説明

車両用の電源装置

【課題】分割して製作している第1のケースと第2のケースを、クラッシュの衝撃で確実に分離して安全性を向上しながら、搭載するときにはしっかりと連結する。
【解決手段】車両用の電源装置は、ケース1を第1のケース1Aと第2のケース1Bに分割して、ケース1内に車両を走行させるモーターを駆動する電池を収納しており、分割された第1のケース1Aと第2のケース1Bをクラッシュの衝撃で分離されるように連結している。さらに、電源装置は、第1のケース1Aと第2のケース1Bの一部、あるいは第1のケース1Aと第2のケース1Bに連結している連結材を積層し、積層部に所定の衝撃で破壊される衝撃破壊ピン9を貫通して第1のケース1Aと第2のケース1Bを連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載されて車両を走行させるモーターを駆動する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モーターで走行する電気自動車、あるいはモーターとエンジンの両方で走行するハイブリッドカー等の自動車は、電池をケースに収納している電源装置を搭載する。この電源装置は、モーターで自動車を走行させるので出力を大きくするために、多数の電池を直列に接続して出力電圧を高くしている。たとえば、自動車に搭載される電装用のバッテリの電圧は、ほとんど例外なく12Vであるが、走行用のモーターを駆動する電源装置の出力電圧は、一般的には200V以上と極めて高電圧である。
【0003】
現在市販されているハイブリッドカーは、モーター出力を数十kW、電源装置の出力電圧を200〜300Vの範囲としている。電源装置は、大出力に耐えるように設計されるので、万一、自動車の衝突事故等で破損して内部でショートすると、極めて大きな電流が流れて車両火災等の原因となる。このような弊害を防止するために、クラッシュするときに破壊される状態をコントロールする電源装置が開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−45392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この公報に記載される電源装置は、ケースを前方の電池収納部と後方の衝撃吸収部に分割している。後ろから追突されるときには、衝撃吸収部を前方の電池収納部の下に押し込む状態として、衝撃を吸収しながらクラッシュする。すなわち、衝撃吸収部を電池収納部の下に押し込んで、電池収納部を水平な姿勢から垂直方向に傾動させて、安全性を確保しながらクラッシュさせる。
【0005】
以上の電源装置は、ケースを複数に分割して製造して、クラッシュするときの衝撃を吸収する。電池収納部と衝撃吸収部は、別々に分離して車両に搭載して、電池収納部を傾動させ、衝撃吸収部を前方に移動できる。しかしながら、電池収納部と衝撃吸収部を別々に分離する構造は、車両への搭載に手間がかかる。たとえば、衝撃吸収部に送風機を内蔵させる構造では、衝撃吸収部の送風機の空気ダクトを電池収納部に連結する必要があるからである。電池収納部と衝撃吸収部を連結する構造は、車両への搭載を簡単にする。ただ、電池収納部と衝撃吸収部を、たとえば、上蓋である1枚のカバープレートに連結すると、クラッシュの衝撃で確実に分離して、しかも車両に組み付けのときと、車両に搭載する状態で十分な強度を保障するのが難しい。すなわち、クラッシュのときには電池収納部と衝撃吸収部を連結部で確実に分離するが、車両がクラッシュしない状態では連結部が分離しないようにするのが難しい。
【0006】
本発明は、この弊害を解消することを目的に開発されたもので、本発明の大切な目的は、分割して製作している第1のケースと第2のケースを、クラッシュの衝撃では確実に分離して安全性を向上しながら、搭載するときにはしっかりと連結できる車両用の電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用の電源装置は、ケース1を第1のケース1Aと第2のケース1Bに分割して、ケース1内に車両を走行させるモーターを駆動する電池を収納しており、分割された第1のケース1Aと第2のケース1Bをクラッシュの衝撃で分離されるように連結している。さらに、電源装置は、第1のケース1Aと第2のケース1Bの一部、あるいは第1のケース1Aと第2のケース1Bに連結している連結材を積層し、積層部に所定の衝撃で破壊される衝撃破壊ピン9を貫通して第1のケース1Aと第2のケース1Bを連結している。
【0008】
本発明の車両用の電源装置は、衝撃破壊ピン9を、クラッシュの衝撃で破壊されるリベットとすることができる。
【0009】
本発明の車両用の電源装置は、クラッシュの衝撃が加わると、第1のケース1Aが傾動して第1のケース1Aの下に第2のケース1Bが移動するように第1のケース1Aと第2のケース1Bを連結することができる。
【0010】
本発明の車両用の電源装置は、第1のケース1Aの前縁に、車両に傾動できるように連結する蝶番を備え、この蝶番を介して第1のケース1Aを車両に連結することができる。
【0011】
本発明の車両用の電源装置は、車両に固定される固定プレート15を備えて、この固定プレート15と第1のケース1Aの後部を、第1のケース1Aの最大傾動角を制限するストッパ紐16で連結することができる。この電源装置は、クラッシュの衝撃で第1のケース1Aが傾動すると、このストッパ紐16で傾動角を制限することができる。
【0012】
本発明の車両用の電源装置は、第1のケース1Aと第2のケース1Bが金属板のベースプレート2を備えて、第1のケース1Aのベースプレート2である前ベースプレート2Aと、第2のケース1Bのベースプレート2である後ベースプレート2Bを衝撃破壊ピン9で連結することができる。
【0013】
本発明の車両用の電源装置は、第1のケース1Aと第2のケース1Bが金属板のベースプレート2を備えて、第1のケース1Aのベースプレート2である前ベースプレート2Aと、第2のケース1Bのベースプレート2である後ベースプレート2Bと、車両に固定される固定プレート15とを衝撃破壊ピン9で連結して、固定プレート15を下に、第1のケース1Aの前ベースプレート2Aを上に、前ベースプレート2Aと固定プレート15の間に後ベースプレート2Bを配設することができる。
【0014】
本発明の車両用の電源装置は、第1のケース1Aが、底板である前ベースプレート2Aと、上蓋である前カバープレート4Aとを備えて、前カバープレート4Aを前ベースプレート2Aに固定することができる。
【0015】
