説明

車軸駆動装置搭載車両

【課題】車輪に設けるモータユニットを小形軽量化する。
【解決手段】本発明は、駆動輪毎に設けられるモータによって駆動輪を駆動する車軸駆動装置搭載車両において、モータは、駆動輪(50)の中心軸と連結される駆動ギア(12)と、駆動ギア(12)と噛み合うように設けられ、駆動ギア(12)との噛合部に供給される油圧によって駆動ギア(12)とともに回転駆動される従動ギア(13)とを備える油圧ギアモータ(1)であり、従動ギア(13)は駆動ギア(12)の周りに2つ以上設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車軸駆動装置搭載車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動車軸毎にモータユニットを設けるホイールインモータ型車両が知られている。特許文献1には、モータユニットとして油圧モータを用いて、車両の駆動車軸である後輪にそれぞれ油圧モータを設ける構成が記載されている。
【特許文献1】特開2005−28914公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし上記従来の技術では、油圧モータの出力ギアからファイナルギアへ減速しながら駆動力を駆動車軸へと伝達するので、減速するためのギアトレーンが必要となり、その分左右の駆動車輪間のスペースが狭くなり車室空間が狭くなる。
【0004】
また、上記ギアトレーンによって車輪のバネ下荷重が重くなるので、車両の乗り心地、路面追従性、操舵応答性、発進加速性及びブレーキ性の悪化を招く。
【0005】
本発明は、車輪に設けるモータユニットを小形軽量化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、駆動輪毎に設けられるモータによって駆動輪を駆動する車軸駆動装置搭載車両において、モータは、駆動輪の中心軸と連結される駆動ギアと、駆動ギアと噛み合うように設けられ、駆動ギアとの噛合部に供給される油圧によって駆動ギアとともに回転駆動される従動ギアとを備える油圧ギアモータであり、従動ギアは駆動ギアの周りに2つ以上設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、油圧ギアモータにおいて従動ギアを駆動ギアの周りに2つ以上設けるので、モータの吐出し容積を増大させることができ、減速機構を設けることなく大きな駆動力を発生させることができる。よって、モータを小形化できるので駆動輪の内部のスペース効率を向上させることができるとともに、軽量化できるので車両のバネ下重量を低減して走行安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下では図面等を参照して本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は本実施形態における車軸駆動装置搭載車両の構成を示す概略構成図である。なお、図1中左側が車両前方である。
【0010】
本実施形態の車軸駆動装置搭載車両は、駆動源としてエンジン30とモータ1とを備える全輪駆動車両である。エンジン30は、車両の前方に搭載されて前輪を駆動する。モータ1は後輪50の左右輪にそれぞれ設けられる油圧モータ1であり、供給される油圧に応じて回転駆動して後輪50を駆動する。エンジン30の近傍にはオイルポンプ31が設けられ、オイルポンプ31はエンジン30によって駆動されて油圧を各油圧モータ1へ圧送する。オイルポンプ31と油圧モータ1との間にはバルブユニットが設けられ、バルブユニットによって油圧の圧力や流量を制御する。バルブユニットにおいて制御された油圧は、各油圧モータ1へ高圧配管及び低圧配管によって供給される。なお、バルブユニットの構成については後述する。
【0011】
次に図2〜図4を参照しながら後輪50に設けられる油圧モータ1の構造について説明する。図2は、油圧モータを取り付けた状態における後輪全体の断面図であり、図中右側が車両の外側、左側が他方の車輪側である。図3は、油圧モータを軸方向から見た断面図である。図4は、油圧モータの分解斜視図である。
【0012】
後輪50はタイヤ53が取り付けられるリム2の内側にブレーキ3が内蔵され、ブレーキ3に近接して油圧モータ1のギアボックス7がボルト4によって締結される。ギアボックス7の内部には、中心に駆動ギア12が配設され、駆動ギア12の外周部に等角度で3つの従動ギア13が駆動ギア12と噛合するように配設される。駆動ギア12はギアボックス7内に設けられる軸受14とギアボックス7を密封する蓋16に内設される軸受15とによって回転可能に支持される。また駆動ギア12は、中心付近が軸方向に延出しており、この軸部21がギアボックス7の開口部59から外側へと延出するように設けられる。軸部21は、後輪50の中心軸であるブレーキドラム3に固着した連結軸にスプライン結合し、先端部はナット27で固定される。
