説明

車両の駆動装置

【課題】小型化と装置外部への放熱性の確保とを両立させた車両の駆動装置を提供する。
【解決手段】モータジェネレータMGL,MGRは、左右後車輪RL,RRの駆動軸にそれぞれ連結され、各々を独立に駆動する。モータジェネレータMGL,MGRは、対応する車輪のホイールの内側に組み込まれたインホールモータからなる。インバータ14L,14Rは、パワー素子のスイッチング動作によりモータジェネレータMGL,MGRをそれぞれ駆動制御する。インバータ(例えば14Lとする)は、車両のロッカーパネル52Lとサイドメンバー50Lとの間に形成される空間部60Lの側面上に搭載される。これにより、インバータ14Lのパワー素子に発生した熱は車体に放熱される。また、空間部60Lの前後方端部にそれぞれ走行風の導入口と排出口とを設けることにより、インバータ14Lの熱は車体内部に導入される走行風に放熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の駆動装置に関し、特に、車輪に組み付けられたインホイールモータを動力源とする車両の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、環境に配慮した自動車として、ハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle)および電気自動車(Electric Vehicle)が注目されている。ハイブリッド自動車は、従来のエンジンに加え、インバータを介して直流電源により駆動されるモータを動力源とする自動車である。つまり、エンジンを駆動することにより動力源を得るとともに、直流電源からの直流電圧をインバータによって交流電圧に変換し、その変換した交流電圧によりモータを回転することによって動力源を得るものである。
【0003】
また、電気自動車は、インバータを介して直流電源によって駆動されるモータを動力源とする自動車である。
【0004】
ここで、ハイブリッド自動車および電気自動車においては、左右の駆動輪を車輪に組み付けられたインホイールモータを駆動源として独立に駆動するインホイールモータ駆動方式が検討されている(たとえば特許文献1〜6参照)。これによれば、駆動源としてモータを一台のみ搭載した電気自動車と比較して、駆動力を高めることができるとともに、4輪駆動のような運転者の要求に合わせたきめ細かい操作が実現される。
【0005】
そして、車両にインホイールモータ駆動方式を採用した場合、インホイールモータの各々に対してはインバータが設けられる。このようなインバータにおいては、配線系統の簡素化および省スペース化を図るために、モータとともに車輪に組み込んだ搭載構造が検討されている(たとえば特許文献1および2参照)。
【0006】
たとえば特許文献1には、車輪を構成するホイールに近い側から、インバータ、モータおよび減速機の順で配置された車両駆動装置が開示される。また、特許文献2には、ホイールの内側でロータおよびステータをその外側から覆うモータカバーと、基板上にスイッチング素子を搭載したインバータとを備えたホイールモータにおいて、インバータの基板を、モータカバーの軸方向に長さを有する軸保持部の外周側に配設したインバータの配置構造が開示される。
【特許文献1】特開2005−29086号公報
【特許文献2】特開2002−252955号公報
【特許文献3】特開2002−186120号公報
【特許文献4】特開2000−16040号公報
【特許文献5】特開2004−161189号公報
【特許文献6】特開2002−337554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、インホイールモータ駆動方式の車両においては、インホイールモータと同等数のインバータの各々が発熱源となるパワー素子を有するため、インバータの冷却系統をさらに搭載することが必要とされる。
【0008】
その一方で、車両の室内空間を確保する観点から、モータ駆動装置の小型化が強く要求されている。
【0009】
したがって、インホイールモータの各々を駆動制御するインバータおよびそのインバータの冷却系統においても、許容される搭載スペースに制約が課されることとなる。
【0010】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の車両駆動装置によれば、インバータとその冷却系統とを車両構造のどの位置に搭載するかについては具体的に検討されるには至っていない。また、上記の特許文献2に記載のインバータの配置構造によれば、インホイールモータの高出力化を鑑みた場合、より大きなモータ駆動電流を供給するためにインバータに相対的に大きなパワー素子を用いる必要が生じるが、搭載スペースの制約から適用できるパワー素子サイズが制限される、およびインバータの放熱性の確保が困難であるといった問題が浮上する。
