説明

車両用情報提供装置

【課題】ドライバに対して適切な情報提供をすることができる車両用情報提供装置を提供する。
【解決手段】ドライバの運転行動によって変化する注意対象領域や、その注意対象領域の視認完了時間等に対応した視認完了判定条件に従って、ドライバに対する警告が必要か否かを判断し、警告が必要である場合には注意対象領域に対応付けた警告ランクに応じた警告を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用情報提供装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中のドライバに各種情報を提供する技術が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。このうち、特許文献1に記載の技術では、交差点の幅員や種別、接続関係等から、その交差点が運転ミスを犯しやすい要注意交差点であるか否かを評価し、要注意と評価された交差点の手前では、経路案内音声とともに警報案内音声を出力する。
【0003】
また、特許文献2に記載の技術では、自車両の車両状態量及び操作量として検出したセンサ群及び操作スイッチ群の状態等に基づいて、ドライバに対する情報提供が必要か否かを判断し、この判断で必要と判断したときには情報を提供する。この情報提供の動作においては、注視点検出センサから入手した注視点を表すデータ(注視頻度、注視範囲、注視距離等)に基づいてドライバの運転技量レベルを判定し、この運転技量レベルに応じて情報提供を実行するタイミングを補正している。
【特許文献1】特開平9−190596号公報
【特許文献2】特開2001−163082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術は、警報案内音声を出力した後にドライバがその警報を受けて注意すべき対象を視認したかどうかの判断をしていない。従って、ドライバが注意すべき対象を視認したにもかかわらず警報案内音声を出力し続けることが想定されるため、ドライバにとって煩わしい音声案内となる。
【0005】
また、交差点等におけるドライバの運転行動(直進、右折、左折等)によって、注意すべき視線方向やその視線方向への視認完了時間等が変わるため、その変化に応じた判定条件の基でドライバに対する情報提供が必要か否かを判断することが、ドライバに対して適切な情報を提供することにつながると考えられる。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、一定の条件の基でドライバに対する情報提供が必要か否かを判断しているため、情報提供がドライバに対して適切なものにならない。
【0006】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたもので、ドライバに対して適切な情報提供をすることができる車両用情報提供装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の車両用情報提供装置は、
自車が進行しようとする道路の特定の地点における、自車のドライバの運転行動を推定するドライバ行動推定手段と、
道路の特定の地点において、自車のドライバがドライバ行動推定手段の推定した運転行動をとる場合に注意すべき視線方向と、当該注視すべき視線方向に対する標準視認完了時間及び優先度と、を対応付けた標準データを格納する標準データ格納手段と、
道路の特定の地点において、自車のドライバが過去に運転行動をとったときの注意すべき視線方向に対する視認完了時間及び視認忘れ回数を示す履歴データを蓄積する履歴データ蓄積手段と、
標準データ格納手段の格納する標準データと、履歴データ蓄積手段の蓄積する履歴データの少なくとも一方のデータから、自車のドライバが注意すべき視線方向に存在する注意対象物を視認したと判定するための視認完了判定条件を設定する判定条件設定手段と、
道路の特定の地点における自車のドライバの視線方向を検出する視線検出手段と、
視線検出手段の検出結果から、視認完了判定条件を満たしたかどうかを判定する視認完了判定手段と、
視認完了判定手段が視認完了判定条件を満たしていないと判定した場合、視認していない注意対象物が存在する視線方向に対する優先度に応じた警告を発生する警告発生手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、ドライバの運転行動によって変化する、注意すべき視線方向やその視線方向の視認完了時間等に対応した視認完了判定条件に従ってドライバに対する情報提供としての警告が必要か否かを判断できるため、ドライバに対して適切な情報提供をすることができるのである。また、ドライバが過去に運転行動をとったときの履歴データがある場合には、この履歴データから視認完了判定条件を設定することができるため、個々のドライバの視認行動の特性を視認完了判定条件に加味することができるのである。
