説明

車体前部構造

【課題】車両前突時にエンジン後退が生じた場合でもダッシュパネルの車室内への侵入を助長することがないように、比較的大型の触媒容器をレイアウトできるようにする。
【解決手段】フロントサイドフレーム4よりも下方に位置し前輪サスペンション装置40のロアアーム45,46が取り付けられたペリメータフレーム50と、該ペリメータフレームとフロントサイドフレームとに支持されたエンジンEと、エンジンから延びる排気管73に接続された触媒容器74とを備えた自動車の車体前部構造であって、ペリメータフレームは、車体前後方向に延びロアアームの取付部を有する左右の縦メンバ51と、この左右の縦メンバを車幅方向に結合する横メンバ52,53,54とを備え、触媒容器は細長状に形成されており、該触媒容器が、横メンバ53の後方において、車両正面視で横メンバと重なる高さ位置に配設されている、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体前部構造、特に、前輪サスペンション装置のロアアームが取り付けられたサブフレームとフロントサイドフレームとに支持されたパワートレインと、エンジンから延びる排気管に接続された触媒容器とを備えた自動車の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体前部構造として、車体前部の左右側部において前後方向に延びる一対のフロントサイドフレームよりも下方に、前輪サスペンション装置のロアアームが取り付けられるサブフレームを配置し、このサブフレームと前記フロントサイドフレームとに所謂パワートレイン(エンジンとトランスミッションとを一体化した構成)を載架して支持するように構成したものは、一般に良く知られている。
【0003】
かかる車体前部にエンジン排気系の触媒装置を配設する場合、本来スペースの余裕に乏しいエンジンルーム内で如何にスペース効率良くレイアウトするかは重要である。特に、酸化触媒用いた(通常、これに加えて所謂DPFを備えた)触媒ユニットの場合、温度によって反応度合が変化するので、エンジン排気系の比較的上流側に(従って、エンジンルーム内に)設けることが求められる。
【0004】
例えば特許文献1には、縦置きタイプとされたエンジンの前方を経由する排気管に触媒ユニットを接続し、この触媒ユニットを、エンジン前方でサブフレームよりもかなり上方において、車幅方向に配設するようにしたレイアウトが開示されている。
【0005】
周知のように、特に近年では、環境意識のより一層の高まりに伴って、触媒装置による排気ガスの浄化性能向上に対する要求も更に厳しくなって来ており、かかる要求に応えるために触媒ユニットを収容した触媒容器も大型化せざるを得ない状況にある。従って、かかる触媒容器のエンジンルーム内でのレイアウトに、より一層の工夫が求められることになる。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大型化した触媒容器をエンジンルーム内に効率良くレイアウトする場合、エンジンを横置きタイプとし、この横置きエンジンの後方空間に前記触媒容器を配置することが考えられる。
図1から図4は、横置きエンジンの後方空間を利用した触媒容器の配置例を示す説明図で、図1はエンジンルームの平面図、図2はエンジンルームの底面図、図3は図2のY3−Y3矢印方向から見て示したエンジンルームの側面矢視図、図4は図3のY4−Y4矢印方向から見て示したエンジンルームの後面矢視図である。
【0007】
これらの図に示された触媒容器の配置例に係る車両では、例えば、フロントエンジン−フロントドライブ方式(FF方式)とされた自動車のエンジンルーム102内に、ターボ付きディーゼルエンジン10Eが横置きに配置され、このエンジン10Eとトランスミッション10Tmとが一体的に連結されて所謂パワートレイン10PTを構成している。
【0008】
尚、前記エンジン10Eは、シリンダ(不図示)に対して車両前側からエアを供給して後方に排出する、所謂、前方吸気/後方排気方式のもので、シリンダヘッド10Ehの前側に吸気マニホールド167が、後側に排気マニホールド171がそれぞれ配設されている。また、シリンダヘッド10Ehの後側には、排気マニホールド171に接続された排気側タービン172に加えて、吸気マニホールド167に接続された吸気側タービン168も配置されている。
【0009】
ボンネット103で上方が覆われたエンジンルーム102内には、その左右側部において車体前後方向に延びる一対のフロントサイドフレーム104と、該フロントサイドフレーム104よりも下方に位置し前輪10Wfのサスペンション装置140のロアアーム145,146が取り付けられたサブフレーム150とが配設されている。
【0010】
