説明

車載機器用制御装置

【課題】ユーザに対応して車載機器の動作の設定を自動的に行うにあたってコストを低減しつつユーザの負担を軽減する上で有利な車載機器用制御装置を提供する。
【解決手段】音質特徴量検出手段22は、音声入力部14から供給される運転者の音声データに基づいて、第1、第2特徴量を検出する。イントネーション特徴量検出手段24は、音声入力部14から供給される運転者の音声データに基づいて音声の第3特徴量を検出する。運転者類別手段26は、音質特徴量検出手段22およびイントネーション特徴量検出手段24によって検出された音声の第1、第2、第3特徴量に基づいて運転者を類別する。動作設定手段28は、運転者類別手段26により運転者が類別されると、該類別された運転者に対応する設定データをデータベース20から読み出すと共に、該読み出した設定データに基づいて車載機器200の動作を自動的に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を運転する運転者を音声に基づいて類別し、複数のユーザが利用可能な共用車両における車載機器を、類別したユーザに応じて自動的に設定する車載機器用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車の排気ガスが地球環境に与える地球温暖化などの悪影響を軽減する一手法として車を複数のユーザで共有するカーシェアリングシステムが注目されている。
このようなカーシェアリングシステムでは、1台の車を複数のユーザが利用時間を異ならせて使用するものであり、車の効率的な利用と排気ガス量の削減に寄与するものである。
このカーシェアリングシステムにより、1台の車を、利用時間を異ならせて使用するユーザは、例えば特定のグループを構成する複数の個人である。
したがって、車を利用しようとするユーザは、自分にとって快適な運転環境を実現するため、車両の各車載機器の動作を自分にとって最適な状態に調整して設定することになる。
このような車載機器の動作の設定内容としては、例えば、運転座席の前後の位置、上下の高さ、エアコンの温度や風量、サイドミラーの視野範囲、ミュージックサーバの動作、ナビゲーション装置の動作、音声ガイダンスのアナウンスの動作などが挙げられる。
カーシェアリングシステムにおいては、このような車載機器の動作の設定は、快適かつ安全な運転を実現するためにユーザが車を利用する際には必ず行うが、ユーザにとって各車載機器の動作を設定する操作は煩わしく負担となる不都合がある。
そこで、顔認識、声紋認識、指紋認識、静脈認識などの手法により個人認証を精度よく行い、車を使用するユーザを精度よく認識し識別することで、車を使用するユーザごとの嗜好、特性に応じて車載機器の動作の設定を自動的に行う装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−512969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来装置では、車を使用するユーザを特定するための顔認識、声紋認識、指紋認識、静脈認識などの各種認識システムが複雑化しコストが増大する不利がある。また、個人認証を行うために種々の認証データを事前に登録する操作に加えて、個人認証を行う毎に認証のための操作が必要となることから、ユーザの負担を軽減する上で十分とはいえないものであった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ユーザに対応して車載機器の動作の設定を自動的に行うにあたってコストを低減しつつユーザの負担を軽減する上で有利な車載機器用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、車両に搭載された車載機器の動作の設定を行う車載機器用制御装置であって、運転者が前記車載機器に対して設定する前記動作の設定データを検出する設定検出手段と、前記運転者の音声から音声データを生成する音声データ生成手段と、前記音声データから前記音声の特徴量を検出する音声特徴量検出手段と、前記音声の特徴量に基づいて前記運転者を類別する運転者類別手段と、前記運転者類別手段によって類別された運転者と、前記設定検出手段で検出された前記設定データとを関連付けて記憶する設定データ記憶手段と、前記運転者類別手段により運転者が類別されると、該類別された運転者に対応する設定データを前記設定データ記憶手段から読み出すと共に、該読み出した前記設定データに基づいて前記車載機器の動作を自動的に設定する動作設定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、運転者の音声の特徴量に基づいて運転者を類別し、運転者が類別されると、該類別された運転者に対応する設定データを記憶手段から読み出して車載機器の動作を自動的に設定するので、従来のように複雑で精度の高い個人認証を行う必要が無く、コストを低減しつつユーザの負担を軽減する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態である車載機器用制御装置100の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は第1データテーブル20Aの説明図、(b)は第2データテーブル20Bの説明図、(c)は第3データテーブル20Cの説明図である。
【図3】第4データテーブル20Dの説明図である。
【図4】(a)は第5データテーブル20Eの説明図、(b)は第6データテーブル20Fの説明図である。
【図5】実施の形態の車載機器用制御装置100の動作を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態の車載機器用制御装置100のブロック図である。
【図7】(a)、(b)は性別の尤もらしさを示す尤度と、頻度とを関連付けた尤度分布データを示す説明図である。
【図8】(a)、(b)は年齢の尤もらしさを示す尤度と、頻度とを関連付けた尤度分布データを示す説明図である。
