説明

車両の駆動装置

【課題】昇圧コンバータおよびインバータが一体化され小型化された車両の駆動装置を提供する。
【解決手段】車両の駆動装置は、モータジェネレータMG2と、モータジェネレータMG2の制御を行なうパワー制御ユニット21と、モータジェネレータMG2およびパワー制御ユニット21を収容するケースとを備える。パワー制御ユニット21は、モータジェネレータMG2を駆動する第1のインバータと、電源電圧を昇圧して第1のインバータに与える電圧コンバータとを含む。電圧コンバータは、リアクトルL1を含む。リアクトルL1およびケースに接触する潤滑油を熱伝達剤としてリアクトルL1の熱が放熱される。ケースには、潤滑油の循環経路が形成され、リアクトルは、循環経路上に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の駆動装置に関し、特にインバータとモータを1つのケースに収めた車両の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現状のハイブリッド車は、インバータの大きな箱型ケースがあり、それがシャーシに固定されその下にモータケース(トランスアクスル)が配置されるという構成をとっているものが多い。なるべく多くの車種に搭載することができるハイブリッド車両の駆動装置について考慮すると、ケースが2個の構成であると車種ごとにその配置が最適化されることになり部品の共通化が図りにくい。
【0003】
本来、組合せて動作することが必要なユニットは1つのケースに収めて一体化してしまうことが望ましい。特開2004−343845号公報(特許文献1)および特開2001−119961号公報(特許文献2)には、モータとインバータとを一体化したハイブリッド車両の駆動装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−343845号公報
【特許文献2】特開2001−119961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2004−343845号公報(特許文献1)および特開2001−119961号公報(特許文献2)に開示されるハイブリッド車両の駆動装置は、モータの上にインバータを載せただけの構造であり、高さ方向に関し車両に搭載した場合の車両重心位置について改善の余地がある。さらに、ハイブリッド車両の駆動装置を搭載するスペースの省スペース化も十分に考慮されていない。
【0005】
多くの車種に搭載可能とするためには、通常の車両でエンジンに隣接配置されている自動変速機とほぼ同等の輪郭内にインバータとモータとを配置することができることが望ましい。
【0006】
また、近年、効率向上のためバッテリ電圧を昇圧するコンバータを搭載する車両も開発されている。上記の先行文献には、昇圧コンバータの一体化を考慮してインバータとモータを一体化する概念については開示されていない。昇圧コンバータを一体化するに際しては、昇圧コンバータ部分の発熱に対する考慮も必要となる。とくに、部品として体格の大きいリアクトルについては、冷却するために工夫が必要となる。
【0007】
この発明の目的は、昇圧コンバータおよびインバータが一体化され小型化された車両の駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、要約すると、車両の駆動装置であって、第1の回転電機と、第1の回転電機の制御を行なうパワー制御ユニットと、第1の回転電機およびパワー制御ユニットを収容するケースとを備える。パワー制御ユニットは、第1の回転電機を駆動する第1のインバータと、電源電圧を昇圧して第1のインバータに与える電圧コンバータとを含む。電圧コンバータは、リアクトルを含む。車両の駆動装置は、リアクトルおよびケースに接触する熱伝達剤をさらに備える。
【0009】
好ましくは、熱伝達剤は、第1の回転電機の潤滑および冷却を行なう潤滑油である。車両の制御装置は、潤滑油の循環手段をさらに備える。ケースには、潤滑油の循環経路が形成される。リアクトルは、循環経路上に配置される。
【0010】
より好ましくは、循環手段は、潤滑油に浸漬され、第1の回転電機の回転に応じて回転するギヤと、ギヤの掻き揚げる潤滑油を受けるオイルキャッチ板とを含む。
【0011】
より好ましくは、ケースは、循環経路上の下流に配置されたオイルパンを含み、循環手段は、回転電機の回転に応じてオイルパンから潤滑油を汲み上げて潤滑経路のリアクトルよりも上流部に送るギヤを含む。
【0012】
好ましくは、ケースは、リアクトルを収容する第1の収容室を含み、リアクトルは、第1の収容室において熱伝達剤に浸漬される。
【0013】
より好ましくは、熱伝達剤は、第1の回転電機の潤滑および冷却を行なう潤滑油である。車両の制御装置は、潤滑油の循環手段をさらに備える。ケースには、潤滑油の循環経路が形成される。ケースは、第1の回転電機を収容する第2の収容室と、第1、第2の収容室を仕切る隔壁とをさらに含む。隔壁には、循環経路の一部を形成する孔が設けられる。
【0014】
より好ましくは、リアクトルは、コイルと、鉄心と、コイル及び鉄心をモールドする絶縁材とを含む。絶縁材は第1の収容室の蓋となるフランジ形状に形成される。
【0015】
より好ましくは、熱伝達剤は、第1の回転電機の潤滑および冷却を行なう潤滑油であり、第1の収容室は、潤滑油を貯蔵するオイルパンである。
【0016】
好ましくは、車両は、内燃機関を含む。車両の駆動装置は、第2の回転電機と、第1の回転電機のロータの回転が第1軸に伝達され、第2の回転電機のロータの回転が第2軸に伝達され、クランクシャフトの回転が第3軸に伝達される動力分割機構とをさらに備える。ケースは、第2の回転電機および動力分割機構をさらに収容する。
【0017】
より好ましくは、パワー制御ユニットは、第2の回転電機に対応して設けられる第2のインバータをさらに含み、電圧コンバータは、第1、第2のインバータに共通して設けられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、昇圧コンバータおよびインバータに一体化され小型化された車両の駆動装置を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
[車両の構成要素の説明]
図1は、本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両100のモータジェネレータ制御に関する構成を示す回路図である。
【0021】
図1を参照して、車両100は、電池ユニット40と、駆動装置20と、制御装置30と、図示しないエンジンおよび車輪とを含む。