【0011】
それゆえ、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、小型化と装置外部への放熱性の確保とを両立させた車両の駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明によれば、車両の駆動装置は、車両の駆動輪に連結されたインホイールモータと、電源から電力の供給を受けてインホイールモータを駆動制御する駆動回路とを備える。駆動回路は、車両のロッカーパネルとサイドメンバーとの間に形成される空間部の側面上に配置される。
【0013】
上記の車両の駆動装置によれば、駆動回路をロッカーパネルとサイドメンバーとの間に形成される空間部に搭載したことによって、駆動回路からの熱は車体に放熱される。したがって、個々に冷却系統を設けることなく、駆動回路を簡易かつ効率良く冷却することができる。また、インホイールモータと駆動回路との間に配設される電力線の配線長を短くすることができる。その結果、駆動装置を小型化でき、車両の室内空間が確保される。さらに、空間部は外部からの漏水を防止可能なように構成されることから、駆動回路の防水機能を確保することができる。
【0014】
好ましくは、空間部は、車両の前後方向に延在して形成され、車両の前方側端部に設けられて車両の走行中に生起される走行風を空間部に供給するための走行風導入口と、車両の後方側端部に設けられて走行風を空間部から車両の外部に排出するための走行風排出口とを含む。
【0015】
上記の車両の駆動装置によれば、空間部に走行風を通流させることにより、駆動回路からの熱は走行風に放熱される。したがって、簡易な構成で、駆動回路の冷却効率をより一層高めることができる。
【0016】
好ましくは、車両は、前左右車輪および後左右車輪の一方をインホイールモータを駆動力源とし、かつ他方を内燃機関およびモータを駆動力源とするハイブリッド車両である。
【0017】
上記の車両の駆動装置によれば、駆動系が小型化されたハイブリッド車両が実現される。
【0018】
この発明によれば、車両の駆動装置は、車両の駆動輪に連結されたインホイールモータと、電源から電力の供給を受けて前記インホイールモータを駆動制御する駆動回路とを備える。駆動回路は、車体のうちの車両側部骨格部材と車両側方衝突時のエネルギ吸収部材との間に形成される空間部の側面上に配置される。
【0019】
上記の車両の駆動装置によれば、駆動回路からの熱は車体に放熱されるため、冷却系統を設けることなく、駆動回路を簡易かつ効率良く冷却することができる。また、インホイールモータと駆動回路との間に配設される電力線の配線距離を短くすることができる。その結果、駆動装置を小型化することができる。
【0020】
この発明によれば、空間部は、車両の前後方向に延在して形成され、車両の前方端面に設けられて車両の走行中に生起される走行風を空間部に供給するための走行風導入口と、車両の後方端面に設けられて走行風を空間部から車両の外部に排出するための走行風排出口とを含む。
【0021】
上記の車両の駆動装置によれば、駆動回路からの熱は、車体に放熱されるとともに、空間部に導入される走行風に放熱されるため、駆動回路の冷却効率をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、インホイールモータ駆動方式の車両において、駆動装置の小型化と装置外部への放熱性の確保とを両立させることができる。その結果、エンジンルーム、客室および荷室のスペースを犠牲にすることなく、駆動装置を搭載することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0024】
図1は、この発明の実施の形態による車両の駆動装置を搭載した車両の駆動系を示す概略ブロック図である。
【0025】
図1を参照して、車両100は、たとえばハイブリッド四輪駆動車からなる。ハイブリッド四輪駆動車は、左右前車輪FL,FRがエンジンENGとフロントモータジェネレータMG2とにより駆動され、かつ、左右後車輪RL,RRがモータジェネレータMGL,MGRにより独立に駆動される、二輪独立駆動方式を採用する。
【0026】
なお、ハイブリッド四輪駆動車は、図1の構成以外に、左右前車輪FL,FRをモータジェネレータMGL,MGRにより独立に駆動し、かつ、左右後車輪RL,RRをエンジンENGおよびリヤモータジェネレータにより駆動する構成としても良い。もしくは、車両100を、左右前車輪FL,FRおよび左右後車輪RL,RRのいずれか一方をモータジェネレータMGL,MGRにより独立に駆動する、二輪独立駆動方式の電気自動車としても良い。
