説明

車両用駆動装置

【課題】流体継手の継手入力側部材と継手出力側部材との間に生じる引力により継手入力側部材が軸方向に移動する可能性がある場合にも、支持軸受の大型化を抑制することができる車両用駆動装置を実現する。
【解決手段】内燃機関に駆動連結される入力部材Iと、車輪に駆動連結される出力部材と、回転電機MGと、流体継手TCと、これらを収容するケース3と、を備えた車両用駆動装置1。回転電機MGは、ロータ本体Roから径方向内側に延びてロータ本体Roを支持するロータ支持部材22を備える。ロータ支持部材22は、支持軸受71を介して回転可能な状態でケース3に径方向に支持される。少なくともロータ支持部材22と継手入力側部材42とが一体回転するように連結されて動力伝達部材Tが構成されると共に、当該動力伝達部材Tの軸第一方向A1側への軸方向移動を規制する移動規制機構Rを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、回転電機と、流体継手と、少なくとも回転電機及び流体継手を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置として、例えば下記の特許文献1に記載された装置が既に知られている。当該特許文献1の図1に示されているように、この車両用駆動装置では、回転電機(特許文献1におけるスタータ/ジェネレータ;以下同様)のロータ本体を支持するロータ支持部材(ロータ8)と、流体継手(流体力学的トルクコンバータ)の継手入力側部材(ポンプ羽根車5)と、が一体回転するように連結されている。ロータ支持部材は、支持軸受(ラジアル軸受9)を介して回転可能な状態でケース(ケーシング10)のボス部に径方向に支持されている。
【0003】
ところで、流体継手の継手入力側部材と継手出力側部材との間に回転速度差が生じている状態では、当該回転速度差によりこれらの間に負圧が発生し、これらを相互に近接させる方向に作用する引力が生じる。通常、流体継手の継手出力側部材は、当該継手出力側部材からの駆動力が伝達される被駆動部材との間で、スプライン連結等によってある程度軸方向に相対移動可能に構成されている。そのため、上記引力に起因する継手出力側部材の継手入力側部材側への軸方向の移動を規制するべく、継手出力側部材と継手入力側部材との間にスラストベアリングが設けられる場合が多い。
【0004】
しかし、本発明者らの検討によれば、場合によっては継手出力側部材と上記被駆動部材との間での軸方向の相対移動が適切に行われない可能性があることが判明した。すなわち、継手出力側部材と上記被駆動部材との間で比較的大きな駆動力の伝達が行われる場合には、これらの間のトルク伝達部にも大きいトルクが作用するため、スプライン連結部等の継手出力側部材と上記被駆動部材との連結部における滑りが生じにくく、継手出力側部材の軸方向の移動が阻害される可能性があることが判明した。そして、そのような場合に上記引力が生じると、継手入力側部材が継手出力側部材側に移動することになる。また、継手入力側部材及び継手出力側部材の回転速度が高くなると、その内部に満たされた油に作用する遠心力により、それらを収容するカバー部が軸方向に広がるように変形する場合がある。その場合、継手入力側部材の軸方向の移動量は更に増大する。
【0005】
これらの現象が生じた場合、特許文献1の装置では継手入力側部材とロータ支持部材とが一体回転するように連結されているため、当該一体的に連結された継手入力側部材及びロータ支持部材を介して、支持軸受に軸方向荷重が作用することになる。そのため、特許文献1の装置の構成では、支持軸受にはそのような軸方向荷重に耐えられるだけの性能が必要とされ、当該支持軸受を大型化せざるを得ないという課題があった。支持軸受の大型化は、車両用駆動装置の大型化や製造コストの増大につながるため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3080612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、流体継手の継手入力側部材と継手出力側部材との間に生じる引力により継手入力側部材が軸方向に移動する可能性がある場合にも、支持軸受の大型化を抑制することができる車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、回転電機と、流体継手と、少なくとも前記回転電機及び前記流体継手を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置の特徴構成は、前記流体継手は、継手入力側部材と、当該継手入力側部材と対をなす継手出力側部材と、を備え、前記回転電機は、ロータ本体と、前記継手入力側部材に対して軸方向一方側である軸第一方向側において前記ロータ本体から径方向内側に延びて前記ロータ本体を支持するロータ支持部材と、を備えると共に、当該ロータ支持部材が支持軸受を介して回転可能な状態で前記ケースに径方向に支持され、少なくとも前記ロータ支持部材と前記継手入力側部材とが一体回転するように連結されて動力伝達部材が構成されると共に、当該動力伝達部材の前記軸第一方向側への軸方向移動を規制する移動規制機構を備えた点にある。
【0009】
なお、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を意味し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦クラッチや噛み合い式クラッチ等が含まれていても良い。
また、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、「流体継手」は、トルク増幅機能を有するトルクコンバータ、及びトルク増幅機能を有さない通常の流体継手のいずれをも含む概念として用いている。
【0010】
上記の特徴構成によれば、支持軸受を介して回転可能な状態でケースに径方向に支持されるロータ支持部材により、継手入力側部材に対して軸第一方向側において、回転電機のロータ本体を適切に回転可能に支持することができる。また、上記の特徴構成では、ロータ支持部材と継手入力側部材とが一体回転するように連結されて構成される動力伝達部材の軸第一方向側への軸方向移動が、移動規制機構により規制される。そのため、仮に流体継手の継手入力側部材と継手出力側部材との間に生じる回転速度差に起因してこれらの間に作用するする引力により継手入力側部材が軸第一方向側に移動する場合にも、移動規制機構により、動力伝達部材を介して支持軸受に軸方向荷重が作用するのを抑制することができる。従って、そのような場合にも、支持軸受の強化が不要となり、当該支持軸受の大型化を抑制することができる。
【0011】
ここで、前記移動規制機構は、前記支持軸受とは別に前記動力伝達部材を回転可能に支持する規制軸受と、当該規制軸受を前記軸第一方向側から支持する前記ケースの軸方向支持部と、を有する構成とすると好適である。
【0012】
この構成によれば、動力伝達部材を回転可能に軸方向に支持する規制軸受を、支持軸受とは別に設け、その規制軸受をケースの軸方向支持部により軸第一方向側から支持することで、動力伝達部材の軸第一方向側への軸方向移動を規制する移動規制機構を適切に構成することができる。よって、支持軸受に軸方向荷重が作用するのをより確実に抑制することができる。
【0013】
また、前記規制軸受の配設部位における、前記ケースに対する前記動力伝達部材の軸方向の相対移動可能距離が、前記支持軸受の配設部位における、前記ケースに対する前記動力伝達部材の軸方向の相対移動可能距離よりも小さい値に設定されている構成とすると好適である。
【0014】
この構成によれば、仮にケースに対して動力伝達部材が軸方向に相対移動した場合であっても、支持軸受の配設部位における動力伝達部材の軸方向の相対移動可能距離に余裕分を残した状態で、規制軸受の配設部位において動力伝達部材の軸方向の相対移動が不可能となる。よって、その状態から更に動力伝達部材が軸方向でケース側に移動することが確実に規制されるので、支持軸受に軸方向荷重が作用するのをより一層確実に抑制することができる。
【0015】
また、前記継手入力側部材は、前記流体継手の本体部を収容するカバー部を備え、前記ケースは、前記回転電機及び前記流体継手に対して前記軸第一方向側において少なくとも径方向に延びる支持壁と、当該支持壁から前記軸第一方向とは反対方向である軸第二方向側に向かって突出する筒状突出部と、を有し、前記ロータ支持部材が、前記支持軸受を介して前記筒状突出部の外周面に支持されていると共に、前記カバー部が、前記移動規制機構により回転可能な状態で前記筒状突出部の前記軸第二方向側の端部に支持されている構成とすると好適である。
【0016】
この構成によれば、ケースが有する支持壁の筒状突出部の外周面に、支持軸受を介してロータ支持部材及びロータ本体を適切に回転可能に支持することができる。また、この構成では、筒状突出部の軸第二方向側の端部を利用した移動規制機構により、継手入力側部材のカバー部を回転可能な状態で軸方向に支持することができる。よって、ロータ支持部材及びロータ本体を回転可能に支持するための筒状突出部を利用して、動力伝達部材の軸第一方向側への軸方向移動を規制する機構をコンパクトに構成することができる。
【0017】
また、係合入力側部材と、当該係合入力側部材と対をなす係合出力側部材と、を有する係合装置を更に備え、前記入力部材は、軸方向における前記筒状突出部と前記カバー部との間を通って径方向に延びる入力側径方向延在部を介して前記係合入力側部材と一体回転するように連結され、前記係合出力側部材は、前記ロータ支持部材及び前記継手入力側部材と一体回転するように連結されてこれらと共に前記動力伝達部材を構成し、前記移動規制機構は、軸方向における前記筒状突出部と前記入力側径方向延在部との間、及び軸方向における前記入力側径方向延在部と前記カバー部との間にそれぞれ配置された、前記支持軸受とは別の2つの規制軸受を有する構成とすると好適である。
【0018】
この構成によれば、係合装置により、入力部材を介して係合入力側部材に駆動連結される内燃機関と係合出力側部材に駆動連結される回転電機とを選択的に駆動連結することができる。よって、例えば回転電機の出力トルクのみにより車両を走行させる場合に、内燃機関の引き摺り損失に起因するエネルギロスを抑制することができる。
また、この構成では、軸方向における筒状突出部とカバー部との間を通って入力部材の入力側径方向延在部が径方向に延びることになるが、筒状突出部と入力側径方向延在部との間、及び入力側径方向延在部とカバー部との間に、支持軸受とは別の規制軸受がそれぞれ設けられるので、係合入力側部材に連結される入力部材を軸方向に適切に支持することができる。また、筒状突出部の軸第二方向側の端部を利用し、入力側径方向延在部と2つの規制軸受とを介して、筒状突出部に対してカバー部を軸方向に適切に支持することができる。
