説明

車両の制御装置

【課題】 クラッチ締結動作中において、運転者が意図しない機関出力制御が行われること、及び機関回転数の吹け上がりを適切に防止する。
【解決手段】 車両の発進時においてエンジン回転数NEが低下すると、クラッチ締結フィードバック制御が開始される。アクセルペダルが踏み込まれ、かつエンジン回転数NEが目標回転数NOBJ以下であるときは、フィードバック制御の比例項CLFBP、積分項CLFBI、及び微分項CLFBDが算出され、これらを加算することによりクラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBが算出される。エンジン回転数NEが目標回転数NOBJを超えるとクラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBが前回値THCLFBBに維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関により駆動される車両の制御装置に関し、特に内燃機関と車両駆動系との間に設けられるクラッチの締結動作中に機関回転数が目標回転数と一致するように機関出力制御を行う制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クラッチを締結させるときに機関が停止することを防止するために、クラッチの締結動作中に機関回転数が目標回転数と一致するように機関出力制御を行う制御装置が示されている。この装置によれば、機関出力制御は主としてスロットル弁開度を制御することにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−121647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の制御装置では、運転者がアクセルペダルを操作してクラッチが完全に締結する前からアクセルペダル操作量を増加させたような場合には、アクセルペダル操作量にかかわらず、機関回転数を目標回転数に維持するためにスロットル弁開度を低下させる方向の制御が行われることがある。そのような制御が行われると、運転者の意図した加速動作が行われないため、運転者に違和感を与えるという課題がある。
【0005】
また特許文献1には、クラッチ締結動作が完了した直後にクラッチ開放動作が行われた場合における機関回転数の急増(いわゆる吹け上がり)を防止するための手法として、燃料供給停止を併用することが示されているが、燃料供給停止及び再開によって空燃比が急変し排気特性を一時的に悪化させるおそれがある。
【0006】
本発明は上述した点を考慮してなされたものであり、クラッチ締結動作中において、運転者が意図しない機関出力制御が行われること、及び機関回転数の吹け上がりを適切に防止することができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関(1)と、該機関と車両駆動系との間に設けられたクラッチ(23)とを備える車両の制御装置において、前記車両の運転者により操作される機関出力操作手段と、前記機関の回転数(NE)を検出する回転数検出手段と、前記クラッチの締結動作中において前記機関回転数(NE)がクラッチ締結目標回転数(NOBJ)と一致するように前記機関の出力を制御するためのクラッチ締結フィードバック制御量(THCLFB)を算出し、該クラッチ締結フィードバック制御量(THCLFB)を用いて前記機関の出力を制御するクラッチ締結フィードバック制御を実行するクラッチ締結フィードバック制御手段とを備え、前記クラッチ締結フィードバック制御手段は、前記機関回転数(NE)が前記クラッチ締結目標回転数(NOBJ)を下回ったときに、前記クラッチ締結フィードバック制御を開始し、前記機関出力操作手段が操作され(AP>0)、かつ前記機関回転数(NE)が前記クラッチ締結目標回転数(NOBJ)を超えている回転数超過期間においては、該回転数超過期間開始直前の前記クラッチ締結フィードバック制御量(THCLFBB)を維持することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制御装置において、前記クラッチ締結フィードバック制御手段は、前記機関回転数(NE)と前記クラッチ締結目標回転数(NOBJ)との偏差(DNOBJ)に比例する比例項(CLFBP)、前記偏差の積算値(IDNOBJ)に比例する積分項(CLFBI)、及び前記偏差の変化量(DDNOBJ)に比例する微分項(CLFBD)を用いて前記クラッチ締結フィードバック制御量(THCLFB)を算出し、前記機関回転数(NE)が前記クラッチ締結目標回転数(NOBJ)を超えているときに前記比例項(CLFBP)を「0」に設定するとともに、前記機関回転数(NE)が増加しているときに前記微分項(CLFBD)を「0」に設定することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、内燃機関(1)と、該機関と車両駆動系との間に設けられたクラッチ(23)とを備える車両の制御装置において、前記機関の回転数(NE)を検出する回転数検出手段と、前記クラッチの締結動作中において前記機関回転数(NE)がクラッチ締結目標回転数(NOBJ)と一致するように前記機関の出力を制御するためのクラッチ締結フィードバック制御量(THCLFB)を算出し、該クラッチ締結フィードバック制御量(THCLFB)を用いて前記機関の出力を制御するクラッチ締結フィードバック制御を実行するクラッチ締結フィードバック制御手段とを備え、前記クラッチ締結フィードバック制御手段は、前記機関回転数(NE)が前記クラッチ締結目標回転数(NOBJ)を下回ったときに、前記クラッチ締結フィードバック制御を開始し、前記機関回転数(NE)と前記クラッチ締結目標回転数(NOBJ)との偏差(DNOBJ)に比例する比例項(CLFBP)、前記偏差の積算値(IDNOBJ)に比例する積分項(CLFBI)、及び前記偏差の変化量(DDNOBJ)に比例する微分項(CLFBD)を用いて前記クラッチ締結フィードバック制御量(THCLFB)を