説明

車両用制動装置

【課題】車両用制動装置において、構造の簡素化並びに製造コストの低減を図ると共に、電源がダウンしたときにも適正に制動力を付与することで安全性の向上を図る。
【解決手段】シリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13を移動自在に支持すると共に、入力ピストン12により加圧ピストン13を押圧可能とし、入力ピストン12にブレーキペダル14を連結し、入力ピストン12の前後の圧力室R1,R2を連通路21により連通し、ブレーキペダル14の操作量に応じた制御油圧を第1、第2リニア弁40,42により第2圧力室R2に供給可能とすると共に、ブレーキペダル14から入力ピストン12を介して加圧ピストン13に伝達された操作量に応じた制御油圧を調圧弁22により調圧して第2圧力室R2に供給可能とし、各圧力室R1,R3から制動油圧を出力可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ操作量に対して車両に付与する制動力を電子制御する車両用制動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の制動装置として、ブレーキペダルから入力されたブレーキ操作量に対して制動装置の制動力、つまり、この制動装置を駆動するホイールシリンダへ供給する油圧を電気的に制御する電子制御制動装置が知られている。このような制動装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この特許文献1に記載された車両用制動制御装置は、運転者がブレーキペダルを操作すると、マスタシリンダがその操作量に応じた油圧を発生すると共に、作動油の一部がストロークシミュレータに流れ込み、ブレーキペダルの踏力に応じたブレーキペダルの操作量が調整される一方、ブレーキECUが検出したペダルストロークに応じて車両の目標減速度を設定し、各車輪に付与する制動力分配を決定し、各ホイールシリンダに所定の液圧を付与するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2004−243983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の車両用制動制御装置にあっては、ブレーキペダルの操作量に応じた油圧を発生するマスタシリンダに対して、作動油の一部が流れ込むことでブレーキペダルの操作量を調整するストロークシミュレータを設けると共に、マスタシリンダにマスタカット弁を介して4系統のホイールシリンダに供給する作動油を加圧する加圧機構が各系統ごとに設けられており、油圧系統が複雑で製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【0006】
また、電子制御制動装置の場合、ブレーキペダルの操作量に応じて電磁弁の開度を調整することで、マスタシリンダが各車輪のホイールシリンダに所定の液圧を付与しているが、車両の搭載した電源としてのバッテリがダウンした場合、電磁弁の開度を調整することができず、ブレーキペダルの操作量に応じた液圧を各車輪のホイールシリンダに付与することができない。この場合、一般には、車両に搭載した補助バッテリを用いることで、電子制御制動装置を作動させているが、バッテリの大型化や重量化による高コスト化、燃費の悪化を招いてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、構造の簡素化並びに製造コストの低減を図ると共に、電源がダウンしたときにも適正に制動力を付与することで安全性の向上を図った車両用制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の車両用制動装置は、シリンダ内に軸方向に沿って移動自在に支持された入力ピストンと、該入力ピストンに連結された操作部と、前記シリンダ内に前記入力ピストンと同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持されると共に前記入力ピストンにより押圧可能な加圧ピストンと、前記操作部から前記入力ピストンに入力される操作量に応じた制御油圧を設定する制御油圧設定手段と、油圧供給源からの油圧を前記制御油圧に調圧して前記入力ピストン及び加圧ピストンに作用させることで制動油圧を発生可能な電磁式油圧供給手段と、前記油圧供給源からの油圧を前記操作部から前記入力ピストンを介して前記加圧ピストンに伝達された操作量に応じた制御油圧に調圧して前記加圧ピストンに作用させることで制動油圧を発生可能な機械式油圧供給手段とを具えたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の車両用制動装置では、前記操作部から前記入力ピストンに入力された操作力を吸収する操作力吸収手段が設けられたことを特徴としている。
【0010】
本発明の車両用制動装置では、前記電磁式油圧供給手段は、前記制御油圧を前記入力ピストンの移動方向一方側の第1圧力室または他方の第2圧力室に供給可能であり、前記操作力吸収手段は、前記入力ピストンに設けられて前記第1圧力室と前記第2圧力室との間で圧油の給排が可能な連通路を有することを特徴としている。
【0011】
本発明の車両用制動装置では、連通路に縮径部が設けられたことを特徴としている。
【0012】
本発明の車両用制動装置では、前記電磁式油圧供給手段は、前記油圧供給源と前記第1圧力室または前記第2圧力室との間に接続された第1油圧供給ラインと、該第1油圧供給ラインに設けられて非通電時に閉止する第1電磁弁と、前記第1圧力室または前記第2圧力室とリザーバとの間に接続された第1油圧排出ラインと、該第1油圧排出ラインに設けられて非通電時に開放する第2電磁弁とを有し、前記第1電磁弁及び前記第2電磁弁の開度を調節することで前記油圧供給源からの油圧を前記制御油圧に調圧することを特徴としている。
【0013】
本発明の車両用制動装置では、前記機械式油圧供給手段は、前記操作部の操作により前記入力ピストンが前記加圧ピストンを押圧することで開閉する調圧弁と、前記油圧供給源と前記調圧弁との間に接続された第2油圧供給ラインと、前記調圧弁と前記第1圧力室とを接続する第3油圧供給ラインとを有し、前記操作部の操作により前記調圧弁の開度を調節することで前記油圧供給源からの油圧を前記制御油圧に調圧することを特徴としている。
【0014】
本発明の車両用制動装置では、前記操作部の操作により前記入力ピストンが前記加圧ピストンに接近したときに前記連通路が閉止され、前記機械式油圧供給手段は、前記調圧弁により調圧された制御油圧を前記加圧ピストンに作用させて制動油圧を発生可能である一方、前記操作部の操作により前記入力ピストンが前記加圧ピストンから離間したときに前記連通路が開放され、前記制動油圧を減圧可能であることを特徴としている。
【0015】
本発明の車両用制動装置では、前記調圧弁は、前記第2油圧供給ラインと前記第3油圧供給ラインとを開閉自在なポペット弁と、該ポペット弁を閉止方向に付勢する付勢部材と、前記操作部の操作により移動して前記ポペット弁を開放する可動子とを有することを特徴としている。
【0016】
本発明の車両用制動装置では、前記調圧弁は、前記加圧ピストン内に収容されると共に、前記第3油圧供給ラインが前記シリンダ内に設けられたことを特徴としている。
【0017】
本発明の車両用制動装置では、前記入力ピストンが移動して前記可動子に接触したときに前記連通路が閉止され、該可動子が前記ポペット弁を移動して前記第2油圧供給ラインと前記第3油圧供給ラインとが連通することを特徴としている。
【0018】
本発明の車両用制動装置では、前記調圧弁は、前記シリンダの先端部に設けられると共に、前記第3油圧供給ラインが前記シリンダ外に設けられ、前記入力ピストンが移動して前記加圧ピストンに接触したときに前記連通路が閉止され、該加圧ピストンが移動することで油圧により前記可動子が前記ポペット弁を移動して前記第2油圧供給ラインと前記第3油圧供給ラインとが連通することを特徴としている。
【0019】
本発明の車両用制動装置では、前記第3油圧供給ラインに開閉弁が設けられる一方、前記調圧弁と前記リザーバとの間に第2油圧排出ラインが接続され、前記ポペット弁の移動位置により開閉可能であり、前記電磁式油圧供給手段の作動中は、前記第3油圧供給ラインを閉止する一方、前記第2油圧排出ラインを開放し、前記機械式油圧供給手段の作動中は、前記第3油圧供給ラインを開放する一方、前記第2油圧排出ラインを閉止することを特徴としている。
【0020】
本発明の車両用制動装置では、前記電磁式油圧供給手段により前記制御油圧を前記加圧ピストンに作用させて前記制動油圧を発生させるとき、前記機械式油圧供給手段は、前記制動油圧を発生不能であることを特徴としている。
【0021】
本発明の車両用制動装置では、前記入力ピストンの第1受圧面積は、前記加圧ピストンの第2受圧面積よりも小さく設定されたことを特徴としている。
【0022】
本発明の車両用制動装置では、前記電磁式油圧供給手段により所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させ、該入力ピストンを介して前記加圧ピストンを移動して前記機械式油圧供給手段を強制作動させ、このときの前記制動油圧を検出することで前記機械式油圧供給手段の正常作動を判定する正常作動判定手段を設けたことを特徴としている。
【0023】
本発明の車両用制動装置では、前記電磁式油圧供給手段により所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させ、該入力ピストンを前記加圧ピストンに接近して前記連通路を閉止すると共に、前記入力ピストンにより前記加圧ピストンを移動して前記機械式油圧供給手段を強制作動させ、このときの前記制動油圧を検出することで、前記調圧弁の正常作動を判定する正常作動判定手段を設けたことを特徴としている。
【0024】
本発明の車両用制動装置では、前記電磁式油圧供給手段及び前記機械式油圧供給手段は、前記制御油圧を前記加圧ピストンに作用させることで、前記第1圧力室と前記加圧ピストンの第3圧力室から前記第1制動油圧及び第2制動油圧を吐出可能であり、前記正常作動判定手段は、車両の発進前に、前記第2電磁弁を閉止し、前記第1電磁弁を開放して所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させ、乗員が前記操作部を操作したときの前記第2制動油圧が予め設定された所定の第2基準制動油圧以上で、且つ、前記操作部の操作量が予め設定された所定の基準操作領域にあるときに、前記調圧弁の正常作動を判定することを特徴としている。
【0025】
本発明の車両用制動装置では、前記正常作動判定手段は、前記第2制動油圧が第2基準制動油圧以上で、且つ、前記操作部の操作量が基準操作領域になってから、予め設定された所定時間が経過した後に、前記第1制動油圧が予め設定された所定の第1基準制動油圧以上にあるときに、前記調圧弁の正常作動を判定することを特徴としている。
【0026】
本発明の車両用制動装置では、前記正常作動判定手段は、車両の発進前に、前記第2電磁弁を閉止し、前記第1電磁弁を開放して所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させると共に、前記第3圧力室からの前記第2制動油圧の吐出ラインを閉止することを特徴としている。
【0027】
本発明の車両用制動装置では、車両の発進が推定されたときに、前記正常作動判定手段は、前記第2電磁弁を閉止し、前記第1電磁弁を開放して所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させることを特徴としている。
【0028】
本発明の車両用制動装置では、前記電磁式油圧供給手段及び前記機械式油圧供給手段は、前記制御油圧を前記加圧ピストンに作用させることで、前記第1圧力室と前記加圧ピストンの第3圧力室から前記第1制動油圧及び第2制動油圧を吐出可能であり、前記正常作動判定手段は、車両の発進が推定されたときに、前記第2電磁弁を閉止し、前記第1電磁弁を開放して所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させたときの前記第2制動油圧が予め設定された所定の第2基準制動油圧以上で、且つ、前記操作部の操作量が予め設定された所定の基準操作領域にあるときに、前記調圧弁の正常作動を判定することを特徴としている。
【0029】
本発明の車両用制動装置では、前記正常作動判定手段は、車両の発進が推定されたときに、前記第2制動油圧が第2基準制動油圧以上で、且つ、前記操作部の操作量が基準操作領域になってから、予め設定された所定時間が経過した後に、前記第1制動油圧が予め設定された所定の第1基準制動油圧以上にあるときに、前記調圧弁の正常作動を判定することを特徴としている。
【0030】
本発明の車両用制動装置では、前記正常作動判定手段は、車両の発進が推定されたときに、前記第2電磁弁を閉止し、前記第1電磁弁を開放して所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させると共に、前記第3圧力室からの前記第2制動油圧の吐出ラインを閉止し、前記第1圧力室からの前記第1制動油圧の吐出ラインを減圧することを特徴としている。