【0019】
また、前記流体継手は、前記継手入力側部材と前記継手出力側部材との間にステータを有するトルクコンバータであり、前記ステータは、一方向クラッチを介して前記ケースに連結され、前記継手入力側部材は、前記一方向クラッチに対して前記軸第一方向側に位置する第一方向側支持部を有し、前記継手出力側部材は、軸方向における前記第一方向側支持部と前記一方向クラッチとの間を通って径方向に延びる出力側径方向延在部を有し、軸方向における前記第一方向側支持部と前記出力側径方向延在部との間、及び軸方向における前記出力側径方向延在部と前記一方向クラッチとの間のそれぞれに前記支持軸受とは別の軸受が配置されている構成とすると好適である。
【0020】
この構成によれば、継手出力側部材と当該継手出力側部材からの駆動力が伝達される被駆動部材との間で伝達されるトルクが小さい場合等、継手出力側部材が軸第一方向側に移動可能な場合にも、第一方向側支持部と出力側径方向延在部との間、及び出力側径方向延在部と一方向クラッチとの間のそれぞれに配置された軸受により、第一方向側支持部に対して流体継手としてのトルクコンバータを軸方向に適切に支持することができる。
また、この構成では、トルクコンバータにより、継手入力側部材に入力されるトルクを増幅させて継手出力側部材に伝達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る駆動装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】駆動装置の部分断面図である。
【図3】駆動装置の要部断面図である。
【図4】駆動装置の要部断面図である。
【図5】駆動装置の部分拡大図である。
【図6】その他の実施形態に係る駆動装置の要部断面図である。
【図7】その他の実施形態に係る駆動装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る駆動装置1の概略構成を示す模式図である。駆動装置1は、車両の駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方を用いるハイブリッド車両用の駆動装置(ハイブリッド駆動装置)である。この駆動装置1は、いわゆる1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。以下、本実施形態に係る駆動装置1について、詳細に説明する。
【0023】
1.駆動装置の全体構成
まず、本実施形態に係る駆動装置1の全体構成について説明する。図1に示すように、この駆動装置1は、車両の第一の駆動力源としての内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、車両の第二の駆動力源としての回転電機MGと、トルクコンバータTCと、を備えている。また、駆動装置1は、入力クラッチC1と、変速機構TMと、を備えている。これらは、動力伝達経路上で、内燃機関Eの側から、入力軸I、入力クラッチC1、回転電機MG、トルクコンバータTC、変速機構TM、及び出力軸Oの順に配置されている。また、これらの各構成は、入力軸Iの一部と出力軸Oの一部とを除き、ケース(駆動装置ケース)3内に収容されている。本実施形態においては、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当し、出力軸Oが本発明における「出力部材」に相当する。
【0024】
なお、本実施形態では、入力軸I、回転電機MG、トルクコンバータTC、及び出力軸Oはいずれも軸心X(図2を参照)上に配置されており、本実施形態に係る駆動装置1は、FR(Front Engine Rear Drive)方式の車両に搭載される場合に適した一軸構成とされている。また、以下の説明においては、特に明記して区別している場合を除き、軸心Xを基準として「軸方向」、「径方向」及び「周方向」の各方向を規定している。更に、駆動装置1内の特定の部位に注目した場合における軸方向に沿った方向性に関して、軸方向一方側である内燃機関E側(図2における左側)に向かう方向を「軸第一方向A1」とし、軸方向他方側である出力軸O側(図2における右側)に向かう方向を「軸第二方向A2」としている。
【0025】
内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す装置であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、内燃機関Eのクランクシャフト等の出力回転軸が第一ダンパ16(図2を参照)を介して入力軸Iに駆動連結されている。また、入力軸Iは入力クラッチC1を介して回転電機MGに駆動連結されており、入力軸Iは入力クラッチC1により選択的に回転電機MGに駆動連結される。この入力クラッチC1の係合状態では、入力軸Iを介して内燃機関Eと回転電機MGとが駆動連結され、入力クラッチC1の解放状態では内燃機関Eと回転電機MGとが分離される。本実施形態においては、入力クラッチC1が本発明における「係合装置」に相当する。
【0026】
回転電機MGは、ステータStとロータRoとを有して構成され、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。そのため、回転電機MGは、蓄電装置(図示せず)と電気的に接続されている。本例では、蓄電装置としてバッテリが用いられている。なお、蓄電装置としてキャパシタ等を用いても好適である。回転電機MGは、バッテリから電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関Eが出力するトルク(ここでは、「駆動力」と同義で用いている)や車両の慣性力により発電した電力をバッテリに供給して蓄電させる。回転電機MGのロータRoは、動力伝達部材Tを介してトルクコンバータTCのポンプインペラ41に駆動連結されている。
【0027】
トルクコンバータTCは、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを変換して中間軸Mに伝達する装置である。トルクコンバータTCは、動力伝達部材Tを介して回転電機MGのロータRoに駆動連結されたポンプインペラ41と、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されたタービンランナ51と、これらの間に設けられたステータ56(図2を参照)と、を備えている。トルクコンバータTCは、その内部に充填された油を介して、ポンプインペラ41とタービンランナ51との間でトルクの伝達を行うことが可能である。その際、ポンプインペラ41とタービンランナ51との間に回転速度差が生じている場合には、回転速度比に応じてトルク変換されたトルクが伝達される。本実施形態においては、トルクコンバータTCが「流体継手」に相当する。
【0028】
また、トルクコンバータTCは、ロックアップクラッチC2を備えている。ロックアップクラッチC2は、ポンプインペラ41とタービンランナ51とを選択的に駆動連結する。このロックアップクラッチC2の係合状態では、トルクコンバータTCは、内部の油を介さずに内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを、そのまま中間軸Mに伝達する。この中間軸Mは、変速機構TMの入力軸(変速入力軸)となっている。
【0029】
変速機構TMは、中間軸Mの回転速度を所定の変速比で変速して出力軸Oへ伝達する装置である。このような変速機構TMとして、本実施形態では、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた自動有段変速機構が用いられている。なお、変速機構TMとして、変速比を無段階に変更可能な自動無段変速機構、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた手動式有段変速機構等を用いても良い。変速機構TMは、各時点における所定の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速すると共にトルクを変換して出力軸Oへ伝達する。出力軸Oへ伝達された回転及びトルクは、出力用差動歯車装置DFを介して左右2つの車輪Wに分配されて伝達される。これにより、駆動装置1は、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。
【0030】
2.駆動装置の各部の構成
次に、本実施形態に係る駆動装置1の各部の構成について、図2〜図4を参照して説明する。なお、図3は図2の断面図の部分拡大図であり、図4は図3とは周方向の異なる位置における断面図である。
【0031】
2−1.ケース
図2に示すように、ケース3は、概略円筒状に形成されている。本実施形態では、ケース3は、概略円筒状であって回転電機MGや入力クラッチC1、トルクコンバータTC等の径方向外側を覆う周壁4と、回転電機MG及び入力クラッチC1の軸第一方向A1側を覆う端部支持壁5と、トルクコンバータTCの軸第二方向A2側を覆う中間支持壁6と、を備えている。そして、ケース3内における端部支持壁5と中間支持壁6との間の空間に、回転電機MG、入力クラッチC1、及びトルクコンバータTCが収容されている。また、図示は省略しているが、中間支持壁6よりも軸第二方向A2側の空間に、変速機構TMが収容されている。なお、端部支持壁5よりも軸第一方向A1側の、ケース3の外部空間には、第一ダンパ16が配置されている。
【0032】
端部支持壁5は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、ここでは径方向及び周方向に延びる略円板状の壁部とされている。本実施形態においては、端部支持壁5が本発明における「支持壁」に相当する。この端部支持壁5の径方向中心部には、筒状突出部11が設けられている。筒状突出部11は、軸心Xに対して同軸状に配置され、端部支持壁5から軸第二方向A2側に向かって突出するように形成された円筒状の突出部である。筒状突出部11は、端部支持壁5と一体的に形成されている。筒状突出部11は、ある程度の軸方向長さを有している。図示の例では、筒状突出部11は、ロータRoの軸方向長さよりも長い軸方向長さを有している。この筒状突出部11の径方向中心部には、軸方向に貫通する軸心貫通孔11aが形成されている。そして、この軸心貫通孔11aに入力軸Iが挿通されている。これにより、入力軸Iは、筒状突出部11の径方向内側を貫通するように配置され、端部支持壁5を貫通してケース3内に挿入されている。
