説明

車載用電子機器,及びデータ送受信プログラム

【課題】運転中の危険が増加することなく情報処理装置と車載用電子機器とのデータ送受信を行う。
【解決手段】車両に搭載される車載用電子機器において,車両に携行される情報処理装置と接続される接続手段と,前記情報処理装置からのデータ送受信要求に応答して前記情報処理装置とデータ送受信を実行するデータ送受信手段と,前記車両の走行状態と停止状態を検知する車両状態検知手段とを有し,前記データ送受信手段は,前記車両が停止状態のときに前記情報処理装置とのデータ送受信を実行し,前記車両が走行状態のときは前記情報処理装置とのデータ送受信を実行しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,車両の乗員に携行される情報処理装置とデータ送受信を行う車載用電子機器及び前記情報処理装置にデータ送受信を実行させるデータ送受信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車載用電子機器は車両の進路や道路状況などの情報を提供するナビゲーション機能だけではなく,カーオーディオ,テレビ受像器及びカーナビゲーションなどが一体化されたものが普及しつつある。かかる車載用電子機器の一例として,ハードディスクに格納した楽曲データを再生出力する車載用電子機器が特許文献1に記載されている。
【0003】
また,かかる車載用電子機器とパーソナルコンピュータなどの情報処理装置とをUSB(Universal Serial Bus)などで接続し,相互にデータ送受信を行う技術が提案されている。例えばインターネットで配信される楽曲データや画像データを情報処理装置でダウンロードし,これらデータを著作権法上問題のない範囲で情報処理装置から車載用電子機器へ送信することにより,ユーザは車載用電子機器で楽曲や画像を鑑賞することができる。あるいは,車載用電子機器のハードディスクなどに格納された楽曲データ等をバックアップ目的で情報処理装置のハードディスクへ送信することも可能となる。
【特許文献1】特開2006−31840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,情報処理装置を車両内に携行して車載用電子機器と接続し,相互にデータ送受信を行う場合には次のような問題が生じる。すなわち,送受信するデータファイルの選択や送受信の開始指示などの操作入力,あるいはデータ送受信を車両の走行中に行うと,ユーザは注意を運転に集中できず,運転中の危険が増加してしまう。
【0005】
そこで,本発明の目的は,運転中の危険が増加することなく情報処理装置とデータ送受信を行うことができる車載用電子機器,及び情報処理装置のデータ送受信プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために,本発明の第1の側面によれば,車両に搭載される車載用電子機器において,車両に携行される情報処理装置と接続される接続手段と,前記情報処理装置からのデータ送受信要求に応答して前記情報処理装置とデータ送受信を実行するデータ送受信手段と,前記車両の走行状態と停止状態を検知する車両状態検知手段とを有し,前記データ送受信手段は,前記車両が停止状態のときに前記情報処理装置とのデータ送受信を実行し,前記車両が走行状態のときは前記情報処理装置とのデータ送受信を実行しないことを特徴とする。
【0007】
上記側面によれば,車両が走行状態のときは車載用電子機器と情報処理装置とのデータ送受信を実行しないのでユーザは運転に集中でき,運転中の危険の増加を防止できる。
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の第2の側面によれば,車両に搭載される車載用電子機器において,車両に携行される情報処理装置と接続される接続手段と,前記情報処理装置にて前記車載用電子機器とのデータ送受信が指示入力され,前記指示入力に基づく前記情報処理装置からのデータ送受信要求に応答して前記情報処理装置とデータ送受信を行うデータ送受信手段と,前記車両の走行状態と停止状態を検知する車両状態検知手段とを有し,前記車両の走行状態を検知したとき,前記車両状態検出手段が走行状態信号を前記情報処理装置へ出力して前記指示入力の受け付けを行わせないことを特徴とする。
【0009】
上記側面によれば,車両が走行状態のときは,情報処理装置への指示入力をできないようにするので,ユーザは運転に集中でき,運転中の危険の増加を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば,運転中の危険が増加することなく情報処理装置と車載用電子機器とで相互にデータ送受信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下,図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し,本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0012】
