説明

車両制御装置および車両制御方法

【課題】 運転者に与える違和感を軽減できる車両制御装置および車両制御方法を提供する。
【解決手段】 自車両の走行車線からの逸脱傾向を算出する逸脱傾向算出部20と、逸脱傾向算出部20によって車両の走行車線からの逸脱傾向を検出したときに車両に対してヨーモーメントおよび/または減速度を付与して逸脱傾向を抑制する車線逸脱防止制御部21と、を備え、逸脱傾向算出部20は、曲線路の外側または内側への逸脱傾向を算出し、車線逸脱防止制御部21は、算出された逸脱傾向が外側への逸脱傾向である場合には車線逸脱傾向を抑制し、算出された逸脱傾向が内側への逸脱傾向である場合には逸脱傾向の状態に基づいて車線逸脱傾向の抑制または抑制の制限をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置および車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両制御装置では、自車両が曲線路の内側に逸脱する傾向があるとき、車線逸脱防止制御による車両へのヨーモーメントの付与を抑制している。この記載に関係する技術の一例は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−145243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来装置において、運転者に与える違和感をより低減して欲しいとのニーズがある。
本発明の目的は、運転者に与える違和感を軽減できる車両制御装置および車両制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、曲線路を走行中の車両が内側への逸脱傾向にある場合には、逸脱傾向があらかじめ設定された逸脱傾向にあるときのみ車線逸脱傾向を抑制し、外側への逸脱傾向にある場合には、常に車線逸脱傾向を抑制する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、運転者に与える違和感を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の車両制御装置を適用した車両の構成図である。
【図2】実施例1の電子制御ユニット10の制御ブロック図である。
【図3】実施例1の電子制御ユニット10で実行される車線逸脱防止制御の流れを示すフローチャートである。
【図4】左右車線境界線と車両固定座標との関係を示す図である。
【図5】車線境界線から求めた仮想車線境界線を示す図である。
【図6】車線境界線の代表点から求めた仮想車線境界線を示す図である。
【図7】車線境界線から求めた仮想車線境界線を示す図である。
【図8】車線境界線の代表点から求めた仮想車線境界線を示す図である。
【図9】実施例の車線逸脱防止制御の直線路での動作を示す図である。
【図10】実施例の車線逸脱防止制御の曲線路外側での動作を示す図である。
【図11】実施例の車線逸脱防止制御の曲線路内側での動作を示す図である。
【図12】実施例2の電子制御ユニット10の制御ブロック図である。
【図13】実施例2の電子制御ユニット10で実行される車線逸脱防止制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の車両制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施例は、多くのニーズに適応できるように検討されており、運転者に与える違和感を軽減できることは検討されたニーズの1つである。以下の実施例はさらに自車両の逸脱傾向が運転者の意図によるものか否かを精度よく判定できる、車線逸脱防止制御における制御量を過不足なく求めることができる、等のニーズにも適応している。
〔実施例1〕
図1は、実施例1の車両制御装置を適用した車両の構成図である。
実施例1の車両は、カメラ1、電動パワーステアリング2、電動油圧ブレーキユニット3、ブレーキブースタ4、ステアリングホイール5、左前輪6、右前輪7、左後輪8、右後輪9、電子制御ユニット10および車両運動検出センサ11を備える。
カメラ1は、自車両の前端中央位置に取り付けられ、自車両の前方を撮像する。電動パワーステアリング2は、ステアリングホイール5の操舵角に応じた指令に基づいて左右前輪6,7を転舵するが、操舵角と独立して左右前輪6,7を転舵することも可能である。電動油圧ブレーキユニット3は、運転者のブレーキ操作力に応じて、または、車両状態に応じて4輪の制動力を独立に制御する。ブレーキブースタ4は、運転者のブレーキ操作力を倍力して電動油圧ブレーキユニット3へ出力する。車両運動検出センサ11は、車両の速度(車速)、前後加速度、横加速度、ヨーレート、操舵角、操舵トルク等を検出する。
電子制御ユニット10は、車両運動検出センサ11の各検出値に基づいて、カメラ1、電動パワーステアリング2、電動油圧ブレーキユニット3を制御する。電子制御ユニット10は、車線逸脱防止制御(車線逸脱抑制制御)として、カメラ1の撮像画像から認識した車線境界線を自車両が逸脱しそうな場合には、電動パワーステアリング2および/または電動油圧ブレーキユニット3を駆動し、車両にヨーモーメントおよび/または減速度を付与して車両が車線から逸脱するのを抑制する。
電動油圧ブレーキユニット3は、運転者のブレーキ操作力によって駆動される場合には、左右前輪6,7および左右後輪8,9にそれぞれ等しい制動力を作用させるが、車線逸脱防止制御では、左右前輪6,7および左右後輪8,9の制動力に差を付けて左右制動力を発生させることで車両にヨーモーメントを付与することができる。また、電動パワーステアリング2は、運転者による操作と車線逸脱防止制御との両方から指令を受けた場合、両者の和を取って駆動を行う。