【0022】
駆動装置20は、モータジェネレータMG1,MG2と、動力分割機構PSDと、減速機RDと、モータジェネレータMG1,MG2の制御を行なうパワー制御ユニット21とを備える。
【0023】
動力分割機構PSDは、基本的には、エンジン4とモータジェネレータMG1,MG2に結合されてこれらの間で動力を分配する機構である。たとえば動力分割機構としてはサンギヤ、プラネタリキャリヤ、リングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構を用いることができる。
【0024】
動力分割機構PSDの2つの回転軸がエンジン4、モータジェネレータMG1の各回転軸にそれぞれ接続され、他の1つの回転軸は減速機RDに接続される。動力分割機構PSDと一体化された減速機RDによってモータジェネレータMG2の回転は減速されて動力分割機構PSDに伝達される。
【0025】
減速機の回転軸は、図示しない減速ギヤやディファレンシャルギヤによって車輪に結合されている。なお、減速機は必須ではなく、モータジェネレータMG2の回転を減速せずに動力分割機構PSDに伝達する構成でもよい。
【0026】
電池ユニット40には端子41,42が設けられている。また駆動装置20には端子43,44が設けられている。車両100は、さらに、端子41と端子43とを結ぶパワーケーブル6と、端子42と端子44とを結ぶパワーケーブル8とを含む。
【0027】
電池ユニット40は、バッテリBと、バッテリBの負極と端子42との間に接続されるシステムメインリレーSMR3と、バッテリBの正極と端子41との間に接続されるシステムメインリレーSMR2と、バッテリBの正極と端子41との間に直列に接続される、システムメインリレーSMR1および制限抵抗Rとを含む。システムメインリレーSMR1〜SMR3は、制御装置30から与えられる制御信号SEに応じて導通/非導通状態が制御される。
【0028】
電池ユニット40は、さらに、バッテリBの端子間の電圧VBを測定する電圧センサ10と、バッテリBに流れる電流IBを検知する電流センサ11とを含む。
【0029】
バッテリBとしては、ニッケル水素、リチウムイオン等の二次電池や燃料電池などを用いることができる。また、バッテリBに代わる蓄電装置として電気二重層コンデンサ等の大容量キャパシタを用いることもできる。
【0030】
パワー制御ユニット21は、モータジェネレータMG1,MG2にそれぞれ対応して設けられるインバータ22,14と、インバータ22,14に共通して設けられる昇圧コンバータ12とを含む。
【0031】
昇圧コンバータ12は、端子43,44間の電圧を昇圧する。インバータ14は、昇圧コンバータ12から与えられる直流電圧を三相交流に変換してモータジェネレータMG2に出力する。
【0032】
昇圧コンバータ12は、一方端が端子43に接続されるリアクトルL1と、昇圧後の電圧VHを出力する昇圧コンバータ12の出力端子間に直列に接続されるIGBT素子Q1,Q2と、IGBT素子Q1,Q2にそれぞれ並列に接続されるダイオードD1,D2と、平滑用コンデンサC2とを含む。平滑用コンデンサC2は、昇圧コンバータ12によって昇圧された電圧を平滑化する。
【0033】
リアクトルL1の他方端はIGBT素子Q1のエミッタおよびIGBT素子Q2のコレクタに接続される。ダイオードD1のカソードはIGBT素子Q1のコレクタと接続され、ダイオードD1のアノードはIGBT素子Q1のエミッタと接続される。ダイオードD2のカソードはIGBT素子Q2のコレクタと接続され、ダイオードD2のアノードはIGBT素子Q2のエミッタと接続される。
【0034】
インバータ14は車輪を駆動するモータジェネレータMG2に対して昇圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。またインバータ14は、回生制動に伴い、モータジェネレータMG2において発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき昇圧コンバータ12は降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。
【0035】
インバータ14は、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とを含む。U相アーム15,V相アーム16,およびW相アーム17は、昇圧コンバータ12の出力ライン間に並列に接続される。
【0036】
U相アーム15は、直列接続されたIGBT素子Q3,Q4と、IGBT素子Q3,Q4とそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを含む。ダイオードD3のカソードはIGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードはIGBT素子Q3のエミッタと接続される。ダイオードD4のカソードはIGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードはIGBT素子Q4のエミッタと接続される。
【0037】
V相アーム16は、直列接続されたIGBT素子Q5,Q6と、IGBT素子Q5,Q6とそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを含む。ダイオードD5のカソードはIGBT素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードはIGBT素子Q5のエミッタと接続される。ダイオードD6のカソードはIGBT素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードはIGBT素子Q6のエミッタと接続される。
【0038】
W相アーム17は、直列接続されたIGBT素子Q7,Q8と、IGBT素子Q7,Q8とそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを含む。ダイオードD7のカソードはIGBT素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードはIGBT素子Q7のエミッタと接続される。ダイオードD8のカソードはIGBT素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードはIGBT素子Q8のエミッタと接続される。
【0039】