【図9】第3の実施の形態の車載機器用制御装置100のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に、本発明の第1の実施の形態について図1乃至図5を参照して説明する。
車載機器用制御装置100は、車両に搭載された車載機器200の動作の設定を自動的に行うものである。
【0009】
車載機器200は、運転座席202、エアコン204、オーディオ装置206、ナビゲーション装置208などを含む。
車載機器200は、運転者が車載機器200の動作を設定する操作を行うと、言い換えると、運転者が自分の嗜好に合わせて車載機器200を操作し、あるいは、調整すると、車載機器200の動作の設定データを検出する検出部を有している。
例えば、運転座席202は、運転座席の前後位置を示す座席前後位置データ、座席の高さ位置を示す座席高さ位置データを検出する検出部202Aを有している。
エアコン204は、温度、風量を調整するための温度、風量操作スイッチ27と、このスイッチ27が操作されるとその操作に基づいてエアコン204の動作の設定データを検出する検出部204Aとを有している。
オーディオ装置206は、音声を調整するための音声調整ダイヤル26を有しているが、このダイヤル26が操作されるとその操作に基づいてオーディオ装置206の動作の設定データを検出する検出部206Aとを有している。
ナビゲーション装置208は、種々の操作を入力するためのタッチパネルと、このタッチパネルが操作されるとその操作に基づいてナビゲーション装置208の動作の設定データを検出する検出部208Aとを有している。
これら検出部202A、204A、206A、208Aは、運転者が車載機器200に対して設定する動作の設定データを検出する設定検出手段を構成している。
【0010】
車載機器用制御装置100は、ECU10、共通バス12、音声入力部14、操作情報入力部16、メモリ18、データべース20、制御指令出力部17、音声出力部24、表示制御部26、マイクロフォン28、スピーカー30、ディスプレイ32、音声認識部34、音声合成部36などを含んで構成されている。
【0011】
ECU10は、車両の各部を制御するコンピュータの中央処理装置である。
共通バス12は、ECU10と、音声入力部14、操作情報入力部16、メモリ18、データべース20、制御指令出力部17、音声出力部24、表示制御部26、音声認識部34、音声合成部36とを接続する情報伝送のための通信路である。
【0012】
音声入力部14は、マイクロフォン28において音声から変換された電気信号をデジタルデータにA/D変換するA/Dコンバータを備えている。
したがって、マイクロフォン28および音声入力部14は、運転者の音声から音声データを生成する音声データ生成手段を構成している。
音声認識部34は、音声入力部14からの音声データに基づいて運転者が発生した音声による車載装置200に対する操作指令を音声認識し、その認識結果を後述する音声制御手段29に供給するものである。
【0013】
音声出力部24は、音声合成部36から供給されるデジタルデータとしての音声データをアナログ信号にD/A変換するD/Aコンバータを備えている。
スピーカー30は、音声出力部24から供給されるアナログ信号を音声として発生するものである。
音声合成部36は、後述する音声制御手段29から供給される案内用データに基づいて音声データを生成し音声出力部24に供給するものである。
【0014】
操作情報入力部16は、各検出部202A、204A、206A、208Aで検出された車載機器200の動作の設定データを収集し取り込む入出力部(I/O)およびインターフェース(I/F)と、ECU10との間で各車載機器の設定データを通信するCAN通信手段とを含んで構成されている。
【0015】
制御指令出力部17は、後述する動作設定手段28および音声制御手段29から供給される制御データに基づいて各車載機器200に制御指令を与えるものである。
【0016】
メモリ18は、ECU10が実行する制御プログラムを格納するROM、ECU10がワークエリアとして使用するRAMを含んで構成されている。
メモリ18に格納される制御プログラムは、ECU10が実行することにより、音質特徴量検出手段22、イントネーション特徴量検出手段24、運転者類別手段26、動作設定手段28、音声制御手段29として機能するものであり、後で詳述する。
データべース20は、後述するデータテーブルを格納するものであり、後で詳述する。
表示制御部26は、ECU10から共通バス12を介して供給される画像データをディスプレイ32に表示させるものである。
【0017】
次に、メモリ18の制御プログラムがECU10によって実行されることで実現される、音質特徴量検出手段22、イントネーション特徴量検出手段24、運転者類別手段26、動作設定手段28、音声制御手段29について説明する。
【0018】
音質特徴量検出手段22は、音声入力部14から供給される運転者の音声データに基づいて、基本周波数(発声者の声帯の振動数)の平均値と、その時間的な変動を求めることで音声を定量化(quantization)することで音声の第1特徴量を検出するものである。
特定の単語とは、例えば、“ア”、“イ”、“ウ”、“エ”、“オ”などの母音である。
この定量化された母音についての基本周波数の平均値とその時間的な変動(標準偏差)から、男性と女性の判別が可能になる。
【0019】
音質特徴量検出手段22は、さらに、“ア”、“イ”、“ウ”、“エ”、“オ”などの母音を特徴付けるホルマント、例えば、母音“ア”を特徴付ける優勢な周波数成分(第1ホルマント、第2ホルマント……)を抽出することで音声を定量化することで音声の第2特徴量を検出するものである。
なお、第1ホルマント値は例えば母音“ア”を特徴付ける抽出された優勢な周波数成分のうちで最も低い周波数成分、第2ホルマント値は母音“ア”を特徴付ける抽出された優勢な周波数成分のうちで第1ホルマント値の次に低い周波数成分である。
