説明

車載用電力変換装置

【課題】放熱性能を損なうことなく装置の小型化を実現させ得る車載用電力変換装置を提供する。
【効果】第1の電力変換部200が駆動され第2の電力変換部300が停止している場合、パワートランジスタ204dが駆動されるので、トランジスタ204dでは熱量が発生し、当該熱量は、拡散しつつヒートシンク100へ導かれ、ヒートシンク内部の温度勾配に応じて低温側へと伝達され、冷媒等によって熱交換される。一方、対称側のトランジスタ304dでは熱量が生じなくなるため、ヒートシンクへの熱量の供給は殆ど無くなる。かかる後、入力信号SGa及び入力信号SGbが切り替えられると、これに応じて、熱量の発生源が相反的に切り替えられるため、トランジスタ204d,304d近傍のヒートシンクの温度が一定値以下に抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電力変換装置に関し、特に、車載用電力変換装置の放熱性能を損なうことなく当該装置の小型化を図る際に用いて好適のものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車載機器(パワーウインドウ、パワーステアリング、フューエルポンプ、照明機器、オーディオ等)は、各々にECU(Electric Control Unit)が設けられ、当該ECUの指令信号に応じて電気制御が行われている。かかる車載機器は、自動車に搭載された補器用バッテリから電力が供給され、これにより、車載機器(モータ、照明灯、スピーカ)は、補器用バッテリから供給された電力によって駆動される。
【0003】
また、電動モータ及び内燃機関の系統を適宜に選択させ駆動輪に動力を与えるHEV(Hybrid Electric Vehicle)が実用化されている。更には、車載用バッテリに関する技術開発の進歩に伴い、バッテリ電力による長距離走行が可能となり、これを受けて、プラグイン式の充電機構を具備するHEV(Hybrid Electric Vehicle)についても商品化が行なわれている。加えて、車輌の構成から内燃機関を排除させ、電動モータのみによって車輌を走行させるEV(Electric Vehicle)が登場するに至っている。以下、プラグイン式HEV及びEVをプラグイン式電気自動車と呼び、一方、自動車と呼ぶ場合には、内燃機関自動車(エンジンのみによって駆動力を発生させる車輌)及びHEV(充電方式を問わない)及びEVの全ての駆動方式の車輌を指すこととする。
【0004】
プラグイン式電気自動車は、車輪駆動用の電動モータに電力を供給させるメインバッテリと、車載機器を駆動させるために設けられたサブバッテリとを搭載させている。このうち、メインバッテリは、高電圧用の充電用電力を生成させる車載用充電器に接続されており、商用電力と上位ECUの指令とが車載用充電器に与えられると、商用電力から変換された充電用電力によって当該メインバッテリが充電される。一方、サブバッテリは、低電圧用の充電電力を生成させるDC−DCコンバータに接続されており、サブバッテリに設けられたECUの指令がDC−DCコンバータに与えられると、DC−Cコンバータから出力された充電電力によってサブバッテリが充電される。
【0005】
車載用充電器及びDC−DCコンバータの双方の回路は、トランジスタ等の構成部品が発熱するため、発生した熱量をヒートシンクを介して放熱させている。
【0006】
例えば、特開平7−170611号公報(特許文献1)では、ヒートシンクと、車載機器に電力を供給させるDC−DCコンバータと、エアコン用のインバータとを具備する電気自動車用電力制御装置(特許請求の範囲における車載用電力変換装置)が紹介されている。このうち、DC−DCコンバータは、トランスとパワートランジスタとサーミスタとコンバータ制御回路とから構成され、インバータは、アーム接続された複数のパワートランジスタとインバータ制御回路とから構成され、各々は、パワートランジスタ、トランス等の発熱性素子によって大きな熱量を発生させる。ヒートシンクは、一方の面にDC−DCコンバータが載置され、他方の面にインバータが載置されている。そして、電気自動車用電力制御装置では、DC−DCコンバータ及びインバータで発生した熱量が、双方の間に設けられたヒートシンクによって放熱される。同公報では、DC−DCコンバータ及びインバータが同時に運転される旨、及び、DC−DCコンバータには補器用バッテリが省略される旨が記されている。
【0007】
また、特許第3166423号公報(特許文献2)では、ヒートシンクの断面構造が紹介されている。ヒートシンクは、底板にインナーフィンが形成され、上側ヒートシンク構造体と下側ヒートシンク構造体とを向かい合わせた2ピース構造より成る。当該ヒートシンクは、双方の構造体が組合されると、インナーフィンとヒートシンクの底板とによって冷媒の流通経路が形成される。また、同公報では、従来技術として、双方のインナーフィンの配列ピッチが一致しているものであって、インナーフィンの先端同士を当接させたヒートシンクが紹介されている。更に、発明の実施例として、双方のインナーフィンの配列ピッチを半ピッチスライドさせ、インナーフィンの先端に底板を当接させたヒートシンクが紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−170611号公報
【特許文献2】特許第3166423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に係る技術では、DC−DCコンバータ及びインバータの双方の出力電力が100%近くで制御される場合もあり得るので、ヒートシンクは、双方の最大発熱量を同時に放熱できる程度の放熱性能が必要となり、放熱面積を確保するためにヒートシンクの大型化を招くとの問題が生じる。
【0010】
