車両内の識別対象物を検出する方法
【課題】識別対象物が、自動車の周りの領域の内部に位置するかどうかについての判断を行なうことのできるシステム。
【解決手段】校正信号(S_CAL)をアンテナ装置の方向に送出して制御電力(PR)を決定し、制御電力(PR)に対応する関数信号(S_FONC)をアンテナ装置の方向に送出して、アンテナ装置が所定の磁界を放出するようにし、識別対象物が受信し、かつ放出磁界に対応する磁界(Br)を測定して、公称磁界(B0)と比較し、かつ前記比較の結果によって変わる形で、識別対象物が、アンテナ装置の周りの領域(ZO)の内部に位置するかどうかについての判断を行なう。
【解決手段】校正信号(S_CAL)をアンテナ装置の方向に送出して制御電力(PR)を決定し、制御電力(PR)に対応する関数信号(S_FONC)をアンテナ装置の方向に送出して、アンテナ装置が所定の磁界を放出するようにし、識別対象物が受信し、かつ放出磁界に対応する磁界(Br)を測定して、公称磁界(B0)と比較し、かつ前記比較の結果によって変わる形で、識別対象物が、アンテナ装置の周りの領域(ZO)の内部に位置するかどうかについての判断を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置の周りの領域に位置する識別対象物を検出する方法、及びこの検出方法を実行する検出システムに関する。
【0002】
本発明は、ハンズフリー検出システムを装備する自動車に対して、主として適用することができる。
【背景技術】
【0003】
この分野における現時点での公知の技術によれば、車両の客室の内部に、または外部に位置しているかどうかを確認する受信機−発信機として機能するバッジのような識別対象物を検出する方法がある。バッジが車両の内部に位置する場合、ユーザは、車両の始動を許される。
【0004】
バッジの検出は、アンテナ装置の電圧調整によって一定の電力で放出される磁界を利用して行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような解決策は、実行に移すことが難しいという問題がある。アンテナ装置には、車両のバッテリからの電圧が、電圧が変動する(車両の始動、及びエンジンの停止などのような異なる操作に起因する)たびに供給されるので、バッテリ電圧を再調整して、アンテナ装置による一定の電力での放出を可能にする必要がある。
【0006】
また、車両から離れる際、扉の施錠・解錠操作用のスイッチを施錠操作したにも係わらず、例えば、運転席扉以外の他の扉から降車するために他の扉が開放している最中には、運転席扉を含む全ての扉を施錠状態にすることはできない。これは、他の扉が開放しているときには、スイッチの操作を禁止しているためである。
【0007】
このようになると、車両から長時間離れる際の施錠忘れが発生する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、従来より簡単な手段による識別対象物の検出を可能にすることにある。
【0009】
そのため、本発明は、識別対象物を、アンテナ装置の周りの領域において検出する方法を提案するものであり、この方法は、複数のステップを有し、これらのステップでは、
− 校正信号をアンテナ装置の方向に送出して、設定電力を決定し、
− 設定電力に対応する関数信号を、アンテナ装置の方向に送出して、アンテナ装置が所定の磁界を放出するようにし、
− 識別対象物が受信し、かつ放出磁界に対応する磁界を測定して、公称磁界と比較し、
− この比較に基づいて、識別対象物が、アンテナ装置の周りの領域の内部に位置するかどうかについての判断を行なうことを特徴としている。
【0010】
以下の詳細な記述から分かるように、識別対象物の検出は、電圧調整の必要性を生じることなく、アンテナ装置を校正することにより、かつ公称磁界との比較を行なうことにより、行なうことができる。
【0011】
非制限的な実施形態によれば、本発明による方法は、さらに以下の別の特徴を有する。
− 校正信号は、識別対象物に認識されることがない。そのため、識別対象物は、その後の関数信号を迅速に受信することができる。
【0012】
− 本方法は、更に別のステップを含み、このステップによって、
− 校正信号が送信されると、アンテナ装置を流れる電流を測定し、
− 測定電流を初期電流と比較して、設定電力を決定する。
【0013】
従って、校正信号は、簡単に行なえる電流測定によって変わる。
【0014】
− 電力は、所定のデューティサイクルの電圧で設定される。この調整は簡単に行なわれる。また、この調整によって、アンテナ装置の電源電圧の変動を補償することができる。
【0015】
− 電圧は対称信号である。これにより、測定電流信号に含まれる偶数次高調波を除去することができるので、電流を更に正確に測定することができる。
【0016】
− デューティサイクルは1/3に等しい。これにより、測定電流信号に含まれる3の倍数の次数の高調波を除去することができるので、電流を更に正確に測定することができる。
【0017】
− 電圧は、フルブリッジ制御またはハーフブリッジ制御を行なう電力段によって生成される。これにより、更に広い範囲の電流が得られる。
【0018】
校正信号を、特定のイベントに基づいてトリガーする。これにより、校正信号を定期的に再更新することができるので、その結果、アンテナ装置が放出する磁界を、定期的、かつ正確に測定することができる。
【0019】
− 第1の変形例によれば、特定の対象は車両の操作である。その場合、温度変化のような外部イベントに起因する放出磁界の変化を考慮に入れることができる。
【0020】
− 第2の変形例によれば、特定の対象は、バッテリの電圧変動である。そのため、これらの変動を、校正において考慮に入れることができる。
【0021】
− 本発明の方法は、固定閾値を識別対象物に書き込む追加の初期ステップを含んでいる。そのため、固定受信磁界を得ることができ、この固定受信磁界に基づいて、識別対象物は、信号をアンテナ装置から受信し、関連する制御装置と通信することができる。
【0022】
− 固定閾値は、公称磁界によって変わる。これにより、識別対象物は、アンテナ装置から送出される信号に、当該識別対象物が公称磁界に対応する領域に位置するときに応答することができる。
【0023】
− アンテナ装置の周りの領域は、公称磁界によって定められる。
【0024】
− アンテナ装置の周りの領域は、車両客室に対応している。従って、識別対象物が車両の客室の内部に位置するかどうかの判断を行なうことにより、車両の始動を許可する。
【0025】
本発明の第2の対象は、アンテナ装置の周りの領域に位置する識別対象物を検出するシステムに関し、このシステムは、制御装置と、アンテナ装置と、識別対象物とを備え、
− 制御装置は、
− 校正信号をアンテナ装置の方向に送出して設定電力を決定し、
− 設定電力に対応する関数信号をアンテナ装置の方向に送出して、アンテナ装置が所定の磁界を放出するようにし、
− 識別対象物が受信する磁界と公称磁界との間で行なわれる比較に基づいて、識別対象物が、アンテナ装置の周りの領域の内部に位置するかどうかについて判断することができ、
− 識別対象物は、放出磁界に対応する受信磁界を測定し、当該受信磁界を公称磁界と比較することができることを特徴とする。
【0026】
本発明の第3の対象は、識別対象物と連動することができるアンテナ装置に関し、このアンテナ装置は、
− 所定の初期電力に対応する校正信号を受信し、
− 所定の設定電力に対応する関数信号を受信して、所定の磁界を放出するようになり、
− 関数信号を識別対象物に送信することができ、識別対象物は、アンテナ装置が放出する磁界によって変わる磁界を受信することを特徴とする。
【0027】
本発明の第4の対象は、アンテナ装置と、識別対象物と連動することができる制御装置に関し、この制御装置は、信号送出器を備えていることにより、
− 校正信号をアンテナ装置の方向に送出して設定電力を決定し、
− 所定の設定電力に対応する関数信号をアンテナ装置の方向に送出して、アンテナ装置が所定の磁界を放出するようにすることを特徴とする。
【0028】
非制限的な実施形態によれば、制御装置は更に、応答を識別対象物から、受信磁界と公称磁界との間で行なわれる比較に基づいて受信する信号受信機を備えている。
【0029】
非制限的な実施形態によれば、比較は、識別対象物によって行なわれる。
【0030】
本発明の第5の対象は、上述の複数の特徴のうちのいずれか一つの特徴に従って構成される制御装置、及び上述の複数の特徴のうちのいずれか一つの特徴に従って構成されるアンテナ装置が配設されている客室を備える自動車に関し、前記2つの装置は、識別対象物と協動することができる。
【0031】
さらに、本願発明の別の対象としては、
− 車体に設けられたアンテナ装置(A)の周りの領域(ZO)に位置する識別対象物(ID)を検出するシステム(SYS)であって、このシステムは、車内に設けられる制御装置(DC)と、車内に設けられる内部アンテナ装置(AI)と、車外に設けられる外部アンテナ装置(AX)と、識別対象物(ID)とを備え、
− 制御装置(DC)は、
− 校正信号(S_CAL)を内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)に送出して設定電力(PR)を決定し、
− 設定電力(PR)に対応する関数信号(S_FONC)を内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)に送出して、内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)が所定の磁界(Be)を放出するようにし、
− 識別対象物(ID)が受信する磁界(Br)と公称磁界(B0)との間で行なわれる比較に基づいて、識別対象物(ID)が、内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)の周りの領域(ZO)(第1通信領域)の内部に位置するかどうかについて判断することができ、
− 識別対象物(ID)は、放出磁界(Be)に対応する受信磁界(Br)を測定し、そして該受信磁界(Br)を公称磁界(B0)と比較することができ、
− さらに、識別対象物(ID)が領域(第1通信領域)内に位置すると判断されている場合、扉の外部に設けた施錠・解錠操作用の検出器を施錠操作したにも係わらず扉が施錠状態に切り替わらなかったとき、識別対象物(ID)が領域(ZO)及び(第1通信領域)内に位置しなくなった(または所定時間が経過した)と判断されたとき、解錠状態の扉が施錠状態になるように切替制御を行う施錠制御装置を備えることを特徴とする。
【0032】
この場合、識別対象物(ID)が領域(第1通信領域)内に位置すると判断されている状態で施錠操作を行った場合には、識別対象物を所持している主体、例えばドライバが、領域(第1通信領域)から外れたとき(または、所定時間が経過したとき等)にのみ(ドライバが何らかの理由で再び車内に乗り込んだ場合には施錠状態にはならない、その場合には、所定時間を計時するタイマはキャンセル)、扉を施錠状態にすることができ、施錠忘れを防止することができる。
【0033】
本発明の他の特徴及び利点は、非制限的な例を示す図面に基づく説明から、より深く理解しうると思う。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の非制限的な実施形態による方法を実行する検出システムを装備した車両の平面図である。
【図2】本発明の非制限的な実施形態による方法によって検出される識別対象物による受信を示す図である。
【図3】本発明の非制限的な実施形態による方法によって検出される識別対象物による受信に対応するこの限界境界を示す別の図である。
【図4】本発明の非制限的な実施形態による方法の非制限的な実施形態のを示す図である。
【図5】図4の方法を用いる場合の識別対象物とアンテナ装置との間に使用される通信の非制限的な実施形態を示す図である。
【図6】アンテナ装置を流れ、かつ図4の方法を用いる場合に測定される電流の周波数スペクトルを示す図である。
【図7】図4の方法を用いる場合のアンテナ装置に印加される電圧信号の第1の実施形態、及び関連する電流周波数スペクトルを示す図である。
【図8】図4の方法を実施する場合のアンテナ装置に印加される電圧信号の第2の実施形態、及び関連する電流周波数スペクトルを示す図である。
【図9】図4の方法を用いる場合のアンテナ装置に印加される電圧信号の第3の実施形態、及び関連する電流周波数スペクトルを示す図である。
【図10】空間における磁界の様子を示す図で、この磁界の成分は、図4の方法を用いる場合の放出磁界に対応している。
【図11】は、図4による方法によって実行されるステップを説明するための電流デューティサイクル図である。
【図12】図4の方法を実行するための検出システムの非制限的な実施形態を示す図である。
【図13】図12の検出システムに含まれる電力段の非制限的な実施形態を示す図である。
【図14】図13の電力段によって生成される電圧信号、及び関連する電流周波数スペクトルの非制限的な例を示す図である。
【図15】図4の方法に使用される電流の範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の非制限的な実施形態に関する詳細な説明
図1は、アンテナ装置Aを制御するために使用される信号を送受するトランシーバ装置DERを装備する車両Vを示している。アンテナ装置Aは、この非制限的な例では、複数のアンテナ、この場合は、「外部」アンテナAX、及び「内部」アンテナAIを含み、これらのアンテナの全ては、受信機−発信機IDと連動し、これらの部品全体で、以下に説明する検出システムを構成している。
【0036】
図に示す非制限的な例は、5つの外部アンテナAXを示し、これらのアンテナのうちの4つのアンテナAX1,AX2,AX3,及びAX4は、車両Vの客室VHの外部に、この場合には、扉の取っ手に設置され、1つのアンテナAX5は、車両のリアバンパーVCに設置されている。更に、2つの内部アンテナAI1、AI2は、客室VHに、この場合は、車両の前部客室及び後部客室に設置されている。各アンテナには、低周波数交流電流が、トランシーバ装置DERによって供給され、各アンテナの中、内部アンテナはBeI、そして外部アンテナはBeXと表記されている磁界Beを放出する。
