車両用ブレーキシステム
【課題】助手席の乗員によるブレーキ操作装置の操作によりブレーキが作用させられるブレーキシステムの不都合を解決する。
【解決手段】運転席側ブレーキ操作装置と助手席側ブレーキ操作装置とを含む液圧ブレーキシステムにおいて1以下のアシスト係数を設定し、助手席乗員による助手席側ブレーキペダルの踏込みにより得られる踏力に掛け、それにより得られる助手席側踏力と、運転者による運転席側ブレーキペダルの踏込みにより得られる踏力とのうち、大きい方の踏力に基づいて液圧制御弁装置のリニアバルブへの供給電流を決定する(S14〜S17)。助手席側踏力に基づいて液圧ブレーキが作用させられても、実際より減少させられた助手席側踏力に基づいて供給電流を決定することができるため、助手席乗員により運転者が意図しない制動が行われても、助手席乗員の操作に応じたブレーキの作用力が得られるとともに運転者が感じる違和感や不満が少なくて済む。
【解決手段】運転席側ブレーキ操作装置と助手席側ブレーキ操作装置とを含む液圧ブレーキシステムにおいて1以下のアシスト係数を設定し、助手席乗員による助手席側ブレーキペダルの踏込みにより得られる踏力に掛け、それにより得られる助手席側踏力と、運転者による運転席側ブレーキペダルの踏込みにより得られる踏力とのうち、大きい方の踏力に基づいて液圧制御弁装置のリニアバルブへの供給電流を決定する(S14〜S17)。助手席側踏力に基づいて液圧ブレーキが作用させられても、実際より減少させられた助手席側踏力に基づいて供給電流を決定することができるため、助手席乗員により運転者が意図しない制動が行われても、助手席乗員の操作に応じたブレーキの作用力が得られるとともに運転者が感じる違和感や不満が少なくて済む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキシステムに関するものであり、特に、運転者の他に、助手席の乗員がブレーキを作用させることができる車両用ブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用ブレーキシステムは、例えば、下記の特許文献1および2に記載されているように、車両の運転者が操作可能な運転席側ブレーキ操作装置と、車両の助手席の乗員が操作可能な助手席側ブレーキ操作装置とを含む。特許文献1に記載の車両用ブレーキシステムは液圧により作用するブレーキを備え、運転席側ブレーキ操作装置は、運転席側ブレーキペダルの踏込みにより運転席側マスタシリンダの液圧室に液圧を発生させる装置とされている。運転席側ブレーキペダルと運転席側マスタシリンダとの間には操作力伝達用の液圧シリンダが設けられ、そのシリンダハウジングに運転席側ブレーキペダルが連結され、ピストンに、倍力装置のプッシュロッドが連結されている。ピストンのプッシュロッドとは反対側の部分からスペーサが延び出させられ、シリンダハウジングの端壁に当接するようにされており、運転席側ブレーキペダルが踏み込まれれば、シリンダハウジング内におけるピストンの位置が変わらないままシリンダハウジングが前進させられ、プッシュロッドが前方へ移動させられて、運転席側マスタシリンダの液圧室に液圧が発生させられる。また、助手席側ブレーキ操作装置は、助手席側ブレーキペダルおよび助手席側マスタシリンダを備え、助手席側マスタシリンダの液圧室はホースによって操作力伝達用シリンダの液圧室に連通させられている。したがって、助手席側ブレーキペダルが踏み込まれれば、助手席側マスタシリンダの液圧室に液圧が発生させられるとともに、操作力伝達用シリンダの液圧室に供給され、プッシュロッドがシリンダハウジングに対して前進させられる。それにより、倍力装置を介して運転席側マスタシリンダのピストンが前進させられ、運転席側マスタシリンダの液圧室に発生させられた液圧によりブレーキが作用させられる。助手席の乗員は、例えば、運転者によるブレーキ操作が遅れていたり、ブレーキの作用力が不足する場合に助手席側ブレーキペダルを踏み込み、ブレーキを遅れなく作用させたり、作用力の不足を補ったりすることができる。
【特許文献1】特開2000−272484公報
【特許文献2】特開平9−315273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このブレーキシステムにおいては、助手席乗員によるブレーキペダルの踏込みにより得られる操作量にそのまま対応した大きさのブレーキの作用力が得られるため、不都合な場合がある。例えば、助手席乗員の操作によるブレーキの作用は運転者が意図しないものであり、不要な場合もあり、また、操作が適切に行われなかったり、誤って行われることもあり、運転者に違和感や不満を持たせることがあるのである。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、助手席の乗員によるブレーキ操作装置の操作によりブレーキが作用させられる車両用ブレーキシステムにおける不都合の解決を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、(A)車両の運転者が操作可能な運転席側ブレーキ操作装置と、(B)前記車両の助手席の乗員が操作可能な助手席側ブレーキ操作装置と、(C)車両を制動するブレーキとそのブレーキの作用力を制御する作用力制御装置とを含むブレーキ装置とを含む車両用ブレーキシステムの作用力制御装置を、(a)前記運転席側ブレーキ操作装置の操作により入力される運転者側入力と前記助手席側ブレーキ操作装置の操作により入力される助手席側入力との両方に基づいて前記ブレーキの作用力に対応する制御量を決定する制御量決定部と、(b)その制御量決定部による制御量の決定における前記助手席側入力の影響度を変更する影響度変更部とを含むものとすることにより解決される。
運転席側ブレーキ操作装置および助手席側ブレーキ操作装置の代表的なものは、ブレーキペダルと、そのブレーキペダルの踏込みストロークを検出するストロークセンサあるいは踏力を検出する踏力センサとを含むものであるが、これに限定されるわけではない。例えば、手あるいはその他の身体部分によって操作されるブレーキレバーと、ストロークセンサあるいは操作力センサとを含むものとすることができる。手あるいはその他の身体部分によって操作され、作用力の大きさを指示することができるブレーキスイッチを含むものとすることもできる。
さらに、後に実施例の項で説明するように、制御量決定部および影響度変更部を機械的に構成することも可能である。
ブレーキは車両を制動できるものであればよく、例えば、液圧で作用する液圧ブレーキや、電動アクチュエータにより作用する電動ブレーキ等を採用することができる。
【発明の効果】
【0005】
影響度変更部による助手席側入力の制御量の決定における影響度の変更は、影響度が大きくなるように行うこともでき、小さくなるように行うこともできる。影響度変更部が影響度減少部とされ、影響度が小さくなるように変更が行われる場合、ブレーキの作用力は、運転席側入力のみに基づいて制御量が決定される場合より大きいが、助手席側入力が変更されることなく、そのまま制御量の決定に用いられる場合より小さい大きさとされ、運転者が意図する大きさより大きくなるが、その度合いが抑えられる。そのため、助手席乗員によるブレーキ操作が誤って行われたり、運転者に不適切あるいは不要と感じられる操作であっても、車両の余分な制動が少なくて済み、運転者が感じる違和感が少なくて済む。また、助手席乗員によるブレーキ操作が必要に応じて行われ、適切に行われた場合には、運転者が感じる違和感や不満を低減させ、あるいは解消しつつ、制動の遅れや作用力不足を低減させることができる。
また、影響度変更部が影響度増大部とされ、助手席側入力の影響度を大きくする変更は、例えば、運転者が男性であり、助手席乗員が女性である場合に行われるようにすれば、力に劣る女性によるブレーキ操作でも、制動に必要な作用力を得るようにすることができる。
制御量決定部は、運転席側入力と、助手席側入力とを選択して制御量の選択に用いる選択型制御量決定部としてもよく、助手席側入力を運転席側入力に上乗せして制御量の決定に用いる上乗せ型制御量決定部としてもよい。これら選択および上乗せに際しては、助手席側入力は影響度変更部により影響度を変更された上で用いられる。
【発明の態様】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来技術等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(4)項が請求項2に、(6)項が請求項3に、(7)項が請求項4に、それぞれ相当する。
【0008】
(1)車両の運転者が操作可能な運転席側ブレーキ操作装置と、
前記車両の助手席の乗員が操作可能な助手席側ブレーキ操作装置と、
車両を制動するブレーキとそのブレーキの作用力を制御する作用力制御装置とを含むブレーキ装置と
を含み、前記作用力制御装置が、
前記運転席側ブレーキ操作装置の操作により入力される運転者側入力と前記助手席側ブレーキ操作装置の操作により入力される助手席側入力との両方に基づいて前記ブレーキの作用力に対応する制御量を決定する制御量決定部と、
その制御量決定部による制御量の決定における前記助手席側入力の影響度を変更する影響度変更部と
を含む車両用ブレーキシステム。
(2)前記作用力制御装置が、前記ブレーキの作用力を機械的に制御する機械的制御装置と、その機械的制御装置を電気的に制御する電気的制御装置とを含み、電気的制御装置が前記制御量決定部および前記影響度変更部を含む(1)項に記載の車両用ブレーキシステム。
例えば、ブレーキが液圧ブレーキであれば、機械的制御装置が液圧制御弁を備えた液圧制御装置を含み、電気的制御装置が液圧制御弁を制御する弁制御部を含む構成とすることができ、ブレーキが電動ブレーキであれば、機械的制御装置が電動アクチュエータとその電動アクチュエータの運動をブレーキの運動に変換する運動変換機構とを含み、電気的制御装置が電動アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部を含む構成とすることができる。
(3)前記作用力制御装置における前記制御量決定部と前記影響度変更部とが共に機械的に構成された(1)項に記載の車両用ブレーキシステム。
例えば、制御量決定部を、運転者側入力と助手席側入力とを機械的に合成する入力合成装置とし、影響度変更部を、入力合成装置における運転者側入力と助手席側入力との合成比率を変更する合成比率変更部とすることや、制御量決定部を運転者側入力と助手席側入力とのうち大きい方を選択して制御量を決定する入力選択部とし、影響度変更部を、入力選択部に入力される助手席側入力を変更する助手席側入力変更部としたりすることができる。
(4)前記影響度変更部が、
車両の走行状態とその車両外部の走行環境状態との少なくとも一方を取得する状態取得部と、
その状態取得部により取得された状態に応じて前記影響度を自動で変更する自動影響度変更部と
を含む(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の車両用ブレーキシステム。
状態取得部は走行状態取得部と走行環境状態取得部との少なくとも一方を含むこととなる。
車両の走行状態や車両外部の走行環境状態によっては、助手席乗員の操作によるブレーキの作用が有効な場合もあれば、不適切な場合もあり、車両の走行状態と車両外部の走行環境状態との少なくとも一方を取得すれば、助手席側入力の影響度を適切に変更することが可能となる。
(5)前記状態取得部が、
前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部と、
前記車両の旋回状態を表す旋回状態量を取得する旋回状態量取得部と、
前記車両の前方に存在する前方物体を検出する前方物体検出部と、
前記車両の後方に存在する後方物体を検出する後方物体検出部と、
前記車両の走行路の情報を取得する走行路情報取得部と
のうちの少なくとも1つを含む(4)項に記載の車両用ブレーキシステム。
取得部や検出部が多く設けられ、取得される状態情報が多いほど、それら状態情報の組合わせにより、助手席側入力の影響度を適切に変更することができる。特に、車両に既存の装置により得られる状態を利用すれば、助手席乗員の操作に基づいて適切なブレーキ作用力が得られるブレーキシステムを安価に得ることができる。
(6)前記自動影響度変更部が、
前記車速取得部により取得された車速が大きい場合に小さい場合に比較して前記影響度を小さくする車速対応変更部と、
前記旋回状態量取得部により取得された旋回状態量が大きい場合に小さい場合に比較して前記影響度を小さくする旋回状態対応変更部と、
前記前方物体検出部により検出された前記前方物体と前記車両との接近度が大きい場合には小さい場合に比較して前記影響度を大きくする前方物体対応変更部と、
前記後方物体検出部により検出された前記後方物体と前記車両との接近度が大きい場合には小さい場合に比較して前記影響度を小さくする後方物体対応変更部と、
前記走行路情報取得部により取得された走行路の情報が車両制動の必要性が高いことを示す情報である場合に必要性が低いことを示す情報である場合に比較して前記影響度を大きくする走行路情報対応変更部と
のうち、前記状態取得部が含む前記少なくとも1つに対応するものを含む(5)項に記載の車両用ブレーキシステム。
車両の高速走行時には慎重なブレーキ操作が必要であり、本車速対応変更部による影響度の変更により、ブレーキの作用力が不要に増大させられて不適切な制動が行われることが回避される。
旋回状態量としては、例えば、横加速度やヨーレイトを採用可能である。旋回状態量が大きい状態では、ブレーキの作用力の大きさが車両の挙動に及ぼす影響が大きく、本旋回状態対応変更部による変更により、車両の走行安定性を保ちつつ、助手席乗員によるブレーキ操作に基づいて作用力を増大させることができる。
前方物体と車両との接近度が大きい場合には、車両を迅速に減速させ、あるいは停止させることが必要であり、本前方物体対応変更部によれば、助手席乗員によるブレーキ操作に基づいて大きい作用力が得られる。
後方物体が車両である場合、後方物体と車両との接近度が大きい場合には、ブレーキ作用力が大きくされ、車両の減速度が急増させられれば、後方車両の運転者を慌てさせる恐れがある。したがって、本後方物体対応変更部によれば影響度が小さく、ブレーキ作用力の増大が抑えられるため、車両の減速度の増大が抑えられ、後方車両の運転者を慌てさせることが回避される。ただし、後方物体が車両であるか静止物体であるかの判別が可能である場合、後方物体が静止物体であれば、車両である場合より影響度が大きくされるようにすることが望ましく、車両が後退中である場合には、後方物体と車両との接近度が大きい場合には小さい場合に比較して影響度が大きくされるようにすることが望ましく、助手席乗員によるブレーキ操作に基づいて大きい作用力が得られるようにすることが望ましい。
走行路情報には、例えば、走行路がカーブ路であること、先に交差点があること、先に一時停止箇所があること、走行路が下り坂であること、走行路が上り坂であること等があり、それら情報の各々について車両制動の必要性の高低が設定され、走行路情報対応変更部による変更により、車両制動の必要性の高さに対応したブレーキ作用力を得ることができる。
変更部が複数設けられる場合、複数の変更部による各変更が組み合わされて、影響度の変更度合が決められるようにすることが望ましい。例えば、各状態取得部により取得される状態に応じて各変更部の変更度合が設定され、複数の変更部のそれぞれ、状態に応じた変更度合が組み合わされて、助手席側入力を変更する変更度合が決められるようにするのであるが、この最終的な変更度合は、組合わせに応じて予め決められ、記憶部に記憶させられていてもよく、助手席乗員によるブレーキ操作時に、複数の変更部について得られる変更度合が組み合わされて決められるようにしてもよい。
(7)前記影響度変更部が、手動操作により前記影響度を変更可能な手動影響度変更部を含む(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の車両用ブレーキシステム。
本項の車両用ブレーキシステムにおいては、影響度変更部が、自動影響度変更部と手動影響度変更部との少なくとも一方を含むこととなる。自動影響度変更部は例えば上記(6)項に記載のものとすることができ、手動影響度変更部は、例えば、運転者と助手席の乗員との車両走行開始前の話合いにより、車両の制動について助手席の乗員がどの程度関与することが望ましいかを決め、その決定した関与の度合いに応じて影響度を設定し得るものが好適である。また、自動影響度変更部と手動影響度変更部との両方が設けられる場合には、それら両変更部が選択的に使用されるようにしたり、自動影響度変更部により設定された影響度と手動影響度変更部により設定された影響度との積あるいは和が最終的な影響度とされるようにしたりすることができる。
【実施例】
【0009】
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0010】
図1に請求可能発明に係る車両用ブレーキシステムが概略的に図示されている。本車両用ブレーキシステムは、液圧ブレーキを備えた液圧ブレーキシステムである。本車両用液圧ブレーキシステムは、車両の運転者が操作可能な運転席側ブレーキ操作装置10と、助手席の乗員が操作可能な助手席側ブレーキ操作装置12と、ブレーキ装置14とを含む。運転席側ブレーキ操作装置10は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル18(以後、必要に応じて運転席側ブレーキペダル18と称する)と、ブレーキペダル18の操作量である踏力を検出する操作量センサとしての踏力センサ20とを含む。
【0011】
ブレーキペダル18は、図2に示すように、車体(図2においては図示省略)に軸21により回動可能に取り付けられ、踏力センサ20はブレーキペダル18の回動軸線側の部分に取り付けられている。ブレーキペダル18には、ブレーキブースタ22(図1参照)の入力ロッド24が軸26および長穴28により、入力ロッド24の軸線上における相対移動が許容されるように互いに連結されている。長穴28はブレーキペダル18に設けられ、軸26は長穴28に挿通されるとともに、入力ロッド24の一端部に設けられたヨーク部30により両端を支持されている。
【0012】
ブレーキペダル18にはまた、概して板状を成すレバー34が軸36により、ブレーキペダル18の回動軸線と平行な軸線まわりに回動可能に取り付けられるとともに、レバー34に形成された穴(図示省略)に上記軸26が挿通されている。この穴の直径は軸26の直径より僅かに大きくされており、レバー34とヨーク部30とが相対回動を許容しつつ、入力ロッド24の軸方向に一緒に運動する。レバー34の軸26から上方へ延び出させられた延出端部は、踏力センサ20と対向させられている。本踏力センサ20は、本体40,本体40に移動可能に保持された検出子42および歪みゲージを含み、検出子42により伝達される荷重を検出する荷重検出器(図示省略)を備え、ブレーキペダル18の踏力に対応する信号を出力するように構成されている。
【0013】
レバー34は、踏力センサ20側へ突出させられたスプリング保持部44を備え、踏力センサ20の本体40との間にスプリング46を保持し、その自由端部が踏力センサ20から離れる向きに付勢されている。レバー34のブレーキペダル18に対する回動は、ブレーキペダル18に設けられたストッパ48により規制される。また、図示は省略するが、ブレーキペダル18は、車体との間に配設されたリターンスプリングにより原位置、すなわち踏込み操作されていない位置へ復帰する向きに付勢されている。
【0014】
運転者によってブレーキペダル18が踏み込まれれば、踏力は、軸36からレバー34および入力ロッド24に伝達されるとともに、踏力センサ20を介してレバー34および入力ロッド24に伝達され、入力ロッド24が前進させられる。それに伴って入力ロッド24からの反力により、レバー34はスプリング46の付勢力に抗して軸36の軸線まわりに踏力センサ20に接近する向きに回動させられ、検出子42に荷重を加え、検出子42が移動させられる。それにより、荷重検出器に荷重が加えられ、踏力に応じた信号が出力される。
【0015】
前記助手席側ブレーキ操作装置12は、図1に示すように、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル50(以後、必要に応じて助手席側ブレーキペダル50と称する)と、ブレーキペダル50の操作量である踏力を検出する操作量センサとしての踏力センサ52とを含む。助手席側ブレーキペダル50は、図3に示すように、車体の助手席側の部分に軸53により回動可能に取り付けられており、踏力センサ52は助手席側ブレーキペダル50の回動軸線側の部分に取り付けられている。
