説明

車載用音響装置、車載用音響装置の制御方法

【課題】運転手に車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことを気づかせることができ、楽曲再生に起因して車両の速度が上がり過ぎるのを防止することができる車載用音響装置を提供する。
【解決手段】楽曲を再生するナビゲーション装置10において、車両の速度を検出する車速検部13を備え、車速検出部13によって検出された速度と、予め設定された基準速度との比較結果に応じて、楽曲の再生状態を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、楽曲を再生する車載用音響装置、この車載用音響装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され、音楽CDやハードディスク等に記録された楽曲等を再生し、この楽曲をスピーカから放音する車載用音響装置が知られている(特許文献1参照)。車両の運転手は、この車載用音響装置を利用して、スピーカから流れる楽曲を聴きながらドライブを楽しむことができる。
【特許文献1】特開2005−153659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の車載用音響装置では、再生中の楽曲の曲調が、例えばテンポの速い曲調等の場合には、楽曲を聴いている運転手の気分が高揚し、これに伴って速度を上げがちになる傾向があると共に、運転手が車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことに気づかないことある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、運転手に車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことを気づかせると共に、再生中の楽曲に起因して車両の速度が上がり過ぎるのを防止することができる車載用音響装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、楽曲を再生する車載用音響装置において、車両の速度を検出する車速検出手段を備え、前記車速検出手段によって検出された速度と、予め設定された基準速度との比較結果に応じて、前記楽曲の再生状態を変更する再生制御手段を備えたことを特徴とする。
ここで、基準速度とは、車速がこの基準速度を超えた速度である場合、速度の上げすぎに運転手が注意すべきような速度である。
この構成によれば、車両の速度と、予め定められた基準速度との比較結果に応じて、楽曲の再生状態の変更が行われ、この再生状態の変更により、運転手が車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことに気づくと共に、仮に再生中の楽曲が運転手の気分を高揚させるような曲調を有する楽曲であっても運転手の気分が落ち着くため、運転手が速度を上げすぎることが防止される。
【0005】
ここで、上記発明の車載用音響装置において、前記再生制御手段は、再生中の楽曲の曲調とは異なる曲調の楽曲に変更するようにしてもよい。
この構成によれば、車両の速度と、予め定められた基準速度との比較結果に応じて、再生中の楽曲が、この楽曲の曲調とは異なる曲調の楽曲に変更されるという再生状態の変更が行われ、この再生状態の変更により、運転手が車両の速度の出し過ぎに気をつけるべきことに気づくと共に、仮に再生中の楽曲が運転手の気分を高揚させるような曲調を有する楽曲であっても運転手の気分が落ち着くため、運転手が速度を上げすぎることが防止される。
【0006】
また、上記発明の車載用音響装置において、前記再生制御手段は、再生中の楽曲の曲調を、該曲調とは異なる曲調に変更するようにしてもよい。
この構成によれば、車両の速度と、予め定められた基準速度との比較結果に応じて、再生中の楽曲の曲調が変更されるという再生状態の変更が行われ、この再生状態の変更により、運転手が車両の速度の出し過ぎに気をつけるべきことに気づくと共に、仮に再生中の楽曲が運転手の気分を高揚させるような曲調を有する楽曲であっても運転手の気分が落ち着くため、運転手が速度を上げすぎることが防止される。
【0007】
また、上記発明の車載用音響装置において、前記再生制御手段は、前記楽曲の再生を停止するようにしてもよい。
この構成によれば、車両の速度と、予め定められた基準速度との比較結果に応じて、楽曲の再生が停止されるという再生状態の変更が行われ、この再生状態の変更により、運転手が車両の速度の出し過ぎに気をつけるべきことに気づくと共に、仮に再生中の楽曲が運転手の気分を高揚させるような楽曲であった場合であっても、運転手がこの楽曲を聴くことがなくなる。したがって、運転手の気分が落ち着き、楽曲の再生に起因して運転手が車両の速度を上げすぎることが防止される。
