説明

車両用表示装置

【課題】運転者が障害物までの距離感や転舵方向などを一見して理解することができる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】車体部材28によって形成される運転者の死角領域を撮影する死角撮影手段3と、該死角撮影手段3によって撮影した死角領域映像cを前記運転者に対し表示する表示手段5と、を設けた車両用表示装置において、前記車体部材28を前記運転者側から透過した半透明車体モデル11と、前記死角撮影手段3によって撮影した死角領域映像cとを合成する合成手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の運転者の視界を補助する車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラなどの撮影手段により捉えられた車両周辺の映像を運転者が視認可能な位置に表示して、運転者の視界を補助する車両用表示装置が知られている。この車両用表示装置には、横長のモニタ面の左右に表示画面の縦方向に対して車体の車幅方向が向き、表示画面の横方向に対して車体の前後方向が向くよう、前輪を含む前輪近傍の情景と後輪を含む後輪近傍の情景とを並べて表示させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−175766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述の車両用表示装置は、カメラで撮影した映像を単純に表示するために、映像の方向を認識するのが難しく、運転者は熟練しないとどちらに転舵して良いか判断がしづらいという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、運転者が障害物までの距離感や転舵方向などを一見して理解することができる車両用表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車体部材(例えば実施形態におけるフロントボディ28)によって形成される運転者の死角領域(例えば実施形態における死角領域a)を撮影する死角撮影手段(例えば実施形態における地表面撮影用カメラ3)と、該死角撮影手段によって撮影した前記死角領域を前記運転者に対し表示する表示手段(例えば実施形態における液晶ディスプレイ5)と、を設けた車両用表示装置(例えば実施形態における車両用表示装置1)において、前記車体部材を前記運転者側から透過した半透明車体モデル(例えば実施形態における半透明車体モデル11)と、前記死角撮影手段によって撮影した死角領域映像(例えば実施形態における死角領域映像c)とを合成する合成手段(例えば実施形態における合成手段13)を備えたことを特徴とする。
このように構成することで、車両と死角領域との位置関係を表示手段に表示することができる。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記運転者のアイポイントを検出するアイポイント検出手段(例えば実施形態における運転者撮影用カメラ4)を設け、該アイポイント検出手段の検出結果に基づいて前記表示手段によって表示する映像を補正する補正手段(例えば実施形態における補正手段20)を備えたことを特徴とする。
このように構成することで、運転者の目の位置(アイポイント)を考慮して運転者の死角領域を表示することができる。
【0007】
請求項3に記載した発明は、前記半透明車体モデルは車両(例えば実施形態における車両21)の前輪(例えば実施形態における前輪29)を含み、前記死角撮影手段は前記前輪近傍の地表面を撮影することを特徴とする。
このように構成することで、前輪と地表面との位置関係を表示手段に表示することができる。
【0008】
請求項4に記載した発明は、前記前輪と前記地表面との接地面(例えば実施形態における接地面30)を検出する接地面検出手段(例えば実施形態における接地面検出手段14)を備え、前記接地面の映像を前記半透明車体モデルに合成することを特徴とする。
このように構成することで、前輪と地表面との位置関係を正確に表示することができる。
【0009】
請求項5に記載した発明は、前記前輪の動作を検出する前輪動作検出手段(例えば実施形態における前輪動作検出手段15)を備え、前記前輪の動作を前記半透明車体モデルに合成することを特徴とする。
このように構成することで、運転者が前輪の向きを確実に把握することができる。
【0010】
請求項6に記載した発明は、前記前輪の将来動作を予測する予測手段(例えば実施形態における予測手段16)を備え、該予測手段に基づいて設定される進路軌跡(例えば実施形態における進路軌跡31)を前記半透明車体モデルに合成することを特徴とする。
