説明

近接露光装置及び近接露光方法

【課題】比較的簡単な計算で、マスクとワークのギャップを平均化することができ、露光精度を向上することができる近接露光装置及び近接露光方法を提供する。
【解決手段】ギャップセンサ17によってマスクM及びワークWとの間のギャップを4箇所の測定点A、B、C、Dで測定し、4箇所の測定点A、B、C、Dによって画成される四角形ABCDの各辺の中点K,L,M,Nの4箇所の座標のうち、3箇所の中点K、L、Mの座標における各ギャップが一様になるようにZ−チルト調整機構43を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接露光装置及び近接露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ装置やプラズマディスプレイ装置等のフラットパネルディスプレイ装置のカラーフィルタ基板やTFT(Thin Film Transistor)基板を製造する近接露光装置が種々考案されている。近接露光装置は、マスクをマスク保持部で保持すると共にワークとしての基板をワーク保持部で保持して両者を近接して対向配置する。この場合、マスクとワークのギャップが露光領域に亘って均一となるように、マスク又はワークの姿勢を制御している。
【0003】
また、大型基板上にマスクのパターンを露光転写する場合には、ワークより小さいマスクを用い、ワーク保持部をマスクに対して相対的にステップ移動させ、ステップ毎にマスクをワークに近接して対向配置した状態で露光用の光を照射し、マスクに描かれた複数のパターンを基板上に露光転写する、所謂、ステップ式の近接露光方式が多く用いられている。
【0004】
例えば、ワーク保持部を動かして、ワークの姿勢を制御する場合、まず、ワークの存在する面を、仮想的な平面として計算により算出する必要がある。このため、マスクの平面を基準として、ワークまでの距離を測定し、制御対象となるワークの存在する平面を測定結果から算出する。従来の算出方法では、図8に示すように、マスクとワークのギャップを3点A、B、Cで測定して、上記平面を測定していた。また、従来の他の算出方法として、マスクとワークのギャップを3ヶ所以上の測定点で測定して、最小二乗法によりワークの回帰平面あるいは仮想平面を平面方程式から求め、基準平面に対して平行に設定するようにした基板の傾き設定装置が考案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、4点以上の点でギャップを測定し、回帰平面あるいは仮想平面を平面方程式から求めることが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3−5652号公報
【特許文献2】特許第2860857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のようにワークの姿勢を3点A、B、Cで測定してワークの存在する平面を求めた場合、3点でのギャップは平均化することができるものの、図8に示す点Δでのギャップは、上記平面から大きくずれている可能性が高く、ワーク露光領域の全面に亘ってギャップを平均化することができなかった。また、特許文献1、2に示す算出方法では、平面方程式の計算が複雑であり、処理時間がかかるという課題があった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な計算で、マスクとワークのギャップを平均化することができ、露光精度を向上することができる近接露光装置及び近接露光方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 露光すべきパターンを有するマスクを保持するマスク保持部と、
前記マスク保持部を駆動するマスク駆動部と、
被露光材としてのワークを保持するワーク保持部と、
前記ワーク保持部を駆動するワーク駆動部と、
前記マスク及び前記ワークとの間のギャップを4箇所の測定点で測定するギャップセンサと、
前記ワークに対してパターン露光用の光を前記マスクを介して照射する照射手段と、
を備え、前記マスクと前記ワークとを近接して対向配置した状態で、前記ワーク上に前記マスクのパターンを露光転写する近接露光装置であって、
前記ギャップセンサによって測定される4箇所の測定点での前記マスク及び前記ワークとの間のギャップに基づいて、前記4箇所の測定点によって画成される四角形の各辺の中点の4箇所の座標のうち、3箇所の中点の座標における各ギャップが一様になるように前記マスク駆動部と前記ワーク駆動部の少なくとも一方を駆動する制御部を備えることを特徴とする近接露光装置。
