説明

車両の制御装置

【課題】エンジンを停止したモータ走行中であってエンジンを始動する際に、衝撃の発生を抑制してドライバビリティを向上できる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンと、モータジェネレータと、エンジンおよびモータジェネレータを解放状態および係合状態に切り替えるとともに作動油中に配置されたクラッチとを備え、クラッチを係合状態にしてモータジェネレータによりエンジンを始動する車両の制御装置であって、クラッチの解放時間が長いほど、クラッチが次に係合状態に切り替わる際の係合速度を小さくする(ステップS4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した自動車などの車両として、ハイブリッド車両が注目されている。ハイブリッド車両は、駆動力源として、ガソリンなどを燃料として駆動する内燃機関(以下、エンジンという)と、バッテリからの電力により駆動する電動機(以下、モータという)とを備えている。
【0003】
図9に示すように、この種のハイブリッド車両の制御装置300としては、例えばエンジン310と、クラッチ320と、変速機330と、モータ340と、制御ユニット350とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車両の制御装置300では、エンジン310と、クラッチ320と、変速機330とは直列に接続されている。また、モータ340と変速機330とが接続されている。エンジン310とモータ340とは、クラッチ320および変速機330を介して接続されている。
【0004】
クラッチ320は、複数のクラッチ板を有する多板クラッチからなるとともに、解放時にはクラッチ板の表面が作動油に油没する湿式クラッチとされている。変速機330の入力軸331には、入力軸331の回転により作動するオイルポンプ321が設けられている。クラッチ320は、オイルポンプ321から高圧の作動油が供給されることにより係合するようになっている。オイルポンプ321とクラッチ320との間には、油圧調整バルブ322が設けられている。油圧調整バルブ322は、オイルポンプ321からクラッチ320への作動油の供給量を調整するようになっている。
【0005】
制御ユニット350には、エンジン回転数センサ311と、油圧調整バルブ322と、アクセルペダル360の踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ361と、インバータ341とが接続されている。
【0006】
インバータ341は、モータ340とバッテリ342とに接続されている。制御ユニッ350は、インバータ341の出力周波数を調整することによりモータ340の回転数を調整するとともに、インバータ341の出力電流を調整することによりモータ340の出力トルクを調整するようになっている。
【0007】
車両がモータ340の動力により走行しているとき、制御ユニット350は、エンジン回転数センサ311によりエンジン310の回転数を検出するとともに、アクセルペダルセンサ361によりアクセルペダル360の踏み込み量を検出している。制御ユニット350は、エンジン310の回転数が0であることを検出するとともに、アクセルペダル360が所定量を超えて踏み込まれたことを検出したときは、制御ユニット350は油圧調整バルブ322を調整してクラッチ320を接続する。これにより、モータ340の動力が変速機330およびクラッチ320を介してエンジン310に伝達され、エンジン310は押し掛け始動される。
【0008】
ここで、クラッチ320が係合してエンジン310を押し掛けする分だけモータ340の負荷となるトルクが増加するので、モータ340の回転数やトルクが低減し、衝撃が発生して滑らかな走行が阻害される可能性がある。
【0009】
衝撃により滑らかな走行が阻害されることを防止するために、制御ユニット350は、エンジン310の押し掛けにより増加すると見込まれるトルクをクラッチ320の係合前に算出し、モータトルク補正値として設定する。制御ユニット350は、クラッチ320が係合する直前に、モータ340の出力トルクをモータトルク補正値だけ増加してトルク補償を行うようにしている。これにより、クラッチ320を係合してモータ340の負荷が変動することに起因する衝撃の発生が抑制され、車両の滑らかな走行状態を維持しながらエンジン310を始動することができる。
【0010】
ここで、本願発明者が鋭意研鑽を重ねた結果、クラッチ320の解放時間と、クラッチ320が伝達するトルクである係合トルクの立ち上がりとに相関があることが判明した。例えば、図9に示す車両の制御装置300において、クラッチ320としてノーマリーオープン型を用いた場合に、Tにおいてクラッチ320に油圧を与え、クラッチ320を係合したときの係合トルクの立ち上がりを図10に示す。図10に示すように、解放時間が短い場合の係合トルクの立ち上がりSと、解放時間が長い場合の係合トルクの立ち上がりLとを比較した。
【0011】
係合トルクの立ち上がりの早さについては、解放時間が短い場合の立ち上がりSは早く、解放時間が長い場合の立ち上がりLは遅かった。係合トルクの立ち上がりの直線性については、解放時間が短い場合の立ち上がりSは直線状で、解放時間が長い場合の立ち上がりLは曲線状であった。係合トルクの立ち上がりのばらつきについては、解放時間が短い場合の立ち上がりSはばらつきが小さく完全に立ち上がるまでほぼ一定の時間Tとなり、解放時間が長い場合の立ち上がりLはばらつきが大きく完全に立ち上がるまでの時間Tに幅があった。
【0012】
クラッチ320の解放時間が長い場合は、クラッチ320の解放時にはクラッチ板の表面に作動油が直接接していることから、多量の作動油がクラッチ板に含浸すると推測される。このため、この状態でクラッチ320を係合しようとクラッチ板同士を押圧しても、クラッチ板から多量の作動油が離脱するまでクラッチ板同士の間に油膜が形成されて十分な係合トルクを得ることができないと推測される。これにより、クラッチ板同士を押圧してから長時間が経過して油膜が切れたときに、所望の係合トルクが発生すると推測される。したがって、クラッチ板に含浸した作動油の量が異なることにより、係合トルクの立ち上がりの早さが異なり、立ち上がりにばらつきが生ずるものと推測される。
【0013】
また、クラッチ320の解放時間が短い場合は、クラッチ板に含浸する作動油が少ないので、クラッチ板同士の間に厚い油膜が形成されず、係合トルクは毎回ほぼ同じ早さで直線状に立ち上がるものと推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−205768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来の車両の制御装置300にあっては、モータ340によりクラッチ320の係合トルクを補償する際に、クラッチ320の解放時間と係合トルクの立ち上がりとの関係を考慮していなかった。このため、モータ340によりトルク増大を行うタイミングとクラッチ320での係合トルクの立ち上がりのタイミングとが一致しないことがあった。この場合、モータ340の出力トルクがエンジン310による負荷を受けて変動してしまうので、モータ340で走行中の車両に衝撃を発生してドライバビリティが悪化するという問題があった。
【0016】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、エンジンを停止したモータ走行中であってエンジンを始動する際に、衝撃の発生を抑制してドライバビリティを向上できる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る車両の制御装置は、上記目的達成のため、(1)内燃機関と、電動機と、前記内燃機関と前記電動機とを切り離す解放状態と、前記内燃機関と前記電動機とを接続する係合状態と、の間で伝達状態を切り替えるとともに、作動油中に配置されたクラッチとを備え、前記クラッチを前記係合状態にして前記電動機により前記内燃機関を始動する車両の制御装置であって、前記クラッチの解放時間が長いほど、前記クラッチが次に前記係合状態に切り替わる際の係合速度を小さくするよう構成する。
【0018】
この構成により、エンジン停止時のモータ走行中にエンジンを始動する際は、クラッチの解放時間が長いほどクラッチの係合速度が小さくなる。これにより、クラッチの解放時間が長くクラッチ板同士の間に厚い油膜が形成されていたとしても、クラッチの係合速度が小さくなるので、油膜を十分に消失させてからクラッチを係合することができる。よって、モータでのトルク増大とクラッチの係合とのタイミングを容易に一致させることができるので、エンジン停止時のモータ走行中にエンジンを始動する際の衝撃の発生を抑制してドライバビリティを向上することができる。
