説明

車両用乗員保護装置

【課題】車両用乗員保護装置において、車両の側突が軽度のものである場合、車両の横転が初期の段階である場合、又は車両の側突や横転が予知された場合、運転手が車両の側突又は横転を回避するための運転操作を行い得るようにする。
【解決手段】シートクッションエアバッグユニット51は、各シートに設けられ、シートクッションエアバッグ51aを有する。シートクッションエアバッグ51aは、シートのシートクッション33の車幅方向内側の部分内に収容され、コントローラにより車両1の側突又は横転が予知された時は、膨張状態から収縮状態になる。運転席31のシートクッションエアバッグ51aの膨張状態の上下方向の長さは、それ以外のシートのシートクッションエアバッグ51aよりも短い。これにより、運転手Pの頭部の、車両1の車幅方向中心側への移動量は、他のシートの乗員Pの頭部よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用乗員保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の側突(側面衝突)又は横転時に、車両のシートに着座した乗員がドア等に接触することを抑制する車両用乗員保護装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両の側突又は横転時に、乗員の上半身をドアから遠ざける車両用乗員保護装置が示されている。この装置は、車両の側突又は横転時に、乗員の頭部を車両の車幅方向中心側に移動させる移動手段を備えている。この移動手段は、シートクッションの車幅方向外側(ドア側)の部分内に収容されたエアバッグと、車両の側突又は横転時に、エアバッグを膨張展開させる動作部とを有する。そして、上記装置では、車両の側突又は横転時に、エアバッグが膨張展開されることで、シートクッションの車幅方向外側の部分が車幅方向内側の部分よりも上側に変位する。これにより、乗員の臀部の車幅方向外側の部分が車幅方向内側の部分よりも上側に変位する。そのため、乗員の上半身が車両の車幅方向中心側に傾いて、乗員の頭部が車両の車幅方向中心側に移動する。したがって、乗員の上半身がドアから遠ざかる。
【0004】
また、特許文献2には、特許文献1と同様に、車両の側突時に、乗員の上半身をドアから遠ざける車両用乗員保護装置が示されている。この装置では、フロアパネルのシート取付部に固定されたクロスメンバの閉断面内に、プッシュフレームを、その側方部分がサイドシルの断面内に突出しその側端部がサイドシルの内面に近接対向した状態で配設係止し、シートをプッシュフレームにボルト等で取り付けている。そして、車両の側突時にサイドシルアウタが車幅方向内側に変形すると、プッシュフレームが車幅方向内側に押され、プッシュフレームとクロスメンバの係止が解除される。これにより、シートが、プッシュフレームの車幅方向内側への移動に伴って移動する。そのため、乗員が車両の車幅方向中心側に移動して、乗員の上半身がドアから遠ざかる。
【特許文献1】特開2004−9798号公報
【特許文献2】特開平10−166918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、車両の側突が軽度のものである場合、又は車両の横転が初期の段階である場合は、運転手は運転操作を行い得る。しかしながら、上記装置のように、車両の側突又は横転時に、シートクッションの車幅方向外側の部分を車幅方向内側の部分よりも上側に変位させたり、シートを車幅方向内側に移動させて、運転手を含む乗員の位置や姿勢を強制的に変更させると、運転手の運転操作が阻害されてしまう。また、車両の側突又は横転の予知時に、シートクッションの車幅方向外側の部分を車幅方向内側の部分よりも上側に変位させたり、シートを車幅方向内側に移動させて、運転手を含む乗員の位置や姿勢を強制的に変更させても、運転手の運転操作が阻害されてしまう。そのため、これらの場合、運転手は、車両の側突又は横転を回避するための運転操作を行うことができない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、運転席を含む複数のシートを備えた車両に搭載された車両用乗員保護装置において、車両の側突が軽度のものである場合、車両の横転が初期の段階である場合、又は車両の側突や横転が予知された場合、運転手が車両の側突又は横転を回避するための運転操作を行い得るようにする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、運転席を含む複数のシートを備えた車両に搭載された車両用乗員保護装置であって、上記車両の側突又は横転を予知又は検知する判定手段と、上記判定手段により上記車両の側突又は横転が予知又は検知された時に、上記複数のシートのうち運転席を含む複数の所定のシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員の頭部を上記車両の車幅方向中心側に移動させる変更手段とを備え、上記運転席の位置又は形態の変更度合が、それ以外のシートの位置又は形態の変更度合よりも小さく設定されていることを特徴とするものである。
【0008】
これにより、判定手段により車両の側突又は横転が予知又は検知された時には、変更手段により、複数のシートのうち運転席を含む複数の所定のシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員の頭部を車両の車幅方向中心側に移動させる。このとき、運転席の位置又は形態の変更度合(程度)がそれ以外のシートの位置又は形態の変更度合よりも小さく設定されているので、運転手の位置や姿勢の変更度合を比較的小さくすることができる。そのため、車両の側突が軽度のものである場合、車両の横転が初期の段階である場合、又は車両の側突や横転が予知された場合、運転手は、車両の側突又は横転を回避するための運転操作を行い得る。
【0009】
また、車両の側突又は横転が予知又は検知された時には、上述の如く、複数のシートのうち運転席を含む複数の所定のシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員の頭部を車両の車幅方向中心側に移動させるので、車両用乗員保護装置の乗員の保護性能を高いレベルで維持することができる。
【0010】
また、上述の如く、運転手の位置や姿勢の変更度合を比較的小さくすることができるので、運転手がブレーキペダルやアクセルペダルのペダル操作を急に解除して、車両走行が不安定になるのを抑制できる。
【0011】
第2の発明は、運転席を含む複数のシートを備えた車両に搭載された車両用乗員保護装置であって、上記車両の側突又は横転を予知又は検知する判定手段と、上記判定手段により上記車両の側突又は横転が予知又は検知された時に、上記複数のシートのうち運転席以外の少なくとも1つのシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員の頭部を上記車両の車幅方向中心側に移動させる変更手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
これにより、判定手段により車両の側突又は横転が予知又は検知された時には、変更手段により、複数のシートのうち運転席以外の少なくとも1つのシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員の頭部を車両の車幅方向中心側に移動させる。すわなち、判定手段により車両の側突又は横転が予知又は検知された時には、運転席の位置又は形態を変更しない。そのため、運転手の位置や姿勢が変わらない。したがって、車両の側突が軽度のものである場合、車両の横転が初期の段階である場合、又は車両の側突や横転が予知された場合、運転手は、車両の側突又は横転を回避するための運転操作を行い得る。
【0013】
また、車両の側突又は横転が予知又は検知された時には、上述の如く、複数のシートのうち運転席以外の少なくとも1つのシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員の頭部を車両の車幅方向中心側に移動させるので、車両用乗員保護装置の乗員の保護性能を高いレベルで維持することができる。
【0014】
また、上述の如く、運転手の位置や姿勢が変わらないので、運転手がブレーキペダルやアクセルペダルのペダル操作を急に解除して、車両走行が不安定になるのを抑制できる。
【0015】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記判定手段は、上記車両の横転を予知又は検知するように構成されており、上記変更手段は、上記判定手段により上記車両の横転が予知又は検知された時には、上記乗員の上半身を上記車両の車幅方向中心側に移動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
