説明

車両制御装置

【課題】車両制御装置において、駆動源の停止時における振動の発生を抑制することでドライバビリティを向上する。
【解決手段】エンジン11に動力伝達クラッチ13を介して変速機14を連結し、この変速機14に駆動輪16を連結し、エンジン停止許可条件が成立したかどうかを判定するエンジン停止判断部66と、エンジン停止許可条件が成立したときにエンジン11を自動停止可能なエンジン制御部(自動停止手段)67と、エンジン制御部67によりエンジン11を自動停止する前に動力伝達クラッチ13を開放するクラッチ制御部(クラッチ開放手段)68と、目標回転数とインプット回転数との偏差に基づいて変速フィードバック制御を実行すると共に動力伝達クラッチ13を開放した後の所定時間にわたって変速フィードバック制御手段の作動を禁止する変速機制御部(変速フィードバック制御手段、変速フィードバック制御禁止手段)69を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両制御装置において、車両における所定の運転条件下で、エンジンを自動的に停止してエコラン運転を可能とするものが各種提案されている。このエコラン運転では、燃料の供給を停止することから、燃費の向上を可能とすることができる。
【0003】
このようなエコラン運転を可能とする従来の技術としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された制動力回生装置は、回転トルクを発生する動力源と、この動力源に接続されて回転トルクの伝達を制御するクラッチ手段と、クラッチ手段に接続された変速手段と、変速手段に接続された車輪と、クラッチ手段に接続されてクラッチ手段の動力源側回転数とクラッチ手段の変速手段側回転数の高い方から回転トルクを取り出す回転数選択手段と、回転数選択手段に接続されて取り出された回転トルクが伝達される発電機とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−207243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の制動力回生装置にて、車両の走行中に所定のエンジン停止条件が成立したら、燃料供給を停止してエンジンを停止するが、このとき、エンジン側から車輪側に大きなショックが発生することから、エンジンを停止する前にクラッチ手段を開放(切断)する必要がある。ところが、エンジンの駆動中にクラッチ手段を開放すると、駆動伝達系に入力するトルクが急変することから、この駆動伝達系に振動が発生し、ドライバビリティが悪化してしまうという問題がある。そして、変速機がベルト式無段変速機の場合、変速比をフィードバック制御していることから、このとき、この変速比のフィードバック制御が駆動伝達系に発生した振動の長時間化を招いている。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、駆動源の停止時における振動の発生を抑制することでドライバビリティを向上する車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両制御装置は、車両に搭載される駆動源と、前記駆動源の駆動力を車輪に伝達する変速機を有する駆動力伝達系と、前記車両の運転状態に応じて設定された目標入力軸回転数と前記変速機に入力する実際の入力軸回転数との偏差に基づいて前記変速機の変速比を補正する変速フィードバック制御手段と、前記駆動源と前記駆動力伝達系との間に設けられるクラッチと、前記車両の運転状態に応じて前記駆動源を自動停止可能な自動停止手段と、前記自動停止手段により前記駆動源を自動停止する前に前記クラッチを開放するクラッチ開放手段と、前記駆動源の自動停止許可条件が成立したときに前記クラッチ開放手段により前記クラッチを開放した後の所定時間にわたって前記変速フィードバック制御手段の作動を禁止する変速フィードバック制御禁止手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記車両制御装置にて、前記所定時間は、前記クラッチ開放手段により前記クラッチを開放した後に発生する入力軸回転数の変動量に応じて設定されることが好ましい。
【0009】
上記車両制御装置にて、前記所定時間の経過中に、前記クラッチ開放手段により前記クラッチを開放した後に発生する入力軸回転数の変動量に応じて前記変速機の変速比を変更する変速フィードバック変更制御手段を設けることが好ましい。
【0010】
上記車両制御装置にて、前記変速フィードバック制御禁止手段は、前記変速機の実際の入力軸回転数に基づいて算出された入力軸回転数の変動量が予め設定された適正変動量以下となったら、前記変速フィードバック制御手段の作動の禁止を解除することが好ましい。
【0011】