【0031】
本発明の車両用制動装置では、前記正常作動判定手段により前記調圧弁の正常作動を判定終了後、前記第1圧力室からの前記第1制動油圧の吐出ラインの減圧を停止すると共に、減圧した第1制動油圧を前記第1制動油圧の吐出ラインに戻すことを特徴としている。
【0032】
本発明の車両用制動装置では、前記第2油圧供給ラインの供給油圧に異常が発生したときには、前記油圧供給源を構成する油圧モータを停止すると共に、前記第1電磁弁及び前記第2電磁弁を開放して静圧モードに設定することを特徴としている。
【0033】
本発明の車両用制動装置では、前記静圧モードが設定されたとき、乗員により前記操作部が操作されたときには、前記油圧モータを駆動すると共に、前記第2電磁弁の開度を調節することを特徴としている。
【発明の効果】
【0034】
本発明の車両用制動装置によれば、シリンダ内に入力ピストンと加圧ピストンを同軸上に軸方向に沿って移動自在に支持すると共に、入力ピストンにより加圧ピストンを押圧可能とし、操作部から入力ピストンに入力される操作量に応じた制御油圧を設定する制御油圧設定手段と、油圧供給源からの油圧をこの制御油圧に調圧して入力ピストン及びピストンに作用させることで制動油圧を発生可能な電磁式油圧供給手段と、油圧供給源からの油圧を操作部から入力ピストンを介して加圧ピストンに伝達された操作量に応じた制御油圧に調圧して加圧ピストンに作用させることで制動油圧を発生可能な機械式油圧供給手段とを設けたので、電源が正常なときは、電磁式油圧供給手段が作動し、操作部から入力ピストンに入力された操作量に応じた制御油圧を入力ピストン及び加圧ピストンに作用させることで制動油圧を発生させることができ、構造の簡素化並びに製造コストの低減を図ることができる一方、電源がダウンしたときは、電磁式油圧供給手段が作動不能となって、機械式油圧供給手段が作動し、操作部から入力ピストンを介して加圧ピストンに伝達された操作量に応じた制御油圧を加圧ピストンに作用させることで制動油圧を発生させることができ、電源がダウンしたときにも適正に制動力を付与することで安全性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明に係る車両用制動装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
図1は、本発明の実施例1に係る車両用制動装置を表す概略構成図、図2は、実施例1の車両用制動装置におけるペダルストロークに対する目標出力油圧及び目標反力を表すグラフ、図3は、実施例1の車両用制動装置における制動力制御を表すフローチャート、図4は、実施例1の車両用制動装置における制動力制御の静圧モード制御を表すフローチャートである。
【0037】
実施例1の車両用制動装置において、図1に示すように、シリンダ11は、基端部が開口して先端部が閉塞した円筒形状をなし、内部に入力ピストン12と加圧ピストン13が同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持されている。シリンダ11の基端部側に配置された入力ピストン12は、基端部に操作部としてのブレーキペダル14の操作ロッド15が連結されており、乗員によるブレーキペダル14の操作により操作ロッド15を介して移動可能となっている。また、入力ピストン12は、先端部外周面がシリンダ11の内周面に圧入または螺合して固定された支持部材16の小径部16aの内面により移動自在に支持されると共に、円盤形状をなすフランジ部17が支持部材16の大径部16bの内面に移動自在に支持されている。そして、入力ピストン12は、フランジ部17が支持部材16の小径部16aの端面に当接すると共に、フランジ部17がシリンダ11の内周面に圧入または螺合して固定された支持部材18の端面に当接することで、その移動ストロークが規制されている。また、入力ピストン12は、支持部材18と操作ロッド15のフランジ部15aとの間に張設された付勢スプリング19によりフランジ部17が支持部材18に当接する位置に付勢支持されている。
【0038】
シリンダ11の先端部側に配置された加圧ピストン13は断面がコ字形状をなし、外周面がシリンダ11の内周面に移動自在に支持されている。そして、加圧ピストン13は、前後の端面がシリンダ11と支持部材16に当接することでその移動ストロークが規制されると共に、シリンダ11との間に張設された付勢スプリング20により加圧ピストン13が支持部材16に当接する位置に付勢支持されている。従って、入力ピストン12と加圧ピストン13とは、所定間隔(ストローク)S0をもって離間した状態で保持されており、乗員がブレーキペダル14を操作し、入力ピストン12が所定ストロークS0だけ前進すると、加圧ピストン13に当接してこれを押圧することができる。
【0039】
このようにシリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13が同軸上に移動自在に配置されることで、入力ピストン12における移動方向一方、つまり、入力ピストン12と加圧ピストン13との間に第1圧力室R1が形成されると共に、入力ピストン12における移動方向他方、つまり、入力ピストン12のフランジ部17と支持部材18との間に第2圧力室R2が形成され、また、シリンダ11と加圧ピストン13との間に第3圧力室R3が形成されている。また、支持部材16と入力ピストン12のフランジ部17との間に反力室R4が形成されている。そして、第1圧力室R1と第2圧力室R2とは、入力ピストン12内に形成された操作力吸収手段としてのL字形状をなす連通路21により連通されている。
【0040】
また、加圧ピストン13内には、調圧弁22が収容されている。即ち、加圧ピストン13には、中空形状をなすハウジング23が嵌合して固定されており、このハウジング23内の中央部にはリング形状をなすフランジ24が形成されている。そして、ハウジング23内の一方側(図1にて左側)にポペット弁25が軸方向に沿って移動自在に支持されており、付勢部材しての圧縮スプリング26により先端部がフランジ24に当接した位置に付勢支持されている。また、加圧ピストン13には、第1圧力室R1とハウジング23の第5圧力室R5とを貫通する可動子としての荷重伝達子27が軸方向に沿って移動自在に支持されており、圧縮スプリング28によりポペット弁25と離間する方向に付勢され、先端側のフランジ部29が加圧ピストン13に当接した位置に支持されている。更に、加圧ピストン13に、第1圧力室R1と第5圧力室R5とを連通する連通孔30が形成されている。そして、荷重伝達子27は、先端部が第1圧力室R1側に突出しており、この荷重伝達子27の先端部に対向して、入力ピストン12の先端部、つまり、連通路21の開口端が位置しており、この連通路21の開口端に座部31が形成されることで、連通路21にオリフィス(縮径部)が形成されることとなる。
【0041】
従って、乗員がブレーキペダル14を操作し、入力ピストン12が前進すると、座部31が荷重伝達子27の先端部に密着することで、連通路21を閉止することができる。そして、入力ピストン12が更に前進すると、入力ピストン12が荷重伝達子27を押圧して移動し、この荷重伝達子27を介してポペット弁25を押圧し、移動することができる。
【0042】
油圧ポンプ32はモータ33が駆動することで油圧を供給可能であり、配管34を介してリザーバタンク35に連結されると共に、配管36を介してアキュムレータ37に連結されている。アキュムレータ37は第1油圧供給配管38によりシリンダ11に形成された第1供給ポート39を介して第2圧力室R2に連結されている。そして、この第1油圧供給配管(第1油圧供給ライン)38に第1リニア弁40が配置されると共に、第1油圧供給配管38から配管34に連結される第1油圧排出配管(第1油圧排出ライン)41に第2リニア弁42が配置されている。この第1リニア弁40と第2リニア弁42は、流量調整式の電磁弁であり、第1リニア弁40は非通電時に閉止状態(ノーマルクローズ)にあり、第2リニア弁42は非通電時に開放状態(ノーマルオープン)にある。
【0043】
また、アキュムレータ37は第2油圧供給配管(第2油圧供給ライン)43によりシリンダ11に形成された第2供給ポート44を介して加圧ピストン13内の調圧弁22に連結されている。即ち、シリンダ11に対してリング形状をなす所定の第1隙間45を介して加圧ピストン13が嵌合し、加圧ピストン13に対してリング形状をなす所定の第2隙間46を介してハウジング23が嵌合しており、第2供給ポート44は第1隙間45に連通し、第1、第2隙間45,46は加圧ピストン13に形成された第1連通ポート47により連通し、第2隙間46は第2連通ポート48にハウジング23内のポペット弁25側の空間と連通している。そして、第5圧力室R5と連通孔30により調圧弁22と第1圧力室とを接続する第3油圧供給ラインが構成されている。
【0044】
更に、アキュムレータ37に比べて低容量のアキュムレータ49は反力油圧供給配管50により反力供給ポート51を介して反力室R4に連結されており、この反力油圧供給配管50から配管34に連結される反力油圧排出配管52に切換弁53が配置されている。
【0045】
一方、シリンダ11に第1排出ポート54が形成されると共に、その両側にワンウェイシール55が装着され、加圧ピストン13に第2排出ポート56が形成されており、第3圧力室R3は第1、第2排出ポート54,56を介して第2油圧排出配管57によりリザーバタンク35に連結されている。
【0046】
前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、それぞれブレーキ装置(図示略)を作動させるホイールシリンダ58FR,58FL,58RR,58RLが設けられており、ABS(Antilock Brake System)59により作動可能となっている。そして、第1圧力室R1に連通する第1吐出ポート60には第1油圧吐出配管61が連結され、この第1油圧吐出配管61はABS59に連結され、後輪RR,RLのホイールシリンダ58RR,58RLに油圧を供給可能となっている。また、第3圧力室R3に形成された第2吐出ポート62には第2油圧吐出配管63が連結され、この第2油圧吐出配管63はABS59に連結され、前輪FR,FLのホイールシリンダ58FR,58FLに油圧を供給可能となっている。
【0047】
なお、シリンダ11と入力ピストン12と加圧ピストン13と調圧弁22等の要部には、Oリング64が装着されて油圧の漏洩を防止している。
【0048】
このように構成された本実施例の車両用制動装置にて、電子制御ユニット(ECU)71は、ブレーキペダル14から入力ピストン12に入力される操作量(ペダルストローク)に応じた制御油圧を設定(制御油圧設定手段)し、この設定された制御油圧を入力ピストン12及び加圧ピストン13に作用させることで制動油圧を発生(電磁式油圧供給手段)させ、ABS59によりホイールシリンダ58FR,58FL,58RR,58RLを作動して前輪FR,FL及び後輪RR,RLに制動力を作用させるようにしている。この場合、本実施例では、制御油圧を入力ピストン12の第1圧力室R1及び第2圧力室R2に供給することで入力ピストン12及び加圧ピストン13に作用させ、第1圧力室R1及び第3圧力室R3から制動油圧を発生させるようにしている。
【0049】
また、本実施例では、ブレーキペダル14から入力ピストン12に入力された操作力を吸収し、入力ピストン12の押圧力を加圧ピストン13に伝達不能とすると共に、この押圧力を操作反力としてブレーキペダル14に作用させないようにしている。この場合、前述したように、操作力吸収手段を、第1圧力室R1と第2圧力室R2とを連通する連通路21と、入力ピストン12と加圧ピストン13との所定間隔S0により構成している。
【0050】
そして、電磁式油圧供給手段の異常発生時には、機械式油圧供給手段を作動し、ブレーキペダル14からの操作力により、入力ピストン12が加圧ピストン13を直接押圧すると共に調圧弁22を作動させ、適正な制動油圧を発生させるようにしている。
【0051】
即ち、ブレーキペダル14には、このブレーキペダル14のペダルストロークSpを検出するストロークセンサ72が設けられており、検出したペダルストロークSpをECU71に出力している。また、第1油圧吐出配管61及び第2油圧吐出配管63には、制動油圧を検出する第1圧力センサ73及び第2圧力センサ74が設けられている。第1圧力センサ73は、第1圧力室R1から第1油圧吐出配管61を通して後輪RR,RLのホイールシリンダ58RR,58RLへ供給される制動油圧Prを検出し、検出結果をECU71に出力している。一方、第2圧力センサ74は、第3圧力室R3から第2油圧吐出配管63を通して前輪FR,FLのホイールシリンダ58FR,58FLへ供給される制動油圧Pfを検出し、検出結果をECU71に出力している。
【0052】
更に、アキュムレータ37からの配管36に第3圧力センサ75が設けられており、この第3圧力センサ75は、アキュムレータ37に蓄圧された油圧Paccを検出し、検出結果をECU71に出力している。また、前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、それぞれ車輪速センサ76が設けられており、検出した各車輪速度をECU71に出力している。
