説明

車椅子利用者用ナビゲーション装置

【課題】GPSの受信不可能な駅構内でも、自車位置検知手段として、車いすに装着されたセンサでのみ行う自立航法で行い、これにより検知された自車位置に基づきバリアフリー経路を誘導案内することを可能とする。
【解決手段】駅の出入り口とホーム間、異なるホーム間バリアフリー経路を1つのリンクとして扱い、そのリンク上に設けられた誘導案内ポイント付近に接近した場合、当該誘導ポイント周辺光景の実画像情報を表示し、利用者が当該誘導ポイントに到着し、確認操作を行った時点で自車位置を誘導ポイントに設定補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子の利用者が介助無で目的地まで移動することを補助するナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車椅子用のバリアフリールートを案内するナビゲーション装置は、駅構内などGPSが受信できない環境では自車位置の検知精度が悪いため実用化されたものはない。

【0003】
この自車位置精度の問題を解決するために、駅構内の主要な場所、たとえばエレベータの出入り口、スロープの出入り口等に位置情報を発信する無線装置を設け、この位置情報に基づき自社位置を補正し、自社位置の精度を向上させることにより構内でのバリアフリールートを案内するナビゲーション装置が提案されている(特許3841401、特許4041100)。しかし、構内に位置情報送信機を多数設置する必要があり、また、その電波による位置情報も一部の駅構内だけではなく、本装置の利用者が使用する可能性のある種々の公共交通機関、公共施設などでも統一された通信プトロコルにて提供されないと実用性がないため、非常にコストがかかり実現性が低いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許 3841401
【特許文献2】特許 4041100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、駅などのGPSが受信できない場所でバリアフリー案内する場合、車速センサ、磁気センサ、ジャイロセンサなどの安価なセンサで自車位置の精度が出ない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車位置の特定方法として、少なくともバリアフリールート上の主要なポイントにおいて、そのポイントを特定できる画像情報等を提供することにより、利用者がバリアフリールート上の位置を確認すると同時に自車位置を特定する方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のナビゲーション装置は、駅構内等のGPSが受信不可能な場所において、案内ルート上に位置情報を提供する無線装置等の設備を持たずに自車位置の精度を向上が可能なため、低コストでバリアフリー案内を実現できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は駅構内のバリアフリールートを3Dビューで表示した画面である。
【図2】図2は案内ポイントでの確認用実映像と案内内容、位置確認を行う表示画面である。
【図3】図3は鉄道等の交通機関に乗車したときの表示画面である。
【図4】図4は本装置のシステム構成を示したものである。
【図5】図5は自車位置を検知し、自車位置に応じて構内、車内、屋外での各誘導画面、自車位置表示画面で表示を行う処理のフローである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
駅などのGPSが受信不可能な構内において、位置を検出する手段として車速センサ、ジャイロセンサ等を用いた自立航法のみで実現するために、利用者への適切な情報提供と利用者による位置確認による方法で実現した。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明のナビゲーション装置の1実施例であって、駅の構内図を3D鳥瞰図で表示している。
利用者は目的地を設定し経路探索を行うことにより、現在地から目的地までの公共交通機関等を用いたバリアフリー経路を探索することができる。
この場合、屋外から駅構内への入り、ホームまでバリアフリー経路、乗り換え駅での降車ホームから乗換路線の乗車ホームまでの経路は事前にデータとして保有しておくことにより一つの経路リンクとして扱うことができる。
経路探索を行い、経路案内に基づき移動し、屋外から駅への侵入時点、あるいは、電車降車時点で駅構内図に切り替わる。
屋外から駅構内に入った時は現在位置、および、GPS信号の受信変化により検知すると、駅の構内図が表示される。
電車降車時点では、利用者が電車降車時点で降車駅確認画面にて降車駅を確認することにより表示される。
この中で1は案内経路、2は誘導案内ポイント、3は自車位置マークである。
【0011】
図2は構内における誘導ポイントでの案内画面である。
4の誘導ポイントでの案内画面で、5は誘導ポイントにおける実映像画面、6は誘導ポイントにおける案内内容をテキストで表示したもの、7は確認用スイッチである。
5と同じ景色が確認できた段階で7の確認用スイッチにタッチすることにより、誘導ポイントに到着したことを確認できる。
なお、誘導ポイントがホーム上の乗車口の場合、電車等の車両に車いすスペースがある乗車口を案内する機能、ホームと電車等の車両とのすきま、段差が規定値以下の場所を案内する機能を持たせても良い。この場合、規定値は車いすが乗り越え可能なすきま、段差に設定しておくことで安全に乗車ができる。
【0012】
図3は車内における路線図と降車駅を示す表示画面である。
構内図の乗車ホーム誘導ポイントでの案内画面で所定のホーム位置に来たことを確認する確認用スイッチにタッチすることにより本画面に切り替わる。
この画面で8は乗車したことを確認するためのスイッチ、9は降車時にこれを確認するためのスイッチ、10は始点となる乗車駅名、11は乗車終点となる降車駅名を表している。
電車が屋外を走行する場合はGPS信号の受信結果に基づき、電車の現在位置が路線図のバー上に表示される。
この図では電車が台場駅付近にいることを示している。
降車駅に到着時に降車確認スイッチにタッチすることにより、降車駅の構内案内図に切り替わる。
【0013】
図4は本ナビゲーション装置のシステム構成を示したものである。
15プロセッサは17GPS受信機、18ジャイロセンサ、19車速信号に基づき自車位置の計算とその結果より16ロケータデータを用いたマップマッチング、自車位置と16表示用地図データを用いて13表示器に地図および自車位置を描画表示、タッチスイッチ操作入力により目的地が設定されると、16経路データベースを用いてバリアフリー最適経路を算出、案内を開始すると16誘導データベースを用いてバリアフリー経路誘導案内を行う処理を行う。
16バリアフリー表示・ロケータ・経路・誘導用データベースは歩道、スロープ、エスカレータ、段差、階段、駅構内の乗換用ルート、公共交通機関の路線、ホーム乗車口のホームと車両間段差等を記憶させたメモリー媒体である。
【0014】
図5は自車位置をGPS、ジャイロ、車速センサ信号に基づいて算出し、その結果と現在の誘導状況に応じて案内画面、自車位置表示を行う処理フローである。
本実施例では自車位置は車速パルスが入力されるごとに、GPS、ジャイロの信号を使用して自車位置を計算する。
また、駅構内等GPSが受信できない場合は自車位置の計算と同時にジャイロ、車速信号の規定の誤差から現時点での誤差を計算し、その結果を自車位置が存在する可能性として自車マークの大きさを誤差量に応じて変えている。
n時点での誤差はたとえば下記で計算される。
En=(Ejn**2+Esn**2)**1/2 ここでEjnはn時点でのジャイロの誤差、Esnはn時点での車速信号の誤差である。
また、自車位置から誘導ポイントまでの距離が(Lp+En)以下になると、その誘導ポイントの案内画面に切り替わる。
ここで、Lpは規定値で、たとえば5m等に設定し少なくとも誘導ポイントの5m手前で案内画面を表示するよう設定する。
誘導ポイントの案内画面で表示された画像と走行している場所の周辺風景が一致した時点で確認スイッチにタッチすると、その誘導ポイントを現在位置として再設定し、自車位置を計算する。