(2) 露光すべきパターンを有するマスクを保持するマスク保持部と、前記マスク保持部を駆動するマスク駆動部と、被露光材としてのワークを保持するワーク保持部と、前記ワーク保持部を駆動するワーク駆動部と、前記マスク及び前記ワークとの間のギャップを4箇所の測定点で測定するギャップセンサと、前記ワークに対してパターン露光用の光を前記マスクを介して照射する照射手段と、を備え、前記マスクと前記ワークとを近接して対向配置した状態で、前記ワーク上に前記マスクのパターンを露光転写する近接露光方法であって、
前記ギャップセンサによって前記マスク及び前記ワークとの間のギャップを4箇所の測定点で測定する工程と、
前記4箇所の測定点によって画成される四角形の各辺の中点の4箇所の座標のうち、3箇所の中点の座標における各ギャップが一様になるように前記マスク駆動部と前記ワーク駆動部の少なくとも一方を駆動する工程と、
を備えることを特徴とする近接露光方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の近接露光装置及び近接露光方法によれば、ギャップセンサによってマスク及びワークとの間のギャップを4箇所の測定点で測定し、4箇所の測定点によって画成される四角形の各辺の中点の4箇所の座標のうち、3箇所の中点の座標における各ギャップが一様になるようにマスク駆動部とワーク駆動部の少なくとも一方を駆動するようにしたので、残りの中点でのギャップも一様となり、比較的簡単な計算で、4箇所の測定点でのマスクと基板のギャップを平均化することができ、露光精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る近接露光装置を説明するための一部分解斜視図である。
【図2】図1に示す近接露光装置の正面図である。
【図3】図1に示すマスク保持部の拡大斜視図である。
【図4】ギャップ制御を行う際のワークの平面構成を説明するための図である。
【図5】マスクのz座標をz=0として、ギャップセンサの座標を示す図である。
【図6】空間上に存在する任意の4点の中点が同一平面上にあることを説明するための図である。
【図7】(a)は、従来のギャップ制御を行う際のワークの平面構成を説明するための図であり、(b)は、本発明のギャップ制御を行う際のワークの平面構成を説明するための図である。
【図8】従来のギャップ制御を行う際のワークの平面構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る露光装置及び露光方法について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、近接露光装置1は、マスクMを保持するマスクステージ)10と、ガラス基板(被露光材としてのワーク)Wを保持するワークステージ(ワーク保持部)20と、パターン露光用の光を照射する照射手段としての照明光学系30と、ワークステージ20をX軸,Y軸,Z軸方向に移動し、且つワークステージ20のチルト調整を行うワークステージ移動機構40と、マスクステージ10及びワークステージ移動機構40を支持する装置ベース50と、を備える。
【0013】
なお、ガラス基板W(以下、単に「ワークW」と称する。)は、マスクMに対向配置されており、このマスクMに描かれたマスクパターンを露光転写すべく表面(マスクMの対向面側)に感光剤が塗布されている。また、マスクMは、溶融石英からなり、長方形状に形成されている。
【0014】
説明の便宜上、照明光学系30から説明すると、照明光学系30は、紫外線照射用の光源である例えば高圧水銀ランプ31と、この高圧水銀ランプ31から照射された光を集光する凹面鏡32と、この凹面鏡32の焦点近傍に切替え自在に配置された二種類のオプチカルインテグレータ33と、光路の向きを変えるための平面ミラー35,36及び球面ミラー37と、この平面ミラー35とオプチカルインテグレータ33との間に配置されて照射光路を開閉制御する露光制御用シャッター34と、を備える。
【0015】
マスクステージ10は、図1〜図3に示すように、中央部に矩形形状の開口部11aが形成されるマスクステージベース11と、マスクステージベース11の開口部11aにX軸,Y軸,θ方向に移動可能に装着されるマスク保持枠(マスク保持部)12と、マスク保持枠12に取り付けられ、マスクMを吸着保持するチャック部14と、マスク保持枠12とチャック部14とをX軸,Y軸,θ方向に移動させ、このマスク保持枠12に保持されるマスクMの位置を調整するマスク位置調整機構(マスク駆動部)16と、を備える。
【0016】
