説明

車両用運転診断装置、車両用運転診断可否判定方法および運転診断用プログラム

【課題】リアルタイムで診断して運転教示することができるようにし診断可能区間を増加させるようにする。
【解決手段】制御回路は、車両Eが分岐路R0に進入する前の道路R1を走行している時点における自信度レベルCLfが予め定められた所定レベル以上であり(T1)、車両Eが分岐路R0を通過後の道路R2を走行している時点における自信度レベルCLeが所定レベル以上である場合(T4)に、分岐路R0およびその周辺の運転診断フラグを「0」に設定し(T5)、運転診断を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者に運転を教示するための車両用運転診断装置、車両用運転診断可否判定方法および運転診断用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の影響に伴い、車両が排出する二酸化炭素削減の要求が強まっている。また同時に、車両事故による死亡者数は年間数千人と非常に多く危機的状況となっている。このような時代背景の中、自動車製造メーカは車両の知能化および高機能化により各種センサを用いて自動制御を行うことで、環境、安全の問題に取り組んで効果を上げてきているものの、車両の自動制御に頼るアプローチでは限界を生じている。
【0003】
これらの背景があるため、自動車製造メーカは車両用運転診断装置の開発を進めている。車両用運転診断装置は、個々の運転者の運転手法や運転技術を向上させることで、燃費の向上、車両事故件数の低減を目的として開発されている。この種の技術に関連した技術が供されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
特許文献1記載の技術思想によれば、GPSセンサにより検出された現在位置情報(緯度、経度、高度)、さらに地図情報を参照することによって走行環境(高速道路、一般道路、カーブ等)毎に計測データを収集し、この収集したデータを運転者の走行特性分析に利用し、収集したレコード数が所定数(N件)以上でないと診断を行わないようにしている。しかし、この診断手法では、所定数(N件)のうちの数件が例えばマップマッチングのミスにより走行環境分類に誤りが発生した場合、運転傾向という指標においては分類ミスの影響が弱まるものの、リアルタイムで診断できないという問題を生じる。
【0005】
特許文献2記載の技術思想によれば、車両の現在位置を利用した車両制御を行っている。この車両制御方法は、ハイブリッド航法により車両位置の確からしさを算出し、当該算出結果から算出される最終的な車両位置確からしさ(自信度レベル)を用いて、ある閾値よりも自信度レベルが低い場合には車両制御を禁止するという制御を行っている。
【0006】
しかしながら、この自信度レベルはリンクが確定するまでは低くなってしまうため、交差点や分岐路では自信度レベルは低下し、この自信度レベルをそのまま運転診断可能区間として利用すると、市街地では郊外路や山岳路に比較して交差点や分岐路の単位区間あたりの通過頻度が高くなり、診断可能区間が減少してしまうという問題を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−319087号公報
【特許文献2】特開2005−132291号公報
【特許文献3】特開2006−209455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、リアルタイムで診断して運転教示することができるようにし診断可能区間を増加させるようにした車両用運転診断装置、車両用運転診断可否判定方法、および運転診断用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、運転診断可否判定手段は、車両が分岐路などの進行方向転換路に進入する前の道路を走行している時点において自信度レベルが所定レベル以上であり、且つ、車両が進行方向転換路を通過後の道路を走行している時点における自信度レベルが所定レベル以上である場合に進行方向転換路および/またはその周辺の運転診断を可能にするため、進行方向転換路通過後の道路を走行したときに進行方向転換路およびその周辺の運転診断を行うことで、進行方向転換路および/またはその周辺の運転についてリアルタイムに運転教示することができる。請求項4記載の車両用運転診断可否判定方法、請求項7記載の運転診断用プログラムにおいても、ほぼ同様の作用効果を奏する。
【0010】