この母音についてのホルマントから、判別した男性あるいは女性について、類似するホルマントが抽出される発声者については同一人物であるという概略的な分類判定が可能になる。
つまり、男性、女性の区別だけでなく男性であれば男性A、男性Bなどのようにさらに概略的に限られた範囲で数種類に類別(classification)することが可能になる。
【0020】
本実施の形態では、車両の運転者は不特定多数ではなく、特定の範囲のユーザであり、具体的には、家族、あるいは、会社内の限られた社員などのように少人数である場合を想定している。
すなわち、車両の運転者が不特定多数であるときには車両の運転者のそれぞれに固有の識別情報としてのIDを割り当てると共に、各ユーザをIDで識別する必要がある。
これに対して本実施の形態では、車両のユーザが特定の少人数の範囲に限定されることから大雑把に類別し、男性あるいは女性の区別と、男性であれば男性Aであるか男性Bであるかなどのようにさらに概略的に限られた範囲で数種類に類別するだけで足りる。
【0021】
イントネーション特徴量検出手段24は、音声入力部14から供給される運転者の音声データに基づいて、音声のイントネーションを定量化することで音声の第3特徴量(イントネーション情報)を検出するものである。
本実施の形態では、音質特徴量検出手段22およびイントネーション特徴量検出手段24が、音声データから音声の特徴量を検出する音声特徴量検出手段を構成している。
【0022】
運転者類別手段26は、音質特徴量検出手段22およびイントネーション特徴量検出手段24によって検出された音声の第1、第2、第3特徴量に基づいて運転者を類別するものである。
より詳細には、運転者類別手段26は、第1、第2、第3特徴量から、運転者が男性であるか女性であるか、さらに男性であれば男性A、男性Bのうちの何れに類別されるかなどの概略的な類別を行う。
【0023】
動作設定手段28は、運転者類別手段26により運転者が類別されると、該類別された運転者に対応する設定データをデータベース20(第5、第6データテーブル20E、20F)から読み出すと共に、該読み出した設定データに基づいて車載機器200の動作を自動的に設定するものである。
本実施の形態では、動作設定手段28は、データベース20から読み出した設定データを制御データとして制御指令出力部17に供給し、制御指令出力部17は、受け取った設定データに基づいて車載機器200の動作を設定する。
【0024】
音声制御手段29は、音声認識部34から供給される操作指令の認識結果に基づいて所定の制御データを生成し、この制御データを制御指令出力部17を介して各車載機器200に供給することで車載機器200の制御を行う。
また、音声制御手段29は、案内用データを音声合成部36に供給する。
案内用データは、運転者が車載機器200を操作する際にその操作を案内する音声を音声合成部36から発生させるためのデータであり、また、運転者が音声によって車載機器200を操作する際に発声すべき内容を案内する音声を音声合成部36から発生させるためのデータである。
このように音声制御手段29が音声認識部34および音声合成部36と共に動作することにより、音声によって車載機器200の操作を行えるよう構成されている。
【0025】
図1に示すように、データべース20は、第1データテーブル20A、第2データテーブル20B、第3データテーブル20C、第4データテーブル20D、第5データテーブル20E、第6データテーブル20Fを格納している。
図2(a)は第1データテーブル20Aの説明図、(b)は第2データテーブル20Bの説明図、(c)は第3データテーブル20Cの説明図、図3は第4データテーブル20Dの説明図、図4(a)は第5データテーブル20Eの説明図、(b)は第6データテーブル20Fの説明図である。
【0026】
(第1データテーブル20A)
図2(a)に示す第1データテーブル20Aは、運転者類別手段26により発話者(運転者)が男性あるいは女性であるかを判定する際に利用される。
第1データテーブル20Aには、男性、女性それぞれに応じた例えば母音“ア”についての音声の基本周波数(声帯の振動数)の平均値とその変動範囲とが対応して格納されている。
すなわち、男性および女性のそれぞれに対応する第1特徴量が既知のデータとしてデータべース20に格納されている。
【0027】
(第2データテーブル20B)
図2(b)に示す第2データテーブル20Bは、発話者が男性であれば男性Aあるいは男性Bのうちの何れに類別されるかなどの概略的な類別を行う際に用いられる。
第2データテーブル20Bは、類別された発話者(A、B)と、発話者の音声が定量化されることで得られた第1ホルマント値および第2ホルマント値とが対応付けて格納される。
本実施の形態では、4人の発話者が車載機器用制御装置100を使用した場合について説明する。
第2データテーブル20Bは、4人の発話者それぞれ発話を行い、たとえば母音“ア”を特徴付ける優勢な周波数成分である第1ホルマント、第2ホルマントを抽出する音声の定量化を行うことで構築される。
すなわち、第1ホルマント値が周波数f11〜f12の範囲内であり、第2ホルマント値が周波数f21〜f22の範囲内である発話者はたとえばA、第1ホルマント値が周波数f13〜f14の範囲内であり、第2ホルマント値が周波数f23〜f24の範囲内である発話者はB、第1ホルマント値が周波数f15〜f16の範囲内であり、第2ホルマント値が周波数f25〜f26の範囲内である発話者はC、第1ホルマント値が周波数f17〜f18の範囲内であり、第2ホルマント値が周波数f27〜f28の範囲内である発話者はDとして、第1ホルマント値および第2ホルマント値と類別された発話者とが対応つけられてデータテーブル20Bに設定される。
すなわち、類別された発話者に対応する第2特徴量がデータべース20に格納されている。
【0028】
(第3データテーブル20C)
図2(c)に示す第3データテーブル20Cは、発話者(発話者A、発話者B、発話者C、発話者D)と、イントネーション特徴量検出手段24により検出された第3特徴量とを対応付けて格納している。
