説明

車輌用経路案内装置

【課題】コーナー進入前に地図上の自車位置の補正を行うこと。
【解決手段】車輌AMの走行路情報を有する地図情報が格納された地図データベース20cと、車輌前方の道路形状を判定する前方道路形状判定手段20a3と、この前方道路形状判定手段20a3がコーナーと判定した場合、そのコーナーへと進入する際に運転者が減速操作を行うであろうと推定される地図上の推定減速開始地点Asを求める推定減速開始地点算出手段20a5と、その推定減速開始地点Asと運転者による実際の減速操作時における地図上の自車位置Pbnaviとの差分に基づいて当該推定減速開始地点Asへと地図上の自車位置Pnaviを補正する自車位置補正手段20a6とを備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図上に車輌を表示して自車の経路を案内する車輌用経路案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーナビゲーションシステム(車輌用経路案内装置)において、地図上における自車位置のズレを補正し得る技術が存在する。
【0003】
例えば、かかる技術としては、下記の特許文献1に開示された自車位置補正方法がある。具体的に、この特許文献1においては、地図上の自車位置と実際の自車位置とが一致しない場合に、ユーザーから補正指示があれば補正自車位置を求め、これを次回の走行時に利用する技術が開示されている。また、この特許文献1には、地図上の自車位置と実際の自車位置とが一致しない場合に、ユーザーからの補正指示があればGPS(Global Positioning System)位置情報を自車位置として特定し、その後の曲がり角等でユーザーからの補正指示に基づく自車位置補正(マップマッチング)を行う技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−74679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された自車位置補正方法においては、走行中に地図上の自車位置と実際の自車位置との間のズレを認知したユーザーの補正指示を契機にするものであり、曲がり角やコーナーの旋回中又は旋回後に自車位置補正が実行されるので、曲がり角やコーナー等へと進入する前に自車位置を補正することができない。また、補正自車位置の情報を記録して次回の走行時に利用するとしても、その補正自車位置の情報はユーザーの補正指示を契機にして得られたものであり、一般にユーザーが自車位置のズレを認識するのは曲がり角やコーナーへの進入後であるので、次回の走行時においても曲がり角やコーナー等へと進入する前に自車位置を補正することができない。
【0006】
ところで、近年、カーナビゲーションシステムの地図情報や地図上の自車位置情報を利用して車輌の走行制御を行う、という技術がある。
【0007】
例えば、かかる技術としては、地図情報及び自車位置情報から求めたコーナー入口までの距離の情報や、地図情報から得たコーナー曲率の情報等を用いて、そのコーナーの適正な旋回車速や目標減速度を算出し、その旋回車速へとコーナー入口までに自動的に減速させる自動減速制御技術がある。
【0008】
ここで、地図上の自車位置にズレが生じていれば、減速制御時の制御パラメータたる目標減速度が不適なものとなり、適正な自動減速制御を実行することができない。これが為、コーナーへと進入するまでに自車位置の補正を行う必要があるが、上述した特許文献1の自車位置補正方法では、コーナー進入前の自車位置補正制御を行うことができないので、自動減速制御実行時に適正な減速度で車輌を減速させることができない。
【0009】
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、コーナー進入前に地図上の自車位置を補正し得る車輌用経路案内装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為、請求項1記載の発明では、車輌の走行路情報を有する地図情報が格納された地図データベースと、車輌前方の道路形状を判定する前方道路形状判定手段と、この前方道路形状判定手段がコーナーと判定した場合、そのコーナーへと進入する際に運転者が減速操作を行うであろうと推定される地図上の推定減速開始地点を求める推定減速開始地点算出手段と、前記推定減速開始地点と運転者による実際の減速操作時における地図上の自車位置との差分に基づいて当該推定減速開始地点へと地図上の自車位置を補正する自車位置補正手段とを備えている。
【0011】
ここで、例えば、その推定減速開始地点算出手段は、請求項2記載の発明の如く、運転者の意図に沿う前記コーナーの入口までの制動距離又は車輌挙動を安定させたまま前記コーナーの入口まで減速可能な制動距離と当該コーナーの入口地点の情報とから前記推定減速開始地点を求めるよう構成されることが好ましい。
【0012】
これにより、運転者による減速操作時に地図上の自車位置を実際の自車位置へと補正することができる。
【0013】
また、上記目的を達成する為、請求項3記載の発明では、上記請求項1又は2に記載の車輌用経路案内装置において、運転者によるコーナー進入時の減速意図を正確に反映し得る道路状況,周辺環境及び走行状態であるか否かを判定する自車位置補正制御開始条件判定手段を設けている。
【0014】