【0053】
従って、ECU71は、図2に示すように、ストロークセンサ72が検出したペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定し、第1、第2リニア弁40,42の開度を調整する一方、第1圧力センサ73が検出した制動油圧Prをフィードバックし、目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制御している。この場合、ECU71は、ペダルストロークSpに対する目標出力油圧Prtのマップを有しており、このマップに基づいて各リニア弁40,42を制御する。つまり、制動油圧Prは、ペダルストロークSpと予め設定された両者の関数マップに基づいて設定される。なお、制動油圧Pf≒制動油圧Prであり、Pr=fSp(fはストローク−油圧の関数)となる。また、初期ペダルストロークSp0は、後述する所定のストロークS0であってもよく、異なる値に設定してもよい。
【0054】
ここで、本実施例の車両用制動装置におけるECU71による制動力制御について、図3のフローチャートに基づいて説明する。ECU71による制動力制御において、図3に示すように、まず、ステップS1では、ECU71が、第3圧力センサ75が検出したアキュムレータ圧Paccを取得する。そして、ステップS2では、第3圧力センサ75が検出したアキュムレータ圧Paccが予め設定された所定の第1アキュムレータ圧Pacc1以上かどうかを判定する。ここで、現在の第1アキュムレータ圧Pacc1以上であれば、ステップS3で、油圧ポンプ32のモータ33を駆動する。一方、現在の第1アキュムレータ圧Pacc1以上でないときは、ステップS4にて、現在のアキュムレータ圧Paccが予め設定された所定の第2アキュムレータ圧Pacc2以下かどうかを判定する。ここで、現在のアキュムレータ圧Paccが第2アキュムレータ圧Pacc2以下であれば、ステップS5で、油圧ポンプ32のモータ33を停止する。
【0055】
そして、ステップS6にて、ストロークセンサ72が検出したペダルストロークSpを取得する。続いて、ステップS7では、第1圧力センサ73が検出した制動油圧Prと、第2圧力センサ74が検出した制動油圧Pfを取得する。ステップS8にて、ペダルストロークSpに基づいて予め設定されたマップを用いて目標出力油圧Prtを演算する。そして、ステップS9にて、算出した目標出力油圧Prtに基づいて第1、第2リニア弁40,42の開度を調整する。このとき、制動油圧Prをフィードバックし、目標出力油圧Prtと制動油圧Prとが一致するように制御する。
【0056】
具体的に説明すると、図1に示すように、電源としてのバッテリが正常状態にあって、ECU71により、電磁式油圧供給手段を構成する第1リニア弁40及び第2リニア弁42を正常に開閉操作及び開度調整操作可能であるとき、乗員がブレーキペダル14を踏むと、その操作力により入力ピストン12が前進(図1にて左方へ移動)する。このとき、入力ピストン12は前進するが、加圧ピストン13との間には所定のストロークS0が設けられているため、加圧ピストン13を直接押圧することはなく、第1圧力室R1の作動油が連通路21を通して第2圧力室R2に流れる。そのため、入力ピストン12がフリー状態となり、第1圧力室R1から入力ピストン12を介してブレーキペダル14に反力が作用することはないが、アキュムレータ49から反力油圧配管50を通して反力室R4に反力油圧が作用しており、ブレーキペダル14には適正な反力が付与される。
【0057】
このように乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン12が前進するため、ストロークセンサ72はペダルストロークSpを検出し、ECU71は、このペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定する。そして、ECU71は、この目標出力油圧Prtに基づいて第1、第2リニア弁40,42の開度を調整し、第2圧力室R2に所定の制御油圧を作用させる。すると、この制御油圧が連通路21を通して第1圧力室R1に作用し、この第1圧力室R1から第1油圧吐出配管61に所定の制動油圧Prが作用すると共に、第3圧力室R3から第2油圧吐出配管63に所定の制動油圧Pfが作用することとなる。そして、この制動油圧Pr,PfがABS59を介してホイールシリンダ58FR,58FL,58RR,58RLに作用し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0058】
このとき、ブレーキペダル14の操作力により入力ピストン12が前進し、第2圧力室R2に所定の制御油圧が作用するとき、第1圧力室R1と第2圧力室R2が同圧となるため、入力ピストン12は加圧ピストン13や調圧弁22の荷重伝達子27に接触することはなく、第2油圧供給配管43と調圧弁22の第5圧力室R5はポペット弁25により遮断された状態に維持される。そして、入力ピストン12と加圧ピストン13が所定の間隔を有したまま移動し、第1排出ポート54と第2排出ポート56が遮断されると、加圧ピストン13の移動により第3圧力室R3が加圧されることとなり、第1圧力室R1に作用する制御油圧に応じて第1圧力室R1と第3圧力室R3との油圧がバランスすることで、各吐出ポート60,62から吐出される制動油圧Pr,Pfはほぼ同等のものとなる。
【0059】
なお、本実施例では、入力ピストン12の第1受圧面積(先端部の面積)が、加圧ピストン13の第2受圧面積(先端部の面積)よりも小さく設定しており、所定のサーボ比が確保されている。また、各リニア弁40,42により第1圧力室R1に最大制御油圧が作用したとき、第1圧力室R1から調圧弁22の第5圧力室R5に作用する最大油圧によりポペット弁25が開放しないように、圧縮スプリング26の付勢力が下記数式を満足するように設定されている。
(ポペット弁のシール面積)×(リニア弁の最大制御油圧)<(圧縮スプリング26の付勢力)
【0060】
一方、バッテリがダウンした状態にあって、ECU71により第1リニア弁40及び第2リニア弁42の開閉操作及び開度調整操作が不能となったとき、第1リニア弁40は閉止状態で、第2リニア弁42は開放状態で停止する。このとき、乗員がブレーキペダル14を踏むと、その操作力により入力ピストン12が前進するが、加圧ピストン13との間には所定のストロークS0が設けられているため、加圧ピストン13を直接押圧することはなく、前述と同様に、第1圧力室R1の作動油が連通路21を通して第2圧力室R2に流れる。そして、第2圧力室R2の油圧は、第1供給ポート39から第1油圧排出配管41を通してリザーバタンク35に排出されるため、入力ピストン12は加圧ピストン13や調圧弁22の荷重伝達子27に接触するまで移動することができる。
【0061】
入力ピストン12がストロークS0だけ移動して先端部が調圧弁22の荷重伝達子27に接触すると、座部31が荷重伝達子27の先端部に密着することで連通路21を閉止し、第1圧力室R1とリザーバタンク35との連通が遮断される。そして、入力ピストン12が更に前進すると、入力ピストン12が荷重伝達子27を押圧して移動し、この荷重伝達子27を介してポペット弁25を押圧して移動することで、第2油圧供給配管43と第5圧力室R5とが連通される。すると、アキュムレータ37の油圧が第2油圧供給配管43から第2供給ポート44、第1隙間45、第1連通ポート47、第2隙間46、第2連通ポート48、ポペット弁25を通して第5圧力室R5に作用し、更に、連通孔30を通して第1圧力室R1に作用する。
【0062】
従って、入力ピストン12及び加圧ピストン13が接触したまま前進すると、アキュムレータ37の油圧が第1圧力室R1に作用することで、この第1圧力室R1から第1油圧吐出配管61に所定の制動油圧Prが作用する。また、加圧ピストン13の前進により第3圧力室R3が加圧されることで、この第3圧力室R3から第2油圧吐出配管63に所定の制動油圧Pfが作用することとなる。そして、この制動油圧Pr,PfがABS59を介してホイールシリンダ58FR,58FL,58RR,58RLに作用し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0063】
そして、乗員がブレーキペダル14の踏み込みを停止(保持)すると、入力ピストン12の座部31が荷重伝達子27に接触して連通路21を閉止した状態のまま、荷重伝達子27によるポペット弁25の押圧が解除され、第2油圧供給配管43と第5圧力室R5とが遮断される。そのため、第1圧力室R1と第3圧力室R3とが密閉状態となり、ABS59に吐出する制動油圧Pr,Pfを保持することができる。
【0064】
また、乗員がブレーキペダル14の踏み込みを戻すと、入力ピストン12の座部31が荷重伝達子27から離間して連通路21を開放するため、第1圧力室R1の油圧が連通路21を通して第2圧力室R2に流れ、第1供給ポート39から第1油圧排出配管41を通してリザーバタンク35に排出される。一方、ブレーキペダル14を戻すと、入力ピストン12が後退すると共に、加圧ピストン13が付勢スプリング20の付勢力により後退するため、第3圧力室R3の油圧は第2排出ポート54から第2油圧排出配管57を通ってリザーバタンク35に排出される。そのため、第1圧力室R1と第3圧力室R3の油圧を減圧することで、ABS59に吐出する制動油圧Pr,Pfを減圧することができる。
【0065】
ところで、本実施例では、バッテリが正常状態で、第1リニア弁40及び第2リニア弁42を開閉操作及び開度調整操作することで、適正な制御油圧を供給可能であるとき、アキュムレータ37から第2油圧供給配管43を通して調圧弁22に常時高い油圧を供給しているため、油圧の漏洩により低圧異常が発生する可能性がある。そこで、調圧弁22側に低圧異常が発生したときには、アキュムレータ37の蓄圧を低下させて静圧モードに移行するようにしている。
【0066】
即ち、図4に示すように、ステップS11にて、静圧モード中かどうかを判定し、ここで、静圧モード中でなければ、ステップS12にて、ブレーキペダル14が操作されていないかどうかを判定し、ここで、ブレーキペダル14が操作されていなければ、ステップS13に移行する。ステップS13では、調圧弁22側に低圧異常状態が所定時間以上継続していないかどうかを判定する。この判定は、例えば、圧力センサ73,74による検出結果に基づいて判定する。このステップS13にて、低圧異常状態が所定時間以上継続している判定されたら、ステップS15に移行する。一方、ステップS13で、低圧異常状態が所定時間以上継続していない判定されたら、ステップS14にて、第3圧力センサ75が検出したアキュムレータ37の油圧が異常でないかどうかを判定する。ここで、第3圧力センサ75が検出したアキュムレータ37の油圧が異常であると判定されたら、ステップS15に移行する。
【0067】
ステップS15では、油圧ポンプ32のモータ33を停止し、第1リニア弁40を開放すると共に第2リニア弁42を開放し、アキュムレータ37の油圧をリザーバタンク35に開放する。続いて、ステップS16では、静圧モード(フラグ)を設定する。そして、静圧モードが設定された後、ステップS11の判定によりステップS17に移行し、ブレーキペダル14が操作されたかどうかを判定する。ここで、ブレーキペダル14が操作されたら、ステップS18にて、油圧ポンプ32のモータ33を駆動し、第2リニア弁42の開度を調節することで、制御油圧を調整する。一方、ステップS17で、ブレーキペダル14が操作されていなければ、静圧モードを継続する。
【0068】
このように実施例1の車両用制動装置にあっては、シリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13を移動自在に支持すると共に、入力ピストン12により加圧ピストン13を押圧可能とし、入力ピストン12にブレーキペダル14を連結し、入力ピストン12の前後の圧力室R1,R2を連通路21により連通し、ブレーキペダル14の操作量に応じた制御油圧を第1、第2リニア弁40,42により第2圧力室R2に供給可能とすると共に、ブレーキペダル14から入力ピストン12を介して加圧ピストン13に伝達された操作量に応じた制御油圧を調圧弁22により調圧して第2圧力室R2に供給可能とし、各圧力室R1,R3から制動油圧を出力可能としている。
【0069】
従って、電源が正常なとき、乗員がブレーキペダル14を踏むと、ECU71は、ペダルストロークSpに応じた目標出力油圧Prtを設定し、この目標出力油圧Prtに基づいて第1圧力室R1に制御油圧を作用させることで、第1圧力室R1から第1油圧吐出配管61に所定の制動油圧Prを出力すると共に、第3圧力室R3から第2油圧吐出配管44に所定の制動油圧Pfを出力し、この制動油圧Pr,PfをABS59を介して各ホイールシリンダ58FR,58FL,58RR,58RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0070】
