説明

車両用舵角検出装置及びこれを使用した電動パワーステアリング装置

【課題】簡易な演算処理で、長時間の旋回や片方の修正舵などによる誤推定を抑制することができる車両用舵角検出装置及びこれを使用した電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】車両のステアリング機構の相対舵角θrを検出する相対舵角検出手段14,31と、既知の車両全舵角範囲θtを記憶する全舵角範囲記憶手段24と、該全舵角範囲記憶手段24に記憶された前記車両全舵角範囲θtと、前記相対舵角検出手段31で検出した前記相対舵角θrとに基づいて前記ステアリング機構の絶対舵角推定値θaを演算する絶対舵角推定値演算手段26とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリング機構の絶対舵角を検出する車両用舵角検出装置及びこれを使用した電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用舵角検出装置としては、例えばスリットディスクのスリット部と2組のフォトインタラプタからなる検出部とにより当角度間隔で1/4周期ずれた2種の信号が出力され、イグニッションスイッチのオン時点からの一方の信号の角度位置が対応する頻度カウンタでカウントされ、この頻度カウンタによる頻度演算によりステアリング中立を特定し、所定のサンプリング数が得られた後では、頻度から平均へとステアリング中立を移行することにより、走行初期ではステアリング中立の確定が早くなり、それ以降ではステアリング中立はより正確なものに近づけるようにしたステアリング中立演算装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ステアリングホイールの操舵角に応じて増減するステアリングカウント値を求め、その増減傾向に基づいて右方向及び左方向の操舵角ピークMAX、MINを検出し、所定期間内に連続してMAX、MINが検出された場合は最後のピークのみを有効値とし、直進状態付近において検出されたMAX、MINでなく、且つMAX又はMINの連続検出とならないMAX又はMINの連続検出とならないMAX、MINをそれぞれPKH,PKLとして採用し、中立位置演算の基礎データとするようにした中立位置検出装置も提案されている(例えば、特許文献2に参照)。
【特許文献1】特許第3341345号公報
【特許文献2】特開平8−122054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、舵角が出現する頻度の記録や、舵角の平均などの複雑な演算を必要とすると共に、長時間の旋回などによる誤推定が生じやすいという未解決の課題がある。
また、上記特許文献2に記載の従来例にあっては、左右の操舵角のピーク値を平均して中立点を演算するので、長時間の旋回や片方の修正舵などによる誤推定の可能性があるという未解決の課題があると共に、中立点位置を既知とする必要があるという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、簡易な演算処理で、長時間の旋回や片方の修正舵などによる誤推定を抑制することができる車両用舵角検出装置及びこれを使用した電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る車両用舵角検出装置は、車両のステアリング機構の相対舵角θrを検出する相対舵角検出手段と、既知の車両全舵角範囲θtを記憶する全舵角範囲記憶手段と、該全舵角範囲記憶手段に記憶された前記車両全舵角範囲θtと、前記相対舵角検出手段で検出した前記相対舵角θrとに基づいて前記ステアリング機構の絶対舵角推定値θaを演算する絶対舵角推定値演算手段とを備えたことを特徴としている。
【0006】
また、請求項2に係る車両用舵角検出装置は、請求項1に係る発明において、前記絶対舵角推定値演算手段は、操舵時における前記相対舵角θrの最大値θrmax及び最小値θrminを検出する操舵範囲検出手段と、該操舵範囲検出手段で検出した最大値θrmax及び最小値θrminと前記車両全舵角範囲θtとに基づいて、舵角の中立点が存在する中立点存在舵角範囲の最大値θnmax及び最小値θnminを推定し、推定した最大値θnmax及び最小値θnminと前記車両全舵角範囲θtとに基づいて中点舵角範囲θnrengeを演算する中点舵角範囲演算部と、該中点舵角範囲演算部で演算した中点舵角範囲の最大値θnmax及び最小値θnminに基づいて絶対舵角推定値θaを演算する絶対舵角演算部とを備えていることを特徴としている。
【0007】
さらに、請求項3に係る車両用舵角検出装置は、請求項2に係る発明において、前記中点舵角範囲演算部は、前記相対舵角θrの最大値θrmax及び最小値θrminと前記車両全舵角範囲θtとに基づいて、
θnmax=(θrmax+θrmin)/2+{θt−(θrmax−θrmin)}/2
θnmin=(θrmax+θrmin)/2−{θt−(θrmax−θrmin)}/2
θnrange=θnmax−θnmin
の演算を行なって中立点舵角範囲θnrangeを算出することを特徴としている。
【0008】
さらにまた、請求項4に係る車両用舵角検出装置は、請求項1乃至3の何れか1つに係る発明において、前記全舵角範囲θtが中立点に対して左右非対称である場合に、直進判定によりその中立点左右差θncopを推定する中立点左右差推定手段と、該中立点左右差推定手段です推定した中立左右差θncopに基づいて前記相対舵角θrの最大値θrmax及び最小値θrminの平均値でなる中立点暫定値θntempを補正する中立点暫定値補正手段と、前記中立点左右差θncopを不揮発性メモリに記憶する中立点左右差記憶手段と、車両の始動時に前記不揮発性メモリに記憶されている中立点左右差θncopに基づいて前記中立点暫定値θntempを補正する中立点舵角初期補正手段とを備えていることを特徴としている。