すなわち、類別された発話者に対応する第3特徴量がデータべース20に格納されている。
【0029】
(第4データテーブル20D)
図3に示す第4データテーブル20Dは、第1、第2、第3特徴量から概略的に類別された運転者A、B、C、Dを示すテーブルである。
すなわち、第4データテーブル20Dは、類別された運転者A、B、C、Dと、性別と、イントネーション情報とを対応付けて格納している。
【0030】
(第5データテーブル20E)
図4(a)に示す第5データテーブル20Eは、運転者類別手段26により類別された運転者A、B、C、Dが、運転座席の座席前後位置を自分に最適な位置に操作したときの座席前後位置データを、類別された運転者A、B、C、Dにそれぞれ対応付けて格納したテーブルである。
すなわち、第5データテーブル20Eは、車載機器200としての運転座席の動作の設定データである座席前後位置データを、類別された運転者A、B、C、Dにそれぞれ対応付けて格納する。
【0031】
(第6データテーブル20F)
図4(b)に示す第6データテーブル20Fは、運転者類別手段26により類別された運転者A、B、C、Dが、運転座席202の座席高さ位置を自分に最適な位置に操作したときの座席高さ位置データを、前記類別された運転者A、B、C、Dにそれぞれ対応付けて格納したテーブルである。
すなわち、第6データテーブル20Fは、車載機器200としての運転座席の動作の設定データである座席高さ位置データを、類別された運転者A、B、C、Dにそれぞれ対応付けて格納する。
本実施の形態では、第5、第6データテーブル20E、20Fが、運転者類別手段26によって類別された運転者と、設定検出手段で検出された設定データとを関連付けて記憶する設定データ記憶手段を構成している。
【0032】
本実施の形態では、制御指令出力部17は、運転者類別手段26により類別された運転者運転者A、B、C、Dに応じて第5、第6データテーブル20E、20Fに格納されている座席前後位置データおよび座席高さ位置データを、制御データとして受け取り、この制御データを運転座席202へ出力する。これにより、運転座席202の動作の設定がなされる。
なお、運転座席202は、動作設定手段28から制御指令出力部17を介して供給された座席前後位置データおよび座席高さ位置データに基づいて座席位置を自動的に調整する機能を有している。
【0033】
図5は、この実施の形態の車載機器用制御装置100の動作を示すフローチャートである。
以下、図1、図2、図3、図4および図5のフローチャートを参照しながら動作について説明する。
なお、以下の説明では車両を利用するユーザは男性2人、女性2人であり、家族あるいは会社の特定の社員とする。そして、これら男性2人、女性2人のユーザはこの車載機器用制御装置100を備えた車両を共有して利用する。
また、車載機器用制御装置100のデータべース20には、男性2人、女性2人の各ユーザについての性別情報、ホルマント値情報、イントネーション情報は未だ収集されていないものとする。
【0034】
まず、ユーザAが車を使用するためドアを開けて運転席に乗り込んだ状態から説明を始める。
ユーザAはキーによりイグニッションキースイッチを操作してアクセサリ電源をオン状態に操作する。この状態では、車のエンジンは始動していない。
アクセサリ電源がオン状態になると、車両の各部を制御するコンピュータ(ECU)、ECU10にも電源が投入された状態になる。
ECU10は各種初期設定処理を行なった後、メモリ18に格納されている動作設定手段28を実行することでこの実施の形態の車載機器用制御装置100の動作が開始される。
【0035】
この車載機器用制御装置100の動作が開始されると、まず運転席に乗り込んだ運転者の音声の第1、第2特徴量の検出が行われる(ステップS1)。
なお、運転者の音声は、車載機器200の制御を行うための制御指令を運転者が発声した際の音声を利用すればよい。
あるいは、音声制御手段29が音声合成部36にデータを供給して特定の言葉の発声を促す音声案内をスピーカー30から発生させ、この音声案内に応じて運転者が発声した音声を利用してもよい。
運転者が発音した音声はマイクロフォン28により電気信号へ変換され、さらに音声入力部14のA/Dコンバータによりデジタルデータへ変換され、音質特徴量検出手段22により第1、第2特徴量が検出される。
詳細に説明すると、一般に声帯の振動数が音声の基本周波数に対応する。そして、音声の基本周波数は時間とともにゆっくり変動することから、発声者ごとの基本周波数の変動をその平均値と標準偏差で定量化し第1特徴量を検出する。
この基本周波数の発声者ごとの変動は、男性と女性とでは約1オクターブの差があり、男性の基本周波数の平均値と標準偏差はそれぞれ125Hzと20.5Hzであり、女性の基本周波数の平均値と標準偏差はそれぞれ250Hzと41.5Hzであり、男性、女性ともに対数周波数軸上で正規分布をしている。
また、基本周波数の時間変動特性をその電力スぺクトルにより調べると5〜10Hzの帯域に収まる。
以上のことから図2(a)の第1データテーブル20Aに示すように音声の基本周波数の平均値と標準偏差とから男性と女性の類別が可能となる。
また、音声のホルマント周波数は、発声者や環境により変動する。
一般に第1ホルマントと第2ホルマントとが音韻を特徴付けるのに重要であり、これら第1ホルマントと第2ホルマントの値(ホルマント周波数)により規定される、母音の種類による領域は少数の発話者の音声では重複することはないため、家族やグループの限定された人数の発話者については個々の特徴が前記第1ホルマントと第2ホルマントの値により規定される母音の種類による領域に現れることになるため、家族やグループの限定された人数の発話者をそれぞれ類別することが可能になる。
以上のことから図2(b)のデータテーブル20Bに示すように第1ホルマントと第2ホルマントの値により発声者ごとの類別が可能となる。
すなわち、第1ホルマントと第2ホルマントを捉えることにより第2特徴量を検出する。
