説明

車両用走行制御装置

【課題】運転者のブレーキ操作がない状態で制動力を多用するときに、制動機構のフェード傾向を運転者に認識させて、その抑制を促す。
【解決手段】運転者のブレーキ操作がない状態で自動ブレーキを作動させる頻度に応じてフェード警報を運転者に報知する。すなわち、自動ブレーキを作動させた回数をカウントし(ステップS32、S33)、カウントした回数が所定値を超えたときに(ステップS36の判定が“Yes”)、警報装置9によってフェード警報を運転者に報知する(ステップS39)。また、自動ブレーキがON/OFFを繰返すようなハンチングによって、不必要にカウント数が増加することがないように、同一旋回中であれば自動ブレーキを作動させた回数が2回以上であっても1回としてカウントする(ステップS22〜S28、S32、S33)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した旋回走行を図る車両用走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の旋回速度や旋回半径が、旋回性能の限界を超えないように、自動ブレーキを作動させることにより、安定した旋回走行を図るものがあった(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2600876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来例にあっては、長い下り坂が続くワインディング路などで、運転者のブレーキ操作によらず自動ブレーキをかけ続けた場合、フェード現象が徐々に進行しても運転者にとっては認識しにくい。そのため、運転者がブレーキペダルを踏込んだときに、フェード現象が大きく進行していると、所望の制動力を発生させる為のブレーキ操作量が通常の状態よりも大きくなり、運転者に違和感を与える可能性がある。
本発明の課題は、運転者のブレーキ操作がない状態で制動力を多用するときに、制動機構のフェード傾向を運転者に認識させて、その抑制を促すことである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用走行制御装置は、自車両の減速が必要なときに制動力を作動させるものであって、運転者のブレーキ操作がない状態で制動力を作動させる頻度に応じて警報を発することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明に関わる車両用走行制御装置によれば、運転者のブレーキ操作がない状態で制動力を作動させる頻度に応じて警報を発することで、運転者にブレーキ操作を促すと共に、制動機構のフェード傾向を運転者に認識させて、その抑制を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の概略構成を示すブロック図である。各車輪の車輪速度Vwi(i=FL〜RR)を検出する電磁誘導式の車輪速センサ1と、ステアリングホイールの操舵角θを検出する光学式・非接触型の操舵角センサ2と、車体のヨーレートφDを検出するヨーレートセンサ3と、アクセルペダルのアクセル開度Accを検出するアクセルセンサ4と、がコントローラ5に接続されている。
【0007】
コントローラ5は、例えばマイクロコンピュータで構成されており、各センサからの検出信号に基づいて後述する図3の旋回走行制御処理を実行し、エンジン出力制御装置6と制動力制御装置8とを駆動制御して車両の旋回状態に応じた自動減速を行う。さらに、後述する図4のフェード警報処理を実行し、ブレーキフェード傾向を検知したときに警報装置9を駆動制御してフェード警報を運転者に発する。
【0008】
先ず、エンジン出力制御装置6は、エンジン7におけるスロットルバルブの開度、燃料噴射量、点火時期などを調整することによって、エンジン出力(回転数やエンジントルク)を制御するように構成されている。
また、制動力制御装置8は、図2に示すように、マスターシリンダ10と各ホイールシリンダ11FL〜11RRとの間に介装されている。
【0009】
マスターシリンダ10は、運転者のペダル踏力に応じて2系統の液圧を作るタンデム式のもので、プライマリ側をフロント左・リア右のホイールシリンダ11FL・11RRに伝達し、セカンダリ側を右前輪・左後輪のホイールシリンダ11FR・11RLに伝達するダイアゴナルスプリット方式を採用している。
各ホイールシリンダ11FL〜11RRは、ディスクロータをブレーキパッドで挟圧して制動力を発生させるディスクブレーキや、ブレーキドラムの内周面にブレーキシューを押圧して制動力を発生させるドラムブレーキに内蔵されている。
【0010】
制動力制御装置8は、アンチスキッド制御(ABS)、トラクション制御(TCS)、スタビリティ制御(VDC:Vehicle Dynamics Control)等に用いられる制動流体圧制御回路を利用したものであり、運転者のブレーキ操作に係らず各ホイールシリンダ11FL〜11RRの液圧を増圧・保持・減圧できるように構成されている。
【0011】