算出し、前記機関回転数(NE)が前記クラッチ締結目標回転数(NOBJ)を超えている回転数超過期間において前記比例項(CLFBP)を「0」に設定するとともに、前記機関回転数(NE)が増加しているときに前記微分項(CLFBD)を「0」に設定することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の車両の制御装置において、前記機関のアイドル状態において前記機関回転数(NE)がアイドル目標回転数(NOBJIDL)と一致するようにアイドルフィードバック制御量(THIDLFB)を算出し、前記アイドルフィードバック制御量(THIDLFB)を用いて前記アイドル状態における前記機関出力を制御するアイドルフィードバック制御手段をさらに備え、前記アイドルフィードバック制御手段は、前記機関回転数(NE)と前記アイドル目標回転数(NOBJIDL)の偏差に比例する比例項(IDLFBP)、前記偏差の積算値に比例する積分項(IDLFBI)、及び前記偏差の変化量に比例する微分項(IDLFBD)を用いて前記アイドルフィードバック制御量(THIDLFB)を算出し、前記クラッチ締結フィードバック制御量の算出に適用される前記比例項(CLFBP)及び微分項(CLFBD)の制御ゲイン(|GCLP|,|GCLD|)は、前記アイドルフィードバック制御量の算出に適用される前記比例項及び微分項の制御ゲイン(|GIDLP|,|GIDLD|)より大きな値に設定されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両の制御装置において、前記クラッチ締結目標回転数(NOBJ)は、前記アイドル目標回転数(NOBJIDL)と同一であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れか1項に記載の車両の制御装置において、前記車両の車速(VP)を検出する車速検出手段をさらに備え、前記クラッチ締結フィードバック制御手段は、前記車速(VP)が車速閾値(VPCLFB)に達した時点でフィードバック制御を終了することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車両の制御装置において、前記車速閾値(VPCLFB)は、前記クラッチ締結目標回転数(NOBJ)に応じて設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、クラッチの締結動作中において機関回転数がクラッチ締結目標回転数と一致するように機関の出力を制御するためのクラッチ締結フィードバック制御量が算出され、該クラッチ締結フィードバック制御量を用いて機関出力を制御するクラッチ締結フィードバック制御が実行される。機関回転数がクラッチ締結目標回転数を下回ったときに、クラッチ締結フィードバック制御が開始され、機関出力操作手段が操作され、かつ機関回転数がクラッチ締結目標回転数を超えている回転数超過期間においては、該回転数超過期間開始直前のクラッチ締結フィードバック制御量が維持される。したがって、回転数超過期間においては機関出力のフィードバック制御は行われないため、運転者の意図する機関出力の増加が行われる。また、回転数超過期間においてクラッチ締結フィードバック制御量が維持されるので、機関出力操作手段の操作が中止された場合(アクセルペダルが戻された場合)において機関が停止することを回避できる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、機関回転数とクラッチ締結目標回転数との偏差に応じて算出される比例項、積分項、及び微分項を用いてクラッチ締結フィードバック制御量が算出され、機関回転数がクラッチ締結目標回転数を超えているときは比例項が「0」に設定されるとともに、機関回転数が増加しているときは微分項が「0」に設定される。これにより、クラッチ締結フィードバック制御におけるハンチング動作を防止することができる。また、機関回転数がクラッチ締結目標回転数を上回っているときでも、積分項は偏差に応じた値に設定され、さらに機関回転数が増加し始めると微分項が「0」に設定されるので、クラッチの締結度合が減少して機関負荷が低下した場合でも、機関回転数の吹け上がりを防止することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、クラッチの締結動作中において機関回転数がクラッチ締結目標回転数と一致するように機関の出力を制御するためのクラッチ締結フィードバック制御量が算出され、該クラッチ締結フィードバック制御量を用いて機関出力を制御するクラッチ締結フィードバック制御が実行される。機関回転数がクラッチ締結目標回転数を下回ったときに、クラッチ締結フィードバック制御が開始され、機関回転数がクラッチ締結目標回転数を超えているときは比例項が「0」に設定されるとともに、機関回転数が増加しているときは微分項が「0」に設定されるので、クラッチ締結フィードバック制御におけるハンチング動作を防止することができる。また、機関回転数がクラッチ締結目標回転数を超えているときでも、積分項は偏差に応じた値に設定され、さらに機関回転数が増加し始めると微分項が「0」に設定されるので、クラッチの締結度合が減少して機関負荷が低下した場合でも、機関回転数の吹け上がりを防止することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、機関のアイドル状態において機関回転数がアイドル目標回転数と一致するようにアイドルフィードバック制御量が算出され、アイドルフィードバック制御量を用いてアイドル状態における機関出力を制御するアイドルフィードバック制御が行われる。機関回転数とアイドル目標回転数の偏差に応じた比例項、積分項、及び微分項を用いてアイドルフィードバック制御量が算出され、クラッチ締結フィードバック制御量の算出に適用される比例項及び微分項の制御ゲインは、アイドルフィードバック制御量の算出に適用される比例項及び微分項の制御ゲインより大きな値に設定される。