説明

車速制限装置

【課題】制限速度を運転者の希望する値に容易に設定可能にする。
【解決手段】乗員により設定された制限速度を記憶する制限速度記憶部22と、自車両の走行速度が前記制限速度以下となるように制御する車速制御部23と、道路デ−タを記憶する道路データ記憶部12と、GPS受信器11で検出した自車両の位置および道路データ記憶部12に記憶された道路デ−タに基づいて自車両の道路位置を認識する道路位置認識部21と、を備え、制限速度記憶部22は、乗員により設定された制限速度と該制限速度が設定された自車両の道路位置とを対応させて記憶し、車速制御部23は、自車両が走行する道路位置に対応して制限速度が記憶されている場合には、自車両の現在位置に基づいて制限速度記憶部22に記憶された制限速度を選択し、この制限速度以下となるように自車両の走行速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の走行速度を制限する車速制限装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、車両の走行速度を制限速度以下に制御する車速制限装置が搭載されたものがあり、制限速度の取得または設定の方法が種々考案されている。
例えば、特許文献1には、予め交通規則情報を記憶させた記憶手段(CD−ROM)を車両に搭載し、自車両の現在位置に対応する制限速度を前記記憶手段から読み出し、読み出した制限速度以下に自車両の車速制御を行うことが記載されている。
特許文献2には、自車両と交通情報提供施設との通信(路車間通信)により制限速度情報を取得し、取得した制限速度以下に自車両の車速制御を行うことが記載されている。
特許文献3には、運転者が自身の操作により任意に制限速度を設定し、設定された制限速度以下に自車両の車速制御を行うことが記載されている。
【特許文献1】特開平5−11700号公報
【特許文献2】特開平7−85400号公報
【特許文献3】特開平11−294215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1,2の場合には、交通規則情報や交通情報に基づいて設定される制限速度は一定値であるため、必ずしも運転者の希望する制限速度と一致するとは限らず、使い勝手が悪かった。例えば、同じ道路を走行する場合であっても天候や時間帯によっては、運転者は交通規則等により設定される制限速度よりも低い速度で走行したいと思う場合もある。また、同一の制限速度区間であっても、道路の曲がり具合など道路形状や、往路か復路かによって運転者の希望する制限速度が違う場合もある。
【0004】
また、特許文献3の場合には、運転者の希望する制限速度に設定することはできるが、制限速度の変更を希望するときにはそのたびに運転者が変更操作を行わなければならず、面倒であった。
【0005】
そこで、この発明は、容易に運転者の希望する制限速度に変更可能で使い勝手のよい車速制限装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車速制限装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、自車両の速度を検出する車速検出手段(例えば、後述する実施の形態における車速センサ13)と、乗員により設定された制限速度を記憶する制限速度記憶手段(例えば、後述する実施の形態における制限速度記憶部22)と、自車両の走行速度が前記制限速度以下となるように制御する車速制限手段(例えば、後述する実施の形態における車速制御部23)と、備えた車速制限装置(例えば、後述する実施の形態における車速制限装置1)において、自車両の位置を検出する自車位置検出手段(例えば、後述する実施の形態におけるGPS受信器11)と、道路デ−タを記憶する道路データ記憶手段(例えば、後述する実施の形態における道路データ記憶装置12)と、自車位置検出手段で検出した自車両の位置および道路データ記憶手段に記憶された道路デ−タに基づいて道路上の自車両の位置を認識する道路位置認識手段(例えば、後述する実施の形態における道路位置認識部21)と、をさらに備え、前記制限速度記憶手段は、乗員により設定された制限速度と該制限速度が設定された道路上の自車両の位置とを対応させて記憶し、前記車速制限手段は、自車両が走行する道路位置に対応して制限速度が記憶されている場合には、自車両の現在位置に基づいて前記制限速度記憶手段に記憶された制限速度を選択し、選択された制限速度以下となるように自車両の走行速度を制御することを特徴とする。
