説明

車両位置補正装置及び車両位置補正方法

【目的】前後方向の距離誤差(前後ズレ)を小さくでき、しかも、マップマッチング処理により急激な位置飛びが発生しないようにする「車両位置補正装置及び車両位置補正方法」を提供することである。
【構成】自立航法により測定した車両の測定位置とGPS測定法により測定した車両の測定位置とを用いて車両位置を補正する際、自立航法にる測定位置から車両方位方向に延長した直線にGPS測定位置から垂線を下ろし、該自立航法測定位置と前記垂線の足を結ぶ距離Dを算出する。しかる後、自立航法測定位置を、車両方位方向に距離Dの所定割合分シフトして得られた位置を車両位置とし、該車両位置を道路リンク上にマップマッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両位置補正装置及び車両位置補正方法に係わり、特に自立航法により測定した車両の測定位置とGPS測定法により測定した車両の測定位置とを用いて車両位置を補正する車両位置補正装置及び車両位置補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションシステムは、車両の現在位置に応じた地図データをDVD,ハードディスクHDD等の地図データ記憶部から読み出してディスプレイ画面に描画すると共に、走行に応じて車両位置マ−クを地図上で移動させ、あるいは車両位置マークをディスプレイ画面の一定位置(例えばディスプレイ画面の中心位置)に固定表示して地図をスクロ−ル表示する。
地図データは、(1) ノ−ドデータや道路リンクデータ、交差点データ等からなる道路レイヤと、(2) 地図上のオブジェクトを表示するための背景レイヤと、(3) 市町村名などを表示するための文字レイヤなどから構成され、ディスプレイ画面に表示される地図画像は、背景レイヤと文字レイヤに基づいて発生され、マップマッチング処理や誘導経路の探索処理は道路レイヤに基づいて行われる。
【0003】
かかるナビゲ−ションシステムでは、車両の現在位置を測定することが不可欠である。このため、自立航法センサーを用いて車両位置を測定する測定法(自立航法)とGPS(Global Positioning System)衛星を用いたGPS測定法(衛星航法)が併用されている。通常、自立航法により車両の位置、方位を測定すると共に、車両が道路リンクから外れたときマップマッチング処理により車両位置を道路リンク上に修正する。そして、自立航法による測定位置が誤差の累積によりGPS測定位置から設定距離以上離れると車両位置をGPS測定位置に基づいて修正する。以後、再び、自立航法により車両の位置、方位を測定し、同時にマップマッチング処理を開始し、車両位置を走行道路リンク上に修正する。
【0004】
自立航法では、距離センサーと相対方位センサー(ジャイロ)の出力に基づき積算により以下のようにして車両位置を推定する(特許文献1参照)。図8は従来の自立航法による車両位置推定方法の説明図であり、距離センサーは車両が所定距離走行する毎にパルスを出力し、したがって単位時間当たりに発生するパルス数を計数することにより車両移動速度Vを測定できる。また、基準方位(θ=0)をX軸の正方向、基準方位から反時計方向回りを+方向とする。前回の車両位置を点P0(X0,Y0)、点P0での車両進行方向の絶対方位をθ0、距離L0移動した時点での相対方位センサーの出力をΔθ1であるとすると、車両位置の変化分は、
ΔX=L0・cos(θ0+Δθ1)
ΔY=L0・sin(θ0+Δθ1)
となり、今回の点P1での車両進行方向の推定方位θ1と推定車両位置(X1,Y1)は、
θ1=θ0+Δθ1 (1)
X1=X0+ΔX=X0+L0・cosθ1 (2)
Y1=Y0+ΔY=Y0+L0・sinθ1 (3)
としてベクトル合成により計算できる。従って、スタート地点での車両の絶対方位と位置座標をGPSにより与えれば、その後、車両が所定距離L0走行する毎に、(1)〜(3)式の計算を繰り返すことにより車両位置をリアルタイムで検出(推定)できる。
【0005】
しかし、自立航法では走行するにつれて誤差が累積して推定車両位置が道路から外れる。そこで、マップマッチング処理により推定車両位置を道路データと照合して道路リンク上に修正する。
図9は投影法によるマップマッチングの説明図である。現車両位置が点Pi−1(Xi−1,Yi−1)にあり、車両方位がθi−1であったとする(図では点Pi−1は道路RDaと一致していない場合を示す)。点Pi−1より距離L0走行したときの相対方位がΔθiであれば、自立航法による推定車両位置Pi′(Xi′,Yi′)と、Pi′での推定車両方位θiは、次式
