説明

車両用駐車支援装置

【課題】 簡単な制御にて車両を狭い駐車スペースに旋回駐車できるようにする。
【解決手段】 旋回方向と逆側の車両の進行方向側角部Aが初期位置における進行方向側角部Aを通り車幅方向に延びる直線(ラインL1)に沿って移動し、かつ、旋回方向と逆側の車両の反進行方向側角部Bが初期位置における反進行方向側角部Bを通り車両前後方向に延びる直線(ラインL2)に沿って移動するように、4輪の転動距離に対応した目標転舵角を設定する。これにより、ハンドル操作なしに車体サイズの限界に近い狭いL字状コースに車両を進入させて駐車することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が初期位置から目標軌跡に沿って旋回するように車輪の転舵角を制御して駐車用運転操作を支援する車両用駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、前後左右輪を独立して転舵することにより、狭いスペース内で車両を旋回させる旋回制御技術が知られている。例えば、特許文献1に提案された旋回制御技術では、車両の周囲状況情報を取得し、周囲の障害物を回避するように最適な旋回中心を算出し、計算された旋回中心にて車両が旋回されるように前後左右輪の転舵角を制御する。このような旋回制御技術を用いた自動運転により駐車用運転操作を支援する。
【特許文献1】特開2007−30808
【発明の開示】
【0003】
こうした旋回制御技術は、駐車場などの狭いスペースに車両を入れる場合に使われるが、車両の移動とともに旋回中心を時々刻々と変化させる必要があり、その旋回中心を逐次算出するための演算が複雑となる。従って、マイクロコンピュータの演算負担が大きく、高いスペックが要求される。また、開発工数も増大してしまう。これらの結果、こうした技術を車両に搭載するためには大きなコストアップを招いてしまう。
また、特許文献1に提案された旋回制御技術では、車両を旋回させて車庫入れする場合、車体サイズから決まる駐車可能限界となる狭いスペースには駐車することができない。
【0004】
本発明の目的は、上記問題に対処するためになされたもので、簡単な制御にて車両を狭いスペースで旋回できるようにした車両用駐車支援装置を提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、少なくとも前後の車輪の転舵角を独立して調整する転舵アクチュエータと、上記各車輪の転舵角を検出する転舵角検出手段と、上記各車輪の転動距離を検出する車輪転動距離検出手段と、車両の初期位置からの各車輪の転動距離に対応した各車輪の目標転舵角を設定する目標転舵角設定手段と、上記検出された転舵角が上記目標転舵角となるように上記転舵アクチュエータを駆動制御する転舵制御手段とを備え、車両が上記初期位置から目標軌跡に沿って旋回するように駐車用運転操作を支援する車両用駐車支援装置において、上記目標転舵角設定手段は、旋回方向と逆側の車両の進行方向側角部が初期位置における上記進行方向側角部を通り車幅方向に延びる直線に沿って移動し、かつ、旋回方向と逆側の車両の反進行方向側角部が初期位置における上記反進行方向側角部を通り車両前後方向に延びる直線に沿って移動するように、上記各車輪の転動距離に対応した各車輪の目標転舵角を設定することにある。
【0006】
上記のように構成した本発明においては、目標転舵角設定手段が車両の初期位置からの各車輪の転動距離に対応した各車輪の目標転舵角を設定する。従って、各車輪の目標転舵角は、その車輪の転動距離から一義的に設定される。各車輪の転動距離は車輪転動距離検出手段により検出され、各車輪の転舵角は転舵角検出手段により検出される。そして、転舵制御手段は、これら検出手段の検出結果を使って転舵アクチュエータを駆動制御して各車輪の転舵角を目標転舵角に制御する。これにより車両を初期位置から目標軌跡に沿って旋回させることができる。
【0007】
この場合、目標転舵角設定手段は、旋回方向と逆側の車両の進行方向側角部が初期位置における進行方向側角部を通り車幅方向に延びる直線に沿って移動し、かつ、旋回方向と逆側の車両の反進行方向側角部が初期位置における反進行方向側角部を通り車両前後方向延びる直線に沿って移動するように、各車輪の転動距離に対応した各車輪の目標転舵角を設定する。つまり、目標転舵角設定手段は、車両の前後の角部2点の移動軌跡を直線状に設定しており、角部2点のうち1点が車両の初期位置から車幅方向に延びる直線に沿って移動するように、他の1点が車両の初期位置から車両前後方向に延びる直線に沿って移動するように設定する。前者の角部は、旋回方向と逆側の車両の進行方向側角部であり、後者の角部は、旋回方向と逆側の車両の反進行方向側角部となる。また、進行方向側とは車両が進んでいく方向側であり、前進しながら旋回する場合は車両先頭部側となり、後退しながら旋回する場合は車両後部側となる。また、反進行方向側とは車両が進んでいく方向と反対側であり、前進しながら旋回する場合は車両後部側となり、後退しながら旋回する場合は車両先頭部側となる。
【0008】
例えば、左方向に前進で旋回する場合、旋回方向と逆側の車両の進行方向側角部は、車両先頭部右端となり、旋回方向と逆側の車両の反進行方向側角部は、車両後部右端となる。また、右方向に前進で旋回する場合、旋回方向と逆側の車両の進行方向側角部は、車両先頭部左端となり、旋回方向と逆側の車両の反進行方向側角部は、車両後部左端となる。
【0009】
また、左方向に後退で旋回する場合、旋回方向と逆側の車両の進行方向側角部は、車両後部右端となり、旋回方向と逆側の車両の反進行方向側角部は、車両先頭部右端となる。また、右方向に後退で旋回する場合、旋回方向と逆側の車両の進行方向側角部は、車両後部左端となり、旋回方向と逆側の車両の反進行方向側角部は、車両先頭部左端となる。
【0010】
従って、車両の右側あるいは左側の前後の角部のうち、進行方向の角部が初期位置から車幅方向に直線状に移動し、反対側の角部が初期位置から車両前後方向に直線状に移動するように車両の向きが制御される。これにより、車両は、初期位置における車幅方向に延びる直線と車両前後方向に延びる直線とを旋回径方向外側にはみだすことなく旋回することができる。
【0011】
このため、本発明によれば、車両の旋回中心を逐次設定することなく、車両を狭い駐車場に車庫入れすることができる。例えば、駐車場の幅が狭く、しかも、駐車場に入るための通路が駐車方向に対して直交し狭い場合には、駐車場までの進入路が狭いL字状コースとなる。このような場合であっても、本発明によれば、車両の角部をL字状コースの角部に接近させた位置を初期位置として旋回開始させることで、車体サイズの限界に近い狭いL字状コースに車両を旋回させて駐車することができる。従って、狭い駐車場への車庫入れが非常に容易となる。
【0012】
また、車輪の転動距離に対して一義的に目標転舵角を設定することにより車両を初期位置から常に一定の目標軌跡で旋回させるため、車両の旋回中心を逐次設定する必要が無く制御が複雑にならない。従って、マイクロコンピュータ等の演算処理回路に対して高い処理能力が要求されない。また、開発工数も少なくてすむ。
【0013】
また、車両の初期位置における車幅方向に延びる直線と車両前後方向に延びる直線とを車両が外側にはみ出さずに旋回できるので、運転者は、車両の旋回方向内側に主に注意を向ければ良く、周辺監視センサを省略あるいは簡略化することができる。これらの結果、低コストにて駐車支援を実施することができる。
【0014】
尚、転舵アクチュエータは、少なくとも前後の車輪の転舵角を独立して調整するが、好ましくは、前後左右の車輪の転舵角を独立して調整するとよい。この場合、転舵角検出手段は、前後左右の車輪の転舵角を検出し、車輪転動距離検出手段は、前後左右の車輪の転動距離を検出し、目標転舵角設定手段は、車両の初期位置からの前後左右の車輪の転動距離に対応したそれぞれの車輪の目標転舵角を設定する。また、転舵アクチュエータが前後の車輪の転舵角を独立して調整する構成、つまり、左右輪については独立転舵しない構成の場合には、転舵角検出手段は、少なくとも前後の車輪の転舵角を検出し、車輪転動距離検出手段は、前後左右の車輪の転動距離を検出し、目標転舵角設定手段は、車両の初期位置からの前後左右の車輪の転動距離に対応した少なくとも前後の車輪の目標転舵角を設定する。
【0015】
本発明の他の特徴は、上記目標転舵角設定手段は、車両を平面視で長方形と仮定し、上記旋回方向と逆側の車両の進行方向側角部となる長方形の第1頂点が初期位置における上記第1頂点を通り車幅方向に延びる直線に沿って移動し、上記旋回方向と逆側の車両の反進行方向側角部となる長方形の第2頂点が初期位置における上記第2頂点を通り車両前後方向に延びる直線に沿って移動するように、上記各車輪の転動距離に対応した各車輪の目標転舵角を設定することにある。
【0016】
この発明においては、車両を平面視で長方形と仮定し、車両の2つの角部を長方形の頂点とみなして、その2つの角部の移動軌跡が直線となって直交するように車輪の目標転舵角が設定される。従って、車輪の転動距離に対応した各車輪の目標転舵角の設定が容易となる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、上記駐車用運転操作の支援開始を運転者が指示する旋回指示手段を備え、上記転舵制御手段は、上記旋回指示手段により駐車用運転操作の支援開始が指示されたとき、上記各車輪の転舵角が上記目標転舵角設定手段により設定される目標転舵角になるように上記転舵アクチュエータの駆動制御を開始することにある。
【0018】
この発明においては、運転者が旋回指示手段を使って駐車用運転操作の支援開始を指示すると、転舵制御手段が転舵アクチュエータを制御して各車輪の転舵角を目標転舵角にする。従って、運転者が駐車用運転操作の支援開始を指示したときの車両の位置が初期位置となり、その初期位置から車両が目標軌跡に沿って旋回制御されることとなる。これによれば、運転者の指示により、自動的に各車輪の転舵角が転動距離に応じた目標転舵角に制御され、車両を一定の軌跡で旋回させることができる。
【0019】
例えば、車両をL字状の狭い進入コース沿って駐車場に進入させる場合、車両の先頭角部あるいは後部角部をL字状コースの角部いっぱいにまで接近させてコースと平行に車両を停止させ、その状態から旋回指示手段により駐車用運転操作の支援開始を指示することで、車輪の転舵角が停止位置からの転動距離に対応した目標転舵角に設定される。このため、運転者はハンドル操作することなく車両を狭いL字状コースに沿って旋回させることができる。
【0020】
本発明の他の特徴は、車輪の転舵角に応じて車輪の接地中心位置を車体に対して車幅方向に移動させる車輪位置移動制御手段を備え、上記目標転舵角設定手段は、上記車輪の接地中心位置の車幅方向移動分を加味して上記目標転舵角を設定することにある。