これにより、運転者によるコーナー進入時の減速意図が正確に反映されない状況下の場合に、自車位置補正手段による自車位置の補正制御を実行させないように構成することができる。これが為、運転者による減速操作の開始時が一定でない状況下での不正確な自車位置の補正制御を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車輌用経路案内装置によれば、運転者による減速操作時に,即ち、コーナー進入前に地図上の自車位置を実際の自車位置へと補正することができる。これが為、そのコーナーに進入する際又はコーナー進入後における例えば自動減速制御等の車輌側の制御を精度良く実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る車輌用経路案内装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
本発明に係る車輌用経路案内装置の実施例1を図1から図4に基づいて説明する。
【0018】
図1に本発明に係る車輌用経路案内装置が適用される車輌AMについて例示する。本車輌AMは、所謂FR(Front engine Rear drive)車であって、車輌前方に搭載された原動機(以下、「エンジン」という。)1の動力がトルクコンバータ2と自動変速機3を介して最適な又は運転者が所望するギヤ比に変速されてプロペラシャフト4に伝達される。そして、このプロペラシャフト4に伝達された動力は、車輌後方に配置されたディファレンシャル5で左右のドライブシャフト6L,6Rに伝達される。これにより、その夫々のドライブシャフト6L,6Rが左右の後輪7L,7Rを回転駆動して、その夫々の後輪7L,7Rで本車輌AMの駆動力を発生させる。
【0019】
一方、本車輌AMには、その駆動力を低下させて車輌AMを減速させる車輌減速装置が設けられている。この車輌減速装置は、図1に示す電子制御装置(以下、「ECU」という。)8に設けた減速制御手段8aによって制御される。
【0020】
例えば、その車輌減速装置としては車輌AMの制動力を発生させる制動力発生手段がある。本実施例1にあっては、その制動力発生手段として、前輪9L,9R及び後輪7L,7Rに各々配備された制動装置(ブレーキ)10と、各制動装置10に繋がれた油圧配管11と、各油圧配管11内の作動油の油圧を調整するブレーキ油圧制御装置12とが具備された車輌AMの減速や停止等を行う所謂ブレーキシステムについて例示する。
【0021】
例えば、その制動力発生手段が上述したが如きブレーキシステムの場合、ECU8の減速制御手段8aは、所定の情報に基づいて各制動装置10に掛ける各油圧配管11内の油圧を算出し、その算出した油圧を各油圧配管11内に発生させるようブレーキ油圧制御装置12に指示して制動装置10に制動力を発生させる。
【0022】
具体的に、この減速制御手段8aは、運転者がブレーキ操作した際に、ブレーキペダル踏力検出センサ13の検出信号から得たペダル踏力,踏み込み量や踏み込み速度の情報に基づいて各油圧配管11内に発生させる油圧を算出し、この油圧を発生させるようブレーキ油圧制御装置12を制御する。これにより、この減速制御手段8aは、運転者のブレーキ操作に応じた制動力又はそのブレーキ操作を補助する制動力を各制動装置10に発生させる。
【0023】
また、この減速制御手段8aは、ECU8が各車輪7L,7R,9L,9Rの全て又は何れかで制動力を発生させる必要があると判断した際に、車速センサ14等の各種センサから検出した現在の自車車速や各車輪7L,7R,9L,9Rのスリップ率等の車輌AMの状態情報、目標減速度等に基づいて、各油圧配管11の全て又は何れかに発生させる油圧を算出し、この油圧を発生させるようブレーキ油圧制御装置12を制御する。これにより、この減速制御手段8aは、該当する制動装置10を自動的に作動させて各車輪7L,7R,9L,9Rの全て又は何れかで制動力を発生させる。例えば、全輪7L,7R,9L,9Rの制動装置10を作動させることによって車輌AMの自動減速制御が実行され、各車輪7L,7R,9L,9Rの内の何れかの制動装置10を作動させることによって車輌挙動の安定化等の自動制御が実行される。
【0024】
ここで、本実施例1の制動力発生手段は、上述したブレーキペダル踏力検出センサ13の検出信号に基づいて減速制御手段8aがブレーキ油圧制御装置12を制御する所謂ブレーキ・バイ・ワイヤー方式のものであってもよく、ブレーキペダル(図示略)とマスタシリンダ等の油圧発生装置(図示略)とをリンク機構により機械的に接続し、その油圧発生装置から発生した油圧に基づいて制動力を発生させるものであってもよい。また、足踏み式のブレーキペダルの操作をきっかけに制動力を発生させる制動力発生手段であってもよく、レバー等の手動による操作をきっかけに制動力を発生させるものであってもよい。
【0025】
ところで、車輌減速装置としては、上記の制動力発生手段以外に自動変速機3のダウンシフト制御手段がある。このダウンシフト制御手段は、運転者により手動ダウンシフト操作が行われた際に又は自動変速モードにてECU8がダウンシフト要求を検知した際に、減速制御手段8aが図1に示す変速機油圧制御装置15を制御して、自動変速機3の変速段を低速段側へとダウンシフトさせるものである。これにより、このダウンシフト制御手段は、車輌AMにエンジンブレーキ力を発生させて減速制御を行う。
【0026】
また、別の車輌減速装置としては、図1に示すエンジン1の吸気経路16内に配置されたスロットルコントロールバルブ17,このスロットルコントロールバルブ17を開閉させるスロットルアクチュエータ18及びスロットルコントロールバルブ17のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ19等からなる電子制御スロットル装置を利用することができる。例えば、ECU8が減速要求を検知した際に、減速制御手段8aがスロットルアクチュエータ18を制御してスロットルコントロールバルブ17を閉弁方向に駆動させる。これにより、エンジン出力が絞られて車輌AMの減速制御が行われる。
【0027】
更に、その車輌減速装置としては、回生ブレーキシステム等のモータジェネレータによる回生制動手段も利用することができる。
【0028】
