説明

農作業機

【課題】 本発明は、機体の旋回制御を、簡単な構成で行えるようにすること及び様々な旋回形態に対応できるようにすることを課題とする。
【解決手段】 機体の畦際旋回時に農作業装置の作動を停止し、作業開始位置で自動的に農作業装置の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機において、農作業装置の作動を入切する操作レバー(19)と、該操作レバー(19)を各々の操作位置に位置決めする位置決め機構と、操作レバー(19)を作動させるレバーモータ(99)と、位置決め機構を位置決めしない状態に解除する位置決め解除機構とを設け、レバーモータ(99)から操作レバー(19)への作動連繋機構に融通機構(132a)を設け、前記作業開始位置で、レバーモータ(99)を駆動することにより、位置決め解除機構を作動させると共に操作レバー(19)を作業位置(A)に作動させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農作業機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
乗用型の農作業機である田植機において、機体の畦際旋回時に農作業装置である苗植付部の作動を停止してからの旋回内側の後輪回転数に基づく走行距離が第一の設定走行距離に到達すると自動的に苗植付部を下降させ、前記走行距離が第二の設定走行距離に到達すると自動的に苗植付部の作動を開始させる旋回制御装置を設けた構成が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−344020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術によると、旋回制御を高精度にできるが、走行距離を検出する検出装置を要し、コントローラのような旋回制御装置を要する。また、後進が入るような異なる旋回形態に対応できない。
【0005】
従って、本発明は、機体の旋回制御を、簡単な構成で行えるようにすること及び様々な旋回形態に対応できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、機体の畦際旋回時に農作業装置(7)の作動を停止し、作業開始位置で自動的に農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機において、農作業装置(7)の作動を入切する操作レバー(19)と、該操作レバー(19)を各々の操作位置に位置決めする位置決め機構と、操作レバー(19)を作動させるレバーモータ(99)と、位置決め機構を位置決めしない状態に解除する位置決め解除機構とを設け、レバーモータ(99)から操作レバー(19)への作動連繋機構に融通機構(132a)を設け、前記作業開始位置で、レバーモータ(99)を駆動することにより、位置決め解除機構を作動させると共に操作レバー(19)を作業位置(A)に作動させる構成とした農作業機とした。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、機体の畦際旋回時にステアリングハンドル(6)の切れ角度が第一の設定角度を超えると農作業装置(7)の作動を停止すると共に農作業装置(7)を上昇し、ステアリングハンドル(6)の切れ角度が第二の設定角度以内になると農作業装置(7)を下降し、前記農作業装置(7)を下降させてからの時間が所定の設定時間になると農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機とした。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、ステアリングハンドル(6)の切れ角度が第二の設定角度以内になって農作業装置(7)を下降した後、前後進切替可能な走行操作具(31)を後進位置に操作するとバックリフト機構により農作業装置(7)を上昇し、走行操作具(31)を前後進中立位置に操作すると農作業装置(7)を下降すると共に農作業装置(7)を作動状態に切り替える制御装置を設けた請求項2に記載の農作業機とした。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、農作業装置(7)の作動状態で走行操作具(31)を後進位置に操作するとバックリフト機構により農作業装置(7)の作動を停止すると共に農作業装置(7)を上昇し、ステアリングハンドル(6)の切れ角度が第一の設定角度を超えた後、ステアリングハンドル(6)の切れ角度が第二の設定角度以内になると農作業装置(7)を下降し、前記農作業装置(7)を下降させてからの時間が所定の設定時間になると農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、通常作業時はオペレータが操作レバー19を操作することにより農作業装置7の作動の入切が行える。このとき、融通機構132aにより、操作レバー19を操作することができ、位置決め機構により、操作レバー19を各々の操作位置に位置決めできる。そして、畦際旋回時には、レバーモータ99の駆動により、操作レバー19を自動的に作業位置に作動させることができ、旋回操作の簡略化が図れる。このとき、レバーモータ99の駆動により位置決め解除機構を作動させるので、操作レバー19を軽い力で作動させることができ、レバーモータ99の小容量化及び小型化が図れる。
【0011】
請求項2に係る発明によると、畦際旋回時に、ステアリングハンドル6の切れ角度に基づいて農作業装置7の昇降を行い、経過時間に基づいて農作業装置7の作動を開始させるので、従来のような走行距離を検出するような格別な検出装置が不要となり、制御装置を低コストで構成できる。