【0016】
踏力センサ52は、運転席側ブレーキ操作装置10の踏力センサ20と同様に構成されており、その検出子42にレバー54により荷重が加えられる。レバー54はブレーキペダル50に軸56により、ブレーキペダル50の回動軸線と平行な軸線まわりに回動可能に取り付けられ、その自由端部に設けられたスプリング保持部58と踏力センサ52との間に配設された圧縮コイルスプリング60により、踏力センサ52から離れる向きに付勢されている。このスプリング60の付勢によるレバー54の回動は、ブレーキペダル50に設けられたストッパ62にレバー54が当接することにより規制される。また、ブレーキペダル50は、車体64との間に配設されたリターンスプリング66によって原位置へ復帰する向きに付勢されており、ブレーキペダル50の原位置は、車体64に設けられたストッパ68により規定される。スプリング66は、後述するストロークシミュレータによって運転席側ブレーキペダル18に付与される反力と同様の反力を助手席側ブレーキペダル50に与えることができるものとされ、また、スプリング60,66のばね力は、ブレーキペダル50が原位置に位置する状態においてレバー54がストッパ62に当接し、スプリング保持部58と検出子42との間に僅かに隙間が生じ、踏力センサ52が踏力を検出しない状態となる大きさに設定されている。
【0017】
ブレーキペダル50は助手席乗員によって踏み込まれるとき、リターンスプリング66の付勢力に抗して回動させられる。ブレーキペダル50の回動に伴ってリターンスプリング66の引張力が増大させられ、その引張力によりレバー54はスプリング60の付勢力に抗して回動させられ、検出子42に当接して本体40内に引っ込む向きに移動させ、荷重検出器に荷重を加えさせる。リターンスプリング66の引張力は助手席乗員がブレーキペダル50に加える踏力に対応しており、荷重検出器により踏力に応じた信号が出力され、踏力が検出される。
【0018】
前記ブレーキ装置14は、図1に示すように、左右前後に位置する車輪にそれぞれ設けられ、車両を制動する液圧ブレーキ70,72,74,76および液圧ブレーキ70〜76の作用力を制御する作用力制御装置78を含む。液圧ブレーキ70〜76は、それぞれホイールシリンダ80,82,84,86を備え、ホイールシリンダ80〜86の液圧(ホイールシリンダ圧と称する)によって作用させられる。液圧ブレーキ70〜76は、例えば、車輪とともに回転するブレーキディスク88,90,92,94に、非回転体に保持された摩擦材としてのブレーキパッドを液圧によって押し付けるディスクブレーキである。
【0019】
作用力制御装置78は、液圧ブレーキ70〜76の作用力を機械的に制御する機械的制御装置たる液圧制御装置100と、液圧制御装置100を電気的に制御するブレーキECU102とを含む。液圧制御装置100は、マスタシリンダ110,液圧制御弁装置112および動力により作動させられる動力液圧源114を含む。マスタシリンダ110は2つの加圧ピストンを含むものであり、2つの加圧ピストンのそれぞれの前方の加圧室には、運転者による運転席側ブレーキペダル18の操作により、ブレーキブースタ22を介してブレーキペダル18の操作力に応じた液圧が発生させられる。マスタシリンダ110の2つの加圧室には、それぞれ、マスタ通路116,118を介して左右前輪のホイールシリンダ80,82が接続されている。マスタ通路116,118の途中には、それぞれ、マスタ遮断弁120,122が設けられている。マスタ遮断弁120,122は常開の電磁開閉弁である。
【0020】
また、動力液圧源114には、4つのホイールシリンダ80〜86がポンプ通路124を介して接続されている。ホイールシリンダ80〜86には、マスタシリンダ110から遮断された状態で動力液圧源114から液圧が供給され、液圧ブレーキ70〜76が作用させられる。ホイールシリンダ80〜86の液圧は液圧制御弁装置112により制御される。このように、左右前後輪のホイールシリンダ80〜86は、動力液圧源114の液圧によって作動可能なものであり、運転席側ブレーキペダル18の非操作状態でも作動可能であるが、ブレーキペダル18の操作時には、左右前輪のホイールシリンダ80,82はマスタシリンダ110の液圧(マスタ圧と称する)によっても作動可能である。
【0021】
動力液圧源114は、ポンプ126およびそのポンプ126を駆動するポンプモータ128を備えたポンプ装置130を含む。ポンプ126の吸入側は吸入通路132を介してマスタリザーバ134に接続され、吐出側にはアキュムレータ136が接続されている。ポンプ126によってリザーバ134の作動液が汲み上げられてアキュムレータ136に供給され、加圧された状態で蓄えられる。また、ポンプ126の吐出側の部分と吸入側の部分とが戻し通路としてのリリーフ通路140によって接続されている。リリーフ通路140にはリリーフ弁142が設けられている。リリーフ弁142は、高圧側であるポンプ126の吐出側の液圧(吐出圧)が設定圧を超えると閉状態から開状態に切り換わる。これらポンプ装置130,アキュムレータ136,リリーフ弁142等によって動力液圧源114が構成されている。
【0022】
液圧制御弁装置112は、ポンプ通路124に設けられた液圧制御弁の一種である電磁制御弁としての増圧リニアバルブ150,152,154,156と、ホイールシリンダ80〜86とリザーバ134とを直接接続する減圧通路158に設けられた電磁制御弁としての減圧リニアバルブ160,162,164,166とを含む。これら増圧リニアバルブ150〜156と減圧リニアバルブ160〜166との制御によりホイールシリンダ80〜86の液圧がそれぞれ別個独立に制御され得る。増圧リニアバルブ150〜156および前輪側の減圧リニアバルブ160,162は、コイル170に電流が供給されない間は、閉状態にある常閉弁であるが、後輪側の減圧リニアバルブ164,166は、コイル172に電流が供給されない間は開状態にある常開弁である。
【0023】
マスタ通路116には、ストロークシミュレータ装置180が設けられる。ストロークシミュレータ装置180は、ストロークシミュレータ182と常閉の電磁開閉弁から成るシミュレータ制御弁184とを含み、シミュレータ制御弁184の開閉により、ストロークシミュレータ182がマスタシリンダ110の加圧ピストンの前進を許容するとともに運転席側ブレーキペダル18に操作反力を付与する作用状態と、その作用を為さない非作用状態とに切り換えられる。
【0024】
本液圧制御装置100は、図1に示すように、前記ブレーキECU102の指令に基づいて制御される。ブレーキECU102は、コンピュータを主体とする電子制御ユニットで、実行部190,記憶部192,入出力部194等を含む。入出力部194には、前記踏力センサ20,52,マスタ圧センサ196,ホイールシリンダ圧センサ198,車輪速センサ200,液圧源液圧センサ202,車速等演算装置204,ヨーレイトセンサ206,手動影響度変更指示装置ないし手動影響度変更設定装置たる助手席側入力影響度変更スイッチ208等が接続されるとともに、増圧リニアバルブ150〜156および減圧リニアバルブ160,162のコイル170、減圧リニアバルブ164,166のコイル172、マスタ遮断弁120,122,シミュレータ制御弁184の各コイル、およびポンプモータ128等が図示しない駆動回路を介して接続されている。
【0025】
車速等演算装置204は、車輪速センサ200の出力に基づいて車輪速,車輪減速度,車速(車両の走行速度)および車両減速度等を演算し、ブレーキECU102に供給するものである。また、助手席側入力影響度変更スイッチ208は、車両の制動について助手席乗員がどの程度関与するかを設定するスイッチであり、例えば、インストルメントパネルに設けられる。本液圧ブレーキシステムにおいては助手席側ブレーキ操作装置12が設けられ、助手席乗員も液圧ブレーキ70〜76を作用させることができるようにされているが、この作用は運転者が意図しない作用である。そのため、本システムでは、運転者に違和感や不満を持たせることがないように、車両前進時に、後述するように、車両の走行状態等に応じて、助手席乗員のブレーキペダル50の踏込みによる入力である踏力(以後、場合に応じて助手席側踏力と称する)が減少させられ、リニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流の決定における助手席側踏力の影響度が低減され、助手席側踏力に基づいて液圧ブレーキ70〜76が作用させられる場合、助手席側踏力そのものに基づいて液圧ブレーキ70〜76が作用させられる場合より、液圧ブレーキ70〜76の作用力を小さくすることができるようにされており、本システムでは、助手席側踏力の影響度の低減が自動および手動で行われるようにされているのである。影響度は、自動的に決められ、影響度を自動的に変更する係数(自動変更アシスト係数と称する)と、手動で決められ、影響度を手動で変更する係数(手動変更アシスト係数と称する)との積である最終アシスト係数により決められ、助手席側踏力に最終アシスト係数を掛けることにより、リニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流を決定する際の助手席側踏力が得られる。自動変更アシスト係数は、本システムでは、0以上、1以下の値とされる。自動変更アシスト係数の算出については後述する。
【0026】
手動変更アシスト係数は、助手席側入力影響度変更スイッチ208により設定される。このスイッチ208は、手動により影響度を変更する装置であり、例えば、回動操作され、0および1を含むとともに、0から1の間で複数段階に設定された複数種類の手動変更アシスト係数のうちの1つを選択するものとされている。
【0027】
手動変更アシスト係数が0より大きく、1より小さい値とされる場合、最終アシスト係数は自動変更アシスト係数より小さい値とされ、影響度が減少させられる。手動変更アシスト係数が0の場合、影響度は0であり、助手席乗員が車両の制動に全く関与しないことを表し、助手席乗員がブレーキペダル50を踏み込んでも、それに基づく液圧ブレーキ70〜76の作用は行われない。手動変更アシスト係数が0に設定されれば、助手席乗員によるブレーキ操作に基づく液圧ブレーキ70〜76の作用が禁止されることとなるのである。また、手動変更アシスト係数が1に設定された場合には、影響度は、自動変更アシスト係数のみによって決まり、影響度の自動変更のみが行われることとなる。この際、自動変更アシスト係数が1であれば、影響度は減少させられず、助手席側踏力は低減させられず、そのままの大きさとされ、自動変更アシスト係数が0より大きく、1より小さい値であれば、自動変更アシスト係数のみによって決まる影響度で助手席側踏力が減少させられ、自動変更アシスト係数が0であれば、影響度は0となる。
【0028】
ブレーキECU102にはまた、図1に示すように、ナビゲーションシステム220のナビゲーションECU222が接続されている。ナビゲーションECU222は、地図情報データ等が記憶された記憶部等を備えており、ナビゲーションシステム220は、車両の目的地までの案内ルート情報等を画面表示により知らせる。ブレーキECU102にはさらに、クルーズコントロールシステム224のクルーズコントロールECU226が接続されている。クルーズコントロールシステム224は、例えば、車速が目標車速に近づくようにスロットルバルブの開度を調整する定速制御や、先行車の車速変化に合わせて適切な車間距離を保てるようにスロットルバルブの開度を調整する追従制御を行うシステムであり、クルーズコントロールECU226には、レーザレーダ装置228が接続されている。レーザレーダ装置228は、車体前部の、例えば、バンパの下方に取り付けられており、車両の前方に向けてレーザ光を照射し、その反射光により車両等、前方物体の有無を検出し、車間距離,相対速度等を演算し、クルーズコントロールECU226に供給する。さらにまた、ブレーキECU102には、車両後方の状況を検出する車両後方状況検出システム230が接続されている。車両後方状況検出システム230は、車両後方状況検出ECU232を備え、例えば、車体後部中央に設けられたレーザレーダ234が接続されており、レーザレーダ234において受光される反射光に基づいて車両等、後方物体の有無を検出し、車間距離,相対速度等を演算する。なお、レーザレーダに代えて、カメラの撮像により得られる画像データに基づいて、車両前方状況あるいは車両後方状況が取得されるようにしてもよい。
【0029】
また、ブレーキECU102の記憶部192には、図4に示す影響度自動変更用データないし自動変更アシスト係数設定用データ,図示を省略するメインルーチン,図5に示す最終アシスト係数決定プログラムおよび図6に示すリニアバルブへの供給電流決定プログラム等が記憶されており、実行部190によってこれらプログラムが実行されることにより、運転者による運転席側ブレーキ操作装置10の操作あるいは助手席乗員による助手席側ブレーキ操作装置12の操作に基づいて液圧ブレーキ70〜76が作用させられる。ブレーキECU102は電源投入に応じて、図示しない初期設定を行った後、最終アシスト係数決定プログラム等を繰り返し実行する。
【0030】
本液圧ブレーキシステムは原則として電子制御モードで作動する。運転者によりブレーキペダル18が踏み込まれれば、マスタ遮断弁120,122が閉状態とされることによりホイールシリンダ80〜86がマスタシリンダ110から遮断され、動力液圧源114の液圧により液圧ブレーキ70〜76が作用させられるのである。踏力センサ20によって検出された踏力に基づいて運転者の制動要求値(本実施例では要求ホイールシリンダ圧)が求められる。そして、制動要求値に基づいて制御指令値(本実施例では各増圧リニアバルブ150〜156,減圧リニアバルブ160〜166のコイル170,172への供給電流の指令値である指令電流)が決定され、コイル170,172への供給電流が制御されて、実際のホイールシリンダ圧が指令電流に対応する指令液圧に近づくようにされる。
【0031】
本液圧ブレーキシステムは助手席側ブレーキ操作装置12を備えており、助手席乗員は、運転者が運転席側ブレーキペダル18を踏み込んで車両の制動を行っている場合でも、あるいは運転者がブレーキ操作を行っていない場合でも、助手席側ブレーキペダル50を踏み込み、その踏込みに基づいて液圧ブレーキ70〜76を作用させ、運転者によるブレーキ操作を補助することができる。いずれの場合も、前述のように、助手席側踏力に最終アシスト係数が掛けられることにより、リニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流を決定するための助手席側踏力が得られ、その供給電流の決定における助手席側踏力の影響度を小さくし、助手席乗員によるブレーキ操作に基づいて液圧ブレーキ70〜76が作用させられる場合、助手席側踏力に応じた作用力を得つつ、運転者の違和感や不満が少なくて済むようにすることができる。また、助手席乗員によるブレーキ操作が不適切であっても、車両の制動状態に及ぼす影響が小さくて済むようにすることができる。
【0032】
自動変更アシスト係数は次式に従って自動的に算出され、0以上、1以下の値である。
自動変更アシスト係数=1−(引き下げ係数の和)×(1−引き下げ禁止係数の和)
但し、0≦引き下げ係数の和≦1、0≦引き下げ禁止係数の和≦1
引き下げ係数は自動変更アシスト係数を引き下げる係数であり、引き下げ係数が大きいほど、自動変更アシスト係数が小さくなって助手席側踏力が小さくされる。影響度が小さくされるのである。引き下げ禁止係数は自動変更アシスト係数の引き下げを禁止する係数であり、引き下げ禁止係数が大きいほど、自動変更アシスト係数が大きくなって助手席側踏力の減少度が小さくされる。影響度の減少が抑えられ、影響度が大きくされるのである。
【0033】
これら引き下げ係数および引き下げ禁止係数は、車両の走行状態および車両外部の走行環境状態に応じて設定され、自動変更アシスト係数は、これら状態に応じて自動的に決定される。本実施例のシステムでは、車両の走行状態は、例えば、車両の走行速度である車速および旋回状態量の一種であるヨーレイト(回転角速度)により表される車両の旋回状態により取得され、車両外部の走行環境状態は、例えば、車両の前方における物体の存在の有無,接近度、車両の後方における物体の存在の有無,接近度および走行路の状態により取得される。
【0034】
車速は車速等演算装置204により算出され、また、ヨーレイトはヨーレイトセンサ206により検出されて、ブレーキECU102に供給される。さらに、車両の前方に物体、例えば、車両が存在するか否かの情報は、クルーズコントロールECU226においてレーザレーダ装置228による前方状況の検出に基づいて取得され、ブレーキECU102に供給される。車両の後方に物体、例えば、車両が存在するか否かの情報は、車両後方状況検出システム230においてレーザレーダ234の受光データに基づいて取得され、ブレーキECU102に供給される。車両の前方あるいは後方に物体が存在する場合、その物体との距離および相対速度も取得され、クルーズコントロールECU226あるいは車両後方状況検出ECU232からブレーキECU102に供給される。本車両と前方あるいは後方の物体との距離の変化や相対速度の変化により、その物体が車両であるか否かがわかる。さらにまた、走行路の状態は、例えば、車両がカーブを走行中であるか、あるいは先に交差点があるかであり、それらに関する情報は、ナビゲーションECU222において地図情報データおよび自車位置データに基づいて取得され、ブレーキECU102に供給される。
【0035】
前記引き下げ係数および引き下げ禁止係数は、図4に示すように、本実施例の車両用ブレーキシステムにおける車両の走行状態および車両外部の走行環境状態として先に例示した車速,ヨーレイト,走行路,前方物体および後方物体の5種類の情報の各内容に応じて設定され、データベース化されて記憶部192に記憶させられている。車両の走行状態あるいは車両外部の走行環境状態によっては、助手席乗員によるブレーキペダル50の踏込みによりブレーキが効いた方がよい場合、あまり効かない方がよい場合およびブレーキの効きが車両の走行安定性や制動の妥当性に影響を及ぼさない場合があり、各情報の内容毎に、助手席乗員によるブレーキ操作に基づく液圧ブレーキ70〜76の作用が車両の走行安定性等に及ぼす影響を考慮して、自動変更アシスト係数の引き下げが必要であるか否か、引き下げの禁止が必要であるか否か、引き下げも引き下げ禁止も不要であるかが決められている。そして、情報内容が引き下げが必要な内容であれば、引き下げ係数が設定され、引き下げ禁止が必要な内容であれば、引き下げ禁止係数が設定され、ブレーキの効きが車両の走行安定性等に影響を及ぼさず、自動変更アシスト係数の引き下げも引き下げ禁止も不要な内容であれば、自動変更アシスト係数の決定における不使用が設定される。不使用の設定についても、データベースのデータの一部として記憶部192に記憶させられている。
【0036】
情報内容が不使用の場合、コンピュータの演算処理上、引き下げ係数および引き下げ禁止係数がいずれも0として取り扱われる。そのため、本実施例では、引き下げ係数および引き下げ禁止係数はそれぞれ、0以上、1より小さい値であり、係数0は、情報内容が不使用な内容であることを意味する。したがって、情報内容が自動変更アシスト係数の引き下げあるいは引き下げ禁止が必要な内容であり、自動変更アシスト係数の算出に使用される内容であれば、引き下げ係数あるいは引き下げ禁止係数は0より大きく、1より小さい範囲で設定されることとなる。以下の説明において引き下げ係数あるいは引き下げ禁止係数は、文字通り、自動変更アドレス係数を引き下げ、引き下げを禁止する係数として使用する。
【0037】
引き下げ係数は、本実施例では、5種類の情報の全部についてそれぞれ設定されるようにされており、それが設定される情報内容のレベルに応じて決められる可変の値である。ただし、5種類の情報についてそれぞれ設定された引き下げ係数A1〜E1は、各最大値の和が1を超えることがない大きさとされ、5種類の情報の内容がいずれも、自動変更アシスト係数の引き下げが必要な内容であっても、引き下げ係数の和が1を超えることがないようにされている。また、引き下げ係数A1〜E1の各最大値は、引き下げ係数A1〜E1がそれぞれ設定される情報が得られる状態において助手席乗員によりブレーキペダル50の踏込み操作が行われた場合に車両の走行安定性,制動の妥当性等に及ぼす影響を考慮し、その影響が大きいほど大きい値に設定される。本システムでは、例えば、車速が設定速度より大きい場合および走行路がカーブである場合について、助手席乗員によりブレーキ操作が行われれば、車両走行安定性等に対する影響度が大きいとされ、各場合について設定される引き下げ係数A1および引き下げ係数C1の各最大値は、他の状態について設定される引き下げ係数B1,D1およびE1の各最大値より大きい値とされている。