【0008】
また、上記発明の車載用音響装置において、前記再生制御手段は、再生中の前記楽曲の音量を減衰するようにしてもよい。
この構成によれば、車両の速度と、予め定められた基準速度との比較結果に応じて、楽曲の音量が減衰するという再生状態の変更が行われ、この再生状態の変更ことにより、運転手が車両の速度の出し過ぎに気をつけるべきことに気づくと共に、仮に再生中の楽曲が運転手の気分を高揚させるような楽曲であった場合であっても、楽曲の気分を高揚させる効果が低減される。従って、運転手の気分が落ち着き、楽曲の再生に起因して運転手が車両の速度を上げすぎることが防止される。
【0009】
また、上記発明の車載用音響装置において、前記制御手段は、特定の曲調の楽曲を再生している場合に、前記楽曲の再生状態を変更するようにしてもよい。
特に、特定の曲調は、アップテンポな曲調であってもよい。
この構成によれば、再生中の楽曲の曲調がアップテンポの曲調であり、運転手の気分が高揚した場合であっても、楽曲の再生状態が変更されることにより、運転手の気分が落ち着くため、運転手が車両の速度を上げすぎることが防止される。
さらに、この構成によれば、アップテンポな曲調等、特定の曲調以外のときは、楽曲の再生状態の変更を行わないため、再生中の楽曲の曲調が運転手の気分を高揚させるような曲調ではなく、従って、楽曲に起因して運転手が車両の速度を上げ過ぎることがないにもかかわらず、無意味に楽曲の再生状態の変更を行う、ということが防止される。
【0010】
また、上記発明の車載用音響装置において、運転者以外の乗員の有無を検出する乗員検出手段をさらに備え、前記乗員検出手段によって運転手以外に乗員がいることを検出した場合、前記再生状態の変更を禁止するようにしてもよい。
ここで、運転手以外の乗員がいる場合は、この乗員が運転手が車両の速度を上げすぎることに対し、注意、警告する可能性が高く、楽曲の再生状態の変更によって、運転手の気分を落ち着かせる必要はない。上記構成によれば、運転手以外の乗員がいる場合は、楽曲の再生状態の変更が行われないため、必要のない処理が実行されることが防止される。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、車両の速度を検出する車速検出手段を備え、楽曲を再生する車載用音響装置の制御方法において、前記車速検出手段によって前記車両の速度を検出し、検出した車両の速度と予め設定された基準速度とに基づいて、前記楽曲の再生状態を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の速度と、予め定められた基準速度との比較結果に応じて、再生中の楽曲の再生状態が変更されるため、運転手が速度の出し過ぎに気をつけるべきことに気づくと共に、運転手の気分が落ち着き、運転手が車両の速度を上げすぎることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
なお、以下の説明では、車載用音響装置の一態様として、車両の経路案内を行うナビゲーション機能を備えると共に、音楽CDやハードディスク等に記録された楽曲データに基づいて楽曲を再生する楽曲再生機能を備えるナビゲーション装置10を例示する。
図1は、本実施形態に係るナビゲーション装置10の機能的構成を示すブロック図である。この図に示すように、ナビゲーション装置10は、GPS(Global Positioning System)ユニット11と、ジャイロユニット12と、車速検出部13(車速検出手段)と、乗員検出部14(乗員検出手段)と、FM受信部15と、表示部16と、入力部17と、ユーザインターフェース部18と、制御部20と、CD制御部22と、DSP23と、D/Aコンバータ24と、HDD制御部25と、通信制御部27と、を備えている。
【0014】
GPSユニット11は、GPSアンテナ11Aを介してGPS衛星からのGPS電波を受信し、GPS電波に重畳されたGPS信号から、車両の現在地を示す位置座標と進行方向とを演算により取得すると共に、GPS信号に含まれる日時情報と車両の現在地の時差とから車両の現在地における日時情報(年、月、日、時、分等)を演算により取得し、これら情報を制御部20に出力する。
ジャイロユニット12は、ジャイロセンサにより車両の相対的な方位を検出して制御部20に出力する。
車速検出部13は、車両の車速パルスに基づいて車両の速度を演算により求め、制御部20に出力する。
乗員検出部14は、車両の各シートの下に配置された重量センサの出力信号に基づいて、運転手以外の乗員がいるか否かを示す信号を制御部20に出力する。制御部20は、乗員検出部14から入力された信号に基づいて、車両内に運転手以外の乗員がいるか否かを判定する。なお、重量センサ以外に、例えば、シートベルトの着用の有無を検出するセンサや、ドアの開閉の有無を検出するセンサ等を用いて、乗員の有無を判定する構成としてもよい。