また、特許文献2に記載された従来技術では、図10に示す如く、機械加工による加工精度が粗悪である場合、又は、熱膨張の偏りが生じる場合、当接するインナーフィンの全長(Hf1+Hf2)がヒートシンクの側壁の全長(Hw1+Hw2)より長くなると、側壁の当接面Sfの間に隙間Sが形成され、この場合、通気経路を通過する冷媒の流量が低下するので、ヒートシンクの放熱効果が低下してしまうとの問題が生じる。また、特許文献2に記載された実施例にあっても、ヒートシンクの側壁及びインナーフィンの寸法に不具合が生じると、先と同様に、ヒートシンクの放熱効果が低下してしまう。
【0011】
一方、特許文献2の技術について、インナーフィンの寸法を短くしてフィン先端の周辺にクリアランスを設けると、側壁の当接面Sfにおける気密性は確保されるので、冷媒の漏出に伴う放熱効果の低下を回避させることは可能である。しかし、2ピース構造とされたヒートシンクは、インナーフィンを介した接触面が無くなるため、当該構造体同士の伝熱効果が低下してしまう。ここで、双方の電力変換装置の発熱量が異なる場合、ヒートシンク内の温度勾配が平衡状態となる部分まで熱量が伝達されるため、ヒートシンク構造体の形状によっては、双方のヒートシンク構造体の当接面を超えて、熱量の伝達が行なわれる。この場合、インナーフィンの先端周囲にクリアランスが設けられると、双方のヒートシンク構造体の接触面積が減少し、効果的な放熱作用の障害を誘発させるとの問題が生じる。また、かかるヒートシンクは、インナーフィンを除く他の接触面での好ましい形態が検討されるべきところ、同公報(特許文献2)では何ら言及されていない。
【0012】
本発明は上記課題に鑑み、放熱性能を損なうことなく装置の小型化を実現させ得る車載用電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明では次のような車載用電力変換装置の構成とする。即ち、ヒートシンクと、前記ヒートシンクの一方の面に搭載され発熱性素子を具備する第1の電力変換部と、前記一方の面に対称的に設けられた他方の面に搭載され発熱性素子を具備する第2の電力変換部とを備え、前記第1の電力変換部及び前記第2の電力変換部は、各々が相反的に出力電力を出力させることとする。
【0014】
また、本発明は次のような構成としても良い。即ち、ヒートシンクと、前記ヒートシンクの一方の面に搭載され発熱性素子を具備する第1の電力変換部と、前記一方の面に対称的に設けられた他方の面に搭載され発熱性素子を具備する第2の電力変換部と、前記第1の電力変換部を制御させる第1の制御回路と、前記第2の電力変換部を制御させる第2の制御回路とを備え、
前記第1の制御回路は、前記第2の電力変換部の出力電力を低減又は出力休止させる信号が当該第2の制御回路へ入力されている場合、前記第1の電力変換部の出力電力を増加又は出力開始させる信号が当該第1の制御回路へ入力され、
前記第2の制御回路は、前記第1の電力変換部の出力電力を低減又は出力休止させる信号が当該第1の制御回路へ入力されている場合、前記第2の電力変換部の出力電力を増加又は出力開始させる信号が当該第2の制御回路へ入力されることとする。
【0015】
また、これらの発明の改変例として、好ましくは、前記第1の電力変換部は、商用電力を変換させてメインバッテリを充電させる充電器とされ、
前記第2の電力変換部は、前記メインバッテリの出力電力を変換させてサブバッテリを充電させる補器用コンバータとされることとする。
【0016】
好ましくは、前記ヒートシンクは、側壁及びインナーフィンが形成されており、前記側壁及び前記インナーフィンによって冷媒の流通経路が形成されていることとする。
【0017】
好ましくは、前記ヒートシンクは、前記一方の面を包含する第1構造部と前記他方の面を包含する第2構造部とから成ることとする。
【0018】
好ましくは、前記インナーフィンは、当該インナーフィンの周囲にクリアランスが形成され、前記側壁は、前記第1構造部の一部と前記第2構造部の一部とが直接接触して形成されることとする。
【0019】
好ましくは、前記インナーフィンのうち一方の構造部のインナーフィンは、向かい合う他方の構造部のインナーフィン同士の間隙より薄い板厚とされ、前記一方の構造部のインナーフィンの断面は、前記インナーフィン同士の間隙の範囲内に配置されることとする。
【0020】
好ましくは、前記ヒートシンクは、更に、前記側壁で包囲される内部領域に中柱部が形成されており、前記側壁及び前記インナーフィン及び前記中柱部によって冷媒の流通経路が形成されていることとする。
【0021】
好ましくは、前記ヒートシンクは、前記一方の面を包含する第1構造部と前記他方の面を包含する第2構造部とから成り、双方の構造部の一部が直接接触して成る中柱部を有し、前記中柱部は、前記側壁の双方の間に配置されていることとする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る車載用電力変換装置によると、相反的に駆動される電力変換部の組合せが選択され、当該電力変換部の一方がヒートシンクの一方の面に搭載され、当該電力変換部の他方がヒートシンクの他方の面に搭載される。この場合、双方の電力変換部から同時に供給される熱量は、同時に高電力を出力させる場合と比較して格段に減少すると供に、熱量が互いに補完的に供給されるため、放熱面積を縮小させることが可能となり、ヒートシンクの小型化が実現される。
【0023】
また、インナーフィン先端にクリアランスを形成させた2ピース構造のヒートシンクとする場合、冷媒の流通経路の中柱部を追加させることにより、熱量の伝達断面が適宜に確保され、構造体同士の熱量の往来がスムーズに行なわれ、これにより、双方の構造体が供に放熱機構として適正に作用し、冷媒との熱交換が円滑に行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態に係る車載用電力変換装置の構成を示す図。
【図2】実施の形態に係る車載用電力変換装置の内部構造を示す図。
【図3】実施の形態に係る車載用電力変換装置の放熱経路を示す図。
【図4】実施の形態に係る車載用電力変換装置の放熱経路を示す図。
【図5】実施例1に係る車載用電力変換装置の回路構成を示す図。
【図6】実施例1に係る車載用電力変換装置の構成を示す図。
【図7】他の例に係る車載用電力変換装置の回路構成を示す図。