【0036】
続いてイントネーション特徴量検出手段24により音声のイントネーションを定量化することで音声の第3特徴量(イントネーション情報)を検出する(ステップS2)。
第3の特徴量の検出では、基本周波数の推移分布を調べると基本周波数が低下する推移が50%、上昇する推移が18%などというように基本周波数の推移についても個々に特徴が現れる傾向にあることから、発声者ごとの特定の単語やフレーズのイントネーションの検出を行い、図2(c)の第3データテーブル20Cに示すように特定の単語やフレーズのイントネーションから発声者ごとの類別を行う。
これら第1、第2、第3データテーブル20A、20B、20Cはデータべース20に格納される。
【0037】
この車載機器用制御装置100では、続いてデータべース20に格納された第1、第2、第3データテーブル20A、20B、20Cをもとに、運転席に乗り込んだ発話者ごとの類別処理を行う(ステップS3)。
この類別処理では、運転席に乗り込んだ発話者(運転者)について概略的な類別を行い、図3に示す第4データテーブル20Dに記録する。
図3の例では、イントネーションについては後半付近が上がる傾向になり、性別は男性、第1ホンマルト値が周波数f11〜f12の範囲内であり、第2ホンマルト値が周波数f21〜f22の範囲内であると、運転者Aと類別される。
また、イントネーションについては中央付近が上がる傾向になり、性別は男性、第1ホンマルト値が周波数f13〜f14の範囲内であり、第2ホンマルト値が周波数f23〜f24の範囲内であると、運転者Bと類別される。
また、イントネーションについては後半付近が下がる傾向になり、性別は女性、第1ホンマルト値が周波数f15〜f16の範囲内であり、第2ホンマルト値が周波数f25〜f26の範囲内であると、運転者Cと類別される。
また、イントネーションについては中央付近が下がる傾向になり、性別は女性、第1ホンマルト値が周波数f17〜f18の範囲内であり、第2ホンマルト値が周波数f27〜f28の範囲内であると、運転者Dと類別される。
【0038】
次に、前記ステップS3において類別処理が行われた発話者(運転者)についてデータベース20に登録されているか否かを判定する(ステップS4)。
具体的には、図4(a)、(b)に示すように、発話者毎の車載機器200の動作の設定データを格納した第5、第6データテーブル20E、20Fに登録されているか否かを判定する。
なお、本実施の形態では、車載機器200が運転座席200Aであり、設定データが座席前後位置データおよび座席高さ位置データである場合について説明するが、設定データは車載機器200によって異なるものである。
設定データとしては、例えば、エアコン204の温度、風量の設定データ、オーディオ装置206の選曲、音量、音質についての設定データ、ナビゲーション装置についての各種設定データを含む。
従って、第5、第6データテーブル20E、20Fに登録されてないと判定すると、運転座席202の座席前後位置や座席高さを含む車載機器200の調整操作を促すアナウンスを音声制御手段29、音声合成部36、音声出力部24を用いてスピーカー30から出力する(ステップS7)。
そして、運転席に乗り込んだ発話者が運転座席202の座席前後位置や座席高さを含む車載機器の調整操作を行うと、あるいは車載機器の調整操作を行わない場合には一定の時間が経過すると、前記調整操作されたときには調整された座席前後位置や座席高さ、調整操作されないときには現状の座席前後位置や座席高さを含む車載機器200の設定データを検出する(ステップS8)。
そして、ステップS3において類別処理が行われた発話者により調整された、あるいは容認された運転席座席の座席前後位置や座席高さを含む車載機器200の設定データを第5、第6データテーブル20E、20Fへ格納する。
このようにしてステップS3において類別処理が行われた発話者についての設定データがデータベース20(第5、第6データテーブル20E、20F)に登録される。
【0039】
一方、ステップS4において、第5、第6データテーブル20E、20Fに前記発話者についての設定データが登録されていると判定すると、第5、第6データテーブル20E、20Fから当該発話者についての運転席座席の座席前後位置や座席高さを含む車載機器の設定データを読み出す(ステップS5)。
そして、読み出した車載機器の設定データを制御指令出力部17へ出力し、運転席座席の座席前後位置や座席高さの調整機構を含む車載機器へ前記設定データを設定し、前記発話者に最適な状態に前記運転席座席の座席前後位置や座席高さを含む車載機器の状態を自動的に調整する(ステップS6)。
なお、前記発話者は前記自動調整された前記運転席座席の座席前後位置や座席高さを含む車載機器の状態に満足しているとは限らず、前記発話者は前記運転席座席の座席前後位置や座席高さを含む車載機器の調整操作をさらに行うことも考えられる。
このため、さらに前記運転席座席の座席前後位置や座席高さを含む車載機器の調整操作が前記発話者により行われたか否かを判定し(ステップS10)、この結果、車載機器の調整操作が前記発話者により行われたと判定すると、この再調整された前記運転席座席の座席前後位置や座席高さを含む車載機器の調整結果を検出し(ステップS8)、前記発話者についての前記車載機器の新たな設定データとして第5、第6データテーブル20E、20Fに登録する(ステップS9)。
従って、前記発話者が、次回、前記運転席に乗り込んだときには、その発話者についての前記運転席座席の座席前後位置や座席高さを含む車載機器の設定データを用いて車載機器200が自動的に設定される。
【0040】
本実施の形態によれば、運転者の音声の特徴量に基づいて運転者を類別すると共に、類別された運転者と設定データとを関連付けて記憶し、運転者が類別されると、該類別された運転者に対応する設定データを読み出して車載機器の動作を自動的に設定するようにした。
