説明

転写体、およびこれを用いたエッチング方法

【課題】フォトリソグラフィを用いたエッチング方法は、スパッタリングまたは蒸着などの方法により、クロム(Cr)および金(Au)などからなる膜を成膜し、レジストの塗布、硬化処理、露光、さらに現像およびレジスト膜の除去などの工程を必要とし、そして現像液や膜を除去するための溶液などを必要とし工程が複雑である。簡略なエッチング方法を実現する。
【解決手段】転写体10は、基材1と、基材1上にパターン形成された剥離層2と、剥離層2上に形成された接合膜3とを備える。このような転写体10を用いることで、フォトリソグラフィを用いることなく、被転写体20の表面25に、レジストからなるエッチングマスクを形成するので、従来のようにクロム(Cr)および金(Au)などからなる膜を成膜することなく、現像液などを用いることもなく、エッチングすることができ、被転写体20の表面25に、凹部21を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写体、これを用いたエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電素子または半導体素子など電子デバイスのウェハをエッチングなどにより加工する方法として、フォトリソグラフィを用いて、ウェハの表面に、レジストからなるエッチングマスクを形成し、その後ウェットエッチングまたはドライエッチングする方法が一般的に用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−82930号公報(3頁、図1〜図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フォトリソグラフィを用いたエッチング方法は、まずスパッタリングまたは蒸着などの方法により、クロム(Cr)および金(Au)などからなる膜を成膜する。その後、レジストの塗布、レジストの硬化処理、露光、さらにレジストの現像およびレジスト膜の除去などの工程を必要とし、そして現像液やレジスト膜を除去するための溶液などを必要とするため、複雑化しているという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例により実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる転写体は、基材と、前記基材上にパターン形成された剥離層と、前記剥離層上に形成された接合膜と、を備えることを要旨とする。
【0007】
これによれば、接合膜の表面に接着性を発現させることが可能な転写体を得ることができる。これにより、接合膜を、被接合体と接合させることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる転写体において、前記接合膜は前記剥離層から露出した前記基材上にも形成されていることを要旨とする。
【0009】
これによれば、上述と同様の効果を奏することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる転写体において、前記接合膜は、プラズマ重合膜で構成され、シロキサン結合を含む原子構造と、前記シロキサン結合に結合し有機基からなる脱離基と、を含むことが好ましい。
【0011】
これによれば、接合膜に、大気圧下で酸素プラズマに曝す、または減圧雰囲気下で紫外線照射することなどで、エネルギーを付与することにより、一部の脱離基がSi骨格から脱離し、代わりに活性手が出現するので、接合膜の表面に接着性を発現させることが可能な転写体を得ることができる。これにより、接合膜を、被接合体と接合させることができる。そして、この接合膜は、薄くても十分な接合強度が得られるので、接合膜に接合される被接合体から剥離するなどの不具合が生じることを防止することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる転写体において、前記基材は、可撓性を有するシートであることが好ましい。
【0013】
これによれば、転写体として可撓性を有するシート状の転写シートを用いるので、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式により、連続的に接合膜、または接合膜とこの接合膜に接する剥離層とを、被接合体に転写させることができる。
【0014】
[適用例5]本適用例にかかるエッチング方法は、基材上に剥離層を形成する剥離層形成工程と、前記剥離層をパターン形成するパターン形成工程と、前記剥離層上に接合膜を形成する接合膜形成工程と、前記接合膜を活性化させる接合膜活性化工程と、活性化させた前記接合膜の表面を、被転写体の表面に合わせて、前記被転写体と前記剥離層上に形成された前記接合膜とを接合させる接合工程と、接合された前記被転写体と前記接合膜および前記剥離層とから、前記基材を引き剥がす剥離工程と、前記被転写体および前記被転写体に接合された前記接合膜と、前記接合膜に接する前記剥離層とをエッチングマスクとして用いて、前記被転写体をエッチングするエッチング工程と、前記接合膜に接する前記剥離層と、前記被転写体に接合された前記接合膜とを、除去する除去工程とを備えることを要旨とする。