θi =θi−1+Δθi
Xi′=Xi−1+L0・cosθi
Yi′=Yi−1+L0・sinθi
により求められる。
【0006】
このとき、(a) 推定車両位置Pi′を中心に200m四方に含まれ、しかも、垂線を降ろすことのできるリンク(道路を構成するエレメント)であって、推定車両位置Pi′での推定車両方位θiとリンクの成す角度が一定値以内(たとえば450以内)で、かつ、推定車両位置Pi′からリンクに降ろした垂線の長さが一定距離(たとえば100m)以内となっているものを探す。ここでは道路RDa上の方位θa1のリンクLKa1(ノードNa0とNa1を結ぶ直線)と道路RDb上の方位θb1のリンクLKb1(ノードNb0とNb1を結ぶ直線)とが該当するリンクとなる。
ついで、(b) 推定車両位置Pi′からリンクLKa1,LKb1に降ろした垂線RLia、RLibの長さを求める。
(c) しかる後、投影法相関値Zを次式
Z=dL・k1+dθ・k2+Dgps・k3 (4)
により演算する。dLは自立航法推定車両位置Pi′からリンクに降ろした垂線の長さ、dθは推定車両方位θiとリンクの成す角度、DgpsはGPS測定位置からリンクに降ろした垂線の長さ、k1〜k3は係数である。
【0007】
(d) 投影法相関値Zが求まれば、該値Zが最小のリンクをマッチング候補(最適道路)とする。ここではリンクLKa1となる。
(e) そして、点Pi−1と点Pi′を結ぶ走行軌跡SHiを垂線RLiaの方向に点Pi−1がリンクLKa1上(またはリンクLKa1の延長線上)に来るまで平行移動して、点Pi−1とPi′の移動点PTi−1とPTi′を求める。
(f) 最後に、点PTi−1を中心にPTi′がリンクLKa1上(またはリンクLKa1の延長線上)に来るまで回転移動して移動点を求め、実車両位置Pi(Xi,Yi)とする。なお、実車両位置Pi(Xi,Yi)での車両方位はθiのままとされる。
【0008】
以上のマップマッチング処理は、図10(A)に示すように自立航法による測定位置PS1がGPS測定位置PG1から設定距離、例えば50m以上離れていない場合である。すなわち、自立航法による測定位置PS1がGPS誤差円内部に存在する場合には、上記マップマッチング処理を行なって自立航法による測定位置PS1を道路リンクRD上のマップマッチング位置PM1に修正する。なお、PM0は前回のマップマッチング位置である。
一方、図10(B)に示すように自立航法による測定位置PS1がGPS測定位置PG1から設定距離、例えば50m以上離れている場合には、すなわち、自立航法による測定位置PS1がGPS誤差円の外部に存在する場合には、自車位置をGPS測定位置PG1に修正し、その後、上記マップマッチング処理を行なって道路リンクRD上のマップマッチング位置PM1に修正する。なお、PM0は前回のマップマッチング位置である。
投影法マップマッチング処理では横方向の修正しかできないため、距離誤差が累積してきたとき前後ズレを吸収できないという問題がある。すなわち、自立航法による測定位置PS1がGPS測定位置PG1から設定距離、例えば50m以内の場合(図10(A))、前後ズレDが大きくなっても補正できない問題があった。また、自車位置がGPS誤差円外に存在する場合には、自車位置をGPS位置PG1に修正後にマップマッチングするため(図10(B))、急激な位置飛びが発生し、見た目が良くなく、ユーザに悪印象を与える問題点があった。
以上は自立航法測定位置を基準にした投影法マップマッチング処理であるが、GPS測定位置を基準にした投影法マップマッチング処理もある。
この自立航法測定位置を基準にしたマップマッチング処理はGPS測定位置を道路リンク上にマップマッチングするもので、自立航法測定位置を基準にしたマップマッチング処理と同様に、車両が所定距離L0走行する毎に行なわれ、L0に満たない間は自立航法により車両位置を測定、表示する。
【0009】