【0009】
なおさらに、請求項5に係る車両用舵角検出装置は、請求項2乃至4の何れか1つに係る発明において、前記中立点舵角範囲θnrangeに基づいて前記絶対舵角推定値θaに対する絶対舵角不感帯を設定する不感帯設定手段を備え、前記絶対舵角推定手段は、前記相対舵角θr、前記中立点舵角範囲θnrange及び前記絶対舵角不感帯に基づいて絶対舵角推定値θaを推定するように構成されていることを特徴としている。
また、請求項6に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用舵角検出装置を備え、該車両用舵角検出装置で検出したステアリングホイールの絶対舵角に基づいて操舵制御を行なうことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、相対舵角検出手段で検出した車両のステアリング機構の相対舵角θrと全舵角範囲記憶手段に記憶されている既知の車両全舵角範囲とに基づいてステアリング機構の絶対舵角推定値θaを演算するので、複雑な演算処理を行なうことなく正確な絶対舵角推定値θaを演算することができる。
また、絶対舵角推定値演算手段で、相対舵角θrの最大値θrmax及び最小値θrminと車両全舵角範囲θtとに基づいて舵角の中立点が存在する中立点存在舵角範囲の最大値θnmax及び最小値θnminを推定し、推定値した最大値θnmax及び最小値θnminと車両全舵角範囲θtとに基づいて中立点舵角範囲θnrangeを演算し、この中立点舵角範囲θnrangeの最大値θnmax及び最小値θnminに基づいて絶対舵角θaを演算することにより、長時間の旋回や片方の修正舵などによる誤推定を抑制して正確な中立点を演算することができる。
また、上記効果を有する車両用舵角検出装置を電動パワーステアリング装置に適用することにより、ステアリングホイール戻り制御等の操舵制御を正確に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を操舵装置に適用した場合の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、1は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が回転体としてのステアリングシャフト2に伝達される。このステアリングシャフト2は、一端がステアリングホイール1に連結された入力軸2aと、この入力軸2aの他端に図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとで構成されている。そして、ステアリングシャフト2に伝達される操舵トルクが操舵トルクセンサ4によって検出される。
【0012】
一方、出力軸2bに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント5を介してロアシャフト6に伝達され、さらに、ユニバーサルジョイント7を介してピニオンシャフト8に伝達される。このピニオンシャフト8に伝達された操舵力はステアリングギヤ機構9を介してタイロッド10に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ機構9は、ピニオンシャフト8に連結されたピニオン9aとこのピニオン9aに噛合するラック9bとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン9aに伝達された回転運動をラック9bで直進運動に変換している。
【0013】
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構11が連結されている。この操舵補助機構11は、出力軸2bに連結した減速機構12と、この減速機構12に連結された操舵補助力を発生する例えば直流モータで構成される電動モータ13とを備えている。この電動モータ13には、その回転角θmを検出するエンコーダ、レゾルバ等で構成されるモータ角度センサ14が設けられている。
【0014】
そして、操舵トルクセンサ4、モータ角度センサ14及び車速センサ15で検出した操舵トルクT、モータ角度θm及び車速検出値Vsが制御装置16に入力され、この制御装置16で絶対舵角推定値θaを演算するとともに、電動モータ13を駆動制御する。また、制御装置16にはバッテリ17からの直流電力が直接及びイグニッションスイッチ18を介して供給されている。
【0015】
制御装置16は、例えばマイクロコンピュータで構成され、その構成は機能ブロック図で表すと図2に示すようになる。すなわち、制御装置16は、操舵トルクセンサ4で検出した操舵トルクT及び車速センサ15で検出した車速検出値Vsが入力されこれらに基づいて電動モータ13に対する電流指令値Irefを演算する電流指令値演算部21と、この電流指令値演算部21で算出された電流指令値Irefとモータ電流検出部19で検出されたモータ電流Imとに基づいて電流フィードバック処理を行って電圧指令値を算出する電流フィードバック制御部22と、この電流フィードバック制御部22で算出された電圧指令値Vrefが入力されて電動モータ13を駆動制御するモータ駆動回路23と備えている。
【0016】