【0012】
請求項3に係る発明によると、請求項2に係る発明の効果に加えて、畦際での機体旋回後、機体を畦際いっぱいまで後進してから作業を開始するときの操作を簡略化でき、畦際から容易に作業を行える。
【0013】
請求項4に係る発明によると、機体を畦際いっぱいまで前進して作業を行った後、後進してから旋回する旋回形態において、操作を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】田植機の側面図
【図2】田植機の平面図
【図3】エンジンカバーを示す平面図
【図4】施肥装置の一部及び後輪伝動ケースを示す背面図
【図5】後輪伝動ケースを示す側面図
【図6】ブロック図
【図7】予備苗台を示す斜視図
【図8】植付昇降レバーを示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施の一形態の農作業機となる苗移植機を以下に説明する。
図1及び図2は、走行車輌を備える乗用型の4条植田植機(苗移植機)1を示すものであり、車体2の前後には走行車輪としての左右一対の前輪3及び後輪4が架設されている。車体上前部には操作ボックス5及びステアリングハンドル6等を有する操縦装置が設置され、また、車体2の後方には昇降可能な苗植付部7が装備されている。また、車体2の後部には粉粒体供給装置となる施肥装置8が設けられ、肥料タンク9に貯留する肥料を各条の繰出部10で所定量づつ繰り出し、その繰り出した肥料をブロア11からの圧力風により各条の移送ホース12で苗植付部7に設けた吐出口13から吐出して施肥する構成となっている。また、車体2の後側で苗植付部7の前側には苗植付部7からリンク61により上下位置変更可能に支持される対地作業装置となる整地ロータ38が設けられ、該整地ロータ38の駆動により植付前の圃場を整地する構成となっている。尚、ロータ高さ調節レバー62の操作により、前記リンク61を回動させて苗植付部7に対する整地ロータ38の高さを変更設定できる構成となっている。操縦装置の後側に運転席(座席)14が設置され、運転席14の下側に田植機の各部に動力を伝達するエンジン15が搭載されている。
【0016】
エンジン15の上部には後方へ向けて排気するマフラー63が設けられ、該マフラー63の後方にはブロア11の吸気口11aを前側向きに配置している。従って、マフラー63からの熱風をブロア11が吸引でき、施肥装置8において肥料の乾燥を促すことができる。尚、エンジン15を上側から覆うエンジンカバー64は、エンジン15の前方及び左右側方を閉塞し後方を開放した構成となっており、上方の座席14を支持している。座席14は前部の回動軸14a回りに前側へ回動できる構成となっており、該座席14を前側へ回動させた状態でエンジンカバー64の上面部に設けた燃料供給用孔64aが露出し、該燃料供給用孔64aを介してエンジンカバー64内に設けた燃料供給口65へ燃料を供給できる構成となっている。前記燃料供給用孔64aは燃料供給口65に対して偏位して大きく構成され、該燃料供給用孔64aを介してエンジンカバー64内のリコイルノブ66を引っ張ってエンジン15を始動させる構成となっている。従って、前記の孔64aは、燃料供給用とエンジン始動用(リコイルノブ操作用)とを兼用しており、従来のようにエンジンカバーあるいは車体カバーの露出した部分にエンジン始動用(リコイルノブ操作用)の孔を設けなくてよく、外観がすっきりとして良くなる。尚、エンジン15の始動のためにセルモータも備えており、リコイルノブ66はセルモータが故障したとき等の非常用として使用できる構成となっている。
【0017】
尚、エンジンカバー64は該カバー64の前下端に設けた支点軸64b回りに前側へ回動する構成となっており、このエンジンカバー64の回動によりエンジン15を露出させて外方より該エンジン15のメンテナンスを行うことができる。前記支点軸64bは車体2のステップフロア面67より下位にあるので、回動によるエンジンカバー64の移動量を大きくすることができ、開放スペースを大きくできる。従来は、支点軸がステップフロア面より上位にあったので、エンジンカバーの回動による開放スペースを十分に得られないという問題がある。
【0018】
前記ステアリングハンドル6は、この回動操作によりステアリングポスト内のステアリング軸からステアリングケース内を経て減速回転される出力軸、ピットマンア−ム及び操向ロッド等を介して左右の前輪3を操向させ操舵するようになっている。また、ミッションケース内には左右の後輪への伝動を入切するサイドクラッチを左右各々設け、ステアリングハンドル6の操作に連動する連動機構を介して操向内側のサイドクラッチを切りにする構成となっている。
【0019】
苗植付部7は、車体2の後部に昇降リンク機構17を介して昇降可能に装着され、昇降用油圧シリンダ18の伸縮作動により昇降する構成であり、本例では、油圧シリンダ18の引き側で苗植付部7を上昇させる構成としている。ステアリングハンドル6の右側には植付昇降レバー19を設けており、この植付昇降レバー19を前後方向に操作して苗植付部7の駆動の入切及び苗植付部7の昇降を行う構成となっている。尚、植付昇降レバー19から各々の連繋機構を介して昇降用油圧シリンダ18を作動させる油圧バルブと苗植付部7への伝動を入切する植付クラッチとを作動させる構成となっている。尚、植付クラッチは、ミッションケース30内に設けられている。植付昇降レバー19は、前側から順に、苗植付部7を下降し作動させる植付位置A、苗植付部7を作動させずに下降させる下降位置B、苗植付部7を作動させずに昇降を停止する中立位置C、苗植付部7を作動させずに上昇させる上昇位置Dの各操作位置に操作する構成となっている。この各操作位置で植付昇降レバー19を位置決めする位置決めローラ120を設けており、該位置決めローラ120は、植付昇降レバー19と一体のカム板121に設けた位置決め溝122に係合する構成となっている。尚、位置決めローラ120は、位置決め用アーム123の先端部に取り付けられ、位置決め用スプリング124により位置決め溝122側に付勢されている。従って、位置決めローラ120、位置決め用アーム123、位置決め用スプリング124及び位置決め溝122により、位置決め機構が構成されている。