図11はGPS測定位置を基準にした投影法マップマッチング処理の問題点説明図である。GPS測定位置を基準にした投影法マップマッチング処理では、トンネル、ビル、街路樹等の遮蔽物によりGPS位置を使用できない状態が続くと(非測位区間)、その間、マップマッチング処理が不可能になり、自立航法により距離誤差が累積して大きくなる。かかる状態で、GPS測位可能になってGPS測定位置PG1を基準にした投影法マップマッチング処理を行なうと、図11(A)に示すように車両位置が自立航法測定位置PS1からマップマッチング位置PM1に急激な位置飛びが発生し、見た目が良くなく、ユーザに悪印象を与える。すなわち、非測位区間が長くなると、GPS測位可能になった時点での自立航法による測定位置PS1とGPS測定位置PG1間の距離が大きくなる場合があり、自立航法による測定位置PS1とマップマッチング位置PM1間の距離Dが大きくなって急激な位置とびが発生する。これは、図10(B)の場合と同じである。なお、PM0は前回のマップマッチング位置である。
また、GPS測定位置を基準にした投影法マップマッチング処理では、GPS測定位置に不特定の誤差が含まれるため、図11(B)に示すように、前方に進んでいるにも関わらず反対方向に測位することがある。図中、PG0は前回のGPS測定値、PM0は前回のマップマッチング位置であり、PG1は今回のGPS測定値、PM1は今回のマップマッチング位置である。
また、GPS測定位置を基準にした投影法マップマッチング処理では、図11(C)に示すように、横方向の誤差により微小角で分岐する道路リンクRD1,RD2においてミスマッチすることがある。図中、PG0は前々回のGPS測定値、PM0は前々回のマップマッチング位置、PG1は前回のGPS測定値、PM1は前回のマップマッチング位置、PG2は今回のGPS測定値、PM2は今回のマップマッチング位置であり、PM2′は車両が実際に走行している道路上の位置である。
以上より、前後方向の距離ズレ(前後ズレ)を小さくし、しかも、マップマッチング処理により急激な位置飛びが発生しないようにする必要がある。
GPS測定位置の信頼度に基づいて重みを決定し、該GPS測定位置と自立航法測定位置の重み付け平均を計算して現在位置とし、該現在位置を用いてマップマッチング処理を行なうナビゲーション装置がある(特許文献2)。しかし、この従来技術は、車両前後方向の距離ズレ(前後ズレ)を小さくするものではなく、しかも、マップマッチング処理により急激な位置飛びが発生しないようにするものでもない。
【特許文献1】特開2004−226341号公報
【特許文献2】特開2005−326196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上から本発明の目的は、車両前後方向の距離誤差(前後ズレ)を小さくでき、しかも、マップマッチング処理により急激な位置飛びが発生しないようにすることである。
本発明の別の目的は、ユーザが気づかないうちに車両前後方向の距離誤差を補正し、マップマッチング処理により急激な位置飛びが発生しないようにすることである。
本発明の別の目的は、GPS誤差の影響を軽減し、微小角分岐点等でのミスマッチングを防止することである。
本発明の別の目的は、GPS測定位置の算出時間遅れを考慮したマップマッチング処理を行なえるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、自立航法により測定した車両の測定位置とGPS測定法により測定した車両の測定位置とを用いて車両位置を補正する車両位置補正方法であり、前記自立航法による測定位置から車両方位方向に延長した直線に前記GPS測定位置から垂線を下ろし、該自立航法測定位置と前記垂線の足を結ぶ距離を算出するステップ、前記自立航法測定位置を、前記車両方位方向に前記距離の所定割合分シフトして得られた位置を車両位置とするステップ、前記車両位置を道路リンク上にマップマッチングして修正するステップを有している。
第1態様の車両位置補正方法は、更に、GPS位置算出に要する時間dTの間に車両が移動する距離ベクトルを求め、該距離ベクトルを前記GPS測定位置に加算して真のGPS測定位置とするステップを備え、該dT後の自立航法位置および前記真のGPS測定位置を用いて前記距離を算出する。また、第1態様の車両位置補正方法は、更に、GPS測定位置の信頼度を監視するステップを備え、GPS測定位置の信頼度が高い場合に前記車両位置補正を行なう。
本発明の第2の態様は、自立航法により測定した車両の測定位置とGPS測定法により測定した車両の測定位置とを用いて車両位置を補正する車両位置補正方法であり、前記自立航法による測定位置を道路リンク上の位置にマップマッチングするステップ、前記GPS測定位置から前記道路リンクに垂線を下ろし、前記マップマッチング後の自立航法位置と前記垂線の足を結ぶ距離を算出するステップ、該自立航法位置を、前記道路リンク方向に前記距離の所定割合分シフトして得られた位置を車両位置とするステップを有している。