また、制御装置16は、前記ステアリングギヤ機構9のラック9bのストロークとステアリングホイール1を1回転即ちピニオンシャフト8が一回転したときにラック9bが移動する距離(例えば50mm/回転)とから求められる既知の全舵角範囲θtを記憶する例えばEEPROMで構成される不揮発性メモリ24と、この不揮発性メモリ24に記憶された全舵角範囲θtと、モータ角度センサ14で検出したモータ角度情報基づいて演算した相対舵角θrとに基づいて絶対舵角推定値θaを演算する絶対舵角演算部26と、この絶対舵角演算部26で演算した絶対舵角推定値θaを微分して絶対舵角速度ωを算出する微分回路27と、絶対舵角演算部26で演算した絶対舵角推定値θa、微分回路27で演算した絶対舵角速度ω及び車速検出値Vsに基づいて転舵状態でステアリングホイール1への操舵力を緩めたときにステアリングホイール2を中立点位置に戻す所謂ハンドル戻し制御を行うハンドル戻し制御部28と、このハンドル戻し制御部28で算出したハンドル戻し制御信号HRと電流指令値演算部21から出力される電流指令値Irefとを加算して電流フィードバック制御部22に供給する加算器29とを備えている。
【0017】
ここで、不揮発性メモリ24には、前述したようにステアリングギヤ機構9の仕様によって決定されるラックストロークとステアリングホイール1を1回転させたときにラック9bが移動する距離とから求めた全舵角範囲θtを記憶するか、又は工場出荷時における操舵装置1の最終調整終了時にステアリングホイール2を一方のラックエンドに当接した状態から他方のラックエンドに当接するまでの舵角を検出することにより求めた全舵角範囲θtを記憶する。
【0018】
また、絶対舵角演算部26は、図2に示すように、モータ角度センサとこの絶対舵角演算部26で実行する絶対舵角演算処理等の各種プログラムを格納するROM26aと、絶対舵角演算部26で実行する各処理の処理過程で必要とする値等を記憶するRAM26bとが接続されている。
そして、図3に示すように、絶対舵角演算部26は、モータ角度センサ14から出力されるモータ角度θmに基づいて相対舵角θrを演算する相対舵角演算部31を有し、この相対舵角演算部31から出力される相対舵角θrが最大値検出部32及び最小値検出部33に入力される。
【0019】
最大値検出部32は、入力側に相対舵角演算部31から相対舵角θrが入力されるとともに、出力側に前回の最大値θrmax(n-1)を遅延保持する遅延器34が接続され、この遅延器34に保持された前回の最大値θrmax(n-1)が入力側に供給されている。そして、最大値検出部32では、入力された相対舵角θrと前回の最大値θrmax(n-1)とを比較して、θr>θrmax(n-1)であるときには、入力された相対舵角θrを最大値θrmax(n)として出力し、θr≦θrmax(n-1)であるときには前回の最大値θrmax(n-1)を最大値θrmax(n)として出力する。
【0020】
最小値検出部33は、入力側に相対舵角演算部31から相対舵角θrが入力されるとともに、出力側に前回の最小値θrmin(n-1)を遅延保持する遅延器35が接続され、この遅延器35に保持された前回の最小値θrmin(n-1)が入力側に供給されている。そして、最小値検出部33では、入力された相対舵角θrと前回の最小値θrmin(n-1)とを比較して、θr<θrmin(n-1)であるときには、入力された相対舵角θrを最小値θrmin(n)として出力し、θr≦θrmin(n-1)であるときには前回の最小値θrmin(n-1)を最小値θrmin(n)として出力する。
【0021】
そして、最大値検出部32から出力される最大値θrmax(n)と最小値検出部33から出力される最小値θrminとが加算器36で加算され、この加算器36の加算出力が1/2を乗算する乗算器37に供給されて中立点暫定値θntempを算出する。そして、算出された中立点暫定値θntempを減算器38に供給して相対舵角θrから中立点暫定値θmtempを減算することにより、絶対舵角暫定値θatempを算出し、算出した絶対舵角暫定値θatempを不感帯設定部39に出力する。
【0022】
一方、最大値検出部32から出力される最大値θrmax(n)及び最小値検出部33から出力される最小値θrmin(n)が減算器40に供給されて、最大値θrmax(n)から最小値θrmin(n)が減算され、この減算値と不揮発性メモリ24から読出された全舵角範囲値θtとが減算器41に供給されて、全舵角範囲値θtから減算値(θrmax(n)−θrmin(n))が減算されて中立点舵角範囲θnrangeが算出される。そして、算出された中立点舵角範囲θnrangeが直接不感帯幅設定部39に供給されるとともに、中立点舵角範囲θnrangeに1/2を乗算する乗算器42に供給されて不感帯幅θdbが算出され、この不感帯幅θdbが不感帯設定部39に供給される。
【0023】
不感帯設定部39では、中立点舵角範囲θnrangeに基づいて絶対舵角θaを出力するか否かを判定し、その判定結果が絶対舵角θaを出力しないものであるときには、絶対舵角θaの出力を禁止し、絶対舵角を出力するものであるときには、入力される絶対舵角暫定値θatempと不感帯幅θdbとを比較して、両者の関係が−θdb≦θatemp≦θdbであるときには、絶対舵角θaを“0”に設定し、θatemp>θdbであるときにはθa=θatemp−θdbの演算を行なって絶対舵角θaを算出し、θatemp<−θdbであるときにはθa=θatemp+θdbの演算を行なって絶対舵角θaを算出し、算出した絶対舵角θaを微分回路27及びハンドル戻し制御部28に出力する。
【0024】
この不感帯幅設定器39では、図4に示す不感帯設定処理を実行する。
