車輪独立駆動車両の制御装置
【課題】原動機を制御する制御装置が正常で、ネットワークに異常がある場合でも、走行可能なフェールセーフ機能を持つ車輪独立駆動車両の制御装置を提供する。
【解決手段】原動機制御装置21,22,23,24に、車輪速から必要な算出必要出力を算出する算出手段8と、車両制御装置1からの要求必要出力が通知されない時、車輪回転用原動機31,32,33,34の制御に用いる必要出力を算出必要出力に切り替える切り替え手段10とを設け、車両制御装置1に、原動機制御装置が使用する必要出力を要求必要出力か算出必要出力かに切り替えて通知する手段12を設け、車両制御装置と所定の原動機制御装置との間の通信経路6に不具合が発生した時、所定の原動機制御装置は、要求必要出力が通知されていないことを検出した後に、算出必要出力に切り替えて車輪回転用原動機を制御する構成。
【解決手段】原動機制御装置21,22,23,24に、車輪速から必要な算出必要出力を算出する算出手段8と、車両制御装置1からの要求必要出力が通知されない時、車輪回転用原動機31,32,33,34の制御に用いる必要出力を算出必要出力に切り替える切り替え手段10とを設け、車両制御装置1に、原動機制御装置が使用する必要出力を要求必要出力か算出必要出力かに切り替えて通知する手段12を設け、車両制御装置と所定の原動機制御装置との間の通信経路6に不具合が発生した時、所定の原動機制御装置は、要求必要出力が通知されていないことを検出した後に、算出必要出力に切り替えて車輪回転用原動機を制御する構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フェールセーフ機能を有する車輪独立駆動車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車輪独立駆動車両のフェールセーフ機能として、車輪回転用モータの異常を検出した時に、異常が検出された車輪回転用モータと該車輪回転用モータの車輪に対して左右反対側に位置する車輪の回転用モータの駆動力も0にすることが知られている。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、車輪独立駆動車両の他のフェールセーフ機能として、車輪回転用モータの異常を検出した時に、他の正常な車輪回転用モータの駆動力を補正することで、車両の挙動を不安定にしないようにすることが知られている。(例えば特許文献2参照)。
【0004】
さらにまた、各車輪を独立的に車輪回転用モータで駆動する車両におけるフェールセーフ機能として、車輪回転用モータを制御する制御装置の異常が検出された時に、別の車輪の車輪回転用モータを制御する制御装置によって異常が検出された制御装置が制御している車輪回転用モータを代わりに制御することが知られている。(例えば特許文献3参照)。
【0005】
また、各車輪を独立的に車輪回転用モータで駆動する電動車両におけるフェールセーフ機能として、モータ制御部と車両制御部との間のネットワークに異常が検出された時に、ネットワーク上の別ノードを経由した迂回伝送路を構築し、迂回伝送路経由で車両制御部とモータ制御部との通信を行なうことが知られている。(例えば特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】特許3280392号公報
【特許文献2】特開2005−119647号公報
【特許文献3】特開2004−175313号公報
【特許文献4】特許3476770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の車輪独立駆動車両の制御装置は上記のように構成されており、特許文献1に示されたものは、車輪回転用モータや車輪回転用モータを制御する制御装置の異常時におけるフェールセーフ機能を対象とするもので、それらを接続するネットワークにおけるフェールに関しては対象とされていない。そのため、車輪回転用モータや車輪回転用モータを制御する制御装置が正常であるにも関わらず、それらを接続するネットワークに異常がある場合にはフェールセーフ機能によって走行できないという問題点があった。
【0008】
また、特許文献2に示されたものは、車輪回転用モータや車輪回転用モータを制御する制御装置の異常時におけるフェールセーフ機能を対象とするもので、それらを接続するネットワークにおけるフェールに関しては対象とされていない。そのため、車輪回転用モータや車輪回転用モータを制御する制御装置が正常であるにも関わらず、それらを接続するネットワークに異常がある場合には、フェールセーフ機能によって他の正常な車輪回転用モータの出力を上げる等、正常な車輪回転用モータの負荷を高める結果を招くという問題点があった。
【0009】
さらにまた、フェールセーフ機能を実施するために、他の正常な車輪回転用モータの駆動力を補正するといった複雑な処理が必要になるという問題点もあった。
【0010】
また、特許文献3に示されたものは、車輪回転用モータや車輪回転用モータを制御する制御装置の異常時におけるフェールセーフ機能を対象とするもので、それらを接続するネットワークにおけるフェールに関しては対象とされていない。そのため、車輪回転用モータや車輪回転用モータを制御する制御装置が正常であるにも関わらず、それらを接続するネットワークに異常があると検出されれば、フェールセーフ機能によって別の車輪の車輪回転用モータを制御する制御装置により異常が検出された制御装置が制御している車輪回転用モータを制御するという問題点があった。
【0011】
さらにまた、フェールセーフ機能を実現するために、他の制御装置により車輪回転用モータを制御するといった複雑な処理と機構が必要になるという問題点もあった。
【0012】
また、特許文献4に示されたものは、ネットワークにおけるフェールに関してはフェールセーフ機能の対象とされているが、そのフェールセーフ機能実現のために、さまざまなノード間を余分に接続した迂回伝送路を準備しておくといった複雑な構成が必要になるという問題点があった。
【0013】
さらにまた、ネットワークにおけるフェール発生時に、どの迂回伝送路経由で通信させるかを選択させる複雑な処理が必要になるという問題点もあった。
【0014】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、走行可能なフェールセーフ機能を実現することができる車輪独立駆動車両の制御装置を提供することを第1の目的とする。
【0015】
また、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、他の正常な原動機の出力を上げる等負荷を高めることなく走行可能なフェールセーフ機能を実現することができる車輪独立駆動車両の制御装置を提供することを第2の目的とする。
【0016】
さらにまた、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、別の車輪の原動機を制御する制御装置によって異常が検出された制御装置が制御している原動機を制御するといった、フェールセーフ機能実現のための複雑な処理及び機構を必要とせず、既存の構成でフェールセーフ機能を実現することができる車輪独立駆動車両の制御装置を提供することを第3の目的とする。
【0017】
また、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、フェールセーフ機能実現のための複雑な処理及びネットワーク構成を必要とせず、既存の構成でフェールセーフ機能を実現することができる車輪独立駆動車両の制御装置を提供することを第4の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明に係る車輪独立駆動車両の制御装置は、車両の左右に配設される各2つ以上の車輪にそれぞれ設けられ、個別に駆動トルクを発生することが可能な車輪回転用原動機と、
前記車両への要求駆動力から、前記車輪回転用原動機に求められる要求必要出力を算出する車両制御装置と、前記要求必要出力が得られるように前記各車輪回転用原動機を制御する原動機制御装置と、前記車両制御装置と前記各原動機制御装置とを接続し、前記各原動機制御装置へ前記要求必要出力を通知する通信経路と、前記車輪回転用原動機が駆動する車輪の車輪速を検出し、前記車輪回転用原動機を制御する前記原動機制御装置に通知する車輪速検出装置とを有する車輪独立駆動車両において、前記原動機制御装置に、前記車輪速検出装置により検出された車輪速から必要とされる算出必要出力を算出する出力自己算出手段と、前記車両制御装置から要求必要出力が通知されないことを検出する未受信検出手段と、前記未受信検出手段が前記要求必要出力が通知されないことを検出した時、前記車輪回転用原動機の制御に用いる必要出力を、算出必要出力に切り替える使用出力切り替え手段とを設けると共に、前記車両制御装置に、前記各原動機制御装置へ要求必要出力が通知されているかを個別に把握できる通信状態検出手段と、前記原動機制御装置が使用する必要出力を、要求必要出力か算出必要出力かに切り替えることを通知する使用出力切り替え通知手段とを設け、前記車両制御装置と所定の原動機制御装置との間の通信経路に通信不具合が発生した時に、前記車両制御装置は、要求必要出力が通知されていないことを前記通信状態検出手段によって検出し、前記所定の原動機制御装置が制御している車輪回転用原動機と左右対称に配置されている車輪回転用原動機を制御している原動機制御装置に、前記使用出力切り替え通知手段によって要求必要出力の算出必要出力への切り替えを通知すると共に、前記所定の原動機制御装置は、前記未受信検出手段によって要求必要出力が通知されていないことを検出した後に、前記使用出力切り替え手段によって前記算出必要出力に切り替えて車輪回転用原動機を制御するものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る車輪独立駆動車両の制御装置は上記のように構成されているため、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても走行可能なフェールセーフを実現することができる。
【0020】
また、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、他の正常な原動機の出力を上げる等負荷を高めることなく走行可能なフェールセーフを実現することができる。
【0021】
さらにまた、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、別の車輪の原動機を制御する制御装置により異常が検出された制御装置が制御している原動機を制御するといった、フェールセーフ機能のための複雑な処理及び機構を必要とせず、既存の構成でフェールセーフ機能を実現することができる。
【0022】
また、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、フェールセーフ機能のための複雑な処理及びネットワーク構成を必要とせず、既存の構成でフェールセーフ機能を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図面にもとづいて説明する。図1は、実施の形態1の構成を示すもので、モータによって各車輪を個別に駆動する4輪独立駆動車両の例を示す全体構成図である。この図において、Sは4輪駆動車両を示し、図の上方が車両の前側、図の下方が車両の後側を示す。
【0024】
車両制御装置1は、ドライバから要求される車両運動を実現するため、もしくは、車両挙動情報を元に車両を安定または車両の運動性能を上げるため、もしくは、車両周辺情報を元に車両の安全性を向上させるため、各車輪に設けられている車輪回転用原動機31−34に求められる要求必要出力を算出し、通信経路6を経由して、各車輪回転用原動機31−34を制御する原動機制御装置21−24に通知するようにされている。