【0027】
車両100は、左右後車輪RL,RRの駆動装置として、モータジェネレータMGL,MGRと、減速機10,12と、インバータ14L,14Rと、電子制御ユニット(Electrical Control Unit:ECU)3と、バッテリBとを備える。
【0028】
モータジェネレータMGL,MGRは、左右後車輪RL,RRの駆動軸8,9にそれぞれ連結され、それぞれを独立に駆動する。モータジェネレータMGL,MGRは、対応する車輪のホイールの内側に組み込まれたインホールモータ形式が採用される。
【0029】
モータジェネレータMGR,MGLは、たとえば三相交流電動機であり、バッテリBに蓄えられた電力によって駆動される。モータジェネレータMGRの駆動力は、減速機12を介して右後車輪RRの駆動軸9に伝達される。モータジェネレータMGLの駆動力は、減速機10を介して左後車輪RLの駆動軸8に伝達される。
【0030】
また、車両100の回生制動時には、モータジェネレータMGL,MGRはそれぞれ、減速機10,12を介して左右後車輪RL,RRにより回転されて発電機として動作する。このとき、モータジェネレータMGL,MGRにより発電された回生電力は、インバータ14L,14Rを介してバッテリBに充電される。
【0031】
バッテリBは、ニッケル水素、リチウムイオン等の二次電池や燃料電池などが適用される。また、バッテリBに代わる蓄電装置として、電気二重層コンデンサ等の大容量キャパシタを用いてもよい。
【0032】
インバータ14L,14Rは、モータジェネレータMGL,MGRをそれぞれ駆動制御する。インバータ14Lは、図示は省略するが、U相アームと、V相アームと、W相アームとからなる。各相アームは、電源ラインとアースラインとの間に直列接続された2個のパワー素子からなる。各相アームの中間点は、電力線16によりモータジェネレータMGLの各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、モータジェネレータMGLは、U,V,W相の3つのコイルの一端が中性点に共通接続されて構成され、U相コイルの他端がU相アームの中間点に、V相コイルの他端がV相アームの中間点に、W相コイルの他端がW相アームの中間点にそれぞれ接続されている。
【0033】
インバータ14Rは、インバータ14Lと同様の構成からなり、各相アームの中間点が電力線18によりモータジェネレータMGRの各相コイルの各相端に接続されている。
【0034】
インバータ14L,14Rは、バッテリBから直流電圧が供給されるとECU3からの信号PWML,PWMRに基づいて直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータMGL,MGRをそれぞれ駆動する。これにより、モータジェネレータMGL,MGRは、要求駆動トルクに従ったトルクを発生するように駆動される。
【0035】
また、インバータ14L,14Rは、車両100の回生制動時、モータジェネレータMGL,MGRが発電した交流電圧をECU3からの信号PWML,PWMRに基づいて直流電圧に変換し、その変換した直流電圧をバッテリBへ供給する。なお、ここで言う回生制動とは、車両100を運転するドライバーによるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴う制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車両を減速(または加速の中止)させることを含む。
【0036】
車両100は、さらに、左右前車輪FL,FRの駆動装置として、エンジンENGと、フロントモータジェネレータMG1,MG2と、動力分割機構PSDと、減速機RDと、フロントモータジェネレータMG1,MG2の駆動制御を行なうインバータ140とを備える。
【0037】
エンジンENGは、ガソリンなどの燃料の燃焼エネルギを源として駆動力を発生する。エンジンENGの発生する駆動力は、動力分割機構PSDにより、直流電力を発電するフロントモータジェネレータMG1へ伝達される経路と、減速機RDを介して左右前車輪FL,FRを駆動する駆動軸に伝達する経路とに分割される。
【0038】
フロントモータジェネレータMG1は、動力分割機構PSDを介して伝達されたエンジンENGからの駆動力によって回転されて発電する。フロントモータジェネレータMG1の発電した電力は、電力線を介してインバータ140に供給され、バッテリBの充電電力として、あるいは、フロントモータジェネレータMG2の駆動電力として用いられる。
【0039】
