説明

車間距離制御装置

【課題】より快適な運転フィーリングを実現することができる車間距離制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明による車間距離制御装置1は、自車両の車速Vを検出する車速検出手段2aと、自車両と先行車両との車間距離Lを検出する車間距離検出手段2bと、車速Vを設定車速VSに制御する及び車間距離Lを車速Vで除して算出された車間時間Tを設定車間時間TSに制御する車両制御手段2cと、自車両の後側方の他車両を検出する後側方検出手段2dと、車間距離Lが車線変更を行うために必要な所定車間距離LC以下となった場合で、後側方検出手段2dが自車両の後側方の他車両を検出しない場合に、車線変更時期を報知する報知手段2eを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車両の有無等の自車両の前方の状態に基づき、先行車両との車間距離を制御する車間距離制御を行う車間距離制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車間距離制御装置としては、先行車両が存在しない場合には、自車両の車速を設定車速に保持し、先行車両が存在する場合には、先行車両に追従するように自車両と先行車両との車間距離を車速で除して算出された車間時間を設定車間時間に制御する制御が行われている。このような、車間距離制御装置として、例えば特許文献1に記載されているようなものがある。
【特許文献1】特開2003−205764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような車間距離制御装置においては、追い越し車線を有する自動車専用道路等において、自車両が先行車両を追い越すために自車両の車速を高速に維持しながら、又は加速を伴って、車線変更を行おうとする場合に、自車両と先行車両との車間距離が、設定車間時間に該当する車間時間に自車両の車速を乗じた値となると、車間時間を設定車間時間とするために自車両を減速するように制御が行われるため、追い越しに当たって一旦減速してしまうため、車線変更時に又は車線変更後において一旦減速した分だけ余計に加速する必要が生じて、運転者に違和感を与えてしまい、運転者にとって快適な運転フィーリングが得られないという問題が生じる。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑み、より快適な運転フィーリングを実現することができる車間距離制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するため、本発明による車間距離制御装置は、
自車両の車速を検出する車速検出手段と、前記自車両と先行車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、前記車速を設定車速に制御する及び前記車間距離を前記車速で除して算出された車間時間を設定車間時間に制御する車両制御手段と、自車両の後側方の他車両を検出する後側方検出手段と、前記車間距離が車線変更を行うために必要な所定車間距離以下となった場合で、前記後側方検出手段が自車両の後側方の他車両を検出しない場合に、車線変更時期を報知する報知手段を備えることを特徴とする。
【0006】
ここで、前記車間距離制御装置において、
前記所定車間距離が、前記車速に前記設定車間時間を乗じた設定車間距離と、前記自車両と前記先行車両との車速の差に所定時間を乗じた距離とを含むものであることが好ましい。なお、前記自車両と前記車両との車速の差は、前記車間距離の微分値に相当する。
【0007】
これによれば、前記車速に前記設定車間時間を乗じた設定車間距離と、前記自車両と前記先行車両との車速の差に所定時間を乗じた距離とを含む前記所定車間距離を基準として、前記自車両と前記先行車両との前記車間距離が当該所定車間距離以内となり、かつ、前記後側方検出手段が自車両の後側方の他車両を検出しない場合に、前記報知手段が前記車線変更時期を報知するので、運転者にとってより適切な前記車線変更時期を報知することができる。
【0008】
すなわち、前記車間距離が前記設定車間距離以下となる前段階において、運転者に前記車線変更時期を報知するので、自動車専用道路等において、前記自車両が前記先行車両を追い越すために、運転者が前記自車両の車速を高速に維持しながら、又は加速操作を伴って、車線変更を行おうとする場合に、前記自車両と先行車両との車間距離が、前記設定車間時間に自車両の車速を乗じた設定車間距離以下となって、前記車間時間を前記設定車間時間とするために前記車両制御手段が自車両を減速するように制御することを事前に回避することができる。
【0009】