プライマリ側は、マスターシリンダ10及びホイールシリンダ11FL(11RR)間の流路を閉鎖可能なノーマルオープン型の第1ゲートバルブ12Aと、第1ゲートバルブ12A及びホイールシリンダ11FL(11RR)間の流路を閉鎖可能なノーマルオープン型のインレットバルブ13FL(13RR)と、ホイールシリンダ11FL(11RR)及びインレットバルブ13FL(13RR)間に連通したリザーバ14と、ホイールシリンダ11FL(11RR)及びリザーバ14間の流路を開放可能なノーマルクローズ型のアウトレットバルブ15FL(15RR)と、マスターシリンダ10及び第1ゲートバルブ12A間とリザーバ14及びアウトレットバルブ15FL(15RR)間とを連通した流路を開放可能なノーマルクローズ型の第2ゲートバルブ16Aと、リザーバ14及びアウトレットバルブ15FL(15RR)間に吸入側を連通し、且つ第1ゲートバルブ12A及びインレットバルブ13FL(13RR)間に吐出側を連通したポンプ17と、を備えている。また、ポンプ17の吐出側には、吐出されたブレーキ液の脈動を抑制し、ペダル振動を弱めるダンパー室18が配設されている。
【0012】
また、セカンダリ側も、プライマリ側と同様に、第1ゲートバルブ12Bと、インレットバルブ13FR(13RL)と、リザーバ14と、アウトレットバルブ15FR(15RL)と、第2ゲートバルブ16Bと、ポンプ17と、ダンパー室18と、を備えている。
第1ゲートバルブ12A・12Bと、インレットバルブ13FL〜13RRと、アウトレットバルブ15FL〜15RRと、第2ゲートバルブ16A・16Bとは、夫々、2ポート2ポジション切換・シングルソレノイド・スプリングオフセット式の電磁操作弁であって、第1ゲートバルブ12A・12B及びインレットバルブ13FL〜13RRは、非励磁のノーマル位置で流路を開放し、アウトレットバルブ15FL〜15RR及び第2ゲートバルブ16A・16Bは、非励磁のノーマル位置で流路を閉鎖するように構成されている。
また、ポンプ17は、負荷圧力に係りなく略一定の吐出量を確保できる歯車ポンプ、ピストンポンプ等、容積形のポンプで構成されている。
【0013】
以上の構成により、プライマリ側を例に説明すると、第1ゲートバルブ12A、インレットバルブ13FL(13RR)、アウトレットバルブ15FL(15RR)、及び第2ゲートバルブ16Aが全て非励磁のノーマル位置にあるときに、マスターシリンダ2からの液圧がそのままホイールシリンダ11FL(11RR)に伝達され、通常ブレーキとなる。
【0014】
また、ブレーキペダルが非操作状態であっても、インレットバルブ13FL(13RR)、及びアウトレットバルブ15FL(15RR)を非励磁のノーマル位置にしたまま、第1ゲートバルブ12Aを励磁して閉鎖すると共に、第2ゲートバルブ16Aを励磁して開放し、更にポンプ17を駆動することで、マスターシリンダ2の液圧を第2ゲートバルブ16Aを介して吸入し、吐出される液圧をインレットバルブ13FL(13RR)を介してホイールシリンダ11FL(11RR)に伝達し、増圧させることができる。
【0015】
また、第1ゲートバルブ12A、アウトレットバルブ15FL(15RR)、及び第2ゲートバルブ16Aが非励磁のノーマル位置にあるときに、インレットバルブ13FL(13RR)を励磁して閉鎖すると、ホイールシリンダ11FL(11RR)からマスターシリンダ2及びリザーバ14への夫々の流路が遮断され、ホイールシリンダ11FL(11RR)の液圧が保持される。
【0016】
さらに、第1ゲートバルブ12A及び第2ゲートバルブ16Aが非励磁のノーマル位置にあるときに、インレットバルブ13FL(13RR)を励磁して閉鎖すると共に、アウトレットバルブ15FL(15RR)を励磁して開放すると、ホイールシリンダ11FL(11RR)の液圧がリザーバ14に流入して減圧される。リザーバ14に流入した液圧は、ポンプ17によって吸入され、マスターシリンダ2に戻される。
【0017】
セカンダリ側に関しても、通常ブレーキ・増圧・保持・減圧の動作は、上記プライマリ側の動作と同様であるため、その詳細説明は省略する。
したがって、コントローラ5は、第1ゲートバルブ12A・12Bと、インレットバルブ13FL〜13RRと、アウトレットバルブ15FL〜15RRと、第2ゲートバルブ16A・16Bと、ポンプ17とを駆動制御することによって、各ホイールシリンダ11FL〜11RRの液圧を増圧・保持・減圧する。
なお、本実施形態では、ブレーキ系統をフロント左・リア右とフロント右・リア左とで分割するダイアゴナルスプリット方式を採用しているが、これに限定されるものではなく、フロント左右とリア左右とで分割する前後スプリット方式を採用してもよい。
【0018】
また、本実施形態では、第1ゲートバルブ12A・12B及びインレットバルブ13FL〜13RRが、非励磁のノーマル位置で流路を開放し、アウトレットバルブ15FL〜15RR及び第2ゲートバルブ16A・16Bが、非励磁のノーマル位置で流路を閉鎖するように構成しているが、これに限定されるものではない。要は、各バルブの開閉を行うことができればよいので、第1ゲートバルブ12A・12B及びインレットバルブ13FL〜13RRが、励磁したオフセット位置で流路を開放し、アウトレットバルブ15FL〜15RR及び第2ゲートバルブ16A・16Bが、励磁したオフセット位置で流路を閉鎖するようにしてもよい。
一方、警報装置9は、スピーカやブザーによって警報を報知したり、ディスプレイやランプによって警報を表示したりするように構成されている。
【0019】
次に、コントローラ5で、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込み処理として実行される旋回走行制御処理を、図3のフローチャートに基づいて説明する。
先ずステップS1で、制御フラグfCOPが“1”にセットされているか否かを判定する。この判定結果が『fCOP=0』であるときには、本制御処理を中止するために所定のメインプログラムに復帰する。一方、判定結果が『fCOP=1』であるときには、本制御処理を実行するためにステップS2に移行する。なお、制御フラグfCOPはイグニッションON時に“1”にセットされる。
【0020】