【0038】
そして、車速については、設定速度以下の場合には不使用とされ、設定速度より大きい場合に自動変更アシスト係数の引き下げが必要とされ、引き下げ係数A1が設定される。本システムでは、設定速度を超える車速が複数段階に分けられ、各段階毎に引き下げ係数A1が設定され、車速が大きくなるほど引き下げ係数A1が大きくなるように引き下げ係数設定データが作成されている。
また、ヨーレイトについては、車速が設定速度を超え、ヨーレイトも設定値を超える場合に、自動変更アシスト係数の引き下げが必要とされ、引き下げ係数B1が設定され、それ以外の場合は不使用とされる。本システムでは、設定値を超えるヨーレイトが複数段階に分けられ、各段階毎に引き下げ係数B1が設定され、ヨーレイトが大きいほど引き下げ係数B1が大きくなるように引き下げ係数設定データが作成されている。
【0039】
さらに、走行路については、カーブである場合、車速が設定速度を超える状態において自動変更アシスト係数の引き下げが必要とされ、引き下げ係数C1が設定され、車速が設定速度以下の状態では不使用とされる。本システムでは、設定速度を超える車速が複数段階に分けられ、各段階毎に引き下げ係数C1が設定され、車速が大きいほど引き下げ係数C1が大きくなるように引き下げ係数設定データが作成されている。
【0040】
さらにまた、前方物体については、前方に接近障害物がない場合に自動変更アシスト係数の引き下げが必要とされ、引き下げ係数D1が設定される。接近障害物は、本液圧ブレーキシステムを備えた車両(以後、本車両と略称する)の前方にあり、本車両との距離が短く、時間の経過につれて本車両との距離が短くなるものであり、前方に接近障害物が全く存在しない場合は勿論、あっても、時間の経過につれて本車両との距離が長くなり、本車両から離れていっている離間物体である場合および本車両との距離が設定距離より長い場合には接近障害物なしとされ、引き下げ係数D1が設定される。この場合、引き下げ係数D1は、前方に接近障害物が全く存在しない場合および前方物体が離間物体である場合に最大値とされ、前方に接近障害物があるが、本車両との距離が設定距離より長い場合には、引き下げ係数D1は、本車両と前方物体との距離および接近速度に基づいて決められ、距離が短く、接近速度が大きいほど小さい値に設定される。本実施例では、例えば、これら距離と接近速度とに基づいて引き下げ係数D1を決めるテーブルが予め作成され、引き下げ係数設定データとして記憶させられている。テーブルは、例えば、距離と接近速度とがそれぞれ、複数段階に分けられ、各段階の組合わせに応じて引き下げ係数D1が決められるものとされている。距離および接近速度は、本車両と前方物体との接近度を表し、引き下げ係数D1は、接近度に応じて決められ、接近度が高いほど小さい値とされる。なお、距離と接近速度とのいずれか一方に基づいて引き下げ係数D1が決められてもよい。
【0041】
さらに、後方物体については、後方に接近車両がある場合、自動変更アシスト係数の引き下げが必要とされ、引き下げ係数E1が設定される。後方に接近車両が全く存在しない場合は勿論、あっても本車両との距離が設定距離より長い場合には、後方に接近車両なしとされ、不使用とされる。後方に車両が存在し、かつ、本車両との距離が設定距離以下である場合に後方に接近車両ありとされ、その場合に引き下げ係数E1は、本車両と接近車両との距離および接近速度に基づいて決められ、距離が短く、接近速度が大きいほど大きい値に設定される。本実施例では、上記引き下げ係数D1の場合と同様に、距離と接近速度とに基づいて引き下げ係数E1を決めるテーブルが予め作成され、引き下げ係数設定データとして記憶させられている。引き下げ係数E1も接近度に応じて決められるのであり、接近度が高いほど大きい値となるようにテーブルが作成されている。
【0042】
引き下げ禁止係数は、本実施例では、5種類の情報のうち、走行路情報および前方物体情報について設定されており、それが設定される情報内容のレベルに応じて決められる可変の値である。ただし、2種類の引き下げ禁止係数C2,D2は、2種類の情報の内容が共に、自動変更アシスト係数の算出に引き下げ禁止係数が使用される内容であっても、引き下げ禁止係数C2,D2の各最大値の和が1を超えることがない大きさに設定されている。
【0043】
走行路については、先に交差点がある路面である場合、自動変更アシスト係数の引き下げ禁止が必要とされ、引き下げ禁止係数C2が設定される。引き下げ禁止係数C2は、本車両と交差点との距離が短いほど大きい値とされる。例えば、本車両から交差点までの距離が複数段階に分けられ、各段階毎に引き下げ禁止係数C2が設定されるのであるが、距離が短いほど引き下げ禁止係数C2が大きい値となるように引き下げ禁止係数設定データが作成されている。距離が接近度を表し、引き下げ禁止係数C2は接近度が大きいほど大きい値に設定される。走行路情報については、引き下げ係数C1,引き下げ禁止係数C2が設定される場合以外は不使用とされる。
【0044】
また、前方に接近障害物がある場合、すなわち前方に本車両との距離が設定距離以下の範囲に、時間の経過につれて本車両との距離が短くなっている障害物がある場合、自動変更アシスト係数の引き下げ禁止が必要とされ、引き下げ禁止係数D2が設定される。例えば、本車両と接近障害物との距離が複数段階に分けられ、各段階毎に引き下げ禁止係数D2が設定されるのであるが、距離が短いほど引き下げ禁止係数D2が大きい値となり、接近度が大きいほど引き下げ禁止係数D2が大きい値となるように引き下げ禁止係数設定データが作成されている。
【0045】
なお、上記のように自動変更アシスト係数は、車両走行状態等に応じて決められ、自動変更アシスト係数と手動変更アシスト係数との積により最終アシスト係数が決められるのであるが、本システムにおいては、手動変更アシスト係数が0以上、1以下の値とされており、最終アシスト係数は自動変更アシスト係数より大きい値とされることはなく、変更されないか、あるいは小さい値とされる。リニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流の決定における助手席側踏力の影響度が、自動変更アシスト係数のみによって決められる場合と同じであるか、それより減少させられるようにされているのであり、そのため、自動変更アシスト係数の引き下げあるいは引き下げ禁止が必要とされるとき、各種引き下げ係数および引き下げ禁止係数は、それぞれについて設定された最大値以下の範囲において、自動変更アシスト係数が大きめの値となるように係数設定データが作成される。
【0046】
以下、図5および図6にフローチャートで示すプログラムに基づいて最終アシスト係数の決定およびリニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流の決定を説明する。
図5に示す最終アシスト係数決定ルーチンのステップ1(以後、S1と略記する。他のステップについても同じ。)においては、助手席乗員によるブレーキペダル50の踏込み操作に基づく液圧ブレーキ70〜76の作用が禁止されているか否かの判定が行われる。この判定は助手席側入力影響度変更スイッチ208により、手動変更アシスト係数が0に設定されているか否かに基づいて行われる。助手席乗員の操作による液圧ブレーキ70〜76の作用が禁止されていれば、S1の判定結果はYESになってルーチンの実行は終了する。
【0047】
助手席乗員の操作による液圧ブレーキ70〜76の作用が禁止されている場合、リニアバルブへの供給電流決定ルーチンのS11における判定結果もYESになってS21が実行され、運転席側ブレーキペダル18が踏込み操作されているか否かの判定が行われる。この判定は、踏力センサ20の検出信号に基づいて行われ、踏力が検出されていれば、運転席側ブレーキペダル18が踏み込まれていることがわかる。運転者が運転席側ブレーキペダル18を踏込み操作していなければ、S21の判定結果はNOになってルーチンの実行は終了する。また、運転者が運転席側ブレーキペダル18を踏み込んでいれば、S21の判定結果はYESになってS22が実行され、踏力センサ20により検出される運転席側踏力に基づいてリニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流が決定される。
【0048】
助手席乗員による操作に基づく液圧ブレーキ70〜76の作用が禁止されていなければ、図5に示す最終アシスト係数決定ルーチンのS1の判定結果がNOになってS2が実行され、車両の走行状態および車両外部の走行環境状態が取得される。ブレーキECU102に供給された車速,ヨーレイト,車両前後における物体の存在の有無,物体が存在する場合の物体との距離,相対速度,走行路の状態が読み込まれるのである。次いでS3が実行され、S2において読み込まれた状態に基づいて自動変更アシスト係数が演算される。
【0049】
この際、読み込まれた情報の内容と、データベースに記憶させられている係数設定データとに基づいて、情報内容毎に、自動変更アシスト係数の引き下げが必要か、あるいは引き下げ禁止が必要か、あるいは情報内容が不使用かが決められる。前述のように、引き下げ係数および引き下げ禁止係数は、それらが設定された情報内容のレベルに応じて変わる値であり、S3では、S2において読み込まれた情報に基づいて、情報内容のレベルに応じた値に引き下げ係数および引き下げ禁止係数が決められる。
【0050】
引き下げ係数が設定される内容が複数あれば、各内容について設定された引き下げ係数が合算され、引き下げ禁止係数が設定された内容が複数あれば、各内容について設定された引き下げ禁止係数が合算される。例えば、図7に表にして例示するように、車両が高速でコーナを走行中であり、回転角速度が大きく、かつ、前方に接近障害物、例えば、別の車両がなく、あるいはあっても接近障害物ありとされる範囲になく、後方に車両がなく、あるいはあっても接近車両ありとされる範囲にない場合、後方物体については情報不使用であり、それ以外の情報については引き下げ係数が決められ、決められた引き下げ係数A1,B1,C1およびD1を使用して自動変更アシスト係数が次式によって算出される。引き下げ禁止係数は使用されないため、引き下げ禁止係数の和は0である。
自動変更アシスト係数=1−(A1+B1+C1+D1)×(1−0)
0<A1+B1+C1+D1<1
【0051】
また、図8に表にして例示するように、車両が交差点直前を高速で直進走行中であり、かつ、前方に接近障害物があり、後方に接近車両がある場合には、車速および後方物体については引き下げ係数が設定され、走行路および前方物体については引き下げ禁止係数が設定される。車両が直進中であるため、旋回状態量は関係なく、自動変更アシスト係数の算出に使用されず、自動変更アシスト係数は次式によって算出される。自動変更アシスト係数は、引き下げ禁止係数C2とD2との和が1より小さい場合には、0より大きく、1より小さい値となり、引き下げ禁止係数C2およびD2がそれぞれ最大値であり、その和が1である場合には、1になる。なお、下記式では、不使用の場合の係数0の記載は省略されている。
自動変更アシスト係数=1−(A1+E1)×[1−(C2+D2)]
ただし、0<A1+E1<1,0<C2+D2≦1である。
【0052】
さらに、車両の走行状態や車両外部の走行環境状態によっては、自動変更アシスト係数の算出式の引き下げ係数の和の項が0になり、自動変更アシスト係数が1になることがあり得る。例えば、車速およびヨーレイトが小さく、走行路がカーブであり、前方に接近障害物があり、後方に接近車両がない場合、前方物体については引き下げ禁止係数D2が設定され、その他の情報については不使用とされる。そのため、引き下げ係数の和は0であり、自動変更アシスト係数は次式によって算出され、1になる。
自動変更アシスト係数=1−0×(1−D2)
【0053】
また、車両の走行状態や車両外部の走行環境状態によっては、自動変更アシスト係数の算出式の引き下げ係数の和の項が1になることがあり得る。例えば、車速およびヨーレイトが大きく、走行路がカーブであり、前方に障害物がなく、後方に接近車両がある場合、自動変更アシスト係数の引き下げが必要とされ、自動変更アシスト係数の算出に引き下げ係数A1,B1,C1,D1およびE1が使用される。引き下げ係数A1,B1,C1,D1およびE1はそれぞれ、各最大値の和が1になるように設定されており、これらの和は0より大きく、1以下となる。また、引き下げ禁止係数は使用されないため、引き下げ禁止係数の和は0である。そのため、自動変更アシスト係数は次式によって算出され、引き下げ係数A1,B1,C1,D1およびE1の和が1より小さい場合には0より大きく、1より小さい値となり、和が1の場合には0になる。
自動変更アシスト係数=1−(A1+B1+C1+D1+E1)×(1−0)
ただし、0<A1+B1+C1+D1+E1≦1
【0054】
自動変更アシスト係数の演算後、S4が実行され、算出された自動変更アシスト係数に手動変更アシスト係数が掛けられ、最終アシスト係数が算出される。手動変更アシスト係数は、助手席側入力影響度変更スイッチ208の操作により、車両の走行開始前に設定されており、S4では、そのスイッチ208の出力信号により得られる手動変更アシスト係数が自動変更アシスト係数に掛けられ、最終アシスト係数が算出される。それにより、車両の走行状態,車両外部の走行環境状態,運転者および助手席乗員の意向を踏まえたアシスト係数が得られ、手動変更アシスト係数と自動変更アシスト係数との少なくとも一方が1より小さい値であれば、助手席側踏力が減少させられることとなる。自動変更アシスト係数が0であれば、最終アシスト係数は0になり、助手席側踏力は0に減少させられる。
【0055】
助手席乗員による操作に基づく液圧ブレーキ70〜76の作用が禁止されていない状態では、最終アシスト係数の演算が常時行われており、助手席乗員によって助手席側ブレーキ操作装置12が操作されたとき、図6に示す供給電流決定ルーチンにおいて使用される。この場合、供給電流決定ルーチンのS11の判定結果がNOになってS12が実行され、運転席側ブレーキペダル18が踏み込まれたか否かの判定が行われる。運転席側ブレーキペダル18が踏み込まれていなければ、S12の判定結果はNOになってS18が実行され、助手席側ブレーキペダル50が踏み込まれているか否かの判定が行われる。この判定は踏力センサ52により検出される助手席側踏力に基づいて行われ、助手席側ブレーキペダル50が踏み込まれていなければ、S18の判定結果はNOになってルーチンの実行は終了する。
【0056】
運転席側ブレーキペダル18が踏み込まれれば、S12の判定結果がYESになってS13が実行され、助手席側ブレーキペダル50が踏み込まれているか否かの判定が行われる。助手席側ブレーキペダル50が踏み込まれていなければ、S13の判定結果がNOになってS22が実行され、運転席側踏力に基づいて要求ホイールシリンダ圧が決定され、リニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流が決定される。
【0057】
運転席側ブレーキペダル18が踏み込まれるとともに、助手席側ブレーキペダル50が踏み込まれれば、S12,S13の各判定結果がYESになってS14が実行され、助手席側ブレーキペダル50の踏込みにより得られる踏力に最終アシスト係数が掛けられ、供給電流決定用助手席側踏力が演算される。次いでS15が実行され、運転席側踏力が供給電流決定用助手席側踏力より大きいか否かの判定が行われる。運転席側踏力が供給電流決定用助手席側踏力より大きければ、S15の判定結果がYESになってS16が実行され、運転席側踏力に基づいてリニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流が決定される。
【0058】
運転席側踏力が供給電流決定用助手席側踏力以下であれば、S15の判定結果がNOになってS17が実行され、供給電流決定用助手席側踏力に基づいてリニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流が決定される。この場合、助手席乗員によるブレーキペダル50の踏込みに基づいて液圧ブレーキ70〜76が作用させられることとなるが、最終アシスト係数が1より小さい値であれば、アシスト係数により、実際より小さくされた助手席側踏力に基づいて供給電流が決定され、液圧ブレーキ70〜76が作用させられるため、作用力は運転席側踏力に基づいて液圧ブレーキ70〜76が作用させられる場合より大きくなるが、運転者が感じる違和感や不満は少なくて済む。
【0059】
また、運転者がブレーキ操作を行っていないが、助手席乗員がブレーキ操作を行った場合、S12の判定結果がNO、S18の判定結果がYESになり、S19,S20がS14,S17と同様に実行され、供給電流決定用助手席側踏力が演算されるとともに、その踏力に基づいてリニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流が決定される。
【0060】
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、ブレーキECU102のリニアバルブ150〜156,160〜166を制御する部分が弁制御部を構成し、S1,S11を実行する部分が助手席乗員ブレーキ操作禁止部を構成している。また、ブレーキECU102のS2を実行する部分が、車速等演算装置204と共に走行状態取得部たる車速取得部を構成し、ヨーレイトセンサ206と共に走行状態取得部たる旋回状態量取得部を構成し、クルーズコントロールECU226および車両後方状況検出ECU232と共に、それぞれ走行環境状態取得部たる前方物体検出部および後方物体検出部を構成し、ナビゲーションECU222と共に走行環境状態取得部たる走行路情報取得部を構成し、これらが状態取得部を構成し、S3を実行する部分が車速対応変更部、旋回状態対応変更部、前方物体対応変更部、後方物体対応変更部、走行路情報対応変更部を構成し、これらが自動影響度変更部たる自動影響度減少部を構成し、S4を実行する部分および助手席側入力影響度変更スイッチ208が手動影響度変更部たる手動影響度減少部を構成し、これら状態取得部,自動影響度減少部および手動影響度減少部が影響度変更部たる影響度減少部を構成している。車輪速センサ200も車速取得部を構成し、レーザレーダ装置228も前方物体検出部を構成し、レーザレーダ234も後方物体検出部を構成していると考えることもできる。自動変更アシスト係数および手動変更アシスト係数の値によっては、影響度が減少させられないこともあり、本実施例の影響度減少部は影響度維持機能を備えている。さらに、ブレーキECU102のS15〜S17を実行する部分が選択型制御量決定部を構成し、記憶部192が自動変更アシスト係数設定用データ記憶部を構成し、弁制御部,選択型制御量決定部および影響度減少部が電気的制御装置を構成している。
【0061】
なお、上記実施例において説明した引き下げ係数および引き下げ禁止係数の設定は、1例であり、別の態様で設定されてもよい。例えば、引き下げ係数と引き下げ禁止係数との少なくとも一方が、情報内容に応じて連続して変化する値に設定されてもよく、情報内容に対して1つに決められた一定の値とされてもよい。また、走行路の先に交差点がある場合の引き下げ禁止係数が、発明に係る車両用ブレーキシステムを備えた車両の車速を考慮して設定され、車速が大きいほど係数が大きくされるようにしてもよい。前方に接近障害物ありとされる場合も、距離に加えて接近障害物と車両との相対速度を考慮して設定され、接近速度が大きいほど引き下げ禁止係数が大きくなるように設定されてもよい。
【0062】
さらに、図4に示す情報は、本発明の一実施例である車両用ブレーキシステムにおいて自動変更アシスト係数を決める条件の例であり、本発明の別の実施例であるブレーキシステムにおいては、別の情報が図4に示す情報と共に、あるいは図4に示す情報に替えて自動変更アシスト係数を決める条件として使用されてもよい。また、情報内容として別の情報内容が係数の決定に使用されてもよい。情報内容として、例えば、走行路情報として、先に一時停止箇所があること、走行路が下り坂であること、および走行路が上り坂であることの少なくとも1つが使用されてもよく、その場合、各情報内容に対して引き下げ禁止係数が設定され、自動変更アシスト係数の算出に使用される。