【0019】
また、クラッチの解放時間が短い場合には、クラッチの係合トルクの立ち上がりが早く、しかもばらつきが小さくて係合トルクの予測が容易になる。このため、クラッチの係合速度を大きくしてもモータでのトルク増大とクラッチの係合とのタイミングを容易に一致させることができるので、エンジン停止時のモータ走行中にエンジンを始動する際の衝撃の発生を抑制してドライバビリティを向上することができる。
【0020】
また、クラッチの解放時間が長い場合だけクラッチの係合速度を小さくしているので、クラッチの解放時間が長い場合以外でのクラッチ係合の応答遅れを抑制することができる。このため、クラッチの解放時間が長い場合以外では、クラッチ係合の応答遅れの抑制とドライバビリティの向上とを両立することができる。
【0021】
上記(1)に記載の車両の制御装置においては、(2)前記クラッチを前記解放状態から前記係合状態に切り替える際に、前記係合速度が小さいほど、前記クラッチの係合トルクを多くの段階に変化させることが好ましい。
【0022】
この構成により、クラッチの解放時間が長く、クラッチの係合速度が小さいほど、クラッチの係合トルクの変化する段数が多くなる。このため、クラッチの係合トルクを多段階に少しずつ増加させるので、クラッチの解放時間が長くクラッチ板同士の間に厚い油膜が形成されていたとしても、油膜を十分に消失させてからクラッチを係合することができる。よって、モータでのトルク増大とクラッチの係合とのタイミングを容易に一致させることができるので、エンジン停止時のモータ走行中にエンジンを始動する際の衝撃の発生を抑制してドライバビリティを向上することができる。
【0023】
上記(1)または(2)に記載の車両の制御装置においては、(3)前記電動機が連結される変速機を有するとともに、前記変速機で設定されたギヤ比が高いほど、前記係合速度を大きくすることが好ましい。
【0024】
この構成により、ギヤ比が高いときは車両の衝撃に対する運転者の感度が低くなるので、多少の衝撃の発生は許容されるため、クラッチの係合速度を大きくすることができる。このため、クラッチ係合の応答遅れの抑制とドライバビリティの向上とを両立することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、エンジンを停止したモータ走行中であってエンジンを始動する際に、衝撃の発生を抑制してドライバビリティを向上できる車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載した駆動装置を示す概略のスケルトン図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載した駆動装置の駆動ユニットを示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載した駆動装置の駆動ユニット主要部を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置の制御ユニットを示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置で、クラッチの解放時間が長時間であった場合にアクセルペダルを踏み込んだ際の動作を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置で、クラッチの解放時間が短時間であった場合にアクセルペダルを踏み込んだ際の動作を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係る車両の制御装置でのクラッチの解放時間とクラッチの係合速度との関係をギヤ比ごとに示す解放時間−係合速度マップである。
【図9】従来の車両の制御装置を示す概略のスケルトン図である。
【図10】従来の車両の制御装置でクラッチを係合状態に切り替える際の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、本発明をハイブリッド車両用の駆動装置に適用したものである。
【0028】
まず、構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、駆動装置1は、エンジン10と、燃料供給装置100と、駆動ユニット20と、自動変速機30と、制御ユニット40とを備えている。本実施の形態では、駆動装置1のエンジン10の方向をエンジン側E、駆動装置1の自動変速機30の方向を自動変速機側Tとしている。
【0030】
エンジン10は、ガソリンあるいは軽油などの炭化水素系の燃料と空気との混合気を、図示しない燃焼室内で燃焼させることによって動力を出力する公知の動力装置により構成されている。エンジン10は、エンジン本体13と、吸気装置14と、図示しない排気装置とを備えている。エンジン10は、本発明における内燃機関を構成している。
【0031】
エンジン本体13は、複数の気筒131と、各気筒131ごとに設けられた吸気ポート132とを備えている。吸気ポート132は気筒131の内外を連通している。
【0032】
吸気装置14は、吸気管16と、スロットルバルブ部17と、吸気マニホールド18とを備えている。吸気マニホールド18は、吸気管16と各吸気ポート132とを接続している。
【0033】
スロットルバルブ部17は、スロットルバルブ171と、スロットルモータ172とを備えている。スロットルバルブ171は、吸気管16の下流部に設けられるとともに、各気筒131に供給される吸入空気の吸入流量を調節するようになっている。スロットルモータ172は、電子制御式で、制御ユニット40により制御されることによりスロットルバルブ171を開閉可能にしている。スロットルバルブ171には、スロットル開度センサ173が設けられている。スロットル開度センサ173は、スロットルバルブ171の開度を検出して制御ユニット40に入力するようになっている。
【0034】
エンジン10は、各気筒131の燃焼室内で混合気の吸気と燃焼と排気とを繰り返すことにより各気筒131の図示しないピストンを往復動させ、ピストンと動力伝達可能に連結されたクランクシャフト11を回転させるようになっている。エンジン10は、クランクシャフト11から駆動ユニット20にトルクを伝達するようになっている。
【0035】
クランクシャフト11には、エンジン回転数センサ19が設けられている。エンジン回転数センサ19は、クランクシャフト11の回転数を検出して制御ユニット40に入力するようになっている。エンジン回転数センサ19は、内燃機関駆動状態検出手段を構成している。エンジン回転数センサ19は、エンジン10の駆動状態を検出するようになっている。
【0036】
燃料供給装置100は、燃料タンク部110と、配管部120とを備えている。燃料供給装置100は、燃料供給手段として機能するようになっている。
【0037】
燃料タンク部110は、燃料タンク111と、燃料ポンプ112と、吐出チェック弁113と、燃料フィルタ114と、燃料ポンプコントロールコンピュータ115と、プレッシャレギュレータ116と、電磁弁117とを備えている。燃料タンク111には燃料が貯留されている。
【0038】
燃料ポンプ112は、燃料タンク111の燃料を汲み上げて吐出し、吐出チェック弁113および燃料フィルタ114を介して配管部11に給送する。この燃料ポンプ112は、低圧の吐出圧可変のポンプで、図示しないポンプロータおよびモータを備えている。モータ駆動の回転数によりポンプロータの回転速度を変化させることで、燃料ポンプ112の吐出流量およびフィード圧力が変化するようになっている。
【0039】
燃料ポンプコントロールコンピュータ115は、制御ユニット40および燃料ポンプ112の間に介在されている。燃料ポンプコントロールコンピュータ115は、制御ユニット40からのポンプ制御信号に基づいて、燃料ポンプ112をオンオフしたり、回転速度を制御するようになっている。
【0040】
プレッシャレギュレータ116は、燃料フィルタ114の下流側の配管部120に接続されている。電磁弁117は、三方弁からなるとともに、燃料ポンプ112の吐出側管と、可変のプレッシャレギュレータ116の余剰燃料排出管と、燃料タンク111内の燃料に開口する管とに接続されている。
【0041】
