農作業機
【課題】圃場の凹凸を検出しこれを均平にする。
【解決手段】代掻き作業機1は、走行機体に装着されて走行機体の走行に伴って進行し、走行機体からの動力によって回転するロータリ作業部13を備える。ロータリ作業部13の上方にシールドカバー15を設け、このカバー部の後端部にエプロン29を上下方向に回動可能に設け、エプロン29の後端部にレベラ31を上下方向に回動可能に設ける。ロータリ作業部13の前側に機体幅方向一端部から他端部間に亘って延びて上下方向に移動自在に支持された整地板23を設け、整地板23を移動自在に支持するリンク部材19に整地板23の上下移動から圃場の凹凸の高さを検出する凹凸検出センサ25を設ける。エプロン29は回動シリンダ51によって回動可能であり、凹凸検出センサ25によって検出された検出値に基づいて回動制御装置60が回動シリンダ51の作動を制御してエプロン29の傾き角度を調節する。
【解決手段】代掻き作業機1は、走行機体に装着されて走行機体の走行に伴って進行し、走行機体からの動力によって回転するロータリ作業部13を備える。ロータリ作業部13の上方にシールドカバー15を設け、このカバー部の後端部にエプロン29を上下方向に回動可能に設け、エプロン29の後端部にレベラ31を上下方向に回動可能に設ける。ロータリ作業部13の前側に機体幅方向一端部から他端部間に亘って延びて上下方向に移動自在に支持された整地板23を設け、整地板23を移動自在に支持するリンク部材19に整地板23の上下移動から圃場の凹凸の高さを検出する凹凸検出センサ25を設ける。エプロン29は回動シリンダ51によって回動可能であり、凹凸検出センサ25によって検出された検出値に基づいて回動制御装置60が回動シリンダ51の作動を制御してエプロン29の傾き角度を調節する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走行機体の後方に装着され、走行機体から伝達される動力によってロータリ作業部を回転させながら走行機体の走行とともに進行して圃場の耕耘作業を行う農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
このような農作業機80は、特許文献1に記載されており、図11(側面図)に示すように、ロータリ作業部13の上部を覆うカバー部81の後方に整地体82を上下方向に回動自在に設けて構成されている。走行機体90であるトラクタには、油圧作動機構を内蔵した油圧ケース91が設けられ、この油圧ケース91には、上下方向に回動可能なリフトアーム92が設けられている。このリフトアーム92の上下回動によって農作業機80全体が昇降される。
【0003】
この従来の農作業機80では、圃場の作業深さを一定にするために、整地体82の上下動を整地体82に取り付けられたセンサロッド83、センサアーム84等を介して検出し、整地体82の上下動に応じてリフトアーム92を上下方向に回動させて作業機全体の位置を上下調節するように構成されている。このように、整地体の上下動をセンシングし作業機全体を上下位置調節する技術は古くから利用され、現在でも耕深調節の基本技術として広く用いられている。
【0004】
【特許文献1】実開昭55−23017
【0005】
また、圃場のうねりを検出するセンサをロータリ作業部よりも前方へ配置した農作業機100は、特許文献2に記載されており、図12(側面図)に示すように、ロータリ作業部13の上部を覆うカバー部101の後方にエプロン102を上下方向に回動自在に設けて構成されている。走行機体90であるトラクタには、油圧シリンダ103が設けられ、油圧シリンダ103には、上下方向に回動可能なリフトアーム92が設けられている。このリフトアーム92の上下回動によって農作業機100全体が昇降される。
【0006】
この従来の農作業機100では、ロータリ作業部13の前方で且つ走行機体90の後輪93が通過した跡の位置にセンサ105を配置している。そしてセンサ105の枢支部に設けた角度検出器106により、センサ105の上下変位を電気的に検出すること等で油圧シリンダ103を伸縮作動させて農作業機100全体を自動昇降させながら対地作用深さの安定化を図っている。
【0007】
【特許文献2】実開昭55−149313
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されているような従来の農作業機は、耕耘作業後に、エプロンの上下動を検出し作業機全体の昇降制御が行われ、耕耘作業深さが一定になるよう制御される。こうした構造の農作業機では、圃場のうねりに追従して作業機の耕耘深さを一定に保つことは可能である。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の農作業機では、耕耘作業後の圃場高さをセンシングしているため、耕耘作業前の比較的小さな凹凸、例えば稲株や耕耘土が寄せ集められた圃場表面の盛り上がりや、畦際でのトラクタ切り返しにより発生する圃場の凹凸などは、エプロンで検出する前にロータリ作業部によりある程度耕耘されてしまう。さらに、エプロンという重量物の回動による検出方法であるため、それを検出できなかったり、あるいは、検出できたとしても感度の低い検出にならざるを得ない。このように従来技術では、圃場のうねりに追従しながら耕耘深さを一定にすることはできる。しかし、耕耘深さは一定に保たれても、圃場を均一にならすという直接的な効果を奏することはない。つまり、従来技術ではエプロンで検出したうねりにならって作業機全体を上下動させ、耕耘深さを一定に保つものであり、圃場の高い部分である凸部の土を削り取り、その削り取った土を圃場の低い部分である凹部へ埋めて圃場を均一平面にするという効果を奏さない。このままでは、水田における田植え作業を行う場合には、苗を植えつける場所によって水深がまちまちになり、苗の育成状態に差ができて米の品質や収量が不安定になるという問題点がある。
【0010】
また、特許文献2に記載されているような従来の農作業機は、ロータリ作業部前方にセンサを配置し圃場のうねりを検出した後、やはり特許文献1と同様に、作業機全体の昇降制御が行われ、耕耘作業深さが一定になるよう制御されるものである。こうした構造の農作業機では、後輪で踏み均した後の圃場のうねりを検知するため、安定した一定の耕耘深さを保つのに有効な構成である。
【0011】
しかしながら、特許文献2に記載の農作業機は、特許文献1に記載の作業機と同様に、昇降制御される対象はやはり作業機全体である。この構造では、圃場のうねりにならい、作業機全体が追従しながら耕耘深さを一定に保つことはできる。その結果、耕耘深さは一定に保たれても、圃場を均一にならすという効果を奏することはない。つまり、特許文献2に記載の農作業機は、特許文献1に記載の農作業機と同様に、圃場の高い部分である凸部の土を削り取り、その削り取った土を圃場の低い部分である凹部へ埋めて圃場を均一平面にするという効果を奏することはない。さらに、特許文献2に記載の農作業機は、トラクタ車輪の通過した跡、すなわち圃場表面ではなくトラクタ車輪によって踏み固められた深い部分にセンサが配置されているために、圃場のうねりを形成する基礎となる耕盤付近を検出対象とすることとなり、稲株や耕耘土が寄せ集められた圃場表面の盛り上がりや、畦際でのトラクタ切り返しにより発生する圃場の凹凸などそうした圃場表面の凹凸(高低)をそもそも検出しにくいという問題点があるため、前述したように水田における田植え前の代掻き作業など、精度の高い均一平面の形成が求められる耕耘作業には必ずしも適しているとはやはりいえない。
【0012】
本発明は、耕耘深さを一定に保つとともに、水田における代掻き作業などに必要な精度の高い均一平面の形成を達成できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。特徴の一つは、走行機体から取り出された動力によって回転するロータリ作業部を設け、ロータリ作業部の上方にカバー部(例えば、実施形態におけるシールドカバー15)を設け、カバー部の後方に整地体をカバー部に対し上下方向に回動可能に設けた農作業機(例えば、実施形態における代掻き作業機1)であって、ロータリ作業部よりも前方に配設されて圃場の凹凸高さを検出する凹凸検出手段(例えば、実施形態における凹凸検出センサ25)と、整地体を回動させる回動手段(例えば、実施形態における回動シリンダ51)と、凹凸検出手段によって検出された検出結果に基づいて回動手段の作動を制御する回動制御手段(例えば、実施形態における回動制御装置60)とを有することを特徴とする。
【0014】