ところで、車両が、例えば車幅方向(横方向)に作用する比較的大きな横Gを受けて横転しそうな時(左右一方の車輪が地面に接地されず、地面に接地した他方の車輪のみで走行する片輪走行中も含む)、又は車両の横転時に、すなわち、車両走行が不安定な時に、運転手の上半身を車両の車幅方向中心側に移動させると、その不安定な車両走行を原因として、運転手の握るステアリングホイールが無用に操舵され、車両走行が一層不安定になる場合がある。
【0017】
ここで、本発明によれば、判定手段により車両の側突又は横転が予知又は検知された時には、変更手段により、複数のシートのうち運転席を含む複数の所定のシートの位置又は形態を変更させて、乗員の上半身を車両の車幅方向中心側に移動させるものの、運転席の位置又は形態の変更度合が、それ以外のシートの位置又は形態の変更度合よりも小さく設定されている。あるいは、判定手段により車両の側突又は横転が予知又は検知された時には、運転席の位置又は形態を変更しない。以上により、運転手の上半身の車両の車幅方向中心側への移動が抑制され、車両走行が一層不安定になるのを抑制できる。
【0018】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記変更手段は、上記判定手段により上記車両の横転が予知又は検知された時であって上記車両の片輪走行中に、上記乗員の臀部の車幅方向内側の部分を車幅方向外側の部分よりも下側に変位させ又は上記乗員の臀部の車幅方向外側の部分を車幅方向内側の部分よりも上側に変位させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
ところで、車両の片輪走行中に、運転手の臀部の車幅方向内側の部分を車幅方向外側の部分よりも下側に変位させ又は運転手の臀部の車幅方向外側の部分を車幅方向内側の部分よりも上側に変位させて、運転手の上半身を車両の車幅方向中心側に傾けると、運転手の握るステアリングホイールが、地面から浮いている車輪側へ無用に操舵され、車両の横転が促進される場合がある。
【0020】
ここで、本発明によれば、判定手段により車両の側突又は横転が予知又は検知された時であって車両の片輪走行中には、変更手段により、複数のシートのうち運転席を含む複数の所定のシートの位置又は形態を変更させて、乗員の臀部の車幅方向内側の部分を車幅方向外側の部分よりも下側に変位させ又は乗員の臀部の車幅方向外側の部分を車幅方向内側の部分よりも上側に変位させるものの、運転席の位置又は形態の変更度合が、それ以外のシートの位置又は形態の変更度合よりも小さく設定されている。あるいは、判定手段により車両の側突又は横転が予知又は検知された後であって車両の片輪走行中には、運転席の位置又は形態を変更しない。以上により、運転手の上半身の車両の車幅方向中心側への傾きが抑制され、車両の横転の促進を抑制できる。
【0021】
第5の発明は、上記第1の発明において、上記判定手段は、上記車両の横転を予知及び検知するように構成されており、上記変更手段は、上記判定手段により上記車両の横転が予知及び検知された時には、上記乗員の上半身を上記車両の車幅方向中心側に移動させるように構成されており、上記運転席の位置又は形態の変更度合は、上記判定手段により上記車両の横転が予知された時は、それ以外のシートの位置又は形態の変更度合よりも小さくかつ、上記判定手段により上記車両の横転が予知された後であって該車両の横転が検知された時は、それ以外のシートの位置又は形態の変更度合と同じに設定されていることを特徴とするものである。
【0022】
これにより、運転席の位置又は形態の変更度合は、判定手段により車両の横転を予知した時は、それ以外のシートの位置又は形態の変更度合よりも小さくかつ、判定手段により車両の横転が予知された後該車両の横転が検知された時は、それ以外のシートの位置又は形態の変更度合と同じに設定されているので、判定手段により車両の横転が検知されるまでの間は、運転席の位置又は形態の変更度合は、それ以外のシートの位置又は形態の変更度合よりも小さい。そのため、車両の横転が確実になるまでの間は、運転手は、車両の横転を回避するための運転操作を行い得る。
【0023】
また、運転席の位置又は形態の変更度合は、判定手段により車両の横転が予知された後であって車両の横転が検知された時は、それ以外のシートの位置又は形態の変更度合と同じに設定されているので、車両の横転が確実になった時は、運転手も確実に保護できる。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明によれば、車両の側突又は横転が予知又は検知された時には、複数のシートのうち運転席を含む複数の所定のシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員の頭部を車両の車幅方向中心側に移動させる。このとき、運転席の位置又は形態の変更度合がそれ以外のシートの位置又は形態の変更度合よりも小さく設定されているので、運転手の位置や姿勢の変更度合を比較的小さくすることができる。そのため、車両の側突が軽度のものである場合、車両の横転が初期の段階である場合、又は車両の側突や横転が予知された場合、運転手は、車両の側突又は横転を回避するための運転操作を行い得る。また、車両の側突又は横転が予知又は検知された時には、上述の如く、複数のシートのうち運転席を含む複数の所定のシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員の頭部を車両の車幅方向中心側に移動させるので、車両用乗員保護装置の乗員の保護性能を高いレベルで維持することができる。また、上述の如く、運転手の位置や姿勢の変更度合を比較的小さくすることができるので、運転手がブレーキペダルやアクセルペダルのペダル操作を急に解除して、車両走行が不安定になるのを抑制できる。
【0025】
第2の発明によれば、車両の側突又は横転が予知又は検知された時には、複数のシートのうち運転席以外の少なくとも1つのシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員の頭部を車両の車幅方向中心側に移動させる。すわなち、車両の側突又は横転が予知又は検知された時には、運転席の位置又は形態を変更しない。そのため、運転手の位置や姿勢が変わらない。したがって、車両の側突が軽度のものである場合、車両の横転が初期の段階である場合、又は車両の側突や横転が予知された場合、運転手は、車両の側突又は横転を回避するための運転操作を行い得る。また、車両の側突又は横転が予知又は検知された時には、上述の如く、複数のシートのうち運転席以外の少なくとも1つのシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員の頭部を車両の車幅方向中心側に移動させるので、車両用乗員保護装置の乗員の保護性能を高いレベルで維持することができる。また、上述の如く、運転手の位置や姿勢が変わらないので、運転手がブレーキペダルやアクセルペダルのペダル操作を急に解除して、車両走行が不安定になるのを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
(実施形態1)
本発明の実施形態に係る車両用乗員保護装置50が搭載された車両1は、車体とサイドドアとシートとを備えている。図1〜図3に示すように、車体は、フロアパネル11と一対のフロントピラー12と一対のセンターピラー13と一対のリアピラー(図示せず)とルーフ14とを有する。サイドドアは、一対のフロントドア21と一対のリアドア22とを有する。これらドア21,22は、アウタパネル23と、そのアウタパネル23の車幅方向内側に設けられたインナパネル24と、そのインナパネル24の車幅方向内側に設けられたドアトリム25と、ドア21,22のウィンドウ用開口を開閉自在に覆うウィンドウガラス26とを有する。シートは、フロアパネル11の上面上に設置されていて、車幅方向に並列された運転席31(図8及び図9参照)及び助手席32からなるフロントシートと、そのフロントシートの車両後側に設けられたリアシート(図示せず)とを有する。
【0028】
以下、助手席32について説明する。尚、他のシート、特に運転席31は、助手席32とほぼ同様の構成である。
【0029】
助手席32は、シートクッション33とシートバック34とヘッドレスト35とを有する。このシートバック34は、シートクッション33の後端部にシートクッション33の上面に対して倒伏可能に取り付けられている。本実施形態では、シートバック34の上下方向(鉛直方向)に対する後傾角度θは、通常時(例えば、運転手による運転操作時)は、15〜25度である(図3参照)。尚、後述の、車両1の側突や横転に伴うシートの位置の変更時には、後述の角度変更機構62を作動させない。すなわち、シートの位置の変更時には、後傾角度θを変更しない。これにより、車両1の斜め後突時に、助手席32に着座した乗員Pが違和感を感じることを抑制できる。ヘッドレスト35は、シートバック34の上端部に取り付けられている。