ステップS2では、各車輪速度Vwiに基づいて旋回速度Vを算出する。なお、本実施形態では、各車輪速度Vwiに基づいて旋回速度Vを算出しているが、これに限定されるものではなく、車体の前後加速度を加速度センサで検出し、この前後加速度を加味して旋回速度Vを算出してもよい。
続くステップS3では、図5のブロック図に従って車体のヨーレートφを算出する。
【0021】
先ず、図6に示すように、操舵角θと旋回速度Vとに応じてヨーレート推定値φEを算出する。そして、下記(1)式に示すように、ヨーレート検出値φDの絶対値とヨーレート推定値φEの絶対値とのセレクトハイによって最終的なヨーレートφを算出する。ここで、検出値φDと推定値φEとのセレクトハイを行うのは、例えば路面摩擦係数μの低い道路で操舵角θがあまり大きくないのにヨーレートφが増加するスロースピンモードの場合には、減速制御をより早く介入させることができるためである。
φ= max[|φD|,|φE|] ………(1)
【0022】
続くステップS4では、下記(2)式に示すように、現在の旋回状態に対する目標旋回速度V*を算出する。ここで、μは路面摩擦係数であり、スリップ率とブレーキ操作量(マスターシリンダ圧)とに基づいて推定したり、路面の画像データと気温とに基づいて推定したり、路面判別センサ(GVS:Grand View Censor)の検出結果に基づいて推定したり、更にはインフラストラクチャから取得したりする。また、YgLは限界横加速度であり、ここでは車両が安定して旋回走行できる所定値(例えば、0.45G)に設定するが、各車輪のスリップ率に応じて可変としてもよい。
*=μ×YgL/|φ| ………(2)
【0023】
続くステップS5では、下記(3)式に示すように、目標減速度Xg*を算出する。ここで、ΔVは旋回速度Vと目標旋回速度V*との偏差(V−V*)であり、tは所定時間であり、kは係数である。
Xg*=k×ΔV/t ………(3)
なお、ここでは単に旋回速度Vと目標旋回速度V*との偏差ΔVに基づいて目標減速度Xg*を算出しているが、これに限定されるものではなく、下記(4)式に示すように、偏差ΔVの増加方向への変化速度(単位時間あたりの変化量)dΔVを加味して目標減速度Xg*を算出してもよい。ここで、k1及びk2は係数である。また、変化速度dΔVは演算周期毎の変化量でもよいし、所定時間内の平均変化量でもよい。
Xg*=(k1×ΔV+k2×dΔV)/t ………(4)
【0024】
続くステップS6では、目標減速度Xg*が0より大きいか否かを判断する。この判定結果が『Xg*≦0』であるときには、減速制御つまり自動減速は不要であると判断して後述するステップS14に移行する。一方、判定結果が『Xg*>0』であるときには、減速制御が必要であると判断してステップS7に移行する。
ステップS7では、ブレーキフラグfBを“1”にセットする。
続くステップS8では、目標減速度Xg*を達成するために必要となる目標制動力F*を算出し増加させる。但し、安定した車両挙動を維持できる程度に制動力が増加するように、所定の変化速度で目標制動力F*を増加させる。
【0025】
続くステップS9では、下記(5)式に示すように、1サンプリング前の目標エンジントルクT*(n-1)から所定量Tdownを減じて目標エンジントルクT*を算出する。但し、T*(n-1)の初期値は、アクセル開度Accに応じたドライバ要求エンジントルクTdriverに設定される。
*=T*(n-1)−Tdown ………(5)
続くステップS10では、目標エンジントルクT*が下限値TMINより小さいか否かを判定する。この判定結果がT*<TMINであるときには、目標エンジントルクT*を絞り過ぎであると判断してステップS11に移行する。
ステップS11では、下記(6)式に示すように、目標エンジントルクT*を下限値TMINに制限してからステップS12に移行する。
* ← TMIN ………(6)
【0026】
一方、上記ステップS10の判定結果がT1*≧TMINであるときには、そのままステップS12に移行する。
ステップS12では、下記(7)式に示すように、目標エンジントルクT*と、アクセル開度Accに応じたドライバ要求エンジントルクTdriverとのセレクトローによって最終的な目標エンジントルクT*を算出する。これは、ドライバ要求エンジントルクTdriverが下限値TMIN未満となるまで減少したときに、このドライバ要求エンジントルクTdriverに目標エンジントルクT*を追従させ、運転者の意思を反映させるためである。
*= min[T* ,Tdriver] ………(7)
【0027】
続くステップS13では、目標エンジントルクT*に応じてエンジン出力制御装置6を駆動制御すると共に、目標制動力F*に応じて制動力制御装置8を駆動制御してから所定のメインプログラムに復帰する。
一方、前記ステップS6から移行するステップS14では、ブレーキフラグfBが“1”にセットされているか否かを判定する。この判定結果が『fB=0』であるときには、自動ブレーキを含む減速制御が開始されていない、又は既に終了していると判断して後述するステップS19に移行する。一方、判定結果が『fB=1』であるときには、自動ブレーキを含む減速制御が開始されていると判断してステップS15に移行する。
【0028】
ステップS15では、前記ステップS8の処理で増加させた分だけ目標制動力F*を減少させる。但し、安定した車両挙動を維持できる程度に制動力が減少するよう、所定の変化速度で目標制動力F*を減少させる。
続くステップS16では、下記(8)式に示すように、1サンプリング前の目標エンジントルクT*(n-1)に所定量Tupを加算して目標エンジントルクT*を算出する。