第2態様の車両位置補正方法は、更に、GPS位置算出に要する時間dTの間に車両が移動する距離ベクトルを求め、該距離ベクトルを前記GPS測定位置に加算して真のGPS測定位置とするステップを備え、該dT後の自立航法位置および前記真のGPS測定位置を用いて前記距離を算出する。第2態様の車両位置補正方法は、更に、GPS測定位置の信頼度を監視するステップを備え、GPS測定位置の信頼度が高い場合に前記車両位置補正を行なう。
本発明の第3の態様は、自立航法により測定した車両の測定位置とGPS測定法により測定した車両の測定位置とを用いて車両位置を補正する車両位置補正装置であり、自立航法により車両位置を測定する自立航法位置測定部、GPS測定法により車両位置を測定するGPS位置測定部、前記自立航法による測定位置から車両方位方向に延長した直線に前記GPS測定位置から垂線を下ろし、該自立航法測定位置と前記垂線の足を結ぶ距離を算出し、前記自立航法測定位置を、前記車両方位方向に前記距離の所定割合分シフトして得られた位置を車両位置とし、前記車両位置を道路リンク上にマップマッチングして修正する車両位置補正部を備えている。前記車両位置補正部は、GPS位置算出に要する時間dTの間に車両が移動する距離ベクトルを求め、該距離ベクトルを前記GPS測定位置に加算して真のGPS測定位置とし、該dT後の自立航法位置および前記真のGPS測定位置を用いて前記距離を算出する。
第3態様の車両位置補正装置は、更に、GPS測定位置の信頼度を監視する信頼度監視部を備え、前記車両位置補正部は、GPS測定位置の信頼度が高い場合に前記車両位置補正を行なう。
本発明の第4の態様は、自立航法により測定した車両の測定位置とGPS測定法により測定した車両の測定位置とを用いて車両位置を補正する車両位置補正装置であり、自立航法により車両位置を測定する自立航法位置測定部、GPS測定法により車両位置を測定するGPS位置測定部、前記自立航法による測定位置を道路リンク上の位置にマップマッチングし、前記GPS測定位置から前記道路リンクに垂線を下ろし、前記マップマッチング後の自立航法位置と前記垂線の足を結ぶ距離を算出し、該自立航法位置を、前記道路リンク方向に前記距離の所定割合分シフトして得られた位置を車両位置とする車両位置補正部を有している。前記車両位置補正部は、GPS位置算出に要する時間dTの間に車両が移動する距離ベクトルを求め、該距離ベクトルを前記GPS測定位置に加算して真のGPS測定位置とし、該dT後の自立航法位置および前記真のGPS測定位置を用いて前記距離を算出する。
第4態様の車両位置補正装置は、更に、GPS測定位置の信頼度を監視する信頼度監視部を備え、前記車両位置補正部は、GPS測定位置の信頼度が高い場合に前記車両位置補正を行なう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両方位方向あるいは道路リンクに沿って自立航法測定位置をGPS測定位置方向に少しづつシフトするように車両位置を修正しているから、車両前後方向の距離誤差(前後ズレ)を小さくすることができ、しかも、マップマッチング処理により急激な位置飛びが発生しないようにできる。
また、本発明によれば、ユーザが気づかないうちに車両前後方向の距離誤差を補正することができ、ユーザに悪印象を与えないようにできる。
また、本発明によれば、GPS測定位置の算出時間遅れを考慮したマップマッチング処理を行なうため車両位置精度を向上することができる。
また、本発明によれば、自立航法測定位置をGPS測定位置方向に少しづつシフトするように車両位置を修正しており、しかもGPS測定値に信頼度が高い場合のみ車両位置を修正するため、GPS誤差が大きくなってもGPS誤差の影響を軽減し、微小角分岐点等でのミスマッチングを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(A)本発明の原理
図1は本発明の原理説明図であり、図1(A)は自車方位ベクトル方向に自車位置の前後補正を行なう説明図であり、図1(B)は道路リンク方向に自車位置の前後補正を行なう説明図である。
図1(A)において、自立航法による車両測定位置をPS1、該測定位置おける車両方位をθとし、該方位方向(方位ベクトル方向)に延長した直線LKにGPSによる測定位置PG1より垂線を下ろし、その垂線の足をPGMとする。