このように構成することにより、運転者により設定された制限速度を、道路上の自車両の位置(以下、道路位置と略す)とともに記憶しているので、再度同じ地点を走行するときに、以前設定した制限速度を読み出して、その制限速度以下となるように自車両の速度を制御することができる。また、運転者により設定される制限速度は、交通規則情報などにより決められた一律の制限速度ではなく、運転者の意志を反映して設定することができる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、道路上の自車両の進行方向を検出する進行方向検出手段(例えば、後述する実施の形態における道路位置認識部21)を備え、前記制限速度記憶手段は、乗員により設定された制限速度と該制限速度が設定された道路上の自車両の位置と自車両の進行方向とを対応させて記憶し、前記車速制限手段は、自車両の現在位置と進行方向に基づいて前記制限速度記憶手段に記憶された制限速度を選択し、選択された制限速度以下となるように自車両の走行速度を制御することを特徴とする。
同じ道路区間であっても車両の進行方向によって道路の混み具合が異なる場合があるが、そのような場合に、制限速度と道路位置と車両の進行方向とを対応させて記憶することにより、状況に応じたきめ細かい制限速度の管理を行うことができる。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、自車両の周囲の照度を検出する照度検出手段(例えば、後述する実施の形態における照度センサ14)を備え、前記制限速度記憶手段は、乗員により設定された制限速度と該制限速度が設定された道路上の自車両の位置と該制限速度が設定されたときに前記照度検出手段で検出された照度とを対応させて記憶し、前記車速制限手段は、自車両の現在位置と現在の照度に基づいて前記制限速度記憶手段に記憶された制限速度を選択し、選択された制限速度以下となるように自車両の走行速度を制御することを特徴とする。
同じ道路区間であっても外の明るさによって制限速度を変えたい場合もあるが、そのような場合に、制限速度と道路位置と照度とを対応させて記憶することにより、状況に応じたきめ細かい制限速度の管理を行うことができる。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記制限速度記憶手段は、乗員により設定された制限速度と該制限速度が設定された道路上の自車両の位置と該制限速度が設定されたときの時刻またはワイパー作動状態とを対応させて記憶し、前記車速制限手段は、自車両の現在位置と現在時刻または現在のワイパー作動状態に基づいて前記制限速度記憶手段に記憶された制限速度を選択し、選択された制限速度以下となるように自車両の走行速度を制御することを特徴とする。
このように構成することにより、時間帯に応じて制限速度を設定することができ、状況に応じたきめ細かい制限速度の管理を行うことができる。また、ワイパー作動状態を対応させて記憶しておくと、雨が降っている時と降っていない時を区別して制限速度を設定することができ、状況に応じたきめ細かい制限速度の管理を行うことができる。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、乗員の操作により前記制限速度記憶手段に記憶された制限速度を一時的に変更する制限速度変更手段を備え、前記車速制限手段は、前記制限速度変更手段により制限速度が一時的に変更された場合には、変更された制限速度以下となるように自車両の走行速度を制御することを特徴とする。
このように構成することにより、運転者が過去に設定し、記憶されている制限速度を一時的に高くしたり低くしたり調整することができる。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の発明において、前記制限速度変更手段は、予め変更量が設定されており、記憶されている制限速度の大きさに応じて前記変更量が異なることを特徴とする。
このように構成することにより、制限速度の一時的な変更量を安全性を考慮して設定することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、過去に走行した地点を再び走行するときに、以前設定した制限速度以下となるように自車両の速度を制御することができ、制限速度を設定する手間を省くことができる。また、運転者により設定される制限速度は、運転者の意志を反映して設定することができるので、極めて使い勝手がよい。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、制限速度と道路位置と車両の進行方向とを対応させて記憶することにより、状況に応じたきめ細かい制限速度の管理を行うことができる。
請求項3に係る発明によれば、制限速度と道路位置と照度とを対応させて記憶することにより、状況に応じたきめ細かい制限速度の管理を行うことができる。
請求項4に係る発明によれば、制限速度と道路位置と時間帯またはワイパー作動状態とを対応させて記憶することにより、状況に応じたきめ細かい制限速度の管理を行うことができる。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、記憶されている制限速度を一時的に高くしたり低くしたり調整することができ、使い勝手が向上する。