【0021】
車両を通路の片側いっぱいに寄せるほど狭いL字状コースを旋回できるが、旋回開始時おいて転舵した車輪が車体から外側にはみだして通路端の壁等の障害物に当たってしまうおそれがある。そうした場合には、車輪のはみ出す分だけ車両をあらかじめ通路端から内側に寄せる必要があり、通路幅を最大限に有効利用した旋回ができなくなる。
【0022】
そこで、本発明においては、車輪位置移動手段が車輪の転舵角に応じて車輪の接地中心位置を車体に対して車幅方向内側に移動させるため、車輪を車体から外側にはみ出さないようにすることができる。例えば、車輪の転舵角が大きくなるほど、つまり、中立位置(直進方向に進む位置)から離れるほど、車輪の接地中心位置を車幅方向内側に移動させる。
【0023】
このとき、目標転舵角設定手段は、車輪の接地中心位置の車幅方向移動分を加味して目標転舵角を設定するため、車両を通路の端いっぱいに寄せた状態から、車両の一方の角部を車幅方向に、他方の角部を車両前後方向に移動させるができる。この結果、車体サイズの限界まで狭いL字状コースに車両を進入させて駐車することができる。
【0024】
本発明の他の特徴は、上記車輪位置移動制御手段は、車輪の車幅方向外側端が転舵角の変化にかかわらず車両前後方向に延びた同一鉛直面上に位置するように、車輪の転舵角に応じて車輪の接地中心位置を車体に対して車幅方向に移動させることにある。
【0025】
この発明によれば、車輪の車幅方向外側端が転舵角の変化にかかわらず車両前後方向に延びた同一鉛直面上に位置するように車輪の接地中心位置の移動量が設定される。従って、車輪を車体の外側にはみ出さない範囲で、できるだけ車幅方向外側に位置させることができる。従って、安定した旋回走行を維持することができる。
【0026】
本発明の他の特徴は、上記車輪位置移動制御手段は、車輪の接地中心位置を車体に対して車幅方向に移動させる移動アクチュエータと、上記車輪の接地中心位置の移動量を検出する移動量検出手段と、上記検出された移動量が車輪の転舵角に応じて設定される目標移動量となるように上記移動アクチュエータを駆動制御する移動制御手段とを備えたことにある。
【0027】
この発明においては、移動量検出手段が車輪の接地中心位置の移動量を検出し、検出された移動量が車輪の転舵角に応じて設定される目標移動量となるように移動制御手段が移動アクチュエータを駆動制御する。従って、車輪の接地中心位置を目標位置に精度良く移動させることができる。
【0028】
本発明の他の特徴は、前後左右の車輪を独立して回転駆動する4輪独立駆動手段を備えた車両に適用されることにある。
【0029】
この発明においては、車輪駆動手段が前後左右の車輪に独立した回転駆動力を付与するため、車輪を大舵角に保った状態で車両を良好に旋回させることができる。
【0030】
本発明の他の特徴は、車輪の目標転舵角が上記転舵アクチュエータによる転舵可能範囲を超える場合には、上記目標転舵角を左右に180°反転した転舵角を目標転舵角として設定するとともに、上記4輪独立駆動手段に対して当該車輪の回転駆動方向を逆にするように反転指令を出力する反転制御手段を備えたことにある。
【0031】
この発明によれば、車輪の目標転舵角が転舵アクチュエータの転舵可能範囲を超える場合であっても、当該車輪を目標走行方向に転動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用駐車支援装置について図面を用いて説明する。本発明の車両用駐車支援装置は、ステアリング装置を兼用して構成されるものであり、ステアリング装置内に駐車用運転操作を支援する機能を備えたものといえる。図1は、同実施形態に係る車両用駐車支援装置を4輪独立駆動部とあわせて表した概略構成図である。
【0033】
この車両は、4輪独立転舵方式の車両であって、左前輪WFL,右前輪WFR,左後輪WRL,右後輪WRRをそれぞれ独立して転舵可能に備え、図2に示すように、左前輪WFL,右前輪WFR,左後輪WRL,右後輪WRR(以下、これらを特定しない場合には、車輪Wと総称する)を転舵するための転舵機構10を備えている。
【0034】
各車輪Wに設けられる転舵機構10は、ナックル11と転舵用モータ12とを備える。ナックル11は、車輪Wの内側に連結されて車輪Wを回転可能に支持する。ナックル11は、車輪Wの内側から上方に延設され、その途中で車幅方向外側に曲折されて転舵用モータ12と連結する。転舵用モータ12は、図示しないサスペンション装置を介して車体に固定され、その回転出力軸が車輪Wのタイヤの接地中心点を通る鉛直線上に配置される。転舵用モータ12は、内部に減速機を備え、この減速した回転トルクをナックル11に伝達する。従って、ナックル11は、転舵用モータ12の回転により車輪Wのタイヤの接地中心点を通る鉛直線を中心として回転し車輪Wを転舵する。
【0035】
このため、転舵機構10は、転舵角を大きくすることが可能で、左右方向にそれぞれ90°まで車輪Wを転舵できるように設定されている。つまり、車輪Wが車体の前後方向と平行に向く位置を中立位置として、この中立位置を基準とした車輪Wの向きである転舵角を右方向および左方向にそれぞれ90°まで変更できるように設定されている。
【0036】
尚、各転舵機構10に設けられる転舵用モータ12は、それぞれ独立して駆動制御されるため、以下、左前輪WFLを転舵するモータを転舵用モータ12a、右前輪WFRを転舵するモータを転舵用モータ12b、左後輪WRLを転舵するモータを転舵用モータ12c、右後輪WRRを転舵するモータを転舵用モータ12dと呼ぶ。転舵用モータ12は、本発明における転舵アクチュエータに相当する。
【0037】
各転舵用モータ12a,12b,12c,12dは、図1に示すように、それぞれモータ駆動回路13a,13b,13c,13dに接続される。モータ駆動回路13a,13b,13c,13d(以下、これらを総称する場合には単にモータ駆動回路13と呼ぶ)は、複数のスイッチング素子にて構成したブリッジ回路等(例えばインバータ回路)を備え、後述する転舵用制御ユニット50(以下、転舵用ECU50と呼ぶ)から出力される制御信号(例えば、PWM制御信号)に応じた電圧で転舵用モータ12a,12b,12c,12dを正逆自在に回転駆動する。従って、転舵用ECU50とモータ駆動回路13により本発明における転舵制御手段を構成している。
【0038】
車輪WFL,WFR,WRL,WRRのホイール内部には、駆動用モータ14a,14b,14c,14d(以下、これらを総称する場合には単に駆動用モータ14と呼ぶ)がナックル11に固定されて組み込まれている。駆動用モータ14は、いわゆるインホイールモータであり、通電により発生した回転トルクをプラネタリギヤ等の減速機を介して車輪Wに付与する。
【0039】
各駆動用モータ14a,14b,14c,14dは、それぞれモータ駆動回路15a,15b,15c,15dに接続される。モータ駆動回路15a,15b,15c,15d(以下、これらを総称する場合には単にモータ駆動回路15と呼ぶ)は、複数のスイッチング素子にて構成したブリッジ回路等(例えばインバータ回路)を備え、後述する車輪駆動用制御ユニット100(以下、車輪駆動用ECU100と呼ぶ)から出力される制御信号(例えば、PWM制御信号)に応じた電圧で駆動用モータ14a,14b,14c,14dを正逆自在に回転駆動する。
【0040】
従って、本実施形態の車両用駐車支援装置が搭載される車両は、各車輪Wを回転駆動する車輪駆動アクチュエータ(例えば、駆動用モータ14)と、各車輪駆動アクチュエータを独立して駆動制御する車輪駆動制御手段(例えば、モータ駆動回路15と車輪駆動用ECU100)とを有する4輪独立駆動手段を備えている。
【0041】
転舵用ECU50は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部として構成したもので、入力インターフェースに車輪舵角センサ21a,21b,21c,21dと、車輪速度センサ22a,22b,22c,22dと、ハンドル操舵角センサ23と、操舵トルクセンサ24と、操作入力部25と、シフトポジションセンサ26を接続している。また、転舵用ECU50は、出力インターフェースにモータ駆動回路13a,13b,13c,13dを接続している。また、転舵用ECU50は、車輪駆動用ECU100と相互にデータ授受可能に設けられる。
【0042】
車輪舵角センサ21a,21b,21c,21d(以下、これらを総称するときは単に車輪舵角センサ21と呼ぶ)は、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転舵角を検出するものである。例えば、各転舵用モータ12に組み込まれモータ回転角度(回転位置)を検出する回転角センサ(図示略)を用いることができる。つまり、転舵用モータ12の回転角度と車輪Wの転舵角とは一対一に対応するため、モータ回転制御用に使用される回転角センサで検出したモータ回転角度から転舵角を検出するのである。各車輪舵角センサ21a,21b,21c,21dは、車輪WFL,WFR,WRL,WRRが中立位置に向いているときの転舵角を0°として、中立位置に対する車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転舵角δFL,δFR,δRL,δRRを表す信号を転舵用ECU50に出力する。本実施形態においては、左方向の転舵角を正の値で表し、右方向の転舵角を負の値で表す。この車輪舵角センサ21a,21b,21c,21dは、本発明における転舵角検出手段に相当する。
【0043】
車輪速度センサ22a,22b,22c,22dは、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの回転速度を検出し、その回転速度である車輪速度ωFL,ωFR,ωRL,ωRRを表す信号を転舵用ECU50に出力する。車輪Wの転動距離は、車輪Wの外周径(転舵用ECU50に記憶されている)と車輪速度とから求められる。従って、本実施形態においては、この車輪速度センサ22による車輪速度検出と、車輪速度を使って車輪転動距離を演算する転舵用ECU50とにより車輪転動距離検出手段を構成している。この車輪速度センサ22a,22b,22c,22dにより検出される車輪速度ωFL,ωFR,ωRL,ωRR信号は、車輪駆動用ECU100にも出力される。尚、車輪転動距離は、駆動用モータ14の回転角を検出する回転角センサ(図示略)を用いて検出することもできる。つまり、駆動用モータ14の回転角度と車輪Wの回転角度とは一対一に対応するため、モータ回転制御用に使用される図示しない回転角センサで検出したモータ回転角度から車輪Wの回転角度を検出し、この回転角度と車輪Wの外周径とから車輪転動距離を算出する構成を採用することができる。
【0044】
ハンドル操舵角センサ23は、操舵ハンドル40の中立位置に対する回転角度をハンドル操舵角として検出し、ハンドル操舵角θhを表す信号を転舵用ECU50に出力する。
