説明

追尾システム

【課題】追尾対象を限定することなく、かつ方向あるいは距離について広範囲に適用することのできる追尾システムを提供する。
【解決手段】第1の移動体に設けられた移動速度伝送装置1と、第1の移動体を追尾する第2の移動体に設けられた追尾装置2とを備え、移動速度伝送装置1は、第1の移動体の加速度を検出する加速度センサ3と、加速度に対して所定の処理を行い送信信号として出力する情報処理部4と、送信信号を無線電波5として送信する送信部6とを有し、追尾装置2は、無線電波5を受信して受信信号として出力する受信部7と、受信信号に基づいて第1の移動体に対する追尾速度を制御する制御部8とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1の移動体が第2の移動体を追尾する追尾システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動追尾運転制御装置は、フィードバック制御系とフィードフォワード制御系とを具備している。フィードバック制御系は、前方車両との車間距離に基づいて追突防止を図りつつ自動追尾制御を行っている。また、フィードフォワード制御系は、前方車両が発する操縦データを遠隔受信し、操縦データに基づいて自動追尾制御を行っている。また、フィードバック制御系およびフィードフォワード制御系は、車間距離と前方車両の操縦データとに基づいて自車の制動あるいは加速を制御するアクチュエータを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−324429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の自動追尾運転制御装置は、車両間の追尾に限られたものであり、人対人、あるいは人対物の追尾について適用できないという問題点があった。
また、近距離での制御を対象とし、かつ前方のみに指向性を有しているため、適用範囲が狭いという問題点もあった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、その目的は、追尾対象を限定することなく、かつ方向あるいは距離について広範囲に適用することのできる追尾システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る追尾システムは、第1の移動体に設けられた移動速度伝送装置と、第1の移動体を追尾する第2の移動体に設けられた追尾装置とを備え、移動速度伝送装置は、第1の移動体の加速度を検出する加速度センサと、加速度に対して所定の処理を行い送信信号として出力する情報処理部と、送信信号を無線電波として送信する送信部とを有し、追尾装置は、無線電波を受信して受信信号として出力する受信部と、受信信号に基づいて第1の移動体に対する追尾速度を制御する制御部とを有するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の追尾システムによれば、追尾対象である第1の移動体から無線電波で情報を得ることによって、追尾対象を限定することなく、かつ全方向あるいは長距離にわたって第1の移動体を追尾することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の各実施の形態について図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当する部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る追尾システムを示すブロック図である。
図1において、この追尾システムは、第1の車両(第1の移動体)(図示せず)に設けられた移動速度伝送装置1と、第2の車両(第2の移動体)(図示せず)に設けられた追尾装置2とから構成されている。
【0010】
移動速度伝送装置1は、第1の車両の加速度を検出する加速度センサ3と、加速度センサ3の出力した加速度から移動速度を算出するとともに、移動速度を送信信号に変換する情報処理部4と、情報処理部4の出力した送信信号を無線電波5とし、指向性を持たないアンテナ(図示せず)を介して外部に送信する送信部6とを有している。
【0011】
追尾装置2は、移動速度伝送装置1から送信された無線電波5を受信して受信信号として出力する受信部7と、受信信号に基づいてアクチュエータ(図示せず)に追尾速度を制御する制御信号を出力する制御部8とを有している。
なお、アクチュエータは、スロットル開度を可変制御するスロットル弁アクチュエータおよびブレーキ力を可変制御するブレーキドラムアクチュエータである。
【0012】
ここで、移動速度伝送装置1と追尾装置2とを構成する各ブロックは、それぞれプログラムを格納した記憶部とCPUとを有するマイクロプロセッサ(図示せず)で構成されている。
【0013】
以下、上記構成の追尾システムについての動作を説明する。
まず、第1の車両の加速度が、加速度センサ3で検出される。検出された加速度は、情報処理部4で移動速度が算出され、移動速度が送信信号に変換される。送信信号は、送信部6で無線電波5としてアンテナを介して外部に送信される。
【0014】
続いて、無線電波5は、受信部7のアンテナで受信され、受信信号として出力される。制御部8は、出力された受信信号に含まれる移動速度と、無線電波5の電界強度から算出される第1の車両と第2の車両との間の距離とに基づいて第1の車両に対する追尾速度を算出し、アクチュエータに制御信号を出力する。アクチュエータは、制御信号によってスロットル開度あるいはブレーキ力が制御される。
【0015】
この発明の実施の形態1に係る追尾システムによれば、追尾対象である第1の車両からの受信信号に含まれる移動速度と、無線電波5の電界強度から算出される第1の車両と第2の車両との間の距離とに基づいて第1の車両に対する追尾速度を変化させるので、第1の車両との距離および移動速度を一定に保ったままで追尾することができる。
また、追尾対象を限定することなく、かつ全方向あるいは長距離にわたって第1の車両を追尾することができる。
【0016】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2に係る追尾システムを示すブロック図である。
図2において、情報処理部4Aおよび制御部8Aには、第1の車両および第2の車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)装置9がそれぞれ接続されている。
その他の構成については、実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
【0017】
以下、上記構成の追尾システムについての動作を説明する。実施の形態1と同様の動作については、詳述は省略する。
GPS装置9で検出された位置情報および時間情報は、情報処理部4Aに入力される。加速度センサ3で検出された加速度は、情報処理部4Aで移動速度が算出され、移動速度、位置情報および時間情報が送信信号に変換される。送信信号は、送信部6で無線電波5Aとしてアンテナを介して外部に送信される。
【0018】
制御部8Aは、受信信号に含まれる移動速度と、無線電波5Aの電界強度およびGPS装置9からの位置情報、時間情報から算出される第1の車両と第2の車両との間の距離とに基づいて第1の車両に対する追尾速度を算出し、アクチュエータに制御信号を出力する。
【0019】
この発明の実施の形態2に係る追尾システムによれば、GPS装置9から位置情報および時間情報を取得することにより、さらに第1の車両と第2の車両との間の距離を高い精度で制御することができる。
【0020】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3に係る追尾システムを示すブロック図である。
図3において、情報処理部4Bおよび制御部8Bには、図2に示したGPS装置9の代わりに、車両の位置を検出する準天頂衛星通信装置10がそれぞれ接続されている。
その他の構成については、実施の形態2と同様であり、その説明は省略する。
また、実施の形態2と動作は同様であるので、詳述は省略する。
【0021】
この発明の実施の形態3に係る追尾システムによれば、準天頂衛星通信装置10から位置情報および時間情報を取得することにより、上記実施の形態2と同様の効果を奏することができる。
【0022】
実施の形態4.
