車体前部構造
【課題】フロントピラー内に設けられるパイプ部材とフロントサイドフレームとをフロントピラーレインを貫通して連結でき、衝突荷重をパイプ部材およびフロントピラーに伝達、分散して、効果的に荷重吸収を図り、パイプ部材とフロントピラーレインとの溶接を確実に行ない、かつフロントピラートリムの取付けを阻害しない車体前部構造を提供する。
【解決手段】エンジンルーム1下方において前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム26が設けられ、フロントピラーアウタ43とフロントピラーインナ44とフロントピラーレインとを備えたフロントピラー40を設け、フロントピラー40内に前後方向に延設され、かつ、フロントピラーレインの下部を貫通45gしてエンジンルーム1内に延出されたパイプ部材41と、パイプ部材41の前部41bとフロントサイドフレーム26とを結合する結合フレーム部材42と、を備えたことを特徴とする。
【解決手段】エンジンルーム1下方において前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム26が設けられ、フロントピラーアウタ43とフロントピラーインナ44とフロントピラーレインとを備えたフロントピラー40を設け、フロントピラー40内に前後方向に延設され、かつ、フロントピラーレインの下部を貫通45gしてエンジンルーム1内に延出されたパイプ部材41と、パイプ部材41の前部41bとフロントサイドフレーム26とを結合する結合フレーム部材42と、を備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンルーム下方において車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームを備えたような車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体前部構造において、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームを設け、このフロントサイドフレームで前面衝突の際の衝撃を受けて、その荷重を適切に車体後方側部材に伝達することが知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に開示された車体前部構造は、フロントサイドフレームにおけるサスタワーの配設位置からカウルサイドに向けて該サスタワーの後部を取り囲むように荷重伝達部材としてのガセットを設けたものである。
しかしながら、該特許文献1に開示された構造の荷重伝達経路は、フロントサイドフレームからガセットに伝達された後に、このガセットのリヤ側上部から略直角方向後方に配設されたカウルサイドに伝達され、その後に、フロントピラーに伝達されることになるので、衝撃荷重のフロントピラーに対する荷重伝達性能が悪い問題点があった。
【0004】
また、特許文献2に開示された車体前部構造は、サスタワーの車幅方向内側と後部とに、荷重伝達部材としての補強部材を設けたものであるが、この特許文献2に開示された構造は、フロントサイドフレームとフロントピラーとを、上記補強部材とヒンジピラーとを介して間接的に接続したものであるから、フロントサイドフレームに入力された衝突荷重のフロントピラーへの伝達性能が悪い問題点があった。
【特許文献1】特開2003−182633号公報
【特許文献2】特開2006−21590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとフロントピラーレインフォースメントとを備えたフロントピラーを設け、上記フロントピラー内に前後方向に延設されると共に、フロントピラーレインフォースメントの下部を貫通してエンジンルーム内に延出されたパイプ部材と、このパイプ部材の前部とフロントサイドフレームとを結合する結合フレーム部材と、を備えることで、フロントピラー内に設けられるパイプ部材とフロントサイドフレームとをフロントピラーレインフォースメントを貫通して連結することができ、衝突荷重を上記パイプ部材およびフロントピラーに伝達、分散して、効果的に荷重吸収を図ることができ、また、パイプ部材とフロントピラーレインフォースメントとの溶接固定を確実に行なうことができ、さらに、フロントピラートリムの取付けを阻害することがない車体前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による車体前部構造は、エンジンルーム下方において車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームが設けられた車体前部構造であって、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとフロントピラーレインフォースメントとを備えたフロントピラーを設け、上記フロントピラー内に前後方向に延設されると共に、フロントピラーレインフォースメントの下部を貫通してエンジンルーム内に延出されたパイプ部材と、上記パイプ部材の前部とフロントサイドフレームとを結合する結合フレーム部材と、を備えたものである。
上記構成によれば、フロントピラー内に設けられるパイプ部材とフロントサイドフレームとを、フロントピラーレインフォースメントを貫通して連結することができ、これにより、衝突荷重(前面衝突時の入力荷重)を上記パイプ部材を介してフロントピラーにダイレクトに伝達して、荷重分散を図り、効果的に荷重を吸収することができる。
【0007】
また、パイプ部材と上記フロントピラーレインフォースメントとの溶接固定を確実に行なうことができるうえ、該パイプ部材はフロントピラーレインフォースメントに固定するので、このパイプ部材とフロントピラーインナとの間には、車室側に配設されるフロントピラートリムのファスナを挿入し得る所定の空間を設定することができ、フロントピラートリムの取付けを阻害することがない。
因に、上記パイプ部材をフロントピラーインナに溶接固定することも考えられるが、この場合には、パイプ部材とフロントピラーインナとの間に、フロントピラートリムのファスナを挿入し得る所定の空間を設定することが不可能となる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記パイプ部材はフロントピラーレインフォースメントの下部と併せて、カウルサイド部を貫通してエンジンルーム内に延出されたものである。
上述のカウルサイド部は、カウルサイドロアに特定してもよい。
上記構成によれば、パイプ部材がカウルサイド部の閉断面と、フロントピラーの閉断面との2つの閉断面を貫通するので、該パイプ部材の充分な支持剛性が確保できて、良好な荷重伝達性能を確保することができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記パイプ部材はフロントピラーレインフォースメント下部の貫通部とカウルサイド部の貫通部とに対して、その全周が溶接固定されたものである。
上記構成によれば、車体前後方向に比較的に近い位置で2つの固定点が形成されるので、車両前突に対する前後方向の支持剛性が強固となり、荷重伝達性能の向上を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記パイプ部材はフロントピラーレインフォースメントおよびカウルサイド部のカウルサイドロアと予め溶接固定されて、車体に取付けられるように構成されたものである。
上記構成によれば、パイプ部材の組付け性を確保した上で、カウルサイドロアを貫通させるパイプ配置が容易に達成できる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記パイプ部材の前部が上記結合フレーム部材に対して車幅方向外側から結合可能に構成されたものである。
上記構成によれば、アンダ側の結合フレーム部材と、アッパ側のパイプ部材と、を車体組付け方向(パイプ部材の車幅方向外側から車幅方向内側への移動による組付けの方向)にて、容易に組付けることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記結合フレーム部材に加えて、上記フロントサイドフレームとサイドシルとを結合する下方フレーム部材と、上記フロントサイドフレームから車幅方向内方に延び、かつ車体前後方向に延設されたトンネル部に沿って前後方向に延びるセンタ側フレーム部材と、を備えたものである。
上述のセンタ側フレーム部材は、トンネル部に沿って前後方向に延びるトンネルサイドメンバと、フロントサイドフレームとトンネルサイドメンバとの間を連結するトンネルパスメンバと、の2部材から構成してもよい。
上記構成によれば、衝突時の荷重をフロントピラーのみならず、サイドシルおよびトンネル部にも伝達、分散させて、より一層確実かつ効果的に荷重吸収することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとフロントピラーレインフォースメントとを備えたフロントピラーを設け、上記フロントピラー内に前後方向に延設されると共に、フロントピラーレインフォースメントの下部を貫通してエンジンルーム内に延出されたパイプ部材と、このパイプ部材の前部とフロントサイドフレームとを結合する結合フレーム部材と、を備えたので、フロントピラー内に設けられるパイプ部材とフロントサイドフレームとをフロントピラーレインフォースメントを貫通して連結することができ、衝突荷重を上記パイプ部材およびフロントピラーに伝達、分散して、効果的に荷重吸収を図ることができ、また、パイプ部材とフロントピラーレインフォースメントとの溶接固定を確実に行なうことができ、さらに、フロントピラートリムの取付けを阻害しない効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