これにより、前記自車両の運転者が前記先行車両を追い越すために車線変更の意思を有しているにも係わらず、追い越しに必要な車線変更操作の前段階において、一旦減速してしまい、車線変更時に又は車線変更後において一旦減速した分だけ余計に加速する必要が生じるという事態を回避して、運転者に違和感を与えてしまうことをも防止して、運転者にとって快適な運転フィーリングを付与することができる。
【0010】
これに加えて、前記自車両と前記先行車両との車間距離と、前記自車両の車速、前記自車両の後側方の他車両の有無という、複数の条件に基づいて、前記車間距離制御装置が車線変更に適した前記車線変更時期を決定しているので、前記自車両の運転者の運転判断の負担を軽減するとともに、前記先行車両や前記後側方の他車両の運転者の運転判断の負担をも軽減することができる。
【0011】
なおここで、前記車間距離制御装置において、
前記所定時間が、車線変更を後側方の他車両に認知させるのに必要な認知時間を含むことが好ましい。
【0012】
これによれば、上述した作用効果に加えて、前記所定車間距離が、前記自車両と前記先行車両との車速の差に、車線変更を後側方の他車両に認知させるのに必要な認知時間を乗じた距離を含むことができるので、前記報知手段により前記車線変更時期を報知した時点において、前記自車両の運転者が前記自車両の方向指示器を操作した場合において、後側方の他車両に対して当該車線変更を事前に認知させるのに必要な認知時間を与えることができ、追い越しのための車線変更を後側方の他車両の走行を阻害することなく、円滑に行うことを運転者に促すことができる。
【0013】
加えて、前記車間距離制御装置において、
前記所定時間が、前記自車両の車線変更開始時点から、車線変更前の車線に位置する先行車両が前記車間距離検出手段の車両前方の検出範囲外となるまでの時間を含むことが好ましい。
【0014】
これによれば、上述した作用効果に加えて、前記所定車間距離が、前記自車両と前記先行車両との車速の差に、前記自車両の車線変更開始時点から、車線変更前の車線に位置する先行車両が前記車間距離検出手段の車両前方の検出範囲外となるまでの車線変更開始時点からの時間を乗じた距離を含むことができるので、追い越しのための車線変更において、前記車間距離検出手段の前記検出範囲外に前記先行車両が位置するまでの時間を事前に確保した上で、前記報知手段が前記自車両の運転者に前記車線変更時期を報知することができる。
【0015】
すなわち、前記自車両の運転者が前記報知手段により前記車線変更時期を報知された時点において、前記自車両の運転者が操舵装置の操舵輪を操舵して車線変更を行った場合に、前記自車両が車線変更後の車線に完全に移動する前に、車線変更前の車線に位置する前記先行車両が前記車間距離検出手段の車両前方の検出範囲内に位置してしまい、前記自車両と先行車両との車間距離が、前記設定車間時間に該当する車間時間に自車両の車速を乗じた設定車間距離以下となって、前記車間時間を前記設定車間時間とするために前記車両制御手段が自車両を減速するように制御してしまうことを回避することができる。
【0016】
これにより、前記自車両の運転者が前記先行車両を追い越すために車線変更の意思を有しているにも係わらず、追い越しに必要な車線変更を行い自車両が車線変更前の車線から車線変更後の車線に車幅方向に移動しながら自車両の車速を維持又は加速している段階において、車線変更前の車線に位置している前記先行車両が前記車間距離検出手段の車両前方の検出範囲内に位置してしまい、ハード上の制約により一旦減速してしまい、車線変更後において一旦減速した分だけ余計に加速する必要が生じて、運転者に違和感を与えてしまうことをも回避して、運転者にとって快適な運転フィーリングを付与することができる。
【0017】
なお、前記車間距離制御装置において、
追い越し車線の有無を検出する車線検出手段を備えるとともに、当該車線検出手段が前記追い越し車線が無いと検出する場合に、前記報知手段による報知を禁止する禁止手段を備えることが好ましい。
【0018】
これによれば、前記自車両がいわゆる対面通行の自動車専用道路を前記車間距離制御装置の機能を選択して走行している場合において、前記追い越し車線が存在しないにも係わらず、前記自車両と前記先行車両との車間距離が前記所定車間距離以下となった場合に、前記報知手段により前記車線変更時期が前記自車両の運転者に報知されてしまうことを防止することができる。これにより、前記自車両及び前記先行車両の安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、より快適な運転フィーリングを実現することができる車間距離制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明に係る車間距離制御装置の一実施形態を示すブロック図である。また、図2は、本発明に係わる車間距離制御装置の一実施形態のそれぞれの構成要素の検出態様を示す模式図であり、図3及び図4は、本発明に係わる車間距離制御装置の一実施形態における制御パラメータの決定態様を示す模式図である。