【0030】
助手席32には、シートスライド機構36と角度変更機構62とシートマウント44とが配設されている。このシートスライド機構36は、助手席32を車両前後方向に移動可能なものであって、助手席32のシートクッション33の下面の車幅方向両端部にそれぞれ配設された第1及び第2スライド部36a,36bを有する。図1〜図5に示すように、この第1スライド部36aは、シートクッション33の下面の車幅方向外側(車幅方向外方側。フロントドア21側。図2では左側)の端部に配置され、上側スライダー部37と下側ガイド部38とボール部材39とローラ40と平行バー41とリンクバー42とを有する(図4参照)。第2スライド部36bは、シートクッション33の下面の車幅方向内側(図2では右側)の端部に配置され、上側スライダー部37と下側ガイド部38とボール部材39とローラ40とを有する。
【0031】
以下、第1スライド部36aについて説明する。尚、第2スライド部36bも、平行バー41、リンクバー42以外に関しては、第1スライド部36aとほぼ同様の構成である。上側スライダー部37は、シートクッション33の下面に車両前後方向に延びるように固定され、下側ガイド部38に係合されている。上側スライダー部37は、横断面略T字状に形成され(図4参照)、第1及び第2板状部材37a,37bを重ね合わせて構成されている。これら各板状部材37a,37bは、第1側壁部37cと下壁部37dと第2側壁部37eと上壁部37fとを有する。この第1側壁部37cは、シートクッション33の下面に取り付けられている。そして、上側スライダー部37は、軸受としてのボール部材39及びローラ40により、下側ガイド部38に対して車両前後方向にスライド可能になっている。
【0032】
下側ガイド部38は、フロアパネル11の上面上にシートマウント44を介して車両前後方向に延びるように固定されている。下側ガイド部38は、横断面略U字状に形成され(図4参照)、下壁部38aと第1及び第2側壁部38b,38cと一対の上壁部38dとを有する。第2側壁部38cには、車両前後方向に延びるスロット38eが形成されている。両上壁部38dは、車両前後方向視で上側(上方)に向かって突出する湾曲状に形成されている。
【0033】
ボール部材39は、上側スライダー部37の両板状部材37a,37bの上壁部37fと下側ガイド部38の両上壁部38dとの間にそれぞれ配設されている。ローラ40は、上側スライダー部37の両板状部材37a,37bの下壁部37dと下側ガイド部38の下壁部38aとの間に、中心軸40aが車幅方向に延びるように配設されている。ローラ40の中心軸40aの車幅方向両端部は、下側ガイド部38の両側壁部38b,38cの下端部にそれぞれ固定されている。尚、ローラ40は、上側スライダー部37と下側ガイド部38の間における少なくとも車両前後方向両端部にそれぞれ配置する必要がある。
【0034】
平行バー41は、下側ガイド部38のスロット38eに挿通された状態で、上側スライダー部37の第2板状部材37bの第2側壁部37eの車幅方向内側の面に車幅方向に延びるように取り付けられている。平行バー41は、通常時は、下側ガイド部38のスロット38eの前端と後端との間に位置する(図5(a)参照)一方、後述のコントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時は、スロット38eの後端に当接する(図5(b)参照)。リンクバー42は、平行バー41から車両後側に延びて後述のスライドテンショナ43に結合されている。
【0035】
下側ガイド部38の第2側壁部38cの車幅方向内側の面には、スライドテンショナ43が取り付けられている。このスライドテンショナ43は、下側ガイド部38のスロット38eよりも車両後側に配設されている。スライドテンショナ43は、コントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時に作動(起動)して、シートスライド機構36を作動(駆動)させる。これにより、リンクバー42が車両後側に引っ張られ(つまりリングバー42がスライドテンショナ43に引き込まれ)、平行バー41が下側ガイド部38のスロット38eの後端に当接する(図5(b)参照)。これに伴って、両スライド部36a,36bの上側スライダー部37が下側ガイド部38に対して車両後側にスライドし、図6に示すように、助手席32の位置が車両後側に変更される。具体的には、ヘッドレスト35の前面の位置が、車両側方視でセンターピラー13の車両前後方向中央位置から、その中央位置より車両後側に10cmの位置までの範囲内に変更される。そのため、助手席32に着座した乗員Pの頭部(つまり助手席32ヘッドレスト35の直前の部分)がセンターピラー13の近傍の所定の位置に移動する。その結果、乗員Pの頭部のほとんどが車両側方視でセンターピラー13に隠れる。これと同時に、乗員Pの上半身(詳細には胸部(胸囲部))の車幅方向外側の端面(胸部の車幅方向外側の側面。脇腹の上側の面)が折畳み状態の押圧用エアバッグ54a(つまり作動前の押圧用エアバッグユニット54)に対向(対面)する位置になる。尚、運転席31の第1スライド部36aには、平行バー41、リンクバー42及びスライドテンショナ43が配設されていない(図8参照)。すなわち、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時には、運転席31の位置を変更しない。これは、運転席31の位置が変更されると、運転手の運転操作が阻害されてしまうからである。ここまで、第1スライド部36aについて説明した。尚、詳細な説明は省略するが、シートスライド機構36は、乗員Pのマニュアル操作で動かすこともできる。
【0036】
上記角度変更機構62は、シートバック34をシートクッション33に対して車両前方又は後方へ倒伏させて、シートバック34の上下方向に対する後傾角度θを変更させるものである。
【0037】
上記シートマウント44は、助手席32をフロアパネル11の上面上に支持するものである。シートマウント44は、両スライド部36a,36bの下側ガイド部38の下壁部38aの下面における車両前後方向両端部にそれぞれ取り付けられ、軸部材44aと底板部44bとを有する。この軸部材44aは、底板部44bに略上下方向に延びるように取り付けられている。底板部44bは、フロアパネル11の上面上に固定されている。尚、第2スライド部36bの両シートマウント44は、助手席32の車幅方向内側の部分(詳細には端部)の下側に位置し、助手席32の車幅方向内側の部分、及び助手席32に着座した乗員Pの臀部の車幅方向内側の部分(臀部の車幅方向内側の部分を含む。図2では右側の部分)を支持している。ここまで、助手席32について説明した。
【0038】
以下、図1〜図3及び図6〜図10を参照しながら、車両用乗員保護装置50について説明する。尚、下記では、主に助手席32に係るものに着目して説明するが、他のシート、特に運転席31に関するものは、助手席32についてのものとほぼ同様の構成である。
【0039】
図10に示すように、車両用乗員保護装置50は、シートクッションエアバッグユニット51(変更手段)とカーテンエアバッグユニット52とサイドエアバッグユニット53と押圧用エアバッグユニット54と3点式のシートベルト装置55と上述のスライドテンショナ43と上述の角度変更機構62とセンサとコントローラ90(判定手段)とを備えている。
【0040】
図1〜図3、図6及び図7に示すように、シートクッションエアバッグユニット51は、各シートに設けられている。言い換えると、シートクッションエアバッグユニット51は、シートスライド機構36の上側スライダー部37よりも上側に配設されている。シートクッションエアバッグユニット51は、シートクッションエアバッグ51aとガス放出管51bとガス放出弁51cとガス供給管51dとガス供給弁51eとガスボンベ51fとを有する。このシートクッションエアバッグ51aは、シートクッション33の後部における車幅方向内側の部分の内部に収容され、シートに着座した乗員Pの臀部の車幅方向内側の部分(図2では右側の部分)を支持している。すなわち、シートクッションエアバッグ51aは、乗員Pの臀部の車幅方向内側の部分の下側(詳細には直下)に位置している。シートクッションエアバッグ51aは、通常時は、その内部にガスが充満した膨張状態である(図1〜図3参照)。このように、通常時には、シートクッションエアバッグ51aが膨張状態であるので、シートクッション33の上面の後部の車幅方向内側及び外側の部分がほぼ同じ高さ位置になる。一方、シートクッションエアバッグ51aは、コントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時は、その内部からガスが抜けて、その上下方向の長さが膨張状態よりも短い(つまりその最高点の上下方向の高さ位置が膨張状態よりも低い)収縮状態になる(図6及び図7参照)。このように、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時には、シートクッションエアバッグ51aが膨張状態から収縮状態に変形するので、乗員Pの重さにより、シートクッション33の上面の後部における車幅方向内側の部分がその車幅方向外側の部分よりも下側(下方)に変位する。これに伴って、乗員Pの臀部の車幅方向内側の部分がその車幅方向外側の部分(図7では左側の部分)よりも下側に変位する。その結果、乗員Pの上半身が車両1の車幅方向中心側(車幅方向内側。図1参照)に傾き、乗員Pの上半身、ひいては、乗員Pの頭部が車両1の車幅方向中心側に移動する。また、乗員Pの臀部の車幅方向内側の部分がその車幅方向外側の部分よりも下側に変位して、乗員Pの上半身が車両1の車幅方向中心側に傾くので、乗員Pの頭部が下側に変位する。