請求項6に係る発明によれば、制限速度の一時的な変更量を安全性を考慮して設定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明に係る車速制限装置の実施例を図1から図5の図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施例における車速制限装置1は、GPS受信器(自車位置検出手段)11と、道路データ記憶装置(道路データ記憶手段)12と、車速センサ(車速検出手段)13と、照度センサ(照度検出手段)14と、制限速度制御スイッチ15と、ディスプレイ16と、制御装置20と、を備えて構成されている。
【0016】
GPS受信器11は、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号や、例えば適宜の基地局を利用してGPS信号の誤差を補正して測位精度を向上させるためのD(Differential)GPS信号等の測位信号を受信し、自車両の現在位置情報として制御装置20へ出力する。
【0017】
道路データ記憶装置12は、道路に係るノード情報およびカーブ情報を道路データとして記憶しており、ノード情報は、例えば道路形状を把握するための座標点のデータであり、カーブ情報は、例えばリンク(つまり、各ノード間を結ぶ線)上に設定されたカーブの開始点および終了点に加えて、カーブの曲率や長さ等の情報から構成されている。
【0018】
車速センサ13は自車両の走行速度(車速)を検出し、検出した車速に応じた出力信号を制御装置20へ出力する。
照度センサ14は自車両の周囲の照度を検出し、検出した照度に応じた出力信号を制御装置20へ出力する。
【0019】
制限速度制御スイッチ15は、制限速度設定スイッチ15aと、オートスイッチ15bと、制限速度オフセットスイッチ(制限速度変更手段)15cを備えて構成されている。
制限速度設定スイッチ15aは、運転者が車速制限走行を開始するときに制限速度を設定するときや、以前に設定した制限速度を変更するときに操作するスイッチであり、運転者はこの制限速度設定スイッチ15aを操作することにより制限速度を任意の速度に設定することができる。
オートスイッチ15bは、後述する制限速度記憶部22に記憶されている制限速度に従って車速制限走行を行うことを希望するときに、運転者によってONにされるスイッチである。
【0020】
制限速度オフセットスイッチ15cは、オートスイッチ15bをONにした場合において、制限速度記憶部22に記憶されている制限速度を基準にしてそれよりも高い速度または低い速度に制限速度を一時的にずらして(オフセットして)車速制限走行を行うことを希望するときに、運転者によって操作される制限速度オフセット手段であり、高い速度を希望する場合には制限速度オフセットスイッチ15cを「Auto+」(オートプラス)に切り替え、低い速度を希望する場合には「Auto−」(オートマイナス)に切り替える。
【0021】
制限速度オフセットスイッチ15cによる制限速度のオフセット量(変更量)は、例えば図2に示す制限速度オフセット量設定テーブルのように制限速度の大きさに関わらず一定(例えば10km/h)としてもよいし、例えば図3に示す制限速度オフセット量設定テーブルのように制限速度の大きさに応じてオフセット量を変えてもよい。
【0022】
なお、図3に示す制限速度オフセット量設定テーブルでは、「Auto+」に切り替えたときには制限速度が大きくなるにしたがってオフセット量を小さくしていき、「Auto−」に切り替えたときには制限速度が大きくなるにしたがってオフセット量を大きくしている。このようにすると、高速側ほど制限速度が増加しにくくなり、高速側ほど制限速度が減少し易くなるので、安全性の高い車速制限を行うことができる。
【0023】
制御装置20は、道路位置認識部(道路位置認識手段、進行方向検出手段)21、制限速度記憶部(制限速度記憶手段)22、車速制御部(車速制限手段)23と、を備えて構成されている。
道路位置認識部21は、GPS受信器11から入力した自車両の現在位置情報に基づき、道路データ記憶装置12に格納された道路データに対してマップマッチングを行い、道路上の自車両の位置(以下、自車両の道路位置という)を認識し、認識した自車両の道路位置情報を制限速度記憶部22へ出力する。また、道路位置認識部21は、認識した自車両の道路位置の時間的変化に基づいて自車両の進行方向を検出し、制限速度記憶部22へ出力する。
【0024】
制限速度記憶部22は、運転者が制限速度設定スイッチ15aを操作して制限速度を設定したり、設定されていた制限速度を変更したときには、該制限速度と、設定または変更したときの自車両の道路位置および進行方向と、そのときの照度とを対応させて記憶するとともに、設定または変更された制限速度を車速制御部23およびディスプレイ16へ出力する。