【0037】
これらのアンテナからの放出磁界Beを手段とし、外部アンテナAXを使用して、受信機−発信機IDが車両Vの近傍に位置しているかどうかを、非制限的な例では、1.5m未満の距離に位置しているかどうかを検出することができ、また内部アンテナAIを使用して、受信機−発信機IDが車両の客室VHの内部に位置しているかどうかを検出することができる。
【0038】
この場合における受信機−発信機IDは非制限的な例では、車両Vのユーザが持ち運ぶ識別対象物ID、例えばバッジ、キー、キーフォブなどである。識別バッジの例を一つの例として、以下の記述において挙げることとする。
【0039】
交流電流を利用して、アンテナAは、低周波数信号BFを送出することによりデータを送信してバッジIDと通信し、バッジIDは、無線周波数信号RFを送出することにより応答する。非制限的な例では、低周波数信号BFは、125kHzの領域にあり、無線周波数信号RFは、433MHzの領域にある。低周波数信号BFの周波数を20kHzまで下げること、または種々の国において利用することができる周波数帯域(アジアでは315MHz、所定の欧州諸国では868MHz、またはアメリカでは915MHzなど)によって変わるが、無線周波数信号RFの周波数をギガヘルツという高い周波数に引き上げることが可能である。
【0040】
応答に基づいて、アンテナAは、バッジIDを認証して、車両の扉を開けさせるかどうか、またはバッジIDを認証して、車両を始動させるかどうかを判断する。非制限的な例では、バッジIDを認証して扉を開けさせるために、ユーザは、例えば扉の取っ手に触れる必要がある。この目的のために、取っ手には適切な検出器が備えられている。
【0041】
外部アンテナAXは、バッジIDとの第1通信領域を決定して、車両の操作を許可する。この領域は、前記アンテナAXから放出される磁界によって画定される。従って、外部アンテナAXによって、バッジIDを認証して車両を操作させるための必要最低限の最短距離を保証する必要がある。
【0042】
内部アンテナAIは、バッジIDとの第2通信領域ZOを決定して始動を許可する。この領域は、当該内部アンテナから放出される磁界によって画定される。従って、内部アンテナAIによって、バッジIDを認証し、車両を始動させるための固定領域を保証する必要があり、この領域は、車両Vの客室VHである。
【0043】
実際には、これらの内部アンテナAIから放出される磁界の到達領域は、客室VHよりも広いが、この磁界は、車両Vの客室VHの金属製外郭によって制限され、かつ窓の開口を通して漏れ出すことに注目されたい。
【0044】
第2領域ZOにおけるバッジIDの検出では、バッジが、公称磁界と呼ばれる受信磁界B0によって変わる固定閾値S0で初期化されるという事象を利用している。非制限的な態様では、この固定閾値S0は、公称磁界B0に対応する電力P0である。
【0045】
バッジIDが受信する磁界Brは、アンテナAによって放出される磁界Beによって変わり、後者の磁界Beによって、通信領域とも呼ばれていた領域ZOであって、当該アンテナの磁界Beを表わす領域ZOが当該アンテナの周りに画定される。
【0046】
図2は、アンテナ装置のアンテナAに対するバッジIDの位置が、このアンテナAの磁界Be、従って対応する受信磁界Brに従って変化する様子を示している。
【0047】
放出磁界Beを放出するアンテナAからのバッジIDの距離が長くなると、対応する受信磁界Brが弱くなることが分かる。バッジIDがアンテナAと同じ場所に位置するとき、受信磁界Brは、理論的に放出磁界Beに等しい。
【0048】
従って、公称磁界B0は、バッジIDがアンテナA及びトランシーバ装置DERと通信することができる公称通信領域ZOに対応する。
【0049】
バッジIDがこの領域ZOの外側に位置する場合(受信磁界Brが、公称受信磁界B0よりも小さい場合)、バッジIDはアンテナ装置Aから送信される信号に応答することがないか、または意図的に間違えた無線周波数応答RFを送信する。これは、当該バッジIDが車両の客室VHの外側に位置していることを意味する。それ以外の状況では、当該バッジIDは、無線周波数信号RFを送出することにより応答する。この公称磁界B0は、図2に示すように、無線外乱要因で発生するスプリアス磁界Bbの影響を回避するように決定され、公称磁界B0の値は、スプリアス磁界の値よりも大きいことに注目されたい。
【0050】
図3は、内部アンテナAI1に対するバッジIDの位置取りの例を示している。
【0051】
内部アンテナAI1は、15ワットの電力の磁界Beを放出する。固定閾値S0はP0=5ワットに固定されている。バッジIDは、当該バッジが位置ID1に位置するときに、磁界Br1を受信し、この磁界Br1の電力P1は4.5ワットであり、従って固定閾値S0よりも小さい。従って、バッジIDは、閾値S0によって定義される領域ZOの外側に位置するので、アンテナAI1及びトランシーバ装置DERと通信することはない。
【0052】
バッジIDは、位置ID2に位置するときに、磁界Br2を受信し、この磁界Br2の電力P2は5.5ワットであり、従って固定閾値S0よりも大きい。従って、バッジIDは、通信領域ZO内に位置し、アンテナAI1及びトランシーバ装置DERと通信することになる。
【0053】
従って、バッジIDを検出して、このバッジが、アンテナの、特に内部アンテナAIの通信領域ZOに位置するかどうかを確認する方法では、図4に示すようにして、次のようにステップを進める。
【0054】
初期ステップ0)では、バッジIDが製造されるときに、固定閾値S0をバッジIDのメモリに、例えばEEPROM型の再書き込み可能メモリに書き込む。
【0055】
次に、バッジID及びアンテナ装置Aが使用されているときに、すなわち動作モードになっているときに、
第1ステップ1)において、校正フレームとも呼ばれる校正信号S_CALをアンテナ装置Aの方向に所定の初期電力PIで送出して、アンテナ装置Aの設定電力PRを決定する。このような信号送出方法を図5に示す。
【0056】
非制限的な実施形態では、校正信号S_CALは、特定のイベントによってトリガーされる。
【0057】
非制限的な例では、特定のイベントは車両の操作である。車両の操作は、アンテナ装置Aの環境の変化、すなわち温度変化(例えば、種々の理由による)を示し、温度変化はアンテナ装置の構成部品に影響を与えるので、アンテナ装置のインピーダンスZ、従ってアンテナ装置による放出磁界Beは変化する。
【0058】
別の非制限的な例では、特定のイベントは電源電圧、この場合には、バッテリ電圧Ubat(バッテリ電圧は、例えばエンジン始動後に、またはエンジン停止後に変化し得る)の変動である。これにより、アンテナ装置を流れる電流に影響するこれらの変動を校正の際に考慮に入れることができる。このようにして、バッテリ電圧変動は補償されるが、その理由は、電流Irmがバッテリ電圧変動後に測定されるからである。
【0059】
従って、このステップの目的は、アンテナ装置AのインピーダンスZの変化を、アンテナ装置Aが放出する磁界Beを決定する際に、従ってアンテナ装置Aに供給される設定電力PRを決定する際に考慮に入れることにある。
【0060】
アンテナ装置を車両に使用する場合に、従ってアンテナ装置が動作しているときに現われるインピーダンスZの変化をこのようにして考慮に入れる。
【0061】
校正信号S_CALは、識別対象物IDには認識されないことに注目されたい。従って、識別対象物IDは当該信号を受信するが、識別対象物IDはこの校正信号S_CALに応答することがない。これにより、バッジにとっては、この信号を受信するための作動−非作動期間を追加しなくて済む。従って、バッジIDは、このバッジが次に受信することになる関数信号S_FONCに含まれるデータを更に高速に受信することになる。
【0062】
従って、第1サブステップ1a)では、初期電力PIを決定して、校正信号S_CALを送信する。初期電力PIは、理論初期電流Ithに対応する初期デューティサイクルα1の校正電圧UCを利用して得られる。この理論初期電流Ithは、車両のテストによって実験的に決定される。理論初期電流Ithの値は車両Vのタイプによって変化する。
【0063】
非制限的な実施形態では、この電圧は方形波である。そのため、この電圧を印加するために使用され、かつ以下に説明する電力段におけるエネルギーの浪費を回避することができる。発熱によるエネルギー消費は、消費電力が著しく大きくなる正弦波電圧とは異なり、遷移期間中にしか生じない。従って、この電力段が極めて高い温度に加熱されることはない。
【0064】
第2サブステップ1b)では、校正信号S_CALが送信されると、アンテナ装置Aを流れる実際の電流Irmを測定する。実際、理論初期電流Ithに対応する初期電力PIが印加されるが、アンテナ装置AにはインピーダンスZrがあるので、前記装置を流れる電流は実際には、理論初期電流Ithとは等しくない。
【0065】
アンテナ装置Aを流れる電流Irmの測定は、以下に説明するピーク振幅検出器Cによって簡単に行なうことができる。この電流Irmは交流電流であり、この電流の周波数スペクトルは高調波hを含んでいる。図6では、1〜5次の高調波が簡略化された非制限的な例として示されている。
【0066】
非制限的な実施形態では、アンテナ装置Aは送信周波数(周波数は、例えば125kHzである)に調整される。これにより、より大きい強度の磁界を送信周波数で放出し、そして帯域通過フィルタFLを配設することが可能になる。従って、帯域通過フィルタFLを使用して、高調波h(1次の高調波を除く)の振幅を小さくすることができる。
【0067】
実際、送信時に、アンテナ装置Aの側では、アンテナ装置Aを流れる電流Irmの値は、アンテナ装置Aに含まれるフィルタの帯域内の高調波hの和に等しい。フィルタの選択性によって変わるが、フィルタが図6のFL1で表わされるような広帯域通過フィルタである場合には、これらの高調波の全てが含まれることになる。また、フィルタが図6のFL2で表わされるような狭帯域通過フィルタである場合には、これらの高調波のうちの幾つかの高調波のみが含まれることになる。従って、送信時では、放出磁界Beの値は、高調波hを含むこの電流Irmに依存する。
【0068】
受信時に、バッジIDの側では、考慮に入れる電流Irmの値はこの場合も、基本波と呼ばれる1次高調波h1にのみ関係する。受信磁界Br(及び、結果として、固定閾値S0)は、基本波の値を示す放出磁界Beにのみ対応し、これらの高調波の合計値を示す放出磁界には対応しない。
【0069】
従って、1次高調波h1に載せて送信される電力を正確に求めて、公称磁界B0、従ってバッジIDの固定閾値S0に対応する放出磁界Beの放出を可能にすることが必要となる。従って、電流Irmの測定を行なって、基本波h1以外の高調波を出来る限り除去する必要がある。
【0070】
この操作は、初期電力PIを得るために使用される初期デューティサイクルα1の校正電圧UCを利用して行なわれる。
【0071】
校正電圧UCがいずれかの方形波信号である場合、測定電流Irmの高調波の全てを図6に示すように含めることができる。
【0072】
第1の非制限的な実施形態では、校正電圧UCは対称電圧である。図7から分かるように、この場合、測定電流Irmの偶数次高調波は除去されている。図から分かるように、電圧UCはポイントPTに対して対称である。対称電圧UCによって、1次高調波h1に対応する初期電力PIの正確な生成、及び正確な測定が、他の高調波に起因するスプリアス電流を除去することにより可能になる。
【0073】
周波数表示では、n次高調波は項ancos(nωt)+bnsin(nωt)で表わされる。
【0074】
電圧UCは奇数関数である、別の表現をすると、f(−x)=−f(x)が成り立ち、従って、当該関数のフーリェ級数展開は、正弦項のみを含み、係数anはゼロである。
【0075】
従って、Cn=(1/T) ∫f(x) e-jnωx dxであり、かつCn=(1/2)(an−jbn)であることが分かると、次の式が得られる。
Cn=j(2E/πn).sin(nπα1).sin(n(π/2))
及び
bn=(4E/πn).sin(nπα1).sin(n(π/2))
上の式では、ω=2π/Tであり、T及びEは、アンテナ装置の電源電圧Ubatの周期及び振幅である。
【0076】
従って、対称電圧信号UCに対応するフーリェ級数は、次式に等しい。
f(x)=Σ(4E/πn).sin(nπα1).sin(n(π/2)).sin(nωx),
上の式において、n=1,...,∞であるか、またはフーリェ級数は次式に等しい。
f(x)=Σ(4E/π(2p+1)).sin((2p+1)πα1).sin((2p+1)(π/2)).sin((2p+1)ωx),
上の式では、p=0,...,∞であり、
この等式により、図7に示す高調波のスペクトルが与えられる。
基本波h1の値は次式により与えられる:
h1=(4E/π).sin(πα1).sin(ωx)
【0077】
更に、方形波電圧を実現することにより、電力段Pのトランジスタにおけるエネルギーの浪費を回避することができることに注目されたい。実際、発熱によるエネルギー消費は、消費電力が著しく大きくなる正弦波電圧とは異なり、遷移期間中にしか生じない。従って、この電力段Pが極めて高い温度に加熱されることはない。
【0078】
調整可能なデューティサイクルα1の値を使用して、初期電力PIの値を調整することができることに注目されたい。
【0079】
従って、対称方形波電圧によって、一方では、送信初期電力PIを、必要な通信領域ZOに対応する必要な値に設定することができ(従って、送信電力PIを正確に生成することができる)、他方では、バッジIDの実際の受信電力に対応する実際の送信電力PIの正確な測定値が、偶数次高調波が除去されるので得られる。