【0022】
車間距離制御装置1は、ACCECU2(Adaptive Cruise Control Electronic Control Unit)と、測距センサ3と、クリアランスソナー4と、前方認識カメラ5と、スピーカ6と、エンジンECU7(Engine Electronic Control Unit)と、ブレーキECU8(Brake Electronic Control Unit)と、変速機ECU9(Transmission Electronic Control Unit)を備えて構成される。ACCECU2と、エンジンECU7と、ブレーキECU8と、変速機ECU9はCAN(Controller Area Network)等の通信規格により相互に接続される。
【0023】
ACCECU2は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、以下に述べる処理を行う車速検出手段2aと、車間距離検出手段2bと、車両制御手段2cと、後側方検出手段2dと、報知手段2eと、車線検出手段2fと、禁止手段2gを構成するものである。
【0024】
測距センサ3は、自車両のフロントグリル又はフロントバンパーに設けられる、例えばレーザレーダ又はミリ波レーダであり、自車両の前方に位置する先行車両と自車両との車間距離Lを測定して、その測定結果をACCECU2に出力するものである。
【0025】
クリアランスソナー4は、自車両の後方右側端に設けられるものであって、内蔵された超音波出力器から検出領域内に出力された超音波が、自車両の後側方に位置する他車両により反射されて帰還した超音波をこれも内蔵された超音波センサが受信することにより、検出領域内への後側方の他車両の接近及び存在の有無を検出するものであり、その検出結果をACCECU2に出力するものである。
【0026】
前方認識カメラ5は、例えばCCDカメラあるいはCMOSカメラであり、例えば自車両室内のウインドシールド中央上部に、前方に光軸が合致するように配設され、自車両の前方の路面を自車両の位置する車線の両側の白線、具体的には図2に示すような路側側白線及び区分白線と、その車線に隣接する追い越し車線の両側の白線、これも図2に示すような区分白線と中央白線の双方を含む範囲にて撮像して、撮像した映像をACCECU2に出力するものである。
【0027】
エンジンECU7は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、図示しないエンジンのスロットル開度等を制御して、主にエンジンの回転数の制御を行って車両の加減速度の制御を行うものである。
【0028】
ブレーキECU8は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、車両の各車輪に設けられたブレーキ装置を制御して車両の制動を行うとともに、図示しない車輪速センサから車速を検出して検出結果を、CANを介してACCECU2に出力するものである。
【0029】
変速機ECU9は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースとから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、ここでは図示しない変速機の変速比のシフト制御を行うものである。
【0030】
これに加えて、ACCECU2の車速検出手段2aはブレーキECU8からCANを介して自車両の車速Vを検出し、ACCECU2の車間距離検出手段2bは、測距センサ3の測定結果に基づいて、図2に示すように、自車両と先行車両との車間距離Lを検出するとともに車間距離Lの微分値から自車両と先行車両との速度の差ΔVを検出する。
【0031】
さらに、ACCECU2の車両制御手段2cは、自車両の車速Vを運転者が図示しない選択スイッチにより選択した設定車速VSとなるように、エンジンECU7、ブレーキECU8及び変速機ECU9を制御するとともに、車間距離Lを自車両の車速Vで除して算出された車間時間Tをこれも運転者が図示しない選択スイッチにより選択した設定車間時間TSとなるように、エンジンECU7、ブレーキECU8及び変速機ECU9にそれぞれ指令を出力して車両の加減速度及び速度を制御する。
【0032】