*=T*(n-1)+Tup ………(8)
【0029】
続くステップS17では、自動ブレーキを含む減速制御が終了したか否か、つまり上記ステップS15により目標制動力F*の増加分が解除され、且つステップS16の処理により目標エンジントルクT*が現時点でのドライバ要求エンジントルクTdriverに復帰したか否かを判定する。ここで、目標制動力F*の増加分が解除され、且つ目標エンジントルクT*がTdriverに復帰しているときには、減速制御が終了したと判断してステップS18に移行する。
【0030】
ステップS18では、ブレーキフラグfBを“0”にリセットしてから前記ステップS13に移行する。
一方、上記ステップS17で、目標制動力F*の増加分が解除されていない、又は目標エンジントルクT*がTdriverに復帰していないときには、減速制御が終了していないと判断してそのまま前記ステップS13に移行する。
一方、前記ステップS14から移行するステップS19では、自動減速に先立つ予圧制御が必要であるか否かを判断する。
【0031】
本実施形態のようにポンプ17を圧力発生源とするポンプアップ式のアクチュエータでは、制動力制御装置8の駆動制御を開始してから、実際にホイールシリンダ11FL〜11RRの液圧が上昇して車両に制動力が発生するまでに無駄時間(例えば、300msec)がある。そこで、予圧制御では、制動力が発生するまでの無駄時間を考慮して、自動減速が開始される前に予めホイールシリンダ11FL〜11RRに予圧(例えば、3kgf/cm2)を発生させておくことで、自動減速を行うときの初期の応答性を向上させる。
【0032】
したがって、このステップS19では、無駄時間に相当するΔt秒後の目標車速V*と旋回速度Vとを夫々の変化速度から算出し、Δt秒後に旋回速度Vが目標車速V*を上回ると推定したときに予圧制御が必要であると判断し、Δt秒後に旋回速度Vが目標車速V*を上回らないと推定したときに予圧制御が不要であると判断する。或いは、Δt秒後の目標車速V*の逆数をその変化速度から算出し、Δt秒後の目標車速V*の逆数が現時点の旋回速度Vの逆数より大きいときに予圧制御が必要であると判断し、Δt秒後の目標車速V*の逆数が現時点の旋回速度Vの逆数より小さいときに予圧制御が不要であると判断するようにしてもよい。何れにしても、予圧制御が不要であると判断されたときには、そのまま所定のメインプログラムに復帰し、予圧制御が必要であると判断されたときには、ステップS20に移行する。
【0033】
ステップS20では、ポンプ17を起動状態にし、ホイールシリンダ11FL〜11RRに例えば3[kgf/cm2]程度の予圧を発生させてから、所定のメインプログラムに復帰する。
次に、コントローラ5で、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込み処理として実行されるフェード警報処理を、図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
先ずステップS21では、フェードフラグfFが“0”にリセットされているか否かを判定する。この判定結果が『fF=1』であるときには、既にフェード傾向を検知していると判断して後述するステップS42に移行する。一方、判定結果が『fF=0』であるときには、まだフェード傾向を検知していないと判断してステップS22に移行する。なお、フェードフラグfFはイグニッションON時に“0”にリセットされる。
【0035】
ステップS22では、ブレーキフラグfBが“1”にセットされているか否かを判定する。この判定結果が『fB=0』であるときには、自動ブレーキは非作動状態であると判断して後述するステップS25に移行する。一方、判定結果が『fB=1』であるときには、自動ブレーキが作動状態にあると判断してステップS23に移行する。
ステップS23では、下記(9)式に示すように、自動ブレーキが非作動状態に移行してからの経過時間を計測するためのタイマtNに初期値t1をセットする。この初期値t1は、演算周期毎に1ずつデクリメントすると、例えば10sec後に0となるような値に設定する。
N ← t1 ………(9)
【0036】
続くステップS24では、旋回フラグFTを“1”にセットしてから後述するステップS29に移行する。
一方、前記ステップS22から移行するステップS25では、タイマtNが0より大きいか否かを判定する。この判定結果が『tN>0』であるときには、自動ブレーキが非作動状態に移行してから、まだ所定時間t1が経過していないと判断してステップS26に移行する。一方、判定結果が『tN=0』であるときには、自動ブレーキが非作動状態に移行してから所定時間t1が経過したと判断してステップS27に移行する。
【0037】
ステップS26では、下記(10)式に示すように、タイマtNから1だけデクリメントしてからステップS27に移行する。
N=tN−1 ………(10)
ステップS27では、操舵角の絶対値|θ|が所定値θ1より小さい、又はタイマtNが0であるか否かを判定する。この判定結果が『|θ|≧θ1、且つtN>0』であるときには、自動ブレーキが開始されたときと同一の旋回操作中であると判断してステップS29に移行する。一方、判定結果が『|θ|<θ1、又はtN=0』であるときには、自動ブレーキの作動が開始されたときの旋回操作は終了していると判断してステップS28に移行する。
【0038】
ステップS28では、旋回フラグfTを“0”にリセットしてからステップS29に移行する。
ステップS29では、運転者のブレーキ操作があり、且つ旋回フラグfTが“0”にリセットされているか否かを判定する。