【0009】
請求項2に記載の車両用情報提供装置によれば、
警告発生手段は、
優先度が所定レベル以上の高い優先度である場合、自車のドライバの視線方向を強制的に注意対象物の存在する方向へ移動させるための警告を発生し、
優先度が所定レベルに満たない低い優先度である場合、自車のドライバの視線方向を注意対象物の存在する方向へ導くための警告を発生することを特徴とする。
【0010】
これにより、優先度が高い場合にはドライバの視線方向を強制的に移動させるための警告が発生されるようになるため、優先度の高い視線方向に存在する注意対象物に対するドライバの視認忘れを防ぐことができるようになる。また、優先度が低い場合にはドライバの視線方向を導くための警告が発生されるようになるため、優先度の低い視線方向に存在する注意対象物に対してドライバの視線を導くことが可能となる。
【0011】
請求項3に記載のように、履歴データの視認忘れ回数が多い注意すべき視認方向ほど、当該注意すべき視認方向に対する標準データの優先度が高くなるように変更する優先度変更手段を備えることが好ましい。視認忘れ回数が多い注意すべき視認方向ほど、警告発生における優先度を高くすることで、視認忘れを防ぐ効果を高めることができるからである。
【0012】
請求項4に記載の車両用情報提供装置は、
自車の進行しようとする目的地までの経路を探索する経路探索手段と、
経路探索手段の探索した経路における案内地点を設定する経路案内地点設定手段と、を備え、
ドライバ行動推定手段は、道路の特定の地点として、経路案内地点設定手段の設定した案内地点とすることを特徴とする。
【0013】
これにより、ドライバ行動推定手段は、目的地までの経路の案内地点における運転行動を推定することができる。なお、案内地点は、自車が一時停止をする必要がある分岐地点、合流地点、交差点を含むことが望ましい。一時停止をする必要がある案内地点は、他車や歩行者等と衝突する可能性が高いからである。
【0014】
請求項5に記載のように、
経路案内地点設定手段の設定した案内地点における案内情報を設定する経路案内情報設定手段を備え、
ドライバ行動推定手段は、経路案内情報設定手段の設定した案内情報から、自車のドライバの運転行動を推定するとよい。
【0015】
案内情報から案内地点におけるドライバの運転行動(直進、右折、左折等)が把握できるからである。なお、ターンシグナル操作やステアリング操作等からドライバの運転行動を推定するようにしてもよい。さらに、自車の走行車線から推定するようにしてもよい。
【0016】
請求項6に記載のように、警告発生手段は、警告を発生した後に自車のドライバが視認していなかった注意対象物を視認した場合、警報の発生を停止するとよい。このように、警告発生前に視認していなかった注意対象物を警告の発生によってドライバが視認した場合には警報の発生を停止することで、ドライバが注意対象物を視認したにもかかわらず警告を出力し続けることがなくなり、煩わしさを解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1に示す本実施形態の車両用情報提供装置は車両に搭載されるもので、カメラ1、視線検出装置2、個人認証装置3、ナビゲーション装置4、表示装置6、音声出力装置7、及びこれらと接続される制御装置5によって構成される。
【0018】
カメラ1は、車両のドライバの顔画像を一定時間間隔で撮影し、その撮影した顔画像の情報を視線検出装置に逐次出力する。視線検出装置2は、カメラ1からの顔画像の情報を入力し、この情報を用いて車両のドライバの視線方向(言い換えれば、ドライバの中心視野の方向)を一定時間間隔で検出する。この視線方向は、自車のドライバの視点を原点とし、自車の前後方向をX軸とし、自車の車幅方向をY軸とするX−Y座標系で表すとする。視線検出装置2は、検出した視線方向を表す視線情報を制御装置5に逐次出力する。
【0019】
個人認証装置3は、車両のドライバを特定する装置であり、ドライバ毎に予め設定したパスワードを入力することによってドライバの認証をする方法や、バイオメトリクス(指紋、声紋、瞳の虹彩等による生体認証)による方法を採用することができる。個人認証装置3は、ドライバの認証をすると、そのドライバの個人情報(氏名、年齢、性別等)を制御装置5に出力する。