尚、前記した特許文献3記載の技術思想によれば、目的地までのルート上の最新の交通規則の情報を取得できるようにしているため、交通規則に反した運転操作が行われたか否かの判断を正確に行うことができる。しかし、高架下や複雑な道路を走行している場合などにおいては、走行ルートから外れたとしても、ある程度走行しないと判断することができない。このような場合、実際の道路の交通規則とは異なる情報で診断が行われる可能性があるため信頼性に劣る可能性もある。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、運転診断可否判定手段は、車両が分岐路などの進行方向転換路を含む所定のエリア内に進入してから予め定められた所定距離を走行する前に自信度レベルが所定レベル以上にならないことを条件として進行方向転換路および/またはその周辺の運転診断を不可とするため、実際の道路の交通規則と異なる情報で診断を行うという不具合を防止することができ、運転診断についての信頼性を向上できる。請求項5記載の車両用運転診断可否判定方法、請求項8記載の運転診断用プログラムにおいても、ほぼ同様の作用効果を奏する。
【0012】
例えば、車両が、並走路の存在する道路を走行する場合や、車両が立体駐車場などに入退場する場合には車両の進行方向が急激に転換し、車両の絶対位置の自信度レベルが例えばGPSなどで正確に測位されるまで所定レベル以上にならない場合がある。この場合、リアルタイムに運転診断可能となる区間が減少してしまう。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、運転診断可否判定手段は、車両が進行方向転換路を含む所定のエリアを抜けても自信度レベルが所定レベル以上とならない場合には、現在位置の走行軌跡ログを相対的に記憶すると共に現在位置の自信度レベルを取得し続け、当該自信度レベルが所定レベル以上に至った位置を基点として走行軌跡ログを参照して当該現在位置から相対的に遡った位置について再マップマッチングによる自信度レベルを算出し、当該再マップマッチングによる自信度レベルが前記所定レベル以上となる連続区間を抽出し、当該連続区間について運転診断を可能としているため、リアルタイム運転診断可能区間を増加させることができる。請求項6記載の車両用運転診断可否判定方法、請求項9記載の運転診断用プログラムにおいても、ほぼ同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態について概略的な構成を示すブロック図
【図2】マッチング処理による自信度レベルの基本的な推移を示す図
【図3】運転診断フラグの設定処理を概略的に示すフローチャート(その1)
【図4】運転診断フラグの設定処理を概略的に示すフローチャート(その2)
【図5】自信度レベルの推移を示すタイミングチャート
【図6】本発明の第2の実施形態について示す図4相当図
【図7】自信度レベルの再計算処理の流れを示す説明図
【図8】本発明の第3の実施形態について示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1ないし図5を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用運転診断システムの概略的な構成ブロック図を示している。
この図1に示すように、車両用運転診断システム1は、制御回路2を主として構成されており、当該制御回路2に、位置検出器3、運転診断手段4、表示装置5、音声入出力装置6、入力装置7、外部メモリ8などを接続して構成されている。また、制御回路2には、車両I/F9を介して各種車両センサ群10が接続されており、当該車両センサ群10のセンサ信号が入力されている。
【0016】
制御回路2は、例えばCPU、ROM、RAM、I/Oおよびこれらの構成を接続するバスラインが構成され、ROMにはプログラムが記憶されており当該プログラムに従ってCPUなどが所定の演算処理を実行する。尚、この制御回路2は、車両位置特定手段11、自信度算出手段12としての機能を備えている。
【0017】
位置検出器3は、例えば、電波航法による車両位置測定のため、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からのGPS信号を受信するGPS受信装置14を備えている。また、位置検出器3は、自立航法による車両位置推定のため、車両の走行方位を検出するためのジャイロセンサ15、互いに直交する3軸方向の加速度を検出するための加速度センサ(Gセンサ)16、車両の走行距離を検出するための車輪速度センサ17などを備えて構成される。
【0018】
電波航法としては、GPS受信機14によるGPS信号に限らず、例えばVICSの光ビーコンを利用しても良い。また、自立航法における方位を検出するためには、ジャイロセンサ15に代えて地磁気センサやステアリングセンサを用いても良い。このような位置検出器3を接続することによって、電波航法による車両位置の測定値と自立航法による車両推定位置とによるハイブリッド航法により車両位置を算出することができる。