【0015】
これによれば、基材と、基材の表面に形成された剥離層との接合力に比べて、被転写体の表面と、活性化された接合膜の表面とが、結合された被転写体と接合膜との接合力は強固である。このため、基材を引き剥がすことにより、被転写体に接合された接合膜と、この接合膜に接する剥離層とは、被転写体に接合されたまま残ることにより転写され、これらをエッチングマスクとして用いる。そして、基材の表面に形成された接合膜は、基材とともに、被転写体から引き剥がされる。このようにして、フォトリソグラフィを用いることなく、被転写体の表面に、レジストからなるエッチングマスクを形成するので、従来のようにクロム(Cr)および金(Au)などからなる膜を成膜することなく、現像液などを用いることもなく、エッチングすることができ、被転写体の表面に、凹部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態にかかる転写シートを示す概略断面図。
【図2】第1実施形態にかかる転写シートの表面を示す概略断面図。
【図3】第1実施形態にかかる転写シートの製造方法の一例を示すフローチャート。
【図4】第1実施形態にかかる転写シートの製造方法の一例を示す図。
【図5】第2実施形態にかかる被転写体を示す概略断面図。
【図6】第2実施形態にかかる被転写体のエッチング方法の一例を示すフローチャート。
【図7】第2実施形態にかかる被転写体のエッチング方法の一例を示す概略断面図。
【図8】第3実施形態にかかる転写シートの製造方法の一例を示すフローチャート。
【図9】第3実施形態にかかる転写シートの製造方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態の転写体について、図1から図4を参照して説明する。
【0018】
図1に示すように、転写体10は、基材1と、剥離層2と、プラズマ重合膜で構成された接合膜3とを備える。基材1上、つまり基材1の表面15に、剥離層2がパターン形成されている。剥離層2上、および剥離層2から露出した基材1の表面15に、接合膜3が形成されている。
【0019】
基材1は、たとえばポリイミド樹脂またはエポキシ樹脂などである。基材1は、可撓性を有するシート状のものが好ましい。
【0020】
剥離層2は、たとえばフォトレジストなどである。また、剥離層2は、基材1との接着力(接合力)を調整するために、剥離層2の基材1側に中間層を設けた複層構造であっても良い。
【0021】
図2(a)に示すように、接合膜3は、シロキサン(Si−O−Si)結合302を含むランダムな原子構造を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを含むプラズマ重合膜である。また、接合膜3は、シロキサン結合302を含むランダムな原子構造を有するSi骨格301からなるので、変形し難く、強固である。
そして、図2(b)に示すように、接合膜3に、大気圧下で酸素プラズマに曝す、または減圧雰囲気下で紫外線照射することなどで、エネルギーを付与することにより、一部の脱離基303がSi骨格301から脱離し、代わりに活性手304が出現する。これにより、接合膜3の表面35に接着性を発現させる。
このようにして接着性が発現した接合膜3により、接合膜3を、被接合体と接合させることができる。そして、この接合膜3は、薄くても十分な接合強度が得られ、接合膜3に接合される被接合体から剥離するなどの不具合が生じることを防止することができる。
【0022】
この接合膜3は、接合膜3を構成する全原子から水素(H)原子を除いた原子のうち、シリコン(Si)原子の含有率と酸素(O)原子の含有率の合計が、10原子%〜90原子%程度であるのが好ましく、20原子%〜80原子%程度であるのがより好ましい。シリコン(Si)原子と酸素(O)原子との含有率の合計が、この範囲内であれば、接合膜3は、シリコン(Si)原子と酸素(O)原子とが強固に結合し、接合膜3自体がより強固なものとなり、結合箇所の結合強度をより高める。
【0023】
また、接合膜3中のシリコン(Si)原子と酸素(O)原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。シリコン(Si)原子と酸素(O)原子の存在比を、この範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、各部をより強固に結合する。
なお、接合膜3中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、化学的な安定性、耐熱性などのSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜3の安定性がより優れたものとなる。
【0024】
また、Si骨格301に結合する脱離基303は、エネルギーを付与されることによって、Si骨格301から脱離し、接合膜3に活性手304を生じさせる。一方で、エネルギーが付与されないときには、脱離せずに、Si骨格301に確実に結合している。
【0025】