このサブレーム150は、前後方向に延びる左右の縦メンバ151と、該左右の縦メンバ151を車幅方向に連結する前後の横メンバ152,154とで、平面視で略枠状に形成された所謂ぺリメータフレームとして構成されている。パワートレイン10PTは、このサブフレーム150と前記フロントサイドフレーム104とに支持されている。この場合、パワートレイン10PTの後部は、エンジン10Eとトランスミッション10Tmの間に位置するクラッチ及び差動装置のケーシング10Cdの後部下側が、公知の弾性ブッシュを介して、連結部10Bでサブフレーム150の後部横メンバ154に支持されている。
【0011】
また、前記フロントサイドフレーム104の前端には、クラッシュカン106を介してフロントバンパ107のバンパ・レインフォースメント108が支持され、該バンパ・レインフォースメント108とサイドフレーム150の前部横メンバ152との間に、ラジエータを収容したシュラウドパネル111が配置されている。
【0012】
この例では、横置きエンジン10Eの後方空間を利用して、つまり、車室122とエンジンルーム102とを仕切るダッシュパネル125とエンジン10Eとの間に、前後に排気管173,175が接続された大型の触媒容器174が配置されている。該触媒容器の上流側排気管173は排気マニホールド171から延設され、下流側排気管175は、フレキシブルジョイント176を介してフロア下排気管177に接続されている。従って、触媒容器174は、ダッシュパネル125とエンジン10Eとの間において、その前部が上方に位置し後部が下方に位置するように斜めに傾斜した状態にレイアウトされている。
【0013】
ところが、かかる配置構造では、車両が前突(正面衝突)した際に、前方からの衝撃荷重の入力に伴ってエンジン10Eの後退が生じると、このエンジン10Eに押し動かされて大型の触媒容器174も後退し、ダッシュパネル125に衝突することになる。つまり、車両前突時にエンジン後退が生じた場合にダッシュパネル125の車室122内への侵入を助長する恐れがあり、車室122内の乗員の保護を図る上で好ましくない、という難点があった。
【0014】
この発明は、かかる技術的課題に鑑みてなされたもので、車両前突時にエンジン後退が生じた場合でもダッシュパネルの車室内への侵入を助長することがないように触媒容器をレイアウトできる車体前部構造を提供することを、基本的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため、本願の第1の発明(請求項1に係る発明)は、車体前部の左右側部において車体前後方向に延びる一対のフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレームよりも下方に位置し前輪サスペンション装置のロアアームが取り付けられたサブフレームと、該サブフレームと前記フロントサイドフレームとに支持されたエンジン及びトランスミッションが一体化されてなるパワートレインと、前記エンジンから延びる排気管に接続された触媒容器と、を備えた自動車の車体前部構造であって、
前記サブフレームは、前記フロントサイドフレームの下方において車体前後方向に延び前記ロアアームの取付部を有する左右の縦メンバと、この左右の縦メンバを車幅方向に結合する横メンバとを備え、前記触媒容器は、長手方向の両端部に排気管が接続される細長状に形成されており、前記触媒容器が、前記横メンバの後方において、車両正面視で前記横メンバと重なる高さ位置に配設されている、ことを特徴としたものである。
【0016】
また、本願の第2の発明(請求項2に係る発明)は、前記第1の発明において、前記触媒容器は前記横メンバの直後方に配設されている、ことを特徴としたものである。
【0017】
更に、本願の第3の発明(請求項3に係る発明)は、前記第1の発明において、前記横メンバが複数備えられ、これら横メンバの間の空間に前記触媒容器が配設されている、ことを特徴としたものである。
【0018】
また更に、本願の第4の発明(請求項4に係る発明)は、前記第2又は第3の発明において、前記エンジンは、後方排気で横置きタイプのものであり、上部が下部に対して後方に位置するように後方傾斜しており、前記横メンバは前記後方排気横置きタイプのエンジンの後方に位置し、前記エンジン側から延びる排気管は該エンジン側から鉛直方向に垂下している、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本願の第1の発明によれば、長手方向の両端部に排気管が接続される細長状に形成された触媒容器を、フロントサイドフレームの下方において車体前後方向に延びるサブフレームの左右の縦メンバ間であって該左右の縦メンバを車幅方向に結合する横メンバの後方スペースを利用して配置することができる。しかも、フロントサイドフレームの下方に位置する前記横メンバの後方において、車両正面視で横メンバと重なる高さ位置に触媒容器が配設されるので、車両前突時にエンジンの後退が生じても、触媒容器がダッシュパネルに衝突することはない。つまり、車両前突時におけるダッシュパネルの車室内への侵入とは関わりの無い位置に触媒容器を配置することができる。