ここでは、燃料ポンプ112をフィード圧力が可変のポンプとしているが、これに限定されず、フィード圧力が一定のポンプとしてもよい。この場合、可変のプレッシャレギュレータ116の背圧などを電磁弁によって少なくとも高圧および低圧の2段に切替え可能なものにして、フィード圧力を制御するようにしてもよい。
【0042】
配管部11は、燃料管121と、デリバリパイプ122と、燃料噴射弁123とを順に接続して備えている。
【0043】
燃料管121は、燃料タンク部110の燃料フィルタ114に接続されている。燃料管121は、デリバリパイプ122に接続されている。デリバリパイプ122は、燃料噴射弁123に接続されている。燃料噴射弁123は、吸気ポート132に燃料を噴射可能に設けられている。燃料噴射弁123は、電磁弁からなるとともに、制御ユニット40から発せられる制御信号により吸気ポート132に燃料を噴射するようになっている。
【0044】
駆動ユニット20は、入力部21と、クラッチ22と、ワンウェイクラッチ23と、モータジェネレータ24と、ドラム25と、ハブ部26と、出力部27と、ケース部28とを備えている。モータジェネレータ24は、本発明における電動機を構成している。駆動ユニット20は、エンジン10と自動変速機30との間に介在されるとともに、エンジン10のクランクシャフト11からの動力を自動変速機30の後述する変速機入力軸31に伝達するようになっている。
【0045】
入力部21は、フライホイール210と、ダンパー211と、クラッチ入力軸212と、スリーブ213と、ベアリング214とを備えている。フライホイール210は、クランクシャフト11に一体回転するように連結されている。
【0046】
ダンパー211は、フライホイール210に一体回転するように周縁部で連結されている。ダンパー211は、クラッチ入力軸212に一体回転するように中心部で連結されている。ダンパー211は、フライホイール210とクラッチ入力軸212との間で、回転方向の力を吸収するようになっている。
【0047】
クラッチ入力軸212は、クランクシャフト11と同軸に設けられている。クラッチ入力軸212は、クラッチ22およびワンウェイクラッチ23に一体回転可能に連結されるとともに、クラッチ22およびワンウェイクラッチ23に動力を伝達するようになっている。
【0048】
スリーブ213は、クラッチ入力軸212の外周側部に一体回転するように取り付けられている。ベアリング214は、玉軸受けからなり、スリーブ213の外周側部に固着されている。
【0049】
出力部27は、クラッチ出力軸270と、スリーブ271と、ベアリング272と、スラスト軸受273とを備えている。
【0050】
クラッチ出力軸270は、クラッチ入力軸212と同軸に設けられている。クラッチ出力軸270は、クラッチ22およびワンウェイクラッチ23に一体回転可能に連結されるとともに、クラッチ22およびワンウェイクラッチ23の動力を外部に伝達するようになっている。クラッチ出力軸270は、自動変速機30の変速機入力軸31に一体回転可能に連結されるとともに、駆動ユニット20の出力を自動変速機30に伝達するようになっている。
【0051】
スリーブ271は、クラッチ出力軸270の外周部に一体回転するように取り付けられている。ベアリング272は、玉軸受けからなり、スリーブ271の自動変速機側Tにおいてクラッチ出力軸270と一体回転可能に設けられている。スラスト軸受273は、クラッチ入力軸212とクラッチ出力軸270との互いに対向する端面同士の間に設けられるとともに、クラッチ入力軸212とクラッチ出力軸270とを相対回転可能に軸方向に支持している。
【0052】
モータジェネレータ24は、ステータ240と、ロータ241と、ロータケース242とを備えている。モータジェネレータ24は、クランクシャフト11と変速機入力軸31との動力伝達経路に介在されている。
【0053】
ステータ240は、ステータコア240aと、ステータコア240aに巻回される三相コイル240bとを備えている。ステータコア240aは、例えば、電磁鋼板の薄板を積層して形成されるとともに、ケース部28に固定されている。ステータ240は、三相コイル240bへの通電により回転磁界を形成するようになっている。
【0054】
ロータ241は、ステータ240の内部に配置されるとともに、複数個の永久磁石が埋め込まれて形成されている。ロータケース242は、ロータ241を収容している。ロータケース242は略円筒形状で、出力部27のスリーブ271の外周側に位置して設けられている。ロータケース242は、内周側部に軸方向に沿ったスプライン242aを備えている。
【0055】
ロータケース242には、モータ回転数センサ243が設けられている。モータ回転数センサ243は、ロータ241の回転数を検出することにより、モータジェネレータ24の回転数を検出して制御ユニット40に入力するようになっている。
【0056】
モータジェネレータ24は、ロータ241に埋め込まれた永久磁石による磁界と三相コイル240bによって形成される磁界との相互作用により、ロータ241を回転駆動する電動機として動作するようになっている。また、モータジェネレータ24は、ロータ241に埋め込まれた永久磁石による磁界とロータ241の回転との相互作用により、三相コイル240bの両端に起電力を生じさせる発電機としても動作するようになっている。
【0057】
モータジェネレータ24はインバータ46に接続されている。インバータ46はバッテリ47に接続されている。このため、モータジェネレータ24は、インバータ46を介してバッテリ47との間で電力のやり取りを行うようになっている。バッテリ47は、ハイブリッド車両の運転状況に応じて、モータジェネレータ24から生じた電力を充電したり、あるいは放電するようになっている。
【0058】
インバータ46からモータジェネレータ24への電力ラインには、MG電流センサ461が取り付けられている。MG電流センサ461は、相電流を検出して制御ユニット40に入力するようになっている。バッテリ47の出力端子間にはバッテリ電圧センサ471が取り付けられている。バッテリ電圧センサ471は、バッテリ47の出力電圧を検出して制御ユニット40に入力するようになっている。バッテリ47の出力端子には、バッテリ電流センサ472が取り付けられている。バッテリ電流センサ472は、バッテリ47の充放電電流を検出して制御ユニット40に入力するになっている。バッテリ47には、バッテリ温度センサ473が取り付けられている。バッテリ温度センサ473は、バッテリ温度を検出して制御ユニット40に入力するようになっている。
【0059】
ドラム25は、ロータケース242およびスリーブ271を連結して、ロータケース242およびスリーブ271を一体化している。ドラム25の半径方向の中央部には、外周側をエンジン側Eにずらした段部25aが形成されている。ロータ241の回転は、ドラム25およびスリーブ271を経て、クラッチ出力軸270に伝達される。
【0060】
ハブ部26は、ハブ本体260と、支持板261とを備えている。
【0061】
ハブ本体260は、円筒形状で、ハブ本体260の外周側部に軸方向に沿ったスプライン260aを備えている。ハブ本体260は、ロータケース242およびスリーブ271の間に入り込んでいる。支持板261は、ハブ本体260のエンジン側Eの端部とクラッチ入力軸212の自動変速機側Tの端部とを連結して、ハブ本体260とクラッチ入力軸212とを一体化している。
【0062】
ハブ本体260は、支持板261と、クラッチ入力軸212と、ダンパー211と、フライホイール210とを介して、クランクシャフト11に一体回転するように連結されている。逆に、クランクシャフト11の回転は、フライホイール210→ダンパー211→クラッチ入力軸212→支持板261という経路を経て、ハブ本体260に伝達される。
【0063】
クラッチ22は、多板部70と、ピストン部80とを備えている。クラッチ22は、入力部21と出力部27との間に設けられている。クラッチ22は、クランクシャフト11と変速機入力軸31との間に設けられるとともに、クランクシャフト11と変速機入力軸31との間を接続したり切断したりするようになっている。すなわち、クラッチ22は、エンジン10とモータジェネレータ24とを切り離す解放状態と、エンジン10とモータジェネレータ24とを接続する係合状態との間で伝達状態が切り替わるようになっている。
【0064】
クラッチ22の内部は、常時作動油で満たされている。このため、多板部70およびピストン部80は、常時作動油に浸漬されている。特に解放状態においては、後述する各セパレータプレート71および複数の摩擦プレート72の間に作動油が入り込み、セパレータプレート71および摩擦プレート72の表面側から作動油が含浸するようになっている。