各相アームの中間点は、モータジェネレータMG2の各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、モータジェネレータMG2は、三相の永久磁石同期モータであり、U,V,W相の3つのコイルは各々一方端が中性点に共に接続されている。そして、U相コイルの他方端がIGBT素子Q3,Q4の接続ノードに接続される。またV相コイルの他方端がIGBT素子Q5,Q6の接続ノードに接続される。またW相コイルの他方端がIGBT素子Q7,Q8の接続ノードに接続される。
【0040】
電流センサ24は、モータジェネレータMG2に流れる電流をモータ電流値MCRT2として検出し、モータ電流値MCRT2を制御装置30へ出力する。
【0041】
インバータ22は、昇圧コンバータ12に対してインバータ14と並列的に接続される。インバータ22は、モータジェネレータMG1に対して昇圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。インバータ22は、昇圧コンバータ12から昇圧された電圧を受けてたとえばエンジンを始動させるためにモータジェネレータMG1を駆動する。
【0042】
また、インバータ22は、エンジンのクランクシャフトから伝達される回転トルクによってモータジェネレータMG1で発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき昇圧コンバータ12は降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。
【0043】
インバータ22の内部の構成は、図示しないがインバータ14と同様であり、詳細な説明は繰返さない。
【0044】
制御装置30は、トルク指令値TR1,TR2、モータ回転数MRN1,MRN2、電圧VB,VL,VH、電流IBの各値、モータ電流値MCRT1,MCRT2および起動信号IGONを受ける。
【0045】
ここで、トルク指令値TR1,モータ回転数MRN1およびモータ電流値MCRT1はモータジェネレータMG1に関するものであり、トルク指令値TR2,モータ回転数MRN2およびモータ電流値MCRT2はモータジェネレータMG2に関するものである。
【0046】
また、電圧VBはバッテリBの電圧であり、電流IBは、バッテリBに流れる電流である。電圧VLは昇圧コンバータ12の昇圧前電圧であり、電圧VHは昇圧コンバータ12の昇圧後電圧である。
【0047】
そして制御装置30は、昇圧コンバータ12に対して昇圧指示を行なう制御信号PWU,降圧指示を行なう制御信号PWDおよび動作禁止を指示する信号CSDNを出力する。
【0048】
さらに、制御装置30は、インバータ14に対して昇圧コンバータ12の出力である直流電圧をモータジェネレータMG2を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI2と、モータジェネレータMG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC2とを出力する。
【0049】
同様に制御装置30は、インバータ22に対して直流電圧をモータジェネレータMG1を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI1と、モータジェネレータMG1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC1とを出力する。
【0050】
図2は、図1における動力分割機構PSDおよび減速機RDの詳細を説明するための模式図である。
【0051】
図2を参照して、この車両駆動装置は、モータジェネレータMG2と、モータジェネレータMG2の回転軸に接続される減速機RDと、減速機RDで減速された回転軸の回転に応じて回転する車軸と、エンジン4と、モータジェネレータMG1と、減速機RDとエンジン4とモータジェネレータMG1との間で動力分配を行なう動力分割機構PSDとを備える。減速機RDは、モータジェネレータMG2から動力分割機構PSDへの減速比が、たとえば2倍以上である。
【0052】
エンジン4のクランクシャフト50とモータジェネレータMG1のロータ32とモータジェネレータMG2のロータ37とは同じ軸を中心に回転する。
【0053】
動力分割機構PSDは、図2に示す例ではプラネタリギヤであり、クランクシャフト50に軸中心を貫通された中空のサンギヤ軸に結合されたサンギヤ51と、クランクシャフト50と同軸上を回転可能に支持されているリングギヤ52と、サンギヤ51とリングギヤ52との間に配置され、サンギヤ51の外周を自転しながら公転するピニオンギヤ53と、クランクシャフト50の端部に結合され各ピニオンギヤ53の回転軸を支持するプラネタリキャリヤ54とを含む。
【0054】
動力分割機構PSDは、サンギヤ51に結合されたサンギヤ軸と、リングギヤ52に結合されたリングギヤケースおよびプラネタリキャリヤ54に結合されたクランクシャフト50の3軸が動力の入出力軸とされる。そしてこの3軸のうちいずれか2軸へ入出力される動力が決定されると、残りの1軸に入出力される動力は他の2軸へ入出力される動力に基づいて定まる。
【0055】
動力の取出用のカウンタドライブギヤ70がリングギヤケースの外側に設けられ、リングギヤ52と一体的に回転する。カウンタドライブギヤ70は、動力伝達減速ギヤRGに接続されている。そしてカウンタドライブギヤ70と動力伝達減速ギヤRGとの間で動力の伝達がなされる。動力伝達減速ギヤRGはディファレンシャルギヤDEFを駆動する。また、下り坂等では車輪の回転がディファレンシャルギヤDEFに伝達され、動力伝達減速ギヤRGはディファレンシャルギヤDEFによって駆動される。
【0056】
モータジェネレータMG1は、回転磁界を形成するステータ31と、ステータ31内部に配置され複数個の永久磁石が埋め込まれているロータ32とを含む。ステータ31は、ステータコア33と、ステータコア33に巻回される三相コイル34とを含む。ロータ32は、動力分割機構PSDのサンギヤ51と一体的に回転するサンギヤ軸に結合されている。ステータコア33は、電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、図示しないケースに固定されている。
【0057】
モータジェネレータMG1は、ロータ32に埋め込まれた永久磁石による磁界と三相コイル34によって形成される磁界との相互作用によりロータ32を回転駆動する電動機として動作する。またモータジェネレータMG1は、永久磁石による磁界とロータ32の回転との相互作用により三相コイル34の両端に起電力を生じさせる発電機としても動作する。
【0058】