したがって、クラッチ締結フィードバック制御における目標回転数への収束速度を、アイドルフィードバック制御より高めることができる。また、機関回転数が目標回転数を超えているときは比例項が「0」に設定され、機関回転数が増加しているときは微分項が「0」に設定されるので、ゲインを高めることに起因するハンチングを防止できる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、クラッチ締結目標回転数は、アイドル目標回転数と同一に設定されるので、目標回転数の設定工数を削減でき、制御を単純化することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、車速が車速閾値に達した時点でクラッチ締結フィードバック制御が終了されるので、機関停止が発生しない安定した状態でクラッチ締結フィードバック制御を終了することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、車速閾値は、クラッチ締結目標回転数に応じて設定される。例えば機関の暖機状態または補機の作動状態に応じてクラッチ締結目標回転数が変更される場合には、車速閾値をクラッチ締結目標回転数に応じて設定することにより、クラッチ締結目標回転数が変化しても、クラッチが完全に締結された状態でクラッチ締結フィードバック制御を終了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両を駆動する内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
【図2】クラッチ締結フィードバック制御の実行条件を判定する処理のフローチャートである。
【図3】スロットル弁の目標開度(THCMD)を算出する処理のフローチャートである。
【図4】図3の処理で実行されるTHCLFB算出処理のフローチャートである。
【図5】図4の処理で参照されるテーブルを示す図である。
【図6】図2〜4の処理を説明するためのタイムチャートである。
【図7】図2〜4の処理を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる車両を駆動する内燃機関及び自動変速機と、それらの制御装置の構成を示す図である。内燃機関(以下単に「エンジン」という)1は、吸気管2を有し、吸気管2の途中にはスロットル弁3が配置されている。スロットル弁3には、スロットル弁3の開度THを検出するスロットル弁開度センサ4が設けられており、その検出信号が電子制御ユニット(以下「ECU」という)5に供給される。スロットル弁3には、スロットル弁3を駆動するアクチュエータ7が接続されており、アクチュエータ7は、ECU5によりその作動が制御される。
【0022】
燃料噴射弁6は図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にECU5に電気的に接続されて当該ECU5からの信号により燃料噴射弁6の開弁時間が制御される。また各気筒の点火プラグ13は、ECU5に接続されており、点火信号がECU5から供給される。
【0023】
吸気管2のスロットル弁3の上流側には吸入空気量GAIR[g/sec]を検出する吸入空気量センサ14が装着され、エンジン1の本体にはエンジン冷却水温TWを検出する冷却水温センサ9が取り付けられており、これらのセンサの検出信号はECU5に供給される。
【0024】
ECU5には、エンジン1のクランク軸8の回転角度を検出するクランク角度位置センサ10が接続されており、クランク軸の回転角度に応じた信号がECU5に供給される。クランク角度位置センサ10は、エンジン1の特定の気筒の所定クランク角度位置でパルス(以下「CYLパルス」という)を出力する気筒判別センサ、各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)に関し所定クランク角度前のクランク角度位置でTDCパルスを出力するTDCセンサ及びTDCパルスより短い一定クランク角周期(例えば6度周期)でCRKパルスを発生するCRKセンサから成り、CYLパルス、TDCパルス及びCRKパルスがECU5に供給される。これらの信号パルスは、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御及びエンジン回転数(エンジン回転速度)NEの検出に使用される。
【0025】
エンジン1のクランク軸8はクラッチ23を介して手動変速機25のメインシャフト24に接続されており、手動変速機25の出力軸26は図示しない動力伝達機構を介して当該車両の駆動輪を駆動する。クラッチ23は、当該車両に設けられたクラッチペダルを運転者が操作することにより、締結/非締結状態が操作可能に構成されている。
【0026】
ECU5には、エンジン1により駆動される車両のアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセルペダル操作量」という)APを検出するアクセルセンサ15、及びエンジン1により駆動される車両の車速VPを検出する車速センサ16が接続されており、その検出信号がECU5に供給される。さらに、手動変速機25がニュートラル状態にあるときオンするニュートラルスイッチ17、及び当該車両のクラッチペダルが踏み込まれると(クラッチ23が非締結状態にあるとき)オンするクラッチスイッチ18が、ECU5に接続されており、これらのスイッチの切換信号がECU5に供給される。クラッチスイッチ17は、クラッチペダル(図示せず)が最も踏み込まれた状態でオンし、クラッチを締結するためにクラッチペダルを戻す操作が開始されるとオフする。
【0027】
ECU5は、各種センサ及びスイッチからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理回路(以下「CPU」という)、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路、アクチュエータ7、燃料噴射弁6、点火プラグ13などに駆動信号を供給する出力回路から構成される。
【0028】