【0033】
図3等に示すように、本実施形態では、筒状突出部11の外周面の軸方向の所定位置に、第一段差部11bが設けられている。筒状突出部11の外周面は、第一段差部11bを境界として、当該第一段差部11bよりも軸第一方向A1側が大径部とされ、第一段差部11bよりも軸第二方向A2側が小径部とされている。そして、その小径部の外周面に接するように第一軸受71が配置されている。本実施形態では、第一軸受71は、第一段差部11bの軸第二方向A2側の側面とは離間して配置されている。第一軸受71としては、径方向荷重を受けることが可能な軸受が用いられ、本例ではボールベアリングが用いられている。本実施形態においては、第一軸受71が本発明における「支持軸受」に相当する。第一軸受71は、小径部の外周面に係止されたスナップリング94(図5を参照)により軸第二方向A2側への移動が規制された状態で配置されている。なお、第一段差部11bは、支持円筒状部25の内周段差部25bよりも僅かに軸第一方向A1側となる軸方向位置に形成されている。
【0034】
筒状突出部11の外周面のうち、第一段差部11bよりも軸第二方向A2側の所定位置に、第二段差部11cが設けられている。筒状突出部11の外周面は、第二段差部11cを境界として、当該第二段差部11cよりも軸第二方向A2側が更に小径に形成されている。このように小径部よりも更に小径に形成された筒状突出部11の軸第二方向A2側の端部には、その外周面に接してスリーブ86が嵌合されている。スリーブ86の外径は、筒状突出部11の小径部の外径に一致している。スリーブ86には、内周面と外周面とを連通する連通孔が、周方向の複数箇所に形成されている。
【0035】
本実施形態では、筒状突出部11には、複数の油路が形成されている。具体的には、図3及び図4に示すように、第一油路L1、第二油路L2、第三油路L3、及び第四油路L4、の4つの油路が筒状突出部11に形成されている。第一油路L1は、入力クラッチC1の後述する作動油圧室H1に連通し、当該作動油圧室H1に油を供給するための油供給路である(図4を参照)。第二油路L2は、入力クラッチC1の後述する循環油圧室H2に連通し、当該循環油圧室H2に油を供給するための油供給路である(図3を参照)。第三油路L3は、循環油圧室H2から排出される油をオイルパン(図示せず)へ戻すための油排出路である(図3を参照)。第四油路L4は、後述する軸受配置空間Pから排出される油をオイルパン(図示せず)へ戻すための油排出路である(図4を参照)。
【0036】
中間支持壁6は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、ここでは径方向及び周方向に延びる平坦な円板状の壁部とされている。本実施形態では、中間支持壁6は、端部支持壁5とは別部材として構成されている。また、中間支持壁6は、周壁4とも別部材として構成されており、ボルト等の締結部材により周壁4の内周面に形成された段差部に締結固定されている。この中間支持壁6には、オイルポンプ9が設けられている。ここでは、中間支持壁6の軸第一方向A1側の面にポンプカバー7が取り付けられており、中間支持壁6とポンプカバー7との間に形成されたポンプ室にポンプロータが収容されている。中間支持壁6及びポンプカバー7の径方向中心部には、軸方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔に中間軸Mが挿通されている。また、この貫通孔には、固定軸58及びポンプ駆動軸47も挿通されている。固定軸58は、中間支持壁6に固定されてトルクコンバータTCのステータ56を支持する円筒状の軸部であって、軸心Xに対して同軸状に、中間軸Mの径方向外側に配置されている。ポンプ駆動軸47は、トルクコンバータTCのポンプインペラ41と一体回転する円筒状の軸部であって、軸心Xに対して同軸状に、固定軸58の径方向外側に配置されている。
【0037】
本実施形態においては、オイルポンプ9は、ポンプロータとしてインナロータとアウタロータとを有する内接型のギヤポンプとされている。オイルポンプ9のポンプロータは、ポンプ駆動軸47を介してポンプインペラ41と一体回転するように駆動連結されている。よって、ポンプインペラ41の回転に伴い、オイルポンプ9はオイルを吐出し、駆動装置1の各部に油を供給するための油圧を発生させる。中間支持壁6及びポンプカバー7には、オイルポンプ9の吸入油路及び吐出油路が形成されている。また、図2等に一部が示されているように、駆動装置1のケース3(端部支持壁5及び筒状突出部11を含む)や各軸の内部には、このような油の供給のための油路が設けられている。
【0038】
2−2.回転電機
図2に示すように、回転電機MGは、端部支持壁5よりも軸第二方向A2側であってトルクコンバータTCよりも軸第一方向A1側に配置されている。また、回転電機MGは、入力軸I及び入力クラッチC1に対して径方向外側に配置されている。回転電機MGと入力クラッチC1とは、径方向に見て重複する部分を有する位置に配置されている。なお、2つの部材の配置に関して、「ある方向に見て重複する部分を有する」とは、当該方向を視線方向として当該視線方向に直交する各方向に視点を移動させた場合に、2つの部材が重なって見える視点が少なくとも一部の領域に存在することを意味する。回転電機MGのステータStは、ケース3に固定されている。ステータStの径方向内側に、ロータRoが配置されている。ロータRoは、ステータStに対して径方向に微小隙間を空けて対向配置されると共に、回転可能な状態でケース3に支持されている。具体的には、ロータRoを支持して当該ロータRoと一体的に回転するロータ支持部材22が、第一軸受71を介してケース3の筒状突出部11に対して回転可能に支持されている。本実施形態においては、ロータRoが本発明における「ロータ本体」に相当する。
【0039】
図2〜図4に示すように、ロータ支持部材22は、回転電機MGのロータRoを径方向内側から支持する部材である。ロータ支持部材22は、入力クラッチC1に対して軸第一方向A1側に配置されている。ロータ支持部材22は、ロータRoに対して径方向内側に配置された第一軸受71に対してロータRoを支持するべく、少なくとも径方向に延びる形状に形成されている。本実施形態では、ロータ支持部材22は、ロータ保持部23、径方向延在部24、及び支持円筒状部25、を備えている。
【0040】
ロータ保持部23は、ロータRoを保持する部分である。ロータ保持部23は、軸心Xに対して同軸状に配置され、ロータRoの内周面及び軸方向両側面に接する円環状に形成されている。径方向延在部24は、ロータ保持部23と一体的に形成され、ロータ保持部23の軸方向の中央部近傍から径方向内側に延びるように形成されている。本例では、径方向延在部24は径方向及び周方向に延びる円環板状部とされている。本例では、径方向延在部24は、径方向及び周方向の位置によらず、ほぼ均一な厚さの平坦な板状とされている。また、径方向延在部24の周方向の複数箇所には、第一ボルト挿通孔24aが設けられている。第一ボルト挿通孔24aには、ロータ支持部材22と筒状連結部材32との締結を行うための第一ボルト91が挿通される。そして、本実施形態では、径方向延在部24の径方向内側端部に、支持円筒状部25が一体的に設けられている。
【0041】
支持円筒状部25は、軸心Xに対して同軸状に配置され、径方向延在部24に対して軸方向両側に延在するように形成された円筒状部である。本実施形態では、支持円筒状部25の内周面に第一軸受71が配置され、当該支持円筒状部25の内周面と筒状突出部11の外周面との間に配置された第一軸受71によりロータ支持部材22が支持される。これにより、ロータ支持部材22は、第一軸受71を介して回転可能な状態で筒状突出部11の外周面に支持される。なお、本例では、支持円筒状部25の内周面に対して第一軸受71が圧入(しまりばめ)されて、これらは相互に固定されている。一方、第一軸受71は、筒状突出部11の外周面に対しては、軸方向の移動がある程度許容される状態で嵌合(すきまばめ)されている。
【0042】
支持円筒状部25の内周面の軸方向の所定位置に、内周段差部25bが設けられている。支持円筒状部25の内周面は、内周段差部25bを境界として、当該内周段差部25bよりも軸第一方向A1側が内周小径部とされ、内周段差部25bよりも軸第二方向A2側が内周大径部とされている。そして、その内周大径部の内周面と内周段差部25bの軸第二方向A2側の側面に接するように第一軸受71が配置されている。なお、本実施形態では、内周段差部25bは、径方向延在部24よりも軸第一方向A1側に形成されている。そして、第一軸受71は、径方向に見て径方向延在部24と重複する部分を有する位置に配置されている。
【0043】
支持円筒状部25の外周面の、径方向延在部24に対して軸第一方向A1側の所定位置に、外周段差部25cが設けられている。支持円筒状部25の外周面は、外周段差部25cを境界として、当該外周段差部25cよりも軸第一方向A1側が外周小径部、外周段差部25cよりも軸第二方向A2側が外周大径部とされている。なお、外周段差部25cは内周段差部25bよりも軸第一方向A1側に設けられている。支持円筒状部25は、外周大径部において径方向延在部24と一体的に形成されている。また、外周小径部の外周面と外周段差部25cの軸第一方向A1側の側面に接するように、回転センサ13のセンサロータ13bが取り付けられている。センサロータ13bの径方向外側には、当該センサロータ13bに対して径方向に微小隙間を空けてセンサステータ13aが対向配置されている。センサステータ13aは、端部支持壁5に形成された所定のセンサステータ取付部に固定されている。なお、回転センサ13は、回転電機MGのステータStに対するロータRoの回転位置を検出するためのセンサであり、本例ではレゾルバが用いられている。
【0044】
本実施形態においては、支持円筒状部25のうち、径方向延在部24に対して軸第二方向A2側の筒状部分が、嵌合突出部25aとされている。すなわち、ロータ支持部材22は、径方向延在部24から軸第二方向A2側に向かって突出する筒状の嵌合突出部25aを有している。嵌合突出部25aは、少なくとも必要な嵌合長さ分以上の長さで軸方向に延在している。この嵌合突出部25aには、後述するように筒状連結部材32の筒状延在部32dが径方向に当接しつつ嵌合される。
【0045】