脱離基303は、図示の例ではCH3であるが、水素(H)原子、ホウ素(B)原子、炭素(C)原子、窒素(N)原子、酸素(O)原子、リン(P)原子、硫黄(S)原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。脱離基303は、エネルギーの付与による結合および脱離の選択性に比較的優れている。
【0026】
これらの各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団(基)の一例としては、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基などが挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基303は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含む接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0027】
このような特徴を有する接合膜3の構成材料としては、たとえば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物などが挙げられる。
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示す。
そして、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーが付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現させ、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましく、接着性に優れている。
【0028】
以下、第1実施形態の転写体の製造方法について、図3および図4を参照して説明する。
図3に示すように、転写体の製造方法は、基材洗浄工程(S101)と、剥離層形成工程(S102)と、パターン形成工程(S134)と、接合膜形成工程(S105)とを備える。パターン形成工程(S134)は、露光工程(S103)と、現像工程(S104)とを備える。図4には、図3に示したそれぞれの工程における転写シートの製造工程の一例を示している。
【0029】
図4(a)に示すように、基材洗浄工程(S101)を実施する。具体的には、基材1の表面15に、紫外線照射、またはヘリウム(He)などの希ガスを用いて大気圧プラズマなどの処理を施すことにより、基材1の表面15から有機物などの異物を除去し、基材1の表面15を洗浄する。
【0030】
次に、図4(b)に示すように、剥離層形成工程(S102)を実施し、スピンコーターを用いて、基材1上、つまり基材1の表面15に剥離層2の材料であるフォトレジストを塗布し、加熱などの硬化処理を施す。このようにして、基材1の表面15に、剥離層2をパターン形成する。ここでは、スピンコーターの代わりに、ダイコーターまたはスリットコーターなどを用いてもよい。
【0031】
次に、図4(c)に示すように、パターン形成工程(S134)の露光工程(S103)を実施する。具体的には、剥離層2上にフォトマスク9を配置して露光することにより、フォトマスク9の貫通部91を透過した光に反応し、剥離層2の溶解性を変化させる。そして、フォトマスク9で光が遮られた剥離層2の溶解性は変化させない。このようにして、剥離層2をパターン形成する。ここでは、ポジ型のフォトレジストを用いて、露光により溶解性を増大させる。
【0032】
次に、図4(d)に示すように、パターン形成工程(S134)の現像工程(S104)を実施する。具体的には、露光により溶解性を増大させた剥離層2を、アルカリ溶液で溶解させた後、超純水などによりリンス処理を施す。これにより、剥離層2が一部除去され、基材1の表面15を、剥離層2から露出させる。
【0033】
図4(e)に示すように、接合膜形成工程(S105)を実施する。たとえば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)、プラズマPVD(Physical Vapor Deposition)、またはプラズマ重合法などにより、プラズマ重合膜で構成された接合膜3を形成する。
【0034】
具体的には、基材1、および基材1の表面15に形成された剥離層2を、気密に収納し、減圧雰囲気状態に置き、原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。
【0035】
原料ガスは、接合膜3の材料(原料液)を気化させたものであり、たとえば、オクタメチルトリシロキサン、メチルシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなポリオルガノシロキサンなどが一例として挙げられる。
【0036】
キャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、たとえば希ガスであるアルゴン(Ar)ガスまたはヘリウム(He)ガスなどが挙げられる。
【0037】
そして、高周波の電圧を印加することにより、キャリアガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、重合物が基材1の表面15に形成された剥離層2上、および剥離層2から露出した基材1の表面15に付着および堆積する。ここで、高周波の周波数および出力密度は、適宜決定することができる。