このように構成することで、運転者が車両の進路方向と周囲の障害物などとの関係を確実に把握することができる。
【0011】
請求項7に記載した発明は、前記前輪が接地する前記地表面に対応する地表面モデル(例えば実施形態における地表面モデル12)を備え、前記合成手段は、前記地表面モデルに前記地表面の映像を合成する地表面合成手段(例えば実施形態における地表面合成手段18)を備えたことを特徴とする。
このように構成することで、処理を高速化して地表面の映像を合成することができる。
【0012】
請求項8に記載した発明は、前記地表面の凹凸を検出する凹凸検出手段(例えば実施形態における凹凸検出手段17)を備え、前記合成手段は、前記凹凸を前記地表面モデルに合成する凹凸合成手段(例えば実施形態における凹凸合成手段19)を備えたことを特徴とする。
このように構成することで、地表面映像を立体的に認識することができる。
【0013】
請求項9に記載した発明は、前記表示手段を前記車体部材と前記運転者との間に設け、外部視界と前記表示手段の映像とが連続して見えるように表示することを特徴とする。
このように構成することで、車体部材によって運転者の死角になっている領域の映像を、運転者にとって視認可能な直接視界を補うように表示することができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載した発明によれば、車両と死角領域との位置関係を表示手段に表示することができるため、運転者が死角領域に存在する障害物などとの距離感や転舵方向などを一見して理解することができる効果がある。
【0015】
請求項2に記載した発明によれば、運転者の目の位置を考慮して運転者の死角領域を表示することができるため、運転者にとって正確な死角領域を認識することができる効果がある。
【0016】
請求項3に記載した発明によれば、前輪と地表面との位置関係を表示手段に表示することができるため、運転者が地表面との距離感や転舵方向などを一見して理解することができる効果がある。
【0017】
請求項4に記載した発明によれば、前輪と地表面との位置関係を正確に表示することができるため、運転者が地表面との距離感や転舵方向などをより一層一見して理解することができる効果がある。
【0018】
請求項5に記載した発明によれば、運転者が前輪の向きを確実に把握することができるため、運転者が次にどの方向に転舵すれば良いかを直感的に理解することができる効果がある。
【0019】
請求項6に記載した発明によれば、運転者が車両の進路方向と周囲の障害物などとの関係を確実に把握することができるため、運転者が次にどの方向に車両を進めればよいかを一見して理解することができる効果がある。
【0020】
請求項7に記載した発明によれば、処理を高速化して地表面の映像を合成することができるため、常に正確な映像を表示することができる効果がある。
【0021】
請求項8に記載した発明によれば、地表面映像を立体的に認識することができるため、運転者が地表面との距離感や転舵方向などを更により一層一見して理解することができる効果がある。
【0022】
請求項9に記載した発明によれば、車体部材によって運転者の死角になっている領域の映像を、運転者にとって視認可能な直接視界を補うように表示することができるため、運転者が直接視界と同等に違和感なく認識することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
なお、本実施形態における各装置の取付方向や位置を示す定義は、車両進行方向を前方とし、車両進行方向に向かって右方向及び左方向を定義するものとする。
図1は、本実施形態における車両用表示装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両用表示装置1は、車両用表示装置1を制御するCPU(中央演算装置)を備えたECU(Electronic Control Unit)2と、車両周辺を撮影可能なCCDカメラからなる地表面撮影用カメラ3と、運転者の頭部周辺を撮影可能なCCDカメラからなる運転者撮影用カメラ4と、地表面撮影用カメラ3により撮影された地表面映像などを表示可能な液晶ディスプレイ5と、から構成されている。
地表面撮影用カメラ3、運転者撮影用カメラ4、及び液晶ディスプレイ5は、光ファイバーケーブルなどの通信ケーブルによりECU2と通信可能に接続されている。
【0024】
図2は、車両用表示装置の半透明車体モデル及び地表面モデルのイメージ図である。