また、本実施形態においては、第一軸受71に対して軸第一方向A1側において、ロータ支持部材22と筒状突出部11との間に第三シール部材83が配置されている。ここでは、支持円筒状部25の内周小径部と筒状突出部11の大径部との間に第三シール部材83が配置されている。この第三シール部材83により、支持円筒状部25と筒状突出部11との間が密閉され、第一軸受71の潤滑等を行った後の油が回転センサ13や回転電機MGのステータSt等に到達することが抑制されている。なお、筒状突出部11の外周面、支持円筒状部25、及び第三シール部材83により区画される空間に第一軸受71が配置されており、本実施形態では、この空間を「軸受配置空間P」としている。
【0046】
2−3.入力クラッチ
入力クラッチC1は、入力軸Iと回転電機MG及びトルクコンバータTCとの間を選択的に駆動連結する摩擦係合装置である。入力クラッチC1は、湿式多板クラッチ機構として構成されている。また、図2に示すように、入力クラッチC1は、軸方向でロータ支持部材22とトルクコンバータTCとの間に配置されている。すなわち、入力クラッチC1は、ロータ支持部材22よりも軸第二方向A2側であってトルクコンバータTCよりも軸第一方向A1側に配置されている。また、入力クラッチC1は、径方向で筒状突出部11と回転電機MGのロータRoとの間に配置されている。すなわち、入力クラッチC1は、筒状突出部11よりも径方向外側であってロータRoよりも径方向内側に配置されている。筒状突出部11、入力クラッチC1、及びロータRoは、径方向に見て互いに重複する部分を有するように配置されている。入力クラッチC1は、クラッチハブ31、筒状連結部材32、摩擦部材33、ピストン34、及び作動油圧室H1を備えている。
【0047】
入力クラッチC1は、摩擦部材33として、対となる入力側摩擦部材と出力側摩擦部材とを有する。ここで、入力クラッチC1は、複数(本例では2枚)の入力側摩擦部材と複数(本例では2枚)の出力側摩擦部材とを有し、これらは軸方向に交互に配置されている。複数の摩擦部材33は、いずれも円環板状に形成されている。
【0048】
クラッチハブ31は、複数の入力側摩擦部材(本例では、ハブ側摩擦部材)を径方向内側から支持するように径方向に延びる円環板状部材である。クラッチハブ31は、軸方向でピストン34とトルクコンバータTCの後述するカバー部42との間を通って径方向に延びるように形成されており、当該クラッチハブ31の径方向内側端部が入力軸Iに連結されている。ここで、入力軸Iは、軸方向で筒状突出部11とカバー部42との間を通って径方向外側に向かって延びるフランジ部Iaを有する。そして、フランジ部Iaの径方向外側端部とクラッチハブ31の径方向内側端部とが、溶接等により接合されて連結されている。これにより、入力軸Iとクラッチハブ31とが一体回転するように連結され、これらの入力軸Iとクラッチハブ31とにより「入力伝達部材」が構成されている。なお、クラッチハブ31は、入力軸Iを介して内燃機関Eの回転及びトルクが伝達される部材であり、入力クラッチC1の入力側回転部材である。本実施形態においては、クラッチハブ31が本発明における「係合入力側部材」に相当する。また、入力軸Iのフランジ部Iaが本発明における「入力側径方向延在部」に相当する。
【0049】
筒状連結部材32は、複数の摩擦部材33の少なくとも径方向外側を覆うと共に、出力側摩擦部材(本例では、ドラム側摩擦部材)を径方向外側から支持するように形成された略円筒状部材である。筒状連結部材32は、入力クラッチC1のクラッチドラムとして機能するように構成されている。また、筒状連結部材32は、ピストン34の軸第一方向A1側と、ピストン34の径方向外側と、を更に覆うように全体として碗状に形成された部分を有する。本実施形態では、筒状連結部材32は、ロータ支持部材22やトルクコンバータTCのカバー部42とは独立した別部材として構成されている。そして、筒状連結部材32は、ロータ支持部材22に連結されると共にカバー部42に連結されている。筒状連結部材32は、クラッチハブ31と対をなし、入力クラッチC1の係合状態でクラッチハブ31に入力される回転及びトルクを出力軸O側となるトルクコンバータTCに伝達する、入力クラッチC1の出力側回転部材である。本実施形態においては、筒状連結部材32が本発明における「係合出力側部材」に相当する。
【0050】
図3及び図4に示すように、クラッチドラムとしての筒状連結部材32は、軸方向延在部32a、径方向延在部32b、筒状延在部32d、筒状突出部32e、及び径方向延出部32fを備えている。軸方向延在部32aは、軸心Xに対して同軸状に配置され、軸方向の所定範囲に亘って延出するように円筒状に形成されている。軸方向延在部32aは、少なくとも軸第一方向A1側ではロータ支持部材22の径方向延在部24に接すると共に軸第二方向A2側ではトルクコンバータTCのカバー部42に接するように、軸方向に沿って形成されている。この軸方向延在部32aには、後述するようにカバー部42が径方向に当接しつつ嵌合される。また、軸方向延在部32aは、ロータ支持部材22のロータ保持部23に対して、径方向に所定間隔を空けて対向配置されている。径方向延出部32fは、軸方向延在部32aと一体的に形成され、当該軸方向延在部32aの軸第二方向A2側の端部から径方向外側へ延出するように円環板状に形成されている。径方向延出部32fの周方向の複数箇所には、第二ボルト挿通孔32gが設けられている。第二ボルト挿通孔32gには、カバー部42と筒状連結部材32との締結を行うための第二ボルト92が挿通される。径方向延出部32fは、ステータStの軸第二方向A2側のコイルエンド部Ceの径方向内側に、径方向に見て当該コイルエンド部Ceと重複する部分を有する位置に配置されている。また、径方向延出部32fは、ロータRoの軸第二方向A2側に、軸方向に見てロータRoと重複する部分を有する位置に配置されている。
【0051】
径方向延在部32bは、軸方向延在部32aと一体的に形成され、当該軸方向延在部32aの軸第一方向A1側の端部から径方向内側に向かって延びるように略円環板状に形成されている。軸方向延在部32aと径方向延在部32bとの間の連結部位は、軸方向及び径方向に所定厚さを有する肉厚部とされており、この肉厚部が、筒状連結部材32とロータ支持部材22とを取り付けるための取付部32cとなっている。取付部32cの周方向の複数箇所には、第一ボルト91が締結される第一ボルト孔が設けられている。また、径方向延在部32bは、取付部32cよりも径方向内側に、当該径方向延在部32bと一体的に構成されて軸方向に延在する筒状延在部32dを有する。すなわち、径方向延在部32bは、筒状延在部32dよりも径方向内側部位が径方向外側部位に対して軸第二方向A2側にオフセットされた形状となるように形成されている。この筒状延在部32dは、ロータ支持部材22の嵌合突出部25aに対して径方向に当接しつつ嵌合する。筒状突出部32eは、径方向延在部32bと一体的に形成され、当該径方向延在部32bの径方向内側端部から少なくとも軸第二方向A2側に向かって突出するように円筒状に形成されている。本例では、筒状突出部32eは径方向延在部32bに対して軸方向両側に延在している。筒状突出部32eの内周面にはスリーブ86が接するように配置されている。なお、本実施形態では、筒状突出部11を含むケース3がアルミ製、筒状突出部32eを含む筒状連結部材32が鉄製とされている。そのため、ケース3の筒状突出部11と筒状連結部材32の筒状突出部32eと間の相対回転による筒状突出部11の磨耗を抑制する目的で、スリーブ86は鉄製とされている。
【0052】
また、押圧方向に沿って摩擦部材33を押圧するピストン34が、筒状延在部32dの外周面及び筒状突出部32eの外周面に対して軸方向に沿って摺動可能に配置されている。本実施形態では、ピストン34は、摩擦部材33に対して軸第一方向A1側に配置されており、軸第二方向A2が上記押圧方向に一致している。筒状延在部32dとピストン34との間、及び筒状突出部32eとピストン34との間には、それぞれOリング等のシール部材が配置されている。これにより、径方向延在部32b、筒状延在部32d、筒状突出部32e、及びピストン34により区画されて密閉された空間として、作動油圧室H1が形成されている。この作動油圧室H1には、第一油路L1を介してピストン34の作動用の油が供給される。そして、作動油圧室H1に供給される油の油圧レベルに応じてピストン34が軸方向に沿って摺動し、複数の摩擦部材33を相互に押し付け合うための係合圧が増減されて、入力クラッチC1の係合及び解放が制御される。
【0053】
また、ピストン34に対して作動油圧室H1とは反対側(ここでは、軸第二方向A2側)には、循環油圧室H2が形成される。この循環油圧室H2は、主にピストン34、軸方向延在部32a、トルクコンバータTCのカバー部42、筒状突出部11、及び上述した入力伝達部材(入力軸I及びクラッチハブ31)により区画された空間として形成されている。ここで、本実施形態においては、軸方向延在部32aとカバー部42との間に第一シール部材81が配置され、これらの間が密閉されている。また、筒状突出部11と入力伝達部材を構成する入力軸Iとの間に第二シール部材82が配置され、これらの間が密閉されている。これにより、循環油圧室H2は密閉空間として形成されている。この循環油圧室H2には、オイルポンプ9により吐出され、油圧制御装置(図示せず)により所定の油圧レベルに調整された圧油が、第二油路L2を介して供給される。
【0054】
循環油圧室H2内には、筒状突出部11の軸第二方向A2側の端部が配置されている。また、循環油圧室H2内には、筒状突出部11の径方向内側に挿通される入力軸Iのフランジ部Iaが、筒状突出部11の軸第二方向A2側を径方向外側に向かって延びるように配置されている。更に、循環油圧室H2内には、フランジ部Iaに連結されるクラッチハブ31が径方向に延びるように配置され、複数の摩擦部材33も配置されている。第二油路L2を介して油が供給されることにより、循環油圧室H2内は基本的には所定圧以上の油で満たされた状態となり、本実施形態では循環油圧室H2内に満たされる油により複数の摩擦部材33を効率的に冷却することが可能となっている。複数の摩擦部材33を冷却した後の油は、第三油路L3及び入力軸Iの内部に形成された第五油路L5を介して排出され、オイルパン(図示せず)に戻される。なお、本実施形態では、作動油圧室H1及び循環油圧室H2は、トルクコンバータTC内の後述する本体部収容室H4とは独立した空間として形成されている。
【0055】
2−4.トルクコンバータ