【図8】実施例2に係る車載用電力変換装置の構成を示す図。
【図9】実施例3に係る車載用電力変換装置でのヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【図10】インナーフィンの公差が著しい場合におけるヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【図11】実施例4に係る車載用電力変換装置でのヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【図12】実施例4に係る車載用電力変換装置のヒートシンクでの放熱経路を示す図。
【図13】実施例4に係る車載用電力変換装置のヒートシンクでの放熱経路を示す図。
【図14】実施例5に係る車載用電力変換装置でのヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【図15】他の例に係る車載用電力変換装置でのヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【図16】実施例6に係る車載用電力変換装置の構成を示す図。
【図17】実施例6に係る車載用電力変換装置でのヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【図18】他の例に係る車載用電力変換装置でのヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して説明する。図1及び図2に示す如く、車載用電力変換装置1は、ヒートシンク100と第1の電力変換部200と第2の電力変換部300とから構成される。尚、本実施の形態に係る車載用電力変換装置は、上述したあらゆる形態の自動車に用いることが可能である。
【0026】
ヒートシンク100は、アルミ板又は銅板等の熱伝導性の高い材質から成り、適宜な放熱面積となるよう、板体の幅または長さが設定されている。また、放熱効果を高めるため、フィン又はコルゲート等を設けても良い。以下、ヒートシンクの一方の面101を上表面と呼び換え、上表面101に対称的に設けられた他方の面102を下表面102と呼び換えることとする。
【0027】
第1の電力変換部200は、図2に示す如く、ケース201と第1の制御回路203とパワー素子回路部204とから構成される。第1の電力変換部200は、ヒートシンク100の上表面101に搭載されており、パワートランジスタ204d,ダイオード,コンデンサ,コイル(図示なし)等の発熱性素子を内部に収容させている。これらの素子は、パワートランジスタを組合せることによりインバータ等の電力変換回路が構成され、コイルを組合せることによってトランスが構成され、また、ダイオード及びコンデンサを組合せることでフィルタ回路を構成し、この他、適宜な素子の組合せによって適宜回路を構成する。そして、第1の電力変換回路では、これらの回路構成のうち、その目的に応じて必要な回路が収容されることとなる。
【0028】
ケース201は、第1の制御回路203及びパワー素子回路部204が収容されている。ケース201のうち一方の面には、熱伝導率の高い放熱板205が露出されており、当該放熱板205は、ヒートシンクの上表面101と直接的に接触する。また、当該ケース201の構造体は、絶縁性の樹脂材料から成り、コネクタ端子を具備するコネクタ部202が形成されている。当該コネクタ端子202aは、図1に示す如く、信号端子202a1と入力端子202a2と出力端子202a3とから構成されており、信号端子202a1には入力信号SGaが印加され、入力端子202a2にはバッテリ又は電源から電力が印加され、出力端子202a3からは第1の電力変換部によって変換された電力が出力される。
【0029】
第1の制御回路203は、回路基板203cの実装面にボンディングパッド203b,制御IC203a,この他必要な電気的素子が実装されている。また、ボンディングパッド203bは、ボンディングワイヤ202bを介して信号端子202a1に接続され、他方、制御回路203の適宜な箇所には、パワートランジスタ204dへの信号を伝達させる配線が施されている(図示なし)。かかる構成により、第1の制御回路203では、信号端子202a1に入力信号SGaが入力されると、当該入力信号SGaはボンディングワイヤ等の配線を介して制御IC203aへと送信される。このとき、制御IC203aでは、入力信号SGaを適宜な形態に変換処理させた後、かかる処理で得られた信号を出力させ、パワートランジスタ204dを駆動制御させる。
【0030】
パワー素子回路部204は、図示の如く、絶縁性基板204aが放熱性樹脂を介して放熱板205に接着されている。絶縁性基板204aにはプリント配線204bが形成されており、当該プリント配線204bは、半田層204cを介してパワートランジスタ204dを載置させている。尚、ケース201の内部には、上述の如く、パワー素子回路部204以外に種々の機能的回路が収容されており、これらの回路が作用することにより、入力された電力を所望の電力へと変換させる。即ち、第1の制御回路203が入力信号SGaに応じて動作することにより、パワー素子回路部204をはじめとする各機能的回路が動作し、これにより、入力電力が適宜に変換され、所望の電力を出力させる(以下、出力電力と呼ぶ)。
【0031】
かかる構成を具備する第1の電力変換部200は、入力信号SGaが信号端子202a1に印加されると、第1の制御回路200は、当該信号に応じてパワートランジスタ204dを駆動させる。このとき、入力電力は、パワー素子回路部204及び他の機能的回路によって出力電力へと変換され、出力端子202a3では、かかる出力電力を出力させる。
【0032】
ここで、パワートランジスタ204d及び他の発熱性素子が駆動されると、当該素子では熱量が発生する。かかる熱量は、放熱板205を介してヒートシンク100へと導かれ、ヒートシンク100の適宜な場所で熱交換が行なわれる。即ち、発熱性素子は、自身から発生した熱力が、外部へと伝達されるので、当該素子の損傷から免れることとなる。
【0033】