衝突荷重をパイプ部材、フロントピラーに伝達、分散して効果的に荷重吸収を図り、またパイプ部材とフロントピラーレインフォースメントとの溶接を確実に行なうことができるうえ、フロントピラートリムの取付けを阻害しないという目的を、エンジンルーム下方において車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームが設けられた車体前部構造において、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとフロントピラーレインフォースメントとを備えたフロントピラーを設け、上記フロントピラー内に前後方向に延設されると共に、フロントピラーレインフォースメントの下部を貫通してエンジンルーム内に延出されたパイプ部材と、上記パイプ部材の前部とフロントサイドフレームとを結合する結合フレーム部材と、を備えるという構成にて実現した。
【実施例】
【0015】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車体前部構造を示し、図1、図11において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設けている。
【0016】
このダッシュロアパネル3の後部には、図11に示すように、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル4を一体的に連設している。
上述のダッシュロアパネル3およびフロアパネル4の車幅方向中央部には、図1、図11に示すように、車室2内に突出して、車体前後方向に延びるダッシュロアパネル3のトンネル部5と、フロアパネル4のトンネル部6とを車体前後方向に連続するように一体形成している。上記トンネル部5,6は車体剛性の中心となるものである。
【0017】
ここで、ダッシュロアパネル3のトンネル部5は、エンジンルーム1内に横置き配置したエンジン(図示せず)の後側に位置する排気ポートからの排気ガスを車両後方へ導びく排気管を、車体後方かつ斜め下方に向けて側面視略直線状にレイアウトする関係上、トンネル開口が大きい拡大構造(トンネル拡大部構造)に形成されている。
【0018】
図1、図11に示すように、上述のダッシュロアパネル3は、車体の上下方向に延びる縦壁3aと、この縦壁3aの下部から後方に向けて傾斜状に延びるスラント壁3bと、該スラント壁3bの後端から略水平に延びてフロアパネル4と面一状になる下壁3cとを備えている。
【0019】
上述のダッシュロアパネル3およびフロアパネル4の左右両サイドには、図1、図7、図11に示すように、サイドシルインナ7とサイドシルアウタ8とを接合固定して、車体前後方向に延びるサイドシル閉断面をもったサイドシル9を取付けている。ここで、上述のサイドシル9内には、必要に応じてサイドシルレインフォースメントが設けられる。
【0020】
また、図1、図11に示すように、上述の各トンネル部5,6の車室外側下端角部10に沿って車体前後方向に延びる左右一対のトンネルサイドメンバ11,11(但し、図1、図8では図示の便宜上、右側のトンネルサイドメンバのみを図示)を設けている。このトンネルサイドメンバ11は断面路ハット形状の車体剛性部材であって、トンネル部5,6とトンネルサイドメンバ11との間には、車体前後方向に延びる閉断面12が形成されている。
【0021】
一方、図1に示すように、ダッシュロアパネル3の上端部には、車幅方向に延びるダッシュアッパパネル13を接合固定し、このダッシュアッパパネル13の下部前端と上部後端との間には、断面逆L字状のカウルパネル14を接合固定して、これら両者13,14間には、車幅方向に延びるカウル閉断面15を形成している。つまり、上述のダッシュアッパパネル13とカウルパネル14との両者により、カウル部を構成したものである。なお、上述のカウルパネル14は、カウルパネルとカウルクロスメンバとの2部材で構成してもよい。
【0022】
図1、図4に示すように、カウルパネル14の左右両サイド(但し、図面では右側の構成のみを示す)には、カウルサイドインナ16と、カウルサイドアウタ17と、カウルサイドロア18とから成るカウルサイド部19を設けている。ここで、カウルサイドインナ16とカウルサイドアウタ17との間には、カウルサイド閉断面が形成される一方、図4に示すように、上述のカウルサイドロア18は、側面視で略直角三角形状に構成されており、該カウルサイドロア18は、カウルサイドアウタ17の下部と、ヒンジピラーレインフォースメント20の前部とにそれぞれ接合固定されている。
【0023】
また、図1に示すように、上述のカウルサイド部19から車体前方に延びるように、エプロンレインフォースメント21を設けている。このエプロンレインフォースメント21は、エプロンレインインナ22とエプロンレインアウタとを接合して、車体前後方向に延びる車体剛性部材である。
【0024】
さらに、図1に示すように、上述のエプロンレインインナ22の車幅方向内側にはサスタワー23(詳しくは、サスペンションタワー部)を設ける一方、このサスタワー23と、上述のエプロンレインインナ22と、後述するフロントサイドフレーム26の接合フランジ部との三者間には、アーチ状のホイールハウス24を設けている。なお、上述のサスタワー23には、サスペンションアームを支持するサスアームブラケットが設けられるが、その図示は省略している。
【0025】
図1、図8に示すように、上述のサスタワー23の後部には、ブラケット25を接合固定し、図8に示すように、ダッシュロアパネル3の前方延出部3dを該ブラケット25に固定すると共に、図1に示すように、カウルパネル14の前方延出部14aも上記ブラケット25に固定している。
【0026】
ところで、図1、図11に示すように、エンジンルーム1の下方において車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム26,26を設けている。これら左右一対のフロントサイドフレーム26,26の前端にはクラッシュカンを取付け、左右のクラッシュカン相互間には、車幅方向に延びるバンパレインが設けられるが、クラッシュカンおよびバンパレインの図示は省略している。
【0027】
このフロントサイドフレーム26は、図1に示すように、フロントサイドフレームアウタ27とフロントサイドフレームインナ28とを接合して、車体前後方向に延びる閉断面29を有する車体剛性部材であって、左右一対の各フロントサイドフレーム26,26の後部26R,26Rは、図1、図11に示すように、ダッシュロアパネル3の下部において滑らかに車幅方向外方に湾曲形成され、サイドシルインナ7に接合固定されており、フロントサイドフレーム26に入力された衝突荷重を、サイドシル9に伝達、分散すべく構成している。つまり、この実施例では、上述のフロントサイドフレーム26の後部26Rを、該フロントサイドフレーム26とサイドシル9とを結合する下方フレーム部材に設定している。
【0028】
また、図1、図11に示すように、フロントサイドフレーム26のサスクロス取付け部(詳しくは、サスペンションクロスメンバ取付け部)と、トンネルサイドメンバ11のサスクロス取付け部と、の間には、サスクロス取付けボルト30,31を有効利用して、トンネルパスメンバ32を設けている。
【0029】
フロントサイドフレーム26のサスクロス取付け部(サスクロス取付けボルト30の位置参照)、およびトンネルサイドメンバ11のサスクロス取付け部(サスクロス取付けボルト31の位置参照)は、何れも剛性が高く構成されており、斯る高剛性のサスクロス取付け部相互間に車体の略前後方向に延びるトンネルパスメンバ32を設けることにより、フロントサイドフレーム26に入力された衝突荷重を、トンネル部5,6にも伝達、分散すべく構成している。
上述のトンネルパスメンバ32は、詳しくは、フロントサイドフレーム26から車幅方向内方かつ車体前後方向の後方に向けて延びるメンバで、このトンネルパスメンバ32は丸パイプ(剛性部材)にて形成されると共に、その前後の取付け部は、丸パイプを偏平に加工して潰し部と成している。
【0030】
ここで、上述のトンネルパスメンバ32と、トンネルサイドメンバ11との両者により、フロントサイドフレーム26から車幅方向内方に延び、かつ車体前後方向に延設されたトンネル部5,6に沿って前後方向に延びるセンタ側フレーム部材を構成している。
【0031】
この実施例では、前面衝突時の衝突荷重を、フロントピラー40に伝達、分散する目的で、フロントピラー40と、フロントサイドフレーム26と、の間を金属丸パイプから成るアッパ側のパイプ部材41と、アンダ側の結合フレーム部材42とで連結している。
【0032】
以下、図2〜図10を参照して、これら両部材41,42によるフロントサイドフレーム26とフロントピラー40との連結構造について説明するが、説明の便宜上、車両右側の連結構造についてのみ説明する。なお、車両左側の連結構造は、右側のそれと左右略対称に構成されている。
【0033】
図4、図5に示すように、上述のフロントピラー40はフロントピラーアウタ43と、フロントピラーインナ44と、フロントピラーレインフォースメント45とを備え、前後方向に延びるフロントピラー閉断面が形成された車体剛性部材である。
【0034】
また、図4に示すように、上述のパイプ部材41は、その長手方向の中間部に1つのみの湾曲部41aを有し、この湾曲部41aの前後には直線状の前部41bと、直線状の後部41cとが一体形成されている。つまり、複数の湾曲部を有する構造の場合には、パイプ部材それ自体が座屈する懸念があるため、湾曲部41aを1つのみと成して、荷重伝達時のパイプ部材それ自体の座屈を回避して、衝突荷重を良好にフロントピラー40に伝達すべく構成したものである。
【0035】
パイプ部材41の後部41cは、図4、図5に示すようにフロントピラー40内にその前後方向に沿って延設されるが、詳しくは、図2に示すように、フロントピラーレインフォースメント45の前後方向に延びる凹部45aに溶接固定されるものである。
【0036】
つまり、図4のA−A線断面図を図5に示すように、フロントピラーレインフォースメント45の所定部には溶接用の複数の開口45b,45bを形成し、これらの開口45bを利用して、フロントピラーレインフォースメント45とパイプ部材41の後部41cとをアーク溶接手段にて溶接固定している。