【0041】
ガス放出管51bは、シートクッションエアバッグ51内のガスをその外部へ放出(排出)するためのものである。ガス放出管51bは、一端がシートクッションエアバッグ51内に開口し、他端がシートクッションエアバッグ51外に開口している。ガス放出弁51cは、ガス放出管51b内に配設されている。ガス放出弁51cは、通常時は、閉状態である。一方、ガス放出弁51cは、コントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時に作動して、開状態になる。このように、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時には、開状態のガス放出弁51cにより、シートクッションエアバッグ51a内のガスをガス放出管51bを介してその外部へ放出して、シートクッションエアバッグ51aを膨張状態から収縮状態にする。また、ガス放出弁51cは、開状態になった後、コントローラ90により車両1の側突又は横転が検知(検出)されず、そのまま所定時間(例えば5秒)経過した時に再び作動して、閉状態になる。尚、シートクッションエアバッグユニット51は、シートクッションエアバッグ51aが3秒以内、好ましくは1.6秒以内の短時間(所定時間)で膨張状態から収縮状態になるように設定されている。本実施形態では、シートクッションエアバッグユニット51は、シートクッションバッグ51aの上記変形が1秒で完了するように調整されている。
【0042】
ガス供給管51dは、ガスボンベ51f内のガスをシートクッションエアバッグ51内に供給するためのものである。ガス供給管51dは、一端がシートクッションエアバッグ51内に開口し、他端がガスボンベ51fにつながっている。ガス供給弁51eは、ガス供給管51d内に配設されている。ガス供給弁51eは、通常時は、閉状態である。一方、ガス供給弁51eは、ガス放出弁51cが開状態になった後(つまりコントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された後)、コントローラ90により車両1の側突又は横転が検知されず、そのまま所定時間(例えば5秒)経過した時に作動して、設定時間だけ開状態になった後、閉状態に戻る。これにより、ガスボンベ51f内のガスがガス供給管51dを介してシートクッションエアバッグ51a内に供給されて、シートクッションエアバッグ51aが収縮状態から膨張状態に戻る。ガスボンベ51fは、シートクッションエアバッグ51aに供給されるガスを入れておく容器である。
【0043】
ところで、図8及び図9に示すように、運転席31のシートクッションエアバッグ51aの、シート全体の中に占める位置は、それ以外のシートのシートクッションエアバッグ51aとほぼ同様であるが、運転席31のシートクッションエアバッグ51aの膨張状態(通常時)の上下方向の長さが、それ以外のシートのシートクッションエアバッグ51aの膨張状態の上下方向の長さよりも短い。すなわち、運転席31のシートクッションエアバッグ51aの容積は、他のシートのシートクッションエアバッグ51aの容積よりも小さい。言い換えると、運転席31のシートクッションエアバッグ51aは、他のシートのシートクッションエアバッグ51aよりも小型のものである。そのため、コントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時における、運転席31のシートクッション33の上面の後部における車幅方向内側の部分の下側への変位量は、他のシートのシートクッション33の上面の後部における車幅方向内側の部分の変位量よりも小さい。すなわち、コントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時における、運転席31の形態の変更(変化)度合は、他のシートの形態の変更度合よりも小さい(抑制される)。ここで、シートの形態の変更度合とは、シートの通常時の形態からの変更の程合いをいう(以下同じ)。このため、運転手Pの臀部の車幅方向内側の部分の下側への変位量が、他のシートの乗員Pの臀部の車幅方向内側の部分の変位量よりも小さくなる。これに伴って、運転手Pの上半身の、車両1の車幅方向中心側への傾き量が、他のシートの乗員Pの上半身の傾き量よりも小さくなる。その結果、運転手Pの上半身、ひいては、運転手Pの頭部の、車両1の車幅方向中心側への移動量が、他のシートの乗員Pの上半身、ひいては、他のシートの乗員Pの頭部の移動量よりも小さくなる。
【0044】
図3、図6及び図7に示すように、上記カーテンエアバッグユニット52は、各フロントピラー12からルーフ14の車幅方向各端部に亘って配設され、カーテンエアバッグ52aとインフレータ(図示せず)とを有する。このカーテンエアバッグ52aは、通常時は、折り畳まれた状態でカーテンエアバッグユニット52内に格納されている。一方、カーテンエアバッグ52aは、コントローラ90により車両1の側突又は横転が検知された時に作動して、フロントドア21及びリアドア22のウィンドウガラス26(つまりサイドウィンドウ。または、ドア21,22の上部)の内面を覆うように展開する(図6及び図7参照)。助手席32側のカーテンエアバッグ52aは、センターピラー13の上部の近傍のみを覆うように略円柱状に膨張展開する複数(本実施形態では5個)の膨張部52bを有する。ここで、本実施形態において、膨張部52bとは、カーテンエアバッグ52aのうち、展開時に厚さ(車幅方向長さ)が5cm以上になる部分を言い、本実施形態では、膨張部52bは、展開時に厚さが15cmになるようになっている。また、これら膨張部52bは、膨張展開時は、センターピラー13の前縁部より車両前側に40cmの位置から、センターピラー13の後縁部より車両後側に40cmの位置までの範囲内を覆うように膨張展開するのが好ましく、本実施形態では、センターピラー13の前縁部より車両前側に40cmの位置から、センターピラー13の後縁部より車両後側に20cmの位置までの範囲を覆うように膨張展開する。尚、本実施形態では、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時には、上述の如く、助手席32の乗員Pの頭部が車両1の車幅方向中心側に移動するので、助手席32の乗員Pの上半身が車幅方向に関してセンターピラー13から遠ざかる。そのため、膨張展開状態の膨張部52bの厚さを大きくできる。また、運転席31側のカーテンエアバッグ52aも膨張部52bを有するが、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時には、上述の如く、運転席31の位置を変更しないので、運転手を確実に保護する観点から、運転席31側のカーテンエアバッグ52aの膨張部52bは、膨張展開時は、助手席32側のカーテンエアバッグ52aの膨張部52aよりも広い範囲を覆うように膨張展開するのが好ましい。上記インフレータは、コントローラ90により車両1の側突又は横転が検知された時に作動して、カーテンエアバッグ52aを膨張展開させる。
【0045】
図2、図3、図6及び図7に示すように、上記サイドエアバッグユニット53は、各シートのシートバック34の車幅方向外側の端部の内部に配設され、サイドエアバッグ53aとインフレータ(図示せず)とを有する。このサイドエアバッグ53aは、通常時は、折り畳まれた状態でサイドエアバッグユニット53内に収容されている。一方、サイドエアバッグ53aは、コントローラ90により車両1の側突又は横転が検知された時に作動して、乗員Pとドア21,22との間にその乗員Pの上半身(上体)の車幅方向外側(ドア側)の端部を覆うように膨張展開する(図6及び図7参照)。インフレータは、コントローラ90により車両1の側突又は横転が検知された時に作動して、サイドエアバッグ53aを膨張展開させる。
【0046】
