説明

近接センシングシステム

大型の公共車両または商用車両のような車両のミラーハウジング部品の内部または近傍に取り付けられるかもしれない車両近接センシングシステムであって、車両の前面の近くにある障害物を検知する。たとえば、外部後方ミラーの下または運転者に見えない場所にある障害物を検知する。そして制御信号を同一車両の運転手台内に送信して、警告装置を使って運転者に警告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の領域センシングシステムに係る。本発明により、大型の公共車両または商用車両のような車両のミラーハウジング部品の一部を領域センシング手段が形成し、そのミラーハウジング部品に領域センシング手段が含まれ、および/または、同一車両の運転手台(cab)内に領域センシング手段が含まれる。
【背景技術】
【0002】
これらの車両には、その大きさと構造のために、運転者が直接見ることができない領域が、車両の周りに数多く存在する。
ミラーの形態や配置、車両の大きさ、運転者の位置などによって運転者の視野が限定されて生じた盲点が、全て、車両の外部ミラーまたはサイドミラーによって見えるようになるわけではない、ということは特によく知られている。そして、これら盲点を克服する、固定式又は調節可能なミラーの多くの配置が今までにもあった。
【0003】
視界の狭まりを低減するためにカメラモニタシステムを使う多くの配置も、今までにも存在している。視界の狭まりを低減するための、他の形態の非接触センシングを使う配置も、今までに存在している。
【0004】
車両のステアリングホイールが回転されるときに角度を変えるミラーについての試みがなされてきた。米国特許US 6151175号、欧州特許 EP1026035号、米国特許US 4229992号、カナダ特許CA 1148395号、カナダ特許CA 2203023号、オーストラリア特許AU 3492695号、米国特許US 6315419号、米国特許US 3640609号、および特許出願PCT/GB02/02717号、US 20020005778A1号、WO 0185491号、WO 9701246号には、トレーラートラックのミラーを自動的に調節するシステムおよび装置が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このタイプの調節可能なシステムを使っても、運転席側のドアの下または周囲や、サイドミラーの下が見えるかどうかという問題が残りうる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで我々は、解釈された信号を運転者に届けることによって、視野の狭まりをなくすか低減するシステムを開発した。
本発明により、ミラーハウジング内に外部ミラーを有する大型の公共車両または商用車両の近傍にある障害物を検知するための領域センシングシステムが提供される。そのシステムは、(i)車両の外部ミラーのミラーハウジング内に取り付けられており、障害物を検知することができる領域センシング手段と、(ii)ミラーハウジングの内部または近傍に取り付けられており、領域センシング手段に接続された制御信号送信手段であって、領域センシング手段が障害物を検知したとき、車両の運転手台内部の制御信号受信手段へと制御信号を送信する制御信号送信手段と、を備える。
【0007】
この制御信号送信手段は、ミラーハウジングの内側に直接取り付けられるかもしれないし、車両の外側に取り付けられたハウジングの外側に取り付けられるかもしれない。たとえば、制御信号送信手段は、ミラーハウジングの隣の固定窓上に取り付けられるかもしれない。
【0008】
領域センシング手段が、検知の空間的範囲に基づいてデジタル領域信号を生成することが望ましい。また、デジタル領域信号がデジタル信号処理手段によって処理され分析されることが望ましい。領域センシング手段とデジタル信号処理手段の組み合わせによって、システムは、異なるタイプの物体の違いを識別できるようになる。本システムは、車両の電気的または電子的システムからの信号を使わずに、センシング手段から車両の速度と向きも決定できることが望ましい。
【0009】
領域センシング手段は、対象範囲内の領域にある障害物や物体を感知できる非接触手段であることが好ましい。そして、たとえば、レーダー技術、電磁センシング、磁気計を用いた磁気センシング、レーダーと磁気計の組み合わせ、磁場センシングなどに基づいて、感知することが望ましい。超音波または赤外線または他の遠隔非接触式の距離センシング手段も、レーダー、磁気計、または磁場センシングとともに使われるかもしれない。車両、オートバイ、自転車などの強磁性の障害物を検知するのに、磁気計は特に有用である。一つより多くのタイプの領域センシング手段を使ってもよい。
【0010】
領域センシング手段はミラーハウジング内に位置しているのが好ましい。また、領域センシング手段は、実質的に後ろ向き及び下向きの方向を向くよう位置することが好ましい。ここでは、センシング手段は後ろ向きのものとして述べることにする。平面図を見るとミラーハウジングの前方にいくらか検知対象範囲があるかもしれないが、本装置が提供する検知対象範囲の大部分は、ミラー部品の後方である。
【0011】
もし利用できるなら、画像センシング手段からのデータを本システムが使うこともありうるが、領域センシング手段は、生の動画タイプの画像をモニタタイプの画面上に中継するよう意図されたタイプのものではない。
【0012】
車両の運転手台内部に制御信号受信手段があり、制御された警告信号を運転者に届けるために、制御信号受信手段は受信した制御信号を解釈することができる、ことが望ましい。この警告信号手段は、視覚的手段または可聴的手段の一方または両方の形であってもよい。信号が受信されると、運転者警告が作動されて、運転者に危険を警告する。本発明の一つの実施態様においては、信号は、車両が障害物に近づくにつれて変化する。たとえば、信号が距離に応じて異なる。たとえば、音声信号の場合は信号の音高および/または音量を増やしてもよく、視覚信号の場合は信号の色または強度を変えてもよい。たとえば、LEDのような光の列の場合、障害物が近づくにつれて、より多くのLEDが点灯するようにしてもよい。