モータジェネレータMG2は、回転磁界を形成するステータ36と、ステータ31内部に配置され複数個の永久磁石が埋め込まれたロータ37とを含む。ステータ36は、ステータコア38と、ステータコア38に巻回される三相コイル39とを含む。
【0059】
ロータ37は、動力分割機構PSDのリングギヤ52と一体的に回転するリングギヤケースに減速機RDによって結合されている。ステータコア38は、たとえば電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、図示しないケースに固定されている。
【0060】
モータジェネレータMG2は、永久磁石による磁界とロータ37の回転との相互作用により三相コイル39の両端に起電力を生じさせる発電機としても動作する。またモータジェネレータMG2は、永久磁石による磁界と三相コイル39によって形成される磁界との相互作用によりロータ37を回転駆動する電動機として動作する。
【0061】
減速機RDは、プラネタリギヤの回転要素の一つであるプラネタリキャリヤ66が車両駆動装置のケースに固定された構造により減速を行なう。すなわち、減速機RDは、ロータ37のシャフトに結合されたサンギヤ62と、リングギヤ52と一体的に回転するリングギヤ68と、リングギヤ68およびサンギヤ62に噛み合いサンギヤ62の回転をリングギヤ68に伝達するピニオンギヤ64とを含む。
【0062】
たとえば、サンギヤ62の歯数に対しリングギヤ68の歯数を2倍以上にすることにより、減速比を2倍以上にすることができる。
【0063】
[実施の形態1]
図3は、本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の駆動装置20の外観を示す斜視図である。
【0064】
図4は、駆動装置20の平面図である。
図3、図4を参照して、駆動装置20のケースは、ケース104とケース102とに分割可能に構成されている。ケース104は主としてモータジェネレータMG1を収容する部分であり、ケース102は、主としてモータジェネレータMG2およびパワー制御ユニットを収容する部分である。
【0065】
ケース104にはフランジ106が形成され、ケース102にはフランジ105が形成され、フランジ106とフランジ105とがボルト等で固定されることにより、ケース104とケース102とが一体化される。
【0066】
ケース102にはパワー制御ユニットを組付けるための開口108が設けられている。この開口108の内部左側部分(車両進行方向側)にはコンデンサC2が収容され、中央部分にはパワー素子基板120と端子台116,118とが収容され、右側部分にはリアクトルL1とが収容されている。なお、この開口108は車両搭載状態においては蓋により閉じられている。また、コンデンサC2を右側に、リアクトルL1を左側に収容するように入れ換えても良い。
【0067】
つまり、リアクトルL1はモータジェネレータMG1およびMG2の回転軸の一方側に配置され、コンデンサC2は回転軸の他方側に配置されている。そしてコンデンサC2とリアクトルL1との間の領域にパワー素子基板120が配置されている。パワー素子基板120の下方にはモータジェネレータMG2が配置されている。
【0068】
パワー素子基板120にはモータジェネレータMG1を制御するインバータ22と、モータジェネレータMG2を制御するインバータ14と、昇圧コンバータのアーム部13とが搭載されている。
【0069】
インバータ14とインバータ22との間の領域には上下に重ねて配置された電源用バスバーが設けられている。インバータ14のU相アーム15、V相アーム16、W相アーム17からはそれぞれ1本ずつのバスバーがモータジェネレータMG2のステータコイルにつながる端子台116に向けて設けられている。同様にインバータ22からも3本のバスバーがモータジェネレータMG1のステータコイルにつながる端子台118に向けて設けられている。
【0070】
パワー素子基板120は高温になるためこれを冷却するためにパワー素子基板120の下には通水路が設けられており、通水路への冷却水入口114と冷却水出口112とがケース102に設けられている。なお、この入口や出口などは、たとえば、ケース102に対し、フランジ106,105を貫通させてユニオンナット等を打ち込んで構成される。
【0071】
図1の電池ユニット40から端子43,44にパワーケーブルを介して与えられた電圧はリアクトルL1およびアーム部13を含む昇圧コンバータ12によって昇圧されコンデンサC2によって平滑化されてインバータ14および22に供給される。
【0072】
このように昇圧コンバータ12を用いて電池電圧を昇圧して用いることによりバッテリ電圧を200V程度に低減しつつ、かつモータジェネレータを500Vを超える高電圧で駆動することが可能となり、電力供給を小電流で行なうことにより電気損失を抑制しかつモータの高出力を実現することができる。
【0073】
駆動装置20として、インバータ14,22およびモータジェネレータMG1,MG2に加えて、昇圧コンバータ12も含めて一体化する場合には、比較的大きな部品であるリアクトルL1およびコンデンサC2の配置場所が問題となる。
【0074】
図4においてケース102にはリアクトルL1に冷却用の潤滑油を導くためのオイル通路210がさらに設けられている。オイル通路210は図2のカウンタドリブンギヤ132によってはね上げられた潤滑油をカウンタドリブンギヤ132側からリアクトルL1側に導く。
【0075】
図5は、駆動装置20を図4のX1方向から見た側面図である。
図5を参照して、ケース102にはモータジェネレータ組付け用および保守用の開口109が設けられており、この開口109は車両搭載状態においては蓋により閉じられている。
【0076】
開口109の内部にはモータジェネレータMG2が配置されている。U,V,W相のバスバーが接続されるステータ36の内部にロータ37が配置されている。ロータ37の中央部分には中空のシャフト60が見えている。
【0077】
図5に示すように、ケース102のパワー制御ユニット21を収容する収容室にはモータジェネレータMG2のステータ36が大きく食い込んでいるので、モータジェネレータMG2の一方側にはリアクトルL1が配置され他方側にはコンデンサC2が配置され、大型部品を効率よく収容している。このため、コンパクトなハイブリッド車両の駆動装置が実現できている。
【0078】
図6は、図4のVI−VI断面における断面図である。
図6を参照して、モータジェネレータMG2の断面およびパワー制御ユニット21を収容する収容室の断面が示されている。
【0079】