ECU5は、上述したセンサの検出信号に基づいて、燃料噴射弁6の開弁時間の制御、及び点火プラグ13の点火時期制御を行うとともに、スロットル弁3の目標開度THCMDを算出し、検出したスロットル弁開度THが目標開度THCMDに一致するようにアクチュエータ7を駆動するスロットル弁開度制御を行う。このスロットル弁開度制御によって、エンジン1の吸入空気量が制御され、燃料噴射弁6による燃料噴射量は吸入空気量に応じた値に制御されるので、エンジン1の出力が目標開度THCMDに応じた値に制御される。
【0029】
本実施形態では、車両発進時においてクラッチ23が締結されるときに、エンジン回転数NEが目標回転数NOBJと一致するように、スロットル弁開度THを制御するクラッチ締結フィードバック制御が行われる。またニュートラルスイッチ17がオフであるときに、運転者がアクセルペダルを操作せずに、クラッチ23を締結する操作を行った場合にも、このクラッチ締結フィードバック制御が実行され、エンジン停止が回避されるとともに、目標回転数NOBJに対応する低車速で走行を行う構成が採用されている。
【0030】
図2は、クラッチ締結フィードバック制御の実行条件を判定する処理のフローチャートである。この処理は、ECU5のCPUで所定時間毎に実行される。
ステップS11では、車速VPが所定車速VPDRVOFF(例えば5km/h)より低いか否かを判別し、この答が肯定(YES)であるときは、ニュートラルスイッチフラグFNSWが「1」であるか否かを判別する(ステップS12)。この答が否定(NO)、すなわちニュートラルスイッチ17がオフされており、変速機25のギアが噛合しているインギア状態にあるときは、さらにクラッチスイッチフラグFCLSWが「1」であるか否かを判別する(ステップS13)。
【0031】
ステップS13の答が否定(NO)、すなわちクラッチスイッチ18がオフされており、クラッチペダルが踏み込まれていないときは、前回クラッチスイッチフラグFCLSWZDRVOFが「1」であるか否かを判別する(ステップS14)。前回クラッチスイッチフラグFCLSWZDRVOFは、本処理の前回実行時におけるクラッチスイッチ18のオンオフ状態を示すフラグである。
【0032】
ステップS11の答が否定(NO)、またはステップS12若しくはS13の答が肯定(YES)、またはステップS14の答が否定(NO)であるときは、車両発進条件が不成立であって、クラッチ締結フィードバック制御の実行条件も不成立と判定し、発進フラグFSTRTを「0」に設定する(ステップS15)とともに、クラッチ締結フィードバック制御フラグFCLFBも「0」に設定する(ステップS20)。
【0033】
一方、ステップS14の答が肯定(YES)であるとき、すなわちクラッチスイッチ18がオンからオフに変化し、クラッチ23の締結動作が開始されたときは、発進フラグFSTRTを「1」に設定し(ステップS16)、下記式(1)により、回転数偏差DNOBJを算出する(ステップS17)。
DNOBJ=NE−NOBJ (1)
【0034】
ステップS18では、回転数偏差DNOBJが負の所定閾値DNDRVOF(例えば−50rpm)より小さいか否かを判別し、その答が肯定(YES)であってエンジン回転数NEの低下量が|DNDRVOF|を超えているときは、クラッチ締結フィードバック制御の実行条件が成立している判定し、クラッチ締結フィードバック制御フラグFCLFBを「1」に設定する(ステップS19)。
【0035】
ステップS18の答が否定(NO)であって、エンジン回転数NEが目標回転数NOBJより高いときまたは低下量が小さいときは、直ちに処理を終了する。したがって、クラッチ締結フィードバック制御フラグFCLFBは前回値に維持される。
【0036】
図2の処理によれば、車両発進時におけるクラッチ締結動作中において、目標回転数NOBJからの、エンジン回転数NEの低下量が|DNDRVOF|を超えると、クラッチ締結フィードバック制御が開始される(クラッチ締結フィードバック制御フラグFCLFBが「1」に設定される)。その後、車速VPが所定車速VPDRVOFFに達したとき、変速機25がニュートラル状態となったとき、またはクラッチスイッチ18がオンしたとき(クラッチ23が非締結状態となったとき)に、クラッチ締結フィードバック制御が終了する(クラッチ締結フィードバック制御フラグFCLFBが「0」に戻される)。
【0037】
図3は、スロットル弁の目標開度THCMDを算出する処理のフローチャートである。この処理はECU5のCPUで所定時間毎に実行される。
ステップS21では、アクセルペダル操作量AP及びエンジン回転数NEに応じて基本目標開度THBを算出する。基本目標開度THBは、アクセルペダル操作量APが増加するほど増加するように設定される。ステップS22では、クラッチ締結フィードバック制御フラグFCLFBが「1」であるか否かを判別する。この答が肯定(YES)であるときは、図4に示すTHCLFB算出処理を実行し、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBを算出する(ステップS23)。その後ステップS34に進む。
【0038】
ステップS22の答が否定(NO)であるときは、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBが「0」より大きいか否かを判別する(ステップS24)。その答が否定(NO)であるときは直ちにステップS26に進む。THCLFB>0であるときは、下記式(2)により、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBを更新する(ステップS25)。式(2)のTHCLFBBは、クラッチ締結フィードバック制御開度の前回値であり、DTHCLは所定減算項である。
THCLFB=THCLFBB−DTHCL (2)
【0039】