一定距離(例えば20m)走行毎に、あるいは一定時間(例えば1秒)走行毎に、自立航法による測定位置PS1と垂線の足をPGM を求め、それら間の距離Dおよび該距離Dの一定割合(例えば25%)の距離d(=D/4)を計算する。ついで、自立航法による測定位置PS1を方位ベクトル方向に該距離dだけシフトし、シフト後の位置PC1′を車両位置とする。以後、この車両位置PC1′をマップマッチング処理により道路リンク上に修正し、該車両位置に車両位置マークを表示する。
【0014】
図1(B)において、自立航法による測定位置PS1をマップマッチングにより道路リンク上の位置に修正したとき、該マップマッチング位置をPM1′とする。また、道路リンクRD
にGPS測定位置PG1より垂線を下ろし、その垂線の足をPGMとする。
一定距離(例えば20m)走行毎に、あるいは一定時間(例えば1秒)走行毎に、マップマッチング位置PM1′と垂線の足をPGM を求め、それら間の距離Dおよび該距離Dの一定割合(例えば25%)の距離d(=D/4)を計算する。ついで、マップマッチング位置PM1′を道路リンクに沿って垂線の足PGMの方向に該距離dだけシフトし、シフト後の位置を車両位置P C1とし、該位置に車両位置マークを表示する。
本発明によれば、一定距離(例えば20m)走行毎に、あるいは一定時間(例えば1秒)走行毎に、GPS測位位置方向に一定割合(例えば25%)位置を補正することで、距離誤差の累積を解消することができる。
また、GPS測定位置に徐々に近づくため、ユーザが気がつかないうちにGPS位置付近に自車位置を補正できるようになり、マップマッチング処理において急激な位置飛びは発生しない。
また、GPS測位位置の誤差が一時的に大きくなっても一定割合の距離誤差しか補正せず、しかも、GPS測定値に信頼度が高い場合のみ車両位置を修正するため、GPS誤差が大きくなってもGPS誤差の影響を軽減し、微小角分岐点等でのミスマッチングを防止することができる。
【0015】
従来の自立航法位置基準(図10)、GPS位置基準(図11)及び本発明の位置修正方法のメリットデメリットを示せば下表のようになる。
【表1】

【0016】
(B)第1実施例
図2は第1実施例の説明図である。一定距離(例えば20m)走行毎に、あるいは一定時間(例えば1秒)走行毎に、自立航法による測定位置PS1′(図2(A))とGPSによる測定位置PG1′を取得する。
自立航法による測定位置PS1′は時間遅れなく算出可能であるが、GPSによる測定位置PG1′は算出にdTの時間を要する。この遅れ時間dTの間に、自立航法による測定位置はPS1′からPS1へ(dX,dY)シフトする。そこで、遅れ時間dT 後の位置PS1を自立航法による真の測定位置とし、また、GPS測定位置PG1′に距離ベクトル(dX,dY)を加えた位置を真のGPSによる測定位置PG1とする。
ついで、図2(B)に示すように、自立航法による車両測定位置PS1、該測定位置おける車両方位をθとし、該方位方向に延長した直線LKにGPSによる測定位置PG1より垂線を下ろし、その垂線の足をPGMとする。しかる後、自立航法による測定位置PS1と垂線の足をPGM間の距離Dおよび該距離Dの一定割合(例えば25%)の距離d(=D/4)を計算する。
距離dが求まれば、自立航法による測定位置PS1を方位ベクトル方向に該距離dだけシフトし、シフト後の位置PC1′を自立航法による車両位置とする。以後、図2(C)に示すように、この車両位置PC1′を従来技術と同様のマップマッチング処理により道路リンクRD上に修正する。この修正された位置PC1が最終的なマップマッチングによる修正後の車両位置となり、該車両位置に車両位置マークを表示する。
【0017】
図3は本発明の車両位置補正部を含むナビゲーション装置の構成図である。
地図記録媒体(CD-ROM、DVD、HDDなど)1には地図データが記録されており、必要に応じて読み取られるようになっている。GPS受信機2はGPS衛星から送られてくるGPS電波を受信して出力し、自立航法センサー3は車両回転角度を検出する角度センサー(ジャイロ)3aと一定走行距離毎にパルスを発生する距離センサー3bを備えている。ナビゲーション制御部4は車両の位置検出/修正制御や車両周辺地図画像発生制御、経路探索/誘導制御、交差点案内制御等を行う。モニター5はナビゲーション装置4からの指示に従って車両周辺地図や誘導経路、車両位置マーク、その他の案内情報やメニューを表示する。
【0018】