ここで、運転者のブレーキ操作は、ブレーキペダルのスイッチがONで、且つマスターシリンダ圧力が所定値以上であるときに運転者のブレーキ操作があると判断する。マスターシリンダ圧力に対する所定値は、センサのドリフトやノイズ等による誤検出を防止するために、運転者が確実にブレーキペダルを踏込んでいることを認識できるような値に設定し、例えば、5[kgf/cm2]程度である。また、ペダルスイッチ及びマスターシリンダ圧力の双方を考慮しているのは、運転者のブレーキ操作の有無をより確実に判断するためである。
【0039】
この判定結果が『ブレーキ操作なし、又はfT=1』であるときには、後述するステップS32に移行する。一方、『ブレーキ操作あり、且つfT=0』であるときには、ステップS30に移行する。
ステップS30では、下記(11)式に示すように、フェードカウンタCを0にリセットする。
C=0 ………(11)
【0040】
続くステップS31では、下記(12)式に示すように、自動ブレーキの連続作動時間を計測するためのタイマtCに初期値t2をセットしてから後述するステップS36に移行する。この初期値t2は、演算周期毎に1ずつデクリメントすると、例えば60sec後に0となるような値に設定する。これは、自動ブレーキの市場での使われ方から想定し得る最長の連続作動時間や、ブレーキフェード現象の兆候が検知される連続作動時間に基づいて決定する。
C ← t2 ………(12)
【0041】
一方、前記ステップS29から移行するステップS32では、旋回フラグの前回値fT(n-1)が“0”にリセットされていて、且つ今回値fT(n)が“1”にセットされているか否かを判定する。この判定結果が『fT(n-1)=1、又はfT(n)=0』であるときには、自動ブレーキの作動回数を既にカウント済みである、又は自動ブレーキが非作動状態であると判断して後述するステップS34に移行する。一方、判定結果が『fT(n-1)=0、且つfT(n)=1』であるときには、新たな旋回操作によって自動ブレーキが作動したと判断してステップS33に移行する。
【0042】
ステップS33では、下記(13)式に示すように、フェードカウンタCに1だけインクリメントしてから前記ステップS31に移行する。
C=C+1 ………(13)
一方、前記ステップS32から移行するステップS34では、ブレーキフラグfBが“1”にセットされているか否かを判定する。この判定結果が『fB=0』であるときには、自動ブレーキが非作動状態であると判断して前記ステップS31に移行する。一方、判定結果が『fB=1』であるときには、自動ブレーキが作動状態であると判断してステップS35に移行する。
【0043】
ステップS35では、下記(14)式に示すように、タイマtCから1だけデクリメントしてからステップS36に移行する。
C=tC−1 ………(14)
ステップS36では、フェードカウンタCが所定値C1以上である、又はタイマtCが0であるか否かを判定する。この判定結果が『C<C1、且つtC>0』であるときには、フェード傾向はなく、且つ自動ブレーキの連続作動時間も正常であると判断して所定のメインプログラムに復帰する。一方、判定結果が『C≧C1、又はtC=0』であるときには、フェード傾向がある、又は自動ブレーキの連続作動時間が異常であると判断してステップS37に移行する。
【0044】
ステップS37では、フェードフラグfFを“1”にセットする。
続くステップS38では、ブレーキフラグfBが0にリセットされている、又はタイマtCが0であるか否かを判定する。この判定結果が『fB=1、且つtC>0』であるときには、自動ブレーキを中止できないと判断して所定のメインプログラムに復帰する。一方、『fB=0、又はtC=0』であるときには、自動ブレーキの中止が可能、又は自動ブレーキを中止すべきと判断してステップS39に移行する。
ステップS39では、警報装置9を駆動制御して、運転者にフェード警報を発する。
続くステップS40では、警報フラグfWを“1”にセットする。
続くステップS41では、制御フラグfCOPを“0”にリセットしてから所定のメインプログラムに復帰する。
【0045】
一方、前記ステップS21から移行するステップS42では、警報フラグfWが“1”にセットされているか否かを判定する。この判定結果が『fW=1』であるときには、既にフェード警報を報知していると判断して所定のメインプログラムに復帰する。一方、判定結果が『fW=0』であるときには、まだフェード警報を報知していないと判断してステップS43に移行する。なお、警報フラグfWはイグニッションON時に“0”にリセットされる。
ステップS43では、前記ステップS35の処理と同様に、タイマtCから1だけデクリメントしてから前記ステップS38に移行する。
以上より、図3の旋回走行制御処理が「制動制御手段」に対応し、図4のフェード警報処理が「警報手段」に対応している。
【0046】
次に、上記一実施形態の動作や作用効果について説明する。
今、車両が旋回走行しているとする。このとき、目標減速度Xg*が0以下であるときには(ステップS6の判定が“No”)、安定した旋回走行が維持されているので、減速制御つまり自動ブレーキの必要はないと判断する。そこで、運転者のアクセル操作に応じた通常のエンジントルクとなるようにエンジン出力制御装置6を非駆動状態にすると共に、運転者のブレーキ操作に応じた通常ブレーキとなるように制動力制御装置8を非駆動状態にする。
【0047】
この状態から、運転者のステアリング操作量が増加する、或いは運転者のアクセル操作量が増加し、目標減速度Xg*が0より大きくなったときには(ステップS6の判定が“Yes”)、車両の旋回状態が旋回性能の限界に接近しているので、減速制御つまり自動減速を要すると判断する。