【0063】
自動影響度変更部により設定された影響度と、手動影響度変更部により設定された影響度との和が最終的な影響度とされるようにしてもよい。影響度は、例えば、前記実施例と同様にアシスト係数により設定され、手動変更アシスト係数は、例えば、自動変更アシスト係数との和が1を超えない大きさの値であって、例えば、0,正の値および負の値を含んで複数種類設定される。あるいは、手動変更アシスト係数が自動変更アシスト係数とは関係なく設定され、自動変更アシスト係数との和が1を超える場合には、1に抑えられるようにすることも可能である。手動変更アシスト係数が運転者と助手席乗員との話合いにより車両の走行開始前に決められることは、自動変更アシスト係数との積が最終アシスト係数とされる場合と同じである。また、手動変更アシスト係数は、例えば、スイッチの操作により設定される。設定された手動変更アシスト係数は、例えば、図5に示す最終アシスト係数決定プログラムと同様に構成された最終アシスト係数決定プログラムのS4に相当するステップにおいて、自動変更アシスト係数に加えられ、最終アシスト係数が算出される。なお、本システムでは、助手席側入力禁止装置、例えば、助手席側入力カットオフスイッチが設けられ、その操作により、助手席乗員のブレーキ操作による液圧ブレーキの作用が禁止される。
【0064】
助手席側入力の影響度の自動変更と手動変更とが選択的に行われるようにしてもよい。その実施例を図9に示すアシスト係数決定ルーチン基づいて説明する。
助手席側入力の自動変更と手動変更とのいずれが行われるようにするかは、本システムでは、車両の走行開始に先立って運転者と助手席乗員との話し合いにより決められ、選択装置を用いて選択される。例えば、車両のインストルメントパネルに助手席側入力影響度変更態様選択スイッチが設けられ、その操作により、自動変更と手動変更との選択および手動変更が選択される場合には影響度が設定される。影響度は、例えば、自動変更および手動変更共にアシスト係数により設定され、手動変更アシスト係数は、例えば、0および1を含むとともに、0から1の間で複数段階に設定され、それらのうちの1つが選択される。
【0065】
アシスト係数決定ルーチンにおいてS31は前記実施例の最終アシスト係数決定ルーチンのS1と同様に実行される。手動変更アシスト係数が0に設定されており、助手席乗員による操作に基づく液圧ブレーキの作用が禁止されていれば、S31の判定結果がYESになってプログラムの実行は終了する。
【0066】
助手席乗員による操作に基づく液圧ブレーキの作用が禁止されていなければ、S31の判定結果がNOになってS32が実行され、自動変更アシスト係数による助手席側踏力の変更が選択されているか否かの判定が行われる。自動変更アシスト係数による助手席側踏力の変更が選択されているのであれば、S32の判定結果はYESになってS33,S34が実行される。S33,S34は前記実施例のS2,S3と同様に実行され、演算された自動変更アシスト係数は助手席側踏力変更用アシスト係数としてブレーキECUの記憶部のメモリに記憶される。
【0067】
手動変更アシスト係数による助手席側踏力の変更が選択されているのであれば、S32の判定結果がNOになってS35が実行され、助手席側入力影響度変更態様選択スイッチの操作により選択されている手動変更アシスト係数が助手席側踏力変更用アシスト係数としてメモリに記憶される。そして、リニアバルブへの供給電流の決定は、前記実施例の供給電流決定プログラムの最終アシスト係数が助手席側踏力変更用アシスト係数とされたプログラムに従って行われる。
本実施例においては、ブレーキECUのS32を実行する部分が影響度変更態様選択部を構成し、S33を実行する部分等が状態取得部を構成し、S34を実行する部分が自動影響度減少部を構成し、S35を実行する部分が手動影響度減少部を構成し、これらが影響度変更部たる影響度減少部を構成している。
【0068】
制御量決定部および影響度変更部は共に機械的に構成してもよい。その実施例を図10および図11に基づいて説明する。
本実施例の液圧ブレーキシステムにおいては、図10に概略的に示すように、運転席側ブレーキ操作装置300の運転席側ブレーキペダル302の踏込みにより得られる運転席側踏力と、助手席側ブレーキ操作装置304の助手席側ブレーキペダル306の踏込みにより得られる助手席側踏力とは、車体308に設けられた伝達部材としてのレバー310によりブレーキブースタ312の入力ロッド314に伝達される。
【0069】
レバー310は、その長手方向の中央部に設けられた係合部318において、車体308に設けられたブラケット320の長穴322に、入力ロッド314の移動方向と平行な方向に移動可能に嵌合されるとともに、入力ロッド314の一端部に相対回転可能に連結されている。ブレーキペダル302,306が踏み込まれない状態では、ブレーキブースタ312のリターンスプリング(図示省略)の付勢により、レバー310は後方側、すなわち運転席側および助手席側へ付勢されている。このスプリングの付勢によるレバー310の後退端は、その長手方向の両端部にそれぞれ対応して設けられたストッパ324,326に当接することにより規定される。
【0070】
運転席側ブレーキペダル302は、レバー310の長手方向の一端部に設けられた長穴330に、レバー310の長手方向に相対移動可能に連結されており、運転席側ブレーキペダル302の踏込みによりレバー310が前方へ移動させられる。なお、運転席側ブレーキペダル302は、図10においては、レバー310に対する連結部分のみが図示されている。また、助手席側ブレーキペダル306は、図11に概略的に示すように、車体308(図10参照)に軸332により回動可能に取り付けられるとともに、ケーブル334によってレバー310の長手方向の他端部に連結されている。ケーブル334は車体308に固定して設けられたチューブ336内に移動可能に収容され、助手席側ブレーキペダル306の回動軸線に対して踏込みパッド338とは反対側の部分に連結されており、助手席側ブレーキペダル306の踏込みによりケーブル334が引き締められ、レバー310が前方へ移動させられる。
【0071】
ケーブル334の助手席側ブレーキペダル306に対する連結部340は、助手席側ブレーキペダル306の長手方向に移動可能に設けられ、移動装置342により移動させられる。移動装置342は、例えば、電動モータを駆動源として構成され、例えば、インストルメントパネルに設けられた操作部材ないし影響度変更指示装置としての影響度変更スイッチ344が乗員によって操作されることにより、移動装置342が作動させられて連結部340を移動させ、それにより、助手席側ブレーキペダル306に加えられる踏力のレバー310への伝達比率が変更される。
【0072】
運転席側ブレーキペダル302が踏み込まれれば、レバー310はストッパ324を支点として回動させられつつ、ストッパ324に対して滑って入力ロッド314を前進させ、マスタシリンダ346の加圧室に液圧を発生させる。この状態で助手席側ブレーキペダル306が踏み込まれれば、それによってもレバー310は前進させられて入力ロッド314を前進させる。運転席側踏力と助手席側踏力とが機械的に合成され、その合成踏力によってマスタシリンダ346の加圧室に液圧が発生させられ、液圧ブレーキが作用させられることとなるのである。ケーブル334の助手席側ブレーキペダル306に対する連結位置を変更し、助手席側踏力のレバー310への伝達比率が変更され、運転席側踏力と助手席側踏力との合成比率を変更することができる。合成比率は、運転者と助手席乗員との話合いにより決められ、影響度変更スイッチ344の操作により連結部340が移動させられて変更される。
本実施例においては、レバー310が入力合成装置を構成し、移動装置342および影響度変更スイッチ344が合成比率変更部を構成している。
【0073】
制御量決定部および影響度変更部を共に機械的に構成する場合、運転席側入力と助手席側入力とのうち大きい方が選択されて制御量が決定されるようにしてもよい。その実施例を図12および図13に基づいて説明する。
本実施例の液圧ブレーキシステムにおいては、図12および図13に概略的に示すように、運転席側ブレーキ操作装置の運転席側ブレーキペダルの踏込みにより得られる運転席側踏力と、助手席側ブレーキ操作装置の助手席側ブレーキペダルの踏込みにより得られる助手席側側踏力とはそれぞれ、車体360に設けられた伝達部材としてのレバー370,372によりブレーキブースタ374の入力ロッド376に伝達される。
【0074】
レバー370,372は車両の左右方向に並んで配設され、各一端部において共通の軸380により車体360に回動可能に取り付けられている。図12においては、レバーが2本設けられていることをわかり易くするために、一方のレバー372が二点鎖線により図示され、2本のレバー370,372が並べて図示されている。レバー370の自由端部には、運転席側ブレーキペダルが相対回動可能に連結され、レバー372の自由端部には、助手席側ブレーキペダルに連結されたケーブル382が連結されている。ケーブル382は、チューブ384に案内されて移動する。
【0075】
入力ロッド376は、図13に示すように、レバー370,372の長手方向の中間部に当接させられている。 入力ロッド376は、ブレーキブースタ374内に配設されたリターンスプリング(図示省略)により、レバー370,372に当接する向きに付勢されている。これらレバー370,372の入力ロッド376が後退する側の回動端は、運転席側ブレーキペダル,助手席側ブレーキペダルの各回動端がストッパによって規定されることにより規定される。助手席側ブレーキペダルは、図示は省略するが、前記実施例の助手席側ブレーキペダル306と同様に構成され、ケーブル382が移動可能に連結されるとともに、その連結部が影響度変更スイッチの操作に基づいて移動装置により移動させられるようにされている。
【0076】
運転席側ブレーキペダルが踏み込まれれば、レバー370が回動させられて入力ロッド376を前進させ、マスタシリンダ386の加圧室に液圧を発生させる。この際、助手席側ブレーキペダルが踏み込まれていなければ、入力ロッド376はレバー372から離れる。この状態で助手席側ブレーキペダルが踏み込まれれば、レバー372が回動させられる。入力ロッド376はレバー372から離れており、助手席側ブレーキペダルの踏込み開始当初は、助手席側踏力は入力ロッド376に伝達されない。レバー372により入力ロッド376に作用する力であって、助手席側踏力に基づく力が、レバー370により入力ロッド376に作用する力であって、運転席側踏力に基づく力より大きければ、レバー372が入力ロッド376に当接した状態から更に回動させられて入力ロッド376を前進させ、マスタシリンダの加圧室に液圧を発生させる。運転席側踏力と助手席側踏力とのうち、大きい方が選択されて入力ロッド376に伝達され、液圧ブレーキを作用させるのである。助手席側踏力の影響度を変更する場合には、影響度変更スイッチが操作され、移動装置により、ケーブル382の助手席側ブレーキペダルに対する連結部が移動させられる。それにより、レバー372を回動させる助手席側踏力が変更され、助手席側踏力が入力ロッド376に伝達される際、その大きさが変更される。
本実施例においては、レバー370,372が、運転席側踏力と助手席側踏力とのうち大きい方を選択して制御量を決定する入力選択部たる入力選択装置を構成し、移動装置および影響度変更スイッチが助手席側入力変更部を構成ている。
【0077】
なお、自動影響度変更部により設定された影響度と、手動影響度変更部により設定された影響度との積により最終的な影響度が決められる場合にも、手動影響度変更指示装置とは別に助手席側入力禁止装置、例えば、助手席側入力カットオフスイッチが設けられ、助手席乗員の操作によるブレーキの作用が禁止されるようにしてもよい。
また、助手席側入力の影響度の手動変更は、無段階に連続して行われるようにしてもよい。例えば、スイッチ操作により手動変更アシスト係数が連続して変わるようにするのである。
【0078】
さらに、自動変更アシスト係数と手動変更アシスト係数との積により最終アシスト係数が決められ、助手席側入力の影響度が決められる場合、自動変更アシスト係数が小さめの値に算出されるようにし、手動変更アシスト係数を1より大きい値にも設定できるようにして、助手席側入力の影響度が運転者と助手席乗員との話合いにより調整されるようにしてもよい。この際、最終アシスト係数が1を超える場合には、1に抑えられるようにすれば、影響度が増大しないようにすることができる。
また、自動変更アシスト係数および手動変更アシスト係数により最終アシスト係数が決められる場合、最終アシスト係数を1より大きくできるようにしてもよい。両アシスト係数の積により最終アシスト係数が決められる場合、例えば、手動変更アシスト係数を1より大きい値にも設定できるようにする。自動変更アシスト係数も、場合によっては1より大きい値に設定されるようにされてもよい。最終アシスト係数が1を超えれば、助手席側入力の影響度が増大させられることとなる。
最終アシスト係数が自動変更アシスト係数と手動変更アシスト係数との和により最終アシスト係数が決められる場合も、最終アシスト係数を1より大きくできるようにしてもよく、助手席側入力の影響度の自動変更と手動変更とが選択的に行われる場合にも、自動変更アシスト係数と手動変更アシスト係数との少なくとも一方を1より大きくできるようにしてもよい。
【0079】
また、影響度変更部は、手動影響度変更部を含まず、自動影響度変更部のみを含むものとしてもよい。その場合、例えば、助手席側入力の影響度の変更は、図5に示す最終アシスト係数決定プログラムのS1〜S3を含むプログラムにより行われる。
【0080】
さらに、影響度変更部は、自動影響度変更部を含まず、手動影響度変更部のみを含むものとしてもよい。その場合、助手席側入力の影響度の変更は手動で行われるため、アシスト係数決定プログラムは不要であり、例えば、図6に示すリニアバルブへの供給電流決定プログラムに相当するプログラムであって、最終アシスト係数が手動変更アシスト係数とされたプログラムのみが実行される。
【0081】
また、引き下げ係数および引き下げ禁止係数が設定される情報の内容は、走行路の状態がカーブ路であることや、先に交差点があることは一例であり、これらの他に、例えば、先が行き止まりであることや、前記実施例の5種類の情報およびそれら情報の各内容とは異なる情報および情報内容等、種々の状況について引き下げ係数あるいは引き下げ禁止係数が設定され、自動変更アシスト係数の算出に使用されるようにすることができる。
【0082】
さらに、自動変更アシスト係数は、走行状態および車両外部の走行環境状態の各情報内容毎に引き下げ係数あるいは引き下げ禁止係数あるいは不使用が設定され、情報の組合わせによって演算されるのに限らず、各情報内容の組合わせにより得られるアシスト係数が予め設定されてデータ化され、情報内容の組合わせに基づいてアシスト係数がデータベースから読み出され、助手席側入力の影響度の自動変更に使用されるようにしてもよい。
【0083】
また、請求可能発明は、車両後退時におけるブレーキの作用力の制御にも適用することができる。車両の進行方向が逆になるが、車両前進時と同様に制御を行うことができ、前後についての情報が制御に使用される場合、車両前進時における車両前方および後方についてそれぞれ得られる情報を、車両後方および前方についての情報として使用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】一実施例である車両用液圧ブレーキシステムを示す回路図である。
【図2】上記車両用液圧ブレーキシステムの運転席側ブレーキ操作装置を示す正面図(一部断面)である。
【図3】上記車両用液圧ブレーキシステムの助手席側ブレーキ操作装置を示す正面図(一部断面)である。
【図4】上記車両用液圧ブレーキシステムにおいて車両の走行状態および車両外部の走行環境状態についてのアシスト係数の引き下げ係数,引き下げ禁止係数および不使用の設定を説明する図表である。
【図5】上記車両用液圧ブレーキシステムのブレーキECUの記憶部に記憶させられた最終アシスト係数決定プログラムを示すフローチャートである。
【図6】上記記憶部に記憶させられたリニアバルブへの供給電流決定プログラムを示すフローチャートである。
【図7】上記最終アシスト係数決定プログラムにおける自動変更アシスト係数の算出事例を示す図表である。
【図8】上記最終アシスト係数決定プログラムにおける自動変更アシスト係数の算出の別の事例を示す図表である。
【図9】別の実施例である車両用液圧ブレーキシステムのブレーキECUの記憶部に記憶させられたアシスト係数決定プログラムを示すフローチャートである。
【図10】更に別の実施例である車両用液圧ブレーキシステムの入力合成装置を概略的に示す正面図である。
【図11】図10に示す車両用液圧ブレーキシステムの助手席側ブレーキ操作装置を概略的に示す正面図である。
【図12】更に別の実施例である車両用液圧ブレーキシステムの入力選択装置を概略的に示す正面図である。
【図13】図12に示す入力選択装置を概略的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0085】
10:運転席側ブレーキ操作装置 12:助手席側ブレーキ操作装置 14:ブレーキ装置 18:運転席側ブレーキペダル 20:踏力センサ 50:助手席側ブレーキペダル 52:踏力センサ 70,72,74,76:液圧ブレーキ 78:作用力制御装置 100:液圧制御装置 102:ブレーキECU 110:マスタシリンダ 112:液圧制御弁装置 150,152,154,156:増圧リニアバルブ 160,162,164,166:減圧リニアバルブ 204:車速等演算装置 206:ヨーレイトセンサ 208:助手席側入力影響度変更スイッチ 222:ナビゲーションECU 226:クルーズコントロールECU 228:レーザレーダ装置 230:車両後方状況検出システム 234:レーザレーダ 300:運転席側ブレーキ操作装置 302:運転席側ブレーキペダル 304:助手席側ブレーキ操作装置 306:助手席側ブレーキペダル 310:レバー 334:ケーブル 342:移動装置 344:影響度変更スイッチ 346:マスタシリンダ 370,372:レバー 386:マスタシリンダ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキシステムに関するものであり、特に、運転者の他に、助手席の乗員がブレーキを作用させることができる車両用ブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用ブレーキシステムは、例えば、下記の特許文献1および2に記載されているように、車両の運転者が操作可能な運転席側ブレーキ操作装置と、車両の助手席の乗員が操作可能な助手席側ブレーキ操作装置とを含む。特許文献1に記載の車両用ブレーキシステムは液圧により作用するブレーキを備え、運転席側ブレーキ操作装置は、運転席側ブレーキペダルの踏込みにより運転席側マスタシリンダの液圧室に液圧を発生させる装置とされている。運転席側ブレーキペダルと運転席側マスタシリンダとの間には操作力伝達用の液圧シリンダが設けられ、そのシリンダハウジングに運転席側ブレーキペダルが連結され、ピストンに、倍力装置のプッシュロッドが連結されている。ピストンのプッシュロッドとは反対側の部分からスペーサが延び出させられ、シリンダハウジングの端壁に当接するようにされており、運転席側ブレーキペダルが踏み込まれれば、シリンダハウジング内におけるピストンの位置が変わらないままシリンダハウジングが前進させられ、プッシュロッドが前方へ移動させられて、運転席側マスタシリンダの液圧室に液圧が発生させられる。また、助手席側ブレーキ操作装置は、助手席側ブレーキペダルおよび助手席側マスタシリンダを備え、助手席側マスタシリンダの液圧室はホースによって操作力伝達用シリンダの液圧室に連通させられている。したがって、助手席側ブレーキペダルが踏み込まれれば、助手席側マスタシリンダの液圧室に液圧が発生させられるとともに、操作力伝達用シリンダの液圧室に供給され、プッシュロッドがシリンダハウジングに対して前進させられる。それにより、倍力装置を介して運転席側マスタシリンダのピストンが前進させられ、運転席側マスタシリンダの液圧室に発生させられた液圧によりブレーキが作用させられる。助手席の乗員は、例えば、運転者によるブレーキ操作が遅れていたり、ブレーキの作用力が不足する場合に助手席側ブレーキペダルを踏み込み、ブレーキを遅れなく作用させたり、作用力の不足を補ったりすることができる。
