説明

車両用ハーネスの配索構造

【課題】ダッシュパネルの成形性を確保するために設けられる成形用ビードのデッドスペースを有効利用してハーネスが配索できる車両用ハーネスの配索構造を提供する。
【解決手段】ダッシュパネル3の車室内側に車幅方向に延びるハーネス29を設けた車両用ハーネスの配索構造であって、ダッシュパネル3下方の車幅方向中央部に設けるトンネル部3Tの上方位置に、ダッシュパネル3のトンネル部3Tの成形性を確保するため車両前方に突出する成形用ビード32を車幅方向に延びるように設け、成形用ビード32に対応する位置にハーネス29を配索したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダッシュパネルの車室内側に車幅方向に延びるハーネスが設けられたような車両用ハーネスの配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンルームと車室内とを前後方向に仕切るダッシュパネルの車室内側には、各種の車両部品と干渉しないように、インストルメントハーネス、ヒータコントロールハーネスその他のハーネスが複雑に屈曲して配索されている。
【0003】
このように、ハーネスを複雑に屈曲して配索すると、ハーネスを取付けるためのクリップやクランプが多数必要となるうえ、屈曲構造のハーネスが垂れ下がって他の部材と干渉するのを防止するために、複数のプロテクタを設ける必要があり、ハーネス経路も長く、コストアップを招く問題点があった。
【0004】
一方、特許文献1には、ハーネスを他部品と交差するような位置に配索する場合、安価で作業性のよいハーネス固定構造が開示されている。
【0005】
つまり、エンジンルームと車室とを前後方向に仕切るダッシュパネルを設け、このダッシュパネルの車室内側には消音用のダッシュサイレンサ、つまり、インシュレータを設ける一方、ハーネスがアクセルペダルと交差する位置において上記インシュレータには凹部を形成し、ハーネスを該凹部に沿って配索することで、アクセルペダルの対応部位においてハーネスがアクセルペダルを上方に大きく迂回し、ハーネスがアクセルペダルと干渉しないように構成したものである。
【0006】
しかしながら、該特許文献1の構成では、ハーネスが操作ペダルを大きく迂回するので、ハーネス経路が長くなるうえ、該特許文献1には、ダッシュパネルの成形用ビードを有効利用して、ハーネスを配索するという技術思想は全く開示されていない。
【特許文献1】特開2002−166798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、ダッシュパネルのプレス成形時に、その成形性を確保するために成形用ビードが設けられることに着目し、ダッシュパネル下方の車幅方向中央部に設けられるトンネル部の上方位置に、該ダッシュパネルのトンネル部の成形性を確保するために車両前方に突出する成形用ビードが車幅方向に延びるように設けられ、この成形用ビードの対応位置にハーネスを配索することで、成形用ビードのデッドスペースを有効利用してハーネスが配索できる車両用ハーネスの配索構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による車両用ハーネスの配索構造は、ダッシュパネルの車室内側に車幅方向に延びるハーネスが設けられる車両用ハーネスの配索構造であって、上記ダッシュパネル下方の車幅方向中央部に設けられるトンネル部の上方位置に、該ダッシュパネルのトンネル部の成形性を確保するために車両前方に突出する成形用ビードが車幅方向に延びるように設けられ、該成形用ビードに対応する位置に上記ハーネスが配索されるように構成されたものである。
【0009】
上記構成によれば、成形用ビードのデッドスペースを有効利用してハーネスを配索することができる。
【0010】
因に、一枚の金属板を用いて、比較的形状が大きいダッシュパネルに、上述のトンネル部をプレス成形にて形成する場合には、成形品にシワや、引っ張りによる薄肉部が形成されないように成形用ビードが設けられ、上記トンネル部の上方位置には主としてシワ取り用の成形用ビードが設けられるので、この成形用ビードのデッドスペースを利用してハーネス(いわゆる横断ハーネス)を配索することができるものである。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記成形用ビードの後方位置に空調ユニットが配設されたものである。