このハイブリッド車両の駆動装置は、同軸上に各ロータの回転中心軸が配置されるモータジェネレータMG2およびMG2の奥に配置されるモータジェネレータMG1と、クランクシャフトの回転中心軸と同軸上にかつモータジェネレータMG1およびMG2の間に配置される動力分割機構と、モータジェネレータMG1,MG2の制御を行なうパワー制御ユニット21とを備える。パワー制御ユニット21は、モータジェネレータMG2の回転中心軸に対し、少なくとも一方側にリアクトルL1が他方側に平滑用コンデンサC2が分割配置される。モータジェネレータMG1,MG2、動力分割機構、およびパワー制御ユニット21は、金属製のケースに収容されて一体化されている。
【0080】
モータジェネレータMG2の潤滑油がパワー素子基板120側に漏れ出ないようにケース102には2つの空間を仕切る隔壁200が設けられている。この隔壁200の上面部分にはパワー素子基板120を冷却するための水路122が設けられ、この水路122は先に説明した冷却水入口114および冷却水出口112と連通している。
【0081】
端子44からはバスバー128によってマイナス側の電源電位がパワー素子基板120に伝達される。また端子43からは図示しないが他のバスバーによってリアクトルL1に対して正の電源電位が伝達される。
【0082】
なおこのパワー制御ユニットを収容する収容室には減速ギヤの回転軸130を支持する部分が食い込んでいる。
【0083】
モータジェネレータMG2の断面部分について説明すると、ステータ36のコイル39の巻回部分がステータ内周側に見えており、さらにその内周にはロータ37、ケースの隔壁202およびロータの中空シャフト60が見えている。
【0084】
また、図6においては、回転軸130の上部にオイル通路210の断面が見えている。 すなわち、車両の駆動装置は、モータジェネレータMG2と、モータジェネレータMG2の制御を行なうパワー制御ユニット21と、モータジェネレータMG2およびパワー制御ユニット21を収容するケースとを備える。パワー制御ユニット21は、モータジェネレータMG2を駆動する第1のインバータと、電源電圧を昇圧して第1のインバータに与える電圧コンバータとを含む。電圧コンバータは、リアクトルL1を含む。リアクトルL1およびケースに接触する潤滑油を熱伝達剤としてリアクトルL1の熱が放熱される。ケースには、オイル通路210をその一部とする潤滑油の循環経路が形成され、リアクトルL1は、循環経路上に配置される。
【0085】
図7は、図4のX2方向から駆動装置20を見た側面図である。図7において、パワー素子基板の上部にパワー素子を制御する制御基板121が配置されている。
【0086】
図8は、図4のVIII−VIIIにおける断面図である。
図7、図8を参照して、エンジンのクランクシャフト50はダンパー124に接続され、ダンパー124の出力軸は動力分割機構PSDに接続される。
【0087】
エンジンが配置される側からはダンパー124、モータジェネレータMG1、動力分割機構PSD、減速機RDおよびモータジェネレータMG2の順で、同一の回転軸上に並んでこれらが配置されている。モータジェネレータMG1のロータ32のシャフトは中空であり、この中空部分にダンパー124からの出力軸が貫通している。
【0088】
モータジェネレータMG1のロータ32のシャフトは、動力分割機構PSD側にサンギヤ51とスプライン嵌合されている。ダンパー124のシャフトは、プラネタリキャリヤ54と結合されている。プラネタリキャリヤ54は、ピニオンギヤ53の回転軸をダンパー124のシャフトの周りに回転自在に支持する。ピニオンギヤ53は、サンギヤ51およびリングギヤケースの内周に形成された図2のリングギヤ52と噛み合う。
【0089】
またモータジェネレータMG2のロータシャフト60の減速機RD側は、サンギヤ62とスプライン嵌合されている。減速機RDのプラネタリキャリヤ66は、ケース102の隔壁202に固定されている。プラネタリキャリヤ66は、ピニオンギヤ64の回転軸を支持する。ピニオンギヤ64は、サンギヤ62およびリングギヤケースの内周に形成された図2のリングギヤ68と噛み合う。
【0090】
図8を見ればわかるように、モータジェネレータMG1およびダンパー124はケース104の図右方向の開口111から組付けることができ、モータジェネレータMG2はケース102の左方向の開口109から組付けることができ、減速機RDおよび動力分割機構PSDはフランジ105,106の合わせ面から組付けることができる。
【0091】
ケース102の開口109は、潤滑油が漏れないように蓋71および液状ガスケット等で密閉される。ケース104の開口111の奥には蓋72が設けられ、MG1を収容する空間は潤滑油が漏れないように液状ガスケット等やオイルシール81によって密閉される。
【0092】
モータジェネレータMG1のロータ32のシャフトは、蓋72との間に設けられたボールベアリング78および隔壁203との間に設けられたボールベアリング77によって回転自在に支持されている。ロータ32のシャフトは中空であり、ダンパー124のシャフトがその内部を貫通している。ロータ32のシャフトとダンパー124のシャフトの間にはニードルベアリング79,80が設けられている。
【0093】
モータジェネレータMG2のロータ37のシャフトは、蓋71との間に設けられたボールベアリング73および隔壁202との間に設けられたボールベアリング74によって回転自在に支持されている。
【0094】
減速機RDのリングギヤと動力分割機構PSDのリングギヤがともに内周に刻まれたリングギヤケースは、隔壁202との間に設けられたボールベアリング75および隔壁203との間に設けられたボールベアリング76によって、回転自在に支持されている。
【0095】
パワー制御ユニット21を収容する収容室とモータジェネレータMG2を収容する収容室とはケース102の隔壁202で隔てられているが、その一部は端子台116が挿入される貫通孔でつながっている。この端子台116にはモータジェネレータMG2のステータコイルのバスバーが一方側に接続され、インバータ14のバスバーが他方側に接続される。そしてこれらのバスバーを電気的に接続可能なように、端子台116の内部には導電性部材が通されている。つまり端子台116は、モータジェネレータMG2側からの潤滑油分を通さないでかつ電気を通すように構成されている。
【0096】
同様に、端子台118によって、パワー制御ユニットが収容される空間とモータジェネレータMG1が収容される空間とが、電気を通しかつ潤滑油分を通さない状態で接続されている。
【0097】
図8においてモータジェネレータMG1,MG2のステータ下部にはオイルパンが設けられている。車両停止時においてしばらく静止状態であった場合のオイルレベルLVSと、走行時において潤滑油が各部を潤滑している場合のオイルレベルLVDが示されている。