【0020】
ナビゲーション装置4は、何れも図示しない、位置検出器、地図データベース、操作スイッチ群、これらに接続された制御回路から構成されるもので、上記位置検出器によって検出された車両の現在位置(緯経度の座標)を示す自車位置マークを道路地図に重ねて表示する現在位置表示機能や、出発地から目的地までの最適な経路を自動的に探索して案内経路を形成し表示する、いわゆる経路案内機能を備えている。
【0021】
この経路案内機能では、目的地が指定されると地図データベースを用いて案内経路を計算し、その案内経路を車両の進行に応じて表示装置6へ表示させるとともに、分岐地点、合流地点や右左折すべき交差点における地図の拡大表示や音声案内を行う。ここで、地図の拡大表示や音声案内を行う地点は、探索した案内経路における案内地点として設定される。さらに、この案内地点における案内情報(右折、左折、直進等)が設定される。
【0022】
この案内地点は、車両が一時停止をする必要がある分岐地点、合流地点、交差点を含むことが望ましい。一時停止をする必要がある案内地点は、他車や歩行者等と衝突する可能性が高いからである。
【0023】
ナビゲーション装置4は、車両の現在位置(緯経度の座標)を示す自車位置情報、案内経路に含まれる分岐地点、合流地点、交差点の形状に関する交差点情報、及び上記案内情報からなるナビ情報を制御装置5に出力する。
【0024】
表示装置6はカラー表示装置であり、道路地図を表示したり、後述する警告表示をしたりするものである。音声出力装置7は、図示しないスピーカから案内経路の案内音声や警告音声等を出力する。
【0025】
図1に示すように、制御装置5は、視認判定部51、履歴データ蓄積部52、ドライバ行動推定部53、標準データ格納部54、判定条件設定部55、及び警告装置制御部56の各種の機能部から構成される。
【0026】
ドライバ行動推定部53は、ナビゲーション装置4からのナビ情報に含まれる案内情報から、案内経路の各案内地点におけるドライバの運転行動(右折、左折、直進)を推定する。これにより、目的地までの案内経路の案内地点における運転行動を推定することができる。なお、ターンシグナル操作やステアリング操作等からドライバの運転行動を推定するようにしてもよい。さらに、自車の走行車線から推定するようにしてもよい。ドライバ行動推定部53の推定した運転行動の情報は、判定条件設定部55に出力される。
【0027】
標準データ格納部54は、道路の分岐地点、合流地点、交差点等において、ドライバが右折、左折、直進の運転行動をとる場合に注意すべき視線方向と、その注意すべき視線方向に対する標準視認完了時間及び優先度とを対応付けた標準データを格納する。
【0028】
図2は、交差点における注意すべき視線方向(以下、注意対象領域と記す)S1〜S4を示している。この注意対象領域S1〜S4は、車両のドライバが各注意対象領域に存在する可能性がある注意対象を確認(視認)したかを判定する領域を示している。なお、図2は交差点の例を示しており、分岐地点や合流地点における注意対象領域は、交差点における注意対象領域とは別に設定される。
【0029】
図3は、交差点においてドライバが右折、左折、直進の運転行動をとる場合の、注意対象領域S1〜S4に存在する可能性がある注意対象物に対する標準的な視認完了時間(標準視認完了時間)と、各注意対象領域を視認していない場合に発生させる警告の優先度を示す警告ランクを対応付けた標準データを示している。
【0030】
標準視認完了時間は、一般的なドライバの視認特性に基づいて設定される。すなわち、一般に、人が物体を視認する場合には数百ミリ秒程度、視線を物体の存在する方向に固定する傾向がある。従って、この数百ミリ秒程度の時間を注意物体物1つ当たりの視認完了時間とし、この時間を基準にして、注意対象領域S1〜S4を全て視認し(確認完了)した時間(又は、自車が停止して再発進するまでの時間)を標準視認完了時間として設定する。
【0031】
また、警告ランクは、基本的にはドライバが注意をはらう可能性が高い注意対象領域(あるいは、その注意対象領域に存在する可能性がある注意対象物)については低い警告ランク(B〜Cレベル)を設定し、注意をはらう可能性が低い注意対象領域(あるいは、その注意対象領域に存在する可能性がある注意対象物)については高い警告ランク(A〜Bレベル)を設定する。図3における警告ランクの設定例を具体的に説明すれば、以下の通りである。
【0032】
(左折時)
注意対象領域S1は、注意対象領域S2を視認する際に確認できると考えられるが、自車近傍への注意がはらわれない可能性があることを想定してBレベルに設定。注意対象領域S2は、自車とは走行車線が異なり、走行車両と接触する可能性が低いと考えられることからCレベルに設定。