フロントモータジェネレータMG2は、インバータ140から電力線に供給された交流電力によって回転駆動される。フロントモータジェネレータMG2によって生じた駆動力は、減速機RDを介して左右前車輪FL,FRの駆動軸へ伝達される。
【0040】
また、回生制動動作時にフロントモータジェネレータMG2が車輪FL,FRの減速に伴なって回転される場合には、フロントモータジェネレータMG2に生じた起電力が電力線に供給される。この場合には、インバータ140が電力線に供給された電力を直流電力に変換してバッテリBを充電する。
【0041】
車両100は、さらに、アクセルペダルポジションAPを検出するアクセルポジションセンサ90と、ブレーキペダルポジションBPを検出するブレーキペダルポジションセンサ92と、シフトポジションSPを検出するシフトポジションセンサ94と、ハンドル7と、ハンドル7の操舵角θsを検出する操舵角センサ96とを備える。車両100は、さらに、車輪FL,FR,RL,RRの回転速度ωFL,ωFR,ωRL,ωRRを検出する車輪速センサ40,42,44,46を備える。これらのセンサからの検出信号は、ECU3へ入力される。
【0042】
ECU3は、エンジンENG、インバータ14L,14R,140およびバッテリBと電気的に接続されており、エンジンENGの運転状態と、モータジェネレータMGR,MGLおよびフロントモータジェネレータMG1,MG2の駆動状態と、バッテリBの充電状態とを統合的に制御する。
【0043】
ECU3は、各種センサからの検出信号を受けると、これらの検出信号に基づいて車両100に要求される駆動トルクを算出する。そして、ECU3は、その算出した車両100の要求駆動トルクに基づいて、インバータ14L,14Rに対してバッテリBからの直流電圧をモータジェネレータMGL,MGRを駆動するための交流電圧に変換する駆動指示を行なう信号PMWL,PWMRを生成し、その生成した信号PWML,PWMRをインバータ14L,14Rへそれぞれ出力する。また、ECU3は、インバータ14L,14Rに対してモータジェネレータMGL,MGRで発電された交流電圧を直流電圧に変換してバッテリBに戻す回生指示を行なう信号PWML,PWMRを生成し、その生成した信号PWML,PWMRをインバータ14L,14Rへ出力する。
【0044】
また、ECU3は、算出した車両100の要求駆動トルクに基づいて、インバータ140に対してバッテリBからの直流電圧をフロントモータジェネレータMG1,MG2を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示を行なう信号PMWI1,PWMI2を生成し、その生成した信号PWMI1,PWMI2をインバータ140へそれぞれ出力する。また、ECU3は、インバータ140に対してフロントモータジェネレータMG1,MG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換してバッテリBに戻す回生指示を行なう信号PWMI1,PWMI2を生成し、その生成した信号PWMI1,PWMI2をインバータ140へ出力する。
【0045】
図2は、図1の車両100における駆動装置の概略図である。
図2を参照して、駆動装置は、たとえば図1の右後車輪RRを駆動する。なお、図示は省略するが、図1の左後車輪RLについても、図2と同様の構成からなる駆動装置が設けられる。
【0046】
右後車輪RRは、ホイールディスク22と、ホイールハブ23と、等速ジョイント25と、ブレーキロータ24と、モータジェネレータMGRと、減速機12と、シャフト34と、タイヤ20とを含む。
【0047】
ホイールディスク22は、略カップ型形状を有し、ディスク部をネジによってホイールハブ23に締結することによりホイールハブ23と連結される。ホイールハブ23は、等速ジョイント25を内蔵し、その内蔵した等速ジョイント25を介してシャフト34に連結される。
【0048】
等速ジョイント25は、インナー250と、ボール251とを含む。インナー250は、シャフト34に嵌合される。ボール251は、シャフト34の回転軸方向に設けられたホイールハブ23の溝とインナー250の溝とに噛合っており、シャフト34の回転に伴なってホイールハブ23を回転させる。また、ボール251は、ホイールハブ23およびインナー250に設けられた溝に沿ってシャフト34の回転軸方向に移動可能である。
【0049】
ブレーキロータ24は、内周端がネジによってホイールハブ23の外周端に固定され、外周端がブレーキキャリパ(図示せず)を通過するように配置される。
【0050】
モータジェネレータMGR、減速機12およびシャフト34は、図示しないケースに収納されてホイールハブ23の紙面左側に配置され、インホイールモータを構成する。