【特許文献1】特開2000−272484公報
【特許文献2】特開平9−315273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このブレーキシステムにおいては、助手席乗員によるブレーキペダルの踏込みにより得られる操作量にそのまま対応した大きさのブレーキの作用力が得られるため、不都合な場合がある。例えば、助手席乗員の操作によるブレーキの作用は運転者が意図しないものであり、不要な場合もあり、また、操作が適切に行われなかったり、誤って行われることもあり、運転者に違和感や不満を持たせることがあるのである。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、助手席の乗員によるブレーキ操作装置の操作によりブレーキが作用させられる車両用ブレーキシステムにおける不都合の解決を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、(A)車両の運転者が操作可能な運転席側ブレーキ操作装置と、(B)前記車両の助手席の乗員が操作可能な助手席側ブレーキ操作装置と、(C)車両を制動するブレーキとそのブレーキの作用力を制御する作用力制御装置とを含むブレーキ装置とを含む車両用ブレーキシステムの作用力制御装置を、(a)前記運転席側ブレーキ操作装置の操作により入力される運転者側入力と前記助手席側ブレーキ操作装置の操作により入力される助手席側入力との両方に基づいて前記ブレーキの作用力に対応する制御量を決定する制御量決定部と、(b)その制御量決定部による制御量の決定における前記助手席側入力の影響度を変更する影響度変更部とを含むものとすることにより解決される。
運転席側ブレーキ操作装置および助手席側ブレーキ操作装置の代表的なものは、ブレーキペダルと、そのブレーキペダルの踏込みストロークを検出するストロークセンサあるいは踏力を検出する踏力センサとを含むものであるが、これに限定されるわけではない。例えば、手あるいはその他の身体部分によって操作されるブレーキレバーと、ストロークセンサあるいは操作力センサとを含むものとすることができる。手あるいはその他の身体部分によって操作され、作用力の大きさを指示することができるブレーキスイッチを含むものとすることもできる。
さらに、後に実施例の項で説明するように、制御量決定部および影響度変更部を機械的に構成することも可能である。
ブレーキは車両を制動できるものであればよく、例えば、液圧で作用する液圧ブレーキや、電動アクチュエータにより作用する電動ブレーキ等を採用することができる。
【発明の効果】
【0005】
影響度変更部による助手席側入力の制御量の決定における影響度の変更は、影響度が大きくなるように行うこともでき、小さくなるように行うこともできる。影響度変更部が影響度減少部とされ、影響度が小さくなるように変更が行われる場合、ブレーキの作用力は、運転席側入力のみに基づいて制御量が決定される場合より大きいが、助手席側入力が変更されることなく、そのまま制御量の決定に用いられる場合より小さい大きさとされ、運転者が意図する大きさより大きくなるが、その度合いが抑えられる。そのため、助手席乗員によるブレーキ操作が誤って行われたり、運転者に不適切あるいは不要と感じられる操作であっても、車両の余分な制動が少なくて済み、運転者が感じる違和感が少なくて済む。また、助手席乗員によるブレーキ操作が必要に応じて行われ、適切に行われた場合には、運転者が感じる違和感や不満を低減させ、あるいは解消しつつ、制動の遅れや作用力不足を低減させることができる。
また、影響度変更部が影響度増大部とされ、助手席側入力の影響度を大きくする変更は、例えば、運転者が男性であり、助手席乗員が女性である場合に行われるようにすれば、力に劣る女性によるブレーキ操作でも、制動に必要な作用力を得るようにすることができる。
制御量決定部は、運転席側入力と、助手席側入力とを選択して制御量の選択に用いる選択型制御量決定部としてもよく、助手席側入力を運転席側入力に上乗せして制御量の決定に用いる上乗せ型制御量決定部としてもよい。これら選択および上乗せに際しては、助手席側入力は影響度変更部により影響度を変更された上で用いられる。
【発明の態様】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来技術等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(4)項が請求項2に、(6)項が請求項3に、(7)項が請求項4に、それぞれ相当する。
【0008】
(1)車両の運転者が操作可能な運転席側ブレーキ操作装置と、
前記車両の助手席の乗員が操作可能な助手席側ブレーキ操作装置と、
車両を制動するブレーキとそのブレーキの作用力を制御する作用力制御装置とを含むブレーキ装置と
を含み、前記作用力制御装置が、
前記運転席側ブレーキ操作装置の操作により入力される運転者側入力と前記助手席側ブレーキ操作装置の操作により入力される助手席側入力との両方に基づいて前記ブレーキの作用力に対応する制御量を決定する制御量決定部と、
その制御量決定部による制御量の決定における前記助手席側入力の影響度を変更する影響度変更部と
を含む車両用ブレーキシステム。
(2)前記作用力制御装置が、前記ブレーキの作用力を機械的に制御する機械的制御装置と、その機械的制御装置を電気的に制御する電気的制御装置とを含み、電気的制御装置が前記制御量決定部および前記影響度変更部を含む(1)項に記載の車両用ブレーキシステム。
例えば、ブレーキが液圧ブレーキであれば、機械的制御装置が液圧制御弁を備えた液圧制御装置を含み、電気的制御装置が液圧制御弁を制御する弁制御部を含む構成とすることができ、ブレーキが電動ブレーキであれば、機械的制御装置が電動アクチュエータとその電動アクチュエータの運動をブレーキの運動に変換する運動変換機構とを含み、電気的制御装置が電動アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部を含む構成とすることができる。
(3)前記作用力制御装置における前記制御量決定部と前記影響度変更部とが共に機械的に構成された(1)項に記載の車両用ブレーキシステム。
例えば、制御量決定部を、運転者側入力と助手席側入力とを機械的に合成する入力合成装置とし、影響度変更部を、入力合成装置における運転者側入力と助手席側入力との合成比率を変更する合成比率変更部とすることや、制御量決定部を運転者側入力と助手席側入力とのうち大きい方を選択して制御量を決定する入力選択部とし、影響度変更部を、入力選択部に入力される助手席側入力を変更する助手席側入力変更部としたりすることができる。
(4)前記影響度変更部が、
車両の走行状態とその車両外部の走行環境状態との少なくとも一方を取得する状態取得部と、
その状態取得部により取得された状態に応じて前記影響度を自動で変更する自動影響度変更部と
を含む(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の車両用ブレーキシステム。
状態取得部は走行状態取得部と走行環境状態取得部との少なくとも一方を含むこととなる。
車両の走行状態や車両外部の走行環境状態によっては、助手席乗員の操作によるブレーキの作用が有効な場合もあれば、不適切な場合もあり、車両の走行状態と車両外部の走行環境状態との少なくとも一方を取得すれば、助手席側入力の影響度を適切に変更することが可能となる。
(5)前記状態取得部が、
前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部と、
前記車両の旋回状態を表す旋回状態量を取得する旋回状態量取得部と、
前記車両の前方に存在する前方物体を検出する前方物体検出部と、
前記車両の後方に存在する後方物体を検出する後方物体検出部と、
前記車両の走行路の情報を取得する走行路情報取得部と
のうちの少なくとも1つを含む(4)項に記載の車両用ブレーキシステム。
取得部や検出部が多く設けられ、取得される状態情報が多いほど、それら状態情報の組合わせにより、助手席側入力の影響度を適切に変更することができる。特に、車両に既存の装置により得られる状態を利用すれば、助手席乗員の操作に基づいて適切なブレーキ作用力が得られるブレーキシステムを安価に得ることができる。
(6)前記自動影響度変更部が、
前記車速取得部により取得された車速が大きい場合に小さい場合に比較して前記影響度を小さくする車速対応変更部と、
前記旋回状態量取得部により取得された旋回状態量が大きい場合に小さい場合に比較して前記影響度を小さくする旋回状態対応変更部と、
前記前方物体検出部により検出された前記前方物体と前記車両との接近度が大きい場合には小さい場合に比較して前記影響度を大きくする前方物体対応変更部と、
前記後方物体検出部により検出された前記後方物体と前記車両との接近度が大きい場合には小さい場合に比較して前記影響度を小さくする後方物体対応変更部と、
前記走行路情報取得部により取得された走行路の情報が車両制動の必要性が高いことを示す情報である場合に必要性が低いことを示す情報である場合に比較して前記影響度を大きくする走行路情報対応変更部と
のうち、前記状態取得部が含む前記少なくとも1つに対応するものを含む(5)項に記載の車両用ブレーキシステム。
車両の高速走行時には慎重なブレーキ操作が必要であり、本車速対応変更部による影響度の変更により、ブレーキの作用力が不要に増大させられて不適切な制動が行われることが回避される。
旋回状態量としては、例えば、横加速度やヨーレイトを採用可能である。旋回状態量が大きい状態では、ブレーキの作用力の大きさが車両の挙動に及ぼす影響が大きく、本旋回状態対応変更部による変更により、車両の走行安定性を保ちつつ、助手席乗員によるブレーキ操作に基づいて作用力を増大させることができる。
前方物体と車両との接近度が大きい場合には、車両を迅速に減速させ、あるいは停止させることが必要であり、本前方物体対応変更部によれば、助手席乗員によるブレーキ操作に基づいて大きい作用力が得られる。
後方物体が車両である場合、後方物体と車両との接近度が大きい場合には、ブレーキ作用力が大きくされ、車両の減速度が急増させられれば、後方車両の運転者を慌てさせる恐れがある。したがって、本後方物体対応変更部によれば影響度が小さく、ブレーキ作用力の増大が抑えられるため、車両の減速度の増大が抑えられ、後方車両の運転者を慌てさせることが回避される。ただし、後方物体が車両であるか静止物体であるかの判別が可能である場合、後方物体が静止物体であれば、車両である場合より影響度が大きくされるようにすることが望ましく、車両が後退中である場合には、後方物体と車両との接近度が大きい場合には小さい場合に比較して影響度が大きくされるようにすることが望ましく、助手席乗員によるブレーキ操作に基づいて大きい作用力が得られるようにすることが望ましい。
走行路情報には、例えば、走行路がカーブ路であること、先に交差点があること、先に一時停止箇所があること、走行路が下り坂であること、走行路が上り坂であること等があり、それら情報の各々について車両制動の必要性の高低が設定され、走行路情報対応変更部による変更により、車両制動の必要性の高さに対応したブレーキ作用力を得ることができる。
変更部が複数設けられる場合、複数の変更部による各変更が組み合わされて、影響度の変更度合が決められるようにすることが望ましい。例えば、各状態取得部により取得される状態に応じて各変更部の変更度合が設定され、複数の変更部のそれぞれ、状態に応じた変更度合が組み合わされて、助手席側入力を変更する変更度合が決められるようにするのであるが、この最終的な変更度合は、組合わせに応じて予め決められ、記憶部に記憶させられていてもよく、助手席乗員によるブレーキ操作時に、複数の変更部について得られる変更度合が組み合わされて決められるようにしてもよい。
(7)前記影響度変更部が、手動操作により前記影響度を変更可能な手動影響度変更部を含む(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の車両用ブレーキシステム。
本項の車両用ブレーキシステムにおいては、影響度変更部が、自動影響度変更部と手動影響度変更部との少なくとも一方を含むこととなる。自動影響度変更部は例えば上記(6)項に記載のものとすることができ、手動影響度変更部は、例えば、運転者と助手席の乗員との車両走行開始前の話合いにより、車両の制動について助手席の乗員がどの程度関与することが望ましいかを決め、その決定した関与の度合いに応じて影響度を設定し得るものが好適である。また、自動影響度変更部と手動影響度変更部との両方が設けられる場合には、それら両変更部が選択的に使用されるようにしたり、自動影響度変更部により設定された影響度と手動影響度変更部により設定された影響度との積あるいは和が最終的な影響度とされるようにしたりすることができる。
【実施例】
【0009】
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0010】
図1に請求可能発明に係る車両用ブレーキシステムが概略的に図示されている。本車両用ブレーキシステムは、液圧ブレーキを備えた液圧ブレーキシステムである。本車両用液圧ブレーキシステムは、車両の運転者が操作可能な運転席側ブレーキ操作装置10と、助手席の乗員が操作可能な助手席側ブレーキ操作装置12と、ブレーキ装置14とを含む。運転席側ブレーキ操作装置10は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル18(以後、必要に応じて運転席側ブレーキペダル18と称する)と、ブレーキペダル18の操作量である踏力を検出する操作量センサとしての踏力センサ20とを含む。
【0011】
ブレーキペダル18は、図2に示すように、車体(図2においては図示省略)に軸21により回動可能に取り付けられ、踏力センサ20はブレーキペダル18の回動軸線側の部分に取り付けられている。ブレーキペダル18には、ブレーキブースタ22(図1参照)の入力ロッド24が軸26および長穴28により、入力ロッド24の軸線上における相対移動が許容されるように互いに連結されている。長穴28はブレーキペダル18に設けられ、軸26は長穴28に挿通されるとともに、入力ロッド24の一端部に設けられたヨーク部30により両端を支持されている。
【0012】
ブレーキペダル18にはまた、概して板状を成すレバー34が軸36により、ブレーキペダル18の回動軸線と平行な軸線まわりに回動可能に取り付けられるとともに、レバー34に形成された穴(図示省略)に上記軸26が挿通されている。この穴の直径は軸26の直径より僅かに大きくされており、レバー34とヨーク部30とが相対回動を許容しつつ、入力ロッド24の軸方向に一緒に運動する。レバー34の軸26から上方へ延び出させられた延出端部は、踏力センサ20と対向させられている。本踏力センサ20は、本体40,本体40に移動可能に保持された検出子42および歪みゲージを含み、検出子42により伝達される荷重を検出する荷重検出器(図示省略)を備え、ブレーキペダル18の踏力に対応する信号を出力するように構成されている。
【0013】
レバー34は、踏力センサ20側へ突出させられたスプリング保持部44を備え、踏力センサ20の本体40との間にスプリング46を保持し、その自由端部が踏力センサ20から離れる向きに付勢されている。レバー34のブレーキペダル18に対する回動は、ブレーキペダル18に設けられたストッパ48により規制される。また、図示は省略するが、ブレーキペダル18は、車体との間に配設されたリターンスプリングにより原位置、すなわち踏込み操作されていない位置へ復帰する向きに付勢されている。
【0014】
運転者によってブレーキペダル18が踏み込まれれば、踏力は、軸36からレバー34および入力ロッド24に伝達されるとともに、踏力センサ20を介してレバー34および入力ロッド24に伝達され、入力ロッド24が前進させられる。それに伴って入力ロッド24からの反力により、レバー34はスプリング46の付勢力に抗して軸36の軸線まわりに踏力センサ20に接近する向きに回動させられ、検出子42に荷重を加え、検出子42が移動させられる。それにより、荷重検出器に荷重が加えられ、踏力に応じた信号が出力される。
【0015】
前記助手席側ブレーキ操作装置12は、図1に示すように、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル50(以後、必要に応じて助手席側ブレーキペダル50と称する)と、ブレーキペダル50の操作量である踏力を検出する操作量センサとしての踏力センサ52とを含む。助手席側ブレーキペダル50は、図3に示すように、車体の助手席側の部分に軸53により回動可能に取り付けられており、踏力センサ52は助手席側ブレーキペダル50の回動軸線側の部分に取り付けられている。
【0016】
踏力センサ52は、運転席側ブレーキ操作装置10の踏力センサ20と同様に構成されており、その検出子42にレバー54により荷重が加えられる。レバー54はブレーキペダル50に軸56により、ブレーキペダル50の回動軸線と平行な軸線まわりに回動可能に取り付けられ、その自由端部に設けられたスプリング保持部58と踏力センサ52との間に配設された圧縮コイルスプリング60により、踏力センサ52から離れる向きに付勢されている。このスプリング60の付勢によるレバー54の回動は、ブレーキペダル50に設けられたストッパ62にレバー54が当接することにより規制される。また、ブレーキペダル50は、車体64との間に配設されたリターンスプリング66によって原位置へ復帰する向きに付勢されており、ブレーキペダル50の原位置は、車体64に設けられたストッパ68により規定される。スプリング66は、後述するストロークシミュレータによって運転席側ブレーキペダル18に付与される反力と同様の反力を助手席側ブレーキペダル50に与えることができるものとされ、また、スプリング60,66のばね力は、ブレーキペダル50が原位置に位置する状態においてレバー54がストッパ62に当接し、スプリング保持部58と検出子42との間に僅かに隙間が生じ、踏力センサ52が踏力を検出しない状態となる大きさに設定されている。
【0017】
ブレーキペダル50は助手席乗員によって踏み込まれるとき、リターンスプリング66の付勢力に抗して回動させられる。ブレーキペダル50の回動に伴ってリターンスプリング66の引張力が増大させられ、その引張力によりレバー54はスプリング60の付勢力に抗して回動させられ、検出子42に当接して本体40内に引っ込む向きに移動させ、荷重検出器に荷重を加えさせる。リターンスプリング66の引張力は助手席乗員がブレーキペダル50に加える踏力に対応しており、荷重検出器により踏力に応じた信号が出力され、踏力が検出される。
【0018】
前記ブレーキ装置14は、図1に示すように、左右前後に位置する車輪にそれぞれ設けられ、車両を制動する液圧ブレーキ70,72,74,76および液圧ブレーキ70〜76の作用力を制御する作用力制御装置78を含む。液圧ブレーキ70〜76は、それぞれホイールシリンダ80,82,84,86を備え、ホイールシリンダ80〜86の液圧(ホイールシリンダ圧と称する)によって作用させられる。液圧ブレーキ70〜76は、例えば、車輪とともに回転するブレーキディスク88,90,92,94に、非回転体に保持された摩擦材としてのブレーキパッドを液圧によって押し付けるディスクブレーキである。
【0019】
作用力制御装置78は、液圧ブレーキ70〜76の作用力を機械的に制御する機械的制御装置たる液圧制御装置100と、液圧制御装置100を電気的に制御するブレーキECU102とを含む。液圧制御装置100は、マスタシリンダ110,液圧制御弁装置112および動力により作動させられる動力液圧源114を含む。マスタシリンダ110は2つの加圧ピストンを含むものであり、2つの加圧ピストンのそれぞれの前方の加圧室には、運転者による運転席側ブレーキペダル18の操作により、ブレーキブースタ22を介してブレーキペダル18の操作力に応じた液圧が発生させられる。マスタシリンダ110の2つの加圧室には、それぞれ、マスタ通路116,118を介して左右前輪のホイールシリンダ80,82が接続されている。マスタ通路116,118の途中には、それぞれ、マスタ遮断弁120,122が設けられている。マスタ遮断弁120,122は常開の電磁開閉弁である。
【0020】