本発明の車両用の電源装置は、第2のケース1Bが、底板である後ベースプレート2Bと、上蓋である後カバープレート4Bとを備えて、後ベースプレート2Bと後カバープレート4Bをワイヤー33を介して連結することができる。
【0016】
本発明の車両用の電源装置は、第1のケース1Aが、底板である前ベースプレート2Aと、この前ベースプレート2Aの上に配設しているプラスチック製の絶縁ボックス3とを備えて、この絶縁ボックス3に電池を収納するホルダーケース5を配設することができる。
【0017】
本発明の車両用の電源装置は、ケース1が、第1のケース1Aの上蓋である前カバープレート4Aと、第2のケース1Bの上蓋である後カバープレート4Bとを備えて、前カバープレート4Aと後カバープレート4Bを、境界で連結パッキン35を介して積層して防水構造に連結することができる。さらに、この電源装置は、下面に積層されるカバープレート4の連結縁に沿って境界溝36を設けて、境界溝36に連結パッキン35を配設して、この境界溝36の上面に積層されるカバープレート4の連結縁を案内して第1のケース1Aと第2のケース1Bを連結することができる。
【0018】
本発明の車両用の電源装置は、第1のケース1Aと第2のケース1Bに連結しているワイヤーハーネス29を、第1のケース1Aを15度以上傾動させる姿勢で、第1のケース1Aと第2のケース1Bを連結する長さとすることができる。
【0019】
本発明の車両用の電源装置は、第1のケース1Aと第2のケース1Bを積層して連結する積層部を傾斜面として、傾斜面の積層部において、第1のケース1Aと第2のケース1Bの間に摩擦抵抗軽減シート24を挟着することができる。
【0020】
さらに、本発明の車両用の電源装置は、ケース1の上面に吊り下げ部25を設けることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の車両用の電源装置は、第1のケースと第2のケースをクラッシュの衝撃で確実に分離して、安全性を向上しながら、車両への組み付けや搭載する状態では、第1のケースと第2のケースを十分な強度で連結できる特長がある。それは、本発明の電源装置が、第1のケースと第2のケースの積層部を衝撃で破壊される衝撃破壊ピンで連結しているからである。衝撃破壊ピンは第1のケースと第2のケースの積層部を貫通して連結する。この連結構造は、クラッシュの衝撃が加わると衝撃破壊ピンを切断し、あるいは頭の部分が変形して第1のケースと第2のケースに貫通させている貫通孔から抜けて、第1のケースと第2のケースを分離する。この衝撃破壊ピンは、クラッシュ等の衝撃が加えられない状態では破壊されず、第1のケースと第2のケースをしっかりと連結する。このため、衝撃破壊ピンで第1のケースと第2のケースを連結しているケースは、簡単かつ容易に、しかも能率よく車両に搭載できる。また、この連結構造は、車両に搭載される状態では車両の振動等で第1のケースと第2のケースが分離することがなく、クラッシュされるまでしっかりと連結できる特長がある。また、衝撃破壊ピンによる連結構造は、接着材のように経時的に劣化することがなく、長期間にわたってしっかりと第1のケースと第2のケースを連結する特長もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための車両用の電源装置を例示するものであって、本発明は電源装置を以下のものに特定しない。
【0023】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0024】
図1に示す車両は、フロア30に電源装置を搭載している。車両のフロア30に搭載される電源装置は、たとえば、図1の実線で示すように後部座席の後方に設けている荷台32に、あるいは鎖線で示すように後部座席と前部座席との間のフロア30に搭載される。電源装置は、ケース1の上面を車両のフロアパネル31と同一平面となるように搭載して、ケース1の上面に固定しているカバープレート4を車両のフロアパネル31の一部に使用できる。このケース1は、カバープレート4を、フロアパネル31の耐荷重を実現する金属板とする。カバープレート4が荷台32の積載量に相当する耐荷重を有する電源装置は、カバープレート4の上を、フロアパネル31に匹敵する強度の耐荷重床で補強する必要はない。この電源装置は、フロアパネル31に凹部や開口部を設け、凹部や開口部に電源装置を搭載して、その上面をフロアパネル31に匹敵する耐荷重床にできる。
【0025】
車両のフロア30に搭載される電源装置は、後方から追突されてクラッシュする。このとき、ケース1を複数のブロックに分割して安全性を向上できる。フロア30に搭載される電源装置に限らず、車両に搭載される全ての電源装置はケース1を複数のブロックに分離するようにクラッシュさせて安全性を向上できる。
【0026】
以下、車両のフロア30に搭載されて、クラッシュのときに前後に分割される電源装置の具体例を示す。ただし、本発明の車両用の電源装置は、必ずしも以下に示すように分割する必要はない。車両に搭載される姿勢や位置により、クラッシュのときに最適に分割される状態が異なるからである。
【0027】
図2は、電源装置を車両の前後方向に切断した断面図である。この電源装置の上蓋のカバープレート4を外した斜視図を図3に示し、カバープレート4で閉塞した斜視図を図4に示している。これらの図に示すように、電源装置は、ケース1に、電池と、この電池を冷却する送風機8と、電池の充放電を制御する制御回路(図示せず)を内蔵している。ケース1は、第1のケース1Aと第2のケース1Bに分割して、第1のケース1Aと第2のケース1Bを境界部分で連結している。
【0028】
第1のケース1Aと第2のケース1Bは、車両のシャーシーやフロアパネルに固定される図5に示す金属製のベースプレート2と、このベースプレート2の上に固定している上方開口の図6に示すプラスチック製の絶縁ボックス3と、絶縁ボックス3の上方開口部を閉塞するように固定している図7の金属製のカバープレート4とを備える。
【0029】
図2と図3の電源装置は、ケース1を第1のケース1Aと第2のケース1Bに分割して、第1のケース1Aを電池収納部6、第2のケース1Bを電池収納部6の後方に配設される衝撃吸収部7としている。第1のケース1Aである電池収納部6には電池を収納する。第2のケース1Bである衝撃吸収部7には電池を冷却する送風機8を収納する。ただし、本発明の電源装置は、第1のケースを衝撃吸収部として第2のケースを電池収納部とすることもできる。
【0030】