【0009】
図2は、実施例1の電子制御ユニット10の制御ブロック図であり、電子制御ユニット10は、逸脱傾向算出部20と車線逸脱防止制御部(車線逸脱抑制制御部)21とを備える。逸脱傾向算出部20は、車両の走行車線からの逸脱傾向を算出し、車線逸脱防止制御部21は、逸脱傾向算出部20によって車両の走行車線からの逸脱傾向を検出したとき電動パワーステアリング2および/または電動油圧ブレーキユニット3を駆動し、車両に対してヨーモーメントおよび/または減速度を付与して逸脱傾向を抑制する。車線逸脱防止制御部21は、自車両と車線境界線との関係に基づいて車両走行状態を制御することで車両の走行状態を抑制する車両状態抑制制御を実行する車両状態抑制制御部に相当する。
逸脱傾向算出部20は、車線境界線認識部22と、車両現在位置認識部23と、車両予測位置算出部24と、仮想車線境界線算出部25と、作動要否判定部26とを有する。
車線境界線認識部22は、カメラ1により撮像された自車両前方の画像から、白線、ガードレール、縁石等、自車両の走行している車線の左右に存在する車線境界線を認識する。
車両現在位置認識部(車両端部認識部)23は、あらかじめ設定された自車両内または車両近傍の所定位置である車両現在位置を認識する。車両現在位置は、左右の車線境界線に対してそれぞれ設定する。車両現在位置は、自車両の進行方向前方の車両端部としてもよい。
車両予測位置算出部24は、車両現在位置から進行方向における所定量前方の位置である車両予測位置を認識する。ここで、所定量前方の位置は、車両現在位置から所定時間経過後の自車両の到達位置とする。所定時間は、自車両の車速が高いほど短くしてもよい。また、車両予測位置は、車両現在位置に対応して左右にそれぞれ設定する。車両現在位置を車両端部とした場合には、車両予測位置も車両端部とする。
【0010】
仮想車線境界線算出部25は、車両予測位置近傍の車線境界線上の任意の位置に対する略接線方向の線である仮想車線境界線を算出する。仮想車線境界線は、左右の車両現在位置に対応してそれぞれ算出する。このとき、左の車線境界線上の仮想車線境界線は、左の車両予測位置に近い位置とし、右の車線境界線上の仮想車線境界線は、右の車両予測位置に近い位置とする。
作動要否判定部26は、車両現在位置と車両予測位置と仮想車線境界線との関係に基づいて、車線逸脱防止制御の作動要否、つまり、車線逸脱防止制御の制御介入をすべきか否かを判定する。作動要否判定部26は、符号判定部26aを有する。符号判定部26aは、仮想車線境界線と車両現在位置とを結ぶ第1線、すなわち、車両現在位置から仮想車線境界線に下ろした垂線と、仮想車線境界線と車両予測位置とを結ぶ第2線、すなわち、車両予測位置から仮想車線境界線に下ろした垂線とを算出し、仮想車線境界線を基準としたときの第1線と第2線の方向性に関する符号を判定する。つまり、仮想車線境界線を挟んで走行車線内側の領域と走行車線外側の領域とに区分し、第1線と第2線とが同じ領域に存在する場合には符号が一致し、異なる領域に存在する場合には符号が不一致となる。
作動要否判定部26は、自車両が左右の仮想車線境界線の間の領域(左右の仮想車線境界線により区画された仮想車線)を走行中、符号判定部26aにより第1線と第2線の符号が一致していると判定された場合には車線逸脱防止制御が不要と判定し、符号が不一致であると判定された場合には車線逸脱防止制御が必要と判定する。具体的には、車両予測位置が仮想車線境界線の外側に存在し、車両現在位置が仮想車線境界線の内側に存在しているとき、車線逸脱防止制御が必要と判定し、それ以外は車線逸脱防止制御が不要と判定する。
車線逸脱防止制御部21は、作動要否判定部26により車線逸脱防止制御が必要と判定された場合には車線逸脱防止制御を実行し、不要と判定された場合には車線逸脱防止制御を実行しない。
【0011】
[車線逸脱防止制御]
図3は、実施例1の電子制御ユニット10で実行される車線逸脱防止制御の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。なお、この処理は、車両の走行中、例えば、10ms程度の演算周期で繰り返し実行される。
ステップS1では、車線逸脱防止制御部21において、車両運動検出センサ11から受信した車両の速度、前後加速度、横加速度、ヨーレート、操舵角、操舵トルクなどの検出値を読み込む。
ステップS2では、車線境界線認識部22において、カメラ1から受信した自車両前方の撮像画像から車線境界線位置を認識する。ここで、車線境界線位置は車両固定座標での位置となる。以下の説明における位置も基本的には車両固定座標での位置とする。座標軸は、例えば図4のように自車両31におけるカメラ1の取り付け位置を原点Oとして、車両進行方向をX軸、X軸方向と直交する方向、すなわち車幅方向をY軸とする。左右の車線境界線32,33は車線の左右にそれぞれ存在する。ここで、車線境界線は、演算負荷を考慮し、図4の点34,35,36,37,38,39のように数点の代表点で表してもよい。
ステップS3では、車両現在位置認識部23において、車両内部の任意の点、または車両近傍の点を車両現在位置とする。車両現在位置は後述するように左右の車線境界線と位置を比較するものであるため、左右の車線境界線に対応して2点設定する。例えば、車両左前端と右前端としてもよい。そして、車両予測位置算出部24において、ステップS1で読み込んだ検出値とあらかじめ記憶されている車両諸元とから車両現在位置の所定時間後の位置を車両予測位置として算出する。車両予測位置は速度、操舵角、ヨーレート、車両幅、車両長さ、カメラ1の取り付け位置などに基づいて算出する。車両予測位置も車両現在位置と同様に左右の車線境界線と位置を比較するものであるため、左右の車線境界線に対応して2点設定する。