この特徴によれば、凹凸検出手段をロータリ作業部よりも進行方向前方に配設し、凹凸検出手段によって検出された凹凸の高さに基づいて回動手段の作動を制御する構成とすることにより、ロータリ作業部による耕耘作業の前に圃場の凹凸の高さを検出し、この検出値に基づいて回動制御手段によって回動手段の作動を制御して、整地体の傾き角度を調節する。このため、整地体の傾き角度の変動を予め予期した状態で整地体の角度を調節することができる。つまり、ロータリ作業部が耕耘作業を行おうとする未耕地の凸部を凹凸検出手段が検出すると、その検出値が回動制御手段に送られ、回動制御手段は、その検出値の大きさに応じて回動手段の制御量を調節し、整地体を検出値に応じた角度に立てた状態にする。整地体を立てた状態にすることで整地体下部からの土の吐き出し量を小さくできるため、凸部の土を整地体でより多く抱き込むことが可能になり、ロータリ作業部と整地体との間で土を抱き込んだまま、走行機体の進行に伴いその土を前方へと運んでいく。そして、凹凸検出手段が未耕地の凹部を検出すると、その検出値が回動制御手段に送られ、回動制御手段は、その検出値の大きさに応じて回動手段の制御量を調節し、整地体を検出値に応じた角度に傾いた状態にする。そうすると、抱き込み運ばれてきた土は傾いた整地体の下部から徐々に吐き出され凹部を埋める。この凹凸検出手段による凹凸の検出から、その検出量に応じた整地体の制御を行うまでの時間に、作業機全体が前進している。よって検出直後に整地体を制御するのではなく、作業機全体の進行スピードに合せ、凹凸部に整地体が作用するタイミングがちょうど合うように、作業機の進行スピードに応じた制御反応時間が回動制御手段でうまくコントロールされている。さらに、整地体が抱き込んだ土の量に応じても制御反応時間が回動制御手段でうまくコントロールされている。このようにして、凸部、凹部の検出量に応じて整地体を回動させることで、圃場表面の均一平面形成を優れた精度で行うことができる。
【0015】
また特徴の一つは、回動制御手段は、凹凸検出手段によって検出された値が基準値を超えると、回動手段を制御して整地体の上方への回動を規制し、基準値以下になると整地体の回動規制を解除することを特徴とする。
【0016】
この特徴によれば、凹凸検出手段によって検出された値が基準値を超えると、整地体の上方への回動が規制される。つまり、凹凸検出手段によって検出される値が基準値を超えるまでは回動制御手段は圃場表面の凹凸を認識しない。このようにわずかな凹凸は認識しない不感帯を回動制御手段に持たせたり、あるいは、凹凸検出手段に所定の大きさの凹凸量が発生するとはじめて凹凸を認識するリミットスイッチのような構造を採用することで、基準値を超える大きな凹凸に対し、凸部を検知した場合には、カバー部に対し回動可能に設けられている整地体の上方回動を規制するので、整地体が凸部に乗り上がろうとしても、整地体はそれに抗し上方回動しないために、整地体が凸部の土を削り取る格好となる。そして整地体前方に削り取った土が寄せ集められ、その土を抱き込んだまま作業機全体が走行機体とともに前進していくことで、圃場表面の凸部がなくなる。そしてその後、凹凸検出手段によって検出される値が基準値以下になる、例えば作業機が土を寄せ集めながら凸部を通過した後、圃場表面が凹部であることを検知した場合には、整地体の回動規制を解除する。そうすることで、整地体は上方回動自在となり、作業機の前進に伴い、作業機が抱き込んでいる土が整地体の自重による下方回動に抗しながら下部から徐々に吐き出される。そうすることで凸部の土が圃場全体的に均される。この場合にもやはり、作業機全体の進行スピードに合せた制御反応時間が回動制御手段でうまくコントロールされる、さらに、整地体が抱き込んだ土の量に応じても制御反応時間が回動制御手段でうまくコントロールされることで、圃場表面の均一平面形成を優れた精度で行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記特徴を有することにより、耕耘深さを一定に保つとともに、水田における代掻き作業など精度の高い均一平面の形成が求められる耕耘作業が可能な農作業機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。代掻き作業機1は、図1(側面図)、図2(平面図)及び図3(背面図)に示すように、左右方向に延びる主フレーム3を有した機体5の前部に、走行機体90の後部に設けられた図示しない3点リンク連結機構に連結されるトップマストとロアーリンク連結部を設けて、走行機体90の後部に対して昇降可能に装着される。主フレーム3の左右方向の中央部には前方へ突出する入力軸9aを備えたギアボックス9が設けられ、走行機体90のPTO軸からユニバーサルジョイント等の動力伝達手段を介して動力が入力軸9aに伝達されるようになっている。
【0019】
主フレーム3の左側端部には、チェーン伝動ケース11が垂設され、主フレーム3の右側端部には側部フレーム12がチェーン伝動ケース11と対向して垂設されている。チェーン伝動ケース11に接続された主フレーム3の左側部及びチェーン伝動ケース11内には伝動機構が設けられ、チェーン伝動ケース11と側部フレーム12の下端部間に多数の耕耘爪を取り付けたロータリ作業部13が回転自在に設けられている。そして、入力軸9aに伝達された動力は、ギアボックス9を介して主フレーム3及びチェーン伝動ケース11内の伝動機構に伝達されて、ロータリ作業部13を所定方向に回転させる。
【0020】
ロータリ作業部13の上側はシールドカバー15によって覆われ、このシールドカバー15の左右方向両端部には一対の側部カバー17が設けられている。各側部カバー17の前端部には、上下方向に配置された一対のリンク部材19を介してサイドカバー20が設けられ、サイドカバー20の内側には取付部材22を介して凹凸検出手段の一部を構成する整地板23が取り付けられている。
【0021】
整地板23は、代掻き作業機1の機体幅方向一端部と他端部間に亘って延び、左右に一対のサイドカバー20を介して上下方向に移動可能に支持されている。上下に配置された一対のリンク部材19は、側部カバー17とサイドカバー20との間で平行リンクを構成するように配設されて、整地板23は略水平状態のままで上下方向に移動可能である。取付部材22は、サイドカバー20の内側面に取り付けられて左右方向内側に延びる一対の支持部材22aを有してなる。支持部材22aの下面に整地板23の上面が接合されて、取付部材22と整地板23とが一体化している。整地板23は、平面視において矩形状をなし、前側端部は上方へ屈曲して斜め上方へ延びている。
【0022】
リンク部材19と側部カバー17との間には、圃場の凹凸によって上下移動する整地板23に接続されたリンク部材19の回動角度から圃場の凹凸高さを検出する凹凸検出センサ25が設けられている。凹凸検出センサ25はポテンショメータであり、リンク部材19の回動角度を電圧信号に変換する。この凹凸検出センサ25は、後述するエプロン29の傾き角度を制御する回動制御装置60に電気的に接続されている。
【0023】
シールドカバー15の後端部には、前端部が上下方向に回動自在に取り付けられて後端側が斜め下方に延びる整地体の1つであるエプロン29が取り付けられている。エプロン29の後端部29aは左右方向に略直線状に形成されて、耕土表面を平らに整地する。エプロン29の後端部には、もう一つの整地体であるレベラ31が上下方向に回動自在に取り付けられて、レベラ31はその下面が接地して耕土表面を均平にする。レベラ31の左右端部には、折り畳み可能に回動自在に取り付けられて整地作業を延長する延長レベラ32が設けられている。代掻き作業機1の幅方向中央部には、レベラ31とシールドカバー15との間に配置されてレベラ31の支持角度を調整するレベラ角度調整機構33が設けられている。
【0024】
機体5の左右両端部よりも中央部側のエプロン29の背面とシールドカバー15の上面との間には、エプロン29の傾き角度を調節する角度調節装置40が設けられている。この角度調節装置40は、図4(平面図)を更に追加して説明すると、前後方向に延びてエプロン背面側に配置されたロッド部41と、ロッド部41の前端部の前側への移動を規制する位置の調整を行う位置調整部45を備える。ロッド部41は、その後端部がエプロン29の背面に取り付けられた支持部材35に対して回動且つ摺動可能に取り付けられ、前端部に設けられたピン部材42が位置調整部45に設けられた長孔部46に沿って移動可能に取り付けられている。
【0025】
支持部材35は、左右方向に対向して配設された一対の支持板35aを備え、これらの支持板35a間に円柱状の回動部36を回動自在に取り付けて構成されている。この回動部36にロッド部41の後端部が摺動可能に挿通し、ロッド部41の中間部に取り付けられたピン43と回動部36との間のロッド部41にコイルばね44を装着して、エプロン29が背面側へ回動すると、コイルばね44を圧縮してエプロン29の背面側への回動を抑制している。ロッド部41の中間部にはピン43を挿着するための挿着孔がロッド部41の軸方向に所定間隔を有して複数設けられており、ピン43の挿着位置を変更すると、自然長に延びるコイルばね44とピン43との隙間の大きさ調整が可能となって、エプロン29がフリーで回動できる範囲の調整が可能になる。なお、ここではこのようにロッド部41にコイルばね44を装着したものを例示するが、コイルばね44のないロッド部41を採用した場合でも、本発明の本質である圃場の均平仕上げを何ら損なうものではない。
【0026】