図2と図3のケース1は、電池収納部6である第1のケース1Aを、衝撃吸収部7である第2のケース1Bよりも車両の前方に位置する姿勢、いいかえると第2のケース1Bを第1のケース1Aの後方とする姿勢で車両に搭載される。前方に位置する第1のケース1Aは電池収納部6であるから、図8に示すように、ホルダーケース5を介して複数本の電池モジュール21を収納する。複数の電池モジュール21はホルダーケース5に収納され、このホルダーケース5が電池収納部6に配設される。ケース1の後方に位置する第2のケース1Bは、ホルダーケース5の電池モジュール21を強制冷却する送風機8を収納する。送風機8は、ホルダーケース5に連結されて、ホルダーケース5に冷却空気を強制送風して電池モジュール21を冷却する。
【0031】
さらに電源装置のケース1は、第1のケース1Aと第2のケース1Bに分割するために、ケース1を構成するベースプレート2と絶縁ボックス3とカバープレート4を、第1のケース1Aと第2のケース1Bの境界部分で前後に分割して連結している。ケース1を前後に分割するのは、追突事故のときに、第1のケース1Aの下に第2のケース1Bを押し込むようにして安全にクラッシュさせるためである。
【0032】
第1のケース1Aは、分割されたベースプレート2と絶縁ボックス3とカバープレート4を備える。第1のケース1Aと第2のケース1Bは、ベースプレート2を金属板で分離して製作し、これを連結してひとつのベースプレート2としている。図2に示すケース1は、第1のケース1Aのベースプレート2である前ベースプレート2Aと、第2のケース1Bのベースプレート2である後ベースプレート2Bを衝撃破壊ピン9で連結して、クラッシュのときにベースプレート2を分離する構造としている。衝撃破壊ピン9はアルミニウム製のリベットである。リベットはクラッシュの衝撃で破壊されて、第1のケース1Aと第2のケース1Bを確実に分離する。ただ、衝撃破壊ピンは、アルミニウム以外の金属、たとえば銅等の金属で製作でき、また硬質のプラスチック等で製作することもできる。プラスチック製のリベットは、端部を加熱押圧して変形させる。さらに、衝撃破壊ピンには、クラッシュの衝撃で破断されるネジ等も使用できる。
【0033】
絶縁ボックス3は、第1のケース1Aと第2のケース1Bでプラスチックで別々に成形して、境界で接着して連結している。カバープレート4は、第1のケース1Aと第2のケース1Bで別々に製作して、その境界でラップして防水構造に連結している。第1のケース1Aの前カバープレート4Aは、その前側と両側を部分的に下方に折曲して折曲部4aを設け、この折曲部4aを前ベースプレート2Aにネジ止して連結している。後カバープレート4Bは、第2のボックス3Bと後ベースプレート2Bのいずれかまたは両方に連結される。
【0034】
図2に示すケース1は、前ベースプレート2Aと後ベースプレート2Bをクラッシュの衝撃で分離して、第1のケース1Aと第2のケース1Bに分離する。絶縁ボックス3はベースプレート2に比較して強度が弱く、また境界を接着して連結しているので、ベースプレート2がクラッシュして分離されると、ベースプレート2と共に分離される。カバープレート4は、前カバープレート4Aと後カバープレート4Bを直接には固定しないので、クラッシュの衝撃では、ベースプレート2と絶縁ボックス3と一緒に前後に分離される。
【0035】
クラッシュの衝撃で分離されるベースプレート2を図5に示す。このベースプレート2は、前後に分割されて、境界部分より前方を第1のケース1Aの前ベースプレート2A、後方を第2のケース1Bの後ベースプレート2Bとしている。前ベースプレート2Aと後ベースプレート2Bは、境界部分を、車両がクラッシュするときの衝撃で破断される衝撃破壊ピン9で連結している。
【0036】
さらに、前ベースプレート2Aは、車両の後方に向かって上り勾配の上面傾斜部2aを設けている。後ベースプレート2Bは、前ベースプレート2Aの上面傾斜部2aの下面に沿う下面傾斜部2bを設けている。前ベースプレート2Aと後ベースプレート2Bは、図9の拡大断面図に示すように、上面傾斜部2aを下面傾斜部2bに積層して、衝撃破壊ピン9で連結している。前ベースプレート2Aの上面傾斜部2aと、後ベースプレート2Bの下面傾斜部2bは、クラッシュの衝撃で変形しない強度が要求される。このため、厚い金属板で製作して、ベースプレート2の本体部に溶接して固定している。ベースプレート2の本体部は、上面傾斜部2aと下面傾斜部2bの金属板よりも薄い金属板をプレス加工して製作している。下面傾斜部2bは金属板を三角形の山形に成形して後ベースプレート2Bの本体部に固定している。
【0037】
衝撃破壊ピン9は、位置決プレート14を介して上面傾斜部2aと下面傾斜部2bを連結している。この構造のベースプレート2は、クラッシュの衝撃で衝撃破壊ピン9が切れると、上面傾斜部2aの下面を下面傾斜部2bが摺動しながら後ベースプレート2Bを前方に移動させる。前進する後ベースプレート2Bは、図10に示すように、下面傾斜部2bで上面傾斜部2aを押し上げ、前ベースプレート2Aの後端を押し上げて、その下方に押し込まれる。このため、後端が押し上げられる前ベースプレート2Aは、水平な姿勢から垂直姿勢となる方向に傾動される。後ベースプレート2Bは、垂直方向に傾動する前ベースプレート2Aの下に押し込まれる。
【0038】
第1のケース1Aの前ベースプレート2Aと、第2のケース1Bの後ベースプレート2Bを衝撃破壊ピン9で連結する連結部分を図5、及び図11ないし図20に示す。これ等の図に示すベースプレートは、両側部分の2カ所と、中間の3カ所を衝撃破壊ピン9で連結している。
【0039】
両側部分の連結部は、第1のケース1Aと第2のケース1Bを相対位置を調整しないで連結する位置決め部分である。この位置決め部分の積層部は、位置決プレートを介することなく、第1のケース1Aの前ベースプレート2Aと、第2のケース1Bの後ベースプレート2Bを積層して衝撃破壊ピン9で連結する。さらに、図のケース1は、位置決め部分の積層部に、車両に固定される固定プレート15も積層して衝撃破壊ピン9で連結している。したがって位置決め部分の積層部は、図12ないし図15に示すように、下から順番に、固定プレート15、後ベースプレート2B、前ベースプレート2Aを積層している。衝撃破壊ピン9は、固定プレート15と後ベースプレート2Bと前ベースプレート2Aを貫通して、クラッシュの衝撃で分離するように連結している。この構造は、第1のケース1Aと第2のケース1Bを連結する衝撃破壊ピン9を、ケース1を固定プレート15に連結する衝撃破壊ピン9に併用する。したがって、ケース1に固定プレート15を連結するために、専用の衝撃破壊ピン9を使用する必要がない。
【0040】
固定プレート15は、車両のシャーシーやフレーム等に、クラッシュの衝撃で外れない強度で連結される。したがって、固定プレート15は、クラッシュの衝撃で破壊されない厚い金属板で製作している。固定プレート15は、第1のケース1Aと第2のケース1Bの両側部分に衝撃破壊ピン9を介して連結している。