【0013】
駆動ギア12及び各従動ギア13は、ギアボックス7の内部で駆動ギア12及び各従動ギア13の4軸分を一体的に形成した軸受板9、17によって両側から軸支するように挟持される。軸受板17にはギアボックス7との接触面に溝18が形成されてシール19が装着される。また、ギアボックス7と蓋16との間にはガスケット20が介装されており、軸受板9、ギアボックス7、蓋16及びガスケット20によって油室11が画成され、この油室11内に駆動ギア12の軸部21を中心として板形状の弾性体10が介在される。油室11への油は蓋16に設けられる油口22から導入される。軸受板9及び弾性体10は、油口22から導入される油圧によって駆動ギア12を軸方向に付勢するプレッシャプレート36として機能する。
【0014】
駆動ギア12の中心には、軸方向に蓋16側の端部からギアボックス7の開口部59付近まで油路54が設けられ、この油路54と、軸受板17、駆動ギア12及びギアボックス7の間にできる隙間とを連通する軸方向に垂直な油路55がさらに設けられる。ブッシュ28はギアボックス7と軸受14との間に介装され、シール29はギアボックス7と駆動ギア12の軸部21間に装着される。また、蓋16には油路54と連通する油路56が軸に垂直方向に設けられる。
【0015】
ギアボックス7の内面形状は、駆動ギア12と3つの従動ギア13とが収装されるようにギアに沿った形状となっているが、駆動ギア12と従動ギア13との噛合部の両側には軸方向に凹部が形成されており、これにより駆動ギア12、従動ギア13及びギアボックス7の間に油室33a〜33fが画成される。すなわち、油室33a〜33fは1つの駆動ギア12と3つの従動ギア13との噛合部の両側に全部で6つ設けられることになる。
【0016】
ギアボックス7の上方の外側面には、油を油圧モータ1に導入する油口25と油圧モータ1から油を導出する油口26とが設けられ、油口25、26は互いに隣接する2つの油室33a、33bに連通する。
【0017】
次に図5、図6を参照しながらギアボックス7内の油路について説明する。図5はギアボックス内の油路を模式的に示す模式図である。図6はギアボックスの各種断面図であり、図6(a)は油路24においてギアボックスを軸に垂直方向に切った断面図、図6(b)は油路23においてギアボックスを軸に垂直方向に切った断面図、図6(c)は図6(a)、(b)におけるA−A’断面を示す断面図、図6(d)は図6(a)、(b)におけるB−B’断面を示す断面図をそれぞれ示す。
【0018】
油口25と連通する油室33aには、油口25から導入される油がギアボックス7内に流入する導入口5が設けられ、油口26と連通する油室33bには、油をギアボックス7内から油口26へと導出するための導出口6が設けられる。
【0019】
ギアボックス7の底面57である軸受板17が接する面よりさらに軸方向奥側には、開口部59の内周にわたって開口するリング状の油路23が凹設される。また、油路23のさらに軸方向奥側には、油路23と同様に開口部59の内周にわたって開口する油路23より大径のリング状の油路24が設けられる。ギアボックス7の開口部59にはブッシュ28が嵌合されるので、油路23及び油路24の開口部59側はいずれもブッシュ28によって閉塞される。
【0020】
ギアボックス7の底面57であって6つの油室33a〜33fに面する部分には3つの流入口5a、5c、5e及び3つの流出口6b、6d、6fが交互に設けられる。すなわち、油室33aに面する部分には流入口5a、油室33bに面する部分には流出口6b、油室33cに面する部分には流入口5c、油室33dに面する部分には流出口6d、油室33eに面する部分には流入口5e、油室33fに面する部分には流出口6fがそれぞれ設けられる。流入口5a、5c、5eはそれぞれ油路23と連通しており、流出口6b、6d、6fはそれぞれ油路24と連通している。
【0021】
流入口5a、5c、5e及び流出口6b、6d、6fはそれぞれギアボックス7の底面57から軸方向に穿設されて油路23又は油路24と連通する。流入口5a、5c、5eは断面が円形状、流出口6b、6d、6fは断面が半円形状となっており、さらに油路24は油路23より大径であるので、流出口6b、6d、6fはギアボックス7の底面57に対して油路24より手前にある油路23に連通することなく油路24と連通する。
【0022】
次に図7を参照しながら車両の油圧回路について説明する。図7は、本実施形態における車軸駆動装置搭載車両の油圧回路を示す回路図である。
【0023】