ロッド部41の前端部に設けられた前述のピン部材42は、その左右両端部がロッド部41から突出した状態で取り付けられ、この突出した左右一対のピン部材42が位置調整部45に対向配置された長孔部46に挿通されて、ロッド部41の前端部が前後方向に移動可能に支持されている。
【0027】
位置調整部45は、シールドカバー15に取り付けられた本体部47と、本体部47に前後方向に回動自在に取り付けられてロッド部41のピン部材42と当接してロッド部41の前側端部の前側への移動を規制する位置を調節するアーム49と、本体部47の上部に取り付けられてアーム49を回動させる回動シリンダ51とを有してなる。本体部47は、左右方向に対向して配置された一対の本体側支持板47aを備え、各本体側支持板47aに前述した長孔部46が前後方向に延びた状態で設けられている。この一対の本体側支持板47a間に前述したロッド部41の前側端部が配置されている。
【0028】
一対の本体側支持板47a間の上部には、ロッド側を後方側に配置し、ボトム側を前側に配置した回動シリンダ51が固定された状態で取り付けられている。回動シリンダ51のロッド側先端部には、平面視においてU字状の連絡部材52が取り付けられている。この連絡部材52の先端部は、一対の本体側支持板47aの各外側上端部に前後方向に回動自在に取り付けられたアーム49の中間部に回動自在に取り付けられている。このため、回動シリンダ51が伸長すると、アーム49はその下側が後方側に回動し、また、回動シリンダ51が縮小すると、アーム49はその下側が前方側に回動する。回動シリンダ51は油圧式や電動式のいずれのものでもよい。
【0029】
アーム49は、その下側が長孔部46よりも下方位置まで延び、ロッド部41のピン部材42と接触する接触部49aを有している。そして、接触部49aをピン部材42に接触させた状態で回動シリンダ51の伸縮をロックすると、アーム49はロック状態となり、ピン部材42の前側への移動を規制することができる。
【0030】
アーム49は、回動シリンダ51が略全伸長状態になると、接触部49aが長孔部46の後端位置の近傍に移動してピン部材42を長孔部46の後端位置に移動させ、回動シリンダ51が略全縮小状態になると、接触部49aが長孔部46の前端位置の近傍に移動するように形成されている。回動シリンダ51の伸縮は、後述する回動制御装置60によって制御される。
【0031】
回動制御装置60は、操作スイッチ61と電気的に接続されており、操作スイッチ61の操作によって作動する。また、回動制御装置60は、凹凸検出センサ25と電気的に接続され、操作スイッチ61がON操作されると、詳細については後述するが、凹凸検出センサ25からの検出値に応じて回動シリンダ51の伸縮を制御する。操作スイッチ61は、走行機体90に搭乗した作業者が操作できる範囲内に配設されていればよく、走行機体90の運転席や代掻き作業機1の前側部分でもよい。
【0032】
回動制御装置60は、凹凸検出センサ25からの検出値を受け取ると、検出値が予め設定された許容範囲を有した基準値を超えたか否かを判断し、検出値が基準値の上限を超えていると、回動シリンダ51を伸長させてピン部材42が長孔部46の後端側に位置するようにアーム49を後方側へ回動させるとともに、ピン部材42が長孔部46の所定の位置で保持されるように回動シリンダ51の伸縮を規制する。その結果、エプロン29は圃場表面に対して大きい傾き角度θで傾いた状態に保持される。一方、検出値が基準値以下であるときは、図5(側面図)に示すように、回動シリンダ51を縮小させてアーム49を前方側へ回動させて、ロッド41の先端部を何ら規制されていない状態にしてエプロン29をフリーな状態にする。したがって、エプロン29は、代掻き作業機1の前進に伴って圃場表面を均一平面に形成可能な姿勢になる。
【0033】
次に、このように構成された代掻き作業機1によって、圃場に存在する凹凸を均平にする場合の代掻き作業機1の動作について説明する。まず、走行機体90に代掻き作業機1を連結するとともに、走行機体90のPTO軸に図示しない動力伝達軸を介して入力軸9aを連結する。そして、整地板23を下方へ移動させて整地板23の下面を圃場表面に接触させる。そして、図1に示すように、操作スイッチ61をON操作してエプロン29の回動調節が可能な状態にする。そして、走行機体90を前進させるとともに、走行機体90からの動力を代掻き作業機1に伝達させて、ロータリ作業部13を所定方向に回転させる。
【0034】
代掻き作業機1が前進走行しているときに、整地板23が凸部に接触すると、整地板23はサイドカバー20及びリンク部材19を介して上方へ移動し、凹凸検出センサ25によってリンク部材19の回動角度から凸部の高さが検出される。そして、検出された凸部の高さが許容範囲を有した基準値の上限値を超えると、回動制御装置60は、回動シリンダ51を伸長させてアーム49を介してロッド部41のピン部材42を長孔部46の後端部に移動させ、そして、回動シリンダ51の伸縮を規制してピン部材42の位置を保持する。その結果、エプロン29はより傾きの大きい状態に維持される。したがって、ロータリ作業部13の進行方向前側に存在する凸部は、ロータリ作業部13の耕耘爪によって崩された後、エプロン29の後端部によって水平に削り取られて均平にされ、そしてレベラ31によってさらに圃場表面が滑らかに均一にされる。
【0035】
一方、凹凸検出センサ25によって検出された凹部の高さが許容範囲を有した基準値の下限値以下であるときには、回動制御装置60は回動シリンダ51を縮小させてアーム49を前側に回動し、ロッド部41の上端部をフリーな状態にする。その結果、エプロン29は代掻き作業機1の前進に伴って圃場表面に対する傾き角度θが小さい状態で移動する。このため、エプロン29によって凹部の直前まで引かれた土が凹部に供給されて、凹部は均平にされる。
【0036】
ところで、図6の(a)は、従来技術の概略を側面視で表わしたイメージ図であり、作業機全体を上下調節することで、圃場Fのうねりに作業機全体を追従させている。そうすることで、一定の耕深hを保ちながら作業機は前進する。つまり、作業機通過後の圃場は必ずしも均一平面にはならない。一方で、図6の(b)は、本発明の概略を側面視で表わしたイメージ図であり、凸部をロータリ作業部13で耕耘した直後に、傾き角度θが調節されたエプロン29で圃場表面の土を削り取り、凹部へその土を埋め戻す様子を表している。つまり、作業機の通過後、圃場Fは均一平面になり、従来技術では達成できなかった精度の高い均一平面の形成を実現している。
【0037】
このように、本願発明に係わる代掻き作業機1は、ロータリ作業部13よりも進行方向前方に圃場の凹凸の高さを検出する凹凸検出センサ25を配設し、凹凸検出センサ25の検出値に基づいて回動シリンダ51の伸縮を制御してエプロン29の傾き角度を調節することで、圃場表面の凹凸を均平にすることができる。また整地板23は機体5の一端側から他端側に亘って延びているので、耕耘幅全体に亘って圃場の凹凸検出が可能であり、圃場表面を均平にする作業の精度を高くすることができる。
【0038】
なお、前述した実施の形態では、凹凸検出センサ25によって検出された検出値が基準値の下限値以下になると、エプロン29がフリーな状態になるよう回動シリンダ51を縮小作動させるように制御してエプロン29が圃場表面に対する傾き角度θの小さい状態になるようにしたが、この小さい傾き角度θのままでエプロン29の回動を規制してもよい。
【0039】
この場合には、図1に示すアーム49の先端部に孔(図示せず)を設け、この孔にピン部材42を回動自在に挿入し、アーム49とピン部材42を回動可能に連結した状態にする。そして、凹凸検出センサ25によって検出された検出値が基準値の下限値以下になると、回動シリンダ51を縮小させてエプロン29を圃場表面に対して小さな傾き角度θにするとともに、その状態で回動シリンダ51の伸縮動作を規制する。その結果、エプロン29がフリーな状態にあるときと比較して、エプロン29によって抱き込まれている土は、凹部で一気に吐き出されるのではなく、エプロン29の後方への回動が規制された状態であるために、エプロン29の下部から一気にではなく走行機体90の前進に伴い少しずつ吐き出される。このため、圃場全体の均平仕上げをより確実なものとすることができる。
【0040】
また、アーム49の先端部にピン部材42を介してロッド部41の前端部を回動自在に連結した場合、凹凸検出センサ25によって検出された検出値に応じて回動シリンダ51の伸縮量を変化させてエプロン29の傾き角度を調節するようにしてもよい。この場合には、凹凸検出センサ25によって検出された検出値に応じた回動シリンダ51の伸長量を予め記憶させておき、検出値に対応したシリンダ伸長量を選択し、選択したシリンダ伸長量になるように回動シリンダ51の伸縮を制御する。このように、検出値に応じて回動シリンダ51の伸縮量を制御することで、検出された凹凸の高さに応じてエプロン29の傾き角度の変動を凹凸ごとに予め予期した状態で調節することができ、圃場表面を均平にする精度を高くすることができる。
【0041】