【0037】
上述のフロントピラーレインフォースメント45の下部には、ヒンジピラーレインフォースメント46(図4参照)およびヒンジピラーインナ47(図7参照)に沿うように、下方に延びる下方延出部45cが一体形成されており、この下方延出部45cの前片45dには、パイプ部材41と略直交するように隆起部45eを形成すると共に、前片45dの車幅方向内端から前方に延びる接合フランジ部45fが形成されている。
【0038】
また、上述の隆起部45eには、図2、図6に示すように、車体前方に突出するようにバーリング加工部45gが一体形成され、このバーリング加工部45gに挿通したパイプ部材41の貫通部全周をアーク溶接手段にて該バーリング加工部45gに溶接固定している。なお、図中、45hはフロントピラーレインフォースメント45の下端である。
【0039】
図2に示すように、上述のパイプ部材41はフロントピラーレインフォースメント45の下部(バーリング加工部45g参照)と、カウルサイドロア18とを貫通してエンジンルーム1内に延出されている。
このカウルサイドロア18にも、バーリング加工部18aを一体形成し、このバーリング加工部18aに挿通したパイプ部材41の貫通部全周を、図3に示すように、アーク溶接手段にて該バーリング加工部18aに溶接固定している。
【0040】
要するに、上述のパイプ部材41は、フロントピラーレインフォースメント45およびカウルサイドロア18と予め溶接固定されて、車体に取付けられるように構成されている。また、該パイプ部材41はフロントピラーレインフォースメント45下部の貫通部(バーリング加工部45g参照)と、カウルサイドロア18の貫通部(バーリング加工部18a参照)とに対して、その全周がアーク溶接手段にて溶接固定されており、図2に示すように、車体前後方向の比較的近い位置で2つの固定点(バーリング加工部18a,45gとパイプ部材41の溶接箇所参照)が形成され、これにより、車両前突に対する前後方向の支持剛性が強固となり、荷重伝達性能の向上を図るように構成したものである。
【0041】
図2に示すように、フロントピラーレインフォースメント45とパイプ部材41とカウルサイドロア18との三者が組付けられてサブアセンブリされた後に、図4に示すように、各要素43,44,20,19が組付けられる。
【0042】
すなわち、図4、図5に示すように、フロントピラーレインフォースメント45の車外側にはフロントピラーアウタ43が接合固定され、フロントピラーレインフォースメント45の車内側にはフロントピラーインナ44が接合され、またフロントピラーレインフォースメント45の下部にはヒンジピラーレインフォースメント46が接合される。ここで、上述のフロントピラーレインフォースメント45とフロントピラーアウタ43の各接合フランジ部以外の部分には、図5に示すように、所定のクリアランス(いわゆる隙間)が形成されるものである。
【0043】
さらに、カウルサイドロア18の車外側上部には、図4に示すように、カウルサイドアウタ17が接合固定される。ここで、上述のカウルサイドロア18の上部はカウルサイドアウタ17に接合固定されると共に、カウルサイドロア18の後部はヒンジピラーレインフォースメント46に接合固定されるものである。
【0044】
図4のA−A線断面図を図5に示すように、上述のパイプ部材41の後部41cはフロントピラーレインフォースメント45に固定しているので、パイプ部材41の車内側の面と、フロントピラーインナ44との間には、車室側に配設される内装材としてのフロントピラートリム48のファスナ49を挿入し得る所定の空間を設定することができ、フロントピラートリム48の取付けを阻害しない。
【0045】
図6は図4のパイプ部材貫通部分の分解拡大斜視図であって、フロントピラーアウタ43の下部には、フロントピラーレインフォースメント45と対応するように下方に延びる前片43aが形成されており、この前片43aには隆起部45eの上下長さよりも、その長さが長い開口部43bと、該開口部43bの上下において前片43aの車幅方向内端から前方に延びる接合フランジ部43c,43dが一体に折曲げ形成されている。
【0046】
図6に示す分解状態から図4に示すようにフロントピラーアウタ43の背面にフロントピラーレインフォースメント45を当接して、各接合フランジ部43c,43d,45fをスポット溶接手段にて接合固定すると、フロントピラーレインフォースメント45にて、車外側と車内側とを防水シールすることができ、また、パイプ部材41をバーリング加工部45gに対して全周アーク溶接することで、貫通部においても防水シールすることができる。
図4に示す組付け状態から、ヒンジピラーレインフォースメント46の車幅方
向内側にヒンジピラーインナ47を組付けて、図7の状態と成す。
【0047】
次に、図7に示す組付け状態から各要素を組付けて図8に示す状態と成すが、この場合、上述のパイプ部材41の前部41bは結合フレーム部材42に対して車幅方向外側から結合可能に構成されている。
この構成(パイプ部材41の前部41bを車外側から組付ける構成)を、図8、図9、図10を参照して、以下に説明する。但し、図9はパイプ部材41の前部41bと結合フレーム部材42の直線状の上部とを、車外側から見た状態で示す斜視図である。
【0048】
図8、図9、図10に示すように、上述の結合フレーム部材42は、パイプ部材41の前部41bとフロントサイドフレーム26とを結合する強度部材であって、このパイプ部材41は、インナ部材42Aと、アウタ部材42Bとを備えており、インナ部材42Aはハット形状の断面構造に形成されると共に、このインナ部材42Aの下端部には複数の接合片42a,42b,42cが一体形成されている。
【0049】
上述の3つの接合片42a,42b,42cのうち前後の接合片42a,42bは、フロントサイドフレームインナ28のサスクロス取付け部近傍におけるトップデッキ面に接合固定し、下方に延びる接合片42cは、フロントサイドフレームインナ28のサスクロス取付け部近傍における車幅方向内側の側面に接合固定している。
また、上述のインナ部材42Aは斜め後方かつ上方に延びる形状に形成されると共に、ハット形断面による凹部42dの開口が車幅方向外方に向くように形成されたものである。
【0050】
アウタ部材42Bは上記インナ部材42Aの車外側に接合固定されており、これら両部材42A,42Bで閉断面を形成するが、図9に示すように、これら両部材42A,42Bの直線状の上部において、インナ部材42Aの上端42xに対してアウタ部材42Bの上端42yは、パイプ部材41の前部41bの結合に要する所定長さL1だけ下方にオフセットしている。
このオフセット構造により、パイプ部材41の前部41bを、結合フレーム部材42(詳しくは、インナ部材42Aの凹部42d)に対して車幅方向外側から結合することができる。
【0051】
図10は図9のB−B線矢視断面図であって、パイプ部材41の前部41bを上記オフセット量を利用して、結合フレーム部材42のインナ部材42Aに車幅方向外側から配置した後に、該結合フレーム部材42とパイプ部材41とは、略T字状のブラケット50を用いて結合される。
【0052】
つまり、上述のパイプ部材41の結合部には、図10に示すように、予め丸パイプ製のスペーサ51が貫設される一方、図9に示すように、上記ブラケット50はその下部50aと上部50bとを略T字状に一体形成したもので、ベース部としての下部50aの両サイドは一対のボルト52、ナット53を用いて、結合フレーム部材42のインナ部材42Aおよびアウタ部材42Bに共締め固定され、延出部としての上部50bは、スペーサ51内を貫通するボルト54と、ナット55とを用いて結合フレーム部材42のインナ部材42Aに結合固定される。
ここで、図10に示すように、上述の各ナット53,53,55はインナ部材42Aの車幅方向内側の面に予め溶接固定されており、この構造により組付け性の向上を図るように構成している。
【0053】
図9に示す構造に代えて、図12に示す構造を採用してもよい。この図12に示す構造は、インナ部材42Aの上端42xに対するアウタ部材42Bの上端42yのオフセット長さL2を、図9のそれに対しく長く設定(L2>L1)し、パイプ部材41の前部41bを、前後方向に離間した2組のスペーサ51、ボルト54、ナット55と、ブラケット50の上部50bとを用いて結合フレーム部材42に連結固定したものである。
【0054】
このように構成すると、結合フレーム部材42からパイプ部材41への衝突荷重の伝達効率をより一層高めることができると共に、パイプ部材41の車幅方向外側からの結合操作に要する該パイプ部材41とインナ部材42Aの凹部42dとの間のクリアランス設定が容易となる。つまり、荷重伝達効率の向上と、車外からの組付け性向上との両立を図ることができる。
なお、図12において、図9と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0055】
また、図8に示すように、インナ部材42A下端部における後部の接合片42bは、結合フレーム部材42の形状によりスポット溶接が不可能となるため、サスクロス取付けボルト30の取付け時等において、アーク溶接手段にて、フロントサイドフレームインナ28のトップデッキ面に接合固定されるものである。さらに、結合フレーム部材42の前後の接合フランジ部は、図8に示すように、フロントサイドフレーム26の上方に延びる接合フランジ部に対して、溶接手段により接合固定される。
【0056】
上述のパイプ部材41と結合フレーム部材42とを用いて、フロントサイドフレーム26とフロントピラー40とを連結した図8の状態から、ダッシュロアパネル3の上部にダッシュアッパパネル13およびカウルパネル14を取付けると共に、カウルサイドアウタ17の内側にカウルサイドインナ16を取付けて、図1の状態と成すものであり、上述のカウルサイドアウタ17とカウルサイドインナ16との間には、カウルサイド閉断面が形成され、パイプ部材41は、該カウルサイド閉断面内を通って前後方向に延びるものである。