【0025】
ドライバからの要求としては、アクセル操作、ブレーキ操作、シフト操作等のドライバが運転するために車両に対して行う操作情報が挙げられる。また、車両挙動情報としては、車両に発生する前後、左右方向の加速度及び速度、ヨー角、ロール角、ピッチ角方向の加速度、速度、角度情報等の車両に発生する運動に関する情報が挙げられる。
さらに、車両周辺情報としては、車両位置情報、歩行者や前車との距離等の周辺障害物情報等の車両が得られる周辺環境情報が挙げられる。
【0026】
原動機制御装置21は、車両制御装置1からの要求必要出力が得られるように、左前車輪41を駆動する車輪回転用原動機31の制御を行なうようにされている。
原動機制御装置22は、車両制御装置1からの要求必要出力が得られるように、右前車輪42を駆動する車輪回転用原動機32の制御を行なうようにされている。
原動機制御装置23は、車両制御装置1からの要求必要出力が得られるように、左後車輪43を駆動する車輪回転用原動機33の制御を行なうようにされている。
原動機制御装置24は、車両制御装置1からの要求必要出力が得られるように、右後車輪44を駆動する車輪回転用原動機34の制御を行なうようにされている。
【0027】
車輪回転用原動機31は、左前車輪41を回転させるモータであり、電気によって駆動されるようになっている。
車輪回転用原動機32は、右前車輪42を回転させるモータであり、同様に電気によって駆動されるようになっている。
車輪回転用原動機33は、左後車輪43を回転させるモータであり、同様に電気によって駆動されるようになっている。
車輪回転用原動機34は、右後車輪44を回転させるモータであり、同様に電気によって駆動されるようになっている。
【0028】
ここで、車輪回転用原動機31、32、33、34は、車輪のホイールに内蔵されるインホイールモータ構造であってもよいし、変速装置を介して各車輪と結合される構造であってもよい。
【0029】
車輪速検出装置51は、左前車輪41の車輪速を検出し、原動機制御装置21に通知するようにされている。
車輪速検出装置52は、右前車輪42の車輪速を検出し、原動機制御装置22に通知するようにされている。
車輪速検出装置53は、左後車輪43の車輪速を検出し、原動機制御装置23に通知するようにされている。
車輪速検出装置54は、右後車輪44の車輪速を検出し、原動機制御装置24に通知するようにされている。
【0030】
車両制御装置1と原動機制御装置21、22、23、24とは通信経路6によって接続され、各原動機制御装置に要求必要出力等を通知するようにされている。通信経路6は図1に示すようにバス型として一本の通信線に全ての原動機制御装置21、22、23、24が接続されていてもよいし、車両制御装置1と各原動機制御装置21、22、23、24との間を、それぞれ別の通信線によって接続するようにしてもよい。
【0031】
各原動機制御装置21、22、23、24には、それぞれ出力自己算出手段8と、未受信検出手段9と、使用出力切り替え手段10とが内蔵されている。出力自己算出手段8は、あらかじめ車輪速を維持するために求めておいた、車輪速Vと算出必要出力Tcalとの関係を保持しており、この関係を用いて原動機制御装置に通知された車輪速に対応して算出必要出力を導出するようにされている。
【0032】
未受信検出手段9は、フェールの発生等によって車両制御装置1からの要求必要出力が通知されなくなった状態を検出するようにされている。
使用出力切り替え手段10は、原動機制御装置が制御する車輪回転用原動機の制御に用いる必要出力を、車両制御装置1からの要求必要出力とするか、出力自己算出手段8によって算出した算出必要出力Tcal_fl(原動機制御装置21の場合)、Tcal_fr(原動機制御装置22の場合)、Tcal_rl(原動機制御装置23の場合)、Tcal_rr(原動機制御装置24の場合)とするかを切り替えるようにされている。
【0033】
これら、出力自己算出手段8、未受信検出手段9及び使用出力切り替え手段10は、原動機制御装置に内蔵されている例を示したが、これらは原動機制御装置に内蔵しなくてもよく、原動機制御装置の外部に設けて同じ機能を実現してもよいことは云うまでもない。
【0034】
また、車両制御装置1には通信状態検出手段11と使用出力切り替え通知手段12とが内蔵されている。通信状態検出手段11は、車両制御装置1と原動機制御装置との間の通信状態を監視し、原動機制御装置毎に何らかの通信不具合により車両制御装置1からの要求必要出力が通知できなくなった状態を検出するようにされている。
【0035】
使用出力切り替え通知手段12は、各原動機制御装置に対して、通信経路を通して車輪回転用原動機の制御に使用する必要出力を車両制御装置1からの要求必要出力とするか、出力自己算出手段8によって算出した算出必要出力Tcal_fl(原動機制御装置21の場合)、Tcal_fr(原動機制御装置22の場合)、Tcal_rl(原動機制御装置23の場合)、Tcal_rr(原動機制御装置24の場合)とするかを切り替える信号を通知するようにされている。
【0036】
これら、通信状態検出手段11及び使用出力切り替え通知手段12は、車両制御装置1に内蔵されている例を示したが、これらは車両制御装置1に内蔵しなくてもよく、車両制御装置1の外部に設けて同じ機能を実現してもよいことは云うまでもない。
【0037】
これらの装置以外に、モータを原動機とした車輪独立駆動車両に必要な装置もあるが、この発明に直接関係しないため、図1への図示及び説明を省略している。
【0038】
次に、図1に示す車輪独立駆動車両における通常走行時の制御について説明する。
【0039】
ドライバから車両に要求される車両運動を実現するために、車両制御装置1は各車輪回転用原動機31、32、33、34に必要な要求必要出力を算出し、通信経路6を通して各車輪回転用原動機を制御する原動機制御装置21、22、23、24に通知する。
【0040】
通知を受けた各原動機制御装置21、22、23、24は、モータによって構成されている車輪回転用原動機31、32、33、34に対して要求必要出力を出力するように、それぞれの印加電流、電圧等を制御する。そして、各原動機制御装置21、22、23、24により制御された車輪回転用原動機31、32、33、34は印加電流、電圧等に応じた回転をし、ドライバが車両に要求する車両運動を実現させる。
【0041】
このとき、車両に発生する挙動情報や車両周辺情報、ドライバの要求する車両運動情報等から、車両の走行安定性、運動性や安全性をより高めるように各原動機制御装置21、22、23、24に通知する要求必要出力を補正しておく場合もある。
【0042】
次に、図1に示す構成において、通信不具合が発生した場合のフェールセーフ機能を踏まえた処理について図2を用いて説明する。
【0043】
図2中、X印13は、車両制御装置1と原動機制御装置23との間で通信不具合が発生した状態を示している。通信不具合とは、通信経路6の断線等により通信が不可能となる状態全般を云う。これにより、原動機制御装置23は車両制御装置1からの要求必要出力を受け取ることが出来なくなるが、他の原動機制御装置21、22、24においては、通信不具合13の影響は無く、車両制御装置1からの要求必要出力を受け取ることが出来る。
【0044】
この状態における車両制御装置1と各原動機制御装置の処理について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0045】
車両制御装置1の通信状態検出手段11により、図3のフローチャートに示すように、先ずステップS101で左前車輪回転用原動機31の原動機制御装置21へ要求必要出力が通知できない状態であるかどうかを確認する。通知できない状態である場合には、ステップS105で反対側の車輪である右前車輪回転用原動機32の原動機制御装置22へ、使用出力切り替え通知手段12によって切り替え通知を出す。
【0046】
ステップS101で通知できない状態でない場合には、ステップS102に移行し、ここで右前車輪回転用原動機32の原動機制御装置22へ要求必要出力が通知できない状態であるかどうかを確認する。通知できない状態である場合には、ステップS106で反対側の車輪である左前車輪回転用原動機31の原動機制御装置21へ使用出力切り替え通知手段12によって切り替え通知を出す。
【0047】
ステップS102で通知できない状態でない場合には、ステップS103に移行し、ここで左後車輪回転用原動機33の原動機制御装置23へ要求必要出力が通知できない状態であるかどうかを確認する。図2の例では通知できない状態であることを信号11Aがなくなることによって示すようにしたため、ステップS107で反対側の車輪である右後車輪回転用原動機34の原動機制御装置24へ使用出力切り替え通知手段12によって切り替え通知12Aを出す。
【0048】
なお、ステップS103でも通知できない状態でない場合には、さらにステップS104に移行し、ここで右後車輪回転用原動機34の原動機制御装置24へ要求必要出力が通知できない状態であるかどうかを確認する。通知できない状態である場合には、ステップS108で反対側の車輪である左後車輪回転用原動機33の原動機制御装置23へ使用出力切り替え通知手段12によって切り替え通知を出すことになる。
【0049】
図4〜図7は、車両制御装置1からの要求必要出力の受信の有無にもとづく原動機制御装置21、22、23、24の処理手順を示すフローチャートである。
図4は、原動機制御装置21の処理手順を示すもので、先ずステップS121で未受信検出手段9により車両制御装置1からの要求必要出力が受信できていないかどうかを確認する。
【0050】
受信できていない場合はYesからステップS123に進み、使用出力切り替え手段10によって車輪回転用原動機31の制御に用いる必用出力を、出力自己算出手段8によって算出必用出力Tcal_flに切り替える。ステップS121で要求必要出力が受信できている場合はNoからステップS122に進み、車両制御装置1から使用出力切り替え通知があるかどうかを確認する。通知がある場合はステップS123に進み、ない場合はステップS124に進む。このステップでは必要出力が得られるように車輪回転用原動機31を制御することになる。
【0051】
図5は、原動機制御装置22の処理手順を示すもので、図4と同様な処理が行なわれる。
図4に対応するステップにはそれぞれ同じステップ番号を付して説明を省略する。
図6は、原動機制御装置23の処理手順を示すものであり、図7は、原動機制御装置24の処理手順を示すもので、それぞれ図4と同様な処理が行なわれるため、図4に対応するステップに図4と同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0052】
図2に示すようにX印13で通信不具合が発生した場合には、原動機制御装置21、22は図4、図5のフローチャートにおいて、ステップS121、122が全てNoとなり、使用出力切り替え手段10による車輪回転用原動機31、32の制御に用いる必要出力を算出必要出力Tcal_fl、Tcal_frへ切り替えることは行われず、それぞれ、通常通り車両制御装置1からの要求必要出力が得られるように車輪回転用原動機31、32の制御を実施することになる。
【0053】