さらに、ACCECU2の後側方検出手段2dは、図2に示すように、クリアランスソナー4の検出結果に基づいて、自車両の後側方の他車両を検出するとともに、ACCECU2の報知手段2eは、車間距離Lが車線変更を行うために必要な所定車間距離LC以下となった場合で、後側方検出手段2dが自車両の後側方の他車両を検出しない場合に、車線変更時期を自車両の運転者にスピーカ6の発生する音声により、例えば、「追い越し可能です。追い越しに伴う車線変更タイミングは今です。」というような内容を報知する。
【0033】
なお、ここで所定車間距離LCについてより詳細に説明する。図3に示すように、所定車間距離LCとは、自車両の車速Vに設定車間時間TSを乗じた設定車間距離LSと、自車両と先行車両との車速の差ΔVに所定時間TCを乗じて求まる距離を加算した距離である。ここで、この所定時間TCは、車線変更を後側方の他車両に認知させるのに必要な認知時間TRと、自車両の車線変更開始時点から車線変更前の車線に位置する先行車両が、ACCECU2の車間距離検出手段2bの車両前方の検出範囲すなわち測距センサ3の車両前方の検出範囲外となるまでの時間TEを加算して求められる時間である。
【0034】
この時間TEは、図4に示すように求められる。すなわち、自車両の測距センサ3の検出範囲が、車両前方LDの距離において車幅方向にWの長さを有する範囲であるとすれば、
車線変更開始時点から時間TEが経過すると、車線変更に伴い運転者が操舵角θだけ操舵装置の操舵輪を操舵した場合に、先行車両と自車両との速度の差ΔVに時間TEを乗じた走行距離に操舵角θを乗じてもとまる、自車両の車幅方向の移動距離がWとなればよいことから、θ×ΔV×TE=Wとなり、TE=W/(θ×ΔV)の計算式により、時間TEを演算することができる。なお、自動車専用道路における運転者の操舵特性は緩やかであると考えられるので、操舵角θは予め現車試験等により求められた値をACCECU2内において記憶して使用する。
【0035】
さらに、ACCECU2の車線検出手段2fは、前方認識カメラ5により撮像された画像内に位置する、自車両の前方の路面を自車両の位置する車線の両側の白線と、その車線に隣接する追い越し車線の両側の白線の双方を、二植化処理等により検出して、追い越し車線の有無を検出するとともに、ACCECU2の禁止手段2gは、車線検出手段2fが追い越し車線が無いと検出する場合に、報知手段2eによる報知を禁止する。
【0036】
以下、本実施例1の車間距離制御装置1の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図5は、本発明による車間距離制御装置1の制御内容を示すフローチャートである。
【0037】
図5に示すS1において、ACCECU2の車速検出手段2aはブレーキECU8からCANを介して自車両の車速Vを検出し、S2において、ACCECU2の車間距離検出手段2bは、測距センサ3の測定結果に基づいて、自車両と先行車両との車間距離Lを検出するとともに、車間距離Lの微分値から自車両と先行車両との速度の差ΔVを演算する。
【0038】
づづいて、S3において、ACCECU2の車両制御手段2cは、自車両の車速Vが運転者が図示しない選択スイッチにより選択した設定車速VSとなるように、エンジンECU7、ブレーキECU8及び変速機ECU9に対してそれぞれ指令を出力して制御するとともに、車間距離を自車両の車速で除して算出された車間時間Tをこれも運転者が図示しない選択スイッチにより選択した設定車間時間TSとなるように、エンジンECU7、ブレーキECU8及び変速機ECU9に対してそれぞれ指令を出力して制御する。
【0039】
S4において、エンジンECU7は、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、図示しないエンジンのスロットル開度等を制御して、主にエンジンの回転数の制御を行って車両の加減速度を制御し、ブレーキECU8は、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、車両の各車輪に設けられたブレーキ装置を制御して車両の制動を行い、変速機ECU9は、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、変速機の変速比のシフト制御を行い、これらのことにより自車両の車速、加減速度が制御される。
【0040】
さらに、S5において、ACCECU2の車線検出手段2fは、前方認識カメラ5により撮像された画像内に位置する、自車両の前方の路面を自車両の位置する車線の両側の白線と、その車線に隣接する追い越し車線の両側の白線の双方を、二植化処理等により検出して、追い越し車線の有無を検出し、S6において、ACCECU2の禁止手段2gは、車線検出手段2fの検出結果に基づいて、追い越し車線が有るかどうかを判定し、追い越し車線がある場合には、S7にすすみ、無い場合にはS15にすすんで、車線検出手段2fが追い越し車線が無いと検出する場合に、報知手段2eによる報知を禁止する。