【0045】
操舵トルクセンサ24は、運転者が操舵ハンドル40を回転操作したときにステアリングシャフト41に入力されるトルクを操舵トルクとして検出し、操舵トルクThを表す信号を転舵用ECU50に出力する。
【0046】
操作入力部25は、運転席近傍に設けられ運転者が入力操作する操作部であり、旋回駐車支援モードを選択するモード選択スイッチ25a、旋回駐車支援制御の開始を指示するスタートスイッチ25b、旋回駐車支援制御における旋回方向を選択する旋回方向選択スイッチ25cを備える。この操作入力部25としては、専用に設けても良いが、情報端末装置を利用することもできる。例えば、ナビゲーション装置のタッチパネル表示器を兼用して、旋回駐車支援モードを選択するモード選択画面、旋回駐車支援制御の開始を指示するスタート画面、旋回駐車支援制御における旋回方向を選択する旋回方向選択画面を切り替え表示して、表示画面ごとに画面上でタッチ操作できるようにしたものであってもよい。尚、本実施形態のスタートスイッチ25bは、本発明における旋回指示手段に相当する。
【0047】
シフトポジションセンサ26は、図示しないシフトレバーのポジションを検出し、シフトポジションを表す信号を転舵用ECU50に出力する。このシフトポジションセンサ26により検出されるシフトポジション信号は、車輪駆動用ECU100にも出力される。
【0048】
車輪駆動用ECU100は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部として構成したもので、入力インターフェースに車輪速度センサ22a,22b,22c,22dと、アクセルペダルセンサ27と、ブレーキペダルセンサ28と、シフトポジションセンサ26とを接続している。また、車輪駆動用ECU100は、出力インターフェースにモータ駆動回路15a,15b,15c,15dを接続している。また、車輪駆動用ECU100は、転舵用ECU50と相互にデータ授受可能に設けられる。
【0049】
アクセルペダルセンサ27は、図示しないアクセルペダルの踏み込み量(踏み込み角度)を検出し、この踏み込み量を表すアクセルペダル信号を車輪駆動用ECU100に出力する。ブレーキペダルセンサ28は、図示しないブレーキペダルの踏み込み量(踏み込み角度)を検出し、この踏み込み量を表すブレーキペダル信号を車輪駆動用ECU100に出力する。
【0050】
車輪駆動用ECU100は、アクセルペダル信号、ブレーキペダル信号、シフトポジション信号、車輪速度信号に基づいて、モータ駆動回路15a,15b,15c,15dに制御信号を出力し、駆動用モータ14a,14b,14c,14dに所定のトルクを発生させて車輪WFL,WFR,WRL,WRRを独立して駆動制御する。
【0051】
転舵用ECU50は、通常の転舵制御機能に加えて、後述する旋回駐車支援機能を有する。転舵用ECU50は、操作入力部25の選択操作により通常モードが選択されている場合には通常転舵制御を行い、旋回駐車支援モードが選択されている場合には旋回駐車支援制御を行う。そのため、転舵用ECU50は、通常転舵制御を行うための制御プログラムと旋回駐車支援制御を行うための制御プログラムとを別々にROM内に記憶している。
【0052】
通常転舵制御時においては、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転舵角が、ハンドル操舵角θhに応じた目標転舵角になるように転舵用モータ12a,12b,12c,12dが制御される。転舵用ECU50は、この通常転舵制御を行うにあたって、ハンドル操舵角θhに応じた車輪WFL,WFR,WRL,WRRの目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*を予め目標転舵角テーブルとしてROM内に記憶しており、走行中、この目標転舵角テーブルを参照してハンドル操舵角θhに応じた車輪WFL,WFR,WRL,WRRの目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*を逐次算出する。そして、車輪舵角センサ21a,21b,21c,21dにて検出した実際の転舵角δFL,δFR,δRL,δRRと目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*との偏差(δFL*−δFL,δFR*−δFR,δRL*−δRL,δRR*−δRR)に応じた転舵用モータ12a,12b,12c,12dへ通電すべき目標電流を設定し、目標電流に対応した制御信号(例えばPWM制御信号)をモータ駆動回路13a,13b,13c,13dに出力する。これにより、転舵用モータ12a,12b,12c,12dが駆動され、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転舵角が目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*となるように制御される。
【0053】
尚、目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*は、ハンドル操舵角θhが大きくなるにしたがって大きな角度に設定されるが、車速に応じてその特性を変化させるようにしてもよい。
【0054】
次に、旋回駐車支援制御について説明する。転舵用ECU50は、操作入力部25の選択操作により旋回駐車支援モードが選択された場合に、通常転舵制御から旋回駐車支援制御に切り替える。旋回駐車支援制御においては、運転者の操舵操作を必要とせず、車両が予め決められた旋回軌跡に沿って進むように車輪Wの転舵角が自動設定される。
【0055】
まず、旋回駐車支援制御による車両の旋回動作について図3を用いて説明する。ここでは、車両Cを左方向に旋回させて先頭から駐車場Pに車庫入れするケースについて説明する。この駐車場Pは、通路Rに隣接して設けられ、通路方向(図面左右方向)に対して直交する方向が車両前後方向となるように縦横の大きさが設定されている。以下、駐車場Pの図面右側の境界ラインを含む直線をラインL1と呼び、通路Rの図面下側の境界ラインをラインL2と呼ぶ。また、車両Cの外形形状を平面視で長方形と仮定し、車両先頭面の右端を右前角部Aと呼び、後端面の右端を右後角部Bと呼ぶ。
【0056】
駐車場Pの横幅、および、通路Rの横幅が狭い場合、図3(B)に示すように、車両Cの右前角部AがラインL1に沿うように、車両Cの右後角部BがラインL2に沿うように車両を旋回させると、進入可能限界となる狭い進入スペースを通って車庫入れすることができる。そこで、本実施形態においては、こうした車両旋回軌跡が得られるように車両Cを旋回させる。
【0057】
運転者は、図3(B)に示すように、車両Cの先頭面をラインL1に一致させ、また、車両Cの右側面(旋回方向と反対側の側面)をラインL2に一致させて車両Cを停止させる。この車両Cの位置が、旋回駐車支援制御を行う初期位置となる。この場合、運転者は、車両Cが各ラインL1,L2を外側(旋回中心から外径方向)に超えないようにするため、ある程度の余裕をもってラインL1,L2より内側に車両Cを配置してもよい。尚、ここでは、車両Cの先頭面がラインL1と一致し、車両Cの右側面(旋回方向と反対側の側面)がラインL2と一致しているものとして説明する。
【0058】
運転者は、この位置に車両Cを停止させると、操作入力部25のモード選択スイッチ25aを操作して旋回駐車支援モードを選択する。そして、スタートスイッチ25bをオン操作することにより旋回駐車支援制御を開始させる。このスタートスイッチ25bのオン操作により、転舵用ECU50は、転舵用モータ12a,12b,12c,12dを駆動制御して、車両Cの右前角部AがラインL1に沿って、かつ、車両Cの右後角部BがラインL2に沿って車両Cが旋回するように、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転舵角を、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離に応じた目標転舵角に制御する。
【0059】
つまり、車両の右前角部Aが初期位置における右前角部Aを通り車幅方向に延びる直線(ラインL1)に沿って移動し、かつ、車両の右後角部Bが初期位置における右後角部Bを通り車両前後方向に延びる直線(ラインL2)に沿って移動するように、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転舵角が、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離に対応した目標転舵角に設定される。
【0060】
尚、車両CをラインL1,L2から内側に停止した場合には、車両Cの右前角部Aおよび右後角部Bは、その分だけラインL1,L2より内側に引いたラインL1,L2と平行な直線上を移動することになる。
【0061】
旋回駐車支援制御中においては、運転者は、ブレーキペダルの踏み込み力を緩めてクリープ状態で車両を前進させ、ハンドル操作を一切行わない。転舵用ECU50は、車両Cが90°旋回すると車輪WFL,WFR,WRL,WRRを中立位置に戻して旋回駐車支援制御を終了する。これにより、車両Cは、右側側面がラインL1に平行にそろえられる。
【0062】
転舵用ECU50は、こうした車両の旋回移動を実現するために、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離DFL,DFR,DRL,DRRに対する目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*を算出する。車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離DFL,DFR,DRL,DRRに対する目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*の関係は予め設定され、ROM等の記憶手段に記憶されている。以下、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離DFL,DFR,DRL,DRRに対する目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*について図4を用いて説明する。
【0063】
車両の初期位置における右後角部Bの位置を原点(0,0)とし、初期位置における車両の前後方向をX方向、車幅方向をY方向としたX−Y座標を考える。右後角部BがX方向に距離xだけ移動したときの右前角部Aの座標を(xA,yA)とし、車両の前後方向軸のx軸に対する角度をθとすると、以下の式が導き出される。尚、式中において、Lは車両全長を表す(図5参照)。
【数1】