【0080】
第2の非制限的な実施形態では、校正電圧UCは1/3のデューティサイクルの電圧を含み、このデューティサイクルは、電圧信号UCのπ/3のオフセットに対応する。図8から分かるように、この場合、測定電流Irmの3の倍数の次数の高調波が除去されている。
【0081】
2つの実施形態を組み合わせることができることに注目されたい。この場合、図9から分かるように、結果的に残るのは、1次及び5次の高調波であり、後者の5次高調波は無視することができる。
【0082】
このようにして、アンテナ装置Aを流れる電流Irmを正確に測定することができる。従って、測定電流Irmはこの場合、放出磁界の基本波の振幅を表わす。
【0083】
その結果、放出磁界Beが測定電流Irmに比例することが分かっている場合に、当該振幅に基づいて、アンテナ装置Aによって送信され、かつ受信電力Prに正確に対応する初期電力PI(従って、放出磁界Be)を推定することが可能になる。
【0084】
この技術分野の当業者には公知の如く、磁界Bは、図10に示すように、3つの成分を直交空間x,y,zに含んでいることを思い起こされたい。これらの成分は次式により与えられる。
Bμ=(Ae Im/2πd3)* cos θ,
Bθ=(Ae Im/4πd3)* sin θ,及び
Bφ=0,
上の式では、Aeは磁界Bが通過するアンテナの実際の表面積であり、dは、磁界Bの測定を可能にし、かつアンテナの中心から測定される距離である。
【0085】
NWをアンテナの巻線の数、Aを巻線のフェライトコアの断面積、そしてμrodをフェライトコアの見掛け上の透磁率とした場合にAe=NW*A*μrodが成り立つことも思い起こされたい。
【0086】
また校正電圧UCは、以下に説明するフルブリッジ制御を行なうHブリッジを含む電力段Pによって得られることに注目されたい。
【0087】
第3サブステップ1c)では、測定電流Irmを理論初期電流Ithと比較する。差を利用して、アンテナ装置Aの実インピーダンスZrを導出し、従ってアンテナ装置Aに印加される設定電力PRを導出する。
【0088】
アンテナ装置Aの周りに位置し、かつ車両の客室VHに対応する領域ZOを求めるために、電力PRに対応する放出磁界Beを導出することを思い起こされたい。従って、既知である値を持つこの所望の磁界は、既知の電流Ivに対応する。アンテナ装置Aにこの既知の所望電流Ivを供給するために、前記アンテナ装置の電力PRは、当該アンテナ装置のインピーダンスZrを考慮に入れて設定する必要がある。
【0089】
設定電力PRは、設定デューティサイクルα2の関数電圧UFを利用して設定される。
【0090】
従って、第4サブステップ1d)では、設定デューティサイクルα2が決定される。
【0091】
設定デューティサイクルα2の計算値は次のようにして推定される。
次の数式が成り立つ:Irm=(Ubat*sin(α1π))/Zr、従って次式が得られる:
Zr=(Ubat*sin(α1π))/Irm、及び
Iv=(Ubat*sin(α2π))/Zr、従って次式が得られる。
sin(α2π)=(Zr*Iv)/Ubat=(Ubat*sin(α1π)*Iv))/(Irm*Ubat)=sin(α1π)*(Iv/Irm))
従って次式が得られる。
α2=(1/π)*Arcsin(sin(α1π)*(Iv/Irm)) [1]
【0092】
実際には、設定デューティサイクルα2の計算式[1]には、アンテナ装置Aの実インピーダンスZrがもう含まれていないことに注目されたい。
【0093】
第1の非制限的な実施形態では、設定デューティサイクルα2は、以下に説明するトランシーバ装置DERのマイクロプロセッサによって計算される。
【0094】
より簡単で、かつより高速の第2の実施形態では、設定デューティサイクルα2は、予め記入されているマッピングテーブル(図示せず)に基づいて、数式sin(α1π)/sin(α2π)=Irm/Iv[2]を使用することにより定義される。このテーブルでは、校正信号S_CALが送信されるときにアンテナ装置を流れる測定電流Irmと、理論電流Ithとの差が生じるたびに、所望の関数電流Ivに対応し、かつアンテナ装置AのインピーダンスZrの変化を考慮に入れた設定デューティサイクルα2をテーブルから取り出す。
【0095】
このようなテーブルは以下の形式となる:
【数1】
上のテーブルでは、Iv1,Iv2,Iv3などは、所望電流Ivの種々の値であり、Irm1,Irm2,Irm3などは、アンテナ装置Aを流れる測定電流Irmの種々の値であり、α211...α221...α231...などは、対応する種々の設定デューティサイクル値である。
【0096】
数式[1]を適用するということ、または設定デューティサイクルα2をこのマッピングテーブルから選択するということは、非制限的な例の図11に示すように、実インピーダンスZrを表わす曲線CZを使用して、アンテナ装置Aに適用すべき設定デューティサイクルα2を求めることになる。
【0097】
デューティサイクルαをx軸上にとり、電流Iをy軸上にとる。図から分かるように、理論初期電流Ithに対応して、初期デューティサイクルα1の電圧が印加される。この初期デューティサイクルα1と理論初期電流Ithとの相関点は、アンテナ装置Aの理論インピーダンスZthを表わす曲線CZth上に位置する。
【0098】
当該装置を流れ、かつ初期デューティサイクルα1を持つ実電流Irmを測定する。この初期デューティサイクルα1と測定実電流Irmとの相関点は、アンテナ装置Aの実インピーダンスZrを表わす曲線上に位置する。2つの曲線、すなわちこの実インピーダンスZrの最大曲線CZrmax及び最小曲線CZrminが示される。この例では、曲線CZmaxを実インピーダンスの最大値Zrmaxに対応するように描いている。
【0099】
最後に、所望電流Ivに関して、対応する設定デューティサイクルα2を、実インピーダンスZr、この場合はCZmaxを表わす曲線を描くことにより、そしてx軸に投影することにより求める。
【0100】
従って、設定デューティサイクルα2は、所望の関数電圧UFを印加して、所望の電力PRがアンテナ装置Aにおいて得られるように決定されている。
【0101】
関数電圧UFは、以下に説明するフルブリッジ制御及びハーフブリッジ制御を行なうHブリッジを含む電力段Pによって得られることに注目されたい。
【0102】
従って、この第1校正ステップ1)は、設定電力PRを決定するための検出システムSYSの自動校正に対応している。実際、外部測定手段はこの校正には必要ではない。更に、この自動校正は、当該自動校正がアンテナ装置が動作している間に始まり、かつアンテナ装置が、例えば工場においてデバッグされているとき以外のときに始まるという点において動的である。
【0103】
第2ステップ2)では、校正信号S_CALを送信した後に、関数フレームとも呼ばれる関数信号S_FONCを次に、図5に示すように、アンテナ装置Aの方向に、上記のようにして決定した設定電力PRで送信して、アンテナ装置Aが、所望領域ZOに対応する、車両アプリケーションの例における車両客室VHに対応する所定の磁界を放出するようにする。
【0104】
第3ステップ3)では、識別対象物IDが受信し、かつアンテナ装置Aが放出する磁界Beに対応する磁界Brを測定する。この測定は、この技術分野の当業者には公知の、かつ識別対象物IDに含まれるアンプ内蔵RSSI(受信信号強度表示)機能付きの測定装置を利用して行なわれる。
【0105】
第4ステップ4)では、受信磁界Brを公称磁界B0と比較する。この比較は、識別対象物ID内で行なわれる。
【0106】
第5ステップ5)では、バッジIDがアンテナ装置Aの周りの領域ZOに位置しているかどうかに関する判断を、この比較に基づいて行なう。
【0107】
従って、受信磁界Brが公称磁界B0よりも大きい場合、バッジIDはアンテナ装置Aの周りの領域ZOに、従って車両客室VHの内部に位置している。次に、バッジIDは、図5に示すように、肯定応答REPOKをトランシーバ装置DERの制御装置DCに返す。次に、後者の制御装置によって、例えば車両の始動が可能になる。
【0108】
これとは異なり、受信磁界Brが公称磁界B0よりも小さい場合、バッジIDは領域ZOの外部に、従って車両客室VHの外部に位置している。この場合、バッジIDは応答を返さず、バッジIDが関数信号S_FONCをアンテナ装置Aから受信しなかったかのように振る舞うか、または図5に示すように、否定応答REPNOKを制御装置DCに返す。次に、後者の制御装置DCによって、例えばいかなる車両の始動も阻止される。
【0109】
別の変形例では、バッジIDが領域ZOの内部に、または外部に位置しているかどうかに関係なく、バッジIDは比較の結果を含む応答REPを体系的に送信する。
【0110】
これまで説明してきた方法は、図12の非制限的な実施形態に示される検出システムSYSによって実行される。検出システムSYSは、
− トランシーバ装置DERを備え、当該トランシーバ装置DERは、
− 制御装置DCと、
− 電力段Pと、
− 電流測定装置Cと、
− 応答REPOK,REPNOKを識別バッジIDから、受信磁界Brと公称磁界B0との間で行なわれる比較に基づいて受信する信号受信機REとを含み、当該検出システムSYSは、更に、
−アンテナ装置Aと、
−受信機−送信機、この場合は識別バッジIDとを備えている。
【0111】
非制限的な実施形態によれば、トランシーバ装置DERの構成要素群の全てが、一つの同じ電子カードに収容されていることに注目されたい。これにより、種々の構成要素の間の通信を、より高速に、かつより高い信頼性で行なうことができる。これとは異なり、これらの構成要素が別々に配置される場合、これらの構成要素を接続する通信リンクには、より簡単に障害が発生する恐れがあり、かつこれらのリンクのビットレートが低下する恐れがある。
【0112】
識別バッジIDはこの技術分野の当業者には公知であって、ここで説明はしない。
【0113】
他の構成要素について、以下に更に詳細に説明する。
【0114】
・アンテナ装置A
第1の非制限的な実施形態では、アンテナ装置AはRL回路により構成される。後者のRL回路は、アンテナ装置の電源電圧を増幅して、適切な磁界の放出を可能にすることが必要である。
第2の非制限的な実施形態では、アンテナ装置AはRLC回路により構成される。後者のRLC回路は、アンテナ装置Aの電源電圧、この場合は車両Vのバッテリ電圧Ubatを使用して、アンテナ装置Aを流れる電流Iを直接増幅することができるので、適切な磁界の放出が、第1の実施形態における場合とは異なり、電圧のロッキングを使用することなく可能になる。従って、この構成が、増幅を実現するために実行に移すことがより簡単である解決策となる。このRLC回路は、これまでの記述から分かるように、帯域通過フィルタとしても機能する。
【0115】
・制御装置CDは、
− 信号発信機EMを備え、当該信号発信機EMは、
− 校正信号S_CALをアンテナ装置Aの方向に送出し、
− 関数信号S_FONCをアンテナ装置Aの方向に送出し、
− 制御信号を電力段Pの方向に送出して電源電圧Ubatをアンテナ装置Aに供給し、当該制御装置CDは更に、
−電流Irm,Ithの比較器CMPと、
−具体的には、校正電圧UC及び関数電圧UFのデューティサイクルα1及びα2を適合させるために使用される計算部材CALC(例えば、マイクロプロセッサまたはASIC)とを備える。
非制限的な実施形態では、当該制御装置CDは更に、
応答REPOK,REPNOKを識別バッジIDから、受信磁界Brと公称磁界B0との間で行なわれる比較に基づいて受信する信号受信機REを備えることができる。
【0116】
・電力段P
この電力段Pは、初期電力PIを設定するために使用される校正電圧UC、及びアンテナ装置Aの設定電力PRを設定するために使用される関数電圧UFを供給する。
非制限的な実施形態では、電力段Pは、フルブリッジ制御またはハーフブリッジ制御を行なうHブリッジである。この様子を図13に示す。電力段Pは具体的には、4つのスイッチS1〜S4を含む。これらのスイッチは、非制限的な例では、MOSFET型トランジスタである。
【0117】
電圧を供給するために、電力段Pはフルブリッジモードで次のように動作する。この例を、図7に示すように、対称電圧に関する例として挙げている。
−区間t0−t1の間、及び区間t2−t3の間は、スイッチ群の全てが開いているか、またはスイッチS2及びS4が閉じているか、或いはスイッチS1及びS3が閉じていて、他のスイッチが開いているか、のいずれかである。電圧UCはゼロである。
−区間t1−t2の間は、スイッチS1−S4が閉じていて、他のスイッチが開いている。電圧UCは正である。
−区間t3−t4の間は、スイッチS2−S3が閉じていて、他のスイッチが開いている。電圧UCは負である。
【0118】
2つの対角位置にあるブリッジ構成素子は、互いに対して半周期だけ遅延する2つの制御信号によって制御されるので、対称性を実現することができる。
【0119】
電力段Pがフルブリッジモードで動作する場合、得られる電圧を使用して、第1の電流範囲G1=[I11−I12]を実現することができる。
【0120】
電力段Pは、図14の例に示すように、以下のようにしてハーフブリッジモードで動作する。スイッチS4は必ず閉じていることに留意されたい。
−区間t0−t1の間、及び区間t2−t3の間は、3つの他のスイッチS1−S2−S3が開いているか、またはスイッチS2が閉じていて、他の2つのスイッチS1−S3が開いているか、のいずれかである。電圧UC/UFはゼロである。
−区間t1−t2の間は、スイッチS1が閉じていて、他の2つのスイッチS2−S3が開いている。電圧UC/UFは正である。或いは、スイッチS2が閉じていて、他の2つのスイッチS1−S3が開いている。電圧UC/UFは負である。
電力段Pがハーフブリッジモードで動作する場合、得られる電圧を使用して、第1の範囲よりも狭い、具体的には2倍だけ狭い第2の電流範囲G2=[I21−I22]を実現することができる。
【0121】