【0020】
また、本願の第2の発明によれば、基本的には前記第1の発明と同様の作用効果を奏することができる。特に、触媒容器は前記横メンバの直後方に配設されているので、フロントサイドフレームの下方でエンジンルームの最低部領域に触媒容器を配置しても、該触媒容器の直前方に前記横メンバが在るので、エンジンルームの最低部領域に路面等との干渉が生じた場合には、横メンバが先に路面等と当たることで、触媒容器を保護することができる。
【0021】
更に、本願の第3の発明によれば、基本的には前記第1の発明と同様の作用効果を奏することができる。特に、サイドフレームに横メンバが複数備えられることにより、サイドフレームの平面領域を、エンジンが配設される領域と触媒容器が配設される領域とに前後に明確に区分けすることができ、これら横メンバの間の空間に触媒容器を配設することにより、触媒容器とエンジンとが干渉することを確実に回避できる。
【0022】
また更に、本願の第4の発明によれば、基本的には前記第2又は第3の何れかの発明と同様の作用効果を奏することができる。特に、後方排気で横置きタイプのエンジンを、上部が下部に対して後方に位置するように後方傾斜して配設することにより、エンジンの下部後方にスペースを生み出すことができる。そして、エンジン側から延びる排気管を該エンジン側から鉛直方向に垂下させることにより、エンジンの下部後方スペースを利用して触媒容器を配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。図5は本発明の第1の実施形態に係る自動車のエンジンルームを斜め後方から見て示した斜視図、図6は前記エンジンルームの平面図、図7は前記エンジンルームの底面図、図8は図7のY8−Y8矢印方向から見て示したエンジンルームの側面矢視図、図9は図8のY9−Y9矢印方向から見て示したエンジンルームの後面矢視図である。
【0024】
これらの図に示すように、本実施形態に係る自動車は、例えば、エンジンEを車両の前部に搭載して前輪を駆動する所謂フロントエンジン−フロントドライブ方式(FF方式)とされ、エンジンルーム2内には、例えば、横置きタイプでターボ付きとされたディーゼルエンジンEが配置されている。つまり、エンジンEは、シリンダ列(不図示)が略車幅方向に沿って延びるようにレイアウトされている。
【0025】
このエンジンEと例えばマニュアル式とされたトランスミッションTmとが一体的に連結されて所謂パワートレインPTを構成している。尚、エンジンEとトランスミッションTmとの間には、ケーシングCd内に収容されたクラッチ機構および差動歯車装置が位置している。また、エンジンEの下方にはオイルパンEp(図7参照)が付設されている。
前記パワートレインPTでは、前側から順に、エンジンEの出力軸と軸線が一致するプライマリシャフトS1,このプライマリシャフトS1と噛合するセカンダリシャフトS2,前輪駆動軸と軸線が一致する差動歯車機構のデファレンシャルギヤ出力軸S3が配列されている(図8参照)。
【0026】
前記エンジンEは、シリンダに対して車両前側からエアを供給して後方に排出する、所謂、前方吸気/後方排気方式のもので、エンジンEの各シリンダに吸気エアを導入する吸気マニホールド67がシリンダヘッドEhの前側に配設され(図7参照)、各シリンダから排気ガスを排出させる排気マニホールド71がシリンダヘッドEhの後側に配設されている(図9参照)。また、シリンダヘッドEhの後側には、排気マニホールド71に接続された排気側タービン72に加えて、吸気マニホールド67に接続された吸気側タービン68も配置されている。
【0027】
このように前方吸気/後方排気方式の吸排気方式を採用することにより、後方吸気/前方排気方式に比して、排気ポートから触媒ユニット74(後述する)までの距離をより短くすることができるので、触媒をより早期に活性化する上で有利となる。
尚、本明細書において、排気マニホールド71を含むエンジンEの排気系あるいはその各部について「上流側」若しくは「下流側」というときは、当該排気マニホールド71や各排気管内を流れる排気ガスの流れ方向と一致して、排気ガスが車体後端に位置するマフラー(不図示)に向う側を「下流側」と言うものとする。
【0028】