【0033】
注意対象領域S3は、右折してくる場合に相手の認知ミスによる衝突が想定され、かつ、自車が優先でありドライバが油断しやすいことからBレベルに設定。注意対象領域S4は、注意対象物としてドライバが注意をはらう可能性が高いと考えられることからCレベルに設定。
【0034】
なお、左折時における二輪車の巻き込みを考慮して、自車後方へ注意対象領域を広げてもよい。
【0035】
(右折時)
ドライバの注意が右側に偏る可能性があることから、注意対象領域S1をAレベル、注意対象領域S2をBレベル、注意対象領域S3、S4をCレベルに設定。
【0036】
(直進時)
ドライバの緊張度が高く、広い範囲に渡って注意をはらっていると考えられる。しかし、自車近傍の注意が散漫になる可能性が高いことが想定されることから、注意対象領域S1、及びS4をBレベルに設定。注意対象領域S3は、右折してくる場合に相手の認知ミスによる衝突が想定され,かつ自車が優先でありドライバが油断しやすいことからBレベルに設定。注意対象領域S2は、左側からの走行車両についてはドライバが注意をはらう可能性が高いと考えられることからCレベルに設定。
【0037】
履歴データ蓄積部52は、道路の分岐地点、合流地点、交差点において、各ドライバが過去に運転行動をとったときの各注意対象領域に存在する注意対象物に対する視認忘れ回数と視認したときの視認完了時間を示す履歴データを蓄積するものである。
【0038】
図4に、ドライバ(Pさん、Qさん、Rさん)毎の履歴データを示す。同図に示す視認完了時間は、左折時、右折時、直進時の運転行動をドライバがとったときの視認完了時間(最短値や平均値等)である。この履歴データは、道路の分岐地点、合流地点、交差点毎の履歴をドライバ毎に蓄積することが望ましい。
【0039】
また、この履歴データを更新する際、初めて通過する分岐地点、合流地点、又は交差点の場合には、普段の運転行動よりも注意をはらう可能性が高いと考えられることから、次回以降に再び通過する際に更新するとよい。また、朝、昼、夜といった時間帯によって、ドライバの注意力が異なると考えられるため、時間帯別の履歴データを蓄積するようにしてもよい。
【0040】
履歴データ蓄積部52は、個人認証装置3からの個人情報を入力してドライバを特定し、その特定したドライバの履歴データを抽出して、判定条件設定部55に出力する。また、履歴データ蓄積部52は、ドライバ別(個人別)の視認完了時間の情報を視認判定部51に出力するとともに、最新の視認完了時間を入力して履歴データを更新し蓄積する。
【0041】
判定条件設定部55は、標準データと履歴データの少なくとも一方のデータから、自車のドライバが注意対象領域に存在する注意対象物を視認したと判定するための視認完了判定条件を設定し、その視認完了判定条件を視認判定部51に出力する。具体的に説明すると、個人認証装置3によって認証されたドライバに対応する履歴データが履歴データ蓄積部52に蓄積されていない場合には、標準データ格納部54から入力した標準データにおける左折時、右折時、直進時毎の標準視認完了時間を視認完了条件として設定するとともに、注意対象領域S1〜S4毎の警告ランクに応じた警告を発生させるように設定する。
【0042】
一方、個人認証装置3によって認証されたドライバに対応する履歴データが履歴データ蓄積部52に蓄積されている場合には、標準データと履歴データとを比較して、履歴データの傾向を優先した警告ランク及び視認完了時間を視認完了条件として設定する。
【0043】
例えば、標準データにおける注意対象領域S2の左折時の警告ランクが低いレベル(Cレベル)であるものの、履歴データにおける注意対象領域S2に対応する注意対象物に対する視認忘れ回数が多い場合には、警告ランクを高いレベル(A〜Bレベル)に設定する。
【0044】
また、標準データにおける注意対象領域S1の右折時の警告ランクが高いレベル(Aレベル)であるものの、履歴データにおける注意対象領域S1に対応する注意対象物に対する視認忘れ回数が少ない場合には、警告ランクを低いレベル(B〜Cレベル)に設定する。このように視認忘れ回数が多い注意対象領域ほど、警告発生における優先度を高くすることで、視認忘れを防ぐ効果を高めることができる。
【0045】
視認判定部51は、自車が案内経路の案内地点に差し掛かった場合、ドライバの視認行動が、その案内地点に対して判定条件設定部55にて設定した視認完了判定条件を満たすかどうかを判定する。そして、視認完了判定条件を満たしていないと判定した場合には、視認していない注意対象物が存在する注意対象領域に対応する警告ランクに応じた警告を発生するよう、警告装置制御部56に警告情報を出力する。