このように、車輌減速装置には種々の態様のものがあり、本発明に係る車輌AMでは少なくとも1つが搭載又は利用されている。
【0029】
以下、本実施例1の車輌用経路案内装置について詳述する。図1の符号20は、本実施例1の車輌用経路案内装置を示す。
【0030】
本実施例1の車輌用経路案内装置20は、本装置の動作を制御する制御装置20aと、GPSやビーコン等の自車位置情報検出部20bと、車輌の走行路情報等の地図情報が格納された地図データベース20cとを備えている。また、この車輌用経路案内装置20には、運転者が使用する操作部20dや地図上に自車位置を表示する表示部20e等が更に設けられている。即ち、この本実施例1の車輌用経路案内装置20は、車輌に搭載される所謂カーナビゲーションシステムである。
【0031】
ここで、その制御装置20aには、自車位置情報検出部20bからの検出信号に基づいて地図上の自車位置と自車AMの進行方向を検出する自車位置情報検出手段20a1と、車速センサ14からの検出信号に基づいて自車車速Vを算出する自車車速算出手段20a2とが設けられている。
【0032】
また、この制御装置20aには、車輌前方の道路形状を判定する前方道路形状判定手段20a3が設けられている。例えば、この前方道路形状判定手段20a3は、上記の自車位置情報検出手段20a1が検出した自車位置情報と地図データベース20cの地図情報とに基づいて車輌前方の道路がストレートであるかコーナーであるかを判定するよう構成されている。
【0033】
また、この制御装置20aには、車輌前方の道路状況を検出する前方道路状況検出手段20a4が設けられている。その車輌前方の道路状況とは、車輌前方のコーナーのコーナー曲率半径Rや勾配等の道路形状に基づく情報、車輌前方のコーナーと自車AMとの間の距離(以下、「コーナーまでの距離」ともいう。)L等の自車−道路間の情報等のことをいう。
【0034】
例えば、この前方道路状況検出手段20a4は、地図データベース20cに格納されている地図情報の道路形状に基づいてコーナー曲率半径Rを求め、自車位置情報検出手段20a1が検出した自車位置情報と地図データベース20cの地図情報とに基づいてコーナーまでの距離Lを算出する。また、この前方道路状況検出手段20a4は、地図上に表示されている自車AMの情報と地図データベース20cの地図情報とに基づいた地図上におけるコーナーまでの距離Lの算出も行う。尚、コーナー曲率半径Rについては、コーナー毎のコーナー位置情報とコーナー曲率半径Rの情報とを有するコーナー情報データベースを予め用意しておき、このコーナー情報データベースから読み込んでもよい。
【0035】
更に、本実施例1の制御装置20aには、車輌前方のコーナーへと進入する前に運転者が減速操作を行うであろうと推定される地図上の地点(以下、「推定減速開始地点」という。)Asを算出する推定減速開始地点算出手段20a5が設けられている。
【0036】
本実施例1にあっては、例えば、運転者の意図に沿うコーナー入口までの制動距離Lbの制動開始地点を地図上の推定減速開始地点Asとして設定する。より具体的には、車輌AMの挙動を安定させたまま減速させてコーナーへと進入する為に必要な車輌AMの減速動作の開始地点であって、車輌AMのターゲットユーザーたる一般的な運転者が自ら減速操作を行うであろうと推定される地点を地図上の推定減速開始地点Asとして設定する。
【0037】
例えば、本実施例1における地図上の推定減速開始地点Asは、車輌AMの挙動を安定させたままコーナー入口まで減速させることが可能なコーナー入口までの最短の制動距離Lbの制動開始地点を設定する。これが為、そのようなコーナー入口までの制動距離Lbを算出することができれば、この制動距離Lbの情報と地図上のコーナー入口地点Cinの情報とを用いて地図上の推定減速開始地点Asを求めることができる。
【0038】
ここで、そのようなコーナー入口までの制動距離Lbは、現在の自車車速Vとコーナー進入時の車速Vcと車輌AMの挙動を不安定にさせない許容減速度Gaとに基づき下記の式1を用いて求めることができる。尚、本実施例1にあっては、便宜上、車輌AMが減速動作し始めるまで一定の車速(具体的には、検出された現在の自車車速V)のままで走行しているものとする。
【0039】
【数1】

【0040】
そこで、本実施例1の推定減速開始地点算出手段20a5は、コーナー進入時の車速Vcと許容減速度Gaを求める。
【0041】
先ず、本実施例1のコーナー進入時の車速Vcとしては、そのコーナーを安定したまま旋回可能な車速(以下、「推奨旋回車速」という。)を算出する。この推奨旋回車速Vcは、コーナー曲率半径Rと当該コーナー曲率半径Rに対応する推奨旋回横方向加速度Gyとに基づき下記の式2を用いて求めることができる。
【0042】
【数2】

【0043】
ここで、本実施例1の車輌用経路案内装置20には、図1に示す如く、コーナー曲率半径R毎又は所定のコーナー曲率半径Rの範囲毎の推奨旋回横方向加速度Gyの記憶手段(以下、「推奨旋回横方向加速度データベース」という。)20fが設けられている。この推奨旋回横方向加速度データベース20fの推奨旋回横方向加速度Gyは、コーナー曲率半径R毎又は所定のコーナー曲率半径Rの範囲毎に該当するコーナーを安定させたまま旋回し得る値であって、予め実験やシミュレーションによって設定されている。
【0044】
これが為、本実施例1の推定減速開始地点算出手段20a5は、車輌前方のコーナーのコーナー曲率半径Rに対応する推奨旋回横方向加速度Gyの情報を推奨旋回横方向加速度データベース20fから読み込み、この推奨旋回横方向加速度Gyの情報とコーナー曲率半径Rの情報を上記式2に代入することで当該コーナーの推奨旋回車速Vcを算出することができる。
【0045】