第2の電力変換部300は、ケース301と第2の制御回路303とパワー素子回路部304とから構成される。そして、これらの構成は、第1の電力変換部200の構成に概ね対応している。例えば、第2の電力変換部300のパワートランジスタ303dは、第1の電力変換部300のパワートランジスタ203dに対応しており、第2の制御回路303は、第1の制御回路203に対応している。このため、対応する各々の構成は、その機能が略同等でるため、第2の電力変換部300の各構成の説明は省略することとする。
【0034】
図3は、ヒートシンクへ伝達される熱量の伝達経路が示されている。但し、双方の電力変換部における構成のうちパワートランジスタ以外の構成については、便宜的に図示省略されている。また、ヒートシンク100の内部では、トランジスタからヒートシンクの端部に向かって温度勾配が生じているものとする。尚、同図にあっては、第1の電力変換部200が駆動されるとき、第2の電力変換部300が停止されることとする。
【0035】
図3(a)は、第1の電力変換部200が駆動され第2の電力変換部300が停止している場面が示されている。かかる場合、パワートランジスタ204dが駆動されるので、トランジスタ204dでは熱量が発生し、当該熱量は、拡散しつつヒートシンク100へ導かれ、ヒートシンク内部の温度勾配に応じて低温側へと伝達され、冷媒等によって熱交換される。一方、対称側のトランジスタ304dでは熱量が生じなくなるため、ヒートシンクへの熱量の供給は殆ど無くなる。
【0036】
かかる後、入力信号SGa及び入力信号SGbが切り替えられると、図3(b)に示す如く、第1の電力変換部200が停止され第2の電力変換部300が駆動する。かかる場合、パワートランジスタ304dが駆動されるので、トランジスタ304dでは熱量が発生し、当該熱量は、ヒートシンク100を介して低温箇所で熱交換される。一方、対称側のトランジスタ204dでは熱量が生じなくなるため、ヒートシンクへの熱量の供給は殆ど無くなる。そして、入力信号SGa及び入力信号SGbの切換が繰返されると、熱量の発生源が相反的に切り替えられ、これに応じて熱量が両側から補完的に供給されることによって、著しい温度上昇を招くことなく、トランジスタ204d,304d近傍のヒートシンクの温度が一定値以下に抑えられる。
【0037】
尚、上述した電力変換部の切換動作は一例に過ぎず、特許請求の範囲における「相反的」の語意は、これに限定されるものではない。例えば、図4に示す如く、一方の出力電力を増加させ且つ他方の出力電力を低減させ、かかる運転状態の組合せを相反的に切替えるようにしても良い。具体的に説明すると、或るタイミングでは、一方の出力電力を80%に設定し他方の出力電力を20%に設定させ、他のタイミングでは、一方の出力電力を20%に設定し他方の出力電力を80%に設定させる制御がこれに該当する。
【0038】
上述の如く、本実施の形態に係る車載用電力変換装置によると、相反的に駆動される電力変換部の組合せが選択され、当該電力変換部の一方がヒートシンクの一方の面に搭載され、当該電力変換部の他方がヒートシンクの他方の面に搭載される。この場合、双方の電力変換部から同時に供給される熱量は、同時に高電力を出力させる場合と比較して格段に減少すると供に、熱量が互いに補完的に供給されるため、放熱面積を縮小させることが可能となり、ヒートシンクの小型化が実現される。
【0039】
以下、実施例によって、より具体的に車載用電力変換装置の説明を行う。但し、実施例に記される技術は、特許請求の範囲に記載される発明の一形態に過ぎず、当該発明を限定的に解釈させるものではない。
【実施例1】
【0040】
図5は、プラグイン式電気自動車(プラグイン式HEV,EV)における電力供給システムの回路構成が示されている。尚、同図には、外部構成とされる商用電源及び外部プラグが便宜的に示されている。当該商用電源Altは、商用電力を配電させるものであって、家庭用電源にあっては電力会社から100〜200V(50kHz/60kHz)が配電される。また、外部プラグPgaは、商用電源Altに接続され、上述した商用電力を印加させる。
【0041】
図示の如く、電力供給システムCは、車輛側プラグPgbと充電器210とメインバッテリVbmとDC−DCコンバータ310と補器用バッテリVbsと負荷L1,L2・・・,とECU(Electric Control Unit)とから構成され、電源ラインLa及びLb、信号ラインLp及びLqによって適宜に配線されている。
【0042】
車輛側プラグPgbは、プラグイン式電気自動車のボディー部に設けられ、メインバッテリVbmの充電を行なう際に外部プラグPgaに接続される。
【0043】
充電器210(特許請求の範囲における第1の電力変換部)は、第1の制御回路213と第1のパワー素子回路部214とを備え、車輛側プラグPgbから商用電力の印加を受けている。当該充電器210は、入力信号SG1を受信すると、当該信号に応じて内部の回路が作用し、商用電力を出力電力に変換させる。かかる出力電力は、後段の電源ラインLa,Lbに印加され、メインバッテリVbmを充電させる。
【0044】
メインバッテリVbmは、充電器210によって充電され、例えばDC200Vの電力を出力させる。
【0045】
DC−DCコンバータ310(特許請求の範囲における第2の電力変換部)は、第2の制御回路313と第2のパワー素子回路部314とを備え、メインバッテリVbmから電力の印加を受けている。当該DC−DCコンバータ310は、入力信号SG2を受信すると、当該信号に応じて内部の回路が作用し、メインバッテリVbmの出力電力を後段回路用の出力電力に変換させる。かかる出力電力は、後段の電源ラインLa,Lbに印加され、補器用バッテリVbsを充電させる。
【0046】
補器用バッテリVbsは、DC−DCコンバータ310によって充電され、例えばDC12Vの電力を出力させる。
【0047】
負荷L1,L2・・・,は、各々が補器用バッテリVbsに並列接続され、補器用バッテリVbsから受けた電力によって駆動される。かかる負荷は、パワーウインドウ、パワーステアリング、フューエルポンプ、照明機器等、電気的に制御される装置を指す。