図2に示すように、トルクコンバータTCは、回転電機MG及び入力クラッチC1よりも軸第二方向A2側であって中間支持壁6及び変速機構TMよりも軸第一方向A1側に配置されている。トルクコンバータTCは、ポンプインペラ41、タービンランナ51、ステータ56、及びこれらを収容するカバー部42を備えている。
【0056】
カバー部42は、ポンプインペラ41と一体回転するように構成されている。ここでは、カバー部42の内側に、ポンプインペラ41が一体的に設けられている。また、カバー部42は、筒状連結部材32に連結されている。カバー部42は、筒状連結部材32及びロータ支持部材22を介して、回転電機MGのロータRoと一体回転するように駆動連結されている。従って、一体回転するポンプインペラ41及びカバー部42は、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方の回転及びトルクが伝達される部材であり、トルクコンバータTCの入力側回転部材である。また、カバー部42は、ポンプ駆動軸47に連結されている。カバー部42は、ポンプ駆動軸47を介してオイルポンプ9のポンプロータと一体回転するように駆動連結されている。ポンプ駆動軸47は、ポンプカバー7の貫通孔に設けられた第三軸受73を介して回転可能な状態で、ポンプカバー7に径方向に支持されている。本実施形態においては、ポンプインペラ41、カバー部42、及びポンプ駆動軸47により、本発明における「継手入力側部材」が構成されている。
【0057】
タービンランナ51は、ポンプインペラ41の軸第一方向A1側に当該ポンプインペラ41に対向して配置されている。タービンランナ51は、ポンプインペラ41と対をなし、ポンプインペラ41に入力される回転及びトルクを出力軸O側となる中間軸Mに伝達する、トルクコンバータTCの出力側回転部材である。本実施形態においては、タービンランナ51が本発明における「継手出力側部材」に相当する。タービンランナ51は、径方向に延びる径方向延在部52を有する。この径方向延在部52は、軸方向で後述する筒状延在部46と一方向クラッチ57との間に配置されている。また、タービンランナ51は、径方向延在部52と一体的に形成され、当該径方向延在部52の径方向内側端部から軸第一方向A1側に向かって突出する筒状突出部53(図3を参照)を有する。本実施形態では、筒状突出部53と当該筒状突出部53を貫通するように配置された中間軸Mとが、スプライン連結されている。従って、本実施形態では、タービンランナ51と中間軸Mとは、軸方向に相対移動可能であると共に周方向にある程度のバックラッシ(遊び)を有する状態で一体回転するように駆動連結されている。なお、本実施形態においては、一体的に形成される径方向延在部52及び筒状突出部53により本発明における「出力側径方向延在部」が構成されている。
【0058】
ステータ56は、軸方向において、ポンプインペラ41とタービンランナ51との間に配置されている。このステータ56は、一方向クラッチ57を介して固定軸58に支持されている。上記のように、固定軸58は、円筒状の軸部であって軸第二方向A2側においてケース3の中間支持壁6に固定されている。従って、ステータ56は、一方向クラッチ57及び固定軸58を介して中間支持壁6に連結されている。一方向クラッチ57は、軸方向で径方向延在部52とポンプ駆動軸47との間に配置されている。
【0059】
本実施形態では、対向配置されるポンプインペラ41とタービンランナ51とにより、トルクコンバータTCの本体部が構成されている。そして、ポンプインペラ41を外側から保持するカバー部42が、更にタービンランナ51をも収容するように配置されている。つまり、カバー部42は、トルクコンバータTCの本体部を収容するように配置されている。また、本実施形態では、トルクコンバータTCの本体部に対して軸第一方向A1側に配置されたロックアップクラッチC2及び第二ダンパ54も、カバー部42内に収容されている。本実施形態では、これらの本体部等が収容されるカバー部42内の空間を、「本体部収容室H4」としている。カバー部42は、本体部、ロックアップクラッチC2、及び第二ダンパ54に対して、軸方向両側及び径方向外側を覆うように形成されている。そのため、図3及び図4に示すように、カバー部42は、本体部よりも軸第一方向A1側において、外側径方向延在部43、軸方向延在部44、内側径方向延在部45、及び筒状延在部46を有する。
【0060】
軸方向延在部44は、所定範囲に亘って軸方向に沿って延びる筒状部である。軸方向延在部44は、カバー部42のうち、本体部よりも軸第一方向A1側部分が径方向で占める領域のおよそ中間位置に設けられている。この軸方向延在部44は、軸方向延在部32aに対して径方向に当接しつつ嵌合する。外側径方向延在部43は、軸方向延在部44と一体的に形成され、当該軸方向延在部44の軸第二方向A2側の端部から径方向外側へ延びるように円環板状に形成されている。外側径方向延在部43は軸方向で回転電機MGと第二ダンパ54との間を通って径方向に延びるように配置されている。内側径方向延在部45は、軸方向延在部44と一体的に形成され、当該軸方向延在部44の軸第一方向A1側の端部から径方向内側へ延びるように略円板状に形成されている。内側径方向延在部45は軸方向で入力クラッチC1とロックアップクラッチC2との間を通って径方向に延びるように配置されている。また、内側径方向延在部45の径方向中央部は、軸方向で入力軸Iと中間軸Mとの間に配置されている。なお、第二ダンパ54の径方向外側を覆う円筒状部と、外側径方向延在部43、軸方向延在部44、及び内側径方向延在部45とにより、カバー部42は、全体として段付の碗状に形成されている。
【0061】
筒状延在部46は、内側径方向延在部45と一体的に構成され、当該内側径方向延在部45の径方向中央部から軸第二方向A2側に向かって延びるように円筒状に形成されている。また、本実施形態では、筒状延在部46の内周面の軸方向の所定位置に、段差部46aが設けられている。筒状延在部46の内周面は、段差部46aを境界として、当該段差部46aよりも軸第一方向A1側が小径部とされ、段差部46aよりも軸第二方向A2側が大径部とされている。そして、その小径部の径方向内側に、中間軸Mの軸第一方向A1側の端部が配置されている。また、大径部の径方向内側であって中間軸Mの径方向外側に、タービンランナ51の筒状突出部53が配置されている。また、筒状延在部46は、一方向クラッチ57及びタービンランナ51の径方向延在部52に対して、軸第一方向A1側に配置されている。本実施形態においては、筒状延在部46が本発明における「第一方向側支持部」に相当する。
【0062】
ロックアップクラッチC2は、カバー部42と一体回転するポンプインペラ41とタービンランナ51との間を選択的に駆動連結する摩擦係合装置である。ロックアップクラッチC2は、湿式多板クラッチ機構として構成されている。また、ロックアップクラッチC2は、カバー部42の軸方向延在部44の径方向内側であって、径方向に見て当該軸方向延在部44と重複する部分を有する位置に配置されている。また、ロックアップクラッチC2は、タービンランナ51に対して軸第一方向A1側に配置されている。また、ロックアップクラッチC2は、カバー部42の内側径方向延在部45を挟んで入力クラッチC1に対して軸第二方向A2側に隣接して配置されている。図3及び図4に示すように、ロックアップクラッチC2は、クラッチハブ61、クラッチドラム62、摩擦部材63、ピストン64、及び作動油圧室H3を備えている。
【0063】
クラッチハブ61は、カバー部42を構成する筒状延在部46と一体回転するように設けられている。クラッチドラム62は、第二ダンパ54を介してタービンランナ51及び中間軸Mに駆動連結されている。クラッチハブ61とクラッチドラム62との間に複数の摩擦部材63が配置され、これらの摩擦部材63に対して軸第一方向A1側にピストン64が配置されている。また、ピストン64は、カバー部42を構成する軸方向延在部44及び筒状延在部46に対して軸方向に沿って摺動可能に配置されている。軸方向延在部44とピストン64との間、及び筒状延在部46とピストン64との間には、それぞれOリング等のシール部材が配置されている。これにより、軸方向延在部44、内側径方向延在部45、筒状延在部46、及びピストン64により区画されて密閉された空間として、作動油圧室H3が形成されている。この作動油圧室H3には、中間軸Mの内部に形成された軸内油路を介してピストン64の作動用の油が供給される。そして、作動油圧室H3に供給される油の油圧レベルに応じてピストン64が軸方向に沿って摺動し、複数の摩擦部材63を相互に押し付け合うための係合圧が増減されて、ロックアップクラッチC2の係合及び解放が制御される。
【0064】
2−5.動力伝達部材
動力伝達部材Tは、車両の駆動力源からの回転及びトルクを変速機構TMへ伝達する部材である。本実施形態においては、車両の駆動力源からの回転及びトルクをトルクコンバータTCのポンプインペラ41に伝達することにより、上記回転及びトルクを、トルクコンバータTCを介して変速機構TMへ伝達する。そのため、本実施形態に係る動力伝達部材Tは、回転電機MGのロータ部材21と、入力クラッチC1の出力側回転部材としての筒状連結部材32と、トルクコンバータTCのカバー部42と、が一体回転するように連結されて構成されている。本実施形態では、ロータ部材21を構成するロータ支持部材22と、筒状連結部材32と、カバー部42と、が一体回転するように連結されて動力伝達部材Tが構成されている。
【0065】
ロータ支持部材22と筒状連結部材32とは、少なくとも2ヵ所、本例では第一径方向嵌合部J1及び第一締結固定部F1、で接して連結されている。第一径方向嵌合部J1は、ロータ支持部材22と筒状連結部材32との径方向の相互位置決めを行うための部位である。本実施形態では、ロータ支持部材22に設けられた嵌合突出部25a、及び筒状連結部材32に設けられた筒状延在部32dは、いずれも軸方向に延在する部分を有している。そして、本例では、嵌合突出部25aの外周面と筒状延在部32dの内周面とが、周方向の全体に亘って互いに当接しつつ嵌合することにより、ロータ支持部材22と筒状連結部材32との径方向の相互位置決めが行われている。このように、本実施形態では、嵌合突出部25aと筒状延在部32dとにより、第一径方向嵌合部J1が構成されている。
【0066】