マスクステージベース11は、装置ベース50上に立設される支柱51、及び支柱51の上端部に設けられるZ軸移動装置52によりZ軸方向に移動可能に支持され、ワークステージ20の上方に配置される。Z軸移動装置52は、例えば、モータ及びボールねじ等からなる電動アクチュエータ、或いは空圧シリンダ等を備え、単純な上下動作を行うことにより、マスクステージ10を所定の位置まで昇降させる。なお、Z軸移動装置52は、マスクMの交換や、ワークチャック21の清掃等の際に使用される。
【0017】
マスク位置調整機構16は、マスク保持枠12のX軸方向に沿う一辺に取り付けられる1台のY軸方向駆動装置16yと、マスク保持枠12のY軸方向に沿う一辺に取り付けられる2台のX軸方向駆動装置16xと、を備える。
【0018】
そして、マスク位置調整機構16では、1台のY軸方向駆動装置16yを駆動させることによりマスク保持枠12をY軸方向に移動させ、2台のX軸方向駆動装置16xを同等に駆動させることによりマスク保持枠12をX軸方向に移動させる。また、2台のX軸方向駆動装置16xのどちらか一方を駆動することによりマスク保持枠12をθ方向に移動(Z軸回りの回転)させる。
【0019】
さらに、マスクステージベース11の上面には、図3に示すように、マスクMとワークWとの対向面間のギャップを測定するギャップセンサ17と、マスクMのアライメントマークとワークWのアライメントマークを撮像するためのアライメントカメラ18と、が設けられる。これらギャップセンサ17及びアライメントカメラ18は、移動機構19を介してX軸,Y軸方向に移動可能に保持され、マスク保持枠12内に配置される。
【0020】
ギャップセンサ17は、例えば、投光部からマスクMの下面とワークWの上面にレーザー光を当て、各面での反射光を受光部で受けてマスクMの下面とワークWの上面とのギャップを検出するレーザーセンサであり、マスク保持枠12のX軸方向に沿う二辺の内側上方にX軸方向に互いに離間して2カ所ずつ、合計4箇所配置されている。なお、ギャップセンサ17は、レーザーセンサなどの光学式センサに限定されず、超音波式や渦電流式など、非接触式センサであればよい。
【0021】
これらの4個のギャップセンサ17による測定結果に基づき、制御部70で演算処理を行うことでマスクMとワークWとの対向面間の平行度のずれ量を検出することができる。この検出ずれ量に応じて、後述する互いに独立に駆動可能な3台のZ−チルト調整機構43によりマスクMとワークWとの対向面間のギャップが所定の値となるように制御される。
【0022】
アライメントカメラ18は、マスク保持枠12のX軸方向に沿う二辺の各内側上方でX軸方向の略中央部にそれぞれ一カ所ずつ合計2カ所配置されおり、これらの2個のアライメントカメラ18の画像データに基づき、制御部70で演算処理を行うことでマスクMとワークWとの平面ずれ量を検出することができる。この検出平面ずれ量に応じてマスク位置調整機構16がマスク保持枠12をX,Y,θ方向に移動させて該マスク保持枠12に保持されたマスクMのワークWに対する向きを調整するようになっている。
【0023】
なお、マスクステージベース11の上面には、図3に示すように、マスクステージベース11の開口部11aのX軸方向の両端部に、マスクMの両端部を必要に応じて遮蔽するマスキングアパーチャ38が設けられる。このマスキングアパーチャ38は、モータ、ボールねじ、及びリニアガイド等からなるマスキングアパーチャ駆動機構39によりX軸方向に移動可能とされて、マスクMの両端部の遮蔽面積を調整する。なお、マスキングアパーチャ38は、開口部11aのX軸方向の両端部だけでなく、開口部11aのY軸方向の両端部に同様に設けてもよい。
【0024】
ワークステージ20は、図1及び図2に示すように、ワークステージ移動機構40上に設置されており、ワークWをワークステージ20に保持するための吸着面22を上面に有するワークチャック21を備える。なお、ワークチャック21は、真空吸着によりワークWを保持している。
【0025】
ワークステージ移動機構40は、図2及び図3に示すように、ワークステージ20をY軸方向に移動させるY軸送り機構41と、ワークステージ20をX軸方向に移動させるX軸送り機構42と、ワークステージ20のチルト調整を行うと共に、ワークステージ20をZ軸方向に微動させるZ−チルト調整機構43と、を備える。
【0026】
Y軸送り機構41は、装置ベース50の上面にY軸方向に沿って設置される一対のリニアガイド44と、リニアガイド44によりY軸方向に移動可能に支持されるY軸テーブル45と、Y軸テーブル45をY軸方向に移動させるY軸送り駆動装置46と、を備える。そして、Y軸送り駆動装置46のモータ46cを駆動させ、ボールねじ軸46bを回転させることにより、ボールねじナット46aとともにY軸テーブル45をリニアガイド44の案内レール44aに沿って移動させて、ワークステージ20をY軸方向に移動させる。