【0065】
クラッチ22は、ノーマリーオープン型となっている。クラッチ22は、通常は解放されていてエンジン10とモータジェネレータ24との接続を切断しているとともに、オイルポンプ34から高圧の作動油が供給されることにより作動してエンジン10とモータジェネレータ24とを接続するようになっている。クラッチ22は、モータジェネレータ24の内周部に設けられている。
【0066】
多板部70は、ロータケース242とハブ本体260との間に設けられている。多板部70は、複数のセパレータプレート71および複数の摩擦プレート72と、クッションプレート73と、スナップリング74とを備えている。
【0067】
セパレータプレート71は、環状で、外周部に形成されたスプライン外歯71aと、内周部に形成された貫通孔71bとを備えている。スプライン外歯71aは、ロータケース242のスプライン242aに噛み合わされて、軸方向に摺動可能に設けられている。このため、セパレータプレート71は、ロータケース242と一体回転するようになっている。貫通孔71bには、ハブ本体260が接触することなく挿通されている。
【0068】
摩擦プレート72は、環状で、内周部に形成されたスプライン内歯72aを備えている。スプライン内歯72aは、ハブ本体260のスプライン260aに噛み合わされて、軸方向に摺動可能に設けられている。このため、摩擦プレート72は、ハブ本体260と一体回転するようになっている。
【0069】
セパレータプレート71と摩擦プレート72とは、交互に隣接して設けられている。摩擦プレート72とセパレータプレート71とが軸方向に押圧されて互いに回転方向に摩擦を生ずることにより、ロータケース242とハブ部26とが締結されるようになっている。摩擦プレート72とセパレータプレート71との軸方向の押圧が解放されて互いに摩擦を生じなくなることにより、ロータケース242とハブ部26との締結が解放されるようになっている。
【0070】
クッションプレート73は、環状で、外周部に形成されたスプライン外歯73aと、内周部に形成された貫通孔73bとを備えている。スプライン外歯73aは、ロータケース242のスプライン242aに噛み合わされて、軸方向に摺動可能に設けられている。このため、クッションプレート73は、ロータケース242と一体回転するようになっている。クッションプレート73は、全てのセパレータプレート71および摩擦プレート72よりも自動変速機側Tに位置するように設けられている。
【0071】
スナップリング74は、環状で、全てのセパレータプレート71および摩擦プレート72よりもエンジン側Eで、ロータケース242のスプライン242aに固定されている。このため、スナップリング74は、セパレータプレート71と、摩擦プレート72と、クッションプレート73とがロータケース242のスプライン242aから脱落しないようにストッパ機能を有するようになっている。
【0072】
ピストン部80は、ドラム25と、多板部70との間に設けられている。ピストン部80は、ピストン81と、油圧供給部82と、戻りばね83と、支持プレート84と、ストッパリング85とを備えている。
【0073】
ピストン81は、スリーブ271と段部25aとの間で軸方向に摺動可能に設けられている。ピストン81は、内側Oリング810と、外側Oリング811と、押圧部812とを備えている。
【0074】
内側Oリング810は、ピストン81の内周側部に設けられるとともに、スリーブ271の外周側部に接触している。外側Oリング811は、ピストン81の外周側部に設けられるとともに、ドラム25の段部25aの内周側部に接触している。押圧部812は、クッションプレート73に対向するとともに、ピストン81のエンジン側Eへの摺動に伴ってクッションプレート73を押圧するようになっている。
【0075】
油圧供給部82は、油圧供給孔820と、油圧供給路821とを備えている。油圧供給孔820は、スリーブ271に形成されるとともに、ピストン81およびドラム25で囲まれる空間86とスリーブ271の内周側の空間とを連通している。油圧供給路821は、油圧供給孔820と、自動変速機30の後述する機械式のオイルポンプ34とを連通している。
【0076】
高圧の作動油が、油圧供給路821および油圧供給孔820を介して、ピストン81およびドラム25で囲まれる空間86に供給されると、ピストン81はエンジン側Eに摺動するようになっている。ピストン81がエンジン側Eに移動することにより、押圧部812がクッションプレート73を介して摩擦プレート72とセパレータプレート71とをエンジン側Eに押圧して締結させる。摩擦プレート72とセパレータプレート71との締結により、ロータ241およびハブ部26が一体回転するようになっている。
【0077】
戻りばね83は、周方向に沿って配置された多数の圧縮コイルばねからなるとともに、ピストン81をエンジン側Eから自動変速機側Tに押圧するように設けられている。支持プレート84は、環状で、戻りばね83のエンジン側Eを支持している。支持プレート84は、ストッパリング85によりエンジン側Eへの移動を規制されている。ストッパリング85は、スリーブ271に固定されている。
【0078】
油圧供給路821の油圧が低下して戻りばね83の付勢力より小さくなることにより、戻りばね83の作用によりピストン81が自動変速機側Tに摺動するようになっている。ピストン81が自動変速機側Tに移動することにより、摩擦プレート72とセパレータプレート71との締結が解放され、ロータ241およびハブ部26が別々に回転するようになっている。
【0079】
ワンウェイクラッチ23は、ロータケース242とハブ本体260との間に設けられている。ワンウェイクラッチ23は、クランクシャフト11と変速機入力軸31との間に設けられるとともに、クランクシャフト11から変速機入力軸31を介してモータジェネレータ24に正転方向の動力のみを伝達可能に接続されている。ここで、正転方向とは、クランクシャフト11の回転方向を意味する。また、ワンウェイクラッチ23は、モータジェネレータ24の内周部に設けられている。ワンウェイクラッチ23は、モータジェネレータ24の内周部で多板部70に対して軸方向に隣接して配置されている。
【0080】
ワンウェイクラッチ23は、外輪部230と、内輪部231と、回転規制部232とを備えている。
【0081】
外輪部230は、外周側部に軸方向に沿ったスプライン230aを備えている。外輪部230のスプライン230aは、ロータケース242のスプライン242aに噛み合わされている。よって、ワンウェイクラッチ23の外輪部230は、ロータケース242と一体回転するようになっている。また、外輪部230は、ロータケース242を介して、クラッチ出力軸270に一体回転するように接続されている。
【0082】
内輪部231は、ハブ本体260と兼用されている。よって、ワンウェイクラッチ23の内輪部231は、ハブ部26と一体回転するようになっている。また、内輪部231は、ハブ部26および入力部21を介して、クランクシャフト11に一体回転するように接続されている。
【0083】
回転規制部232は、外輪部230および内輪部231の間に設けられている。回転規制部232は、内輪部231を外輪部230に対して正転方向のみに回転可能にするようになっている。
【0084】
ワンウェイクラッチ23は、クランクシャフト11の回転数がクラッチ出力軸270の回転数よりも大きい場合に、クランクシャフト11の回転をクラッチ出力軸270に伝達するようになっている。また、ワンウェイクラッチ23は、クランクシャフト11の回転数がクラッチ出力軸270の回転数よりも小さい場合に、クランクシャフト11の回転をクラッチ出力軸270に伝達せず、クラッチ出力軸270は自由に回転するようになっている。
【0085】
ケース部28は、ケース本体280と、エンジン側リブ281と、自動変速機側リブ282とを備えている。ケース本体280は、入力部21と、クラッチ22と、ワンウェイクラッチ23と、モータジェネレータ24と、ドラム25と、ハブ部26と、出力部27とを収容している。
【0086】
エンジン側リブ281は、クラッチ入力軸212を中心とする環状で、モータジェネレータ24のエンジン側Eに設けられるとともに、ケース本体280に固定されている。エンジン側リブ281の内周部には、入力部21のベアリング214を介してスリーブ213が回転可能に取り付けられている。このため、スリーブ213と、クラッチ入力軸212と、ハブ部26とは、エンジン側リブ281に回転可能に支持されている。