【0041】
さらに、固定プレート15は、図21に示すように、ストッパ紐16を介して第1のケース1Aの後部に連結している。ストッパ紐16は、クラッシュの衝撃で切れない可撓性のあるバンド、ワイヤー、チェーン等の紐体である。ストッパ紐16は、一端を固定プレート15に連結して、他端を第1のケース1Aの前ベースプレート2Aと前カバープレート4Aの連結部に連結している。ただし、ストッパ紐は、前ベースプレートと前カバープレートの何れかに連結することもできる。前ベースプレートと前カバープレートが一緒に傾動するからである。ストッパ紐16は、図21に示すように、衝撃を受けて傾動する第1のケース1Aの最大傾動角(α)を制限する。ストッパ紐16で制限される第1のケース1Aの最大傾動角(α)は、好ましくは60〜90度である。ただ、最大傾動角(α)は、45〜120度の範囲とすることもできる。ストッパ紐16で固定プレート15に連結された第1のケース1Aは、クラッシュの衝撃で第1のケース1Aが傾動するとき、第1のケース1Aが最大傾動角(α)よりも大きく傾動しないように停止させる。
【0042】
ケース1は、固定プレート15のみでなく、第1のケース1Aの前縁をクラッシュの衝撃で折曲される取付金具17で車両に固定される。図のケース1は、取付金具17を第1のケース1Aの前ベースプレート2Aの前縁に固定している。ただし、第1のケース1Aの前縁は、取付金具に代わって、蝶番で車両に固定することもできる。この構造は、第1のケースの前ベースプレートの前縁に蝶番を固定し、この蝶番を介してケースを車両に固定する。蝶番を介して車両に固定される第1のケースは、クラッシュの衝撃で衝撃破壊ピンが破壊されると、無理なく傾動できる。
【0043】
第1のケース1Aと第2のケース1Bは、位置決め部分に組付穴18を設けている。この組付穴18に位置決めピン(図示せず)を挿入し、第1のケース1Aと第2のケース1Bを位置決めし、この状態で第1のケース1Aの前ベースプレート2Aと第2のケース1Bの後ベースプレート2Bの貫通孔19に衝撃破壊ピン9を挿通して連結する。図のベースプレート2は、金属板をプレス加工して位置決め部分を成形している。このため、位置決め部分は加工精度を高くして、寸法や形状の誤差を少なくできる。正確に成形される部分は、位置決め部分として衝撃破壊ピン9で正確に連結している。
【0044】
中間の3カ所は、第1のケース1Aと第2のケース1Bの相対位置を調整できるように、連結部を位置調整部分として連結している。位置調整部分は、位置決プレート14を介して第1のケース1Aの前ベースプレート2Aと第2のケース1Bの後ベースプレート2Bを衝撃破壊ピン9で連結している。
【0045】
中間3カ所の位置調整部分は、位置決プレート14と衝撃破壊ピン9を介して第1のケース1Aと第2のケース1Bを連結している。位置調整部分の積層部は、前ベースプレート2Aの上面傾斜部2aと後ベースプレート2Bの下面傾斜部2bである。図20は、位置調整部分の断面図である。ただし、この図は、理解しやすいように、ネジ22と衝撃破壊ピン9の両方を通過するように切断した断面図である。この図に示すように、第1のケース1Aの前ベースプレート2Aは、衝撃破壊ピン9よりも破断強度が大きく、第2のケース1Bの後ベースプレート2Bを貫通しないネジ22と、このネジ22にねじ込んでいるナット23を介して位置決プレート14を連結している。位置決プレート14のネジ22を貫通させる貫通孔14aはバカ穴で、第1のケース1Aの前ベースプレート2Aに対して連結位置を調整できる構造としている。さらに、位置決プレート14を第2のケース1Bの後ベースプレート2Bに積層して、積層部に衝撃破壊ピン9を貫通させて、第1のケース1Aの前ベースプレート2Aと第2のケース1Bの後ベースプレート2Bを連結している。
【0046】
この図において、ネジ22は、第1のケース1Aの前ベースプレート2Aに、上面に突出するように溶接して固定している。ネジ22は、位置決プレート14を貫通するが、第1のケース1Aの前ベースプレート2Aと、第2のケース1Bの後ベースプレート2Bは貫通しない。ネジ22にねじ込むナット23が、第2のケース1Bの後ベースプレート2Bを挟着しないためである。この図の連結構造は、位置決プレート14と第2のケース1Bの後ベースプレート2Bの間に第1のケース1Aの前ベースプレート2Aを挟着している。前ベースプレート2Aは、衝撃破壊ピン9を挿通する貫通孔19aをバカ穴としている。第2のケース1Bの後ベースプレート2Bに対する第1のケース1Aの前ベースプレート2Aの相対位置を調整するためである。すなわち、この図に示すように、位置決プレート14に設けているネジ22を挿通するための貫通孔14a、第1のケース1Aの前ベースプレート2Aに衝撃破壊ピン9を挿通させるための貫通孔19aはバカ穴としている。ただし、位置決プレート14に衝撃破壊ピン9を挿通させるための貫通孔14bと、位置決プレート14と第2のケース1Bの後ベースプレート2Bに衝撃破壊ピン9を挿通するために設けている貫通孔19bはバカ穴ではなく、衝撃破壊ピン9の軸部の外径にほぼ等しい内径、いいかえると、衝撃破壊ピン9との間に遊びがなく、あるいは遊びの極めて少ない内径の位置決穴としている。バカ穴は、内径をここに挿通するネジ22や衝撃破壊ピン9の軸の外径位置決穴に比較して遊びが大きい穴である。したがって、バカ穴と位置決穴とは、挿通する軸との隙間が異なり、バカ穴は位置決穴よりも隙間を大きくして、連結位置を相対的に調整できるようにしている。
【0047】
図のケース1は、第1のケース1Aの前ベースプレート2Aと、第2のケース1Bの後ベースプレート2Bとを連結する傾斜面を位置調整部分としている。傾斜面は、強い衝撃で変形しない強靭な構造とするために、プレス成形して製作されるベースプレート2の本体部とは別の強い金属板で製作して、ベースプレート2の本体部に溶接して固定している。この構造のベースプレート2は、傾斜面の位置や形状の誤差が大きくなるので、傾斜面を位置調整部分として、位置決プレート14を介して連結することで、第1のケース1Aの前ベースプレート2Aと第2のケース1Bの後ベースプレート2Bをしっかりと確実に連結できる。
【0048】
さらに、図20のベースプレート2は、第1のケース1Aの前ベースプレート2Aと第2のケース1Bの後ベースプレート2Bとの間に、摩擦抵抗軽減シート24を挟着している。摩擦抵抗軽減シート24は、テフロン(登録商標)シート等の摩擦抵抗の小さいシートである。このベースプレート2は、衝撃を受けてクラッシュして衝撃破壊ピン9が破壊される状態で、第1のケース1Aの前ベースプレート2Aの下に、第2のケース1Bの後ベースプレート2Bをスムーズに摺動して移動できる特徴がある。