しかし、原動機制御装置23においては、図6のステップS121において、未受信検出手段9により要求必要出力が受信できないことを検出するため、ステップS123に進み、使用出力切り替え手段10により車輪回転用原動機33の制御に用いる必要出力を出力自己算出手段8による算出必要出力Tcal_rlに切り替える。従ってステップS124において、算出必要出力Tcal_rlが得られるように車輪回転用原動機33の制御を実施することになる。
【0054】
出力自己算出手段8による算出必用出力の算出は、図8に示すフローチャートに従って行なわれる。即ち、図8において、ステップS131で車輪速検出装置53から車輪速V1が通知される。これを受けてステップS132で出力自己算出手段8によりあらかじめ保持されている図9に示すような車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係から、算出必要出力Tcal_rl = T1を導き出す。
【0055】
また、原動機制御装置24は、図7に示すフローチャートにもとづいて処理が実施される。
【0056】
原動機制御装置24は、図7のステップS121がNoとなってステップS122に進むが、ここで車両制御装置1より使用出力切り替え通知12Aが出されたことを検出するため、ステップS123において、使用出力切り替え手段10により車輪回転用原動機34の制御に用いる必要出力を出力自己算出手段8による算出必要出力Tcal_rrに切り替えることになる。このためステップS124で算出必要出力Tcal_rrが得られるように車輪回転用原動機34を制御することになる。
【0057】
原動機制御装置24の出力自己算出手段8は、あらかじめ保持されている図10に示すような車輪速Vと算出必要出力Tcalとの関係から、車輪速検出装置54によって検出された車輪速V2を用いて、算出必要出力Tcal_rr = T2を導き出す。
このTcal_rrを導き出す処理は、原動機制御装置23の処理として図8に示すフローチャートと同様の処理を行うことになるため説明は省略する。
【0058】
ここで、後左右輪で、あらかじめ保持しておく車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係及び車輪速Vと算出必要出力Tcal_rrとの関係を同じものとしておけば、車両直進時には、後左右輪が同じ算出必要出力Tcal_rとなり、車両挙動が乱れることなく、通常の走行とほぼ同じ走行ができることになる。
【0059】
また、カーブの走行等においても、カーブ外側の回転数の早い車輪に対して駆動トルクを多く与えることで、左右輪の必要出力を同じにする場合などに比べて、カーブの走行をしやすくすることが出来る。
【0060】
さらにまた、上り坂や積載重量が大きい場合などで、必要出力があらかじめ保持している車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係よりも車輪速に対する必要出力が大きい場合においては、後左右輪の車輪回転用原動機33、34の出力は不足するが、後左右輪からの出力が0とはならないため、ある程度の前左右輪の車輪回転用原動機31、32への負荷低減の効果が得られる。
【0061】
一方、フェールセーフ機能の実現を前輪、後輪のいずれかの左右車輪に限定すれば、従来の処理からの変更箇所が極力少なくなり、十分な効果が得られる。
また、前後どちらか一方を内燃機関で駆動し、他方の左右車輪をモータ駆動するハイブリッド自動車などにおけるフェールセーフ機能としても有効である。
【0062】
さらにまた、算出必要出力Tcal_rlを導き出す車輪速V1に、図8のフローチャートのステップS131と132との間で、あらかじめローパスフィルタなどをかけてV1_LFとし、このV1_LFをステップS132における車輪速V1の代わりに使用するようにすれば、急激な車輪速の変化を抑えることが出来、導き出す算出必要出力Tcal_rlの急激な変化を抑えることができる。これは、導き出し後の算出必要出力Tcal_rlにローパスフィルタをかけても同様である。
【0063】
一方、算出必要出力Tcal_rlを導き出す図8のステップS132において、車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係を図11に示すように所定の車輪速V4以上の算出必要出力Tcal_rlを上限値T3limに制限すれば、フェールセーフ機能実現時の安全性をより高めることができる。
【0064】
また、通信不具合13が解消され、車両制御装置1と原動機制御装置23との間の通信が回復したときは、次の方法等で、通信不具合13の発生前の処理に復帰する。
【0065】
先ず、車両制御装置1は、通信状態検出手段11において、原動機制御装置23と通信が出来ていることから、通信不具合13が解消したことを検出する。
【0066】
次に、使用出力切り替え通知手段12を用いて、原動機制御装置24に対して、使用出力を算出必要出力から、要求必要出力に切り替えることを通知する。通知を受けた原動機制御装置24は、使用出力切り替え手段10において使用出力を算出必要出力Tcal_rrから要求必要出力に切り替え、車輪回転用原動機34の制御を行なう。
【0067】
原動機制御装置23は、未受信検出手段9において、通信不具合13の解消を検出し、使用出力切り替え手段10において使用出力を算出必要出力Tcal_rlから、要求必要出力に切り替え、車輪回転用原動機33の制御を行なう。
【0068】
実施の形態1は上記のように構成されているため、新たにバックアップ用の通信経路を追加することなく、原動機制御装置との間に通信不具合状態が発生したときには、車輪回転用原動機自体が検出する車輪速を用いて走行可能なフェールセーフ機能を実現することができる。
【0069】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について説明する。
【0070】
実施の形態2の全体構成は、実施の形態1の図1と同様に各車輪に個別の車輪回転用原動機としてモータを持つ4輪独立駆動車両としたものであるため、図1を援用して説明を省略する。
【0071】
次に、実施の形態2において、通信不具合が発生した場合のフェールセーフ機能を踏まえた処理について図2を用いて説明する。
【0072】
図2中、X印13は、車両制御装置1と原動機制御装置23との間で通信不具合が発生した状態を示している。これにより、原動機制御装置23は車両制御装置1からの要求必要出力を受け取ることが出来なくなっている。
【0073】
フェールセーフ機能としては、実施の形態1と同様に通信不具合13が発生した時には、原動機制御装置23は、必要出力を算出必要出力Tcal_rlに切り替えて左後車輪を回転させるべく車輪回転用原動機33の制御を行う。同様に、原動機制御装置24は、算出必要出力Tcal_rrに切り替えて、右後車輪を回転させるべく車輪回転用原動機34の制御を行う。
【0074】
このとき、それぞれの算出必要出力Tcal_rf、Tcal_rrを導き出すため、図8に代わって図12に示すフローチャートにもとづいた処理を行う。ここでは、左右後車輪がそれぞれ同様の処理になるため、左後車輪の原動機制御装置23による処理説明のみを行い、右後車輪の原動機制御装置24による処理説明は省略する。
【0075】
先ず、図12のフローチャートのステップS201において、車輪速検出装置53により車輪速V5が原動機制御装置23に通知される。次に、ステップS202において、車輪速V5の時間当たりの変化量から、減速中かどうかの判定を行う。判定方法の一例として、車輪速V5の時間当たりの変化量が減少方向に一定値を超えているかどうかで判断する。
【0076】
ステップS202において、車輪速V5の時間当たりの変化量が一定値を超えていない時は、ステップS203において、出力自己算出手段8によりあらかじめ保持されている図13に示すような通常時の車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係Aから算出必要出力Tcal_rl = T5norを導き出し、算出必要出力Tcal_rlが得られるように車輪回転用原動機33の制御を行う。
【0077】
一方、ステップS202において、車輪速V5の時間当たりの変化量が減少方向に一定値を超えている時は、ステップS204で減速中と判断し、出力自己算出手段8によりあらかじめ保持されている図13に示すような減速判定時の車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係Bから算出必要出力Tcal_rl = T5brkを導き出し、算出必要出力Tcal_rlが得られるように車輪回転用原動機33の制御を行う。
【0078】
減速判定時の車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係Bは、通常に比べて、算出必要出力Tcal_rlが小さくなるように設定しておく。
【0079】
また、図14に示すように車輪速V5の時間当たりの変化量が減少方向に一定値を超えているかどうかの判断を、複数の減少方向への時間当たりの変化量閾値A1・・・Anの時の関係と比較して行い、閾値ごとに算出必要出力を設定してもよい。
【0080】
次に、図12のステップS205において、車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係図を通常時から減速時に変更することによる算出必要出力Tcal_rlの急激な変化を抑えるために、ローパスフィルタ等にかけ、時間当たりの変化量に制限をかけた算出必要出力Tcal_rl_LFを導き出すようにしてもよい。
【0081】
このように、実施の形態1に示すフェールセーフ機能が働いている時においても、減速時の駆動トルクを制限することで、車輪独立駆動車両の減速運動を妨げないようにすることが可能となる。
【0082】
実施の形態2は上記のように構成されているため、新たにバックアップ用の通信経路を追加することなく、原動機制御装置との間に通信不具合状態が発生したときには、車輪回転用原動機自体が検出する車輪速と、車輪速の時間当たりの変化量を用いた車両減速状態にあわせて必要出力を変更することが可能なフェールセーフ機能を実現することができる。
【0083】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3について説明する。
【0084】
図15は、実施の形態3の全体構成を示す図である。実施の形態1の図1と同様に各車輪に個別の車輪回転用原動機としてモータを持つ4輪独立駆動車両としたものである。
図1と同一または相当部分には同一符号を付して説明を省略するが、車両制御装置1に切り替え実施通知手段301を設けた点が図1とは異なる。
【0085】
切り替え実施通知手段301は、車輪独立駆動車両内の1つ以上の原動機制御装置において、必要出力を算出必要出力に切り替えた制御が行われていることを各原動機制御装置に通知するものである。
【0086】
X印302は、車両制御装置1と原動機制御装置23との間で通信不具合が発生した状態を示している。これにより、原動機制御装置23は車両制御装置1からの要求必要出力を受け取ることが出来なくなっている。
【0087】
通信不具合302が発生した時のフェールセーフ機能としては、実施の形態1と同様に、原動機制御装置23は、未受信検出手段9により通信不具合302を検出し、必要出力を算出必要出力Tcal_rlに切り替えて車輪回転用原動機33の制御を行う。同様に、原動機制御装置24は、車両制御装置1の使用出力切り替え手段12の指示により、必要出力を算出必要出力Tcal_rrに切り替えて車輪回転用原動機34の制御を行う。原動機制御装置21と22は、通常時と同様に車両制御装置1からの要求出力が得られるように、それぞれ車輪回転用原動機31、32の制御を行う。
【0088】