【0019】
運転診断手段4は、前記した制御回路2とほぼ同様の構成により構成され、内部には運転診断を行うための各種プログラムが記憶されている。尚、この運転診断手段4は、前記した制御回路2内に組み込まれていても良い。
地図データベース13は、例えばハードディスクドライブ、DVD−ROM、メモリカードなどの少なくとも何れか一つを備えて構成され、情報を読出可能な大容量の記憶可能領域を備え、当該大容量の記憶領域を利用して地図情報を記憶保持する構成である。
【0020】
この地図情報は、地図表示のための地図描画用情報、一般道路や高速道路などのマップマッチングや経路探索、経路誘導などの種々の処理に必要な道路情報、分岐路、交差点の詳細情報からなる分岐路情報、この分岐路情報に対応して案内を行うための案内情報やその音声情報、背景レイヤを表示するための背景情報、地名、地域などの地点を表示するための地名情報のほかに、施設名称を例えば50音順に並べてなる施設情報、観光用の観光ガイド情報、電話番号と施設との対応を示す電話番号情報、など、地図、道路やその案内等に係る情報を対象として記憶している。
【0021】
ここで、地図データベース13に記憶される道路情報の構成について説明する。道路情報は、道路毎に固有の番号を付したリンクID、リンク座標データ、ノード座標データ、高速道路や国道等の道路種別を示す道路種別データ、道路幅員データ等の各データから構成されている。道路情報のリンクとは、地図上の各道路を、交差点(分岐点)などを示すノードにより複数に分割し、2つのノード間をリンクとして規定している。そして、リンク座標データには、このリンクの始端と終端の座標が記述される。なお、リンクの途中にノードが含まれる場合には、ノード座標データにノード座標が記述される。
【0022】
制御回路2は、車両位置特定手段11により、ハイブリッド航法により算出される位置検出情報と、地図データベース13に記憶された地図情報とに基づいてマップマッチング処理を行い、道路上の最終的な車両の現在位置を特定する。また、制御回路2は、車両位置特定手段11により特定された車両の現在位置に付随する道路環境情報を取得する。
【0023】
表示装置5は、地図画面などの表示するための液晶ディスプレイ等により構成されており車両の運転席近傍に設置される。この表示装置5の表示画面には、通常時において縮尺を複数段階に変更可能な道路地図が表示されると共に、その表示に重ね合わせて、車両の現在位置および進行方向を示すポインタが表示されるようになっている。また、表示装置5は、周知のダイクストラ法を用いて行われる目的地までの経路計算結果に基づいた経路案内機能の実行時には、道路地図に重ね合わせた状態で進むべき案内ルートが表示されるようになっている。
【0024】
さらに、ユーザ(一般には車両の運転者)による目的地や経由地などの地点検索およびこの地点を入力するための各種のメニュー画面および入力画面、並びに各種のメッセージ、インフォメーションやヘルプ画面なども表示されるようになっている。
【0025】
音声入出力装置6は、音声合成回路等を備え、スピーカおよびマイクを接続しており、制御回路2からの音声情報に応じた出力信号を発生してスピーカから音声を報知したり、マイクからの音声情報を入力したりする。
入力装置7は、表示装置5の周辺に配設されたメカニカルスイッチ、または、当該表示装置5の表示画面上に形成されたタッチパネル、リモコンなどからなり、各種情報や設定事項などの操作に係るコマンドや、文字情報や地図の指定指示情報を制御回路2に与えるために設けられている。
【0026】
外部メモリ8は、フラッシュメモリなどの情報書換可能な不揮発性メモリや予備のハードディスクドライブにより構成されており、例えば他規格の情報記録媒体に対応するためのプログラムソフトを記憶したり特定の情報の保存や呼出しなどを行ったりするために設けられている。
制御回路2は、入力装置7から入力されたコマンド信号に基づいて、周知の地図表示機能、経路計算機能、経路案内機能、電話番号検索機能、マップコード(登録商標)のような固有コードを利用した検索機能などのような多種多様な支援機能に係る処理を実行するように構成されている。
【0027】
ここで、自信度算出手段12の基本的機能について図2を参照しながら説明する。自信度レベルとは、前記したハイブリッド航法により算出される車両位置の確からしさと、マップマッチング処理によって特定される車両位置の確からしさとから算出される最終的な車両位置の確からしさの指標を示すものであり、段階的なレベル(例えばレベル1〜レベル5の5段階)が予め割り当てられている。
【0028】