図1は,本実施の形態における車載用電子機器および情報処理装置の構成を説明する図である。車載用電子機器100はナビゲーション機能,カーオーディオ機能等を備え,パーソナルコンピュータである情報処理装置200とUSBケーブル70で接続されて相互にデータ送受信を行う。
【0013】
車載用電子機器100が備える情報処理ユニット10は,不図示のCPU,ROM,RAMを有し,さらに情報処理ユニット10の動作を統合的に制御するオペレーティングシステム18と,オペレーティングシステム18を介して情報処理ユニット10に各種手順を実行させ,車載用電子機器100の各部とのデータの入出力を行わせるナビゲーションモジュール12,メディアプレーヤ14,データ送受信プログラム16などのアプリケーションプログラムとを有する。
【0014】
情報処理ユニット10はこれらのアプリケーションプログラムに従い,タッチパネルやプッシュボタンで構成されユーザからの各種指示入力を受け付ける操作入力部34,GPS(Global Positioning System)信号を受信して自車の位置を検出する位置検出部40,車両の走行状態と停止状態を検知する車両状態検知部38,及び車載用電子機器100に車両のバッテリーから供給される電源の状態を監視する電源監視部42から各種データの入力を受けて情報処理を行う。
【0015】
そして情報処理ユニット10は,液晶ディスプレイなどの表示装置を有する表示部30,増幅器やスピーカなどの音声出力装置を有する音声出力部32により処理されたデータの出力を行う。さらに,情報処理ユニット10は,ハードディスクやDVDで構成される記憶装置20に対して各種データの入出力を行い,USBインターフェース36を介してUSBケーブル70で接続される情報処理装置200とのデータ送受信を行う。ここで,USBインターフェース36は接続手段に対応する。
【0016】
例えば情報処理ユニット10は,ナビゲーションモジュール12に従いユーザが操作入力部34から入力する目的地,希望到着時刻などの情報に基づき,位置検出部40により検知した現在位置から目的地までの経路誘導を行う。そして情報処理ユニット10は,記憶装置20に格納される地図データ26から検索した経路を表示部30に表示させ,または音声出力部32に誘導情報を音声出力させる。
【0017】
また,情報処理ユニット10は,メディアプレーヤ14に従い操作入力部34から入力されるユーザの指示に応じて記憶装置20に格納される楽曲データ24からオーディオ信号を生成して音声出力部32に提供し,音声出力部32に楽曲を再生出力させる。あるいは,情報処理ユニット10は,記憶装置20に格納される画像データ22に基づく画像を表示部34に表示させる。
【0018】
さらに,情報処理ユニット10は,データ送受信プログラム16に従いUSBにより接続される情報処理装置200とUSB規格に基づきデータ送受信を行う。例えば,情報処理ユニット10は,記憶装置20に格納された画像データ22や楽曲データ24のデータファイルを表示部30の表示画面に一覧表示させ,ユーザが操作入力部34により選択入力したデータファイルを情報処理装置200へ送信する。あるいは,情報処理ユニット10は,情報処理装置200からの要求に応答して記憶装置20に格納された画像データ22や楽曲データ24のデータファイルを情報処理装置200へ送信し,また情報処理装置200から送信されるデータを受信して記憶装置20へ格納する。このように,情報処理ユニット10,データ送受信プログラム16がデータ送受信手段に対応する。
【0019】
情報処理ユニット10がデータ送受信プログラム16に従ってデータファイルを送信する場合には,図2(A)に示すように1つのファイルFを複数の単位のデータセット,第1単位のデータf1,第2単位のデータf2,第3単位のデータf3,…,第「n」単位のデータfn(nは自然数)に分割して情報処理装置200に送信する。ここで,ファイルを分割する単位の設定は種々可能であり,例えば予め定められたデータサイズや,楽曲データの再生時間を単位として分割することが可能である。
【0020】
情報処理ユニット10は,このように分割したデータセットを第1単位から順次情報処理装置200へ送信し,送信済みの単位の送信履歴を記憶装置20のハードディスクなどの不揮発性の記憶装置に記憶する。ここで,送信履歴としては送信済み単位ごとのフラグや送信済みデータのアドレス情報などが記憶される。そのようにして,送信が途中で中断された場合に,ファイルの途中からの送信の再開が可能となる。例えば図2(B)に示すように「送信側」である車載用電子機器100が第1単位のデータf1から第「k」単位のデータf(k)まで送信済みの場合には第「k+1」単位のデータf(k+1)からの送信の再開を可能にする。また,後述するように情報処理装置200から送信されるファイルも同様に分割された単位で送信されるので,情報処理ユニット10は受信済み単位の受信履歴を記憶し,情報処理装置200へ受信した単位の受信完了通知を送信する。