【0038】
これにより、図4(e)に示すように、基材1の表面15に形成された剥離層2上、および剥離層2から露出した基材1の表面15に、プラズマ重合膜で構成された接合膜3を形成する。このようにして、図1に示す転写体10を得る。
【0039】
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスおよびキャリアガスの種類や目的とする成膜速度などによって適宜決定することができ、重合膜の形成の条件の最適化を図ることができる。そして、減圧雰囲気状態の圧力は、適宜決定することができる。また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚などによって適宜決定することができる。処理時間は、適宜決定することができ、形成される接合膜3の厚さは、主に、この処理時間に比例し、この処理時間を調整することで、接合膜3の厚さを容易に調整することができる。
【0040】
本実施形態によれば、接合膜3に、大気圧下で酸素プラズマに曝す、または減圧雰囲気下で紫外線照射することなどで、エネルギーを付与することにより、一部の脱離基303がSi骨格301から脱離し、代わりに活性手304が出現するので、接合膜3の表面35に接着性を発現させることが可能な転写体を得ることができる。これにより、接合膜3を、被接合体と接合させることができる。この接合膜3は、薄くても十分な接合強度が得られるので、接合膜3に接合される被接合体から剥離するなどの不具合が生じることを防止することができる。
【0041】
なお、基材1に可撓性を有するシート状のものを用いれば、転写体10をロールで巻くことができ、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式により、連続的に接合膜3、または接合膜3とこの接合膜3に接する剥離層2とを、被接合体に転写させることができる。
【0042】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態の被転写体のエッチング方法について、図5から図7、および図2を参照して説明する。ここで、第2実施形態の被転写体のエッチング方法は、図1に示した第1実施形態の転写体10を用いるため、同様の構成については、同一の符号を付与し、構成の説明を省略する。
【0043】
図5に示すように、被転写体20は、被転写体20の表面25に、凹部21を備える。ここで、被転写体20は、第1実施形態において、接合膜3に接合される被接合体と記載したものに該当する。被転写体20は、たとえば水晶、ガラス、シリコンなどのシリコン系材料である。そして、被転写体20は、薄い基板、つまりウェハとする。
【0044】
図6に示すように、被転写体のエッチング方法は、接合膜活性化工程(S201)と、被転写体洗浄工程(S202)と、接合工程(S203)と、剥離工程(S204)と、エッチング工程(S205)と、除去工程(S206)とを備えている。図7には、図6に示したそれぞれの工程における被転写体のエッチング方法の一例を示している。
【0045】
図7(a)に示すように、接合膜活性化工程(S201)を実施し、接合膜3の表面35を活性化させる。具体的には、図2(a)に示す転写体10の接合膜3の表面35に、大気圧下で酸素プラズマに曝す、または減圧雰囲気下で紫外線照射することなどで、エネルギーを付与することにより、図2(b)に示すように、一部の脱離基303をSi骨格301から脱離させ、代わりに活性手304が出現する。これにより、接合膜3の表面35に接着性を発現させる。また、基材1の表面15から有機物などの異物を除去する。
【0046】
ここで、接合膜3の表面35を活性化させるとは、接合膜3の表面35および内部の脱離基303が脱離して、活性手304が出現することで、Si骨格301において終端化されていない未結合手(ダングリングボンド)が生じた状態や、この未結合手がヒドロキシ基(−OH)によって終端化された状態、または、これらの状態が混在した状態のことを言う。この活性手304によって、被接合体である被転写体20に対して、強固な接合が可能となる。
【0047】
次に、図7(b)に示すように、被転写体洗浄工程(S202)を実施する。具体的には、被転写体20の表面25に、紫外線照射、またはヘリウム(He)などの希ガスを用いた大気圧プラズマ処理などを施すことにより、被転写体20の表面25を洗浄する。
【0048】
ここでは、図7(a)の次に、図7(b)を実施するとして、図6に、接合膜活性化工程(S201)および被転写体洗浄工程(S202)の順で示したが、これに限るものではなく、被転写体洗浄工程(S202)の後に、接合膜活性化工程(S201)を実施してもよく、被転写体洗浄工程(S202)および接合膜活性化工程(S201)を、同時並行で実施してもよい。
【0049】