【0049】
図2の絶縁ボックス3は、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bに分割してプラスチックで成形している。第1のボックス3Aと第2のボックス3Bは、境界で連結してひとつの絶縁ボックス3としている。
【0050】
絶縁ボックス3を前後に分離した斜視図を図6に示す。この絶縁ボックス3は、境界部分より前方にあって第1のケース1Aとなる第1のボックス3Aと、後方にあって第2のケース1Bとなる第2のボックス3Bに分割して、プラスチックを成形して製作している。第1のボックス3Aと第2のボックス3Bに分離して別々に成形している絶縁ボックス3は、衝突の衝撃で前後に分離される。分離された第2のボックス3Bは後ベースプレート2Bと一緒に前方に移動し、第1のボックス3Aは前ベースプレート2Aと一緒に傾動する。
【0051】
第1のボックス3Aと第2のボックス3Bは、境界で連結して、ひとつの絶縁ボックス3として、ベースプレート2の上に固定している。第1のボックス3Aと第2のボックス3Bの連結部を、図9、図22及び図23に示す。これ等の図に示す絶縁ボックス3は、第1のボックス3Aの第2のボックス3Bとの連結部に沿って連結溝10を設けている。第2のボックス3Bは、第1のボックス3Aとの連結部に沿って連結溝10に挿入される連結凸条11を設けている。連結溝10は下方に開口され、連結凸条11は上方に突出するように設けている。この構造は、連結溝10に水が浸入することがない。
【0052】
連結溝10に連結凸条11を入れて、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bは境界で連結して、ひとつの絶縁ボックス3としている。連結溝10と連結凸条11は、連結溝10の内面と連結凸条11の表面との隙間に充填される接着剤13と連結具12で連結される。第1のボックス3Aと第2のボックス3Bは、境界に連続して連結溝10と連結凸条11を設けている。連結溝10と連結凸条11の間に接着剤13を充填して、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bの境界は連続して水密構造で連結して固定される。
【0053】
連結溝10と連結凸条11は、連結具12を入れることができる隙間を設けている。連結具12は、連結溝10と連結凸条11の隙間に入れられる溝形に成形している。この形状の連結具12は、弾性的に変形する鉄等の金属板をプレス加工して製作される。連結具12の斜視図を図24に、係止状態を図23の拡大断面図に示す。この連結具12は、連結溝10に挿入して第1のボックス3Aに固定される外側係止突起12Aを、外側に弾性的に突出して設けている。外側係止突起12Aは、U曲部の近傍で両側に突出して設けている。外側係止突起12Aは、連結溝10への挿入状態では係止されず、連結溝10からの引き抜き状態では、連結溝10の内面に抜けないように食い込んで係止する。したがって、外側係止突起12Aは、先端を尖鋭な形状としている。また、外側係止突起12Aは、挿入方向にのみ連結溝10の内面を摺動して移動できるように、連結溝10への挿入方向と逆方向である抜け方向、図23と図24において下方に向かって次第に突出するように傾斜している。
【0054】
さらに、連結具12は、連結凸条11を挿入して第2のボックス3Bを固定する内側係止突起12Bを内側に弾性的に突出して設けている。内側係止突起12Bは、溝部の開口部の近傍で対向して内側に突出して設けている。内側係止突起12Bは、連結凸条11を挿入する状態では係止されず、連結凸条11を引き抜きする状態では、連結凸条11の表面に抜けないように食い込んで係止する。したがって、内側係止突起12Bは、先端を尖鋭な形状とし、挿入方向にのみ連結凸条11の表面を摺動して移動できるように、連結凸条11の挿入方向と逆方向である抜け方向、図23と図24において上方に向かって次第に内側に突出するように傾斜している。
【0055】
第1のボックス3Aと第2のボックス3Bは、以下のように連結されて、ひとつの絶縁ボックス3となる。
(1) 連結溝10に接着剤13を充填する。接着剤13は未硬化のペースト状で連結溝10に状態される。
(2) 接着剤13が未硬化な状態で、連結溝10に連結具12を挿入する。連結具12は外側係止突起12Aを連結溝10の内面に摺動させて、連結溝10に挿入される。境界に沿って設けている長い連結溝10は、所定の間隔で複数の連結具12を挿入する。たとえば、長い連結溝10には、両端部と中間に連結具12を挿入する。連結溝10に入れられた連結具12は、外側係止突起12Aを連結溝10の内面を弾性的に押圧して、抜けないように連結溝10に固定される。
(3) 連結溝10に連結凸条11を入れる。このとき、連結凸条11は溝形の連結具12の内側にも挿入される。連結具12に挿入される連結凸条11は、表面を内側係止突起12Bに摺動させて挿入する。内側に挿入された連結凸条11は、連結具12の内側係止突起12Bに係止されて、抜けないように固定される。
以上の状態で連結凸条11を連結溝10から引き抜く力が作用すると、外側係止突起12Aが連結溝10の内面に、内側係止突起12Bが連結凸条11の表面に食い込んで係止される。このため、接着剤13が未硬化な状態においても、連結凸条11は連結溝10に抜けないように連結される。
(4) 接着剤13が硬化されて、連結凸条11が連結溝10に、接着剤13と連結具12で連結されて、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bはひとつの絶縁ボックス3となる。
【0056】
カバープレート4を前後に分離した斜視図を図7に示す。カバープレート4は、境界部分より前方にあって第1のケース1Aの上面をカバーする前カバープレート4Aと、後方にあって第2のケース1Bの上面をカバーする後カバープレート4Bに分割している。前カバープレート4Aと後カバープレート4Bは、耐荷重の優れた金属板で製作される。カバープレート4は、好ましくはアルミニウム合金で製作される。アルミニウム合金のカバープレート4は、軽くて強靭にできる。とくに、焼き入れできるアルミニウム合金が適している。このカバープレート4は、アルミニウム板をプレス成形した後、焼き入れしてさらに強度を向上する。後カバープレート4Bは、クラッシュの衝撃で前方に移動するとき、後ベースプレート2Bと一緒に移動するように、図25に示すように、ワイヤー33で後ベースプレート2Bに連結している。
【0057】