図2に示すように、ECU2には、予め自車の車両構造物を地表面映像の邪魔にならないよう、透過指定/ワイヤフレームなどを任意に組み合わせて半透明表示処理をした半透明車体モデル11の画像データが内蔵されている。また、ECU2には、地表面を構成する三次元メッシュからなる地表面モデル12の画像データが内蔵されている。
図1に戻り、ECU2は、更に、合成手段13、接地面検出手段14、前輪動作検出手段15、予測手段16、及び凹凸検出手段17を備えている。
【0025】
合成手段13は、運転者側から透過した半透明車体モデル11と、地表面撮影用カメラ3により撮影した地表面映像とを合成するものであり、合成する際に接地面検出手段14、前輪動作検出手段15、予測手段16、及び凹凸検出手段17により得られた情報も合成可能に構成されている。
更に、合成手段13は、地表面合成手段18と凹凸合成手段19とを備えている。
地表面合成手段18は地表面モデル12に地表面撮影用カメラ3で撮影した地表面映像を合成するものであり、凹凸合成手段19は地表面モデル12に凹凸検出手段17で検出された地表面の凹凸を合成するものである。
【0026】
接地面検出手段14は、車両21の前輪29と地表面との接地面30を検出するものである。また、前輪動作検出手段15は、車両21の前輪29の向きを検出するものである。更に、予測手段16は、車両21の前輪29の向きや車両21の運転速度などから前輪29の進路軌跡31を予測するものである。そして、凹凸検出手段17は、地表面撮影用カメラ3で撮影された地表面映像の凹凸を検出するものである。
【0027】
更に、ECU2は、補正手段20を備えている。
補正手段20は、合成手段13で得られた映像を、運転者撮影用カメラ4にて得られた運転者のアイポイントに基づいて、死角領域aにあたる部分を抽出すると共に、映像を変形加工するものである。この補正手段20により得られた映像を液晶ディスプレイ5に表示されるように構成されている。
【0028】
また、液晶ディスプレイ5は、運転者から死角となる領域と運転者との間に配置されている。なお、液晶ディスプレイ5は、運転者から死角となる領域が複数箇所存在する場合は、複数用意されるものとする。
【0029】
次に、図3は車両用表示装置の各装置の取付位置及びカメラの撮影方向を示す模式図であり、図4は車両用表示装置の各装置の取付位置を示す車室内の模式図である。なお、ここでは一例として、運転者の前方視界に関して、運転者の死角領域を表示する車両用表示装置1について説明する。
図3に示すように、車両21の車室内右前方に運転者が着座する運転席22が配置されている。また、車室の前方にはエンジンなどが搭載されたエンジンルーム23が形成されている。
【0030】
図4に示すように、車室内の前面には、ハンドル24などが備え付けられたインストルメントパネル25が設けられている。インストルメントパネル25の幅方向中央部の上面には、運転者撮影用カメラ4が設けられており、インストルメントパネル25の助手席側表面には横長の形状をした液晶ディスプレイ5が設置されている。
【0031】
図3に戻り、車両21の幅方向両側には、フロントドア26が開閉可能に形成されており、フロントドア26にはドアミラー27が設けられている。そして、左側のドアミラー27の最下部には、地表面撮影用カメラ3が設置されている。また、エンジンルーム23を覆うようにフロントボディ28が設けられている。なお、フロントボディ28は、ボンネット28aと、フロントフェンダー28bとで構成されている。
【0032】
地表面撮影用カメラ3は、前輪29を含む地表面を撮影可能で、かつ、運転者の視線から見て、フロントボディ28などにより死角となっている死角領域aを少なくとも含む撮影範囲bを有したものである。更に、地表面を車両真上から見下ろしたときの見え方(俯瞰画像)となるように配置されるか、この時点で映像の角度補正を行うように構成されている。
また、液晶ディスプレイ5は、撮影範囲bから死角領域aを抽出した死角領域映像cなどを表示可能に構成されている。
【0033】
次に作用について説明する。
図5のフローチャートに基づいて車両用表示装置の基本的な処理を説明する。
図5に示すように、ステップ1(S1)では、運転者の視界を遮蔽している車両21の部品の三次元モデル(半透明車体モデル11)を予め設定する。この半透明車体モデル11は、三次元メッシュで構成されており、半透明形状をしている。また、半透明車体モデル11は、車両21の左側の前輪29を含んでいる。半透明車体モデル11の画像データを設定した後に、ステップ2(S2)へ進む。
【0034】
S2では、地表面撮影用カメラ3で撮影された映像を貼り付ける地表面の三次元モデル(地表面モデル12)を予め設定する。この地表面モデル12は、三次元メッシュで構成されている。地表面モデル12の画像データを設定した後に、ステップ3(S3)へ進む。