尚、本実施例1にあっては、1つのコーナーが入口から出口まで一定の曲率半径からなるものとして例示するので、コーナーの推奨旋回車速Vcをコーナー進入時の車速Vcとして設定することができる。しかしながら、1つのコーナーは、必ずしも入口から出口まで一定の曲率半径であるとは限らず、様々な曲率半径からなる複数のカーブで構成されている場合もあり、かかる場合には夫々のカーブ毎に推奨旋回車速Vcが異なる。これが為、複数のカーブで1つのコーナーが構成されている場合には、コーナー入口のカーブの推奨旋回車速Vcをコーナー進入時の車速Vcとして設定する。
【0046】
一方、許容減速度Gaについては、予め実験やシミュレーションを行って車輌AMの挙動が不安定にならない減速度を求め、例えば制御装置20aの記憶装置等(図示略)に用意しておく。
【0047】
このように、本実施例1の推定減速開始地点算出手段20a5は、上記の自車車速算出手段20a2が求めた現在の自車車速Vと上記の前方道路状況検出手段20a4が検出した車輌前方の道路状況(コーナー曲率半径R)とを用いて地図上の推定減速開始地点Asを算出することができる。
【0048】
また更に、本実施例1の制御装置20aには、地図上の自車位置を補正する自車位置補正手段20a6が設けられている。
【0049】
図2−1に示す如く実際の自車位置(実自車位置)Prlと地図上の自車位置(地図自車位置)Pnaviとの間にズレが生じていれば、図2−2に示す如く上述した地図上の推定減速開始地点Asに対して運転者による減速開始時における地図上の自車位置Pbnaviがズレてしまう。これが為、本実施例1の自車位置補正手段20a6には、運転者による減速操作を検知し、地図上の推定減速開始地点Asと実際に運転者が減速操作を行った際の地図上の自車位置Pbnaviとの位置関係の相違に基づいて地図上の自車位置Pnaviを推定減速開始地点Asへと補正させる。
【0050】
ここで、運転者による減速操作としてはブレーキ操作、自動変速機3の手動ダウンシフト操作や自動変速機3の高速段の使用を制限するスイッチ(所謂オーバードライブスイッチ)の操作等があるが、その何れの操作を行う場合においても運転者はアクセルOFF操作を最初に行うのが一般的である。これが為、本実施例1にあっては、そのアクセルOFF操作が行われた際に、運転者による減速操作が行われたと検知する。例えば、本実施例1の自車位置補正手段20a6は、アクセルポジションセンサ21からのアクセルOFF信号が検出されたか否かで減速制御開始要求の有無を判断する。
【0051】
尚、本実施例1では、そのアクセルOFF信号を制御装置20aが直接検出するように構成しているが、ECU8がアクセルポジションセンサ21からアクセルOFF信号を検出した際に、このECU8からアクセルOFF信号が検知された旨を制御装置20aに送信するよう構成してもよい。また、ブレーキ操作,自動変速機3の手動ダウンシフト操作又は自動変速機3のオーバードライブスイッチの操作等の内の少なくとも何れか1つを検知した際に、運転者による減速操作が行われたと判断させてもよい。
【0052】
ところで、見通しの善し悪し等の道路状況や天候等の周辺環境等によっては、運転者による減速操作の開始時点が異なる。例えば、昼間と夜間とを比較すれば、運転者は、一般的に夜間の方が早めに減速操作を行う。また、晴天時と雨天時とを比較すれば、運転者は、一般的に雨天の方が早めに減速操作を行う。一方、昼間や晴天時においては運転者が減速操作を略同時期に行うが、夜間と雨天時とでは、その夫々で運転者による減速操作の開始時が一定にならない。
【0053】
これが為、夜間や雨天時等においては、その都度、自車位置補正制御を行う際の補正量(上述した地図上の推定減速開始地点Asと実際に運転者が減速操作を行った際の地図上の自車位置との距離の相違)が異なるので、正確な自車位置の補正制御を行うことができない。
【0054】
そこで、本実施例1にあっては、道路状況,周辺環境及び走行状態を自車位置補正制御の開始条件(以下、「自車位置補正制御開始条件」という。)として設定し、その成立又は不成立について判定する自車位置補正制御開始条件判定手段20a7が設けられている。ここでは、全ての条件に該当して初めて自車位置補正制御を実行するものとする。
【0055】
本実施例1の自車位置補正制御開始条件としては、運転者による通常のコーナー進入時の減速意図を正確に反映し得る(即ち、夜間や雨天時等の減速操作開始時が一定でない状況を除外する)道路状況,周辺環境及び走行状態の条件を用いる。例えば、周辺環境の条件としては「昼間である」や「晴天である」等の条件を、走行状態の条件としては「自動変速モードで走行中である」や「平坦路走行中である」等の条件を、周辺環境の条件としては「見通しの良いコーナーである」や「前方に他車が走行していない」等の条件を用いる。
【0056】
これにより、運転者によるコーナー進入時の減速意図が正確に反映されない状況下,即ち、運転者による減速操作の開始時が一定でない状況下での不正確な自車位置の補正制御を抑制することができる。
【0057】
具体的に、「昼間であるか否か」はヘッドライトスイッチ22のON信号から判断することができ、そのON信号を自車位置補正制御開始条件判定手段20a7が検知しなければ「昼間である」と判断する。
【0058】
また、「晴天であるか否か」はワイパースイッチ23のON信号から判断することができ、そのON信号を自車位置補正制御開始条件判定手段20a7が検知しなければ「晴天である」と判断する。
【0059】
また、「自動変速モードで走行中であるか否か」はシフトポジションセンサ24の検出信号から判断することができ、Dレンジの信号を自車位置補正制御開始条件判定手段20a7が検知していれば「自動変速モードで走行中である」と判断する。
【0060】