【数2】

【数3】

【0064】
また、右前輪接地中心点FRの座標を(xFR、yFR)とすると、以下の式が導き出される。尚、式中において、Lは車両全長、Wは車両全幅、WBはホイールベース、TRはトレッド、FOHは前オーバーハング、ROHは後オーバーハングを表す(図5参照)。
【数4】

【数5】

右前輪接地中心点FRの初期位置からの転動距離をDFRとし、右前輪WFRのx軸となす角度、つまり、右前輪接地中心点FRの移動していく方向に右前輪WFRを向けた場合の右前輪WFRのx軸とのなす角度をθFRとすると、以下の式が導き出される。
【数6】

【数7】

【0065】
車輪速度センサ22bにより検出した右前輪WFRの車輪速度ωFRから右前輪WFRの実際の転動距離が算出できるため、この右前輪WFRの実際の転動距離と式(1)とからxを算出し、この算出されたxを式(2)に代入することでθFRを算出する。
この場合、右前輪WFRの目標転舵角δFR*は、δFR*=θFR−θとして算出できる。従って、右前輪WFRの転動距離DFRから目標転舵角δFR*を一義的に設定することができる。
【0066】
左前輪WFL,右後輪WRR,左後輪WRLについても同様に、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRLの転動距離DFL,DRR,DRLから目標転舵角δFL*,δRR*,δRL*を算出することができる。
【0067】
左前輪WFLについては、左前輪接地中心点FLの座標を(xFL、yFL)とすると、以下の式が導き出される。
【数8】

【数9】

また、左前輪接地中心点FLの初期位置からの転動距離をDFL、左前輪WFLのx軸となす角度をθFLとすると以下の式が導き出される。
【数10】

【数11】

これにより、左前輪WFLの転動距離DFLから目標転舵角δFL*(=θFL−θ)を一義的に設定することができる。
【0068】
また、右後輪WRRについては、右後輪接地中心点RRの座標を(xRR、yRR)とすると、以下の式が導き出される。
【数12】

【数13】

また、右後輪接地中心点RRの初期位置からの転動距離をDRR、右後輪WRRのx軸となす角度をθRRとすると以下の式が導き出される。
【数14】

【数15】

これにより、右後輪WRRの転動距離DRRから目標転舵角δRR*(=θRR−θ)を一義的に設定することができる。
【0069】
また、左後輪WRLについては、左後輪接地中心点RLの座標を(xRL、yRL)とすると、以下の式が導き出される。
【数16】