【0020】
植付昇降レバー19は、バックリフト用スプリング125により上昇位置側に付勢されている。そして、変速レバー31を後進位置側に操作すると、バックリフト連繋機構を介して位置決めローラ120が位置決め溝122から離れる側に位置決め用アーム123が操作され、植付昇降レバー19がバックリフト用スプリング125により上昇位置Dに操作されて苗植付部7が上昇する。尚、変速レバー31は、前進操作経路と後進操作経路を左右にずらせ、前進操作経路と後進操作経路を前後進中立経路で繋いだクランク状の操作パターンで操作され、前後進中立経路上で後進操作経路側に操作したことを後進センサ126で検出し、後進位置側に操作されたことを検出する。また、ステアリングハンドル6の操作で回動するピットマンアーム127から、オートリフト用連動機構128を介してオートリフトレバー129が操作され、オートリフトレバー129と位置決め用アーム123が一体で回動し、位置決めローラ120が位置決め溝122から離れる側に位置決め用アーム123が操作され、植付昇降レバー19がバックリフト用スプリング125により上昇位置Dに操作されて苗植付部7が上昇する。従って、旋回時にステアリングハンドル6を所定量以上操作すると、自動的に苗植付部7が上昇する。
【0021】
また、この苗植付部7には、左右に往復動する苗載タンク20、1株分の苗を切取って土中に植込む植込杆21を有する植付装置22、苗植付面を滑走しながら整地するフロ−ト(サイドフロ−ト)23、センタフロ−ト24等を備えている。尚、昇降リンク機構17の苗植付部7側で上側の支点68は、昇降リンク機構17に設けた前後方向の長孔69により前後に移動自在に設けられ、揺動用スプリング70により前側に付勢されている。従って、この上側の支点68を移動自在にする長孔69の融通機構により、苗植付部7は、圃場面に追従して昇降リンク機構17の下側の支点71回りに前後に揺動し、車体2の前後傾斜に拘らず圃場面に対して所望の前後傾斜姿勢を維持する構成となっている。
【0022】
エンジン15の回転動力は、2連のエンジン出力プーリ25のうち左右方向内側のプーリ25aから前側に延びるベルト26を介して油圧式無段変速装置(HST)27の入力プ−リ28、入力軸29に伝えられ、この入力軸29からこれと同一軸芯上に設けられた伝動軸を介して油圧ポンプ71を駆動するようになっており、更に、油圧式無段変速装置27の出力軸からミッションケ−ス30のミッション入力軸に伝えられるようになっている。また、2連のエンジン出力プーリ25のうち左右方向外側のプーリ25bから後側に延びるベルト72を介して発電機73の入力プーリ74に伝動され、前記発電機73を駆動する。この油圧式無段変速装置(HST)27並びに発電機73の入力プ−リ28、74及びエンジン出力プーリ25は機体側面視で前後方向に一直線上に配置され、これらのプーリ25,28、74に巻回されるベルト26、72の側方(左右方向外側)に安全用のベルトカバー75を設け、該ベルトカバー75を機体側面視において直線状で簡単な構造としている。また、エンジン出力プーリ25及び発電機73はエンジンカバー64内に位置しないので、その分エンジンカバー64を小さくコンパクトに構成できる。尚、ベルトカバー75は、ベルト72が左右方向外側へ配置される分、後部が左右方向外側に位置するように屈曲した構成となっている。従来は、発電機がエンジンカバー内に配置され、発電機へ伝動するためのベルトがエンジン出力プーリから上側に延設されていたので、発電機を配置する分エンジンカバーを大きくしなければならず、またベルトカバーを機体側面視でL字型に構成しなければならずベルトカバーの構造が複雑なものとなっていた。
【0023】
操作ボックスすなわちフロントカバー5の上部近傍には、該油圧式無段変速装置27を駆動する変速レバ−31が配置され、この変速レバ−31の前後方向の操作で油圧式無段変速装置27を駆動し機体の前進及び後進制御を司るように構成されている。運転席14の前方右側には、前輪3及び後輪4を制動するためのブレーキペダル32を設けている。また、このブレーキペダル32を踏み込み操作状態(制動状態)で保持できるペダル保持装置を設けている。
【0024】
ミッションケース30内からの動力により、植付伝動軸を介して伝動して苗植付部7が作動すると共に、該ミッションケース30の左右両側に設けた前輪3が駆動する。また、ミッションケース30内からの動力が左右各々の後輪伝動軸33を介して左右の後輪伝動ケース34内へ伝動され、後輪4が駆動する。
【0025】
ミッションケース30の後面には後側へ延びるメインフレーム76を固着しており、該メインフレーム76の後端に左右方向に延びる後部フレーム49を固着している。この後部フレーム49には上方へ延びる左右2本の上下フレーム77を固着しており、該上下フレーム77に昇降リンク機構17が回動自在に支持されると共に、該上下フレーム77の上部で肥料タンク9及び繰出部10等の施肥装置8の要部が支持されている。また、メインフレーム76と上下フレーム77を繋いで前下がりに傾斜する補強フレーム78が設けられ、該補強フレーム78の下端部をメインフレーム76より下側にまで突出させ、この補強フレーム78の下端部に昇降用油圧シリンダ18を支持する基部支点軸79を設けている。これにより、基部支点軸79を取り付けるための格別な部品が不要となり、コストダウンが図れると共に、昇降用油圧シリンダ18を低位に配置することができて機体の低重心化が図れる。