【0087】
エンジン側リブ281と、スリーブ213との間には、入力軸回転センサ29が取り付けられている。入力軸回転センサ29は、クラッチ入力軸212およびハブ部26の回転速度を検出して制御ユニット40に入力するようになっている。入力軸回転センサ29は、レゾルバであり、センサステータ29aとセンサロータ29bとを備えている。センサステータ29aは、エンジン側リブ281に取り付けられている。センサロータ29bは、スリーブ213に取り付けられている。なお、入力軸回転センサ29としては、レゾルバ以外の各種センサを用いてもよい。
【0088】
自動変速機側リブ282は、クラッチ出力軸270を中心とする環状で、モータジェネレータ24の自動変速機側Tに設けられるとともに、ケース本体280に固定されている。自動変速機側リブ282の内周部には、ベアリング272を介してスリーブ271が回転可能に取り付けられている。このため、スリーブ271およびクラッチ出力軸270は、自動変速機側リブ282に回転可能に支持されている。
【0089】
図1に示すように、自動変速機30は、変速機入力軸31と、トルクコンバータ32と、変速機構入力軸33と、オイルポンプ34と、変速機構35と、油圧制御装置36と、出力軸37と、ケース38とを備えている。自動変速機30は、本発明における変速機を構成している。自動変速機30は、モータジェネレータ24が連結されている。
【0090】
トルクコンバータ32は、循環する作動油の作用を利用する流体式で、駆動ユニット20のクラッチ出力軸270から伝達される駆動力を、変速機構入力軸33を介して変速機構35に伝達するようになっている。トルクコンバータ32は、タービンランナ90と、ポンプインペラ91と、フロントカバー92と、ステータ93と、ワンウェイクラッチ94と、中空軸95とを備えている。
【0091】
タービンランナ90およびポンプインペラ91は、タービンランナ90がエンジン側Eに位置するように互いに対向して配置されている。タービンランナ90は、変速機構入力軸33に一体回転するように連結されている。ポンプインペラ91は、フロントカバー92を介して変速機入力軸31に一体回転するように連結されている。
【0092】
タービンランナ90およびポンプインペラ91の間の内周側には、ステータ93が設けられている。ステータ93には、ワンウェイクラッチ94を介して中空軸95が接続されている。中空軸95は、ケース38に固定されるとともに、内部に変速機構入力軸33を回転可能に収容している。ケース38の内部には、作動油が供給されている。
【0093】
オイルポンプ34は、ロータ340と、ハブ341と、ボデー342とを備えている。ハブ341は、円筒形状で、ロータ340とポンプインペラ91とを一体回転するように連結している。ボデー342は、ケース38に固定されている。このため、駆動ユニット20からの動力が、フロントカバー92からポンプインペラ91を介してロータ340に伝達され、オイルポンプ34が駆動されるようになっている。
【0094】
オイルポンプ34から吐出される作動油は、変速機構35に供給されるとともに、駆動ユニット20のクラッチ22にも供給されるようになっている(図1中、一点鎖線で示す)。オイルポンプ34は、油圧の供給により、変速機構35の変速段もしくは変速比の切り替えや、クラッチ22の締結を行うようになっている。
【0095】
オイルポンプ34とクラッチ22との間には、油圧調整バルブ39が設けられている。油圧調整バルブ39は、制御ユニット40からの信号に伴い、オイルポンプ34からクラッチ22への作動油の供給量を調整するようになっている。
【0096】
オイルポンプ34と、油圧調整バルブ39と、油圧供給部82とは、クラッチ切替手段を構成している。オイルポンプ34と、油圧調整バルブ39と、油圧供給部82とは、クラッチ22を解放状態から係合状態に切り替えるようになっている。
【0097】
変速機構35は、図示しない複数のクラッチやブレーキを有している。変速機構35では、ハイブリッド車両の走行状況に応じて複数のクラッチやブレーキの係合および解放が、油圧制御装置36から供給される油圧によって切り替えられることで、所望の変速段が形成される。変速機構35の変速段としては、例えば、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジ、R(後進)レンジ、M(マニュアル)レンジ(シーケンシャルレンジ)、2(セカンド)レンジ、L(ロー)レンジ、B(ブレーキ)レンジ、S(スポーツ)レンジ、Ds(スポーツドライブ)レンジなどがある。
【0098】
変速機構35には、運転者が変速段を切り替えるためのシフトレバー51が接続されている。シフトレバー51には、シフトポジションセンサ52が設けられている。シフトポジションセンサ52は、シフトレバー51のレンジ位置をシフトポジション信号として検出して制御ユニット40に入力するようになっている。
【0099】
変速機構入力軸33から伝達された駆動力は、変速機構35を経て出力軸37に伝達され、出力軸37から図示しないディファレンシャルを経て車輪に伝達されるようになっている。なお、本実施の形態の変速機構35は、有段式の変速機構で構成されているが、有段式に限られず、例えば無段式の変速機構で構成されるようにしてもよい。
【0100】
図4に示すように、制御ユニット40は、ハイブリッド用電子制御ユニット(Electronic Control Unit;以下、ECUという)41と、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)42と、モータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)43と、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)44と、トランスミッション用電子制御ユニット(以下、トランスミッションECUという)45とを備えている。制御ユニット40は制御手段を構成している。
【0101】
ECU41は、CPU(Central processing unit)410と、処理プログラムなどを記憶するROM(Read only memory)411と、一時的にデータを記憶するRAM(Random access memory)412と、バックアップメモリ413と、入力ポート414と、出力ポート415と、通信ポート416とを備えている。ECU41は、ハイブリッド車両の制御を統括するようになっている。
【0102】
ECU41の入力ポート414には、エンジン回転数センサ19と、入力軸回転数センサ29と、モータ回転数センサ243と、車速センサ50と、アクセルセンサ54と、シフトポジションセンサ52と、MG電流センサ461と、バッテリ電圧センサ471およびバッテリ電流センサ472と、バッテリ温度センサ473と、スロットル開度センサ173とが接続されている。
【0103】
車速センサ50は、車速信号を検出して制御ユニット40に入力するようになっている。アクセルセンサ54には、アクセルペダル53が接続されている。アクセルセンサ54は、アクセルペダル53が踏み込まれた踏み込み量を検出して、検出した踏み込み量に応じた検出信号をECU41に入力するようになっている。また、ECU41は、アクセルセンサ54から出力された検出信号が表すアクセルペダル53の踏み込み量から、アクセル開度Accを算出するようになっている。
【0104】
アクセルペダル53は、内燃機関始動指令手段を構成している。アクセルペダル53は、踏み込まれることによりエンジン10に始動指令を与えるようになっている。アクセルセンサ54は、始動指令検出手段を構成している。アクセルセンサ54は、アクセルペダル53が踏み込まれたときに、エンジン10に始動指令が与えられたことを検出するようになっている。
【0105】
ECU41は、エンジンECU42と、モータECU43と、バッテリECU44と、トランスミッションECU45とに通信ポート416を介して接続されている。ECU41は、エンジンECU42と、モータECU43と、バッテリECU44と、トランスミッションECU45と各種制御信号やデータのやり取りを行うようになっている。
【0106】
また、ECU41は、クラッチ解放時間測定手段を構成している。ECU41は、クラッチ22が係合状態から解放状態に切り替わってからの解放時間を測定するようになっている。さらに、ECU41は、ギヤ比検出手段を構成している。ECU41は、自動変速機30で設定されたギヤ比を検出するようになっている。
【0107】