また、前述した実施の形態では、凹凸を検出する凹凸検出センサ25を設けた整地板23がロータリ作業部13の幅方向全体に亘って延びたものを示したが、図7(平面図)及び図8(平面図)に示すように、整地板23',23''を、ロータリ作業部13の機体幅方向中央部や機体幅方向外側に設けてもよい。
【0042】
図7に示す代掻き作業機1には、ロータリ作業部13の幅方向中央部に整地板23'が設けられ、ロータリ作業部13の機体幅方向両側に整地板23''が設けられている。幅方向中央部に設けられた整地板23'は、この幅方向長さWsが機体5の幅Woより短くなるように構成され(図面ではWs=約1/7Wo)、図2に示す整地板23と同様に、サイドカバー20に対応するサイド板64及びリンク部材19を介して上下方向に移動可能に支持されている。リンク部材19の後端部は、シールドカバー15の前端部に枢結されている。リンク部材19の後端部とシールドカバー15との間には凹凸検出センサ25が取り付けられ、この凹凸検出センサ25によってリンク部材19の回動角度から圃場の凹凸高さが検出される。リンク部材19、サイド板64の取り付け構造は、図1に示す整地板23の場合に準じるのでその説明は省略する。
【0043】
機体幅方向両側に設けられた整地板23''は、側部カバー17に取り付けられて平行リンクを構成するリンク部材19を介してサイドカバー20に取り付けられており、略水平状態のままで上下方向に移動可能に設けられている。
【0044】
この整地板23''は、ヒンジ部21を介してサイドカバー20に取り付けられている。ヒンジ部21は、サイドカバー20の外側面に沿って取り付けられた軸部材21aと、軸部材21aの両端部に回動自在に嵌合して取り付けられて左右方向外側に伸びる一対の支持部材21bとを有してなり、支持部材21bの下面に整地板23''の上面が接合されて、支持部材21bと整地板23''とが一体化している。
【0045】
そして、整地板23''は、軸部材21aを中心として下方へ回動すると、整地板23''の内側端部がサイドカバー20の底面に当接して下方への回動が規制されて、略水平方向に延びた状態に保持されて整地作業が可能な姿勢(以下、「作業可能姿勢」と記す。)になり、また整地板23''は、上方に回動すると、略垂直状態の姿勢となって格納される。ヒンジ部21の軸部材21aには、図示しないねじりコイルばね等の付勢手段が設けられ、この付勢手段によって整地板23''は作業可能姿勢に維持される。
【0046】
また整地板23''は、平面視において矩形状をなし、前側端部は上方に屈曲して斜め上方へ延びるとともに、ロータリ作業部13側へ傾斜する案内面23aを形成している。つまり、案内面23aは、整地板23''が作業可能姿勢に保たれると、斜め前側に延びるとともに、内側に進むにしたがって漸次後方側へ傾斜するように直線的に延びる。このため、案内面23aの前方にわらWが横たわっているときに、案内面23aが前側方向に進行すると、わらWを案内面23aに沿ってロータリ作業部13側に強制的に移動させることができる。
【0047】
その結果、ロータリ作業部13の幅方向端部周辺の圃場表面にわらWが存在すると、このわらWは、整地板23の案内面23aに沿ってロータリ作業部13側に流れる泥水とともに強制的にロータリ作業部13側に移動し、そしてロータリ作業部13の耕耘爪によって耕土内にすき込まれる。
【0048】
なお、案内面23aは、湾曲状に形成されてもよい。また、ボルト・ナット等の締結手段によって整地板23''をサイドカバー20に締結して作業可能姿勢に保たれた整地板23''をサイドカバー20に固定してもよい。
【0049】
このように、凹凸検出センサ25を有した整地板23',23''を機体5の幅方向両外側に配設するとともに幅方向中央部に配設することにより、圃場に存在するわらWをロータリ作業部13側に導くことができるとともに、圃場表面を均平にする精度を高めることができる。
【0050】
なお、図8(平面図)に示すように、前述した幅方向中央部に設けられた整地板23'を取り除き、機体5の幅方向両外側にのみ凹凸検出センサ25を有した整地板23'を設けてもよい。このようにすると、圃場に存在するわらWをロータリ作業部13側に導くことができるとともに、凹凸検出センサや部品点数を低減してコストダウンを図ることができる。
【0051】
また、前述した実施の形態では、凹凸検出センサ25を設けたものを整地板として板状部材であるものを説明してきたが、もちろんこうした板状部材に限るものではなく、円筒状のローラや、車輪などの他の形態のものとしてもよい。さらに、これまで凹凸の検出方法は、圃場表面と整地板が接触し、その整地板の上下動を検出する方法を説明してきたが、凹凸検出センサはこうした接触式センサに限られるものではなく、レーザーを圃場表面に照射し、その反射波を検知することで圃場の凹凸高さを検出するといった非接触式センサを採用しても、同様の作用効果を奏することができる。
【0052】
また、前述した実施の形態では、回動制御装置60は、凹凸検出センサ25からの検出値を受け取った後、回動シリンダ51を伸縮させてエプロン29の傾き角度を調節する場合を示したが、図9(側面図)及び図10(側面図)に示すように、回動制御装置60がレベラ31の傾き角度を調節するようにしてもよい。
【0053】
この場合、レベラ31の上部に上下方向に延びる連結部材70の下部を回動自在に連結し、連結部材70の上部と、主フレーム3に固定されて後方側へ延びる支持ブラケット71の後端部との間に、リンク部材72を回動自在に設け、リンク部材72の中間部から下方へ突出する凸部72aの先端部に、横方向に突出する係止突出片73を取り付け、支持ブラケット71に係止突出片73と係合可能な係合部材75を回動自在に取り付け、係合部材75の前端部に主フレーム3等に支持された回動シリンダ51'のロッド先端部を回動自在に取り付ける。そして係合部材75の後端側に係止突出片73と係合可能な切り欠き部75aを設ける。
【0054】
そして回動シリンダ51'は、ボトム側を前方側にロッド側を後方側に配置した状態で前後方向に延設し、回動シリンダ51'が全縮小状態(図10に示す状態)になると、係合部材75が上方へ回動して、切り欠き部75aを介して係止突出片73が上方へ移動して、係止突出片73が切り欠き部75aに対して非係合状態となって、リンク部材72及び連結部材70を介してレベラ31の上下回動がフリーな状態になる。一方、回動シリンダ51'が全伸長状態(図9に示す状態)になると、係合部材75が下方へ回動して、係止突出片73が切り欠き部75aに係合して、レベラ31の上方への回動が規制され、リンク部材72及び連結部材70を介してレベラ31が下方へ延びた状態でロックされる。
【0055】
このように、圃場に凸部が検出されると、回動シリンダ51'が伸長して、レベラ31が下方へ延びてロック状態にされ、レベラ31の底面によって凸部の土が削り取られる。従って、削り取った土を抱き込んだまま作業機全体が走行機体とともに前進していくことで、圃場表面の凸部を均平にすることができる。そして、凹凸検出手段によって検出された値が基準値以下になった場合には、回動シリンダ51'が縮小することで、レベラ31の回動規制が解除される。そうすることで、レベラ31は上方への回動が自在となり、作業機の前進に伴い、作業機が抱き込んでいる土がレベラ31底面下から吐き出される。そうすることで凸部の土が凹部に供給され圃場の表面全体を均平にすることができる。したがって、このようにレベラ31の傾き角度を調節するようにしても、エプロン29の傾き角度を調節可能にする場合と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる代掻き作業機の側面図を示す。
【図2】本発明の一実施の形態に係わる代掻き作業機の平面図を示す。
【図3】本発明の一実施の形態に係わる代掻き作業機の背面図を示す。
【図4】この代掻き作業機の角度調節装置を説明するための平面図を示す。
【図5】この代掻き作業機の動作を説明するための側面図を示す。
【図6】(a)従来技術の概略を側面視で表わしたイメージ図を示す。 (b)本発明の概略を側面視で表わしたイメージ図を示す。
【図7】本発明の他の実施の形態に係わる代掻き作業機の平面図を示す。
【図8】本発明の他の実施の形態に係わる代掻き作業機の平面図を示す。
【図9】本発明の他の実施の形態に係わる代掻き作業機の側面図を示す。
【図10】本発明の他の実施の形態に係わる代掻き作業機の側面図を示す。
【図11】走行機体に装着された従来のロータリ作業機の側面図を示す。
【図12】走行機体に装着された従来のロータリ作業機の側面図を示す。
【符号の説明】
【0057】
1 代掻き作業機(農作業機)
13 ロータリ作業部
15 シールドカバー(カバー部)
25 凹凸検出センサ(凹凸検出手段)
29 エプロン(整地体)
31 レベラ(整地体)
51 回動シリンダ(回動手段)
60 回動制御装置(回動制御手段)
90 走行機体
【技術分野】
【0001】
本発明は走行機体の後方に装着され、走行機体から伝達される動力によってロータリ作業部を回転させながら走行機体の走行とともに進行して圃場の耕耘作業を行う農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