【0012】
ステップS4では、仮想車線境界線算出部25において、仮想車線境界線を算出する。仮想車線境界線は、車両予測位置に近い点での車線境界線の接線とする。例えば、図5に示すように、左右の車線境界線上で、車両現在位置40から所定時間経過後の自車両の到達位置である車両予測位置41が最も近い点の接線を左右の仮想車線境界線42としてもよい。図5において、(a)は直線路において自車両31が左の車線境界線32に対して逸脱傾向にある場合、(b)は曲線路において自車両31が曲線路外側の左の車線境界線32に対して逸脱傾向にある場合、(c)は曲線路において自車両31が曲線路内側の右の車線境界線33に対して逸脱傾向にある場合を示している。このとき、演算負荷軽減のために車線境界線を数点の代表点で表す場合には、図6のように車両予測位置41から近い2点の車線境界線の代表点を選択し、その2点を含む直線を仮想車線境界線とする。(a)の場合は2点44,45を含む直線、(b)の場合は2点47,48を含む直線、(c)の場合は2点50,51を含む直線となる。ここで、車両予測位置41と仮想車線境界線42との距離を逸脱量dとする。
また、図7のように車両予測位置41を通る、車両進行方向に対し垂直方向の直線52と車線境界線32(または33)との交点53での車線境界線32(または33)の接線を仮想車線境界線42としてもよい。このとき、演算負荷軽減のために車線境界線を数点の代表点で表す場合には、図8のように車両予測位置41を通る、車両進行方向に対し垂直方向の直線52に近い2点の車線境界線の代表点を選択し、その2点を含む直線を仮想車線境界線とする。(a)の場合には2点44,45を含む直線、(b)の場合には2点47,48を含む直線、(c)の場合には2点50,51を含む直線となる。この場合の逸脱量dは、車両予測位置41を通る、車両進行方向に対し垂直方向の直線52と仮想車線境界線42との交点53と、車両予測位置41との距離とする。
以上のように仮想車線境界線を設定することにより、直線路では車線境界線と仮想車線境界線とが一致し、曲線路外側では車線境界線の外側に仮想車線境界線が算出され、曲線路内側では車線境界線の内側に仮想車線境界線が算出される。なお、算出した仮想車線境界線を少量オフセット、回転させるなどして調整してもよい。
【0013】
ステップS5では、作動要否判定部26において、車両予測位置がステップS4で算出した仮想車線境界線の外側に存在するか否かを判定し、車両予測位置が仮想車線境界線の外側に存在する場合にはステップS6へ進み、内側に存在する場合には処理を終了する。
ステップS6では、作動要否判定部26において、車両現在位置が仮想車線境界線の内側に存在するか否かを判定し、車両現在位置が仮想車線境界線の内側に存在する場合にはステップS7へ進み、外側に存在する場合には処理を終了する。
ステップS7では、車線逸脱防止制御部21において、下記の式(1)のようにステップS4で算出した逸脱量dにゲインKを乗算して操作量Mを求め、操作量Mに基づいて電動パワーステアリング2および/または電動油圧ブレーキユニット3を駆動してヨーモーメントおよび/または減速度を車両に付与し、車線逸脱防止制御を実行する。
M = K×d …(1)
【0014】
次に、作用を説明する。
[直線路での動作]
直線路での動作について図9を用いて説明する。図9には直線の車線が2車線存在し、この2車線の間で車線変更する場合を考える。直線路では車線境界線と仮想車線境界線とが一致する。カメラ1が認識した車線は図9の下側の車線と仮定する。このとき、仮想車線は左右の車線境界線32,33により区画される。図9(a)の場合は、車両予測位置41が仮想車線境界線42の外側に存在し、車両現在位置40が仮想車線境界線42の内側に存在するため、車線逸脱防止制御を実行する。これにより、自車両31が走行車線から隣接車線に逸脱するのを抑制できる。
次に、図9(b)の場合は車両予測位置41と車両現在位置40とが共に仮想車線境界線42の外側に存在するので車線逸脱防止制御は実行しない。図9(b)は図9(a)の直後の状態であり、車線逸脱防止制御を行っているにもかかわらず、自車両31が隣の車線に移動してきている。このような場合は運転者に車線変更の意図があることが多いため、仮に車線逸脱防止制御を実行した場合、車両の経路が運転者の意図した車線変更の経路からずれてしまう。つまり、運転者の予期せぬ車両挙動が発生するため、違和感を与えてしまう。よって、この場合には車線逸脱防止制御を実行しないことで、運転者に与える違和感を防止できる。
また、図9(c)の場合も車両予測位置41と車両現在位置40とが共に仮想車線境界線42の外側に存在するため、図9(b)の場合と同様、車線逸脱防止制御は実行しない。図9(c)の場合は、運転者に車線変更の意図があるか否かが不明であり、仮に車線変更の意図が無い場合であっても、車両予測位置41は車両現在位置40と同じく仮想車線境界線42の外側に存在するため、車線逸脱する可能性は低い。一方、車線逸脱防止制御を実行した場合、運転者に車線変更の意図がある場合には、運転者に違和感を与えてしまう。よって、この場合には車線逸脱防止制御を実行しないことで、運転者に与える違和感を防止できる。
【0015】
[曲線路外側での動作]