エンジンルーム2内には、その左右側部において車体前後方向に延びる一対のフロントサイドフレーム4と、該フロントサイドフレーム4よりも下方に位置し前輪サスペンション装置40のロアアーム45,46(ラテラルリンク)が取り付けられたサブフレーム50とが配設されている。尚、このサブレーム50は、後で詳しく説明するように、平面視で略四辺形の枠状に形成された所謂ぺリメータフレームとして構成されている。該ペリメータフレーム50は、連結ブラケット5(図8参照)を介してフロントサイドフレーム4に結合されている。
【0029】
パワートレインPTは、公知の弾性ブッシュを介して、ペリメータフレーム50とフロントサイドフレーム4とに結合され、載架状態でこれらに支持されている。また、フロントサイドフレーム4の前端には、所謂クラッシュカン6を介してフロントバンパ7のバンパ・レインフォースメント8が支持され、このバンパ・レインフォースメント8の前側はバンパフェイス9で覆われている(図8参照)。
【0030】
バンパ・レインフォースメント8とペリメータフレーム50の前辺部との間には、ラジエータを収容した例えば樹脂製のシュラウドパネル11が配置されている。またエンジンルーム2の上方はボンネット3で覆われる一方、エンジンルーム2の少なくとも前部下方はアウタ・カバー12で覆われている。尚、図5においては、図面の明瞭化のためにシュラウドパネル11は、その図示が省略されている。
【0031】
左右の前輪Wfを車体に対して懸下する前輪サスペンション装置40は、例えば、A型アッパアーム41と、ホイールハブ43と一体化されたナックルアーム42と、前側および後側のロアフロント・ラテラルリンク45及び46でなるロアアームと、緩衝スプリング(不図示)とを備え、該緩衝スプリングは所謂サスタワー13内に位置している。また、前側および後側のロアフロント・ラテラルリンク45及び46の内方端部は、それぞれ弾性ブッシュを介して前記ペリメータフレーム50に支持されている。
【0032】
前記左右のホイールハブ43には、前輪Wfを操舵するステアリングロッド61の前端部が連結され、これらステアリングロッド61の後端部は、ペリメータフレーム50の後部上側に支持されて車幅方向へ延設されたステアリングロッド駆動ユニット62に連結されている。このステアリングロッド駆動ユニット62は、従来公知のもので、例えば、ステアリングシャフト(不図示)先端の歯車と噛合するステアリングラックを備え、ステアリングシャフト(不図示)の回動に応じてステアリングラックが車幅方向へ移動することで、左右の前輪Wfを操舵するものである。
【0033】
ボンネット3の後方には、フロントウインドウガラス21の前端部を支持し車幅方向に延設された閉断面状のカウルメンバ23が位置し、このカウルメンバ23の下端に、エンジンルーム2と車室22とを仕切るダッシュパネル25の上端部が接合されている(図8参照)。このダッシュパネル25の下端側は車室22のフロアパネル26に一体的に結合されている。フロアパネル26の左右両端は車体前後方向に延びる一対のサイドシル27で支持され、それよりも内側がサイドシル27と平行に延びる左右一対のフロアフレーム28で支持されている(図6,図7参照)。尚、前記サイドシル27の前端には前輪Wfのホイールハウス14の後端部が位置している。
【0034】
フロアパネル26の車幅方向における略中央部分には、フロアパネル26の一部で形成された車体前後方向へ延びる所謂トンネル部29が形成されている。このトンネル部29は、フロアパネル26の車幅方向における略中央部分を下方に開口する逆U字状にプレス加工して形成されており、その内部には、車体前後方向に延びるフロア下排気管77等が配置されている。
尚、車室前端の上部にはインストルメントパネル31が配設され、このインストルメントパネル31の内部に、ブレーキペダル32の上端が揺動可能に支持されている(図8参照)。
【0035】
この自動車の排気系は、上流側から順に、前記排気マニホールド71と排気側タービン72と触媒ユニット74とを備えており、該触媒ユニット74は、その容器の長手方向の両端部に排気管73,75が接続される細長状に形成されている。つまり、触媒容器74は、その上流側端部が上流排気管73を介して排気側タービン72に接続され、下流側端部は下流排気管75および屈曲自在なフレキシブルジョイント76を介して、前記フロア下排気管77に接続されている。尚、このフロア下排気管77の途中部には、例えば、所謂SCR法によって排気ガス中の窒素酸化物(NO)をアンモニア等の還元物質と触媒反応させて浄化する排ガス浄化装置(不図示)が介設されている。この浄化装置は、高温に曝すことはできないので、排気系のできるだけ下流側に配置される。
【0036】
前記触媒ユニット74は、基本的には従来公知のものと同様のもので、酸化触媒と排気微粒子捕集器(所謂DPF)とを内蔵しており、酸化触媒によって排気ガス中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化し、多孔質のフィルタを備えたDPFを通過させることによって排気ガス中の粒子状物質(所謂PM)を捕集し、排気ガスの浄化を図るものである。