【0026】
左側の後輪伝動ケース34の左右方向内側(右側)には、該ケース34から出力される左右方向のロータ用出力軸35を設けている。このロータ用出力軸35から該軸35回りに上下回動自在のロータ駆動用ケース36及びロータ伝動軸37を介して車体2の後側で且つ苗植付部7の前側に設けた整地ロータ38へ伝動し、該整地ロータ38を駆動する構成となっている。従って、前記ロータ駆動用ケース36及びロータ伝動軸37等が、後輪伝動ケース34内から整地装置38へ伝動する対地作業用伝動機構となる。尚、整地ロータ38は左右中央の中央ロータ38aと左右両側の側部ロータ38bとで3分割された構成となっており、前記中央ロータ38aは前記側部ロータ38bより前側に位置しており、ロータ伝動軸37からの動力は先ず中央ロータ38aの左右中央位置に入力されて該中央ロータ38aへ伝動され、中央ロータ38aから左右のロータ伝動ケース80を介して左右の側部ロータ38bへ伝動される構成となっている。
【0027】
一方、右側の後輪伝動ケース34の左右方向内側(左側)には、該ケース34から出力される左右方向の施肥用出力軸39を設けている。この施肥用出力軸39から該軸39と一体回転する駆動クランクアーム40、駆動ロッド41及び従動アーム42を介して施肥駆動軸43へ該軸43が往復回動するよう伝動され、この施肥駆動軸43から各2条毎の入力アーム44、ロッド45、出力アーム46及び一方向クラッチ47等で構成される施肥伝動機構48を介して該施肥伝動機構48の左右に設けた各々の繰出部10へ伝動し、該繰出部10内の繰出ロータを一方向へ所定角度づつ回転させる構成となっている。従って、前記駆動クランクアーム40、駆動ロッド41、従動アーム42、施肥駆動軸43及び施肥伝動機構48等により、後輪伝動ケース34内から前記施肥装置8へ伝動する粉粒体供給用伝動機構を構成している。
【0028】
このように、左右の後輪伝動ケース34から整地ロータ38及び施肥装置8の繰出部10へ伝動するにあたり、一方の後輪伝動ケース34から整地ロータ38へ伝動し、他方の後輪伝動ケース34から繰出部10へ伝動する構成として、それぞれの伝動出力を左右で振り分けた構成としたので、左右の後輪伝動ケース34内の伝動負荷の均一化が図れ、ひいては左右の後輪4の駆動力の均一化が図れて機体の走行性能及び直進性能が向上する。また、整地ロータ38及び施肥装置8の繰出部10への伝動機構を交錯させずに簡潔に構成できる。
【0029】
尚、左右の後輪伝動ケース34は、共用化されており、後輪車軸56が左右外側へ向くよう左右対称に設けている。従って、左側の後輪伝動ケース34に設けたロータ用出力軸35と右側の後輪伝動ケース34に設けた施肥用出力軸39とは、後輪伝動ケース34においては同一の軸であり、後輪伝動ケース34の入力軸34bから後輪車軸56への伝動におけるカウンタ伝動軸を兼ねている。このカウンタ伝動軸35、39は、後輪車軸56より前側で且つ後述する回動支点軸54を挿入するための孔より後側に配置されている。従って、このカウンタ伝動軸35,39が、後輪車軸56より回動支点軸54に近い後輪伝動ケース34内の伝動軸となる。
【0030】
車体1の後部に設けた左右方向に延びる後部フレーム49の左右両端部には、プレートで構成される左右方向内側の第一支持部材50と左右方向外側の第二支持部材51とを各々設けている。前記第一支持部材50及び第二支持部材51は後部フレーム49から下側に延設され、第一支持部材50は後部フレーム49に溶接して固定され、第二支持部材51は後部フレーム49の端部に設けたブラケット52に前後上下計4本の取付ボルト53により着脱可能に装着されている。第一支持部材50の下端部には左右方向外側に延びる回動支点軸54を溶接して固定し、第二支持部材51の下端部には前記回動支点軸54の端部を挿入する孔51aを設けている。従って、回動支点軸54は、第一支持部材50と第二支持部材51とで両持ち支持されている。これにより、回動支点軸54の支持が安定し、該軸54のガタを抑えることができ、後述する後輪4の上下動を適正に且つ安定して行える。左右方向で第一支持部材50と第二支持部材51との間には、後部フレーム49から後方に延びる背面視U字型の第三支持部材55を設けている。前記取付ボルト53により第二支持部材51を後部フレーム49に対して着脱可能に構成しているので、第二支持部材51を取り外して第一支持部材50で片持ち支持される回動支点軸54に沿って機体の左右方向外側から後輪伝動ケース34の着脱を容易に行える。
【0031】
後輪伝動ケース34は、回動支点軸54を挿入するための孔及び後輪車軸56を挟む位置で分割する上下の分割ケース34aからなる構成であり、上下の分割ケース34aが共用化されている。尚、前記孔より後輪車軸56は後側に位置している。上側の分割ケース34aの左右内側には規制用ピン57を設け、該規制用ピン57が挿入される長孔58aを備える規制用アーム58が、前記第三支持部材55の側面に設けた支持軸59回りに回動自在に設けられている。従って、前記規制用ピン57の移動が前記長孔58a内で規制され、後輪伝動ケース34の上下回動域が規制される。従って、前記規制用ピン57及び規制用アーム58は、後輪伝動ケース34の上下方向の回動域を規制する規制部材となる。また、第三支持部材55の下面には弾性部材となるクッションゴム60を設けており、このクッションゴム60が後輪伝動ケース34に接触することにより、後輪4からの振動を吸収する構成となっている。
【0032】