【0012】
上記構成によれば、空調ユニットとの干渉を防止してハーネス(いわゆる横断ハーネス)を配索することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記ダッシュパネルのトンネル部は、フロアパネルのトンネル部の前部位置で上方に拡大されたトンネル拡大部を備えたものである。
【0014】
上記構成によれば、トンネル拡大部により高い位置に形成される成形用ビードを利用して、ハーネス(いわゆる横断ハーネス)を配索することができる。
【0015】
なお、上記トンネル拡大部について述べると、前部機関前輪駆動タイプの車両において、エンジンを横置き配置し、排気系をエンジン後方にレイアウトしてトンネル部の車外側に導出する場合、エンジンの排気効率を考慮して、上記排気系をエンジン上部の排気ポートから車両後方側下方に、所定の傾斜角で略直線状に延びるように形成すると、フロアパネルのトンネル部の前部には、排気系に沿って上方に大きく突出して、該排気系(特に、排気管)の傾斜角に対応するように傾斜した上壁面を備えるトンネル拡大部が形成されるものである。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記ダッシュパネルのトンネル部側方のダッシュパネル上部位置に、車体後方に窪むブレーキブースタ取付け面が形成され、上記成形用ビードの車幅方向側方に形成されたブレーキブースタ取付け面下方空間に上記ハーネスが配索されるように構成されたものである。
【0017】
上記構成によれば、次の如き効果がある。
【0018】
すなわち、衝突時のエンジンとの干渉防止と、クラッシュスペース確保と、のために制動用のブレーキブースタを上方かつ後方位置に配設した場合に生じるブレーキブースタ取付け面下方の空間を利用して、上記ハーネスを略直線状に配索することができ。これにより、ハーネス経路の短縮と、プロテクタおよびクリップ数の低減を図ることができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、ブレーキブースタはその軸線の前方が上方となるように傾斜して設けられ、上記ブレーキブースタ取付け面が該ブレーキブースタの傾斜に対応して傾斜しているものである。
【0020】
上記構成によれば、ブレーキブースタ取付け面を、ブレーキブースタの傾斜に対応させたので、ダッシュパネルのブレーキブースタ配設空間占有スペースを低減しつつ、上記ハーネス(いわゆる横断ハーネス)の配索空間を確保することができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上記成形用ビードおよびトンネル拡大部を含むダッシュパネルの車室内側面にインシュレータを配設し、上記成形用ビード内に配設されたインシュレータの凹部に上記ハーネスが配索されたものである。
【0022】
上記構成によれば、インシュレータにより断熱効果、遮音効果が得られると共に、インシュレータの凹部にハーネスを配索することで、該ハーネスの配索が安定し、特に、トンネル拡大部の車外側に排気系を配設した際の熱害防止を図ることができる。つまり、ハーネス配索の安定化と、熱害防止との両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、ダッシュパネル下方の車幅方向中央部に設けられるトンネル部の上方位置に、ダッシュパネルのトンネル部の成形性を確保するために車両前方に突出する成形用ビードが車幅方向に延びるように設けられ、この成形用ビードの対応位置にハーネスを配索したので、成形用ビードのデッドスペースを有効利用してハーネスを配索することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
