説明

車輪制駆動装置

【課題】部品点数を低減して、組み付け効率及びホイール内のスペース効率を向上させることが可能な車輪制駆動装置を提供すること。
【解決手段】制駆動装置10は、インホイールモータ13と遊星歯車減速機20を備えている。又、制駆動装置10は、ディスクブレーキ機構40を備えている。ブレーキ機構40は、減速機20を収容するアクスルベアリング30の外輪側部材に一体的に形成されたディスクブレーキロータ41と、このロータ41に対してブレーキパッドを押圧するブレーキキャリパ42とを備えている。これにより、別途ブレーキディスクロータを組み付ける必要がなく、部品点数を低減して組み付け効率を向上させることができるとともにホイール12内のスペース効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源からの出力を減速機を介して車輪に伝達するとともに車輪に制動力を付与する制動機構を有した車輪制駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、減速機を使用するインホイールモータを有した車輪駆動装置は盛んに提案されている。例えば、下記特許文献1には、外周に車輪取付フランジを有する外方部材と、ステータハウジングを有する内方部材とを備えた複列の車輪用軸受と、この車輪用軸受の径方向内方側に配設された第1及び第2の遊星減速機と、この遊星減速機を駆動し、電動モータ及びロータ部が固着された円筒状の支持部材とからなる駆動部とを備えた電動式車輪駆動装置が開示されている。この従来の電動式車輪駆動装置においては、電動モータの回転を第1及び第2の遊星減速機を介して外方部材に伝達して車輪を駆動するようになっている。又、この従来の電動式車輪駆動装置においては、車輪用軸受けに一体的に形成された車輪取付フランジに対して車輪及びブレーキロータが車輪ボルトを用いて組み付けられるようになっている。
【0003】
又、従来から、例えば、下記特許文献2には、ホイール内に配設されるモータの回転力を複数の減速機により減速してホイールに伝達することで車輪を駆動可能に構成し、車軸方向にて第1、第2減速機の間にモータを配置するとともに、モータの駆動軸と各減速機の出力軸を並列をなして配置する車輪駆動装置が開示されている。そして、この従来の車輪駆動装置においては、ホイールが円筒形状をなし、車両外方に位置して環状をなすフランジ部が一体的に形成され、このフランジ部にブレーキディスクの取付部が密着した状態で複数のハブボルトにより固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−22386号公報
【特許文献2】特開2008−184110号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、上記従来の各車輪駆動装置においては、ブレーキロータやブレーキディスク(ブレーキディスクロータ)が車輪ボルトやハブボルトによって取り付けられるようになっている。このため、ホイール内にてブレーキ装置(ブレーキ機構)を組み付けるためのスペースを確保する必要があり、その結果、搭載位置が制限される。又、ブレーキロータやブレーキディスク(ブレーキディスクロータ)を別途組み付ける必要があるため、部品点数が増加するとともに組み付けのための工数が必要となる。
【0006】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的は、部品点数を低減して、組み付け効率及びホイール内のスペース効率を向上させることが可能な車輪制駆動装置を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車両の車輪を駆動するための駆動力を発生する駆動源と、前記駆動源からの出力を減速して前記車輪に伝達する減速機と、前記車輪の回転に対して制動力を付与する制動機構とを備えた車輪制駆動装置において、前記制動機構を、前記減速機を構成する出力側の動力伝達部材に連結されるとともに前記車輪と一体的に回転するベアリングの外輪側部材に一体的に形成した回転摩擦部材と、車体側に固定されて、前記回転摩擦部材に対して摩擦材を押圧して摩擦係合させる摩擦係合手段とで構成したことにある。
【0008】
この場合、前記減速機が、前記駆動源からの出力を受け取るサンギアと、車体側に固定されるリングギアと、前記サンギアと前記リングギアとの間に歯合して前記サンギアの周りを公転する複数のプラネタリギアと、車両外側に配置されて前記複数のプラネタリギアのキャリアピンに固定される前記動力伝達部材としてのプラネタリキャリアとを含んで構成される遊星歯車機構であり、前記制動機構の前記回転摩擦部材を、前記遊星歯車機構を収容するベアリングに設けられて、前記遊星歯車機構のプラネタリキャリアに連結されるとともに前記車輪と一体的に回転する前記ベアリングの外輪側部材に一体的に形成するとよい。