【0048】
上位ECUは、マイコン及びメモリー回路等から構成される情報処理装置であって、車輌内の各種情報を一元管理し、当該情報に基づいて、車載機器(充電器、DC−DCコンバータ、ワイパー、フューエルモータ、照明灯、オーディオ等)を直接的又は間接的に制御させる役割を担う。充電器210及びDC−DCコンバータ310の制御にあっては、上位ECUは、バッテリの電圧値情報等の必要な車載機器の情報が送り込まれ、これらの情報に基づいて、充電器210及びDC−DCコンバータ310へ送信する信号を演算処理させ、場合によっては、負荷L1,L2・・・,の制御信号をも生成させる。特に、外部プラグPgaと車輛側プラグPgbとが接続されると、上位ECUでは、充電器210の出力電力を出力要求させる信号SG1と、DC−DCコンバータ310の出力電力を停止又は低減させる信号SG2とを出力させる(第1の相反的指令信号)。一方、外部プラグPgaが車輛側プラグPgbから外されプラグイン式電気自動車の電源がON状態にされると、上位ECUは、充電器210の出力電力を低下(又は停止)させる信号SG1と、DC−DCコンバータ310の出力電力を増加(又は開始)させる信号SG2とを出力させる(第2の相反的指令信号)。
【0049】
かかる構成とされた電力供給システムCは、以下の如く動作する。即ち、外部プラグPgaが車輛側プラグPgbに接続されると、ECUでは「第1の相反的指令信号」を出力させ、これにより、充電器210の出力電力が引き上げられ、反対に、DC−DCコンバータ310の出力電力が低値に設定される。即ち、かかる場面では、DC−DCコンバータ310の動作が抑えられるので、メインバッテリVbmは、DC−DCコンバータ310による消費電力が抑制され、当該メインバッテリにおける充電時間の短縮化が図られる。
【0050】
一方、外部プラグPgaが車輛側プラグPgbから外され、プラグイン式電気自動車の電源がON状態にされると、ECUでは「第2の相反的指令信号」を出力させ、これにより、充電器210の出力電力が停止され、反対に、DC−DCコンバータ310の出力電力が高値に設定される。即ち、かかる場面では、メインバッテリVbmの充電状態が十分とされるので、DC−DCコンバータ310及び其の後段回路による電力消費が開始されても良いこととなる。尚、メインバッテリVbmの充電量が低下した場合には、かかる情報をドライバーに警告し、当該メインバッテリを再充電させるようにすれば良い。
【0051】
図6は、本実施例に係る電力変換装置の構成が示されている。図示の如く、電力変換装置2は、ヒートシンク100と充電器210とDC−DCコンバータ310とから構成される。このうち、ヒートシンク100は、上表面111及びこれに対称的な下表面112が形成されている。また、当該上表面111には、充電器210が搭載され、ボルト210によってヒートシンクへ固定されている。他方、下表面112には、DC−DCコンバータ310が搭載されている。加えて、充電器210は、上述した第1の電力変換部200の構成と類似しており、その説明を省略する。また、DC−DCコンバータ310についても、上述した第2の電力変換回路300の構成と類似しているため、これについても説明を省略する。
【0052】
本実施例では、ヒートシンク100を挟んで充電器210とDC−DCコンバータ310とが組み合わされ、当該充電器210とDC−DCコンバータ310とが相反的に駆動される。従って、ヒートシンク100には、熱量が相反的に供給されることとなる。よって、単位時間当りに供給される熱量は、双方の電力変換部が同時に高出力になる場合と比較して格段に減少し、これにより、放熱面積を縮小させることが可能となり、ヒートシンク100の小型化が実現される。
【0053】
尚、本実施例に係る電力変換回路は、図5に示される電力供給システムにのみ適用されるものでなく、図7に示されるような、DC−DCコンバータ310から負荷L1,L2,・・・,へ直接電力を供給するシステムにも用いることも可能である。
【0054】
また、本実施例では、充電器を車両に搭載させたプラグイン式電気自動車について説明されている。但し、特許請求の範囲に記される車載用電力変換装置は、かかる技術に限定されるものでは無い。例えば、電気自動車又はハイブリッド自動車から充電器を省略させ、外部設備として設けられた高速充電器によって車両が充電される電源システムにも、特許請求の範囲に記される車載用電力変換装置が適用され得る。この場合、車載用コネクタとメインバッテリとの間には、パワートランジスタから構成されるリレー装置が設けられる場合も有り、また、高速充電器から供給された直流電力をDC−DC変換させ好ましい値の充電電圧に調整させる直流−直流変換回路が設けられる場合も有り得る。これらの場合、ヒートシンクの一方の面に当該リレー装置又は直流−直流変換回路を搭載させ、ヒートシンクの他方の面にDC−DCコンバータ310と搭載させることにより、本変形例に係る車載用電力変換装置では、上述同様の作用効果が奏されることとなる。
【実施例2】
【0055】
図8は、実施例1のヒートシンクを改変させた新たな電力変換装置が示されている。かかる電力変換装置3は、ヒートシンクがインナーフィンを具備するものに置換えられている。尚、この他の構成については、実施例1に示される構成と同様であるため、同一符号を付し、その説明を省略することとする。
【0056】
ヒートシンク120は、図示の如く、側壁123及びインナーフィン124が形成されている。側壁123は、冷媒の流入側INから流出側OUTに至るまで、外部に冷媒が流出しないように、側方の気密性が保たれている。また、インナーフィン124は、所定厚保の板状体が冷媒の通過方向に沿って形成され、適宜なピッチで複数配列されている。即ち、側壁123及びインナーフィン124によって冷媒の流通経路が形成されることとなる。かかる如くインナーフィンが複数形成されるので、放熱面積がヒートシンクの内部で十分確保され、熱交換が効果的に行われる。
【0057】