この不感帯設定処理は、先ず、ステップS1で、入力される絶対舵角暫定値θatemp、中立点舵角範囲θnrange及び不感帯幅θdbを読込み、次いでステップS2に移行して、中立点舵角範囲θnrangeが予め設定した所定値θns以下であるか否かを判定する。この判定は、絶対舵角推定値θaを出力するか否かを判定するものであり、θnrange>θnsであるときには、始動後のステアリングホイール1の操舵範囲が小さくて中立点舵角範囲θnrangeの最大値θnmax及び最小値θnminの偏差が小さく安定した中立点を求めることができないものと判断してステップS3に移行して、絶対舵角推定値θaの出力を禁止してから前記ステップS1に戻る。
【0025】
一方、ステップS2の判定結果がθnrange≦θnsであるときには、ステアリングホイール1の操舵範囲が大きくなり、中立点舵角範囲θnrangeが拡がり、安定した中立点を求めることができ、絶対舵角推定値θaの出力が可能であるものと判断してステップS4に移行する。
このステップS4では、前記ステップS1で読込んだ絶対舵角暫定値θatempが不感帯幅−θdb及びθdbの範囲内であるか否かを判定し、−θdb≦θatemp≦θdbであるときには不感帯幅内であるものと判断して、ステップS5に移行して絶対舵角推定値θaを“0”に設定してからステップS9に移行する。
【0026】
ステップS4の判定結果が、不感帯幅内ではないときにはステップS6に移行して、絶対舵角暫定値θatempが不感帯幅θdbより大きいか否かを判定し、θatemp>θdbであるときにはステップS7に移行して、絶対舵角暫定値θatempから不感帯幅θdbを減算した値(θatemp−θdb)を絶対舵角推定値θaとして設定してからステップS9に移行する。
【0027】
さらに、ステップS4の判定結果がθatemp<−θdbであるときには、ステップS8に移行して、絶対舵角暫定値θatempに不感帯幅θdbを加算した値(θatemp+θdb)を絶対舵角推定値θaとして設定してからステップS9に移行する。
ステップS9では、ステップS5、ステップS7及びステップS8の何れかで設定された絶対舵角推定値θaを微分回路27及びハンドル戻し制御部28に出力してから前記ステップS1に戻る。
【0028】
このため、不感帯設定器39から出力される絶対舵角推定値θaは、図5に示す絶対舵角暫定値θatempが不感帯幅−θdbからθdbの範囲であるときには絶対舵角推定値θaが“0”に維持され、絶対舵角暫定値θatempが不感帯幅−θdbより小さいときには絶対舵角暫定値θatempに不感帯幅θdbを加算した値が絶対舵角推定値θaとなり、逆に絶対舵角暫定値θatempが不感帯幅θdbより大きいときには、絶対舵角暫定値θatempから不感帯幅θdbを減算した値が絶対舵角推定値θaとなる。
【0029】
ここで、絶対舵角演算部26での絶対舵角θaの演算は、基本的には、下記(1)〜(3)式の演算を行なって中立点が存在する中立点舵角範囲θnrangeを算出し、算出した中立点舵角範囲θnrangeの最大値θnmax及び最小値θnminの平均値を算出して絶対舵角推定値θaを算出することになる。
θnmax=(θrmax+θrmin)/2+{θt−(θrmax−θrmin)}/2
…………(1)
θnmin=(θrmax+θrmin)/2−{θt−(θrmax−θrmin)}/2
…………(2)
θnrange=θnmax−θnmin …………(3)
すなわち、前記(1)式を整理すると、
θnmax=θrmin+θt/2 …………(4)
となり、
前記(2)式を整理すると、
θnmin=θrmax−θt/2 …………(5)
となる。
【0030】
そして、中立点暫定値θntempは、中立点舵角範囲θnrangeの最大値θnmax及び最小値θnminの平均値となり、これに前記(4)式及び(5)式を代入することにより下記(6)式で表すことができ、中立点舵角範囲θnrangeは前記(3)式に前記(4)式及び(5)式を代入することにより下記(7)式で表すことができる。
θntemp=(θnmax+θnmin)/2
=(θrmax+θrmin)/2 …………(6)
θnrange=θnmax−θnmin
=θt−(θrmax−θrmin) …………(7)
【0031】
したがって、図3に示すように、乗算器37の出力が中立点暫定値θntempとなり、この中立点暫定値θntempを相対舵角θrから減算することにより、絶対舵角暫定値θatempを算出することができる。また、減算器41の出力が中立点舵角範囲θnrangeとなり、この中立点舵角範囲θnrangeの1/2の値を不感帯幅θdbとして設定する。
【0032】
さらに、ハンドル戻し制御部28では、図6に示すように、絶対舵角推定値θaに基づいて所定関数でハンドル戻し基本電流値Irを出力するハンドル戻し基本電流回路50と、車速検出値Vsを入力して所定関数により車速検出値Vsに応じたゲインGvを出力するゲイン回路51と、ハンドル戻し基本電流回路50からのハンドル戻し基本電流値Irとゲイン回路51からのゲインGvとを乗算する乗算器52と、乗算器52からの出力Ir・Gvを接点a又はbに切換えて出力するスイッチ53と、スイッチ53が接点b側に切換えられたときの出力を0とする零出力回路54と、絶対舵角推定θa及び絶対舵角速度ωを入力し、両者の符号の一致又は不一致を判定する符号判定回路55とで構成されている。
符号判定回路55は、判定信号としてスイッチ信号SWを出力してスイッチ53の接点を切換えるが、絶対舵角推定値θa及び舵角速度ωの符号が一致のときにスイッチ信号SWで接点bに切換える。また、スイッチ53の接点a,bは、舵角速度ωが零となったことを検出する回路(図示せず)からも切換えられるように構成されている。