成形用ビードのデッドスペースを利用して、ハーネスを配索するという目的を、ダッシュパネルの車室内側に車幅方向に延びるハーネスが設けられる車両用ハーネスの配索構造において、上記ダッシュパネル下方の車幅方向中央部に設けられるトンネル部の上方位置に、ダッシュパネルのトンネル部の成形性を確保するために車両前方に突出する成形用ビードが車幅方向に延びるように設けられ、該成形用ビードに対応する位置に、上記ハーネスを配索するという構成にて実現した。
【実施例】
【0025】
この発明の一実施態様を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両用ハーネスの配索構造を示すが、まず、図1を参照して車両の前部構造について説明する。
【0026】
図1に示す概略斜視図において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設け、このダッシュロアパネル3の下部には後方に向けて略水平に延びるフロアパネル4を一体的に連設している。
上述のダッシュロアパネル3およびフロアパネル4の車幅方向中央部には、車室2内に突出して、車両の前後方向に延びるダッシュロアパネル3のトンネル部3Tと、フロアパネル4のトンネル部4Tとを車両前後方向に連続するように一体形成している。
【0027】
一方、エンジンルーム1内には、シリンダブロック6と、シリンダヘッド7と、シリンダヘッドカバー8と、オイルパン9とを備えたエンジン10を横置きに配置し、このエンジン10の一方側には変速機11を配置して、FF車と成している。なお、図面ではレシプロエンジンを例示したが、これはロータリエンジンであってもよい。
【0028】
エンジン10の前方には、気筒に吸気を導入する吸気マニホルド12を取付け、エンジン10の後方には、気筒の排気を排出する排気マニホルド13を取付けている。ここで、上述の吸気マニホルド12は気筒列方向に延びるサージタンク14を取囲むように湾曲形成されており、それぞれ所定の吸気通路長を確保している。
【0029】
一方、排気マニホルド13は、仮想垂直線L1に対して所定の角度θ1(約15度)だけ後方側に傾斜したエンジン10のシリンダヘッド7における排気ポート(図示せず)から側面視でほぼ直線状に後方側斜め下方に延びるように形成されている。
上述の排気マニホルド13の下流側には直キャタリスト15,15、Y字排気管16、フレキシブルジョイント17、アンダーフットキャタリスト18をこの順に接続して、これらの各要素13,15〜18にて排気系19を構成している。
【0030】
上述の排気マニホルド13の前端部(上流部)からY字排気管16の中間部までは側面視でほぼ直線状に後方側斜め下方に延びるように形成されているので、上記ダッシュロアパネル3のトンネル部3Tは、フロアパネル4のトンネル部4Tの前部位置で、排気マニホルド13、直キャタリスト15、Y字排気管16に沿って上方に大きく突出して、これら各要素13,15,16の傾斜角に対応するように傾斜拡大された上壁面を備えるトンネル拡大部20が形成されており、上述の排気系19の略直線化により、エンジン10の排気効率を高めるように構成している。
【0031】
ここで、上述の直キャタリスト15およびY字排気管16の中間部よりも前側(上流側)はトンネル拡大部20を備えたトンネル部3Tの車外側に配設されており、Y字排気管16の下流部と、フレキシブルジョイント17と、アンダーフットキャタリスト18と、はトンネル部4Tの車外側に配設されている。
【0032】
次に、図2〜図7を参照して、車両のフロアトンネル部構造について詳述する。
図2はフロアトンネル部構造を示す側面図、図3は図2の平面図、図4は車室内側から前方を見た状態で示す斜視図、図5はエンジンルーム下方から上側後方を見た状態で示す斜視図、図6は図2の要部拡大側面図、図7はエアバッグセンサ取付けブラケットの斜視図である。
【0033】
図2に示すように、上述のダッシュロアパネル3は上下方向に延びる縦壁3aと、該縦壁3aの下端から後方に向けて斜め下方に延びるスラント壁3bと、該スラント壁3bの後端から後方に向けて水平に延び、フロアパネル4と面一状になる下壁3cとを備えている。
【0034】