また、動力液圧源114には、4つのホイールシリンダ80〜86がポンプ通路124を介して接続されている。ホイールシリンダ80〜86には、マスタシリンダ110から遮断された状態で動力液圧源114から液圧が供給され、液圧ブレーキ70〜76が作用させられる。ホイールシリンダ80〜86の液圧は液圧制御弁装置112により制御される。このように、左右前後輪のホイールシリンダ80〜86は、動力液圧源114の液圧によって作動可能なものであり、運転席側ブレーキペダル18の非操作状態でも作動可能であるが、ブレーキペダル18の操作時には、左右前輪のホイールシリンダ80,82はマスタシリンダ110の液圧(マスタ圧と称する)によっても作動可能である。
【0021】
動力液圧源114は、ポンプ126およびそのポンプ126を駆動するポンプモータ128を備えたポンプ装置130を含む。ポンプ126の吸入側は吸入通路132を介してマスタリザーバ134に接続され、吐出側にはアキュムレータ136が接続されている。ポンプ126によってリザーバ134の作動液が汲み上げられてアキュムレータ136に供給され、加圧された状態で蓄えられる。また、ポンプ126の吐出側の部分と吸入側の部分とが戻し通路としてのリリーフ通路140によって接続されている。リリーフ通路140にはリリーフ弁142が設けられている。リリーフ弁142は、高圧側であるポンプ126の吐出側の液圧(吐出圧)が設定圧を超えると閉状態から開状態に切り換わる。これらポンプ装置130,アキュムレータ136,リリーフ弁142等によって動力液圧源114が構成されている。
【0022】
液圧制御弁装置112は、ポンプ通路124に設けられた液圧制御弁の一種である電磁制御弁としての増圧リニアバルブ150,152,154,156と、ホイールシリンダ80〜86とリザーバ134とを直接接続する減圧通路158に設けられた電磁制御弁としての減圧リニアバルブ160,162,164,166とを含む。これら増圧リニアバルブ150〜156と減圧リニアバルブ160〜166との制御によりホイールシリンダ80〜86の液圧がそれぞれ別個独立に制御され得る。増圧リニアバルブ150〜156および前輪側の減圧リニアバルブ160,162は、コイル170に電流が供給されない間は、閉状態にある常閉弁であるが、後輪側の減圧リニアバルブ164,166は、コイル172に電流が供給されない間は開状態にある常開弁である。
【0023】
マスタ通路116には、ストロークシミュレータ装置180が設けられる。ストロークシミュレータ装置180は、ストロークシミュレータ182と常閉の電磁開閉弁から成るシミュレータ制御弁184とを含み、シミュレータ制御弁184の開閉により、ストロークシミュレータ182がマスタシリンダ110の加圧ピストンの前進を許容するとともに運転席側ブレーキペダル18に操作反力を付与する作用状態と、その作用を為さない非作用状態とに切り換えられる。
【0024】
本液圧制御装置100は、図1に示すように、前記ブレーキECU102の指令に基づいて制御される。ブレーキECU102は、コンピュータを主体とする電子制御ユニットで、実行部190,記憶部192,入出力部194等を含む。入出力部194には、前記踏力センサ20,52,マスタ圧センサ196,ホイールシリンダ圧センサ198,車輪速センサ200,液圧源液圧センサ202,車速等演算装置204,ヨーレイトセンサ206,手動影響度変更指示装置ないし手動影響度変更設定装置たる助手席側入力影響度変更スイッチ208等が接続されるとともに、増圧リニアバルブ150〜156および減圧リニアバルブ160,162のコイル170、減圧リニアバルブ164,166のコイル172、マスタ遮断弁120,122,シミュレータ制御弁184の各コイル、およびポンプモータ128等が図示しない駆動回路を介して接続されている。
【0025】
車速等演算装置204は、車輪速センサ200の出力に基づいて車輪速,車輪減速度,車速(車両の走行速度)および車両減速度等を演算し、ブレーキECU102に供給するものである。また、助手席側入力影響度変更スイッチ208は、車両の制動について助手席乗員がどの程度関与するかを設定するスイッチであり、例えば、インストルメントパネルに設けられる。本液圧ブレーキシステムにおいては助手席側ブレーキ操作装置12が設けられ、助手席乗員も液圧ブレーキ70〜76を作用させることができるようにされているが、この作用は運転者が意図しない作用である。そのため、本システムでは、運転者に違和感や不満を持たせることがないように、車両前進時に、後述するように、車両の走行状態等に応じて、助手席乗員のブレーキペダル50の踏込みによる入力である踏力(以後、場合に応じて助手席側踏力と称する)が減少させられ、リニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流の決定における助手席側踏力の影響度が低減され、助手席側踏力に基づいて液圧ブレーキ70〜76が作用させられる場合、助手席側踏力そのものに基づいて液圧ブレーキ70〜76が作用させられる場合より、液圧ブレーキ70〜76の作用力を小さくすることができるようにされており、本システムでは、助手席側踏力の影響度の低減が自動および手動で行われるようにされているのである。影響度は、自動的に決められ、影響度を自動的に変更する係数(自動変更アシスト係数と称する)と、手動で決められ、影響度を手動で変更する係数(手動変更アシスト係数と称する)との積である最終アシスト係数により決められ、助手席側踏力に最終アシスト係数を掛けることにより、リニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流を決定する際の助手席側踏力が得られる。自動変更アシスト係数は、本システムでは、0以上、1以下の値とされる。自動変更アシスト係数の算出については後述する。
【0026】
手動変更アシスト係数は、助手席側入力影響度変更スイッチ208により設定される。このスイッチ208は、手動により影響度を変更する装置であり、例えば、回動操作され、0および1を含むとともに、0から1の間で複数段階に設定された複数種類の手動変更アシスト係数のうちの1つを選択するものとされている。
【0027】
手動変更アシスト係数が0より大きく、1より小さい値とされる場合、最終アシスト係数は自動変更アシスト係数より小さい値とされ、影響度が減少させられる。手動変更アシスト係数が0の場合、影響度は0であり、助手席乗員が車両の制動に全く関与しないことを表し、助手席乗員がブレーキペダル50を踏み込んでも、それに基づく液圧ブレーキ70〜76の作用は行われない。手動変更アシスト係数が0に設定されれば、助手席乗員によるブレーキ操作に基づく液圧ブレーキ70〜76の作用が禁止されることとなるのである。また、手動変更アシスト係数が1に設定された場合には、影響度は、自動変更アシスト係数のみによって決まり、影響度の自動変更のみが行われることとなる。この際、自動変更アシスト係数が1であれば、影響度は減少させられず、助手席側踏力は低減させられず、そのままの大きさとされ、自動変更アシスト係数が0より大きく、1より小さい値であれば、自動変更アシスト係数のみによって決まる影響度で助手席側踏力が減少させられ、自動変更アシスト係数が0であれば、影響度は0となる。
【0028】
ブレーキECU102にはまた、図1に示すように、ナビゲーションシステム220のナビゲーションECU222が接続されている。ナビゲーションECU222は、地図情報データ等が記憶された記憶部等を備えており、ナビゲーションシステム220は、車両の目的地までの案内ルート情報等を画面表示により知らせる。ブレーキECU102にはさらに、クルーズコントロールシステム224のクルーズコントロールECU226が接続されている。クルーズコントロールシステム224は、例えば、車速が目標車速に近づくようにスロットルバルブの開度を調整する定速制御や、先行車の車速変化に合わせて適切な車間距離を保てるようにスロットルバルブの開度を調整する追従制御を行うシステムであり、クルーズコントロールECU226には、レーザレーダ装置228が接続されている。レーザレーダ装置228は、車体前部の、例えば、バンパの下方に取り付けられており、車両の前方に向けてレーザ光を照射し、その反射光により車両等、前方物体の有無を検出し、車間距離,相対速度等を演算し、クルーズコントロールECU226に供給する。さらにまた、ブレーキECU102には、車両後方の状況を検出する車両後方状況検出システム230が接続されている。車両後方状況検出システム230は、車両後方状況検出ECU232を備え、例えば、車体後部中央に設けられたレーザレーダ234が接続されており、レーザレーダ234において受光される反射光に基づいて車両等、後方物体の有無を検出し、車間距離,相対速度等を演算する。なお、レーザレーダに代えて、カメラの撮像により得られる画像データに基づいて、車両前方状況あるいは車両後方状況が取得されるようにしてもよい。
【0029】
また、ブレーキECU102の記憶部192には、図4に示す影響度自動変更用データないし自動変更アシスト係数設定用データ,図示を省略するメインルーチン,図5に示す最終アシスト係数決定プログラムおよび図6に示すリニアバルブへの供給電流決定プログラム等が記憶されており、実行部190によってこれらプログラムが実行されることにより、運転者による運転席側ブレーキ操作装置10の操作あるいは助手席乗員による助手席側ブレーキ操作装置12の操作に基づいて液圧ブレーキ70〜76が作用させられる。ブレーキECU102は電源投入に応じて、図示しない初期設定を行った後、最終アシスト係数決定プログラム等を繰り返し実行する。
【0030】
本液圧ブレーキシステムは原則として電子制御モードで作動する。運転者によりブレーキペダル18が踏み込まれれば、マスタ遮断弁120,122が閉状態とされることによりホイールシリンダ80〜86がマスタシリンダ110から遮断され、動力液圧源114の液圧により液圧ブレーキ70〜76が作用させられるのである。踏力センサ20によって検出された踏力に基づいて運転者の制動要求値(本実施例では要求ホイールシリンダ圧)が求められる。そして、制動要求値に基づいて制御指令値(本実施例では各増圧リニアバルブ150〜156,減圧リニアバルブ160〜166のコイル170,172への供給電流の指令値である指令電流)が決定され、コイル170,172への供給電流が制御されて、実際のホイールシリンダ圧が指令電流に対応する指令液圧に近づくようにされる。
【0031】
本液圧ブレーキシステムは助手席側ブレーキ操作装置12を備えており、助手席乗員は、運転者が運転席側ブレーキペダル18を踏み込んで車両の制動を行っている場合でも、あるいは運転者がブレーキ操作を行っていない場合でも、助手席側ブレーキペダル50を踏み込み、その踏込みに基づいて液圧ブレーキ70〜76を作用させ、運転者によるブレーキ操作を補助することができる。いずれの場合も、前述のように、助手席側踏力に最終アシスト係数が掛けられることにより、リニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流を決定するための助手席側踏力が得られ、その供給電流の決定における助手席側踏力の影響度を小さくし、助手席乗員によるブレーキ操作に基づいて液圧ブレーキ70〜76が作用させられる場合、助手席側踏力に応じた作用力を得つつ、運転者の違和感や不満が少なくて済むようにすることができる。また、助手席乗員によるブレーキ操作が不適切であっても、車両の制動状態に及ぼす影響が小さくて済むようにすることができる。
【0032】
自動変更アシスト係数は次式に従って自動的に算出され、0以上、1以下の値である。
自動変更アシスト係数=1−(引き下げ係数の和)×(1−引き下げ禁止係数の和)
但し、0≦引き下げ係数の和≦1、0≦引き下げ禁止係数の和≦1
引き下げ係数は自動変更アシスト係数を引き下げる係数であり、引き下げ係数が大きいほど、自動変更アシスト係数が小さくなって助手席側踏力が小さくされる。影響度が小さくされるのである。引き下げ禁止係数は自動変更アシスト係数の引き下げを禁止する係数であり、引き下げ禁止係数が大きいほど、自動変更アシスト係数が大きくなって助手席側踏力の減少度が小さくされる。影響度の減少が抑えられ、影響度が大きくされるのである。
【0033】
これら引き下げ係数および引き下げ禁止係数は、車両の走行状態および車両外部の走行環境状態に応じて設定され、自動変更アシスト係数は、これら状態に応じて自動的に決定される。本実施例のシステムでは、車両の走行状態は、例えば、車両の走行速度である車速および旋回状態量の一種であるヨーレイト(回転角速度)により表される車両の旋回状態により取得され、車両外部の走行環境状態は、例えば、車両の前方における物体の存在の有無,接近度、車両の後方における物体の存在の有無,接近度および走行路の状態により取得される。
【0034】
車速は車速等演算装置204により算出され、また、ヨーレイトはヨーレイトセンサ206により検出されて、ブレーキECU102に供給される。さらに、車両の前方に物体、例えば、車両が存在するか否かの情報は、クルーズコントロールECU226においてレーザレーダ装置228による前方状況の検出に基づいて取得され、ブレーキECU102に供給される。車両の後方に物体、例えば、車両が存在するか否かの情報は、車両後方状況検出システム230においてレーザレーダ234の受光データに基づいて取得され、ブレーキECU102に供給される。車両の前方あるいは後方に物体が存在する場合、その物体との距離および相対速度も取得され、クルーズコントロールECU226あるいは車両後方状況検出ECU232からブレーキECU102に供給される。本車両と前方あるいは後方の物体との距離の変化や相対速度の変化により、その物体が車両であるか否かがわかる。さらにまた、走行路の状態は、例えば、車両がカーブを走行中であるか、あるいは先に交差点があるかであり、それらに関する情報は、ナビゲーションECU222において地図情報データおよび自車位置データに基づいて取得され、ブレーキECU102に供給される。
【0035】
前記引き下げ係数および引き下げ禁止係数は、図4に示すように、本実施例の車両用ブレーキシステムにおける車両の走行状態および車両外部の走行環境状態として先に例示した車速,ヨーレイト,走行路,前方物体および後方物体の5種類の情報の各内容に応じて設定され、データベース化されて記憶部192に記憶させられている。車両の走行状態あるいは車両外部の走行環境状態によっては、助手席乗員によるブレーキペダル50の踏込みによりブレーキが効いた方がよい場合、あまり効かない方がよい場合およびブレーキの効きが車両の走行安定性や制動の妥当性に影響を及ぼさない場合があり、各情報の内容毎に、助手席乗員によるブレーキ操作に基づく液圧ブレーキ70〜76の作用が車両の走行安定性等に及ぼす影響を考慮して、自動変更アシスト係数の引き下げが必要であるか否か、引き下げの禁止が必要であるか否か、引き下げも引き下げ禁止も不要であるかが決められている。そして、情報内容が引き下げが必要な内容であれば、引き下げ係数が設定され、引き下げ禁止が必要な内容であれば、引き下げ禁止係数が設定され、ブレーキの効きが車両の走行安定性等に影響を及ぼさず、自動変更アシスト係数の引き下げも引き下げ禁止も不要な内容であれば、自動変更アシスト係数の決定における不使用が設定される。不使用の設定についても、データベースのデータの一部として記憶部192に記憶させられている。
【0036】
情報内容が不使用の場合、コンピュータの演算処理上、引き下げ係数および引き下げ禁止係数がいずれも0として取り扱われる。そのため、本実施例では、引き下げ係数および引き下げ禁止係数はそれぞれ、0以上、1より小さい値であり、係数0は、情報内容が不使用な内容であることを意味する。したがって、情報内容が自動変更アシスト係数の引き下げあるいは引き下げ禁止が必要な内容であり、自動変更アシスト係数の算出に使用される内容であれば、引き下げ係数あるいは引き下げ禁止係数は0より大きく、1より小さい範囲で設定されることとなる。以下の説明において引き下げ係数あるいは引き下げ禁止係数は、文字通り、自動変更アドレス係数を引き下げ、引き下げを禁止する係数として使用する。
【0037】
引き下げ係数は、本実施例では、5種類の情報の全部についてそれぞれ設定されるようにされており、それが設定される情報内容のレベルに応じて決められる可変の値である。ただし、5種類の情報についてそれぞれ設定された引き下げ係数A1〜E1は、各最大値の和が1を超えることがない大きさとされ、5種類の情報の内容がいずれも、自動変更アシスト係数の引き下げが必要な内容であっても、引き下げ係数の和が1を超えることがないようにされている。また、引き下げ係数A1〜E1の各最大値は、引き下げ係数A1〜E1がそれぞれ設定される情報が得られる状態において助手席乗員によりブレーキペダル50の踏込み操作が行われた場合に車両の走行安定性,制動の妥当性等に及ぼす影響を考慮し、その影響が大きいほど大きい値に設定される。本システムでは、例えば、車速が設定速度より大きい場合および走行路がカーブである場合について、助手席乗員によりブレーキ操作が行われれば、車両走行安定性等に対する影響度が大きいとされ、各場合について設定される引き下げ係数A1および引き下げ係数C1の各最大値は、他の状態について設定される引き下げ係数B1,D1およびE1の各最大値より大きい値とされている。
【0038】
そして、車速については、設定速度以下の場合には不使用とされ、設定速度より大きい場合に自動変更アシスト係数の引き下げが必要とされ、引き下げ係数A1が設定される。本システムでは、設定速度を超える車速が複数段階に分けられ、各段階毎に引き下げ係数A1が設定され、車速が大きくなるほど引き下げ係数A1が大きくなるように引き下げ係数設定データが作成されている。
また、ヨーレイトについては、車速が設定速度を超え、ヨーレイトも設定値を超える場合に、自動変更アシスト係数の引き下げが必要とされ、引き下げ係数B1が設定され、それ以外の場合は不使用とされる。本システムでは、設定値を超えるヨーレイトが複数段階に分けられ、各段階毎に引き下げ係数B1が設定され、ヨーレイトが大きいほど引き下げ係数B1が大きくなるように引き下げ係数設定データが作成されている。
【0039】
さらに、走行路については、カーブである場合、車速が設定速度を超える状態において自動変更アシスト係数の引き下げが必要とされ、引き下げ係数C1が設定され、車速が設定速度以下の状態では不使用とされる。本システムでは、設定速度を超える車速が複数段階に分けられ、各段階毎に引き下げ係数C1が設定され、車速が大きいほど引き下げ係数C1が大きくなるように引き下げ係数設定データが作成されている。
【0040】
さらにまた、前方物体については、前方に接近障害物がない場合に自動変更アシスト係数の引き下げが必要とされ、引き下げ係数D1が設定される。接近障害物は、本液圧ブレーキシステムを備えた車両(以後、本車両と略称する)の前方にあり、本車両との距離が短く、時間の経過につれて本車両との距離が短くなるものであり、前方に接近障害物が全く存在しない場合は勿論、あっても、時間の経過につれて本車両との距離が長くなり、本車両から離れていっている離間物体である場合および本車両との距離が設定距離より長い場合には接近障害物なしとされ、引き下げ係数D1が設定される。この場合、引き下げ係数D1は、前方に接近障害物が全く存在しない場合および前方物体が離間物体である場合に最大値とされ、前方に接近障害物があるが、本車両との距離が設定距離より長い場合には、引き下げ係数D1は、本車両と前方物体との距離および接近速度に基づいて決められ、距離が短く、接近速度が大きいほど小さい値に設定される。本実施例では、例えば、これら距離と接近速度とに基づいて引き下げ係数D1を決めるテーブルが予め作成され、引き下げ係数設定データとして記憶させられている。テーブルは、例えば、距離と接近速度とがそれぞれ、複数段階に分けられ、各段階の組合わせに応じて引き下げ係数D1が決められるものとされている。距離および接近速度は、本車両と前方物体との接近度を表し、引き下げ係数D1は、接近度に応じて決められ、接近度が高いほど小さい値とされる。なお、距離と接近速度とのいずれか一方に基づいて引き下げ係数D1が決められてもよい。
【0041】
さらに、後方物体については、後方に接近車両がある場合、自動変更アシスト係数の引き下げが必要とされ、引き下げ係数E1が設定される。後方に接近車両が全く存在しない場合は勿論、あっても本車両との距離が設定距離より長い場合には、後方に接近車両なしとされ、不使用とされる。後方に車両が存在し、かつ、本車両との距離が設定距離以下である場合に後方に接近車両ありとされ、その場合に引き下げ係数E1は、本車両と接近車両との距離および接近速度に基づいて決められ、距離が短く、接近速度が大きいほど大きい値に設定される。本実施例では、上記引き下げ係数D1の場合と同様に、距離と接近速度とに基づいて引き下げ係数E1を決めるテーブルが予め作成され、引き下げ係数設定データとして記憶させられている。引き下げ係数E1も接近度に応じて決められるのであり、接近度が高いほど大きい値となるようにテーブルが作成されている。