上記車両制御装置にて、前記変速フィードバック制御禁止手段が前記変速フィードバック制御手段の作動の禁止を解除した後、前記自動停止手段が前記駆動源を自動停止することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両制御装置は、車両の運転状態に応じて駆動源を自動停止可能とすると共に、この駆動源を自動停止する前にクラッチを開放可能とし、この駆動源の自動停止許可条件が成立してクラッチを開放した後の所定時間にわたって目標入力軸回転数と実際の入力軸回転数との偏差に基づいて変速機の変速比を補正する変速フィードバック制御を禁止するので、駆動源の停止時における振動の発生を抑制することでドライバビリティを向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る車両制御装置を表す概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態1の車両制御装置を表す制御ブロック図である。
【図3】図3は、実施形態1の車両制御装置によるエンジン停止制御の処理の流れを表すフローチャートである。
【図4】図4は、実施形態1の車両制御装置によるエンジン停止制御時におけるタイムチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施形態2に係る車両制御装置によるエンジン停止制御の処理の流れを表すフローチャートである。
【図6】図6は、実施形態2の車両制御装置によるエンジン停止制御時におけるタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る車両制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0015】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係る車両制御装置を表す概略構成図、図2は、実施形態1の車両制御装置を表す制御ブロック図、図3は、実施形態1の車両制御装置によるエンジン停止制御の処理の流れを表すフローチャート、図4は、実施形態1の車両制御装置によるエンジン停止制御時におけるタイムチャートである。
【0016】
実施形態1の車両制御装置において、図1に示すように、車両10は、エンジン11と、トルクコンバータ12と、動力伝達クラッチ13と、変速機14と、減速・差動機構15と、駆動輪16とを搭載している。ここで、エンジン11が本発明の駆動源として機能し、変速機14及び減速・差動機構15が本発明の駆動力伝達系として機能する。
【0017】
エンジン11は、車両10の動力源であり、燃料の燃焼エネルギをクランクシャフト(出力軸)21の回転運動に変換して出力することができる。トルクコンバータ12は、オイル(作動流体)を介して動力を伝達する流体伝達装置であり、ポンプインペラ31とタービンランナ32を有している。ポンプインペラ31は、エンジン11のクランクシャフト21と接続されており、タービンランナ32は、動力伝達クラッチ13と連結軸33により連結されている。従って、エンジン11からポンプインペラ31に入力される回転は、作動流体を介してタービンランナ32に伝達され、連結軸33を介して動力伝達クラッチ13に入力される。
【0018】
動力伝達クラッチ13は、摩擦係合式のクラッチ装置であり、開放することでエンジン11と変速機14との動力伝達を遮断することができる。この動力伝達クラッチ13は、入力側係合部材41と出力側係合部材42を有している。入力側係合部材41は、連結軸33によりタービンランナ32と連結されており、出力側係合部材42は、変速機14と連結されている。また、この動力伝達クラッチ13は、油圧または電磁力などにより作動するアクチュエータにより入力側係合部材41と出力側係合部材42とが接近離反可能となっている。従って、動力伝達クラッチ13は、このアクチュエータが作用させるクラッチ圧(クラッチ係合圧)に応じて、完全係合状態、半係合状態、開放状態との間で切替わることができる。なお、アクチュエータは、半係合状態における動力伝達クラッチ13の係合度合い、即ち、スリップ量やスリップ率を制御可能となっている。
【0019】
変速機14は、ベルト式無段変速機であって、エンジン11と駆動輪16、具体的には、動力伝達クラッチ13と減速・差動機構15とを接続するものである。変速機14は、プライマリプーリ51とセカンダリプーリ52とベルト53と図示しない油圧制御装置を有している。プライマリプーリ51は、プライマリ固定シーブ51aとプライマリ可動シーブ51bとプライマリシャフト51cを有する。セカンダリプーリ52は、セカンダリ固定シーブ52aとセカンダリ可動シーブ52bとセカンダリシャフト52cを有している。そして、プライマリ固定シーブ51aとプライマリ可動シーブ51bとの間に形成された略V字形状のプライマリ溝と、セカンダリ固定シーブ52aとセカンダリ可動シーブ52bとの間に形成された略V字形状のセカンダリ溝との間に、無端のベルト53が掛け回されている。変速機14は、このベルト53を介して、プライマリプーリ51からセカンダリプーリ52に動力が伝達される。