一方、電源がダウンしたとき、乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン12が前進し、調圧弁22の荷重伝達子27に接触することで連通路21を閉止すると共に、荷重伝達子27がポペット弁25を押圧して移動することで第2油圧供給配管43と第5圧力室R5とを連通し、アキュムレータ37からの油圧が調圧弁22で調圧されてから第1圧力室R1に作用することとなり、第1圧力室R1から制動油圧Prを出力すると共に、第3圧力室R3から制動油圧Pfを出力し、この制動油圧Pr,PfをABS59を介して各ホイールシリンダ58FR,58FL,58RR,58RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0071】
そして、乗員がブレーキペダル14の踏み込みを停止すると、連通路21を閉止した状態で、荷重伝達子27によるポペット弁25の押圧が解除され、第2油圧供給配管43と第5圧力室R5とが遮断されるため、第1圧力室R1と第3圧力室R3とが密閉状態となり、制動油圧Pr,Pfを保持することができる。また、乗員がブレーキペダル14を戻すと、入力ピストン12が荷重伝達子27から離間して連通路21を開放し、第1圧力室R1の油圧が連通路21を通してリザーバタンク35に排出されると共に、加圧ピストン13が後退して第3圧力室R3の油圧がリザーバタンク35に排出されるため、第1圧力室R1と第3圧力室R3の油圧を減圧することで、制動油圧Pr,Pfを減圧することができる。
【0072】
このように電源の正常、異常状態にかかわらず、乗員によるブレーキペダル14の操作量に応じた制動油圧を確実に発生させることができ、油圧経路を簡略化して構造の簡素化を図ることができると共に、製造コストを低減することができる一方、電源がダウンしたときにも適正に制動力を付与することで安全性を向上することができる。
【0073】
また、実施例1の車両用制動装置にあっては、本発明の操作力吸収手段を、第1、第2圧力室R1,R2を連通する連通路21と入力ピストン12と加圧ピストン13との所定間隔S0により構成しており、簡単な構成でブレーキペダル14に対する反力変動を抑制することができる。そして、この連通路21に座部31を形成して縮径部を設けたことで、入力ピストン12の前進時に、縮径部により推進力が発生させることができる。
【0074】
そして、実施例1の車両用制動装置にあっては、調圧弁22を加圧ピストン13内に収容し、ハウジング23と、ハウジング23内に移動自在に支持されて第2油圧供給配管43と第5圧力室R5(第3油圧供給ライン)とを開閉自在なポペット弁25と、このポペット弁25を閉止方向に付勢する圧縮スプリング26と、入力ピストン12に移動してポペット弁25を開放する荷重伝達子27とで構成している。従って、入力ピストン12が移動して荷重伝達子27に接触したときに連通路21が閉止され、荷重伝達子27がポペット弁25を移動して第2油圧供給配管43と第5圧力室R5とが連通したときに、アキュムレータ37からの油圧が調圧弁22で調圧されてから第1圧力室R1に作用し、制動油圧Pr,Pfを吐出することができる。その結果、調圧弁22を効率的に搭載することでシリンダ11の全長を短縮することができると共に、簡単な構成で正常時と異常時における制御油圧の供給経路を切換えることができ、低コスト化を可能とすることができる。
【0075】
また、各リニア弁40,42により第1圧力室R1に最大制御油圧が作用したとき、第1圧力室R1から調圧弁22の第5圧力室R5に作用する最大油圧によりポペット弁25が開放しないように、圧縮スプリング26の付勢力を設定している。従って、正常時に、機械式油圧供給手段の作動を禁止し、不要な制動油圧の発生を防止することができ、安全性を向上することができる。
【0076】
また、入力ピストン12の第1受圧面積を、加圧ピストン13の第2受圧面積よりも小さく設定しており、所望のサーボ比を確保することができる。
【実施例2】
【0077】
図5は、本発明の実施例2に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0078】
実施例2の車両用制動装置において、図5に示すように、シリンダ11の内部に入力ピストン12と加圧ピストン13が軸方向に沿って移動自在に支持されており、入力ピストン12は、基端部にブレーキペダル14の操作ロッド15が連結されている。そして、入力ピストン12は、フランジ部17が支持部材16,18に当接することで、その移動ストロークが規制されていると共に、付勢スプリング19によりフランジ部17が支持部材18に当接する位置に付勢支持されている。一方、加圧ピストン13は、シリンダ11と支持部材16に当接することでその移動ストロークが規制されると共に、付勢スプリング20により加圧ピストン13が支持部材16に当接する位置に付勢支持されている。従って、入力ピストン12と加圧ピストン13とは、所定間隔(ストローク)S0をもって離間した状態で保持されており、乗員がブレーキペダル14を操作し、入力ピストン12が所定ストロークS0だけ前進すると、加圧ピストン13に当接してこれを押圧することができる。
【0079】
このようにシリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13が移動自在に配置されることで、入力ピストン12の前後に第1圧力室R1と第2圧力室R2が形成され、シリンダ11と加圧ピストン13との間に第3圧力室R3が形成されている。また、支持部材16と入力ピストン12のフランジ部17との間に反力室R4が形成されている。そして、第1圧力室R1と第2圧力室R2とは、入力ピストン12内に形成された連通路21により連通されている。
【0080】
また、シリンダ11の先端部には、調圧弁81が収容されている。即ち、シリンダ11の先端部には、中空形状をなすハウジング82が嵌合して固定されており、このハウジング82内の中央部にはリング形状をなすフランジ83が形成されている。そして、ハウジング82内の一方側(図5にて左側)にポペット弁84が軸方向に沿って移動自在に支持されており、付勢部材しての圧縮スプリング85により先端部がフランジ83に当接した位置に付勢支持されている。また、ハウジング内の他方側(図5にて右側)には、第3圧力室R3とハウジング82の第5圧力室R5とを貫通する可動子としての圧力伝達子86が軸方向に沿って移動自在に支持されており、圧縮スプリング87によりポペット弁84と離間する方向に付勢され、先端側のフランジ部88がハウジング82に当接した位置に支持されている。そして、圧力伝達子86の先端部が第3圧力室R3側に突出すると共に、加圧ピストン13に第1圧力室R1側に突出する突出部89が形成されており、この加圧ピストン13の突出部89に対向して、入力ピストン12の先端部、つまり、連通路21の開口端が位置している。
【0081】
従って、乗員がブレーキペダル14を操作し、入力ピストン12が前進すると、連通路21の開口端が加圧ピストン13の突出部89に密着することで、連通路21を閉止することができる。そして、入力ピストン12と共に加圧ピストン13が前進すると、第3圧力室R3内の圧力が上昇し、この圧力により圧力伝達子86を押圧して移動し、この圧力伝達子86を介してポペット弁84を押圧し、移動することができる。
【0082】
油圧ポンプ32はモータ33が駆動することで油圧を供給可能であり、配管34を介してリザーバタンク35に連結されると共に、配管36を介してアキュムレータ37に連結されている。アキュムレータ37は第1油圧供給配管38により第1供給ポート39を介して第2圧力室R2に連結されている。そして、この第1油圧供給配管38に第1リニア弁40が配置されると共に、第1油圧供給配管38から配管34に連結される第1油圧排出配管41に第2リニア弁42が配置されている。
【0083】
また、アキュムレータ37は第2油圧供給配管43によりシリンダ11の第2供給ポート44を介して調圧弁81に連結されている。即ち、第2供給ポート44はハウジング82に形成された連通ポート90を介してこのハウジング23内のポペット弁25側の空間と連通している。そして、シリンダ11とハウジング82には、第5圧力室R5に連通する第3、第4供給ポート91,92が形成され、この第3、第4供給ポート91,92は第3油圧供給配管(第3油圧供給ライン)93を介して第1油圧吐出配管61に接続されており、この第3油圧供給配管93に切換弁94(または、リリーフ弁95)が配置されている。また、圧力伝達子86内には連通孔96が形成され、一端部が第5圧力室R5に連通する一方、他端部が第3、第4排出ポート97,98及び第3油圧排出配管99を介して第2油圧排出配管57に接続されている。
【0084】
更に、アキュムレータ49は反力油圧供給配管50により反力供給ポート51を介して反力室R4に連結され、この反力油圧供給配管50から配管34に連結される反力油圧排出配管52に切換弁53が配置されている。
【0085】
一方、シリンダ11に第1排出ポート54が形成されてその両側にワンウェイシール55が装着されると共に、加圧ピストン13に第2排出ポート56が形成されており、第3圧力室R3は第1、第2排出ポート54,56を介して第2油圧排出配管57によりリザーバタンク35に連結されている。
【0086】
前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、ホイールシリンダ58FR,58FL,58RR,58RLが設けられており、ABS59により作動可能となっている。そして、第1圧力室R1に連通する第1吐出ポート60に第1油圧吐出配管61が連結され、この第1油圧吐出配管61はABS59に連結され、後輪RR,RLのホイールシリンダ58RR,58RLに油圧を供給可能となっている。また、第3圧力室R3に形成された第2吐出ポート62には第2油圧吐出配管63が連結され、この第2油圧吐出配管63はABS59に連結され、前輪FR,FLのホイールシリンダ58FR,58FLに油圧を供給可能となっている。
【0087】
このように構成された本実施例の車両用制動装置にて、ブレーキペダル14には、ペダルストロークSpを検出するストロークセンサ72が設けられており、検出したペダルストロークSpをECU71に出力している。また、第1油圧吐出配管61及び第2油圧吐出配管63には、制動油圧を検出する第1圧力センサ73及び第2圧力センサ74が設けられており、検出した制動油圧Pr及び制動油圧PfをECU71に出力している。更に、アキュムレータ37からの配管36に第3圧力センサ75が設けられており、アキュムレータ37に蓄圧された油圧PaccをECU71に出力している。また、前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、それぞれ車輪速センサ76が設けられており、検出した各車輪速度をECU71に出力している。
【0088】
従って、電源としてのバッテリが正常状態にあって、ECU71により、第1リニア弁40及び第2リニア弁42を正常に開閉操作及び開度調整操作可能であるとき、乗員がブレーキペダル14を踏むと、その操作力により入力ピストン12が前進(図5にて左方へ移動)する。このとき、入力ピストン12は前進するが、加圧ピストン13との間には所定のストロークS0が設けられているため、加圧ピストン13を直接押圧することはなく、第1圧力室R1の作動油が連通路21を通して第2圧力室R2に流れる。そのため、入力ピストン12がフリー状態となり、第1圧力室R1から入力ピストン12を介してブレーキペダル14に反力が作用することはないが、アキュムレータ49から反力油圧配管50を通して反力室R4に反力油圧が作用しており、ブレーキペダル14には適正な反力が付与される。
【0089】
このように乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン12が前進するため、ストロークセンサ72はペダルストロークSpを検出し、ECU71は、このペダルストロークSpに基づいて目標出力油圧Prtを設定する。そして、ECU71は、この目標出力油圧Prtに基づいて第1、第2リニア弁40,42の開度を調整し、第2圧力室R2に所定の制御油圧を作用させる。すると、この制御油圧が連通路21を通して第1圧力室R1に作用し、この第1圧力室R1から第1油圧吐出配管61に所定の制動油圧Prが作用すると共に、第3圧力室R3から第2油圧吐出配管63に所定の制動油圧Pfが作用することとなる。そして、この制動油圧Pr,PfがABS59を介してホイールシリンダ58FR,58FL,58RR,58RLに作用し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0090】
このとき、ブレーキペダル14の操作力により入力ピストン12が前進し、第2圧力室R2に所定の制御油圧が作用するとき、第1圧力室R1と第2圧力室R2が同圧となるため、入力ピストン12は加圧ピストン13に接触することはなく、第2油圧供給配管43と調圧弁81の第5圧力室R5はポペット弁84により遮断された状態に維持される。そして、入力ピストン12と加圧ピストン13が所定の間隔を有したまま移動し、第1排出ポート54と第2排出ポート56が遮断されると、加圧ピストン13の移動により第3圧力室R3が加圧されることとなり、第1圧力室R1に作用する制御油圧に応じて第1圧力室R1と第3圧力室R3との油圧がバランスすることで、各吐出ポート60,62から吐出される制動油圧Pr,Pfはほぼ同等のものとなる。
【0091】