【0009】
又、これらの場合、前記制動機構が、例えば、前記回転摩擦部材をブレーキディスクロータとし、前記摩擦係合手段を前記ブレーキディスクロータに対して摩擦材であるブレーキパッドを押圧して摩擦係合させるブレーキキャリパとしたディスクブレーキ機構、又は、前記制動機構が、例えば、前記回転摩擦部材をブレーキドラムとし、前記摩擦係合手段を前記ブレーキドラムに対して摩擦材であるライニングを押圧して摩擦係合させるブレーキシューとしたドラムブレーキ機構であるとよい。
【0010】
そして、これらの場合、前記駆動源が、例えば、前記車輪を形成するホイール内に設けられて駆動力を発生するインホイールモータであるとよい。
【0011】
これらによれば、制動機構を構成する回転摩擦部材を、減速機の出力側の動力伝達部材に連結されて車輪とともに回転するベアリングの外輪側部材に対して一体的に形成することができる。これにより、別途回転摩擦部材として、例えば、ブレーキディスクロータやブレーキドラムを組み付ける必要がなく、部品点数を低減することができ、その結果、組み付け工数を低減、すなわち、組み付け効率を向上させることができる。又、回転摩擦部材(例えば、ブレーキディスクロータやブレーキドラム)を車軸方向にて車輪の中央部分近傍に配置することができるため、組み付けに伴うアンバランスを改善して、例えば、回転時の振動の発生を抑制することができる。
【0012】
又、回転摩擦部材(例えば、ブレーキディスクロータやブレーキドラム)を外輪側部材に対して一体的に形成することができることにより、別途回転摩擦部材(例えば、ブレーキディスクロータやブレーキドラム)を設ける必要がないため、ホイール内のスペース効率を向上させることができる。又、別途回転摩擦部材(例えば、ブレーキディスクロータやブレーキドラム)を設ける必要がないため、部品コストを低減することができるとともに、組み付けコストをも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る車輪制駆動装置の断面構造を示す概略図である。
【図2】図1の遊星歯車減速機の構造及び制動機構を説明するために拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係り、車輪毎に駆動源としての電動モータを有しこの電動モータからの出力を減速機を介してホイールに伝達して車輪を駆動する、所謂、インホイールモータ方式を採用した車輪制駆動装置10(以下、単に、制駆動装置10と称呼する。)の断面構造を概略的に示している。
【0015】
制駆動装置10は、タイヤ11が装着されるホイール12の内周側に駆動源としてインホイールモータ13を備えている。インホイールモータ13は、ナックル14を介して、車両のサスペンション機構を構成する図示省略のロワアームやアッパアーム、タイロッドと連結されるようになっている。
【0016】
インホイールモータ13は、図1に示すように、モータ本体15と、ナックル14に一体的に接続されてモータ本体15を収容する筒状のモータケース16とを備えている。モータ本体15は、ベアリングにより回転自在に軸支される出力軸15aを有しており、出力軸15aには積層された電磁鋼板15bの外周に固定された複数の永久磁石15cからなるロータ15dが嵌挿されている。そして、ロータ15dの外周には、積層された電磁鋼板で形成される鉄心15eと、鉄心15eに形成された各ティース部に巻回配置される3相のコイルスロットに巻回されたコイル15fとから構成されるステータ15gが配置される。ロータ15dとステータ15gとは、所定のギャップを介して対面するとともにモータケース16により密閉されており、外部からの異物の侵入が防止されるようになっている。このように構成されるモータ本体15においては、コイル15fに順次所定のタイミングで電流を供給することにより、ステータ15gに回転磁界を発生させ、ロータ15dを回転させることができる。
【0017】
次に、インホイールモータ13による駆動力の伝達について、図2を用いて具体的に説明する。
【0018】