【0027】
また、X軸送り機構42は、Y軸テーブル45の上面にX軸方向に沿って設置される一対のリニアガイド47と、リニアガイド47によりX軸方向に移動可能に支持されるX軸テーブル48と、X軸テーブル48をX軸方向に移動させるX軸送り駆動装置49と、を備える。そして、X軸送り駆動装置49のモータ49cを駆動させ、ボールねじ軸49bを回転させることにより、不図示のボールねじナットとともにX軸テーブル48をリニアガイド47の案内レール47aに沿って移動させて、ワークステージ20をX軸方向に移動させる。
【0028】
Z−チルト調整機構43は、X軸テーブル48上に設置されるモータ43aと、モータ43aによって回転駆動されるボールねじ軸43bと、くさび状に形成され、ボールねじ軸43bに螺合されるくさび状ナット43cと、ワークステージ20の下面にくさび状に突設され、くさび状ナット43cの傾斜面に係合するくさび部43dと、を備える。そして、本実施形態では、Z−チルト調整機構43は、X軸テーブル48のX軸方向の一端側(図1の手前側)に2台、他端側に1台(図1の奥手側、図2参照。)の計3台設置され、それぞれが独立して駆動制御されている。なお、Z−チルト調整機構43の設置数は任意である。
【0029】
そして、Z−チルト調整機構43では、モータ43aによりボールねじ軸43bを回転駆動させることによって、くさび状ナット43cがX軸方向に水平移動し、この水平移動運動がくさび状ナット43c及びくさび部43dの斜面作用により高精度の上下微動運動に変換されて、くさび部43dがZ方向に微動する。従って、3台のZ−チルト調整機構43を同じ量だけ駆動させることにより、ワークステージ20をZ軸方向に微動することができ、また、3台のZ−チルト調整機構43を独立して駆動させることにより、ワークステージ20のチルト調整を行うことができる。これにより、ワークステージ20のZ軸,チルト方向の位置を微調整して、マスクMとワークWとを所定の間隔を存して平行に対向させることができる。
【0030】
さらに、近接露光装置1には、図1及び図2に示すように、ワークステージ20の位置を検出する位置測定装置であるレーザー測長装置60が設けられる。このレーザー測長装置60は、ワークステージ移動機構40の駆動に際して発生するワークステージ20の移動距離を測定するものである。
【0031】
レーザー測長装置60は、ステー(不図示)に固定されてワークステージ20のX軸方向側面に沿うように配設されるX軸用ミラー64と、ステー71に固定されてワークステージ20のY軸方向側面に沿うように配設されるY軸用ミラー65と、装置ベース50のX軸方向端部に配設され、レーザー光(計測光)をX軸用ミラー64に照射し、X軸用ミラー64により反射されたレーザー光を受光して、ワークステージ20の位置を計測するX軸測長器(測長器)61及びヨーイング測定器(測長器)62と、装置ベース50のY軸方向端部に配設され、レーザー光をY軸用ミラー65に照射し、Y軸用ミラー65により反射されたレーザー光を受光して、ワークステージ20の位置を計測する1台のY軸測長器(測長器)63と、を備える。
【0032】
そして、レーザー測長装置60では、X軸測長器61、ヨーイング測定器62、及びY軸測長器63からX軸用ミラー64及びY軸用ミラー65に照射されたレーザー光が、X軸用ミラー64及びY軸用ミラー65で反射されることにより、ワークステージ20のX軸,Y軸方向の位置が高精度に計測される。また、X軸方向の位置データはX軸測長器61により、θ方向の位置はヨーイング測定器62により測定される。なお、ワークステージ20の位置は、レーザー測長装置60により測定されたX軸方向位置、Y軸方向位置、及びθ方向の位置を加味して、適宜補正を加えることにより算出される。
【0033】
また、図1に示す制御部70は、上述したマスク位置調整機構16、ワークステージ移動機構40(Y軸送り機構41、X軸送り機構42、及びZ−チルト調整機構43)、移動機構19、及びマスキングアパーチャ駆動機構39等を駆動制御する。
【0034】
本実施形態では、Z−チルト調整機構43及び制御部70により本発明のギャップ調整手段が構成されている。このギャップ調整手段は、マスクMのパターンを1枚目のワークWに露光転写する際には、ギャップセンサ17の計測値に基づいてギャップが予め定められた第1の目標値となるように、制御部70がZ−チルト調整機構43を制御してワークステージ20を上下微動させると共に、ギャップが第1の目標値に設定されたときのワークステージ20の高さを検出して、これを第2の目標値として制御部70の記憶領域に記憶する。そして、2枚目以降のワークWにマスクMのパターンを露光転写する際には、ワークステージ20の高さが先に記憶した第2の目標値となるように、制御部70がZ−チルト調整機構43を制御してワークステージ20を上下微動させる。