なお、上述したように、ECU71が第1リニア弁40及び第2リニア弁42を開閉操作及び開度調整操作して、制御油圧を作用させるとき、切換弁94は閉止状態にある。
【0092】
一方、バッテリがダウンした状態にあって、ECU71により第1リニア弁40及び第2リニア弁42の開閉操作及び開度調整操作が不能となったとき、第1リニア弁40は閉止状態で、第2リニア弁42は開放状態で停止する。このとき、乗員がブレーキペダル14を踏むと、その操作力により入力ピストン12が前進するが、加圧ピストン13との間には所定のストロークS0が設けられているため、加圧ピストン13を直接押圧することはなく、前述と同様に、第1圧力室R1の作動油が連通路21を通して第2圧力室R2に流れる。そして、第2圧力室R2の油圧は、第1供給ポート39から第1油圧排出配管41を通してリザーバタンク35に排出されるため、入力ピストン12は加圧ピストン13に接触するまで移動することができる。
【0093】
入力ピストン12がストロークS0だけ移動して先端部が加圧ピストン13の突出部89に接触すると、連通路21の開口端が突出部89に密着することで連通路21を閉止し、第1圧力室R1とリザーバタンク35との連通が遮断される。そして、入力ピストン12が加圧ピストン13と一体となって前進すると、第3圧力室R3内の圧力が上昇し、この圧力により圧力伝達子86を押圧して移動し、この圧力伝達子86を介してポペット弁84を押圧して移動することで、第2油圧供給配管43と第5圧力室R5とが連通される。すると、アキュムレータ37の油圧が第2油圧供給配管43から第2供給ポート44、連通ポート90、ポペット弁84を通して第5圧力室R5に作用し、更に、切換弁94、第3油圧排出配管93、第1油圧吐出配管61を通して第1圧力室R1に作用する。
【0094】
従って、入力ピストン12及び加圧ピストン13が接触したまま前進すると、アキュムレータ37の油圧が第3油圧排出配管93を通して第1油圧吐出配管61に作用することで、この第1油圧吐出配管61に所定の制動油圧Prが作用する。また、加圧ピストン13の前進により第3圧力室R3が加圧されることで、この第3圧力室R3から第2油圧吐出配管63に所定の制動油圧Pfが作用することとなる。そして、この制動油圧Pr,PfがABS59を介してホイールシリンダ58FR,58FL,58RR,58RLに作用し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
【0095】
そして、乗員がブレーキペダル14を戻すと、入力ピストン12が加圧ピストン13の突出部89から離間して連通路21を開放するため、第1圧力室R1の油圧が連通路21を通して第2圧力室R2に流れ、第1供給ポート39から第1油圧排出配管41を通してリザーバタンク35に排出される。一方、ブレーキペダル14を戻すと、入力ピストン12が後退すると共に、加圧ピストン13が付勢スプリング20の付勢力により後退するため、第3圧力室R3の油圧は第2排出ポート54から第2油圧排出配管57を通ってリザーバタンク35に排出される。そのため、第1圧力室R1と第3圧力室R3の油圧を減圧することで、ABS59に吐出する制動油圧Pr,Pfを減圧することができる。
【0096】
このように実施例2の車両用制動装置にあっては、シリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13を移動自在に支持すると共に、入力ピストン12により加圧ピストン13を押圧可能とし、入力ピストン12にブレーキペダル14を連結し、入力ピストン12の前後の第1、第2圧力室R1,R2を連通路21により連通し、ブレーキペダル14の操作量に応じた制御油圧を第1、第2リニア弁40,42により第2圧力室R2に供給可能とすると共に、ブレーキペダル14から入力ピストン12を介して加圧ピストン13に伝達された操作量に応じた制御油圧を調圧弁81により調圧して第2圧力室R2に供給可能とし、各圧力室R1,R3から制動油圧を出力可能としている。
【0097】
従って、電源が正常なとき、乗員がブレーキペダル14を踏むと、ECU71は、ペダルストロークSpに応じた目標出力油圧Prtを設定し、この目標出力油圧Prtに基づいて第1圧力室R1に制御油圧を作用させることで、第1圧力室R1から第1油圧吐出配管61に所定の制動油圧Prを出力すると共に、第3圧力室R3から第2油圧吐出配管44に所定の制動油圧Pfを出力し、この制動油圧Pr,PfをABS59を介して各ホイールシリンダ58FR,58FL,58RR,58RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0098】
一方、電源がダウンしたとき、乗員がブレーキペダル14を踏むと、入力ピストン12が前進し、加圧ピストン13の突出部89に接触することで連通路21を閉止すると共に、加圧ピストン13の移動による第3圧力室R3の増圧により圧力伝達子86がポペット弁84を押圧して移動することで第2油圧供給配管43と第5圧力室R5とを連通し、アキュムレータ37からの油圧が調圧弁81で調圧されてから第1圧力室R1に作用することとなり、第1圧力室R1から制動油圧Prを出力すると共に、第3圧力室R3から制動油圧Pfを出力し、この制動油圧Pr,PfをABS59を介して各ホイールシリンダ58FR,58FL,58RR,58RLに作用させ、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル14の操作力に応じた適正な制動力を発生させることができる。
【0099】
そして、乗員がブレーキペダル14を戻すと、入力ピストン12が加圧ピストン13の突出部89から離間して連通路21を開放し、第1圧力室R1の油圧が連通路21を通してリザーバタンク35に排出されると共に、加圧ピストン13が後退して第3圧力室R3の油圧がリザーバタンク35に排出されるため、第1圧力室R1と第3圧力室R3の油圧を減圧することで、制動油圧Pr,Pfを減圧することができる。
【0100】
このように電源の正常、異常状態にかかわらず、乗員によるブレーキペダル14の操作量に応じた制動油圧を確実に発生させることができ、油圧経路を簡略化して構造の簡素化を図ることができると共に、製造コストを低減することができる一方、電源がダウンしたときにも適正に制動力を付与することで安全性を向上することができる。
【0101】
また、実施例2の車両用制動装置にあっては、調圧弁81をシリンダ11の先端部に収容し、ハウジング82と、ハウジング82内に移動自在に支持されて第2油圧供給配管43と第5圧力室R5及び第3油圧供給配管93とを開閉自在なポペット弁84と、このポペット弁84を閉止方向に付勢する圧縮スプリング85と、入力ピストン12に移動してポペット弁84を開放する圧力伝達子86とで構成している。従って、入力ピストン12が移動して加圧ピストン13に接触したときに連通路21が閉止され、加圧ピストン13が移動して第3圧力室R3が増圧されると圧力伝達子86がポペット弁84を移動し、第2油圧供給配管43と第5圧力室R5とが連通したときに、アキュムレータ37からの油圧が調圧弁81で調圧されてから第1圧力室R1に作用し、制動油圧Pr,Pfを吐出することができる。
【0102】
その結果、調圧弁81を搭載する位置が限定されることはなく、搭載の自由度を向上することができると共に、簡単な構成で正常時と異常時における制御油圧の供給経路を切換えることができ、低コスト化を可能とすることができる。
【実施例3】
【0103】
図6は、本発明の実施例3に係る車両用制動装置を表す概略構成図、図7は、実施例3の車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御を表すフローチャート、図8は、調圧弁の初回チェック制御のフローチャート、図9は、調圧弁の作動チェック制御のフローチャート、図10は、実施例3の車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御を表すタイムチャートである。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0104】
実施例3の車両用制動装置の全体構成は、図6に示すように、上述した実施例1(図1)とほぼ同様の構成となっている。即ち、シリンダ11内に入力ピストン12と加圧ピストン13を移動自在に支持すると共に、入力ピストン12にブレーキペダル14が連結され、入力ピストン12により加圧ピストン13を押圧可能であり、入力ピストン12の前後の圧力室R1,R2が連通路21により連通されており、電源の正常時には、ブレーキペダル14の操作量に応じた制御油圧を第1、第2リニア弁40,42により第2圧力室R2に供給可能とする一方、電源の異常時には、ブレーキペダル14から入力ピストン12を介して加圧ピストン13に伝達された操作量に応じた制御油圧を調圧弁22により調圧して第2圧力室R2に供給可能とし、各圧力室R1,R3から制動油圧を出力可能となっている。
【0105】
この場合、ABS59にて、第1圧力室R1の第1吐出ポート60に連結される第1油圧吐出配管61は、3つの経路101,102,103に分岐され、第1経路101にABSアキュムレータ104及びABSリザーバタンク105が接続されている。そして、第2、第3経路102,103は、後輪RR,RLのホイールシリンダ58RR,58RLに接続され、第1保持弁106,107が配置されている。また、第2、第3経路102,103には、保持弁106,107の下流側で分岐した第1、第2分岐経路108,109がABSリザーバタンク105に接続され、第1減圧弁110,111が配置されている。
【0106】
一方、第3圧力室R3の第2吐出ポート62に連結される第2油圧吐出配管63は、3つの経路121,122,123に分岐され、第1経路121にABSアキュムレータ124及びABSリザーバタンク125が接続されている。そして、第2、第3経路122,123は、前輪FR,FLのホイールシリンダ58FR,58FLに接続され、第2保持弁126,127が配置されている。また、第2、第3経路122,123には、保持弁126,127の下流側で分岐した第1、第2分岐経路128,129がABSリザーバタンク125に接続され、第2減圧弁130,131が配置されている。そして、各ABSアキュムレータ104,124には、ABSポンプモータ140が接続されている。
【0107】
このように構成された本実施例の車両用制動装置では、正常作動判定手段としてのECU71が、第1、第2リニア弁40,42により制御油圧を入力ピストン12に作用させ、入力ピストン12を介して加圧ピストン13を移動することで、機械式油圧供給手段としての調圧弁22を強制作動させ、このときの制動油圧を検出することで調圧弁22の正常作動を判定するようにしている。
【0108】
以下、このように構成された本実施例の車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御について詳細に説明する。
【0109】
車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御において、図7に示すように、ステップS21にて、初回チェック完了フラグと作動チェック完了フラグを0とし、ステップS22にて、ドアの開閉操作があったかどうかを判定する。ここでは、ドアの開閉操作を確認することで、乗員が車両を発進させる意思があることを確認している。即ち、ステップS22で、ドアの開閉操作があったと判定されたら、ステップS23にて、調圧弁22の初回チェックを実行する。
【0110】
この調圧弁22の初回チェックにおいて、図8に示すように、ステップS231にて、第2リニア弁42を閉止すると共に、第2保持弁126,127を閉止する。即ち、調圧弁22の初回チェック時に、第1圧力室R1からの油圧の排出を阻止すると共に、第3圧力室R3からの制動油圧の吐出側を閉止して加圧ピストン13の作動ストロークを減少させる。そして、ステップS232にて、第1リニア弁40の制御電流をIkとして所定の開度まで開放する。
【0111】
ステップS233で、カウンタを0としてから、ステップS234で、カウンタに1を加算し、ステップS235にて、第2圧力センサ74が検出した制動油圧Pfが予め設定された所定値以上に上昇したかどうかを判定する。ここで、第1リニア弁40が開放されて制御油圧が第1圧力室R1に作用し、加圧ピストン13が前進して第3圧力室R3を加圧することで、制動油圧Pfが所定値以上に上昇したら、ステップS236にて、制動油圧Pf,Prを規定制動油圧Pfk,Prkまで上昇させる。そして、ステップS237にて、初回チェック完了フラグを1とし、ステップS238にて、第1、第2リニア弁40,42を閉止すると共に、第2保持弁126,127を開放する。
【0112】
一方、ステップS235にて、制動油圧Pfが所定値以上に上昇しないときは、ステップS239にて、カウンタ値が限界値maxtime0より大きくなったかどうかを判定し、カウンタ値が限界値maxtime0以下であれば、ステップS234に戻る。そして、カウンタ値が限界値maxtime0を超えるまでに、制動油圧Pfが所定値以上に上昇しないときは、ステップS240にて、初回チェック完了フラグを1とすると共に、初回チェックNGフラグを1とし、ステップS238にて、第1リニア弁40を閉止し、第2リニア弁42を開放すると共に、第2保持弁126,127を開放する。