尚、本実施例に係るヒートシンクにあっても、アルミ等の熱伝導性の良好な材料から形成され、その製造方法にあっては、鋳造または機械加工によって製造される。但し、鋳造による場合には多孔質巣から冷媒が漏出する惧れがあるので、冷媒が液体流体である場合には、圧延材料等から製作されるのが好ましい。
【0058】
上述の如く、本実施例に係る電力変換装置3によると、ヒートシンク120の内部にインナーフィン124が複数形成されるので、放熱面積が十分確保され、冷媒との熱交換が効果的に行なわれる。
【0059】
また、ヒートシンク120の気密性が保たれるので、冷媒として用いられる流体は、流速が早くなってもヒートシンクの外部に漏出することなく、強制的に冷媒の流通経路を通過することとなり、冷媒の流通経路での熱交換が効果的に行なわれ、これにより、当該ヒートシンク120の小型化が可能となる。
【実施例3】
【0060】
しかし、実施例2の技術では、ヒートシンクの製法が鋳抜きまたは引き抜き加工を前提としているため、設計変更を自由に行なうことが出来ず、また、大型のヒートシンクの加工が困難となる。そこで、本実施例では、かかる問題を解消させるヒートシンクの製法及び構造について紹介する。尚、図9は、冷媒の流通断面を観察した状態が示されている。
【0061】
本実施例に係るヒートシンク130は、図9(a)に示す如く、一方の面131を包含する第1構造部130aと、他方の面132を包含する第2構造部130bとから構成される。即ち、充電器210を搭載させる構造とDC−DCコンバータ310を搭載させる構造との2ピース構造とされる。
【0062】
第1構造部130aは、底板部136aの両端に側壁形成体133aが略直角に形成されている。当該側壁形成体133aは、所定の板厚を有し、側壁133の一部分を成す。また、第1構造部130aは、双方の側壁形成体133aの間にフィン形成体134aが略平行に複数形成されている。更に、本実施例では、側壁形成体133aの端部の高さ寸法とフィン形成体134aの端部の高さ寸法が略一致するように加工される。
【0063】
第2構造部130bは、底板部136b及び側壁形成体133b及びフィン形成体134bとから成り、その形状は第1構造部130aの構成と略同様とされる。
【0064】
かかる第1構造部130a及び第2構造部130bは、通気経路の内部を分断させているので、フィン形成体が構造部の表面に現われ、工作機械による製造が可能となる。また、工作機械によって板材からの加工が可能となり、上述した鋳造品に起因する問題も解消される。
【0065】
図9(b)は、第1構造部130aと第2構造部130bとが組み付けられた状態が示されている。かかるヒートシンク130は、図示の如く、双方の側壁形成体及びフィン形成体が当接し、直接的に接触した状態とされ、双方の形成体によってインナーフィン134及び側壁133が各々形成される。また、第1構造部130aに形成された一方の面131には、充電器210が搭載され、第2構造部130bに形成された他方の面132には、DC−DCコンバータ130が搭載される。
【0066】
本実施の形態では、双方の構造部はシール溶接され、これにより、冷媒の外部への流出が防止されている。但し、双方の構造部のシールが確保されるのであれば、かかる構成に限定されることなく、当接部にOリングを設けて、互いの構造部が直接的に接触する当接面を確保する。
【0067】
上述の如く、本実施例に係る電力変換装置4によると、ヒートシンク130における冷媒の流通経路が上下の搭載面の間で分断されるので、インナーフィン等を構成する内部構造の機械加工が可能となる。
【実施例4】
【0068】
しかし、実施例4の電力変換装置4では、フィン形成体134a,134b及び側壁形成体133a,133bの当接部が切削機等の機械加工によって成形されるので、加工面には所定の寸法誤差が生じてしまう。双方のインナーフィンのピッチが一致して配列される場合、側壁形成体133a及び133bの高さ寸法の総和がフィン形成体134a及び134bの高さ寸法の総和より長いと、一方の側壁形成体133aと他方の側壁形成体133aとには、図10に示す如く、その当接面Sfに隙間Sが形成され、その程度によっては、溶接又はこの他のシール接触を施すことが困難とされる。
【0069】
そこで、本実施例に係るヒートシンクは、双方のインナーフィンのピッチが一致して配列される場合、双方の構造部に形成されたインナーフィン144a及び144bの高さ寸法を側壁形成体143a及び143bの高さ寸法より短くさせ、図11(a)に示す如く、インナーフィンの周囲、特に、インナーフィン143a及び143bの先端にクリアランスを形成させるようにすると良い。また、本実施例では、側壁構造体によって互いの構造部が直接的に接触している。
【0070】
これにより、図11(b)に示す如く、第1構造部140aと第2構造部140bとが接合された際、冷媒の流通経路では、双方のインナーフィンの先端に適宜なクリアランスが形成され、側壁形成体143aと側壁形成体143bとが確実に当接するようになる。即ち、本実施例に係る電力変換装置によると、インナーフィン先端にクリアランスが設けられるので、インナーフィン又は側壁形成体の寸法公差が粗悪であっても、側壁形成体同士が確実に当接し、かかる当接面におけるシール性が確保される。
【0071】
この場合、互いに向かい合うインナーフィン同士の熱の伝達は困難となるが、図12に示す如く、偏った分布状態の熱量は、側壁143の当接面Sfが直接的に接触しているので、熱伝導がスムーズに行なわれ、これにより、両方の構造部が効果的な放熱機能を果たす。
【0072】
図12では、充電器210の動作が顕著な場合が示されている。かかる場合、充電器210に収容されたパワートランジスタ204d等が駆動され、これらをはじめとする発熱性素子から熱量が第1構造部140aに向かって伝達される。ここで、冷媒の流通経路では熱交換が随時行なわれるため、パワートランジスタ204dの近傍を基準にすると、インナーフィン144a及び144bの双方に向かって温度勾配が生じている。従って、かかる熱量は、その一部は第1構造部側のインナーフィン144aの各々へ導かれ、冷媒と熱交換される。また、第1構造部へ導かれた残りの熱量は、側壁形成体143a及び143bが直接的に当接しているので、双方の構造部の当接面Sfを介して第2構造部へと伝達される。その後、第2構造部へ伝達された熱量は、第2構造部に設けられたインナーフィン144bに導かれ、ここでも冷媒と熱交換される。