図2、図3、図6及び図7に示すように、上記押圧用エアバッグユニット54は、各ドア21,22のインナパネル24の車幅方向内側の面の後部(助手席32のフロントドア21では後端部)に配設され、乗員Pの胸部の車幅方向外側の端面とほぼ同じ高さ位置に配置されている。押圧用エアバッグユニット54は、押圧用エアバッグ54aとインフレータ(図示せず)とを有する。この押圧用エアバッグ54aは、通常時は、折り畳まれた状態で押圧用エアバッグユニット54内に収納されている。一方、押圧用エアバッグ54aは、コントローラ90により車両1の側突又は横転が検知された時(つまりサイドエアバッグ53aの作動と同時に)に作動して、車幅方向内側に向かって膨張展開して、膨張展開中の又は膨張展開したサイドエアバッグ53aを車幅方向内側に向かって押圧する(図6及び図7参照)。このように、コントローラ90による車両1の側突又は横転の検知時には、押圧用エアバッグ54aがサイドエアバッグ53aを車幅方向内側に向かって押圧するので、押圧用エアバッグ54aにより、サイドエアバッグ53aを介して、乗員Pの胸部の車幅方向外側の端面が車幅方向内側に向かって押される。その結果、上述の、シートクッションエアバッグユニット51による乗員Pの頭部の車両1の車幅方向中心側への移動が促進される。インフレータは、コントローラ90により車両1の側突又は横転が検知された時に作動して、押圧用エアバッグ54aを膨張展開させる。
【0047】
図1、図2及び図7に示すように、上記シートベルト装置55は、各シートに設けられ、シートベルト(ウェビング)56とリトラクタ(図示せず)とショルダーアンカ58とタング59とバックル部60とを有する。このシートベルト56は、シートに着座した乗員Pをそのシートに拘束するためのものである。シートベルト56は、ショルダーアンカ58及びタング59に挿通された状態で、一端がリトラクタに巻き付けられ、他端がシートクッション33の車幅方向外側の端部に取り付けられている。シートベルト56は、ショルダーベルト部56aとラップベルト部56bとを有する。このショルダーベルト部56aは、乗員Pの上半身をシートバック34(下側)に拘束するためのものである。ラップベルト部56bは、乗員Pの下半身(詳細には腰部)をシートクッション33(車両後側)に拘束するためのものである。
【0048】
リトラクタは、センターピラー13の下部に取り付けられ、ショルダープリテンショナを有する。このショルダープリテンショナは、コントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時に(つまりガス放出弁51cの開作動に応じて)作動する。これにより、リトラクタがショルダーベルト部56aを巻き取って、シートベルト56に張力が付与される。その結果、乗員Pの上半身がショルダーベルト部56aによりシートバック34に拘束される。
【0049】
ショルダーアンカ58は、センターピラー13の上部に取り付けられている。タング59は、バックル部60のバックル60aに差し込むようになっている。このタング59がバックル60aに係合されることで、乗員Pは、シートベルト56でシートに拘束されるようになっている。
【0050】
バックル部60は、シートクッション33の車幅方向内側の端部に取り付けられている。すなわち、シートベルト装置55における車幅方向内側の端部(車両1の車幅方向中心側に位置する端部)は、シートの車幅方向内側の端部に固定されている。バックル60部は、バックル60aとラッププリテンショナ60bとを有する。このバックル60aは、ラッププリテンショナ60bに結合されている。ラッププリテンショナ60bは、コントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時に(つまりガス放出弁51cの開作動に応じて)作動して、バックル60a(つまりラップベルト部56bの車幅方向内側の端部)を下側に引っ張る。これにより、シートベルト56に張力が付与され、乗員Pの下半身がラップベルト部56bによりシートクッション33に拘束される。このように、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時には、バックル60aが下側に引っ張られるので、乗員Pの下半身が下側に引っ張られる。その結果、上述の、シートクッションエアバッグユニット51による乗員Pの頭部の車両1の車幅方向中心側への移動が促進される。
【0051】
図10に示すように、センサは、レーダ71とロール角センサ72とロール角速度サンサ73と車速センサ74と舵角センサ75と横Gセンサ76と側突センサ77とシート位置センサ78と後傾角度センサ79とを有する。レーダ71は、車両1とその側方の物体との距離を検出する。ロール角センサ72は、ロール角(横転角)を検出する。ロール角速度サンサ73は、ロール角速度を検出する。車速センサ74は、車両1の速度を検出する。舵角センサ75は、ステアリングホイール31a(図8参照)の操舵角を検出する。横Gセンサ76は、車両1に作用する横方向(車幅方向)の加速度を検出する。側突センサ77は、センターピラー13の下部に設けられ、車両1の側突による衝撃値を検出する。シート位置センサ78は、各シートの車両前後方向に関する位置を検出する。後傾角度センサ79は、各シートのシートバック34の上下方向に対する後傾角度θを検出する。
【0052】
コントローラ90は、各センサ71〜79の検出データに基づき、車両1の側突及び横転を予知及び検知し、車両1の側突又は横転を予知及び検知した時は、上述の如く、シートクッションエアバッグユニット51等を作動制御する。尚、コントローラ90による車両1の横転の予知時には、車両1は、片輪走行(つまり、左右一方の車輪が地面に接地していない走行)している場合も両輪走行している場合もある。
【0053】
−コントローラによる車両用乗員保護装置の制御−
以下、図11のフローチャートを参照しながら、コントローラ90による車両用乗員保護装置50の制御について説明する。
【0054】
ステップS1では、各センサ71〜79から検出データが入力される。ステップS2では、入力されたこれら各センサ71〜79の検出データに基づき、車両1の側突を予知したか否かを判定する。具体的には、今から1〜3秒後、好ましくは1〜2秒後に、車両1が側突されそうか否かを判定する。この場合、例えば、レーダ71や車両1の側方の障害物を検出するカメラにより、車両1の側方の障害物の有無と、車両1とその障害物との距離と、その距離の変化度合を検出し、障害物の存在が検出されかつ距離が所定値以下又は車両1に近付く方向に関する距離の変化度合が所定値以上の場合、車両1の側突を予知したと判定する。
【0055】
ステップS2の判定結果がYESの場合はステップS3に進み、シートのスライドテンショナ43、シートクッションエアバッグユニット51のガス放出弁51c、及びシートベルト装置55のラッププリテンショナ60bを同時に作動させる。そして、スライドテンショナ43の作動により、シートの位置が変更され、乗員Pの頭部がピラー13の近傍の所定の位置に移動する(図6参照)。また、ガス放出弁51cの作動により、シートクッションエアバッグ51aが膨張状態から収縮状態になり、乗員Pの頭部が車両1の車幅方向中心側に移動する(図7参照)。さらに、ラッププリテンショナ60bの作動により、乗員Pの下半身がラップベルト部56bによりシートクッション33側に拘束され、上述の、乗員Pの頭部の車両1の車幅方向中心側への移動が促進される。
【0056】
ステップS4では、シートベルト装置55のショルダープリテンショナを作動させる。これにより、乗員Pの上半身がショルダーベルト部56aによりシートバック34側に拘束される。尚、ステップS3とステップS4との間にはタイムラグがある。すなわち、乗員Pの下半身のシートクッション33への拘束タイミングが乗員Pの上半身のシートバック34への拘束タイミングよりも早く設定されている。
【0057】
ステップS2の判定結果がNOである場合はステップS5に進み、各センサ71〜79の検出データに基づき、車両1の横転を予知したか否か(つまり車両1が横転しそうか否か)を判定する。具体的には、ロール角度が第1角度以上でかつロール角速度が第1速度以上、車速が所定値以上でかつ操舵角及び操舵角の変化量の少なくとも一方が所定値以上、横Gが所定値以上、又は車両1のヨーレートが所定値以上の場合、車両1の横転を予知したと判定する。尚、車速と操舵角と操舵角の変化量とに基づき、旋回による車両1の横転を予知したか否かを判定しても良い。
【0058】
ステップS5の判定結果がYESの場合はステップS3に進み、NOの場合はステップS1に戻る。
【0059】