曲線路外側での動作について図10を用いて説明する。曲線路外側では、仮想車線境界線42は車線境界線32よりも外側となり、自車両31が車線境界線32の内側を走行している場合、車両現在位置40は常に仮想車線境界線42の内側に存在する。よって、曲線路外側では、車両予測位置41が仮想車線境界線42を超えて仮想車線境界線42の外側に移動したとき、常に車線逸脱防止制御を実行する。このとき、図10(a)のように自車両31が車線境界線32の内側に存在する場合だけでなく、図10(b)のように自車両31がある程度車線境界線32の外側に位置している場合にも車線逸脱防止制御が実行される。よって、車線逸脱防止制御が必要なときには確実に実行されるため、運転者に安心感を与えることができる。ここで、図7に示した方法で仮想車線境界線42を設定している場合には、図5に示した方法で仮想車線境界線42を設定した場合と比較して仮想車線境界線42がより外側に位置することになるため、車線逸脱防止制御の実行範囲が広くなる。よって、運転者により安心感を与えることができる。
【0016】
[曲線路内側での動作]
曲線路内側での動作について図11を用いて説明する。曲線路内側では、仮想車線境界線42は車線境界線33よりも内側となるが、自車両31が車線境界線32の内側を走行している場合であっても、図11(a)のように車両現在位置40が仮想車線境界線42の外側に存在することがあり、このとき車線逸脱防止制御は実行しない。つまり、曲線路内側では、車両予測位置41が仮想車線境界線42を超えて仮想車線境界線42の外側に移動した場合であっても、状況に応じて車線逸脱防止制御の要否を判定する。
図11(a)のように仮想車線境界線42と自車両31の進行方向とが成す角度(以下、逸脱角)が小さい場合、運転者の意図で自車両31を走行車線の内側に寄せている可能性が高い。曲線路を走行している場合、運転者は曲線路の内側に沿って走行する傾向があるからである。このような場合に車線防止制御を実行すると、自車両31に曲線路外側へのヨーモーメントが付与されてしまい、かえって運転者に違和感を与えてしまう。よって、この場合には車線逸脱防止制御を実行しないことで、運転者に与える違和感を防止できる。ここで、図7に示した方法で仮想車線境界線42を設定している場合には、図5に示した方法で仮想車線境界線42を設定した場合と比較して仮想車線境界線42がより内側に位置することになる。よって、車線逸脱防止制御の実行範囲が狭くなるため、より車線逸脱防止制御に入りにくくすることができる。
一方、図11(b)のように逸脱角が大きい場合には、運転者の意図で自車両31を曲線路の内側に寄せている可能性が低い。よって、車線逸脱防止制御が必要なときには確実に実行されるため、運転者に安心感を与えることができる。
【0017】
上記のように、実施例1の作動要否判定部26では、仮想車線境界線と車両現在位置と車両予測位置との関係に基づいて車線逸脱防止制御部21の作動要否を判定しているため、車両の逸脱傾向が運転者の意図によるものか否かを精度よく判定できる。
このとき、作動要否判定部26は、車両予測位置が仮想車線境界線の外側に存在し、かつ、車両現在位置が仮想車線境界線の内側に存在する場合に、車線逸脱防止制御が必要と判定し、それ以外の場合には車線逸脱防止制御が不要と判定する。言い換えると、自車両が左右の仮想車線境界線により区画された仮想車線を走行中、第1線と前記第2線の符号が一致していると判定された場合には車線逸脱防止制御が不要と判定し、符号が不一致であると判定された場合には車線逸脱防止制御が必要と判定する。曲線路内側では、車両予測位置が仮想車線境界線を超えた場合であっても、逸脱角が小さい場合、運転者の意図で自車両を走行車線の内側に寄せている可能性が高いため、このような場合には車線逸脱防止制御を実行しないことで、運転者に与える違和感を防止できる。
車両現在位置認識部23は、自車両の進行方向前方の車両前端2箇所を車両現在位置として認識し、仮想車線境界線算出部25は、左の仮想車線境界線は左の車線境界線に基づいて算出し、右の仮想車線境界線は右の車線境界線に基づいて算出している。左の車線境界線を用いて左の仮想車線境界線を算出し、右の車線境界線を用いて右の仮想車線境界線を算出することで、車線境界線の形状に合致した仮想車線境界線を設定でき、逸脱傾向を精度よく判定できる。また、自車両が走行車線から逸脱するとき、左の車線境界線に対しては車両の左前端が最初に逸脱し、右の車線境界線に対しては車両の右前端が最初に逸脱するため、車両現在位置を左右2箇所に設定することで、逸脱傾向をより精度よく判定できる。
【0018】
車両予測位置算出部24は、所定時間経過後の車両の到達位置を算出しているため、所定時間経過後に自車両が仮想車線境界線に対してどの位置にいるのかを算出できる。また、左右の現在位置に対してそれぞれ車両予測位置を算出しているため、左の車線境界線に対する逸脱傾向と右の車線境界線に対する逸脱傾向を精度よく判定できる。
実施例1では、仮想車線境界線算出部25における仮想車線境界線の算出方法を2つ示した。1番目は、車線境界線上の車両予測位置が最も近い任意の点に対して仮想車線境界線を算出する方法であり、2番目は、車線境界線上の車両予測位置に近い2点を通る仮想車線境界線を算出する方法である。1番目の方法を採用した場合、車線境界線に対して車両予測位置がどの程度逸脱するのか、つまり、車線境界線からの逸脱量dを正確に算出できる。よって、車線逸脱防止制御における操作量Mを過不足なく求めることができ、車線逸脱防止制御の制御精度の向上を図ることができる。一方、2番目の方法を採用した場合、車線境界線上で車両予測位置が最も近い点およびその接線の演算が不要であるため、演算負荷の軽減、演算時間の短縮を図ることができる。加えて、2番目の方法で算出した仮想車線境界線は、1番目の方法で算出した仮想車線境界線よりも曲線路外側でより外側、曲線路内側でより内側となる。よって、曲線路外側における車線逸脱防止制御の実行範囲を広くでき、運転者に安心感を与えることができると共に、曲線路内側の車線逸脱防止制御の実行範囲を狭くでき、運転者に与える違和感を軽減できる。