ROM411およびバックアップメモリ413に格納されるマップ情報には、図8に示すようなクラッチ22の解放時間−係合速度マップなどが含まれる。
【0108】
図8に示すように、クラッチ22の解放時間−係合速度マップは、検出されたクラッチ22の解放時間から、クラッチ22が次に係合状態に切り替わる際の係合速度を設定するためものである。同一のギヤ比であれば、クラッチ22の解放時間が長いほど、クラッチ22の係合速度を小さく設定するようになっている。また、同一の解放時間であれば、ギヤ比が高いほどクラッチ22の係合速度を大きく設定するようになっている。これは、ギヤ比が高いほど、エンジン10の振動に対する運転者の感度は低くなることに基づいている。
【0109】
エンジンECU42は、エンジン10およびECU41に接続されている。エンジンECU42は、エンジン10の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するとともに、入力した信号に応じて燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御などの運転制御を行うようになっている。エンジンECU42は、燃料噴射弁123を制御することにより燃料制御を行い、燃料ポンプコントロールコンピュータ115を制御することにより燃圧調整やフューエルカットの制御を行い、スロットルモータ172を制御することにより吸入空気量を制御することができる。
【0110】
エンジンECU42は、ECU41と通信するようになっている。エンジンECU42は、ECU41から入力される制御信号によりエンジン10を運転制御するとともに、必要に応じてエンジン10の運転状態に関するデータをECU41に出力するようになっている。
【0111】
モータECU43は、インバータ46およびECU41に接続されている。モータECU43は、モータジェネレータ24を駆動制御するようになっている。モータECU43は、モータジェネレータ24を駆動制御するために必要な信号を入力するようになっている。モータジェネレータ24を駆動制御するために必要な信号としては、例えば、モータジェネレータ24のモータ回転数センサ243から入力される信号や、MG電流センサ461により検出されるモータジェネレータ24に印加される相電流の信号などがある。モータECU43は、インバータ46へのスイッチング制御信号を出力するようになっている。
【0112】
モータECU43は、ECU41と通信するようになっている。モータECU43は、ECU41から入力される制御信号に応じてインバータ46を駆動制御することにより、モータジェネレータ24を駆動制御するようになっている。モータECU43は、必要に応じてモータジェネレータ24の運転状態に関するデータをECU41に出力するようになっている。
【0113】
バッテリECU44は、バッテリ47およびECU41に接続されている。バッテリECU44は、バッテリ47を管理している。バッテリECU44は、バッテリ47を管理するのに必要な信号を入力するようになっている。バッテリ47を管理するのに必要な信号としては、例えば、バッテリ電圧センサ471からの端子間電圧の信号や、バッテリ電流センサ472からの充放電電流の信号や、バッテリ温度センサ473からの電池温度の信号などがある。
【0114】
バッテリECU44は、ECU41と通信するようになっている。バッテリECU44は、必要に応じてバッテリ47の状態に関するデータをECU41に出力するようになっている。バッテリECU44は、バッテリ47を管理するために、バッテリ電流センサ472により検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC:State of charge)を演算するようになっている。
【0115】
トランスミッションECU45は、自動変速機30およびECU41に接続されている。トランスミッションECU45は、トルクコンバータ32の図示しないロックアップクラッチを駆動制御したり、変速機構35の変速段を変更したりするようになっている。
【0116】
トランスミッションECU45は、ECU41と通信するようになっている。トランスミッションECU45は、ECU41からの信号に基づいて変速機構35の変速段を変更する変速制御を実行するようになっている。トランスミッションECU45は、必要に応じて変速機構35やトルクコンバータ32の運転状態に関するデータをECU41に出力するようになっている。
【0117】
上述したエンジン10と、モータジェネレータ24と、クラッチ22とは、本発明における車両の制御装置を構成している。本発明の車両の制御装置は、クラッチ22を係合状態にしてモータジェネレータ24によりエンジン10を始動するようになっている。そして、本発明の車両の制御装置は、クラッチ22の解放時間が長いほど、クラッチ22が次に係合状態に切り替わる際の係合速度を小さくするようになっている。
【0118】
また、本発明の車両の制御装置は、内燃機関駆動状態検出手段であるエンジン回転数センサ19と、内燃機関始動指令手段であるアクセルペダル53と、始動指令検出手段であるアクセルセンサ54と、クラッチ切替手段であるオイルポンプ34、油圧調整バルブ39および油圧供給部82と、クラッチ解放時間測定手段および制御手段である制御ユニット40とを備えている。
【0119】
制御ユニット40は、エンジン回転数センサ19によりエンジン10が停止状態であると検出され、尚且つアクセルセンサ54によりエンジン10に始動指令が与えられたと検出されたことを条件に、ECU41により検出されたクラッチ22の解放時間が長いほど、クラッチ22が次に係合状態に切り替わる際のクラッチ22の係合速度を小さく設定するようになっている。また、制御ユニット40は、オイルポンプ34と、油圧調整バルブ39と、油圧供給部82とによりクラッチ22を上述のように設定した係合速度で係合状態に切り替えて、モータジェネレータ24によりエンジン10を始動するようになっている。
【0120】
また、制御ユニット40は、クラッチ22を解放状態から係合状態に切り替える際に、係合速度が小さいほど、クラッチ22の係合トルクを多くの段階に変化させるようになっている。本実施の形態では、係合速度が小さい場合には、図6に示すように、クラッチ22を係合状態にするための油圧を3段階に変化させることにより、クラッチ22の係合トルクは3段階に変化する。また、係合速度が大きい場合には、図7に示すように、クラッチ22を係合状態にするための油圧を2段階に変化させることにより、クラッチ22の係合トルクは2段階に変化するようになっている。
【0121】
また、本発明の車両の制御装置は自動変速機30を備えるとともに、制御ユニット40は、ギヤ比検出手段であるECU41により検出されたギヤ比が高いほど、係合速度を大きくするようになっている。
【0122】
次に、作用について説明する。
【0123】
図5に示すように、ECU41は、車両がモータジェネレータ24により走行中であるか否かを判断する(ステップS1)。この判断は、モータ回転数センサ243および車速センサ50からの検出情報に基づき、ECU41により行われる。ECU41が、車両が停車中、あるいはモータジェネレータ24以外の動力で走行中であると判断した場合は(ステップS1;NO)、ECU41はメインルーチンに処理を戻す。
【0124】
ECU41が、車両はモータジェネレータ24により走行中であると判断した場合は(ステップS1;YES)、ECU41はエンジン10が停止中であるか否かを判断する(ステップS2)。この判断は、エンジン回転数センサ19からの検出情報に基づき、ECU41により行われる。ECU41が、エンジン10は停止中ではないと判断した場合は(ステップS2;NO)、ECU41はメインルーチンに処理を戻す。
【0125】
ECU41が、エンジン10は停止中であると判断した場合は(ステップS2;YES)、ECU41はエンジン10の始動指令が発せられているか否かを判断する(ステップS3)。この判断は、アクセルセンサ54からの検出情報に基づき、ECU41により行われる。ECU41が、エンジン10の始動指令が発せられていないと判断した場合は(ステップS3;NO)、ECU41はメインルーチンに処理を戻す。
【0126】
ECU41が、エンジン10の始動指令が発せられていると判断した場合は(ステップS3;YES)、ECU41は、次にクラッチ22を係合する際の係合速度を設定する(ステップS4)。この時点で、車両はモータジェネレータ24により走行中であるとともに、エンジン10は停止中であるので、クラッチ22は解放状態となっている。