このとき、車両制御装置1の切り替え実施通知手段301は、原動機制御装置21、22に対して、切り替え実施通知301Aを発し、原動機制御装置23において必要出力を要求必要出力から算出必要出力に切り替えていることを通知する。
【0089】
次に、図16に示すように、すでに通信不具合302が発生している原動機制御装置23と左右対称ではない位置の原動機制御装置21との間でX印303で示す新たな通信不具合個所が発生したとすると、原動機制御装置21も車両制御装置1からの要求必要出力を受け取ることが出来なくなる。
【0090】
このとき、原動機制御装置21は、図17に示すフローチャートにもとづいた処理を行うことになる。
【0091】
即ち、ステップS311において、原動機制御装置21の未受信検出手段9により通信不具合303を検出しているかどうかを確認する。即ち車両制御装置1からの要求必要出力が受信できていないかどうかを確認する。通信不具合を検出している場合はステップS313に移行し、車両制御装置1の切り替え実施通知手段301から左右対称車輪以外の原動機制御装置23において、算出必要出力での制御に切り替わっていることの通知がされているかどうかを確認する。通知がされている場合はステップS315において、必要出力を段階的に0にするなどの制限された値に切り替える。そして、ステップS316において必要出力が得られるように車輪回転用原動機31の制御を実施する。
【0092】
なお、ステップS313で通知がされていない場合は、ステップS314で原動機制御装置21の使用出力切り替え手段10により車輪回転用原動機31の制御に用いる必用出力を出力自己算出手段8による算出必要出力Tcal_flに切り替えてステップS316に進む。
【0093】
原動機制御装置22においても原動機制御装置21と同様の処理を実施し、車両制御装置1の使用出力切り替え通知手段12からの指示があったときに、必要出力を段階的に0にするなどの制限された値に切り替えて車輪回転用原動機32の制御を実施する。
【0094】
このよう前左右輪の必要出力を段階的に0にすることで、車輪独立駆動車両が減速し、それにあわせて、後左右輪の必要出力も減少することとなる。この結果、車輪独立駆動車両を安全に停止することができる。
【0095】
一方、通信不具合302が発生した原動機制御装置23に対して左右対称に配置されている原動機制御装置24と車両制御装置1との間に新たに通信不具合が発生した場合は、前車輪の原動機制御装置21と22は通常の制御を継続させ、原動機制御装置24においては算出必要出力Tcal_rrに切り替えたままの制御を継続する。
【0096】
このようにすることで、通信不具合が複数場所で発生した場合においても、通信不具合が発生した場所に応じて実施の形態1に示すフェールセーフ機能が得られると共に、車輪独立駆動車両を安全に停止させることができる新たなフェールセーフ機能が得られる。
【0097】
また、上述した各実施の形態のように、各車輪の原動機としてモータを採用する場合には、車輪速検出装置での車輪速の検出に、モータ固有の回転子位置の時間変化量を用いてもよい。車輪回転用原動機31、32、33、34が、いわゆるブラシレスモータの場合には、回転子位置検出装置は必ず搭載されているため、新たなセンサー等の測定装置を必要とせず、コストを抑えることができる。
【0098】
さらにまた、上述した各実施の形態では、4輪車の場合について説明したが、6輪、8輪といった4輪以上の車両についても、車輪が左右対象に設置されている車両においては、同様の効果を期待することができる。
【0099】
また、上述した各実施の形態では、各車輪の原動機をモータとして説明したが、原動機を内燃機関としてもよいことは云うまでもない。
【0100】
実施の形態3は上記のように構成されているため、新たにバックアップ用の通信経路を追加することなく、通信不具合状態が発生したことを正常な原動機制御装置に通知しておくことで、新たに通信不具合状態が発生したときには、通信不具合が発生した場所に応じて走行を続けることが出来たり、安全に停止させたりすることができるフェールセーフ機能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】この発明の実施の形態1による車輪独立駆動車両の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における通信不具合発生時の状態を示す全体構成図である。
【図3】実施の形態1における通信不具合発生時の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】車両制御装置からの要求必要出力の受信の有無にもとづく原動機制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】車両制御装置からの要求必要出力の受信の有無にもとづく原動機制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】車両制御装置からの要求必要出力の受信の有無にもとづく原動機制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】車両制御装置からの要求必要出力の受信の有無にもとづく原動機制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態1において原動機制御装置における算出必要出力Tcalを求める処理手順を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態1において原動機制御装置が持つ車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係を示す図である。
【図10】実施の形態1において原動機制御装置が持つ車輪速Vと算出必要出力Tcal_rrとの関係を示す図である。
【図11】実施の形態1において原動機制御装置が持つ制限を加味した車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態2における原動機制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態2において原動機制御装置が持つ切り替えを加味した車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係を示す図である。
【図14】実施の形態2において原動機制御装置が持つ複数の切り替えを加味した車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態3による車輪独立駆動車両の全体構成を示すブロック図である。
【図16】実施の形態3において複数の通信不具合発生時の状況説明図である。
【図17】実施の形態3において原動機制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 車両制御装置、 6 通信経路、 8 出力自己算出手段、
9 未受信検出手段、 10 使用出力切り替え手段、 11 通信状態検出手段、 12 使用出力切り替え通知手段、 21、22、23、24 原動機制御装置、 31、32、33、34 車輪回転用原動機、 41、42、43、44 車輪、 51、52、53、54 車輪速検出装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、フェールセーフ機能を有する車輪独立駆動車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車輪独立駆動車両のフェールセーフ機能として、車輪回転用モータの異常を検出した時に、異常が検出された車輪回転用モータと該車輪回転用モータの車輪に対して左右反対側に位置する車輪の回転用モータの駆動力も0にすることが知られている。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、車輪独立駆動車両の他のフェールセーフ機能として、車輪回転用モータの異常を検出した時に、他の正常な車輪回転用モータの駆動力を補正することで、車両の挙動を不安定にしないようにすることが知られている。(例えば特許文献2参照)。
【0004】
さらにまた、各車輪を独立的に車輪回転用モータで駆動する車両におけるフェールセーフ機能として、車輪回転用モータを制御する制御装置の異常が検出された時に、別の車輪の車輪回転用モータを制御する制御装置によって異常が検出された制御装置が制御している車輪回転用モータを代わりに制御することが知られている。(例えば特許文献3参照)。
【0005】
また、各車輪を独立的に車輪回転用モータで駆動する電動車両におけるフェールセーフ機能として、モータ制御部と車両制御部との間のネットワークに異常が検出された時に、ネットワーク上の別ノードを経由した迂回伝送路を構築し、迂回伝送路経由で車両制御部とモータ制御部との通信を行なうことが知られている。(例えば特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】特許3280392号公報
【特許文献2】特開2005−119647号公報
【特許文献3】特開2004−175313号公報
【特許文献4】特許3476770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の車輪独立駆動車両の制御装置は上記のように構成されており、特許文献1に示されたものは、車輪回転用モータや車輪回転用モータを制御する制御装置の異常時におけるフェールセーフ機能を対象とするもので、それらを接続するネットワークにおけるフェールに関しては対象とされていない。そのため、車輪回転用モータや車輪回転用モータを制御する制御装置が正常であるにも関わらず、それらを接続するネットワークに異常がある場合にはフェールセーフ機能によって走行できないという問題点があった。
【0008】
また、特許文献2に示されたものは、車輪回転用モータや車輪回転用モータを制御する制御装置の異常時におけるフェールセーフ機能を対象とするもので、それらを接続するネットワークにおけるフェールに関しては対象とされていない。そのため、車輪回転用モータや車輪回転用モータを制御する制御装置が正常であるにも関わらず、それらを接続するネットワークに異常がある場合には、フェールセーフ機能によって他の正常な車輪回転用モータの出力を上げる等、正常な車輪回転用モータの負荷を高める結果を招くという問題点があった。
【0009】
さらにまた、フェールセーフ機能を実施するために、他の正常な車輪回転用モータの駆動力を補正するといった複雑な処理が必要になるという問題点もあった。
【0010】
また、特許文献3に示されたものは、車輪回転用モータや車輪回転用モータを制御する制御装置の異常時におけるフェールセーフ機能を対象とするもので、それらを接続するネットワークにおけるフェールに関しては対象とされていない。そのため、車輪回転用モータや車輪回転用モータを制御する制御装置が正常であるにも関わらず、それらを接続するネットワークに異常があると検出されれば、フェールセーフ機能によって別の車輪の車輪回転用モータを制御する制御装置により異常が検出された制御装置が制御している車輪回転用モータを制御するという問題点があった。
【0011】
さらにまた、フェールセーフ機能を実現するために、他の制御装置により車輪回転用モータを制御するといった複雑な処理と機構が必要になるという問題点もあった。
【0012】
また、特許文献4に示されたものは、ネットワークにおけるフェールに関してはフェールセーフ機能の対象とされているが、そのフェールセーフ機能実現のために、さまざまなノード間を余分に接続した迂回伝送路を準備しておくといった複雑な構成が必要になるという問題点があった。