ステップS26では、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBが「0」より小さいか否かを判別し、その答が否定(NO)であるときは直ちにステップS28に進む。THCLFB<0であるときは、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBを「0」に設定する(ステップS27)。ステップS24〜S27により、クラッチ締結フィードバック制御の終了直後において、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBを「0」まで漸減させる過渡制御が行われる。
【0040】
ステップS28では、アイドルフィードバック制御フラグFIDLFBが「1」であるか否かを判別する。アイドルフィードバック制御フラグFIDLFBは、エンジン1のアイドル状態で、エンジン回転数NEが目標回転数NOBJと一致するようにフィードバック制御(アイドルフィードバック制御)を行うとき「1」に設定される。ステップS28の答が否定(NO)であるときは、アイドルフィードバック制御開度THIDLFBを「0」に設定し(ステップS33)、ステップS34に進む。
【0041】
ステップS28の答が肯定(YES)であるときは、下記式(3)及び(4)により、偏差積算値IDNOBJ及び偏差変化量DDNOBJを算出する。本実施形態では、アイドル状態での目標回転数(アイドル目標回転数)NOBJIDLが、上記クラッチ締結制御における目標回転数NOBJと同一回転数に設定されているので、式(3)及び式(4)では上記回転数偏差DNOBJがそのまま適用される。式(3)のIDNOBJBは、偏差積算値IDNOBJの前回値であり、式(4)のDNOBJBは、回転数偏差DNOBJの前回値である。
IDNOBJ=IDNOBJB+DNOBJ (3)
DDNOBJ=DNOBJ−DNOBJB (4)
【0042】
ステップS30では、下記式(5)、(6)、及び(7)により、アイドルFB比例項IDLFBP、アイドルFB積分項IDLFBI、及びアイドルFB微分項IDLFBDを算出する。これらの式においてGIDLP,GIDLI,及びGIDLDは、それぞれ比例項ゲイン、積分項ゲイン、及び微分項ゲインであり、それぞれ負の所定値に設定される。
IDLFBP=GIDLP×DNOBJ (5)
IDLFBI=GIDLI×IDNOBJ (6)
IDLFBD=GIDLD×DDNOBJ (7)
【0043】
ステップS31では、アイドルFB比例項IDLFBP、アイドルFB積分項IDLFBI、及びアイドルFB微分項IDLFBDを下記式(8)に適用し、アイドルフィードバック制御開度THIDLFBを算出する。
THIDLFB=IDLFBP+IDLFBI+IDLFBD (8)
【0044】
ステップS32では、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBを「0」に設定する。これにより、クラッチ締結フィードバック制御から直ちにアイドルフィードバック制御に移行したときは、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBを漸減させる過渡制御を行うことなく直ちに「0」に戻される。
【0045】
ステップS34では、エンジン暖機中や空調装置などの補機の作動状態に応じて補正開度THCを算出する。ステップS35では、基本目標開度THB、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFB、アイドルフィードバック制御開度THIDLFB、及び補正開度THCを、下記式(9)に適用し、目標開度THCMDを算出する。
THCMD=THB+THCLFB+THIDLFB+THC (9)
【0046】
図4は、図3のステップS23で実行されるTHCLFB算出処理のフローチャートである。ステップS41では、アクセルペダル操作量APが「0」より大きいか否かを判別し、その答が肯定(YES)であるときはエンジン回転数NEが目標回転数NOBJより高いか否かを判別する(ステップS42)。
【0047】
ステップS41またはS42の答が否定(NO)であるときは、回転数偏差DNOBJに応じて図5(a)に示すCLFBPテーブルを検索し、クラッチ締結FB比例項CLFBPを算出する(ステップS43)。CLFBPテーブルは、回転数偏差DNOBJが負の範囲(NE<NOBJ)で、回転数偏差DNOBJが減少するほどクラッチ締結FB比例項CLFBPが増加するように(ただし、上側リミット値CLFBPHを超えないように)設定され、回転数偏差DNOBJが「0」以上の範囲(NE≧NOBJ)で、クラッチ締結FB比例項CLFBPが「0」に設定されている。クラッチ締結FB比例項CLFBPが変化する範囲における直線の傾きが、比例項ゲインGCLP(<0)に相当する。
【0048】
ステップS44では、図3のステップS29と同様に、偏差積算値IDNOBJ及び偏差変化量DDNOBJを算出する。ステップS45では、偏差積算値IDNOBJに応じて図5(b)に示すCLFBIテーブルを検索し、クラッチ締結FB積分項CLFBIを算出する。CLFBIテーブルは、偏差積算値IDNOBJが負の範囲で、偏差積算値IDNOBJが減少するほどクラッチ締結FB積分項CLFBIが増加するように(ただし、上側リミット値CLFBIHを超えないように)設定され、偏差積算値IDNOBJが「0」以上でかつ所定値ID0以下の範囲で、クラッチ締結FB積分項CLFBIが「0」に設定され、偏差積算値IDNOBJが所定値ID0より大きい範囲で、偏差積算値IDNOBJが増加するほどクラッチ締結FB積分項CLFBIが減少するように(ただし、下側リミット値CLFBILを下回らないように)設定されている。クラッチ締結FB積分項CLFBIが変化する範囲における直線の傾きが、積分項ゲインGCLI(<0)に相当する。
【0049】
ステップS46では、偏差変化量DDNOBJに応じて図5(c)に示すCLFBDテーブルを検索し、クラッチ締結FB微分項CLFBDを算出する。CLFBDテーブルは、偏差変化量DDNOBJが負の範囲で、偏差変化量DDNOBJが減少するほどクラッチ締結FB微分項CLFBDが増加するように(ただし、上側リミット値CLFBDHを超えないように)設定され、偏差変化量DDNOBJが「0」以上の範囲で、クラッチ締結FB微分項CLFBDが「0」に設定されている。クラッチ締結FB微分項CLFBDが変化する範囲における直線の傾きが、微分項ゲインGCLD(<0)に相当する。