このような農作業機80は、特許文献1に記載されており、図11(側面図)に示すように、ロータリ作業部13の上部を覆うカバー部81の後方に整地体82を上下方向に回動自在に設けて構成されている。走行機体90であるトラクタには、油圧作動機構を内蔵した油圧ケース91が設けられ、この油圧ケース91には、上下方向に回動可能なリフトアーム92が設けられている。このリフトアーム92の上下回動によって農作業機80全体が昇降される。
【0003】
この従来の農作業機80では、圃場の作業深さを一定にするために、整地体82の上下動を整地体82に取り付けられたセンサロッド83、センサアーム84等を介して検出し、整地体82の上下動に応じてリフトアーム92を上下方向に回動させて作業機全体の位置を上下調節するように構成されている。このように、整地体の上下動をセンシングし作業機全体を上下位置調節する技術は古くから利用され、現在でも耕深調節の基本技術として広く用いられている。
【0004】
【特許文献1】実開昭55−23017
【0005】
また、圃場のうねりを検出するセンサをロータリ作業部よりも前方へ配置した農作業機100は、特許文献2に記載されており、図12(側面図)に示すように、ロータリ作業部13の上部を覆うカバー部101の後方にエプロン102を上下方向に回動自在に設けて構成されている。走行機体90であるトラクタには、油圧シリンダ103が設けられ、油圧シリンダ103には、上下方向に回動可能なリフトアーム92が設けられている。このリフトアーム92の上下回動によって農作業機100全体が昇降される。
【0006】
この従来の農作業機100では、ロータリ作業部13の前方で且つ走行機体90の後輪93が通過した跡の位置にセンサ105を配置している。そしてセンサ105の枢支部に設けた角度検出器106により、センサ105の上下変位を電気的に検出すること等で油圧シリンダ103を伸縮作動させて農作業機100全体を自動昇降させながら対地作用深さの安定化を図っている。
【0007】
【特許文献2】実開昭55−149313
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されているような従来の農作業機は、耕耘作業後に、エプロンの上下動を検出し作業機全体の昇降制御が行われ、耕耘作業深さが一定になるよう制御される。こうした構造の農作業機では、圃場のうねりに追従して作業機の耕耘深さを一定に保つことは可能である。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の農作業機では、耕耘作業後の圃場高さをセンシングしているため、耕耘作業前の比較的小さな凹凸、例えば稲株や耕耘土が寄せ集められた圃場表面の盛り上がりや、畦際でのトラクタ切り返しにより発生する圃場の凹凸などは、エプロンで検出する前にロータリ作業部によりある程度耕耘されてしまう。さらに、エプロンという重量物の回動による検出方法であるため、それを検出できなかったり、あるいは、検出できたとしても感度の低い検出にならざるを得ない。このように従来技術では、圃場のうねりに追従しながら耕耘深さを一定にすることはできる。しかし、耕耘深さは一定に保たれても、圃場を均一にならすという直接的な効果を奏することはない。つまり、従来技術ではエプロンで検出したうねりにならって作業機全体を上下動させ、耕耘深さを一定に保つものであり、圃場の高い部分である凸部の土を削り取り、その削り取った土を圃場の低い部分である凹部へ埋めて圃場を均一平面にするという効果を奏さない。このままでは、水田における田植え作業を行う場合には、苗を植えつける場所によって水深がまちまちになり、苗の育成状態に差ができて米の品質や収量が不安定になるという問題点がある。
【0010】
また、特許文献2に記載されているような従来の農作業機は、ロータリ作業部前方にセンサを配置し圃場のうねりを検出した後、やはり特許文献1と同様に、作業機全体の昇降制御が行われ、耕耘作業深さが一定になるよう制御されるものである。こうした構造の農作業機では、後輪で踏み均した後の圃場のうねりを検知するため、安定した一定の耕耘深さを保つのに有効な構成である。
【0011】
しかしながら、特許文献2に記載の農作業機は、特許文献1に記載の作業機と同様に、昇降制御される対象はやはり作業機全体である。この構造では、圃場のうねりにならい、作業機全体が追従しながら耕耘深さを一定に保つことはできる。その結果、耕耘深さは一定に保たれても、圃場を均一にならすという効果を奏することはない。つまり、特許文献2に記載の農作業機は、特許文献1に記載の農作業機と同様に、圃場の高い部分である凸部の土を削り取り、その削り取った土を圃場の低い部分である凹部へ埋めて圃場を均一平面にするという効果を奏することはない。さらに、特許文献2に記載の農作業機は、トラクタ車輪の通過した跡、すなわち圃場表面ではなくトラクタ車輪によって踏み固められた深い部分にセンサが配置されているために、圃場のうねりを形成する基礎となる耕盤付近を検出対象とすることとなり、稲株や耕耘土が寄せ集められた圃場表面の盛り上がりや、畦際でのトラクタ切り返しにより発生する圃場の凹凸などそうした圃場表面の凹凸(高低)をそもそも検出しにくいという問題点があるため、前述したように水田における田植え前の代掻き作業など、精度の高い均一平面の形成が求められる耕耘作業には必ずしも適しているとはやはりいえない。
【0012】
本発明は、耕耘深さを一定に保つとともに、水田における代掻き作業などに必要な精度の高い均一平面の形成を達成できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。特徴の一つは、走行機体から取り出された動力によって回転するロータリ作業部を設け、ロータリ作業部の上方にカバー部(例えば、実施形態におけるシールドカバー15)を設け、カバー部の後方に整地体をカバー部に対し上下方向に回動可能に設けた農作業機(例えば、実施形態における代掻き作業機1)であって、ロータリ作業部よりも前方に配設されて圃場の凹凸高さを検出する凹凸検出手段(例えば、実施形態における凹凸検出センサ25)と、整地体を回動させる回動手段(例えば、実施形態における回動シリンダ51)と、凹凸検出手段によって検出された検出結果に基づいて回動手段の作動を制御する回動制御手段(例えば、実施形態における回動制御装置60)とを有することを特徴とする。
【0014】
この特徴によれば、凹凸検出手段をロータリ作業部よりも進行方向前方に配設し、凹凸検出手段によって検出された凹凸の高さに基づいて回動手段の作動を制御する構成とすることにより、ロータリ作業部による耕耘作業の前に圃場の凹凸の高さを検出し、この検出値に基づいて回動制御手段によって回動手段の作動を制御して、整地体の傾き角度を調節する。このため、整地体の傾き角度の変動を予め予期した状態で整地体の角度を調節することができる。つまり、ロータリ作業部が耕耘作業を行おうとする未耕地の凸部を凹凸検出手段が検出すると、その検出値が回動制御手段に送られ、回動制御手段は、その検出値の大きさに応じて回動手段の制御量を調節し、整地体を検出値に応じた角度に立てた状態にする。整地体を立てた状態にすることで整地体下部からの土の吐き出し量を小さくできるため、凸部の土を整地体でより多く抱き込むことが可能になり、ロータリ作業部と整地体との間で土を抱き込んだまま、走行機体の進行に伴いその土を前方へと運んでいく。そして、凹凸検出手段が未耕地の凹部を検出すると、その検出値が回動制御手段に送られ、回動制御手段は、その検出値の大きさに応じて回動手段の制御量を調節し、整地体を検出値に応じた角度に傾いた状態にする。そうすると、抱き込み運ばれてきた土は傾いた整地体の下部から徐々に吐き出され凹部を埋める。この凹凸検出手段による凹凸の検出から、その検出量に応じた整地体の制御を行うまでの時間に、作業機全体が前進している。よって検出直後に整地体を制御するのではなく、作業機全体の進行スピードに合せ、凹凸部に整地体が作用するタイミングがちょうど合うように、作業機の進行スピードに応じた制御反応時間が回動制御手段でうまくコントロールされている。さらに、整地体が抱き込んだ土の量に応じても制御反応時間が回動制御手段でうまくコントロールされている。このようにして、凸部、凹部の検出量に応じて整地体を回動させることで、圃場表面の均一平面形成を優れた精度で行うことができる。
【0015】
また特徴の一つは、回動制御手段は、凹凸検出手段によって検出された値が基準値を超えると、回動手段を制御して整地体の上方への回動を規制し、基準値以下になると整地体の回動規制を解除することを特徴とする。
【0016】