【0020】
油圧制御装置は、プライマリプーリ51及びセカンダリプーリ52に供給する油圧を制御することで、変速機14の変速比を制御可能となっている。ここで、変速比は、入力軸であるプライマリシャフト51cの回転速度を、出力軸であるセカンダリシャフト52cの回転速度で除算した値である。つまり、変速比は、プライマリシャフト51cとセカンダリシャフト52cとの回転速度比に相当する。従って、油圧制御装置は、供給油圧を調節し、プライマリ溝の溝幅とセカンダリ溝の溝幅を変化させることで、変速比を無段階に変化させることができる。
【0021】
減速・差動機構15は、変速機14におけるセカンダリシャフト52cと駆動輪16とを連結するものであり、ギヤの組合せによる減速機構及び差動機構を有している。従って、変速機14から入力される回転は、減速・差動機構15により減速され、且つ、左右の駆動輪16に分配される。
【0022】
車両10は、図2に示すように、電子制御ユニット(ECU)61を搭載しており、このECU61は、エンジン11、動力伝達クラッチ13、変速機14を制御することができる。ECU61は、ドライバによるエンジン11の操作状態やこのエンジン11の運転状態に基づいて、インジェクタによる燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火プラグによる点火時期などを制御することができる。
【0023】
また、ECU61は、車両10を制御することで、減速エコラン制御やフリーラン制御(以下、エコラン制御)を実行することができる。このエコラン制御は、動力伝達クラッチ13を開放してエンジン11と変速機14との動力伝達を遮断し、その後、エンジン11を停止させた状態で車両10を惰性走行させるものである。このエコラン制御は、エンジン11における燃料消費が停止することで、燃費の向上を図ることができる。
【0024】
即ち、ECU61は、車両10の走行中に、エンジン自動停止条件(例えば、ドライバによるアクセルペダルが所定時間踏込まれていないなど)が成立すると、動力伝達クラッチ13を開放してエンジン11を自動停止する。また、ECU61は、エンジン11が自動停止した車両10の走行中に、エンジン自動始動条件(例えば、ドライバによるアクセルペダルの踏込みなど)が成立すると、動力伝達クラッチ13を接続してエンジン11を自動始動する。ECU61がエンジン11を自動停止するときには、エンジン11への燃料供給と点火を停止する。
【0025】
具体的に説明すると、ECU61は、ブレーキセンサ62、アクセル操作量センサ63、車速センサ64、勾配センサ65が接続されている。ブレーキセンサ62は、ブレーキペダルに対する操作量やブレーキ操作の有無を検出することができる。ブレーキペダルに対する操作量は、例えば、ブレーキペダルのペダルストロークやブレーキペダルに入力される踏力などである。また、ブレーキ操作の有無は、例えば、スイッチによって検出される。アクセル操作量センサ63は、アクセルペダルに対する操作量、例えば、アクセル開度を検出することができる。車速センサ64は、車両10の走行速度を検出することができ、また、各車輪の回転速度に基づいて車速を検出する。
【0026】
勾配センサ65は、車両10が走行している路面の勾配を検出することができる。この勾配センサ65は、例えば、車両10の前後方向の傾きに基づいて、車両10が走行する道路の表面の勾配を検出または推定する。ECU61は、各センサ62,63,64,65の検出結果を示す信号が入力される。
【0027】
また、ECU61は、エンジン停止判断部66を有している。このエンジン停止判断部66は、ブレーキセンサ62、アクセル操作量センサ63、車速センサ64、勾配センサ65のそれぞれの検出結果に基づいてエンジン11を停止するか否かを判断する。即ち、エンジン停止判断部66は、例えば、ブレーキペダルが踏み込まれている条件、アクセル開度が0である条件、車速が所定車速以下で走行している条件、路面の勾配が所定範囲内である条件を含むエンジン停止許可条件を有し、この全ての条件が成立すると、エンジン11を停止してエコラン制御を実行すると判断する。
【0028】
ECU61は、エンジン11を制御するエンジン制御部67、動力伝達クラッチ13を制御するクラッチ制御部68、変速機14を制御する変速機制御部69を有している。ここで、エンジン制御部67は、本発明の自動停止手段として機能し、クラッチ制御部68は、本発明のクラッチ開放手段として機能し、変速機制御部69は、本発明の変速フィードバック制御手段及び変速フィードバック制御禁止手段として機能する。