モータ本体15(すなわち、インホイールモータ13)の出力軸15aの先端側には、図2に拡大して示すように、二段の遊星歯車機構21,22から構成される遊星歯車減速機20が配置されている。以下、この遊星歯車減速機20を詳細に説明する。なお、本実施形態においては、遊星歯車減速機20を二段の遊星歯車機構21,22から構成して実施するが、必要となる減速比に応じて、一段の遊星歯車機構や三段以上の遊星歯車機構から遊星歯車減速機20を構成して実施可能であることは言うまでもない。
【0019】
遊星歯車減速機20を形成する一段目の遊星歯車機構21の第1サンギア21aは、図2に示すように、インホイールモータ13を構成するモータ本体15の出力軸15aの先端部に一体的に形成されている。そして、第1サンギア21aは、複数(図2においては一つのみを図示)の第1プラネタリギア21bと歯合しており、複数の第1プラネタリギア21bは、さらに、ナックル14に対して固定保持される内輪側部材23の内周面に形成されている第1リングギア21cと噛合するようになっている。これにより、複数の第1プラネタリギア21bは、それぞれ、第1サンギア21aの周りを公転するようになっている。なお、遊星歯車機構21を構成する第1サンギア21a、複数の第1プラネタリギア21b及び第1リングギア21cははすば歯車であり、車軸方向のスラスト荷重を受けられるようになっている。
【0020】
又、複数の第1プラネタリギア21bをそれぞれ回転可能に支持する第1キャリアピン21dは第1プラネタリキャリア21eに固定されており、一段目の遊星歯車機構21の公転運動が二段目の遊星歯車機構22に伝達される。具体的に、遊星歯車機構21の第1プラネタリキャリア21eの中心に車軸と同軸に延びるシャフト21fが接続されており、シャフト21fには遊星歯車機構22の第2サンギア22aが一体的に形成されている。なお、シャフト21fはベアリングにより回転可能に軸支されている。そして、第2サンギア22aは、複数(図2においては一つのみを図示)の第2プラネタリギア22bと歯合しており、複数の第2プラネタリギア22bは、さらに、内輪側部材23の内周面に形成されている第2リングギア22cと歯合するようになっている。これにより、複数の第2プラネタリギア22bは、それぞれ、第2サンギア22aの周りを公転するようになっている。なお、遊星歯車機構22を構成する第2サンギア22a、複数の第2プラネタリギア22b及び第2リングギア22cははすば歯車であり、車軸方向のスラスト荷重を受けられるようになっている。
【0021】
ここで、第2サンギア22aと歯合する第2プラネタリギア22bの数は、例えば、ホイール12に形成されたボルト孔(取付孔)の数に一致しており、ホイール12に形成されたボルト孔(取付孔)の配置(数)に一致するようになっている。更に、第2サンギア22aの周囲に配置される複数の第2プラネタリギア22bの中心(すなわち、後述する第2キャリアピン22dの中心)を結んで形成される多角形に外接する円の半径は、例えば、ホイール12のP.C.D(Pitch Circle Diameter)と一致するようになっている。
【0022】
複数の第2プラネタリギア22bをそれぞれ回転可能に支持する第2キャリアピン22dは動力伝達部材である第2プラネタリキャリア22eに固定される。複数の第2キャリアピン22dは、図2に示すように、車軸方向にて車両外側に延出して形成されており、第2プラネタリキャリア22eを貫通している。そして、複数の第2キャリアピン22dの延出した側の端部には、ホイール12を車軸に固定するためのホイールナットと螺着するネジ部22d1が形成されている。すなわち、第2キャリアピン22dのうち、第2プラネタリキャリア22eから車軸方向にて車両外側に突出した部分(先端側部分)は、所謂、ハブボルトとして機能するボルトが形成されている。ここで、第2キャリアピン22dは第2プラネタリギア22bを支持するものであるため、上述したように、ホイール12のボルト孔(取付孔)の配置及びP.C.Dと一致するように第2プラネタリギア22bが配設されることにより、第2キャリアピン22dの先端側部分(すなわち、ハブボルト部分)は、ホイールナットとともに汎用のホイール12を確実に車軸に対して固定することができる。
【0023】
遊星歯車減速機20の外周には、この減速機20を収容するようにアクスルベアリング30が配置される。アクスルベアリング30は、図2に示すように、ナックル14に固定されるつば部23aを一端に有する略円筒形状の内輪側部材23に形成されたインナーレース31と、外輪側部材32の内周面に形成されたアウターレース33と、インナーレース31とアウターレース33とによって画成される転動路内を転動するベアリング玉34とから主に構成される。このアクスルベアリング30によって、外輪側部材32が内輪側部材23に対して回転自在に保持される。なお、アクスルベアリング30のインナーレース31とアウターレース33を内輪側部材23や外輪側部材32と一体化することなく、別部品のインナーレースやアウターレースを内輪側部材23または外輪側部材32に固定するようにしてもよい。又、図示を省略するが、アクスルベアリング30には、転動路内に異物が浸入しないようにシール部材が設けられることは言うまでもない。