【0073】
一方、相反的制御がDC−DCコンバータ側に切換えられると、かかるタイミングではヒートシンクの構造体内の温度勾配が逆転し、図13に示す如く、パワートランジスタ304dで発生した熱量は、その一部は第2構造部側のインナーフィン144bの各々へ導かれ、冷媒と熱交換される。また、残りの熱量は、側壁形成体143a及び143bが直接的に当接しているので、当接面Sfを介して第1構造部へと伝達される。
【0074】
即ち、本実施例に係るヒートシンク140では、側壁143における当接面Sfによって構造部間の熱量の伝達がスムーズに行なわれ、第1構造部140a及び第2構造部140bの双方を用いて放熱機能が効果的に発揮される。尚、図示の如く、冷媒との熱交換は、インナーフィンの表面のみで行なわれるのではなく、底板146によっても適宜に行なわれる。
【0075】
上述の如く、本実施例に係る電力変換装置5によると、側壁における当接面Sfによって、一方の構造部の熱量が他方の構造部へとスムーズに伝達されるので、当該装置が相反的制御される場合、ヒートシンクの内部で温度勾配が相反的に変化し、これに応じて熱量が低温側へと導かれ、双方の構造体において放熱作用が効果的に行なわれることとなる。また、これにより、ヒートシンク140の小型化が実現される。
【実施例5】
【0076】
しかし、実施例4のヒートシンクでは、双方のインナーフィンの先端が対向するように配置されるので、クリアランスを確実に形成させるためには、一定の加工精度が要求される。そこで、かかる加工精度の要求を幾分でも緩和させるため、図14(a)に示すヒートシンク150とするのが好ましい。以下、インナーフィンの断面に垂直な方向を「インナーフィンの配列方向F」又は「配列方向F」として、図14及び図15について説明する。
【0077】
図14(a)に示す如く、第1構造部150aのインナーフィン154aの板厚t1は、第2構造部150bのインナーフィン154bのうち、隣接するインナーフィン同士の隙間B2よりも薄い形状とされ、また、第2構造部150bのインナーフィン154bの板厚t2は、第1構造部150aのインナーフィン154aのうち、隣接するインナーフィン同士の隙間B1よりも薄い形状とされている。更に、インナーフィン154aの断面は、双方の構造部が組み合わさる場合、第2構造部150bにおけるインナーフィン同士の隙間B2の範囲内に配置され、また、インナーフィン154bの断面は、双方の構造部が組み合わさる場合、第1構造部150aにおけるインナーフィン同士の隙間B1の範囲内に配置される。より好ましくは、第1構造部のインナーフィンの断面は、第2構造部のインナーフィンの配列方向に対して半ピッチスライドされて配置される。
【0078】
これにより、図14(b)に示す如く、第1構造部150aと第2構造部150bとが組合された場合、双方のインナーフィンの先端は、互いに対向することなく、各々のインナーフィンの先端に十分なクリアランスが形成されることとなる。この場合、インナーフィン154aの高さは、側壁構造体153aの高さ寸法を上回っても良い。また、第2構造部150bのインナーフィンにあっても同様である。
【0079】
上述の如く、本実施例に係る電力変換装置6によると、双方のインナーフィンの先端がフィンの配列方向Fに対して適宜にスライドしてレイアウトされるので、双方の先端が互いに対面することなく、インナーフィンの先端の周囲に十分なクリアランスが設けられる。また、これによって、ヒートシンク150が適宜に当接するので、双方の構造部が確実に当接し、当該当接箇所のシール機能、及び、偏在する熱量の伝達効果を発揮させることとなる。
【0080】
尚、図15(a)に示す如く、インナーフィンの全長は、側壁構造体160a又は160bより短くしても良い。かかる場合、インナーフィンにおける先端のクリアランスは、より十分に確保されることとなる。
【0081】
また、図15(b)に示す如く、インナーフィンの全長を、側壁構造体160a又は160bより長くしても良い。同図におけるインナーフィンは、先端が底板166a又は166bに接触しない範囲で成形すれば良い。かかる場合、ヒートシンクの外形寸法に影響を与えることなく放熱面積を増加できる。
【実施例6】
【0082】
図16は、実施例2のヒートシンクを更に改変させた電力変換装置が示されている。かかる電力変換装置9は、ヒートシンクが中柱部185を具備するものに置換えられている。尚、この他の構成については、実施例1に示される構成と同様であるため、同一符号を付し、その説明を省略することとする。
【0083】
ヒートシンク180は、図示の如く、側壁183及び底板で包囲される内部領域に、中柱部185が形成されている。即ち、当該中柱部185は、側壁183と略同様の形態を成し、双方の側壁183の間に形成されている。従って、本実施例に係るヒートシンク180によると、側壁183及びインナーフィン184及び中柱部185及び底板によって冷媒の流通経路が形成され、当該流通経路は、本実施例の場合、2つの経路が形成されることとなる。
【0084】
上述の如く、本実施例に係る電力変換装置9によると、中柱部185によって熱量の伝達経路が新たに追加され、これにより、偏在する熱量の分布状態が直ちに均一化され、放熱効果の向上が図られる。従って、電力変換装置9では、熱源が相反的に切換わっても、これに応じて発生する熱量が停滞することなく、効果的な熱交換が行なわれることとなる。
【0085】
また、本実施例の中柱部は、パワートランジスタ等の放熱性素子の直下に設けられるのが好ましい。これにより、放熱性素子で発生した熱量は、対向する構造部への伝熱経路が短縮化されるので、これに伴い、ヒートシンク内での熱交換がより効果的に行なわれる。
【0086】