【0042】
引き下げ禁止係数は、本実施例では、5種類の情報のうち、走行路情報および前方物体情報について設定されており、それが設定される情報内容のレベルに応じて決められる可変の値である。ただし、2種類の引き下げ禁止係数C2,D2は、2種類の情報の内容が共に、自動変更アシスト係数の算出に引き下げ禁止係数が使用される内容であっても、引き下げ禁止係数C2,D2の各最大値の和が1を超えることがない大きさに設定されている。
【0043】
走行路については、先に交差点がある路面である場合、自動変更アシスト係数の引き下げ禁止が必要とされ、引き下げ禁止係数C2が設定される。引き下げ禁止係数C2は、本車両と交差点との距離が短いほど大きい値とされる。例えば、本車両から交差点までの距離が複数段階に分けられ、各段階毎に引き下げ禁止係数C2が設定されるのであるが、距離が短いほど引き下げ禁止係数C2が大きい値となるように引き下げ禁止係数設定データが作成されている。距離が接近度を表し、引き下げ禁止係数C2は接近度が大きいほど大きい値に設定される。走行路情報については、引き下げ係数C1,引き下げ禁止係数C2が設定される場合以外は不使用とされる。
【0044】
また、前方に接近障害物がある場合、すなわち前方に本車両との距離が設定距離以下の範囲に、時間の経過につれて本車両との距離が短くなっている障害物がある場合、自動変更アシスト係数の引き下げ禁止が必要とされ、引き下げ禁止係数D2が設定される。例えば、本車両と接近障害物との距離が複数段階に分けられ、各段階毎に引き下げ禁止係数D2が設定されるのであるが、距離が短いほど引き下げ禁止係数D2が大きい値となり、接近度が大きいほど引き下げ禁止係数D2が大きい値となるように引き下げ禁止係数設定データが作成されている。
【0045】
なお、上記のように自動変更アシスト係数は、車両走行状態等に応じて決められ、自動変更アシスト係数と手動変更アシスト係数との積により最終アシスト係数が決められるのであるが、本システムにおいては、手動変更アシスト係数が0以上、1以下の値とされており、最終アシスト係数は自動変更アシスト係数より大きい値とされることはなく、変更されないか、あるいは小さい値とされる。リニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流の決定における助手席側踏力の影響度が、自動変更アシスト係数のみによって決められる場合と同じであるか、それより減少させられるようにされているのであり、そのため、自動変更アシスト係数の引き下げあるいは引き下げ禁止が必要とされるとき、各種引き下げ係数および引き下げ禁止係数は、それぞれについて設定された最大値以下の範囲において、自動変更アシスト係数が大きめの値となるように係数設定データが作成される。
【0046】
以下、図5および図6にフローチャートで示すプログラムに基づいて最終アシスト係数の決定およびリニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流の決定を説明する。
図5に示す最終アシスト係数決定ルーチンのステップ1(以後、S1と略記する。他のステップについても同じ。)においては、助手席乗員によるブレーキペダル50の踏込み操作に基づく液圧ブレーキ70〜76の作用が禁止されているか否かの判定が行われる。この判定は助手席側入力影響度変更スイッチ208により、手動変更アシスト係数が0に設定されているか否かに基づいて行われる。助手席乗員の操作による液圧ブレーキ70〜76の作用が禁止されていれば、S1の判定結果はYESになってルーチンの実行は終了する。
【0047】
助手席乗員の操作による液圧ブレーキ70〜76の作用が禁止されている場合、リニアバルブへの供給電流決定ルーチンのS11における判定結果もYESになってS21が実行され、運転席側ブレーキペダル18が踏込み操作されているか否かの判定が行われる。この判定は、踏力センサ20の検出信号に基づいて行われ、踏力が検出されていれば、運転席側ブレーキペダル18が踏み込まれていることがわかる。運転者が運転席側ブレーキペダル18を踏込み操作していなければ、S21の判定結果はNOになってルーチンの実行は終了する。また、運転者が運転席側ブレーキペダル18を踏み込んでいれば、S21の判定結果はYESになってS22が実行され、踏力センサ20により検出される運転席側踏力に基づいてリニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流が決定される。
【0048】
助手席乗員による操作に基づく液圧ブレーキ70〜76の作用が禁止されていなければ、図5に示す最終アシスト係数決定ルーチンのS1の判定結果がNOになってS2が実行され、車両の走行状態および車両外部の走行環境状態が取得される。ブレーキECU102に供給された車速,ヨーレイト,車両前後における物体の存在の有無,物体が存在する場合の物体との距離,相対速度,走行路の状態が読み込まれるのである。次いでS3が実行され、S2において読み込まれた状態に基づいて自動変更アシスト係数が演算される。
【0049】
この際、読み込まれた情報の内容と、データベースに記憶させられている係数設定データとに基づいて、情報内容毎に、自動変更アシスト係数の引き下げが必要か、あるいは引き下げ禁止が必要か、あるいは情報内容が不使用かが決められる。前述のように、引き下げ係数および引き下げ禁止係数は、それらが設定された情報内容のレベルに応じて変わる値であり、S3では、S2において読み込まれた情報に基づいて、情報内容のレベルに応じた値に引き下げ係数および引き下げ禁止係数が決められる。
【0050】
引き下げ係数が設定される内容が複数あれば、各内容について設定された引き下げ係数が合算され、引き下げ禁止係数が設定された内容が複数あれば、各内容について設定された引き下げ禁止係数が合算される。例えば、図7に表にして例示するように、車両が高速でコーナを走行中であり、回転角速度が大きく、かつ、前方に接近障害物、例えば、別の車両がなく、あるいはあっても接近障害物ありとされる範囲になく、後方に車両がなく、あるいはあっても接近車両ありとされる範囲にない場合、後方物体については情報不使用であり、それ以外の情報については引き下げ係数が決められ、決められた引き下げ係数A1,B1,C1およびD1を使用して自動変更アシスト係数が次式によって算出される。引き下げ禁止係数は使用されないため、引き下げ禁止係数の和は0である。
自動変更アシスト係数=1−(A1+B1+C1+D1)×(1−0)
0<A1+B1+C1+D1<1
【0051】
また、図8に表にして例示するように、車両が交差点直前を高速で直進走行中であり、かつ、前方に接近障害物があり、後方に接近車両がある場合には、車速および後方物体については引き下げ係数が設定され、走行路および前方物体については引き下げ禁止係数が設定される。車両が直進中であるため、旋回状態量は関係なく、自動変更アシスト係数の算出に使用されず、自動変更アシスト係数は次式によって算出される。自動変更アシスト係数は、引き下げ禁止係数C2とD2との和が1より小さい場合には、0より大きく、1より小さい値となり、引き下げ禁止係数C2およびD2がそれぞれ最大値であり、その和が1である場合には、1になる。なお、下記式では、不使用の場合の係数0の記載は省略されている。
自動変更アシスト係数=1−(A1+E1)×[1−(C2+D2)]
ただし、0<A1+E1<1,0<C2+D2≦1である。
【0052】
さらに、車両の走行状態や車両外部の走行環境状態によっては、自動変更アシスト係数の算出式の引き下げ係数の和の項が0になり、自動変更アシスト係数が1になることがあり得る。例えば、車速およびヨーレイトが小さく、走行路がカーブであり、前方に接近障害物があり、後方に接近車両がない場合、前方物体については引き下げ禁止係数D2が設定され、その他の情報については不使用とされる。そのため、引き下げ係数の和は0であり、自動変更アシスト係数は次式によって算出され、1になる。
自動変更アシスト係数=1−0×(1−D2)
【0053】
また、車両の走行状態や車両外部の走行環境状態によっては、自動変更アシスト係数の算出式の引き下げ係数の和の項が1になることがあり得る。例えば、車速およびヨーレイトが大きく、走行路がカーブであり、前方に障害物がなく、後方に接近車両がある場合、自動変更アシスト係数の引き下げが必要とされ、自動変更アシスト係数の算出に引き下げ係数A1,B1,C1,D1およびE1が使用される。引き下げ係数A1,B1,C1,D1およびE1はそれぞれ、各最大値の和が1になるように設定されており、これらの和は0より大きく、1以下となる。また、引き下げ禁止係数は使用されないため、引き下げ禁止係数の和は0である。そのため、自動変更アシスト係数は次式によって算出され、引き下げ係数A1,B1,C1,D1およびE1の和が1より小さい場合には0より大きく、1より小さい値となり、和が1の場合には0になる。
自動変更アシスト係数=1−(A1+B1+C1+D1+E1)×(1−0)
ただし、0<A1+B1+C1+D1+E1≦1
【0054】
自動変更アシスト係数の演算後、S4が実行され、算出された自動変更アシスト係数に手動変更アシスト係数が掛けられ、最終アシスト係数が算出される。手動変更アシスト係数は、助手席側入力影響度変更スイッチ208の操作により、車両の走行開始前に設定されており、S4では、そのスイッチ208の出力信号により得られる手動変更アシスト係数が自動変更アシスト係数に掛けられ、最終アシスト係数が算出される。それにより、車両の走行状態,車両外部の走行環境状態,運転者および助手席乗員の意向を踏まえたアシスト係数が得られ、手動変更アシスト係数と自動変更アシスト係数との少なくとも一方が1より小さい値であれば、助手席側踏力が減少させられることとなる。自動変更アシスト係数が0であれば、最終アシスト係数は0になり、助手席側踏力は0に減少させられる。
【0055】
助手席乗員による操作に基づく液圧ブレーキ70〜76の作用が禁止されていない状態では、最終アシスト係数の演算が常時行われており、助手席乗員によって助手席側ブレーキ操作装置12が操作されたとき、図6に示す供給電流決定ルーチンにおいて使用される。この場合、供給電流決定ルーチンのS11の判定結果がNOになってS12が実行され、運転席側ブレーキペダル18が踏み込まれたか否かの判定が行われる。運転席側ブレーキペダル18が踏み込まれていなければ、S12の判定結果はNOになってS18が実行され、助手席側ブレーキペダル50が踏み込まれているか否かの判定が行われる。この判定は踏力センサ52により検出される助手席側踏力に基づいて行われ、助手席側ブレーキペダル50が踏み込まれていなければ、S18の判定結果はNOになってルーチンの実行は終了する。
【0056】
運転席側ブレーキペダル18が踏み込まれれば、S12の判定結果がYESになってS13が実行され、助手席側ブレーキペダル50が踏み込まれているか否かの判定が行われる。助手席側ブレーキペダル50が踏み込まれていなければ、S13の判定結果がNOになってS22が実行され、運転席側踏力に基づいて要求ホイールシリンダ圧が決定され、リニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流が決定される。
【0057】
運転席側ブレーキペダル18が踏み込まれるとともに、助手席側ブレーキペダル50が踏み込まれれば、S12,S13の各判定結果がYESになってS14が実行され、助手席側ブレーキペダル50の踏込みにより得られる踏力に最終アシスト係数が掛けられ、供給電流決定用助手席側踏力が演算される。次いでS15が実行され、運転席側踏力が供給電流決定用助手席側踏力より大きいか否かの判定が行われる。運転席側踏力が供給電流決定用助手席側踏力より大きければ、S15の判定結果がYESになってS16が実行され、運転席側踏力に基づいてリニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流が決定される。
【0058】
運転席側踏力が供給電流決定用助手席側踏力以下であれば、S15の判定結果がNOになってS17が実行され、供給電流決定用助手席側踏力に基づいてリニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流が決定される。この場合、助手席乗員によるブレーキペダル50の踏込みに基づいて液圧ブレーキ70〜76が作用させられることとなるが、最終アシスト係数が1より小さい値であれば、アシスト係数により、実際より小さくされた助手席側踏力に基づいて供給電流が決定され、液圧ブレーキ70〜76が作用させられるため、作用力は運転席側踏力に基づいて液圧ブレーキ70〜76が作用させられる場合より大きくなるが、運転者が感じる違和感や不満は少なくて済む。
【0059】
また、運転者がブレーキ操作を行っていないが、助手席乗員がブレーキ操作を行った場合、S12の判定結果がNO、S18の判定結果がYESになり、S19,S20がS14,S17と同様に実行され、供給電流決定用助手席側踏力が演算されるとともに、その踏力に基づいてリニアバルブ150〜156,160〜166への供給電流が決定される。
【0060】
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、ブレーキECU102のリニアバルブ150〜156,160〜166を制御する部分が弁制御部を構成し、S1,S11を実行する部分が助手席乗員ブレーキ操作禁止部を構成している。また、ブレーキECU102のS2を実行する部分が、車速等演算装置204と共に走行状態取得部たる車速取得部を構成し、ヨーレイトセンサ206と共に走行状態取得部たる旋回状態量取得部を構成し、クルーズコントロールECU226および車両後方状況検出ECU232と共に、それぞれ走行環境状態取得部たる前方物体検出部および後方物体検出部を構成し、ナビゲーションECU222と共に走行環境状態取得部たる走行路情報取得部を構成し、これらが状態取得部を構成し、S3を実行する部分が車速対応変更部、旋回状態対応変更部、前方物体対応変更部、後方物体対応変更部、走行路情報対応変更部を構成し、これらが自動影響度変更部たる自動影響度減少部を構成し、S4を実行する部分および助手席側入力影響度変更スイッチ208が手動影響度変更部たる手動影響度減少部を構成し、これら状態取得部,自動影響度減少部および手動影響度減少部が影響度変更部たる影響度減少部を構成している。車輪速センサ200も車速取得部を構成し、レーザレーダ装置228も前方物体検出部を構成し、レーザレーダ234も後方物体検出部を構成していると考えることもできる。自動変更アシスト係数および手動変更アシスト係数の値によっては、影響度が減少させられないこともあり、本実施例の影響度減少部は影響度維持機能を備えている。さらに、ブレーキECU102のS15〜S17を実行する部分が選択型制御量決定部を構成し、記憶部192が自動変更アシスト係数設定用データ記憶部を構成し、弁制御部,選択型制御量決定部および影響度減少部が電気的制御装置を構成している。
【0061】
なお、上記実施例において説明した引き下げ係数および引き下げ禁止係数の設定は、1例であり、別の態様で設定されてもよい。例えば、引き下げ係数と引き下げ禁止係数との少なくとも一方が、情報内容に応じて連続して変化する値に設定されてもよく、情報内容に対して1つに決められた一定の値とされてもよい。また、走行路の先に交差点がある場合の引き下げ禁止係数が、発明に係る車両用ブレーキシステムを備えた車両の車速を考慮して設定され、車速が大きいほど係数が大きくされるようにしてもよい。前方に接近障害物ありとされる場合も、距離に加えて接近障害物と車両との相対速度を考慮して設定され、接近速度が大きいほど引き下げ禁止係数が大きくなるように設定されてもよい。
【0062】
さらに、図4に示す情報は、本発明の一実施例である車両用ブレーキシステムにおいて自動変更アシスト係数を決める条件の例であり、本発明の別の実施例であるブレーキシステムにおいては、別の情報が図4に示す情報と共に、あるいは図4に示す情報に替えて自動変更アシスト係数を決める条件として使用されてもよい。また、情報内容として別の情報内容が係数の決定に使用されてもよい。情報内容として、例えば、走行路情報として、先に一時停止箇所があること、走行路が下り坂であること、および走行路が上り坂であることの少なくとも1つが使用されてもよく、その場合、各情報内容に対して引き下げ禁止係数が設定され、自動変更アシスト係数の算出に使用される。
【0063】
自動影響度変更部により設定された影響度と、手動影響度変更部により設定された影響度との和が最終的な影響度とされるようにしてもよい。影響度は、例えば、前記実施例と同様にアシスト係数により設定され、手動変更アシスト係数は、例えば、自動変更アシスト係数との和が1を超えない大きさの値であって、例えば、0,正の値および負の値を含んで複数種類設定される。あるいは、手動変更アシスト係数が自動変更アシスト係数とは関係なく設定され、自動変更アシスト係数との和が1を超える場合には、1に抑えられるようにすることも可能である。手動変更アシスト係数が運転者と助手席乗員との話合いにより車両の走行開始前に決められることは、自動変更アシスト係数との積が最終アシスト係数とされる場合と同じである。また、手動変更アシスト係数は、例えば、スイッチの操作により設定される。設定された手動変更アシスト係数は、例えば、図5に示す最終アシスト係数決定プログラムと同様に構成された最終アシスト係数決定プログラムのS4に相当するステップにおいて、自動変更アシスト係数に加えられ、最終アシスト係数が算出される。なお、本システムでは、助手席側入力禁止装置、例えば、助手席側入力カットオフスイッチが設けられ、その操作により、助手席乗員のブレーキ操作による液圧ブレーキの作用が禁止される。
【0064】
助手席側入力の影響度の自動変更と手動変更とが選択的に行われるようにしてもよい。その実施例を図9に示すアシスト係数決定ルーチン基づいて説明する。
助手席側入力の自動変更と手動変更とのいずれが行われるようにするかは、本システムでは、車両の走行開始に先立って運転者と助手席乗員との話し合いにより決められ、選択装置を用いて選択される。例えば、車両のインストルメントパネルに助手席側入力影響度変更態様選択スイッチが設けられ、その操作により、自動変更と手動変更との選択および手動変更が選択される場合には影響度が設定される。影響度は、例えば、自動変更および手動変更共にアシスト係数により設定され、手動変更アシスト係数は、例えば、0および1を含むとともに、0から1の間で複数段階に設定され、それらのうちの1つが選択される。
【0065】
アシスト係数決定ルーチンにおいてS31は前記実施例の最終アシスト係数決定ルーチンのS1と同様に実行される。手動変更アシスト係数が0に設定されており、助手席乗員による操作に基づく液圧ブレーキの作用が禁止されていれば、S31の判定結果がYESになってプログラムの実行は終了する。
【0066】
助手席乗員による操作に基づく液圧ブレーキの作用が禁止されていなければ、S31の判定結果がNOになってS32が実行され、自動変更アシスト係数による助手席側踏力の変更が選択されているか否かの判定が行われる。自動変更アシスト係数による助手席側踏力の変更が選択されているのであれば、S32の判定結果はYESになってS33,S34が実行される。S33,S34は前記実施例のS2,S3と同様に実行され、演算された自動変更アシスト係数は助手席側踏力変更用アシスト係数としてブレーキECUの記憶部のメモリに記憶される。
【0067】
手動変更アシスト係数による助手席側踏力の変更が選択されているのであれば、S32の判定結果がNOになってS35が実行され、助手席側入力影響度変更態様選択スイッチの操作により選択されている手動変更アシスト係数が助手席側踏力変更用アシスト係数としてメモリに記憶される。そして、リニアバルブへの供給電流の決定は、前記実施例の供給電流決定プログラムの最終アシスト係数が助手席側踏力変更用アシスト係数とされたプログラムに従って行われる。
本実施例においては、ブレーキECUのS32を実行する部分が影響度変更態様選択部を構成し、S33を実行する部分等が状態取得部を構成し、S34を実行する部分が自動影響度減少部を構成し、S35を実行する部分が手動影響度減少部を構成し、これらが影響度変更部たる影響度減少部を構成している。
【0068】