前カバープレート4Aは1枚の金属板で、後カバープレート4Bは複数枚の金属板を積層して固定している積層金属板である。後カバープレート4Bは、積層金属板として前カバープレート4Aよりも曲げ強度を強くしている。曲げ強度の強い後カバープレート4Bは、下面からの支持を少なくして、優れた耐荷重床にできる。このため、後カバープレート4Bでカバーする衝撃吸収部7に設ける支持部を少なくできる。
【0058】
後カバープレート4Bは、2枚アルミニウム合金板を積層して固定している積層金属板である。後カバープレートは、3枚以上の金属板を積層、固定して製作することもできる。積層金属板からなる後カバープレート4Bは、積層した金属板を全面ないし一部で接着し、さらに局部的にスポット溶接して製作される。一部を接着材で接着する積層金属板は、十分な強度とするために、接着面積を全積層面積の50%以上とする。この積層金属板は、金属板の全面あるいは部分的に、金属板を強固に接着できるエポキシ系等の接着材を塗布して重ね、接着材を未硬化とする状態で、両面から溶接の電極で挟着して金属板を互いに接触させる状態でスポット溶接して固定する。この構造は、スポット溶接して固定する状態で、接着材を硬化できるので、接着材の硬化を待つ必要がなく、積層した金属板を能率よく固定できる。この構造の積層金属板からなる後カバープレート4Bは、極めて強靭な構造にできる。とくに、アルミニウム合金を2枚に重ねて製作される積層金属板は、軽くて耐荷重を大きくできる。また、この構造の積層金属板は、厚い金属板をプレス成形しないで、各々の金属板を別々に成形して積層するので、簡単かつ容易に、しかも理想的な形状に能率よくプレス成形して固定できる特徴がある。さらに、この構造の積層金属板は、金属板の間に接着材をサンドイッチする3層構造となる。接着材をエポキシ系の接着剤のように硬化状態で硬くなるものを使用すると、強度のある接着層を両面の金属板でサンドイッチする構造となる。接着層は金属板に比較して比重が小さくて軽い。このため、サンドイッチ構造は、軽くて硬い層の両面を金属板で挟着する構造となる。この構造の積層金属板は、全体を厚くして曲げ強度を大きくしながら軽くできる。曲げ強度に影響の大きい両面を強靭な金属板として、厚くするための中間層を軽い接着層とするからである。
【0059】
ただし、後カバープレートの積層金属板は、積層している金属板を接着し、あるいはスポット溶接し、あるいはまたネジ止して固定し、あるいはこれ等を組み合わせて結合して製作することもできる。
【0060】
図26と図27に示すカバープレートは、後カバープレート4Bと前カバープレート4Aを境界で積層し、積層部に連結パッキン35を挟着して防水構造で連結している。積層部において、後カバープレート4Bは、前カバープレート4Aの下に積層している。下面の後カバープレート4Bは、境界の積層部に沿って境界溝36を設けている。境界溝36は連結パッキン35を配設し、連結パッキン35の上に前カバープレート4Aの後縁を隙間なく重ねている。前カバープレート4Aは、境界溝36に入れられる凸条37を、境界に沿って下面に突出して設けている。前カバープレート4Aの凸条37が連結パッキン35を押圧し、連結パッキン35が凸条37と境界溝36に挟着されて、前カバープレート4Aと後カバープレート4Bは防水構造に連結される。後カバープレート4Bを前カバープレート4Aの下に積層するケース1は、クラッシュの衝撃で第1のケース1Aと第2のケース1Bを分離して、第2のケース1Bを傾動する第1のケース1Aの下にスムーズに移動できる。ただし、前カバープレートを後カバープレートの下に積層することもできる。このケースは、クラッシュの衝撃で第2のケースを第1のケースの下に移動させるとき、カバープレートの積層部を変形させる。
【0061】
前カバープレート4Aと後カバープレート4Bが防水構造で連結されて1枚のカバープレート4となる。このカバープレート4は、図28に示すように、リングパッキン38を介して周縁部を絶縁ボックス3の上縁に防水構造で連結している。リングパッキン38は、カバープレート4と絶縁ボックス3の上縁との間に挟着されて、カバープレート4と絶縁ボックス3の境界を防水構造とする。
【0062】
第1のケース1Aはワイヤーハーネス29を介して第2のケース1Bに連結される。正確には、第1のケース1Aに収納している電池や制御回路が、第2のケース1Bに収納している送風機8にワイヤーハーネス29で連結される。第1のケース1Aと第2のケース1Bを連結するワイヤーハーネス29は、短いと第1のケース1Aの傾動を制限する。クラッシュの衝撃でワイヤーハーネス29が切断されないと、これが第1のケース1Aを引っ張って傾動を阻害するからである。この弊害を避けるために、ワイヤーハーネス29は、図29に示すように、第1のケース1Aを傾動できる長さとしてケース1に収納している。ワイヤーハーネス29の長さは、少なくとも、第1のケース1Aを15度以上に傾動させる姿勢で、第1のケース1Aと第2のケース1Bを連結する長さとしている。第1のケース1Aの最大傾動角(α)はストッパ紐16で制限される。この電源装置は、好ましくは、ワイヤーハーネス29の長さを、第1のケース1Aを最大傾動角(α)に傾動できる程度に長くする。
【0063】
図4の電源装置は、ケース上面に吊り下げ部25を設けている。図の電源装置は、前縁の両側と、後カバープレート4Bの中間の3カ所に吊り下げ部25を設けている。図の吊り下げ部25は、吊り下げる装置の引掛部(図示せず)を挿入して係止できる穴である。ケース1の前両側には、ベースプレート2に固定金具を固定して、吊り下げ部25を設けている。ケース1の中央に設けた吊り下げ部25は、図9と図11に示すように、後ベースプレート2Bの中央に固定された連結台28の上面に穴を設けて吊り下げ部25としている。この吊り下げ部25は、後カバープレート4Bと絶縁ボックス3を貫通して開口された貫通孔26を介して、ケース1の上面に位置して設けられている。後カバープレート4Bの貫通孔26は、水の侵入を阻止するために脱着できる防水栓39で閉塞している。電源装置を吊り下げるときには、防水栓39を外して貫通孔26に引掛部を連結する。このように、吊り下げ部25を設けている電源装置は、車両に搭載する状態から簡単に吊り上げて外すことができる。また、吊り下げ部25を穴とする電源装置は、車両のフロアに搭載して、吊り下げ部25がフロアから上に突出することがない。
【0064】
電池は、ホルダーケース5に入れて絶縁ボックス3内に配設される。ホルダーケース5は、図30の断面図に示すように、電池を電池モジュール21として水平面内に並べて収納している。図のホルダーケース5は、上下2段に電池モジュール21を並べている。各段のホルダーケース5は、図示しないが、内部に複数本の電池モジュール21を平行な姿勢で水平に配設している。ただ、本発明の電源装置は、図示しないが、ホルダーケースを1段として、電池モジュールを1段に収納することもできる。