【符号の説明】
【0015】
1 駅構内での乗換時のバリアフリー経路
2 誘導ポイント
3 自車位置マーク
4 実映像表示中の誘導ポイント
5 誘導ポイント周辺の実映像
6 誘導ポイントにおける案内情報
7 確認スイッチ
8 乗車確認スイッチ
9 降車確認スイッチ
10 乗車駅名表示
11 降車駅名表示
12 ナビゲーション表示・処理部
13 表示器
14 タッチスイッチ
15 信号、データ、描画処理用プロセッサ
16 バリアフリー表示・ロケータ・誘導用データベース
17 GPS受信機
18 ジャイロセンサ
10 車速センサ

【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明では、駅構内等での乗換時のバリアフリー経路案内として、既に車両用ナビゲーションで使用されているスタンドアロンの自車位置検知方式を利用し、誘導ポイントでの実映像による特徴ある周辺情報の提供を行い、利用者はその映像を見ながら誘導ポイントを通過したことを容易に確認できるとともに、確認スイッチにより自車位置の補正ができるため、GPSの受信できない構内でも安価にバリアフリー経路案内が可能となる。
本装置は、電動車いすだけでなく、電動の駆動機構を有しない車いすであっても、車速を検知できるセンサーとして前後加速度センサ、あるいは、車輪の回転センサ、および、ジャイロセンサを保有することにより実現可能であり、車いす利用者にとって公共交通機関を利用して外出をするための有用かつ支援となる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車いすで移動する場合に目的地までの走行可能な経路を検索、誘導案内するバリアフリー経路案内機能において、駅等の構内での誘導ポイント周辺風景を実映像で表示する機能、誘導ポイントの実映像が表示された画面で自車位置の確認をしたことを入力する手段、自車位置の確認行為がされた時、自車の現在位置を誘導ポイントの位置に設定する手段を有することを特徴とする車いす用ナビゲーション装置。
【請求項2】
駅等の構内で3D表示で構内の誘導案内経路全体を表示する機能を有する第1項のナビゲーション装置。
【請求項3】
自車位置検知としてGPS、および、自立航法の検知機能を有し、GPSが受信不可能な場合に自立航法の誤差を算出し、その誤差を3D表示した駅等の構内表示のスケールに合わせて表示することを特徴とした第1項、第2項のナビゲーション装置。
【請求項4】
ホームでの誘導ポイントでの案内情報として、車いす対応車両の乗車口を案内することを特徴とする第1〜3項のナビゲーション装置。
【請求項5】
ホームでの誘導ポイントでの案内情報として、車両とホームとの距離が規定値以下の乗車口を案内することを特徴とする第1〜4項のナビゲーション装置。
【請求項6】
駅構内等の交通手段乗換時の駅入り口からホームまでのバリアフリー経路、降車ホームから乗車ホームまでのバリアフリー経路、降車ホームから駅出口までのバリアフリー経路を1つの経路リンクとして取り扱うことを特徴とする第1〜5項までのナビゲーション装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−103146(P2012−103146A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252510(P2010−252510)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(710001030)有限会社クエストエンジニアリング (4)
【Fターム(参考)】