このダッシュロアパネル3に一体形成されたトンネル拡大部20は、図2に示すように、その上面に車両後方に傾斜する傾斜面21,22が形成されている。
上記傾斜面21,22は傾斜角度の大きい前部、つまり前部傾斜面21と、傾斜角度の小さい後部、つまり後部傾斜面22とを有し、これら前後の各傾斜面21,22を前後方向に一体連設したものである。
【0035】
また、上述のトンネル拡大部20における各傾斜面21,22の上方には所定間隔を隔てて空調ユニット23を配設する一方、図2、図4に示すように、運転席側(この実施例では車両左側)にはステアリングシャフト24を設け、この運転席側に設けられるブレーキペダル36と対応すべく、ダッシュロアパネル3の縦壁3aのエンジンルーム1側には、ブレーキブースタ25を取付けている。
【0036】
さらに、図3に平面図で示すように、助手席側において、ダッシュロアパネル3のスラント壁3bとトンネル拡大部20の側壁との間には、助手席乗員が足を載せるフットレスト26を形成している。
同様に、図4に斜視図で示すように、運転席側において、ダッシュロアパネル3の車幅方向左側において、その縦壁3aとスラント壁3bとの間には、運転席乗員が足を載せるフットレスト27を形成している。
【0037】
また、図4に示すように、運転席側におけるダッシュロアパネル3の縦壁3aにおいて、ブレーキブースタ25の取付け位置よりも車幅方向左側には、エンジンルーム1側から配設されるハーネス用のコネクタ28を取付けている。
さらに、図4に示すように、ダッシュロアパネル3のスラント壁3bの左端部上方には、コネクタ28からのハーネス(図示せず)を、一側のハーネス29と、他側のハーネス30と、に分配する分配器31(いわゆる、ディストリビュータ)を配設している。
【0038】
ところで、図2、図3、図4、図6に示すように、上述のトンネル拡大部20の傾斜面21,22上部には、エアバッグセンサ取付けブラケット40(以下単に取付けブラケットと略記する)が設けられている。
この取付けブラケット40は図7に示すように、略水平な平面部40aと、この平面部40aの後端から下方に延びる左右一対の脚部40b,40bと、これら左右の脚部40b,40b間に形成された開口部40cと、左右一対の脚部40b,40bの下端から後方に延びる後部取付け片40d,40dと、上述の平面部40aの前端から前方に延びる前部取付け片40eと、を一体に折曲げ形成した剛性部材である。
【0039】
この取付けブラケット40において、前部取付け片40eはトンネル拡大部20の前部傾斜面21と平行に形成され、後部取付け片40dはトンネル拡大部20の後部傾斜面22と平行に形成されている。また、これら前部取付け片40eおよび後部取付け片40dのそれぞれには取付け孔41…いわゆるボルト挿通孔が形成されている。さらに、上述の開口部40cの口縁には、後述するチェンジケーブル54の傷付き防止用のゴム製のパッド42が嵌着されている。
【0040】
図2、図3、図4、図6に示すように、取付けブラケット40の前部取付け片40eは、ボルト、ナット等の取付け部材43を用いて、トンネル拡大部20の前部傾斜面21に着脱可能に接合されており、取付けブラケット40の後部取付け片40dは、ボルト、ナット等の取付け部材44(図2参照)を用いて、トンネル拡大部20の後部傾斜面22に着脱可能に接合されている。
つまり、この取付けブラケット40は、後述する空間60を確保すべく、トンネル拡大部20の前部傾斜面21と後部傾斜面22とに跨って着脱可能に取付けられたものであり、この取付けブラケット40の平面部40aには、エアバッグセンサ45が固定されている。
【0041】
図3、図6に示すように、エアバッグセンサ45はその下部外方に複数の取付けフランジ45a…を有しており、これら複数の取付けフランジ45a…を、ボルト、ナット等の取付け部材46を用いて、取付けブラケット40の平面部40aに対して着脱可能に固定されたものであり、このエアバッグセンサ45は車両衝突時の振動を検出し、図示しないエアバッグを展開して、乗員を保護するためのものであって、該エアバッグセンサ45は、図2に示すインストルメントパネル50下方のデッドスペースで、かつ図6に示すように、空調ユニット23の下方に位置する。