【0015】
FM受信部15は、FMアンテナ15Aを介してFM多重放送波を受信し、FM多重放送波に重畳された交通情報(VICS(Vehicle Information and Communication System)情報)を取得し、所定の処理を施して制御部20に出力する。
表示部16は、例えば、タッチパネル付きの液晶表示装置が適用され、制御部20の制御の下、各種情報を表示する。
入力部17は、ナビゲーション装置10が備える各種操作子やタッチパネルの操作を検出する操作検出部と、リモートコントローラ(図示せず)からの送信信号を受信する受信部等から構成され、ユーザからの各種指示を制御部20に出力する。
ユーザインターフェース部18は、I/O制御回路やドライバ等であり、表示部16及び入力部17と、制御部20とを接続するインターフェースである。
【0016】
制御部20は、このナビゲーション装置10全体を制御するものであり、CPU及びその周辺回路から構成され、CPUは、ROM30に記憶された制御プログラム等の各種データを読み出し、入力部17を介して入力されたユーザ指示に応じて、ナビゲーション装置10の各部の制御処理を行う。また、DRAM31は、CPUのワークエリアに使用されるメモリであり、SRAM32は、揮発性メモリであるが、車両のアクセサリ電源等の本装置のメイン電源がオフの間も、電池等でバックアップされてメモリ内容を保持するようにされている。また、VRAM33は、表示部16の表示用データが格納されるメモリである。
【0017】
CD制御部22は、制御部20の制御の下、ナビゲーション装置10が備えるCD再生装置21を制御するものであり、CD再生装置21に挿入された音楽CDに記録された楽曲に係るデータの読み出しを行い、読み出した信号をDSP23に出力する。同時に、CD制御部22は、CDに記録された楽曲のTOC(Table Of Contents)情報を読み取り、このTOC情報を示す信号を制御部20に出力する。
DSP23は、制御部20の制御の下、CD制御部22から入力された信号の信号処理を実行し、D/Aコンバータ24に出力する。なお、本構成では、DSP23による音声データの信号処理に、音声データの圧縮/復調処理を含んでいる。
D/Aコンバータ24は、DSP23から入力された音声データをデジタル/アナログ変換して、スピーカ24Aに順次出力する。
【0018】
通信制御部27は、制御部20の制御の下、このナビゲーション装置10に接続された無線通信機器28(例えば、携帯電話機)を介して情報センターやインターネットにアクセスし、無線通信ネットワークを介して各種情報を受信する。制御部20は、この通信制御部27を介して、上記TOC情報に係る楽曲の曲名やアーティスト名、曲調、ジャンル等の楽曲に関連するデータ(以下、「楽曲関連データ」という)を外部サーバから取得することができる。
HDD制御部25は、制御部20の制御の下、HDD26を制御するものであり、HDD(Hard Disk Drive)26に対してデータの記録、読み出しを行う。また、HDD制御部25は、入力部17を介して入力されたユーザ指示に応じて、CD制御部22と連携し、CD再生装置21に挿入されたCDに記録された楽曲に係るデータを楽曲データとしてHDD26に再生可能に記憶する。楽曲データをHDD26に記憶する際、制御部20は、この楽曲データに係るTOC情報を取得し、通信制御部27を介して、TOC情報に基づいて上記楽曲関連データを取得し、取得した楽曲関連データをHDD26に記憶する。
HDD26は、各種データを読み書き可能に記憶する装置であり、表示部16に表示する電子地図の道路、地名、建物等に係る情報が格納された地図データベース35が記憶されている。また、このHDD26には、TOC情報と楽曲関連データとを関連付けて記憶するための楽曲データベース36が記憶されている。
【0019】
図2は、楽曲データベース36の一例を模式的に示す図である。
この図に示すように、楽曲データベース36の一件のレコードには、TOC情報フィールド40と、曲名フィールド41と、アーティスト名フィールド42と、曲調フィールド43と、ジャンルフィールド44とが含まれている。
TOC情報フィールド40には、楽曲データ毎に一意に定められるTOC情報を示すデータであるTOC情報データが格納される。
曲名フィールド41には、楽曲の曲名を示すデータである曲名データが格納される。
アーティスト名フィールド42には、楽曲を歌う歌手の名前や、楽曲を演奏するバンドの名前等を示すデータであるアーティスト名データが格納される。
【0020】