よって、後輪伝動ケース34は回動支点軸54回りに上下回動可能に構成され、後進時及び前進時でも後輪4の駆動負荷が小さい通常の走行時には、機体の自重で規制用アーム58の長孔58aの上端に規制用ピン57が当たる位置まで後輪伝動ケース34が上動して後輪4が最上状態となる。このとき、後輪伝動ケース34はクッションゴム60に当接し、機体の振動が抑えられる。一方、前進時で後輪4に所定以上の駆動負荷が生じたときには、その駆動反力により機体の自重に抗して後輪伝動ケース34が下側へ回動して後輪4が下動する。この後輪4の下動は、規制用アーム58の長孔58aの下端に規制用ピン57が当たることにより、最下位置が規制される。
【0033】
尚、回動支点軸54は、後輪4の外径内に設定している。従って、回動支点軸54と後輪車軸56との間隔を小さく設定しているので、後輪4の駆動反力で後輪伝動ケース34を下側へ回動させることができるのである。
【0034】
ところで、後輪伝動軸33は、ミッションケース30に近い前部と後輪伝動ケース34に近い後部とに自由な方向へ屈曲自在な継ぎ手(ユニバーサルジョイント)33aを備え、後輪伝動ケース34の上下回動による該後輪伝動ケース34の入力軸34bの移動に順応する構成となっている。そして、後輪伝動ケース34の回動で大きく屈曲変化する後側の継ぎ手33aにおいて、後輪車軸56が最上位置となるべく後輪伝動ケース34が上側に回動したとき前記継ぎ手33aが上側に凹となるよう屈曲し、後輪車軸56が最下位置となるべく後輪伝動ケース34が下側に回動したとき前記継ぎ手33aが下側に凹となるよう屈曲し、後輪伝動ケース34の上下回動において後輪伝動軸33の屈曲方向を互いに逆側にして上下に振り分けた構成としている。従って、後輪伝動ケース34の上下回動全域において、継ぎ手33aの屈曲角度を許容範囲内で極力小さく設定できるため、後輪伝動軸33による伝動ロスを低減できて後輪伝動ケース34ヘの伝動を良好にできる。また、後輪車軸56が最下となるときの後輪伝動軸33の継ぎ手33aの屈曲角度より後輪車軸56が最上となるときの後輪伝動軸33の継ぎ手33aの屈曲角度が小さくなる構成としたので、後進時や前進時でも後輪4の駆動負荷が小さい通常走行時には、機体の自重により後輪伝動ケース34が上側へ回動して後輪車軸56が最上位置となるため、継ぎ手33aの屈曲角度が小さく、該後輪伝動軸33による伝動ロスを低減できて後輪伝動ケース34ヘの伝動を良好にできる。
【0035】
この田植機1により、直進植付時において、通常の走行負荷のときは後輪4が最上状態となり、耕盤が深くて過大な走行負荷がかかるようなときは、前輪3より車輪分担荷重の大きい後輪4が圃場に深く沈み込むことと後輪4の駆動反力との要因により、機体が前上がり姿勢になりやすいが、後輪4が下動状態となることで機体の前上がり姿勢が修正され、植付部7の沈下により苗植付姿勢が乱れたりするようなことを防止できる。一方、畦際での機体旋回時には、走行負荷が増大するので、自動的に後輪4が下動状態となることで機体が前下がり姿勢になり、機体旋回のために旋回内側の後輪4の駆動を断つことにより旋回外側しか駆動しない後輪4に対して左右両方を駆動させる前輪3の車輪分担荷重を増すことができ、ひいては前輪3の走行推進力を向上させることができ、旋回走行を円滑に行うことができる。また、前進での畦越え時や前進でのトラックへの積込時は、走行負荷が大きくなるため、後輪4が下動状態となって機体の前上がり姿勢が修正され、作業の安全性が図れる。また、畦越え時やトラックへの積込時でも機体が後上がり姿勢となる後進時は、後輪4が上動状態に維持され、後輪4が下動することにより機体が更に後上がり姿勢になることはなく、安全である。
【0036】
また、後輪伝動ケース34のカウンタ伝動軸となるロータ用出力軸35及び施肥用出力軸39が後輪車軸56より回動支点軸54に近い位置にあるので、後輪伝動ケース34の回動による対地作業用伝動機構及び粉粒体供給用伝動機構の移動量又は位置変化を小さくでき、これらの伝動機構による伝動の円滑化及び安定化が図れ、ひいては整地ロータ38による整地作業及び施肥装置8による施肥作業の適正化が図れる。
【0037】
尚、前述のクッションゴム60に代えて圧縮スプリングを設け、後輪伝動ケース34の上下回動全域において前記圧縮スプリングを作用させる構成とすることができる。そして、後進時及び前進時でも後輪4の駆動負荷が小さい通常の走行時には圧縮スプリングが全圧縮状態となり、前進時で後輪4に所定以上の駆動負荷が生じたときには圧縮スプリングが伸長して後輪伝動ケース34の下側への回動を付勢することができる。尚、この圧縮スプリングを設ける場合も、前述のようなクッションゴム60を併用してもよい。
【0038】
尚、圧縮スプリングを設けるにあたり、前述の規制用アーム58の外周に巻回されるように設け、一端が第三支持部材55に当接して規制され、他端が規制用ピン57に当接して後輪伝動ケース34を下側に回動付勢する構成としてもよい。つまり、圧縮スプリングがその内部を通る規制用アーム58で支持され、圧縮スプリングの外れを防止できると共に、構成の簡略化が図れる。
【0039】
尚、後輪4の上動又は下動を付勢する付勢手段となる圧縮スプリングを設けた構成において、その付勢力を可変させることにより、後輪4を下動させる負荷を任意に変更可能にし、変速レバーの切り替えによる機体「移動」(路上走行)時には後輪4を下動させず、「植付作業」時には機体前部が浮き上がるような高負荷時のみ後輪4を下動させて機体の後部を上昇させるように構成することで、駆動反力の小さい路上走行では後輪4を上下動させず、駆動反力の大きい圃場走行では必要以上に後輪4が上下動しないように抵抗を与えることが可能となる。
【0040】