【0029】
エンジン制御部67は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止しないと判断した場合、目標トルクに基づいてエンジン制御量を決定し、決定したエンジン制御量に基づいてエンジン11を制御する。このエンジン制御量は、例えば、燃料の噴射制御に係る制御量や点火制御に係る制御量である。また、クラッチ制御部68は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止しないと判断した場合、目標クラッチ油圧に基づいて動力伝達クラッチ13を制御する。
【0030】
また、変速機制御部69は、目標回転数に基づいて変速機制御量を決定し、決定した変速機制御量に基づいて無段変速機14を制御する。変速機制御量は、例えば、変速比や変速比の変化速度(変速速度)を実現するための油圧制御量である。この場合、ECU61は、インプット回転数センサ71が接続されている。インプット回転数センサ71は、動力伝達クラッチ13から変速機14のプライマリシャフト51cに入力する回転数(実際の入力軸回転数)、つまり、インプット回転数を検出する。そして、変速機制御部69は、車両10の運転状態に基づいて設定された目標回転数と、インプット回転数センサ71が検出したプライマリシャフト51cに入力する回転数(インプット回転数)との偏差に基づいて変速機制御量としての変速比を補正、即ち、変速フィードバック制御を実行する。
【0031】
また、エンジン制御部67は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断した場合、目標トルクに拘わらずエンジン制御量を0とし、燃料噴射及び点火を停止するようにエンジン11を制御する。クラッチ制御部68は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断した場合、エンジン11を停止するための目標クラッチ油圧に基づいて動力伝達クラッチ13を制御する。即ち、クラッチ制御部68は、動力伝達クラッチ13のクラッチ圧が所定の割合で減少するように目標クラッチ油圧を設定し、動力伝達クラッチ13を制御する。
【0032】
ところで、車両10の走行中にエンジン停止許可条件が成立したら、動力伝達クラッチ13を開放してからエンジン11を停止するが、このとき、エンジン11の駆動中に動力伝達クラッチ13を開放すると、エンジン11から変速機14側に入力するトルクが急変することから、この変速機14の入力軸、つまり、プライマリプーリ51のプライマリシャフト51cに振動が発生することがある。そして、変速機14がベルト式無段変速機であって、変速機制御部69が変速比をフィードバック制御していることから、このとき、この変速比のフィードバック制御が変速機14で発生した振動の長時間化を招いている。
【0033】
そこで、実施形態1では、ECU61におけるクラッチ制御部68は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断したとき、エンジン制御部67がエンジン11を自動停止する前に動力伝達クラッチ13を開放し、変速機制御部69は、この動力伝達クラッチ13を開放した後の所定時間にわたって変速フィードバック制御の実行を禁止する。
【0034】
ここで、所定時間は、クラッチ制御部68により動力伝達クラッチ13を開放した後に発生するインプット回転数の変動量に応じて設定される。即ち、変速機制御部69は、変速機14における実際のインプット回転数に基づいて算出された回転数変動量が予め設定された適正変動量以下となったら、変速フィードバック制御の実行の禁止を解除する。そして、エンジン制御部67は、変速フィードバック制御の実行の禁止が解除された後、エンジン11を自動停止する。
【0035】
また、インプット回転数における適正変動量とは、プライマリシャフト51cの回転変動がドライバビリティに悪影響を与えない領域である。
【0036】
以下、実施形態1の車両制御装置によるエンジン停止制御について、図3のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0037】
実施形態1の車両制御装置において、図3に示すように、ステップS11にて、エンジン停止判断部66は、走行する車両10にて、エンジン停止許可条件が成立したかどうかを判定する。ここで、エンジン停止許可条件が成立していないと判定されたら、ステップS18に移行し、エンジン制御部67とクラッチ制御部68と変速機制御部69は、エンジン11と動力伝達クラッチ1と変速機14を通常通りに制御する。
【0038】