【0021】
また情報処理ユニット10は,上記の分割単位すべてについての送信履歴を記憶する代わりに,電源監視部42により所定値を下回る電源電圧を検知した場合は送信済み単位のデータのアドレスを不揮発性のバックアップ用RAMなどに記憶してもよい。そうすることによって,電源異常によりデータ送信が中断された場合であってもデータ送信を再開する時に送信すべき単位のデータの所在が迅速に特定できる。
【0022】
また情報処理ユニット10は,上記の分割単位ごとに情報処理装置200から送られる受信完了通知を受け取り,その度に送信済みの単位のデータを記憶装置20から削除する。あるいは,情報処理ユニット10は,分割単位ごとのデータ送信中はそのデータファイルをユーザからアクセスできないファイルとして管理し,すべての単位の送信が終了し,情報処理装置200からすべての単位の受信完了通知が送られた時点でそのデータファイルを記憶装置20から削除する。
【0023】
情報処理装置200は,上述したように例えばパーソナルコンピュータにより構成され,CPU50,メモリ52,ハードディスク60,キーボードなどを有する操作入力部54,液晶ディスプレイなどを有する表示部56とを備え,さらにUSBにより車載用電子機器100と接続されるUSBインターフェース58を備える。これら各部は,内部バスBUSにより接続される。
【0024】
CPU50は,ハードディスク60に格納されたオペレーティングシステム68に従い,メモリ52を作業領域として各種制御のための演算を行い,情報処理装置200の動作を統合的に制御する。ハードディスク60には車載用電子機器100とのデータ送受信を行うためのデータ送受信プログラム66,情報処理装置200のバッテリー残量を監視する電源監視プログラム67などのアプリケーションプログラムが格納され,CPU50はこれらのアプリケーションプログラムに従い,ユーザが操作入力部54から入力する各種データの処理を行って処理結果を表示部56に出力する。
【0025】
さらに,CPU50はUSBインターフェース58を介して,USBケーブル70で接続される車載用電子機器100と各種データの送受信を行う。例えば,CPU50はデータ送受信プログラム66に従いハードディスク60に格納される画像データ62や楽曲データ64のデータファイルを表示部56の表示画面に一覧表示させ,ユーザが操作入力部54により選択入力したデータファイルを車載用電子機器100へ送信する。あるいは,車載用電子機器100から車載用電子機器100の記憶装置20に格納される画像データ22や楽曲データ24などのデータファイル名を取得して表示部56に一覧表示させ,ユーザが操作入力部54により選択入力したデータファイルを送信するように車載用電子機器100へ要求する。そして,これに応答して車載用電子機器100から送信されるデータファイルはハードディスク60に格納される。
【0026】
この場合において,CPU50は送受信するデータファイルを図2(A)に示すように複数の単位のデータセット,第1単位のデータf1,第2単位のデータf2,第3単位のデータf3,…,第「n」単位のデータfnに分割して車載用電子機器100に送信し,送信済みの単位の履歴をハードディスク60に記憶する。また,CPU50は車載用電子機器100から送信されるデータを受信する場合にも受信済みの単位の履歴をハードディスク60に記憶し,車載用電子機器100に受信完了通知を送信する。そのようにして,図2(B)を用いて説明したように,データ送信が途中で中断された場合にファイルの途中から送信を再開することを可能にする。
【0027】
またCPU50は,上記の分割単位ごとに車載用電子機器100から受信完了通知が送られる度に送信済みの単位のデータをハードディスク60から削除する。あるいは,CPU50は,分割単位ごとのデータ送信中はそのデータファイルをユーザからアクセスできないファイルとして管理し,すべての単位の送信が終了し,車載用電子機器100から受信完了通知が送られた時点でそのデータファイルをハードディスク60から削除する。
【0028】
本実施形態においては,車載用電子機器100の情報処理ユニット10は,車両状態検知部38により車両の停止状態が検知された場合には,データ送受信プログラム16に従って上記データ送受信を行い,車両の走行状態が検知された場合にはデータ送受信を行わないことを特徴とする。ここで,車両の走行状態とは車両の走行中も含め,車両が停止していてもエンジンが駆動中であったりパーキングブレーキが解除されていたりする車両が移動可能な状態も含むものとし,車両状態検知部38により次のように検知される。