【0065】
電池モジュール21を収納してなるホルダーケース5は、第1のケース1A内の定位置に配置される。図2に示す第1のケース1Aは、ホルダーケース5を定位置に配置するために、第1のボックス3Aの底板から上方に突出して連結凸部40を設けると共に、ホルダーケース5の下方に位置して、連結凸部40を嵌入する連結凹部41を設けている。ホルダーケース5は、連結凸部40を連結凹部41に入れて、第1のボックス3Aの定位置に配置される。この構造は、連結凸部40を連結凹部41に入れる状態で、ホルダーケース5に作用する荷重を第1のボックス3Aで支持しながらホルダーケース5を定位置に保持できるする。さらに、第1のケース1Aは、図31に示すように、絶縁ボックス3の下面から突出する嵌入凸部42を設けて、この嵌入凸部42を嵌入する嵌入凹部43をベースプレート2の底面に設けることができる。この構造は、絶縁ボックス3の嵌入凸部42をベースプレート2の嵌入凹部43に入れて、絶縁ボックス3をベースプレート2の定位置に配置できる。ベースプレート2の嵌入凹部43は、図に示すように底を閉塞することによって水の侵入を阻止できる。ただ、嵌入凹部は、底を閉塞することなく貫通穴とすることもできる。
【0066】
ホルダーケース5に収納される電池モジュール21は、複数の二次電池20を直列接続して直線状に連結している。電池モジュール21は、4〜8本の、たとえば5又は6本の二次電池20を、直列接続して直線状に連結している。ただし、電池モジュールは、1本の二次電池で構成することもできる。電池モジュール21は、円筒型あるいは角型の二次電池20を、金属板の接続体を介して、あるいは接続体を介することなく電池端面を直接に直列接続して直線状に連結している。電池モジュール21の両端には、正極端子と負極端子からなる電極端子を連結している。電極端子は、金属板のバスバー(図示せず)をネジ止して、隣接する電池モジュール21を直列に、あるいは並列に連結する。
【0067】
電池モジュール1の二次電池20は、ニッケル−水素電池である。ただ、電池モジュールの二次電池は、ニッケル−カドミウム電池やリチウムイオン二次電池等を使用することもできる。
【0068】
ホルダーケース5は、電池モジュール21を冷却する空気を供給する送風口(図示せず)を開口している。この送風口は、第2のケース1Bに配設している送風機8に連結される。送風機8は、ホルダーケース5に冷却空気を強制送風して、電池を冷却する。ホルダーケース5は、第1のケース1Aに固定される。ホルダーケース5の上面には、止ネジ34を介して前ベースプレート2Aを固定している。
【0069】
以上の構造の電源装置は、後ろから追突してクラッシュすると、図10に示すように、第1のケース1Aと第2のケース1Bとに分離される。このとき、絶縁ボックス3は、第1のボックス3Aと第2のボックス3Bの連結部、すなわち、連結溝10に連結凸条11を入れて接着剤13と連結具12で連結している境界で分離される。第1のケース1Aから分離された第2のケース1Bは、第1のケース1Aの下に押し込まれるように移動し、第1のケース1Aは水平姿勢から垂直方向に傾動する。第1のボックス3Aと第2のボックス3Bは、別々に成形して連結している部分で分離される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置を車両に搭載する状態を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置を車両の前後方向に切断した断面図である。
【図3】図2に示す電源装置の分解斜視図である。
【図4】図2に示す電源装置の斜視図である。
【図5】ベースプレートの分解斜視図である。
【図6】絶縁ボックスの分解斜視図である。
【図7】カバープレートの分解斜視図である。
【図8】図3に示す電源装置の第1のケースに電池モジュールを収納する状態を示す斜視図である。
【図9】第1のケースと第2のケースの連結部を示す断面図である。
【図10】図2に示す電源装置が第1のケースと第2のケースとに分離される状態を示す拡大断面図である。
【図11】ベースプレートの斜視図である。
【図12】前ベースプレートと後ベースプレートの連結構造を示す分解斜視図である。
【図13】図12に示す連結構造を背面側から見た斜視図である。
【図14】図11に示すベースプレートの右端部の連結構造を示す分解斜視図である。
【図15】図11に示すベースプレートの右端部の連結構造を示す拡大断面図である。
【図16】図11に示すベースプレートの左端部の連結構造を示す分解斜視図である。
【図17】図11に示すベースプレートの中央部の連結構造を示す分解斜視図である。
【図18】図11に示すベースプレートの中央左側部の連結構造を示す分解斜視図である。
【図19】図11に示すベースプレートの中央右側部の連結構造を示す分解斜視図である。
【図20】図17に示す連結構造の拡大断面図である。
【図21】図4に示す電源装置が衝撃を受けて第1のケースが傾動する状態を示す側面図である。
【図22】図9に示す第1のボックスと第2のボックスの連結部の拡大断面図である。
【図23】連結具の連結構造を示す拡大断面図である。
【図24】連結具の拡大斜視図である。
【図25】第2のケースの内部構造を示す断面図である。
【図26】前カバープレートと後カバープレートの連結構造を示す断面斜視図である。
【図27】図26に示すカバープレート要部拡大断面図である。
【図28】絶縁ボックスとカバープレートでリングパッキンを挟着する状態を示す分解斜視図である。
【図29】図3に示す電源装置の内部構造を示す拡大斜視図である。
【図30】ホルダーケースの拡大断面図である。
【図31】絶縁ボックスとベースプレートの連結構造の一例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1…ケース 1A…第1のケース
1B…第2のケース
2…ベースプレート 2A…前ベースプレート 2a…上面傾斜部
2B…後ベースプレート 2b…下面傾斜部
3…絶縁ボックス 3A…第1のボックス
3B…第2のボックス
4…カバープレート 4A…前カバープレート 4a…折曲部
4B…後カバープレート
5…ホルダーケース
6…電池収納部
7…衝撃吸収部
8…送風機
9…衝撃破壊ピン
10…連結溝
11…連結凸条
12…連結具 12A…外側係止突起
12B…内側係止突起
13…接着剤