オイルポンプ31は2つの吐出し口31a、31bを有し、エンジン30によって駆動され加圧された油圧を左右の後輪50の油圧モータ1へ独立して圧送することで左右輪を独立に駆動制御することができる。また、車両の2輪駆動、ニュートラル位置、エンジン30の高回転及び高車速のそれぞれのモードに応じた信号指令に基づいて、プレッシャプレート36に付加される油圧を抜くことで後輪50の駆動を解除する。
【0024】
オイルポンプ31と油圧モータ1との間に設けられる手動切替え弁32は、通常のトルコンAT車のシフト操作レバーと連結され、中立位置ではオイルポンプ31から圧送される圧油をオイルタンク34に戻し、シフト操作レバーが中立位置からDレンジ又はRレンジに切替えられると後輪50の油圧モータ1に圧油が導かれ、車両の前進又は後進が行われる。また、後輪50が走行時にロックした場合には信号指令により圧油をオイルタンク34に戻す。
【0025】
油圧モータ1のプレッシャプレート36とオイルポンプ31との中間に設けられる空転制御弁35は、後輪50駆動の信号指令に基づいてオイルポンプ31からプレッシャプレート36へ圧油を導き、プレッシャプレート36に圧力を付加することで油圧モータ1が駆動される。このとき、後輪50の左右輪に同時に同圧油が導かれることで車両の発進直進性が保持される。また、車両の2輪駆動、エンジン30の高回転、高車速のそれぞれのモードに応じた信号指令に基づいて空転制御弁35の弁位置が切替り、プレッシャプレート36への圧油をオイルタンク34に戻して後輪50の駆動を解除する。
【0026】
オイルポンプ31に設けられるプレッシャプレート37と油圧モータ1のプレッシャプレート36との油路中間には圧力検出器38及び空転不可回避弁39が設けられる。空転制御弁35にバルブスティックなどの異常が生じて、プレッシャプレート36の圧力が抜けない異常状態のときには、フェールセーフとして、圧力検出器38の検知圧力に基づいて空転不可回避弁39を切替えてオイルポンプ31のプレッシャプレート37の圧力を抜いて、オイルポンプ31の駆動を停止させることで油圧モータ1への圧油の供給が停止され、油圧モータ1の駆動が停止する。
【0027】
オイルポンプ31と油圧モータ1との間の油路から分岐して駆動トルク制御弁40が並列に2つ設けられる。駆動トルク制御弁40は、車両の発進時に前輪駆動力の信号指令に基づいて後輪50の駆動トルクを制御するために、また後輪50の駆動トルクの上限を制御するために、オイルポンプ31から油圧モータ1へ供給される圧油の一部をオイルタンク34へ還流させるリリーフ弁として機能する。さらに、左右後輪50の駆動力差を解消する制御、及び車速の上昇に伴うフリクションの増大を抑制するため車速信号指令に基づいて後輪50の駆動トルクを低下させる制御を行う。
【0028】
2つの駆動トルク制御弁40の油路の間を接続するように設けられる異常検出器41は、駆動トルク制御弁40の何れかが異常を起こしたときに空転不可回避弁39に信号を送信して、弁を切替えさせることでオイルポンプ31のプレッシャプレート37の圧力を抜いて油圧モータ1による駆動を停止させる。
【0029】
次に本実施形態における車軸駆動装置搭載車両の作用について説明する。エンジン30で駆動するオイルポンプ31から吐出された圧油は、手動切替え弁32を経由して油圧モータ1のギアボックス7の油口25へと導入され、導入口5から油室33aへと導入される。さらに、油室33a内の圧油はギアボックス7の底面57に設けられる流入口5aから油路23へと流入し、油路23と連通する他の2つの流入口5c、5eから油室33c、33eへと圧送される。
【0030】
これにより、3つの油室33a、33c、33eから、駆動ギア12とギアボックス7との間隙51、及び従動ギア13とギアボックス7との間隙52にそれぞれ油が圧送されることで、駆動ギア12及び従動ギア13が回転駆動されて後輪50が駆動される。
【0031】
駆動ギア12とギアボックス7との間隙51、及び従動ギア13とギアボックス7との間隙52の圧油は、ギアボックス7の内面に沿って他方の3つの油室33b、33d、33fへと流入し、ギアボックス7の底面57に設けられる流出口6d、6fから油路24へと流入する。さらに油路24から流出口6bを介して油室33bへ流入した油は流出口6から流出して油口26から手動切替え弁32を経由してオイルタンク34へと還流する。
【0032】
さらに、油圧モータ1の軸受板9と蓋16との間の油室11へ供給される圧油は、オイルポンプ31から空転制御弁35を経由して蓋16の油口22から流入される。これにより、軸受板9が軸方向に可動することで駆動ギア12と従動ギア13が軸方向に押しつけられ、駆動ギア12及び従動ギア13が軸受板17を介してギアボックス7に軸方向に押しつけられる。従って、油口25から油室33aに導入される圧油が駆動ギア12及び従動ギア13と軸受板9、17との間から漏出することなく、ギア側面に流れることで駆動ギア12及び従動ギア13を駆動することができる。
【0033】