そこで、目標減速度Xg*を達成するために、制動力制御装置8を駆動制御して各ホイールシリンダ11FL〜11RRの液圧を増加させると共に、エンジン出力制御装置6を駆動制御してエンジントルクを減少させることによって、自動減速を行い、安定した旋回走行を図る(ステップS8、S9、S13)。
【0048】
また、目標減速度Xg*が0より大きくなる直前に、予圧制御が実行されているので(ステップS20)、既にホイールシリンダ11FL〜11RRには、例えば3[kgf/cm2]程度の予圧が掛けられており、制動力を発生させるときの初期の応答性を向上させることができる。
そして、制動力の増加とエンジントルクの減少とによる減速制御によって、目標減速度Xg*が0以下になり安定した旋回走行が可能な状態に復帰したら(ステップS6の判定が“No”)、減速制御によって増加させた分の制動力を徐々に減少させると共に、エンジントルクをドライバ要求エンジントルクTdriverまで徐々に増加させる(ステップS15、S16)。
【0049】
その後、減速制御によって増加させた分の制動力が解除され、且つエンジントルクがドライバ要求エンジントルクTdriverまで復帰したときに(ステップS17の判定が“Yes”)、制動力制御装置8とエンジン出力制御装置6とを共に非駆動状態にして、減速制御を終了する。
ところで、長い下り坂が続くワインディング路などで、運転者のブレーキ操作がない状態で自動ブレーキをかけ続けた場合、フェード現象が徐々に進行しても運転者にとっては認識しにくい。そのため、いざというときに運転者がブレーキペダルを踏込んでも、フェード現象が進行していると、所望の制動力を発生させる為には、ブレーキ操作量が通常の状態よりも大きくなり、運転者に違和感を与える可能性がある。
【0050】
そこで、本実施形態では、運転者のブレーキ操作がない状態で自動ブレーキを作動させる頻度に応じてフェード警報を運転者に報知する。
具体的には、運転者のブレーキ操作がない状態で(ステップS29の判定が“No”)、自動ブレーキを作動させた回数をカウントし(ステップS32、S33)、カウントした回数が所定値を超えたときに(ステップS36の判定が“Yes”)、警報装置9によってフェード警報を運転者に報知する(ステップS39)。
【0051】
これにより、制動機構のフェード傾向を運転者に確実に認識させることができるので、注意を喚起すると共に、その抑制を促す、つまり変速機の変速比を減速側にシフトチェンジする等の対応を促すことができる。結果として、運転者が認識しないままブレーキフェードが進行することを防ぐことができる。
また、単に自動ブレーキの作動回数をカウントすると、ON/OFFを繰返すハンチングが生じたときに、不必要にカウンタCが増加してしまい、実際にフェード傾向に至っていないのにフェード警報が報知される等、適切なタイミングでフェード警報を報知できなくなってしまう。
【0052】
そこで、同一旋回中であれば自動ブレーキを作動させた回数が2回以上であっても1回としてカウントする。すなわち、図7のタイムチャートに示すように、ブレーキフラグfBが“0”にリセットされたら(ステップS22の判定が“No”)、初期値t1に予めセットされたタイマtNのデクリメントを開始し(ステップS26)、タイマtNが0より大きく、且つ操舵角|θ|がθ1以上である間は(ステップS27の判定が“No”)、自動ブレーキが開始されたときと同一旋回中であると判断し、旋回フラグfTを“1”にセットし続けることで(ステップS32の判定が“No”)、カウンタCの値を維持する。
【0053】
そして、タイマtNが0となる、又は操舵角|θ|がθ1未満となったら(ステップS27の判定が“Yes”)、自動ブレーキの作動が開始されたときのステアリング操作が終了していると判断し、旋回フラグfTを“0”にリセットする(ステップS28)。その後、再びブレーキフラグBが“1”にセットされると(ステップS22の判定が“Yes”)、旋回フラグfTは“0”から“1”の状態に移行するので(ステップS32の判定が“Yes”)、このときにカウンタCをインクリメントする(ステップS33)。
【0054】
これにより、自動ブレーキがON/OFFを繰返すようなハンチングが生じても、カウンタCの無意味な増加を抑制することができるので、適切なタイミングでフェード警報を報知できる。
また、運転者のブレーキ操作を検知したときには、運転者にブレーキ操作意思があると考えられるので、この状態で自動ブレーキの作動回数が増加し、フェード警報が報知されると運転者に違和感を与えてしまう。
【0055】
そこで、図8のタイムチャートに示すように、運転者のブレーキ操作を検知したら(ステップS29の判定が“Yes”)、フェードカウンタCを“0”にリセットする(ステップS30)。
これにより、運転者にブレーキ操作意思がある状態で、フェード警報が報知されることを抑制することができる。また、運転者が自らブレーキ操作を行えば、そのときに制動力の効き具合を把握できると考えられるので、その分、フェード警報を与える必要性が低いという観点からも、フェードカウンタCの値を低減することは望ましい。
【0056】
また、ステップS29の判定処理で、ブレーキ操作の有無に加え、旋回フラグfTの状態を加味しているのは、運転者のブレーキ操作中に自動ブレーキが作動すると、発生している制動力が自らのブレーキ操作によるものかを識別できないので、フェード傾向に至っているとしても、それを認識しにくいからである。すなわち、旋回フラグfTが“0”にリセットされて自動ブレーキが確実に作動していない状態で、運転者のブレーキ操作を検知したときだけに限定することで、運転者は自らのブレーキ操作だけに応じた制動力の効き具合を感知できるので、フェード傾向を正確に認識することができる。