次に、図7(c)に示すように、接合工程(S203)を実施する。具体的には、接着性を発現させた接合膜3の表面35を、洗浄された被転写体20の表面25に合わせて、被転写体20と転写体10とをプレス機などにより押し付ける。そして、押し付ける圧力および時間などは、適宜決定される。このようにして、洗浄された被転写体20の表面25のヒドロキシ基(−OH)と、接合膜3の表面35に出現されている活性手304とが結合され、更に加圧することによって接合膜3の内部の活性手304をも使って3次元的に結合されることにより、被転写体20と転写体10とを接合させる。詳しくは、被転写体20と、剥離層2上に形成された接合膜3とを接合させる。
【0050】
そして、図7(d)に示すように、剥離工程(S204)を実施する。具体的には、接合された被転写体20と転写体10とから、基材1を引き剥がす。基材1と剥離層2との接合力に比べて、被転写体20と接合膜3との接合力が強固なため、基材1を引き剥がすことにより、被転写体20に接合された接合膜3と、この接合膜3に接する剥離層2とは、被転写体20に接合されたまま残ることにより転写され、エッチングマスクとして用いる。そして、基材1の表面15に形成された接合膜3は、基材1とともに、被転写体20から引き剥がされる。
【0051】
次に、図7(e)に示すように、エッチング工程(S205)を実施する。具体的には、被転写体20および被転写体20に接合または転写された接合膜3と、この接合膜3に接する剥離層2とをエッチングマスクとして用いて、フッ酸またはバッファードフッ酸などを用いて被転写体20をウェットエッチングする。
【0052】
これにより、図7(e)に示すように、被転写体20上に転写された接合膜3と、この接合膜3に接する剥離層2とから露出した被転写体20の表面25に、凹部21が形成される。
【0053】
最後に、図7(f)に示すように、除去工程(S206)を実施する。具体的には、表面がエッチングされた被転写体20、および被転写体20に接合または転写された接合膜3と、この接合膜3に接する剥離層2とを、有機系溶剤やアルカリ溶液を用いて除去する。
これにより、図7(f)に示すように、接合膜3に接する剥離層2と、被転写体20に接合または転写された接合膜3とを、それぞれ除去する。このようにして、図5に示したように、被転写体20の表面25に、凹部21を形成する。
【0054】
本実施形態によれば、接合膜3に、大気圧下で酸素プラズマに曝す、または減圧雰囲気下で紫外線照射することなどで、エネルギーを付与することにより、一部の脱離基303がSi骨格301から脱離し、代わりに活性手304が出現するので、接合膜3の表面35に接着性を発現させることができる。これにより、接合膜3を、被接合体と接合させることができる。この接合膜3は、薄くても十分な接合強度が得られるので、接合膜3に接合される被接合体から剥離するなどの不具合が生じることを防止することができる。
【0055】
そして、基材1に可撓性を有するシート状のものを用いれば、転写体10をロールで巻くことができ、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式により、連続的に接合膜3、または接合膜3とこの接合膜3に接する剥離層2とを、被転写体20に転写することができる。
【0056】
さらに、基材1と、基材1の表面15に塗布および硬化処理された剥離層2との接合力に比べて、被転写体20の表面25のヒドロキシ基(−OH)と、接合膜3の表面35に出現されている活性手304とが、結合された被転写体20と接合膜3との接合力は強固である。このため、基材1を引き剥がすことにより、被転写体20に接合された接合膜3と、この接合膜3に接する剥離層2とは、被転写体20に接合されたまま残ることにより転写され、これらをエッチングマスクとして用いる。そして、基材1の表面15に形成された接合膜3は、基材1とともに、被転写体20から引き剥がされる。このようにして、フォトリソグラフィを用いることなく、被転写体20の表面25に、レジストからなるエッチングマスクを形成するので、従来のようにクロム(Cr)および金(Au)などからなる膜を成膜することなく、現像液などを用いることもなく、エッチングすることができ、被転写体20の表面25に、凹部21を形成することができる。
【0057】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、図8、図9、図1、および図5を参照して説明する。
第3実施形態の転写シートは、図1に示した第1実施形態の転写シートと同様の構成であるが、製造方法が相違する。このため、同様の構成および工程については、同一の符号および工程名称を付与し、構成の説明を省略する。そして、第3実施形態の被転写体のエッチング方法は、第1実施形態の転写シートを用いた第2実施形態と同様の製造方法となるため、説明を省略する。
【0058】
第3実施形態の転写体の製造方法が、第1実施形態の転写体の製造方法と相違する点は、マスクを用いて接合膜形成工程(S105)を実施する点である。そのため、マスク配置工程(S301)およびマスク取外し工程(S302)を備え、第1実施形態のパターン形成工程(S134)、つまり露光工程(S103)および現像工程(S104)を備えないことが相違する点である。このため、図8に示すように、第3実施形態の転写体の製造方法は、基材洗浄工程(S101)と、マスク配置工程(S301)と、剥離層形成工程(S102)と、接合膜形成工程(S105)と、マスク取外し工程(S302)とを備える。図9には、図8に示したそれぞれの工程における転写シートの製造工程の一例を示している。