この特徴によれば、凹凸検出手段によって検出された値が基準値を超えると、整地体の上方への回動が規制される。つまり、凹凸検出手段によって検出される値が基準値を超えるまでは回動制御手段は圃場表面の凹凸を認識しない。このようにわずかな凹凸は認識しない不感帯を回動制御手段に持たせたり、あるいは、凹凸検出手段に所定の大きさの凹凸量が発生するとはじめて凹凸を認識するリミットスイッチのような構造を採用することで、基準値を超える大きな凹凸に対し、凸部を検知した場合には、カバー部に対し回動可能に設けられている整地体の上方回動を規制するので、整地体が凸部に乗り上がろうとしても、整地体はそれに抗し上方回動しないために、整地体が凸部の土を削り取る格好となる。そして整地体前方に削り取った土が寄せ集められ、その土を抱き込んだまま作業機全体が走行機体とともに前進していくことで、圃場表面の凸部がなくなる。そしてその後、凹凸検出手段によって検出される値が基準値以下になる、例えば作業機が土を寄せ集めながら凸部を通過した後、圃場表面が凹部であることを検知した場合には、整地体の回動規制を解除する。そうすることで、整地体は上方回動自在となり、作業機の前進に伴い、作業機が抱き込んでいる土が整地体の自重による下方回動に抗しながら下部から徐々に吐き出される。そうすることで凸部の土が圃場全体的に均される。この場合にもやはり、作業機全体の進行スピードに合せた制御反応時間が回動制御手段でうまくコントロールされる、さらに、整地体が抱き込んだ土の量に応じても制御反応時間が回動制御手段でうまくコントロールされることで、圃場表面の均一平面形成を優れた精度で行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記特徴を有することにより、耕耘深さを一定に保つとともに、水田における代掻き作業など精度の高い均一平面の形成が求められる耕耘作業が可能な農作業機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。代掻き作業機1は、図1(側面図)、図2(平面図)及び図3(背面図)に示すように、左右方向に延びる主フレーム3を有した機体5の前部に、走行機体90の後部に設けられた図示しない3点リンク連結機構に連結されるトップマストとロアーリンク連結部を設けて、走行機体90の後部に対して昇降可能に装着される。主フレーム3の左右方向の中央部には前方へ突出する入力軸9aを備えたギアボックス9が設けられ、走行機体90のPTO軸からユニバーサルジョイント等の動力伝達手段を介して動力が入力軸9aに伝達されるようになっている。
【0019】
主フレーム3の左側端部には、チェーン伝動ケース11が垂設され、主フレーム3の右側端部には側部フレーム12がチェーン伝動ケース11と対向して垂設されている。チェーン伝動ケース11に接続された主フレーム3の左側部及びチェーン伝動ケース11内には伝動機構が設けられ、チェーン伝動ケース11と側部フレーム12の下端部間に多数の耕耘爪を取り付けたロータリ作業部13が回転自在に設けられている。そして、入力軸9aに伝達された動力は、ギアボックス9を介して主フレーム3及びチェーン伝動ケース11内の伝動機構に伝達されて、ロータリ作業部13を所定方向に回転させる。
【0020】
ロータリ作業部13の上側はシールドカバー15によって覆われ、このシールドカバー15の左右方向両端部には一対の側部カバー17が設けられている。各側部カバー17の前端部には、上下方向に配置された一対のリンク部材19を介してサイドカバー20が設けられ、サイドカバー20の内側には取付部材22を介して凹凸検出手段の一部を構成する整地板23が取り付けられている。
【0021】
整地板23は、代掻き作業機1の機体幅方向一端部と他端部間に亘って延び、左右に一対のサイドカバー20を介して上下方向に移動可能に支持されている。上下に配置された一対のリンク部材19は、側部カバー17とサイドカバー20との間で平行リンクを構成するように配設されて、整地板23は略水平状態のままで上下方向に移動可能である。取付部材22は、サイドカバー20の内側面に取り付けられて左右方向内側に延びる一対の支持部材22aを有してなる。支持部材22aの下面に整地板23の上面が接合されて、取付部材22と整地板23とが一体化している。整地板23は、平面視において矩形状をなし、前側端部は上方へ屈曲して斜め上方へ延びている。
【0022】
リンク部材19と側部カバー17との間には、圃場の凹凸によって上下移動する整地板23に接続されたリンク部材19の回動角度から圃場の凹凸高さを検出する凹凸検出センサ25が設けられている。凹凸検出センサ25はポテンショメータであり、リンク部材19の回動角度を電圧信号に変換する。この凹凸検出センサ25は、後述するエプロン29の傾き角度を制御する回動制御装置60に電気的に接続されている。
【0023】
シールドカバー15の後端部には、前端部が上下方向に回動自在に取り付けられて後端側が斜め下方に延びる整地体の1つであるエプロン29が取り付けられている。エプロン29の後端部29aは左右方向に略直線状に形成されて、耕土表面を平らに整地する。エプロン29の後端部には、もう一つの整地体であるレベラ31が上下方向に回動自在に取り付けられて、レベラ31はその下面が接地して耕土表面を均平にする。レベラ31の左右端部には、折り畳み可能に回動自在に取り付けられて整地作業を延長する延長レベラ32が設けられている。代掻き作業機1の幅方向中央部には、レベラ31とシールドカバー15との間に配置されてレベラ31の支持角度を調整するレベラ角度調整機構33が設けられている。
【0024】
機体5の左右両端部よりも中央部側のエプロン29の背面とシールドカバー15の上面との間には、エプロン29の傾き角度を調節する角度調節装置40が設けられている。この角度調節装置40は、図4(平面図)を更に追加して説明すると、前後方向に延びてエプロン背面側に配置されたロッド部41と、ロッド部41の前端部の前側への移動を規制する位置の調整を行う位置調整部45を備える。ロッド部41は、その後端部がエプロン29の背面に取り付けられた支持部材35に対して回動且つ摺動可能に取り付けられ、前端部に設けられたピン部材42が位置調整部45に設けられた長孔部46に沿って移動可能に取り付けられている。
【0025】
支持部材35は、左右方向に対向して配設された一対の支持板35aを備え、これらの支持板35a間に円柱状の回動部36を回動自在に取り付けて構成されている。この回動部36にロッド部41の後端部が摺動可能に挿通し、ロッド部41の中間部に取り付けられたピン43と回動部36との間のロッド部41にコイルばね44を装着して、エプロン29が背面側へ回動すると、コイルばね44を圧縮してエプロン29の背面側への回動を抑制している。ロッド部41の中間部にはピン43を挿着するための挿着孔がロッド部41の軸方向に所定間隔を有して複数設けられており、ピン43の挿着位置を変更すると、自然長に延びるコイルばね44とピン43との隙間の大きさ調整が可能となって、エプロン29がフリーで回動できる範囲の調整が可能になる。なお、ここではこのようにロッド部41にコイルばね44を装着したものを例示するが、コイルばね44のないロッド部41を採用した場合でも、本発明の本質である圃場の均平仕上げを何ら損なうものではない。
【0026】
ロッド部41の前端部に設けられた前述のピン部材42は、その左右両端部がロッド部41から突出した状態で取り付けられ、この突出した左右一対のピン部材42が位置調整部45に対向配置された長孔部46に挿通されて、ロッド部41の前端部が前後方向に移動可能に支持されている。
【0027】
位置調整部45は、シールドカバー15に取り付けられた本体部47と、本体部47に前後方向に回動自在に取り付けられてロッド部41のピン部材42と当接してロッド部41の前側端部の前側への移動を規制する位置を調節するアーム49と、本体部47の上部に取り付けられてアーム49を回動させる回動シリンダ51とを有してなる。本体部47は、左右方向に対向して配置された一対の本体側支持板47aを備え、各本体側支持板47aに前述した長孔部46が前後方向に延びた状態で設けられている。この一対の本体側支持板47a間に前述したロッド部41の前側端部が配置されている。
【0028】
一対の本体側支持板47a間の上部には、ロッド側を後方側に配置し、ボトム側を前側に配置した回動シリンダ51が固定された状態で取り付けられている。回動シリンダ51のロッド側先端部には、平面視においてU字状の連絡部材52が取り付けられている。この連絡部材52の先端部は、一対の本体側支持板47aの各外側上端部に前後方向に回動自在に取り付けられたアーム49の中間部に回動自在に取り付けられている。このため、回動シリンダ51が伸長すると、アーム49はその下側が後方側に回動し、また、回動シリンダ51が縮小すると、アーム49はその下側が前方側に回動する。回動シリンダ51は油圧式や電動式のいずれのものでもよい。
【0029】
アーム49は、その下側が長孔部46よりも下方位置まで延び、ロッド部41のピン部材42と接触する接触部49aを有している。そして、接触部49aをピン部材42に接触させた状態で回動シリンダ51の伸縮をロックすると、アーム49はロック状態となり、ピン部材42の前側への移動を規制することができる。
【0030】
アーム49は、回動シリンダ51が略全伸長状態になると、接触部49aが長孔部46の後端位置の近傍に移動してピン部材42を長孔部46の後端位置に移動させ、回動シリンダ51が略全縮小状態になると、接触部49aが長孔部46の前端位置の近傍に移動するように形成されている。回動シリンダ51の伸縮は、後述する回動制御装置60によって制御される。