従って、電力段Pを使用することにより、初期電力PIが校正電圧UCを利用して得られるだけでなく、設定電力PRが関数電圧UFを利用して得られる。
【0122】
このように、実現する必要のある所望電流Ivによって変わるが、電力段Pはフルブリッジモード(広い電流範囲G1)で、またはハーフブリッジモード(狭い電流範囲G2)で使用される。
【0123】
これによって、磁界Beを、所望の車両タイプに従って調整されるアンテナ装置Aを介して実現することが可能になる。例えばファミリータイプ車の場合、フルブリッジを使用して、このファミリー車の客室VHを画定する領域ZOに対応する放出磁界Beを供給するのに対し、客室が狭いクーペタイプ車の場合、ハーフブリッジを使用して、この異なる狭い客室に対応する放出磁界Beを供給する。
【0124】
このように、このフルブリッジモード動作、またはハーフブリッジモード動作によって、車両のタイプによって変わる適切な磁界到達領域が、アンテナ装置AのRLC回路を変更することなく、従ってこの回路の抵抗Rを適合させる必要を生じることなく得られる。制御装置DCを車両Vのタイプに従って厳密にプログラムして、電力段Pを適切に動作させる。
【0125】
更に、一つの同じ車両に関して、例えば車両のバッテリ電圧Ubatに大きな変動が生じる場合には、電流範囲を広くする必要も生じ得る。関数信号S_FONCを送信するために必要な設定電力PRは、このバッテリ電圧、及びアンテナ装置のインピーダンスZrによって変わる。バッテリ電圧Ubatの変動を補償するために、設定デューティサイクルα2を適切に設定する。例えば、バッテリ電圧が高い場合には、電力段Pをハーフブリッジモードで動作させるのに対し、バッテリ電圧が低い場合には、電力段Pをフルブリッジモードで動作させる。
【0126】
2つの電流範囲G1とG2との間を連続的な範囲にするために、非制限的な実施形態では、設定デューティサイクルα2を区間[1/6−1/2]内に収める。この様子を、デューティサイクル−電流の関係を表わす図15に示す。x軸上に、デューティサイクルαをとり、そして電流Iをy軸上にとる。y軸上には、2つの範囲G1及びG2のそれぞれの限界値I11,I12及びI21,I22を見出すことができる。デューティサイクルα2が区間[1/6−1/2]内で変化する場合、ハーフブリッジモード1/2Hで動作するときには、第2の電流範囲G2の曲線CG2が当てはまることが分かる。これとは異なり、フルブリッジモードHで動作するときには、第1の範囲G1の曲線CG1が当てはまる。最後に、ハーフブリッジモード動作からフルブリッジモード動作に変化する際、範囲G2からG1への変化は連続的である、すなわち電流値Iに飛びが発生することがないことが分かる。
【0127】
別の実施形態では、デューティサイクルα2が、図15に示すように、α max’を1/2未満とした場合の区間[1/6−α max’]内で変化する場合、電流値に、ハーフブリッジモードからフルブリッジモードに変化する際に飛びが発生することが分かる。従って、この場合、アンテナ装置Aの電力を決定する際に所定の電流値を考慮に入れることができない。これらの電流値は、斜線を付けた区間I22’〜I22に収まる値である。後者のフルブリッジモードでは、連続性を確保するために、区間の下限値αminを1/6未満とする必要がある。
【0128】
・電流測定装置C
第1の実施形態では、電流測定装置はピーク振幅検出器である。このピーク振幅検出器は、電流を測定する簡易手段である。この手段を使用して、不要な高調波が対称命令及び1/3のデューティサイクルによって除去されているので最終的に必要となる電流の最大振幅を測定することができる。従って、この測定によって、この電流の基本波の値が得られる。従来通り、当該電流測定装置は、図12に示すように、ダイオード及びキャパシタから成る。
【0129】
電流測定装置は、図12に示すように、測定電流値Imを、計算部材CALCに送信する。
【0130】
勿論、他の電流測定手段を使用することもできる。
例えば、電流測定装置Cはデジタルサンプリング装置、或いは電流を整流し、次に整流した電流を平均する装置とすることができる。
【0131】
アンテナ装置Aは、一つ以上のアンテナを備えることに注目されたい。記載されている非制限的な例では、アンテナ装置Aは、これまでの説明から分かるように、複数のアンテナを備える。この事例では、アンテナ装置Aの各アンテナに関して、アンテナを流れる電流を設定して、バッジIDとアンテナとの間の通信領域ZOに関連付けられ、かつ対応する公称磁界B0を実現する。従って、バッジIDは、アンテナ装置Aの各アンテナに関連付けられる複数の固定閾値S0を持っている。
【0132】
上に挙げた例は、内部アンテナに関連して説明したものであることに留意されたい。勿論、本方法を必要に応じて、外部アンテナに適用することができる。
【0133】
また、これらの例は、低周波数信号を送出するアンテナ装置A、及び無線周波数信号を送出する識別バッジIDに関するものであるが、他の周波数での信号送出に関する他の例を挙げることができることに留意されたい。
【0134】
さらに、例えば他の扉が解放されている等の状況において、施錠操作したにも係わらず扉が施錠状態に切り替わらなかった場合にも、扉を施錠状態にするように切替制御を行うことにより、施錠忘れを防止することができることも可能である。具体的には、車内に設けられる制御装置(DC)と、車内に設けられる内部アンテナ装置(AI)と、車外に設けられる外部アンテナ装置(AX)と、識別対象物(ID)とを備え、車体に設けられたアンテナ装置(A)の周りの領域(ZO)に位置する識別対象物(ID)を検出するシステム(SYS)において、制御装置(DC)は校正信号(S_CAL)を内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)に送出して設定電力(PR)を決定し、設定電力(PR)に対応する関数信号(S_FONC)を内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)に送出して、内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)が所定の磁界(Be)を放出するようにし、識別対象物(ID)が受信する磁界(Br)と公称磁界(B0)との間で行なわれる比較に基づいて、識別対象物(ID)が、内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)の周りの領域(ZO)(第1通信領域)の内部に位置するかどうかについて判断することができ、識別対象物(ID)は、放出磁界(Be)に対応する受信磁界(Br)を測定し、そして該受信磁界(Br)を公称磁界(B0)と比較することができ、さらに、識別対象物(ID)が領域(第1通信領域)内に位置すると判断されている場合、扉の外部に設けた施錠・解錠操作用の検出器を施錠操作したにも係わらず扉が施錠状態に切り替わらなかったとき、識別対象物(ID)が領域(ZO)及び(第1通信領域)内に位置しなくなった(または所定時間が経過した)と判断されたとき、解錠状態の扉が施錠状態になるように切替制御を行う施錠制御装置を備えることを特徴とするシステム(SYS)が提案される。
【0135】
このシステムを用いることにより、識別対象物が通信領域内に位置すると判断されている状態で施錠操作を行った場合には、例えば、ドライバが通信領域から外れたとき等の場合にのみ、扉を施錠状態にすることができ、施錠忘れを防止することができる。但し、ドライバが何らかの理由で再び車内に乗り込んだ場合には施錠状態にはならず、その場合には、所定時間を計時するタイマはキャンセルにされてもよい。
【0136】
従って、本発明は以下の利点を有する。
− アンテナ装置Aが放出する磁界の値を、識別対象物の固定閾値の設定を可能にし、かつ前記対象物の可変閾値よりも管理が容易である送信時電力を調整することにより制御する方法を提供する。
− 識別対象物IDに所定の固定閾値を書き込むことにより、無線外乱を回避する、従ってスプリアス磁界を避けることが可能になる。
− 更に、この閾値を車両群の全てに関して固定し、これによって、全ての車両で動作する共通識別対象物IDを持つことが可能になり、通信領域ZOを、送信電力Peによってのみ、従ってアンテナ装置Aを流れる電流Iによってのみ適合させる。
− 電力は、デューティサイクル調整によって調整され、この電力調整は、デューティサイクルが固定された状態で行なわれる電圧調整よりもコストが安くてすむ。
− 電源電圧Ubatを調整するソリューションとは異なり、デューティサイクルは電流に基づいて調整され、電流に基づく調整は、アンテナ装置AのインピーダンスZrの変化が補正されるので、バッテリ電圧に基づく設定よりも効果的であり、かつ正確である。
− 対称Hブリッジ制御によって、偶数次高調波を送信しないようにすることができ、従って電磁波との相性、EMC(ELECTROMAGNETIC COMPATIBILITY:電磁環境両立性) の問題を軽減することが可能になる。
− 対称な校正制御を、1/3のデューティサイクルを用いて行なうことにより、電流の正確な測定を、ピーク振幅検出器のような簡易測定手段で行なうことが可能になる。
− 制御を、方形波電圧を用いて行なうことにより、電力段のトランジスタの過熱を回避することが可能になる。
− 本発明は、広い電流範囲を必要に応じて、一つの同じ車両に関して、または異なる車両に関して、アンテナ装置Aの回路を適合させる必要を生じることなく得る方法を提供する。
− 設定電力を決定してアンテナ装置が放出する磁界の値を決定するために使用される校正ステップは、当該ステップがアンテナ装置が動作している間に行なわれるので動的である。
− 動的校正ステップでは、上流で行なわれる、すなわちアンテナ装置を車両に組み込んでいる間に(すなわち、アンテナ装置をデバッグしているときに)行なわれる静的校正ステップとは異なり、外部測定手段を追加する必要がない(従って、車両の生産が始まり、そして車両が販売される前でも)。
− 本発明によって、アンテナ装置が車両の中で使用されるときにアンテナ装置から放出される磁界の値を、アンテナ装置が使用されている間に現われるアンテナ装置のインピーダンスの変化を考慮に入れて、識別対象物の固定閾値を設定することにより制御することが可能になる。
− アンテナ装置及び識別対象物を含む検出システムを使用して、アンテナ装置の自動校正を、外部測定手段を用いることなく行なうことができる。
【0137】
明らかなことであるが、本発明は自動車に関して説明した適用例のみに限定されず、例えばホームオートメーションのような、低周波数アンテナ及び識別対象物を含む全ての場合に適用することができる。
【0138】
V 車両
DER トランシーバ装置
A アンテナ装置
AX,AX1,AX2,AX3,AX4,AX5 外部アンテナ
AI,AI1,AI2 内部アンテナ
ID 受信機−発信機、識別対象物、バッジ
VH 客室
VC リアバンパー
Be,BeI,BeX,Br1,Br2,B 磁界
BF 低周波数信号
RF 無線周波数信号、無線周波数応答
B0 受信磁界、公称磁界、公称受信磁界
S0 固定閾値
P0 電力
ZO 通信領域
Br 受信磁界
ID1 位置
ID2 位置
S_CAL 校正信号
PI 初期電力
PR 設定電力
Z,Zr インピーダンス
Ubat バッテリ電圧、電源電圧
Im 測定電流
Irm 電流
Ith 理論初期電流
UC 校正電圧
C ピーク振幅検出器
h 高調波
h1 1次高調波
FL 帯域通過フィルタ
FL1 広帯域通過フィルタ
PT ポイント
an 係数
T 電源電圧の周期
E 電源電圧の振幅
x,y,z 直交空間
Ae 磁界Bが通るアンテナの実際の表面積
d 磁界Bの測定が可能である、アンテナの中心からの距離
Iv 既知の電流
α1 初期デューティサイクル
α2 設定デューティサイクル
Ith 理論初期電流
Zth 理論インピーダンス
CZth 理論インピーダンスを表わす曲線
CZmax 最大曲線
CZmin 最小曲線
SYS 検出システム
S_FONC 関数信号
DC 制御装置
RE 信号受信機
REP 応答
REPOK 肯定応答
REPNOK 否定応答
UC 校正電圧
UF 関数電圧
CALC 計算器
S1,S2,S3,S4 スイッチ
G1 第1の電流範囲
G2 第2の電流範囲
H フルブリッジモード
1/2H ハーフブリッジモード
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置の周りの領域に位置する識別対象物を検出する方法、及びこの検出方法を実行する検出システムに関する。
【0002】
本発明は、ハンズフリー検出システムを装備する自動車に対して、主として適用することができる。
【背景技術】
【0003】
この分野における現時点での公知の技術によれば、車両の客室の内部に、または外部に位置しているかどうかを確認する受信機−発信機として機能するバッジのような識別対象物を検出する方法がある。バッジが車両の内部に位置する場合、ユーザは、車両の始動を許される。
【0004】
バッジの検出は、アンテナ装置の電圧調整によって一定の電力で放出される磁界を利用して行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような解決策は、実行に移すことが難しいという問題がある。アンテナ装置には、車両のバッテリからの電圧が、電圧が変動する(車両の始動、及びエンジンの停止などのような異なる操作に起因する)たびに供給されるので、バッテリ電圧を再調整して、アンテナ装置による一定の電力での放出を可能にする必要がある。
【0006】
また、車両から離れる際、扉の施錠・解錠操作用のスイッチを施錠操作したにも係わらず、例えば、運転席扉以外の他の扉から降車するために他の扉が開放している最中には、運転席扉を含む全ての扉を施錠状態にすることはできない。これは、他の扉が開放しているときには、スイッチの操作を禁止しているためである。
【0007】
このようになると、車両から長時間離れる際の施錠忘れが発生する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、従来より簡単な手段による識別対象物の検出を可能にすることにある。