一方、ステップS11にて、エンジン停止許可条件が成立したと判定されたら、ドライバによりブレーキペダルが踏み込まれているかどうかを判定する。ここで、ブレーキペダルが踏み込まれていないと判定されたら、ステップS18に移行して上述の処理を行う。一方、ブレーキペダルが踏み込まれていると判定されたら、ステップS13にて、クラッチ制御部68は、エンジン11を停止するための目標クラッチ油圧に基づいて動力伝達クラッチ13を制御する。即ち、クラッチ制御部68は、動力伝達クラッチ13のクラッチ圧が減少するように目標クラッチ油圧を設定し、動力伝達クラッチ13を開放する。
【0039】
そして、動力伝達クラッチ13が開放されたら、ステップS14にて、プライマリシャフト51cの回転数、つまり、インプット回転数Niが変動しているかどうかを判定する。このインプット回転数Niが変動しているかどうかの判定は、インプット回転数Niに基づいて算出された回転数変動量が適正変動量より大きいかどうかで行う。ここで、インプット回転数Niが変動していないと判定されたら、ステップS18に移行して上述の処理を行う。
【0040】
一方、インプット回転数Niが変動していると判定されたら、ステップS15にて、変速機制御部69は、変速機14の変速フィードバック制御の実行を禁止する。そして、ステップS16にて、プライマリシャフト51cの回転数、つまり、インプット回転数Niの変動が終了したかどうかを判定する。このインプット回転数Niの変動が終了したかどうかの判定は、インプット回転数Niに基づいて算出された回転数変動量が適正変動量以下かどうかで行う。ここで、インプット回転数Niの変動が終了したと判定されたら、ステップS17にて、変速機制御部69は、変速機14の変速フィードバック制御の実行の禁止を解除、つまり、変速機14の変速フィードバック制御を再開する。その後、エンジン制御部67は、エンジン11を停止する。従って、エンジン停止許可条件が成立したら、動力伝達クラッチ13が開放された後、インプット回転数Niの変動が終了するまで変速機14の変速フィードバック制御を禁止することから、その後に適正にエンジン11が停止することとなり、変速機14の振動が抑制される。
【0041】
ここで、実施形態1の車両制御装置によるエンジン停止制御時におけるエンジン運転状態について、図4のタイムチャートを用いて詳細に説明する。ここで、クラッチ圧はP、インプット回転数はNi、ソレノイドDuty比(変速比)はγ、車両加速度はAである。また、実線は実施形態1、点線は従来を表している。
【0042】
実施形態1の車両制御装置では、時間t1にて、エンジン停止許可条件が成立したら、動力伝達クラッチ13のクラッチ圧Pが減少するように開放する。すると、時間t2にて、動力伝達クラッチ13のクラッチ圧Pが0まで開放され、ここで、変速機14のプライマリシャフト51cの回転数、つまり、インプット回転数Niが変動を開始し、車両加速度Aも急激に変動する。このとき、変速機14の変速フィードバック制御が禁止、つまり、変速比γの変更が禁止される。そのため、短時間でインプット回転数Niの変動が収束され、所定時間が経過した時間t3にて、インプット回転数Niの変動が終了すると、ここで、エンジン11が停止する。
【0043】
一方、従来の車両制御装置では、時間t1にて、エンジン停止許可条件が成立したら、動力伝達クラッチ13のクラッチ圧Pが開放するため、ここで、インプット回転数Niが変動し、車両加速度Aも変動する。このとき、変速機14の変速フィードバック制御が継続して行われる。そのため、インプット回転数Niの変動が増幅されることから、短時間でインプット回転数Niの変動が収束せず、所定時間が経過した時間t3では、エンジン11を停止することができない。
【0044】
このように実施形態1の車両制御装置にあっては、車両10に搭載されたエンジン11にトルクコンバータ12及び動力伝達クラッチ13を介して変速機14を連結し、この変速機14に減速・差動機構15を介して駆動輪16を連結し、エンジン停止許可条件が成立したかどうかを判定するエンジン停止判断部66と、エンジン停止許可条件が成立したときにエンジン11を自動停止可能なエンジン制御部(自動停止手段)67と、エンジン制御部67によりエンジン11を自動停止する前に動力伝達クラッチ13を開放するクラッチ制御部(クラッチ開放手段)68と、目標回転数とインプット回転数との偏差に基づいて変速フィードバック制御を実行すると共に動力伝達クラッチ13を開放した後の所定時間にわたって変速フィードバック制御の作動を禁止する変速機制御部(変速フィードバック制御手段、変速フィードバック制御禁止手段)69を設けている。
【0045】
従って、エンジン停止許可条件が成立したとき、クラッチ制御部68が動力伝達クラッチ13を開放した後、変速機制御部69は所定時間にわたって変速フィードバック制御の作動を禁止し、この所定時間が経過したら、エンジン制御部67はエンジン11を自動停止することとなり、エンジン11の停止時における振動の発生を抑制することで、ドライバビリティを向上することができる。