【0046】
また、視認判定部51は、視認完了判定条件を満たした場合には、その視認履歴の情報を判定条件設定部55に出力する。判定条件設定部55は、視認履歴の情報を履歴データ蓄積部52に出力し、履歴データ蓄積部52は、入力した視認履歴の情報を用いて履歴データを更新する。
【0047】
また、視認判定部51は、ドライバの運転操作信号(アクセルペダル操作、ブレーキペダル操作、ステアリング操作、ターンシグナル操作等の各種操作信号)を入力して、ドライバが減速操作を開始したか、減速して停車した後、再度発進させる発進操作を開始したかどうかについても判定する。
【0048】
警告装置制御部56は、視認判定部51から警告情報を入力し、警告ランクに応じた警告を表示装置6や音声出力装置7から発生させる制御を行う。例えば、警告ランクが所定レベル以上の高い警告ランク(Aレベル)である場合には、自車のドライバの視線方向を強制的に注意対象物の存在する方向へ移動させるための警告を発生したり、警告ランクが所定レベルに満たない低い警告ランク(B〜Cレベル)である場合には、自車のドライバの視線方向を注意対象物の存在する方向へ導くための警告を発生したりする。
【0049】
これにより、警告ランクが高い場合にはドライバの視線方向を強制的に移動させるための警告が発生されるようになるため、警告ランクの高い注意対象領域に存在する注意対象物に対するドライバの視認忘れを防ぐことができるようになる。また、警告ランクが低い場合にはドライバの視線方向を導くための警告が発生されるようになるため、警告ランクの低い注意対象領域に存在する注意対象物に対してドライバの視線を導くことが可能となる。
【0050】
警告装置制御部56は、例えば、表示装置6による視覚情報(ウインドシールドディスプレイによる視覚領域表示等)と、音声出力装置7による聴覚情報(人間の音源判断のメカニズムを利用し、音量の差、音の伝播の時間差や位相差、周波数特性等を制御することによって、あたかも視線誘導させたい領域から音が出ているように感じさせる等)による方法を採用することができる。
【0051】
次に、車両用情報提供装置による動作について、図5〜図7に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以下の説明では、ナビゲーション装置4において経路案内機能が実行されており、さらに、信号機の設置されていない交差点に差し掛かった場合の動作を例に説明するものである。
【0052】
先ず、図5に示すステップS10ではナビ情報を取得し、ステップS20では、自車が信号のない交差点に差し掛かったかどうかを判定する。このステップS20にて肯定判断した場合にはステップS30へ処理を進め、否定判断した場合にはステップS10へ処理を移行し、上述した処理を繰り返す。
【0053】
ステップS30では、自車が差し掛かった信号のない交差点に対する案内情報が有るかどうかを判定する。このステップS30にて肯定判断した場合にはステップS40へ処理を進め、否定判断した場合にはステップS10へ処理を移行し、上述した処理を繰り返す。
【0054】
ステップS40では、ドライバが減速操作を開始したことによって、自車が減速し始めたかどうかを判断する。このステップS40にて肯定判断した場合にはステップS50へ処理を進め、否定判断した場合にはステップS60へ処理を進める。なお、ステップS40の処理は、自車から信号のない交差点までの距離が所定距離以下であるかどうかを判定して、所定距離以下である場合にステップS50へ処理を進め、所定距離を超える場合にステップS60へ処理を進めるようにしてもよい。
【0055】
ステップS60では、自車が信号のない交差点を通り過ぎたかどうかを判定する。このステップS60にて肯定判断した場合にはステップS10へ処理を移行し、上述した処理を繰り返す。一方、否定判断した場合にはステップS40へ処理を移行する。
【0056】
ステップS50では、自車の差し掛かった交差点における注意対象領域S1〜S4毎の視認時間の計測を開始する。ステップS70では、信号のない交差点にて右折するのかどうかを判定する。このステップS70にて肯定判定した場合には、ステップS80にて、右折時の標準データを視認完了判定条件に設定する。
【0057】