【0029】
車両状態検知部38は,車両のパーキングブレーキが解除されている解除状態と作動している作動状態を検知するパーキングブレーキ検知部39からの入力に基づき,パーキングブレーキの解除状態が検知されたときは車両の走行状態を検知し,パーキングブレーキの作動状態が検知されたときは車両の停止状態を検知する。
【0030】
また,車両状態検知部38は,パーキングブレーキ検知部39に代えて,エンジンの駆動状態と停止状態とを検知する不図示のエンジン制御装置からの信号を受け,エンジンが駆動状態であれば車両の走行状態を検知し,エンジンが停止状態であれば車両の停止状態を検知するようにしてもよい。
【0031】
また,車両状態検知部38は,パーキングブレーキ検知部39に代えて,車両の走行速度を測定する不図示の走行速度測定部を設け,走行速度測定部により測定される車両の走行速度に基づいて,車両の走行状態と停止状態を検知するように構成してもよい。例えば走行速度に応じてパルス信号を生成する車速センサを走行速度測定部に設け、車速センサから一定の走行速度以上を示すパルス信号が出力されているときに車両の走行状態を検知し,車速センサから前記のようなパルス信号が出力されていないときに停止状態を検知するようにしてもよい。
【0032】
また、車両状態検知部38は位置検出部40により検出される車両の現在位置に基づき,現在位置が変化しているときは走行状態を検知し,現在位置が変化していなければ停止状態を検知するように構成してもよい。あるいは,車両状態検知部は,上記手段の組合せにより車両の走行状態と停止状態とを検知するように構成してもよい。このように,車両状態検知部38は車両状態検知手段に対応する。
【0033】
このような構成により,車両が移動可能な状態も含め走行状態にあるときは,情報処理ユニット10は例えば情報処理装置200からのデータ送受信要求にかかわらずデータ送受信を停止し,または接続断を擬似的に示す信号を情報処理装置200へ送ることにより,情報処理装置200とのデータ送受信を行わないようにする。そうすることにより,ユーザはデータ送受信状態を気にせずに運転に注意を集中することができ,運転中の危険の増加を防止することができる。
【0034】
また,本実施形態においては,車載用電子機器100の情報処理ユニット10は車両の走行状態が検知されたときには情報処理装置200に走行状態を示すフラグ情報などの走行状態信号を送り,情報処理装置200のCPU50はデータ送受信プログラム66に従って,車両が走行状態にあるときは操作入力部54からの操作入力を受け付けないようにすることに特徴を有する。例えば,車両が走行状態にある場合は操作入力部54のキーボードからの入力信号を処理しないようにしたり,表示部56の入力画面をトーンダウンあるいは入力禁止の表示をしたりすることができる。
【0035】
そうすることによって,車両が走行状態にあるときにはユーザは情報処理装置200への操作入力に注意を奪われることなく運転に注意を集中することができ,運転中の危険の増加を防止することができる。なお,車載用電子機器100は,走行状態信号としてフラグ情報の代わりに車両の速度を情報処理装置200へ送り,情報処理装置200が車両の速度が所定の速度以上の走行状態であるかを判断し,走行状態の場合には操作入力を受け付けないようにしてもよい。
【0036】
また,その場合において,CPU50は操作入力部54からの操作入力を受け付けないようにするまでに指示入力されたデータ送受信については,これを車載用電子機器100と実行することを特徴とする。ユーザの運転に対する注意を削減してしまう情報処理装置200への操作入力を禁止することで運転中の危険の増加はある程度防止できるので,車載用電子機器100と情報処理装置200は車両が走行状態にあってもデータの送受信を行う。そうすることにより,所望のデータ送受信完了までの時間を短縮でき,ユーザの利便性が損なわれることを防止できる。
【0037】
以下,図3〜図7を用いて,車載用電子機器100と情報処理装置200とで行われるデータ送受信の動作手順について説明する。
【0038】
図3は,車両が停止状態の場合の車載用電子機器100と情報処理装置200との動作手順を説明するシーケンス図である。図3(A)は車載用電子機器100,情報処理装置200いずれかの要求に基づいて,車載用電子機器100から情報処理装置200へデータが送信される場合の手順を示す図である。まず,車載用電子機器100と情報処理装置200とのUSB規格に基づく初期化シーケンスS10が行われる。
【0039】
次に,車載用電子機器100から送信するデータファイルの分割単位,例えばn個の単位に分割される場合は分割単位数「n」が情報処理装置200へ通知され(S12),情報処理装置200はn個の単位に分割されたデータファイルが順次送信されることが認識できる。この手順S12は初期シーケンスS10に含まれる手順としてもよい。または,車載用電子機器100のデータ送受信プログラム16と情報処理装置200のデータ送受信プログラム66とで,データファイルの分割単位を予め同一に設定しておけば,この手順を省略してもよい。