【0035】
具体的に、このように構成された近接露光装置1を用いて、ワークWを露光する際には、まず、プリアライメント後の1枚目のワークWがワークステージ20に搬送されて、露光位置に保持される。そして、マスクMの下面とワークWの上面とのギャップをギャップセンサ17で計測し、この計測値に基づいてギャップが予め定められた第1の目標値となるように制御部70がZ−チルト調整機構43を制御してワークステージ20を上下微動させる。
【0036】
そして、ギャップが第1の目標値に設定されたときのワークステージ20の高さ(例えば、エンコーダ等により検出されたZ−チルト調整機構43のモータ43aの回転数や停止位相等)を検出して、1ショット目の第2の目標値として制御部70の記憶領域に記憶する。次に、ギャップが第1の目標値となった状態で、照明光学系30から1ショット目(1カ所目)の露光用の光をマスクM及びワークWに垂直な平行光として照射して、マスクMのパターンをワークWに露光転写する。
【0037】
なお、2層目以降の露光においては、ギャップが第1の目標値になった状態でマスクM側のアライメントマークとワークWに露光転写されたアライメントマークとをアライメントカメラ18で撮像しながら位置合わせ(アライメント)を行い、照明光学系30から1ショット目の露光用の光をマスクMを介して照射して該マスクMのパターンをワークWに露光転写する。
【0038】
1ショット目の露光後、制御部70は、Z−チルト調整機構43によりワークステージ20を下降させてマスクMの下面とワークWの上面とのギャップを一定量拡大し、この状態で、ワークステージ20をマスクMに対して1ステップ量だけ送り、2ショット目の露光位置に移動させる。そして、再び、ギャップセンサ17で計測したギャップが第1の目標値となるように、制御部70がZ−チルト調整機構43を制御してワークステージ20を上下微動させる。そして、ギャップが第1の目標値に設定されたとき、2ショット目のワークステージ20の高さを、第2の目標値(2ショット目の)として記憶領域に記憶すると共に、2ショット目の露光転写を行う。
【0039】
以下、上記と同様にして3ショット目以降の露光転写を行う。即ち、各ショットにおいて、ギャップセンサ17で計測したギャップが第1の目標値となるように、制御部70がZ−チルト調整機構43を制御してワークステージ20を上下微動させると共に、ギャップが第1の目標値に設定されたときのワークステージ20の高さを、第2の目標値として記憶領域に記憶する。これにより、制御部70の記憶領域には、ショットごとの第2の目標値が記憶される。
【0040】
このようにして、全ての領域の露光終了後、制御部70がZ−チルト調整機構43によりワークステージ20を下降させてマスクMの下面とワークWの上面とのギャップを一定量拡大し、この状態で、ワークWを装置外に搬送して1枚目のワークWのステップ露光を終了する。
【0041】
ここで、マスクMの下面とワークWの上面とのギャップの制御について、詳細に説明する。本実施形態での制御部70は、ギャップセンサ17によってマスクM及びワークWとの間のギャップを4箇所の測定点A、B、C、Dで測定し、4箇所の測定点A、B、C、Dによって画成される四角形ABCDの各辺の中点K、L、M、Nの4箇所のx、y座標のうち、3箇所の中点K、L、Mのx、y座標における各ギャップが一様になるようにZ−チルト調整機構43を駆動するギャップ制御を行う。
【0042】
即ち、従来のギャップ制御と同様、3箇所の中点K、L、Mのx、y座標をもとに、ワークWの存在する平面を求め、該平面のギャップが目標値となるように制御する。ここで、ギャップセンサの位置は、図5に示すように、マスク中心を原点として(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)、(x4、y4)となっており、また、マスク面のz座標を0としている。ワークWの平面上の任意の点のx、y座標に対する高さz座標は、平面方程式:
ax+by+cz+d=0
により表される。ここで、a、b、c、dは定数である。そして、中点K、L、Mのx、y座標と、測定点A、B、C、Dでのギャップに基づく中点K、L、Mでのz座標(各辺の両端での測定点の平均値)を入れて、定数a、b、c、dが求められる。そして、制御部70によって、中点K,L,Mの各ギャップが一様となるようにZ−チルト調整機構43を駆動して、マスクMに対してワークWを平行とする。