S3では、地表面撮影用カメラ3により地表面の最新映像を取得したか否かを判定する。最新映像を取得するまでは、S3の処理を繰り返す。最新映像が取得されると、ステップ4(S4)へ進む。
【0035】
S4では、地表面モデル12に地表面撮影用カメラ3で撮影された映像を、テクスチャとして貼り付ける(合成手段13)。このとき、地表面の単純な(歪みの無い)俯瞰映像を貼り付ける。映像を貼り付けた後に、ステップ5(S5)へと進む。
S5では、運転者撮影用カメラ4により運転者の頭部周辺の映像を撮影し、撮影された映像から運転者の目の位置(アイポイント)を検出する。アイポイントを検出した後に、ステップ6(S6)へ進む。
【0036】
S6では、S5で検出された運転者のアイポイントに基づいて、S4で得られた映像を加工変形(レンダリング)する(補正手段20)。映像をレンダリングした後に、ステップ7(S7)へ進む。
S7では、補正手段20にて運転者の死角領域aとなる範囲の映像(死角領域映像c)を抽出し、液晶ディスプレイ5に表示する。液晶ディスプレイ5に表示した後に、ステップ8(S8)へと進む。
S8では、運転を継続中か否かを判定する。運転継続中の場合は、S3に戻り、運転終了の場合は、上記処理を終了する。
【0037】
図6は、上述のフローチャートによる処理により液晶ディスプレイに表示された映像表示例の模式図である。
図6に示すように、補正手段20により得られた地表面映像と半透明車体モデル11とが合成されたものが液晶ディスプレイ5に表示される。この映像は、運転者のアイポイントから見た視点で、運転者の視界を遮蔽しているフロントボディ28などをあたかも透視したようなものである。
【0038】
車両21を運転することにより運転者の死角領域aが連続的に移動していくため、上記S3からS7を連続的に繰り返し、常に正確な死角領域aの映像(死角領域映像c)が液晶ディスプレイ5に表示されるように制御される。運転を終了すると上述の処理も終了となる。
【0039】
次に、図7のフローチャートに基づいて車両用表示装置の三次元モデルを動的に変形させた場合の処理を説明する。
図7に示すように、ステップ11(S11)はS1と同様、ステップ12(S12)はS2と同様、またステップ13(S13)はS3と同様のため、説明を省略する。S13で地表面の最新映像を取得すると、ステップ14(S14)へ進む。
【0040】
S14では、車両21の舵角、車速、及びギアポジションなどの車両情報を取得する。車両情報を取得した後に、ステップ15(S15)へ進む。
S15では、前輪29と地表面との接地面30を検出し、周囲の色彩と異なる色で表現するなどして、接地面30の位置を分かりやすくする処理を行う(接地面検出手段14)。次に、ステップ16(S16)へ進む。
S16では、車両21に内蔵されているコントローラと通信したり、センサ類を付加することによって前輪29の切れ角や回転速度を検出し、三次元オブジェクトであるタイヤモデルを実際の前輪29と同じ方向を向くように液晶ディスプレイ5の画面内に表示する(前輪動作検出手段15)。次に、ステップ17(S17)へ進む。
【0041】
S17では、前輪29の切れ角とギアポジションから、現時点及び今後前輪29が通過する進路軌跡31を算出して三次元オブジェクト化し、地表面映像に合成する(予測手段16)。この処理では、前輪29の切れ角から回転半径が推定でき、ギアポジションから進行方向が推定できるため、進路軌跡31を算出することができる。次に、ステップ18(S18)へ進む。
S18では、地表面撮影用カメラ3で撮影された地表面映像から、地表面形状の凹凸を検出する(凹凸検出手段17)。地表面形状の凹凸を取得した後に、ステップ19(S19)へ進む。
【0042】
S19では、地表面の三次元モデルをS17で得られた地表面形状の凹凸にしたがって変形処理を行う(地表面合成手段18及び凹凸合成手段19)。その後、ステップ20(S20)へ進む。
S20はS4と同様、ステップ21(S21)はS5と同様、ステップ22(S22)はS6と同様、ステップ23(S23)はS7と同様、またステップ24(S24)はS8と同様のため、説明は省略する。
【0043】
図8は、上述のフローチャートによる処理により液晶ディスプレイに表示された映像表示例の模式図である。
図8に示すように、補正手段20により得られた死角領域映像cと半透明車体モデル11とが合成されたものが液晶ディスプレイ5に表示される。この映像は、運転者のアイポイントから見た視点で、運転者の視界を遮蔽しているフロントボディ28などをあたかも透視したようなものである。
【0044】