ステップS6では、各センサ71〜79の検出データに基づき、車両1の側突又は横転を検知したか否か(つまり車両1の側突を検出したか否か、又は車両1の横転が確実であるか否か)を判定する。具体的には、衝突加速度が所定値以上(つまり衝撃値が所定値以上)の場合、車両1の側突を検知したと判定する。また、ロール角度が第2角度以上でかつロール角速度が第2速度以上の場合、車両1の横転を検知したと判定する。尚、これら第2角度及び第2速度は、上記第1角度及び第2速度よりもそれぞれ大きい。また、ステップS5で車両1の横転が予知された場合であって、ステップS6で車両1の横転が確実であると判定される直前においては、車両1は片輪走行中であり、また、乗員Pの頭部の車両1の車幅方向中心側への移動は既に行われている(ステップS3参照)。
【0060】
ステップS6の判定結果がYESの場合はステップS7に進み、カーテンエアバッグユニット52、サイドエアバッグユニット53及び押圧用エアバッグユニット54のインフレータを同時に作動させる。すなわち、シートクッションエアバッグユニット51の作動(収縮動作開始)後に、カーテンエアバッグ52a、サイドエアバッグ53a及び押圧用エアバッグ54aを同時に作動(膨張動作開始)させる。これにより、カーテンエアバッグ52a、サイドエアバッグ53a及び押圧用エアバッグ54aが膨張展開する。そして、この押圧用エアバッグ54aにより、サイドエアバッグ53aを介して、乗員Pの胸部の車幅方向外側の端面が車幅方向内側に向かって押圧され、乗員Pの頭部の車両1の車幅方向中心側への移動が促進される(図7参照)。但し、運転席31(運転手P)に対応する押圧用エアバッグ54aを膨張展開させるためのガス量は、それ以外のシート(それ以外のシートに着座する乗員P)に対応する押圧用エアバッグ54aを膨張展開させるためのガス量よりも小さい。あるいは、運転席31に対応する押圧用エアバッグ54aのベントホールは、それ以外のシートに対応する押圧用エアバッグ54aのベントホールよりも大きい。その後、エンドに進む。
【0061】
ステップS6の判定結果がNOの場合はステップS8に進み、車両1の側突又は横転が検知されないまま所定時間経過したか否か(つまり車両1の側突及び横転が回避されたか否か)を判定する。
【0062】
ステップS8の判定結果がYESの場合はステップS9に進み、シートクッションエアバッグユニット51のガス放出弁51c及びガス供給弁51eを同時に作動させる。これにより、シートクッションエアバッグ51aが収縮状態から膨張状態に戻り、乗員Pが元の位置に戻る。その後、スタートに戻る。一方、ステップS8の判定結果がNOの場合はステップS6に戻る。
【0063】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、コントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時には、シートクッションエアバッグユニット51により、複数のシートのうち運転席31を含む複数の所定のシートの形態を変更させて、該シートに着座した乗員Pの頭部を車両1の車幅方向中心側に移動させる。このとき、運転席31の形態の変更度合がそれ以外のシートの形態の変更度合よりも小さく設定されているので、運転手Pの位置や姿勢の変更度合を比較的小さくすることができる。そのため、車両1の側突が軽度のものである場合、車両1の横転が初期の段階である場合、又は車両1の側突や横転が予知された場合、運転手Pは、車両1の側突又は横転を回避するための運転操作を行い得る。
【0064】
また、車両1の側突又は横転が予知された時には、上述の如く、複数のシートのうち運転席31を含む複数の所定のシートの形態を変更させて、該シートに着座した乗員Pの頭部を車両1の車幅方向中心側に移動させるので、車両用乗員保護装置50の乗員Pの保護性能を高いレベルで維持することができる。
【0065】
また、上述の如く、運転手Pの位置や姿勢の変更度合を比較的小さくすることができるので、運転手Pがブレーキペダルやアクセルペダルのペダル操作を急に解除して、車両走行が不安定になるのを抑制できる。
【0066】
ところで、車両1が横Gを受けたことで、左右両輪は地面に接地しているが、その両輪のうち少なくとも一方の車輪がスリップして、車両1が横転しそうな時、又は車両1の横転時に、すなわち、車両走行が不安定な時に、運転手Pの上半身を車両1の車幅方向中心側に移動させると、その不安定な車両走行を原因として、運転手Pの握るステアリングホイール31aが無用に操舵され、車両走行が一層不安定になる場合がある。
【0067】
ここで、本実施形態によれば、コントローラ90により車両1の横転が予知された時には、シートクッションエアバッグユニット51により、複数のシートのうち運転席31を含む複数の所定のシートの形態を変更させて、乗員Pの上半身を車両1の車幅方向中心側に移動させるものの、運転席31の形態の変更度合が、それ以外のシートの形態の変更度合よりも小さく設定されている。そのため、運転手Pの上半身の車両1の車幅方向中心側への移動が抑制され、車両走行が一層不安定になるのを抑制できる。
【0068】
ところで、図12に示すように、車両1の片輪走行中に、運転手Pの臀部の車幅方向内側の部分を車幅方向外側の部分よりも下側に変位させて、運転手Pの上半身を車両1の車幅方向中心側に傾けると、運転手Pの握るステアリングホイール31aが、地面から浮いている車輪側へ無用に操舵され、車両1の横転が促進される場合がある。
【0069】
ここで、本実施形態によれば、コントローラ90により車両1の横転が予知された時であって車両1の片輪走行中には、シートクッションエアバッグユニット51により、複数のシートのうち運転席31を含む複数の所定のシートの形態を変更させて、乗員Pの臀部の車幅方向内側の部分を車幅方向外側の部分よりも下側に変位させるものの、運転席31の形態の変更度合が、それ以外のシートの形態の変更度合よりも小さく設定されている。そのため、運転手Pの上半身の車両1の車幅方向中心側への傾きが抑制され、車両1の横転の促進を抑制できる。
【0070】
尚、本実施形態では、運転席31の形態の変更度合は、それ以外のシートの形態の変更度合よりも小さく設定されているが、以下のように設定されても良い。すなわち、コントローラ90により車両1の横転が予知(車両1の片輪走行中も含む)及び検知された時に、運転席31を含む複数の所定のシートの形態を変更させる。そして、運転席31の形態の変更度合は、コントローラ90により車両1の横転が予知された時は、他のシートの形態の変更度合よりも小さくかつ、コントローラ90により車両1の横転が予知された後であって車両1の横転が検知された時は、他のシートの形態の変更度合と同じに設定されている。言い換えると、運転席31のシートクッション33の上面の後部における車幅方向内側の部分の下側への変位量は、コントローラ90による車両1の横転の予知時は、他のシートのシートクッション33の上面の後部における車幅方向内側の部分の変位量よりも小さくかつ、コントローラ90による車両1の横転の検知時は、他のシートのシートクッション33の上面の後部における車幅方向内側の部分の変位量と同じに設定されている。このとき、他のシートの変更度合は、コントローラ90による車両1の横転の検知時には、コントローラ90による車両1の横転の予知時よりも大きい又はコントローラ90による車両1の横転の予知時と同じである。これにより、コントローラ90により車両1の横転が検知されるまでの間は、運転席31の形態の変更度合は、それ以外のシートの形態の変更度合よりも小さい(抑制される)。そのため、車両1の横転が確実になるまでの間は、運転手Pは、車両1の横転を回避するための運転操作を行い得る。また、運転席31の形態の変更度合は、コントローラ90により車両1の横転が予知された後であって車両1の横転が検知された時は、それ以外のシートの形態の変更度合と同じに設定されているので、車両1の横転が確実になった時は、運転手Pも確実に保護できる。上述の場合、コントローラ90による車両1の横転の予知時に、運転席31を含む複数の所定のシートの形態を変更させた後、コントローラ90による車両1の横転の検知時に、それら複数の所定のシートの形態を全て変更させても良いし、あるいは、コントローラ90による車両1の横転の予知時に、運転席31を含む複数の所定のシートの形態を変更させた後、コントローラ90による車両1の横転の検知時に、運転席31の形態のみを変更させても良い。具体的には、例えば、運転席31のシートクッションエアバッグ51aの膨張状態の上下方向の長さを、他のシートのシートクッションエアバッグ51aの膨張状態の上下方向の長さと同じにし(つまり、運転席31のシートクッションエアバッグ51aを、他のシートのシートクッションエアバッグ51aと同じサイズのものにし)、コントローラ90による車両1の横転の予知時及び検知時に、各シートのシートクッションエアバッグ51a内のガスを、その放出量を調整しながら放出する。
【0071】