【0033】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、車両が停止していて、イグニッションスイッチ18がオフ状態であるものとすると、この状態では、制御装置16にイグニッションスイッチ18を介するバッテリ17からのバッテリ電圧Vbが供給されないので、制御装置16は停止状態にあり、図3に示す操舵トルクT及び車速検出値Vsに基づいて実行する操舵補助制御処理は実行停止状態にあり、電動モータ13が停止してステアリングシャフト3への操舵補助力の伝達は行われない。
【0034】
この車両停止状態から、イグニッションスイッチ18をオン状態とすると、制御装置16にバッテリ電圧Vbが供給されることにより、制御装置16が作動状態となって、図2のモータ電流検出部19、電流指令値演算部21、電流フィードバック制御部22、モータ駆動回路23、ハンドル戻し制御部28及び加算器29による操舵補助制御及び絶対舵角演算負26の絶対舵角演算が開始される。
【0035】
この状態で、ステアリングホイール1を操舵していないときには、操舵トルクセンサ4で検出される操舵トルクTが“0”であるので、電流指令値演算部21で演算される電流指令値Irefが“0”となり、電流フィードバック制御部22から出力される電圧指令値Vrefも“0”となって、モータ駆動回路23からモータ電流Imが出力されず、電動モータ13が停止状態を維持する。
【0036】
このとき、ステアリングホイール1が操舵されておらず、電動モータ13が停止状態にあるので、モータ角度センサ14から現在のモータ角度θmが出力され、相対舵角演算部31で、モータ角度θmに応じた相対舵角θrが出力されるが、相対舵角θrが変化しないので、最大値θrmax及び最小値θrminも相対舵角θrと同じ値となる。このため、減算器40の出力は略“0”となり、減算器41で算出される中立点舵角範囲θnrangeが略全舵角範囲値θtと等しくなる。したがって、不感帯設定器39での図4の不感帯設定処理において、ステップS2でθnrange>θnsと判定されるので、ステップS3に移行して、絶対舵角推定値θaの出力が禁止される。
【0037】
このため、ハンドル戻し制御部28では、絶対舵角演算部26から絶対舵角推定値θaが入力されないことにより、ハンドル戻し制御信号HRは“0”に設定され、これが加算器29に供給されるので、この加算器29では電流指令値演算部21で算出された操舵トルクT及び車速検出値Vsに基づく電流指令値Irefがそのまま電流フィードバック制御部22に出力される。
【0038】
このとき、運転者がステアリングホイール1を操舵していない状態であるので、前述したように、モータ駆動回路23から出力されるモータ電流Imも“0”となって電動モータ13は停止状態を継続する。
この状態から、運転者がステアリングホイール1を操舵して所謂据え切り状態とすると、これに応じて操舵トルクセンサ4から比較的大きな操舵トルクTが出力されることにより、電流指令値演算部21から操舵トルクT及び車速検出値Vsに応じた比較的大きな電流指令値Irefが出力される。
【0039】
このとき、電動モータ13は停止状態であり、モータ電流検出部19で検出されるモータ電流Imは“0”を維持しているので、電流フィードバック制御部22から比較的大きな値の電圧指令値Vrefがモータ駆動回路23に出力され、このモータ駆動回路23から比較的大きな値のモータ駆動電流Imが電動モータ13に出力される。
このため、電動モータ13が回転駆動されて、比較的大きな操舵補助力を発生し、この操舵補助力が減速機構12を介してステアリングシャフト3に伝達されるので、ステアリングホイール1を軽く操舵することができる。
【0040】
この状態で、車両を発進させると、車速検出値Vsが増加するとともに、ステアリングホイール1の左右の操舵によって、相対舵角θrの最大値θrmax及び最小値θrminが両者の偏差が大きくなる方向に変化する。そして、この最大値θrmax及び最小値θminの偏差が大きくなって、減算器41で算出される中立点舵角範囲θnrangeが予め設定した所定値θns以下となると、図4の不感帯設定処理で、ステップS2からステップS4に移行して、絶対舵角推定値θaの演算処理を開始する。
【0041】
このため、ステアリングホイール1を中立位置として車両が直進走行している状態では、減算器38から出力される相対舵角θrから中立点暫定値θntempを減算した絶対舵角暫定値θatempが減算器41で算出される中立点舵角範囲θnrangeの1/2の値である不感帯幅±θdbの幅内に収まることになり、ステップS4からステップS5に移行して、絶対舵角推定値θaが“0”に設定され、この設定された絶対舵角推定値θaが微分回路27及びハンドル戻し制御部28に出力される。この状態ではハンドル戻し制御部28では絶対舵角推定値θaが“0”であるので、ハンドル戻し基本電流値Irが“0”となり、不感帯幅内でステアリングホイール1が操舵されてもハンドル戻し制御信号HRは“0”を継続する。
【0042】
その後、ステアリングホイール1を不感帯幅を超えて左切り(又は右切り)して左操舵状態(又は右操舵状態)とし、これによってモータ角度センサ14で検出されるモータ角度θmが増加(又は減少)して相対舵角演算部31で演算される相対舵角θrが増加して、減算器38で算出される絶対舵角暫定値θatempが不感帯幅θdbを超える状態となると、図4の不感帯設定処理において、ステップS4からステップS6を経てステップS7に移行して、絶対舵角暫定値θatempから不感帯幅θdbを減算した値(θatemp−θdb)を絶対舵角推定値θaとして設定し、この絶対舵角推定値θaを微分回路27及びハンドル戻し制御部28に出力する。
このため、ハンドル戻し制御部28では、切り増し方向と判断されて符号判定回路55からスイッチ信号SWが出力されることにより、スイッチ53がb接点側に切換えられた状態を維持する。