また、半透明車体モデル11のタイヤの向きが実際のタイヤの向きと同じ方向を向いた状態で表示されると共に、タイヤと地表面との接地面30が周囲と一目でその差が分かるように異なる色彩などにより表示されている。更に、車両21の現状の舵角、車速、及びギアポジションなどから将来の進路軌跡31が併せて表示される。そして、地表面映像がより立体的に表示される。
【0045】
車両21を運転することにより運転者の死角領域aが連続的に移動していくため、上記S13からS22を連続的に繰り返し、常に正確な死角領域aの映像(死角領域映像c)が液晶ディスプレイ5に表示されるように制御される。運転を終了すると上述の処理も終了となる。
【0046】
ここで、上述の処理周期は、地表面映像を撮影する地表面撮影用カメラ3の画像取得周期か、その約数から選択する。具体的には、地表面撮影用カメラ3が60FPS(Frame Per Second)である場合、処理周期は60Hz、30Hz、20Hz、又は15Hz(各々、毎回処理、2コマ毎、3コマ毎、又は4コマ毎の処理)となる。
【0047】
次に、図9は、運転席12に着座した運転者のアイポイントから見える車両21のフロントウインドウガラスからの視界と、液晶ディスプレイ5に表示された映像との関係を示す模式図である。
図9に示すように、液晶ディスプレイ5に表示される映像は、二次元映像ソースを用いながらも、運転者には遠近感など、直視と同様に自車と車外の様子を認識することができ、通常の有視界運転と視点が同じであることからシームレスに使用できる。また、三次元モデル化された地表物をリアルなテクスチャで表示させることで、立体的な障害物などを見やすく表示することができる。
【0048】
上述の実施形態によれば、フロントボディ28などの車体部材によって形成される死角領域aを少なくとも含む撮影範囲bを有した地表面撮影用カメラ3で撮影した地表面映像と、半透明車体モデル11とを合成した合成映像を液晶ディスプレイ5に表示するようにした。
また、合成映像を表示する際に、運転者のアイポイントを検出し、その検出結果に基づいて、合成映像から死角領域aを抽出した死角領域映像cを液晶ディスプレイ5に表示するようにした。
【0049】
このように構成することで、運転中の車両の構成物によって遮蔽されて形成される運転者の死角は、体格や姿勢の違いに起因するアイポイントの変化によって、死角の方向や地表面の見え方が変化するが、予めデータ化された構成物や地表面の三次元モデルを準備し、アイポイント検出手段によってビューポイントを制御してレンダリングし、その結果を遮蔽物の手前に設置した液晶ディスプレイに表示することで、実際の景色とつながりの良い映像を得ることができる。したがって、運転者が障害物までの距離感や転舵方向などを一見して理解することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、前輪29と地表面との接地面30を分かりやすく表示するようにすると共に、半透明車体モデル11のタイヤの向きを実際の前輪29の向きと同じ方向を向けた状態で表示するようにし、車両21の将来的な進路軌跡31を表示するようにした。更に、地表面映像をより立体的に表示できるようにした。
このように構成することで、より詳細な情報を液晶ディスプレイ5に表示された映像から直感的に理解することができるようになるため、運転者が障害物までの距離感や転舵方向などをより一層一見して理解することができる。
【0051】
尚、この発明は上述した実施形態に限られるものではなく、以下の態様を用いてもよい。
上記実施形態では、ドアミラーに地表面撮影用カメラを設置したが、必要な映像を得られる位置であれば、設置位置には拘らない。
上記実施形態では、1台の地表面撮影用カメラを用いたが、2台以上のカメラを用いてもよい。
上記実施形態では、地表面撮影用カメラ及び運転者撮影用カメラにCCDカメラを採用したが、カメラであればどのようなものでも構わない。
上記実施形態では、表示手段に液晶ディスプレイを採用した説明をしたが、必要な映像を表示可能なものであれば液晶ディスプレイでなくてもよい。
上記実施形態では、アイポイント検出手段の検出結果に基づいて合成手段により形成された合成映像を補正する構成としたが、地表面撮影用カメラによって取得した映像と半透明モデルとを合成する前に補正してもよい。
上記実施形態では、運転者の前方視界に関しての説明をしたが、運転者の側方及び後方などの方向の視界を遮る箇所に同様の車両用表示装置を設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態における車両用表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における車両用表示装置の半透明車体モデル及び地表面モデルのイメージ図である。