また、本実施形態では、本発明の変更手段としてシートクッションエアバッグユニット51が設けられているが、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時に、シートの位置又は形態を変更させて、乗員Pの頭部を車両1の車幅方向中心側に移動させることができる限り、変更手段は如何なるものであっても良い。例えば、シートを傾けたり、シートを車幅方向にスライドさせて、乗員Pの頭部を車両1の車幅方向中心側に移動させるものであっても良い。また、乗員Pの上半身を車両1の車幅方向中心側に移動させるものであったり、乗員Pの臀部の車幅方向内側の部分を車幅方向外側の部分よりも下側に変位させるもの(例えば、シートクッション33の車幅方向内側の部分の内部に収容された、変位可能な支持部材や、シートクッション33の車幅方向内側の部分の下側に位置する、屈曲可能なシートマウント44等)であったり、乗員Pの臀部の車幅方向外側の部分を車幅方向内側の部分よりも上側に変位させるもの(例えば、シートクッション33の車幅方向外側の部分に内蔵された、膨張可能なエアバッグ等)であっても良い。但し、いずれの場合も、運転席31の位置又は形態の変更度合が、それ以外のシートの形態の変更度合よりも小さくなるように設定される必要がある。
【0072】
また、本実施形態では、運転席31のシートクッションエアバッグ51aの容積は、それ以外のシートのシートクッションエアバッグ51aの容積よりも小さくしているが、その代わりに、例えば、運転席31のガス放出弁51c及びラッププリテンショナ60bの動作速度、動作量又は動作時間を、それ以外のシートのガス放出弁51c及びラッププリテンショナ60bの動作速度、動作量又は動作時間よりも小さくしても良い。これにより、本実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0073】
また、本実施形態では、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時における、運転席31の形態の変更度合は、それ以外のシートの形態の変更度合よりも小さく設定されているが、運転席31及び助手席32からなるフロントシートの形態の変更度合を、リアシート(例えば、前から2列目のリアシートや前から3列目のリアシート等)の変更度合よりも小さく設定しても良い。
【0074】
ここで、乗員Pの上半身の車両1の車幅方向中心側への傾きは、シートベルト装置55等では抑制することができないため、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時における、運転席31の形態の変更度合を、助手席32を含むそれ以外のシートの形態の変更度合よりも小さく設定している場合、コントローラ90による車両1の側突や横転の予知時には、助手席32に着座した乗員Pの上半身が運転席31側に大きく傾いて、助手席32に着座した乗員Pと運転手Pとが接触するおそれがある。そこで、上述の如く、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時における、フロントシートの形態の変更度合を、リアシートの変更度合よりも小さく設定することで、助手席32に着座した乗員Pと運転手Pとが接触することを抑制する。これにより、運転手Pは、車両1の側突や横転を回避するための運転操作を確実に行い得る。
【0075】
(実施形態2)
本実施形態は、運転席31にのみシートクッションエアバッグユニット51や押圧用エアバッグユニット54や平行バー41、リンクバー42及びスライドテンショナ43が設けられていないものである。そのため、コントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時には、運転席31の形態だけ変更(変化)しない。したがって、コントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時は、運転手Pの上半身、ひいては、運転手Pの頭部のみ車両1の車幅方向中心側に移動しない。
【0076】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、コントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時には、シートクッションエアバッグユニット51により、複数のシートのうち運転席31以外のシートの形態を変更させて、該シートに着座した乗員Pの頭部を車両1の車幅方向中心側に移動させる。すわなち、コントローラ90により車両1の側突又は横転が予知された時には、運転席31の形態を変更しない。そのため、運転手Pの位置や姿勢が変わらない。したがって、車両1の側突が軽度のものである場合、車両1の横転が初期の段階である場合、又は車両1の側突や横転が予知された場合、運転手Pは、車両1の側突又は横転を回避するための運転操作を行い得る。
【0077】
また、車両1の側突又は横転が予知された時には、上述の如く、複数のシートのうち運転席31以外の少なくとも1つのシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員Pの頭部を車両1の車幅方向中心側に移動させるので、車両用乗員保護装置50の乗員Pの保護性能を高いレベルで維持することができる。
【0078】
また、上述の如く、運転手Pの位置や姿勢が変わらないので、運転手Pがブレーキペダルやアクセルペダルのペダル操作を急に解除して、車両走行が不安定になるのを抑制できる。
【0079】
ところで、車両1が横Gを受けたことで、左右両輪は地面に接地しているが、その両輪のうち少なくとも一方の車輪がスリップして、車両1が横転しそうな時、又は車両1の横転時に、すなわち、車両走行が不安定な時に、運転手Pの上半身を車両1の車幅方向中心側に移動させると、その不安定な車両走行を原因として、運転手Pの握るステアリングホイール31aが無用に操舵され、車両走行が一層不安定になる場合がある。
【0080】
ここで、本実施形態によれば、コントローラ90により車両1の横転が予知された時には、運転席31の位置又は形態を変更しない。そのため、運転手Pの上半身の車両1の車幅方向中心側への移動が抑制され、車両走行が一層不安定になるのを抑制できる。
【0081】
ところで、図12に示すように、車両1の片輪走行中に、運転手Pの臀部の車幅方向内側の部分を車幅方向外側の部分よりも下側に変位させて、運転手Pの上半身を車両1の車幅方向中心側に傾けると、運転手Pの握るステアリングホイール31aが、地面から浮いている車輪側へ無用に操舵され、車両1の横転が促進される場合がある。
【0082】
ここで、本実施形態によれば、コントローラ90により車両1の横転が予知された時であって車両1の片輪走行中には、運転席31の位置又は形態を変更しない。そのため、運転手Pの上半身の車両1の車幅方向中心側への傾きが抑制され、車両1の横転の促進を抑制できる。
【0083】
尚、本実施形態では、運転席31にのみシートクッションエアバッグユニット51が設けられていない、すなわち、運転席31以外のすべてのシートにシートクッションエアバッグユニット51が設けられているが、運転席31以外の少なくとも1つのシートにシートクッションエアバッグユニット51が設けられていれば良い。
【0084】
また、本実施形態では、本発明の変更手段としてシートクッションエアバッグユニット51が設けられているが、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時に、シートの位置又は形態を変更させて、乗員Pの頭部を車両1の車幅方向中心側に移動させることができる限り、変更手段は如何なるものであっても良い。例えば、シートを傾けたり、シートを車幅方向にスライドさせて、乗員Pの頭部を車両1の車幅方向中心側に移動させるものであっても良い。また、乗員Pの上半身を車両1の車幅方向中心側に移動させるものであったり、乗員Pの臀部の車幅方向内側の部分を車幅方向外側の部分よりも下側に変位させるもの(例えば、シートクッション33の車幅方向内側の部分の内部に収容された、変位可能な支持部材や、シートクッション33の車幅方向内側の部分の下側に位置する、屈曲可能なシートマウント44等)であったり、乗員Pの臀部の車幅方向外側の部分を車幅方向内側の部分よりも上側に変位させるもの(例えば、シートクッション33の車幅方向外側の部分に内蔵された、膨張可能なエアバッグ等)であっても良い。
【0085】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、コントローラ90は、車両1の側突及び横転を予知及び検知するものであるが、車両1の側突又は横転を予知又は検知するものであっても良い。
【0086】
また、上記各実施形態では、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時に、乗員Pの臀部の車幅方向内側の部分を車幅方向外側の部分よりも下側に変位させているが、コントローラ90による車両1の側突又は横転の検知時に変位させても良い。但し、乗員Pを確実に保護する観点から、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時に変位させるのが望ましい。