【0046】
また、実施形態1の車両制御装置では、変速フィードバック制御の実行を禁止する所定時間は、クラッチ制御部68により動力伝達クラッチ13を開放した後に発生するインプット回転数の変動量に応じて設定される。従って、クラッチ制御部68が動力伝達クラッチ13を開放して所定時間が経過すると、インプット回転数の変動が収束することとなり、このときにエンジン制御部67がエンジン11を適正に自動停止することができ、ドライバビリティを向上することができる。
【0047】
また、実施形態1の車両制御装置では、変速機制御部69は、変速機14の実際のインプット回転数(プライマリシャフト51cの回転数)に基づいて算出された回転数の変動量が予め設定された適正変動量以下となったら、変速フィードバック制御の実行の禁止を解除する。従って、変速フィードバック制御の実行を禁止した後、インプット回転数に応じた変動を常時検出することで、エンジン11を適正に自動停止することができる。
【0048】
また、実施形態1の車両制御装置では、変速機制御部69が変速フィードバック制御の実行の禁止を解除した後、エンジン制御部67がエンジン11を自動停止する。従って、インプット回転数の変動が収束してから変速フィードバック制御を再開することで、エンジン11を適正に自動停止して効率的なエコラン制御を可能とすることができる。
【0049】
なお、この実施形態1にて、変速機制御部69は、変速機14の実際のインプット回転数の変動量が適正変動量以下となったら、変速フィードバック制御の実行の禁止を解除するようにしたが、この方法に限定されるものではない。例えば、所定時間を計測するタイマを用いて行ってもよい。即ち、動力伝達クラッチ13を開放したときに、インプット回転数の変動量がどのくらいで収束するか、つまり、どのくらいの時間で適正変動量以下になるかを予め実験により求めておく。この場合、エンジン11の回転数など車両10の運転状態により収束時間が相違することから、運転状態と収束時間との関係を表す複数のマップを用意しておくことが望ましい。ここで、振動の収束時間を所定時間とし、この所定時間(収束時間)が経過したら、変速フィードバック制御の実行の禁止を解除すればよい。
【0050】
〔実施形態2〕
図5は、本発明の実施形態2に係る車両制御装置によるエンジン停止制御の処理の流れを表すフローチャート、図6は、実施形態2の車両制御装置によるエンジン停止制御時におけるタイムチャートである。なお、本実施例の車両制御装置の基本的な構成は、上述した実施形態1とほぼ同様の構成であり、図1及び図2を用いて説明すると共に、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
実施形態2の車両制御装置において、図1及び図2に示すように、車両10は、エンジン11と、トルクコンバータ12と、動力伝達クラッチ13と、変速機14と、減速・差動機構15と、駆動輪16とを搭載している。また、車両10は、電子制御ユニット(ECU)61を搭載しており、このECU61は、エンジン11、動力伝達クラッチ13、変速機14を制御することができる。
【0052】
即ち、ECU61は、ブレーキセンサ62、アクセル操作量センサ63、車速センサ64、勾配センサ65、インプット回転数センサ71が接続されている。また、ECU61は、エンジン停止判断部66を有している。このエンジン停止判断部66は、ブレーキセンサ62、アクセル操作量センサ63、車速センサ64、勾配センサ65の検出結果に基づいてエンジン11を停止するか否かを判断する。即ち、エンジン停止判断部66は、エンジン停止許可条件が成立すると、エンジン11を停止してエコラン制御を実行すると判断する。
【0053】
また、ECU30は、エンジン制御部67とクラッチ制御部68と変速機制御部69を有している。ここで、変速機制御部69は、本発明の変速フィードバック制御手段、変速フィードバック制御禁止手段、変速フィードバック変更制御手段として機能する。エンジン制御部67は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断した場合、目標トルクに拘わらずエンジン制御量を0とし、燃料噴射及び点火を停止するようにエンジン11を制御する。クラッチ制御部68は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断した場合、エンジン11を停止するためのクラッチ圧が所定の割合で減少するように目標クラッチ油圧を設定し、動力伝達クラッチ13を制御する。
【0054】