【0043】
なお、マスク面のz座標を0としているので、計測したギャップは、ワークWのz座標として与えられる。即ち、マスクMのうねりなどによる実際のマスクMのz座標の値もワークWのz座標として算出される。そして、このように3箇所の中点K、L、Mのx、y座標における各ギャップが一様になるようにギャップ制御すると、残りの中点Nでのギャップも一様となる。
【0044】
以下に、空間上に存在する任意の4点の中点は同一平面上にあることを証明する。
【0045】
平面の方程式を
ax+by+cz+d=0
とする時、3点(x1、y1、z1)、(x2、y2、z2)、(x3、y3、z3)からできる平面方程式の係数は、
a={(y2−y1)×(z3−z1)}−{(z2−z1)×(y3−y1)}
b={(z2−z1)×(x3−x1)}−{(x2−x1)×(z3−z1)}
c={(x2−x1)×(y3−y1)}−{(y2−y1)×(x3−x1)}
d=−{(x1×a)+(y1×b)+(z1×c)}
で求めることができる。
【0046】
次に、図6を参照して、四角形ABCD、各頂点の中点K、L、M、Nについて考える。
四角形ABCDの各頂点の座標を(x1、y1、z1)、(x2、y2、z2)、(x3、y3、z3)、(x4、y4、z4)とする時、その中点座標K、L、M、Nは((x1+x2)/2、(y1+y2)/2、(z1+z2)/2)、((x2+x3)/2、(y2+y3)/2、(z2+z3)/2)、((x3+x4)/2、(y3+y4)/2、(z3+z4)/2)、((x4+x1)/2、(y4+y1)/2、(z4+z1)/2)となり、3点K、L、Mからできる平面方程式の係数は、
a={(y3−y1)×(z3−z1+z4−z2)}−{(z3−z1)×(y3−y1+y4−y2)}/4
={(y3−y1)×(z4−z2)}−{(z3−z1)×(y4−y2)}/4
b={(z3−z1)×(x3−x1+x4−x2)}−{(x3−x1)×(z3−z1+z4−z2)}/4
={(z3−z1)×(x4−x2)}−{(x3−x1)×(z4−z2)}/4
c={(x3−x1)×(y3−y1+y4−y2)}−{(y3−y1)×(x3−x1+x4−x2)}/4
={(x3−x1)×(y4−y2)}−{(y3−y1)×(x4−x2)}/4
d=−[{(x1+x2)×a}+{(y1+y2)×b}+{(z1+z2)×c}]/2
となる。
【0047】
一方、平面ax+by+cz+d=0と点(x0、y0、z0)との距離L0は、




で求めることができる。
【0048】
3点K、L、Mと点Nの距離の分子部分は、
△=[{(x4+x1)×a}+{(y4+y1)×b}+{(z4+z1)×c}]/2
−{(x1+x2)×a}+{(y1+y2)×b}+{(z1+z2)×c}]/2
=[{(x4−x2)×a}+{(y4−y2)×b}+{(z4−z2)×c}]/2
となり、上記a、b、cを代入すると△は0になる。
以上より、点Nは3点K、L、Mによってできる平面上に存在する。これにより、4点の測定点から画成される四角形ABCDの3つの中点K、L、Mから、残りの中点Nの位置が求められることが証明された。
【0049】
ここで、各辺1000[mm]の正方形ABCDの4頂点におけるギャップを、A:250[μm]、B:320[μm]、C:270[μm]、D:290[μm]と仮定した場合、従来の3点A、B、Cを含む平面(図7(a)参照)によるギャップ制御と、本発明の4点A、B、C、Dの各々の中点を含む平面(図7(b)参照)によるギャップ制御と、を行った。表1は、各点における座標を示し、表2は、各点における目標ギャップとの誤差を示す。なお、目標ギャップを300[μm]とする。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
3点A、B、Cを含む平面によるギャップ制御では、点A、B、Cからなる平面方程式:ax+by+cz+d=0の各定数は、a=50、b=70、c=1000000、d=−260000となり、点A,B,Cからなる平面と点Dの距離は90[μm]と大きい。それに対し、4点A、B、C、Dの各々の中点を含む平面によるギャップ制御では、点K、L、Mからなる平面方程式:ax+by+cz+d=0の各定数は、a=2.5、b=12.5、c=500000、d=−141250となり、点K、L、Mからなる平面と各点A、B、C、Dとの距離はそれぞれ22.5[μm]と小さく、ギャップが平均化されていることがわかる。
【0053】