ここで、本実施例1にあっては、「平坦路走行中であるか否か」、「見通しの良いコーナーであるか否か」、「前方に他車が走行していないか否か」等の条件を判断する為に、図1に示す道路状況検出装置25が車輌AMに設けられている。例えば、その道路状況検出装置25としてはCCDカメラ等の撮像装置が考えられ、これにより撮影された車輌前方の撮影画像に基づいて「平坦路走行中であるか否か」、「見通しの良いコーナーであるか否か」、「前方に他車が走行していないか否か」等を判断する。尚、前方の他車の存在は、ミリ波レーダ等のレーダ装置を用いて判断してもよい。
【0061】
尚、本実施例1では、その自車位置補正制御開始条件の検知信号を制御装置20aが直接検出するように構成しているが、ECU8がその検知信号を検出した際に、その検知信号をECU8から制御装置20aに送信するよう構成してもよい。
【0062】
以下、本実施例1における車輌用経路案内装置20の制御動作について図2−1から図2−3並びに図3及び図4のフローチャートに基づき説明する。尚、ここでは、表示部20eに表示されている地図上の道路Romapと実際の道路Rorlとの位置関係を図2−1から図2−3に示す如く一致させて説明する。
【0063】
先ず、制御装置20aは、図2−1及び図3のフローチャートに示す如く、自車位置情報検出部20bの検出信号に基づいて実際の現在の自車位置(実自車位置)Prlと自車AMrlの進行方向を自車位置情報検出手段20a1に検出させ(ステップST1)、その自車車速算出手段20a2に車速センサ14の検出信号に基づいて自車位置検出時における現在の自車車速Vを算出させる(ステップST2)。
【0064】
続いて、制御装置20aは、その前方道路形状判定手段20a3により、上記ステップST1で検出した実際の自車位置Prlの情報及び自車AMrlの進行方向の情報と地図データベース20cの地図情報とに基づいて車輌前方の道路がストレートであるかコーナーであるかを判定する(ステップST3)。
【0065】
ここで、この制御装置20aは、車輌前方の道路がストレートであれば本制御処理を終了してステップST1から繰り返し、コーナーであれば、その自車位置補正制御開始条件判定手段20a7により、前述した自車位置補正制御開始条件が成立しているか否かを判定する(ステップST4)。
【0066】
そして、この制御装置20aは、自車位置補正制御開始条件が不成立であれば本制御処理を終了してステップST1から繰り返し、自車位置補正制御開始条件が成立していれば、その前方道路状況検出手段20a4により、車輌前方のコーナーのコーナー曲率半径Rと地図上の車輌AMnaviと当該コーナーとの間の距離L1を算出する(ステップST5)。ここでは、図2−1に示す如く、地図上における自車位置(地図自車位置)Pnaviと地図上のコーナー入口地点Cinまでの距離L1を求めるものとする。
【0067】
続いて、この制御装置20aは、その推定減速開始地点算出手段20a5により、地図上における自車AMnaviの推定減速開始地点Asを算出する(ステップST6)。
【0068】
具体的に、本実施例1のステップST6においては、先ず、図4のフローチャートに示す如く、推定減速開始地点算出手段20a5が上記ステップST5で求めたコーナー曲率半径Rに対応する車輌前方のコーナーの推奨旋回横方向加速度Gyを求める(ステップST6A)。例えば、この推奨旋回横方向加速度Gyは、前述したが如く、コーナー曲率半径Rに基づいて推奨旋回横方向加速度データベース20fから読み込まれる。
【0069】
そして、この推定減速開始地点算出手段20a5は、その推奨旋回横方向加速度Gyと上記ステップST5で求めたコーナー曲率半径Rとを上述した式2に代入して、そのコーナーの推奨旋回車速Vcを求める(ステップST6B)。
【0070】
しかる後、この推定減速開始地点算出手段20a5は、前述した許容減速度Gaを読み込み(ステップST6C)、この許容減速度Gaと上記ステップST2で求めた現在の自車車速Vと上記ステップST6Bで求めた推奨旋回車速Vcとを上述した式1に代入して、自車AMnaviがコーナー入口地点Cinに到達するまでの図2−1に示す制動距離Lbを求める(ステップST6D)。
【0071】
続いて、この推定減速開始地点算出手段20a5は、上記ステップST6Dで求めた制動距離Lbが上記ステップST5で求めたコーナーまでの距離L1よりも短いか否か(Lb<L1)を判定する(ステップST6E)。
【0072】
ここで、制動距離Lbがコーナーまでの距離L1よりも長い場合には、正確に自車位置補正を行うことができないので、本制御処理を終了してステップST1から繰り返す。
【0073】
一方、この推定減速開始地点算出手段20a5は、制動距離Lbがコーナーまでの距離L1よりも短ければ、その制動距離Lbの情報と地図上のコーナー入口地点Cinの情報とに基づいて、図2−1に示す地図上における自車AMnaviの推定減速開始地点Asを算出する(ステップST6F)。
【0074】
このようにして推定減速開始地点Asを求めた後、制御装置20aは、その自車位置補正手段20a6により、運転者による減速操作があったか否かを判定する(ステップST7)。
【0075】
ここで、運転者による減速操作が無ければ本制御処理を終了してステップST1から繰り返し、減速操作があれば、自車位置補正手段20a6は、図2−2に示す減速操作時の地図上における自車位置(地図自車位置)Pbnaviを検出する(ステップST8)。尚、ここでは地図上の道路Romapと実際の道路Rorlとの位置関係が一致しているので、地図上の推定減速開始地点Asと実際の減速開始地点(以下、「実減速開始地点」という。)Arlとについても図2−2に示す如く一致している。
【0076】
そして、この自車位置補正手段20a6は、前方道路状況検出手段20a4に対して地図上における減速操作時のコーナーまでの距離L2を算出させる(ステップST9)。ここでは、図2−2に示す如く、減速操作時の地図上における自車位置Pbnaviから地図上のコーナー入口地点Cinまでの距離L2を求めている。