この自信度レベルは、センサ異常(断線、短絡等による故障)、センサ状態(GPS受信状況、センサ学習状況)、マップマッチングにおける形状相関や方位ずれ、マッチング候補数の数などにより計算される。例えば、自信度レベルは、車両が道路上を走行していない(オフリンク)状態では最も低くなり、狭角分岐点の通過直後の道路環境、上下道路(一般道路と高速道路)が存在する道路環境、または、並走路が近くに存在する道路環境では自信度レベルは低く設定される。逆に、上下道路が判定可能な道路環境、郊外、山岳などの確からしい一本道にマッチングしている場合には自信度レベルは比較的高く設定される。
【0029】
図2は、分岐路通過を例とした自信度レベルの推移を表わしている。この図2(a)に示すように車両Eが道路R1を走行しているときには(A状態参照)、図2(b)に示すように、自信度レベルは比較的高い例えば最高レベル(例えばレベル5)に設定される。この後、車両Eが分岐路R0に進入すると(B状態参照)、マップマッチングの制御システム上で自信度レベルの指標は所定の標準レベル(例えばレベル3)を下回る低いレベル(例えばレベル1又は2)に強制的に設定されるようになる。
【0030】
この理由は、分岐路R0の周辺では、車両Eが道路R1の前方の道路R2を走行するか、車両Eが道路R1から左折して道路R3を走行するか、または、車両Eが道路R1から右折して道路R4を走行するか、制御回路2がその挙動を把握することは困難であるためであり、例えば数m以上の位置特定誤差を要するマップマッチング処理では実際に走行している道路の誤判定確率が大きくなる。このため、制御回路2は、分岐路R0に進入するときには自信度レベルの指標を強制的に低い所定レベルに設定する。
【0031】
この後、車両Eが分岐路R0を通過して右折した場合、車両Eは道路R4に沿って走行する(C状態参照)。C状態にまで至ると、制御回路2はマップマッチング処理により道路R4に沿って走行することを容易に予想できるため、分岐路R0から離れるに従って自信度レベルの指標は徐々に上昇し(C状態、D状態参照)、最終的に標準レベルよりも高い所定レベル(例えばレベル5)に設定される(D状態参照)。
【0032】
次に、運転診断処理における自信度算出手段12の特徴的機能について図3ないし図5を用いて説明する。上述したように、自信度レベルの指標は、マップマッチング処理の確からしさを表わす指標として用いられているが、本実施形態では運転診断システム1の運転診断処理に共用して利用する。運転診断処理では車両Eが走行ルートには乗っているものの、現在特定されている車両位置がどの程度信頼できるのかを考慮して診断を行うことが重要となる。
【0033】
図3および図4は、制御回路2が行う運転診断フラグの設定ルーチンを概略的に示している。「運転診断フラグ」は、運転の診断処理を行うか否かを判定するためのフラグであり、当該図3および図4に示す処理に基づいて0.数秒〜数秒毎にほぼリアルタイムに設定される。
この運転診断フラグが「0」に設定されている走行区間では道路情報を利用した運転診断処理(例えば、制限速度診断、交差点通過診断、一時停止診断など)を行っても良いことを示しており、運転診断手段4が運転診断を行う。逆に、運転診断フラグが「1」に設定されている走行区間では運転診断処理を禁止することを示しており、運転診断手段4は運転診断を行わないようになっている。
【0034】
図3に示すように、制御回路2は、現在位置の自信度レベルCLと運転診断可能な自信度の所定レベルCLtとを比較する(S1)。尚、運転診断可能な自信度の所定レベルCLtとは標準レベルであり例えばレベル3に設定されている。制御回路2は、現在位置の自信度レベルCLが運転診断可能な自信度の所定レベルCLt以上である場合には運転診断フラグを「0」に設定し(S2)、運転診断フラグ設定ルーチンを抜ける。
【0035】
他方、制御回路2は、ステップS1において、現在位置の自信度レベルCLが運転診断可能な自信度の所定レベルCLtよりも低くなるときには(S1:NO)、自信度のレベル低下要因を特定する(S3)。
【0036】
自信度レベル低下要因としては、(1)センサ異常の場合、(2)トンネル内やビルに囲まれた市街地などGPS受信状態が悪く3次元測位できていない状態が継続している場合、または、(3)道路改修、新設道路等により実際の道路と地図データとの間に相違点が生じた場合など、主にセンサ要因によりオフリンクしていることで自信度レベルが低下した場合と、システム上で強制的に自信度レベルを低下させた場合(例えば、前述の分岐路通過による自信度低下)とに分けられる。
【0037】