【0042】
ところで、図2に示すように、インストルメントパネル50には変速機操作用のチェンジレバー51が設けられており、このチェンジレバー51の上端にはチェンジノブ52を設ける一方、チェンジレバー51の下部に設けられた変速機操作機構53にはチェンジケーブル54が延設されている。
【0043】
図2では、マニュアルシフト用の変速機操作機構53を例示しているので、チェンジケーブル54は2本存在し、一方がシフト用で、他方がセレクト用であるが、AT車においてはチェンジケーブル54は1本のみとなる。
【0044】
変速機操作機構53から延設されたチェンジケーブル54は、フロアパネルを貫通して図1で示したエンジンルーム1内の変速機11に連結されているので、以下、その具体的構造について説明する。
【0045】
図6に示すように、取付けブラケット40の下方に位置する後部傾斜面22に貫通孔55を設け、この貫通孔55の口縁上部に対応して該後部傾斜面22上には、チェンジケーブル54の案内部56を有するグロメット57を、ボルト、ナット等の取付け部材58を用いて、着脱可能に取付けている。
【0046】
上述のグロメット57は、図3、図4に示すように、取付けブラケット40の開口部40cから出し入れが可能となるように、前後方向に延びる所謂縦長形状に形成されると共に、2つの取付け部材58,58のうち前側の取付け部材58は、取付けブラケット40の平面部40aと、トンネル拡大部20の後部傾斜面22と、の間の空間60から容易に着脱操作できるように、車両左側片側に位置しており、2つの取付け部材58,58のうち後側の取付け部材58は、取付けブラケット40の脚部40bよりも車両後方側に位置しており、この取付け部材58を容易に着脱操作できるように構成している。
【0047】
また、これら一対の取付け部材58,58は、図3に示すように、グロメット57に対して対角線上に位置するように配置されている。
そして、上述の変速機操作機構53から延設されたチェンジケーブル54は、図2、図6に示すように、取付けブラケット40の開口部40cから上記空間60に案内され、かつ、グロメット57の案内部56および後部傾斜面22の貫通孔55を介してトンネル拡大部20の下部つまり車外側に配索された後に、図1で示したエンジンルーム1内の変速機11に連結されるように配索されている。
【0048】
一方、図5、図6に示すように、トンネル拡大部20の車外側において、前部傾斜面21の下面と後部傾斜面22の下面との間、要するに前後の各傾斜面21,22に跨った状態でトンネルクロスメンバ70を車幅方向に向けて接合固定し、傾斜面21,22とトンネルクロスメンバ70との間には閉断面71を形成し、該トンネルクロスメンバ70の下面が上記傾斜面21,22における傾斜角度の小さい後部傾斜面22の角度と平行になるように構成している。
【0049】
また、図5に示すように、エンジンルーム1の下方において車体前後方向に延設される左右一対のフロントサイドフレーム80,80を設け、これら一対のフロントサイドフレーム80,80(フロントフレーム)のキックアップ部80a,80aはダッシュロアパネル3の前部に結合している。
【0050】
ここで、上述の取付けブラケット40、特に、その前部取付け片40eは上記トンネルクロスメンバ70に対応する位置の傾斜面21に固定されたものである。
【0051】
図8はダッシュロアパネル3をトンネル拡大部20の車幅方向中央部で断面した要部の縦断面図、図9はダッシュロアパネル3をブレーキブースタ25の配設部位で断面した要部の縦断面図であって、以下、図2〜図5、図8、図9を参照して車両用ハーネスの配索構造について詳述する。
【0052】
図2、図5、図8に示すように、ダッシュロアパネル3下方の車幅方向中央部に設けられるトンネル部3Tの上方位置には、該ダッシュロアパネル3のトンネル部3Tの成形性を確保するために、車両前方に突出する円弧断面形状の成形用ビード32が車幅方向に延びるように設けられている。
【0053】