曲調フィールド43には、楽曲の曲調を示すデータである曲調データが格納される。本実施形態では、この曲調フィールドには、比較的テンポの速い楽曲の曲調(アップテンポ)を示す「アップテンポ」データと、比較的テンポの遅い楽曲の曲調(スローテンポ)を示す「スローテンポ」データとのいずれかが、格納される。
ジャンルフィールド44には、ハードロックや、クラシック、ポップ、ヘビーメタル等、楽曲のジャンルを示すデータであるジャンルデータが格納される。
なお、本実施形態では、楽曲データベース36の各フィールドに格納されるデータは、上述したように通信制御部27を介して外部サーバから取得することができると共に、ユーザが入力部17を介して直接入力することができる。従って、例えば、ある一件のレコードについて、曲調データが取得できなかったときであっても、ユーザが当該楽曲がアップテンポであるか、スローテンポであるかを判断し、この判断に基づいて入力部17を介して該当する楽曲の曲調データを入力することができる。
【0021】
ところで、車両の運転手が、ナビゲーション装置10を利用して、音楽CDを再生し、楽曲を聴きながらドライブをしている場合において、再生中の楽曲がテンポの速い楽曲等、運転手の気分を高揚させるような楽曲である場合、運転手の気分が高揚し、車両の速度を上げてしまう可能性がある。これを鑑み、本実施形態に係るナビゲーション装置10は、車両の速度と後述する基準速度に基づいて、具体的には、車両の速度が基準速度を越えたときに、再生中の楽曲の再生状態を変更することにより、運転手に車両の速度の出し過ぎに気をつけるべきことを気づかせると共に、運転手の気分を落ち着かせ、車両の速度の上昇を抑制している。以下、フローチャートを用いて、ナビゲーション装置10の動作について詳述する。
【0022】
図3は、ナビゲーション装置10の動作を示すフローチャートである。なお、説明の便宜のため、以下の説明において、ナビゲーション装置10が車両に搭載され、かつ、このナビゲーション装置10を利用して音楽CDの楽曲を再生しながら車両が走行しているものとする。また、以下の説明において、制御部20は、再生制御手段として機能する。
ステップSA1において、制御部20は、乗員検出部14から入力される信号に基づいて、車両内に運転手以外の乗員がいるか否かを判断する(ステップSA1)。運転手以外の乗員がいる場合(ステップSA1:YES)、制御部20は、再生中の楽曲の再生状態を変更することなく処理を終了する。これは、運転手以外の乗員がいる場合において、運転手が車両の速度を上昇したときは、乗員がそのことを運転手に警告する可能性が高いからである。
【0023】
運転手以外の乗員がいない場合(ステップSA1:NO)、制御部20は、現在再生中の楽曲が運転手の気分を高揚させるような楽曲であるか否かを判定する(ステップSA2)。
ここで、ステップSA2の動作について、詳述する。一般に、テンポが速い楽曲(アップテンポの楽曲)は、テンポが遅い楽曲(スローテンポの楽曲)と比較し、運転手の気分を高揚させる楽曲であると言うことができる。そこで、本実施形態では、制御部20は、再生中の楽曲のTOC情報を取得し、このTOC情報に基づいて、楽曲データベース36の曲調フィールドを参照する。そして、曲調フィールドに「アップテンポ」データが記憶されている場合、再生中の楽曲が運転手の気分を高揚させるような楽曲であると判定し、「スローテンポ」データが記憶されている場合、再生中の楽曲が運転手の気分を落ち着かせるような楽曲であると判定する。
ステップSA2において、再生中の楽曲が運転手の気分を高揚させるような楽曲でない場合(ステップSA2:NO)、再生中の楽曲を聴いた運転手の気分が高揚し車両の速度が上昇する、という事態が起きないため、制御部20は、再生中の楽曲の再生状態を変更することなく処理を終了する。
【0024】
一方、再生中の楽曲が運転手の気分を高揚させるような楽曲である場合(ステップSA2:YES)、制御部20は、現在マップマッチング中か否かを判定する(ステップSA3)。ここで、マップマッチングとは、GPSユニット11やジャイロユニット12、車速検出部13から出力される信号に基づいて自車両の位置や走行方向を計算し、HDD26に記憶された地図データベース35を利用して、表示部16に表示された地図上で経路案内を行うことである。ステップSA3においてマッピング中か否かを判定するのは、マッピング中でない場合、現在の車両の速度や、走行中の道路の制限速度等を制御部20が取得することができず、後述する楽曲の再生状態の変更処理を行うべきか否かを判定することができないためである。