ナビゲーション制御部4において、地図読取部11は自車位置周辺の地図データを地図記憶媒体1から読み取って地図バッファ12に保存する。地図バッファ12は、自車位置に応じた図葉と周辺図葉を保持し、走行に応じて地図をスクロール表示できるようになっている。地図描画部13は地図バッファ12に読み出されている地図データを用いて車両周辺の地図画像を発生してVRAM 14に保存し、合成部15はVRAMから読取った地図画像と車両位置マーク、誘導経路画像などを合成してモニター5に表示する。
GPS位置算出部16はGPS受信データに基づいて自車位置(GPS測定位置)を計算して出力し、自立航法位置算出部17は自立航法センサー3から入力する方位および移動距離に基づいて(1)〜(3)式により自車位置(自立航法測定位置)を計算して出力する。GPS信頼度決定部18はGPS測定位置の信頼度を決定する。
【0019】
図4はGPS信頼度決定制御の説明図である。GPS信頼度決定部18はある区間における自立航法測定位置軌跡の距離Ltraceと、同一区間におけるGPS測定位置軌跡の距離Lgpsを計算し、これら距離の差の絶対値|Ltrace−Lgps|の大小に基づいて信頼度を決定する。すなわち、GPS信頼度決定部18は閾値より前記差が小さければGPSの信頼度は高いと判定する。図4において、丸印は自立航法測定位置、×印はGPS測定位置であり、CMは車両位置マークである。図4(A)は|Ltrace−Lgps|が閾値より小さくGPSデータの信頼度が高い例であり、図4(B)は|Ltrace−Lgps|が閾値より大きくGPSデータの信頼度が低い例である。
車両位置補正部19は所定移動距離毎に、あるいは所定時間毎にGPS測定位置と自立航法測定位置を用いて後述する車両位置補正処理を行なって車両位置を道路リンク上に引き込み補正する。車両位置マーク発生部20は地図上の車両位置に車両位置マークを発生し合成部15に入力する。ナビゲーション制御部4は以上のほかに、誘導経路発生および経路案内制御を行なう部分や交差点拡大表示/案内を行なう部分などが存在するが本発明と関係ないので省略する。
【0020】
図5は車両位置補正部19の位置補正制御の処理フローである。なお、GPS位置算出部16および自立航法位置算出部17はそれぞれ、所定時間毎にGPS位置PG1′(図2(A)参照)および自立航法位置PS1′を計算し、車両位置補正部19およびGPS信頼度決定部18に入力する。
車両位置補正部19は車両が一定距離(例えば20m)進んだか監視しており(ステップ101)、車両が一定距離進めば、GPS信頼度が高いかチェックする(ステップ102)。GPS信頼度が低ければ車両位置修正処理を終了し、次の一定距離走行を監視する。GPS信頼度が高ければ、車両位置補正部19は、GPS測定位置算出に要する時間dT後の自立航法位置PS1(図2参照)求め、該時間dTにおける自立航法移動距離(dX,dY)を求め(ステップ103)、GPS位置PG1′に距離ベクトル(dX,dY)を加えて真のGPS測定位置PG1を算出する(ステップ104)。
ついで、車両位置補正部19は図2(B)に示すように、自立航法による車両測定位置PS1、該測定位置おける車両方位をθとし、該方位方向に延長した直線LKにGPSによる測定位置PG1より垂線を下ろし、その垂線の足をPGMとする(ステップ105)。しかる後、車両位置補正部19は自立航法による測定位置PS1と垂線の足をPGM間の距離Dおよび該距離Dの一定割合(例えば25%)の距離d(=D/4)を計算し(ステップ106)、自立航法による測定位置PS1を方位ベクトル方向に該距離dだけシフトし、シフト後の位置PC1′を自立航法による車両位置とする(ステップ107)。以後、車両位置補正部19は図2(C)に示すように、この車両位置PC1′を従来技術と同様のマップマッチング処理により道路リンクRD上に修正する(ステップ108)。この修正された位置PC1が第1実施例の最終的なマップマッチングによる車両位置となり、該位置に車両位置マークを表示する。
【0021】
(C)第2実施例
図6は第2実施例の説明図である。一定距離(例えば20m)走行毎に、あるいは一定時間(例えば1秒)走行毎に、測定位置PS1(図6(A))とGPSによる測定位置PG1′を取得する。ついで、自立航法による測定位置PS1をマップマッチングにより道路リンクRD上の位置に修正し、該位置をマップマッチング位置PM1′とする。GPS位置PG1′の算出にdTの時間を要するから、この時間遅れdTの間に、自車位置はPM1′からPM1へ(dX,dY)シフトする。そこで、dT 後の位置PM1を真のマップマッチング位置とし、また、GPS測定位置PG1′に距離ベクトル(dX,dY)を加えた位置を真のGPSによる測定位置PG1とする。