【0127】
クラッチ22の係合速度の設定は、ECU41により検出されたクラッチ22の解放時間および自動変速機30のギヤ比に基づいて、図8に示す解放時間−係合速度マップを参照して、ECU41により行われる。図8に示すように、ECU41は、クラッチ22の解放時間が長いほど、クラッチ22が次に係合状態に切り替わる係合速度を小さく設定する。
【0128】
続いて、ECU41は、油圧調整バルブ39を作動させ、設定した係合速度でクラッチ22を係合状態に切り替える(ステップS5)。ここで、係合速度が小さく、係合をゆっくり行う場合は、図6に示すように、クラッチ22に供給する油圧を3段階に分けて段階的に増加させるようにする。すなわち、クラッチ22を係合状態にするための油圧を3段階に変化させることにより、クラッチ22の係合トルクは3段階に変化する。
【0129】
また、係合速度が大きく、係合を早く行う場合には、図7に示すように、クラッチ22に供給する油圧を2段階に分けて段階的に増加させるようにする。すなわち、クラッチ22を係合状態にするための油圧を2段階に変化させることにより、クラッチ22の係合トルクは2段階に変化する。
【0130】
クラッチ22の係合トルクが大きくなるに連れて、クランクシャフト11がモータジェネレータ24により連れ回されるので、エンジン10の回転数が上昇する。そして、エンジン10が押し掛けにより始動される。
【0131】
また、クラッチ22の係合トルクの段階的な上昇にタイミングを併せて、モータジェネレータ24の出力トルクを増大させてトルク補償を行う。例えば、図6に示すように、係合トルクが3段階で上昇する場合は、モータジェネレータ24の出力トルクは2段階で上昇するようにする。また、図7に示すように、係合トルクが2段階で上昇する場合は、モータジェネレータ24の出力トルクは1段階で上昇するようにする。これにより、モータジェネレータ24がエンジン10を回転させる際のトルク低下を補って、走行時の衝撃の発生を抑制することができる。
【0132】
上述したエンジン10の停止中のモータジェネレータ24による走行中に運転者がアクセルペダル53を踏み込んだ際の動作を、図6および図7に示すタイムチャートに沿って説明する。
【0133】
図6に示すように、クラッチ22の解放時間が長時間である場合は、係合時間が小さく設定されるので、クラッチ22の係合が長い時間を掛けて行われる。Tにおいて、運転者はアクセルペダル53を踏み込んだとする。これにより、エンジン駆動指令がオンになるので、ECU41は油圧調整バルブ39を少し開放し、クラッチ22に1段目の油圧で作動油を供給する。よって、クラッチ22には1段目の係合トルクが発生するので、これに併せてECU41はモータジェネレータ24の出力トルクを増大させる補償トルクを1段目に上昇させる。
【0134】
そして、所定時間経過後のTにおいて、ECU41は油圧調整バルブ39をさらに少し開放し、クラッチ22に2段目の油圧で作動油を供給する。よって、クラッチ22には2段目の係合トルクが発生するので、これに併せてECU41はモータジェネレータ24への補償トルクを2段目の最大値に上昇させる。
【0135】
係合トルクが大きくなることにより、例えばTにおいて、クランクシャフト11が徐々に連れ回されるようになる。この時点でモータジェネレータ24への補償トルクは最大値に上昇しているので、モータジェネレータ24がエンジン10を回転させる際のトルク低下を補って、走行時の衝撃の発生を抑制することができる。
【0136】
その後、Tにおいて、ECU41は油圧調整バルブ39を全開まで開放し、クラッチ22を完全に係合状態にする。これにより、モータジェネレータ24の回転数とエンジン10の回転数とが一致するので、ECU41はモータジェネレータ24での補償トルクを0に戻す。
【0137】
図7に示すように、クラッチ22の解放時間が短時間である場合は、係合時間が大きく設定されるので、クラッチ22の係合が短い時間で行われる。Tにおいて、運転者はアクセルペダル53を踏み込んだとする。これにより、エンジン駆動指令がオンになるので、ECU41は油圧調整バルブ39を少し開放し、クラッチ22に1段目の油圧で作動油を供給する。よって、クラッチ22には1段目の係合トルクが発生するので、これに併せてECU41はモータジェネレータ24への補償トルクを最大値まで上昇させる。
【0138】
係合トルクが大きくなることにより、例えばT10において、クランクシャフト11が徐々に連れ回されるようになる。この時点でモータジェネレータ24への補償トルクは最大値に上昇しているので、モータジェネレータ24がエンジン10を回転させる際のトルク低下を補って、走行時の衝撃の発生を抑制することができる。
【0139】
その後、T11において、ECU41は油圧調整バルブ39を全開まで開放し、クラッチ22を完全に係合状態にする。これにより、モータジェネレータ24の回転数とエンジン10の回転数とが一致するので、ECU41はモータジェネレータ24での補償トルクを0に戻す。
【0140】
ハイブリッド車両が駐車などで停止するとともにエンジン10が停止している場合には、オイルポンプ34が停止しているため、クラッチ22のピストン部80にはオイルポンプ34から作動油が供給されない。このため、戻りばね83の付勢力によりピストン81が多板部70から離れており、クラッチ22は解放状態となっている。このとき、変速機構35のシフト位置はニュートラルであるようにしている。また、油圧調整バルブ39は開放しておく。
【0141】
ハイブリッド車両が駐車などで停止するとともにエンジン10が停止している場合にエンジン10を始動するには、モータジェネレータ24に電力を供給する。モータジェネレータ24への電力の供給により、モータジェネレータ24のロータ241が回転する。ロータ241の駆動力は、ロータケース242→ドラム25→スリーブ271→クラッチ出力軸270→トルクコンバータ32という経路を経て、オイルポンプ34に伝達される。
【0142】
ここで、ロータケース242が回転しても、クラッチ22およびワンウェイクラッチ23は、解放されているので、モータジェネレータ24の動力はエンジン10に伝わることはない。また、トルクコンバータ32の回転により変速機構35の変速機構入力軸33が回転するが、変速機構35のシフト位置がニュートラルであるので、変速機構35の出力軸37は回転しない。
【0143】
オイルポンプ34から吐出された作動油は、クラッチ22に供給される。ピストン81が多板部70側に摺動し、多板部70が軸方向に押圧されて、クラッチ22が締結される。よって、ロータ241の駆動力が、ロータケース242→多板部70→ハブ部26→入力部21という経路を経て、クランクシャフト11に伝達される。これにより、エンジン10が始動される。
【0144】
エンジン10の始動後の車両発進時には、エンジン10の駆動力は、クランクシャフト11→入力部21→ハブ部26→クラッチ22→ロータケース242→ドラム25→スリーブ271→クラッチ出力軸270という経路を経て、自動変速機30に伝達される。動力が自動変速機30に伝達されることにより、オイルポンプ34が駆動されるので、作動油がクラッチ22に供給され続けて、クラッチ22の締結が維持される。そして、変速機構35のシフト位置を前進または後進とする。よって、クランクシャフト11の動力が自動変速機30から車輪に伝達されて、ハイブリッド車両が発進する。
【0145】
また、ハイブリッド車両が駐車などで停止するとともにエンジン10が停止している場合には、上述のようにクラッチ22のピストン部80にはオイルポンプ34から作動油が導入されないので、クラッチ22は解放されている。
【0146】
ここで、モータジェネレータ24の駆動力のみで発進する場合には、モータジェネレータ24に電力を供給する。モータジェネレータ24への電力の供給により、モータジェネレータ24のロータ241が回転する。ロータ241の駆動力は、ロータケース242→ドラム25→クラッチ出力軸270→トルクコンバータ32という経路を経て、オイルポンプ34に伝達される。
【0147】
ロータケース242が回転しても、クラッチ22およびワンウェイクラッチ23は、解放されているので、モータジェネレータ24の動力はエンジン10に伝わることはない。また、油圧調整バルブ39は閉塞しておく。これにより、オイルポンプ34からの作動油はクラッチ22に供給されることはない。
【0148】
トルクコンバータ32の回転に伴い変速機構35の変速機構入力軸33が回転する。そして、変速機構35のシフト位置を前進または後進とする。よって、クランクシャフト11の動力が自動変速機30から車輪に伝達されて、ハイブリッド車両が発進する。