【0098】
図9は、図4のIX−IXにおける部分断面を示した部分断面図である。
図9を参照して、リアクトルL1を収容する第1の収容室であるオイル室216は蓋212で他の電子部材が収容される空間とは仕切られている。オイル通路210からオイル室216に流れ込んだ潤滑油はリアクトルL1を冷却し矢印F1,F2,F3,F4に示すように流れオイル抜き孔214から減速ギヤRG側に戻される。
【0099】
図10は、図9におけるX−X断面を示した断面図である。
図10を参照して、パワー制御ユニット21を収容する収容室においてはリアクトルL1の断面が示されている。リアクトルL1は、たとえば電磁鋼板が積層されたコアにコイルが巻回された構造を有する。
【0100】
そしてリアクトルL1に近接して、図6で示された減速ギヤRGの回転軸130が配置され、減速ギヤRGのカウンタドリブンギヤ132が中央部に示される。減速ギヤRGの回転軸130はボールベアリング220,222によって回転自在に支持されている。カウンタドリブンギヤ132は図2のカウンタドライブギヤ70と噛み合う。そしてこのカウンタドリブンギヤ132の同軸上にファイナルドライブギヤ133が設けられ、これに噛み合うファイナルドリブンギヤであるディファレンシャルギヤDEFがその下方に示されている。
【0101】
図11は、ケースを回転軸方向から投影した場合に、ケース輪郭と内部に収容される部品とを示した図である。
【0102】
図11において、車両の駆動装置のケース内部に、内燃機関のクランクシャフトが結合されるダンパ124と、ダンパ124の回転軸とその回転軸が重なるように配置されるロータおよびロータの周囲に配置されるステータを有するモータジェネレータMG2と、ダンパ124からのトルクおよびモータジェネレータMG2からのトルクを受ける動力分割
機構PSDと、ダンパ124の回転軸と略平行にずれた回転軸を有し、動力分割機構PSDからのトルクが伝達される減速ギヤRGと、ダンパ124の回転軸と略平行にずれた回転軸を有し、減速ギヤRGと噛み合い車輪にトルクを伝達するディファレンシャルギヤDEFと、モータジェネレータMG2の制御を行なう基板120、リアクトルL1およびコンデンサC2を含むパワー制御ユニット21とが示されている。ケースは、ダンパ124、モータジェネレータMG2、減速ギヤRG、ディファレンシャルギヤDEFおよびパワー制御ユニット21を収容する。
【0103】
図11に示されるケースを回転軸方向から投影した投影図において、車両駆動装置を車両に搭載したときの水平方向の寸法はX3である。そして、寸法X3は、ディファレンシャルギヤDEFを収容するケース部分の外縁とダンパ124を収容するケース104の外縁とで両端が定まっている。したがって、パワー制御ユニットを構成するコンデンサC2、基板120およびリアクトルL1は、寸法X3の内側にあることがわかる。
【0104】
また図11において、車両駆動装置を車両に搭載したときの鉛直方向(高さ方向)の寸法はY3である。この寸法Y3の下端は、ケースのディファレンシャルギヤDEFを収容する部分の外縁で定まっている。また、寸法Y3の上端は、ケースのダンパ124を収容する部分の外縁で定まっている。したがって、パワー制御ユニット21を構成するコンデンサC2、基板120およびリアクトルL1は、寸法Y3の内側に配置されていることがわかる。
【0105】
ケースを回転軸方向から投影した場合に、ケースのパワー制御ユニット21を収容する部分の投影部の車両搭載時の高さが、残りのケースの空間、すなわち、ダンパ124、モータジェネレータMG2、減速ギヤRGおよびディファレンシャルギヤDEFを収容する部分の投影部の車両搭載時の高さを少なくとも超えないように、ケースが構成されパワー制御ユニット21が配置される。これにより、車両の重心を低くすることができ、走行安定性を増すことができる。
【0106】
また、車両搭載時の水平方向において、ケースのパワー制御ユニット21を収容する部分の投影部の位置が残りのケースの空間の投影部の内側に位置するように、ケースが構成されパワー制御ユニット21が配置される。これにより、車両駆動装置の体格を小さくしている。
【0107】
図12は、ケースを回転軸方向と直交し、かつ鉛直方向に直交する方向から投影した場合に、ケース輪郭と内部に収容される部品とを示した図である。
【0108】
図12を参照して、車両搭載時の鉛直方向に直交する方向の寸法X3も両端が、ケースのモータジェネレータMG2を収容する部分の蓋の外縁とケースのダンパ124を収容する部分の外縁とで定まり、パワー制御ユニットを構成するコンデンサC2、基板120およびリアクトルL1は、寸法Z3の内側にあることがわかる。
【0109】
つまり、図11で説明したように鉛直方向(高さ方向)の寸法Y3がダンパ124、モータジェネレータMG2、減速ギヤRGおよびディファレンシャルギヤDEFを収容する部分によって定まる。また、図12において基板120、リアクトルL1およびコンデンサC2を含むパワー制御ユニット21を収容する部分は、回転軸方向と直交し、かつ車両搭載時の鉛直方向に直交する方向から投影した場合に、その投影部が残りのケースの空間、すなわち、ダンパ124、モータジェネレータMG2、減速ギヤRGおよびディファレンシャルギヤDEFを収容する部分の投影部に含まれるように設けられる。
【0110】
このようにモータジェネレータMG1,MG2、減速機RDおよび動力分割機構PSD
に加えて、減速ギヤRGおよびディファレンシャルギヤDEFを配置した状態で、周辺の空きスペースを利用してパワー制御ユニットの構成要素であるパワー素子基板120、リアクトルL1およびコンデンサC2を配置している。これにより、高さを低く抑えつつコンパクトなハイブリッド車両の駆動装置を実現することができる。
【0111】
そして、図11に示すようにモータジェネレータMG2に対し、片側の空きスペースを使用するだけでなく、両側の空きスペースにリアクトルL1とコンデンサC2とをそれぞれ配置することにより、モータジェネレータMG2に対する重さのバランスが良くなるとともに、さらなる省スペース化を図ることができる。
【0112】
なお、動力分割機構PSDと、動力分割機構PSDからのトルクが伝達される減速ギヤRGと、減速ギヤRGと噛み合い車輪にトルクを伝達するディファレンシャルギヤDEFとは、全体として、エンジンの発生した動力にモータジェネレータMG1,MG2の発生した動力を合成して駆動軸に伝達する動力伝達機構に相当する。
【0113】