【0050】
ステップS47では、クラッチ締結FB比例項CLFBP、クラッチ締結FB積分項CLFBI、及びクラッチ締結FB微分項CLFBDを下記式(10)に適用し、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBを算出する。
THCLFB=CLFBP+CLFBI+CLFBD (10)
【0051】
図6及び図7は、上述したクラッチ締結フィードバック制御を説明するためのタイムチャートであり、発進フラグFSTRT、クラッチ締結フィードバック制御フラグFCLFB、クラッチペダル位置PCL、クラッチ締結負荷LCLE、アクセルペダル操作量AP、エンジン回転数NE、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFB、及び車速VPの推移が示されている。図6はアクセルペダルが踏み込まれた例に対応し、図7はアクセルペダルの操作が行われず、クラッチの締結動作のみが行われた例に対応する。
【0052】
図6に示す例において、時刻t0より少し前にアクセルペダルの踏み込みが開始され、時刻t0においてクラッチペダルが最も踏み込まれた位置P1から開放位置P0に向かって戻す操作が開始され、クラッチスイッチフラグFCLSWが「1」から「0」に変化し、発進フラグFSTRTが「1」に設定される。時刻t1においてクラッチ23の締結(クラッチ板の接触)が開始され、クラッチ締結負荷LCLEが増加し始め、エンジン回転数NEが低下し始める。時刻t2においてエンジン回転数NEが目標回転数NOBJより|DNDRVOF|だけ低下し、クラッチ締結フィードバック制御フラグFCLFBが「1」に設定される。その結果、クラッチ締結フィードバック制御が開始されて、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBが急激に増加し、エンジン回転数NEの減少が止まって増加し始める。時刻t3においてエンジン回転数NEが目標回転数NOBJを超えるため、その後はクラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBが、時刻t3時点の値に維持される(時刻t4まで)。時刻t4において車速VPが所定車速VPDRVOFFに達し、クラッチ締結フィードバック制御フラグFCLFB及び発進フラグFSTRTが「0」に戻され、クラッチ締結フィードバック制御が終了する。その後、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBは「0」となるまで漸減される。
【0053】
図6(g)に示す破線は、時刻t3〜t4の回転数超過期間において、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBを前回値保持としない場合における推移を示す。この破線で示すようにクラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBが減少することにより、エンジン回転数NEが目標回転数NOBJに維持されるが、運転者はアクセルペダルを踏み込んでいるため、運転者に違和感を与えることなる。本実施形態によれば、そのような課題が解決され、車速VPを増加させつつクラッチ締結動作を円滑に完了することができる。
【0054】
図7に示す例においては、アクセルペダル操作量APは「0」に維持されており、時刻t10においてクラッチペダルを戻す操作が開始され、発進フラグFSTRTが「1」に設定される。時刻t11においてクラッチ23の締結(クラッチ板の接触)が開始され、クラッチ締結負荷LCLEが増加し始め、エンジン回転数NEが低下し始める。時刻t12においてエンジン回転数NEが目標回転数NOBJより|DNDRVOF|だけ低下し、クラッチ締結フィードバック制御フラグFCLFBが「1」に設定される。その結果、クラッチ締結フィードバック制御が開始されて、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBが急激に増加し、エンジン回転数NEの減少が止まって増加し始める。その後、エンジン回転数NEが目標回転数NOBJに達し、目標回転数NOBJに維持される。そのときクラッチ23の締結度合が増加する(すべりが減少する)ので、車速VPは増加する。時刻t13において、車速VPが所定車速VPDRVOFFに達し、クラッチ締結フィードバック制御フラグFCLFB及び発進フラグFSTRTが「0」に戻され、クラッチ締結フィードバック制御が終了する。その後、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBは「0」となるまで漸減される。
【0055】
図7に示すように本実施形態によれば、アクセルペダルを踏み込まずにクラッチ締結動作が行われた場合には、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBを前回値に維持する制御は行われないが、エンジン回転数NEが目標回転数NOBJを超えると比例項CLFBPが「0」に設定されるとともに、偏差変化量DDNOBJが「0」より大きいとき、すなわちエンジン回転数NEが上昇しているときは、微分項CLFBDが「0」に設定されるので、エンジンの停止及び吹け上がりを防止しつつ、円滑なクラッチ締結動作を行うことができる。
【0056】
なお、クラッチ締結フィードバック制御実行中にクラッチスイッチ18がオンしたとき(クラッチ23が非締結状態となったとき)は、車速VPがアイドル判定用所定車速VPIDL(例えば3km/h)以下であれば、直ちにアイドルフィードバック制御に移行する。その場合には、図3のステップS32によってクラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBは直ちに「0」に戻され、エンジンの吹け上がりが防止される。