すなわち、一枚の金属板を用いて、比較的形状が大きいダッシュロアパネル3に、トンネル拡大部20を含むトンネル部3Tをプレス成形にて一体形成する場合、成形品にシワや、引っ張りによる薄肉部が形成されないように成形用ビード32が設けられ、トンネル部3Tの上方位置には、主として、シワ取り用の成形用ビード32が設けられる。
【0054】
この成形用ビード32の車幅方向における形成範囲は、図5に斜視図で示すように、トンネル拡大部20前端のトンネル開口部の車幅方向の長さと略等しい長さに設定されている。
【0055】
図2、図8に示すように、上述の成形用ビード32およびトンネル拡大部20を含むダッシュロアパネル3の車室内側面には断熱効果、遮音効果を奏するインシュレータ33が配設され、このインシュレータ33の一部は上述の成形用ビード32内に、その内面に沿うように配設されている。そして、図8に示すように、成形用ビード32の内面に沿って配設されたインシュレータ33の凹部に前述のハーネス29が車幅方向に沿って略直線状に配索されている。
【0056】
また、図2、図8に示すように、上述の成形用ビード32の後方位置には、空調ユニット23が配設されていて、この空調ユニット23との干渉を防止して上記ハーネス29(いわゆる横断ハーネス)を車幅方向に略直線状に延びるように配索すべく構成している。
【0057】
一方、運転席側には、図2、図8に示すように、ペダルアーム34と踏面部35とを有するブレーキペダル36を設けている。このブレーキペダル36は、該ブレーキペダル36のペダルアーム34と上記ハーネス29との干渉を回避すべく、その支点36Cは、ブレーキブースタ本体25aの上端の後方延長線に近接する位置で、かつ該ブレーキブースタ本体25aの上部よりも後方に離間した位置に設定されている。なお、図示の便宜上、ペダル支持ブラケットの図示は省略している。
【0058】
また、図2においては、図示の便宜上、ブレーキペダル36を踏み込んでいないノーマル位置αを仮想線で示し、ブレーキペダル36を最大限に踏み込んだ踏込み位置βを実線で示している。
【0059】
図9に示すように、上述のブレーキペダル36には、制動倍力装置としてのブレーキブースタ25におけるバルブオペレーティングロッド37が連結されている。
【0060】
上述のブレーキブースタ25(制動倍力装置)は、フルードリザーバ38およびマスタシリンダ39を備えており、該マスタシリンダ39内にはマスタシリンダピストンを有する。また、ブレーキブースタ本体25a内には、ポペット、バルブプランジャ、パワーピストン、リアクションディスク、ダイヤフラム、プッシュロッド等が内蔵されている。
【0061】
ここで、上述のマスタシリンダ39は鋳鉄製の剛性部材であって、車両衝突時におけるエンジン10との干渉防止を図り、かつクラッシュスペースを確保するために、該マスタシリンダ39を含むブレーキブースタ25は、図9に示すように、その軸線L2の前方が上方となるように傾斜(軸線L2を前高後低状に傾斜)して設けられている。
【0062】
上述のダッシュロアパネル3のトンネル部3Tの側方における該ダッシュロアパネル3の上部位置には、図9に示すように、ブレーキブースタ25の傾斜と対応して上部が角度θ2だけ車体後方に窪むブレーキブースタ取付け面3Dが形成されている。つまり、このブレーキブースタ取付け面3Dはブレーキブースタ25の傾斜に対応して前低後高状に傾斜させたものであり、換言すれば、ブレーキブースタ取付け面3Dは上記軸線L2と直交するように形成されている。
【0063】
上述のブレーキブースタ取付け面3Dは、図8で示した成形用ビード32の車幅方向側方(この実施例では、車幅方向左方)に形成されたものであって、このブレーキブースタ取付け面3Dの下方空間に、上記ハーネス29が配索されている。図4に示すように、上述のハーネス29は車幅方向に延びて、ほぼ一直線状に配索されている。図4に示すように、上述のハーネス29は車幅方向に延びて、ほぼ一直線状に配索されている。
【0064】