この場合、家族、あるいは、会社内の限られた社員などのように限定された少人数のユーザで1台の共用車両を使用するといった用途では、運転者を厳密に識別する必要が無く、本実施の形態のように音声の特徴量を用いることでユーザ(運転者)を十分に類別することができる。
したがって、従来のように顔認識、声紋認識、指紋認識、静脈認識などを用いた複雑で精度の高い個人認証を行う場合に比較して、コストを低減できる。
また、運転者は車載機器を使用する際に、音声を発声するといった極めて簡単な操作を行えばよく、個人認証を行うために種々の認証データを事前に登録する操作や個人認証を行う毎に認証のための操作が不要となり、ユーザの負担を軽減する上で極めて有利となる。
【0041】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、車載機器用制御装置100を使用する頻度が多くなるほど、運転者の類別を行う際の精度をより向上させるようにしたものである。
【0042】
図6は第2の実施の形態の車載機器用制御装置100のブロック図である。
なお、以下の実施の形態では第1の実施の形態と同様の部分には同一の符号を付してその説明を省略しあるいは簡単に行う。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態における動作設定手段28、音声制御手段29に加えて、音声特徴量検出手段40、第1尤度算出手段42、第1尤度分布データ生成手段44、第1尤度範囲設定手段46、運転者類別手段48が設けられている。
これら音声特徴量検出手段40、第1尤度算出手段42、第1尤度分布データ生成手段44、第1尤度範囲設定手段46は、メモリ18に格納される制御プログラムがECU10が実行することにより実現されるものである。
また、データべース20には、第1尤度分布データテーブル50と、設定データ用テーブル52が設けられている。
【0043】
音声特徴量検出手段40は、音声入力部14から供給される音声データに基づいて音声を定量化し音声の特徴量を検出するものである。
音声特徴量検出手段40は、第1の実施の形態と同様に、音質特徴量検出手段22およびイントネーション特徴量検出手段24で構成され、第1乃至第3特徴量を検出するものであってもよい。
あるいは、音声特徴量検出手段40は、話す速度、アクセントを特徴量として検出するものであってもよく、特徴量は音声を特徴付けできるもので限定されない。
【0044】
第1尤度算出手段42は、特徴量に基づいて該特徴量の尤度を算出するものである。
本実施の形態では、特徴量の尤度とは、特徴量によって示される音声の特徴がどの程度当てはまるかを示す度合い、言い換えると、運転者(発話者)を識別するための特徴の尤もらしさを示す度合いである。
例えば、第1の実施の形態における第1、第2特徴量に基づいて、運転者の特徴を示す性別(女性らしさ、男性らしさ)の尤もらしさを示す尤度を求めることができる。
あるいは、上記と同様の特徴量に基づいて、運転者の特徴を示す年齢(低年齢らしさ、高年齢らしさ)の尤もらしさの度合いを示す尤度を求めることができる。
特徴量から尤度を算出する手法としては、多変量解析など従来公知のさまざまな手法が採用可能である。
【0045】
第1尤度分布データ生成手段44は、第1尤度算出手段42によって尤度が算出される毎に、第1尤度算出手段42により算出された尤度と、該尤度が出現した頻度とを関連付けた尤度分布データを生成するものである。
図7(a)、(b)は性別の尤もらしさを示す尤度と、頻度とを関連付けた尤度分布データを示す説明図である。
横軸の尤度は、左方向に向かうにつれて女性らしさが高くなり、右方向に向かうにつれて男性らしさが高くなることを示している
図7(a)に示すように、第1尤度算出手段42による尤度の算出回数が低い状態では、運転者毎の尤度のデータ数が少ないため、尤度分布のピークが2つ生じていることはわかるものの、男性か女性かを判断するには十分な尤度分布が得られていない。
一方、図7(b)に示すように、第1尤度算出手段42による尤度の算出回数が高くなると、運転者毎の尤度のデータ数が多くなるため、尤度分布のピークが顕著にあらわれ、左右に離間して2つのピークがあることが明らかとなる。
したがって、2つのピークのうち一方のピークは女性に相当し、他方のピークは男性に相当していることがわかる。
ここで、第1尤度算出手段42によって算出された尤度が、上記の尤度分布のうちどの位置に該当するか、言い換えると、2つのピークのうちどちらのピークにより近いかを調べれば運転者の性別を特定できることになる。
【0046】
また、図8(a)、(b)は年齢の尤もらしさを示す尤度と、頻度とを関連付けた尤度分布データを示す説明図である。
横軸の尤度は、左方向に向かうにつれて若年らしさが高くなり、右方向に向かうにつれて年配らしさが高くなることを示している。
図8(a)に示すように、第1尤度算出手段42による尤度の算出回数が低い状態では、運転者毎の尤度のデータ数が少ないため、尤度分布のピークが不明瞭であり、年配か若年かを判断するには十分な尤度分布が得られていない。
一方、図8(b)に示すように、第1尤度算出手段42による尤度の算出回数が高くなると、運転者毎の尤度のデータ数が多くなるため、尤度分布のピークが顕著にあらわれ、左右に離間した2つのピークがあることが明らかとなる。
したがって、2つのピークの尤度の大きさに基づいて、一方のピークは若年に相当し、他方のピークはやや年配に相当していることがわかる。
ここで、第1尤度算出手段42によって算出された尤度が上記の尤度分布のどの位置に該当するか、言い換えると、2つのピークのうちどちらのピークにより近いかを調べれば、運転者の年齢の範囲を特定できることになる。
【0047】
第1尤度分布データテーブル50は、第1尤度分布データ生成手段44によって生成された尤度分布データを記録するものであり、第1尤度算出手段42によって尤度が算出される毎に尤度分布データを更新して記録する。
したがって、図7、図8に示すように、各運転者が車載機器用制御装置100を使用するほど尤度分布データが更新され、尤度分布データが更新されるほど尤度分布データのピークはより高くなる。