【0041】
S7において、ACCECU2の車間距離検出手段2bは、車間距離Lの微分値から自車両と先行車両との速度の差ΔVを演算する。さらに、S8において、ACCECU2の報知手段2eは、自車両の車線変更開始時点から車線変更前の車線に位置する先行車両が測距センサ3の検出範囲外となるまでの時間TEを演算する。
【0042】
さらにS9において、ACCECU2の報知手段2eは、道路交通法で定められる例えば3secの認知時間TRと時間TEとを加算して、所定時間TCを演算する。さらに、S10において、ACCECU2の報知手段2eは、設定車間時間TSに自車両の車速Vを乗じた値に、自車両と先行車両との速度の差ΔVに所定時間TCを乗じた値を加算して、所定車間時間LCを演算する。
【0043】
つづいて、S11において車間距離Lが所定車間距離LC以下であるかどうかを判定し、肯定であればS12にすすみ、否定であれば、S15にすすむ。S11で肯定である場合にはS12にすすむが、S12において、ACCECU2の後側方検出手段2dはクリアランスソナー4の検出結果に基づいて、クリアランスソナー4の検出結果に基づいて、自車両の後側方の他車両を検出して、S13にすすむ。S13において、ACCECU2の報知手段2eは、後側方の他車両があるかを判定し、肯定であればS14にすすみ、否定であればS15にすすむ。S14において、ACCECU2の報知手段2eは、車間距離が車線変更を行うために必要な所定車間距離LC以下となった場合で、後側方検出手段2dが自車両の後側方の他車両を検出しない場合であるので、車線変更時期を自車両の運転者にスピーカ6の発生する音声により報知する。
【0044】
づづいて、S15において、ACCECU2の車両制御手段2cは、自車両の車速Vが運転者が選択した設定車速VSとなるように、エンジンECU7、ブレーキECU8及び変速機ECU9に対してそれぞれ指令を出力して制御するとともに、車間距離Lを自車両の車速Vで除して算出された車間時間Tをこれも運転者が図示しない選択スイッチにより選択した設定車間時間TSとなるように、エンジンECU7、ブレーキECU8及び変速機ECU9に対してそれぞれ指令を出力して制御する。
【0045】
さらに、S16において、エンジンECU7は、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、図示しないエンジンのスロットル開度等を制御して、主にエンジンの回転数の制御を行って車両の加減速度を制御し、ブレーキECU8は、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、車両の各車輪に設けられたブレーキ装置を制御して車両の制動を行い、変速機ECU9は、ACCECU2の車両制御手段2cからの指令に基づき、変速機の変速比のシフト制御を行い、これらのことにより自車両の車速、加減速度が制御される。なお、S1からS16までの処理は、所定の演算周期毎に繰り返し行われる。
【0046】
以上述べた制御内容により実現される本実施例の車間距離制御装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、自車両の車速Vに設定車間時間TSを乗じた設定車間距離LSと、自車両と先行車両との車速の差ΔVに所定時間TCを乗じた距離とを含む所定車間距離LCを基準として、自車両と先行車両との車間距離Lが所定車間距離LC以内となり、かつ、後側方検出手段2dが自車両の後側方の他車両を検出しない場合に、報知手段2eが自車両の運転者に車線変更時期を報知するので、運転者にとってより適切な車線変更時期を報知することができる。
【0047】
つまり、車間距離Lが設定車間距離LS以下となる前段階において、報知手段2eが運転者に車線変更時期を報知するので、自動車専用道路等において、自車両が先行車両を追い越すために、運転者が自車両の車速を高速に維持しながら、あるいはアクセルを踏み込んで加速操作を行って、追い越しのための車線変更を行おうとする場合に、自車両と先行車両との車間距離Lが、設定車間時間TSに自車両の車速Vを乗じた設定車間距離LS以下となって、通常のACCECU2の制御ロジックに伴って、車間時間Tを設定車間時間TSとするために車両制御手段2cが自車両を減速するように制御することを事前に回避することができる。
【0048】
これにより、自車両の運転者が先行車両を追い越すために追い越し車線への車線変更の意思を有しているにも係わらず、追い越しに必要な車線変更操作の前段階において、ACCの制御ロジックにより一旦減速してしまい、車線変更時に又は車線変更後において一旦減速した分だけ余計に加速する必要が生じるという事態を回避することができる。これにより、本実施例による車間距離制御装置1は運転者に違和感を与えてしまうことをも防止して、運転者にとって快適な運転フィーリングを付与することができる。