【0024】
外輪側部材32は、図2に示すように、遊星歯車減速機20の遊星歯車機構22を構成する第2プラネタリキャリア22eと、例えば、ボルト締結やかしめ締結等によって一体的に連結されており、第2プラネタリキャリア22eが安定して回転するように支持している。ここで、このように第2プラネタリキャリア22eと外輪側部材32とを一体的にすなわちガタ付きが生じることなく連結することにより、インホイールモータ13による回転駆動力が伝達されて第2プラネタリキャリア22eと外輪側部材32とが回転を開始する際の異音(ガタ音)の発生を効果的に防止することができる。そして、一体的に連結された第2プラネタリキャリア22eと外輪側部材32の車軸方向にて車両外側では、第2キャリアピン22dの先端側部分(すなわち、ハブボルト部分)をホイール12のボルト孔(取付孔)に挿通した状態でホイールナットを螺着することにより、ホイール12を確実に車軸に対して固定することができる。
【0025】
又、本実施形態における制駆動装置10は、車輪を構成するタイヤ11及びホイール12に制動力を付与する制動機構としてのディスクブレーキ機構40を備えている。本実施形態におけるディスクブレーキ機構40は、アクスルベアリング30を構成する外輪側部材32に対して一体的に形成されて、タイヤ11及びホイール12と一体的に回転する回転摩擦部材としてのブレーキディスクロータ41を備えている。又、ディスクブレーキ機構40は、ブレーキ液圧の増加に伴って摩擦材であるブレーキパッドをブレーキディスクロータ41に向けて押圧する摩擦係合手段としてのブレーキキャリパ42を備えている。ここで、ブレーキキャリパ42は、車体に対して変位不能に一体的に組み付けられた図示省略のブレーキブラケットに組み付けられている。このように構成されたディスクブレーキ機構40においては、例えば、図示を省略するブレーキペダルが運転者によって操作されてブレーキ液圧が増加すると、アクスルベアリング30の外輪側部材32と一体的に回転する、言い換えれば、タイヤ11及びホイール12からなる車輪と一体的に回転するブレーキディスクロータ41に対してブレーキキャリパ42がブレーキパッドを押圧する。これにより、ブレーキパッドが回転するブレーキディスクロータ41に対して摩擦係合することによって摩擦力が発生し、その結果、回転しているタイヤ11及びホイール12に制動力が発生する。
【0026】
次に、上記のように構成した制駆動装置10の作動、より詳しくは、インホイールモータ13により発生する動力の伝達経路について説明する。
【0027】
運転者によって、例えば、車両のアクセルペダルが操作されて加速指示がなされると、図示を省略した車両制御装置からの指令によりインホイールモータ13、より詳しくは、モータ本体15が回転駆動を開始して駆動力を発生する。すなわち、モータ本体15においては、ロータ15dがステータ15gに対して回転し、この回転駆動力が出力軸15aを介して遊星歯車減速機20に伝達される。遊星歯車減速機20の遊星歯車機構21においては、出力軸15aに一体的に形成された第1サンギア21aを介して複数の第1プラネタリギア21bに回転が伝達されることにより、ナックル14に固定された第1リングギア21cに歯合する第1プラネタリギア21bは、それぞれ自転しつつ第1サンギア21aの周りを公転運動する。そして、この第1プラネタリギア21bの公転運動は、第1キャリアピン21dを介して連結された第1プラネタリキャリア21eによって取り出され、第1プラネタリキャリア21eに接続されたシャフト21fを一体的に回転させる。
【0028】
第1プラネタリギア21bの公転運動によってシャフト21fが一体的に回転すると、このシャフト21fの回転は遊星歯車機構22に伝達される。すなわち、遊星歯車機構22においては、シャフト21fに一体的に形成された第2サンギア22aを介して複数の第2プラネタリギア22bに回転が伝達される。これにより、ナックル14に固定された第2リングギア22cに歯合する第2プラネタリギア22bは、それぞれ自転しつつ第2サンギア22aの周りを公転運動する。この第2プラネタリギア22bの公転運動は、第2キャリアピン22dを介して、第2プラネタリキャリア22e、アクスルベアリング30の外輪側部材32、ディスクブレーキ機構40のブレーキディスクロータ41、ホイール12及びタイヤ11に直接的に伝達され、その結果、車輪が駆動される。