なお、図11において、56は制動倍力装置としてのブレーキブースタである。また図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0057】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下作用を説明する。
車両が前面衝突すると、図示しないバンパレインおよびクラッシュカン(衝突エネルギ吸収部材)を介してフロントサイドフレーム26に衝突荷重が入力される。
【0058】
フロントサイドフレーム26に入力された衝突荷重は、結合フレーム部材42およびパイプ部材41を介して車体剛性部材としてのフロントピラー40に伝達されて、荷重分散される。
また、フロントサイドフレーム26の中で高剛性のサスクロス取付け部と、トンネル部5,6とを、トンネルパスメンバ32とトンネルサイドメンバ11との両者(つまり、センタ側フレーム部材)で連結しているので、上記衝突荷重はセンタ側フレーム部材を構成するトンネルパスメンバ32およびトンネルサイドメンバ11を介して、車体剛性の中心となるトンネル部5,6に伝達されて、荷重分散される。
【0059】
さらに、フロントサイドフレーム26の後部26Rを、図1、図11に示すように、ダッシュロアパネル3の下部から車幅方向外側に傾斜してサイドシル9に結合しているので、衝突荷重は車体剛性部材としてのサイドシル9にも伝達されて、荷重分散される。
換言すれば、フロントサイドフレーム26は、各要素42,41,26R,32,11を介して、フロントピラー40と、トンネル部5,6と、サイドシル9とで支持される構造となっている。
【0060】
このように上記実施例の車体前部構造は、エンジンルーム1下方において車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム26,26が設けられた車体前部構造であって、フロントピラーアウタ43とフロントピラーインナ44とフロントピラーレインフォースメント45とを備えたフロントピラー40を設け、上記フロントピラー40内に前後方向に延設されると共に、フロントピラーレインフォースメント45の下部を貫通してエンジンルーム1内に延出されたパイプ部材41と、上記パイプ部材41の前部41bとフロントサイドフレーム26とを結合する結合フレーム部材42と、を備えたものである(図5、図8参照)。
【0061】
この構成によれば、フロントピラー40内に設けられるパイプ部材41とフロントサイドフレーム26とを、フロントピラーレインフォースメント45を貫通して連結することができ、これにより、衝突荷重(前面衝突時の入力荷重)を上記パイプ部材41を介してフロントピラー40にダイレクトに伝達して、荷重分散を図り、効果的に荷重を吸収することができる。
【0062】
また、パイプ部材41と上記フロントピラーレインフォースメント45との溶接固定を確実に行なうことができるうえ、該パイプ部材41はフロントピラーレインフォースメント45に固定するので、パイプ部材41とフロントピラーインナ44との間には、車室側に配設されるフロントピラートリム48のファスナ49を挿入し得る所定の空間(図5参照)を設定することができ、フロントピラートリム48の取付けを阻害することがない。
因に、上記パイプ部材41をフロントピラーインナ44に溶接固定することも考えられるが、この場合には、パイプ部材41とフロントピラーインナ44との間に、フロントピラートリム48のファスナ49を挿入し得る所定の空間を設定することが不可能となる。
【0063】
さらに、上記パイプ部材41はフロントピラーレインフォースメント45の下部と併せて、カウルサイド部(カウルサイドロア18参照)を貫通してエンジンルーム1内に延出されたものである(図2参照)。
この構成によれば、図1、図2に示すように、パイプ部材41がカウルサイド部19の閉断面(カウルサイド閉断面参照)と、フロントピラー40の閉断面との2つの閉断面を貫通するので、該パイプ部材41の充分な支持剛性が確保できて、良好な荷重伝達性能を確保することができる。
【0064】
また、上記パイプ部材41はフロントピラーレインフォースメント45下部の貫通部(バーリング加工部45g参照)とカウルサイド部(カウルサイドロア18参照)の貫通部(バーリング加工部18a参照)とに対して、その全周が溶接固定されたものである(図2、図3参照)。
この構成によれば、車体前後方向に比較的に近い位置で2つの固定点(パイプ部材41とバーリング加工部18a,45gとの接合固定部参照)が形成されるので、車両前突に対する前後方向の支持剛性が強固となり、荷重伝達性能の向上を図ることができる。
【0065】
加えて、上記パイプ部材41はフロントピラーレインフォースメント45およびカウルサイド部19のカウルサイドロア18と予め溶接固定されて、車体に取付けられるように構成されたものである(図2参照)。
この構成によれば、パイプ部材41の組付け性を確保した上で、カウルサイドロア18を貫通させるパイプ配置が容易に達成できる。
【0066】
また、上記パイプ部材41の前部41bが上記結合フレーム部材42に対して車幅方向外側から結合可能に構成されたものである(図9、図10、図12参照)。
この構成によれば、アンダ側の結合フレーム部材42と、アッパ側のパイプ部材41と、を車体組付け方向(パイプ部材41の車幅方向外側から車幅方向内側への移動による組付けの方向)にて、容易に組付けることができる。
【0067】
さらに、上記結合フレーム部材42に加えて、上記フロントサイドフレーム26とサイドシル9とを結合する下方フレーム部材(フロントサイドフレーム26の後部26R参照)と、上記フロントサイドフレーム26から車幅方向内方に延び、かつ車体前後方向に延設されたトンネル部5,6に沿って前後方向に延びるセンタ側フレーム部材(トンネルパスメンバ32,トンネルサイドメンバ11参照)と、を備えたものである(図1、図11参照)。
この構成によれば、衝突時の荷重をフロントピラー40のみならず、サイドシル9およびトンネル部5,6にも伝達、分散させて、より一層確実かつ効果的に荷重吸収することができる。
【0068】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロントピラーレインフォースメント下部の貫通部は、実施例のバーリング加工部45gに対応し、
以下同様に、
カウルサイド部の貫通部は、カウルサイドロア18のバーリング加工部18aに対応し、
下方フレーム部材は、フロントサイドフレーム26の後部26Rに対応し、
センタ側フレーム部材は、トンネルパスメンバ32とトンネルサイドメンバ11との両者に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては、フロントサイドフレーム26の後部26Rを車幅方向外方に湾曲形成させ、かつサイドシル9に結合させて下方フレーム部材としたが、これはフロントサイドフレーム26とは別の部材にて構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の車体前部構造をエンジンルーム側から見た状態で示す斜視図
【図2】パイプ部材とフロントピラーレインフォースメントとカウルサイドロアのサブアセンブリ状態を示す斜視図
【図3】バーリング加工部とパイプ部材の溶接固定状態を示す断面図
【図4】アッパ側車体構造の組付け中途状態を示す斜視図
【図5】図4のA−A線拡大断面図
【図6】図4の要部の分解斜視図
【図7】図4の構成にヒンジピラーインナを組付けた状態で示す斜視図
【図8】アッパ側車体構造をアンダ側車体に組付けた状態で示す斜視図
【図9】結合フレーム部材とパイプ部材の結合構造を車外側から見た状態で示す斜視図
【図10】図9のB−B線矢視断面図
【図11】車体前部構造をエンジンルーム下方から見上げた状態で示す斜視図
【図12】結合フレーム部材とパイプ部材の結合構造の他の実施例を示す斜視図
【符号の説明】
【0070】
1…エンジンルーム
5,6…トンネル部
9…サイドシル
11…トンネルサイドメンバ(センタ側フレーム部材)
18…カウルサイドロア
18a,45g…バーリング加工部(貫通部)
19…カウルサイド部
26…フロントサイドフレーム
26R…後部(下方フレーム部材)
32…トンネルパスメンバ(センタ側フレーム部材)
40…フロントピラー
41…パイプ部材
41b…前部
42…結合フレーム部材
43…フロントピラーアウタ
44…フロントピラーインナ
45…フロントピラーレインフォースメント
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンルーム下方において車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームを備えたような車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体前部構造において、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームを設け、このフロントサイドフレームで前面衝突の際の衝撃を受けて、その荷重を適切に車体後方側部材に伝達することが知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に開示された車体前部構造は、フロントサイドフレームにおけるサスタワーの配設位置からカウルサイドに向けて該サスタワーの後部を取り囲むように荷重伝達部材としてのガセットを設けたものである。
しかしながら、該特許文献1に開示された構造の荷重伝達経路は、フロントサイドフレームからガセットに伝達された後に、このガセットのリヤ側上部から略直角方向後方に配設されたカウルサイドに伝達され、その後に、フロントピラーに伝達されることになるので、衝撃荷重のフロントピラーに対する荷重伝達性能が悪い問題点があった。
【0004】