【0057】
また図3の処理によれば、クラッチ締結フィードバック制御実行中はアイドルフィードバック制御開度THIDLFBは、アイドルフィードバック制御実行時の最終値に保持されるので、クラッチ締結フィードバック制御から直ちにアイドルフィードバック制御に移行したときに、目標回転数NOBJへの収束を早める効果が得られる。
【0058】
以上のように本実施形態では、クラッチ23の締結動作中においてエンジン回転数NEが目標回転数NOBJと一致するようにクラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBが算出され、クラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBを用いてエンジン出力(スロットル弁開度TH)を制御するクラッチ締結フィードバック制御が実行される。エンジン回転数NEが目標回転数NOBJより|DNDRVOF|だけ低下したときに、クラッチ締結フィードバック制御が開始される。アクセルペダルが踏み込まれ、かつエンジン回転数NEが目標回転数NOBJを超えている回転数超過期間においては、該回転数超過期間開始直前のクラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBが維持される。したがって、回転数超過期間においてはエンジン出力のフィードバック制御は行われないため、運転者の意図するエンジン出力の増加が行われる。また、回転数超過期間においてクラッチ締結フィードバック制御開度THCLFBを「0」に戻さずに回転数超過期間開始直前の値に維持するようにしたので、アクセルペダルが戻された場合においてエンジンが停止することを回避できる。
【0059】
また図5に示すテーブルを用いて比例項CLFBP、積分項CLFBI、及び微分項CLFBDを設定することにより、エンジン回転数NEが目標回転数NOBJを超えているときに比例項CLFBPが「0」に設定されるとともに、偏差変化量DDNOBJが「0」より大きく回転数偏差DNOBJが増加しているとき、すなわちエンジン回転数NEが増加しているときに微分項CLFBDが「0」に設定されるので、クラッチ締結フィードバック制御におけるハンチング動作を防止することができる。また、エンジン回転数NEが目標回転数NOBJを超えているときでも、積分項CLFBIは偏差積算値IDNOBJに応じた値に設定され、さらにエンジン回転数NEが増加し始めると微分項CLFBDが「0」に設定されるので、クラッチの締結度合が減少してエンジン負荷が低下した場合でも、エンジン回転数NEの吹け上がりを防止することができる。
【0060】
また本実施形態では、クラッチ締結フィードバック制御における比例項ゲインGCLP及び微分項ゲインGCLDの絶対値は、それぞれアイドルフィードバック制御における比例項ゲインGIDLP及び微分項ゲインGIDLDの絶対値より大きな値に設定されている。この設定により、クラッチ締結フィードバック制御における目標回転数NOBJへの収束速度を、アイドルフィードバック制御より高めることができる。また、回転数偏差DNOBJが「0」より大きいときには、比例項CLFBPが「0」に設定されるとともに、回転数偏差DNOBJが増加しているとき(DDNOBJ>0であるとき)には、微分項CLFBDが「0」に設定されるので、比例項ゲインGCLP及び微分項ゲインGCLDの絶対値を大きくすることに起因するハンチングを防止できる。
【0061】
また本実施形態では、クラッチ締結フィードバック制御の目標回転数と、アイドルフィードバック制御の目標回転数と同一の目標回転数NOBJに設定するようにしたので、目標回転数の設定工数を削減でき、制御を単純化することができる。
【0062】
また車速VPが所定車速VPDRVOFFに達した時点でクラッチ締結フィードバック制御が終了されるので、エンジンストールが発生しない安定した状態でクラッチ締結フィードバック制御を終了することができる。
【0063】
本実施形態では、アクセルペダルが機関出力操作手段に相当し、クランク角度位置センサ10及び車速センサ12が、それぞれ回転数検出手段および車速検出手段に相当し、スロットル弁3及びアクチュエータ7がクラッチ締結フィードバック制御手段及びアイドルフィードバック制御手段の一部を構成し、ECU5がクラッチ締結フィードバック制御手段及びアイドルフィードバック制御手段の一部を構成する。具体的には、図2の処理、図3のステップS22〜S27、及び図4の処理がクラッチ締結フィードバック制御手段に相当し、図3のステップS28〜S33がアイドルフィードバック制御手段に相当する。
【0064】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、以下に示すような種々の変形が可能である。
[変形例1]
上述した実施形態では、図2のステップS18において回転数偏差DNOBJが所定閾値DNDRVOFを下回ったときに、クラッチ締結フィードバック制御を開始するようにしたが、所定閾値DNDRVOFを「0」に設定し、エンジン回転数NEが目標回転数NOBJを下回ったときに、クラッチ締結フィードバック制御を開始するようにしてもよい。
【0065】
[変形例2]
上述した実施形態では、クラッチ締結フィードバック制御を終了する時点を判定するための車速閾値VPCLFBを所定車速VPDRVOFFに設定するようにしたが(図2,ステップS11)、アイドル目標回転数NOBJIDLは、エンジン1の暖機状態やエンジン1により駆動される補機の作動状態に応じて変更されるので、クラッチ締結目標回転数NOBJも同様に変更し、上記車速閾値VPCLFBをクラッチ締結目標回転数NOBJに比例する値に設定するようにしてもよい。車速閾値VPCLFBは、クラッチ23の締結完了を判定するための閾値であり、クラッチの完全締結状態(滑りがない状態)では、エンジン回転数NEと車速VPは比例する。したがって、車速閾値VPCLFBをクラッチ締結目標回転数NOBJに比例する値に設定することにより、クラッチの完全締結状態を正確に判定することができ、最適なタイミングでクラッチ締結フィードバック制御を終了することができる。