【0043】
その後、ステアリングホイール2を右切り(又は左切り)して中立位置に戻すと、絶対舵角推定値θaは正(又は負)であり、絶対舵角速度ωが負(又は正)となるので、両者の符号が異なることにより、ハンドル戻し状態であると判断されて、ハンドル戻し制御部28のスイッチ33がa接点側に切換えられ、これにより、絶対舵角推定値θaに基づいてハンドル戻し基本電流回路50で算出されるハンドル戻し基本電流値Irにゲイン回路51から出力される車速感応ゲインGvとを乗算器52で乗算した値Ir・Gvがハンドル戻し制御信号HRとして加算器29に出力される。このため、ハンドル戻し時にのみ良好なハンドル戻し制御を行うことができる。
【0044】
このように、上記第1の実施形態においては、絶対舵角演算部26で、車両全舵角範囲θtと相対舵角θrとに基づいて絶対舵角推定値θaを算出するので、ステアリングホイール1の中立点を予め設定することなく、絶対舵角推定値θaを正確に算出することができる。
しかも、相対舵角θrの最大値θrmax及び最小値θrminと車両全舵角範囲θtとに基づいて中立点が存在する中立点存在舵角範囲の最大値θnmax及び最小値θnminを推定し、推定した最大値θnmax及び最小値θnminと車両全舵角範囲θtとに基づいて中立点舵角範囲θnrangeを算出し、中立点舵角範囲θnrangeの最大値θnmax及び最小値θnminに基づいて絶対舵角推定値θaを演算するので、長時間の旋回や片方の修正舵などによる誤推定を抑制して正確な絶対舵角推定値θaを算出することができる。
【0045】
この場合、前述した(1)式〜(3)式を適用することにより、中立点舵角範囲θnrangeとその最大値θnmax及び最小値θnminを正確に算出することができ、正確な絶対舵角推定値θaを算出することができる。
実質的には、前述した(1)式〜(3)式を整理した図3に示す回路構成とすることにより、簡易な構成で演算処理時間を短縮することができる。
【0046】
さらに、中立点舵角範囲θnrangeの1/2の値を不感帯幅θdbとして設定し、この不感帯幅θdbに基づいて不感帯設定部39で図4の不感帯設定処理を行なうことにより、図5に示すように絶対舵角推定値θaの中立点近傍で変化しても絶対舵角推定値θaを“0”に設定する不感帯を設けるので、舵角推定誤差により電動パワーステアリング装置の操舵制御の誤動作を回避することができる。たとえば、推定誤差によりハンドル戻し制御部28によるハンドル戻し制御の逆アシスト状態の発生を確実に抑制することができる。
【0047】
さらに、中立点舵角範囲θnrangeが大きすぎる場合即ちステアリングホイール1の操舵した際の舵角範囲が小さく、中立点が存在する可能性がある舵角範囲が大きすぎる場合に、絶対舵角推定値θaの出力を禁止することにより、中立点暫定値θntempが安定せず信頼性の低い絶対舵角推定値θaを出力することがないので、信頼性の低い絶対舵角推定値θaによる操舵制御の誤動作を確実に防止することができる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施形態を図7について説明する。
この第2の実施形態では、中立点暫定値θntempの実際の中立点からのずれ量を表す中立点左右差θncopを補正するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態においては、図7に示すように、中立点左右差θncopを不揮発性メモリ24に記憶しておき、この不揮発性メモリに記憶された中立点左右差θncopを図3の絶対舵角演算部26における乗算器37から出力される中立点暫定値θntempに、乗算器37の出力側に設けた加算器43で加算するようにしたことを除いては前述した第1の実施形態と同様の構成を有し、図3との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0049】
この第2の実施形態では、不揮発性メモリ24に記憶させる中立点左右差θncopとしては、生産ラインの最終組み立て工程で中立点のずれ量を実測した値を記憶させるか、あるいは直進走行状態を検出する毎に、そのときの相対舵角θrを直進時相対舵角θrnとして設定し、この直進時相対舵角θrnと中立点暫定値θntempとの偏差を中立点左右差θncopとして不揮発性メモリ24に更新記憶し、車両の始動時には、不揮発性メモリ24に記憶されている前回走行終了時の中立点左右差θncopを読出して使用するようにしてもよい。
【0050】
ここで、直進走行状態を検出して中立点左右差θncopを算出する中立点左右差算出部としては、図8に示すように、車両のセルフアライニングトルクSATを推定するセルフアライニングトルク推定部60と、車両の直進走行状態を判定する直進状態判定部61と、この直進状態判定部61で直進走行状態と判定されたときに、中立点暫定値θntempと比較する直進時相対舵角θrnを算出し、算出した直進時相対舵角θrnと中立点暫定値θntempとの偏差を中立点左右差θncopとし、中立点左右差θncopを不揮発性メモリ24に記憶する中立点左右差推定部62とが設けられている。
【0051】
ここで、セルフアライニングトルク推定部60では、操舵トルクセンサ4から入力される操舵トルクT、モータ角度センサ14で検出されたモータ回転角θmを微分してモータ回転角速度ωmを算出するモータ角速度演算部14aから入力されるモータ角速度ωmと、このモータ角速度ωmを微分してモータ角加速度αmを算出するモータ角加速度演算部14bから入力されるモータ角加速度αmと、電流指令値演算部21から出力される電流指令値Irefとが入力され、これらに基づいて下記(8)式の演算を行うことにより、路面側から転舵輪6を介してステアリング機構に入力されるセルフアライニングトルクSATを演算する。