図4は、この発明の実施の形態4に係る追尾システムを示すブロック図である。
図4において、図2に示した送信部6および受信部7の代わりに、それぞれ送受信部11、12が設けられている。
また、情報処理部4Cには、第2の車両の追尾状況を表示するディスプレイ(表示部)13が取り付けられている。
その他の構成については、実施の形態2と同様であり、その説明は省略する。
【0023】
以下、上記構成の追尾システムについての動作を説明する。実施の形態2と同様の動作については、詳述は省略する。
制御部8Cは、第2の車両の車速あるいは第1の車両と第2の車両との間の距離等の追尾状況を送信信号に変換し、送受信部12に出力する。送信信号は、送受信部12で無線電波5Cとしてアンテナを介して外部に送信される。
無線電波5Cは、送受信部11のアンテナで受信され、受信信号として出力される。情報処理部4Cは、受信信号に含まれる追尾状況をディスプレイ13に出力し、追尾状況がディスプレイ13に表示される。
【0024】
また、第2の車両に故障等が生じた場合には、制御部8Cは、故障情報を送信信号として送受信部12に出力し、故障情報がディスプレイ13に表示される。
【0025】
この発明の実施の形態4に係る追尾システムによれば、第2の車両の追尾状況を第1の車両で知ることができる。
また、第2の車両の故障情報を第1の車両に伝達することにより、信頼性を向上させることができる。
【0026】
なお、上記実施の形態4では、移動速度伝送装置1Cにディスプレイ13が設けられているとして説明したが、勿論このものに限定されるものではなく、追尾装置2Cにディスプレイが設けられていてもよい。このものの場合、第1の車両の故障情報を第2の車両に伝達することにより、さらに信頼性を向上させることができる。
【0027】
なお、上記実施の形態1〜4では、移動速度伝送装置1および追尾装置2は、車両に設けられているとして説明したが、勿論このものに限定されるものではなく、船舶どうしといった物対物、人間どうしといった人対人、あるいは人間とゴルフカートといった人対物等であってもよい。このものの場合も、上記実施の形態1〜4と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施の形態1に係る追尾システムを示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る追尾システムを示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態3に係る追尾システムを示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態4に係る追尾システムを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
1、1A〜1C 移動速度伝送装置、2、2A〜2C 追尾装置、3 加速度センサ、4、4A〜4C 情報処理部、5、5A〜5C 無線電波、6 送信部、7 受信部、8、8A〜8C 制御部、9 GPS装置、10 準天頂衛星通信装置、11、12 送受信部、13 ディスプレイ(表示部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の移動体に設けられた移動速度伝送装置と、
前記第1の移動体を追尾する第2の移動体に設けられた追尾装置と
を備え、
前記移動速度伝送装置は、
前記第1の移動体の加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度に対して所定の処理を行い送信信号として出力する情報処理部と、
前記送信信号を無線電波として送信する送信部と
を有し、
前記追尾装置は、
前記無線電波を受信して受信信号として出力する受信部と、
前記受信信号に基づいて前記第1の移動体に対する追尾速度を制御する制御部と
を有すること
を特徴とする追尾システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記無線電波の電界強度から前記第1の移動体と前記第2の移動体との間の距離を算出することを特徴とする請求項1に記載の追尾システム。
【請求項3】
前記情報処理部および前記制御部は、前記第1の移動体および前記第2の移動体にそれぞれ設けられて位置を検出するGPS装置と互いに接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の追尾システム。
【請求項4】
前記情報処理部および前記制御部は、前記第1の移動体および前記第2の移動体にそれぞれ設けられて位置を検出する準天頂衛星通信装置と互いに接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の追尾システム。
【請求項5】
前記移動速度伝送装置は、前記第2の移動体の追尾状況を表示する表示部をさらに有していることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の追尾システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−25778(P2007−25778A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203021(P2005−203021)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】