そして、実施形態2では、ECU61におけるクラッチ制御部68は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断したとき、エンジン制御部67がエンジン11を自動停止する前に動力伝達クラッチ13を開放し、変速機制御部69は、この動力伝達クラッチ13を開放した後の所定時間にわたって変速フィードバック制御の実行を禁止する。
【0055】
具体的に、エンジン制御部67が動力伝達クラッチ13を開放し、変速機制御部69が変速フィードバック制御の実行を禁止した所定時間の経過中に、この変速機制御部69は、クラッチ制御部68により動力伝達クラッチ13を開放した後に発生する入力軸回転数の変動量に応じて変速機14の変速比を変更する。即ち、変速機制御部69は、通常の変速フィードバック制御に対して、位相がずれるように変速比を変更することで、入力軸回転数の変動を強制的に抑制させる。
【0056】
以下、実施形態2の車両制御装置によるエンジン停止制御について、図5のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0057】
実施形態2の車両制御装置において、図5に示すように、ステップS21にて、エンジン停止判断部66は、走行する車両10にて、エンジン停止許可条件が成立したかどうかを判定する。ここで、エンジン停止許可条件が成立していないと判定されたら、ステップS28に移行し、エンジン制御部67とクラッチ制御部68と変速機制御部69は、エンジン11と動力伝達クラッチ13と変速機14を通常通りに制御する。
【0058】
一方、ステップS21にて、エンジン停止許可条件が成立したと判定されたら、ステップS22にて、ドライバによりブレーキペダルが踏み込まれているかどうかを判定する。ここで、ブレーキペダルが踏み込まれていないと判定されたら、ステップS28に移行して上述の処理を行う。一方、ブレーキペダルが踏み込まれていると判定されたら、ステップS23にて、クラッチ制御部68は、エンジン11を停止するための目標クラッチ油圧に基づいて動力伝達クラッチ13を制御する。即ち、クラッチ制御部68は、動力伝達クラッチ13のクラッチ圧が減少するように目標クラッチ油圧を設定し、動力伝達クラッチ13を開放する。
【0059】
そして、動力伝達クラッチ13が開放されたら、ステップS24にて、プライマリシャフト51cの回転数、つまり、インプット回転数Niが変動しているかどうかを判定する。このインプット回転数Niが変動しているかどうかの判定は、インプット回転数Niに基づいて算出された回転数変動量が適正変動量より大きいかどうかで行う。ここで、インプット回転数Niが変動していないと判定されたら、ステップS28に移行して上述の処理を行う。
【0060】
一方、インプット回転数Niが変動していると判定されたら、ステップS25にて、変速機制御部69は、変速機14の変速フィードバック制御を変更する。即ち、変速機制御部69は、変速機14の変速フィードバック制御の実行を禁止し、発生しているインプット回転数Niの変動量に応じて変速機14の変速比を変更する。そして、ステップS26にて、プライマリシャフト51cの回転数、つまり、インプット回転数Niの変動が終了したかどうかを判定する。このインプット回転数Niの変動が終了したかどうかの判定は、インプット回転数Niに基づいて算出された回転数変動量が適正変動量以下かどうかで行う。ここで、インプット回転数Niの変動が終了したと判定されたら、ステップS27にて、変速機制御部69は、変速機14の変速フィードバック制御の実行の禁止を解除し、変速機14の変速フィードバック制御を再開する。その後、エンジン制御部67は、エンジン11を停止する。従って、エンジン停止許可条件が成立したら、動力伝達クラッチ13が開放された後、インプット回転数Niの変動が終了するまで変速機14の変速フィードバック制御を禁止し、発生するインプット回転数Niの変動量に応じて変速機14の変速比を変更することから、その後に適正にエンジン11が停止することとなり、変速機14の振動が抑制される。
【0061】
ここで、実施形態2の車両制御装置によるエンジン停止制御時におけるエンジン運転状態について、図6のタイムチャートを用いて詳細に説明する。ここで、クラッチ圧はP、インプット回転数はNi、ソレノイドDuty比(変速比)はγ、車両加速度はAである。また、実線は実施形態1、点線は従来を表している。
【0062】
実施形態2の車両制御装置では、時間t11にて、エンジン停止許可条件が成立したら、動力伝達クラッチ13のクラッチ圧Pが減少するように開放する。すると、時間t12にて、動力伝達クラッチ13のクラッチ圧Pが0まで開放され、ここで、変速機14のプライマリシャフト51cの回転数、つまり、インプット回転数Niが変動を開始し、車両加速度Aも急激に変動する。このとき、変速機14の変速フィードバック制御が禁止し、時間t13にて、変速比γがインプット回転数Niの変動に応じて変更される。即ち、通常の変速フィードバック制御における変速比γの変更に対して、その位相がずれる(逆になる)ように変速比γを変更する。そのため、短時間でインプット回転数Niの変動が収束され、所定時間が経過した時間t14にて、インプット回転数Niの変動が終了すると、ここで、エンジン11が停止する。