【0013】
さらにまた、ネットワークにおけるフェール発生時に、どの迂回伝送路経由で通信させるかを選択させる複雑な処理が必要になるという問題点もあった。
【0014】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、走行可能なフェールセーフ機能を実現することができる車輪独立駆動車両の制御装置を提供することを第1の目的とする。
【0015】
また、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、他の正常な原動機の出力を上げる等負荷を高めることなく走行可能なフェールセーフ機能を実現することができる車輪独立駆動車両の制御装置を提供することを第2の目的とする。
【0016】
さらにまた、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、別の車輪の原動機を制御する制御装置によって異常が検出された制御装置が制御している原動機を制御するといった、フェールセーフ機能実現のための複雑な処理及び機構を必要とせず、既存の構成でフェールセーフ機能を実現することができる車輪独立駆動車両の制御装置を提供することを第3の目的とする。
【0017】
また、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、フェールセーフ機能実現のための複雑な処理及びネットワーク構成を必要とせず、既存の構成でフェールセーフ機能を実現することができる車輪独立駆動車両の制御装置を提供することを第4の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明に係る車輪独立駆動車両の制御装置は、車両の左右に配設される各2つ以上の車輪にそれぞれ設けられ、個別に駆動トルクを発生することが可能な車輪回転用原動機と、
前記車両への要求駆動力から、前記車輪回転用原動機に求められる要求必要出力を算出する車両制御装置と、前記要求必要出力が得られるように前記各車輪回転用原動機を制御する原動機制御装置と、前記車両制御装置と前記各原動機制御装置とを接続し、前記各原動機制御装置へ前記要求必要出力を通知する通信経路と、前記車輪回転用原動機が駆動する車輪の車輪速を検出し、前記車輪回転用原動機を制御する前記原動機制御装置に通知する車輪速検出装置とを有する車輪独立駆動車両において、前記原動機制御装置に、前記車輪速検出装置により検出された車輪速から必要とされる算出必要出力を算出する出力自己算出手段と、前記車両制御装置から要求必要出力が通知されないことを検出する未受信検出手段と、前記未受信検出手段が前記要求必要出力が通知されないことを検出した時、前記車輪回転用原動機の制御に用いる必要出力を、算出必要出力に切り替える使用出力切り替え手段とを設けると共に、前記車両制御装置に、前記各原動機制御装置へ要求必要出力が通知されているかを個別に把握できる通信状態検出手段と、前記原動機制御装置が使用する必要出力を、要求必要出力か算出必要出力かに切り替えることを通知する使用出力切り替え通知手段とを設け、前記車両制御装置と所定の原動機制御装置との間の通信経路に通信不具合が発生した時に、前記車両制御装置は、要求必要出力が通知されていないことを前記通信状態検出手段によって検出し、前記所定の原動機制御装置が制御している車輪回転用原動機と左右対称に配置されている車輪回転用原動機を制御している原動機制御装置に、前記使用出力切り替え通知手段によって要求必要出力の算出必要出力への切り替えを通知すると共に、前記所定の原動機制御装置は、前記未受信検出手段によって要求必要出力が通知されていないことを検出した後に、前記使用出力切り替え手段によって前記算出必要出力に切り替えて車輪回転用原動機を制御するものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る車輪独立駆動車両の制御装置は上記のように構成されているため、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても走行可能なフェールセーフを実現することができる。
【0020】
また、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、他の正常な原動機の出力を上げる等負荷を高めることなく走行可能なフェールセーフを実現することができる。
【0021】
さらにまた、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、別の車輪の原動機を制御する制御装置により異常が検出された制御装置が制御している原動機を制御するといった、フェールセーフ機能のための複雑な処理及び機構を必要とせず、既存の構成でフェールセーフ機能を実現することができる。
【0022】
また、原動機を制御する制御装置が正常である時に、それらと接続するネットワークに異常が検出された場合においても、フェールセーフ機能のための複雑な処理及びネットワーク構成を必要とせず、既存の構成でフェールセーフ機能を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図面にもとづいて説明する。図1は、実施の形態1の構成を示すもので、モータによって各車輪を個別に駆動する4輪独立駆動車両の例を示す全体構成図である。この図において、Sは4輪駆動車両を示し、図の上方が車両の前側、図の下方が車両の後側を示す。
【0024】
車両制御装置1は、ドライバから要求される車両運動を実現するため、もしくは、車両挙動情報を元に車両を安定または車両の運動性能を上げるため、もしくは、車両周辺情報を元に車両の安全性を向上させるため、各車輪に設けられている車輪回転用原動機31−34に求められる要求必要出力を算出し、通信経路6を経由して、各車輪回転用原動機31−34を制御する原動機制御装置21−24に通知するようにされている。
【0025】
ドライバからの要求としては、アクセル操作、ブレーキ操作、シフト操作等のドライバが運転するために車両に対して行う操作情報が挙げられる。また、車両挙動情報としては、車両に発生する前後、左右方向の加速度及び速度、ヨー角、ロール角、ピッチ角方向の加速度、速度、角度情報等の車両に発生する運動に関する情報が挙げられる。
さらに、車両周辺情報としては、車両位置情報、歩行者や前車との距離等の周辺障害物情報等の車両が得られる周辺環境情報が挙げられる。
【0026】
原動機制御装置21は、車両制御装置1からの要求必要出力が得られるように、左前車輪41を駆動する車輪回転用原動機31の制御を行なうようにされている。
原動機制御装置22は、車両制御装置1からの要求必要出力が得られるように、右前車輪42を駆動する車輪回転用原動機32の制御を行なうようにされている。
原動機制御装置23は、車両制御装置1からの要求必要出力が得られるように、左後車輪43を駆動する車輪回転用原動機33の制御を行なうようにされている。
原動機制御装置24は、車両制御装置1からの要求必要出力が得られるように、右後車輪44を駆動する車輪回転用原動機34の制御を行なうようにされている。
【0027】
車輪回転用原動機31は、左前車輪41を回転させるモータであり、電気によって駆動されるようになっている。
車輪回転用原動機32は、右前車輪42を回転させるモータであり、同様に電気によって駆動されるようになっている。
車輪回転用原動機33は、左後車輪43を回転させるモータであり、同様に電気によって駆動されるようになっている。
車輪回転用原動機34は、右後車輪44を回転させるモータであり、同様に電気によって駆動されるようになっている。
【0028】
ここで、車輪回転用原動機31、32、33、34は、車輪のホイールに内蔵されるインホイールモータ構造であってもよいし、変速装置を介して各車輪と結合される構造であってもよい。
【0029】
車輪速検出装置51は、左前車輪41の車輪速を検出し、原動機制御装置21に通知するようにされている。
車輪速検出装置52は、右前車輪42の車輪速を検出し、原動機制御装置22に通知するようにされている。
車輪速検出装置53は、左後車輪43の車輪速を検出し、原動機制御装置23に通知するようにされている。
車輪速検出装置54は、右後車輪44の車輪速を検出し、原動機制御装置24に通知するようにされている。
【0030】
車両制御装置1と原動機制御装置21、22、23、24とは通信経路6によって接続され、各原動機制御装置に要求必要出力等を通知するようにされている。通信経路6は図1に示すようにバス型として一本の通信線に全ての原動機制御装置21、22、23、24が接続されていてもよいし、車両制御装置1と各原動機制御装置21、22、23、24との間を、それぞれ別の通信線によって接続するようにしてもよい。
【0031】
各原動機制御装置21、22、23、24には、それぞれ出力自己算出手段8と、未受信検出手段9と、使用出力切り替え手段10とが内蔵されている。出力自己算出手段8は、あらかじめ車輪速を維持するために求めておいた、車輪速Vと算出必要出力Tcalとの関係を保持しており、この関係を用いて原動機制御装置に通知された車輪速に対応して算出必要出力を導出するようにされている。
【0032】
未受信検出手段9は、フェールの発生等によって車両制御装置1からの要求必要出力が通知されなくなった状態を検出するようにされている。
使用出力切り替え手段10は、原動機制御装置が制御する車輪回転用原動機の制御に用いる必要出力を、車両制御装置1からの要求必要出力とするか、出力自己算出手段8によって算出した算出必要出力Tcal_fl(原動機制御装置21の場合)、Tcal_fr(原動機制御装置22の場合)、Tcal_rl(原動機制御装置23の場合)、Tcal_rr(原動機制御装置24の場合)とするかを切り替えるようにされている。
【0033】
これら、出力自己算出手段8、未受信検出手段9及び使用出力切り替え手段10は、原動機制御装置に内蔵されている例を示したが、これらは原動機制御装置に内蔵しなくてもよく、原動機制御装置の外部に設けて同じ機能を実現してもよいことは云うまでもない。
【0034】
また、車両制御装置1には通信状態検出手段11と使用出力切り替え通知手段12とが内蔵されている。通信状態検出手段11は、車両制御装置1と原動機制御装置との間の通信状態を監視し、原動機制御装置毎に何らかの通信不具合により車両制御装置1からの要求必要出力が通知できなくなった状態を検出するようにされている。
【0035】
使用出力切り替え通知手段12は、各原動機制御装置に対して、通信経路を通して車輪回転用原動機の制御に使用する必要出力を車両制御装置1からの要求必要出力とするか、出力自己算出手段8によって算出した算出必要出力Tcal_fl(原動機制御装置21の場合)、Tcal_fr(原動機制御装置22の場合)、Tcal_rl(原動機制御装置23の場合)、Tcal_rr(原動機制御装置24の場合)とするかを切り替える信号を通知するようにされている。
【0036】
これら、通信状態検出手段11及び使用出力切り替え通知手段12は、車両制御装置1に内蔵されている例を示したが、これらは車両制御装置1に内蔵しなくてもよく、車両制御装置1の外部に設けて同じ機能を実現してもよいことは云うまでもない。
【0037】
これらの装置以外に、モータを原動機とした車輪独立駆動車両に必要な装置もあるが、この発明に直接関係しないため、図1への図示及び説明を省略している。
【0038】
次に、図1に示す車輪独立駆動車両における通常走行時の制御について説明する。
【0039】