制御回路2は、自信度レベル低下要因がシステム上で強制的なものである場合(例えば分岐路通過に伴い一時的に自信度レベルを低下させている場合)(S4:YES)には、自信度のレベル補間処理を行い(S5)、運転診断フラグ設定ルーチンを抜ける。他方、制御回路2は、自信度レベル低下要因がそれ以外(例えばセンサ要因によりオフリンクしている)の場合には、運転診断フラグを「1」に設定し(S6)、運転診断フラグ設定ルーチンを抜ける。
【0038】
図4は、前述のステップS5のレベル補間処理の内容を概略的なフローチャートによって示している。尚、この図4に示す処理では、システム上で強制的に自信度のレベルを低下させる場合の例として分岐路R0の通過の場合について説明を行う。
【0039】
図4に示すステップS5の自信度レベル補間処理において、制御回路2は、分岐路進入前の自信度レベルCLfを取得する(T1)。この自信度レベルCLfは、分岐路進入前であるため標準レベル以上のレベルとなっている。
【0040】
制御回路2は、自信度レベルの補間可能エリアF1〜F3(図5参照)内であるか否かを判定する(T2)。この自信度レベルの補間可能エリアF1〜F3は、分岐路R0進入前から分岐路R0通過後のある所定範囲のエリアを示し、前述のマップマッチング処理にて自信度レベルを強制的にシステム上で低下させる範囲を含む範囲に予め設定されている。
【0041】
制御回路2は、自信度レベルの補間可能エリアF1〜F3内に車両Eが進入した場合(T2:YES)には、その後、分岐路通過後における自信度レベルCLeを取得し(T3)、自信度レベルCLeが所定レベルCLt以上の場合(T4)には、分岐路進入前から現時点までの自信度レベル補間可能エリアE1内の運転診断フラグを「0」に設定し(T5)、自信度レベル補間処理ルーチンを抜ける。他方、制御回路2は、自信度レベルCLeが所定レベルCLt未満の場合(T4)には、車両が自信度レベル補間可能エリアF1〜F3の外に位置するまでステップT2に戻って処理を繰り返す。
【0042】
前述のステップT2において、車両が自信度レベル補間可能エリアF1〜F3の外に位置した場合(T2:NO)には、運転診断フラグを「1」に設定し(T6)、自信度レベル補間処理ルーチンを抜ける。
【0043】
以下、図5に示す態様を参照して説明を補足する。図5は、車両Eが分岐路R0を通過する場合の自信度レベルの推移を表わしている。
まず、例えば、車両Eが分岐路R0を通過した後、車両Eが道路R1の前方の一本路R2を走行する場合(図5の最左欄、中央欄参照)を考慮する。図5に示すように、車両Eが道路R1を走行している場合((A)参照)、当該道路R1の周辺に他の道路が存在しないため、自信度レベルはマップマッチング処理により比較的高く(例えばレベル5)設定されている。
【0044】
この後、車両Eが、自信度レベル補間可能エリアF1〜F3内に進入した後、分岐路R0に差し掛かるとシステム上で強制的に自信度レベルが低下し((B)参照)、所定レベルCLt未満の自信度レベルとなる。
【0045】
この後、車両Eが、分岐路R0を抜けると徐々に自信度レベルが上昇する((C)参照)が、所定レベルCLt未満となっているため、自信度レベルの補間処理は行われない。この後、車両Eが分岐路R0を抜けてある距離以上走行すると、一本路R2の周辺には他の道路等が存在しなくなるため、自信度レベルは所定レベルCLt以上になる((D)参照)。
【0046】
この(D)時点において、車両Eが分岐路R0に進入する前((A)地点)から現時点((D)の地点)までの自信度レベル補間可能エリアF1〜F2内(分岐路R0内)の運転診断フラグをステップT5において全て「0」に設定する。これにより、対象となる分岐路R0およびその周辺の自信度レベル補間可能エリアF1〜F2内の自信度レベルが所定レベルCLt以上に高く設定される。この図5には、補間処理後の自信度レベルを示している。この図5に示すように、分岐路R0およびその周辺の補間処理後の自信度レベルは、例えば分岐路R0通過前後の値と同一値に設定される。
【0047】
他方、例えば、車両Eが道路R1を走行して分岐路R0を左折した後、車両Eが道路R5〜R6を走行している場合(図5の最右欄参照)を考慮する。この図5の最右欄に示すように、道路R5〜R6の延びる方向に沿って道路R7が並走路として延びている。
【0048】
車両Eが分岐路R0を通過した後、所定距離(車両Eが自信度レベル補間可能エリアF3に進入してから所定距離Lj)を走行したとしても自信度レベルが所定レベル以上にならない場合には、ステップT2にてNOと判定されることになり、分岐路R0進入前から現時点までの自信度レベル補間可能エリアF3内(分岐路R0)の運転診断フラグが全て「1」に設定される。
【0049】