【0029】
一方、アクスルベアリング30の外輪側部材32、ディスクブレーキロータ41、ホイール12及びタイヤ11は、上述した伝達経路に従って動力がインホイールモータ13から伝達されることによって一体的に回転している。このため、ディスクブレーキ機構40のブレーキキャリパ42がブレーキパッドを回転しているブレーキディスクロータ41に押圧することにより、車体側に一体的に固定されたブレーキパッドとブレーキディスクロータ41とが摩擦係合すると、この摩擦係合による摩擦力(制動力)がホイール12及びタイヤ11に伝達され、その結果、車輪が制動される。
【0030】
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ディスクブレーキ機構40を構成する回転摩擦部材としてのブレーキディスクロータ41を、遊星歯車減速機20を収容するアクスルベアリング30におけるタイヤ11及びホイール12とともに回転する外輪側部材32に対して一体的に形成することができる。これにより、別途ブレーキディスクロータ41を組み付ける必要がなく、部品点数を低減することができ、その結果、組み付け工数を低減、すなわち、組み付け効率を向上させることができる。又、ブレーキディスクロータ41を車軸方向にて車輪の中央部分近傍に配置することができるため、組み付けに伴うアンバランスを改善して、例えば、回転時の振動の発生を抑制することができる。
【0031】
又、ブレーキディスクロータ41を外輪側部材32に対して一体的に形成することができることにより、ホイール12内のスペース効率を向上させることができる。又、別途ブレーキディスクロータ41を設ける必要がないため、部品コストを低減することができるとともに、組み付けコストをも低減することができる。
【0032】
又、遊星歯車減速機20、より具体的には、遊星歯車機構22を構成する第2キャリアピン22dを、第2プラネタリキャリア22eを貫通させて車両外側に向けて延出し、例えば、この延出した先端側部分にネジ部22d1(すなわちボルト)を形成することができるため、ホイールナットを螺着することによってホイール12を固定することができる。したがって、遊星歯車減速機20、より具体的には、遊星歯車機構22を構成する第2キャリアピン22dを従来のハブボルトに代えて利用することができるため、別途ハブボルトを設けることを廃止することもできる。
【0033】
又、遊星歯車減速機20、より具体的には、遊星歯車機構22を構成する第2プラネタリギア22bは第2サンギア22aの周りに配置されるため、この第2プラネタリギア22bを支持する第2キャリアピン22dの配置(ピッチ)は、車輪の径方向にて、従来の車輪駆動装置におけるハブボルトの配置(ピッチ)に比して小さくすることもできる。これにより、ホイール12の小径化が可能となる一方で、第2キャリアピン22d及びボルト孔が通常の車両と同様に車輪(ホイール12)の中央部分に配置されるため、車輪内のスペース効率を大幅に向上させることができ、ホイール12内に設置されるディスクブレーキ機構40のブレーキキャリパ42の搭載スペースを十分に確保することがもできる。
【0034】
更に、遊星歯車減速機20、より具体的には、遊星歯車機構22を構成する第2キャリアピン22dを利用して固定可能なホイール12として、同一のP.C.D(Pitch Circle Diameter)を有する汎用のホイール12を採用することもできる。したがって、別途、専用のホイールを採用する必要がないため製造コストを低減することができるとともに、車両のユーザは好みに応じて極めて容易にかつ安価にホイールを取りかえることができる。
【0035】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態においては、制動機構としてディスクブレーキ機構40を採用して実施した。しかし、制動機構として、例えば、ディスクブレーキ機構に限定されるものではなくドラムブレーキ機構を採用して実施することももちろん可能である。この場合には、回転摩擦部材としてのブレーキドラムがアクスルベアリング30の外輪側部材32と一体的に形成されており、このブレーキドラムに対して摩擦係合手段としてのブレーキシューが摩擦材であるライニングを押圧して摩擦力すなわち制動力を発生することができる。従って、制動機構としてドラムブレーキ機構を採用した場合であっても、上記実施形態と同様に、車輪内のスペース効率を向上させることにより、ドラムブレーキ機構を他の通常の車両(車種)と共用させることができて車両の製造コストを低減させることができる。