【0149】
エンジン10を停止したままモータジェネレータ24の駆動力のみで走行しているときに、エンジン10を始動する場合は、油圧調整バルブ39を開放してオイルポンプ34からの作動油をクラッチ22に供給する。クラッチ22に作動油が供給されることにより、クラッチ22が締結される。これにより、モータジェネレータ24の駆動力が、ハブ部26に伝達され、ハブ部26から入力部21を介してクランクシャフト11へ伝達される。よって、エンジン10が始動される。
【0150】
エンジン10の駆動中かつ停車時においてバッテリ47の電力不足が発生した場合は、エンジン10の駆動力を用いてバッテリ47に充電するようにする。自動変速機30のシフト位置はニュートラルとなっている。エンジン10の駆動力は、ハブ部26からワンウェイクラッチ23を介してロータ241に伝達される。これにより、ロータ241が回転され、モータジェネレータ24が発電機として作動する。よって、バッテリ47が充電される。
【0151】
車両走行時であって、減速中に車輪の駆動力によりモータジェネレータ24を駆動させて充電する場合、すなわちエンジン10を用いないモータジェネレータ24のみによる回生作動の場合は、車輪の駆動力は、変速機構35を伝わりオイルポンプ34に伝達される。油圧調整バルブ39は閉塞しておく。これにより、オイルポンプ34で発生した作動油はクラッチ22に供給されないので、クラッチ22は解放のまま維持される。変速機構入力軸33に連結されたドラム25が回転し、ロータ241が回転するので、モータジェネレータ24が発電機として作動し、バッテリ47が充電される。
【0152】
車両走行時であって、減速中の場合に車輪の駆動力によりモータジェネレータ24を駆動させて充電すると同時にエンジンブレーキを作動させる場合は、車輪の駆動力は、自動変速機30を伝わり、オイルポンプ34に伝達される。油圧調整バルブ39は開放しておく。これにより、オイルポンプ34で発生した作動油はクラッチ22に供給され、クラッチ22は締結のまま維持される。
【0153】
変速機構入力軸33に連結されたドラム25が回転し、ロータ241が回転するので、モータジェネレータ24が発電機として作動し、バッテリ47が充電される。また、ドラム25の回転がクラッチ22を介してクランクシャフト11に伝達される。よって、エンジンブレーキが作動する。
【0154】
以上のように、本実施の形態に係る車両の制御装置によれば、エンジン10の停止時のモータジェネレータ24による走行中にエンジン10を始動する際は、クラッチ22の解放時間が長いほどクラッチ22の係合速度が小さくなる。クラッチ22の解放時間が長く、セパレータプレート71および摩擦プレート72の間に厚い油膜が形成されていたとしても、クラッチ22の係合速度が小さくなるので、油膜を十分に消失させてからクラッチ22を係合することができる。よって、モータジェネレータ24へのトルク補償とクラッチ22の係合とのタイミングを容易に一致させることができるので、エンジン10の停止時のモータジェネレータ24による走行中にエンジン10を始動する際の衝撃の発生を抑制してドライバビリティを向上することができる。
【0155】
また、クラッチ22の解放時間が短い場合には、クラッチ22の係合トルクの立ち上がりが早く、しかもばらつきが小さくて係合トルクの予測が容易になる。このため、クラッチ22の係合速度を大きくしてもモータジェネレータ24へのトルク補償とクラッチ22の係合とのタイミングを容易に一致させることができる。よって、エンジン10の停止時のモータジェネレータ24による走行中にエンジン10を始動する際の衝撃の発生を抑制してドライバビリティを向上することができる。
【0156】
また、クラッチ22の解放時間が長い場合だけクラッチ22の係合速度を小さくしているので、クラッチ22の解放時間が長い場合以外でのクラッチ22の係合動作の応答遅れを抑制することができる。このため、クラッチ22の解放時間が長い場合以外では、クラッチ22の係合動作の応答遅れの抑制とドライバビリティの向上とを両立することができる。
【0157】
また、本実施の形態に係る車両の制御装置によれば、クラッチ22の係合速度が小さい場合はクラッチ22の係合トルクは3段階に変化するとともに、クラッチ22の係合速度が大きい場合はクラッチ22の係合トルクは2段階に変化するようにしている。クラッチ22の係合速度が小さい場合は係合速度が大きい場合に比べて、係合トルクを多段階に少しずつ増加させるので、セパレータプレート71および摩擦プレート72の間の油膜を十分に消失させてからクラッチ22を係合することができる。よって、モータジェネレータ24へのトルク補償とクラッチ22の係合とのタイミングを容易に一致させることができるので、エンジン10の停止時のモータジェネレータ24による走行中にエンジン10を始動する際の衝撃の発生を抑制してドライバビリティを向上することができる。
【0158】
また、本実施の形態に係る車両の制御装置によれば、自動変速機30のギヤ比が高いほど、クラッチ22の係合速度を大きくしている。ここで、ギヤ比が高いときは車両の衝撃に対する運転者の感度が低くなる。よって、クラッチ22の係合の応答遅れの抑制とドライバビリティの向上とを両立することができる。
【0159】
上述した本実施の形態の車両の制御装置においては、クラッチ22の係合速度が小さい場合はクラッチ22の係合トルクは3段階に変化するとともに、クラッチ22の係合速度が大きい場合はクラッチ22の係合トルクは2段階に変化するようにした。しかしながら、本発明に係る車両の制御装置においては、これに限られず、クラッチ22の係合速度が小さいほど、クラッチ22の係合トルクの変化する段数が多くなるものであれば、何段であってもよい。また、クラッチ22の係合トルクの変化は、段階的に変化するものにも限られず、例えば無段階に変化するようにしてもよい。
【0160】
また、本実施の形態の駆動装置1においては、クラッチ22とワンウェイクラッチ23とはロータ241の内周部で並設した構成としている。しかしながら、本発明に係る駆動装置においては、これに限られず、クラッチ22とワンウェイクラッチ23とはロータ241の内周部で軸方向にオーバーラップした構成であってもよい。
【0161】
以上のように、本発明に係る車両の制御装置は、エンジンを停止したモータ走行中であってエンジンを始動する際に、衝撃の発生を抑制してドライバビリティを向上できるという効果を奏するものであり、ハイブリッド車両の制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0162】
1 駆動装置
10 エンジン(内燃機関)
19 エンジン回転数センサ
20 駆動ユニット
22 クラッチ
24 モータジェネレータ(電動機)
30 自動変速機(変速機)
34 オイルポンプ
39 油圧調整バルブ
40 制御ユニット
41 ECU
50 車速センサ
52 シフトポジションセンサ
53 アクセルペダル
54 アクセルセンサ
82 油圧供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
電動機と、
前記内燃機関と前記電動機とを切り離す解放状態と、前記内燃機関と前記電動機とを接続する係合状態と、の間で伝達状態を切り替えるとともに、作動油中に配置されたクラッチとを備え、
前記クラッチを前記係合状態にして前記電動機により前記内燃機関を始動する車両の制御装置であって、
前記クラッチの解放時間が長いほど、前記クラッチが次に前記係合状態に切り替わる際の係合速度を小さくすることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記クラッチを前記解放状態から前記係合状態に切り替える際に、前記係合速度が小さいほど、前記クラッチの係合トルクを多くの段階に変化させることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記電動機が連結される変速機を有するとともに、
前記変速機で設定されたギヤ比が高いほど、前記係合速度を大きくすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−95247(P2013−95247A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239196(P2011−239196)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】