したがって、分岐路R0を通過した後、一本路R2を走行した場合には前述したように分岐路R0の周辺に対応した自信度レベルは補間されるものの、分岐路R0を通過した後、道路R5〜R6を走行した場合には自信度レベルが補間処理されることはない。これは、運転診断を信頼性良く行う上では有用な技術となる。
【0050】
運転診断手段4は、制御回路2から自信度算出手段12により算出された現在位置の確からしさの自信度レベルの指標を取得し、車両位置特定手段11により特定された現在位置に付随する道路環境情報の信頼性を評価する。
【0051】
運転診断手段4は、信頼性が高いと評価した場合、車両位置特定手段11により取得された道路環境情報と、車両センサ群10から取得した車両状態により運転診断を実施し、採点結果およびアドバイスを生成し、この情報を制御回路2に与える。制御回路2は、運転者に対し取得された診断結果、採点結果、アドバイスを、車両走行中に表示装置5または/および音声入出力装置6を通じてリアルタイムに伝達する。
【0052】
このような実施形態を適用すると、図5に示す(D)時点において、分岐路R0およびその周辺の運転診断フラグが「0」に設定されるようになり、運転診断手段4が直ぐに運転診断できる。したがって、運転診断結果、採点結果、そのアドバイスなどを運転者に対しほぼリアルタイムに報知される。それらのアドバイスなどの内容は、運転者が運転中にリアルタイムに把握でき、当該内容を反映した運転を行うことができる。尚、制御回路2は取得された診断結果、採点結果、アドバイスを外部メモリ8に書込み、診断結果、採点結果、アドバイスなどは外部PC(図示せず)などによって解析利用可能になる。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態によれば、制御回路2は、車両Eが分岐路R0に進入する前の道路R1を走行している時点における自信度レベルが予め定められた所定レベル(例えばレベル3)以上であり、車両Eが分岐路R0を通過後の道路R2を走行している時点における自信度レベルが所定レベル(例えばレベル3)以上である場合に、分岐路R0およびその周辺の運転診断フラグを「0」に設定して運転診断を可能にしているため、分岐路R0の通過直後に運転診断を行うことができる。
【0054】
これにより、運転者にリアルタイムで診断内容を報知し運転教示することができる。また、たとえ車両Eが市街地などを走行している場合において単位区間あたりの分岐路R0の通過頻度が高くても、運転診断可能区間を増加させることができる。また、道路環境による診断可能区間のばらつきを抑制することができる。
【0055】
また、車両Eが分岐路R0を含む自信度レベル補間可能エリアF3に進入してから予め定められた所定距離Ljを走行する前に自信度レベルが所定レベル以上とならないことを条件として運転診断フラグを「1」とし分岐路R0およびその周辺の運転診断を不可としている。このため、車両Eが道路R5を走行しているときに並走路R7が存在する場合には運転診断が行われることはない。したがって、実際の道路の交通規則とは異なる情報で診断が行われることがなくなり、運転診断処理の信頼性を向上できる。
【0056】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図6ないし図7を参照しながら説明する。図6は、図4に代わる自信度レベル補間処理について概略的に示している。本実施形態では、狭角分岐のY字分岐路など分岐直後の道路の判定が困難となる状況のエリアF3を通過した後においても、道路R5にその並走路R7が存在する状況を考慮して説明を行う。
【0057】
このようなエリアF3を通過した後には、自信度レベルがなかなか向上することはない。このように、車両Eが、エリアF3を通過した後に十分な距離を走行したにも関わらず、自信度レベルが診断可能なレベルCLt以上にならない場合には、過去の走行履歴を利用する再マップマッチング処理によって自信度レベルの補間処理を行う。以下、その具体的説明を行う。
【0058】
図6に示すように、まず制御回路2は、分岐路進入前の自信度レベル(CLf)を取得し(T1)、車両が自信度レベル補間可能エリア以内であるか否かを判定する(T2)。次に、制御回路2は車両が自信度レベル補間可能エリア以内に存在しないと判定した場合(T2:NO)には、現在位置の自信度レベル(CLn)を取得する(T7)。
【0059】
このとき、現在位置の自信度レベル(CLn)が、分岐路進入前の自信度レベル(CLt)未満のときには(T8:NO)、ステップT7に戻って処理を所定期間(例えば、500[msec]程度)毎に繰り返す。
【0060】