【0025】
また、制限速度記憶部22は、オートスイッチ15bがONにされているときには、記憶されている情報を検索して、道路位置認識部21により認識された自車両の道路位置、進行方向、および照度センサにより検出された照度とに対応する制限速度が存在する場合にはその制限速度を選択し、選択した制限速度を車速制御部23およびディスプレイ16へ出力する。
【0026】
さらに、制限速度記憶部22は、制限速度オフセットスイッチ15cが操作されたときには、前記選択された制限速度に対して所定のオフセット量だけ増減させた速度(以下、オフセット後の制限速度という)を制限速度として車速制御部23およびディスプレイ16へ出力する。
【0027】
車速制御部23は、車速センサ13により検出される自車両の車速が、制限速度記憶部22から入力した制限速度を超えないように、換言すると自車両の車速が制限速度以下となるように、例えばエンジンへの燃料噴射量の制限制御を行い、燃料噴射装置30を制御する。以下、車速制御部23により実行される処理を車速制限処理という。
ディスプレイ16は、車速制限処理を行っているときに、制限速度記憶部22から入力した制限速度を表示する。
【0028】
次に、制御装置20において実行される車速制限制御について図4に示すフローチャートに従って説明する。図4のフローチャートに示す車速制限制御ルーチンは、制御装置20によって一定時間毎に繰り返し実行される。
【0029】
まず、ステップS101においてオートスイッチ15bがONにされているか否かを判定する。
ステップS101における判定結果が「NO」(オートスイッチ:OFF)である場合には、ステップS102に進み、制限速度設定スイッチ15aにより制限速度の設定あるいは変更の入力があったか否かを判定する。
ステップS102における判定結果が「NO」(設定も変更もない)である場合には、車速制限を行う必要がないので、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0030】
ステップS102における判定結果が「YES」(設定または変更があった)である場合には、ステップS103に進み、設定または変更した制限速度と、制限速度を設定または変更した時点における自車両の道路位置および進行方向と、制限速度を設定または変更した時点における照度とを対応させて制限速度データとして記憶する。
次に、ステップS104に進み、車速制限処理を実行して、自車両の車速が、設定または変更された制限速度以下となるように制御する。
【0031】
一方、ステップS101における判定結果が「YES」(オートスイッチ:ON)である場合には、ステップS105に進み、制限速度が記憶されている道路位置に自車両が達したか否かを判定する。
ステップS105における判定結果が「YES」である場合、すなわち制限速度が記憶されている道路位置に自車両が達した場合には、ステップS106に進み、この道路位置に関して進行方向および照度の違いによる複数の制限速度データが記憶されているか否かを判定する。
【0032】
ステップS106における判定結果が「NO」である場合、すなわち自車両が到達した道路位置における制限速度データが1つしかない場合には、ステップS107に進み、該道路位置に対して唯一記憶されている制限速度データを読み出し、ステップS109へ進む。
【0033】
また、ステップS106における判定結果が「YES」である場合、すなわち自車両が到達した道路位置における制限速度データが複数ある場合には、ステップS108に進み、その複数の制限速度データを検索して、現在の自車両の進行方向、照度に対応する制限速度データを選択し、該制限速度データを読み出して、ステップS109へ進む。
【0034】
ステップS109においては、制限速度オフセットスイッチ15cの操作による制限速度オフセットの指示があるか否かを判定する。
ステップS109における判定結果が「NO」(オフセットの指示なし)である場合には、ステップS110に進み、記憶されている制限速度に基づいて車速制限処理を実行し、自車両の車速が、記憶されている制限速度以下となるように制御する。
【0035】
また、ステップS109における判定結果が「YES」(オフセットの指示あり)である場合には、ステップS111に進み、記憶されている制限速度からオフセット量を増減した速度、すなわちオフセット後の制限速度に基づいて車速制限処理を実行し、自車両の車速がオフセット後の制限速度以下となるように制御する。
【0036】
ステップS110またはステップS111の処理を実行した後、ステップS112に進み、制限速度設定スイッチ15aにより制限速度の変更の入力があったか否かを判定する。