【0019】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両制御装置にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
(1) 自車両の走行している走行車線の車線境界線を認識する車線境界線認識部22と、あらかじめ設定された自車両内または車両近傍の所定位置である車両現在位置を認識する車両現在位置認識部23と、車両現在位置から所定量前方の位置である車両予測位置を算出する車両予測位置算出部24と、車両予測位置近傍における車線境界線の略接線である仮想車線境界線を算出する仮想車線境界線算出部25と、自車両と車線境界線との関係に基づいて車両走行状態を制御することで車両の走行状態を抑制する車両状態抑制制御を実行する車線逸脱防止制御部21と、仮想車線境界線と車両現在位置と車両予測位置との関係に基づいて車線逸脱防止制御部21の作動要否を判定する作動要否判定部26と、を備えた。
これにより、車両の逸脱傾向が運転者の意図によるものか否かを精度よく判定できるため、運転者の意図によらない場合は車線逸脱防止制御を実行し、運転者の意図による場合は車線逸脱防止制御を実行しないことで、運転者の意図に反して車線逸脱防止制御が実行されるのを防ぎ、運転者に与える違和感を軽減または防止できる。
(2) 仮想車線境界線と車両現在位置とを結ぶ第1線と、仮想車線境界線と車両予測位置とを結ぶ第2線とを算出し、仮想車線境界線を基準としたときの第1線と第2線の方向性に関する符号を判定する符号判定部26aを備え、車線逸脱防止制御部21は、車両状態抑制制御として、自車両が走行車線から逸脱する傾向である場合には、車両にヨーモーメントおよび/または減速度を付与することで自車両の逸脱を抑制し、作動要否判定部26は、自車両が仮想車線境界線により区画された仮想車線上を走行中、第1線と第2線の符号が一致している場合には車線逸脱防止制御部21の作動が不要と判定し、符号が不一致である場合には作動が必要と判定する。
第1線と第2線との符号が一致している場合には、逸脱角が小さいため、運転者の意図した逸脱傾向である可能性が高い。この場合は車線逸脱防止制御を実行しないことで、運転者に与える違和感を軽減できる。また、第1線と第2線との符号が異なる場合には、逸脱角が大きいため、運転者の意図しない逸脱傾向である可能性が高い。この場合は車線逸脱防止制御を実行することで、運転者に安心感を与えることができる。
【0020】
(3) 車両現在位置認識部23は、自車両の左右2箇所を前記車両現在位置として認識し、仮想車線境界線算出部25は、左の仮想車線境界線は左の車線境界線に基づいて算出し、右の仮想車線境界線は右の車線境界線に基づいて算出する。
左の車線境界線を用いて左の仮想車線境界線を算出し、右の車線境界線を用いて右の仮想車線境界線を算出することで、車線境界線の形状に合致した仮想車線境界線を設定でき、逸脱傾向を精度よく判定できる。また、自車両が走行車線から逸脱するとき、左の車線境界線に対しては車両の左側から逸脱し、右の車線境界線に対しては車両の右側から逸脱するため、車両現在位置を左右2箇所に設定することで、逸脱傾向をより精度よく判定できる。
(4) 自車両の走行車線からの逸脱傾向を算出する逸脱傾向算出部20と、逸脱傾向算出部20によって車両の走行車線からの逸脱傾向を検出したときに車両に対してヨーモーメントおよび/または減速度を付与して逸脱傾向を抑制する車線逸脱防止制御部21と、を備え、逸脱傾向算出部20は、曲線路の外側または内側への逸脱傾向を算出し、車線逸脱防止制御部21は、算出された逸脱傾向が外側への逸脱傾向である場合には車線逸脱傾向を抑制し、算出された逸脱傾向が内側への逸脱傾向である場合には逸脱傾向の状態に基づいて車線逸脱傾向の抑制または抑制の制限をする。
曲線路を走行している場合、運転者は曲線路の内側に沿って走行する傾向があるため、逸脱傾向が外側への逸脱傾向である場合には、運転者の意図しない逸脱傾向であることがほとんどであるが、逸脱傾向が内側への逸脱傾向である場合には、運転者の意図した逸脱傾向である可能性があり、これは逸脱傾向の状態(実施例1では、車両現在位置と車両予測位置と仮想車線境界線との関係)から推定できる。よって、逸脱傾向が内側への逸脱傾向である場合には、逸脱傾向の状態に基づいて車線逸脱傾向の抑制または抑制の制限を行うことで、運転者の意図に反して車線逸脱防止制御が実行されるのを防ぎ、運転者に与える違和感を軽減または防止できる。
【0021】
〔実施例2〕
図12は、実施例2の電子制御ユニット10の制御ブロック図であり、実施例2の作動要否判定部26では、図2に示した符号判定部26aに代えて、線分算出部26bと交点認識部26cとを有する点で異なり、他の部分は実施例1と同一であるため、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
線分算出部26bは、車両予測位置と車両現在位置とを結ぶ線分を算出する。運転者の前方注視点は、この線分上に存在するため、車両現在位置を車両端部とした場合、当該線分は、車両端部と前方注視点とを通る線分となる。
交点認識部26cは、算出された仮想車線境界線と線分算出部26bにより算出された線分との交点の存在を認識する。
作動要否判定部26は、自車両が左右の仮想車線境界線の間の領域(左右の仮想車線境界線により区画された仮想車線)を走行中、交点認識部26cにより交点が認識された場合には車線逸脱防止制御が必要と判定し、交点が認識されない場合には車線逸脱防止制御が不要と判定する。
【0022】
[車線逸脱防止制御]
図13は、実施例2の電子制御ユニット10で実行される車線逸脱防止制御の流れを示すフローチャートであり、図3に示した実施例1と異なる部分のみ説明する。