制御量決定部および影響度変更部は共に機械的に構成してもよい。その実施例を図10および図11に基づいて説明する。
本実施例の液圧ブレーキシステムにおいては、図10に概略的に示すように、運転席側ブレーキ操作装置300の運転席側ブレーキペダル302の踏込みにより得られる運転席側踏力と、助手席側ブレーキ操作装置304の助手席側ブレーキペダル306の踏込みにより得られる助手席側踏力とは、車体308に設けられた伝達部材としてのレバー310によりブレーキブースタ312の入力ロッド314に伝達される。
【0069】
レバー310は、その長手方向の中央部に設けられた係合部318において、車体308に設けられたブラケット320の長穴322に、入力ロッド314の移動方向と平行な方向に移動可能に嵌合されるとともに、入力ロッド314の一端部に相対回転可能に連結されている。ブレーキペダル302,306が踏み込まれない状態では、ブレーキブースタ312のリターンスプリング(図示省略)の付勢により、レバー310は後方側、すなわち運転席側および助手席側へ付勢されている。このスプリングの付勢によるレバー310の後退端は、その長手方向の両端部にそれぞれ対応して設けられたストッパ324,326に当接することにより規定される。
【0070】
運転席側ブレーキペダル302は、レバー310の長手方向の一端部に設けられた長穴330に、レバー310の長手方向に相対移動可能に連結されており、運転席側ブレーキペダル302の踏込みによりレバー310が前方へ移動させられる。なお、運転席側ブレーキペダル302は、図10においては、レバー310に対する連結部分のみが図示されている。また、助手席側ブレーキペダル306は、図11に概略的に示すように、車体308(図10参照)に軸332により回動可能に取り付けられるとともに、ケーブル334によってレバー310の長手方向の他端部に連結されている。ケーブル334は車体308に固定して設けられたチューブ336内に移動可能に収容され、助手席側ブレーキペダル306の回動軸線に対して踏込みパッド338とは反対側の部分に連結されており、助手席側ブレーキペダル306の踏込みによりケーブル334が引き締められ、レバー310が前方へ移動させられる。
【0071】
ケーブル334の助手席側ブレーキペダル306に対する連結部340は、助手席側ブレーキペダル306の長手方向に移動可能に設けられ、移動装置342により移動させられる。移動装置342は、例えば、電動モータを駆動源として構成され、例えば、インストルメントパネルに設けられた操作部材ないし影響度変更指示装置としての影響度変更スイッチ344が乗員によって操作されることにより、移動装置342が作動させられて連結部340を移動させ、それにより、助手席側ブレーキペダル306に加えられる踏力のレバー310への伝達比率が変更される。
【0072】
運転席側ブレーキペダル302が踏み込まれれば、レバー310はストッパ324を支点として回動させられつつ、ストッパ324に対して滑って入力ロッド314を前進させ、マスタシリンダ346の加圧室に液圧を発生させる。この状態で助手席側ブレーキペダル306が踏み込まれれば、それによってもレバー310は前進させられて入力ロッド314を前進させる。運転席側踏力と助手席側踏力とが機械的に合成され、その合成踏力によってマスタシリンダ346の加圧室に液圧が発生させられ、液圧ブレーキが作用させられることとなるのである。ケーブル334の助手席側ブレーキペダル306に対する連結位置を変更し、助手席側踏力のレバー310への伝達比率が変更され、運転席側踏力と助手席側踏力との合成比率を変更することができる。合成比率は、運転者と助手席乗員との話合いにより決められ、影響度変更スイッチ344の操作により連結部340が移動させられて変更される。
本実施例においては、レバー310が入力合成装置を構成し、移動装置342および影響度変更スイッチ344が合成比率変更部を構成している。
【0073】
制御量決定部および影響度変更部を共に機械的に構成する場合、運転席側入力と助手席側入力とのうち大きい方が選択されて制御量が決定されるようにしてもよい。その実施例を図12および図13に基づいて説明する。
本実施例の液圧ブレーキシステムにおいては、図12および図13に概略的に示すように、運転席側ブレーキ操作装置の運転席側ブレーキペダルの踏込みにより得られる運転席側踏力と、助手席側ブレーキ操作装置の助手席側ブレーキペダルの踏込みにより得られる助手席側側踏力とはそれぞれ、車体360に設けられた伝達部材としてのレバー370,372によりブレーキブースタ374の入力ロッド376に伝達される。
【0074】
レバー370,372は車両の左右方向に並んで配設され、各一端部において共通の軸380により車体360に回動可能に取り付けられている。図12においては、レバーが2本設けられていることをわかり易くするために、一方のレバー372が二点鎖線により図示され、2本のレバー370,372が並べて図示されている。レバー370の自由端部には、運転席側ブレーキペダルが相対回動可能に連結され、レバー372の自由端部には、助手席側ブレーキペダルに連結されたケーブル382が連結されている。ケーブル382は、チューブ384に案内されて移動する。
【0075】
入力ロッド376は、図13に示すように、レバー370,372の長手方向の中間部に当接させられている。 入力ロッド376は、ブレーキブースタ374内に配設されたリターンスプリング(図示省略)により、レバー370,372に当接する向きに付勢されている。これらレバー370,372の入力ロッド376が後退する側の回動端は、運転席側ブレーキペダル,助手席側ブレーキペダルの各回動端がストッパによって規定されることにより規定される。助手席側ブレーキペダルは、図示は省略するが、前記実施例の助手席側ブレーキペダル306と同様に構成され、ケーブル382が移動可能に連結されるとともに、その連結部が影響度変更スイッチの操作に基づいて移動装置により移動させられるようにされている。
【0076】
運転席側ブレーキペダルが踏み込まれれば、レバー370が回動させられて入力ロッド376を前進させ、マスタシリンダ386の加圧室に液圧を発生させる。この際、助手席側ブレーキペダルが踏み込まれていなければ、入力ロッド376はレバー372から離れる。この状態で助手席側ブレーキペダルが踏み込まれれば、レバー372が回動させられる。入力ロッド376はレバー372から離れており、助手席側ブレーキペダルの踏込み開始当初は、助手席側踏力は入力ロッド376に伝達されない。レバー372により入力ロッド376に作用する力であって、助手席側踏力に基づく力が、レバー370により入力ロッド376に作用する力であって、運転席側踏力に基づく力より大きければ、レバー372が入力ロッド376に当接した状態から更に回動させられて入力ロッド376を前進させ、マスタシリンダの加圧室に液圧を発生させる。運転席側踏力と助手席側踏力とのうち、大きい方が選択されて入力ロッド376に伝達され、液圧ブレーキを作用させるのである。助手席側踏力の影響度を変更する場合には、影響度変更スイッチが操作され、移動装置により、ケーブル382の助手席側ブレーキペダルに対する連結部が移動させられる。それにより、レバー372を回動させる助手席側踏力が変更され、助手席側踏力が入力ロッド376に伝達される際、その大きさが変更される。
本実施例においては、レバー370,372が、運転席側踏力と助手席側踏力とのうち大きい方を選択して制御量を決定する入力選択部たる入力選択装置を構成し、移動装置および影響度変更スイッチが助手席側入力変更部を構成ている。
【0077】
なお、自動影響度変更部により設定された影響度と、手動影響度変更部により設定された影響度との積により最終的な影響度が決められる場合にも、手動影響度変更指示装置とは別に助手席側入力禁止装置、例えば、助手席側入力カットオフスイッチが設けられ、助手席乗員の操作によるブレーキの作用が禁止されるようにしてもよい。
また、助手席側入力の影響度の手動変更は、無段階に連続して行われるようにしてもよい。例えば、スイッチ操作により手動変更アシスト係数が連続して変わるようにするのである。
【0078】
さらに、自動変更アシスト係数と手動変更アシスト係数との積により最終アシスト係数が決められ、助手席側入力の影響度が決められる場合、自動変更アシスト係数が小さめの値に算出されるようにし、手動変更アシスト係数を1より大きい値にも設定できるようにして、助手席側入力の影響度が運転者と助手席乗員との話合いにより調整されるようにしてもよい。この際、最終アシスト係数が1を超える場合には、1に抑えられるようにすれば、影響度が増大しないようにすることができる。
また、自動変更アシスト係数および手動変更アシスト係数により最終アシスト係数が決められる場合、最終アシスト係数を1より大きくできるようにしてもよい。両アシスト係数の積により最終アシスト係数が決められる場合、例えば、手動変更アシスト係数を1より大きい値にも設定できるようにする。自動変更アシスト係数も、場合によっては1より大きい値に設定されるようにされてもよい。最終アシスト係数が1を超えれば、助手席側入力の影響度が増大させられることとなる。
最終アシスト係数が自動変更アシスト係数と手動変更アシスト係数との和により最終アシスト係数が決められる場合も、最終アシスト係数を1より大きくできるようにしてもよく、助手席側入力の影響度の自動変更と手動変更とが選択的に行われる場合にも、自動変更アシスト係数と手動変更アシスト係数との少なくとも一方を1より大きくできるようにしてもよい。
【0079】
また、影響度変更部は、手動影響度変更部を含まず、自動影響度変更部のみを含むものとしてもよい。その場合、例えば、助手席側入力の影響度の変更は、図5に示す最終アシスト係数決定プログラムのS1〜S3を含むプログラムにより行われる。
【0080】
さらに、影響度変更部は、自動影響度変更部を含まず、手動影響度変更部のみを含むものとしてもよい。その場合、助手席側入力の影響度の変更は手動で行われるため、アシスト係数決定プログラムは不要であり、例えば、図6に示すリニアバルブへの供給電流決定プログラムに相当するプログラムであって、最終アシスト係数が手動変更アシスト係数とされたプログラムのみが実行される。
【0081】
また、引き下げ係数および引き下げ禁止係数が設定される情報の内容は、走行路の状態がカーブ路であることや、先に交差点があることは一例であり、これらの他に、例えば、先が行き止まりであることや、前記実施例の5種類の情報およびそれら情報の各内容とは異なる情報および情報内容等、種々の状況について引き下げ係数あるいは引き下げ禁止係数が設定され、自動変更アシスト係数の算出に使用されるようにすることができる。
【0082】
さらに、自動変更アシスト係数は、走行状態および車両外部の走行環境状態の各情報内容毎に引き下げ係数あるいは引き下げ禁止係数あるいは不使用が設定され、情報の組合わせによって演算されるのに限らず、各情報内容の組合わせにより得られるアシスト係数が予め設定されてデータ化され、情報内容の組合わせに基づいてアシスト係数がデータベースから読み出され、助手席側入力の影響度の自動変更に使用されるようにしてもよい。
【0083】
また、請求可能発明は、車両後退時におけるブレーキの作用力の制御にも適用することができる。車両の進行方向が逆になるが、車両前進時と同様に制御を行うことができ、前後についての情報が制御に使用される場合、車両前進時における車両前方および後方についてそれぞれ得られる情報を、車両後方および前方についての情報として使用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】一実施例である車両用液圧ブレーキシステムを示す回路図である。
【図2】上記車両用液圧ブレーキシステムの運転席側ブレーキ操作装置を示す正面図(一部断面)である。
【図3】上記車両用液圧ブレーキシステムの助手席側ブレーキ操作装置を示す正面図(一部断面)である。
【図4】上記車両用液圧ブレーキシステムにおいて車両の走行状態および車両外部の走行環境状態についてのアシスト係数の引き下げ係数,引き下げ禁止係数および不使用の設定を説明する図表である。
【図5】上記車両用液圧ブレーキシステムのブレーキECUの記憶部に記憶させられた最終アシスト係数決定プログラムを示すフローチャートである。
【図6】上記記憶部に記憶させられたリニアバルブへの供給電流決定プログラムを示すフローチャートである。
【図7】上記最終アシスト係数決定プログラムにおける自動変更アシスト係数の算出事例を示す図表である。
【図8】上記最終アシスト係数決定プログラムにおける自動変更アシスト係数の算出の別の事例を示す図表である。
【図9】別の実施例である車両用液圧ブレーキシステムのブレーキECUの記憶部に記憶させられたアシスト係数決定プログラムを示すフローチャートである。
【図10】更に別の実施例である車両用液圧ブレーキシステムの入力合成装置を概略的に示す正面図である。
【図11】図10に示す車両用液圧ブレーキシステムの助手席側ブレーキ操作装置を概略的に示す正面図である。
【図12】更に別の実施例である車両用液圧ブレーキシステムの入力選択装置を概略的に示す正面図である。
【図13】図12に示す入力選択装置を概略的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0085】
10:運転席側ブレーキ操作装置 12:助手席側ブレーキ操作装置 14:ブレーキ装置 18:運転席側ブレーキペダル 20:踏力センサ 50:助手席側ブレーキペダル 52:踏力センサ 70,72,74,76:液圧ブレーキ 78:作用力制御装置 100:液圧制御装置 102:ブレーキECU 110:マスタシリンダ 112:液圧制御弁装置 150,152,154,156:増圧リニアバルブ 160,162,164,166:減圧リニアバルブ 204:車速等演算装置 206:ヨーレイトセンサ 208:助手席側入力影響度変更スイッチ 222:ナビゲーションECU 226:クルーズコントロールECU 228:レーザレーダ装置 230:車両後方状況検出システム 234:レーザレーダ 300:運転席側ブレーキ操作装置 302:運転席側ブレーキペダル 304:助手席側ブレーキ操作装置 306:助手席側ブレーキペダル 310:レバー 334:ケーブル 342:移動装置 344:影響度変更スイッチ 346:マスタシリンダ 370,372:レバー 386:マスタシリンダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者が操作可能な運転席側ブレーキ操作装置と、
前記車両の助手席の乗員が操作可能な助手席側ブレーキ操作装置と、
車両を制動するブレーキとそのブレーキの作用力を制御する作用力制御装置とを含むブレーキ装置と
を含み、前記作用力制御装置が、
前記運転席側ブレーキ操作装置の操作により入力される運転者側入力と前記助手席側ブレーキ操作装置の操作により入力される助手席側入力との両方に基づいて前記ブレーキの作用力に対応する制御量を決定する制御量決定部と、
その制御量決定部による制御量の決定における前記助手席側入力の影響度を変更する影響度変更部と
を含む車両用ブレーキシステム。
【請求項2】
前記影響度変更部が、
車両の走行状態とその車両外部の走行環境状態との少なくとも一方を取得する状態取得部と、
その状態取得部により取得された状態に応じて前記影響度を自動で変更する自動影響度変更部と
を含む請求項1に記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項3】
前記状態取得部が、
前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部と、
前記車両の旋回状態を表す旋回状態量を取得する旋回状態量取得部と、
前記車両の前方に存在する前方物体を検出する前方物体検出部と、
前記車両の後方に存在する後方物体を検出する後方物体検出部と、
前記車両の走行路の情報を取得する走行路情報取得部とのうちの少なくとも1つを含み、
前記自動影響度変更部が、
前記車速取得部により取得された車速が大きい場合に小さい場合に比較して前記影響度を小さくする車速対応変更部と、
前記旋回状態量取得部により取得された旋回状態量が大きい場合に小さい場合に比較して前記影響度を小さくする旋回状態対応変更部と、
前記前方物体検出部により検出された前記前方物体と前記車両との接近度が大きい場合には小さい場合に比較して前記影響度を大きくする前方物体対応変更部と、
前記後方物体検出部により検出された前記後方物体と前記車両との接近度が大きい場合には小さい場合に比較して前記影響度を小さくする後方物体対応変更部と、
前記走行路情報取得部により取得された走行路の情報が車両制動の必要性が高いことを示す情報である場合に必要性が低いことを示す情報である場合に比較して前記影響度を大きくする走行路情報対応変更部と
のうち、前記状態取得部が含む前記少なくとも1つに対応するものを含む請求項2に記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項4】
前記影響度変更部が、手動操作により前記影響度を変更可能な手動影響度変更部を含む請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項1】
車両の運転者が操作可能な運転席側ブレーキ操作装置と、
前記車両の助手席の乗員が操作可能な助手席側ブレーキ操作装置と、
車両を制動するブレーキとそのブレーキの作用力を制御する作用力制御装置とを含むブレーキ装置と
を含み、前記作用力制御装置が、
前記運転席側ブレーキ操作装置の操作により入力される運転者側入力と前記助手席側ブレーキ操作装置の操作により入力される助手席側入力との両方に基づいて前記ブレーキの作用力に対応する制御量を決定する制御量決定部と、
その制御量決定部による制御量の決定における前記助手席側入力の影響度を変更する影響度変更部と
を含む車両用ブレーキシステム。
【請求項2】
前記影響度変更部が、
車両の走行状態とその車両外部の走行環境状態との少なくとも一方を取得する状態取得部と、
その状態取得部により取得された状態に応じて前記影響度を自動で変更する自動影響度変更部と
を含む請求項1に記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項3】
前記状態取得部が、
前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部と、
前記車両の旋回状態を表す旋回状態量を取得する旋回状態量取得部と、
前記車両の前方に存在する前方物体を検出する前方物体検出部と、
前記車両の後方に存在する後方物体を検出する後方物体検出部と、
前記車両の走行路の情報を取得する走行路情報取得部とのうちの少なくとも1つを含み、
前記自動影響度変更部が、
前記車速取得部により取得された車速が大きい場合に小さい場合に比較して前記影響度を小さくする車速対応変更部と、
前記旋回状態量取得部により取得された旋回状態量が大きい場合に小さい場合に比較して前記影響度を小さくする旋回状態対応変更部と、
前記前方物体検出部により検出された前記前方物体と前記車両との接近度が大きい場合には小さい場合に比較して前記影響度を大きくする前方物体対応変更部と、
前記後方物体検出部により検出された前記後方物体と前記車両との接近度が大きい場合には小さい場合に比較して前記影響度を小さくする後方物体対応変更部と、
前記走行路情報取得部により取得された走行路の情報が車両制動の必要性が高いことを示す情報である場合に必要性が低いことを示す情報である場合に比較して前記影響度を大きくする走行路情報対応変更部と
のうち、前記状態取得部が含む前記少なくとも1つに対応するものを含む請求項2に記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項4】
前記影響度変更部が、手動操作により前記影響度を変更可能な手動影響度変更部を含む請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用ブレーキシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−298242(P2009−298242A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153371(P2008−153371)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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