【0037】
又、上記実施形態においては、駆動源としてインホイールモータ13を採用して実施した。しかしながら、駆動源としては、車両の車輪を駆動する駆動力を発生するものであれば如何なるものであってもよく、例えば、ドライブシャフト等を介して車輪に駆動力を伝達する内燃機関や電動モータを採用して実施可能であることは言うまでもない。この場合であっても、駆動力が減速機としての遊星歯車減速機20を介してタイヤ11及びホイール12に伝達されるため、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0038】
10…制駆動装置、11…タイヤ、12…ホイール、13…インホイールモータ、14…ナックル、15…モータ本体、16…モータケース、20…遊星歯車減速機、21,22…遊星歯車機構、21a,22a…第1サンギア,第2サンギア、21b,22b…第1プラネタリギア,第2プラネタリギア、21c,22c…第1リングギア,第2リングギア、21d,22d…第1キャリアピン,第2キャリアピン、21e,22e…第1プラネタリキャリア,第2プラネタリキャリア、21f…シャフト、23…内輪側部材、23a…つば部、30…アクスルベアリング、31…インナーレース、32…外輪側部材、33…アウターレース、34…ベアリング玉、40…ディスクブレーキ機構、41…ブレーキディスクロータ、42…ブレーキキャリパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪を駆動するための駆動力を発生する駆動源と、前記駆動源からの出力を減速して前記車輪に伝達する減速機と、前記車輪の回転に対して制動力を付与する制動機構とを備えた車輪制駆動装置において、
前記制動機構を、
前記減速機を構成する出力側の動力伝達部材に連結されるとともに前記車輪と一体的に回転するベアリングの外輪側部材に一体的に形成した回転摩擦部材と、
車体側に固定されて、前記回転摩擦部材に対して摩擦材を押圧して摩擦係合させる摩擦係合手段とで構成したことを特徴とする車輪制駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車輪制駆動装置において、
前記減速機が、
前記駆動源からの出力を受け取るサンギアと、車体側に固定されるリングギアと、前記サンギアと前記リングギアとの間に歯合して前記サンギアの周りを公転する複数のプラネタリギアと、車両外側に配置されて前記複数のプラネタリギアのキャリアピンに固定される前記動力伝達部材としてのプラネタリキャリアとを含んで構成される遊星歯車機構であり、
前記制動機構の前記回転摩擦部材を、
前記遊星歯車機構を収容するベアリングに設けられて、前記遊星歯車機構のプラネタリキャリアに連結されるとともに前記車輪と一体的に回転する前記ベアリングの外輪側部材に一体的に形成したことを特徴とする車輪制駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した車輪制駆動装置において、
前記制動機構が、
前記回転摩擦部材をブレーキディスクロータとし、前記摩擦係合手段を前記ブレーキディスクロータに対して摩擦材であるブレーキパッドを押圧して摩擦係合させるブレーキキャリパとしたディスクブレーキ機構であることを特徴とする車輪制駆動装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載した車輪制駆動装置において、
前記制動機構が、
前記回転摩擦部材をブレーキドラムとし、前記摩擦係合手段を前記ブレーキドラムに対して摩擦材であるライニングを押圧して摩擦係合させるブレーキシューとしたドラムブレーキ機構であることを特徴とする車輪制駆動装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか一つに記載した車輪制駆動装置において、
前記駆動源が、
前記車輪を形成するホイール内に設けられて駆動力を発生するインホイールモータであることを特徴とする車輪制駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−82321(P2013−82321A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223580(P2011−223580)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】