ドライバから車両に要求される車両運動を実現するために、車両制御装置1は各車輪回転用原動機31、32、33、34に必要な要求必要出力を算出し、通信経路6を通して各車輪回転用原動機を制御する原動機制御装置21、22、23、24に通知する。
【0040】
通知を受けた各原動機制御装置21、22、23、24は、モータによって構成されている車輪回転用原動機31、32、33、34に対して要求必要出力を出力するように、それぞれの印加電流、電圧等を制御する。そして、各原動機制御装置21、22、23、24により制御された車輪回転用原動機31、32、33、34は印加電流、電圧等に応じた回転をし、ドライバが車両に要求する車両運動を実現させる。
【0041】
このとき、車両に発生する挙動情報や車両周辺情報、ドライバの要求する車両運動情報等から、車両の走行安定性、運動性や安全性をより高めるように各原動機制御装置21、22、23、24に通知する要求必要出力を補正しておく場合もある。
【0042】
次に、図1に示す構成において、通信不具合が発生した場合のフェールセーフ機能を踏まえた処理について図2を用いて説明する。
【0043】
図2中、X印13は、車両制御装置1と原動機制御装置23との間で通信不具合が発生した状態を示している。通信不具合とは、通信経路6の断線等により通信が不可能となる状態全般を云う。これにより、原動機制御装置23は車両制御装置1からの要求必要出力を受け取ることが出来なくなるが、他の原動機制御装置21、22、24においては、通信不具合13の影響は無く、車両制御装置1からの要求必要出力を受け取ることが出来る。
【0044】
この状態における車両制御装置1と各原動機制御装置の処理について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0045】
車両制御装置1の通信状態検出手段11により、図3のフローチャートに示すように、先ずステップS101で左前車輪回転用原動機31の原動機制御装置21へ要求必要出力が通知できない状態であるかどうかを確認する。通知できない状態である場合には、ステップS105で反対側の車輪である右前車輪回転用原動機32の原動機制御装置22へ、使用出力切り替え通知手段12によって切り替え通知を出す。
【0046】
ステップS101で通知できない状態でない場合には、ステップS102に移行し、ここで右前車輪回転用原動機32の原動機制御装置22へ要求必要出力が通知できない状態であるかどうかを確認する。通知できない状態である場合には、ステップS106で反対側の車輪である左前車輪回転用原動機31の原動機制御装置21へ使用出力切り替え通知手段12によって切り替え通知を出す。
【0047】
ステップS102で通知できない状態でない場合には、ステップS103に移行し、ここで左後車輪回転用原動機33の原動機制御装置23へ要求必要出力が通知できない状態であるかどうかを確認する。図2の例では通知できない状態であることを信号11Aがなくなることによって示すようにしたため、ステップS107で反対側の車輪である右後車輪回転用原動機34の原動機制御装置24へ使用出力切り替え通知手段12によって切り替え通知12Aを出す。
【0048】
なお、ステップS103でも通知できない状態でない場合には、さらにステップS104に移行し、ここで右後車輪回転用原動機34の原動機制御装置24へ要求必要出力が通知できない状態であるかどうかを確認する。通知できない状態である場合には、ステップS108で反対側の車輪である左後車輪回転用原動機33の原動機制御装置23へ使用出力切り替え通知手段12によって切り替え通知を出すことになる。
【0049】
図4〜図7は、車両制御装置1からの要求必要出力の受信の有無にもとづく原動機制御装置21、22、23、24の処理手順を示すフローチャートである。
図4は、原動機制御装置21の処理手順を示すもので、先ずステップS121で未受信検出手段9により車両制御装置1からの要求必要出力が受信できていないかどうかを確認する。
【0050】
受信できていない場合はYesからステップS123に進み、使用出力切り替え手段10によって車輪回転用原動機31の制御に用いる必用出力を、出力自己算出手段8によって算出必用出力Tcal_flに切り替える。ステップS121で要求必要出力が受信できている場合はNoからステップS122に進み、車両制御装置1から使用出力切り替え通知があるかどうかを確認する。通知がある場合はステップS123に進み、ない場合はステップS124に進む。このステップでは必要出力が得られるように車輪回転用原動機31を制御することになる。
【0051】
図5は、原動機制御装置22の処理手順を示すもので、図4と同様な処理が行なわれる。
図4に対応するステップにはそれぞれ同じステップ番号を付して説明を省略する。
図6は、原動機制御装置23の処理手順を示すものであり、図7は、原動機制御装置24の処理手順を示すもので、それぞれ図4と同様な処理が行なわれるため、図4に対応するステップに図4と同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0052】
図2に示すようにX印13で通信不具合が発生した場合には、原動機制御装置21、22は図4、図5のフローチャートにおいて、ステップS121、122が全てNoとなり、使用出力切り替え手段10による車輪回転用原動機31、32の制御に用いる必要出力を算出必要出力Tcal_fl、Tcal_frへ切り替えることは行われず、それぞれ、通常通り車両制御装置1からの要求必要出力が得られるように車輪回転用原動機31、32の制御を実施することになる。
【0053】
しかし、原動機制御装置23においては、図6のステップS121において、未受信検出手段9により要求必要出力が受信できないことを検出するため、ステップS123に進み、使用出力切り替え手段10により車輪回転用原動機33の制御に用いる必要出力を出力自己算出手段8による算出必要出力Tcal_rlに切り替える。従ってステップS124において、算出必要出力Tcal_rlが得られるように車輪回転用原動機33の制御を実施することになる。
【0054】
出力自己算出手段8による算出必用出力の算出は、図8に示すフローチャートに従って行なわれる。即ち、図8において、ステップS131で車輪速検出装置53から車輪速V1が通知される。これを受けてステップS132で出力自己算出手段8によりあらかじめ保持されている図9に示すような車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係から、算出必要出力Tcal_rl = T1を導き出す。
【0055】
また、原動機制御装置24は、図7に示すフローチャートにもとづいて処理が実施される。
【0056】
原動機制御装置24は、図7のステップS121がNoとなってステップS122に進むが、ここで車両制御装置1より使用出力切り替え通知12Aが出されたことを検出するため、ステップS123において、使用出力切り替え手段10により車輪回転用原動機34の制御に用いる必要出力を出力自己算出手段8による算出必要出力Tcal_rrに切り替えることになる。このためステップS124で算出必要出力Tcal_rrが得られるように車輪回転用原動機34を制御することになる。
【0057】
原動機制御装置24の出力自己算出手段8は、あらかじめ保持されている図10に示すような車輪速Vと算出必要出力Tcalとの関係から、車輪速検出装置54によって検出された車輪速V2を用いて、算出必要出力Tcal_rr = T2を導き出す。
このTcal_rrを導き出す処理は、原動機制御装置23の処理として図8に示すフローチャートと同様の処理を行うことになるため説明は省略する。
【0058】
ここで、後左右輪で、あらかじめ保持しておく車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係及び車輪速Vと算出必要出力Tcal_rrとの関係を同じものとしておけば、車両直進時には、後左右輪が同じ算出必要出力Tcal_rとなり、車両挙動が乱れることなく、通常の走行とほぼ同じ走行ができることになる。
【0059】
また、カーブの走行等においても、カーブ外側の回転数の早い車輪に対して駆動トルクを多く与えることで、左右輪の必要出力を同じにする場合などに比べて、カーブの走行をしやすくすることが出来る。
【0060】
さらにまた、上り坂や積載重量が大きい場合などで、必要出力があらかじめ保持している車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係よりも車輪速に対する必要出力が大きい場合においては、後左右輪の車輪回転用原動機33、34の出力は不足するが、後左右輪からの出力が0とはならないため、ある程度の前左右輪の車輪回転用原動機31、32への負荷低減の効果が得られる。
【0061】
一方、フェールセーフ機能の実現を前輪、後輪のいずれかの左右車輪に限定すれば、従来の処理からの変更箇所が極力少なくなり、十分な効果が得られる。
また、前後どちらか一方を内燃機関で駆動し、他方の左右車輪をモータ駆動するハイブリッド自動車などにおけるフェールセーフ機能としても有効である。
【0062】
さらにまた、算出必要出力Tcal_rlを導き出す車輪速V1に、図8のフローチャートのステップS131と132との間で、あらかじめローパスフィルタなどをかけてV1_LFとし、このV1_LFをステップS132における車輪速V1の代わりに使用するようにすれば、急激な車輪速の変化を抑えることが出来、導き出す算出必要出力Tcal_rlの急激な変化を抑えることができる。これは、導き出し後の算出必要出力Tcal_rlにローパスフィルタをかけても同様である。
【0063】
一方、算出必要出力Tcal_rlを導き出す図8のステップS132において、車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係を図11に示すように所定の車輪速V4以上の算出必要出力Tcal_rlを上限値T3limに制限すれば、フェールセーフ機能実現時の安全性をより高めることができる。
【0064】
また、通信不具合13が解消され、車両制御装置1と原動機制御装置23との間の通信が回復したときは、次の方法等で、通信不具合13の発生前の処理に復帰する。
【0065】
先ず、車両制御装置1は、通信状態検出手段11において、原動機制御装置23と通信が出来ていることから、通信不具合13が解消したことを検出する。
【0066】
次に、使用出力切り替え通知手段12を用いて、原動機制御装置24に対して、使用出力を算出必要出力から、要求必要出力に切り替えることを通知する。通知を受けた原動機制御装置24は、使用出力切り替え手段10において使用出力を算出必要出力Tcal_rrから要求必要出力に切り替え、車輪回転用原動機34の制御を行なう。
【0067】
原動機制御装置23は、未受信検出手段9において、通信不具合13の解消を検出し、使用出力切り替え手段10において使用出力を算出必要出力Tcal_rlから、要求必要出力に切り替え、車輪回転用原動機33の制御を行なう。
【0068】
実施の形態1は上記のように構成されているため、新たにバックアップ用の通信経路を追加することなく、原動機制御装置との間に通信不具合状態が発生したときには、車輪回転用原動機自体が検出する車輪速を用いて走行可能なフェールセーフ機能を実現することができる。
【0069】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について説明する。
【0070】
実施の形態2の全体構成は、実施の形態1の図1と同様に各車輪に個別の車輪回転用原動機としてモータを持つ4輪独立駆動車両としたものであるため、図1を援用して説明を省略する。