マップマッチング中でない場合(ステップSA3:NO)、制御部20は、処理を終了する。一方、マップマッチング中である場合(ステップSA3:YES)、制御部20は、車速検出部13から入力された信号に基づいて、現在の車両の速度を取得する(ステップSA4)。そして、制御部20は、基準速度(後述)を取得する処理である基準速度取得処理を実行する(ステップSA5)。ここで、図4のフローチャートを用いて、基準速度取得処理を説明する。
【0025】
基準速度とは、車速がこの基準速度を超えた速度である場合、速度の上げすぎに運転手が注意すべきような速度であり、例えば、車両が走行している車道の制限速度から時速5キロ低い速度が定義される。本実施形態では、車両の速度がこの基準速度に至った場合、さらに車両の速度が増すと、車両の速度が制限速度に近づき、速度増加がさらに進むと制限速度を越えてしまう可能性が生じるため、車両の速度増加の抑制を促すべく、再生中の楽曲の再生状態を変更する(後述)。
【0026】
本実施形態に係るナビゲーション装置10では、ユーザが、表示部16を参照しながら、入力部17を操作することにより、この基準速度をどうやって定めるかを設定することができる構成となっている。具体的には、ユーザは、車両の停車中等に、入力部17を操作して、図5に示す、基準速度設定画面を表示部16に表示する。この基準速度設定画面は、基準速度を設定する際に表示する画面の一例であり、タッチパネル操作により、操作できる構成となっている。上記画面の表示後、ユーザは、入力部17をタッチパネル操作して、図5に示すチェックボックスA、もしくは、チェックボックスBのいずれかのチェックボックスにチェックを入れる。チェックボックスAとは、地図データベース35に現在走行中の車道の制限速度として格納されている速度に基づいて、基準速度を定める場合にチェックされるチェックボックスである。本実施形態では、このチェックボックスAにチェックが入っている場合、制御部20は、地図データベース35から現在走行中の車道の制限速度を取得し、この取得した制限速度から時速5キロ低い値を基準速度として定める。なお、この基準速度は、制限速度から時速5キロ低い値のみならず、例えば、時速3キロ低い値等、ナビゲーション装置10の仕様に応じて定めることができることは、勿論である。
【0027】
また、チェックボックスBとは、基準速度をユーザが定める場合にチェックされるチェックされるチェックボックスである。このチェックボックスBにチェックした場合、さらにユーザは、都市間高速道路、都市高速道路、国道、県道毎に、基準速度を定める。例えば、都市間高速道路を定める場合には、ボタン50又はボタン51をタッチパネル操作して、基準速度表示部52に表示された基準速度を上下させることにより、基準速度を設定する。このようにして、ユーザの操作により、都市間高速道路、都市高速道路、国道、県道毎に基準速度が定められる。そして、このチェックボックスBにチェックが入っている場合、制御部20は、地図データベース35に基づいて、現在走行中の車道が都市間高速道路、都市高速道路、国道、県道のいずれかであるかを判定し、これら道路の種別毎に定められた基準速度を取得する。なお、現在走行中の車道が、上述した車道の種別のいずれにも該当しない場合、制御部20は、地図データベース35から車道の制限速度を取得し、この取得した制限速度から時速5キロ低い値を基準速度として定める。
【0028】
ステップSA5の基準速度取得処理において、図4に示すように、制御部20は、チェックボックスAとチェックボックスBのいずれにチェックが入ったかを判定する(SB1)。チェックボックスAにチェックが入っている場合(ステップSB1:「チェックボックスA」)、制御部20は、地図データベース35から現在走行中の車道の制限速度を取得し(ステップSB2)、取得した制限速度から時速5キロ低い値を基準速度として取得する(ステップSB3)。
一方、チェックボックスBにチェックが入っている場合(ステップSB1:「チェックボックスB」)、制御部20は、地図データベース35に基づいて現在走行中の道路が都市間高速道路、都市高速道路、国道、県道のいずれに該当するかを判定し(ステップSB4)、ユーザによって該当する道路の種別の基準速度として設定された値を取得する(ステップSB5)。なお、上述したように、現在走行中の車道が、上述した車道の種別のいずれにも該当しない場合、制御部20は、地図データベース35から車道の制限速度を取得し、この取得した制限速度から時速5キロ低い値を基準速度として取得する。
【0029】
さて、前掲図3に戻り、ステップSA5の基準速度取得処理において基準速度を取得した後、制御部20は、現在の車両の速度と、基準速度とを比較し、車両の速度が基準速度を越えたか否かを判断する(ステップSA6)。車両の速度が基準速度を超えていない場合(ステップSA6:NO)、車両の速度の上昇を抑制する必要がないため、制御部20は、処理をステップSA1へ戻す。一方、車両の速度が基準速度を超えている場合(ステップSA6:YES)、制御部20は、再生中の楽曲の再生状態の変更を実行し(ステップSA7)、処理を終了する。ここで、再生中の楽曲の再生状態の変更について詳述する。