【0057】
また、フェード警報を報知しても、特に警告灯などを表示するだけでは、運転者が気付かない可能性もあるので、そのまま自動ブレーキに頼り続けると、ブレーキフェードは更に進行してしまう。
そこで、フェード警報を報知したら(ステップS39)、図3の旋回走行制御処理を中止するために、制御フラグfCOPを“0”にリセットする(ステップS41)。
【0058】
これにより、自動ブレーキの機能を強制的に停止させて、運転者に自らのブレーキ操作を促すことができるので、フェード傾向を確実に認識させることができる。
また、自動ブレーキが作動している間にこの機能を強制的に遮断すると、制動力が不意に消失して車両挙動に影響を及ぼす可能性があるので、自動ブレーキの機能を停止する場合には、一旦、自動ブレーキが解除されるのを待ち(ステップS38の判定が“Yes”)、それから制御フラグfCOPを“0”にリセットすることにより(ステップS41)、車両挙動の乱れを防止することができる。
【0059】
ところで、ブレーキフェードは、制動時の摩擦熱によって、ブレーキパッド等の摩擦面が硬化することによって摩擦係数が低下し、制動力が不足する現象なので、摩擦面が冷却されれば摩擦係数は元に戻り制動力も回復する。
そこで、一旦、自動ブレーキの機能を停止させた場合には(ステップS41)、エンジンを停止させて再始動するまでは、制御フラグfCOPを“0”にリセットした状態を維持する。
【0060】
これにより、摩擦面が十分に冷却されるまで、つまりブレーキフェード傾向が確実に解消されるまでの時間を確保することができるので、安全性を確保することができる。
一方、自動ブレーキが長時間に渡って作動し続ける場合には、システムが誤作動している可能性がある。
そこで、自動ブレーキの作動が開始されたら(ステップS34の判定が“Yes”)、初期値t2に予めセットされたタイマtCのデクリメントを開始し(ステップS35)、タイマtCが0になったら(ステップS36の判定、又はS38の判定が“Yes”)、図3の旋回走行制御処理を中止するために、制御フラグfCOPを“0”にリセットする(ステップS41)。
【0061】
これにより、システム異常によって自動ブレーキが暴走したとしても、フェールセーフによって自動ブレーキの機能を強制的に停止させ、車両への悪影響を最小限に抑えることができる。
なお、上記の一実施形態では、フェード傾向を検知すると一様なフェード警報を報知しているが、これに限定されるものではない。ブレーキの作動回数が増加するほど、フェード傾向が強まるので、自動ブレーキを作動させる頻度が高くなるほど、警告灯を点滅させる又は警報音を大きくする等して、フェード警報を強調するようにしてもよい。
【0062】
また、上記の一実施形態では、運転者のブレーキ操作を検知するとカウンタCを“0”にリセットしているが、これに限定されるものではない。要は、運転者にブレーキ操作意思があるときにフェード警報の報知を抑制できればよいので、カウンタCを幾らか低減するだけでもよい。この低減量は、カウントを開始してからの経過時間やカウンタCの大きさに応じて決定してもよい。
【0063】
また、上記の一実施形態では、新たな旋回操作によって自動ブレーキが作動する度に、フェードカウンタCに1だけインクリメントしているが、このとき、目標減速度Xg*に応じてフェードカウンタCを補正してもよい。例えば、下記(15)式に示すように、目標減速度Xg*の時間t1〜t2までの積分値Xを算出すると共に、図9に示すような制御マップを参照し、積分値Xから補正係数Zを算出する。
【0064】
【数1】

【0065】
そして、下記(16)式に示すように、補正係数Zの加算や乗算によってフェードカウンタCの値を補正してもよい。これによれば、ブレーキフェードの進行状態とフェードカウンタCとの相関を向上させることができる。
C=C+1×Z
or
C=C+1+Z ………(16)
また、上記の一実施形態では、フェード警報を報知すると自動ブレーキの機能を強制的に停止しているが、これに限定されるものではない。要は、フェード傾向を運転者に認識させることができればよいので、自動ブレーキの機能は維持しつつ、自動ブレーキが作動しにくくなるように作動開始条件を変更したり目標制動力F*を減少させたりして、自動ブレーキの作動を制限するだけでもよい。
【0066】
また、上記の一実施形態では、フェード警報を報知すると自動ブレーキの機能だけではなくエンジントルク制御をも含む減速制御を停止しているが、これに限定されるものではない。要は、それ以上のフェード傾向の進行を阻止できればよいので、自動ブレーキの機能だけは停止して、エンジンブレーキだけはフェード警報後も活用してよい。
また、上記の一実施形態では、フェード傾向を検知したときに単にフェード警報を報知するだけだが、これに限定されるものではなく、変速機の変速比を減速側に変更することでフェード傾向を運転者に認識させてもよい。これによれば、フェード傾向を積極的に抑制することにもなる。
【0067】
また、上記の一実施形態では、目標エンジントルクT*に対する下限値TMINを固定値としているが、これに限定されるものではなく、旋回速度Vが高くなるほど下限値TMINを高くするようにしてもよい。これによれば、目標エンジントルクT*が下限値TMINまで減少するときに、過大なトルクダウンを防止し、アクセル操作を行っていた運転者に無用な失速感を与えることがない。
【0068】