【0051】
モータジェネレータMGRは、ステータコア32と、ステータコイル33と、ロータ30とを含む。ステータコイル33は、ステータコア32に巻回される。モータジェネレータMGRが三相モータである場合、ステータコイル33は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルからなる。
【0052】
ロータ30は、ステータコア32およびステータコイル33の内周側に配置される。
減速機12は、たとえばプラネタリギヤからなる。プラネタリギヤは、図示は省略するが、モータジェネレータMGRのロータ30に連結されるサンギヤ軸と、サンギヤ軸に連結されるサンギヤと、ピニオンギヤと、ピニオンギヤに連結され、かつシャフト34にスプライン嵌合されるプラネタリキャリアと、ケースに固定されるリングギヤと、ピニオンギヤに支持されるピンとを含む。
【0053】
電力線18は、モータジェネレータMGRのステータコイル33とインバータ14Rとの間に配設される。電力線18は、ステータコイル33のU相コイル、V相コイルおよびW相コイルに対応した3つのケーブルからなる。
【0054】
インバータ14Rは、パワー素子を有し、このパワー素子をスイッチング動作させることによって、バッテリBからの直流電力を交流電力に変換する。このとき、インバータ14Rは、パワー素子が発熱することによって素子温度が上昇するため、冷却を必要とする。
【0055】
ここで、インバータの冷却系統としては、例えばインバータに冷却水を通流させるための冷却水経路を設け、冷却水を専用のラジエータによって冷却する構成が従来より採用されている。
【0056】
しかしながら、インホイールモータごとに設けられる複数のインバータの各々に対してこのような冷却系統を設けることは、駆動装置を大型化させるため、車両100の室内空間を著しく侵食することになる。また、駆動装置の軽量化を阻害する要因ともなる。
【0057】
そこで、この発明による駆動装置は、インホイールモータごとに設けられるインバータを簡易な構成で効率良く冷却するために、図3に示すインバータの搭載構造を採用とすることを特徴とする。これによれば、車両100の室内空間を犠牲にすることなく、インバータの冷却性能を確保することができる。
【0058】
図3は、図1の車両100におけるインバータ14L,14Rの搭載構造を説明するための概略図である。詳細には、図3は、車両100の車体構造を示す斜視図である。
【0059】
図3を参照して、車両100には、車両幅方向(車両側方)において、車両側面の一部を形成するロッカーパネル52Lが車両前後方向に延在している。ロッカーパネル52Lは、車両側部骨格部材を構成する。さらに、ロッカーパネル52Lの車両幅方向内側には、サイドメンバー50Lが、ロッカーパネル52Lと略平行に車両前後方向に延在して設けられる。サイドメンバー50Lは、車両幅方向に配設されたフロントフロアクロスメンバー64およびリヤフロアクロスメンバー66に結合されており、主に車両側方衝突時のエネルギを効率良く吸収・分散させ、車室の変形を最小限に抑える役割を果たす。なお、ロッカーパネル52Lおよびサイドメンバー50Lは、高伝熱性を有する金属からなる。
【0060】
さらに、ロッカーパネル52Lとサイドメンバー50Lとは、車両上下方向の両端面が結合されている。これにより、ロッカーパネル52Lの車両幅方向内側面と、サイドメンバー50Lの車両幅方向外側面との間には、車両前後方向に延在する空間部60Lが形成される。空間部60Lは、車両前後方向に延在する略筒状の構造を有するため、内部への漏水が遮断されている。
【0061】
車両100は、図1で説明したように、左右後車輪RL,RRがモータジェネレータMGL,MGRにより独立に駆動される二輪独立駆動方式を採用する。したがって、左右後車輪RL,RRには、ホイールの内側に組み込まれたモータジェネレータMGL,MGRがそれぞれ配される。
【0062】
以上の構成において、本発明の実施の形態に係る駆動装置は、インバータ14L,14Rの搭載構造にその特徴を有する。
【0063】
具体的には、モータジェネレータMGLを駆動制御するインバータ14Lは、図3に示すように、ロッカーパネル52Lとサイドメンバー50Lとの間に形成される空間部60Lの側面上に搭載される。また、図示は省略するが、モータジェネレータMGRを駆動制御するインバータ14Rも同様に、車両100の右方側面に位置するロッカーパネルとサイドメンバーとの間に形成される空間部の側面上に搭載される。
【0064】