また、特許文献2に開示された車体前部構造は、サスタワーの車幅方向内側と後部とに、荷重伝達部材としての補強部材を設けたものであるが、この特許文献2に開示された構造は、フロントサイドフレームとフロントピラーとを、上記補強部材とヒンジピラーとを介して間接的に接続したものであるから、フロントサイドフレームに入力された衝突荷重のフロントピラーへの伝達性能が悪い問題点があった。
【特許文献1】特開2003−182633号公報
【特許文献2】特開2006−21590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとフロントピラーレインフォースメントとを備えたフロントピラーを設け、上記フロントピラー内に前後方向に延設されると共に、フロントピラーレインフォースメントの下部を貫通してエンジンルーム内に延出されたパイプ部材と、このパイプ部材の前部とフロントサイドフレームとを結合する結合フレーム部材と、を備えることで、フロントピラー内に設けられるパイプ部材とフロントサイドフレームとをフロントピラーレインフォースメントを貫通して連結することができ、衝突荷重を上記パイプ部材およびフロントピラーに伝達、分散して、効果的に荷重吸収を図ることができ、また、パイプ部材とフロントピラーレインフォースメントとの溶接固定を確実に行なうことができ、さらに、フロントピラートリムの取付けを阻害することがない車体前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による車体前部構造は、エンジンルーム下方において車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームが設けられた車体前部構造であって、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとフロントピラーレインフォースメントとを備えたフロントピラーを設け、上記フロントピラー内に前後方向に延設されると共に、フロントピラーレインフォースメントの下部を貫通してエンジンルーム内に延出されたパイプ部材と、上記パイプ部材の前部とフロントサイドフレームとを結合する結合フレーム部材と、を備えたものである。
上記構成によれば、フロントピラー内に設けられるパイプ部材とフロントサイドフレームとを、フロントピラーレインフォースメントを貫通して連結することができ、これにより、衝突荷重(前面衝突時の入力荷重)を上記パイプ部材を介してフロントピラーにダイレクトに伝達して、荷重分散を図り、効果的に荷重を吸収することができる。
【0007】
また、パイプ部材と上記フロントピラーレインフォースメントとの溶接固定を確実に行なうことができるうえ、該パイプ部材はフロントピラーレインフォースメントに固定するので、このパイプ部材とフロントピラーインナとの間には、車室側に配設されるフロントピラートリムのファスナを挿入し得る所定の空間を設定することができ、フロントピラートリムの取付けを阻害することがない。
因に、上記パイプ部材をフロントピラーインナに溶接固定することも考えられるが、この場合には、パイプ部材とフロントピラーインナとの間に、フロントピラートリムのファスナを挿入し得る所定の空間を設定することが不可能となる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記パイプ部材はフロントピラーレインフォースメントの下部と併せて、カウルサイド部を貫通してエンジンルーム内に延出されたものである。
上述のカウルサイド部は、カウルサイドロアに特定してもよい。
上記構成によれば、パイプ部材がカウルサイド部の閉断面と、フロントピラーの閉断面との2つの閉断面を貫通するので、該パイプ部材の充分な支持剛性が確保できて、良好な荷重伝達性能を確保することができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記パイプ部材はフロントピラーレインフォースメント下部の貫通部とカウルサイド部の貫通部とに対して、その全周が溶接固定されたものである。
上記構成によれば、車体前後方向に比較的に近い位置で2つの固定点が形成されるので、車両前突に対する前後方向の支持剛性が強固となり、荷重伝達性能の向上を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記パイプ部材はフロントピラーレインフォースメントおよびカウルサイド部のカウルサイドロアと予め溶接固定されて、車体に取付けられるように構成されたものである。
上記構成によれば、パイプ部材の組付け性を確保した上で、カウルサイドロアを貫通させるパイプ配置が容易に達成できる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記パイプ部材の前部が上記結合フレーム部材に対して車幅方向外側から結合可能に構成されたものである。
上記構成によれば、アンダ側の結合フレーム部材と、アッパ側のパイプ部材と、を車体組付け方向(パイプ部材の車幅方向外側から車幅方向内側への移動による組付けの方向)にて、容易に組付けることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記結合フレーム部材に加えて、上記フロントサイドフレームとサイドシルとを結合する下方フレーム部材と、上記フロントサイドフレームから車幅方向内方に延び、かつ車体前後方向に延設されたトンネル部に沿って前後方向に延びるセンタ側フレーム部材と、を備えたものである。
上述のセンタ側フレーム部材は、トンネル部に沿って前後方向に延びるトンネルサイドメンバと、フロントサイドフレームとトンネルサイドメンバとの間を連結するトンネルパスメンバと、の2部材から構成してもよい。
上記構成によれば、衝突時の荷重をフロントピラーのみならず、サイドシルおよびトンネル部にも伝達、分散させて、より一層確実かつ効果的に荷重吸収することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとフロントピラーレインフォースメントとを備えたフロントピラーを設け、上記フロントピラー内に前後方向に延設されると共に、フロントピラーレインフォースメントの下部を貫通してエンジンルーム内に延出されたパイプ部材と、このパイプ部材の前部とフロントサイドフレームとを結合する結合フレーム部材と、を備えたので、フロントピラー内に設けられるパイプ部材とフロントサイドフレームとをフロントピラーレインフォースメントを貫通して連結することができ、衝突荷重を上記パイプ部材およびフロントピラーに伝達、分散して、効果的に荷重吸収を図ることができ、また、パイプ部材とフロントピラーレインフォースメントとの溶接固定を確実に行なうことができ、さらに、フロントピラートリムの取付けを阻害しない効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
衝突荷重をパイプ部材、フロントピラーに伝達、分散して効果的に荷重吸収を図り、またパイプ部材とフロントピラーレインフォースメントとの溶接を確実に行なうことができるうえ、フロントピラートリムの取付けを阻害しないという目的を、エンジンルーム下方において車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームが設けられた車体前部構造において、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとフロントピラーレインフォースメントとを備えたフロントピラーを設け、上記フロントピラー内に前後方向に延設されると共に、フロントピラーレインフォースメントの下部を貫通してエンジンルーム内に延出されたパイプ部材と、上記パイプ部材の前部とフロントサイドフレームとを結合する結合フレーム部材と、を備えるという構成にて実現した。
【実施例】
【0015】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車体前部構造を示し、図1、図11において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設けている。
【0016】
このダッシュロアパネル3の後部には、図11に示すように、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル4を一体的に連設している。
上述のダッシュロアパネル3およびフロアパネル4の車幅方向中央部には、図1、図11に示すように、車室2内に突出して、車体前後方向に延びるダッシュロアパネル3のトンネル部5と、フロアパネル4のトンネル部6とを車体前後方向に連続するように一体形成している。上記トンネル部5,6は車体剛性の中心となるものである。
【0017】
ここで、ダッシュロアパネル3のトンネル部5は、エンジンルーム1内に横置き配置したエンジン(図示せず)の後側に位置する排気ポートからの排気ガスを車両後方へ導びく排気管を、車体後方かつ斜め下方に向けて側面視略直線状にレイアウトする関係上、トンネル開口が大きい拡大構造(トンネル拡大部構造)に形成されている。
【0018】
図1、図11に示すように、上述のダッシュロアパネル3は、車体の上下方向に延びる縦壁3aと、この縦壁3aの下部から後方に向けて傾斜状に延びるスラント壁3bと、該スラント壁3bの後端から略水平に延びてフロアパネル4と面一状になる下壁3cとを備えている。
【0019】
上述のダッシュロアパネル3およびフロアパネル4の左右両サイドには、図1、図7、図11に示すように、サイドシルインナ7とサイドシルアウタ8とを接合固定して、車体前後方向に延びるサイドシル閉断面をもったサイドシル9を取付けている。ここで、上述のサイドシル9内には、必要に応じてサイドシルレインフォースメントが設けられる。
【0020】
また、図1、図11に示すように、上述の各トンネル部5,6の車室外側下端角部10に沿って車体前後方向に延びる左右一対のトンネルサイドメンバ11,11(但し、図1、図8では図示の便宜上、右側のトンネルサイドメンバのみを図示)を設けている。このトンネルサイドメンバ11は断面路ハット形状の車体剛性部材であって、トンネル部5,6とトンネルサイドメンバ11との間には、車体前後方向に延びる閉断面12が形成されている。