【数17】

また、左後輪接地中心点RLの初期位置からの転動距離をDRL、左後輪WRLのx軸となす角度をθRLとすると以下の式が導き出される。
【数18】

【数19】

これにより、左後輪WRLの転動距離DRLから目標転舵角δRL*(=θRL−θ)を一義的に設定することができる。
【0070】
このように車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離DFL,DFR,DRL,DRRに対して目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*が一義的に決まるため、予め転動距離DFL,DFR,DRL,DRRと目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*とを関係づけた参照テーブルをROM内に記憶しておき、旋回駐車支援制御時にこの参照テーブルから目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*を求めるようにしてもよい。
【0071】
図6は、旋回駐車支援制御により車両を90°旋回させたときの車輪接地中心点FR,FL,RR,RLの移動軌跡を表す。図中において、実線が左前輪WFLの接地中心点の移動軌跡、破線が右前輪WFRの接地中心点の移動軌跡、1点鎖線が左後輪WRLの接地中心点の移動軌跡、2点鎖線が右後輪WRRの接地中心点の移動軌跡をそれぞれ表す。
【0072】
また、図7は、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離DFL,DFR,DRL,DRRと目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*との関係を表す。図中において、実線が左前輪WFLの転動距離DFLに対する目標転舵角δFL*、破線が右前輪WFRの転動距離DFRに対する目標転舵角δFR*、1点鎖線が左後輪WRLの転動距離DRLに対する目標転舵角δRL*、2点鎖線が右後輪WRRの転動距離DRRに対する目標転舵角δRR*をそれぞれ表す。従って、この図7に示す特性を参照テーブルとしてROM内に記憶しておき、旋回駐車支援制御時にこの参照テーブルから目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*を求めるようにすることができる。
【0073】
次に、転舵用ECU50が実行する旋回駐車支援制御処理について説明する。図8は、転舵用ECU50が実行する旋回駐車支援制御ルーチンを表す。この旋回駐車支援制御ルーチンは、転舵用ECU50のROM内に制御プログラムとして記憶されている。
【0074】
運転者は、駐車場に車庫入れするにあたり、車両の先頭面をラインL1に平行に、かつ、車両の右側面をラインL2に平行にあわせた位置に車両を停止させ、操作入力部25のモード選択スイッチ25aを操作して旋回駐車支援モードを選択する。このとき、旋回方向選択スイッチ25cにより車両の旋回方向(右あるいは左)を選択する。旋回駐車支援モードが選択されると、本旋回駐車支援制御ルーチンが起動する。尚、車両を後退させて車庫入れする場合には、車両の後端部をラインL1に平行に、かつ、車両の左側面をラインL2に平行に合わせた位置に車両を停止させ、操作入力部25のモード選択スイッチ25aを操作して旋回駐車支援モードを選択すればよい。
【0075】
本制御ルーチンが起動すると、転舵用ECU50は、ステップS11において、操作入力部25のスタートスイッチ25bの入力状況を読み込み、ステップS12において、スタートスイッチ25bがオン状態になっているか否かについて判断する。スタートスイッチ25bがオン状態になるまでこのステップS11,S12の処理が繰り返される。
【0076】
運転者がスタートスイッチ25bをオン操作すると、ステップS12の判断が「YES」となり、転舵用ECU50は、その処理をステップS13に進める。運転者は、このスタートスイッチ25bのオン操作後、ブレーキの踏み込み力を弱めて、クリープ状態で徐々に車両を移動させる。
【0077】
転舵用ECU50は、ステップS13において、操作入力部25の旋回方向選択スイッチ25cにて設定されている設定信号、および、シフトポジションセンサ26により検出されているシフトポジション信号を読み込む。
【0078】
続いて、転舵用ECU50は、ステップS14において、車輪速度センサ22a,22b,22c,22dにより検出される車輪速度ωFL,ωFR,ωRL,ωRRを読み込み、ステップS15において、車両初期位置(スタートスイッチ25bがオンされたときの車両位置)からの車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離DFL,DFR,DRL,DRRを計算する。転動距離DFL,DFR,DRL,DRRは、タイヤの外径と車輪速度ωFL,ωFR,ωRL,ωRRとから求められる。
【0079】
続いて、転舵用ECU50は、ステップS16において、上述したように車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離DFL,DFR,DRL,DRRに対応するそれぞれの目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*を計算する。目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*は、上述した計算式から求めても良いし、図7に示すような特性を記憶した参照テーブルから求めるようにしてもよい。このステップS16を実行する転舵用ECU50が、本発明における目標転舵角設定手段に相当する。
【0080】
この場合、ステップS13において読み込んだ旋回方向とシフトポジションとに応じて目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*が設定される。つまり、右旋回時と左旋回時とでは目標旋回軌跡が左右対称となるため、目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*もそれに対応して設定される。例えば、右旋回時における右車輪WFR,WRRの目標転舵角が左旋回時における左車輪WFL,WRLの目標転舵角と同じ大きさ(絶対値)に、右旋回時における左車輪WFL,WRLの目標転舵角が左旋回時における右車輪WFR,WRRの目標転舵角と同じ大きさ(絶対値)に設定される。また、車両先頭部から車庫入れする前進旋回と車両後部から車庫入れする後退旋回とでは、同一旋回軌跡上を反対方向に走行するため、前進旋回における初期位置が後退旋回における終了位置となり、前進旋回における終了位置が後退旋回における開始位置となるように目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*が設定される。
【0081】
続いて、転舵用ECU50は、ステップS17において、車輪舵角センサ21a,21b,21c,21dにより検出される車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転舵角δFL,δFR,δRL,δRRを読み込む。以下、この検出した転舵角δFL,δFR,δRL,δRRを実転舵角δFL,δFR,δRL,δRRと呼ぶ。
【0082】
続いて、転舵用ECU50は、ステップS18において、目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*と実転舵角δFL,δFR,δRL,δRRとの偏差Δδ(δFL*−δFL,δFR*−δFR,δRL*−δRL,δRR*−δRR)に基づいて、転舵用モータ12a,12b,12c,12dへ通電すべき目標電流を設定し、目標電流に対応した制御信号(例えばPWM制御信号)をモータ駆動回路13a,13b,13c,13dに出力する。これにより、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの向きが目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*となるように制御される。
【0083】
尚、転舵用ECU50は、目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*の大きさ(絶対値)が転舵機構10の転舵可能範囲である90°を超える場合には、転舵方向を左右に180°反転した舵角を当該車輪Wの目標転舵角に設定する。例えば、目標転舵角が左100°の場合には、目標転舵角を右方向に180°反転補正して最終的な目標転舵角を右80°に設定する。転舵用ECU50は、このように目標転舵角を左右に180°反転設定している場合には、ステップS18において転舵モータ12を駆動制御すると同時に、車輪駆動用ECU100に対して、当該車輪Wの回転駆動方向を反転させる反転指令を出力する。車輪駆動用ECU100は、この反転指令を入力した場合には、当該車輪Wの回転駆動方向を反転させる。
【0084】
従って、計算上の目標転舵角が転舵機構10の転舵可能範囲を超える場合であっても、当該車輪を目標走行方向に沿って転動させることができる。図7の参照テーブルに示す目標転舵角は、計算上の目標転舵角の大きさが90°を超える場合に転舵方向を左右に180°反転して設定したものである。こうした反転処理を行う転舵用ECU50が本発明の反転制御手段に相当する。尚、転舵機構10が車輪Wを目標転舵角の全範囲にわたって転舵できる構成の場合には反転処理を行う必要はない。
【0085】
続いて、転舵用ECU50は、ステップS19において、車両の90°の旋回が完了したか否かを判断する。例えば、特定の車輪Wの転動距離Dが終了距離(車両が90°旋回するのに要する車輪の転動距離)に達したか否かを判断する。車両の旋回が完了していない場合には、その処理をステップS13に戻す。
【0086】
こうして、転舵用ECU50は、車両の旋回が完了するまでのあいだ、ステップS13からステップS19までの処理を所定の短い周期で繰り返す。これにより、車両は、車輪WFL,WFR,WRL,WRRが転動距離DFL,DFR,DRL,DRRに応じた目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*に制御され、図3(B)に示すように、右前角部AがラインL1に沿って駐車場方向に移動し、右後角部BがラインL2に沿って右方向に移動するように旋回する。そして、車両が初期位置から90°旋回すると、転舵用ECU50は、ステップS19において旋回完了と判断し、その処理をステップS20に進める。
【0087】
転舵用ECU50は、ステップS20において、転舵用モータ12a,12b,12c,12dを駆動して車輪WFL,WFR,WRL,WRRを中立位置(0°)に向ける。つまり、実転舵角δFL,δFR,δRL,δRRが0°になるようにモータ駆動回路13a,13b,13c,13dに制御信号を出力して転舵用モータ12a,12b,12c,12dを駆動する。
【0088】
本旋回駐車支援制御ルーチンは、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの中立位置への転舵が完了すると終了する。転舵用ECU50は、旋回駐車支援制御ルーチンの終了に伴って、通常転舵制御モードに切り替える。車両は、旋回駐車支援制御ルーチンの終了時においては、図3(B)に示すように、右側面がラインL1と平行になっている。運転者は、この状態から車両を駐車場の奥まで前進させることにより車庫入れを完了させることができる。尚、本旋回駐車支援制御ルーチンの終了時において運転者に対して旋回駐車支援モードが終了した旨をアナウンスする報知装置を設けるとよい。
【0089】
尚、車両を駐車場から出す場合には、上述した旋回駐車支援制御の終了位置にまで車両を後退させる。つまり、車両右側面をラインL1と平行にあわせ、車両後端面をラインL2と平行にあわせた位置で車両を停止させる。このとき、シフトレバーは後退位置に保っておく。そして、操作入力部25のモード選択スイッチ25aにより旋回駐車支援モードを選択し、スタートスイッチ25bをオン操作することで、旋回駐車支援制御により車両を車庫入れ時と同一旋回軌跡上を反対方向に移動させることができる。
【0090】
本旋回駐車支援制御ルーチンの実行中においては、操舵ハンドル40の操作とは全く無関係に車輪Wの転舵制御が行われるが、途中で操舵ハンドル40が急激に回転操作された場合には、運転者がなんらかの意思表示をしたものとして旋回駐車支援制御ルーチンを終了するようにしてもよい。例えば、操舵トルクセンサ24により検出される操舵トルクThを読み込み、読み込んだ操舵トルクThが基準値Th0を超える大きな値であるときに旋回駐車支援制御ルーチンを終了させる終了手段を設ける。運転者は、旋回途中で障害物等を発見した場合には、反射的に操舵ハンドル40を強く回転操作することがある。従って、この運転者の行った操作を検出して自動的に通常モードに切り替えることができる。また、運転者の操舵により駐車用運転支援を中止し、通常モードに切り替える構成に代えて、確実に車両が元の位置に戻るように、今たどった経路を戻るという制御にしてもよい。
【0091】
以上説明した旋回駐車支援制御ルーチンによれば、旋回方向と逆側の車両の進行方向側角部(右前角部A)が初期位置における進行方向側角部(右前角部A)を通り車幅方向に延びる直線(ラインL1)に沿って移動し、かつ、旋回方向と逆側の車両の反進行方向側角部(右後角部B)が初期位置における反進行方向側角部(右後角部B)を通り車両前後方向に延びる直線(ラインL2)に沿って車両進行方向側に移動するように、各車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離に対応した目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*が設定される。従って、駐車場への進入路が狭いL字状コースとなる場合であっても容易に車両を駐車場に入れることができる。つまり、車両の右前角部AがL字状コースの角部(ラインL1とラインL2との交点)に位置するように車両を通路に平行に配置するだけで、あとの操舵操作は、転舵用ECU50の実行する旋回駐車支援制御に任せることができる。従って、ハンドル操作なしに車体サイズの限界に近い狭いL字状コースに車両を進入させて駐車することができる。この結果、狭い駐車場への車庫入れが非常に容易となる。
【0092】
もちろん、車両の先頭と側面とをラインL1,L2に一致させる必要はなく、ある程度の余裕をもってラインL1,L2の内側に車両を配置するようにしてもよい。この場合には、車両の右前角部Aおよび右後角部Bは、その分だけラインL1,L2より内側に引いたラインL1,L2と平行な直線上を移動することになる。
【0093】
また、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離DFL,DFR,DRL,DRRに対して一義的に目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*を設定することにより車両を初期位置から常に一定の軌跡で旋回させるため、車両の旋回中心を逐次設定する必要が無く制御が複雑にならない。従って、転舵用ECU50に用いられるマイクロコンピュータに対して高い処理能力が要求されない。また、開発工数も少なくてすむ。
【0094】
また、車両の初期位置における車幅方向に延びる直線と車両前後方向に延びる直線とに対して車両が外側にはみ出すことなく旋回できるので、運転者は、車両の旋回方向内側に主に注意を向ければ良く、周辺監視センサを省略あるいは簡略化することができる。これらの結果、低コストにて駐車支援を実施することができる。
【0095】
また、4輪WFL,WFR,WRL,WRRを独立して回転駆動する4輪独立駆動方式の車両に適用しているため、車輪Wの転舵角を大舵角に保った状態で車両を良好に旋回させることができる。
【0096】
上述した第1実施形態は、4輪独立転舵方式のステアリング装置を備えた車両に適用したものであるが、左右輪については独立転舵できず前後輪の転舵角のみを独立して調整可能な前後輪独立転舵方式のステアリング装置を備えた車両に適用することもできる。この場合の目標転舵角の設定について説明する。
【0097】
図9に示すように、車両中心軸線上に仮想の前輪WF(以下、仮想前輪WFと呼ぶ)と仮想の後輪WR(以下、仮想後輪WRと呼ぶ)を考える。そして、車両が第1実施形態と同様に、車両の右前角部AがラインL1に沿い、かつ、車両の右後角部BがラインL2に沿って車両が旋回するように仮想前輪WFの転動距離に対する目標転舵角、仮想後輪WRの転動距離に対する目標転舵角を算出する。
【0098】
車両の初期位置における右後角部Bの位置を原点(0,0)とし、初期位置における車両の前後方向をX方向、車幅方向をY方向としたX−Y座標を考える。右後角部Bが距離xだけ移動したときの右前角部Aの座標を(xA,yA)とし、車両の前後方向軸のx軸に対する角度をθとすると、以下の式が導き出される。尚、式中において、Lは車両全長を表す(図5参照)。
【数20】