【0049】
これに加えて、自車両と先行車両との車間距離Lと、自車両の車速V、自車両の後側方の他車両の有無という、運転者にとって短時間に又は同時に認識することが困難な複数の条件に基づいて、車間距離制御装置1すなわちACCECU2の報知手段2eが車線変更に適した車線変更時期を決定しているので、自車両の運転者の運転判断の負担を軽減するとともに、先行車両や後側方の他車両の運転者の運転判断の負担をも軽減することができる。
【0050】
すなわち、本実施例の車間距離制御装置によれば、自車両の運転者が、減速を伴わずに車線変更ができるタイミングを逸することを回避することができるとともに、先行車両や後側方の他車両の運転者にとっても、高速を維持したい自車両の追い越しに伴う車線変更を、なるべく迅速に終了してもらいたいと期待している可能性が高いので、この期待に沿って、自車両の運転者に車線変更を促して、先行車両や後側方の車両の運転者の運転に伴うストレスを軽減することができる。
【0051】
また、所定時間TCが、車線変更を後側方の他車両に認知させるのに必要な認知時間TRを含むことにより、所定車間距離LCが、自車両と先行車両との車速の差ΔVに、車線変更を後側方の他車両に認知させるのに必要な認知時間TRを乗じた距離を含むことができるので、ACCECU2の報知手段2eにより車線変更時期を自車両の運転者に報知した時点において、自車両の運転者が自車両の方向指示器すなわちウィンカーを操作した場合において、後側方の他車両に対して車線変更を事前に認知させるのに必要な認知時間TRを与えることができ、追い越しのための車線変更を後側方の他車両の走行を阻害することなく、円滑に行うことを運転者の目測に頼ることなく適宜に促すことができる。
【0052】
加えて、所定時間TCが、自車両の車線変更開始時点から、車線変更前の車線に位置する先行車両がACCECU2の車間距離検出手段2bの車両前方の検出範囲外となるまでの時間TEを含むことにより、上述した作用効果に加えて、所定車間距離LCが、自車両と先行車両との車速の差ΔVに、自車両の車線変更開始時点から、車線変更前の車線に位置する先行車両が車間距離検出手段2bの車両前方の検出範囲外となるまでの時間TEを乗じた距離を含むことができるので、追い越しのための車線変更において、車間距離検出手段2bすなわち測距センサ3の検出範囲外に先行車両が位置するまでの時間を事前に確保した上で、報知手段2eが自車両の運転者に車線変更時期を報知することができる。
【0053】
すなわち、自車両の運転者が報知手段2eにより車線変更時期を報知された時点において、自車両の運転者が操舵装置の操舵輪を操舵して車線変更を行った場合に、自車両が車線変更後の車線に完全に移動する前に、車線変更前の車線に位置する先行車両が車間距離検出手段2bの車両前方の検出範囲内に位置してしまい、この場合において、自車両と先行車両との車間距離Lが、設定車間時間TSに自車両の車速を乗じた設定車間距離LS以下となって、車間時間Tを設定車間時間TSとするために車両制御手段2cが自車両を減速するように制御してしまうことを回避することができる。
【0054】
これにより、自車両の運転者が先行車両を追い越すために車線変更の意思を有しているにも係わらず、追い越しに必要な車線変更を行い自車両が車線変更前の車線から車線変更後の車線に車幅方向に移動しながら自車両の車速Vを維持又は加速している段階において、車線変更前の車線に位置している先行車両が車間距離検出手段2bの車両前方の検出範囲内に位置してしまい、ハード上の制約により一旦減速してしまい、車線変更後において一旦減速した分だけ余計に加速する必要が生じて、運転者に違和感を与えてしまうことをも回避して、運転者にとって快適な運転フィーリングを付与することができる。
【0055】
さらに、本実施例の車間距離制御装置1のACCECU2においては、追い越し車線の有無を検出する車線検出手段2fを備えるとともに、車線検出手段2fが追い越し車線が無いと検出する場合に、報知手段2eによる報知を禁止する禁止手段2gを備えることにより、さらに以下の作用効果が得られる。
【0056】
すなわち、自車両がいわゆる対面通行の自動車専用道路を車間距離制御装置1の車速維持及び先行車両追従機能を選択して走行している場合において、追い越し車線が存在しないにも係わらず、自車両と先行車両との車間距離Lが所定車間距離LC以下となった場合に、報知手段2eにより車線変更時期が自車両の運転者に報知されてしまうことを防止することができる。これにより、自車両及び先行車両の安全性を高めることができる。
【0057】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0058】