この再生状態の変更は、上述したように、運転手に車両の速度の出し過ぎに気をつけるべきことを気づかせると共に、再生中の楽曲を聴いた運転手の気分が高揚し、車両の速度を上昇することを抑制、防止するために実行する処理である。以下、この再生状態の変更の具体的な態様について例を挙げて説明する。
【0030】
まず、再生状態の変更の例として、再生中の楽曲を、この楽曲とは異なる曲調の楽曲に変更することが挙げられる。例えば、本実施形態では、アップテンポの楽曲を、スローテンポの楽曲に変更することが挙げられる。具体的には、制御部20は、楽曲データベース36の曲調フィールド43を参照し、曲調フィールド43に「スローテンポ」データが格納されている楽曲のうちいずれか一つの楽曲を特定、選択し、再生中の楽曲をこの選択した楽曲に変更する。
このようにして楽曲の再生状態の変更を行うことにより、運転手が車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことに気づき、気分を落ち着かせるため、運転手が車両の速度を上げ過ぎることが防止される。特に、アップテンポの楽曲をスローテンポの楽曲に変更した場合、運転手がアップテンポの曲を聞くことにより気分を高揚させることが防止されると共に、スローテンポの楽曲を聴くことにより気分が落ち着き、運転手が車両の速度を上げ過ぎることが防止される。
【0031】
また、再生状態の変更の例として、再生中の楽曲の曲調を、この曲調とは異なる曲調に変更することが挙げられる。例えば、本実施形態では、例えば、楽曲の速度を下げることによって、再生中の楽曲の曲調をアップテンポからスローテンポにテンポダウンすることが挙げられる。このようにして楽曲の再生状態の変更を行うことにより、運転手が車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことに気づき、気分を落ち着かせるため、運転手が車両の速度を上げ過ぎることが防止される。特に、アップテンポの曲調をスローテンポの曲調にした場合、運転手がアップテンポの曲を聞くことにより気分を高揚させることが防止されると共に、スローテンポの楽曲を聴くことにより気分が落ち着き、運転手が車両の速度を上げ過ぎることが防止される。
【0032】
また、再生状態の変更の例として、楽曲の再生を停止することが挙げられる。このようにして楽曲の再生状態の変更を行うことにより、運転手が車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことに気づき、気分を落ち着かせるため、運転手が車両の速度を上げ過ぎることが防止される。特に本実施形態では、この楽曲の再生状態の変更により、運転手がアップテンポの曲を運転手が聴くことがなくなり、楽曲を聴くことにより運転手の気分が高揚することがなくなり、運転手の気分が落ち着き、運転手が車両の速度を上げすぎることを防止できる。
【0033】
また、再生状態の変更の例として、再生中の楽曲の音量を減衰することが挙げられる。このようにして楽曲の再生状態の変更を行うことにより、運転手が車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことに気づき、気分を落ち着かせるため、運転手が車両の速度を上げ過ぎることが防止される。特に、本実施形態では、アップテンポの曲が有する気分を高揚させる効果が低減され、運転手の気分の高揚が抑制され、運転手の気分が落ち着き、運転手が車両の速度を上げすぎることを防止できる。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態によれば、現在の車速と、基準速度とを比較し、この比較結果に応じて、具体的には、現在の速度が基準速度を超えている場合に、楽曲の再生状態を変更する。この再生状態の変更により、運転手が車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことに気づくと共に、運転手の気分が落ち着くため、運転手が車両の速度を上げすぎることが防止される。
また、本実施の形態によれば、まず、再生状態の変更の例として、再生中の楽曲を、この楽曲とは異なる曲調の楽曲に変更することが挙げられる。例えば、本実施形態では、アップテンポの楽曲をスローテンポの楽曲に変更することが挙げられる。このようにして楽曲の再生状態の変更を行うことにより、運転手が車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことに気づき、気分を落ち着かせるため、運転手が車両の速度を上げ過ぎることが防止される。特に、アップテンポの楽曲をスローテンポの楽曲に変更した場合、運転手がアップテンポの曲を聞くことにより気分を高揚させることが防止されると共に、スローテンポの楽曲を聴くことにより気分が落ち着き、運転手が車両の速度を上げ過ぎることが防止される。