ステップS70にて否定判定した場合には、ステップS90にて信号のない交差点にて左折するのかどうかを判定する。このステップS90にて肯定判定した場合には、ステップS100にて、左折時の標準データを視認完了判定条件に設定し、否定判定した場合には、ステップS110にて、直進時の標準データを視認完了判定条件に設定する。
【0058】
図6に示すステップS120ではドライバの個人情報の読み出しを試みる。ステップS130では、ドライバの個人情報が有るかどうかを判断する。このステップS130にて個人情報があると判断した場合にはステップS140へ処理を進め、個人情報がないと判断した場合には、ステップS180へ処理を移行する。
【0059】
ステップS140では、自車が差し掛かった信号のない交差点に対応する履歴データが有るかどうかを判断する。このステップS140にて肯定判断した場合にはステップS150へ処理を進め、否定判断した場合にはステップS180へ処理を移行する。
【0060】
ステップS150では、ドライバの履歴データと標準データとを比較して、データの傾向を照合する。ステップS160では、データの傾向が一致するかどうか判断し、傾向が一致する場合にはステップS180へ処理を進める。一方、データの傾向が一致しない場合には、ステップS170にて、履歴データの傾向を優先した警告ランク及び視認完了時間を視認完了条件として設定する。
【0061】
ステップS180では視線検出装置2から視線情報を取得し、ステップS190aでは、注意対象領域S1〜S4を個別に確認したかどうかを判断する。このステップS190aにて肯定判断した場合にはステップS190bに処理を進め、否定判断した場合にはステップS220へ処理を移行する。ステップS190bでは、注意対象領域S1〜S4を全て確認したかどうかを判断する。このステップS190bにて肯定判断した場合にはステップS200に処理を進め、否定判断した場合にはステップS220へ処理を移行する。
【0062】
ステップS200では、視認時間の計測を終了して、信号のない交差点におけるドライバの視認行動結果である視認履歴を履歴データとして保存(更新)する。ステップS210では、視認履歴に従って、履歴データの視認忘れ回数を減算する。
【0063】
ステップS220では、ドライバが発進操作を開始したことによって、自車が再び前進し始めたかどうかを判断する。このステップS220にて肯定判断した場合には図7に示すステップS230へ処理を進め、否定判断した場合にはステップS190aへ処理を移行して、上述した処理を繰り返す。
【0064】
図7に示すステップS230では、ドライバが視認しなかった注意対象領域に対応付けた警告ランクに応じた警告を出力する。ステップS240では、視認履歴に従って、履歴データの視認忘れ回数を加減算する。つまり、ドライバが視認した注意対象領域については視認忘れ回数を減算し、ドライバが視認していない注意対象領域については視認忘れ回数を加算する。
【0065】
ステップS250では、ドライバが警告発生を受けて、視認していなかった注意対象を視認(再確認)したかどうかを判断する。このステップS250にて肯定判断した場合にはステップS270へ処理を進め、ステップS270にて、警告出力を停止して本処理を終了する。このように、警告出力前に視認していなかった注意対象物を警告出力によってドライバが視認した場合には警報出力を停止することで、ドライバが注意対象物を視認したにもかかわらず警告を出力し続けることがなくなる。
【0066】
一方、ステップS250にて否定判断した場合にはステップS260へ処理を進める。ドライバが再確認するまで警告を出力し続ける。ステップS260では、自車が差し掛かった信号のない交差点を通過したかどうかを判断する。このステップS260にて肯定判断した場合には、ステップS270にて、警告出力を停止して本処理を終了する。一方、ステップS260にて否定判断した場合には、ステップS250へ処理を移行し、上述した処理を繰り返し実行する。これにより、ドライバが再確認するまで警告が出力し続けられるようになる。
【0067】
このように、本実施形態の車両用情報提供装置は、ドライバの運転行動によって変化する、注意対象領域やその注意対象領域の視認完了時間等に対応した視認完了判定条件に従ってドライバに対する警告が必要か否かを判断するため、ドライバに対して適切な情報提供をすることができる。また、ドライバが過去に運転行動をとったときの履歴データがある場合には、この履歴データから視認完了判定条件を設定することができるため、個々のドライバの視認行動の特性を視認完了判定条件に加味することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】車両用情報提供装置の全体構成図である。