【0066】
[その他の変形例]
上述した実施形態では、エンジン出力のフィードバック制御量として、スロットル弁の目標開度THCMDを用いたが、ディーゼルエンジンの制御装置では、燃料供給量(燃料噴射量)をフィードバック制御量として用いてもよい。またクラッチ締結目標回転数NOBJは、アイドル目標回転数NOBJIDLとは異なる値に設定してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 内燃機関
3 スロットル弁(クラッチ締結フィードバック制御手段、アイドルフィードバック制御手段)
5 電子制御ユニット(クラッチ締結フィードバック制御手段、アイドルフィードバック制御手段)
6 燃料噴射弁
7 アクチュエータ(クラッチ締結フィードバック制御手段、アイドルフィードバック制御手段)
10 クランク角度位置センサ(回転数検出手段)
16 車速センサ(車速検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、該機関と車両駆動系との間に設けられたクラッチとを備える車両の制御装置において、
前記車両の運転者により操作される機関出力操作手段と、
前記機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記クラッチの締結動作中において前記機関回転数がクラッチ締結目標回転数と一致するように前記機関の出力を制御するためのクラッチ締結フィードバック制御量を算出し、該クラッチ締結フィードバック制御量を用いて前記機関の出力を制御するクラッチ締結フィードバック制御を実行するクラッチ締結フィードバック制御手段とを備え、
前記クラッチ締結フィードバック制御手段は、前記機関回転数が前記クラッチ締結目標回転数を下回ったときに、前記クラッチ締結フィードバック制御を開始し、前記機関出力操作手段が操作されかつ前記機関回転数が前記クラッチ締結目標回転数を超えている回転数超過期間においては、該回転数超過期間開始直前の前記クラッチ締結フィードバック制御量を維持することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記クラッチ締結フィードバック制御手段は、前記機関回転数と前記クラッチ締結目標回転数との偏差に比例する比例項、前記偏差の積算値に比例する積分項、及び前記偏差の変化量に比例する微分項を用いて前記クラッチ締結フィードバック制御量を算出し、前記機関回転数が前記クラッチ締結目標回転数を超えているときに前記比例項を「0」に設定するとともに、前記機関回転数が増加しているときに前記微分項を「0」に設定することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
内燃機関と、該機関と車両駆動系との間に設けられたクラッチとを備える車両の制御装置において、
前記機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記クラッチの締結動作中において前記機関回転数がクラッチ締結目標回転数と一致するように前記機関の出力を制御するためのクラッチ締結フィードバック制御量を算出し、該クラッチ締結フィードバック制御量を用いて前記機関の出力を制御するクラッチ締結フィードバック制御を実行するクラッチ締結フィードバック制御手段とを備え、
前記クラッチ締結フィードバック制御手段は、前記機関回転数が前記クラッチ締結目標回転数を下回ったときに、前記クラッチ締結フィードバック制御を開始し、前記機関回転数と前記クラッチ締結目標回転数との偏差に比例する比例項、前記偏差の積算値に比例する積分項、及び前記偏差の変化量に比例する微分項を用いて前記クラッチ締結フィードバック制御量を算出し、前記機関回転数が前記クラッチ締結目標回転数を超えているときに前記比例項を「0」に設定するとともに、前記機関回転数が増加しているときに前記微分項を「0」に設定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
前記機関のアイドル状態において前記機関回転数がアイドル目標回転数と一致するようにアイドルフィードバック制御量を算出し、前記アイドルフィードバック制御量を用いて前記アイドル状態における前記機関出力を制御するアイドルフィードバック制御手段をさらに備え、
前記アイドルフィードバック制御手段は、前記機関回転数と前記アイドル目標回転数の偏差に比例する比例項、前記偏差の積算値に比例する積分項、及び前記偏差の変化量に比例する微分項を用いて前記アイドルフィードバック制御量を算出し、
前記クラッチ締結フィードバック制御量の算出に適用される前記比例項及び微分項の制御ゲインは、前記アイドルフィードバック制御量の算出に適用される前記比例項及び微分項の制御ゲインより大きな値に設定されることを特徴とする請求項2または3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記クラッチ締結目標回転数は、前記アイドル目標回転数と同一であることを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記車両の車速を検出する車速検出手段をさらに備え、
前記クラッチ締結フィードバック制御手段は、前記車速が車速閾値に達した時点でフィードバック制御を終了することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記車速閾値は、前記クラッチ締結目標回転数に応じて設定されることを特徴とする請求項6に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−233434(P2012−233434A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102307(P2011−102307)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】