【0048】
第1尤度範囲設定手段46は、上述した尤度分布データに基づいて同一の特徴を有する運転者の音声であると識別される尤度の範囲を第1識別範囲としたとき、該第1識別範囲を各運転者のそれぞれに対応して設定するものである。
図7(b)で示すと、女性に対応するピークを含む第1識別範囲ΔWは下限値w0、上限値w1で示される。男性に対応するピークを含む第1識別範囲ΔMは下限値m0、上限値m1で示される。
また、図8(b)で示すと、若年に対応するピークを含む第1識別範囲ΔYは下限値y0、上限値y1で示される。やや年配に対応するピークを含む第1識別範囲ΔAは下限値a0、上限値a1で示される。
【0049】
運転者類別手段48は、第1尤度算出手段42によって尤度が算出される毎に、該算出された尤度が各第1識別範囲の何れに該当するかを判定し、その判定結果に基づいて運転者を類別するものである。
すなわち、運転者類別手段48は、第1尤度算出手段42によって尤度が算出される毎に、該算出された尤度が第1識別範囲ΔW、ΔMの何れに該当するかを判定することにより、運転者の男性、女性の性別を特定する。
また、運転者類別手段48は、第1尤度算出手段42によって尤度が算出される毎に、該算出された尤度が第1識別範囲ΔY、ΔAの何れに該当するかを判定することにより、運転者の年齢範囲を特定する。
【0050】
設定データ用テーブル52は、運転者類別手段48によって類別された運転者と、設定検出手段202A乃至208Aで検出された設定データとを関連付けて記憶するものであり、設定データ記憶手段を構成している。
【0051】
運転者類別手段48によって運転者が類別された後、動作設定手段28は第1の実施の形態と同様に、設定データ用テーブル52を用いて座席位置設定機構30を制御し座席位置を設定する。
【0052】
第2の実施の形態によれば、第1尤度算出手段42によって尤度が算出される毎に第1尤度分布データテーブル50の第1尤度分布データが更新され、第1尤度分布データが更新されるほど第1尤度分布データのピークはより高くなる。
したがって、第1尤度範囲設定手段46によって設定される第1識別範囲の範囲ΔW、ΔM、ΔY、ΔAの範囲をより狭くすることができ、したがって、運転者を類別する際の精度を高める上で有利となる。
そのため、第1の実施の形態に比較して、運転者を誤って類別することを防止する上で有利となり、したがって、使い勝手を高める上でより有利となる。
【0053】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、第2の実施の形態に加え、運転者の運転の癖を検出することにより、運転者を類別する際の精度をより向上させるようにしたものである。
【0054】
図9は第3の実施の形態の車載機器用制御装置100のブロック図である。
第3の実施の形態では、第2の実施の形態に加えて、運転状態検出手段49、運転特徴量検出手段50、第2尤度算出手段52、第2尤度分布データ生成手段54、第2尤度範囲設定手段56をさらに備えている。
また、データべース20には、第1尤度分布データテーブル50と、設定データ用テーブル52とに加えて、第2尤度分布データテーブル60が設けられている。
【0055】
運転状態検出手段49は、アクセルペダルの作動状態を検出するアクセル検出部49A、ブレーキペダルの作動状態を検出するブレーキ検出部49B、ステアリングの作動状態を検出するステアリング検出部49C、シフトレバーの作動状態を検出するシフト検出部49Dなどを含んで構成されている。
言い換えると、運転状態検出手段49は、運転者による車両の運転の運転操作データを検出するものである。
【0056】
運転特徴量検出手段50は、運転状態検出手段49から供給される各検出結果に基づいて運転操作データを定量化し運転者の運転の癖である運転の特徴量を検出するものである。
このような特徴量としては、アクセルペダルおよびブレーキペダルの操作頻度や操作速度、ステアリングの回転量および回転速度、シフトレバーの操作頻度などを用いることができる。
【0057】
第2尤度算出手段52は、特徴量に基づいて該特徴量の尤度を算出するものである。
本実施の形態では、特徴量の尤度とは、特徴量によって示される運転の癖の特徴がどの程度当てはまるかを示す度合い、言い換えると、運転者(発話者)を識別するための特徴の尤もらしさを示す度合いである。
例えば、上述したアクセルペダルの操作頻度や操作速度で示される特徴量に基づいて、運転者の特徴の尤もらしさを示す尤度を求めることができる。
【0058】
第2尤度分布データ生成手段54は、第2尤度算出手段52によって尤度が算出される毎に、第2尤度算出手段52により算出された尤度と、該尤度が出現した頻度とを関連付けた第2尤度分布データを生成するものである。
ここで、第2尤度算出手段52によって算出された尤度が、第2尤度分布のどのピークにより近いかを調べれば運転者を特定できることになる。
【0059】
第2尤度分布データテーブル60は、第2尤度分布データ生成手段54によって生成された第2尤度分布データを記録するものであり、第2尤度算出手段52によって尤度が算出される毎に第2尤度分布データを更新して記録する。
したがって、各運転者が車載機器用制御装置100を使用するほど第2尤度分布データが更新され、第2尤度分布データが更新されるほど尤度分布データのピークはより高くなる。
【0060】
第2尤度範囲設定手段56は、上述した尤度分布データに基づいて同一の特徴を有する運転者の運転であると識別される尤度の範囲を第2識別範囲としたとき、該第2識別範囲を各運転者のそれぞれに対応して設定するものである。
【0061】
運転者類別手段48は、第1尤度算出手段42によって尤度が算出される毎に、該算出された尤度が各第2識別範囲の何れに該当するかを判定し、その判定結果に基づいて運転者を類別する。この際、運転者類別手段48は、第2尤度算出手段52によって算出された尤度が各第2識別範囲の何れに該当するかの判定結果を参照して運転者の類別を行う。
【0062】