【0113】
このようにドアの開閉操作により乗員が車両を発進させる意思があることを確認したとき、調圧弁22の初回チェックを実行することで、以降に実行される調圧弁の作動チェック制御の準備加圧が完了し、安全に調圧弁の作動チェックを実行することができる。
【0114】
図7に戻り、ステップS23で、調圧弁22の初回チェックを実行し、ステップS24にて、初回チェック完了フラグが1になるまで待機し、初回チェック完了フラグが1になったら、ステップS25にて、初回チェックNGフラグが1であるかどうかを判定する。ここで、初回チェックNGフラグが0であって、初回チェックが適正に完了したら、ステップS26にて、ストロークセンサ72が検出したブレーキペダル14のペダルストロークSpに基づいてブレーキ操作がなされたかどうかを判定する。そして、ステップS26で、ブレーキ操作がなされたと判定されたら、ステップS27にて、このときのブレーキペダル14のペダルストロークSpが規定値Skとなったかどうかを判定する。ここで、ペダルストロークSpが規定値Skであれば、ステップS28にて、調圧弁22の作動チェックを実行する。
【0115】
このように調圧弁22の作動チェックを実行する前に、乗員によりブレーキペダル14が踏まれてペダルストロークSpが規定値Skとなったことを確認することで、調圧弁22の作動時のペダル反力を低減することができる。
【0116】
この調圧弁22の作動チェックにおいて、図9に示すように、ステップS281にて、第2リニア弁42を閉止すると共に、第2保持弁126,127を閉止する。ステップS282にて、第1リニア弁40の制御電流をIk+dIとして所定の開度まで開放する。ステップS283では、ストロークセンサ72が検出したブレーキペダル14のペダルストロークSpに基づいてブレーキ操作が終了したかどうかを判定する。ここで、ブレーキ操作が終了したと判定されたら、調圧弁22の作動チェックの途中であるが、ステップS296にて、第1リニア弁40を閉止し、第2リニア弁42を開放すると共に、第2保持弁126,127を開放して作動チェックを終了する。
【0117】
一方、ステップS283にて、ブレーキ操作が終了していないと判定されたら、ステップS284にて、第2圧力センサ74が検出した制動油圧Pfが予め設定された基準制動油圧Pfk+dPf以上に上昇したかどうかを判定する。ここで、制動油圧Pfが基準制動油圧Pfk+dPf以上に上昇したと判定されたら、ステップS285にて、このときのブレーキペダル14のペダルストロークSpが基準操作領域内(Sp+dSpmin<Sp<Sp+dSpmax)にあるかどうかを判定する。ここで、ペダルストロークSpが基準操作領域内にあると判定されたら、ステップS286で、カウンタを0としてから、ステップS287で、カウンタに1を加算する。
【0118】
続いて、ステップS288では、再び、ストロークセンサ72が検出したブレーキペダル14のペダルストロークSpに基づいてブレーキ操作が終了したかどうかを判定する。ここで、ブレーキ操作が終了したと判定されたら、調圧弁22の作動チェックの途中であるが、ステップS296にて、第1リニア弁40を閉止し、第2リニア弁42を開放すると共に、第2保持弁126,127を開放して作動チェックを終了する。
【0119】
一方、ステップS288にて、ブレーキ操作が終了していないと判定されたら、ステップS289にて、カウンタ値が待ち時間dtに到達したかどうかを判定し、待ち時間dtに到達していなければステップS287に戻り、待ち時間dtに到達したら、ステップS290にて、第1圧力センサ73が検出した制動油圧Prが予め設定された基準制動油圧Prk+dPrより上昇したかどうかを判定する。ここで、制動油圧Prが基準制動油圧Prk+dPrより上昇していないと判定されたら、ステップS291にて、カウンタ値が待ち時間dtに限界値maxtime1を加算した値より大きくなったかどうかを判定し、カウンタ値が待ち時間dtに限界値maxtime1を加算した値以下であれば、ステップS292にて、カウンタ値を加算する。
【0120】
そして、ステップS293では、再び、ストロークセンサ72が検出したブレーキペダル14のペダルストロークSpに基づいてブレーキ操作が終了したかどうかを判定する。ここで、ブレーキ操作が終了したと判定されたら、ステップS296にて、前述と同じ処理を実行して作動チェックを終了する。
【0121】
一方、ステップS293にて、ブレーキ操作が終了していないと判定されたら、ステップS294にて、第1圧力センサ73が検出した制動油圧Prが基準制動油圧Prk+dPrより上昇したかどうかを判定する。ここで、制動油圧Prが基準制動油圧Prk+dPrより上昇していないときは、ステップS291に戻り、制動油圧Prが基準制動油圧Prk+dPrより上昇していれば、ステップS295にて、作動チェック完了フラグを1としてから、ステップS296にて、前述と同じ処理を実行して作動チェックを終了する。
【0122】
一方、ステップS284にて、制動油圧Pfが基準制動油圧Pfk+dPf以上に上昇し、ステップS285にて、ペダルストロークSpが基準操作領域内にないと判定されたら、ステップS297に移行し、ここで、作動チェック完了フラグ及び作動チェックNGフラグを1としてから、ステップS296にて、前述と同じ処理を実行して作動チェックを終了する。また、ステップS290にて、制動油圧Prが既に基準制動油圧Prk+dPrより上昇したとき、ステップS291にて、カウンタ値が待ち時間dtに限界値maxtime1を加算した値より大きくなったときは、同様に、ステップS297にて、作動チェック完了フラグ及び作動チェックNGフラグを1としてから、ステップS296にて、前述と同じ処理を実行して作動チェックを終了する。
【0123】
このように制動油圧Pfが基準制動油圧Pfk+dPf以上に上昇すると共に、このときのブレーキペダル14のペダルストロークSpが基準操作領域内(Sp+dSpmin<Sp<Sp+dSpmax)にあり、且つ、待ち時間dtを経過した後に、制動油圧Prが基準制動油圧Prk+dPr以上に上昇したとき、調圧弁22が正常に作動したものと判定している。即ち、乗員によりブレーキペダル14が踏まれたとき、入力ピストン12が移動して調圧弁22の荷重伝達子27に接触して連通路21が閉止されると共に、荷重伝達子27がポペット弁25を移動して第2油圧供給配管43と第5圧力室R5とが連通し、アキュムレータ37からの油圧が調圧弁22を通して第1圧力室R1に作用し、制動油圧Pr,Pfが吐出される。従って、車両の発進前にこの状態を擬似的に形成し、制動油圧Pr,Pf及びペダルストロークSpを基準値と比較することで、調圧弁22、つまり、ポペット弁25の良好な作動を確認することができる。
【0124】
図7に戻り、ステップS28で、調圧弁22の作動チェックを実行し、ステップS29にて、作動チェック完了フラグが1になるまで待機し、作動チェック完了フラグが1になったら、ステップS30にて、作動チェックNGフラグが1であるかどうかを判定する。ここで、作動チェックNGフラグが0であって、作動チェックが適正に完了したら、調圧弁22の作動判定制御を終了する。一方、ステップS25で、初回チェックNGフラグが1であったり、ステップS30で、作動チェックNGフラグが1であるときには、ステップS31にて、警報ランプを点灯して乗員に知らせる。
【0125】
次に、上述した本実施例の車両用制動装置による調圧弁の作動判定制御について、図10のタイムチャートに基づいて具体的に説明する。
【0126】
車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御において、図10に示すように、時間t1にて、ドアの開閉操作を確認して乗員が車両を発進させる意思があることを確認すると、第2リニア弁42を閉止すると共に、第2保持弁126,127を閉止する。時間t2にて、第1リニア弁40を所定の開度まで開放すると、第1、第2制動油圧Pr,Pfが上昇すると共に、第1ホイールシリンダ圧のみが上昇する。なお、第2保持弁126,127が閉止しているため、第2ホイールシリンダ圧は上昇しない。そして、時間t3にて、各制動油圧Pf,Prが規定制動油圧Pfk,Prkまで上昇して一定となる。
【0127】
そして、時間t4にて、乗員がブレーキペダル14を踏み込むと、ペダルストロークSpが上昇すると共にペダル踏力が発生する。そして、時間t5にて、ペダルストロークSpが規定値Skとなったら、第1リニア弁40の制御電流をIk+dIとして開度を大きくすることで、ペダル踏力は一定となる。すると、制動油圧Pf,Prが順に上昇し、時間t6にて、制動油圧Pfが基準制動油圧Pfk+dPf以上に上昇すると共に、ペダルストロークSpが基準操作領域内(Sp+dSpmin<Sp<Sp+dSpmax)となる。その後、待ち時間dtが経過した時間t7にて、制動油圧Prが基準制動油圧Prk+dPrより上昇する。このとき、第1リニア弁40の制御電流をIk+dIとして開度を大きくしているため、実際のペダル踏力は、二点差線で示すペダル踏力より低減され、乗員に違和感を与えることがない。
【0128】
その後、時間t8にて、第1リニア弁40を閉止して第2リニア弁42を開放すると、制動油圧Pf,Prが順に下降し、時間t9にて、この制動油圧Pf,Prが0になったら、第2保持弁126,127を開放して作動チェックが終了する。
【0129】
このように実施例3の車両用制動装置にあっては、乗員がブレーキペダル14を踏み込んだときに、正常作動判定手段としてのECU71が、第1、第2リニア弁40,42により制御油圧を入力ピストン12に作用させ、入力ピストン12と共に加圧ピストン13を移動することで、機械式油圧供給手段としての調圧弁22を強制作動させ、このときの制動油圧を検出することで調圧弁22の正常作動を判定するようにしている。
【0130】
従って、電源の正常時には作動しない調圧弁22の作動判定を容易に行うことができ、安全性を向上することができる。
【0131】
また、本実施例の車両用制動装置では、ECU71は、車両の発進前に、第2リニア弁42を閉止し、第1リニア弁40を開放して所定の制御油圧を入力ピストン12に作用させ、乗員がブレーキペダル14を踏み込んだときに、制動油圧Pfが基準制動油圧Pfk+dPf以上で、且つ、ペダルストロークSpが基準操作領域内(Sp+dSpmin<Sp<Sp+dSpmax)にあるときに、調圧弁22の正常作動を判定するようにしている。
【0132】
従って、制動油圧PfとペダルストロークSpを用いて確実に調圧弁22の正常作動を判定することができ、このとき、ブレーキペダル14のペダル反力を低減することで、作動頻度を向上することができると共に、フィーリングを向上することができる。
【0133】
また、制動油圧Pfが基準制動油圧Pfk+dPf以上で、且つ、ペダルストロークSpが基準操作領域内(Sp+dSpmin<Sp<Sp+dSpmax)になってから、待ち時間dtが経過した後に、制動油圧Prが基準制動油圧Prk+dPrより上昇したときに、調圧弁22の正常作動を判定するようにしている。従って、前後の制動油圧Pf,Prの圧力上昇を検出することで、確実に調圧弁22の正常作動を判定することができる。
【0134】
そして、本実施例の車両用制動装置では、ECU71は、車両の発進前に、第2リニア弁42を閉止し、第1リニア弁40を開放して所定の制御油圧を入力ピストン12に作用させると共に、第3圧力室R3からABS59への制動油圧の吐出ラインの第2保持弁126,127を閉止すようにしている。従って、加圧ピストン13を大きくストロークさせることなく所定の制動油圧Pfを確保することができ、作動フィーリングを向上することができる。
【実施例4】
【0135】
図11は、本発明の実施例4に係る車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御を表すフローチャート、図12は、調圧弁の作動チェック制御のフローチャート、図13は、実施例3の車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御を表すタイムチャートである。なお、本実施例の車両用制動装置における全体構成は、上述した実施例3とほぼ同様であり、図6を用いて説明すると共に、この実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0136】
実施例4の車両用制動装置の全体構成は上述した実施例3(図6)とほぼ同様の構成となっており、詳細な説明は省略する。そして、本実施例の車両用制動装置では、正常作動判定手段としてのECU71が、乗員のブレーキペダル14の操作にかかわらず、第1、第2リニア弁40,42により制御油圧を入力ピストン12に自動的に作用させ、入力ピストン12を介して加圧ピストン13を移動することで、機械式油圧供給手段としての調圧弁22を強制作動させ、このときの制動油圧を検出することで調圧弁22の正常作動を判定するようにしている。
【0137】
以下、このように構成された本実施例の車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御について詳細に説明する。