一方、油圧モータ1の軸受板9と蓋16との間の油室11への圧油の供給を停止すると、油室11の圧力が低下するので軸受板9から駆動ギア12及び従動ギア13への押しつけ力がなくなる。これにより、油口25から油室33aに導入される圧油が駆動ギア12及び従動ギア13と軸受板9、17との間にできた隙間から漏出して、ギア側面にほとんど流れないので駆動ギア12及び従動ギア13の駆動が停止される。
【0034】
この場合であっても、軸受板9は弾性体10の付勢力によりわずかに駆動ギア12及び従動ギア13側に押しつけられているので、再度油室11へ圧油が供給されたときに軸受板9の移動量が小さくなり、油圧モータ1は迅速に駆動力を発生する。
【0035】
なお、蓋16の間の油室11からわずかに漏出する油は、蓋16に設けられる油路56へ導かれ、駆動ギア12及び従動ギア13から軸受14側に漏出した油は駆動ギア12の軸部21に設けた油路54を介して油路56へ導かれ、オイルタンク34へと還流する。
【0036】
以上のように本実施形態では、油圧モータ1において従動ギア13を駆動ギア12の周りに3つ設けるので、油圧モータ1の吐出し容積を増大させることができ、減速機構を設けることなく大きな駆動力を発生させることができる。よって、油圧モータ1を小形化できるので駆動輪50の内部のスペース効率を向上させることができるとともに、軽量化できるので車両のバネ下重量を低減して車両の乗り心地、路面追従性、操舵応答性、発進加速性及びブレーキ性を向上させることができる。
【0037】
また、油圧モータ1は駆動輪50のリム2の内部に収容されるので、各駆動輪50を小形化することができ、駆動輪50間のスペースを広くとることができる。
【0038】
さらに、駆動ギア12の軸部21がギアボックス7から延出する部分における軸部21の外周部分に油路23、24を設けるので、ギアボックス7内に油を導入する油口25及びギアボックス7から油を導出する油口26をそれぞれ1つずつ設けるだけで、駆動ギア12及び従動ギア13の全ての噛合部に油を供給し、さらに回収することができる。よって、油圧配管を簡素化できるので油圧モータ1を小形化することができ、車室空間を確保することができる。また、配管接続部が少なくなることにより圧力損失が低減し、油圧モータ1の効率を向上させることができる。さらに、配管のコストを低減でき保守性を向上させることができる。
【0039】
さらに、軸受板9を4軸一体形状とし、軸受板に油圧をかけて駆動ギア12側に押しつけることで駆動ギア12及び従動ギア13を回転駆動させるので、車両の駆動力が必要ないときは軸受板9へ付加する油圧力を抜くことで、駆動ギア12及び従動ギア13に油圧を供給していても油圧モータ1による駆動力の発生を停止させることができる。よって、駆動力を断続するクラッチ締結機構が不要となるので、油圧モータ1の構造を簡素化することができる。
【0040】
さらに、弾性体10によって軸受板9を常に駆動ギア12側へと付勢するので、プレッシャプレートへ油圧が供給されていないときでも軸受板9と駆動ギア12との距離を小さく保つことができ、プレッシャプレート36へ油圧を供給したときの軸受板9の移動量を小さくでき、油圧モータ1から駆動力を発生させるときの始動性を向上させることができる。
【0041】
(第2実施形態)
本実施形態の車軸駆動装置搭載車両は第1実施形態と基本的な構成は同一であり、ギアボックス7内の油路が一部異なる。図8は、本実施形態におけるギアボックス内の油路を模式的に示す模式図である。図9はギアボックスの各種断面図であり、図9(a)は油路においてギアボックスを軸に垂直方向に切った断面図、図9(b)は油路においてギアボックスを軸に垂直方向に切った断面図、図9(c)は図8(a)、(b)におけるC−C’断面を示す断面図である。
【0042】
本実施形態では、油路23及び油路24は同一の径であり、第1実施形態よりも小径である。流入口5a、5c、5eは、油路23の深さまで軸方向に穿設され、最深部からさらに駆動ギア12の軸に垂直方向に穿設されることで流路23と連通する。また、同様に流出口6b、6d、6fは、油路24の深さまで軸方向に穿設され、最深部からさらに駆動ギア12の軸に垂直方向に穿設されることで流路24と連通する。
【0043】
なお、流入口5a、5c、5e及び流出口6b、6d、6fの、駆動ギア12の軸に垂直方向に穿設される油路58はいずれもギアボックス7の外部からドリルなどで穿設されるので、この油路のギアボックス7の外周面に開口する部分に盲栓42を嵌めることで開口部分は閉塞される。
【0044】
以上のように本実施形態では、第1実施形態と同様に、油圧モータ1において従動ギア13を駆動ギア12の周りに3つ設けるので、油圧モータ1の吐出し容積を増大させることができ、減速機構を設けることなく大きな駆動力を発生させることができる。よって、油圧モータ1を小形化できるので駆動輪50の内部のスペース効率を向上させることができるとともに、軽量化できるので車両のバネ下重量を低減して車両の乗り心地、路面追従性、操舵応答性、発進加速性及びブレーキ性を向上させることができる。