【0021】
一方、図1に示すように、ダッシュロアパネル3の上端部には、車幅方向に延びるダッシュアッパパネル13を接合固定し、このダッシュアッパパネル13の下部前端と上部後端との間には、断面逆L字状のカウルパネル14を接合固定して、これら両者13,14間には、車幅方向に延びるカウル閉断面15を形成している。つまり、上述のダッシュアッパパネル13とカウルパネル14との両者により、カウル部を構成したものである。なお、上述のカウルパネル14は、カウルパネルとカウルクロスメンバとの2部材で構成してもよい。
【0022】
図1、図4に示すように、カウルパネル14の左右両サイド(但し、図面では右側の構成のみを示す)には、カウルサイドインナ16と、カウルサイドアウタ17と、カウルサイドロア18とから成るカウルサイド部19を設けている。ここで、カウルサイドインナ16とカウルサイドアウタ17との間には、カウルサイド閉断面が形成される一方、図4に示すように、上述のカウルサイドロア18は、側面視で略直角三角形状に構成されており、該カウルサイドロア18は、カウルサイドアウタ17の下部と、ヒンジピラーレインフォースメント20の前部とにそれぞれ接合固定されている。
【0023】
また、図1に示すように、上述のカウルサイド部19から車体前方に延びるように、エプロンレインフォースメント21を設けている。このエプロンレインフォースメント21は、エプロンレインインナ22とエプロンレインアウタとを接合して、車体前後方向に延びる車体剛性部材である。
【0024】
さらに、図1に示すように、上述のエプロンレインインナ22の車幅方向内側にはサスタワー23(詳しくは、サスペンションタワー部)を設ける一方、このサスタワー23と、上述のエプロンレインインナ22と、後述するフロントサイドフレーム26の接合フランジ部との三者間には、アーチ状のホイールハウス24を設けている。なお、上述のサスタワー23には、サスペンションアームを支持するサスアームブラケットが設けられるが、その図示は省略している。
【0025】
図1、図8に示すように、上述のサスタワー23の後部には、ブラケット25を接合固定し、図8に示すように、ダッシュロアパネル3の前方延出部3dを該ブラケット25に固定すると共に、図1に示すように、カウルパネル14の前方延出部14aも上記ブラケット25に固定している。
【0026】
ところで、図1、図11に示すように、エンジンルーム1の下方において車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム26,26を設けている。これら左右一対のフロントサイドフレーム26,26の前端にはクラッシュカンを取付け、左右のクラッシュカン相互間には、車幅方向に延びるバンパレインが設けられるが、クラッシュカンおよびバンパレインの図示は省略している。
【0027】
このフロントサイドフレーム26は、図1に示すように、フロントサイドフレームアウタ27とフロントサイドフレームインナ28とを接合して、車体前後方向に延びる閉断面29を有する車体剛性部材であって、左右一対の各フロントサイドフレーム26,26の後部26R,26Rは、図1、図11に示すように、ダッシュロアパネル3の下部において滑らかに車幅方向外方に湾曲形成され、サイドシルインナ7に接合固定されており、フロントサイドフレーム26に入力された衝突荷重を、サイドシル9に伝達、分散すべく構成している。つまり、この実施例では、上述のフロントサイドフレーム26の後部26Rを、該フロントサイドフレーム26とサイドシル9とを結合する下方フレーム部材に設定している。
【0028】
また、図1、図11に示すように、フロントサイドフレーム26のサスクロス取付け部(詳しくは、サスペンションクロスメンバ取付け部)と、トンネルサイドメンバ11のサスクロス取付け部と、の間には、サスクロス取付けボルト30,31を有効利用して、トンネルパスメンバ32を設けている。
【0029】
フロントサイドフレーム26のサスクロス取付け部(サスクロス取付けボルト30の位置参照)、およびトンネルサイドメンバ11のサスクロス取付け部(サスクロス取付けボルト31の位置参照)は、何れも剛性が高く構成されており、斯る高剛性のサスクロス取付け部相互間に車体の略前後方向に延びるトンネルパスメンバ32を設けることにより、フロントサイドフレーム26に入力された衝突荷重を、トンネル部5,6にも伝達、分散すべく構成している。
上述のトンネルパスメンバ32は、詳しくは、フロントサイドフレーム26から車幅方向内方かつ車体前後方向の後方に向けて延びるメンバで、このトンネルパスメンバ32は丸パイプ(剛性部材)にて形成されると共に、その前後の取付け部は、丸パイプを偏平に加工して潰し部と成している。
【0030】
ここで、上述のトンネルパスメンバ32と、トンネルサイドメンバ11との両者により、フロントサイドフレーム26から車幅方向内方に延び、かつ車体前後方向に延設されたトンネル部5,6に沿って前後方向に延びるセンタ側フレーム部材を構成している。
【0031】
この実施例では、前面衝突時の衝突荷重を、フロントピラー40に伝達、分散する目的で、フロントピラー40と、フロントサイドフレーム26と、の間を金属丸パイプから成るアッパ側のパイプ部材41と、アンダ側の結合フレーム部材42とで連結している。
【0032】
以下、図2〜図10を参照して、これら両部材41,42によるフロントサイドフレーム26とフロントピラー40との連結構造について説明するが、説明の便宜上、車両右側の連結構造についてのみ説明する。なお、車両左側の連結構造は、右側のそれと左右略対称に構成されている。
【0033】
図4、図5に示すように、上述のフロントピラー40はフロントピラーアウタ43と、フロントピラーインナ44と、フロントピラーレインフォースメント45とを備え、前後方向に延びるフロントピラー閉断面が形成された車体剛性部材である。
【0034】
また、図4に示すように、上述のパイプ部材41は、その長手方向の中間部に1つのみの湾曲部41aを有し、この湾曲部41aの前後には直線状の前部41bと、直線状の後部41cとが一体形成されている。つまり、複数の湾曲部を有する構造の場合には、パイプ部材それ自体が座屈する懸念があるため、湾曲部41aを1つのみと成して、荷重伝達時のパイプ部材それ自体の座屈を回避して、衝突荷重を良好にフロントピラー40に伝達すべく構成したものである。
【0035】
パイプ部材41の後部41cは、図4、図5に示すようにフロントピラー40内にその前後方向に沿って延設されるが、詳しくは、図2に示すように、フロントピラーレインフォースメント45の前後方向に延びる凹部45aに溶接固定されるものである。
【0036】
つまり、図4のA−A線断面図を図5に示すように、フロントピラーレインフォースメント45の所定部には溶接用の複数の開口45b,45bを形成し、これらの開口45bを利用して、フロントピラーレインフォースメント45とパイプ部材41の後部41cとをアーク溶接手段にて溶接固定している。
【0037】
上述のフロントピラーレインフォースメント45の下部には、ヒンジピラーレインフォースメント46(図4参照)およびヒンジピラーインナ47(図7参照)に沿うように、下方に延びる下方延出部45cが一体形成されており、この下方延出部45cの前片45dには、パイプ部材41と略直交するように隆起部45eを形成すると共に、前片45dの車幅方向内端から前方に延びる接合フランジ部45fが形成されている。
【0038】
また、上述の隆起部45eには、図2、図6に示すように、車体前方に突出するようにバーリング加工部45gが一体形成され、このバーリング加工部45gに挿通したパイプ部材41の貫通部全周をアーク溶接手段にて該バーリング加工部45gに溶接固定している。なお、図中、45hはフロントピラーレインフォースメント45の下端である。
【0039】
図2に示すように、上述のパイプ部材41はフロントピラーレインフォースメント45の下部(バーリング加工部45g参照)と、カウルサイドロア18とを貫通してエンジンルーム1内に延出されている。
このカウルサイドロア18にも、バーリング加工部18aを一体形成し、このバーリング加工部18aに挿通したパイプ部材41の貫通部全周を、図3に示すように、アーク溶接手段にて該バーリング加工部18aに溶接固定している。
【0040】
要するに、上述のパイプ部材41は、フロントピラーレインフォースメント45およびカウルサイドロア18と予め溶接固定されて、車体に取付けられるように構成されている。また、該パイプ部材41はフロントピラーレインフォースメント45下部の貫通部(バーリング加工部45g参照)と、カウルサイドロア18の貫通部(バーリング加工部18a参照)とに対して、その全周がアーク溶接手段にて溶接固定されており、図2に示すように、車体前後方向の比較的近い位置で2つの固定点(バーリング加工部18a,45gとパイプ部材41の溶接箇所参照)が形成され、これにより、車両前突に対する前後方向の支持剛性が強固となり、荷重伝達性能の向上を図るように構成したものである。
【0041】
図2に示すように、フロントピラーレインフォースメント45とパイプ部材41とカウルサイドロア18との三者が組付けられてサブアセンブリされた後に、図4に示すように、各要素43,44,20,19が組付けられる。
【0042】
すなわち、図4、図5に示すように、フロントピラーレインフォースメント45の車外側にはフロントピラーアウタ43が接合固定され、フロントピラーレインフォースメント45の車内側にはフロントピラーインナ44が接合され、またフロントピラーレインフォースメント45の下部にはヒンジピラーレインフォースメント46が接合される。ここで、上述のフロントピラーレインフォースメント45とフロントピラーアウタ43の各接合フランジ部以外の部分には、図5に示すように、所定のクリアランス(いわゆる隙間)が形成されるものである。
【0043】