しかる後、図6(B)に示すように道路リンクRDにGPS測定位置PG1より垂線を下ろし、その垂線の足をPGMとする。そして、マップマッチング位置PM1と垂線の足をPGM間の距離Dおよび該距離Dの一定割合(例えば25%)の距離d(=D/4)を計算する。距離dが求まれば、マップマッチング位置PM1を道路リンク方向に該距離dだけシフトし、シフト後の位置PC1を車両位置PC1とし、該位置に車両位置マークを表示する。
【0022】
図7は第2実施例の位置補正制御の処理フローである。なお、第2実施例のナビゲーション装置は図3の第1実施例のナビゲーション装置と同一構成である。
GPS位置算出部16および自立航法位置算出部17は、所定時間毎にGPS位置PG1′(図6(A)参照)、自立航法位置PS1をそれぞれ計算し、車両位置補正部19およびGPS信頼度決定部18に入力する。
車両位置補正部19は車両が一定距離(例えば20m)進んだか監視しており(ステップ201)、車両が一定距離進めば、GPS信頼度が高いかチェックする(ステップ202)。GPS信頼度が低ければ車両位置修正処理を終了し、次の一定距離走行を監視する。GPS信頼度が高ければ、車両位置補正部19は自立航法位置PS1をマップマッチングにより道路リンクRD上の位置に修正し、該位置をマップマッチング位置PM1′とする(ステップ203)。
ついで、車両位置補正部19はGPS測定位置算出に要する時間dT後の自立航法位置PM1(図6(A)参照)求め、該時間dTにおける移動距離(dX,dY)を求め(ステップ204)、GPS位置PG1′に距離ベクトル(dX,dY)を加えて真のGPS測定位置PG1を算出する(ステップ205)。
ついで、車両位置補正部19は図6(B)に示すように、道路リンクRDにGPS測定位置PG1より垂線を下ろし、その垂線の足をPGMとする(ステップ206)。しかる後、車両位置補正部19は道路上の自立航法位置PM1と垂線の足PGM間の距離Dおよび該距離Dの一定割合(例えば25%)の距離d(=D/4)を計算し(ステップ207)、自立航法位置PM1を道路リンクに沿って垂線の足PGMの方向に該距離dだけシフトし、シフト後の位置PC1を車両位置とする(ステップ208)。以後、この車両位置PC1が第2実施例による最終的なマップマッチングによる車両位置となり、該位置に車両位置マークを表示する。
【0023】
以上第1、第2実施例によれば、前後方向の距離誤差(前後ズレ)を小さくできる。また、ユーザが気づかないうちに少しづつ前後方向の距離誤差を補正し、マップマッチング処理により急激な位置飛びが発生しないようにできる。また、GPS誤差の影響を軽減し、微小角分岐点等でのミスマッチングを防止できる。また、GPS測定位置の算出時間遅れを考慮したマップマッチング処理を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の原理説明図である。
【図2】第1実施例の説明図である。
【図3】本発明の車両位置補正部を含むナビゲーション装置の構成図である。
【図4】GPS信頼度決定制御の説明図である。
【図5】第1実施例の位置補正制御の処理フローである。
【図6】第2実施例の説明図である。
【図7】第2実施例の位置補正制御の処理フローである。
【図8】従来の自立航法による車両位置推定方法の説明図である。
【図9】投影法によるマップマッチングの説明図である。
【図10】自立航法を基準にしたマップマッチング処理の説明図である。
【図11】GPSを基準にしたマップマッチング処理の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
PS1′ 自立航法による測定位置
PG1′ GPSによる測定位置
PS1 GPS想定時間遅れ後の信の自立航法位置
PG1 GPS想定時間遅れ後の真のGPS位置
PGM 垂線の足
PC1′ 車両位置
PC1 マップマッチングによる車両位置
LK 方位方向を示す直線
RD 道路リンク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立航法により測定した車両の測定位置とGPS測定法により測定した車両の測定位置とを用いて車両位置を補正する車両位置補正方法において、
前記自立航法による測定位置から車両方位方向に延長した直線に前記GPS測定位置から垂線を下ろし、該自立航法測定位置と前記垂線の足を結ぶ距離を算出するステップ、