【0071】
次に、実施の形態2において、通信不具合が発生した場合のフェールセーフ機能を踏まえた処理について図2を用いて説明する。
【0072】
図2中、X印13は、車両制御装置1と原動機制御装置23との間で通信不具合が発生した状態を示している。これにより、原動機制御装置23は車両制御装置1からの要求必要出力を受け取ることが出来なくなっている。
【0073】
フェールセーフ機能としては、実施の形態1と同様に通信不具合13が発生した時には、原動機制御装置23は、必要出力を算出必要出力Tcal_rlに切り替えて左後車輪を回転させるべく車輪回転用原動機33の制御を行う。同様に、原動機制御装置24は、算出必要出力Tcal_rrに切り替えて、右後車輪を回転させるべく車輪回転用原動機34の制御を行う。
【0074】
このとき、それぞれの算出必要出力Tcal_rf、Tcal_rrを導き出すため、図8に代わって図12に示すフローチャートにもとづいた処理を行う。ここでは、左右後車輪がそれぞれ同様の処理になるため、左後車輪の原動機制御装置23による処理説明のみを行い、右後車輪の原動機制御装置24による処理説明は省略する。
【0075】
先ず、図12のフローチャートのステップS201において、車輪速検出装置53により車輪速V5が原動機制御装置23に通知される。次に、ステップS202において、車輪速V5の時間当たりの変化量から、減速中かどうかの判定を行う。判定方法の一例として、車輪速V5の時間当たりの変化量が減少方向に一定値を超えているかどうかで判断する。
【0076】
ステップS202において、車輪速V5の時間当たりの変化量が一定値を超えていない時は、ステップS203において、出力自己算出手段8によりあらかじめ保持されている図13に示すような通常時の車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係Aから算出必要出力Tcal_rl = T5norを導き出し、算出必要出力Tcal_rlが得られるように車輪回転用原動機33の制御を行う。
【0077】
一方、ステップS202において、車輪速V5の時間当たりの変化量が減少方向に一定値を超えている時は、ステップS204で減速中と判断し、出力自己算出手段8によりあらかじめ保持されている図13に示すような減速判定時の車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係Bから算出必要出力Tcal_rl = T5brkを導き出し、算出必要出力Tcal_rlが得られるように車輪回転用原動機33の制御を行う。
【0078】
減速判定時の車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係Bは、通常に比べて、算出必要出力Tcal_rlが小さくなるように設定しておく。
【0079】
また、図14に示すように車輪速V5の時間当たりの変化量が減少方向に一定値を超えているかどうかの判断を、複数の減少方向への時間当たりの変化量閾値A1・・・Anの時の関係と比較して行い、閾値ごとに算出必要出力を設定してもよい。
【0080】
次に、図12のステップS205において、車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係図を通常時から減速時に変更することによる算出必要出力Tcal_rlの急激な変化を抑えるために、ローパスフィルタ等にかけ、時間当たりの変化量に制限をかけた算出必要出力Tcal_rl_LFを導き出すようにしてもよい。
【0081】
このように、実施の形態1に示すフェールセーフ機能が働いている時においても、減速時の駆動トルクを制限することで、車輪独立駆動車両の減速運動を妨げないようにすることが可能となる。
【0082】
実施の形態2は上記のように構成されているため、新たにバックアップ用の通信経路を追加することなく、原動機制御装置との間に通信不具合状態が発生したときには、車輪回転用原動機自体が検出する車輪速と、車輪速の時間当たりの変化量を用いた車両減速状態にあわせて必要出力を変更することが可能なフェールセーフ機能を実現することができる。
【0083】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3について説明する。
【0084】
図15は、実施の形態3の全体構成を示す図である。実施の形態1の図1と同様に各車輪に個別の車輪回転用原動機としてモータを持つ4輪独立駆動車両としたものである。
図1と同一または相当部分には同一符号を付して説明を省略するが、車両制御装置1に切り替え実施通知手段301を設けた点が図1とは異なる。
【0085】
切り替え実施通知手段301は、車輪独立駆動車両内の1つ以上の原動機制御装置において、必要出力を算出必要出力に切り替えた制御が行われていることを各原動機制御装置に通知するものである。
【0086】
X印302は、車両制御装置1と原動機制御装置23との間で通信不具合が発生した状態を示している。これにより、原動機制御装置23は車両制御装置1からの要求必要出力を受け取ることが出来なくなっている。
【0087】
通信不具合302が発生した時のフェールセーフ機能としては、実施の形態1と同様に、原動機制御装置23は、未受信検出手段9により通信不具合302を検出し、必要出力を算出必要出力Tcal_rlに切り替えて車輪回転用原動機33の制御を行う。同様に、原動機制御装置24は、車両制御装置1の使用出力切り替え手段12の指示により、必要出力を算出必要出力Tcal_rrに切り替えて車輪回転用原動機34の制御を行う。原動機制御装置21と22は、通常時と同様に車両制御装置1からの要求出力が得られるように、それぞれ車輪回転用原動機31、32の制御を行う。
【0088】
このとき、車両制御装置1の切り替え実施通知手段301は、原動機制御装置21、22に対して、切り替え実施通知301Aを発し、原動機制御装置23において必要出力を要求必要出力から算出必要出力に切り替えていることを通知する。
【0089】
次に、図16に示すように、すでに通信不具合302が発生している原動機制御装置23と左右対称ではない位置の原動機制御装置21との間でX印303で示す新たな通信不具合個所が発生したとすると、原動機制御装置21も車両制御装置1からの要求必要出力を受け取ることが出来なくなる。
【0090】
このとき、原動機制御装置21は、図17に示すフローチャートにもとづいた処理を行うことになる。
【0091】
即ち、ステップS311において、原動機制御装置21の未受信検出手段9により通信不具合303を検出しているかどうかを確認する。即ち車両制御装置1からの要求必要出力が受信できていないかどうかを確認する。通信不具合を検出している場合はステップS313に移行し、車両制御装置1の切り替え実施通知手段301から左右対称車輪以外の原動機制御装置23において、算出必要出力での制御に切り替わっていることの通知がされているかどうかを確認する。通知がされている場合はステップS315において、必要出力を段階的に0にするなどの制限された値に切り替える。そして、ステップS316において必要出力が得られるように車輪回転用原動機31の制御を実施する。
【0092】
なお、ステップS313で通知がされていない場合は、ステップS314で原動機制御装置21の使用出力切り替え手段10により車輪回転用原動機31の制御に用いる必用出力を出力自己算出手段8による算出必要出力Tcal_flに切り替えてステップS316に進む。
【0093】
原動機制御装置22においても原動機制御装置21と同様の処理を実施し、車両制御装置1の使用出力切り替え通知手段12からの指示があったときに、必要出力を段階的に0にするなどの制限された値に切り替えて車輪回転用原動機32の制御を実施する。
【0094】
このよう前左右輪の必要出力を段階的に0にすることで、車輪独立駆動車両が減速し、それにあわせて、後左右輪の必要出力も減少することとなる。この結果、車輪独立駆動車両を安全に停止することができる。
【0095】
一方、通信不具合302が発生した原動機制御装置23に対して左右対称に配置されている原動機制御装置24と車両制御装置1との間に新たに通信不具合が発生した場合は、前車輪の原動機制御装置21と22は通常の制御を継続させ、原動機制御装置24においては算出必要出力Tcal_rrに切り替えたままの制御を継続する。
【0096】
このようにすることで、通信不具合が複数場所で発生した場合においても、通信不具合が発生した場所に応じて実施の形態1に示すフェールセーフ機能が得られると共に、車輪独立駆動車両を安全に停止させることができる新たなフェールセーフ機能が得られる。
【0097】
また、上述した各実施の形態のように、各車輪の原動機としてモータを採用する場合には、車輪速検出装置での車輪速の検出に、モータ固有の回転子位置の時間変化量を用いてもよい。車輪回転用原動機31、32、33、34が、いわゆるブラシレスモータの場合には、回転子位置検出装置は必ず搭載されているため、新たなセンサー等の測定装置を必要とせず、コストを抑えることができる。
【0098】
さらにまた、上述した各実施の形態では、4輪車の場合について説明したが、6輪、8輪といった4輪以上の車両についても、車輪が左右対象に設置されている車両においては、同様の効果を期待することができる。
【0099】
また、上述した各実施の形態では、各車輪の原動機をモータとして説明したが、原動機を内燃機関としてもよいことは云うまでもない。
【0100】
実施の形態3は上記のように構成されているため、新たにバックアップ用の通信経路を追加することなく、通信不具合状態が発生したことを正常な原動機制御装置に通知しておくことで、新たに通信不具合状態が発生したときには、通信不具合が発生した場所に応じて走行を続けることが出来たり、安全に停止させたりすることができるフェールセーフ機能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】この発明の実施の形態1による車輪独立駆動車両の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における通信不具合発生時の状態を示す全体構成図である。
【図3】実施の形態1における通信不具合発生時の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】車両制御装置からの要求必要出力の受信の有無にもとづく原動機制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】車両制御装置からの要求必要出力の受信の有無にもとづく原動機制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】車両制御装置からの要求必要出力の受信の有無にもとづく原動機制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】車両制御装置からの要求必要出力の受信の有無にもとづく原動機制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態1において原動機制御装置における算出必要出力Tcalを求める処理手順を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態1において原動機制御装置が持つ車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係を示す図である。
【図10】実施の形態1において原動機制御装置が持つ車輪速Vと算出必要出力Tcal_rrとの関係を示す図である。