【0040】
そして,車載用電子機器100から情報処理装置200へ第1単位のデータが送信され(S14),車載用電子機器100は第1単位のデータ送信履歴を記憶する(S14a)。これを受信した情報処理装置200は第1単位のデータ受信履歴を記憶し(S14b),車載用電子機器100に第1単位のデータ受信完了を通知する(S15)。次いで第2単位のデータ送信(S16)とこれに伴う第2単位の送信履歴の記憶(S16a),受信履歴の記憶(S16b),及び受信完了通知(S17)が行われ,以降同様の手順がファイルの分割単位ごとに実行される。そして第n単位のデータについてデータ送信(S18),送信履歴記憶(S18a),受信履歴記憶(S18b),及び受信完了通知(S19)が行われると,最後に送信終了通知が送信されて(S20)データ送受信が終了する。
【0041】
図3(B)は,情報処理装置200からの要求に基づいて情報処理装置200から車載用電子機器100へデータが送信される場合の手順を示す図である。まず,車載用電子機器100と情報処理装置200とのUSB規格に基づく初期化シーケンスS10が行われ,以降の手順は図3(A)に示した手順と逆方向に実行される。すなわち,情報処理装置200から車載用電子機器100へ送信するデータファイルの分割単位数「n」が通知され(S22),第1単位のデータについてのデータ送信(S24),送信履歴の記憶(S24b),受信履歴記憶(S24a),及び受信完了通知(S25)が行われる。次に第2単位のデータについてのデータ送信(S26),送信履歴記憶(S26b),受信履歴記憶(S26a),及び受信完了通知(S27)が行われ,順次同様の手順が分割単位ごとに行われる。そして,第n単位のデータについてデータ送信(S28),送信履歴記憶(S28b),受信履歴記憶(S28a),及び受信完了通知(S29)が行われ,最後に送信終了通知が送信されて(S30)データ送信が終了する。
【0042】
図4は,車両が走行状態の場合の車載用電子機器100と情報処理装置200との動作手順を説明するシーケンス図である。まず,図4(A)でデータ送受信開始前に車両が走行状態にある場合について説明する。車載用電子機器100にて車両の走行状態が検知されると(S10a),車載用電子機器100は情報処理装置200に擬似的な接続断の信号を送信する(S10b)。よって,情報処理装置200は車載用電子機器100との接続断を認識するので,初期化シーケンスが行われず(S10c),データ送信は開始されない。
【0043】
図4(B)は,図3(A)で説明した場合において車載用電子機器100からのデータ送信開始後に車両の走行状態が検知される場合の手順を示している。すなわち,車載用電子機器100から手順S12で分割単位数「n」を送信した後に分割された単位ごとにデータファイルの送信を行い,第「k」単位(kはnより小さい自然数)のデータについてのデータ送信(S17a),送信履歴記憶(S17b),受信履歴記憶(S17c),及び受信完了通知(S17d)が行われた後に車両の走行状態が検知される(S17e)。すると,車載用電子機器100は接続断を擬似的に示す信号を情報処理装置200へ送り(S17f),これを受けた情報処理装置200は車載用電子機器100との接続断が生じたと認識してタイムアウトによりデータ受信を終了する(S17g)。
【0044】
図4(C)は,図3(B)で説明した場合において情報処理装置200からのデータ送信開始後に車両の走行状態が検知される場合の手順を示している。すなわち,情報処理装置200から手順S22で分割単位数「n」を送信した後に分割された単位ごとにデータファイルの送信を行い,第「k」単位のデータについてデータ送信(S27a),送信履歴記憶(S27b),受信履歴記憶(S27c),及び受信完了通知(S27d)が行われた後に車載用電子機器100にて車両の走行状態が検知される(S27e)。すると,車載用電子機器100から接続断を擬似的に示す信号を情報処理装置200へ送り(S27f),これを受けた情報処理装置200は車載用電子機器100との接続断が生じたと認識してタイムアウトによりデータ送信を終了する(S27g)。
【0045】
上記のような手順により,ユーザはデータ送受信状態を気にせずに運転に注意を集中することができ,運転中の危険の増加を防止することができる。
【0046】
図5は,車両が走行状態の場合における車載用電子機器100と情報処理装置200との別の動作手順を説明するシーケンス図である。図5(A)は,情報処理装置200に対するユーザの指示入力に基づいて情報処理装置200が車載用電子機器100にデータ送信を要求し,これに応答して車載用電子機器100から情報処理装置200へデータが送信される場合の手順を示す図である。