【0059】
図9(a)に示すように、第1実施形態の転写体の製造方法と同様に、基材洗浄工程(S101)を実施する。
【0060】
その後、図9(b)に示すように、マスク配置工程(S301)を実施する。具体的には、2点鎖線で示したマスク50を、基材1の表面15に配置する。マスク50は、2点鎖線で示した開口部51を備えている。マスク50は、ステンレスまたは硬質な樹脂フィルムなどからなる。
【0061】
次に、図9(c)および(d)に示すように、第1実施形態の転写体の製造方法と同様に、剥離層形成工程(S102)および接合膜形成工程(S105)を順次実施する。これにより、マスク50上、およびマスク50の開口部51から露出した基材1の表面15に、剥離層2および接合膜3を形成する。
【0062】
最後に、図9(e)に示すように、マスク取外し工程(S302)を実施する。具体的には、2点鎖線で示したマスク50を、基材1の表面15から取り外すことで、マスク50上に形成された剥離層2および接合膜3を取り除く。これにより、図9(e)に示すように、基材1の表面15に剥離層2を形成し、剥離層2上に接合膜3を形成する。このようにして、図1に示す転写体10を得る。ただし、剥離層2から露出した基材1の表面15上には接合膜3が形成されない点が図1とは異なっている。
【0063】
そして、第2実施形態を実施することにより、図5に示したように、被転写体20の表面25に、凹部21を形成する。
【0064】
本実施形態によれば、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0065】
なお、上記課題の少なくとも一部を解決できる範囲での変形、改良などは前述の実施形態に含まれるものである。
【0066】
たとえば、転写体10は、可撓性を有する基材1を備える例を説明したが、これに限るものではなく、硬質な基材1を備えたリジッド(Rigid)タイプであってもよい。この場合、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式に代えて、転写体10を順次供給して、接合膜3、または接合膜3とこの接合膜3に接する剥離層2とを、被転写体20に転写することができる。
【0067】
上述の実施形態は、ポジ型のフォトレジストを用いて説明したが、これに限るものではなく、ネガ型のフォトレジストを用いてもよい。また、ウェットエッチングを用いて説明したが、これに限るものではなく、ドライエッチングを用いてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…基材、2…剥離層、3…接合膜、9…フォトマスク、10…転写体、15…基材の表面、20…被転写体、21…凹部、25…被転写体の表面、35…接合膜の表面、50…マスク、51…開口部、301…Si骨格、302…シロキサン結合、303…脱離基、304…活性手。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上にパターン形成された剥離層と、
前記剥離層上に形成された接合膜と、を備えることを特徴とする転写体。
【請求項2】
請求項1に記載の転写体において、
前記接合膜は前記剥離層から露出した前記基材上にも形成されていることを特徴とする転写体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の転写体において、
前記接合膜は、プラズマ重合膜で構成され、シロキサン結合を含む原子構造と、前記シロキサン結合に結合し有機基からなる脱離基と、を含むことを特徴とする転写体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の転写体において、
前記基材は、可撓性を有するシートであることを特徴とする転写体。
【請求項5】
基材上に剥離層を形成する剥離層形成工程と、
前記剥離層をパターン形成するパターン形成工程と、
前記剥離層上に接合膜を形成する接合膜形成工程と、
前記接合膜を活性化させる接合膜活性化工程と、
活性化させた前記接合膜の表面を、被転写体の表面に合わせて、前記被転写体と前記剥離層上に形成された前記接合膜とを接合させる接合工程と、
接合された前記被転写体と前記接合膜および前記剥離層とから、前記基材を引き剥がす剥離工程と、
前記被転写体および前記被転写体に接合された前記接合膜と、前記接合膜に接する前記剥離層とをエッチングマスクとして用いて、前記被転写体をエッチングするエッチング工程と、
前記接合膜に接する前記剥離層と、前記被転写体に接合された前記接合膜とを、除去する除去工程とを備えることを特徴とするエッチング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−142151(P2011−142151A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1001(P2010−1001)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】