【0009】
そのため、本発明は、識別対象物を、アンテナ装置の周りの領域において検出する方法を提案するものであり、この方法は、複数のステップを有し、これらのステップでは、
− 校正信号をアンテナ装置の方向に送出して、設定電力を決定し、
− 設定電力に対応する関数信号を、アンテナ装置の方向に送出して、アンテナ装置が所定の磁界を放出するようにし、
− 識別対象物が受信し、かつ放出磁界に対応する磁界を測定して、公称磁界と比較し、
− この比較に基づいて、識別対象物が、アンテナ装置の周りの領域の内部に位置するかどうかについての判断を行なうことを特徴としている。
【0010】
以下の詳細な記述から分かるように、識別対象物の検出は、電圧調整の必要性を生じることなく、アンテナ装置を校正することにより、かつ公称磁界との比較を行なうことにより、行なうことができる。
【0011】
非制限的な実施形態によれば、本発明による方法は、さらに以下の別の特徴を有する。
− 校正信号は、識別対象物に認識されることがない。そのため、識別対象物は、その後の関数信号を迅速に受信することができる。
【0012】
− 本方法は、更に別のステップを含み、このステップによって、
− 校正信号が送信されると、アンテナ装置を流れる電流を測定し、
− 測定電流を初期電流と比較して、設定電力を決定する。
【0013】
従って、校正信号は、簡単に行なえる電流測定によって変わる。
【0014】
− 電力は、所定のデューティサイクルの電圧で設定される。この調整は簡単に行なわれる。また、この調整によって、アンテナ装置の電源電圧の変動を補償することができる。
【0015】
− 電圧は対称信号である。これにより、測定電流信号に含まれる偶数次高調波を除去することができるので、電流を更に正確に測定することができる。
【0016】
− デューティサイクルは1/3に等しい。これにより、測定電流信号に含まれる3の倍数の次数の高調波を除去することができるので、電流を更に正確に測定することができる。
【0017】
− 電圧は、フルブリッジ制御またはハーフブリッジ制御を行なう電力段によって生成される。これにより、更に広い範囲の電流が得られる。
【0018】
校正信号を、特定のイベントに基づいてトリガーする。これにより、校正信号を定期的に再更新することができるので、その結果、アンテナ装置が放出する磁界を、定期的、かつ正確に測定することができる。
【0019】
− 第1の変形例によれば、特定の対象は車両の操作である。その場合、温度変化のような外部イベントに起因する放出磁界の変化を考慮に入れることができる。
【0020】
− 第2の変形例によれば、特定の対象は、バッテリの電圧変動である。そのため、これらの変動を、校正において考慮に入れることができる。
【0021】
− 本発明の方法は、固定閾値を識別対象物に書き込む追加の初期ステップを含んでいる。そのため、固定受信磁界を得ることができ、この固定受信磁界に基づいて、識別対象物は、信号をアンテナ装置から受信し、関連する制御装置と通信することができる。
【0022】
− 固定閾値は、公称磁界によって変わる。これにより、識別対象物は、アンテナ装置から送出される信号に、当該識別対象物が公称磁界に対応する領域に位置するときに応答することができる。
【0023】
− アンテナ装置の周りの領域は、公称磁界によって定められる。
【0024】
− アンテナ装置の周りの領域は、車両客室に対応している。従って、識別対象物が車両の客室の内部に位置するかどうかの判断を行なうことにより、車両の始動を許可する。
【0025】
本発明の第2の対象は、アンテナ装置の周りの領域に位置する識別対象物を検出するシステムに関し、このシステムは、制御装置と、アンテナ装置と、識別対象物とを備え、
− 制御装置は、
− 校正信号をアンテナ装置の方向に送出して設定電力を決定し、
− 設定電力に対応する関数信号をアンテナ装置の方向に送出して、アンテナ装置が所定の磁界を放出するようにし、
− 識別対象物が受信する磁界と公称磁界との間で行なわれる比較に基づいて、識別対象物が、アンテナ装置の周りの領域の内部に位置するかどうかについて判断することができ、
− 識別対象物は、放出磁界に対応する受信磁界を測定し、当該受信磁界を公称磁界と比較することができることを特徴とする。
【0026】
本発明の第3の対象は、識別対象物と連動することができるアンテナ装置に関し、このアンテナ装置は、
− 所定の初期電力に対応する校正信号を受信し、
− 所定の設定電力に対応する関数信号を受信して、所定の磁界を放出するようになり、
− 関数信号を識別対象物に送信することができ、識別対象物は、アンテナ装置が放出する磁界によって変わる磁界を受信することを特徴とする。
【0027】
本発明の第4の対象は、アンテナ装置と、識別対象物と連動することができる制御装置に関し、この制御装置は、信号送出器を備えていることにより、
− 校正信号をアンテナ装置の方向に送出して設定電力を決定し、
− 所定の設定電力に対応する関数信号をアンテナ装置の方向に送出して、アンテナ装置が所定の磁界を放出するようにすることを特徴とする。
【0028】
非制限的な実施形態によれば、制御装置は更に、応答を識別対象物から、受信磁界と公称磁界との間で行なわれる比較に基づいて受信する信号受信機を備えている。
【0029】
非制限的な実施形態によれば、比較は、識別対象物によって行なわれる。
【0030】
本発明の第5の対象は、上述の複数の特徴のうちのいずれか一つの特徴に従って構成される制御装置、及び上述の複数の特徴のうちのいずれか一つの特徴に従って構成されるアンテナ装置が配設されている客室を備える自動車に関し、前記2つの装置は、識別対象物と協動することができる。
【0031】
さらに、本願発明の別の対象としては、
− 車体に設けられたアンテナ装置(A)の周りの領域(ZO)に位置する識別対象物(ID)を検出するシステム(SYS)であって、このシステムは、車内に設けられる制御装置(DC)と、車内に設けられる内部アンテナ装置(AI)と、車外に設けられる外部アンテナ装置(AX)と、識別対象物(ID)とを備え、
− 制御装置(DC)は、
− 校正信号(S_CAL)を内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)に送出して設定電力(PR)を決定し、
− 設定電力(PR)に対応する関数信号(S_FONC)を内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)に送出して、内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)が所定の磁界(Be)を放出するようにし、
− 識別対象物(ID)が受信する磁界(Br)と公称磁界(B0)との間で行なわれる比較に基づいて、識別対象物(ID)が、内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)の周りの領域(ZO)(第1通信領域)の内部に位置するかどうかについて判断することができ、
− 識別対象物(ID)は、放出磁界(Be)に対応する受信磁界(Br)を測定し、そして該受信磁界(Br)を公称磁界(B0)と比較することができ、
− さらに、識別対象物(ID)が領域(第1通信領域)内に位置すると判断されている場合、扉の外部に設けた施錠・解錠操作用の検出器を施錠操作したにも係わらず扉が施錠状態に切り替わらなかったとき、識別対象物(ID)が領域(ZO)及び(第1通信領域)内に位置しなくなった(または所定時間が経過した)と判断されたとき、解錠状態の扉が施錠状態になるように切替制御を行う施錠制御装置を備えることを特徴とする。
【0032】
この場合、識別対象物(ID)が領域(第1通信領域)内に位置すると判断されている状態で施錠操作を行った場合には、識別対象物を所持している主体、例えばドライバが、領域(第1通信領域)から外れたとき(または、所定時間が経過したとき等)にのみ(ドライバが何らかの理由で再び車内に乗り込んだ場合には施錠状態にはならない、その場合には、所定時間を計時するタイマはキャンセル)、扉を施錠状態にすることができ、施錠忘れを防止することができる。
【0033】
本発明の他の特徴及び利点は、非制限的な例を示す図面に基づく説明から、より深く理解しうると思う。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の非制限的な実施形態による方法を実行する検出システムを装備した車両の平面図である。
【図2】本発明の非制限的な実施形態による方法によって検出される識別対象物による受信を示す図である。
【図3】本発明の非制限的な実施形態による方法によって検出される識別対象物による受信に対応するこの限界境界を示す別の図である。
【図4】本発明の非制限的な実施形態による方法の非制限的な実施形態のを示す図である。
【図5】図4の方法を用いる場合の識別対象物とアンテナ装置との間に使用される通信の非制限的な実施形態を示す図である。
【図6】アンテナ装置を流れ、かつ図4の方法を用いる場合に測定される電流の周波数スペクトルを示す図である。
【図7】図4の方法を用いる場合のアンテナ装置に印加される電圧信号の第1の実施形態、及び関連する電流周波数スペクトルを示す図である。
【図8】図4の方法を実施する場合のアンテナ装置に印加される電圧信号の第2の実施形態、及び関連する電流周波数スペクトルを示す図である。
【図9】図4の方法を用いる場合のアンテナ装置に印加される電圧信号の第3の実施形態、及び関連する電流周波数スペクトルを示す図である。
【図10】空間における磁界の様子を示す図で、この磁界の成分は、図4の方法を用いる場合の放出磁界に対応している。
【図11】は、図4による方法によって実行されるステップを説明するための電流デューティサイクル図である。
【図12】図4の方法を実行するための検出システムの非制限的な実施形態を示す図である。
【図13】図12の検出システムに含まれる電力段の非制限的な実施形態を示す図である。
【図14】図13の電力段によって生成される電圧信号、及び関連する電流周波数スペクトルの非制限的な例を示す図である。
【図15】図4の方法に使用される電流の範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の非制限的な実施形態に関する詳細な説明
図1は、アンテナ装置Aを制御するために使用される信号を送受するトランシーバ装置DERを装備する車両Vを示している。アンテナ装置Aは、この非制限的な例では、複数のアンテナ、この場合は、「外部」アンテナAX、及び「内部」アンテナAIを含み、これらのアンテナの全ては、受信機−発信機IDと連動し、これらの部品全体で、以下に説明する検出システムを構成している。
【0036】
図に示す非制限的な例は、5つの外部アンテナAXを示し、これらのアンテナのうちの4つのアンテナAX1,AX2,AX3,及びAX4は、車両Vの客室VHの外部に、この場合には、扉の取っ手に設置され、1つのアンテナAX5は、車両のリアバンパーVCに設置されている。更に、2つの内部アンテナAI1、AI2は、客室VHに、この場合は、車両の前部客室及び後部客室に設置されている。各アンテナには、低周波数交流電流が、トランシーバ装置DERによって供給され、各アンテナの中、内部アンテナはBeI、そして外部アンテナはBeXと表記されている磁界Beを放出する。
【0037】
これらのアンテナからの放出磁界Beを手段とし、外部アンテナAXを使用して、受信機−発信機IDが車両Vの近傍に位置しているかどうかを、非制限的な例では、1.5m未満の距離に位置しているかどうかを検出することができ、また内部アンテナAIを使用して、受信機−発信機IDが車両の客室VHの内部に位置しているかどうかを検出することができる。
【0038】
この場合における受信機−発信機IDは非制限的な例では、車両Vのユーザが持ち運ぶ識別対象物ID、例えばバッジ、キー、キーフォブなどである。識別バッジの例を一つの例として、以下の記述において挙げることとする。
【0039】
交流電流を利用して、アンテナAは、低周波数信号BFを送出することによりデータを送信してバッジIDと通信し、バッジIDは、無線周波数信号RFを送出することにより応答する。非制限的な例では、低周波数信号BFは、125kHzの領域にあり、無線周波数信号RFは、433MHzの領域にある。低周波数信号BFの周波数を20kHzまで下げること、または種々の国において利用することができる周波数帯域(アジアでは315MHz、所定の欧州諸国では868MHz、またはアメリカでは915MHzなど)によって変わるが、無線周波数信号RFの周波数をギガヘルツという高い周波数に引き上げることが可能である。
【0040】
応答に基づいて、アンテナAは、バッジIDを認証して、車両の扉を開けさせるかどうか、またはバッジIDを認証して、車両を始動させるかどうかを判断する。非制限的な例では、バッジIDを認証して扉を開けさせるために、ユーザは、例えば扉の取っ手に触れる必要がある。この目的のために、取っ手には適切な検出器が備えられている。
【0041】
外部アンテナAXは、バッジIDとの第1通信領域を決定して、車両の操作を許可する。この領域は、前記アンテナAXから放出される磁界によって画定される。従って、外部アンテナAXによって、バッジIDを認証して車両を操作させるための必要最低限の最短距離を保証する必要がある。
【0042】
内部アンテナAIは、バッジIDとの第2通信領域ZOを決定して始動を許可する。この領域は、当該内部アンテナから放出される磁界によって画定される。従って、内部アンテナAIによって、バッジIDを認証し、車両を始動させるための固定領域を保証する必要があり、この領域は、車両Vの客室VHである。
【0043】
実際には、これらの内部アンテナAIから放出される磁界の到達領域は、客室VHよりも広いが、この磁界は、車両Vの客室VHの金属製外郭によって制限され、かつ窓の開口を通して漏れ出すことに注目されたい。
【0044】