また制御回路2は、ステップT8において、自信度レベル(CLn)が自信度レベル(CLt)以上となる条件では、走行軌跡ログを取得する(T9)。この走行軌跡ログは、自律航法により道路の座標を相対的に記憶するものである。そして、制御回路2は、再マップマッチング処理による自信度レベル(CLre)を算出し(T10)、自信度レベル(CLre)が自信度レベル(CLt)以上となる連続区間を抽出する(T11)。次に、制御回路2は、抽出区間の運転診断フラグを「0」とし、それ以外の場合「1」に設定する(T12)。
【0061】
すなわち、図7に示すように、制御回路2は、車両Eが分岐路F3から並走路R7を走行することなく道路R5を走行すると、車両Eが道路R6(分岐路F3通過後、車両Eが並走路R7から十分な距離離れた時点)に至ったときに、マップマッチング処理による自信度レベルが回復する。この自信度レベルの回復時点は、車両EがエリアF3を抜けて並走路R7から十分な距離離れた(E)時点である。
【0062】
そして、制御回路2はこの時点から遡り、ステップT9において走行軌跡ログを過去に辿りながら再度マップマッチング処理を実施し、ステップT10において再マップマッチング処理による自信度レベルを算出する。
【0063】
この場合、再マップマッチング処理の基点は、自信度レベルCLnが自信度レベルCLt以上となった位置であり、この位置において絶対位置が道路R6上でほぼ一致する。走行軌跡ログは、前述したように道路座標が相対的に記憶されているが、自信度レベルCLnが自信度レベルCLt以上となった基点において絶対位置が補正されるようになる。絶対位置は、基点において補正されるとこの基点から遡って、自信度レベルCLreが自信度レベルCLt以上となる連続区間内において運転診断フラグを「1」に設定する。
【0064】
すなわち、本実施形態によれば、システムが車両Eの現在位置を高い自信度レベルで位置特定できるまで待機し、現在位置の自信度レベルがCLt以上となった時点において基点から遡って再マップマッチング処理により自信度レベルを再計算処理し、当該自信度レベルが所定レベル以上となる区間について運転診断可能区間とすることができる。これにより、運転診断可能区間を増加させることができる。
【0065】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、立体駐車場で一旦停車しエンジンを停止した後、立体駐車場を退場したときに、車両が180度回転するような状況を想定して説明を行う。
【0066】
この図8(b)に示すように、車両Eが立体駐車場Pに入車した後、車両Eの始動用のイグニッションをオフにした状態で機械により180度回転し車両Eの出車方向を変更する場合がある。これは、立体駐車場Pの立地条件や入退場口の設置条件などによって頻繁に起こり得る。立体駐車場Pでは入車時と出車時とで車両が180度回転することがあり、当該回転状況に応じて自信度レベルが低下する。
【0067】
なぜなら、車両Eは一旦イグニッションをオフにしたとしても立体駐車場Pに入場した方向を記憶しているためであり、機械的に車両の方向転換が行われたにも関わらず、図8(a)に示すように、車両Eが立体駐車場Pを基点とした誤認識ルートを走行していると勘違いすることがあるためである。
【0068】
したがって、車両Eが誤認識ルートを走行している最中には、GPS測位を開始するまでのしばらくの間、どの道路リンクにもマップマッチングしない。たとえマップマッチングしたとしても、自信度レベルが低下すると考えられる走行区間では、リアルタイムで運転診断を実施することはできない。
【0069】
車両Eが、マップマッチング処理の自信度レベルの回復に十分な距離を走行し自信度レベルが所定レベル以上と判定された地点を基点とし、それまでの走行軌跡を辿る方向にマップマッチング処理を再度実施することで、過去の車両位置の自信度レベルを再計算し、運転診断処理に利用することができる。
【0070】
尚、立体駐車場Pの入車時と退車時において、車両が180度回転されるような状況では、車両Eが立体駐車場Pを発進してからGPS測位するまでのしばらくの区間を進行方向転換路として適用することができる。
【0071】
以上説明したように、自信度補間手法は、分岐路R0に限定されるものではなく、一時的かつ局所的に自信度が低下した進行方向転換路の推定補間に利用できる。例えば、進行方向転換路としては、高層ビルの谷間や高架下、さらにはトンネルといったGPS受信感度の低い状況で自信度が低下した区間などを適用できる。
車両Eは、自動車に限らず一般的な車両(例えば、オートバイなど)に適用できる。
【符号の説明】
【0072】
図面中、1は車両用運転診断システム、2は制御回路(運転診断可否判定手段)、Eは車両を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が分岐路などの進行方向転換路に進入する前の道路を走行している時点において車両位置の確からしさを示す自信度レベルが予め定められた所定レベル以上であり、且つ、前記車両が前記進行方向転換路を通過後の道路を走行している時点における自信度レベルが前記所定レベル以上である場合に前記進行方向転換路および/またはその周辺の運転診断を可能にする運転診断可否判定手段を備えたことを特徴とする車両用運転診断装置。