第3の実施の形態では、運転者類別手段48によって運転者が識別された後、動作設定手段28は、第2の実施の形態と同様に、設定データ用テーブル52を用いて座席位置設定機構30を制御し座席位置を設定する。
【0063】
第3の実施の形態によれば、運転者の音声の特徴量に加えて、運転の癖を参照して運転者を類別できるため、運転者を類別する際の精度を高める上で有利となる。
また、第2尤度算出手段52によって尤度が算出される毎に第2尤度分布データテーブル60の尤度分布データが更新され、尤度分布データが更新されるほど尤度分布データのピークはより高くなる。
したがって、第2尤度範囲設定手段56によって設定される第2識別範囲をより狭くすることができ、したがって、運転者を類別する際の精度をさらに高める上で有利となる。
そのため、第2の実施の形態に比較して、運転者を誤って類別することをより確実に防止する上で有利となり、したがって、使い勝手を高める上でより一層有利となる。
【0064】
なお、本実施の形態では、運転者の類別結果に応じて運転者に対応する設定データを車載機器に設定する場合について説明した。
しかしながら、運転者の類別結果に応じて次のような動作を行うようにしてもよい。
すなわち、運転者が車載機器に操作を行う毎に、運転者と、車載機器と、操作の種類とを対応付けてその操作の頻度を測定しその測定結果を記憶手段に格納しておく。
そして、運転者の類別結果に応じて前記記憶手段から該類別された運転者が行う頻度が高い操作を読み出し、その操作を優先して行えるように車載機器を設定する。
具体的には、タッチパネルなどを操作して複数の階層からなるメニューを順番に選択して種々の操作を行う場合、頻度が高いメニューあるいは選択項目を優先して、言い換えると、最上層のメニューの表示を省略して、頻度が高いメニューや選択項目を最初から表示させることが可能である。
したがって、車載装置に使い慣れた運転者に対しては、ショートカット操作ができるようにし、車載装置に使い慣れていない運転者に対しては、最上層のメニューから操作できるようにすることができ、車載機器の使い勝手の向上を図る上でより有利となる。
【符号の説明】
【0065】
22……音質特徴量検出手段、24……イントネーション特徴量検出手段、26……運転者類別手段、20……データベース、28……動作設定手段、100……車載機器用制御装置、200……車載機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載機器の動作の設定を行う車載機器用制御装置であって、
運転者が前記車載機器に対して設定する前記動作の設定データを検出する設定検出手段と、
前記運転者の音声から音声データを生成する音声データ生成手段と、
前記音声データから前記音声の特徴量を検出する音声特徴量検出手段と、
前記音声の特徴量に基づいて前記運転者を類別する運転者類別手段と、
前記運転者類別手段によって類別された運転者と、前記設定検出手段で検出された前記設定データとを関連付けて記憶する設定データ記憶手段と、
前記運転者類別手段により運転者が類別されると、該類別された運転者に対応する設定データを前記設定データ記憶手段から読み出すと共に、該読み出した前記設定データに基づいて前記車載機器の動作を自動的に設定する動作設定手段と、
を備えることを特徴とする車載機器用制御装置。
【請求項2】
前記特徴量に基づいて該特徴量の尤度を算出する第1尤度算出手段と、
前記第1尤度算出手段によって尤度が算出される毎に、前記第1尤度算出手段により算出された尤度と、該尤度が出現した頻度とを関連付けた第1尤度分布データを記録する第1尤度分布データ記録手段と、
前記第1尤度分布データに基づいて同一の運転者の音声であると識別される尤度の範囲を第1識別範囲としたとき、該第1識別範囲を各運転者のそれぞれに対応して設定する第1尤度範囲設定手段とをさらに備え、
前記運転者類別手段による前記運転者の類別は、前記第1尤度算出手段によって尤度が算出される毎に、該算出された尤度が前記各第1識別範囲の何れに該当するかの判定結果に基づいて行われる、
ことを特徴とする請求項1記載の車載機器用制御装置。
【請求項3】
運転者による車両の運転の運転操作データを検出する運転状態検出手段と、
前記運転操作データから前記運転者の運転の癖である運転の特徴量を検出する運転特徴量検出手段と、
前記特徴量に基づいて該特徴量の尤度を算出する第2尤度算出手段と、
前記第2尤度算出手段によって尤度が算出される毎に、前記第2尤度算出手段により算出された尤度と、該尤度が出現した頻度とを関連付けた第2尤度分布データを記録する第2尤度分布データ記録手段と、
前記第2尤度分布データに基づいて同一の運転者の運転であると識別される尤度の範囲を第2識別範囲としたとき、該第2識別範囲を各運転者のそれぞれに対応して設定する第2尤度範囲設定手段とをさらに備え、
前記運転者類別手段による前記運転者の類別は、前記第2尤度算出手段によって算出された尤度が前記各第2識別範囲の何れに該当するかを判定した判定結果を参照して行われる、
ことを特徴とする請求項1または2記載の車載機器用制御装置。
【請求項4】
前記音声の特徴量は、前記音声の基本周波数の平均値と前記音声の時間的な変動とを含む、
ことを特徴とする請求項1または2記載の車載機器用制御装置。
【請求項5】
前記音声の特徴量は、前記音声の第1ホルマントおよび第2ホルマントを含む、
ことを特徴とする請求項1または2記載の車載機器用制御装置。
【請求項6】
前記音声の特徴量は、前記音声のイントネーションを含む、
ことを特徴とする請求項1または2記載の車載機器用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−163100(P2010−163100A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8013(P2009−8013)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】