【0013】
制御信号送信手段および制御信号受信手段は、たとえば、ラジオ電波に基づく手段または赤外線手段などのいずれかの形の無線方式のものであることが好ましい。
利用時において、障害物または危険箇所が領域センシング手段によって検知されると、制御信号が制御信号送信手段を通じて送信され、車両の運転手台内部に取り付けられた制御信号受信手段によって受信され、信号が処理されて、適切な警告が運転者に届けられる。
【0014】
制御信号受信手段と運転者警告手段は、ともに同一ユニット内に取り付けられてもよい。こうすると、必要なのは、車両内からの単一の電源用の接続のみとなるだろう。
領域センシング手段と制御信号送信手段は、電源用の接続を一つしか必要としないことが望ましい。
【0015】
本発明の装置は、視覚ベースの自己調節ミラーとともに使うこともできる。そのようなミラーは特許出願WO 02/102621号に記載されており、その内容は参照によりここに含まれる。
【0016】
この自己調節ミラーシステムには、反射面を有するミラーとミラー調節手段と画像センシング手段とを備えた車両用のミラー部品がある。それによって、画像センシング手段により認識された画像に応じて、ミラー調節手段がミラーの反射面の方向を調節できるようになっている。
【0017】
使用時には、ミラーの反射面において運転者に適切な視界を提供するよう、ミラーは通常の方法で自動的に調節される。そして、画像センシング手段は、特定の画像を検知するように設定される。車両が方向を変えると、特定の画像は、画像センシング手段の視野から外に出る方向に動きだすだろう。すると画像センシング手段は、自分自身を調節して、特定の画像が視野内にとどまるようにする。これにより、運転者にとって適切な視野を維持するようにミラー調節手段がミラーの反射面を調節する、ということになる。
【0018】
ミラー調節手段は、車両の中からミラーを電気的に操作するために車両で広く使われている、従来手段のどれであっても構わない。本発明においては、ミラーの反射面の方向が、車両の運転者によってではなく、画像センシング手段の方向によって制御される。
【0019】
ミラー調節手段と画像センシング手段が動作中のときに、自動的に点灯される指示灯があってもよい。この指示灯は、たとえば、ミラーハウジングなどの便利な場所にあってもよい。指示灯は、定常光であってもよいし、他の指示灯一般と同様のやり方で点滅してもよい。
【0020】
たとえば直接のケーブル接続、または赤外線、または無線遠隔リンクなどによって、車両の電気系統に統合されたモジュールに付加的データを送信する手段を、ミラー部品が備えることが望ましい。これによって、たとえば、車両全体の方向指示回路を補助的に制御することが可能になるだろう。これにより、トレーラートラックの関節が感知されたときに効果を発揮するだろうし、車両に対して適切な方向転換信号を活性化できるだろう。車両に対する方向転換信号は、危険箇所の警告または後退灯回路とは無関係に活性化されてもよいし、あるいは、これらの点灯回路に加えて活性化されてもよい。もしこれらのライトの組み合わせがともに活性化され、ミラーシステム指示器からの入力が感知されると、これらのライトはともに点滅するかもしれないし、予め決められた手順にしたがって点滅するかもしれない。
【0021】
運転者がミラーシステムを自分の意思によりオーバーライドできるような、運転手台内に取り付けられた遠隔制御スイッチがあることが望ましい。このモジュールからミラーに送信される信号は、無線リンクによるものでもよく、車両の電源供給路に有線で接続されていてもよく、適切なバッテリー装置によって電源を供給されていてもよい。運転者用の手動オーバーライド制御は、体の大きさが異なる車両運転者に合わせるための、運転者の制御による反射ミラーの上下方向の調節を考慮に入れてもよい。
【0022】
調節手段によるミラー表面の調節によって画像センシング手段の位置が変わることがないように、画像センシング手段がミラーハウジングに固く取り付けられていてもよい。あるいは、ミラー表面が調節される間、画像センシング手段により提供される視野がミラー表面の調節を可能にするのに十分なだけ変化するように、画像センシング手段がミラーの後ろ側に取り付けられていて、ミラー表面に結合されていてもよい。ミラーガラスの後ろの画像センシング手段は、ガラスを通して見る位置にあってもよく、ミラーの平面の後ろ側でミラーの周縁部の範囲外に位置していてもよい。画像センシング手段がガラスを通して見る場合、画像センサはガラスを通して見ることができるが反射側からは反射面の妨害がないように、一方だけから見える鏡のための材料(one way mirror material)をガラスに塗布してあるかもしれない。
【発明の効果】
【0023】
このシステムを本発明とともに利用することによって、障害物が検知されるようになる。すると、運転者の視野に障害物が入るようにミラーが自動的に調節されるか、運転者がミラーを調節して画像が運転者の視野に入るようになる。すると、車両が方向を変えるのに従ってミラーが自動的に調節され、運転者の視野内に画像があるように保ち、これにより、安全性の改善がなされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明が添付図面に示されている。図面において、連結式車両(1)は遠隔領域センシング手段(4)を有している。遠隔領域センシング手段(4)は、その視野(2)内の障害物を検知でき、外部サイドミラー(7)のハウジングの内部または近傍に取り付けられていて、(2)に示した領域を監視する。センシング手段(4)に接続された無線制御信号送信手段(5)がある。(6)に示すように運転手台には制御信号無線受信機があって、警報システムを含んでおり、無線制御信号送信機(5)からの制御信号を受信機が受信できる。