また、上記の一実施形態では、エンジントルクを減少させることで、車両の駆動トルクを減少させているが、これに限定されるものではなく、トランスミッションでの伝達トルクを制御することで、車両の駆動トルクを減少させるようにしてもよい。
また、上記の一実施形態では、旋回速度Vと目標旋回速度V*との偏差ΔVに基づいて目標減速度Xg*を算出し、この目標減速度Xg*が0より大きくなるときに、減速制御つまり自動減速を行っているが、これに限定されるものではなく、旋回速度Vが目標旋回速度V*よりも大きくなったときに減速制御を行うようにしてもよい。また、旋回速度のみならず、旋回半径と目標旋回半径も算出し、旋回半径が目標旋回半径よりも小さくなったときに自動減速を行うようにしてもよく、要は、車両の旋回状態が、安定して旋回できる旋回性能の限界を超えないように減速制御を行うことができればよい。
【0069】
また、上記の一実施形態では、運転者のブレーキ操作の有無に関係なく制動制御を行うシステムとして、旋回路を走行中における自車両の旋回状態に応じて制動力を付与するものであるが、本発明はこれに限らず、例えば自車両が走行車線から逸脱する可能性がある、又は逸脱したことを検出したときに、上述の制動流体圧制御回路を利用して制動力を付与するシステムにも適用できる。
【0070】
また、上記の一実施形態では、ブレーキをかける制動機構として、液圧を伝達媒体にしたハイドリックブレーキを採用しているが、これに限定されるものではなく、伝達媒体にケーブルやリンク、或いは空気圧を利用した他の如何なる制動機構を採用してもよい。要は、摩擦熱に起因してフェード現象を招来する摩擦ブレーキであれば、他の如何なる制動機構であっても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の概略構成を示すブロック図である。
【図2】制動力制御装置の油圧回路図である。
【図3】旋回走行制御処理を示すフローチャートである。
【図4】フェード警報処理を示すフローチャートである。
【図5】ヨーレートの算出手順を示すブロック図である。
【図6】ヨーレート推定値の演算式である。
【図7】本願の作用効果を説明するタイムチャートである。
【図8】本願の作用効果を説明するタイムチャートである。
【図9】補正係数Zの算出に用いる制御マップである。
【符号の説明】
【0072】
1 車輪速センサ
2 操舵角センサ
3 ヨーレートセンサ
4 アクセルセンサ
5 コントローラ
6 エンジン出力制御装置
8 制動力制御装置
9 警報装置
10 マスターシリンダ
11FL〜11RR ホイールシリンダ
12A・12B 第1ゲートバルブ
13FL〜13RR インレットバルブ
14 リザーバ
15FL〜15RR アウトレットバルブ
16A・16B 第2ゲートバルブ
17 ポンプ
18 ダンパー室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者のブレーキ操作の有無に関わらず自車両の減速が必要なときに制動力を作動させる制動制御手段と、運転者のブレーキ操作がない状態で前記制動制御手段が制動力を作動させる頻度に応じて警報を発する警報手段と、を備えたことを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項2】
前記警報手段は、運転者のブレーキ操作がない状態で前記制動制御手段が制動力を作動させた回数をカウントし、カウントした回数が所定値を超えたときに警報を発することを特徴とする請求項1に記載の車両用走行制御装置。
【請求項3】
前記制動制御手段は、自車両の旋回状態に応じて制動力を作動させ、
前記警報手段は、同一旋回中であれば制動力を作動させた回数が2回以上であっても1回としてカウントすることを特徴とする請求項2に記載の車両用走行制御装置。
【請求項4】
前記警報手段は、運転者のブレーキ操作を検知したら、カウントした回数を低減することを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用走行制御装置。
【請求項5】
前記制動制御手段は、前記警報手段が警報を発したら、制動力の作動を制限することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用走行制御装置。
【請求項6】
前記制動制御手段は、エンジンが再始動されるまで、制動力の作動を制限することを特徴とする請求項5に記載の車両用走行制御装置。
【請求項7】
前記制動制御手段は、制動力の連続作動時間が所定値を超えたら、制動力の作動を制限することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の車両用走行制御装置。
【請求項8】
前記警報手段が警報を発したら、変速機の変速比を減速側に変更する変速制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の車両用走行制御装置。
【請求項9】
運転者のブレーキ操作の有無に関わらず自車両の減速が必要なときに制動力を作動させると共に、運転者のブレーキ操作がない状態で制動力を作動させる頻度が所定の頻度を超えたか否かを判断し、所定の頻度を超えた場合に警報を発することを特徴とする車両用走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−245771(P2007−245771A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68035(P2006−68035)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】