第2領域ZOにおけるバッジIDの検出では、バッジが、公称磁界と呼ばれる受信磁界B0によって変わる固定閾値S0で初期化されるという事象を利用している。非制限的な態様では、この固定閾値S0は、公称磁界B0に対応する電力P0である。
【0045】
バッジIDが受信する磁界Brは、アンテナAによって放出される磁界Beによって変わり、後者の磁界Beによって、通信領域とも呼ばれていた領域ZOであって、当該アンテナの磁界Beを表わす領域ZOが当該アンテナの周りに画定される。
【0046】
図2は、アンテナ装置のアンテナAに対するバッジIDの位置が、このアンテナAの磁界Be、従って対応する受信磁界Brに従って変化する様子を示している。
【0047】
放出磁界Beを放出するアンテナAからのバッジIDの距離が長くなると、対応する受信磁界Brが弱くなることが分かる。バッジIDがアンテナAと同じ場所に位置するとき、受信磁界Brは、理論的に放出磁界Beに等しい。
【0048】
従って、公称磁界B0は、バッジIDがアンテナA及びトランシーバ装置DERと通信することができる公称通信領域ZOに対応する。
【0049】
バッジIDがこの領域ZOの外側に位置する場合(受信磁界Brが、公称受信磁界B0よりも小さい場合)、バッジIDはアンテナ装置Aから送信される信号に応答することがないか、または意図的に間違えた無線周波数応答RFを送信する。これは、当該バッジIDが車両の客室VHの外側に位置していることを意味する。それ以外の状況では、当該バッジIDは、無線周波数信号RFを送出することにより応答する。この公称磁界B0は、図2に示すように、無線外乱要因で発生するスプリアス磁界Bbの影響を回避するように決定され、公称磁界B0の値は、スプリアス磁界の値よりも大きいことに注目されたい。
【0050】
図3は、内部アンテナAI1に対するバッジIDの位置取りの例を示している。
【0051】
内部アンテナAI1は、15ワットの電力の磁界Beを放出する。固定閾値S0はP0=5ワットに固定されている。バッジIDは、当該バッジが位置ID1に位置するときに、磁界Br1を受信し、この磁界Br1の電力P1は4.5ワットであり、従って固定閾値S0よりも小さい。従って、バッジIDは、閾値S0によって定義される領域ZOの外側に位置するので、アンテナAI1及びトランシーバ装置DERと通信することはない。
【0052】
バッジIDは、位置ID2に位置するときに、磁界Br2を受信し、この磁界Br2の電力P2は5.5ワットであり、従って固定閾値S0よりも大きい。従って、バッジIDは、通信領域ZO内に位置し、アンテナAI1及びトランシーバ装置DERと通信することになる。
【0053】
従って、バッジIDを検出して、このバッジが、アンテナの、特に内部アンテナAIの通信領域ZOに位置するかどうかを確認する方法では、図4に示すようにして、次のようにステップを進める。
【0054】
初期ステップ0)では、バッジIDが製造されるときに、固定閾値S0をバッジIDのメモリに、例えばEEPROM型の再書き込み可能メモリに書き込む。
【0055】
次に、バッジID及びアンテナ装置Aが使用されているときに、すなわち動作モードになっているときに、
第1ステップ1)において、校正フレームとも呼ばれる校正信号S_CALをアンテナ装置Aの方向に所定の初期電力PIで送出して、アンテナ装置Aの設定電力PRを決定する。このような信号送出方法を図5に示す。
【0056】
非制限的な実施形態では、校正信号S_CALは、特定のイベントによってトリガーされる。
【0057】
非制限的な例では、特定のイベントは車両の操作である。車両の操作は、アンテナ装置Aの環境の変化、すなわち温度変化(例えば、種々の理由による)を示し、温度変化はアンテナ装置の構成部品に影響を与えるので、アンテナ装置のインピーダンスZ、従ってアンテナ装置による放出磁界Beは変化する。
【0058】
別の非制限的な例では、特定のイベントは電源電圧、この場合には、バッテリ電圧Ubat(バッテリ電圧は、例えばエンジン始動後に、またはエンジン停止後に変化し得る)の変動である。これにより、アンテナ装置を流れる電流に影響するこれらの変動を校正の際に考慮に入れることができる。このようにして、バッテリ電圧変動は補償されるが、その理由は、電流Irmがバッテリ電圧変動後に測定されるからである。
【0059】
従って、このステップの目的は、アンテナ装置AのインピーダンスZの変化を、アンテナ装置Aが放出する磁界Beを決定する際に、従ってアンテナ装置Aに供給される設定電力PRを決定する際に考慮に入れることにある。
【0060】
アンテナ装置を車両に使用する場合に、従ってアンテナ装置が動作しているときに現われるインピーダンスZの変化をこのようにして考慮に入れる。
【0061】
校正信号S_CALは、識別対象物IDには認識されないことに注目されたい。従って、識別対象物IDは当該信号を受信するが、識別対象物IDはこの校正信号S_CALに応答することがない。これにより、バッジにとっては、この信号を受信するための作動−非作動期間を追加しなくて済む。従って、バッジIDは、このバッジが次に受信することになる関数信号S_FONCに含まれるデータを更に高速に受信することになる。
【0062】
従って、第1サブステップ1a)では、初期電力PIを決定して、校正信号S_CALを送信する。初期電力PIは、理論初期電流Ithに対応する初期デューティサイクルα1の校正電圧UCを利用して得られる。この理論初期電流Ithは、車両のテストによって実験的に決定される。理論初期電流Ithの値は車両Vのタイプによって変化する。
【0063】
非制限的な実施形態では、この電圧は方形波である。そのため、この電圧を印加するために使用され、かつ以下に説明する電力段におけるエネルギーの浪費を回避することができる。発熱によるエネルギー消費は、消費電力が著しく大きくなる正弦波電圧とは異なり、遷移期間中にしか生じない。従って、この電力段が極めて高い温度に加熱されることはない。
【0064】
第2サブステップ1b)では、校正信号S_CALが送信されると、アンテナ装置Aを流れる実際の電流Irmを測定する。実際、理論初期電流Ithに対応する初期電力PIが印加されるが、アンテナ装置AにはインピーダンスZrがあるので、前記装置を流れる電流は実際には、理論初期電流Ithとは等しくない。
【0065】
アンテナ装置Aを流れる電流Irmの測定は、以下に説明するピーク振幅検出器Cによって簡単に行なうことができる。この電流Irmは交流電流であり、この電流の周波数スペクトルは高調波hを含んでいる。図6では、1〜5次の高調波が簡略化された非制限的な例として示されている。
【0066】
非制限的な実施形態では、アンテナ装置Aは送信周波数(周波数は、例えば125kHzである)に調整される。これにより、より大きい強度の磁界を送信周波数で放出し、そして帯域通過フィルタFLを配設することが可能になる。従って、帯域通過フィルタFLを使用して、高調波h(1次の高調波を除く)の振幅を小さくすることができる。
【0067】
実際、送信時に、アンテナ装置Aの側では、アンテナ装置Aを流れる電流Irmの値は、アンテナ装置Aに含まれるフィルタの帯域内の高調波hの和に等しい。フィルタの選択性によって変わるが、フィルタが図6のFL1で表わされるような広帯域通過フィルタである場合には、これらの高調波の全てが含まれることになる。また、フィルタが図6のFL2で表わされるような狭帯域通過フィルタである場合には、これらの高調波のうちの幾つかの高調波のみが含まれることになる。従って、送信時では、放出磁界Beの値は、高調波hを含むこの電流Irmに依存する。
【0068】
受信時に、バッジIDの側では、考慮に入れる電流Irmの値はこの場合も、基本波と呼ばれる1次高調波h1にのみ関係する。受信磁界Br(及び、結果として、固定閾値S0)は、基本波の値を示す放出磁界Beにのみ対応し、これらの高調波の合計値を示す放出磁界には対応しない。
【0069】
従って、1次高調波h1に載せて送信される電力を正確に求めて、公称磁界B0、従ってバッジIDの固定閾値S0に対応する放出磁界Beの放出を可能にすることが必要となる。従って、電流Irmの測定を行なって、基本波h1以外の高調波を出来る限り除去する必要がある。
【0070】
この操作は、初期電力PIを得るために使用される初期デューティサイクルα1の校正電圧UCを利用して行なわれる。
【0071】
校正電圧UCがいずれかの方形波信号である場合、測定電流Irmの高調波の全てを図6に示すように含めることができる。
【0072】
第1の非制限的な実施形態では、校正電圧UCは対称電圧である。図7から分かるように、この場合、測定電流Irmの偶数次高調波は除去されている。図から分かるように、電圧UCはポイントPTに対して対称である。対称電圧UCによって、1次高調波h1に対応する初期電力PIの正確な生成、及び正確な測定が、他の高調波に起因するスプリアス電流を除去することにより可能になる。
【0073】
周波数表示では、n次高調波は項ancos(nωt)+bnsin(nωt)で表わされる。
【0074】
電圧UCは奇数関数である、別の表現をすると、f(−x)=−f(x)が成り立ち、従って、当該関数のフーリェ級数展開は、正弦項のみを含み、係数anはゼロである。
【0075】
従って、Cn=(1/T) ∫f(x) e-jnωx dxであり、かつCn=(1/2)(an−jbn)であることが分かると、次の式が得られる。
Cn=j(2E/πn).sin(nπα1).sin(n(π/2))
及び
bn=(4E/πn).sin(nπα1).sin(n(π/2))
上の式では、ω=2π/Tであり、T及びEは、アンテナ装置の電源電圧Ubatの周期及び振幅である。
【0076】
従って、対称電圧信号UCに対応するフーリェ級数は、次式に等しい。
f(x)=Σ(4E/πn).sin(nπα1).sin(n(π/2)).sin(nωx),
上の式において、n=1,...,∞であるか、またはフーリェ級数は次式に等しい。
f(x)=Σ(4E/π(2p+1)).sin((2p+1)πα1).sin((2p+1)(π/2)).sin((2p+1)ωx),
上の式では、p=0,...,∞であり、
この等式により、図7に示す高調波のスペクトルが与えられる。
基本波h1の値は次式により与えられる:
h1=(4E/π).sin(πα1).sin(ωx)
【0077】
更に、方形波電圧を実現することにより、電力段Pのトランジスタにおけるエネルギーの浪費を回避することができることに注目されたい。実際、発熱によるエネルギー消費は、消費電力が著しく大きくなる正弦波電圧とは異なり、遷移期間中にしか生じない。従って、この電力段Pが極めて高い温度に加熱されることはない。
【0078】
調整可能なデューティサイクルα1の値を使用して、初期電力PIの値を調整することができることに注目されたい。
【0079】
従って、対称方形波電圧によって、一方では、送信初期電力PIを、必要な通信領域ZOに対応する必要な値に設定することができ(従って、送信電力PIを正確に生成することができる)、他方では、バッジIDの実際の受信電力に対応する実際の送信電力PIの正確な測定値が、偶数次高調波が除去されるので得られる。
【0080】
第2の非制限的な実施形態では、校正電圧UCは1/3のデューティサイクルの電圧を含み、このデューティサイクルは、電圧信号UCのπ/3のオフセットに対応する。図8から分かるように、この場合、測定電流Irmの3の倍数の次数の高調波が除去されている。
【0081】
2つの実施形態を組み合わせることができることに注目されたい。この場合、図9から分かるように、結果的に残るのは、1次及び5次の高調波であり、後者の5次高調波は無視することができる。
【0082】
このようにして、アンテナ装置Aを流れる電流Irmを正確に測定することができる。従って、測定電流Irmはこの場合、放出磁界の基本波の振幅を表わす。
【0083】
その結果、放出磁界Beが測定電流Irmに比例することが分かっている場合に、当該振幅に基づいて、アンテナ装置Aによって送信され、かつ受信電力Prに正確に対応する初期電力PI(従って、放出磁界Be)を推定することが可能になる。
【0084】
この技術分野の当業者には公知の如く、磁界Bは、図10に示すように、3つの成分を直交空間x,y,zに含んでいることを思い起こされたい。これらの成分は次式により与えられる。
Bμ=(Ae Im/2πd3)* cos θ,
Bθ=(Ae Im/4πd3)* sin θ,及び
Bφ=0,
上の式では、Aeは磁界Bが通過するアンテナの実際の表面積であり、dは、磁界Bの測定を可能にし、かつアンテナの中心から測定される距離である。
【0085】
NWをアンテナの巻線の数、Aを巻線のフェライトコアの断面積、そしてμrodをフェライトコアの見掛け上の透磁率とした場合にAe=NW*A*μrodが成り立つことも思い起こされたい。
【0086】
また校正電圧UCは、以下に説明するフルブリッジ制御を行なうHブリッジを含む電力段Pによって得られることに注目されたい。
【0087】
第3サブステップ1c)では、測定電流Irmを理論初期電流Ithと比較する。差を利用して、アンテナ装置Aの実インピーダンスZrを導出し、従ってアンテナ装置Aに印加される設定電力PRを導出する。
【0088】
アンテナ装置Aの周りに位置し、かつ車両の客室VHに対応する領域ZOを求めるために、電力PRに対応する放出磁界Beを導出することを思い起こされたい。従って、既知である値を持つこの所望の磁界は、既知の電流Ivに対応する。アンテナ装置Aにこの既知の所望電流Ivを供給するために、前記アンテナ装置の電力PRは、当該アンテナ装置のインピーダンスZrを考慮に入れて設定する必要がある。
【0089】
設定電力PRは、設定デューティサイクルα2の関数電圧UFを利用して設定される。
【0090】
従って、第4サブステップ1d)では、設定デューティサイクルα2が決定される。
【0091】
設定デューティサイクルα2の計算値は次のようにして推定される。
次の数式が成り立つ:Irm=(Ubat*sin(α1π))/Zr、従って次式が得られる:
Zr=(Ubat*sin(α1π))/Irm、及び
Iv=(Ubat*sin(α2π))/Zr、従って次式が得られる。
sin(α2π)=(Zr*Iv)/Ubat=(Ubat*sin(α1π)*Iv))/(Irm*Ubat)=sin(α1π)*(Iv/Irm))
従って次式が得られる。
α2=(1/π)*Arcsin(sin(α1π)*(Iv/Irm)) [1]
【0092】
実際には、設定デューティサイクルα2の計算式[1]には、アンテナ装置Aの実インピーダンスZrがもう含まれていないことに注目されたい。
【0093】
第1の非制限的な実施形態では、設定デューティサイクルα2は、以下に説明するトランシーバ装置DERのマイクロプロセッサによって計算される。
【0094】
より簡単で、かつより高速の第2の実施形態では、設定デューティサイクルα2は、予め記入されているマッピングテーブル(図示せず)に基づいて、数式sin(α1π)/sin(α2π)=Irm/Iv[2]を使用することにより定義される。このテーブルでは、校正信号S_CALが送信されるときにアンテナ装置を流れる測定電流Irmと、理論電流Ithとの差が生じるたびに、所望の関数電流Ivに対応し、かつアンテナ装置AのインピーダンスZrの変化を考慮に入れた設定デューティサイクルα2をテーブルから取り出す。
【0095】
このようなテーブルは以下の形式となる:
【数1】
上のテーブルでは、Iv1,Iv2,Iv3などは、所望電流Ivの種々の値であり、Irm1,Irm2,Irm3などは、アンテナ装置Aを流れる測定電流Irmの種々の値であり、α211...α221...α231...などは、対応する種々の設定デューティサイクル値である。
【0096】
数式[1]を適用するということ、または設定デューティサイクルα2をこのマッピングテーブルから選択するということは、非制限的な例の図11に示すように、実インピーダンスZrを表わす曲線CZを使用して、アンテナ装置Aに適用すべき設定デューティサイクルα2を求めることになる。
【0097】
デューティサイクルαをx軸上にとり、電流Iをy軸上にとる。図から分かるように、理論初期電流Ithに対応して、初期デューティサイクルα1の電圧が印加される。この初期デューティサイクルα1と理論初期電流Ithとの相関点は、アンテナ装置Aの理論インピーダンスZthを表わす曲線CZth上に位置する。
【0098】
当該装置を流れ、かつ初期デューティサイクルα1を持つ実電流Irmを測定する。この初期デューティサイクルα1と測定実電流Irmとの相関点は、アンテナ装置Aの実インピーダンスZrを表わす曲線上に位置する。2つの曲線、すなわちこの実インピーダンスZrの最大曲線CZrmax及び最小曲線CZrminが示される。この例では、曲線CZmaxを実インピーダンスの最大値Zrmaxに対応するように描いている。
【0099】
最後に、所望電流Ivに関して、対応する設定デューティサイクルα2を、実インピーダンスZr、この場合はCZmaxを表わす曲線を描くことにより、そしてx軸に投影することにより求める。
【0100】
従って、設定デューティサイクルα2は、所望の関数電圧UFを印加して、所望の電力PRがアンテナ装置Aにおいて得られるように決定されている。
【0101】
関数電圧UFは、以下に説明するフルブリッジ制御及びハーフブリッジ制御を行なうHブリッジを含む電力段Pによって得られることに注目されたい。
【0102】
従って、この第1校正ステップ1)は、設定電力PRを決定するための検出システムSYSの自動校正に対応している。実際、外部測定手段はこの校正には必要ではない。更に、この自動校正は、当該自動校正がアンテナ装置が動作している間に始まり、かつアンテナ装置が、例えば工場においてデバッグされているとき以外のときに始まるという点において動的である。
【0103】
第2ステップ2)では、校正信号S_CALを送信した後に、関数フレームとも呼ばれる関数信号S_FONCを次に、図5に示すように、アンテナ装置Aの方向に、上記のようにして決定した設定電力PRで送信して、アンテナ装置Aが、所望領域ZOに対応する、車両アプリケーションの例における車両客室VHに対応する所定の磁界を放出するようにする。
【0104】
第3ステップ3)では、識別対象物IDが受信し、かつアンテナ装置Aが放出する磁界Beに対応する磁界Brを測定する。この測定は、この技術分野の当業者には公知の、かつ識別対象物IDに含まれるアンプ内蔵RSSI(受信信号強度表示)機能付きの測定装置を利用して行なわれる。
【0105】
第4ステップ4)では、受信磁界Brを公称磁界B0と比較する。この比較は、識別対象物ID内で行なわれる。
【0106】
第5ステップ5)では、バッジIDがアンテナ装置Aの周りの領域ZOに位置しているかどうかに関する判断を、この比較に基づいて行なう。
【0107】
従って、受信磁界Brが公称磁界B0よりも大きい場合、バッジIDはアンテナ装置Aの周りの領域ZOに、従って車両客室VHの内部に位置している。次に、バッジIDは、図5に示すように、肯定応答REPOKをトランシーバ装置DERの制御装置DCに返す。次に、後者の制御装置によって、例えば車両の始動が可能になる。
【0108】
これとは異なり、受信磁界Brが公称磁界B0よりも小さい場合、バッジIDは領域ZOの外部に、従って車両客室VHの外部に位置している。この場合、バッジIDは応答を返さず、バッジIDが関数信号S_FONCをアンテナ装置Aから受信しなかったかのように振る舞うか、または図5に示すように、否定応答REPNOKを制御装置DCに返す。次に、後者の制御装置DCによって、例えばいかなる車両の始動も阻止される。
【0109】
別の変形例では、バッジIDが領域ZOの内部に、または外部に位置しているかどうかに関係なく、バッジIDは比較の結果を含む応答REPを体系的に送信する。
【0110】
これまで説明してきた方法は、図12の非制限的な実施形態に示される検出システムSYSによって実行される。検出システムSYSは、
− トランシーバ装置DERを備え、当該トランシーバ装置DERは、
− 制御装置DCと、
− 電力段Pと、
− 電流測定装置Cと、
− 応答REPOK,REPNOKを識別バッジIDから、受信磁界Brと公称磁界B0との間で行なわれる比較に基づいて受信する信号受信機REとを含み、当該検出システムSYSは、更に、
−アンテナ装置Aと、
−受信機−送信機、この場合は識別バッジIDとを備えている。
【0111】
非制限的な実施形態によれば、トランシーバ装置DERの構成要素群の全てが、一つの同じ電子カードに収容されていることに注目されたい。これにより、種々の構成要素の間の通信を、より高速に、かつより高い信頼性で行なうことができる。これとは異なり、これらの構成要素が別々に配置される場合、これらの構成要素を接続する通信リンクには、より簡単に障害が発生する恐れがあり、かつこれらのリンクのビットレートが低下する恐れがある。
【0112】
識別バッジIDはこの技術分野の当業者には公知であって、ここで説明はしない。
【0113】
他の構成要素について、以下に更に詳細に説明する。
【0114】
・アンテナ装置A
第1の非制限的な実施形態では、アンテナ装置AはRL回路により構成される。後者のRL回路は、アンテナ装置の電源電圧を増幅して、適切な磁界の放出を可能にすることが必要である。
第2の非制限的な実施形態では、アンテナ装置AはRLC回路により構成される。後者のRLC回路は、アンテナ装置Aの電源電圧、この場合は車両Vのバッテリ電圧Ubatを使用して、アンテナ装置Aを流れる電流Iを直接増幅することができるので、適切な磁界の放出が、第1の実施形態における場合とは異なり、電圧のロッキングを使用することなく可能になる。従って、この構成が、増幅を実現するために実行に移すことがより簡単である解決策となる。このRLC回路は、これまでの記述から分かるように、帯域通過フィルタとしても機能する。
【0115】
・制御装置CDは、
− 信号発信機EMを備え、当該信号発信機EMは、
− 校正信号S_CALをアンテナ装置Aの方向に送出し、
− 関数信号S_FONCをアンテナ装置Aの方向に送出し、
− 制御信号を電力段Pの方向に送出して電源電圧Ubatをアンテナ装置Aに供給し、当該制御装置CDは更に、
−電流Irm,Ithの比較器CMPと、
−具体的には、校正電圧UC及び関数電圧UFのデューティサイクルα1及びα2を適合させるために使用される計算部材CALC(例えば、マイクロプロセッサまたはASIC)とを備える。
非制限的な実施形態では、当該制御装置CDは更に、
応答REPOK,REPNOKを識別バッジIDから、受信磁界Brと公称磁界B0との間で行なわれる比較に基づいて受信する信号受信機REを備えることができる。
【0116】
・電力段P
この電力段Pは、初期電力PIを設定するために使用される校正電圧UC、及びアンテナ装置Aの設定電力PRを設定するために使用される関数電圧UFを供給する。
非制限的な実施形態では、電力段Pは、フルブリッジ制御またはハーフブリッジ制御を行なうHブリッジである。この様子を図13に示す。電力段Pは具体的には、4つのスイッチS1〜S4を含む。これらのスイッチは、非制限的な例では、MOSFET型トランジスタである。
【0117】
電圧を供給するために、電力段Pはフルブリッジモードで次のように動作する。この例を、図7に示すように、対称電圧に関する例として挙げている。
−区間t0−t1の間、及び区間t2−t3の間は、スイッチ群の全てが開いているか、またはスイッチS2及びS4が閉じているか、或いはスイッチS1及びS3が閉じていて、他のスイッチが開いているか、のいずれかである。電圧UCはゼロである。
−区間t1−t2の間は、スイッチS1−S4が閉じていて、他のスイッチが開いている。電圧UCは正である。
−区間t3−t4の間は、スイッチS2−S3が閉じていて、他のスイッチが開いている。電圧UCは負である。
【0118】
2つの対角位置にあるブリッジ構成素子は、互いに対して半周期だけ遅延する2つの制御信号によって制御されるので、対称性を実現することができる。
【0119】
電力段Pがフルブリッジモードで動作する場合、得られる電圧を使用して、第1の電流範囲G1=[I11−I12]を実現することができる。
【0120】
電力段Pは、図14の例に示すように、以下のようにしてハーフブリッジモードで動作する。スイッチS4は必ず閉じていることに留意されたい。
−区間t0−t1の間、及び区間t2−t3の間は、3つの他のスイッチS1−S2−S3が開いているか、またはスイッチS2が閉じていて、他の2つのスイッチS1−S3が開いているか、のいずれかである。電圧UC/UFはゼロである。
−区間t1−t2の間は、スイッチS1が閉じていて、他の2つのスイッチS2−S3が開いている。電圧UC/UFは正である。或いは、スイッチS2が閉じていて、他の2つのスイッチS1−S3が開いている。電圧UC/UFは負である。
電力段Pがハーフブリッジモードで動作する場合、得られる電圧を使用して、第1の範囲よりも狭い、具体的には2倍だけ狭い第2の電流範囲G2=[I21−I22]を実現することができる。
【0121】
従って、電力段Pを使用することにより、初期電力PIが校正電圧UCを利用して得られるだけでなく、設定電力PRが関数電圧UFを利用して得られる。
【0122】
このように、実現する必要のある所望電流Ivによって変わるが、電力段Pはフルブリッジモード(広い電流範囲G1)で、またはハーフブリッジモード(狭い電流範囲G2)で使用される。
【0123】
これによって、磁界Beを、所望の車両タイプに従って調整されるアンテナ装置Aを介して実現することが可能になる。例えばファミリータイプ車の場合、フルブリッジを使用して、このファミリー車の客室VHを画定する領域ZOに対応する放出磁界Beを供給するのに対し、客室が狭いクーペタイプ車の場合、ハーフブリッジを使用して、この異なる狭い客室に対応する放出磁界Beを供給する。
【0124】
このように、このフルブリッジモード動作、またはハーフブリッジモード動作によって、車両のタイプによって変わる適切な磁界到達領域が、アンテナ装置AのRLC回路を変更することなく、従ってこの回路の抵抗Rを適合させる必要を生じることなく得られる。制御装置DCを車両Vのタイプに従って厳密にプログラムして、電力段Pを適切に動作させる。
【0125】
更に、一つの同じ車両に関して、例えば車両のバッテリ電圧Ubatに大きな変動が生じる場合には、電流範囲を広くする必要も生じ得る。関数信号S_FONCを送信するために必要な設定電力PRは、このバッテリ電圧、及びアンテナ装置のインピーダンスZrによって変わる。バッテリ電圧Ubatの変動を補償するために、設定デューティサイクルα2を適切に設定する。例えば、バッテリ電圧が高い場合には、電力段Pをハーフブリッジモードで動作させるのに対し、バッテリ電圧が低い場合には、電力段Pをフルブリッジモードで動作させる。
【0126】
2つの電流範囲G1とG2との間を連続的な範囲にするために、非制限的な実施形態では、設定デューティサイクルα2を区間[1/6−1/2]内に収める。この様子を、デューティサイクル−電流の関係を表わす図15に示す。x軸上に、デューティサイクルαをとり、そして電流Iをy軸上にとる。y軸上には、2つの範囲G1及びG2のそれぞれの限界値I11,I12及びI21,I22を見出すことができる。デューティサイクルα2が区間[1/6−1/2]内で変化する場合、ハーフブリッジモード1/2Hで動作するときには、第2の電流範囲G2の曲線CG2が当てはまることが分かる。これとは異なり、フルブリッジモードHで動作するときには、第1の範囲G1の曲線CG1が当てはまる。最後に、ハーフブリッジモード動作からフルブリッジモード動作に変化する際、範囲G2からG1への変化は連続的である、すなわち電流値Iに飛びが発生することがないことが分かる。
【0127】