【0035】
また、本実施形態では、再生状態の変更の例として、再生中の楽曲を、この楽曲とは異なる曲調の楽曲に変更すること、特に、アップテンポの楽曲をスローテンポの楽曲に変更することが挙げたが、これによれば、運転手が車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことに気づくと共に、運転手がアップテンポの曲を聞くことにより気分を高揚させることが防止され、かつ、スローテンポの楽曲を聴くことにより気分が落ち着き、運転手が車両の速度を上げ過ぎることが防止される。
また、本実施形態では、再生状態の変更の例として、再生中の楽曲の曲調を、この曲調とは異なる曲調に変更すること、特に、楽曲の速度を下げることによって、再生中の楽曲の曲調をアップテンポからスローテンポにテンポダウンすることを挙げたが、これによれば、運転手が車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことに気づくと共に、運転手がアップテンポの曲を聞くことにより気分を高揚させることが防止され、かつ、スローテンポの楽曲を聴くことにより気分が落ち着き、運転手が車両の速度を上げ過ぎることが防止される。
【0036】
また、本実施形態では、再生状態の変更の例として、楽曲の再生を停止する例を挙げたが、これによれば、運転手が車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことに気づき、気分を落ち着かせるため、運転手が車両の速度を上げ過ぎることが防止される。特に本実施形態では、この楽曲の再生状態の変更により、運転手がアップテンポの曲を運転手が聴くことがなくなり、楽曲を聴くことにより運転手の気分が高揚することがなくなり、運転手の気分が落ち着き、運転手が車両の速度を上げすぎることを防止できる。
また、本実施形態では、再生状態の変更の例として、再生中の楽曲の音量を減衰することが挙げられたが、これによれば、運転手が車両の速度の上げ過ぎに気をつけるべきことに気づき、気分を落ち着かせるため、運転手が車両の速度を上げ過ぎることが防止される。特に、本実施形態では、アップテンポの曲が有する気分を高揚させる効果が低減され、運転手の気分の高揚が抑制され、運転手の気分が落ち着き、運転手が車両の速度を上げすぎることを防止できる。
【0037】
また、本実施の形態において、運転手以外の乗員がいる場合は、再生中の楽曲の曲調の変更を行わない。上述したように、運転手以外の乗員がいる場合は、この乗員が運転手が車両の速度を上げすぎることに対し、注意、警告する可能性が高く、楽曲の再生状態の変更によって、運転手の気分を落ち着かせる必要はない。したがって、本実施の形態によれば、運転手以外の乗員がいる場合は、楽曲の再生状態の変更が行われないため、必要のない再生中の楽曲の変更が実行されることが防止される。
また、本実施の形態では、アップテンポな曲調という特定の曲調のときのみ楽曲の再生状態の変更を行う。このため、再生中の楽曲の曲調がスローテンポの曲調であり、従って、運転手の気分を高揚させるものではなく、楽曲に起因して運転手が車両の速度を上げ過ぎることがないときに、無意味に楽曲の再生状態の変更を行うことが防止される。
【0038】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
本実施形態では、曲調フィールドに格納されるデータを、外部サーバから取得し、また、ユーザが入力部17を介して入力する例を示したが、楽曲を再生した際に、制御部20が楽曲の特性(リズムパターン、平均レベル、周波数特性等)を検出し、その特性に基づき曲調フィールド43に曲調データを登録するようにしてもよい。この構成によれば、外部サーバが曲調に関するデータを保有していない場合でも、確実に曲調フィールドにデータが格納されると共に、自動でデータが格納されるため、ユーザによる入力が必要なく、ユーザの労力の低減を図ることができる。
【0039】
また、本実施形態では、本実施形態では、楽曲が運転手の気分を高揚させる楽曲であるか否かを判定する際、制御部20は、楽曲データベース36の曲調フィールドに格納されたデータに基づいて判定していたが、例えば、ジャンルフィールドに格納されたデータに基づいて判定する構成であってもよい。具体的には、ハードロックは気分を高揚させる楽曲に該当し、また、クラシックは気分を落ち着かせる楽曲に該当する等、予めジャンル毎に気分を高揚させる楽曲か、それとも、落ち着かせる楽曲かを定めておき、この定めに基づいて、制御部20が判定する構成であってもよい。