【0047】
まず初期化シーケンスが行われ(S110),その後に車載用電子機器100が車両の走行状態を検知すると(S111),車両の走行状態を示すフラグ情報を情報処理装置20送り(S112),これを受けた情報処理装置200は操作入力部54からの指示入力を受け付けない状態になる(S113)。ここで,既にデータ受信の指示入力が情報処理装置200にされている場合は,情報処理装置200はそのデータ送信を車載用電子機器100に要求する(S114)。そして,車載用電子機器100はこれに応答して,送信するデータファイルの分割単位数「n」を通知し(S116),順次第1単位のデータからデータ送信(S118),送信履歴記憶(S118a),受信履歴記憶(S118b),及び受信完了通知(S119)が行われ,第n単位のデータの送信(S120),送信履歴記憶(S120a),受信履歴記憶(S120b),及び受信完了通知(S121)が行われると,最後に車載用電子機器100は送信終了通知を送信して(S122)データ送受信を終了する。
【0048】
図5(B)は,情報処理装置200に対するユーザの指示入力に基づいて情報処理装置200が車載用電子機器100にデータ送信を行う場合の手順を示す図である。初期化シーケンス手順S110から情報処理装置200が操作入力部54からの指示入力を受け付けない状態になる手順S113までは図5(A)と同じである。ここで,既にデータ送信の指示入力が情報処理装置200にされている場合は,情報処理装置200はそのデータ送信を車載用電子機器100に対して開始する。すなわち,情報処理装置200は送信するデータファイルの分割単位数「n」を通知し(S216),順次第1単位のデータ送信(S218),送信履歴記憶(S218b),受信履歴記憶(S218a),及び受信完了通知(S219)が実行され,第n単位のデータの送信(S220),送信履歴記憶(S220b),受信履歴記憶(S220a),及び受信完了通知(S221)が実行されると,最後に情報処理装置200は送信終了通知を送信して(S222)データ送信を終了する。
【0049】
このような手順により,車両が走行状態にあるときにはユーザは情報処理装置200への操作入力に注意を奪われることなく運転に注意を集中することができ,運転中の危険の増加を防止することができる。さらにその場合において,車両が走行状態にある間にデータの送受信を行うことにより,所望のデータ送受信完了までの時間を短縮でき,ユーザの利便性が損なわれることを防止できる。なお,上記の図5(A),図5(B)のそれぞれにおいて,車両の停止状態が検知された場合には情報処理装置200は再び操作入力を受け付けるような手順とすることが可能である。
【0050】
図6は,車載用電子機器100と情報処理装置200とが中断されたデータ送受信を再開する場合の動作手順を説明するシーケンス図である。図6(A)は,図4(B)で説明した手順の後に,車載用電子機器100からのデータ送信を再開する場合の手順について説明する図である。車載用電子機器100は車両の停止状態を検知して(S302),情報処理装置200と初期化シーケンスS310を実行する。そして,図4(B)では車載用電子機器100は第「k」単位のデータ送信まで終了しているので,第「k+1」単位のデータ送信を行い(S312),その送信履歴を記憶する(S312a)。すると,このデータを受信した情報処理装置200は,受信履歴を記憶し(S312b)受信完了通知を送る(S313)。以後,順次分割された単位ごとに同様の手順が実行され,第n単位のデータ送信(S320),送信履歴記憶(S320a),受信履歴記憶(S320b),及び受信完了通知(S321)が実行されると,車載用電子機器100は送信終了通知を情報処理装置200に送り(S322),データ送受信を終了する。
【0051】
図6(B)は,図4(C)で説明した手順の後に,車載用電子機器100から情報処理装置200へデータ送信再開を要求する場合の手順について説明する図である。車載用電子機器100は車両の停止状態を検知して(S302),情報処理装置200と初期化シーケンスS310を実行する。そして,図4(C)では車載用電子機器100は第「k」単位のデータ受信まで終了しているので,第「k+1」単位のデータ送信の要求を行う(S411)。するとこれに応答して,情報処理装置200は,第「k+1」単位のデータ送信を行い(S412)その送信履歴を記憶する(S412b)。すると,このデータを受信した車載用電子機器100は,受信履歴を記憶し(S412a),受信完了通知を送る(S413)。以後,順次分割された単位ごとに同様の手順が行われ,第n単位のデータ送信(S420),送信履歴記憶(S420b),受信履歴記憶(S420a),及び受信完了通知(S421)が実行されると,情報処理装置200は送信終了通知を車載用電子機器100に送り(S422),データ送受信を終了する。