【0077】
しかる後、この自車位置補正手段20a6は、自車位置誤差ΔL(=L2−Lb)を算出し(ステップST10)、この自車位置誤差ΔLが「0」か否か(「ΔL=0」or「ΔL≠0」)を判定する(ステップST11)。
【0078】
ここで、自車位置誤差ΔLが「0」の場合には減速操作時の地図上における自車位置Pbnaviと実際の自車位置Prlとの間にズレがないので本制御処理を終了してステップST1から繰り返し、自車位置誤差ΔLが「0」でなければ(ΔL≠0)、この自車位置補正手段20a6は、その自車位置誤差ΔLに基づいて地図上の自車位置Pnaviの補正を実行する(ステップST12)。
【0079】
例えば、この自車位置補正手段20a6は、その自車位置誤差ΔLが負の値(ΔL<0)であれば、図2−3に示す如く、その自車位置誤差ΔL分だけ減速操作時の地図上における自車位置Pbnaviから推定減速開始地点Asへと地図上に表示されている車輌AMnaviを後退させる。一方、その自車位置誤差ΔLが正の値(ΔL>0)であれば、その自車位置誤差ΔL分だけ減速操作時の地図上における自車位置Pbnaviから推定減速開始地点Asへと地図上に表示されている車輌AMnaviを進行させる。これにより、地図上の自車位置Pnaviと実際の自車位置Prlとが一致する。
【0080】
このように、本実施例1によれば、コーナー進入前に地図上の自車位置Pnaviと実際の自車位置Prlとの間のズレを補正(所謂マップマッチング)することができる。これが為、そのコーナーに進入する際又はコーナー進入後における車輌側の制御を精度良く実行することができる。
【0081】
例えば、コーナー進入前においては、ECU8の減速制御手段8aにより行われる自動減速制御等を精度良く行うことができる。ここで、かかる自動減速制御を制御良く実行させる為には、上述した運転者による減速操作の中でも最も早い時期に操作されるアクセルOFF操作を契機にして自車位置の補正制御を行うことが好ましい。
【0082】
また、コーナー進入時においては、ヘッドライトの光軸を進行方向に向ける制御等を精度良く行うことができ、コーナー進入後においては、そのコーナーの旋回中又は旋回後の自動変速機3の変速段制御(変速段保持制御や自動ダウンシフト制御)等を精度良く行うことができる。
【0083】
ここで、車輌前方の道路がストレートであるかコーナーであるかの判定、コーナー曲率半径Rやコーナーまでの距離Lの算出については、前述した道路状況検出装置25(撮像装置)の撮影画像を用いて行ってもよい。
【0084】
また、インターネット等の通信回線を利用して、車輌前方の道路がストレートであるかコーナーであるかの情報と、コーナーである場合にはそのコーナー曲率半径R及びコーナーまでの距離Lの情報とを外部の基地局から制御装置20aに取得させてもよい。これによれば、前方道路形状判定手段20a3や前方道路状況検出手段20a4の処理機能を設けずともよいので、制御装置20aの処理速度を向上させることができる。
【0085】
更に、本実施例1にあっては前方道路状況検出手段20a4がコーナー曲率半径Rを算出するものとして例示しているが、これに替えて、その前方道路状況検出手段20a4にコーナー曲率K(=1/R)を算出させてもよい。
【0086】
かかる場合、推定減速開始地点算出手段20a5には、コーナー曲率Kと当該コーナー曲率K(又はコーナー曲率半径R)に対応する推奨旋回横方向加速度Gyとに基づき下記の式3を用いて当該コーナーの推奨旋回車速Vcを求めさせる。
【0087】
【数3】

【実施例2】
【0088】
次に、本発明に係る車輌用経路案内装置の実施例2を図5に基づいて説明する。
【0089】
図5の符号20は、本実施例2の車輌用経路案内装置を示す。本実施例2の車輌用経路案内装置20は、前述した実施例1と同様の車輌AMに適用されるものとして例示する。本実施例2と実施例1との相違点は、実施例1において車輌用経路案内装置20の制御装置20aに行わせた演算処理の一部をECU8に実行させる点にある。即ち、本実施例2にあっては、カーナビゲーションシステムたる車輌用経路案内装置20を備える一方、本発明に係る車輌用経路案内装置の演算処理機能をECU8の演算処理機能の1つとして設け、そのカーナビゲーションシステムたる車輌用経路案内装置20とECU8とによって本発明に係る車輌用経路案内装置を構成する。
【0090】
先ず、本実施例2の車輌用経路案内装置20には、実施例1と同様に、制御装置20a,自車位置情報検出部20b,地図データベース20c,操作部20d及び表示部20e等が設けられている。
【0091】
ここで、一般に、車輌用経路案内装置(カーナビゲーションシステム)20においては、自車位置情報検出部20bの検出信号に基づいた自車位置Pnaviの情報の検出や自車位置のズレの補正を行っている。これが為、本実施例2の制御装置20aにおいても実施例1と同様の自車位置情報検出手段20a1と自車位置補正手段20a6と備えている。
【0092】
一方、自車車速Vの算出は、通常、車輌用経路案内装置(カーナビゲーションシステム)20においても行われ、また、ECU8においても行われている。これが為、図5に示す如く、制御装置20aとECU8の夫々に自車車速算出手段20a2,8bが設けられている。
【0093】
また、本実施例2のECU8には、実施例1と同様の減速制御手段8aが設けられており、更に、実施例1にて制御装置20aに設けていたものと同様の前方道路形状判定手段8c,前方道路状況検出手段8d,推定減速開始地点算出手段8e及び自車位置補正制御開始条件判定手段8fも備えている。
【0094】
ところで、本実施例2にあっては、実施例1にて制御装置20aの自車位置補正手段20a6に実行させていた運転者による減速操作有無の判定をECU8に実行させる。
【0095】