例えば、上述した実施例においては、ACCECU2の後側方検出手段2dはクリアランスソナー4の検出結果に基づいて、後側方の他車両の有無を検出しているが、これに換えて、前方認識カメラ5と同様の構成の後方認識カメラを、自車両の車室内に備えて、この後方認識カメラの検出結果に基づいて、後側方検出手段2dが、後側方の他車両の有無を検出しても良い。
【0059】
また、上述した実施例においては、ACCECU2の報知手段2eはスピーカ6による音声に基づいて、自車両の運転者に車線変更時期を報知しているが、このような構成に換えて、例えば、カーナビゲーションシステムに用いられるマルチインフォメーションディスプレイにより、テキスト表示を行うことにより車線変更時期を報知することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、車間距離制御装置に関するものであり、より快適な運転フィーリングを実現することができる車間距離制御装置を提供することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る車間距離制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係わる車間距離制御装置の一実施形態のそれぞれの構成要素の検出態様を示す模式図である。
【図3】本発明に係わる車間距離制御装置の一実施形態における制御パラメータの決定態様を示す模式図である。
【図4】本発明に係わる車間距離制御装置の一実施形態における制御パラメータの決定態様を示す模式図である。
【図5】本発明に係る車間距離制御装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 車間距離制御装置
2 ACCECU
2a 車速検出手段
2b 車間距離検出手段
2c 車両制御手段
2d 後側方検出手段
2e 報知手段
2f 車線検出手段
2g 禁止手段
3 測距センサ
4 クリアランスソナー
5 前方認識カメラ
6 スピーカ
7 エンジンECU
8 変速機ECU
V 車速
L 車間距離
T 車間時間
ΔV 速度の差
VS 設定車速
LC 所定車間距離
TS 設定車間時間
LS 設定車間距離
TC 所定時間
TR 認知時間
TE 車線変更開始時点から先行車両が検出範囲外となる時間
θ 操舵角
LD 検出範囲を決定する車両前方距離
W 検出範囲を決定する車幅方向長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車速を検出する車速検出手段と、前記自車両と先行車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、前記車速を設定車速に制御する及び前記車間距離を前記車速で除して算出された車間時間を設定車間時間に制御する車両制御手段と、自車両の後側方の他車両を検出する後側方検出手段と、前記車間距離が車線変更を行うために必要な所定車間距離以下となった場合で、前記後側方検出手段が自車両の後側方の他車両を検出しない場合に、車線変更時期を報知する報知手段を備えることを特徴とする車間距離制御装置。
【請求項2】
前記所定車間距離が、前記車速に前記設定車間時間を乗じた設定車間距離と、前記自車両と前記先行車両との車速の差に所定時間を乗じた距離とを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の車間距離制御装置。
【請求項3】
前記所定時間が、車線変更を後側方の他車両に認知させるのに必要な認知時間を含むことを特徴とする請求項2に記載の車間距離制御装置。
【請求項4】
前記所定時間が、前記自車両の車線変更開始時点から、車線変更前の車線に位置する先行車両が前記車間距離検出手段の車両前方の検出範囲外となるまでの時間を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の車間距離制御装置。
【請求項5】
追い越し車線の有無を検出する車線検出手段を備えるとともに、当該車線検出手段が前記追い越し車線が無いと検出する場合に、前記報知手段による報知を禁止する禁止手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車間距離制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−193228(P2009−193228A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31875(P2008−31875)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】