【0138】
車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御において、図11に示すように、ステップS41にて、作動チェック完了フラグを0とし、ステップS42にて、ドアの開閉操作があったかどうかを判定する。そして、ステップS43にて、調圧弁22の作動チェックを実行する。
【0139】
この調圧弁22の作動チェックにおいて、図12に示すように、ステップS431にて、第2リニア弁42を閉止し、第1減圧弁110,111を開放すると共に、第2保持弁126,127を閉止する。即ち、調圧弁22の作動チェック時に、第1圧力室R1からの油圧の排出を阻止し、第1圧力室R1と第2圧力室R2との差圧を確保すると共に、第3圧力室R3からの制動油圧の吐出側を閉止して加圧ピストン13の作動ストロークを減少させる。そして、ステップS432で、カウンタを0としてから、ステップS433にて、第1リニア弁40の制御電流をImaxとして所定の開度まで開放する。
【0140】
ステップS434で、カウンタに1を加算し、ステップS435にて、カウンタ値が限界値maxtime2より大きくなったかどうかを判定し、カウンタ値が限界値maxtime2以下であれば、ステップS436にて、第2圧力センサ74が検出した制動油圧Pfが予め設定された基準制動油圧Pfth以上に上昇したかどうかを判定する。ここで、制動油圧Pfが基準制動油圧Pfth以上に上昇したと判定されたら、ステップS437にて、このときのブレーキペダル14のペダルストロークSpが基準操作領域内(Sp+dSpmin<Sp<Sp+dSpmax)にあるかどうかを判定する。ここで、ペダルストロークSpが基準操作領域内にあると判定されたら、ステップS438で、カウンタを0としてから、ステップS439で、カウンタに1を加算する。
【0141】
続いて、ステップS440にて、カウンタ値が待ち時間dtに到達したかどうかを判定し、待ち時間dtに到達していなければステップS439に戻り、待ち時間dtに到達したら、ステップS441にて、第1圧力センサ73が検出した制動油圧Prが予め設定された基準制動油圧Prthより上昇したかどうかを判定する。ここで、制動油圧Prが基準制動油圧Prthより上昇していないと判定されたら、ステップS442にて、カウンタ値が限界値maxtime3より大きくなったかどうかを判定し、カウンタ値が限界値maxtime3以下であれば、ステップS443にて、カウンタ値を加算する。
【0142】
そして、ステップS444にて、第1圧力センサ73が検出した制動油圧Prが基準制動油圧Prthより上昇したかどうかを判定する。ここで、制動油圧Prが基準制動油圧Prthより上昇していないときは、ステップS442に戻り、制動油圧Prが基準制動油圧Prthより上昇していれば、ステップS445にて、作動チェック完了フラグを1としてから、ステップS446にて、第1リニア弁40を閉止すると共に、第2リニア弁42を閉止し、第1減圧弁110,111を閉止すると共に、第1保持弁106,107を開放した後、ABSポンプモータ140を所定期間駆動し、第2保持弁126,127を閉止し、作動チェックを終了する。第1減圧弁110,111を閉止すると共に、第1保持弁106,107を開放した状態で、ABSポンプモータ140を駆動すると、ABSリザーバタンク105に排出された油圧をアキュムレータ104を通して第1油圧吐出配管61に戻すことができる。
【0143】
一方、ステップS435にて、カウンタ値が限界値maxtime2より大きくなったときは、時間オーバーとしてステップS447に移行し、ここで、作動チェック完了フラグ及び作動チェックNGフラグを1としてから、ステップS446にて、前述と同じ処理を実行して作動チェックを終了する。また、ステップS436にて、制動油圧Pfが基準制動油圧Pfth以上に上昇し、ステップS437にて、ペダルストロークSpが基準操作領域内にないと判定されたとき、ステップS441にて、制動油圧Prが既に基準制動油圧Prthより上昇したとき、ステップS442にて、カウンタ値が待限界値maxtime3より大きくなったときは、同様に、ステップS447にて、作動チェック完了フラグ及び作動チェックNGフラグを1としてから、ステップS446にて、前述と同じ処理を実行して作動チェックを終了する。
【0144】
このように制動油圧Pfが基準制動油圧Pfth以上に上昇すると共に、このときのブレーキペダル14のペダルストロークSpが基準操作領域内(Sp+dSpmin<Sp<Sp+dSpmax)にあり、且つ、待ち時間dtを経過した後に、制動油圧Prが基準制動油圧Prth以上に上昇したとき、調圧弁22が正常に作動したものと判定している。即ち、乗員により車両の運転操作を事前に推定したとき、各リニア弁40,42の開閉操作により入力ピストン12を移動し、調圧弁22の荷重伝達子27に接触して連通路21が閉止すると共に、荷重伝達子27がポペット弁25を移動して第2油圧供給配管43と第5圧力室R5とを連通し、アキュムレータ37からの油圧を調圧弁22を通して第1圧力室R1に作用し、制動油圧Pr,Pfを発生させる。従って、車両の発進前にこの状態を擬似的に自動形成し、制動油圧Pr,Pf及びペダルストロークSpを基準値と比較することで、調圧弁22、つまり、ポペット弁25の良好な作動を確認することができる。
【0145】
図11に戻り、ステップS43で、調圧弁22の作動チェックを実行し、ステップS44にて、作動チェック完了フラグが1になるまで待機し、作動チェック完了フラグが1になったら、ステップS45にて、作動チェックNGフラグが1であるかどうかを判定する。ここで、作動チェックNGフラグが0であって、作動チェックが適正に完了したら、調圧弁22の作動判定制御を終了する。一方、作動チェックNGフラグが1であるときには、ステップS46にて、警報ランプを点灯して乗員に知らせる。
【0146】
次に、上述した本実施例の車両用制動装置による調圧弁の作動判定制御について、図13のタイムチャートに基づいて具体的に説明する。
【0147】
車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御において、図13に示すように、時間t1にて、ドアの開閉操作を確認して乗員が車両を発進させる意思があることを確認すると、第2リニア弁42を閉止し、第1減圧弁110,111を開放すると共に、第2保持弁126,127を閉止する。時間t2にて、第1リニア弁40を所定の開度まで開放すると、入力ピストン12が移動することでペダルストロークSpが上昇する。そして、時間t4にて、入力ピストン12が加圧ピストン13に当接し、連通路21が閉止するため、第1、第2制動油圧Pr,Pfが順に上昇する。なお、第1減圧弁110,111が開放しているため、第1ホイールシリンダ圧は上昇せず、また、第2保持弁126,127が閉止しているため、第2ホイールシリンダ圧も上昇しない。
【0148】
そして、時間t5にて、制動油圧Pfが基準制動油圧Pfth以上に上昇すると共に、ペダルストロークSpが基準操作領域内(Sp+dSpmin<Sp<Sp+dSpmax)となる。その後、待ち時間dtが経過した時間t6にて、制動油圧Prが基準制動油圧Prthより上昇する。このとき、第1リニア弁40の制御電流を0として閉止するため、若干のペダル踏力が発生する。また、第1減圧弁110,111を閉止すると共に、第1保持弁106,107を開放し、ABSポンプモータ140を駆動する。
【0149】
そして、時間t7にて、第2リニア弁42を開放すると、制動油圧Pf,Pr及びペダルストロークSpが順に下降し、時間t8にて、この制動油圧Pf,Prが0になったら、第2保持弁126,127を開放し、時間t9にて、ABSポンプモータ140を停止して作動チェックが終了する。
【0150】
このように実施例4の車両用制動装置にあっては、乗員のブレーキペダル14の操作にかかわらず、正常作動判定手段としてのECU71が、第1、第2リニア弁40,42により制御油圧を入力ピストン12に作用させ、入力ピストン12を加圧ピストン13に接触させること連通路21を閉止し、入力ピストン12及び加圧ピストン13を移動することで、機械式油圧供給手段としての調圧弁22を強制作動させ、このときの制動油圧を検出することで調圧弁22の正常作動を判定するようにしている。
【0151】
従って、乗員がブレーキペダル14を操作しなくても、入力ピストン12を強制的に移動することで、電源の正常時には作動しない調圧弁22の作動判定を容易に行うことができ、安全性を向上することができる。
【0152】
また、本実施例の車両用制動装置では、車両の発進前に、第2リニア弁42を閉止し、第1リニア弁40を開放して所定の制御油圧を入力ピストン12に作用させると共に、第1圧力室R1から吐出される制動油圧をリザーバタンク105に排出し、第3圧力室R3からABS59への制動油圧の吐出ラインの第2保持弁126,127を閉止すようにしている。
【0153】
従って、調圧弁22の作動チェック時に、第1圧力室R1からの油圧の排出を阻止し、第1圧力室R1と第2圧力室R2との差圧を確保すると共に、第3圧力室R3からの制動油圧の吐出側を閉止して加圧ピストン13の作動ストロークを減少させることができ、加圧ピストン13を大きくストロークさせることなく所定の制動油圧Pfを確保することができ、作動フィーリングを向上することができると共に、ブレーキペダル14により乗員の足がはさまれることはなく、下肢障害を未然に防止することができる。
【0154】
また、本実施例では、調圧弁22の作動判定完了後に、第1減圧弁110,111を閉止すると共に、第1保持弁106,107を開放した後、ABSポンプモータ140を所定期間駆動するようにしている。従って、ABSリザーバタンク105に排出された油圧をアキュムレータ104を通して第1油圧吐出配管61に戻すことができる。
【0155】
なお、上述した各実施例では、第1圧力室R1を、第1油圧吐出配管61を介して後輪RR,RLのホイールシリンダ58RR,58RLに接続し、第3圧力室R3を、第2油圧吐出配管63を介して前輪FR,FLのホイールシリンダ58FR,58FLへ接続したが、第1圧力室R1を前輪FR,FLのホイールシリンダ58FR,58FLへ接続し、第3圧力室R3を後輪RR,RLのホイールシリンダ58RR,58RLに接続してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0156】
以上のように、本発明に係る車両用制動装置は、電源がダウンしたときでも適正に制動力を付与することで安全性の向上を図ったものであり、いずれの種類の制動装置に用いても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明の実施例1に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図2】実施例1の車両用制動装置におけるペダルストロークに対する目標出力油圧及び目標反力を表すグラフである。
【図3】実施例1の車両用制動装置における制動力制御を表すフローチャートである。
【図4】実施例1の車両用制動装置における制動力制御の静圧モード制御を表すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例2に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図6】本発明の実施例3に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図7】実施例3の車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御を表すフローチャートである。
【図8】調圧弁の初回チェック制御のフローチャートである。
【図9】調圧弁の作動チェック制御のフローチャートである。
【図10】実施例3の車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御を表すタイムチャートである。
【図11】本発明の実施例4に係る車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御を表すフローチャートである。
【図12】調圧弁の作動チェック制御のフローチャートである。
【図13】実施例4の車両用制動装置における調圧弁の作動判定制御を表すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0158】
11 シリンダ
12 入力ピストン
13 加圧ピストン
14 ブレーキペダル(操作部)
20 付勢スプリング
21 連通路(操作力吸収手段)
22,81 調圧弁(機械式油圧供給手段)
23,82 ハウジング
25,84 ポペット弁
26,85 圧縮スプリング(付勢手段)
27 荷重伝達子(可動子)
31 座部(縮径部)
32 油圧ポンプ
35 リザーバタンク
37 アキュムレータ
38 第1油圧供給配管
40 第1リニア弁(機械式油圧供給手段)
41 第1油圧排出配管
42 第2リニア弁(機械式油圧供給手段)
43 第2油圧供給配管
58RR,58RL,58FR,58FL ホイールシリンダ
57 第2油圧排出配管
59 ABS
61 第1油圧吐出配管
63 第2油圧吐出配管