また、上記のような構成において、油圧式無段変速装置27を駆動する変速レバ−31の操作に起因する前後進低速時には後輪4を下動させず、中・高速時には機体前部が浮き上がるような高負荷時のみ後輪4を下動させるよう構成することもでき、駆動反力の小さい低速走行では後輪4を上下動させず、駆動反力の大きい高速走行では必要以上に後輪4が上下動しないように抵抗を与えることが可能となる。
【0041】
更に、エンジン15のスロットル低回転時には後輪4を下動させず、中・高速時には機体前部が浮き上がるような高負荷時のみ後輪4を下動させて機体の後部を上昇させるように構成することもできる。
【0042】
尚、前述のクッションゴム60を後進高負荷時には圧縮して撓むような弾力特性に設定し、後進高負荷時には逆に機体後部を下降させて機体の前下がり状態を緩和させ、前輪3の沈み込みを防止することもできる。これによれば、後進での畦越えやアユミ越えが容易にでき、走行抵抗の大きい湿田での後進性能が向上する。
【0043】
また、ブレーキペダル32の操作に連動して左右の後輪伝動ケース34の上下回動を規制する規制具を設け、機体を走行停止させたときには後輪4が上下動しないように固定する構成とし、トラック等での運搬時にはペダル保持装置によりブレーキペダル32を踏み込み状態で保持しておけば、運搬時の振動等により無闇に後輪4が上下動するようなことを防止でき、後輪伝動ケース34の急激な上下動により後部フレーム49や後輪伝動ケース34が破損するようなことを防止でき、また荷台等に保持するために機体に掛けられたロープが引っ張られて緩んだり切れたりするようなことを防止できる。
【0044】
また、左右一方の後輪伝動ケース34と車体2に設けた回動アーム81の一端とを第一ケーブル82で接続し、前記回動アーム81の他端と昇降リンク機構17の上側の支点68を前側に付勢する揺動用スプリング70の他端(前端)とを第二ケーブル83で接続し、前記回動アーム81、第一ケーブル82及び第二ケーブル83からなる連動機構により、後輪4が上昇状態のときには前記上側の支点68が前側へ引っ張られて苗植付部7が前傾姿勢に修正され、後輪4が下降状態のときには第二ケーブル83が弛められて苗植付部7の自重により前記上側の支点68が後側へ移動して苗植付部7が後傾姿勢に修正される。これにより、後輪4の上下動による車体2の前後傾斜姿勢の変化に応じて苗植付部7の前後傾斜姿勢が所望の姿勢となるよう修正され、整地ロータ38及びフロート23、24による整地性の向上が図れると共に、苗の植付姿勢や植付深さの適正化が図れる。
【0045】
ところで、車体2の前部の左右には、上下複数段(2段)の予備苗台90を設けている。このうちの上側1段の予備苗台90をリンク機構130により移動させて、上下に重複した通常の重複状態から前後に連なった展開状態へ切り替えることができる。尚、展開状態では、前側の予備苗台90の苗載面と後側の予備苗台90の前壁131とが略同じ高さ、又は前記苗載面が前記前壁131よりも若干高い高さとなり、前後の予備苗台90に段差を設けている。この展開状態により、複数の予備苗台90を前後に連ねて配置できるので、例えば苗箱ごと苗を機体の前側から後部の苗植付部7へ予備苗台90上をスライドさせながら苗補給でき、苗補給作業の容易化が図れる。尚、展開状態で苗をスライドさせるには、前側の予備苗台90における後側の苗ストッパ91を下動させて非作用状態にする必要がある。そこで、前記苗ストッパ91を、上下に回動可能で苗ストッパ用スプリングにより上側に付勢し、重複状態では上側に突出して作用し、展開状態ではリンク機構130に上側から押されて下側に退避して非作用状態となる構成としている。これにより、苗ストッパ91の切替操作が容易になり、苗補給作業性が向上すると共に、苗ストッパ91を非作用状態にするための格別の部材が不要であるので、構造が簡単になる。
【0046】
そして、植付昇降レバー19はレバーモータとなる植付昇降モータ99により融通機構となる長孔132aを備える駆動リンク132を介して植付位置側に操作できる構成となっている。操作ボックス5内には制御部100を有する制御ボックス101を設けている。ステアリングハンドル6が第一の設定角度(例えば135度)以上操作されたことを検出すると、オートリフトレバー129を介して植付昇降レバー19が上昇位置に操作され、苗植付部7の駆動が切になると共に苗植付部7が上昇する。また、機体の旋回で旋回内側のサイドクラッチが切りになり、旋回内側の後輪4が圃場に追従して遊転する状態となる。旋回終了前にステアリングハンドル6が第一の設定角度(例えば90度)以内に操作されたことをステアリングセンサ102が検出すると、制御部100が植付昇降モータ99へ出力して植付昇降レバー19を下降位置に作動させ、油圧シリンダ18により苗植付部7を下降させる。更に、苗植付部7を下降させてからの時間が所定の設定時間になると、旋回開始時の植付作業終了位置に苗植付部7による苗植付位置が揃ったと判断し、制御部100が植付昇降モータ99へ出力して植付昇降レバー19を植付位置に作動させ、植付クラッチにより苗植付部7を作動させ植付を開始する。尚、植付昇降レバー19を下降位置B及び植付位置Aに作動させるとき、植付昇降モータ99で駆動する駆動カム133、連動アーム134及び連動ケーブル135を介して位置決め用アーム123を位置決め解除側に作動させる構成となっている。従って、駆動カム133、連動アーム134及び連動ケーブル135により、位置決め解除機構が構成される。植付昇降モータ99により植付昇降レバー19が植付位置Aに操作された後は、植付昇降モータ99は元の位置まで回転し、駆動リンク132の長孔132aにより、植付昇降レバー19を上昇位置Dから植付位置Aまで自由に操作し得る状態となる。
【0047】