【数21】

【数22】

【0099】
また、仮想前輪WFの接地中心点Fの座標を(xF、yF)とすると、以下の式が導き出される。尚、式中において、Lは車両全長、Wは車両全幅、WBはホイールベース、FOHは前オーバーハング、ROHは後オーバーハングを表す(図5参照)。
【数23】

【数24】

仮想前輪WFの接地中心点Fの初期位置からの転動距離をDFとし、仮想前輪WFのx軸となす角度、つまり、仮想前輪接地中心点Fの移動していく方向に仮想前輪WFを向けた場合の仮想前輪WFのx軸とのなす角度をθFとすると、以下の式が導き出される。
【数25】

【数26】

従って、第1実施形態と同様に、仮想前輪WFの転動距離DFに対する目標転舵角δF(=θF−θ)を設定することができる。
【0100】
旋回駐車支援制御中においては、左前輪WFLの転動距離DFLと右前輪WFRの転動距離DFRの平均値を求め、この平均値に対応する目標転舵角δFを左右前輪WFL,WFRの目標転舵角δFL,δFRとして設定して転舵制御を行うようにすればよい。
【0101】
同様に、仮想後輪WRについては、仮想後輪接地中心点Rの座標を(xR、yR)とすると、以下の式が導き出される。
【数27】

【数28】

また、仮想後輪接地中心点Rの初期位置からの転動距離をDR、仮想後輪WRのx軸となす角度をθRとすると以下の式が導き出される。
【数29】

【数30】

従って、仮想後輪WRの転動距離DRに対する目標転舵角δR(=θR−θ)を設定することができる。
【0102】
旋回駐車支援制御中においては、左後輪WRLの転動距離DRLと右後輪WRRの転動距離DFRの平均値を求め、この平均値に対応する目標転舵角δRを左右後輪WRL,WRRの目標転舵角δRL,δRRとして設定して転舵制御を行うようにすればよい。
【0103】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態としての車両用駐車支援装置について説明する。上述した第1実施形態においては、旋回駐車支援制御を開始するとき、車両の片側側面(図3の例では右側面)を通路の外側ライン(ラインL2)いっぱいに寄せるほど狭いコースに進入することができるが、旋回駐車支援制御を開始したときに、図10に示すように車輪Wが車体からはみ出す。このため、ラインL2に壁面等の障害物が有る場合には、車輪Wのはみ出す分だけ車両をラインL2より内側に停止させる必要がある。
【0104】
例えば、図11(A)に示す駐車進入コースは、車体サイズから考えた場合には駐車可能といえる。しかし、旋回駐車支援制御を開始したときに右前輪WFRがほぼ90°に転舵されるため、図11(B)に示すように、車輪Wのはみ出す分だけ車両をラインL2より内側に寄せて旋回開始すると、旋回途中で車両左側面が駐車場の入口端に当たってしまい(図中G部分)駐車することができない。
【0105】
そこで、この第2実施形態においては、車輪Wが車体から外側にはみ出ないようにするために、図12に示すように、各車輪Wごとに、転舵機構10を車幅方向に移動させて車輪Wを引き込む車輪引き込み装置30を備えている。
【0106】
車輪引き込み装置30は、転舵用モータ12の真上に設けられ、転舵用モータ12を車幅方向にスライド移動可能に保持するスライド保持ハウジング31と、スライド保持ハウジング31内に設けられるボールねじ機構32と、ボールねじ機構32を駆動する電動モータ33(以下、引き込み用モータ33と呼ぶ)とを備える。
【0107】
スライド保持ハウジング31は、図示しないサスペンション装置に固定される車幅方向に長い箱体であって、下面にスライド孔31aが車幅方向に形成されており転舵用モータ12をスライド孔31aに沿って移動可能に保持する。
【0108】
ボールねじ機構32は、スライド保持ハウジング31に回転可能に支持されるボールねじ32aと、ボールねじ32aに形成された雄ねじ部分に螺合する雌ねじ部分を有するボールねじナット32bとを備える。ボールねじ32aは、図示しない減速機を介して引き込み用モータ33の出力軸と連結される。一方、ボールねじナット32bは、スライド孔31aを貫通する連結部材32cを介して転舵用モータ12と連結されている。
【0109】
この車輪引き込み装置30においては、ボールねじ32aの回転運動がボールねじナット32bの車幅方向の直線運動に変換される。ボールねじナット32bと転舵用モータ12とは一体的に連結されているため、引き込み用モータ33の回転を制御することにより転舵機構10の位置を車体に対して車幅方向に変化させることができる。従って、車輪Wを車体に対して車幅方向に引き込むことができる。
【0110】
尚、各車輪引き込み装置30に設けられる引き込み用モータ33は、それぞれ独立して駆動制御されるため、以下、左前輪WFLを変位させるモータを引き込み用モータ33a、右前輪WFRを変位させるモータを引き込み用モータ33b、左後輪WRLを変位させるモータを引き込み用モータ33c、右後輪WRRを変位させるモータを引き込み用モータ33dと呼ぶ。
【0111】
引き込み用モータ33a,33b,33c,33dは、図14に示すように、それぞれモータ駆動回路16a,16b,16c,16dに接続される。モータ駆動回路16a,16b,16c,16d(以下、これらを総称する場合には単にモータ駆動回路16と呼ぶ)は、複数のスイッチング素子にて構成したブリッジ回路等(例えばインバータ回路)を備え、転舵用ECU50から出力される制御信号(例えば、PWM制御信号)に応じた電圧で引き込み用モータ33a,33b,33c,33dを正逆自在に回転駆動する。
【0112】
また、転舵用ECU50は、各車輪引き込み装置30における転舵機構10の引き込み移動量を検出する移動量センサ29a,29b,29c,29dを接続している。本実施形態においては、移動量センサ29a,29b,29c,29dとして、モータ回転角度(回転位置)を検出する回転角センサ(図示略)を用いる。移動量センサ29a,29b,29c,29dは、引き込み用モータ33a,33b,33c,33dに組み込まれ、各転舵機構10の引き込み移動量iFL,iFR,iRL,iRRを表す信号を転舵用ECU50に出力する。以下、移動量センサ29a,29b,29c,29dに検出された引き込み移動量を実引き込み移動量iFL,iFR,iRL,iRRと呼ぶ。尚、引き込み移動量は、転舵機構10が車幅方向に最も外側に位置する状態を通常位置として、この通常位置から転舵機構10が車幅方向内側に移動した距離を表す。
【0113】
この車輪引き込み装置30においては、車輪Wの転舵角に応じて引き込み移動量が設定される。本実施形態においては、車輪W(タイヤ)の車幅方向における外側端が、転舵角の変化にかかわらず車両前後方向に延びた同一鉛直面上に位置するように引き込み移動量が設定される。図13は、車輪Wの転舵角の増大に伴って車幅方向内側に変位する転舵機構10の移動動作を説明する概略平面図であり、(A)は中立位置、(B)は転舵角20°、(C)は転舵角90°における車輪Wと転舵機構10との位置関係を表す。
【0114】
転舵機構10は、中立位置において、車幅方向で最も外側となる位置に配置される。このとき、車輪W(タイヤ)の外側端となるサイドウォール面WSが車体の外側面BSと同一平面上に位置する。車輪Wが中立位置から転舵された場合には、(B)に示すように、車輪W(タイヤ)の車幅方向における外側端となるコーナー部WCが、中立位置における車輪W(タイヤ)のサイドウォール面WSのなす平面上に位置するように、転舵機構10が車幅方向内側に引き込まれる。さらに車輪Wが転舵されて転舵角が90°となると、(C)に示すように、車輪W(タイヤ)の車幅方向における外側端となるトレッド部WTが、中立位置における車輪W(タイヤ)のサイドウォール面WSのなす平面上に位置するように、転舵機構10が車幅方向内側に引き込まれる。ちなみに、転舵角が(90°−φ)のとき、転舵機構10が車幅方向に最も内側に引き込まれた位置となる。尚、φは、後述する計算式によりタイヤの外径d、タイヤ幅eにて決まる角度である。
【0115】
このように、車輪Wは、その車幅方向における外側端が、転舵角の変化にかかわらず車両前後方向に延びた同一鉛直面(車体の外側面BS)上に位置するため車体から外にはみ出さない。また、車輪Wを車体の外側にはみ出さない範囲で、できるだけ車幅方向外側に位置させることができる。
【0116】
この第2実施形態においては、車輪Wの転動距離に応じて転舵角を制御するとともに、転舵角に応じて車輪Wの引き込み移動量を制御する。そこで、車輪Wの転動距離と転舵角と引き込み移動量との関係について説明する。
【0117】
図16に示すように、タイヤの外径をd、タイヤの幅をe、タイヤの中心位置における水平断面を長方形とする。転舵角が0°(中立位置)のときにタイヤのサイドウォール面WSが車体の外側面BSと同一平面上に位置し、かつ、転舵角の変化に対して常にタイヤの車幅方向における外側端が車体の外側面BSと同一平面上に位置するように引き込み移動量を設定した場合、引き込み移動量iは次式により求められる。
【数31】