【0031】
回動制御装置60は、操作スイッチ61と電気的に接続されており、操作スイッチ61の操作によって作動する。また、回動制御装置60は、凹凸検出センサ25と電気的に接続され、操作スイッチ61がON操作されると、詳細については後述するが、凹凸検出センサ25からの検出値に応じて回動シリンダ51の伸縮を制御する。操作スイッチ61は、走行機体90に搭乗した作業者が操作できる範囲内に配設されていればよく、走行機体90の運転席や代掻き作業機1の前側部分でもよい。
【0032】
回動制御装置60は、凹凸検出センサ25からの検出値を受け取ると、検出値が予め設定された許容範囲を有した基準値を超えたか否かを判断し、検出値が基準値の上限を超えていると、回動シリンダ51を伸長させてピン部材42が長孔部46の後端側に位置するようにアーム49を後方側へ回動させるとともに、ピン部材42が長孔部46の所定の位置で保持されるように回動シリンダ51の伸縮を規制する。その結果、エプロン29は圃場表面に対して大きい傾き角度θで傾いた状態に保持される。一方、検出値が基準値以下であるときは、図5(側面図)に示すように、回動シリンダ51を縮小させてアーム49を前方側へ回動させて、ロッド41の先端部を何ら規制されていない状態にしてエプロン29をフリーな状態にする。したがって、エプロン29は、代掻き作業機1の前進に伴って圃場表面を均一平面に形成可能な姿勢になる。
【0033】
次に、このように構成された代掻き作業機1によって、圃場に存在する凹凸を均平にする場合の代掻き作業機1の動作について説明する。まず、走行機体90に代掻き作業機1を連結するとともに、走行機体90のPTO軸に図示しない動力伝達軸を介して入力軸9aを連結する。そして、整地板23を下方へ移動させて整地板23の下面を圃場表面に接触させる。そして、図1に示すように、操作スイッチ61をON操作してエプロン29の回動調節が可能な状態にする。そして、走行機体90を前進させるとともに、走行機体90からの動力を代掻き作業機1に伝達させて、ロータリ作業部13を所定方向に回転させる。
【0034】
代掻き作業機1が前進走行しているときに、整地板23が凸部に接触すると、整地板23はサイドカバー20及びリンク部材19を介して上方へ移動し、凹凸検出センサ25によってリンク部材19の回動角度から凸部の高さが検出される。そして、検出された凸部の高さが許容範囲を有した基準値の上限値を超えると、回動制御装置60は、回動シリンダ51を伸長させてアーム49を介してロッド部41のピン部材42を長孔部46の後端部に移動させ、そして、回動シリンダ51の伸縮を規制してピン部材42の位置を保持する。その結果、エプロン29はより傾きの大きい状態に維持される。したがって、ロータリ作業部13の進行方向前側に存在する凸部は、ロータリ作業部13の耕耘爪によって崩された後、エプロン29の後端部によって水平に削り取られて均平にされ、そしてレベラ31によってさらに圃場表面が滑らかに均一にされる。
【0035】
一方、凹凸検出センサ25によって検出された凹部の高さが許容範囲を有した基準値の下限値以下であるときには、回動制御装置60は回動シリンダ51を縮小させてアーム49を前側に回動し、ロッド部41の上端部をフリーな状態にする。その結果、エプロン29は代掻き作業機1の前進に伴って圃場表面に対する傾き角度θが小さい状態で移動する。このため、エプロン29によって凹部の直前まで引かれた土が凹部に供給されて、凹部は均平にされる。
【0036】
ところで、図6の(a)は、従来技術の概略を側面視で表わしたイメージ図であり、作業機全体を上下調節することで、圃場Fのうねりに作業機全体を追従させている。そうすることで、一定の耕深hを保ちながら作業機は前進する。つまり、作業機通過後の圃場は必ずしも均一平面にはならない。一方で、図6の(b)は、本発明の概略を側面視で表わしたイメージ図であり、凸部をロータリ作業部13で耕耘した直後に、傾き角度θが調節されたエプロン29で圃場表面の土を削り取り、凹部へその土を埋め戻す様子を表している。つまり、作業機の通過後、圃場Fは均一平面になり、従来技術では達成できなかった精度の高い均一平面の形成を実現している。
【0037】
このように、本願発明に係わる代掻き作業機1は、ロータリ作業部13よりも進行方向前方に圃場の凹凸の高さを検出する凹凸検出センサ25を配設し、凹凸検出センサ25の検出値に基づいて回動シリンダ51の伸縮を制御してエプロン29の傾き角度を調節することで、圃場表面の凹凸を均平にすることができる。また整地板23は機体5の一端側から他端側に亘って延びているので、耕耘幅全体に亘って圃場の凹凸検出が可能であり、圃場表面を均平にする作業の精度を高くすることができる。
【0038】
なお、前述した実施の形態では、凹凸検出センサ25によって検出された検出値が基準値の下限値以下になると、エプロン29がフリーな状態になるよう回動シリンダ51を縮小作動させるように制御してエプロン29が圃場表面に対する傾き角度θの小さい状態になるようにしたが、この小さい傾き角度θのままでエプロン29の回動を規制してもよい。
【0039】
この場合には、図1に示すアーム49の先端部に孔(図示せず)を設け、この孔にピン部材42を回動自在に挿入し、アーム49とピン部材42を回動可能に連結した状態にする。そして、凹凸検出センサ25によって検出された検出値が基準値の下限値以下になると、回動シリンダ51を縮小させてエプロン29を圃場表面に対して小さな傾き角度θにするとともに、その状態で回動シリンダ51の伸縮動作を規制する。その結果、エプロン29がフリーな状態にあるときと比較して、エプロン29によって抱き込まれている土は、凹部で一気に吐き出されるのではなく、エプロン29の後方への回動が規制された状態であるために、エプロン29の下部から一気にではなく走行機体90の前進に伴い少しずつ吐き出される。このため、圃場全体の均平仕上げをより確実なものとすることができる。
【0040】
また、アーム49の先端部にピン部材42を介してロッド部41の前端部を回動自在に連結した場合、凹凸検出センサ25によって検出された検出値に応じて回動シリンダ51の伸縮量を変化させてエプロン29の傾き角度を調節するようにしてもよい。この場合には、凹凸検出センサ25によって検出された検出値に応じた回動シリンダ51の伸長量を予め記憶させておき、検出値に対応したシリンダ伸長量を選択し、選択したシリンダ伸長量になるように回動シリンダ51の伸縮を制御する。このように、検出値に応じて回動シリンダ51の伸縮量を制御することで、検出された凹凸の高さに応じてエプロン29の傾き角度の変動を凹凸ごとに予め予期した状態で調節することができ、圃場表面を均平にする精度を高くすることができる。
【0041】
また、前述した実施の形態では、凹凸を検出する凹凸検出センサ25を設けた整地板23がロータリ作業部13の幅方向全体に亘って延びたものを示したが、図7(平面図)及び図8(平面図)に示すように、整地板23',23''を、ロータリ作業部13の機体幅方向中央部や機体幅方向外側に設けてもよい。
【0042】
図7に示す代掻き作業機1には、ロータリ作業部13の幅方向中央部に整地板23'が設けられ、ロータリ作業部13の機体幅方向両側に整地板23''が設けられている。幅方向中央部に設けられた整地板23'は、この幅方向長さWsが機体5の幅Woより短くなるように構成され(図面ではWs=約1/7Wo)、図2に示す整地板23と同様に、サイドカバー20に対応するサイド板64及びリンク部材19を介して上下方向に移動可能に支持されている。リンク部材19の後端部は、シールドカバー15の前端部に枢結されている。リンク部材19の後端部とシールドカバー15との間には凹凸検出センサ25が取り付けられ、この凹凸検出センサ25によってリンク部材19の回動角度から圃場の凹凸高さが検出される。リンク部材19、サイド板64の取り付け構造は、図1に示す整地板23の場合に準じるのでその説明は省略する。
【0043】
機体幅方向両側に設けられた整地板23''は、側部カバー17に取り付けられて平行リンクを構成するリンク部材19を介してサイドカバー20に取り付けられており、略水平状態のままで上下方向に移動可能に設けられている。
【0044】
この整地板23''は、ヒンジ部21を介してサイドカバー20に取り付けられている。ヒンジ部21は、サイドカバー20の外側面に沿って取り付けられた軸部材21aと、軸部材21aの両端部に回動自在に嵌合して取り付けられて左右方向外側に伸びる一対の支持部材21bとを有してなり、支持部材21bの下面に整地板23''の上面が接合されて、支持部材21bと整地板23''とが一体化している。
【0045】
そして、整地板23''は、軸部材21aを中心として下方へ回動すると、整地板23''の内側端部がサイドカバー20の底面に当接して下方への回動が規制されて、略水平方向に延びた状態に保持されて整地作業が可能な姿勢(以下、「作業可能姿勢」と記す。)になり、また整地板23''は、上方に回動すると、略垂直状態の姿勢となって格納される。ヒンジ部21の軸部材21aには、図示しないねじりコイルばね等の付勢手段が設けられ、この付勢手段によって整地板23''は作業可能姿勢に維持される。