【図2】交差点における注意対象領域S1〜S4の設定例を示す図である。
【図3】標準データの設定例を示す図である。
【図4】履歴データの構成例を示す図である。
【図5】車両用情報提供装置による動作の前半部分を説明するためのフローチャートである。
【図6】車両用情報提供装置による動作の後半部分を説明するためのフローチャートである。
【図7】車両用情報提供装置による警告出力開始から警告出力停止の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 カメラ
2 視線検出装置
3 個人認証装置
4 ナビゲーション装置
5 制御装置
6 表示装置
7 音声出力装置
51 視認判定部
52 履歴データ蓄積部
53 ドライバ行動推定部
54 標準データ格納部
55 判定条件設定部
56 警告装置制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車が進行しようとする道路の特定の地点における、前記自車のドライバの運転行動を推定するドライバ行動推定手段と、
前記道路の特定の地点において、前記自車のドライバが前記ドライバ行動推定手段の推定した運転行動をとる場合に注意すべき視線方向と、当該注視すべき視線方向に対する標準視認完了時間及び優先度と、を対応付けた標準データを格納する標準データ格納手段と、
前記道路の特定の地点において、前記自車のドライバが過去に運転行動をとったときの前記注意すべき視線方向に対する視認完了時間及び視認忘れ回数を示す履歴データを蓄積する履歴データ蓄積手段と、
前記標準データ格納手段の格納する標準データと、前記履歴データ蓄積手段の蓄積する履歴データの少なくとも一方のデータから、前記自車のドライバが前記注意すべき視線方向に存在する注意対象物を視認したと判定するための視認完了判定条件を設定する判定条件設定手段と、
前記道路の特定の地点における前記自車のドライバの視線方向を検出する視線検出手段と、
前記視線検出手段の検出結果から、前記視認完了判定条件を満たしたかどうかを判定する視認完了判定手段と、
前記視認完了判定手段が視認完了判定条件を満たしていないと判定した場合、視認していない注意対象物が存在する視線方向に対する優先度に応じた警告を発生する警告発生手段と、を備えることを特徴とする車両用情報提供装置。
【請求項2】
前記警告発生手段は、
前記優先度が所定レベル以上の高い優先度である場合、前記自車のドライバの視線方向を強制的に前記注意対象物の存在する方向へ移動させるための警告を発生し、
前記優先度が前記所定レベルに満たない低い優先度である場合、前記自車のドライバの視線方向を前記注意対象物の存在する方向へ導くための警告を発生することを特徴とする請求項1記載の車両用情報提供装置。
【請求項3】
前記履歴データの視認忘れ回数が多い注意すべき視認方向ほど、当該注意すべき視認方向に対する前記標準データの優先度が高くなるように変更する優先度変更手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用情報提供装置。
【請求項4】
前記自車の進行しようとする目的地までの経路を探索する経路探索手段と、
前記経路探索手段の探索した経路における案内地点を設定する経路案内地点設定手段と、を備え、
前記ドライバ行動推定手段は、前記道路の特定の地点として、前記経路案内地点設定手段の設定した案内地点とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用情報提供装置。
【請求項5】
前記経路案内地点設定手段の設定した案内地点における案内情報を設定する経路案内情報設定手段を備え、
前記ドライバ行動推定手段は、前記経路案内情報設定手段の設定した案内情報から、前記自車のドライバの運転行動を推定することを特徴とする請求項4記載の車両用情報提供装置。
【請求項6】
前記警告発生手段は、警告を発生した後に前記自車のドライバが視認していなかった注意対象物を視認した場合、警報の発生を停止することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用情報提供装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−40977(P2008−40977A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217303(P2006−217303)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】