【0037】
本実施形態では、排気ガスの浄化性能向上に対する更なる要求に応えるために、触媒ユニット74を収容した触媒容器も大型化したものとなっているが、この触媒ユニット74の場合、温度によって反応度合が変化し、エンジンEの排気ポートからの距離が短い方が触媒をより早期に活性化する上で有利であるので、エンジン排気系の比較的上流側に(従って、エンジンルーム2内に)配設される。そして、本来手狭でスペースの余裕に乏しいエンジンルーム内に、支障なく触媒ユニット74をレイアウトできるように、本実施形態では、ペリメータフレーム50の構成およびレイアウトを利用して、触媒ユニット74を配置するようにしている。
【0038】
次に、前記ペリメータフレーム50の構成およびレイアウト並びに触媒ユニット74の配置について説明する。
図5乃至図7から良く分かるように、前輪サスペンション装置40を支持し得るサブフレームとしての前記ペリメータフレーム50は、フロントサイドフレーム4の下方において車体前後方向に延びる左右の縦メンバ51と、この左右の縦メンバ51を車幅方向に結合する複数の横メンバ52,53,54と、を備えている。左右の縦メンバ51と、これら縦メンバ51を車体前後位置においてそれぞれ車幅方向に結合する前部横メンバ52及び後部横メンバ54とで、平面視で略四辺形の枠状に形成されている。
【0039】
より好ましくは、前記ペリメータフレーム50の少なくとも左右の縦メンバ51と前部横メンバ52とは、例えば液圧成形法を用いて一体成形されており、この一体成形品に、後部横メンバ54と中間横メンバ53とを接合して構成されている。ペリメータフレーム50の前側の左右角部には、車体のフロントサイドフレーム4への取付部56が形成され、後側の左右角部には、車体のフロアパネル26への取付部57が形成されている。
【0040】
尚、パワートレインPTの後部は、エンジンEのトランスミッションTm近傍箇所の後部下側が、公知の弾性ブッシュを介して、連結部Bで中間横メンバ53に支持されている。従って、より離れている後部横メンバに支持させる場合に比して、連結スパンを短くでき、支持剛性を高めることができる。また、連結部Bもコンパクトなものにできる。
また、車幅方向へ延びるステアリングロッド駆動ユニット62は、ペリメータフレーム50の後部横メンバ54上に支持されている。従って、後部横メンバ54と中間横メンバ53との間のスペースをより広く確保でき、触媒容器74をより大容量に設定することができる。
【0041】
中間横メンバ53は、前部横メンバ52と後部横メンバ54との間の前後方向における適所に配置されている。本実施形態では、ロアアームを構成する前側および後側のロアフロント・ラテラルリンク45及び46のうちで前輪車軸36に最も近くに位置する前側ロアフロント・ラテラルリンク45の取付部位の直後方に、前記左右の縦メンバ51を車幅方向に結合する中間横メンバ53が配設されている。
【0042】
このように、中間横メンバ53は、ロアアーム45,46のうちで前輪車軸36に最も近くに位置し大きな横力が作用する前側ロアフロント・ラテラルリンク45の取付部にて左右の縦メンバ51を車幅方向に結合するので、前輪サスペンション装置40の剛性を高めることができる。
【0043】
そして、この中間横メンバ53の後方に(つまり、中間横メンバ53と後部横メンバ54の間の空間に)、長手方向の両端部に排気管73,75が接続される細長状に形成された触媒容器74が配置されている。
該触媒容器74は、特に、中間横メンバ53の直後方にて該中間横メンバ53に沿って車幅方向に延在するように、より詳しく言えば、車両正面視で中間横メンバ53と重なる高さ位置に配設されている。
【0044】
このように、本実施形態によれば、フロントサイドフレーム4の下方において車体前後方向に延びるペリメータフレーム50(サブフレーム)の左右の縦メンバ51間であって該左右の縦メンバ51を車幅方向に結合する中間横メンバ53の後方スペースを利用して、触媒容器74をレイアウトすることができる。しかも、フロントサイドフレーム4の下方に位置する前記中間横メンバ53の後方において、該中間横メンバ53に沿って車幅方向に延在するように、つまり、車両正面視で中間横メンバ53と重なる高さ位置に、触媒容器74が配設されるので、車両前突時にエンジンEの後退が生じても、触媒容器74がダッシュパネル25に衝突することはない。つまり、車両前突時におけるダッシュパネル25の車室内への侵入とは関わりの無い位置に触媒容器74を配置することができるのである。
【0045】