また、本実施例2にあってはECU8に自車位置補正制御開始条件判定手段8fを設けているので、「平坦路走行中であるか否か」、「見通しの良いコーナーであるか否か」、「前方に他車が走行していないか否か」等の条件を判断する為の道路状況検出装置25を車輌用経路案内装置(カーナビゲーションシステム)20に接続させる必要はない。そこで、本実施例2においては、図5に示す如く、その道路状況検出装置25の検出信号をECU8に取り込ませるよう構成している。
【0096】
以下、本実施例2における車輌用経路案内装置の制御動作について実施例1の図2−1から図2−3並びに図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。
【0097】
先ず、ECU8は、制御装置20aに対して自車位置検出指令を送り、実施例1と同様に実際の現在の自車位置Prlと自車AMrlの進行方向を自車位置情報検出手段20a1に検出させる(ステップST1)。
【0098】
尚、通常、車輌用経路案内装置(カーナビゲーションシステム)20は自車位置Prlの情報を常時検出しているので、必ずしもECU8が自車位置検出指令を行わずともよく、車輌用経路案内装置(カーナビゲーションシステム)20が自車位置Prlの情報を検出する度に当該情報をECU8へと送信するように構成してもよい。
【0099】
一方、このECU8は、自車位置検出指令と共に、その自車車速算出手段8bに自車位置検出時における現在の自車車速Vを算出させる(ステップST2)。ここで、一般に、自車車速Vは、車輌の走行制御等を行う為に常時ECU8で検出されているので、その情報を利用して演算処理速度の向上を図ることが好ましい。
【0100】
続いて、そのECU8の前方道路形状判定手段8cは、上記ステップST1で検出した実際の自車位置Prlの情報と自車AMrlの進行方向の情報とに基づき、車輌用経路案内装置(カーナビゲーションシステム)20に対して車輌前方の地図情報又は車輌前方の道路情報(車輌前方がストレートであるかコーナーであるかの情報)を送信させ、その車輌前方の道路がストレートであるかコーナーであるかを判定する(ステップST3)。
【0101】
尚、その前方道路形状判定手段8cは、車輌用経路案内装置(カーナビゲーションシステム)20に対して車輌前方の道路形状の判定指令を送り、その車輌用経路案内装置(カーナビゲーションシステム)20の制御装置20aにストレートであるかコーナーであるかを判定させ、その判定結果をECU8へと送信させてもよい。
【0102】
ここで、本実施例2のECU8は、車輌前方の道路がストレートであれば本制御処理を終了してステップST1から繰り返し、コーナーであれば、その自車位置補正制御開始条件判定手段8fにより、前述した自車位置補正制御開始条件が成立しているか否かを判定する(ステップST4)。
【0103】
そして、このECU8は、自車位置補正制御開始条件が不成立であれば本制御処理を終了してステップST1から繰り返し、自車位置補正制御開始条件が成立していれば、その前方道路状況検出手段8dにより、実施例1と同様に、車輌前方のコーナーのコーナー曲率半径Rと地図上の車輌AMnaviと当該コーナーとの間の距離L1を算出する(ステップST5)。
【0104】
続いて、このECU8の推定減速開始地点算出手段8eは、地図上における自車AMnaviの推定減速開始地点Asを算出する(ステップST6)。かかる推定減速開始地点Asの算出方法については、実施例1と同様であるので、ここでの具体的な説明は省略する。尚、本実施例2にあっては、ECU8が前述した実施例1と同様の図5に示す推奨旋回横方向加速度データベース26から推奨旋回横方向加速度Gyを読み込む。
【0105】
そして、ECU8は、運転者による減速操作があったか否かを判定し(ステップST7)、運転者による減速操作が無ければ本制御処理を終了してステップST1から繰り返す。一方、減速操作があれば、ECU8は、車輌用経路案内装置(カーナビゲーションシステム)20の制御装置20aに対して自車位置補正制御の実行指令を送信する。
【0106】
これにより、その制御装置20aは、実施例1と同様に、自車位置補正手段20a6が図2−2に示す減速操作時の地図上における自車位置(地図自車位置)Pbnaviを検出し(ステップST8)、前方道路状況検出手段20a4に対して地図上における減速操作時のコーナーまでの距離L2を算出させる(ステップST9)。
【0107】
しかる後、この自車位置補正手段20a6は、実施例1と同様に、自車位置誤差ΔL(=L2−Lb)を算出して(ステップST10)、この自車位置誤差ΔLが「0」か否かを判定し(ステップST11)、自車位置誤差ΔLが「0」であれば本制御処理を終了してステップST1から繰り返す。
【0108】
一方、自車位置誤差ΔLが「0」でなければ(ΔL≠0)、この自車位置補正手段20a6は、実施例1と同様にして、その自車位置誤差ΔLに基づく地図上の自車位置Pnaviの補正を実行する(ステップST12)。
【0109】
このように、本実施例2にあっても、実施例1と同様にコーナー進入前に地図上の自車位置Pnaviと実際の自車位置Prlとの間のズレを補正(所謂マップマッチング)することができ、そのコーナーに進入する際又はコーナー進入後における車輌側の制御を精度良く実行することができる。
【0110】
また、本実施例2にあっては、演算処理機能の一端をECU8に担わせる一方、車輌用経路案内装置(カーナビゲーションシステム)20が本来的に実行している演算処理(自車位置検出、自車車速算出、自車位置補正)は当該車輌用経路案内装置20に、ECU8が本来的に実行している演算処理(自車車速算出)は当該ECU8に実行させるので、夫々における演算処理速度の向上が図れると共に、制御装置20aの演算処理時の負担を軽減することができる。
【0111】