14…位置決プレート 14a…貫通孔 14b…貫通孔
15…固定プレート
16…ストッパ紐
17…取付金具
18…組付穴
19…貫通孔 19a…貫通孔 19b…貫通孔
20…二次電池
21…電池モジュール
22…ネジ
23…ナット
24…摩擦抵抗軽減シート
25…吊り下げ部
26…貫通孔
27…固定金具
28…連結台
29…ワイヤーハーネス
30…フロア
31…フロアパネル
32…荷台
33…ワイヤー
34…止ネジ
35…連結パッキン
36…境界溝
37…凸条
38…リングパッキン
39…防水栓
40…連結凸部
41…連結凹部
42…嵌入凸部
43…嵌入凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(1)を第1のケース(1A)と第2のケース(1B)に分割して、ケース(1)内に車両を走行させるモーターを駆動する電池を収納しており、分割された第1のケース(1A)と第2のケース(1B)をクラッシュの衝撃で分離されるように連結している車両用の電源装置であって、
第1のケース(1A)と第2のケース(1B)の一部、あるいは第1のケース(1A)と第2のケース(1B)に連結している連結材を積層し、積層部に所定の衝撃で破壊される衝撃破壊ピン(9)を貫通して第1のケース(1A)と第2のケース(1B)を連結している車両用の電源装置。
【請求項2】
衝撃破壊ピン(9)が、クラッシュの衝撃で破壊されるリベットである請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項3】
第1のケース(1A)と第2のケース(1B)が、クラッシュの衝撃が加わると、第1のケース(1A)が傾動して第1のケース(1A)の下に第2のケース(1B)が移動するように連結している請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項4】
第1のケース(1A)の前縁に、車両に傾動できるように連結する蝶番を備え、この蝶番を介して第1のケース(1A)を車両に連結するようにしている請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項5】
車両に固定される固定プレート(15)を備え、この固定プレート(15)と第1のケース(1A)の後部を、第1のケース(1A)の最大傾動角を制限するストッパ紐(16)で連結しており、クラッシュの衝撃で第1のケース(1A)が傾動すると、このストッパ紐(16)が傾動角を制限するようにしている請求項3又は4に記載される車両用の電源装置。
【請求項6】
第1のケース(1A)と第2のケース(1B)が金属板のベースプレート(2)を備え、第1のケース(1A)のベースプレート(2)である前ベースプレート(2A)と、第2のケース(1B)のベースプレート(2)である後ベースプレート(2B)を衝撃破壊ピン(9)で連結している請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項7】
第1のケース(1A)と第2のケース(1B)が金属板のベースプレート(2)を備え、第1のケース(1A)のベースプレート(2)である前ベースプレート(2A)と、第2のケース(1B)のベースプレート(2)である後ベースプレート(2B)と、車両に固定される固定プレート(15)とを衝撃破壊ピン(9)で連結しており、固定プレート(15)を下に、第1のケース(1A)の前ベースプレート(2A)を上に、前ベースプレート(2A)と固定プレート(15)の間に後ベースプレート(2B)を配設している請求項5に記載される車両用の電源装置。
【請求項8】
第1のケース(1A)が、底板である前ベースプレート(2A)と、上蓋である前カバープレート(4A)とを備え、前カバープレート(4A)を前ベースプレート(2A)に固定している請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項9】
第2のケース(1B)が、底板である後ベースプレート(2B)と、上蓋である後カバープレート(4B)とを備え、後ベースプレート(2B)と後カバープレート(4B)をワイヤー(33)を介して連結している請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項10】
第1のケース(1A)が、底板である後ベースプレート(2B)と、この後ベースプレート(2B)の上に配設しているプラスチック製の絶縁ボックス(3)とを備え、絶縁ボックス(3)に電池を収納するホルダーケース(5)を配設している請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項11】
ケース(1)が、第1のケース(1A)の上蓋である前カバープレート(4A)と、第2のケース(1B)の上蓋である後カバープレート(4B)とを備え、前カバープレート(4A)と後カバープレート(4B)を境界で連結パッキン(35)を介して積層して防水構造に連結しており、下面に積層されるカバープレート(4)は連結縁に沿って境界溝(36)を設けて、境界溝(36)に連結パッキン(35)を配設しており、この境界溝(36)の上面に積層されるカバープレート(4)の連結縁を案内して第1のケース(1A)と第2のケース(1B)を連結している請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項12】
第1のケース(1A)と第2のケース(1B)に連結しているワイヤーハーネス(29)が、第1のケース(1A)を15度以上傾動させる姿勢で、第1のケース(1A)と第2のケース(1B)を連結する長さとしている請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項13】
第1のケース(1A)と第2のケース(1B)を積層して連結する積層部を傾斜面として、傾斜面の積層部において、第1のケース(1A)と第2のケース(1B)の間に摩擦抵抗軽減シート(24)を挟着している請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項14】
ケース(1)の上面に吊り下げ部(25)を設けている請求項1に記載される車両用の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2006−35915(P2006−35915A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214929(P2004−214929)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】