また、触媒容器74は中間横メンバ53の直後方に配設されているので、フロントサイドフレーム4の下方でエンジンルーム2の最低部領域に触媒容器74を配置しても、該触媒容器74の直前方に前記中間横メンバ53が在るので、エンジンルーム2の最低部領域に路面等との干渉が生じた場合には、横メンバ53が先に路面等と当たることで、触媒容器74を保護することができる。
【0046】
更に、ペリメータフレーム50の前後の横メンバ52,54の間に中間横メンバ53を設けたことにより、ペリメータフレーム50の平面領域を、エンジンEが配設される領域と触媒容器74が配設される領域とに前後に明確に区分けすることができ、前部横メンバ52と中間横メンバ53の間の空間にエンジンEを配置し、中間横メンバ53と後部横メンバ54の間のスペースに触媒容器74を配設することにより、触媒容器74とエンジンEとが干渉することを確実に回避できる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。尚、以下の説明において、前記第1の実施形態における場合と実質的に同様の構成を備え実質的に同様の作用をなすものについては、同一の符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0048】
この第2の実施形態では、図10に示すように、後方排気で横置きタイプとされたディーゼルエンジンEをエンジンルーム内に搭載するに際して、エンジンEの上部を構成するシリンダヘッドEhがエンジン下部に対して後方に位置するように後方傾斜して配設されている。つまり、エンジンEの各シリンダ(不図示)の軸方向中心線Lcが、真直に上下方向へ向くように配設するのではなく、各シリンダの軸方向中心線Lcが前斜め下方から後斜め上方に延び、エンジンEの上部が車両後方側に向くように、鉛直方向Lvに対して所定角度βだけ傾斜して配設されている。
【0049】
エンジンEをこのような傾斜姿勢で配設することにより、エンジンEの上部前側およびエンジンEの下部後側に、側面視で略三角形状の空間部がそれぞれ生まれ、エンジン補機類などの周辺機器をこの空間部に配設することができるので、これら周辺機器のレイアウト性の向上に寄与することができる。
この第2の実施形態は、エンジンEが傾斜姿勢で配設される点を除いては、前述の第1の実施形態と構成および作用効果の両方において、基本的には同様である。
【0050】
本実施形態では、ペリメータフレーム80(サブフレーム)の左右の縦メンバ81の途中部を車幅方向に連結する中間横メンバ83は、後方排気横置きタイプのエンジンEの後方に、より具体的には、エンジンEの排気口の略垂直下方に位置し、エンジンE側から延びる排気管93(上流排気管)は、該エンジン排気系の排気側タービン82から略鉛直方向に垂下するように延びている。触媒容器94は、その上流側端部に上流側排気管93が接続され、下流側端部には下流側排気管95が接続されている。
【0051】
このように、本実施形態によれば、後方排気で横置きタイプのエンジンEを、上部が下部に対して後方に位置するように後方傾斜して配設することにより、エンジンEの下部後方に余裕スペースを生み出すことができる。そして、中間横メンバ53をエンジンEの排気口の略垂直下方に配置すると共に、エンジン側から延びる排気管73を該エンジン側から略鉛直方向に垂下させることにより、エンジンEの下部後方スペースを利用して中間横メンバ83及び触媒容器94を配置することができる。
【0052】
本実施形態では、エンジンEを前述のように後方傾斜して配設したことにより、パワートレインPTの下部が所定量Kだけ前方へ移動し、その下部後方に余裕スペースが生まれているので、中間横メンバ83をそれだけ前方に位置させることができ、中間横メンバ83と後部横メンバ84の間隔が広く設定することができる。このため、ここに配置される触媒容器84の断面形状を横長の長円状として、その容積をより大きく設定されている。
【0053】
このように、触媒容器94は中間横メンバ83と後部横メンバ84の間に配置されている。換言すれば、中間横メンバ83は、その前後をエンジンEの下部と触媒容器94とで挟まれている。従って、上部が下部に対して後方に位置するように後方傾斜して配設されたエンジンEの下部と触媒容器94との間のスペースに、中間横メンバ83を車幅方向へ延設することにより、上下方向および前後方向の両方についてコンパクトな配置構造とすることができる。
【0054】
また、本実施形態では、後部横メンバ84の上部に、前輪Wfを操舵するステアリングラックを備えたステアリングロッド駆動ユニット62が配置され、該ステアリングロッド駆動ユニット62の前斜め下方に前記触媒容器94が位置している。そして、この触媒容器94とステアリングロッド駆動ユニット62とが平面視で一部が重なり合うように、位置設定されている。
【0055】