但し、φは次式のように表される角度である。
【数32】

【0118】
図15に示すように、車両の初期位置における右後角部Bの位置を原点(0,0)とし、初期位置における車両の前後方向をX方向、車幅方向をY方向としたX−Y座標を考える。右後角部BがX方向に距離xだけ移動したときの右前角部Aの座標を(xA,yA)とし、車両のx軸に対する角度をθとすると、以下の式が導き出される。尚、以下の式中におけるL,W,TR,FOH,ROHは、第1実施形態と同じ意味で使用している。
【数33】

【数34】

【数35】

【0119】
右前輪接地中心点FRの座標を(xFR、yFR)とすると、以下の式が導き出される。
【数36】

【数37】

右前輪接地中心点FRの初期位置からの転動距離をDFRとし、右前輪WFRのx軸となす角度、つまり、右前輪接地中心点FRの移動していく方向に右前輪WFRを向けた場合の右前輪WFRのx軸とのなす角度をθFRとすると、以下の式が導き出される。
【数38】

【数39】

右前輪WFRの転舵角δFRは、θFR−θとして表すことができるため、式(4)から
【数40】

【0120】
式(5)は、δFRを未知数とする方程式となるので、これを解くとδFRが得られる。得られたδFRを式(3)に代入することで転動距離DFRも得られる。タイヤ形状は予めわかっているため、引き込み移動量iも求められる。従って、右前輪WFRの転動距離DFRに応じた目標転舵角δFR*、および、目標引き込み移動量iFR*を予め設定しておくことができる。
【0121】
右後輪WRRについても同様に、右後輪WRRの転動距離DRRから目標転舵角δRR*および目標引き込み移動量iRR*を算出することができる。尚、旋回方向の車輪W(この例では、左前輪WFL,左後輪WRL)については車体側に引き込む必要がないため、目標引き込み移動量はゼロであり、第1実施形態と同じ設定となる。
【0122】
右後輪WRRに関しては、右後輪接地中心点RRの座標を(xRR、yRR)とすると、以下の式が導き出される。
【数41】