【0045】
さらに、油路23、24の径を小さくして油路23及び油路24の面積を小さくするので、油圧モータ1の駆動力によってギアボックス7にかかる負荷に対する強度を強くすることができる。
【0046】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、油圧モータ1のギア数は4枚であるが、3枚(従動ギア13が2枚)であってもよい。これにより、ギアの枚数が少ない分、機械効率と容積効率が向上するとともに、コストを低減することができる。
【0048】
また、ギア数は5枚(従動ギア13が4枚)であってもよい。これにより、2枚ギアと同じギア諸元であれば押しのけ容積は4倍となるので油圧モータ1を小形化でき、車軸間距離と車室空間を拡大することができるとともに、駆動輪の舵角を大きくとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態における車軸駆動装置搭載車両の構成を示す概略構成図である。
【図2】油圧モータを取り付けた状態における後輪全体の断面図である。
【図3】油圧モータを軸方向から見た断面図である。
【図4】油圧モータの分解斜視図である。
【図5】ギアボックス内の油路を模式的に示す模式図である。
【図6】ギアボックスの各種断面図である。
【図7】第1実施形態における車軸駆動装置搭載車両の油圧回路を示す回路図である。
【図8】第2実施形態におけるギアボックス内の油路を模式的に示す模式図である。
【図9】第2実施形態におけるギアボックスの各種断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 油圧モータ
2 リム
7 ギアボックス
9 軸受板
10 弾性体
12 駆動ギア
13 従動ギア
21 軸部
23 油路
24 油路
25 油口
50 駆動輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪毎に設けられるモータによって前記駆動輪を駆動する車軸駆動装置搭載車両において、
前記モータは、前記駆動輪の中心軸と連結される駆動ギアと、前記駆動ギアと噛み合うように設けられ、前記駆動ギアとの噛合部に供給される油圧によって前記駆動ギアとともに回転駆動される従動ギアとを備える油圧ギアモータであり、
前記従動ギアは前記駆動ギアの周りに2つ以上設けられることを特徴とする車軸駆動装置搭載車両。
【請求項2】
前記従動ギアは3つであることを特徴とする請求項1に記載の車軸駆動装置搭載車両。
【請求項3】
前記モータは前記駆動輪のリムの内部に収容されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車軸駆動装置搭載車両。
【請求項4】
前記モータは前記駆動ギア及び前記従動ギアを収装するギアボックスを有し、
前記駆動ギアの軸部は前記ギアボックスから延出して前記駆動輪の中心軸と連結し、
前記ギアボックスは、前記モータに供給される油圧を前記ギアボックス内に導入する油口と、前記駆動ギアの軸部が前記ギアボックスから延出する部分における前記軸部の外周に形成され、前記駆動ギアと前記各従動ギアとのそれぞれの噛合部と連通する油路とを有し、
前記油口から導入される油圧は前記油路を介して前記駆動ギアと前記各従動ギアとのそれぞれの噛合部に供給されることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の車軸駆動装置搭載車両。
【請求項5】
前記駆動ギア及び前記従動ギアの軸受板を一体形状として軸方向に移動可能に設け、
前記軸受板に油圧をかけて前記軸受板を前記駆動ギア及び前記従動ギアに押しつけることで、前記駆動ギアと前記従動ギアとの噛合部に供給される油圧によって前記駆動ギア及び前記従動ギアを回転駆動することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の車軸駆動装置搭載車両。
【請求項6】
油圧の供給にかかわらず前記軸受板を前記駆動ギア側へ付勢する弾性部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の車軸駆動装置搭載車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−207698(P2008−207698A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46991(P2007−46991)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】