止中に窓ガラスの曇りが生じることを回避することができる。
【0071】
次に、エンジン制御手段44は、図4に示したフローチャートを実行して、エンジン停止・再始動の処理を実行する。
【0072】
エンジン制御手段44は、STEP51でエンジン2の停止条件が成立しているか否かを判断する。ここで、エンジン2の停止条件として、例えば、(a)バッテリ18の残充電量が十分、(b)空調装置1がエンジン2の停止を許可している、(c)湿度センサ30の検出湿度Hsが曇り判定湿度Hdよりも低い、という3つの条件を全て満たすことが設定されている。
【0073】
そして、エンジン制御手段44は、STEP51でエンジン2の停止条件が成立したときにSTEP52に進んでエンジン2を停止し、エンジン2の停止条件が成立していないときにはSTEP58に分岐して処理を終了する。
【0074】
STEP52でエンジン2を停止した後にSTEP53に進み、エンジン制御手段44は、ブロアファン121を起動(ブロアファン121が既に作動であるときは作動を継続)する。また、STEP54で、エンジン制御手段44は、図2のSTEP8又はSTEP10で決定されたエンジン停止時間Tsを計時時間とするエンジン始動タイマをスタートさせる。そして、続くSTEP55でエンジン始動タイマがタイムアップしたときにSTEP56に進んでエンジン2を始動する。
【0075】
続くSTEP57で、エンジン制御手段44は、空調制御手段45を介して冷凍サイクル装置Aを起動してSTEP58に進み、処理を終了する。冷凍サイクル装置Aの起動により車室内の冷房と除湿が開始されるため、車室内の温度がさらに上昇して乗車している人が不快を感じるようになることを防止すると共に、窓ガラスが曇ることを防止することができる。
【0076】
なお、本実施の形態では、図3のSTEP6〜STEP8及びSTEP10により、曇り発生推定時間Tfを決定して、曇り発生推定時間Tfと室温上昇許容時間Tuのうち、短い方をエンジン停止時間Tsとしたが、曇り発生推定時間Tfを求めずに、室温上昇許容時間Tuを無条件にエンジン停止時間Tsとする場合にも、本発明の効果を得ることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、図2に示したように、蒸発器12の温度上昇係数KtをK1〜K6という6段階に切換えて設定したが、蒸発器12に供給される空気の温度等によって、蒸発器12の温度上昇係数Ktをさらに細かく切換えて設定してもよい。
【0078】
尚、上述した実施形態においては、本発明をハイブリッド車に適用した例を示したが、自動的にエンジンを停止し、再始動する自動アイドリングストップ機能を備えたアイドルストップ車両であれば、本発明の適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の車両の制御装置が搭載された車両の構成図。
【図2】蒸発器の温度上昇係数を決定するためのフローチャート。
【図3】エンジン停止時間を決定するためのフローチャート。
【図4】車室内の温度上昇を制限すると共に窓ガラスの曇りを防止して、エンジンを一時的に停止するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0080】
1…空調装置、2…エンジン、4…制御装置(車両の制御装置)、6…圧縮機、9…凝縮器、12…蒸発器、30…湿度センサ、31…車内温センサ、32…外気温センサ、33…日射センサ、34…車速センサ、35…風向スイッチ、36…空調スイッチ、41…車両状況検出装置、42…曇り判定湿度推定手段、43…エンジン停止時間決定手段、44…エンジン制御手段、45…空調制御手段、46…曇り発生推定時間決定手段、47…許容上限温度決定手段、121…ブロアファン、A…冷凍サイクル装置、G…モータ・ジェネレータ、H…ヒータコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、車外から車室内への空気の供給または車室内の空気の循環を行なうブロアファンと、冷媒循環路と該冷媒循環路に接続されて前記エンジンにより駆動される圧縮機と該冷媒循環路に接続されて前記ブロアファンによる車室内への空気の流通路中に設けられた蒸発器とを有して、該圧縮機と前記ブロアファンとを作動させて車室内の冷房を行なう車両に対して、所定の停止条件が成立したときにエンジンを停止し、その後所定のエンジン停止時間が経過した時にエンジンを始動するエンジン制御手段を備えた車両の制御装置であって、
前記ブロアファンの作動により前記蒸発器に供給される空気の温度を検出する供給空気温度検出手段と、
前記蒸発器の温度を検出する蒸発器温度検出手段と、
エンジンの停止直前における前記蒸発器温度検出手段の検出温度と前記供給空気温度検出手段の検出温度とに基いて、前記エンジン停止時間を決定するエンジン停止時間決定手段とを備え、
前記エンジン制御手段は、前記停止条件が成立してエンジンを停止したときに、エンジン停止中も前記ブロアファンを作動させ、前記エンジン停止時間が経過した時に、エンジンを始動して前記圧縮機を起動させることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記車両が置かれた状況を検出する車両状況検出手段と、
該車両状況検出手段により検出された状況の下で、車室内への空気の目標吹出し温度に応じた前記蒸発器の許容上限温度を決定する許容上限温度決定手段とを備え、
前記エンジン停止時間決定手段は、エンジンの停止直前における前記蒸発器温度検出手段の検出温度と前記許容上限温度との温度差が大きいほど、前記エンジン停止時間を長い時間に設定することを特徴とする請求項1記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記エンジン停止時間決定手段は、前記ブロアファンによる車室内への空気の吹出し量が多いほど、前記エンジン停止時間を短い時間に決定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記エンジン停止時間決定手段は、前記エンジンの停止中に、前記ブロアファンにより車室内の空気が前記蒸発器に供給されるときは、前記ブロアファンにより車外の空気が前記蒸発器に供給されるときよりも、前記エンジン停止時間を長い時間に設定することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記車両状況検出手段により検出された状況の下で、車両の窓ガラスに曇りが生じない湿度である曇り判定湿度を推定する曇り判定湿度推定手段と、
車室内の湿度を検出する湿度検出手段と、
エンジンの停止後に窓ガラスの曇りが生じるまでの推定時間である曇り発生推定時間を、エンジンの停止直前における前記湿度検出手段の検出湿度と前記曇り判定湿度との湿度差が大きいほど、長い時間に決定する曇り発生推定時間決定手段とを備え、
前記エンジン制御手段は、前記停止条件が成立してエンジンを停止した後、前記エンジン停止時間が経過する前に前記曇り発生推定時間が経過したときには、該曇り発生推定時間が経過した時に、エンジンを始動すると共に前記圧縮機を作動させることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−138708(P2009−138708A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318769(P2007−318769)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】