さらに、カウルサイドロア18の車外側上部には、図4に示すように、カウルサイドアウタ17が接合固定される。ここで、上述のカウルサイドロア18の上部はカウルサイドアウタ17に接合固定されると共に、カウルサイドロア18の後部はヒンジピラーレインフォースメント46に接合固定されるものである。
【0044】
図4のA−A線断面図を図5に示すように、上述のパイプ部材41の後部41cはフロントピラーレインフォースメント45に固定しているので、パイプ部材41の車内側の面と、フロントピラーインナ44との間には、車室側に配設される内装材としてのフロントピラートリム48のファスナ49を挿入し得る所定の空間を設定することができ、フロントピラートリム48の取付けを阻害しない。
【0045】
図6は図4のパイプ部材貫通部分の分解拡大斜視図であって、フロントピラーアウタ43の下部には、フロントピラーレインフォースメント45と対応するように下方に延びる前片43aが形成されており、この前片43aには隆起部45eの上下長さよりも、その長さが長い開口部43bと、該開口部43bの上下において前片43aの車幅方向内端から前方に延びる接合フランジ部43c,43dが一体に折曲げ形成されている。
【0046】
図6に示す分解状態から図4に示すようにフロントピラーアウタ43の背面にフロントピラーレインフォースメント45を当接して、各接合フランジ部43c,43d,45fをスポット溶接手段にて接合固定すると、フロントピラーレインフォースメント45にて、車外側と車内側とを防水シールすることができ、また、パイプ部材41をバーリング加工部45gに対して全周アーク溶接することで、貫通部においても防水シールすることができる。
図4に示す組付け状態から、ヒンジピラーレインフォースメント46の車幅方
向内側にヒンジピラーインナ47を組付けて、図7の状態と成す。
【0047】
次に、図7に示す組付け状態から各要素を組付けて図8に示す状態と成すが、この場合、上述のパイプ部材41の前部41bは結合フレーム部材42に対して車幅方向外側から結合可能に構成されている。
この構成(パイプ部材41の前部41bを車外側から組付ける構成)を、図8、図9、図10を参照して、以下に説明する。但し、図9はパイプ部材41の前部41bと結合フレーム部材42の直線状の上部とを、車外側から見た状態で示す斜視図である。
【0048】
図8、図9、図10に示すように、上述の結合フレーム部材42は、パイプ部材41の前部41bとフロントサイドフレーム26とを結合する強度部材であって、このパイプ部材41は、インナ部材42Aと、アウタ部材42Bとを備えており、インナ部材42Aはハット形状の断面構造に形成されると共に、このインナ部材42Aの下端部には複数の接合片42a,42b,42cが一体形成されている。
【0049】
上述の3つの接合片42a,42b,42cのうち前後の接合片42a,42bは、フロントサイドフレームインナ28のサスクロス取付け部近傍におけるトップデッキ面に接合固定し、下方に延びる接合片42cは、フロントサイドフレームインナ28のサスクロス取付け部近傍における車幅方向内側の側面に接合固定している。
また、上述のインナ部材42Aは斜め後方かつ上方に延びる形状に形成されると共に、ハット形断面による凹部42dの開口が車幅方向外方に向くように形成されたものである。
【0050】
アウタ部材42Bは上記インナ部材42Aの車外側に接合固定されており、これら両部材42A,42Bで閉断面を形成するが、図9に示すように、これら両部材42A,42Bの直線状の上部において、インナ部材42Aの上端42xに対してアウタ部材42Bの上端42yは、パイプ部材41の前部41bの結合に要する所定長さL1だけ下方にオフセットしている。
このオフセット構造により、パイプ部材41の前部41bを、結合フレーム部材42(詳しくは、インナ部材42Aの凹部42d)に対して車幅方向外側から結合することができる。
【0051】
図10は図9のB−B線矢視断面図であって、パイプ部材41の前部41bを上記オフセット量を利用して、結合フレーム部材42のインナ部材42Aに車幅方向外側から配置した後に、該結合フレーム部材42とパイプ部材41とは、略T字状のブラケット50を用いて結合される。
【0052】
つまり、上述のパイプ部材41の結合部には、図10に示すように、予め丸パイプ製のスペーサ51が貫設される一方、図9に示すように、上記ブラケット50はその下部50aと上部50bとを略T字状に一体形成したもので、ベース部としての下部50aの両サイドは一対のボルト52、ナット53を用いて、結合フレーム部材42のインナ部材42Aおよびアウタ部材42Bに共締め固定され、延出部としての上部50bは、スペーサ51内を貫通するボルト54と、ナット55とを用いて結合フレーム部材42のインナ部材42Aに結合固定される。
ここで、図10に示すように、上述の各ナット53,53,55はインナ部材42Aの車幅方向内側の面に予め溶接固定されており、この構造により組付け性の向上を図るように構成している。
【0053】
図9に示す構造に代えて、図12に示す構造を採用してもよい。この図12に示す構造は、インナ部材42Aの上端42xに対するアウタ部材42Bの上端42yのオフセット長さL2を、図9のそれに対しく長く設定(L2>L1)し、パイプ部材41の前部41bを、前後方向に離間した2組のスペーサ51、ボルト54、ナット55と、ブラケット50の上部50bとを用いて結合フレーム部材42に連結固定したものである。
【0054】
このように構成すると、結合フレーム部材42からパイプ部材41への衝突荷重の伝達効率をより一層高めることができると共に、パイプ部材41の車幅方向外側からの結合操作に要する該パイプ部材41とインナ部材42Aの凹部42dとの間のクリアランス設定が容易となる。つまり、荷重伝達効率の向上と、車外からの組付け性向上との両立を図ることができる。
なお、図12において、図9と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0055】
また、図8に示すように、インナ部材42A下端部における後部の接合片42bは、結合フレーム部材42の形状によりスポット溶接が不可能となるため、サスクロス取付けボルト30の取付け時等において、アーク溶接手段にて、フロントサイドフレームインナ28のトップデッキ面に接合固定されるものである。さらに、結合フレーム部材42の前後の接合フランジ部は、図8に示すように、フロントサイドフレーム26の上方に延びる接合フランジ部に対して、溶接手段により接合固定される。
【0056】
上述のパイプ部材41と結合フレーム部材42とを用いて、フロントサイドフレーム26とフロントピラー40とを連結した図8の状態から、ダッシュロアパネル3の上部にダッシュアッパパネル13およびカウルパネル14を取付けると共に、カウルサイドアウタ17の内側にカウルサイドインナ16を取付けて、図1の状態と成すものであり、上述のカウルサイドアウタ17とカウルサイドインナ16との間には、カウルサイド閉断面が形成され、パイプ部材41は、該カウルサイド閉断面内を通って前後方向に延びるものである。
なお、図11において、56は制動倍力装置としてのブレーキブースタである。また図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0057】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下作用を説明する。
車両が前面衝突すると、図示しないバンパレインおよびクラッシュカン(衝突エネルギ吸収部材)を介してフロントサイドフレーム26に衝突荷重が入力される。
【0058】
フロントサイドフレーム26に入力された衝突荷重は、結合フレーム部材42およびパイプ部材41を介して車体剛性部材としてのフロントピラー40に伝達されて、荷重分散される。
また、フロントサイドフレーム26の中で高剛性のサスクロス取付け部と、トンネル部5,6とを、トンネルパスメンバ32とトンネルサイドメンバ11との両者(つまり、センタ側フレーム部材)で連結しているので、上記衝突荷重はセンタ側フレーム部材を構成するトンネルパスメンバ32およびトンネルサイドメンバ11を介して、車体剛性の中心となるトンネル部5,6に伝達されて、荷重分散される。
【0059】
さらに、フロントサイドフレーム26の後部26Rを、図1、図11に示すように、ダッシュロアパネル3の下部から車幅方向外側に傾斜してサイドシル9に結合しているので、衝突荷重は車体剛性部材としてのサイドシル9にも伝達されて、荷重分散される。
換言すれば、フロントサイドフレーム26は、各要素42,41,26R,32,11を介して、フロントピラー40と、トンネル部5,6と、サイドシル9とで支持される構造となっている。
【0060】
このように上記実施例の車体前部構造は、エンジンルーム1下方において車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム26,26が設けられた車体前部構造であって、フロントピラーアウタ43とフロントピラーインナ44とフロントピラーレインフォースメント45とを備えたフロントピラー40を設け、上記フロントピラー40内に前後方向に延設されると共に、フロントピラーレインフォースメント45の下部を貫通してエンジンルーム1内に延出されたパイプ部材41と、上記パイプ部材41の前部41bとフロントサイドフレーム26とを結合する結合フレーム部材42と、を備えたものである(図5、図8参照)。
【0061】
この構成によれば、フロントピラー40内に設けられるパイプ部材41とフロントサイドフレーム26とを、フロントピラーレインフォースメント45を貫通して連結することができ、これにより、衝突荷重(前面衝突時の入力荷重)を上記パイプ部材41を介してフロントピラー40にダイレクトに伝達して、荷重分散を図り、効果的に荷重を吸収することができる。
【0062】