また、第一締結固定部F1は、ロータ支持部材22と筒状連結部材32とを締結固定するための部位である。本実施形態では、ロータ支持部材22の径方向延在部24、及び筒状連結部材32の取付部32cは、軸方向に互いに接して配置されている。これらは、径方向延在部24に設けられた複数の第一ボルト挿通孔24aの軸心と取付部32cに設けられた複数の第一ボルト孔の軸心とが全て一致する状態で配置されている。第一ボルト91は、それぞれの第一ボルト挿通孔24aに挿通されて第一ボルト孔に締結される。これにより、径方向延在部24と取付部32cとが第一ボルト91により互いに締結固定され、径方向延在部24と取付部32cと間の締結部位により、第一締結固定部F1が構成されている。そして、第一締結固定部F1により、ロータ支持部材22と筒状連結部材32とがガタなく互いに強固に固定されている。なお、本例では、第一ボルト91、第一ボルト挿通孔24a、及び第一ボルト孔は、複数組が周方向に分散して配置されている。そのため、「第一締結固定部F1」とは、それら複数組を総称する用語として用いている(後述する第二締結固定部F2についても同様)。
【0067】
筒状連結部材32とカバー部42とは、少なくとも2ヵ所、すなわち第二径方向嵌合部J2及び第二締結固定部F2、で接して連結されている。第二径方向嵌合部J2は、筒状連結部材32とカバー部42との径方向の相互位置決めを行うための部位である。本実施形態では、筒状連結部材32に設けられた軸方向延在部32a、及びカバー部42に設けられた軸方向延在部44は、いずれも軸方向に延在する部分を有している。そして、本例では、軸方向延在部32aの内周面と軸方向延在部44の外周面とが、周方向の全体に亘って互いに当接しつつ嵌合することにより、筒状連結部材32とカバー部42との径方向の相互位置決めが行われている。このように、本実施形態では、筒状連結部材32の軸方向延在部32aとカバー部42の軸方向延在部44とにより、第二径方向嵌合部J2が構成されている。なお、本実施形態では、軸方向延在部32aと軸方向延在部44との間に第一シール部材81が配置されている。これにより、筒状連結部材32とカバー部42との径方向の相互位置決めのための構成(第二径方向嵌合部J2)と、循環油圧室H2を密封するための構成と、が共通化されている。
【0068】
また、第二締結固定部F2は、筒状連結部材32とカバー部42とを締結固定するための部位である。本実施形態では、筒状連結部材32の径方向延出部32f、及びカバー部42の外側径方向延在部43は、周方向の複数箇所に設けられたカバー側連結部43aを介して接するように配置されている。つまり、径方向延出部32fとカバー側連結部43aとが軸方向に互いに接すると共に、カバー側連結部43aと外側径方向延在部43とが軸方向に互いに接して配置されている。なお、それぞれのカバー側連結部43aには、第二ボルト92が締結される第二ボルト孔が設けられている。それぞれのカバー側連結部43aは、カバー部42と一体回転するように、溶接等により外側径方向延在部43の軸第一方向A1側の側面に接合されている。径方向延出部32f、カバー側連結部43a、及び外側径方向延在部43は、径方向延出部32fに設けられた複数の第二ボルト挿通孔32gの軸心と複数のカバー側連結部43aに設けられた第二ボルト孔の軸心とが全て一致する状態で配置されている。第二ボルト92は、それぞれの第二ボルト挿通孔32gに挿通されて第二ボルト孔に締結される。これにより、径方向延出部32fとカバー側連結部43aとが第二ボルト92により互いに締結固定され、カバー側連結部43aを介して径方向延出部32fと外側径方向延在部43とが連結される。本実施形態では、径方向延出部32fと外側径方向延在部43との間の締結部位により、第二締結固定部F2が構成されている。そして、第二締結固定部F2により、筒状連結部材32とカバー部42及びポンプインペラ41とがガタなく互いに強固に固定されている。
【0069】
なお、本実施形態では、第一径方向嵌合部J1は、第一締結固定部F1よりも径方向内側に設けられている。本実施形態では、ロータ支持部材22の径方向内側端部に位置している支持円筒状部25の一部を利用して第一径方向嵌合部J1が構成されると共に、ロータ支持部材22の径方向延在部24のうち、径方向外側の部位(ロータ保持部23に近い部位)に第一締結固定部F1が設けられている。そのため、第一径方向嵌合部J1を構成する嵌合突出部25a及び筒状延在部32dを比較的小径に形成することが可能となっている。よって、これらの加工精度を向上させることが容易となっている。また、第一締結固定部F1を径方向内側に設ける場合と比較して、てこの原理により、第一締結固定部F1において第一ボルト91を介して伝達可能なトルクの最大値を増大させることが可能となっている。また、第二径方向嵌合部J2は、第二締結固定部F2よりも径方向内側に設けられている。本例では、第二径方向嵌合部J2と第二締結固定部F2とは径方向に互いに隣接して配置されている。
【0070】
本実施形態では、ロータ支持部材22、筒状連結部材32、及びカバー部42は、互いに独立した別部材として構成されている。そのため、これらをそれぞれ単品で加工を行うことができるので、この点からも各部材を所望の形状に加工しつつその加工精度を向上させることが容易となっている。特に、芯出しが必要とされる第一径方向嵌合部J1を構成する嵌合突出部25a及び筒状延在部32d、並びに、第二径方向嵌合部J2を構成する軸方向延在部32a及び軸方向延在部44の軸心精度を向上させることが容易である。これにより、第一締結固定部F1及び第二締結固定部F2と第一径方向嵌合部J1及び第二径方向嵌合部J2とが協働することにより、高い軸心精度でガタなく強固に連結固定された一体の動力伝達部材Tが、全体としてドラム状の回転部材として形成される。
【0071】
このようにして形成された動力伝達部材Tは、図2等に示すように、軸第一方向A1側では、第一軸受71を介して回転可能な状態で、端部支持壁5と一体的に形成された筒状突出部11の外周面に径方向に支持されている。なお、本実施形態では、筒状突出部11の内周面には、当該筒状突出部11を貫通する状態で配置された入力軸Iが、軸方向に所定距離を隔てて分かれて配置された2つの第二軸受72を介して回転可能な状態で径方向に支持されている。一方、動力伝達部材Tは、軸第二方向A2側では、第三軸受73を介して回転可能な状態で、中間支持壁6に取り付けられたポンプカバー7の貫通孔の内周面に径方向に支持されている。これらの第二軸受72及び第三軸受73としては、径方向荷重を受けることが可能な軸受が用いられ、本例ではニードルベアリングが用いられている。
【0072】
3.各構成部材の軸方向の支持構造
次に、本実施形態に係る各構成部材の軸方向の支持構造について説明する。ここでは主に、トルクコンバータTC及び動力伝達部材Tの軸方向の支持構造について説明する。
【0073】
上記のとおり、トルクコンバータTCのステータ56は、一方向クラッチ57を介して固定軸58に支持されている。また、一方向クラッチ57に対して軸第一方向A1側にタービンランナ51の径方向延在部52が配置され、一方向クラッチ57に対して軸第二方向A2側にポンプインペラ41と一体回転するポンプ駆動軸47が配置されている。そして、図2に示すように、軸方向における径方向延在部52と一方向クラッチ57との間に第七軸受77が配置され、軸方向における一方向クラッチ57とポンプ駆動軸47との間に第八軸受78が配置されている。これらの第七軸受77及び第八軸受78としては、第一軸受71とは異なり、軸方向荷重を受けることが可能な軸受が用いられ、本例ではスラストベアリングが用いられている。
【0074】
ところで、ロックアップクラッチC2の解放状態では、ポンプインペラ41とタービンランナ51との間に回転速度差が生じる場合がある。その場合、トルクコンバータTCの本体部収容室H4内において、当該回転速度差によりポンプインペラ41とタービンランナ51との間に負圧が発生し、これらを相互に近接させる方向に作用する引力が生じる。このとき、本実施形態ではタービンランナ51の筒状突出部53と中間軸Mとがスプライン連結され、これらは軸方向に相対移動可能に構成されている。そのため、上記引力が生じた場合には、基本的にはタービンランナ51がポンプインペラ41に向かって軸第二方向A2側へと移動する傾向が強いと考えられる。この場合、一方向クラッチ57は第八軸受78を介して軸第二方向A2側からポンプ駆動軸47により軸方向に支持され、その一方向クラッチ57により、径方向延在部52が第七軸受77を介して軸第二方向A2側から軸方向に支持される。このように、本実施形態に係る駆動装置1では、上記引力に起因するタービンランナ51の軸第二方向A2側への軸方向の移動に伴う軸方向荷重を、基本的にはトルクコンバータTC内において受ける構成となっている。
【0075】
しかしながら、場合によっては、スプライン連結されるタービンランナ51の筒状突出部53と中間軸Mとが所望するように軸方向に相対移動できない可能性がある。例えば中間軸Mの回転速度を上昇させるために筒状突出部53と中間軸Mとの間で比較的大きなトルク伝達が行われている場合等には、これらの間のスプライン連結部には大きなトルクが作用しているため、スプライン連結部における滑りが生じにくく、タービンランナ51のポンプインペラ41側への軸方向の移動が阻害される可能性がある。そして、そのような場合に上記引力が生じると、ポンプインペラ41がタービンランナ51側となる軸第一方向A1側に移動することになる。このような現象が生じた場合、本実施形態ではロータ支持部材22と、筒状連結部材32と、ポンプインペラ41と一体回転するカバー部42と、が固定連結されて動力伝達部材Tが構成されているため、当該動力伝達部材Tの全体が軸第一方向A1側に移動する。そして、動力伝達部材Tを介して、第一軸受71に軸方向荷重が作用する可能性がある。
【0076】
また、ポンプインペラ41及びタービンランナ51の回転速度が高くなると、本体部収容室H4内に充填された油に作用する遠心力によりカバー部42が軸方向に広がるように変形する場合がある。その場合、カバー部42の変形に伴って動力伝達部材Tの軸第一方向A1側への移動量は更に増大する。その結果、動力伝達部材Tを介して第一軸受71に軸方向荷重が作用する可能性が高くなる。
【0077】
そこで、第一軸受71に軸方向荷重が作用することになるのを抑制するべく、本実施形態に係る駆動装置1には、動力伝達部材Tの軸第一方向A1側への軸方向移動を規制する移動規制機構Rが設けられている。本実施形態では、このような移動規制機構Rは、ケース3の端部支持壁5に設けられた筒状突出部11と、第一軸受71とは別の2つの軸受、すなわち第四軸受74及び第五軸受75と、を有している。筒状突出部11は、これら2つの軸受74,75を軸第一方向A1側から軸方向に支持する支持部材として機能している。従って、本実施形態では、筒状突出部11が本発明における「軸方向支持部」に相当する。