【請求項2】
前記運転診断可否判定手段は、前記車両が前記進行方向転換路を含む所定のエリア内に進入してから予め定められた所定距離を走行する前に前記自信度レベルが所定レベル以上にならないことを条件として前記進行方向転換路および/またはその周辺の運転診断を不可とすることを特徴とする請求項1記載の車両用運転診断装置。
【請求項3】
前記運転診断可否判定手段は、前記車両が前記進行方向転換路を含む所定のエリアを抜けても自信度レベルが前記所定レベル以上とならない場合には、現在位置の走行軌跡ログを相対的に記憶すると共に前記現在位置の自信度レベルを取得し続け、当該自信度レベルが前記所定レベル以上に至った位置を基点として前記走行軌跡ログを参照して当該現在位置から相対的に遡った位置について再マップマッチングによる自信度レベルを算出し、当該再マップマッチングによる自信度レベルが前記所定レベル以上となる連続区間を抽出し、当該連続区間について運転診断を可能とすることを特徴とする請求項1または2記載の車両用運転診断装置。
【請求項4】
車両が分岐路などの進行方向転換路に進入する前の道路を走行している時点における自信度レベルが予め定められた所定レベル以上であり、且つ、前記車両が前記進行方向転換路を通過後の道路を走行している時点における自信度レベルが前記所定レベル以上である場合に前記進行方向転換路および/またはその周辺の運転診断を可能にすることを特徴とする車両用運転診断可否判定方法。
【請求項5】
前記車両が前記進行方向転換路を含む所定のエリア内に進入してから予め定められた所定距離を走行する前に前記自信度レベルが所定レベル以上となったことを条件として前記進行方向転換路および/またはその周辺の前記所定のエリア内の運転診断を可能にすることを特徴とする請求項4記載の車両用運転診断可否判定方法。
【請求項6】
前記車両が前記進行方向転換路を含む所定のエリアを抜けても自信度レベルが前記所定レベル以上とならない場合には、現在位置の走行軌跡ログを相対的に記憶すると共に前記現在位置の自信度レベルを取得し続け、当該自信度レベルが前記所定レベル以上に至った位置を基点として前記走行軌跡ログを参照して当該現在位置から相対的に遡った位置について再マップマッチングによる自信度レベルを算出し、当該再マップマッチングによる自信度レベルが前記所定レベル以上となる連続区間を抽出し、当該連続区間について運転診断を可能とすることを特徴とする請求項4または5記載の車両用運転診断可否判定方法。
【請求項7】
運転診断装置の制御手段に、
車両が分岐路などの進行方向転換路に進入する前の道路を走行している時点における自信度レベルが予め定められた所定レベル以上であり、且つ、前記進行方向転換路を通過後の道路を車両が走行している時点における自信度レベルが前記所定レベル以上である場合に前記進行方向転換路および/またはその周辺の運転診断を可能にする手順を実行させることを特徴とする運転診断用プログラム。
【請求項8】
前記制御手段に、
前記車両が前記進行方向転換路を含む所定のエリア内に進入してから予め定められた所定距離を走行する前に前記自信度レベルが所定レベル以上となったことを条件として前記進行方向転換路および/またはその周辺の前記所定のエリア内の運転診断を可能にする手順を実行させることを特徴とする請求項7記載の運転診断用プログラム。
【請求項9】
前記制御手段に、
前記車両が前記進行方向転換路を含む所定のエリアを抜けても自信度レベルが前記所定レベル以上とならない場合には、現在位置の走行軌跡ログを相対的に記憶すると共に前記現在位置の自信度レベルを取得し続け、当該自信度レベルが前記所定レベル以上に至った位置を基点として前記走行軌跡ログを参照して当該現在位置から相対的に遡った位置について再マップマッチングによる自信度レベルを算出し、当該再マップマッチングによる自信度レベルが前記所定レベル以上となる連続区間を抽出し、当該連続区間について運転診断を可能とする手順を実効させることを特徴とする請求項7または8記載の運転診断用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−230377(P2010−230377A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76305(P2009−76305)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】