ステップS8では、作動要否判定部26において、車両予測位置と車両現在位置とを結ぶ線分を算出する。
ステップS9では、作動要否判定部26において、算出された仮想車線境界線と線分算出部26bにより算出された線分との交点の存在を認識できるか否かを判定し、交点が認識された場合にはステップS7へ進み、交点が認識されない場合には処理を終了する。
【0023】
次に、作用を説明する。
[直線路での動作]
直線路での動作について図9を用いて説明する。
図9(a)の場合は、仮想車線境界線42と、車両予測位置41と車両現在位置とを結ぶ線分54との交点が存在するため、車線逸脱防止制御を実行する。
図9(b)および図9(c)の場合は、仮想車線境界線42と、車両予測位置41と車両現在位置とを結ぶ線分54との交点が存在しないため、線逸脱防止制御は実行しない。
[曲線路外側での動作]
曲線路外側での動作について図10を用いて説明する。曲線路外側では、仮想車線境界線42は車線境界線32よりも外側となり、自車両31が車線境界線32の内側を走行している場合、仮想車線境界線42と、車両予測位置41と車両現在位置40とを結ぶ線分54とは常に交点が存在する。よって、曲線路外側では、車両予測位置41が仮想車線境界線42を超えて仮想車線境界線42の外側に移動したとき、常に車線逸脱防止制御を実行する。
[曲線路内側での動作]
曲線路内側での動作について図11を用いて説明する。曲線路内側では、仮想車線境界線42は車線境界線33よりも内側となるが、自車両31が車線境界線32の内側を走行している場合であっても、図11(a)のように、仮想車線境界線42と、車両予測位置41と車両現在位置40とを結ぶ線分54との交点が存在しないことがあり、このとき車線逸脱防止制御は実行しない。つまり、曲線路内側では、車両予測位置41が仮想車線境界線42を超えて仮想車線境界線42の外側に移動した場合であっても、状況に応じて車線逸脱防止制御の要否を判定する。
線分54は自車両31の進行方向を示すものであるため、図11(a)のように仮想車線境界線42と線分54とが成す角度(以下、逸脱角)が小さい場合には、車線逸脱防止制御を実行しないことで、運転者に与える違和感を防止できる。
一方、図11(b)のように逸脱角が大きい場合には、車線逸脱防止制御を実行することで、運転者に安心感を与えることができる。
【0024】
次に、効果を説明する。
実施例2の車両制御装置にあっては、実施例1の効果(1),(3),(4)に加え、以下の効果を奏する。
(5) 車両予測位置と前記車両現在位置とを結ぶ線分を算出する線分算出部26bを備え、作動要否判定部26は、自車両が仮想車線境界線により区画された仮想車線上を走行中、線分と仮想車線境界線との交点が存在する場合には車線逸脱防止制御部21の作動が必要と判定する。
車両予測位置と車両現在位置とを結ぶ線分と、仮想車線境界線との交点が存在しない場合には、逸脱角が小さいため、運転者の意図した逸脱傾向である可能性が高い。この場合は車線逸脱防止制御を実行しないことで、運転者に与える違和感を軽減できる。また、車両予測位置と車両現在位置とを結ぶ線分と、仮想車線境界線との交点が存在する場合には、逸脱角が大きいため、運転者の意図しない逸脱傾向である可能性が高い。この場合は車線逸脱防止制御を実行することで、運転者に安心感を与えることができる。
【0025】
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、車線逸脱防止制御が不要であると判定された場合には、車線逸脱防止制御を実行しない構成に代えて、車線逸脱防止制御が必要であると判定された場合よりも車線逸脱防止制御の操作量を小さくする構成としてもよい。
【0026】
実施例から把握される特許請求の範囲に記載した発明以外の技術的思想について以下に説明する。
(a) 請求項1に記載の車両制御装置において、
前記車両予測位置算出部は、所定時間経過後における前記自車両の到達時間を算出することを特徴とする車両制御装置。
この発明によれば、所定時間経過後に自車両が仮想車線境界線に対してどの位置にいるのかを算出できる。
(b) (a)に記載の車両制御装置において、
前記車両現在位置認識部は、前記自車両の左右2箇所を前記車両現在位置として認識し、
前記車両予測位置算出部は、左右それぞれの車両現在位置に対して車両予測位置を算出することを特徴とする車両制御装置。
この発明によれば、左の車線境界線に対する逸脱傾向と右の車線境界線に対する逸脱傾向を精度よく判定できる。
(c) 請求項1に記載の車両制御装置において、
前記仮想車線境界線算出部は、前記車線境界線上の前記車両予測位置が最も近い点に対して前記仮想車線境界線を算出することを特徴とする車両制御装置。
この発明によれば、車線境界線に対して車両予測位置がどの程度逸脱するのか、つまり、車線境界線からの逸脱量を正確に算出できる。よって、車線逸脱防止制御における操作量を過不足なく求めることができ、車線逸脱防止制御の制御精度の向上を図ることができる。
(d) 請求項1に記載の車両制御装置において、
前記仮想車線境界線算出部は、前記車線境界線上の前記車両予測位置に近い2点を通る前記仮想車線境界線を算出することを特徴とする車両制御装置。
この発明によれば、小さな演算負荷および短い演算時間で仮想車線境界線を算出できる。
【0027】
(e) 請求項5に記載の車両制御装置において、
前記逸脱傾向算出部は、
前記自車両の走行している走行車線の車線境界線を認識する車線境界線認識部と、
あらかじめ設定された自車両内の任意の位置である車両現在位置を認識する車両現在位置認識部と、
前記自車両の進行方向における所定量前方の位置である車両予測位置を算出する車両予測位置算出部と、
前記車両予測位置に近い位置の前記車線境界線に対する略接線方向の線である仮想車線境界線を算出する仮想車線境界線算出部と、