尚、本実施例2にあっても、車輌前方の道路がストレートであるかコーナーであるかの判定は、実施例1にて説明した道路状況検出装置25(撮像装置)の撮影画像やインターネット等の通信回線を用いて行ってもよい。
【0112】
また、同様に、前方道路状況検出手段8dにコーナー曲率K(=1/R)を算出させてもよい。
【0113】
ところで、本発明に係る車輌用経路案内装置は、その全ての演算処理機能をECU8に実行させてもよい。かかる場合、そのECU8には、制御装置20aの自車位置情報検出手段20a1と自車位置補正手段20a6とを設けると共に、自車位置情報検出部20bと地図データベース20cとを接続する。これによっても、上述した各実施例1,2と同様の効果を奏することができる。
【0114】
また、上述した各実施例1,2においては車輌AMの前後方向(進行方向)にのみ地図上の自車位置と実際の自車位置とがズレているものとして例示したが、必ずしもかかる態様のみに本発明を適用するものではない。例えば、車輌AMの横方向にもズレが生じていた場合には、その横方向のズレ量を横方向の自車位置誤差として算出し、その横方向の自車位置誤差と上述した前後方向の自車位置誤差ΔLとに基づいて推定減速開始地点Asへと地図上の自車位置を補正させる。
【0115】
また、上述した各実施例1,2においては自動変速機3を具備する車輌AMについて例示したが、その自動変速機3は、有段式のものであってもよく、また、ベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機等の無段式のものであってもよい。また、そのような自動変速機3に限らず、手動変速機や自動変速モード付きの手動変速機を具備している場合であっても本発明を適用することができる。
【0116】
更に、上述した各実施例1,2においては本装置をFR車に適用した場合について例示したが、本装置は、所謂FF(Front engine Front drive)車や4輪駆動車等の如何なる車輌AMにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上のように、本発明に係る車輌用経路案内装置は、コーナー進入前に地図上の自車位置を補正させる技術として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明に係る車輌用経路案内装置の実施例1の構成を示す図である。
【図2−1】コーナー進入前の地図上の自車位置と実際の自車位置との位置関係及び推定減速開始地点について示す図である。
【図2−2】運転者により減速操作された際の地図上の自車位置と実際の自車位置との位置関係について示す図である。
【図2−3】地図上の自車位置の補正前後の状態を示す図である。
【図3】実施例1,2における車輌用経路案内装置の制御動作について説明するフローチャートである。
【図4】図2における推定減速開始地点の具体的な算出方法の一例を説明するフローチャートである。
【図5】本発明に係る車輌用経路案内装置の実施例2の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0119】
8 電子制御装置(ECU)
14 車速センサ
20 車輌用経路案内装置
20a 制御装置
20a1 自車位置情報検出手段
20a2,8b 自車車速算出手段
20a3,8c 前方道路形状判定手段
20a4,8d 前方道路状況検出手段
20a5,8e 推定減速開始地点算出手段
20a6 自車位置補正手段
20a7,8f 自車位置補正制御開始条件判定手段
20b 自車位置情報検出部
20c 地図データベース
20f 推奨旋回横方向加速度データベース
21 アクセルポジションセンサ
22 ヘッドライトスイッチ
23 ワイパースイッチ
24 シフトポジションセンサ
25 道路状況検出装置
AM 車輌
AMnavi 地図上の車輌
AMrl 実際の車輌
As 推定減速開始地点
in コーナー入口地点
navi 地図上の自車位置
Pbnavi 減速操作時の地図上の自車位置
rl 実際の自車位置
Romap 地図上の道路
Rorl 実際の道路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌の走行路情報を有する地図情報が格納された地図データベースと、
車輌前方の道路形状を判定する前方道路形状判定手段と、
この前方道路形状判定手段がコーナーと判定した場合、該コーナーへと進入する際に運転者が減速操作を行うであろうと推定される地図上の推定減速開始地点を求める推定減速開始地点算出手段と、
前記推定減速開始地点と運転者による実際の減速操作時における地図上の自車位置との差分に基づいて当該推定減速開始地点へと地図上の自車位置を補正する自車位置補正手段と、
を備えたことを特徴とする車輌用経路案内装置。
【請求項2】
前記推定減速開始地点算出手段は、運転者の意図に沿う前記コーナーの入口までの制動距離又は車輌挙動を安定させたまま前記コーナーの入口まで減速可能な制動距離と当該コーナーの入口地点の情報とから前記推定減速開始地点を求めるよう構成したことを特徴とする請求項1記載の車輌用経路案内装置。
【請求項3】
運転者によるコーナー進入時の減速意図を正確に反映し得る道路状況,周辺環境及び走行状態であるか否かを判定する自車位置補正制御開始条件判定手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車輌用経路案内装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−250708(P2006−250708A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67625(P2005−67625)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】