【0087】
また、上記各実施形態では、シートベルト装置55のリトラクタはピラー13の下部に取り付けられているが、シートバック34の内部に収容されても良い。
【0088】
また、上記各実施形態では、バックル部60は、シートのシートクッション33の車幅方向内側の端部に取り付けられているが、フロアパネル11の上面の車幅方向中央部に取り付けられていても良い。この場合、シートの位置の変更後に、ラッププリテンショナ60b及びショルダープリテンショナを作動させても良い。但し、コントローラ90による車両1の側突又は横転の検知時には、シートの位置の変更中であっても、ラッププリテンショナ60b及びショルダープリテンショナを作動させるのが望ましい。
【0089】
また、上記各実施形態では、ラッププリテンショナ60bを作動させた後に、ショルダープリテンショナを作動させているが、シートクッションエアバッグユニット51による乗員Pの頭部の車両1の車幅方向中心側への移動の促進の観点からは、ラッププリテンショナ60bのみを作動させても良い。
【0090】
また、上記各実施形態では、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時に、ラップベルト部56bの車幅方向内側の端部をラッププリテンショナ60bにより下側に引っ張っているが、ラップベルト部56bの車幅方向外側の端部を下側に引っ張っても良い。但し、乗員Pの頭部を車両1の車幅方向中心側に確実に移動させる観点から、ラップベルト部56bの車幅方向内側の端部を引っ張るのが望ましい。
【0091】
また、上記各実施形態では、第1スライド部36aにスライドテンショナ43が配設されているが、第2スライド部36bに、又は両方に配設されても良い。
【0092】
また、上記各実施形態では、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時に、スライドテンショナ43を作動させて、平行バー41を下側ガイド部38のスロット38eの後端に当接させることで、乗員Pの頭部をピラー13の近傍の所定の位置に移動させているが、スライドテンショナ43を作動させて、シート位置センサ78及び後傾角度センサ79の検出データに基づき、乗員Pの頭部をピラー13の近傍の所定の位置に移動させても良い。
【0093】
また、上記各実施形態では、サイドエアバッグユニット53及び押圧用エアバッグユニット54のインフレータを同時に作動させている(つまり、サイドエアバッグ53a及び押圧用エアバッグ54aを同時に作動させている)が、サイドエアバッグユニット53のインフレータの作動直後(つまり、サイドエアバッグ53aの作動直後。例えば、サイドエアバッグユニット53のインフレータの作動から数ms後)に、押圧用エアバッグユニット54のインフレータを作動させても良い。
【0094】
また、上記各実施形態では、押圧用エアバッグユニット54を設けているが、設けなくても良い。但し、シートクッションエアバッグユニット51による乗員Pの頭部の車両1の車幅方向中心側への移動を促進する観点から、押圧用エアバッグユニット54を設けるのが望ましい。
【0095】
また、上記各実施形態では、コントローラ90による車両1の側突又は横転の予知時に、シートの位置を変更させているが、変更させなくても良い。
【0096】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0097】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上説明したように、本発明は、運転席を含む複数のシートを備えた車両に搭載された車両用乗員保護装置等について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用乗員保護装置搭載された車両の助手席付近の通常時の状態を示す斜視図である。
【図2】助手席付近の通常時の状態を示す正面図である。
【図3】助手席付近の通常時の状態を示す側面図である。
【図4】第1スライド部の正面図である。
【図5】第1スライド部の概略側面図であり、(a)は通常時の状態を示す図であり、(b)は車両の側突又は横転の予知時の状態を示す図である。
【図6】助手席付近の、車両の側突又は横転の検知時の状態を示す側面図である。
【図7】助手席付近の、車両の側突又は横転の検知時の状態を示す正面図である。
【図8】運転席付近の通常時の状態を示す正面図である。
【図9】運転席付近の通常時の状態を示す側面図である。
【図10】車両用乗員保護装置の概略構成図である。
【図11】コントローラによる車両用乗員保護装置の制御を示すフローチャートである。
【図12】車両の片輪走行中の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1 車両
21 フロントドア
31 運転席
31a ステアリングホイール
32 助手席
33 シートクッション
34 シートバック
36 シートスライド機構
44 シートマウント
50 車両用乗員保護装置
51 シートクッションエアバッグユニット(変更手段)
51a シートクッションエアバッグ
51b ガス放出管
51c ガス放出弁
52 カーテンエアバッグユニット
52a カーテンエアバッグ
52b 膨張部
53 サイドエアバッグユニット
53a サイドエアバッグ
54 押圧用エアバッグユニット
54a 押圧用エアバッグ
55 シートベルト装置
56 シートベルト
60b ラッププリテンショナ
90 コントローラ(判定手段)
P 乗員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席を含む複数のシートを備えた車両に搭載された車両用乗員保護装置であって、
上記車両の側突又は横転を予知又は検知する判定手段と、
上記判定手段により上記車両の側突又は横転が予知又は検知された時に、上記複数のシートのうち運転席を含む複数の所定のシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員の頭部を上記車両の車幅方向中心側に移動させる変更手段とを備え、
上記運転席の位置又は形態の変更度合が、それ以外のシートの位置又は形態の変更度合よりも小さく設定されていることを特徴とする車両用乗員保護装置。
【請求項2】
運転席を含む複数のシートを備えた車両に搭載された車両用乗員保護装置であって、
上記車両の側突又は横転を予知又は検知する判定手段と、
上記判定手段により上記車両の側突又は横転が予知又は検知された時に、上記複数のシートのうち運転席以外の少なくとも1つのシートの位置又は形態を変更させて、該シートに着座した乗員の頭部を上記車両の車幅方向中心側に移動させる変更手段とを備えたことを特徴とする車両用乗員保護装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用乗員保護装置において、
上記判定手段は、上記車両の横転を予知又は検知するように構成されており、
上記変更手段は、上記判定手段により上記車両の横転が予知又は検知された時には、上記乗員の上半身を上記車両の車幅方向中心側に移動させるように構成されていることを特徴とする車両用乗員保護装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両用乗員保護装置において、
上記変更手段は、上記判定手段により上記車両の横転が予知又は検知された時であって上記車両の片輪走行中に、上記乗員の臀部の車幅方向内側の部分を車幅方向外側の部分よりも下側に変位させ又は上記乗員の臀部の車幅方向外側の部分を車幅方向内側の部分よりも上側に変位させるように構成されていることを特徴とする車両用乗員保護装置。
【請求項5】
請求項1記載の車両用乗員保護装置において、
上記判定手段は、上記車両の横転を予知及び検知するように構成されており、
上記変更手段は、上記判定手段により上記車両の横転が予知及び検知された時には、上記乗員の上半身を上記車両の車幅方向中心側に移動させるように構成されており、
上記運転席の位置又は形態の変更度合は、上記判定手段により上記車両の横転が予知された時は、それ以外のシートの位置又は形態の変更度合よりも小さくかつ、上記判定手段により上記車両の横転が予知された後であって該車両の横転が検知された時は、それ以外のシートの位置又は形態の変更度合と同じに設定されていることを特徴とする車両用乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−240596(P2006−240596A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62854(P2005−62854)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】