前記仮想車線境界線と前記車両現在位置とを結ぶ第1線と、前記仮想車線境界線と前記車両予測位置とを結ぶ第2線とを算出し、前記仮想車線境界線を基準としたときの前記第1線と前記第2線の方向性に関する符号を判定する符号判定部と、
を備え、
前記車線逸脱抑制制御部は、あらかじめ設定された逸脱傾向の状態として、前記自車両が前記仮想車線境界線により区画された仮想車線上を走行中、前記第1線と第2線の符号が一致している場合には車線逸脱傾向の抑制を制限し、前記符号が不一致である場合には車線逸脱傾向を抑制することを特徴とする車両制御装置。
第1線と第2線との符号が一致している場合には、逸脱角が小さいため、運転者の意図した逸脱傾向である可能性が高い。この場合は車線逸脱防止制御を実行しないことで、運転者に与える違和感を軽減できる。また、第1線と第2線との符号が異なる場合には、逸脱角が大きいため、運転者の意図しない逸脱傾向である可能性が高い。この場合は車線逸脱防止制御を実行することで、運転者に安心感を与えることができる。
【0028】
(f) (e)に記載の車両制御装置において、
前記車両現在位置認識部は、前記自車両の左右2箇所を前記車両現在位置として認識し、
前記車両予測位置算出部は、左右それぞれの車両現在位置に対して車両予測位置を算出することを特徴とする車両制御装置。
この発明によれば、左の車線境界線に対する逸脱傾向と右の車線境界線に対する逸脱傾向を精度よく判定できる。
(g) (e)に記載の車両制御装置において、
前記車両予測位置算出部は、所定時間経過後における前記自車両の到達位置を算出することを特徴とする車両制御装置。
この発明によれば、所定時間経過後に自車両が仮想車線境界線に対してどの位置にいるのかを算出できる。
(h) (e)に記載の車両制御装置において、
前記車両現在位置認識部は、前記自車両の左右2箇所を前記車両現在位置として認識し、
前記車両予測位置算出部は、左右それぞれの車両現在位置に対して車両予測位置を算出することを特徴とする車両制御装置。
この発明によれば、左の車線境界線に対する逸脱傾向と右の車線境界線に対する逸脱傾向を精度よく判定できる。
(i) (e)に記載の車両制御装置において、
前記仮想車線境界線算出部は、前記車線境界線上の前記車両予測位置が最も近い点に対して前記仮想車線境界線を算出することを特徴とする車両制御装置。
この発明によれば、車線境界線に対して車両予測位置がどの程度逸脱するのか、つまり、車線境界線からの逸脱量を正確に算出できる。よって、車線逸脱防止制御における操作量を過不足なく求めることができ、車線逸脱防止制御の制御精度の向上を図ることができる。
【0029】
(j) (e)に記載の車両制御装置において、
前記仮想車線境界線算出部は、前記車線境界線上の前記車両予測位置に近い2点を通る前記仮想車線境界線を算出することを特徴とする車両制御装置。
この発明によれば、小さな演算負荷および短い演算時間で仮想車線境界線を算出できる。
(k) 請求項5の車両制御装置において、
前記逸脱傾向算出部は、
前記自車両の走行している走行車線の車線境界線を認識する車線境界線認識部と、
前記自車両の進行方向前方の車両端部を認識する車両端部認識部と、
前記自車両の進行方向における所定時間後の自車両の到達位置である車両予測位置を算出する車両予測位置算出部と、
前記車両予測位置から最も近い前記車線境界線上の位置に対する略接線方向の線である仮想車線境界線を算出する仮想車線境界線算出部と、
前記仮想車線境界線の算出に用いた前記車線境界線側の前記車両端部と前方注視点とを通る線分を算出する線分算出部と、
前記算出された仮想車線境界線と前記線分との交点の存在を認識する交点認識部と、
を備え、
前記車線逸脱抑制制御部は、前記算出された逸脱傾向の状態として、前記自車両が前記仮想車線境界線により区画された仮想車線上を走行中、前記交点の存在が認識された場合には車線逸脱傾向を抑制し、前記交点が認識されない場合には車線逸脱傾向の抑制を制限することを特徴とする車両制御装置。
車両予測位置と車両現在位置とを結ぶ線分と、仮想車線境界線との交点が存在しない場合には、逸脱角が小さいため、運転者の意図した逸脱傾向である可能性が高い。この場合は車線逸脱防止制御を実行しないことで、運転者に与える違和感を軽減できる。また、車両予測位置と車両現在位置とを結ぶ線分と、仮想車線境界線との交点が存在する場合には、逸脱角が大きいため、運転者の意図しない逸脱傾向である可能性が高い。この場合は車線逸脱防止制御を実行することで、運転者に安心感を与えることができる。
(l) (k)に記載の車両制御装置において、
前記車両端部認識部は、前記自車両の左右2箇所を前記車両端部として認識し、
前記仮想車線境界線算出部は、左の仮想車線境界線は左の車線境界線に基づいて算出し、右の仮想車線境界線は右の車線境界線に基づいて算出することを特徴とする車両制御装置。
左の車線境界線を用いて左の仮想車線境界線を算出し、右の車線境界線を用いて右の仮想車線境界線を算出することで、車線境界線の形状に合致した仮想車線境界線を設定でき、逸脱傾向を精度よく判定できる。また、自車両が走行車線から逸脱するとき、左の車線境界線に対しては車両の左側から逸脱し、右の車線境界線に対しては車両の右側から逸脱するため、車両現在位置を左右2箇所に設定することで、逸脱傾向をより精度よく判定できる。
【0030】
(m) (l)に記載の車両制御装置において、
前記車両端部認識部は、前記自車両の左右2箇所を前記車両端部として認識し、
前記車両予測位置算出部は、左右それぞれの車両端部に対して車両予測位置を算出することを特徴とする車両制御装置。