【図11】実施の形態1において原動機制御装置が持つ制限を加味した車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態2における原動機制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態2において原動機制御装置が持つ切り替えを加味した車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係を示す図である。
【図14】実施の形態2において原動機制御装置が持つ複数の切り替えを加味した車輪速Vと算出必要出力Tcal_rlとの関係を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態3による車輪独立駆動車両の全体構成を示すブロック図である。
【図16】実施の形態3において複数の通信不具合発生時の状況説明図である。
【図17】実施の形態3において原動機制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 車両制御装置、 6 通信経路、 8 出力自己算出手段、
9 未受信検出手段、 10 使用出力切り替え手段、 11 通信状態検出手段、 12 使用出力切り替え通知手段、 21、22、23、24 原動機制御装置、 31、32、33、34 車輪回転用原動機、 41、42、43、44 車輪、 51、52、53、54 車輪速検出装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右に配設される各2つ以上の車輪にそれぞれ設けられ、個別に駆動トルクを発生することが可能な車輪回転用原動機と、
前記車両への要求駆動力から、前記車輪回転用原動機に求められる要求必要出力を算出する車両制御装置と、
前記要求必要出力が得られるように前記各車輪回転用原動機を制御する原動機制御装置と、
前記車両制御装置と前記各原動機制御装置とを接続し、前記各原動機制御装置へ前記要求必要出力を通知する通信経路と、
前記車輪回転用原動機が駆動する車輪の車輪速を検出し、前記車輪回転用原動機を制御する前記原動機制御装置に通知する車輪速検出装置とを有する車輪独立駆動車両において、
前記原動機制御装置に、前記車輪速検出装置により検出された車輪速から必要とされる算出必要出力を算出する出力自己算出手段と、
前記車両制御装置から要求必要出力が通知されないことを検出する未受信検出手段と、
前記未受信検出手段が前記要求必要出力が通知されないことを検出した時、前記車輪回転用原動機の制御に用いる必要出力を、算出必要出力に切り替える使用出力切り替え手段とを設けると共に、
前記車両制御装置に、前記各原動機制御装置へ要求必要出力が通知されているかを個別に把握できる通信状態検出手段と、
前記原動機制御装置が使用する必要出力を、要求必要出力か算出必要出力かに切り替えることを通知する使用出力切り替え通知手段とを設け、
前記車両制御装置と所定の原動機制御装置との間の通信経路に通信不具合が発生した時に、
前記車両制御装置は、要求必要出力が通知されていないことを前記通信状態検出手段によって検出し、
前記所定の原動機制御装置が制御している車輪回転用原動機と左右対称に配置されている車輪回転用原動機を制御している原動機制御装置に、
前記使用出力切り替え通知手段によって要求必要出力の算出必要出力への切り替えを通知すると共に、
前記所定の原動機制御装置は、
前記未受信検出手段によって要求必要出力が通知されていないことを検出した後に、
前記使用出力切り替え手段によって前記算出必要出力に切り替えて車輪回転用原動機を制御することを特徴とする車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項2】
前記出力自己算出手段は、
車輪速と算出必要出力との関係をあらかじめ保持しておき、車輪速検出装置によって検出された車輪速と前記関係とから算出必要出力を導出することを特徴とする請求項1に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項3】
前記出力自己算出手段が使用する車輪速の時間当たりの変化量が、
減少方向に一定値を超えた場合と超えない場合とで算出必要出力を異ならせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項4】
前記車両制御装置に切り替え実施通知手段を設け、
いずれかの原動機制御装置との間の通信経路に通信不具合が発生した時に、
不具合が発生した原動機制御装置と左右対称に配置されている原動機制御装置に使用出力切り替え通知手段によって使用出力の切り替えを通知すると共に、
前記左右対称に配置されている原動機制御装置以外の原動機制御装置には、切り替え実施通知手段によって使用出力の切り替えが実施されていることを通知し、
切り替えが実施されていることを通知された原動機制御装置は、前記車両制御装置との間の通信経路に新たな通信不具合が発生すれば、必要出力に制限をかけることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項5】
前記使用出力切り替え手段による必要出力の切り替えを、いずれか1つ以上の左右車輪に限定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項6】
前記使用出力切り替え手段によって切り替える算出必要出力の時間当たりの変化量に制限をかけることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項7】
前記出力自己算出手段が使用する車輪速が一定値を超えた場合には、算出必要出力に制限をかけることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項8】
前記通信不具合状態が解消されたことを検出した前記車両制御装置は、前記使用出力切り替え通知手段によって前記原動機制御装置に、使用出力を車両制御装置からの要求必要出力に戻すことを通知すると共に、
前記通信不具合状態が解消されたことを検出した前記原動機制御装置は、前記使用出力切り替え手段によって使用出力を前記車両制御装置からの要求必要出力に戻すことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項1】
車両の左右に配設される各2つ以上の車輪にそれぞれ設けられ、個別に駆動トルクを発生することが可能な車輪回転用原動機と、
前記車両への要求駆動力から、前記車輪回転用原動機に求められる要求必要出力を算出する車両制御装置と、
前記要求必要出力が得られるように前記各車輪回転用原動機を制御する原動機制御装置と、
前記車両制御装置と前記各原動機制御装置とを接続し、前記各原動機制御装置へ前記要求必要出力を通知する通信経路と、
前記車輪回転用原動機が駆動する車輪の車輪速を検出し、前記車輪回転用原動機を制御する前記原動機制御装置に通知する車輪速検出装置とを有する車輪独立駆動車両において、
前記原動機制御装置に、前記車輪速検出装置により検出された車輪速から必要とされる算出必要出力を算出する出力自己算出手段と、
前記車両制御装置から要求必要出力が通知されないことを検出する未受信検出手段と、
前記未受信検出手段が前記要求必要出力が通知されないことを検出した時、前記車輪回転用原動機の制御に用いる必要出力を、算出必要出力に切り替える使用出力切り替え手段とを設けると共に、
前記車両制御装置に、前記各原動機制御装置へ要求必要出力が通知されているかを個別に把握できる通信状態検出手段と、
前記原動機制御装置が使用する必要出力を、要求必要出力か算出必要出力かに切り替えることを通知する使用出力切り替え通知手段とを設け、
前記車両制御装置と所定の原動機制御装置との間の通信経路に通信不具合が発生した時に、
前記車両制御装置は、要求必要出力が通知されていないことを前記通信状態検出手段によって検出し、
前記所定の原動機制御装置が制御している車輪回転用原動機と左右対称に配置されている車輪回転用原動機を制御している原動機制御装置に、
前記使用出力切り替え通知手段によって要求必要出力の算出必要出力への切り替えを通知すると共に、
前記所定の原動機制御装置は、
前記未受信検出手段によって要求必要出力が通知されていないことを検出した後に、
前記使用出力切り替え手段によって前記算出必要出力に切り替えて車輪回転用原動機を制御することを特徴とする車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項2】
前記出力自己算出手段は、
車輪速と算出必要出力との関係をあらかじめ保持しておき、車輪速検出装置によって検出された車輪速と前記関係とから算出必要出力を導出することを特徴とする請求項1に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項3】
前記出力自己算出手段が使用する車輪速の時間当たりの変化量が、
減少方向に一定値を超えた場合と超えない場合とで算出必要出力を異ならせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項4】
前記車両制御装置に切り替え実施通知手段を設け、
いずれかの原動機制御装置との間の通信経路に通信不具合が発生した時に、
不具合が発生した原動機制御装置と左右対称に配置されている原動機制御装置に使用出力切り替え通知手段によって使用出力の切り替えを通知すると共に、
前記左右対称に配置されている原動機制御装置以外の原動機制御装置には、切り替え実施通知手段によって使用出力の切り替えが実施されていることを通知し、
切り替えが実施されていることを通知された原動機制御装置は、前記車両制御装置との間の通信経路に新たな通信不具合が発生すれば、必要出力に制限をかけることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項5】
前記使用出力切り替え手段による必要出力の切り替えを、いずれか1つ以上の左右車輪に限定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項6】
前記使用出力切り替え手段によって切り替える算出必要出力の時間当たりの変化量に制限をかけることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項7】
前記出力自己算出手段が使用する車輪速が一定値を超えた場合には、算出必要出力に制限をかけることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【請求項8】
前記通信不具合状態が解消されたことを検出した前記車両制御装置は、前記使用出力切り替え通知手段によって前記原動機制御装置に、使用出力を車両制御装置からの要求必要出力に戻すことを通知すると共に、
前記通信不具合状態が解消されたことを検出した前記原動機制御装置は、前記使用出力切り替え手段によって使用出力を前記車両制御装置からの要求必要出力に戻すことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の車輪独立駆動車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−245360(P2008−245360A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78937(P2007−78937)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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