別の実施形態では、デューティサイクルα2が、図15に示すように、α max’を1/2未満とした場合の区間[1/6−α max’]内で変化する場合、電流値に、ハーフブリッジモードからフルブリッジモードに変化する際に飛びが発生することが分かる。従って、この場合、アンテナ装置Aの電力を決定する際に所定の電流値を考慮に入れることができない。これらの電流値は、斜線を付けた区間I22’〜I22に収まる値である。後者のフルブリッジモードでは、連続性を確保するために、区間の下限値αminを1/6未満とする必要がある。
【0128】
・電流測定装置C
第1の実施形態では、電流測定装置はピーク振幅検出器である。このピーク振幅検出器は、電流を測定する簡易手段である。この手段を使用して、不要な高調波が対称命令及び1/3のデューティサイクルによって除去されているので最終的に必要となる電流の最大振幅を測定することができる。従って、この測定によって、この電流の基本波の値が得られる。従来通り、当該電流測定装置は、図12に示すように、ダイオード及びキャパシタから成る。
【0129】
電流測定装置は、図12に示すように、測定電流値Imを、計算部材CALCに送信する。
【0130】
勿論、他の電流測定手段を使用することもできる。
例えば、電流測定装置Cはデジタルサンプリング装置、或いは電流を整流し、次に整流した電流を平均する装置とすることができる。
【0131】
アンテナ装置Aは、一つ以上のアンテナを備えることに注目されたい。記載されている非制限的な例では、アンテナ装置Aは、これまでの説明から分かるように、複数のアンテナを備える。この事例では、アンテナ装置Aの各アンテナに関して、アンテナを流れる電流を設定して、バッジIDとアンテナとの間の通信領域ZOに関連付けられ、かつ対応する公称磁界B0を実現する。従って、バッジIDは、アンテナ装置Aの各アンテナに関連付けられる複数の固定閾値S0を持っている。
【0132】
上に挙げた例は、内部アンテナに関連して説明したものであることに留意されたい。勿論、本方法を必要に応じて、外部アンテナに適用することができる。
【0133】
また、これらの例は、低周波数信号を送出するアンテナ装置A、及び無線周波数信号を送出する識別バッジIDに関するものであるが、他の周波数での信号送出に関する他の例を挙げることができることに留意されたい。
【0134】
さらに、例えば他の扉が解放されている等の状況において、施錠操作したにも係わらず扉が施錠状態に切り替わらなかった場合にも、扉を施錠状態にするように切替制御を行うことにより、施錠忘れを防止することができることも可能である。具体的には、車内に設けられる制御装置(DC)と、車内に設けられる内部アンテナ装置(AI)と、車外に設けられる外部アンテナ装置(AX)と、識別対象物(ID)とを備え、車体に設けられたアンテナ装置(A)の周りの領域(ZO)に位置する識別対象物(ID)を検出するシステム(SYS)において、制御装置(DC)は校正信号(S_CAL)を内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)に送出して設定電力(PR)を決定し、設定電力(PR)に対応する関数信号(S_FONC)を内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)に送出して、内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)が所定の磁界(Be)を放出するようにし、識別対象物(ID)が受信する磁界(Br)と公称磁界(B0)との間で行なわれる比較に基づいて、識別対象物(ID)が、内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)の周りの領域(ZO)(第1通信領域)の内部に位置するかどうかについて判断することができ、識別対象物(ID)は、放出磁界(Be)に対応する受信磁界(Br)を測定し、そして該受信磁界(Br)を公称磁界(B0)と比較することができ、さらに、識別対象物(ID)が領域(第1通信領域)内に位置すると判断されている場合、扉の外部に設けた施錠・解錠操作用の検出器を施錠操作したにも係わらず扉が施錠状態に切り替わらなかったとき、識別対象物(ID)が領域(ZO)及び(第1通信領域)内に位置しなくなった(または所定時間が経過した)と判断されたとき、解錠状態の扉が施錠状態になるように切替制御を行う施錠制御装置を備えることを特徴とするシステム(SYS)が提案される。
【0135】
このシステムを用いることにより、識別対象物が通信領域内に位置すると判断されている状態で施錠操作を行った場合には、例えば、ドライバが通信領域から外れたとき等の場合にのみ、扉を施錠状態にすることができ、施錠忘れを防止することができる。但し、ドライバが何らかの理由で再び車内に乗り込んだ場合には施錠状態にはならず、その場合には、所定時間を計時するタイマはキャンセルにされてもよい。
【0136】
従って、本発明は以下の利点を有する。
− アンテナ装置Aが放出する磁界の値を、識別対象物の固定閾値の設定を可能にし、かつ前記対象物の可変閾値よりも管理が容易である送信時電力を調整することにより制御する方法を提供する。
− 識別対象物IDに所定の固定閾値を書き込むことにより、無線外乱を回避する、従ってスプリアス磁界を避けることが可能になる。
− 更に、この閾値を車両群の全てに関して固定し、これによって、全ての車両で動作する共通識別対象物IDを持つことが可能になり、通信領域ZOを、送信電力Peによってのみ、従ってアンテナ装置Aを流れる電流Iによってのみ適合させる。
− 電力は、デューティサイクル調整によって調整され、この電力調整は、デューティサイクルが固定された状態で行なわれる電圧調整よりもコストが安くてすむ。
− 電源電圧Ubatを調整するソリューションとは異なり、デューティサイクルは電流に基づいて調整され、電流に基づく調整は、アンテナ装置AのインピーダンスZrの変化が補正されるので、バッテリ電圧に基づく設定よりも効果的であり、かつ正確である。
− 対称Hブリッジ制御によって、偶数次高調波を送信しないようにすることができ、従って電磁波との相性、EMC(ELECTROMAGNETIC COMPATIBILITY:電磁環境両立性) の問題を軽減することが可能になる。
− 対称な校正制御を、1/3のデューティサイクルを用いて行なうことにより、電流の正確な測定を、ピーク振幅検出器のような簡易測定手段で行なうことが可能になる。
− 制御を、方形波電圧を用いて行なうことにより、電力段のトランジスタの過熱を回避することが可能になる。
− 本発明は、広い電流範囲を必要に応じて、一つの同じ車両に関して、または異なる車両に関して、アンテナ装置Aの回路を適合させる必要を生じることなく得る方法を提供する。
− 設定電力を決定してアンテナ装置が放出する磁界の値を決定するために使用される校正ステップは、当該ステップがアンテナ装置が動作している間に行なわれるので動的である。
− 動的校正ステップでは、上流で行なわれる、すなわちアンテナ装置を車両に組み込んでいる間に(すなわち、アンテナ装置をデバッグしているときに)行なわれる静的校正ステップとは異なり、外部測定手段を追加する必要がない(従って、車両の生産が始まり、そして車両が販売される前でも)。
− 本発明によって、アンテナ装置が車両の中で使用されるときにアンテナ装置から放出される磁界の値を、アンテナ装置が使用されている間に現われるアンテナ装置のインピーダンスの変化を考慮に入れて、識別対象物の固定閾値を設定することにより制御することが可能になる。
− アンテナ装置及び識別対象物を含む検出システムを使用して、アンテナ装置の自動校正を、外部測定手段を用いることなく行なうことができる。
【0137】
明らかなことであるが、本発明は自動車に関して説明した適用例のみに限定されず、例えばホームオートメーションのような、低周波数アンテナ及び識別対象物を含む全ての場合に適用することができる。
【0138】
V 車両
DER トランシーバ装置
A アンテナ装置
AX,AX1,AX2,AX3,AX4,AX5 外部アンテナ
AI,AI1,AI2 内部アンテナ
ID 受信機−発信機、識別対象物、バッジ
VH 客室
VC リアバンパー
Be,BeI,BeX,Br1,Br2,B 磁界
BF 低周波数信号
RF 無線周波数信号、無線周波数応答
B0 受信磁界、公称磁界、公称受信磁界
S0 固定閾値
P0 電力
ZO 通信領域
Br 受信磁界
ID1 位置
ID2 位置
S_CAL 校正信号
PI 初期電力
PR 設定電力
Z,Zr インピーダンス
Ubat バッテリ電圧、電源電圧
Im 測定電流
Irm 電流
Ith 理論初期電流
UC 校正電圧
C ピーク振幅検出器
h 高調波
h1 1次高調波
FL 帯域通過フィルタ
FL1 広帯域通過フィルタ
PT ポイント
an 係数
T 電源電圧の周期
E 電源電圧の振幅
x,y,z 直交空間
Ae 磁界Bが通るアンテナの実際の表面積
d 磁界Bの測定が可能である、アンテナの中心からの距離
Iv 既知の電流
α1 初期デューティサイクル
α2 設定デューティサイクル
Ith 理論初期電流
Zth 理論インピーダンス
CZth 理論インピーダンスを表わす曲線
CZmax 最大曲線
CZmin 最小曲線
SYS 検出システム
S_FONC 関数信号
DC 制御装置
RE 信号受信機
REP 応答
REPOK 肯定応答
REPNOK 否定応答
UC 校正電圧
UF 関数電圧
CALC 計算器
S1,S2,S3,S4 スイッチ
G1 第1の電流範囲
G2 第2の電流範囲
H フルブリッジモード
1/2H ハーフブリッジモード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられたアンテナ装置(A)の周りの領域(ZO)に位置する識別対象物(ID)を検出するシステム(SYS)であって、このシステムは、車内に設けられる制御装置(DC)と、車内に設けられる内部アンテナ装置(AI)と、車外に設けられる外部アンテナ装置(AX)と、識別対象物(ID)とを備え、
制御装置(DC)は、
校正信号(S_CAL)を内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)に送出して設定電力(PR)を決定し、
設定電力(PR)に対応する関数信号(S_FONC)を内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)に送出して、内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)が所定の磁界(Be)を放出するようにし、
識別対象物(ID)が受信する磁界(Br)と公称磁界(B0)との間で行なわれる比較に基づいて、識別対象物(ID)が、内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)の周りの領域(ZO)(第1通信領域)の内部に位置するかどうかについて判断することができ、
識別対象物(ID)は、放出磁界(Be)に対応する受信磁界(Br)を測定し、そして該受信磁界(Br)を公称磁界(B0)と比較することができ、
さらに、識別対象物(ID)が領域(第1通信領域)内に位置すると判断されている場合、扉の外部に設けた施錠・解錠操作用の検出器を施錠操作したにも係わらず扉が施錠状態に切り替わらなかったとき、識別対象物(ID)が領域(ZO)及び(第1通信領域)内に位置しなくなった(または所定時間が経過した)と判断されたとき、解錠状態の扉が施錠状態になるように切替制御を行う施錠制御装置を備えることを特徴とするシステム(SYS)。
【請求項1】
車体に設けられたアンテナ装置(A)の周りの領域(ZO)に位置する識別対象物(ID)を検出するシステム(SYS)であって、このシステムは、車内に設けられる制御装置(DC)と、車内に設けられる内部アンテナ装置(AI)と、車外に設けられる外部アンテナ装置(AX)と、識別対象物(ID)とを備え、
制御装置(DC)は、
校正信号(S_CAL)を内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)に送出して設定電力(PR)を決定し、
設定電力(PR)に対応する関数信号(S_FONC)を内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)に送出して、内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)が所定の磁界(Be)を放出するようにし、
識別対象物(ID)が受信する磁界(Br)と公称磁界(B0)との間で行なわれる比較に基づいて、識別対象物(ID)が、内部及び外部アンテナ装置(AI)(AX)の周りの領域(ZO)(第1通信領域)の内部に位置するかどうかについて判断することができ、
識別対象物(ID)は、放出磁界(Be)に対応する受信磁界(Br)を測定し、そして該受信磁界(Br)を公称磁界(B0)と比較することができ、
さらに、識別対象物(ID)が領域(第1通信領域)内に位置すると判断されている場合、扉の外部に設けた施錠・解錠操作用の検出器を施錠操作したにも係わらず扉が施錠状態に切り替わらなかったとき、識別対象物(ID)が領域(ZO)及び(第1通信領域)内に位置しなくなった(または所定時間が経過した)と判断されたとき、解錠状態の扉が施錠状態になるように切替制御を行う施錠制御装置を備えることを特徴とするシステム(SYS)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−96668(P2012−96668A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246203(P2010−246203)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(506415218)ヴァレオ セキュリテ アビタクル (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(506415218)ヴァレオ セキュリテ アビタクル (36)
【Fターム(参考)】
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