【図3】本発明の実施形態における車両用表示装置の各装置の取付位置及びカメラの撮影方向を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態における車両用表示装置の各装置の取付位置を示す車室内の模式図である。
【図5】本発明の実施形態における車両用表示装置の基本的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートによる処理により液晶ディスプレイに表示される映像表示例の模式図である。
【図7】本発明の実施形態における車両用表示装置の三次元モデルを動的に変形させる場合の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートによる処理により液晶ディスプレイに表示される映像表示例の模式図である。
【図9】本発明の実施形態における車両用表示装置の映像表示例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1…車両用表示装置 3…地表面撮影用カメラ(死角撮影手段) 4…運転者撮影用カメラ(アイポイント検出手段) 5…液晶ディスプレイ(表示手段) 11…半透明車体モデル 12…地表面モデル 13…合成手段 14…接地面検出手段 15…前輪動作検出手段 16…予測手段 17…凹凸検出手段 18…地表面合成手段 19…凹凸合成手段 20…補正手段 21…車両 28…フロントボディ(車体部材) 29…前輪


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体部材によって形成される運転者の死角領域を撮影する死角撮影手段と、該死角撮影手段によって撮影した前記死角領域を前記運転者に対し表示する表示手段と、を設けた車両用表示装置において、
前記車体部材を前記運転者側から透過した半透明車体モデルと、前記死角撮影手段によって撮影した死角領域映像とを合成する合成手段を備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記運転者のアイポイントを検出するアイポイント検出手段を設け、
該アイポイント検出手段の検出結果に基づいて前記表示手段によって表示する映像を補正する補正手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記半透明車体モデルは車両の前輪を含み、前記死角撮影手段は前記前輪近傍の地表面を撮影することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記前輪と前記地表面との接地面を検出する接地面検出手段を備え、
前記接地面の映像を前記半透明車体モデルに合成することを特徴とする請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記前輪の動作を検出する前輪動作検出手段を備え、
前記前輪の動作を前記半透明車体モデルに合成することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記前輪の将来動作を予測する予測手段を備え、
該予測手段に基づいて設定される進路軌跡を前記半透明車体モデルに合成することを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記前輪が接地する前記地表面に対応する地表面モデルを備え、
前記合成手段は、前記地表面モデルに前記地表面の映像を合成する地表面合成手段を備えたことを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記地表面の凹凸を検出する凹凸検出手段を備え、
前記合成手段は、前記凹凸を前記地表面モデルに合成する凹凸合成手段を備えたことを特徴とする請求項7に記載の車両用表示装置。
【請求項9】
前記表示手段を前記車体部材と前記運転者との間に設け、外部視界と前記表示手段の映像とが連続して見えるように表示することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の車両用表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−42235(P2008−42235A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209646(P2006−209646)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】