従って、本実施形態の近接露光装置1及び近接露光方法によれば、ギャップセンサ17によってマスクM及びワークWとの間のギャップを4箇所の測定点A、B、C、Dで測定し、4箇所の測定点A、B、C、Dによって画成される四角形ABCDの各辺の中点K、L、M、Nの4箇所のx、y座標のうち、3箇所の中点K、L、Mのx、y座標における各ギャップが一様になるようにZ−チルト調整機構43を駆動するようにしたので、残りの中点Nでのギャップも一様となる。これにより、図8に示した従来のギャップ制御と同じ3点を用いた比較的簡単な計算で、4箇所の測定点でのマスクMとワークWのギャップを平均化することができ、露光精度を向上することができる。
【0054】
また、ギャップセンサ17の計測値と、第1の目標値と、の差が0となるようにマスクMとワークWとを相対的に上下微動させるフィードバック制御を行ったときのワーク保持部20の高さ位置を、第2の目標値として記憶するので、2枚目以降のワークWの露光時には、ワーク保持部20の高さ位置が、第2の目標値となるように制御するだけで、フィードバック制御を行う必要がなく、スループットの向上を図ることができる。
【0055】
なお、本発明は前述した各実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、3箇所の中点の座標における各ギャップが一様になるようにZ−チルト調整機構43を駆動するようにしたが、マスクMをZ方向に移動させるマスク駆動部を有する場合には、マスク駆動部を駆動するようにしてもよい。また、Z−チルト調整機構43とマスク駆動部の両方を相対移動させて、ギャップ調整をおこなってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 近接露光装置
10 マスクステージ(マスク保持部)
17 ギャップセンサ
20 ワークステージ(ワーク保持部)
30 照明光学系(照射手段)
40 ワークステージ移動機構(ワーク駆動部)
43 Z−チルト調整機構(ギャップ調整手段)
70 制御部(ギャップ調整手段、板厚差算出手段)
76 板厚測定器(板厚差算出手段)
M マスク
W ガラス基板(被露光材としてのワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光すべきパターンを有するマスクを保持するマスク保持部と、
前記マスク保持部を駆動するマスク駆動部と、
被露光材としてのワークを保持するワーク保持部と、
前記ワーク保持部を駆動するワーク駆動部と、
前記マスク及び前記ワークとの間のギャップを4箇所の測定点で測定するギャップセンサと、
前記ワークに対してパターン露光用の光を前記マスクを介して照射する照射手段と、
を備え、前記マスクと前記ワークとを近接して対向配置した状態で、前記ワーク上に前記マスクのパターンを露光転写する近接露光装置であって、
前記ギャップセンサによって測定される4箇所の測定点での前記マスク及び前記ワークとの間のギャップに基づいて、前記4箇所の測定点によって画成される四角形の各辺の中点の4箇所の座標のうち、3箇所の中点の座標における各ギャップが一様になるように前記マスク駆動部と前記ワーク駆動部の少なくとも一方を駆動する制御部を備えることを特徴とする近接露光装置。
【請求項2】
露光すべきパターンを有するマスクを保持するマスク保持部と、前記マスク保持部を駆動するマスク駆動部と、被露光材としてのワークを保持するワーク保持部と、前記ワーク保持部を駆動するワーク駆動部と、前記マスク及び前記ワークとの間のギャップを4箇所の測定点で測定するギャップセンサと、前記ワークに対してパターン露光用の光を前記マスクを介して照射する照射手段と、を備え、前記マスクと前記ワークとを近接して対向配置した状態で、前記ワーク上に前記マスクのパターンを露光転写する近接露光方法であって、
前記ギャップセンサによって前記マスク及び前記ワークとの間のギャップを4箇所の測定点で測定する工程と、
前記4箇所の測定点によって画成される四角形の各辺の中点の4箇所の座標のうち、3箇所の中点の座標における各ギャップが一様になるように前記マスク駆動部と前記ワーク駆動部の少なくとも一方を駆動する工程と、
を備えることを特徴とする近接露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−164595(P2011−164595A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2986(P2011−2986)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】