【0078】
本実施形態では、動力伝達経路上で入力軸Iと動力伝達部材Tとの間には入力クラッチC1が設けられており、入力軸Iのフランジ部Iaが径方向に延びるように形成されて入力クラッチC1のクラッチハブ31に連結されている。このとき、フランジ部Iaは、軸方向における筒状突出部11とカバー部42との間を通って径方向に延びている。そして、軸方向における筒状突出部11とフランジ部Iaとの間に、筒状突出部11の外周面に嵌合されたスリーブ86を介して第四軸受74が配置され、軸方向におけるフランジ部Iaとカバー部42との間に第五軸受75が配置されている。より具体的には、筒状突出部11に嵌合されたスリーブ86及びフランジ部Iaの双方に接して第四軸受74が配置されており、フランジ部Iaからは僅かに離間すると共にカバー部42に接して第五軸受75が配置されている。これらの第四軸受74及び第五軸受75としては、第一軸受71とは異なり、軸方向荷重を受けることが可能な軸受が用いられ、本例ではスラストベアリングが用いられている。本実施形態においては、第四軸受74及び第五軸受75が本発明における「規制軸受」に相当する。
【0079】
本実施形態では、動力伝達部材Tに対して当該動力伝達部材Tを軸第一方向A1側に移動させようとする荷重がかかった場合には、入力軸Iのフランジ部Iaは第四軸受74を介して軸第一方向A1側から筒状突出部11及びスリーブ86により軸方向に支持される。なお、スリーブ86は、筒状突出部11の第二段差部11cの軸第二方向A2側の側面に接した状態で当該筒状突出部11の軸第二方向A2側の端部に配置されており、筒状突出部11と協働して適切に軸方向荷重を受けることが可能である。また、上記のようにして軸方向に支持された入力軸Iのフランジ部Iaにより、カバー部42が第五軸受75を介して軸第一方向A1側から軸方向に支持される。
【0080】
このように、本実施形態では筒状突出部11の軸第二方向A2側の端部に支持される第四軸受74及び第五軸受75により、動力伝達部材Tを構成するカバー部42が回転可能な状態で軸方向に支持される。そのため、動力伝達部材Tにかかる軸方向の荷重を、第四軸受74及び第五軸受75を介してケース3の筒状突出部11で受けることができる。よって、動力伝達部材Tに軸方向荷重がかかった場合であっても、その軸方向荷重が第一軸受71に作用するのを抑制することができる。従って、第一軸受71には、そのような軸方向荷重に耐えられるだけの性能を備えさせる必要がないので、当該第一軸受71が大型化するのを抑制することができる。これにより、駆動装置1の小型化を図ると共に製造コストの増大を抑制することができる。
【0081】
上記のように、本実施形態では、第一軸受71は、動力伝達部材Tを構成するロータ支持部材22の支持円筒状部25に圧入されて固定されていると共に、筒状突出部11に対しては軸方向の移動がある程度許容される状態で嵌合されている。また、第一軸受71は、筒状突出部11に形成された第一段差部11bの軸第二方向A2側の側面とは離間して配置されている。そのため、仮に軸方向の荷重により動力伝達部材Tが軸第一方向A1側に移動したとしても、その移動量が第一段差部11bの軸第二方向A2側の側面と第一軸受71の軸第一方向A1側の側面との間の第一クリアランスD1(図5を参照)よりも小さい間は、第一軸受71が第一段差部11bに当接することはない。なお、この第一クリアランスD1は、第一軸受71がスナップリング94に接した状態での大きさとして規定されており、支持軸受としての第一軸受71の配設部位における、ケース3に対する動力伝達部材Tの軸方向の相対移動可能距離に等しい。
【0082】
上記のとおり、第四軸受74は筒状突出部11に嵌合されたスリーブ86及びフランジ部Iaの双方に接して配置されており、第五軸受75はカバー部42に接すると共にフランジ部Iaからは僅かに離間して配置されている。そのため、仮に軸方向の荷重により動力伝達部材Tが軸第一方向A1側に移動した場合には、その移動量がフランジ部Iaの軸第二方向A2側の側面と第五軸受75の軸第一方向A1側の側面との間の第二クリアランスD2(図5を参照)に等しくなったときに、第五軸受75がフランジ部Iaに当接する。そして、スリーブ86、第四軸受74、フランジ部Ia、及び第五軸受75を介して、カバー部42が筒状突出部11に支持される状態となる。なお、この第二クリアランスD2は、規制軸受としての第四軸受74及び第五軸受75の配設部位における、ケース3に対する動力伝達部材Tの軸方向の相対移動可能距離に等しい。
【0083】
本実施形態においては、フランジ部Iaと第五軸受75との間の第二クリアランスD2は、第一段差部11bと第一軸受71との間の第一クリアランスD1よりも小さい値に設定されている。言い換えれば、第四軸受74及び第五軸受75の配設部位における、ケース3に対する動力伝達部材Tの軸方向の相対移動可能距離は、第一軸受71の配設部位における、ケース3に対する動力伝達部材Tの軸方向の相対移動可能距離よりも小さい値に設定されている。そのため、仮に軸方向の荷重により動力伝達部材Tが軸第一方向A1側に移動した場合であっても、第一クリアランスD1がなくなるよりも前に第二クリアランスD2がなくなり、スリーブ86、第四軸受74、フランジ部Ia、及び第五軸受75を介して動力伝達部材Tを構成するカバー部42が筒状突出部11に軸方向に支持される状態となる。よって、その状態から更に動力伝達部材Tが軸第一方向A1側に移動することが確実に規制される。従って、第一軸受71が第一段差部11bに当接することにより当該第一軸受71に軸方向荷重が作用するのを、より一層確実に抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態においては、図3及び図4に示すように、軸方向におけるトルクコンバータTCのカバー部42とタービンランナ51との間に第六軸受76が配置されている。より具体的には、軸方向におけるカバー部42の筒状延在部46とタービンランナ51の径方向延在部52との間に、第六軸受76が配置されている。ここでは、筒状延在部46の内周面に形成された段差部46aの軸第二方向A2側の側面と径方向延在部52と一体的に形成された筒状突出部53の軸第一方向A1側の側面との間に、第六軸受76が配置されている。第六軸受76としては、第一軸受71とは異なり、軸方向荷重を受けることが可能な軸受が用いられ、本例ではスラストワッシャーが用いられている。
【0085】
例えば中間軸Mの回転速度が略一定に維持された状態では、タービンランナ51の筒状突出部53と中間軸Mとのスプライン連結部に作用するトルクが比較的小さくなる。そのため、筒状突出部53と中間軸Mとの間の軸方向の相対移動が許容される傾向が強い。そのような状況では、トルクコンバータTCの全体が軸第一方向A1側に向かって移動する場合がある。
【0086】
この点、本実施形態では、筒状延在部46と筒状突出部53との間に配置された第六軸受76をも介して、トルクコンバータTCの全体がケース3により軸第一方向A1側から軸方向に支持される。すなわち、動力伝達部材Tを構成するカバー部42が、スリーブ86、第四軸受74、フランジ部Ia、及び第五軸受75を介してケース3の筒状突出部11に軸方向に支持され、そのカバー部42に設けられた筒状延在部46に、第六軸受76を介してタービンランナ51の筒状突出部53が軸方向に支持される。更に、図2に示すように、筒状突出部53と一体的に形成された径方向延在部52に、ステータ56に連結された一方向クラッチ57が第七軸受77を介して軸方向に支持され、その一方向クラッチ57に、ポンプインペラ41と一体回転するポンプ駆動軸47が第八軸受78を介して軸方向に支持される。よって、トルクコンバータTCの全体が軸第一方向A1側に向かって移動する場合であっても、そのトルクコンバータTCの全体を適切に軸方向に支持することができる。なお、本実施形態においては、第六軸受76及び第七軸受77が本発明における「支持軸受とは別の軸受」に相当する。
【0087】
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係る車両用駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、その実施形態でのみ適用されるものではなく、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0088】
(1)上記の実施形態においては、動力伝達部材Tを構成するカバー部42が、第四軸受74及び第五軸受75を介して、ケース3の端部支持壁5に設けられた筒状突出部11により軸方向に支持されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、動力伝達部材Tの軸第一方向A1側への軸方向移動を規制することができるのであれば、動力伝達部材Tが、第四軸受74及び第五軸受75を介して筒状突出部11とは異なるケース3の他の部位により軸方向に支持された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、当該ケース3の他の部位と、規制軸受としての第四軸受74及び第五軸受75と、により移動規制機構Rが構成される。
【0089】
(2)上記の実施形態においては、動力伝達部材Tを構成するロータ支持部材22が、第一軸受71を介してケース3の端部支持壁5に設けられた筒状突出部11に径方向に支持されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、ロータ支持部材22が、第一軸受71を介して筒状突出部11とは異なるケース3の他の部位により径方向に支持された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0090】
(3)上記の実施形態においては、筒状突出部11の第一段差部11bと第一軸受71との間に第一クリアランスD1が設けられると共に、入力軸Iのフランジ部Iaと第五軸受75との間に第二クリアランスD2が設けられ、第二クリアランスD2が第一クリアランスD1よりも小さい値に設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばそのような第二クリアランスD2が設けられることなく、筒状突出部11、スリーブ86、第四軸受74、フランジ部Ia、第五軸受75、及びカバー部42が、互いに隣接する部材どうしの間で接した状態でカバー部42が軸方向に支持された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、第二クリアランスD2が設けられる場合、及び設けられない場合の双方において、第二クリアランスD2が第一クリアランスD1と等しい値に設定された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0091】