ステップS112における判定結果が「NO」(変更入力なし)である場合には、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0037】
ステップS112における判定結果が「YES」(変更入力あり)である場合には、ステップS113に進み、変更した制限速度と、制限速度を変更した時点における自車両の道路位置および進行方向と、制限速度を変更した時点における照度とを対応させて制限速度データとして記憶する。
次に、ステップS114に進み、車速制限処理を実行して、自車両の車速が、変更された制限速度以下となるように制御する。
【0038】
一方、ステップS105における判定結果が「NO」である場合、すなわち制限速度が記憶されている道路位置に自車両が達していない場合には、ステップS112に進む。この後のステップS112〜S114の処理は前述と同様であるので説明を省略する。
【0039】
図5を参照して、車速制限装置1の具体的な使用例を説明する。自車両が頻繁に走行する道路Rが例えば法定制限速度40km/hであるとする。この道路Rの途中には学校Sがあり、道路Rはこの学校Sの通学路にもなっている。しかも学校Sの近くは蛇行していて、見通しの悪い交差点Xがあるとする。この場合、運転者は学校Sの近くの所定区間についてより安全に走行したいと考え、この所定区間の制限速度を法定制限速度よりも低い速度(例えば30km/h)に設定し、該所定区間以外の制限速度を法定制限速度(40km/h)に設定したとする。このように設定した後、運転者がこの道路Rを走行する際にオートスイッチ15bをONにしておくと、前記所定区間については制限速度を30km/hとして車速制限走行を再現することができ、前記所定区間外では制限速度を40km/hとして車速制限走行を再現することができる。
【0040】
以上説明するように、この車速制限装置1によれば、運転者により設定された制限速度情報を道路位置情報とともに記憶しているので、再度同じ地点を走行するときに、以前設定した制限速度を容易に読み出して、その制限速度による車速制限走行を再現することができ、制限速度を設定する手間を省くことができる。ここで、運転者により設定される制限速度は、交通規則情報などにより決められた一律の制限速度ではなく、運転者の意志を反映して設定されたものであるので、極めて使い勝手がよい。
【0041】
また、同じ道路区間であっても車両の進行方向によって道路の混み具合が異なる場合があるが、そのような場合には、制限速度と道路位置と車両の進行方向とを対応させて記憶することができるので、状況に応じたきめ細かい制限速度の管理を行うことができる。
【0042】
また、同じ道路区間であっても外の明るさによって制限速度を変えたい場合もあるが、そのような場合には、制限速度と道路位置と照度とを対応させて記憶することができるので、例えば照度が所定値以下のときには制限速度を低く設定し、前記所定値を超えるときには制限速度を高く設定するなど、状況に応じたきめ細かい制限速度の管理を行うことができる。
【0043】
また、制限速度オフセットスイッチ15cを操作することによって記憶されている制限速度を一時的に高くしたり低くしたり調整することができるので、現在の走行環境に応じたきめ細かい車速制限走行を行うことができ使い勝手が極めてよい。例えば、制限速度を設定した当時は晴天であったが、今回走行時は雨が降っている場合に、制限速度オフセットスイッチ15cを「Auto−」に切り替えるだけで、制限速度を一時的に低めに設定することができる。
【0044】
なお、前述した実施例では、制限速度と自車両の道路位置と進行方向と照度とを対応させて記憶したが、必ずしもこれら全てを対応させて記憶しなくてもよく、少なくとも制限速度と自車両の道路位置を対応させて記憶しておけば、この発明は成立する。
また、照度に代えて車両の前照灯が点灯しているか否かを対応させて記憶してもよい。
【0045】
また、制限速度と自車両の道路位置と時刻とを対応させて記憶してもよく、このようにすると時間帯に応じて制限速度を設定することができ、状況に応じたきめ細かい制限速度の管理を行うことができる。
また、制限速度と自車両の道路位置とワイパー作動状態とを対応させて記憶してもよく、このようにすると雨が降っている時と降っていない時を区別して制限速度を設定することができ、状況に応じたきめ細かい制限速度の管理を行うことができる。
【0046】
さらに、制限速度と自車両の道路位置と期間(何月)とを対応させて記憶してもよく、このようにすると期間に応じて制限速度を設定することができ、状況に応じたきめ細かい制限速度の管理を行うことができる。例えば、冬期に積雪のある地域では、同じ地点でも降雪時と非降雪時では制限速度を変えて設定したい場合があり、このようなときに使い勝手がよい。