また、減速ギヤRGおよびディファレンシャルギヤDEFはいずれも、動力分割機構PSDからのトルクが伝達される動力伝達ギヤに相当する。しかし、減速ギヤRGおよびディファレンシャルギヤDEFは必須ではなく、本願発明は、減速ギヤRGの無い構成や、ディファレンシャルギヤDEFが駆動装置に一体化されない後輪駆動の構成の車両にも適用が可能である。
【0114】
さらに、本願発明は、エンジンの加速時等にモータでアシストするようなパラレルハイブリッドにも適用が可能であり、またモータを駆動装置に1つしか一体化させていない構成にも適用が可能である。
【0115】
図13は、ディファレンシャルギヤDEFおよび減速ギヤRGによって潤滑油が掻き揚げられる方向を示した図である。
【0116】
図10、図13を参照して、オイルパンに貯蔵されている潤滑油は矢印F8,F9に示すようにディファレンシャルギヤDEFの回転に応じて減速ギヤRGに向けてはね上げられる。そしてさらに潤滑油は減速ギヤRGの回転に応じて矢印F10〜F12に示すようにさらに上に掻き揚げられる。
【0117】
そして、潤滑油は、図10の矢印F5,F6に示すようにオイル通路210内部を流れてオイル室216に流入しリアクトルL1を冷却する。そしてオイル抜き孔214から矢印F7に示すように減速ギヤRGを収容する空間に向けて流出する。
【0118】
なお、流量を制限するオリフィスの役目を果たす程度にオイル抜き孔214の径を小さくしておけば、潤滑油がオイル室216に流入する状況においてリアクトルL1を潤滑油に浸漬状態に保つことも可能である。
【0119】
また、本実施の形態では、リアクトルの熱を放熱するために流動性のある潤滑油を利用しているが、オイル抜き孔を設けずに潤滑油にリアクトルを浸漬させてリアクトルの熱をケースに伝達するようにしても良い。さらに別の例として、たとえば、流動性が低いグリースなどでケース内のリアクトルとケースとの間の隙間を埋めてリアクトルの熱をケースに伝達して放熱するような構造にしても良い。これらの場合では、潤滑油やグリースは、リアクトルからケースに熱を伝達する熱伝達剤に該当する。
【0120】
図14は、図9のXIV−XIVにおける部分断面を示した部分断面図である。
図15は、図14のXV−XVにおける部分断面を示した部分断面図である。
【0121】
図14、図15を参照して、減速ギヤRGのカウンタドリブンギヤ132によって掻き揚げられた潤滑油は、矢印F17,F18およびF14,F13に示すように上部に向けて掻き揚げられる。これをオイルキャッチ板224によって受止めるように構成しておけば、掻き揚げられたオイルの一部を矢印F15,F16に示すようにリアクトルL1が収容されるオイル室216に向けて効果的に導くことができる。
【0122】
図16は、リアクトルL1部分の変形例を示した図である。
図16に示した変形例は、図10に示した構成においてリアクトルL1を絶縁樹脂でモールドし、このモールド部分の上端をオイル室216の蓋を兼用するフランジ形状とする点が異なる。この絶縁樹脂のフランジ形状の蓋には、図示しないがリアクトルをバスバーに接続するための端子が設けられている。他の部分については図10と同様であるので説明は繰返さない。このようにすることによってリアクトルL1の組付けが楽になるとともに、部品点数を削減することができる。
【0123】
以上説明したように、実施の形態1においては、昇圧コンバータおよびインバータと一体化された駆動装置が実現できる。そして、一体化した場合でも昇圧コンバータのリアクトルの発熱を良好に放熱することができ、昇圧コンバータの効率低下を避けることができる。
【0124】
[実施の形態2]
図17は、実施の形態2における車両の駆動装置の断面を示した図である。
【0125】
図17を参照して、実施の形態2においてはリアクトルL1AがモータジェネレータMG2の下部のオイルパン内に配置される。そして、実施の形態1においてディファレンシャルギヤDEFおよび減速ギヤRGによって掻き揚げられた潤滑油がリアクトルL1Aに対して矢印F19,F20に示すように滴下されるようなオイル経路を隔壁200に設けておく。これによりリアクトルL1Aにおける発熱は潤滑油を介して放熱される。
【0126】
なお、コンデンサC2がリアクトルL1Aと干渉したり、また隔壁200にオイル経路を設けるのに邪魔になったりする場合には、実施の形態1においてリアクトルを置いておいた部分にコンデンサを移してもよい。たとえばコンデンサC2に代えてコンデンサC2Aを配置することができる。
【0127】
実施の形態2においても、昇圧コンバータおよびインバータと一体化された駆動装置が実現できる。そして、一体化した場合でも昇圧コンバータのリアクトルの発熱を良好に放熱することができ、昇圧コンバータの効率低下を避けることができる。
【0128】
[他の変形例]
図18は、潤滑油を循環させる手段の変形例を説明するための図である。
【0129】
図18に示す構成は、実施の形態1に示した構成において、オイルをギヤで掻き揚げる構成に換えて、オイル溜から潤滑油を汲み上げてリアクトルL1の冷却のために供給するオイルポンプを備えている。
【0130】
図18を参照して、このオイル循環経路の例では、トロコイド式のオイルポンプ400を設けてケース底部のオイル溜から潤滑油を汲み上げてオイル通路407に送出する。オイル通路407の出口は、潤滑油の潤滑経路において基板120を含むパワー制御ユニットよりも上流部に位置する。
【0131】
オイルポンプ400は、ディファレンシャルギヤDEFに噛み合う駆動ギヤ402と、駆動ギヤ402と軸が結合され共に回転するインナーロータ404と、インナーロータ404と内側の歯が噛み合うアウターロータ406とを含む。
【0132】
オイル通路407の出口はリアクトルL1に冷却用の潤滑油を導くためのオイル通路210およびオイル室216と通じている。オイル通路210からオイル室216に流れ込んだ潤滑油はリアクトルL1を冷却し矢印F1,F2,F3,F4に示すように流れオイル抜き孔214から減速ギヤRG側に戻される。
【0133】
図18に示した変形例でも実施の形態1に示した例と同様な効果を得ることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両100のモータジェネレータ制御に関する構成を示す回路図である。
【図2】図1における動力分割機構PSDおよび減速機RDの詳細を説明するための模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の駆動装置20の外観を示す斜視図である。
【図4】駆動装置20の平面図である。
【図5】駆動装置20を図4のX1方向から見た側面図である。