ところで、図2と図10との対比から明らかなように、上記構成の車両用ハーネスの配索構造および車両のフロアトンネル部構造は、変速機操作機構53がインストルメントパネル50に配設されるインパネシフト車(図2参照)の車台(アンダフロアとその周辺部)と、変速機操作機構53がフロアパネル4のトンネル部4Tに支持部材61を介して配設されるフロアシフト車(図10参照)の車台と、に共通して適用されるように構成し、汎用性の拡大を図ると共に、派生対応が容易に行なえるように構成している。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示す。
【0065】
このように、図1〜図10で示した実施例の車両用ハーネスの配索構造は、ダッシュロアパネル3の車室内側に車幅方向に延びるハーネス29が設けられる車両用ハーネスの配索構造であって、上記ダッシュロアパネル3下方の車幅方向中央部に設けられるトンネル部3Tの上方位置に、該ダッシュロアパネル3のトンネル部3Tの成形性を確保するために車両前方に突出する成形用ビード32が車幅方向に延びるように設けられ、該成形用ビード32に対応する位置に上記ハーネス29が配索されるように構成されたものである(図2、図4参照)。
【0066】
この構成によれば、成形用ビード32のデッドスペースを有効利用してハーネス29を配索することができる。
【0067】
因に、一枚の金属板を用いて、比較的形状が大きいダッシュロアパネル3に、上述のトンネル部3Tをプレス成形にて形成する場合には、成形品にシワや、引っ張りによる薄肉部が形成されないように成形用ビードが設けられ、上記トンネル部3Tの上方位置には主としてシワ取り用の成形用ビード32が設けられるので、この成形用ビード32のデッドスペースを利用してハーネス29(いわゆる横断ハーネス)を配索することができるものである。
【0068】
また、上記成形用ビード32の後方位置に空調ユニット23が配設されたものである(図2、図8参照)。
【0069】
この構成によれば、空調ユニット23との干渉を防止してハーネス29(いわゆる横断ハーネス)を配索することができる。
【0070】
さらに、上記ダッシュロアパネル3のトンネル部3Tは、フロアパネル4のトンネル部4Tの前部位置で上方に拡大されたトンネル拡大部20を備えたものである(図2、図4参照)。
【0071】
この構成によれば、トンネル拡大部20により高い位置に形成される成形用ビード32を利用して、ハーネス29(いわゆる横断ハーネス)を配索することができる。
【0072】
なお、上記トンネル拡大部20について述べると、前部機関前輪駆動タイプの車両において、エンジン10を横置き配置し、排気系19をエンジン10後方にレイアウトしてトンネル部3T,4Tの車外側に導出する場合、エンジン10の排気効率を考慮して、上記排気系19をエンジン10上部の排気ポートから車両後方側下方に、所定の傾斜角で略直線状に延びるように形成すると、フロアパネル4のトンネル部4Tの前部には、排気系19に沿って上方に大きく突出して、該排気系19(特に、排気管)の傾斜角に対応するように傾斜した上壁面を備えるトンネル拡大部20が形成されるものである。
【0073】
加えて、上記ダッシュロアパネル3のトンネル部3T側方のダッシュロアパネル3上部位置に、車体後方に窪むブレーキブースタ取付け面3Dが形成され、上記成形用ビード32の車幅方向側方に形成されたブレーキブースタ取付け面3D下方空間に上記ハーネス29が配索されるように構成されたものである(図2、図9参照)。
【0074】
この構成によれば、次の如き効果がある。
【0075】
すなわち、衝突時のエンジン10との干渉防止と、クラッシュスペース確保と、のために制動用のブレーキブースタ25を上方かつ後方位置に配設した場合に生じるブレーキブースタ取付け面3D下方の空間を利用して、上記ハーネス29を略直線状に配索することができ。これにより、ハーネス29経路の短縮と、プロテクタおよびクリップ数の低減を図ることができる。
【0076】
また、ブレーキブースタ25はその軸線L2の前方が上方となるように傾斜して設けられ、上記ブレーキブースタ取付け面3Dが該ブレーキブースタ25の傾斜に対応して傾斜しているものである(図9参照)。
【0077】
この構成によれば、ブレーキブースタ取付け面3Dを、ブレーキブースタ25の傾斜に対応させたので、ダッシュロアパネル3のブレーキブースタ配設空間占有スペースを低減しつつ、上記ハーネス29(いわゆる横断ハーネス)の配索空間を確保することができる。