【0052】
上記手順により,データ送受信が中断された場合であっても,再開時にはデータファイルの途中の単位のデータ送受信から再開できるので,データ送受信完了までの時間を短縮することができる。
【0053】
また,図6(A),図6(B)では,受信側が第「k」単位のデータ受信履歴をハードディスクなどの不揮発性の記憶装置に記憶した後にデータ送受信が中止され,その後にデータ送受信が再開する場合の動作手順を説明したが,受信側が例えば電源異常などの原因により第「k」単位の受信履歴を記憶していない場合がある。その場合にデータ送受信を再開するときは,送信側から受信側に受信済みの単位の通知を要求する手順を加えることもできる。例えば,図6(A)において手順S312の前に,車載用電子機器100から情報処理装置200へ受信済みの単位の通知を要求し,情報処理装置200が通知する受信済み単位(「k」)の次の単位(「k+1」)からデータ送信を再開する手順とすることができる。
【0054】
上述したように,本実施の形態においては車両の走行状態と停止状態に基づき車載用電子機器100と情報処理装置200とのデータ送受信を中止することを特徴とするが,変形例としては,車両の走行状態と停止状態の代わりに,車載用電子機器100または情報処理装置200の電源の状態に基づきデータ送受信を中止することもできる。たとえば,図4(B),図4(C)で示した手順の変形例として,車載用電子機器100が車両の走行状態の検知(S10a,S17e,S27e)の代わりに,電源監視部42により車両のバッテリー電圧が例えばエンジン点火などのタイミングで所定値以下に降下したことを検知した場合に,車載用電子機器100からは擬似的に接続断を示す信号を情報処理装置へ送信することによりフェイルセーフ処理としてデータ送受信を中止することもできる。その場合は,図5(A),図5(B)の手順S111において車両の走行状態を検知する代わりに電源が正常復帰したことを検知したときは,車載用電子機器100はデータ送受信を再開することができる。
【0055】
また別の変形例として,情報処理装置200が電源異常を検知した場合に車載用電子機器100に擬似的に接続断信号を送り,あるいは送信中止を要求し,車載用電子機器100はこれに応答してデータ送信を中止することも可能である。
【0056】
図7は,情報処理装置200の電源異常によりデータ送受信が中断される場合の動作手順を説明するシーケンス図である。図7(A)に示すように,車載用電子機器100から情報処理装置200にデータ送信する場合において,車載用電子機器100から第「k」単位のデータ送信(S510)と送信履歴記憶(S510a)を行い,情報処理装置200が受信履歴記憶(S510b)と受信完了通知(S511)を行った後に,情報処理装置200のバッテリー残量が所定値以下となったことが検知されると(S512),情報処理装置200から擬似的に接続断を示す信号を送り(S513),車載用電子機器100はタイムアウトによりデータ受信を中止してもよい(S514)。その場合に情報処理装置200の電源が復帰して情報処理装置200がデータ受信を再開する場合には,情報処理装置200は第「k+1」単位のデータ送信を要求し(S515),車載用電子機器100から第「k+1」単位のデータ送信から再開する(S516)。そうすることにより,データファイルの送信完了までの時間を短縮することができる。
【0057】
あるいは,図7(B)に示すように,情報処理装置200から車載用電子機器100にデータ送信する場合において,情報処理装置200から第「k」単位のデータ送信して(S610)送信履歴記憶(S610b)を行い,車載用電子機器100が受信履歴記憶(S610a)と受信完了通知(S611)を行った後に,情報処理装置200のバッテリー残量が所定値以下となると(S612),情報処理装置200から擬似的に接続断を示す信号を送り(S613),車載用電子機器100はタイムアウト(S614)によりデータ受信を中止してもよい。そして情報処理装置200の電源が復帰して情報処理装置200がデータ送信を再開する場合には,情報処理装置200は第「k+1」単位のデータ送信から再開する(S616)。そうすることにより,データファイルの送信完了までの時間を短縮することができる。
【0058】
なお,車載用電子機器100と情報処理装置200との接続はUSBを例に説明したが,接続の形態はこれに限られず,他のインターフェースを用いた接続や,無線通信による接続であってもよい。また,情報処理装置200はパーソナルコンピュータの代わりにPDA(Personal Digital Assistant)その他の携帯情報端末や,携帯用音楽再生装置などで構成することも可能である。
【0059】