【数42】

また、右後輪接地中心点RRの初期位置からの転動距離をDRR、右後輪WRRのx軸となす角度をθRRとすると以下の式が導き出される。
【数43】

【数44】

ここで、右後輪WRRの転舵角δRRは、θFR−θとして表すことができるため、
【数45】

これら式を解くことにより、右後輪WRRの転動距離DRRに応じた目標転舵角δRR*、および、目標引き込み移動量iRR*を予め設定しておくことができる。
【0123】
従って、車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離DFL,DFR,DRL,DRRに対する、目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*および目標引き込み移動量iRL*,iFR*,iRL*,iRR*の関係が一義的に決まる。従って、この対応関係を参照テーブルとしてROM内に記憶しておき、旋回駐車支援制御の実行中に参照テーブルを参照して目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*および目標引き込み移動量iRL*,iFR*,iRL*,iRRを求めることができる。
【0124】
次に、第2実施形態における転舵用ECU50が実行する旋回駐車支援制御処理について説明する。図17は、第2実施形態における転舵用ECU50が実行する旋回駐車支援制御ルーチンを表す。この旋回駐車支援制御ルーチンは、第1実施形態における旋回駐車支援制御ルーチン(図8)のステップS18とステップS19との間に、ステップS21〜S23の処理を追加するとともに、ステップS20に代えてステップS24を行うようにしたものである。以下、第1実施形態の旋回駐車支援制御ルーチンと同じ処理については図面に同一ステップ符号を付して簡単な説明にとどめ、相違する部分について詳しく説明する。
【0125】
転舵用ECU50は、スタートスイッチ25bのオン操作を検出すると(S12:YES)、旋回方向設定信号、および、シフトポジション信号を読み込み(S13)、次に、車輪速度センサ22a,22b,22c,22dにより検出される車輪速度ωFL,ωFR,ωRL,ωRRから車輪WFL,WFR,WRL,WRRの転動距離DFL,DFR,DRL,DRRを計算する(S14,S15)。続いて、転動距離DFL,DFR,DRL,DRRに応じた目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*を設定する(S16)。この目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*は、上述したように引き込み移動量を加味して計算された値であり、旋回方向およびシフトポジションに対応した参照テーブルを参照して求められる。
【0126】
続いて、転舵用ECU50は、車輪舵角センサ21a,21b,21c,21dにより検出された実転舵角δFL,δFR,δRL,δRRと目標転舵角δFL*,δFR*,δRL*,δRR*との偏差Δδ(δFL*−δFL,δFR*−δFR,δRL*−δRL,δRR*−δRR)に基づいて転舵用モータ12a,12b,12c,12dを駆動制御する(S17,S18)。
【0127】
続いて、転舵用ECU50は、ステップS21において、旋回方向と反対側の前後輪の目標引き込み移動量iFR*,iRR*(またはiFL*,iRL*)を計算する。例えば、左方向に旋回する場合には,右の前後輪WFR,WRRの目標引き込み移動量iFR*,iRR*を算する。この計算は、上述したように転舵角δとタイヤ形状(d,e)とから計算される。この場合、転舵角δとして、目標転舵角を用いても実転舵角を用いてもどちらでもよい。また、転舵角と目標引き込み移動量との対応関係を設定した参照テーブルをROMに記憶しておき、参照テーブルを参照して目標引き込み量を求めるようにしてもよい。
【0128】
続いて、転舵用ECU50は、ステップS22において、旋回方向と反対側の前後輪の移動量センサ29b,29d(または29a,29c)により検出される実引き込み移動量iFR,iRR(またはiFL,iRL)を読み込む。
【0129】
続いて、転舵用ECU50は、ステップS23において、目標引き込み移動量iFR*,iRR*(またはiFL*,iRL*)と実引き込み移動量iFR,iRR(またはiFL,iRL)との偏差Δi((iFR*−iFR,iRR*−iRR)または(iFL*−iFL,iRL*−iRL))に基づいて、引き込み用モータ33b,33d(または33a,33c)へ通電する目標電流を設定し、目標電流に対応した制御信号(例えばPWM制御信号)をモータ駆動回路16b,16d(または16a,16c)に出力する。これにより、車輪WFR,WRR(またはWFL,WRL)の車体に対する引き込み移動量が目標引き込み移動量iFR*,iRR*(またはiFL*,iRL*)となるように制御される。
【0130】
転舵用ECU50は、車両の旋回が完了するまでのあいだ、こうした処理を所定の周期で繰り返す。この制御周期は、非常に短く設定されている。従って、車輪Wの転舵動作と引き込み動作とは実質的に同時に行われることとなり、車輪Wの引き込み抵抗が低減されている。
【0131】
転舵用ECU50は、車両が初期位置から90°旋回したと判断すると(S19)、その処理をステップS24に進める。このステップS24においては、転舵用モータ12a,12b,12c,12dを駆動して車輪WFL,WFR,WRL,WRRを中立位置に戻しつつ、引き込み用モータ33b,33d(または33a,33c)を駆動して車輪WFR,WRR(またはWFL,WRL)の引き込み状態を解除し通常位置(車幅方向の最も外側位置)に戻す。
【0132】
車輪WFR,WRR(またはWFL,WRL)を通常位置に戻すにあたっては、移動量センサ29b,29d(または29a,29c)により検出される実引き込み移動量iFR,iRR(またはiFL,iRL)がゼロとなるようにモータ駆動回路16b,16d(または16a,16c)に制御信号を出力する。
【0133】
本旋回駐車支援制御ルーチンは、ステップS24の処理が完了すると終了する。転舵用ECU50は、第1実施形態と同様に、旋回駐車支援制御ルーチンの終了に伴って、通常転舵制御モードに切り替える。
【0134】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態の作用効果に加えて、車輪Wを車体から外側にはみ出さないようにすることができるため、車輪Wが旋回駐車動作に邪魔にならず、車体サイズの限界となる狭いL字状コースに車両を進入させて駐車することができる。また、車輪Wを車体の外側にはみ出さない範囲で、できるだけ車幅方向外側に位置させることができるため安定した旋回走行を行うことができる。
【0135】
また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の変形例を適用することができる。例えば、旋回駐車支援制御ルーチンの終了時において運転者に対して旋回駐車支援モードが終了した旨をアナウンスする報知装置を設けてもよい。また、旋回駐車支援制御ルーチンの実行中において、操舵ハンドル40が急激に回転操作された場合には、旋回駐車支援制御ルーチンを終了するようにしてもよい。また、左右輪については独立転舵できず前後輪の転舵角のみを独立して調整可能な前後輪独立転舵方式のステアリング装置を備えた車両に適用したものであってもよい。
【0136】
尚、第2実施形態における車輪引き込み装置30が本発明における移動アクチュエータに相当し、移動量センサ29が本発明における移動量検出手段に相当し、転舵用ECU50およびモータ駆動回路16が本発明における移動制御手段に相当する。
【0137】
以上、本実施形態の車両用駐車支援装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、本実施形態においては、車両の形状を平面視で長方形と仮定して車輪の転動距離に対する目標転舵角あるいは目標引き込み移動量を設定しているが、車両のコーナー部の丸みを加味して目標値を設定するようにしてもよい。また、本実施形態では、車両を先頭部から車庫入れする例を示しているが、後退により車庫入れできるものである。この場合、例えば、図3に示す例では、車両の進行方向側角部が車両後端部の角部Aとなり、車両の反進行方向側の角部が車両先頭部の角部Bとなる。
【0138】
また、車輪を転舵するアクチュエータとして電動モータを採用しているが、ソレノイド等の他のアクチュエータを採用することも可能である。
【0139】
また、本実施形態においては、旋回方向選択スイッチ25cにより旋回方向を選択したが、図示しないウインカーの指示する方向を旋回方向として設定するように旋回方向指示手段を構成してもよい。この場合、転舵用ECU50にウインカースイッチの信号を入力し、ウインカースイッチで特定されている方向を旋回駐車支援モードにおける旋回方向に設定する。
【0140】
また、本実施形態においては、旋回駐車支援モードを選択するモード選択スイッチ25aと旋回駐車支援制御の開始を指示するスタートスイッチ25bとを別々に設けたが、これらを1つの操作スイッチで兼用してもよい。
【0141】
また、第2実施形態においては、引き込み用モータ33により車輪Wの接地中心位置を車体に対して車幅方向に移動させるように構成したが、例えば、転舵角の変化に連動して作動する機械的リンク機構を設け、このリンク機構により車輪Wの接地中心位置を移動させるような構成であってもよい。
【0142】
また、本実施形態においては、4輪独立駆動方式の車両に適用しているが、4輪に回転駆動力を付与できる4輪駆動方式ものであればよく、必ずしも4輪独立駆動方式にする必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる車両用駐車支援装置を4輪独立駆動部とあわせて表した概略構成図である。
【図2】第1実施形態にかかる転舵機構の概略を説明する背面図である。
【図3】第1実施形態にかかる車両の旋回駐車軌跡を説明する説明図である。
【図4】第1実施形態にかかる目標転舵角の計算説明に使用する座標説明図である。
【図5】第1実施形態にかかる車両の各寸法を表す説明図である。
【図6】第1実施形態にかかる車輪接地中心点の移動軌跡を表すグラフである。
【図7】第1実施形態にかかる転動距離に対応する目標転舵角を表す特性図である。
【図8】第1実施形態にかかる旋回駐車支援制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図9】第1実施形態の変形例にかかる目標転舵角の計算説明に使用する座標説明図である。
【図10】車輪のはみ出し状態を説明する説明図である。
【図11】車両の旋回駐車軌跡を表す説明図である。
【図12】第2実施形態にかかる車輪引き込み装置および転舵機構の概略を説明する一部断面背面図である。
【図13】第2実施形態にかかる車輪引き込み装置の作動説明図である。
【図14】第2実施形態にかかる車両用駐車支援装置を4輪独立駆動部とあわせて表した概略構成図である。
【図15】第2実施形態にかかる目標転舵角の計算説明に使用する座標説明図である。
【図16】第2実施形態にかかる車輪の転舵角と引き込み移動量との関係を表す説明図である。
【図17】第2実施形態にかかる旋回駐車支援制御ルーチンを表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0144】
10…転舵機構、11…ナックル、12a,12b,12c,12d…転舵用モータ、13a,13b,13c,13d…モータ駆動回路、14a,14b,14c,14d…駆動用モータ、15a,15b,15c,15d…モータ駆動回路、16a,16b,16c,16d…モータ駆動回路、21a,21b,21c,21d…車輪舵角センサ、22a,22b,22c,22d…車輪速度センサ、23…ハンドル操舵角センサ、24…操舵トルクセンサ、25b…スタートスイッチ、25a…モード選択スイッチ、25c…旋回方向選択スイッチ、25…操作入力部、26…シフトポジションセンサ、27…アクセルペダルセンサ、28…ブレーキペダルセンサ、29a,29b,29c,29d…移動量センサ、40…操舵ハンドル、30…車輪引き込み装置、31a…スライド孔、31…スライド保持ハウジング、32b…ナット、32…ボールねじ機構、33a,33b,33c,33d…引き込み用モータ、50…転舵用制御ユニット、100…車輪駆動用制御ユニット、A…進行方向側角部、B…反進行方向側角部、C…車両、DFL,DFR,DRL,DRR…転動距離、FR,FL,RR,RL…車輪接地中心点、iFL,iFR,iRL,iRR…引き込み移動量、L1,L2…ライン、P…駐車場、R…通路、WFL,WFR,WRL,WRR…車輪、δFL,δFR,δRL,δRR…実転舵角、δFL*,δFR*,δRL*,δRR*…目標転舵角、θh…ハンドル操舵角、ωFL,ωFR,ωRL,ωRR…車輪速度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前後の車輪の転舵角を独立して調整する転舵アクチュエータと、
上記各車輪の転舵角を検出する転舵角検出手段と、
上記各車輪の転動距離を検出する車輪転動距離検出手段と、
車両の初期位置からの各車輪の転動距離に対応した各車輪の目標転舵角を設定する目標転舵角設定手段と、
上記検出された転舵角が上記目標転舵角となるように上記転舵アクチュエータを駆動制御する転舵制御手段と
を備え、車両が上記初期位置から目標軌跡に沿って旋回するように駐車用運転操作を支援する車両用駐車支援装置において、
上記目標転舵角設定手段は、旋回方向と逆側の車両の進行方向側角部が初期位置における上記進行方向側角部を通り車幅方向に延びる直線に沿って移動し、かつ、旋回方向と逆側の車両の反進行方向側角部が初期位置における上記反進行方向側角部を通り車両前後方向に延びる直線に沿って移動するように、上記各車輪の転動距離に対応した各車輪の目標転舵角を設定することを特徴とする車両用駐車支援装置。
【請求項2】
上記目標転舵角設定手段は、車両を平面視で長方形と仮定し、上記旋回方向と逆側の車両の進行方向側角部となる長方形の第1頂点が初期位置における上記第1頂点を通り車幅方向に延びる直線に沿って移動し、上記旋回方向と逆側の車両の反進行方向側角部となる長方形の第2頂点が初期位置における上記第2頂点を通り車両前後方向に延びる直線に沿って移動するように、上記各車輪の転動距離に対応した各車輪の目標転舵角を設定することを特徴とする請求項1記載の車両用駐車支援装置。
【請求項3】
上記駐車用運転操作の支援開始を運転者が指示する旋回指示手段を備え、
上記転舵制御手段は、上記旋回指示手段により駐車用運転操作の支援開始が指示されたとき、上記各車輪の転舵角が上記目標転舵角設定手段により設定される目標転舵角になるように上記転舵アクチュエータの駆動制御を開始することを特徴とする請求項1または2記載の車両用駐車支援装置。
【請求項4】
車輪の転舵角に応じて車輪の接地中心位置を車体に対して車幅方向に移動させる車輪位置移動制御手段を備え、
上記目標転舵角設定手段は、上記車輪の接地中心位置の車幅方向移動分を加味して上記目標転舵角を設定することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項記載の車両用駐車支援装置。
【請求項5】
上記車輪位置移動制御手段は、車輪の車幅方向外側端が転舵角の変化にかかわらず車両前後方向に延びた同一鉛直面上に位置するように、車輪の転舵角に応じて車輪の接地中心位置を車体に対して車幅方向に移動させることを特徴とする請求項4記載の車両用駐車支援装置。
【請求項6】
上記車輪位置移動制御手段は、
車輪の接地中心位置を車体に対して車幅方向に移動させる移動アクチュエータと、
上記車輪の接地中心位置の移動量を検出する移動量検出手段と、
上記検出される移動量が、車輪の転舵角に応じて設定される目標移動量となるように上記移動アクチュエータを駆動制御する移動制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項4または5記載の車両用駐車支援装置。
【請求項7】
前後左右の車輪を独立して回転駆動する4輪独立駆動手段を備えた車両に適用されることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか一項記載の車両用駐車支援装置。
【請求項8】
車輪の目標転舵角が上記転舵アクチュエータによる転舵可能範囲を超える場合には、上記目標転舵角を左右に180°反転した転舵角を目標転舵角として設定するとともに、上記4輪独立駆動手段に対して当該車輪の回転駆動方向を逆にするように反転指令を出力する反転制御手段を備えたことを特徴とする請求項7記載の車両用駐車支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−90850(P2009−90850A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264350(P2007−264350)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】