71 電子制御ユニット、ECU(制御油圧設定手段)
72 ストロークセンサ
73 第1圧力センサ
74 第2圧力センサ
75 第3圧力センサ
86 圧力伝達子(可動子)
93 第3油圧供給配管
94 切換弁
99 第3油圧排出配管
R1 第1圧力室
R2 第2圧力室
R3 第3圧力室
R4 反力室
R5 第5圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に軸方向に沿って移動自在に支持された入力ピストンと、該入力ピストンに連結された操作部と、前記シリンダ内に前記入力ピストンと同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持されると共に前記入力ピストンにより押圧可能な加圧ピストンと、前記操作部から前記入力ピストンに入力される操作量に応じた制御油圧を設定する制御油圧設定手段と、油圧供給源からの油圧を前記制御油圧に調圧して前記入力ピストン及び加圧ピストンに作用させることで制動油圧を発生可能な電磁式油圧供給手段と、前記油圧供給源からの油圧を前記操作部から前記入力ピストンを介して前記加圧ピストンに伝達された操作量に応じた制御油圧に調圧して前記加圧ピストンに作用させることで制動油圧を発生可能な機械式油圧供給手段とを具えたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用制動装置において、前記操作部から前記入力ピストンに入力された操作力を吸収する操作力吸収手段が設けられたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用制動装置において、前記電磁式油圧供給手段は、前記制御油圧を前記入力ピストンの移動方向一方側の第1圧力室または他方の第2圧力室に供給可能であり、前記操作力吸収手段は、前記入力ピストンに設けられて前記第1圧力室と前記第2圧力室との間で圧油の給排が可能な連通路を有することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用制動装置において、連通路に縮径部が設けられたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項5】
請求項3に記載の車両用制動装置において、前記電磁式油圧供給手段は、前記油圧供給源と前記第1圧力室または前記第2圧力室との間に接続された第1油圧供給ラインと、該第1油圧供給ラインに設けられて非通電時に閉止する第1電磁弁と、前記第1圧力室または前記第2圧力室とリザーバとの間に接続された第1油圧排出ラインと、該第1油圧排出ラインに設けられて非通電時に開放する第2電磁弁とを有し、前記第1電磁弁及び前記第2電磁弁の開度を調節することで前記油圧供給源からの油圧を前記制御油圧に調圧することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用制動装置において、前記機械式油圧供給手段は、前記操作部の操作により前記入力ピストンが前記加圧ピストンを押圧することで開閉する調圧弁と、前記油圧供給源と前記調圧弁との間に接続された第2油圧供給ラインと、前記調圧弁と前記第1圧力室とを接続する第3油圧供給ラインとを有し、前記操作部の操作により前記調圧弁の開度を調節することで前記油圧供給源からの油圧を前記制御油圧に調圧することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用制動装置において、前記操作部の操作により前記入力ピストンが前記加圧ピストンに接近したときに前記連通路が閉止され、前記機械式油圧供給手段は、前記調圧弁により調圧された制御油圧を前記加圧ピストンに作用させて制動油圧を発生可能である一方、前記操作部の操作により前記入力ピストンが前記加圧ピストンから離間したときに前記連通路が開放され、前記制動油圧を減圧可能であることを特徴とする車両用制動装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の車両用制動装置において、前記調圧弁は、前記第2油圧供給ラインと前記第3油圧供給ラインとを開閉自在なポペット弁と、該ポペット弁を閉止方向に付勢する付勢部材と、前記操作部の操作により移動して前記ポペット弁を開放する可動子とを有することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一つに記載の車両用制動装置において、前記調圧弁は、前記加圧ピストン内に収容されると共に、前記第3油圧供給ラインが前記シリンダ内に設けられたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用制動装置において、前記入力ピストンが移動して前記可動子に接触したときに前記連通路が閉止され、該可動子が前記ポペット弁を移動して前記第2油圧供給ラインと前記第3油圧供給ラインとが連通することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項11】
請求項6から8のいずれか一つに記載の車両用制動装置において、前記調圧弁は、前記シリンダの先端部に設けられると共に、前記第3油圧供給ラインが前記シリンダ外に設けられ、前記入力ピストンが移動して前記加圧ピストンに接触したときに前記連通路が閉止され、該加圧ピストンが移動することで油圧により前記可動子が前記ポペット弁を移動して前記第2油圧供給ラインと前記第3油圧供給ラインとが連通することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車両用制動装置において、前記第3油圧供給ラインに開閉弁が設けられる一方、前記調圧弁と前記リザーバとの間に第2油圧排出ラインが接続され、前記ポペット弁の移動位置により開閉可能であり、前記電磁式油圧供給手段の作動中は、前記第3油圧供給ラインを閉止する一方、前記第2油圧排出ラインを開放し、前記機械式油圧供給手段の作動中は、前記第3油圧供給ラインを開放する一方、前記第2油圧排出ラインを閉止することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一つに記載の車両用制動装置において、前記電磁式油圧供給手段により前記制御油圧を前記加圧ピストンに作用させて前記制動油圧を発生させるとき、前記機械式油圧供給手段は、前記制動油圧を発生不能であることを特徴とする車両用制動装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一つに記載の車両用制動装置において、前記入力ピストンの第1受圧面積は、前記加圧ピストンの第2受圧面積よりも小さく設定されたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項15】
請求項1に記載の車両用制動装置において、前記電磁式油圧供給手段により所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させ、該入力ピストンを介して前記加圧ピストンを移動して前記機械式油圧供給手段を強制作動させ、このときの前記制動油圧を検出することで前記機械式油圧供給手段の正常作動を判定する正常作動判定手段を設けたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項16】
請求項7に記載の車両用制動装置において、前記電磁式油圧供給手段により所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させ、該入力ピストンを前記加圧ピストンに接近して前記連通路を閉止すると共に、前記入力ピストンにより前記加圧ピストンを移動して前記機械式油圧供給手段を強制作動させ、このときの前記制動油圧を検出することで、前記調圧弁の正常作動を判定する正常作動判定手段を設けたことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項17】
請求項16に記載の車両用制動装置において、前記電磁式油圧供給手段及び前記機械式油圧供給手段は、前記制御油圧を前記加圧ピストンに作用させることで、前記第1圧力室と前記加圧ピストンの第3圧力室から前記第1制動油圧及び第2制動油圧を吐出可能であり、前記正常作動判定手段は、車両の発進前に、前記第2電磁弁を閉止し、前記第1電磁弁を開放して所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させ、乗員が前記操作部を操作したときの前記第2制動油圧が予め設定された所定の第2基準制動油圧以上で、且つ、前記操作部の操作量が予め設定された所定の基準操作領域にあるときに、前記調圧弁の正常作動を判定することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項18】
請求項17に記載の車両用制動装置において、前記正常作動判定手段は、前記第2制動油圧が第2基準制動油圧以上で、且つ、前記操作部の操作量が基準操作領域になってから、予め設定された所定時間が経過した後に、前記第1制動油圧が予め設定された所定の第1基準制動油圧以上にあるときに、前記調圧弁の正常作動を判定することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項19】
請求項17または18に記載の車両用制動装置において、前記正常作動判定手段は、車両の発進前に、前記第2電磁弁を閉止し、前記第1電磁弁を開放して所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させると共に、前記第3圧力室からの前記第2制動油圧の吐出ラインを閉止することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか一つに記載の車両用制動装置において、車両の発進が推定されたときに、前記正常作動判定手段は、前記第2電磁弁を閉止し、前記第1電磁弁を開放して所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させることを特徴とする車両用制動装置。
【請求項21】
請求項16に記載の車両用制動装置において、前記電磁式油圧供給手段及び前記機械式油圧供給手段は、前記制御油圧を前記加圧ピストンに作用させることで、前記第1圧力室と前記加圧ピストンの第3圧力室から前記第1制動油圧及び第2制動油圧を吐出可能であり、前記正常作動判定手段は、車両の発進が推定されたときに、前記第2電磁弁を閉止し、前記第1電磁弁を開放して所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させたときの前記第2制動油圧が予め設定された所定の第2基準制動油圧以上で、且つ、前記操作部の操作量が予め設定された所定の基準操作領域にあるときに、前記調圧弁の正常作動を判定することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項22】
請求項21に記載の車両用制動装置において、前記正常作動判定手段は、車両の発進が推定されたときに、前記第2制動油圧が第2基準制動油圧以上で、且つ、前記操作部の操作量が基準操作領域になってから、予め設定された所定時間が経過した後に、前記第1制動油圧が予め設定された所定の第1基準制動油圧以上にあるときに、前記調圧弁の正常作動を判定することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項23】
請求項21または22に記載の車両用制動装置において、前記正常作動判定手段は、車両の発進が推定されたときに、前記第2電磁弁を閉止し、前記第1電磁弁を開放して所定の制御油圧を前記入力ピストンに作用させると共に、前記第3圧力室からの前記第2制動油圧の吐出ラインを閉止し、前記第1圧力室からの前記第1制動油圧の吐出ラインを減圧することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項24】
請求項21に記載の車両用制動装置において、前記正常作動判定手段により前記調圧弁の正常作動を判定終了後、前記第1圧力室からの前記第1制動油圧の吐出ラインの減圧を停止すると共に、減圧した第1制動油圧を前記第1制動油圧の吐出ラインに戻すことを特徴とする車両用制動装置。
【請求項25】
請求項5に記載の車両用制動装置において、前記第2油圧供給ラインの供給油圧に異常が発生したときには、前記油圧供給源を構成する油圧モータを停止すると共に、前記第1電磁弁及び前記第2電磁弁を開放して静圧モードに設定することを特徴とする車両用制動装置。
【請求項26】
請求項25に記載の車両用制動装置において、前記静圧モードが設定されたとき、乗員により前記操作部が操作されたときには、前記油圧モータを駆動すると共に、前記第2電磁弁の開度を調節することを特徴とする車両用制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−62614(P2007−62614A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252669(P2005−252669)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】