また,図5を用いて説明したように車両の走行状態のときに情報処理装置200はデータ送受信の指示入力を受け付けなくなるが,データ送受信の指示入力だけでなく情報処理装置200の他の機能,例えばワードプロセッサその他のアプリケーションプログラムの操作入力も受け付けなくするような構成としてもよい。そうすることにより,車両の走行中にはユーザは注意を運転に集中し易くなり,運転中の危険の増加を防止することができる。あるいは,助手席のユーザによるデータ送受信の操作は車両走行中であっても可能とするために,車両の走行状態のときに操作入力を受け付けないモードと受け付けるモードを予め設定可能にしてもよい。
【0060】
以上説明したとおり,本実施の形態によれば,運転中の危険が増加することなく情報処理装置と車載用電子機器とで相互にデータ送受信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施の形態における車載用電子機器および情報処理装置の構成を説明する図である。
【図2】データファイルの分割単位について説明する図である。
【図3】車両が停止状態の場合の車載用電子機器100と情報処理装置200との動作手順を説明するシーケンス図である。
【図4】車両が走行状態の場合の車載用電子機器100と情報処理装置200との動作手順を説明するシーケンス図である。
【図5】車両が走行状態の場合における車載用電子機器100と情報処理装置200との別の動作手順を説明するシーケンス図である。
【図6】車載用電子機器100と情報処理装置200とが中断されたデータ送受信を再開する場合の動作手順を説明するシーケンス図である。
【図7】情報処理装置200の電源異常によりデータ送受信が中断される場合の動作手順を説明するシーケンス図である。
【符号の説明】
【0062】
100:車載用電子機器 10: 情報処理ユニット
16,66:データ送受信プログラム 36: USBインターフェース
40:車両状態検知部 200:情報処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載用電子機器において,
車両に携行される情報処理装置と接続される接続手段と,
前記情報処理装置からのデータ送受信要求に応答して前記情報処理装置とデータ送受信を実行するデータ送受信手段と,
前記車両の走行状態と停止状態を検知する車両状態検知手段とを有し,
前記データ送受信手段は,前記車両が停止状態のときに前記情報処理装置とのデータ送受信を実行し,前記車両が走行状態のときは前記情報処理装置とのデータ送受信を実行しないことを特徴とする車載用電子機器。
【請求項2】
車両に搭載される車載用電子機器において,
車両に携行される情報処理装置と接続される接続手段と,
前記情報処理装置にて前記車載用電子機器とのデータ送受信が指示入力され,前記指示入力に基づく前記情報処理装置からのデータ送受信要求に応答して前記情報処理装置とデータ送受信を行うデータ送受信手段と,
前記車両の走行状態と停止状態を検知する車両状態検知手段とを有し,
前記車両の走行状態を検知したとき,前記車両状態検出手段が走行状態信号を前記情報処理装置へ出力して前記指示入力の受け付けを行わせないことを特徴とする車載用電子機器。
【請求項3】
請求項2において,
前記車両が走行状態のときに前記情報処理装置にて既に前記指示入力がされている場合は,前記情報処理装置から送られる当該指示入力に対応するデータ送受信要求に応答して当該データ送受信を実行することを特徴とする車載用電子機器。
【請求項4】
車両に携行される情報処理装置に,前記車両に搭載され前記情報処理装置と接続される車載用電子機器とのデータ送受信を実行させるデータ送受信プログラムにおいて,
データ送受信の指示入力に応答して前記車載用電子機器とデータ送受信を行う手順と,
前記車両が走行状態のときに前記車載用電子機器が送る走行状態信号を受けた場合は,前記車載用電子機器とのデータ送受信を行わない手順とを前記情報処理装置に実行させることを特徴とするデータ送受信プログラム。
【請求項5】
車両に携行される情報処理装置に,前記車両に搭載され前記情報処理装置と接続される車載用電子機器とのデータ送受信を実行させるデータ送受信プログラムにおいて,
データ送受信の指示入力に応答して前記車載用電子機器とデータ送受信を行う手順と,
前記車両が走行状態のときに前記車載用電子機器が送る走行状態信号を受けた場合は,前記指示入力を受け付けない手順とを前記情報処理装置に実行させることを特徴とするデータ送受信プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−37311(P2008−37311A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215967(P2006−215967)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】