【0063】
一方、従来の車両制御装置では、時間t11にて、エンジン停止許可条件が成立したら、動力伝達クラッチ13のクラッチ圧Pが開放するため、ここで、インプット回転数Niが変動し、車両加速度Aも変動する。このとき、変速機14の変速フィードバック制御が継続して行われる。そのため、インプット回転数Niの変動が増幅されることから、短時間でインプット回転数Niの変動が収束せず、所定時間が経過した時間t13では、エンジン11を停止することができない。
【0064】
このように実施形態2の車両制御装置にあっては、クラッチ制御部68が動力伝達クラッチ13を開放した後、変速機制御部69は、所定時間にわたって変速フィードバック制御の作動を禁止すると共に、発生したインプット回転数の変動量に応じて変速機14の変速比を変更するようにしている。
【0065】
従って、エンジン停止許可条件が成立したとき、クラッチ制御部68が動力伝達クラッチ13を開放した後、変速機制御部69は所定時間にわたって変速フィードバック制御の作動を禁止し、インプット回転数の変動量に応じて変速機14の変速比を変更するため、この所定時間が経過する間にインプット回転数の変動が収束されることとなり、エンジン制御部67は早期にエンジン11を自動停止することがかまうとなり、エンジン11の停止時における振動の発生を抑制することで、ドライバビリティを向上することができる。
【符号の説明】
【0066】
11 エンジン(駆動源)
12 トルクコンバータ
13 動力伝達クラッチ
14 変速機(駆動力伝達系)
15 減速・差動機構(駆動力伝達系)
16 駆動輪
61 電子制御ユニット、ECU
62 ブレーキセンサ
63 アクセル操作量センサ
64 車速センサ
65 勾配センサ
66 エンジン停止判断部
67 エンジン制御部(自動停止手段)
68 クラッチ制御部(クラッチ開放手段)
69 変速機制御部(変速フィードバック制御手段、変速フィードバック制御禁止手段、変速フィードバック変更制御手段)
71 インプット回転数センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される駆動源と、
前記駆動源の駆動力を車輪に伝達する変速機を有する駆動力伝達系と、
前記車両の運転状態に応じて設定された目標入力軸回転数と前記変速機に入力する実際の入力軸回転数との偏差に基づいて前記変速機の変速比を補正する変速フィードバック制御手段と、
前記駆動源と前記駆動力伝達系との間に設けられるクラッチと、
前記車両の運転状態に応じて前記駆動源を自動停止可能な自動停止手段と、
前記自動停止手段により前記駆動源を自動停止する前に前記クラッチを開放するクラッチ開放手段と、
前記駆動源の自動停止許可条件が成立したときに前記クラッチ開放手段により前記クラッチを開放した後の所定時間にわたって前記変速フィードバック制御手段の作動を禁止する変速フィードバック制御禁止手段と、
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記所定時間は、前記クラッチ開放手段により前記クラッチを開放した後に発生する入力軸回転数の変動量に応じて設定されることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記所定時間の経過中に、前記クラッチ開放手段により前記クラッチを開放した後に発生する入力軸回転数の変動量に応じて前記変速機の変速比を変更する変速フィードバック変更制御手段を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記変速フィードバック制御禁止手段は、前記変速機の実際の入力軸回転数に基づいて算出された入力軸回転数の変動量が予め設定された適正変動量以下となったら、前記変速フィードバック制御手段の作動の禁止を解除することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記変速フィードバック制御禁止手段が前記変速フィードバック制御手段の作動の禁止を解除した後、前記自動停止手段が前記駆動源を自動停止することを特徴とする請求項4に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−220010(P2012−220010A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90082(P2011−90082)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】