【0046】
また整地板23''は、平面視において矩形状をなし、前側端部は上方に屈曲して斜め上方へ延びるとともに、ロータリ作業部13側へ傾斜する案内面23aを形成している。つまり、案内面23aは、整地板23''が作業可能姿勢に保たれると、斜め前側に延びるとともに、内側に進むにしたがって漸次後方側へ傾斜するように直線的に延びる。このため、案内面23aの前方にわらWが横たわっているときに、案内面23aが前側方向に進行すると、わらWを案内面23aに沿ってロータリ作業部13側に強制的に移動させることができる。
【0047】
その結果、ロータリ作業部13の幅方向端部周辺の圃場表面にわらWが存在すると、このわらWは、整地板23の案内面23aに沿ってロータリ作業部13側に流れる泥水とともに強制的にロータリ作業部13側に移動し、そしてロータリ作業部13の耕耘爪によって耕土内にすき込まれる。
【0048】
なお、案内面23aは、湾曲状に形成されてもよい。また、ボルト・ナット等の締結手段によって整地板23''をサイドカバー20に締結して作業可能姿勢に保たれた整地板23''をサイドカバー20に固定してもよい。
【0049】
このように、凹凸検出センサ25を有した整地板23',23''を機体5の幅方向両外側に配設するとともに幅方向中央部に配設することにより、圃場に存在するわらWをロータリ作業部13側に導くことができるとともに、圃場表面を均平にする精度を高めることができる。
【0050】
なお、図8(平面図)に示すように、前述した幅方向中央部に設けられた整地板23'を取り除き、機体5の幅方向両外側にのみ凹凸検出センサ25を有した整地板23'を設けてもよい。このようにすると、圃場に存在するわらWをロータリ作業部13側に導くことができるとともに、凹凸検出センサや部品点数を低減してコストダウンを図ることができる。
【0051】
また、前述した実施の形態では、凹凸検出センサ25を設けたものを整地板として板状部材であるものを説明してきたが、もちろんこうした板状部材に限るものではなく、円筒状のローラや、車輪などの他の形態のものとしてもよい。さらに、これまで凹凸の検出方法は、圃場表面と整地板が接触し、その整地板の上下動を検出する方法を説明してきたが、凹凸検出センサはこうした接触式センサに限られるものではなく、レーザーを圃場表面に照射し、その反射波を検知することで圃場の凹凸高さを検出するといった非接触式センサを採用しても、同様の作用効果を奏することができる。
【0052】
また、前述した実施の形態では、回動制御装置60は、凹凸検出センサ25からの検出値を受け取った後、回動シリンダ51を伸縮させてエプロン29の傾き角度を調節する場合を示したが、図9(側面図)及び図10(側面図)に示すように、回動制御装置60がレベラ31の傾き角度を調節するようにしてもよい。
【0053】
この場合、レベラ31の上部に上下方向に延びる連結部材70の下部を回動自在に連結し、連結部材70の上部と、主フレーム3に固定されて後方側へ延びる支持ブラケット71の後端部との間に、リンク部材72を回動自在に設け、リンク部材72の中間部から下方へ突出する凸部72aの先端部に、横方向に突出する係止突出片73を取り付け、支持ブラケット71に係止突出片73と係合可能な係合部材75を回動自在に取り付け、係合部材75の前端部に主フレーム3等に支持された回動シリンダ51'のロッド先端部を回動自在に取り付ける。そして係合部材75の後端側に係止突出片73と係合可能な切り欠き部75aを設ける。
【0054】
そして回動シリンダ51'は、ボトム側を前方側にロッド側を後方側に配置した状態で前後方向に延設し、回動シリンダ51'が全縮小状態(図10に示す状態)になると、係合部材75が上方へ回動して、切り欠き部75aを介して係止突出片73が上方へ移動して、係止突出片73が切り欠き部75aに対して非係合状態となって、リンク部材72及び連結部材70を介してレベラ31の上下回動がフリーな状態になる。一方、回動シリンダ51'が全伸長状態(図9に示す状態)になると、係合部材75が下方へ回動して、係止突出片73が切り欠き部75aに係合して、レベラ31の上方への回動が規制され、リンク部材72及び連結部材70を介してレベラ31が下方へ延びた状態でロックされる。
【0055】
このように、圃場に凸部が検出されると、回動シリンダ51'が伸長して、レベラ31が下方へ延びてロック状態にされ、レベラ31の底面によって凸部の土が削り取られる。従って、削り取った土を抱き込んだまま作業機全体が走行機体とともに前進していくことで、圃場表面の凸部を均平にすることができる。そして、凹凸検出手段によって検出された値が基準値以下になった場合には、回動シリンダ51'が縮小することで、レベラ31の回動規制が解除される。そうすることで、レベラ31は上方への回動が自在となり、作業機の前進に伴い、作業機が抱き込んでいる土がレベラ31底面下から吐き出される。そうすることで凸部の土が凹部に供給され圃場の表面全体を均平にすることができる。したがって、このようにレベラ31の傾き角度を調節するようにしても、エプロン29の傾き角度を調節可能にする場合と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる代掻き作業機の側面図を示す。
【図2】本発明の一実施の形態に係わる代掻き作業機の平面図を示す。
【図3】本発明の一実施の形態に係わる代掻き作業機の背面図を示す。
【図4】この代掻き作業機の角度調節装置を説明するための平面図を示す。
【図5】この代掻き作業機の動作を説明するための側面図を示す。
【図6】(a)従来技術の概略を側面視で表わしたイメージ図を示す。 (b)本発明の概略を側面視で表わしたイメージ図を示す。
【図7】本発明の他の実施の形態に係わる代掻き作業機の平面図を示す。
【図8】本発明の他の実施の形態に係わる代掻き作業機の平面図を示す。
【図9】本発明の他の実施の形態に係わる代掻き作業機の側面図を示す。
【図10】本発明の他の実施の形態に係わる代掻き作業機の側面図を示す。
【図11】走行機体に装着された従来のロータリ作業機の側面図を示す。
【図12】走行機体に装着された従来のロータリ作業機の側面図を示す。
【符号の説明】
【0057】
1 代掻き作業機(農作業機)
13 ロータリ作業部
15 シールドカバー(カバー部)
25 凹凸検出センサ(凹凸検出手段)
29 エプロン(整地体)
31 レベラ(整地体)
51 回動シリンダ(回動手段)
60 回動制御装置(回動制御手段)
90 走行機体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体から取り出された動力によって回転するロータリ作業部を設け、該ロータリ作業部の上方にカバー部を設け、該カバー部の後方に整地体を前記カバー部に対し上下方向に回動可能に設けた農作業機であって、
前記ロータリ作業部よりも前方に配設されて圃場の凹凸高さを検出する凹凸検出手段と、
前記整地体を回動させる回動手段と、
前記凹凸検出手段によって検出された検出結果に基づいて前記回動手段の作動を制御する回動制御手段と、
を有することを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前記回動制御手段は、前記凹凸検出手段によって検出された値が基準値を超えると、前記回動手段を制御して前記整地体の上方への回動を規制し、基準値以下になると前記整地体の回動規制を解除することを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項1】
走行機体から取り出された動力によって回転するロータリ作業部を設け、該ロータリ作業部の上方にカバー部を設け、該カバー部の後方に整地体を前記カバー部に対し上下方向に回動可能に設けた農作業機であって、
前記ロータリ作業部よりも前方に配設されて圃場の凹凸高さを検出する凹凸検出手段と、
前記整地体を回動させる回動手段と、
前記凹凸検出手段によって検出された検出結果に基づいて前記回動手段の作動を制御する回動制御手段と、
を有することを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前記回動制御手段は、前記凹凸検出手段によって検出された値が基準値を超えると、前記回動手段を制御して前記整地体の上方への回動を規制し、基準値以下になると前記整地体の回動規制を解除することを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−131173(P2009−131173A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309038(P2007−309038)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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