【図6】図4のVI−VI断面における断面図である。
【図7】図4のX2方向から駆動装置20を見た側面図である。図7において、パワー素子基板の上部にパワー素子を制御する制御基板121が配置されている。
【図8】図4のVIII−VIIIにおける断面図である。
【図9】図4のIX−IXにおける部分断面を示した部分断面図である。
【図10】図9におけるX−X断面を示した断面図である。
【図11】ケースを回転軸方向から投影した場合に、ケース輪郭と内部に収容される部品とを示した図である。
【図12】ケースを回転軸方向と直交し、かつ鉛直方向に直交する方向から投影した場合に、ケース輪郭と内部に収容される部品とを示した図である。
【図13】ディファレンシャルギヤDEFおよび減速ギヤRGによって潤滑油が掻き揚げられる方向を示した図である。
【図14】図9のXIV−XIVにおける部分断面を示した部分断面図である。
【図15】図14のXV−XVにおける部分断面を示した部分断面図である。
【図16】リアクトルL1部分の変形例を示した図である。
【図17】実施の形態2における車両の駆動装置の断面を示した図である。
【図18】潤滑油を循環させる手段の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0135】
4 エンジン、6,8 パワーケーブル、10 電圧センサ、11,24 電流センサ、12 昇圧コンバータ、13 アーム部、14,22 インバータ、15 U相アーム、16 V相アーム、17 W相アーム、20 駆動装置、21 パワー制御ユニット、30 制御装置、31,36 ステータ、32,37 ロータ、33,38 ステータコア、34,39 三相コイル、40 電池ユニット、41,42,43,44 端子、50 クランクシャフト、51,62 サンギヤ、52 リングギヤ、53,64 ピニオンギヤ、54,66 プラネタリキャリヤ、60 シャフト、68 リングギヤ、70 カウンタドライブギヤ、71,72,212 蓋、73,74,75,76,77,78 ボールベアリング、79,80 ニードルベアリング、81 オイルシール、100 ハイブリッド車両、102,104 ケース、105,106 フランジ、108,109,111 開口、112 冷却水出口、114 冷却水入口、116,118 端子台、120 パワー素子基板、121 制御基板、122 水路、124 ダンパー、128 バスバー、130 回転軸、132 カウンタドリブンギヤ、133 ファイナルドライブギヤ、200,202,203 隔壁、210 オイル通路、214 オイル抜き孔、216 オイル室、220,222 ボールベアリング、224 オイルキャッチ板、B バッテリ、C2,C2A コンデンサ、D1〜D8 ダイオード、DEF ディファレンシャルギヤ、L1,L1A リアクトル、MG1,MG2 モータジェネレータ、PSD 動力分割機構、Q1〜Q8 IGBT素子、R 制限抵抗、RD 減速機、RG 減速ギヤ、SMR1〜SMR3 システムメインリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転電機と、
前記第1の回転電機の制御を行なうパワー制御ユニットと、
前記第1の回転電機および前記パワー制御ユニットを収容するケースとを備え、
前記パワー制御ユニットは、
前記第1の回転電機を駆動する第1のインバータと、
電源電圧を昇圧して前記第1のインバータに与える電圧コンバータとを含み、
前記電圧コンバータは、
リアクトルを含み、
前記リアクトルおよび前記ケースに接触する熱伝達剤をさらに備える、車両の駆動装置。
【請求項2】
前記熱伝達剤は、前記第1の回転電機の潤滑および冷却を行なう潤滑油であり、
前記車両の制御装置は、
前記潤滑油の循環手段をさらに備え、
前記ケースには、前記潤滑油の循環経路が形成され、
前記リアクトルは、前記循環経路上に配置される、請求項1に記載の車両の駆動装置。
【請求項3】
前記循環手段は、
前記潤滑油に浸漬され、前記第1の回転電機の回転に応じて回転するギヤと、
前記ギヤの掻き揚げる前記潤滑油を受けるオイルキャッチ板とを含む、請求項2に記載の車両の駆動装置。
【請求項4】
前記ケースは、
前記循環経路上の下流に配置されたオイルパンを含み、
前記循環手段は、
前記回転電機の回転に応じて前記オイルパンから前記潤滑油を汲み上げて前記潤滑経路の前記リアクトルよりも上流部に送るギヤを含む、請求項2に記載の車両の駆動装置。
【請求項5】
前記ケースは、
前記リアクトルを収容する第1の収容室を含み、
前記リアクトルは、前記第1の収容室において前記熱伝達剤に浸漬される、請求項1に記載の車両の駆動装置。
【請求項6】
前記熱伝達剤は、前記第1の回転電機の潤滑および冷却を行なう潤滑油であり、
前記車両の制御装置は、
前記潤滑油の循環手段をさらに備え、
前記ケースには、前記潤滑油の循環経路が形成され、
前記ケースは、
前記第1の回転電機を収容する第2の収容室と、
前記第1、第2の収容室を仕切る隔壁とをさらに含み、
前記隔壁には、前記循環経路の一部を形成する孔が設けられる、請求項5に記載の車両の駆動装置。
【請求項7】
前記リアクトルは、
コイルと、
鉄心と、
前記コイル及び前記鉄心をモールドする絶縁材とを含み、
前記絶縁材は前記第1の収容室の蓋となるフランジ形状に形成される、請求項5に記載の車両の駆動装置。
【請求項8】
前記熱伝達剤は、前記第1の回転電機の潤滑および冷却を行なう潤滑油であり、
前記第1の収容室は、
前記潤滑油を貯蔵するオイルパンである、請求項5に記載の車両の駆動装置。
【請求項9】
前記車両は、
内燃機関を含み、
前記車両の駆動装置は、
第2の回転電機と、
前記第1の回転電機のロータの回転が第1軸に伝達され、前記第2の回転電機のロータの回転が第2軸に伝達され、前記クランクシャフトの回転が第3軸に伝達される動力分割機構とをさらに備え、
前記ケースは、前記第2の回転電機および前記動力分割機構をさらに収容する、請求項1に記載の車両の駆動装置。
【請求項10】
前記パワー制御ユニットは、
前記第2の回転電機に対応して設けられる第2のインバータをさらに含み、
前記電圧コンバータは、前記第1、第2のインバータに共通して設けられる、請求項9に記載の車両の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−129794(P2007−129794A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318140(P2005−318140)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】