【0025】
使用時に、障害物(3)があると、障害物(3)は運転者の盲点にあるかもしれないが、領域センシング手段(4)がこの障害物を検知するだろう。センシング手段は無線制御信号送信手段(5)に信号を送り、すると無線信号が受信機(6)に送られ、音声信号および/または視覚信号などの警報を受信機(6)が活性化して、運転者に障害物について警告する。
【0026】
障害物からの距離や、障害物の位置や、障害物への接近の割合を運転者に示すために、情報が利用可能なように、または警告がされうるように、(6)によって受信された信号が処理されてもよい。これら情報や警告は、適切な形態で利用可能としてもよい。たとえば、検知された物体または障害物との近さの度合に関連して、画面上の光の信号の色または強度によって示されたり、音声信号の音高および/または音の種類によって示されたりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 連結式車両
2 遠隔領域センシング手段の視野
3 障害物
4 遠隔領域センシング手段
5 無線制御信号送信手段
6 制御信号無線受信機
7 外部サイドミラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーハウジング内に外部ミラーを有する車両によって障害物を検知するためのセンシングシステムであって、
(i)前記車両の外部ミラーの前記ミラーハウジング内に取り付けられており、障害物を検知することができる領域センシング手段と、
(ii)前記ミラーハウジングの内部または近傍に取り付けられており、前記領域センシング手段に接続された制御信号送信手段であって、前記領域センシング手段が障害物を検知したとき、前記車両の運転手台内部の制御信号受信機へ制御信号を送信する制御信号送信手段と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記制御信号送信手段が、前記ミラーハウジングの内側に直接取り付けられているか、前記車両の外側に取り付けられた前記ミラーハウジングの外側に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記領域センシング手段が検知領域に基づいてデジタル信号を発生し、該信号がデジタル信号処理手段によって処理され分析されて、該デジタル信号処理手段が解釈して前記制御信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記領域センシング手段が、自身の視野内の障害物または物体を感知することができ、レーダー技術、電磁放射、または磁気計を用いた磁気効果、に基づいた手段であることを特徴とする請求項1、2または3に記載のシステム。
【請求項5】
前記領域センシング手段が、超音波または赤外線または他の遠隔非接触式の、距離センシング手段を含むことを特徴とする請求項1、2、3または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記運転者に警告を与えることができる制御信号受信手段が前記車両の前記運転手台内部にあることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
運転者警告手段が、視覚的手段と可聴的手段の一方または両方の形であることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記障害物との距離が変化するにつれて前記信号が変化することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記信号が音声信号であり、前記障害物との距離が減少するにつれて、該信号の音高および/または音量が増大することを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記信号が視覚信号であり、前記障害物との距離が減少するにつれて、明るさおよび/または色が変化することを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御信号送信手段および前記制御信号受信手段が無線式であることを特徴とする請求項6から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御信号受信手段および運転者警告手段が同一のユニット内に取り付けられており、車両内部からの単一の電源用の接続のみを共通して必要としていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記領域センシング手段および無線式の制御信号送信手段が、単一の電源用の接続のみを共通して必要としていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記ミラーが自己調節ミラーであることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
反射面を有するミラーとミラー調節手段と画像センシング手段とを含むミラー部品を前記自己調節ミラーが備えることによって、前記画像センシング手段により認識された画像に応じて、前記ミラー調節手段が前記ミラーの前記反射面の方向を調節することを特徴とする請求項14に記載のシステム。

【公表番号】特表2007−527560(P2007−527560A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516439(P2006−516439)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002615
【国際公開番号】WO2004/113122
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(503458065)
【氏名又は名称原語表記】RUSSELL KEITH AMBROSE
【Fターム(参考)】