このように、両者94,62を平面視で一部が重なり合うように配置したことにより、何れも車幅方向に延びる長尺物である触媒容器94とステアリングロッド駆動ユニット62とを前後方向に近接して配置することができ、前後方向のレイアウト長をそれだけ低減することができるのである。
【0056】
尚、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、変更および改良等がなされるものであることは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、前輪サスペンション装置のロアアームが取り付けられたサブフレームとフロントサイドフレームとに支持されたパワートレインと、エンジンから延びる排気管に接続された触媒容器とを備えた自動車の車体前部構造に関し、例えば、エンジン横置きタイプでFF方式とされたディーゼルエンジン車などの車体前部構造として、有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】横置きエンジンの後方空間を利用した触媒容器の配設例を示すエンジンルームの平面図である。
【図2】前記エンジンルームの底面図である。
【図3】図2のY3−Y3矢印方向から見て示した前記エンジンルームの側面矢視図である。
【図4】図3のY4−Y4矢印方向から見て示した前記エンジンルームの後面矢視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る自動車のエンジンルームを斜め後方から見て示した斜視図である。
【図6】前記エンジンルームの平面図である。
【図7】前記エンジンルームの底面図である。
【図8】図7のY8−Y8矢印方向から見て示した前記エンジンルームの側面矢視図である。
【図9】図8のY9−Y9矢印方向から見て示した前記エンジンルームの後面矢視図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るエンジンルームの側面図である。
【符号の説明】
【0059】
2 エンジンルーム
4 フロントサイドフレーム
22 車室
25 ダッシュパネル
40 前輪サスペンション装置
45 前側ロアフロント・ラテラルリンク
46 後側ロアフロント・ラテラルリンク
50,80 ペリメータフレーム(サブフレーム)
51,81 縦メンバ
52,82 前部横メンバ
53,83 中間横メンバ
54,84 後部横メンバ
73,93 上流排気管
74,94 触媒容器(触媒ユニット)
75,95 下流排気管
E エンジン
PT パワートレイン
Tm トランスミッション
Wf 前輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部の左右側部において車体前後方向に延びる一対のフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレームよりも下方に位置し前輪サスペンション装置のロアアームが取り付けられたサブフレームと、該サブフレームと前記フロントサイドフレームとに支持されたエンジン及びトランスミッションが一体化されてなるパワートレインと、前記エンジンから延びる排気管に接続された触媒容器と、を備えた自動車の車体前部構造であって、
前記サブフレームは、前記フロントサイドフレームの下方において車体前後方向に延び前記ロアアームの取付部を有する左右の縦メンバと、この左右の縦メンバを車幅方向に結合する横メンバと、を備え、
前記触媒容器は、長手方向の両端部に排気管が接続される細長状に形成されており、
前記触媒容器が、前記横メンバの後方において、車両正面視で前記横メンバと重なる高さ位置に配設されている、
ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記触媒容器は前記横メンバの直後方に配設されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記横メンバが複数備えられ、これら横メンバの間の空間に前記触媒容器が配設されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記エンジンは、後方排気で横置きタイプのものであり、上部が下部に対して後方に位置するように後方傾斜しており、
前記横メンバは、前記後方排気横置きタイプのエンジンの後方に位置し、
前記エンジン側から延びる排気管は、該エンジン側から鉛直方向に垂下している、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−241708(P2009−241708A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89684(P2008−89684)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】