【0040】
また、本実施形態では、楽曲の再生状態の変更の例として、アップテンポの楽曲をスローテンポの楽曲に変更することを例示したが、これに限らず、例えば、スローテンポの楽曲をアップテンポの楽曲に変更してもよい。すなわち、再生中の楽曲が曲調の異なる楽曲に変更される構成であればよい。この構成であっても、運転手は、車両の速度の出し過ぎに気をつけるべきことに気づくことができるため、運転手が車両の速度を出しすぎることが防止される。
同様に、本実施形態では、楽曲の再生状態の変更の例として、アップテンポの曲調をスローテンポの曲調へとテンポダウンすることを例示したが、これに限らず、例えば、スローテンポの曲調をアップテンポの曲調へテンポアップしてもよい。すなわち、再生中の楽曲の曲調が変更される構成であればよい。この構成であっても、運転手は、車両の速度の出し過ぎに気をつけるべきことに気づくことができるため、運転手が車両の速度を出しすぎることが防止される。
また、本実施形態では、運転手以外の乗員がいるときは、再生状態の変更を行わない構成であったが、乗員の有無に関わらず、再生状態の変更を行う構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態に係るナビゲーション装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】楽曲データベースを示す図である。
【図3】ナビゲーション装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】基準速度取得処理を実行時の動作を示すフローチャートである。
【図5】基準速度設定時の表示部の表示の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10 ナビゲーション装置(車載用音響装置)
13 車速検出部(車速検出手段)
14 乗員検出部(乗員検出手段)
20 制御部
36 楽曲データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲を再生する車載用音響装置において、
車両の速度を検出する車速検出手段を備え、
前記車速検出手段によって検出された速度と、予め設定された基準速度との比較結果に応じて、前記楽曲の再生状態を変更する再生制御手段を備えた
ことを特徴とする車載用音響装置。
【請求項2】
前記再生制御手段は、再生中の楽曲の曲調とは異なる曲調の楽曲に変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用音響装置。
【請求項3】
前記再生制御手段は、再生中の楽曲の曲調を、該曲調とは異なる曲調に変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用音響装置。
【請求項4】
前記再生制御手段は、前記楽曲の再生を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用音響装置。
【請求項5】
前記再生制御手段は、再生中の前記楽曲の音量を減衰する
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用音響装置。
【請求項6】
前記制御手段は、特定の曲調の楽曲を再生している場合に、前記楽曲の再生状態を変更する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車載用音響装置。
【請求項7】
前記特定の曲調は、アップテンポな曲調である
ことを特徴とする請求項6に記載の車載用音響装置。
【請求項8】
運転者以外の乗員の有無を検出する乗員検出手段をさらに備え、
前記乗員検出手段によって運転手以外に乗員がいることを検出した場合、前記再生状態の変更を禁止する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の車載用音響装置。
【請求項9】
車両の速度を検出する車速検出手段を備え、楽曲を再生する車載用音響装置の制御方法において、
前記車速検出手段によって前記車両の速度を検出し、検出した車両の速度と予め設定された基準速度とに基づいて、前記楽曲の再生状態を変更する
ことを特徴とする車載用音響装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−115567(P2009−115567A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287993(P2007−287993)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】