尚、本実施例に係る電力変換装置9を改変し、図17に示すような電力変換装置10としても良い。具体的に説明すると、本実施例で用いられるヒートシンク190は、一方の面191を包含する第1構造部190aと、他方の面192を包含する第2構造部190bとから構成される。また、双方の構造部190a及び190bには、一部が直接接触して成る中柱部195を有している。かかる中柱部195は、双方の構造部の中柱構造体195a及び195bから成り、これらの構造体が互いに当接する。これにより、側壁193の2つの伝熱経路に限らず、新たな伝熱経路が形成されることとなる。
【0087】
また、本実施例の中柱部195は、両側の側壁193の間に配置されている。そして、かかる中柱部195は、放熱性素子の直下に配置されることにより、熱量の伝達作用がより円滑に行なわれる。
【0088】
更に、図示の如く、ヒートシンクの上下層を分断させる2ピース構造とされるので、インナーフィン等の内部構造の加工が容易となる。
【0089】
尚、図17の場合、インナーフィン194a及び194bの先端が対向しているが、当該インナーフィンのレイアウトが、かかる態様に限定されるものではない。例えば、図18に示す如く、ヒートシンク190の構造を2ピース構造とした上で、インナーフィンの配列を互いに半ピッチシフトさせても良い。かかる場合、伝熱経路が好適に確保される上、インナーフィンの先端におけるクリアランスが十分に取られる。そして、かかる構造により、ヒートシンクの構造体が正しく接合されるので、上述したあらゆる効果を伴って、放熱効果の向上が図られる。
【0090】
尚、上述した実施の形態では、図面を参照すると、両方のヒートシンクの高さ寸法が同じであるように示されている。しかし、かかる寸法は、搭載させる充電器又はDC−DCコンバータ等の電力変換部の電力量又は発熱量に応じて適宜に調整させても良い。
【符号の説明】
【0091】
1 車載用電力変換装置
100 ヒートシンク
200 第1の電力変換部
210 充電器
300 第2の電力変換部
310 DC−DCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクと、前記ヒートシンクの一方の面に搭載され発熱性素子を具備する第1の電力変換部と、前記一方の面に対称的に設けられた他方の面に搭載され発熱性素子を具備する第2の電力変換部とを備え、
前記第1の電力変換部及び前記第2の電力変換部は、各々が相反的に出力電力を出力させることを特徴とする車載用電力変換装置。
【請求項2】
ヒートシンクと、前記ヒートシンクの一方の面に搭載され発熱性素子を具備する第1の電力変換部と、前記一方の面に対称的に設けられた他方の面に搭載され発熱性素子を具備する第2の電力変換部と、前記第1の電力変換部を制御させる第1の制御回路と、前記第2の電力変換部を制御させる第2の制御回路とを備え、
前記第1の制御回路は、
前記第2の電力変換部の出力電力を低減又は出力休止させる信号が当該第2の制御回路へ入力されている場合、前記第1の電力変換部の出力電力を増加又は出力開始させる信号が当該第1の制御回路へ入力され、
前記第2の制御回路は、
前記第1の電力変換部の出力電力を低減又は出力休止させる信号が当該第1の制御回路へ入力されている場合、前記第2の電力変換部の出力電力を増加又は出力開始させる信号が当該第2の制御回路へ入力されることを特徴とする車載用電力変換装置。
【請求項3】
前記第1の電力変換部は、商用電力を変換させてメインバッテリを充電させる充電器とされ、
前記第2の電力変換部は、前記メインバッテリの出力電力を変換させてサブバッテリを充電させる補器用コンバータとされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車載用電力変換装置。
【請求項4】
前記ヒートシンクは、側壁及びインナーフィンが形成されており、前記側壁及び前記インナーフィンによって冷媒の流通経路が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の車載用電力変換装置。
【請求項5】
前記ヒートシンクは、前記一方の面を包含する第1構造部と前記他方の面を包含する第2構造部とから成ることを特徴とする請求項4に記載の車載用電力変換装置。
【請求項6】
前記インナーフィンは、当該インナーフィンの周囲にクリアランスが形成され、
前記側壁は、前記第1構造部の一部と前記第2構造部の一部とが直接接触して形成されることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の車載用電力変換装置。
【請求項7】
前記インナーフィンのうち一方の構造部のインナーフィンは、向かい合う他方の構造部のインナーフィン同士の間隙より薄い板厚とされ、
前記一方の構造部のインナーフィンの断面は、前記インナーフィン同士の間隙の範囲内に配置されることを特徴とする請求項6に記載の車載用電力変換装置。
【請求項8】
前記ヒートシンクは、更に、前記側壁で包囲される内部領域に中柱部が形成されており、前記側壁及び前記インナーフィン及び前記中柱部によって冷媒の流通経路が形成されていることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の車載用電力変換装置。
【請求項9】
前記ヒートシンクは、前記一方の面を包含する第1構造部と前記他方の面を包含する第2構造部とから成り、双方の構造部の一部が直接接触して成る中柱部を有し、
前記中柱部は、前記側壁の双方の間に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の車載用電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−120388(P2011−120388A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275981(P2009−275981)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】