また、旋回終了前にステアリングハンドル6が第二の設定角度(例えば90度)以内に操作されて植付昇降レバー19を下降位置に作動させ、苗植付部7を下降させた後に、変速レバー31を後進位置側に操作すると、バックリフト用スプリング125を備えるバックリフト機構により苗植付部7を上昇し、後進センサ126により変速レバー31を前後進中立経路の前進位置側に操作したことを検出すると、制御部100により、植付昇降モータ99を作動させて植付昇降レバー19を植付位置に作動させ、苗植付部7を下降すると共に苗植付部7を作動状態に切り替える。
【0048】
また、植付昇降レバー19が植付位置となる苗植付部7の作動状態で変速レバー31を後進位置側に操作すると、バックリフト機構により苗植付部7の作動を停止すると共に苗植付部7を上昇し、ステアリングハンドル6の切れ角度が第一の設定角度を超えたことをステアリングセンサ102が検出した後、ステアリングハンドル6の切れ角度が第二の設定角度以内になると、前述と同様に、苗植付部7を下降し、前記苗植付部7を下降させてからの時間が所定の設定時間になると、植付昇降モータ99を作動させて植付昇降レバー19を植付位置に作動させ、苗植付部7の作動を開始させる。
【0049】
また、ブレーキペダル32の踏み込みを検出するブレーキペダルセンサ111又は前記変速レバーセンサ109の検出に基づき、機体旋回時の走行速度が零と判断されるときは経過時間をカウントしない構成としている。従って、ブレーキペダルセンサ111及び前記変速レバーセンサ109が、機体の走行速度を判別する走行速度判別装置となる。
【0050】
苗植付部7の左右には、次行程の走行経路の指標となる位置に線を引く線引きマーカ107を左右各々設けている。この線引きマーカ107は、倒伏した線引き状態と起立した非線引き状態とに切り替えでき、苗植付部7の昇降に連動して苗植付部7の下降状態では線引き状態となり、苗植付部7の上昇状態では非線引き状態となる。また、線引きマーカ107を操作するケーブルを規制する左右各々のマーカソレノイド108により、苗植付部7の下降状態でも線引きマーカ107を非線引き状態に維持できる。旋回方向判別装置による判別に基づき、機体の旋回外側の線引きマーカ107を規制するマーカソレノイド108を苗植付部7の作動開始時に非規制状態とし、機体の旋回内側の線引きマーカ107を規制するマーカソレノイド108を旋回開始時に規制状態とし、機体の旋回外側の線引きマーカ107を苗植付部7の作動開始時に線引き状態に切り替える。左右のマーカソレノイド108が、マーカ切替装置となる。尚、左右の線引きマーカ107を各々の電動モータにより任意の高さに上下動制御できる構成とし、左右傾斜センサの検出により機体の左右傾斜に応じて、左右の線引きマーカ107が適正な土壌への突入深さとなるよう上下動制御する構成としてもよい。線引きマーカ107が起立した時に近接する苗載タンク20の左右両端部には切り欠きを設け、収納時の線引きマーカ107を前記切り欠き内に位置させてコンパクトに収納する構成としている。特に、線引きマーカ107を回転式のマーカとした場合、線引きマーカ107の左右外側への突出を抑えて機体の左右幅縮小が図れる。
【0051】
以上により、この田植機は、機体の畦際旋回時に農作業装置7の作動を停止し、作業開始位置で自動的に農作業装置7の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機において、農作業装置7の作動を入切する操作レバー19と、該操作レバー19を各々の操作位置に位置決めする位置決め機構と、操作レバー19を作動させるレバーモータ99と、位置決め機構を位置決めしない状態に解除する位置決め解除機構とを設け、レバーモータ99から操作レバー19への作動連繋機構に融通機構132aを設け、前記作業開始位置で、レバーモータ99を駆動することにより、位置決め解除機構を作動させると共に操作レバー19を作業位置に作動させる構成とした。
【0052】
よって、通常作業時はオペレータが操作レバー19を操作することにより農作業装置7の作動の入切が行える。このとき、融通機構132aにより、操作レバー19を操作することができ、位置決め機構により、操作レバー19を各々の操作位置に位置決めできる。そして、畦際旋回時には、レバーモータ99の駆動により、操作レバー19を自動的に作業位置Aに作動させることができ、旋回操作の簡略化が図れる。このとき、レバーモータ99の駆動により位置決め解除機構を作動させるので、操作レバー19を軽い力で作動させることができ、レバーモータ99の小容量化及び小型化が図れる。
【0053】
また、機体の畦際旋回時にステアリングハンドル6の切れ角度が第一の設定角度を超えると農作業装置7の作動を停止すると共に農作業装置7を上昇し、ステアリングハンドル6の切れ角度が第二の設定角度以内になると農作業装置7を下降し、前記農作業装置7を下降させてからの時間が所定の設定時間になると農作業装置7の作動を開始させる制御装置を設けた。
【0054】
よって、畦際旋回時に、ステアリングハンドル6の切れ角度に基づいて農作業装置7の昇降を行い、経過時間に基づいて農作業装置7の作動を開始させるので、従来のような走行距離を検出するような格別な検出装置が不要となり、制御装置を低コストで構成できる。
【0055】
また、ステアリングハンドル6の切れ角度が第二の設定角度以内になって農作業装置7を下降した後、前後進切替可能な走行操作具31を後進位置に操作するとバックリフト機構により農作業装置7を上昇し、走行操作具31を前後進中立位置に操作すると農作業装置7を下降すると共に農作業装置7を作動状態に切り替える制御装置を設けた。
【0056】
よって、畦際での機体旋回後、機体を畦際いっぱいまで後進してから作業を開始するときの操作を簡略化でき、畦際から容易に作業を行える。