前記自立航法測定位置を、前記車両方位方向に前記距離の所定割合分シフトして得られた位置を車両位置とするステップ、
前記車両位置を道路リンク上にマップマッチングして修正するステップ、
を有することを特徴とする車両位置補正方法。
【請求項2】
GPS位置算出に要する時間dTの間に車両が移動する距離ベクトルを求め、該距離ベクトルを前記GPS測定位置に加算して真のGPS測定位置とし、
該dT後の自立航法位置および前記真のGPS測定位置を用いて前記ステップの処理を行なう、
ことを特徴とする請求項1記載の車両位置補正方法。
【請求項3】
自立航法により測定した車両の測定位置とGPS測定法により測定した車両の測定位置とを用いて車両位置を補正する車両位置補正方法において、
前記自立航法による測定位置を道路リンク上の位置にマップマッチングするステップ、
前記GPS測定位置から前記道路リンクに垂線を下ろし、前記マップマッチング後の自立航法位置と前記垂線の足を結ぶ距離を算出するステップ、
該自立航法位置を、前記道路リンク方向に前記距離の所定割合分シフトして得られた位置を車両位置とするステップ、
を有することを特徴とする車両位置補正方法。
【請求項4】
GPS位置算出に要する時間dTの間に車両が移動する距離ベクトルを求め、該距離ベクトルを前記GPS測定位置に加算して真のGPS測定位置とし、
該dT後の自立航法位置および前記真のGPS測定位置を用いて前記処理を行なう、
ことを特徴とする請求項3記載の車両位置補正方法。
【請求項5】
GPS測定位置の信頼度を監視し、GPS測定位置の信頼度が高い場合に前記車両位置補正を行なうことを特徴とする請求項1乃至4記載の車両位置補正方法。
【請求項6】
自立航法により測定した車両の測定位置とGPS測定法により測定した車両の測定位置とを用いて車両位置を補正する車両位置補正装置において、
自立航法により車両位置を測定する自立航法位置測定部、
GPS測定法により車両位置を測定するGPS位置測定部、
前記自立航法による測定位置から車両方位方向に延長した直線に前記GPS測定位置から垂線を下ろし、該自立航法測定位置と前記垂線の足を結ぶ距離を算出し、前記自立航法測定位置を、前記車両方位方向に前記距離の所定割合分シフトして得られた位置を車両位置とし、前記車両位置を道路リンク上にマップマッチングして修正する車両位置補正部、
を有することを特徴とする車両位置補正装置。
【請求項7】
前記車両位置補正部は、GPS位置算出に要する時間dTの間に車両が移動する距離ベクトルを求め、該距離ベクトルを前記GPS測定位置に加算して真のGPS測定位置とし、該dT後の自立航法位置および前記真のGPS測定位置を用いて前記距離を算出する、
ことを特徴とする請求項6記載の車両位置補正装置。
【請求項8】
自立航法により測定した車両の測定位置とGPS測定法により測定した車両の測定位置とを用いて車両位置を補正する車両位置補正装置において、
自立航法により車両位置を測定する自立航法位置測定部、
GPS測定法により車両位置を測定するGPS位置測定部、
前記自立航法による測定位置を道路リンク上の位置にマップマッチングし、前記GPS測定位置から前記道路リンクに垂線を下ろし、前記マップマッチング後の自立航法位置と前記垂線の足を結ぶ距離を算出し、該自立航法位置を、前記道路リンク方向に前記距離の所定割合分シフトして得られた位置を車両位置とする車両位置補正部、
を有することを特徴とする車両位置補正装置。
【請求項9】
前記車両位置補正部は、GPS位置算出に要する時間dTの間に車両が移動する距離ベクトルを求め、該距離ベクトルを前記GPS測定位置に加算して真のGPS測定位置とし、該dT後の自立航法位置および前記真のGPS測定位置を用いて前記距離を算出する、
ことを特徴とする請求項8記載の車両位置補正装置。
【請求項10】
GPS測定位置の信頼度を監視する信頼度監視部を備え、前記車両位置補正部は、GPS測定位置の信頼度が高い場合に前記車両位置補正を行なうことを特徴とする請求項6乃至9記載の車両位置補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−32408(P2008−32408A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203014(P2006−203014)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】