(4)上記の実施形態においては、動力伝達経路上で入力軸Iと動力伝達部材Tとの間には入力クラッチC1が設けられており、ロータ支持部材22と、入力クラッチC1のクラッチドラムとしての筒状連結部材32と、カバー部42と、が一体回転するように連結されて動力伝達部材Tが構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、そのような入力クラッチC1を備えていない駆動装置1にも、本発明を適用することが可能である。この場合、例えば図6に示すように、ロータ支持部材22とカバー部42とが、筒状連結部材32を介することなく直接的に連結固定されて動力伝達部材Tが構成される。なお、ロータ支持部材22とカバー部42とが、カバー部42に接合されたカバー側連結部42aのみを介して連結されている。また、この場合には、上記の実施形態とは異なり、入力軸Iのフランジ部Iaがカバー部42と一体回転するように連結されているので、軸方向における筒状突出部11とカバー部42との間に、移動規制機構Rを構成する規制軸受としての第五軸受75が1つだけ配置されている。
【0092】
(5)上記の実施形態においては、第四軸受74、第五軸受75、第七軸受77、及び第八軸受78としてスラストベアリングを用いると共に、第六軸受76としてスラストワッシャーを用いている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、これらは少なくとも軸方向荷重を受けることが可能な軸受であれば良く、スラストベアリング、スラストワッシャー、及びその他、を適宜組み合わせて用いる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0093】
(6)上記の実施形態においては、ロータ支持部材22と筒状連結部材32とが互いに独立した別部材として構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばロータ支持部材22と筒状連結部材32とが一体的に形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。図7には、このような構成の一例を示している。図示の例では、ロータ支持部材22のロータ保持部23が入力クラッチC1のクラッチドラムとして機能するように構成されていると共に、当該ロータ保持部23を介してロータ支持部材22とカバー部42とが直接的に固定されている。本例では、ロータ保持部23の軸第二方向A2側の端部から更に軸第二方向A2側へ突出する円筒状の軸方向突出部23aの内周面と、軸方向延在部44の外周面とが、周方向の全体に亘って互いに当接しつつ嵌合した状態で、溶接により接合されて一体的に連結固定されている。
【0094】
(7)上記の実施形態においては、クラッチハブ31が入力軸Iと一体回転するように駆動連結されると共に、動力伝達部材Tを構成する筒状連結部材32が、クラッチハブ31と対をなすクラッチドラムとして機能している場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばクラッチドラムが入力軸Iと一体回転するように駆動連結されると共に、筒状連結部材32がクラッチドラムと対をなすクラッチハブを有するように形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0095】
(8)上記の実施形態においては、ポンプインペラ41、タービンランナ51、及びステータ56を有するトルクコンバータTCが、流体継手として駆動装置1に備えられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばステータ56を有することなく、ポンプインペラ41及びタービンランナ51のみを有するフルードカップリング等が流体継手として駆動装置1に備えられた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0096】
(9)上記の実施形態においては、駆動装置1が、FR(Front Engine Rear Drive)車両に搭載される場合に適した一軸構成とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばカウンタギヤ機構等を備え、入力軸I及び中間軸Mに共通の軸心Xとは軸心を異ならせて車軸が配置された、複軸構成の駆動装置とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成の駆動装置は、FF(Front Engine Front Drive)車両に搭載される場合に適している。
【0097】
(10)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、回転電機と、流体継手と、少なくとも回転電機及び流体継手を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 駆動装置(車両用駆動装置)
3 ケース
5 端部支持壁(支持壁)
11 筒状突出部(軸方向支持部)
22 ロータ支持部材
25a 嵌合突出部
31 クラッチハブ(係合入力側部材)
32 筒状連結部材(係合出力側部材)
41 ポンプインペラ(継手入力側部材)
42 カバー部(継手入力側部材)
46 筒状延在部(第一方向側支持部)
47 ポンプ駆動軸(継手入力側部材)
51 タービンランナ(継手出力側部材)
52 径方向延在部(出力側径方向延在部)
53 筒状突出部(出力側径方向延在部)
56 ステータ
57 一方向クラッチ
71 第一軸受(支持軸受)
74 第四軸受(規制軸受)
75 第五軸受(規制軸受)
76 第六軸受(軸受)
77 第七軸受(軸受)
E 内燃機関
MG 回転電機
Ro ロータ(ロータ本体)
TC トルクコンバータ(流体継手)
W 車輪
T 動力伝達部材
I 入力軸(入力部材)
Ia フランジ部(入力側径方向延在部)
O 出力軸(出力部材)
C1 入力クラッチ(係合装置)
R 移動規制機構
D1 第一クリアランス
D2 第二クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、回転電機と、流体継手と、少なくとも前記回転電機及び前記流体継手を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置であって、
前記流体継手は、継手入力側部材と、当該継手入力側部材と対をなす継手出力側部材と、を備え、
前記回転電機は、ロータ本体と、前記継手入力側部材に対して軸方向一方側である軸第一方向側において前記ロータ本体から径方向内側に延びて前記ロータ本体を支持するロータ支持部材と、を備えると共に、当該ロータ支持部材が支持軸受を介して回転可能な状態で前記ケースに径方向に支持され、
少なくとも前記ロータ支持部材と前記継手入力側部材とが一体回転するように連結されて動力伝達部材が構成されると共に、当該動力伝達部材の前記軸第一方向側への軸方向移動を規制する移動規制機構を備えた車両用駆動装置。
【請求項2】
前記移動規制機構は、前記支持軸受とは別に前記動力伝達部材を回転可能に支持する規制軸受と、当該規制軸受を前記軸第一方向側から支持する前記ケースの軸方向支持部と、を有する請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記規制軸受の配設部位における、前記ケースに対する前記動力伝達部材の軸方向の相対移動可能距離が、前記支持軸受の配設部位における、前記ケースに対する前記動力伝達部材の軸方向の相対移動可能距離よりも小さい値に設定されている請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記継手入力側部材は、前記流体継手の本体部を収容するカバー部を備え、
前記ケースは、前記回転電機及び前記流体継手に対して前記軸第一方向側において少なくとも径方向に延びる支持壁と、当該支持壁から前記軸第一方向とは反対方向である軸第二方向側に向かって突出する筒状突出部と、を有し、
前記ロータ支持部材が、前記支持軸受を介して前記筒状突出部の外周面に支持されていると共に、前記カバー部が、前記移動規制機構により回転可能な状態で前記筒状突出部の前記軸第二方向側の端部に支持されている請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
係合入力側部材と、当該係合入力側部材と対をなす係合出力側部材と、を有する係合装置を更に備え、
前記入力部材は、軸方向における前記筒状突出部と前記流体継手との間を通って径方向に延びる入力側径方向延在部を介して前記係合入力側部材と一体回転するように連結され、
前記係合出力側部材は、前記ロータ支持部材及び前記継手入力側部材と一体回転するように連結されてこれらと共に前記動力伝達部材を構成し、
前記移動規制機構は、軸方向における前記筒状突出部と前記入力側径方向延在部との間、及び軸方向における前記入力側径方向延在部と前記動力伝達部材との間にそれぞれ配置された、前記支持軸受とは別の2つの規制軸受を有する請求項4に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記流体継手は、前記継手入力側部材と前記継手出力側部材との間にステータを有するトルクコンバータであり、
前記ステータは、一方向クラッチを介して前記ケースに連結され、
前記継手入力側部材は、前記一方向クラッチに対して前記軸第一方向側に位置する第一方向側支持部を有し、
前記継手出力側部材は、軸方向における前記第一方向側支持部と前記一方向クラッチとの間を通って径方向に延びる出力側径方向延在部を有し、
軸方向における前記第一方向側支持部と前記出力側径方向延在部との間、及び軸方向における前記出力側径方向延在部と前記一方向クラッチとの間のそれぞれに前記支持軸受とは別の軸受が配置されている請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−96677(P2012−96677A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246514(P2010−246514)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】