このようにインバータ14L,14Rをロッカーパネルとサイドメンバーとの間に形成される空間部の側面上にそれぞれ搭載したことによって、本発明の実施の形態による駆動装置は、装置規模および冷却性能の点で、以下に述べる効果を奏する。
【0065】
第1に、個々に冷却系統を設けることなく、インバータ14L,14Rを効率良く冷却することが可能となる。
【0066】
詳細には、モータジェネレータMGLを駆動したときにインバータ14Lのパワー素子に発生する熱は、ロッカーパネル52Lおよびサイドメンバー50Lに放熱される。そして、高伝熱性の金属からなるロッカーパネル52Lおよびサイドメンバー50Lに吸収された熱は、車体に伝搬される。これにより、インバータ14Lが冷却される。インバータ14Rも同様に、モータジェネレータMGRを駆動したときにパワー素子に発生する熱が車両100の右方側面のロッカーパネルとサイドメンバーとに放熱されることによって冷却される。したがって、個々に冷却系統を設けることなく、インバータ14L,14Rを簡易かつ効率良く冷却することができる。その結果、駆動装置の小型化が実現されるため、車両100の室内空間を確保できる。
【0067】
さらに、図3に示すインバータ14L,14Rの搭載構造において、空間部60Lの車両前後方向の両端部(図中の領域RG1,RG2に相当)に、車両100の走行に伴なって生起される走行風の導入口および排出口をそれぞれ設けることにより、インバータ14L,14Rを、走行風によっても冷却することが可能となる。その結果、インバータ14L,14Rの冷却効率をより一層高めることができる。
【0068】
具体的には、図4に示すように、空間部60Lの車両前方側の端部には、走行風の導入口70が設けられる。さらに、空間部60Lの車両後方側の端部には、空間部60Lを通流した走行風を車両100外部へ排出するための排出口72が設けられる。
【0069】
これにより、モータジェネレータMGL,MGRを駆動して車両100を走行させると、走行風が導入口70を介して空間部60Lの内部に導入される。そして、走行風は、図中の矢印で示すように空間部60Lを通流し、その後、排出口72から車両100外部へ排出される。このとき、インバータ14Lからの熱が走行風に放熱されるため、インバータ14Lが冷却される。
【0070】
図5は、図4のA−A断面を示す断面図である。
図5を参照して、インバータ14Lを収容した筐体の一方側面には、ヒートシンク80が固定される。ヒートシンク80は、筐体の一方側面に固定された板状体82と、この板状体82を基部として板状体82の法線方向に突出して配された複数のフィン84とを有する。複数のフィン84の各々は、走行風の通流方向に延在し、かつ隣り合うフィンと互いに平行になるように配列される。
【0071】
このような構成とすることにより、図4の導入口70から空間部60L内部に導入された走行風は、隣接するフィン84の間に形成される間隙を流路として通流する。すなわち、隣接するフィン間の間隙は、冷却媒体流路を形成し、インバータ14Lに発生した熱は、この冷却媒体流路を通流する走行風に吸収される。
【0072】
すなわち、インバータ14Lに発生した熱は、図中の矢印で示すように、ロッカーパネル52Lおよびサイドメンバー50Lを経路として車体へ放熱されるとともに、空間部60Lを通流する走行風に放熱される。走行風は、車両100の走行速度が高くなるに従ってその風量が増加する。そのため、高速走行の加速など相対的に負荷が高い走行状態においては、インバータ14Lにおけるパワー素子の発熱量が増えるものの、冷却媒体流路を通流する走行風の風量も併せて増加することとなるため、素子温度の上昇を効果的に抑えることができる。
【0073】
なお、インバータ14L,14Rの冷却構造としては、本実施の形態による搭載構造と、個々に設けられた冷却系統とを併用させる構成としても良い。この場合、インバータ14L,14Rの放熱経路としては、車体、走行風および冷却媒体が併存することとなる。したがって、冷却系統を従来よりも小型なもので構成することが可能となり、駆動装置の小型化を図ることができる。
【0074】
さらに、かかる搭載構造による第2の効果としては、モータジェネレータMGL,MGRとインバータ14L,14Rとの間にそれぞれ配設される電力線16,18の配線長を短くすることができることが挙げられる。これによれば、電力線16,18にて生じる電力損失分を低減することが可能となる。
【0075】
また、第3の効果としては、上述したようにロッカーパネルとサイドメンバーとの間に形成される空間部が内部への漏水を遮断するように構成されることから、空間部に配置されるインバータ14L,14Rの防水機能が確保される。
【0076】