自車両が走行車線から逸脱するとき、左の車線境界線に対しては車両の左前端が最初に逸脱し、右の車線境界線に対しては車両の右前端が最初に逸脱するため、車両現在位置を左右2箇所に設定することで、逸脱傾向をより精度よく判定できる。
(n) (m)に記載の車両制御装置において、
前記仮想車線境界線算出部は、前記車線境界線上の前記車両予測位置が最も近い点に対して前記仮想車線境界線を算出することを特徴とする車両制御装置。
この発明によれば、車線境界線に対して車両予測位置がどの程度逸脱するのか、つまり、車線境界線からの逸脱量を正確に算出できる。よって、車線逸脱防止制御における操作量を過不足なく求めることができ、車線逸脱防止制御の制御精度の向上を図ることができる。
(o) 曲線路を走行中の車両が走行車線の内側または外側の逸脱傾向を検出したときに車両に対してヨーモーメントおよび/または減速度を付与して逸脱傾向を抑制する車両制御方法であって、
前記内側への逸脱傾向があらかじめ設定された逸脱傾向のときにのみ前記ヨーモーメントおよび/または減速度を付与し、前記外側への逸脱傾向に対しては前記ヨーモーメントおよび/または減速度を常に付与し車線逸脱傾向を抑制することを特徴とする車両制御方法。
曲線路を走行している場合、運転者は曲線路の内側に沿って走行する傾向があるため、逸脱傾向が外側への逸脱傾向である場合には、運転者の意図しない逸脱傾向であることがほとんどであるが、逸脱傾向が内側への逸脱傾向である場合には、運転者の意図した逸脱傾向である可能性があり、これは逸脱傾向の状態から推定できる。よって、逸脱傾向が内側への逸脱傾向である場合には、逸脱傾向の状態に基づいて車線逸脱傾向の抑制または抑制の制限を行うことで、運転者の意図に反して車線逸脱防止制御が実行されるのを防ぎ、運転者に与える違和感を軽減または防止できる。
【符号の説明】
【0031】
20 逸脱傾向算出部
21 車線逸脱防止制御部(車両状態抑制制御部、車線逸脱抑制制御部)
22 車線境界線認識部
23 車両現在位置認識部
24 車両予測位置算出部
25 仮想車線境界線算出部
26 作動要否判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行している走行車線の車線境界線を認識する車線境界線認識部と、
あらかじめ設定された自車両内または車両近傍の所定位置である車両現在位置を認識する車両現在位置認識部と、
前記車両現在位置から所定量前方の位置である車両予測位置を算出する車両予測位置算出部と、
前記車両予測位置近傍における前記車線境界線の略接線である仮想車線境界線を算出する仮想車線境界線算出部と、
前記自車両と前記車線境界線との関係に基づいて車両走行状態を制御することで車両の走行状態を抑制する車両状態抑制制御を実行する車両状態抑制制御部と、
前記仮想車線境界線と前記車両現在位置と前記車両予測位置との関係に基づいて前記車両状態抑制制御部の作動要否を判定する作動要否判定部と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記仮想車線境界線と前記車両現在位置とを結ぶ第1線と、前記仮想車線境界線と前記車両予測位置とを結ぶ第2線とを算出し、前記仮想車線境界線を基準としたときの前記第1線と前記第2線の方向性に関する符号を判定する符号判定部を備え、
前記車両状態抑制制御部は、前記車両状態抑制制御として、前記自車両が前記走行車線から逸脱する傾向である場合には、車両にヨーモーメントおよび/または減速度を付与することで自車両の逸脱を抑制する車線逸脱抑制制御部を備え、
前記作動要否判定部は、前記自車両が前記仮想車線境界線により区画された仮想車線上を走行中、前記第1線と前記第2線の符号が一致している場合には前記車線逸脱抑制制御部の作動が不要と判定し、前記符号が不一致である場合には作動が必要と判定することを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記車両予測位置と前記車両現在位置とを結ぶ線分を算出する線分算出部を備え、
前記作動要否判定部は、前記自車両が前記仮想車線境界線により区画された仮想車線上を走行中、前記線分と前記仮想車線境界線との交点が存在する場合には前記車両状態抑制制御部の作動が必要と判定することを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記車両現在位置認識部は、前記自車両の左右2箇所を前記車両現在位置として認識し、
前記仮想車線境界線算出部は、左の仮想車線境界線は左の車線境界線に基づいて算出し、右の仮想車線境界線は右の車線境界線に基づいて算出することを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
自車両の走行車線からの逸脱傾向を算出する逸脱傾向算出部と、
前記逸脱傾向算出部によって車両の走行車線からの逸脱傾向を検出したときに車両に対してヨーモーメントおよび/または減速度を付与して逸脱傾向を抑制する車線逸脱抑制制御部と、
を備え、
前記逸脱傾向算出部は、曲線路の外側または内側への逸脱傾向を算出し、
前記逸脱傾向抑制制御部は、算出された逸脱傾向が前記外側への逸脱傾向である場合には車線逸脱傾向を抑制し、算出された逸脱傾向が前記内側への逸脱傾向である場合には逸脱傾向の状態に基づいて車線逸脱傾向の抑制または抑制の制限をすることを特徴とする車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−195017(P2011−195017A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63843(P2010−63843)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】