また、パイプ部材41と上記フロントピラーレインフォースメント45との溶接固定を確実に行なうことができるうえ、該パイプ部材41はフロントピラーレインフォースメント45に固定するので、パイプ部材41とフロントピラーインナ44との間には、車室側に配設されるフロントピラートリム48のファスナ49を挿入し得る所定の空間(図5参照)を設定することができ、フロントピラートリム48の取付けを阻害することがない。
因に、上記パイプ部材41をフロントピラーインナ44に溶接固定することも考えられるが、この場合には、パイプ部材41とフロントピラーインナ44との間に、フロントピラートリム48のファスナ49を挿入し得る所定の空間を設定することが不可能となる。
【0063】
さらに、上記パイプ部材41はフロントピラーレインフォースメント45の下部と併せて、カウルサイド部(カウルサイドロア18参照)を貫通してエンジンルーム1内に延出されたものである(図2参照)。
この構成によれば、図1、図2に示すように、パイプ部材41がカウルサイド部19の閉断面(カウルサイド閉断面参照)と、フロントピラー40の閉断面との2つの閉断面を貫通するので、該パイプ部材41の充分な支持剛性が確保できて、良好な荷重伝達性能を確保することができる。
【0064】
また、上記パイプ部材41はフロントピラーレインフォースメント45下部の貫通部(バーリング加工部45g参照)とカウルサイド部(カウルサイドロア18参照)の貫通部(バーリング加工部18a参照)とに対して、その全周が溶接固定されたものである(図2、図3参照)。
この構成によれば、車体前後方向に比較的に近い位置で2つの固定点(パイプ部材41とバーリング加工部18a,45gとの接合固定部参照)が形成されるので、車両前突に対する前後方向の支持剛性が強固となり、荷重伝達性能の向上を図ることができる。
【0065】
加えて、上記パイプ部材41はフロントピラーレインフォースメント45およびカウルサイド部19のカウルサイドロア18と予め溶接固定されて、車体に取付けられるように構成されたものである(図2参照)。
この構成によれば、パイプ部材41の組付け性を確保した上で、カウルサイドロア18を貫通させるパイプ配置が容易に達成できる。
【0066】
また、上記パイプ部材41の前部41bが上記結合フレーム部材42に対して車幅方向外側から結合可能に構成されたものである(図9、図10、図12参照)。
この構成によれば、アンダ側の結合フレーム部材42と、アッパ側のパイプ部材41と、を車体組付け方向(パイプ部材41の車幅方向外側から車幅方向内側への移動による組付けの方向)にて、容易に組付けることができる。
【0067】
さらに、上記結合フレーム部材42に加えて、上記フロントサイドフレーム26とサイドシル9とを結合する下方フレーム部材(フロントサイドフレーム26の後部26R参照)と、上記フロントサイドフレーム26から車幅方向内方に延び、かつ車体前後方向に延設されたトンネル部5,6に沿って前後方向に延びるセンタ側フレーム部材(トンネルパスメンバ32,トンネルサイドメンバ11参照)と、を備えたものである(図1、図11参照)。
この構成によれば、衝突時の荷重をフロントピラー40のみならず、サイドシル9およびトンネル部5,6にも伝達、分散させて、より一層確実かつ効果的に荷重吸収することができる。
【0068】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロントピラーレインフォースメント下部の貫通部は、実施例のバーリング加工部45gに対応し、
以下同様に、
カウルサイド部の貫通部は、カウルサイドロア18のバーリング加工部18aに対応し、
下方フレーム部材は、フロントサイドフレーム26の後部26Rに対応し、
センタ側フレーム部材は、トンネルパスメンバ32とトンネルサイドメンバ11との両者に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては、フロントサイドフレーム26の後部26Rを車幅方向外方に湾曲形成させ、かつサイドシル9に結合させて下方フレーム部材としたが、これはフロントサイドフレーム26とは別の部材にて構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の車体前部構造をエンジンルーム側から見た状態で示す斜視図
【図2】パイプ部材とフロントピラーレインフォースメントとカウルサイドロアのサブアセンブリ状態を示す斜視図
【図3】バーリング加工部とパイプ部材の溶接固定状態を示す断面図
【図4】アッパ側車体構造の組付け中途状態を示す斜視図
【図5】図4のA−A線拡大断面図
【図6】図4の要部の分解斜視図
【図7】図4の構成にヒンジピラーインナを組付けた状態で示す斜視図
【図8】アッパ側車体構造をアンダ側車体に組付けた状態で示す斜視図
【図9】結合フレーム部材とパイプ部材の結合構造を車外側から見た状態で示す斜視図
【図10】図9のB−B線矢視断面図
【図11】車体前部構造をエンジンルーム下方から見上げた状態で示す斜視図
【図12】結合フレーム部材とパイプ部材の結合構造の他の実施例を示す斜視図
【符号の説明】
【0070】
1…エンジンルーム
5,6…トンネル部
9…サイドシル
11…トンネルサイドメンバ(センタ側フレーム部材)
18…カウルサイドロア
18a,45g…バーリング加工部(貫通部)
19…カウルサイド部
26…フロントサイドフレーム
26R…後部(下方フレーム部材)
32…トンネルパスメンバ(センタ側フレーム部材)
40…フロントピラー
41…パイプ部材
41b…前部
42…結合フレーム部材
43…フロントピラーアウタ
44…フロントピラーインナ
45…フロントピラーレインフォースメント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム下方において車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームが設けられた車体前部構造であって、
フロントピラーアウタとフロントピラーインナとフロントピラーレインフォースメントとを備えたフロントピラーを設け、
上記フロントピラー内に前後方向に延設されると共に、フロントピラーレインフォースメントの下部を貫通してエンジンルーム内に延出されたパイプ部材と、
上記パイプ部材の前部とフロントサイドフレームとを結合する結合フレーム部材と、を備えた
車体前部構造。
【請求項2】
上記パイプ部材はフロントピラーレインフォースメントの下部と併せて、カウルサイド部を貫通してエンジンルーム内に延出された
請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
上記パイプ部材はフロントピラーレインフォースメント下部の貫通部とカウルサイド部の貫通部とに対して、その全周が溶接固定された
請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
上記パイプ部材はフロントピラーレインフォースメントおよびカウルサイド部のカウルサイドロアと予め溶接固定されて、
車体に取付けられるように構成された
請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
上記パイプ部材の前部が上記結合フレーム部材に対して車幅方向外側から結合可能に構成された
請求項1〜4の何れか1に記載の車体前部構造。
【請求項6】
上記結合フレーム部材に加えて、上記フロントサイドフレームとサイドシルとを結合する下方フレーム部材と、
上記フロントサイドフレームから車幅方向内方に延び、かつ車体前後方向に延設されたトンネル部に沿って前後方向に延びるセンタ側フレーム部材と、を備えた
請求項1〜5の何れか1に記載の車体前部構造。
【請求項1】
エンジンルーム下方において車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームが設けられた車体前部構造であって、
フロントピラーアウタとフロントピラーインナとフロントピラーレインフォースメントとを備えたフロントピラーを設け、
上記フロントピラー内に前後方向に延設されると共に、フロントピラーレインフォースメントの下部を貫通してエンジンルーム内に延出されたパイプ部材と、
上記パイプ部材の前部とフロントサイドフレームとを結合する結合フレーム部材と、を備えた
車体前部構造。
【請求項2】
上記パイプ部材はフロントピラーレインフォースメントの下部と併せて、カウルサイド部を貫通してエンジンルーム内に延出された
請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
上記パイプ部材はフロントピラーレインフォースメント下部の貫通部とカウルサイド部の貫通部とに対して、その全周が溶接固定された
請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
上記パイプ部材はフロントピラーレインフォースメントおよびカウルサイド部のカウルサイドロアと予め溶接固定されて、
車体に取付けられるように構成された
請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
上記パイプ部材の前部が上記結合フレーム部材に対して車幅方向外側から結合可能に構成された
請求項1〜4の何れか1に記載の車体前部構造。
【請求項6】
上記結合フレーム部材に加えて、上記フロントサイドフレームとサイドシルとを結合する下方フレーム部材と、
上記フロントサイドフレームから車幅方向内方に延び、かつ車体前後方向に延設されたトンネル部に沿って前後方向に延びるセンタ側フレーム部材と、を備えた
請求項1〜5の何れか1に記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−214788(P2009−214788A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62296(P2008−62296)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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