以上のように、この発明の実施の形態によれば、インホイールモータを駆動制御するインバータを、車両側部骨格部材を構成するロッカーパネルと車両側方衝突時のエネルギ吸収部材であるのサイドメンバーとの間に形成される空間部に搭載したことにより、簡易かつ効率良くインバータを冷却することができる。また、電力線の配線長も短くできるため、駆動装置を小型化することができる。これにより、車両のエンジンルーム、客室および荷室のスペースを犠牲にすることなく、駆動回路を搭載することができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、左右後車輪をインホイールモータによって独立駆動する場合について説明したが、左右前車輪をインホイールモータによって独立駆動する場合においても同様に、上記の空間部にインバータの各々を搭載することにより、同様の効果を得ることができる。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
この発明は、車輪独立駆動式車両に搭載される駆動装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】この発明の実施の形態による車両の駆動装置を搭載した車両の駆動系を示す概略ブロック図である。
【図2】図1の車両における駆動装置の概略図である。
【図3】図1の車両におけるインバータの搭載構造を説明するための概略図である。
【図4】車両に導入される走行風を利用した冷却系統を説明するための図である
【図5】図4に示すインバータの冷却構造を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0081】
3 ECU、7 ハンドル、8,9 駆動軸、10,12 減速機、14L,14R,140 インバータ、16,18 電力線、20 タイヤ、22 ホイールディスク、23 ホイールハブ、24 ブレーキロータ、25 等速ジョイント、30 ロータ、32 ステータコア、33 ステータコイル、34 シャフト、40,42,44,46 車輪速センサ、50L サイドメンバー、52L ロッカーパネル、60L 空間部、64 フロントフロアクロスメンバー、66 リヤフロアクロスメンバー、70 導入口、72 排出口、80 ヒートシンク、82 板状体、84 フィン、90 アクセルポジションセンサ、92 ブレーキペダルポジションセンサ、94 シフトポジションセンサ、96 操舵角センサ、100 車両、250 インナー、251 ボール、FL,FR,RL,RR 車輪、MG1,MG2 フロントモータジェネレータ、MGL,MGR モータジェネレータ、RD 減速機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪に連結されたインホイールモータと、
電源から電力の供給を受けて前記インホイールモータを駆動制御する駆動回路とを備え、
前記駆動回路は、前記車両のロッカーパネルとサイドメンバーとの間に形成される空間部の側面上に配置される、車両の駆動装置。
【請求項2】
前記空間部は、前記車両の前後方向に延在して形成され、
前記車両の前方側端部に設けられ、前記車両の走行中に生起される走行風を前記空間部に供給するための走行風導入口と、
前記車両の後方側端部に設けられ、前記走行風を前記空間部から前記車両の外部に排出するための走行風排出口とを含む、請求項1に記載の車両の駆動装置。
【請求項3】
前記車両は、前左右車輪および後左右車輪の一方を前記インホイールモータを駆動力源とし、かつ他方を内燃機関およびモータを駆動力源とするハイブリッド車両である、請求項1または請求項2に記載の車両の駆動装置。
【請求項4】
車両の駆動輪に連結されたインホイールモータと、
電源から電力の供給を受けて前記インホイールモータを駆動制御する駆動回路とを備え、
前記駆動回路は、車体のうちの車両側部骨格部材と車両側方衝突時のエネルギ吸収部材との間に形成される空間部の側面上に配置される、車両の駆動装置。
【請求項5】
前記空間部は、前記車両の前後方向に延在して形成され、
前記車両の前方側端部に設けられ、前記車両の走行中に生起される走行風を前記空間部に供給するための走行風導入口と、
前記車両の後方側端部に設けられ、前記走行風を前記空間部から前記車両の外部に排出するための走行風排出口とを含む、請求項4に記載の車両の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−181293(P2007−181293A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375735(P2005−375735)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】