さらに、上述した種々の制限速度設定条件を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明に係る車速制限装置の実施例における構成図である。
【図2】実施例における制限速度オフセット量設定テーブルの一例である。
【図3】実施例における制限速度オフセット量設定テーブルの他の例である。
【図4】実施例の車速制限装置における車速制限制御を示すフローチャートである。
【図5】実施例の車速制限装置における具体的な使用例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 車速制限装置
11 GPS受信器(自車位置検出手段)
12 道路データ記憶装置(道路データ記憶手段)
13 車速センサ(車速検出手段)
14 照度センサ(照度検出手段)
15c 制限速度オフセットスイッチ(制限速度変更手段)
20 制御装置
21 道路位置認識部(道路位置認識手段、進行方向検出手段)
22 制限速度記憶部(制限速度記憶手段)
23 車速制御部(車速制限手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の速度を検出する車速検出手段と、
乗員により設定された制限速度を記憶する制限速度記憶手段と、
自車両の走行速度が前記制限速度以下となるように制御する車速制限手段と、
を備えた車速制限装置において、
自車両の位置を検出する自車位置検出手段と、
道路デ−タを記憶する道路データ記憶手段と、
自車位置検出手段で検出した自車両の位置および道路データ記憶手段に記憶された道路デ−タに基づいて道路上の自車両の位置を認識する道路位置認識手段と、
をさらに備え、
前記制限速度記憶手段は、乗員により設定された制限速度と該制限速度が設定された道路上の自車両の位置とを対応させて記憶し、
前記車速制限手段は、自車両が走行する道路位置に対応して制限速度が記憶されている場合には、自車両の現在位置に基づいて前記制限速度記憶手段に記憶された制限速度を選択し、選択された制限速度以下となるように自車両の走行速度を制御することを特徴とする車速制限装置。
【請求項2】
道路上の自車両の進行方向を検出する進行方向検出手段を備え、
前記制限速度記憶手段は、乗員により設定された制限速度と該制限速度が設定された道路上の自車両の位置と自車両の進行方向とを対応させて記憶し、
前記車速制限手段は、自車両の現在位置と進行方向に基づいて前記制限速度記憶手段に記憶された制限速度を選択し、選択された制限速度以下となるように自車両の走行速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の車速制限装置。
【請求項3】
自車両の周囲の照度を検出する照度検出手段を備え、
前記制限速度記憶手段は、乗員により設定された制限速度と該制限速度が設定された道路上の自車両の位置と該制限速度が設定されたときに前記照度検出手段で検出された照度とを対応させて記憶し、
前記車速制限手段は、自車両の現在位置と現在の照度に基づいて前記制限速度記憶手段に記憶された制限速度を選択し、選択された制限速度以下となるように自車両の走行速度を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車速制限装置。
【請求項4】
前記制限速度記憶手段は、乗員により設定された制限速度と該制限速度が設定された道路上の自車両の位置と該制限速度が設定されたときの時刻またはワイパー作動状態とを対応させて記憶し、
前記車速制限手段は、自車両の現在位置と現在時刻または現在のワイパー作動状態に基づいて前記制限速度記憶手段に記憶された制限速度を選択し、選択された制限速度以下となるように自車両の走行速度を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車速制限装置。
【請求項5】
乗員の操作により前記制限速度記憶手段に記憶された制限速度を一時的に変更する制限速度変更手段を備え、
前記車速制限手段は、前記制限速度変更手段により制限速度が一時的に変更された場合には、変更された制限速度以下となるように自車両の走行速度を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車速制限装置。
【請求項6】
前記制限速度変更手段は、予め変更量が設定されており、記憶されている制限速度の大きさに応じて前記変更量が異なることを特徴とする請求項5に記載の車速制限装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−18687(P2009−18687A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182459(P2007−182459)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】