また、農作業装置7の作動状態で走行操作具31を後進位置に操作するとバックリフト機構により農作業装置7の作動を停止すると共に農作業装置7を上昇し、ステアリングハンドル6の切れ角度が第一の設定角度を超えた後、ステアリングハンドル6の切れ角度が第二の設定角度以内になると農作業装置7を下降し、前記農作業装置7を下降させてからの時間が所定の設定時間になると農作業装置7の作動を開始させる制御装置を設けた。
【0057】
よって、機体を畦際いっぱいまで前進して作業を行った後、後進してから旋回する旋回形態において、操作を簡略化できる。
アクチュエータにより前輪3を自動的に操舵し、自動直進制御を行う構成としたとき、ステアリングハンドル6の外周に手動操舵切替用のスイッチ136を設け、オペレータがステアリングハンドル6を把持したことを前記スイッチ136が検出すると、前輪3をステアリングハンドル6の操作に基づいて操舵する手動操舵に切り替わる構成とすれば、手動操舵への切替をスムーズに行える。そして、前記スイッチ136により所定時間以上ステアリングハンドル6が操作(把持)されないことを検出し且つステアリングハンドル6が直進状態であることをステアリングセンサ102を検出すると、前輪3を自動的に操舵する自動直進制御に復帰する。自動直進制御は、前行程での前輪3の操舵に基づき、前行程の走行経路に沿うように前行程の操舵とは逆方向に操舵させて制御する。尚、後輪4の回転数を検出するセンサにより走行距離(走行位置)を検出し、走行距離(走行位置)に対応する前輪3の操舵量を記憶し、この記憶データに基づき自動直進制御する。これにより、簡単な構成で低コストで自動直進制御が行える。
【0058】
尚、異なる自動直進制御として、機体前方を撮影する撮影装置(カメラ)115を設け、該撮影装置(カメラ)115により線引きマーカ107でつけた線引き跡の凸部を検出し、この線引き跡にならって走行するよう前輪3を自動的に操舵する構成とすることができる。尚、線引きマーカ107は、圃場に前記凸部をつける構成とすればよい。また、撮影装置(カメラ)115が機体の中心を把握しやすいように、機体の前方をレーザーにて照射する構成としてもよい。また、撮影装置(カメラ)115により畦際にて暗渠や壁や柱等の障害物を検出すると、該障害物を避けるべく前輪3を自動的に操舵する。また、撮影装置(カメラ)115にて線引きマーカ107で線引きできない距離まで側方の畦が接近していることを検出すると、線引きマーカ107を自動的に起立させて非線引き状態に切り替える。これにより、線引きマーカ107の非線引き状態への切り替え忘れを防止し、畦と接触して線引きマーカ107が破損するようなことを防止する。
【符号の説明】
【0059】
1:田植機、6:ステアリングハンドル、7:苗植付部、19:植付昇降レバー、99:植付昇降モータ、100:制御部、120:位置決めローラ、122:位置決め溝、132a:長孔、A:植付位置、B:下降位置、C:中立位置、D:上昇位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の畦際旋回時に農作業装置(7)の作動を停止し、作業開始位置で自動的に農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機において、農作業装置(7)の作動を入切する操作レバー(19)と、該操作レバー(19)を各々の操作位置に位置決めする位置決め機構と、操作レバー(19)を作動させるレバーモータ(99)と、位置決め機構を位置決めしない状態に解除する位置決め解除機構とを設け、レバーモータ(99)から操作レバー(19)への作動連繋機構に融通機構(132a)を設け、前記作業開始位置で、レバーモータ(99)を駆動することにより、位置決め解除機構を作動させると共に操作レバー(19)を作業位置(A)に作動させる構成とした農作業機。
【請求項2】
機体の畦際旋回時にステアリングハンドル(6)の切れ角度が第一の設定角度を超えると農作業装置(7)の作動を停止すると共に農作業装置(7)を上昇し、ステアリングハンドル(6)の切れ角度が第二の設定角度以内になると農作業装置(7)を下降し、前記農作業装置(7)を下降させてからの時間が所定の設定時間になると農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機。
【請求項3】
ステアリングハンドル(6)の切れ角度が第二の設定角度以内になって農作業装置(7)を下降した後、前後進切替可能な走行操作具(31)を後進位置に操作するとバックリフト機構により農作業装置(7)を上昇し、走行操作具(31)を前後進中立位置に操作すると農作業装置(7)を下降すると共に農作業装置(7)を作動状態に切り替える制御装置を設けた請求項2に記載の農作業機。
【請求項4】
農作業装置(7)の作動状態で走行操作具(31)を後進位置に操作するとバックリフト機構により農作業装置(7)の作動を停止すると共に農作業装置(7)を上昇し、ステアリングハンドル(6)の切れ角度が第一の設定角度を超えた後、ステアリングハンドル(6)の切れ角度が第二の設定角度以内になると農作業装置(7)を下降し、前記農作業装置(7)を下降させてからの時間が所定の設定時間になると農作業装置(7)の作動を開始させる制御装置を設けた農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−244792(P2011−244792A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124415(P2010−124415)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】