SAT(s) = Tm(s) + T(s) − J・αm(s) − Fr・sign(ωm(s)) …………(8)
ここで、Tm(s)は電動モータ13で発生するアシストトルク、T(s)は操舵トルク、Jは電動モータ13の慣性、Frは電動モータ13の静摩擦、sはラプラス演算子である。なお、アシストトルクTm(s)は操舵補助電流指令値Irefに比例するので、アシストトルクTmに代えて操舵補助電流指令値Irefを適用する。
【0052】
また、直進状態判定部61では、セルフアライニングトルク推定部60で推定したセルフアライニングトルクSAT、モータ角速度演算部14aで演算したモータ角速度ωm、及び車速センサ15で検出した車速検出値Vsが入力され、セルフアライニングトルクSATがセルフアライニングトルク閾値SATth以下、モータ角速度ωmがモータ角速度閾値ωmth以下、及び車速検出値Vsが車速閾値Vsth以上である状態が所定時間以上継続している直進走行条件を満足するか否かを判定し、直進走行条件を満足するときに論理値“1”、直進走行条件を満足しないときに論理値“0”の直進判定信号Sdを中立点左右差推定部62に出力する。
【0053】
中立点左右差推定部62では、直進状態判定部61から出力される直進判定信号Sdが論理値“1”であるときにオン状態となる2つの開閉スイッチ63a及び63bを有し、一方の開閉スイッチ63aに相対舵角演算部31で演算された相対舵角θrが入力され、他方の開閉スイッチ63bに車速検出値Vsが入力される。開閉スイッチ63aの出力側には後述する遅延器73で保持された前回の中立点推定値θc(n-1)が入力される減算器64が接続され、この減算器64の減算出力が乗算器65に供給される。
【0054】
一方、開閉スイッチ63bの出力側には車速検出値Vsに応じた信頼係数Dvを出力するDvテーブル66が接続され、このDvテーブル66から出力される信頼係数Dvが信頼度係数Dを演算する信頼度係数演算部67に供給され、この信頼度係数演算部67で演算された信頼度係数Dが前述した乗算器65に供給される。
ここで、Dvテーブル66は、車速検出値Vsを横軸に、信頼係数Dvを縦軸にとったテーブルで構成され、車速検出値Vsが増加するに応じて信頼係数Dvがステップ状に増加する特性線が設定されている。
【0055】
また、信頼度係数演算部67は、信頼係数Dbが入力される加算器68と、この加算器68の加算出力の最大値及び最小値を制限して信頼度係数Dを出力するリミッタ69と、このリミッタ69の出力を前回信頼度係数D(n-1)として遅延保持する遅延器70と、この遅延器70から出力される前回信頼度係数D(n-1)に所定のゲインを乗算するゲイン設定器71とを備えている。そして、ゲイン設定器71の出力が加算器68に出力され、リミッタ69から出力される信頼度係数Dが乗算器65に出力される。
【0056】
さらに、乗算器65の乗算出力が加算器72に供給され、この加算器72にその加算出力である中立点推定値θcの前回値θc(n-1)を遅延保持する遅延器73から出力される前回中立点推定値θc(n-1)が入力されている。
そして、加算器72から出力される中立点推定値θcが直進時相対舵角θrnとして減算器74に供給される。この減算器74には、前記乗算器37で演算された中立点暫定値θntempが供給され、直進時相対舵角θrnから中立点暫定知θntempを減算して中立点左右差θncomを算出し、この中立点左右差θncomが不揮発性メモリ24の所定記憶領域に更新記憶される。
【0057】
この第2の実施形態によると、中立点左右差推定部62では、下記(9)式の演算を実行して中立点推定値θcを算出することになる。
θc=(θa−θc(n-1))・D+θc(n-1)…………(9)
そして、車速検出値Vsが大きくなる程、Dvテーブル66で算出される信頼係数Dvが“0”から順に“1”、“2”、“3”……と大きな値となる。
【0058】
このため、車速が速く且つ直進と判定された結果が継続している状態で、信頼度係数Dvが大きい値となるので、絶対舵角推定値θaから前回の中心点舵角θc(n-1)を減算した補正後の絶対舵角推定値に信頼度係数Dを乗算し、この乗算値に前回の中立点舵角θc(n-1)を加算して中立点舵角推定値θcを算出するので、正確な中立点舵角推定値θcを算出することができる。したがって、算出した中立点舵角推定値θcを直進時相対舵角θrnとし、この直進時相対舵角θrnから中立点暫定値θntempを減算して中立点左右差θncopを正確に算出することができる。
そして、中立点左右差θncopに基づいて絶対舵角演算部26の中立点暫定値θntempを補正するので、中立点ずれ量を正確に補正した中立点暫定値を算出することができ、絶対舵角推定値θaをより正確に推定することができる。
【0059】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、絶対舵角演算部26で検出した絶対舵角推定値θaを電動パワーステアリング装置のハンドル戻し制御部28で使用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、絶対舵角推定値θを必要とする走行制御装置等の他の車載制御装置にCAN等のネットワークを使用して送信したり、直接送信したりするようにしてもよい。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、相対舵角θrを検出する場合に、モータ角度センサ14を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ステアリングシャフト2の回転角を検出する例えばフォトインタプラタで構成される操舵角センサを適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す全体構成図である。