【0078】
さらに、上記成形用ビード32およびトンネル拡大部20を含むダッシュロアパネル3の車室内側面にインシュレータ33を配設し、上記成形用ビード32内に配設されたインシュレータ33の凹部に上記ハーネス29が配索されたものである(図8参照)。
【0079】
この構成によれば、インシュレータ33により断熱効果、遮音効果が得られると共に、インシュレータ33の凹部にハーネス29を配索することで、該ハーネス29の配索が安定し、特に、トンネル拡大部20の車外側に排気系19を配設した際の熱害防止を図ることができる。つまり、ハーネス配索の安定化と、熱害防止との両立を図ることができる。
【0080】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のダッシュパネルは、実施例のダッシュロアパネルに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の車両用ハーネスの配索構造を備えた車両の前部構造の概略斜視図
【図2】図1の要部拡大側面図
【図3】図2の平面図
【図4】車両用ハーネスの配索構造を車室内側から見た状態で示す斜視図
【図5】車両の前部構造をエンジンルーム下方から見た状態で示す斜視図
【図6】エアバッグセンサ取付けブラケットおよびその周辺構造を示す側面図
【図7】エアバッグセンサ取付けブラケットの斜視図
【図8】ダッシュロアパネルの車幅方向中央部で断面した構造を示す側面図
【図9】ブレーキブースタ取付け部で断面した構造を示す側面図
【図10】フロアシフト車を示す側面図
【符号の説明】
【0082】
3…ダッシュロアパネル(ダッシュパネル)
3D…ブレーキブースタ取付け面
3T…トンネル部
4…フロアパネル
4T…トンネル部
20…トンネル拡大部
23…空調ユニット
25…ブレーキブースタ
29…ハーネス
32…成形用ビード
33…インシュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルの車室内側に車幅方向に延びるハーネスが設けられる車両用ハーネスの配索構造であって、
上記ダッシュパネル下方の車幅方向中央部に設けられるトンネル部の上方位置に、該ダッシュパネルのトンネル部の成形性を確保するために車両前方に突出する成形用ビードが車幅方向に延びるように設けられ、該成形用ビードに対応する位置に上記ハーネスが配索されるように構成された
車両用ハーネスの配索構造。
【請求項2】
上記成形用ビードの後方位置に空調ユニットが配設された
請求項1記載の車両用ハーネスの配索構造。
【請求項3】
上記ダッシュパネルのトンネル部は、フロアパネルのトンネル部の前部位置で上方に拡大されたトンネル拡大部を備えた
請求項1または2記載の車両用ハーネスの配索構造。
【請求項4】
上記ダッシュパネルのトンネル部側方のダッシュパネル上部位置に、車体後方に窪むブレーキブースタ取付け面が形成され、
上記成形用ビードの車幅方向側方に形成されたブレーキブースタ取付け面下方空間に上記ハーネスが配索されるように構成された
請求項1〜3の何れか1に記載の車両用ハーネスの配索構造。
【請求項5】
ブレーキブースタはその軸線の前方が上方となるように傾斜して設けられ、上記ブレーキブースタ取付け面が該ブレーキブースタの傾斜に対応して傾斜している
請求項4記載の車両用ハーネスの配索構造。
【請求項6】
上記成形用ビードおよびトンネル拡大部を含むダッシュパネルの車室内側面にインシュレータを配設し、
上記成形用ビード内に配設されたインシュレータの凹部に上記ハーネスが配索された
請求項3〜5の何れか1に記載の車両用ハーネスの配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−190601(P2009−190601A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34219(P2008−34219)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】