【図2】図1の制御装置16の具体的構成を示すブロック図である。
【図3】図2の絶対舵角演算部の具体的構成を示すブロック図である。
【図4】図2の不感帯設定部で実行する不感帯設定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】絶対舵角暫定値と絶対舵角推定値との関係を示す特性線図である。
【図6】図2のハンドル戻し制御部の具体的構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す絶対舵角演算部の具体的構成を示すブロック図である。
【図8】中立点左右差算出部を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、12…減速機構、13…電動モータ、14…モータ角度センサ、15…車速センサ、16…制御装置、19…モータ電流検出回路、21…電流指令値演算部、22…電流フィードバック制御部、23…モータ駆動回路、24…不揮発性メモリ、26…絶対舵角演算部、27…微分回路、28…ハンドル戻し制御部、29…加算器、31…相対舵角演算部、32…最大値演算部、33…最小値演算部、34,35…遅延器、36加算器、37…乗算器、38…減算器、30…不感帯設定部、40,41…減算器、42…乗算器、43…加算器、60…セルフアライニングトルク推定部、61…直進状態判定部、62…中立点左右差推定部、63a,63b…開閉スイッチ、64…減算器、65…乗算器、66…Dvテーブル、67…信頼度演算部、72…加算器、73…遅延器、74…減算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリング機構の相対舵角θrを検出する相対舵角検出手段と、既知の車両全舵角範囲θtを記憶する全舵角範囲記憶手段と、該全舵角範囲記憶手段に記憶された前記車両全舵角範囲θtと、前記相対舵角検出手段で検出した前記相対舵角θrとに基づいて前記ステアリング機構の絶対舵角推定値θaを演算する絶対舵角推定値演算手段とを備えたことを特徴とする車両用舵角検出装置。
【請求項2】
前記絶対舵角推定値演算手段は、操舵時における前記相対舵角θrの最大値θrmax及び最小値θrminを検出する操舵範囲検出手段と、該操舵範囲検出手段で検出した最大値θrmax及び最小値θrminと前記車両全舵角範囲θtとに基づいて、舵角の中立点が存在する中立点存在舵角範囲の最大値θnmax及び最小値θnminを推定し、推定した最大値θnmax及び最小値θnminと前記車両全舵角範囲θtとに基づいて中点舵角範囲θnrangeを演算する中点舵角範囲演算部と、該中点舵角範囲演算部で演算した中点舵角範囲の最大値θnmax及び最小値θnminに基づいて絶対舵角推定値θaを演算する絶対舵角演算部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両用舵角検出装置。
【請求項3】
前記中点舵角範囲演算部は、前記相対舵角θrの最大値θrmax及び最小値θrminと前記車両全舵角範囲θtとに基づいて、
θnmax=(θrmax+θrmin)/2+{θt−(θrmax−θrmin)}/2
θnmin=(θrmax+θrmin)/2−{θt−(θrmax−θrmin)}/2
θnrange=θnmax−θnmin
の演算を行なって中立点舵角範囲θnrangeを算出することを特徴とする請求項2に記載の車両用舵角検出装置。
【請求項4】
前記全舵角範囲θtが中立点に対して左右非対称である場合に、直進判定によりその中立点左右差θncopを推定する中立点左右差推定手段と、該中立点左右差推定手段です推定した中立左右差θncopに基づいて前記相対舵角θrの最大値θrmax及び最小値θrminの平均値でなる中立点暫定値θntempを補正する中立点暫定値補正手段と、前記中立点左右差θncopを不揮発性メモリに記憶する中立点左右差記憶手段と、車両の始動時に前記不揮発性メモリに記憶されている中立点左右差θncopに基づいて前記中立点暫定値θntempを補正する中立点舵角初期補正手段とを備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用舵角検出装置。
【請求項5】
前記中立点舵角範囲θnrangeに基づいて前記絶対舵角推定値θaに対する絶対舵角不感帯を設定する不感帯設定手段を備え、前記絶対舵角推定手段は、前記相対舵角θr、前記中立点舵角範囲θnrange及び前記絶対舵角不感帯に基づいて絶対舵角推定値θaを推定するように構成されていることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の車両用舵角検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用舵角検出装置を備え、該車両用舵角検出装置で検出したステアリングホイールの絶対舵角に基づいて操舵制御を行なうことを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−58661(P2010−58661A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226318(P2008−226318)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】